男「いつか君に会いたい」 (46)


男「……勢いで打ってしまった…」

 画面の向こう側、チャットの履歴に残った黒歴史確定の言葉。

 お互い顔も本名も知らない関係なのに、言葉の最後に(笑)も付けずに送ってしまった。

男「うわぁあああ! やってしまったぁああああ!!」

 友達に薦められて始めたチャット中心のゲーム。

 まさか自分がこんなにハマるとは思わなかった……。

男「しかも返答遅いし……」

 心臓が高鳴る。

 そもそもが利用規約に反するのだから、断って当然なのだ。

 でも、それでも画面の向こうにいる彼女なら――。


『考えさせてください』


 

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母「うーん、これでよかったのかしら」

 壁や天井地面までもが鉄板でできた体育館ほど空間に、規則的に並べられたプレハブのようなコンテナ。

 その中の一つで、中年女性が腕を組んで悩んでいた。

 理由は一つ、画面向こうの若者が真剣に会いたいと願っているからだ。

母(だからって、ねぇ……)

 相手にどんな意図があるか分からないが、何にせよ年の差が離れすぎている。

 会いたいと言ってくれる気持ちは嬉しいが、ギャップに落胆してしまわないか。

 彼女はそれが不安で不安で仕方なかった。


 だから、返事を保留にした。


 今すぐ決めるにはあまりに重大すぎて、あまりにもったいなさ過ぎて。

 そうこう考えている間に、全てのコンテナに響くサイレンが鳴った。


母「やれやれ、悩んでいる暇もないってことか」


 

これは……


友「お、今日は気合い入ってんじゃん男」

男「ああ、ちょっとな」


 世界の覇権を異世界人に奪われてから地上に出られる人類はごく少数となった。

 異世界人は地球人に対し積極的に攻撃を繰り出し、あわよくば全滅させようと考えているからだ。

 その行為は、害虫を駆除していた自分たちそのもので、人類は異世界人にはない科学力を使ってなんとか地下に逃げ込むことができた。

 それでも、多くの逃げ遅れた人が地上に残っている。

 俺たちは彼らを助けることが“一番の目的”としている。


友「そういえば昨日の能力検定でとうとうランク3位抜いたんだってな」

男「……ああ、つっても――」


 2位が死んで繰り上げられただけ。

 俺が言葉に出すまでもなく、友はそれ以上軽口をたたこうとはしなかった。

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 対異世界人のためだけに開発された力『超能力』。

 どちらにせよ滅びる運命なら人間の枠を捨ててでも抗おうと考えた人類の指導者たちは、様々な非人道的な方法で俺たちを産み出した。

 俺たち超能力者は異世界人の血を飲むことで生き延びることができる。

 人間が最も貪欲に本能を発揮することができるのが『飢餓状態』にあると結論付けたからだ。

 実際、それは大正解で、それ以前の方法では改造人間一体につき異世界人数人殺せれば上々だったのが、今ではその十倍は功績を残している。


 ただ、俺たちは異世界人の血を吸うたびに自分が人間ではないことを悟り、暗く深い闇の中へ心を沈めていった。


友「ランキング1位の女、知ってるか?」

男「ああ、姫だろ。今アメリカあたりにいるらしいけど」

友「あいつが何で姫って呼ばれているか知っているか?」

男「さぁ、写真見た限り姫にふさわしい見た目ではあったけど?」

友「まぁそれもあるだろうけどな」


 友は少し見下すように笑った。

 彼がそんな風に息を漏らす時は、決まって俺たちの創造主様を皮肉る時だ。


友「姫の異世界人討伐人数“1万人”を超したらしいぜ」

男「いちま……」


 現在ランキング3位、超能力の中でも最も異世界人を殺すのに向いている“分子操作”を使える俺でさえ実戦配備されてから一年間で100体しか殺せていないというのに……。


友「ま、姫は姫、俺たちは俺たちだけどな」


 じゃあ言うなよ。

 俺は言葉に出さず視線で訴えたが、友は気にした様子もなく地上へと降り立った。

 俺も彼を追って地上に出る。

 地球人救助という名目の“異世界人狩り”が始まった。

          ____
           /      \
          /         \    あの謎の外国からの攻撃ね。
        /   (●) (●)  \
        |   (トェェェェェェェェイ)   |  もうどうにもならんわ。
        \  \ェェェェェ/   /
 r、     r、/          ヘ    データや過去ログどっかに移すなりするべきかもしれない。
 ヽヾ 三 |:l1             ヽ
  \>ヽ/ |` }            | |
   ヘ lノ `'ソ             | |
    /´  /             |. |
    \. ィ                |  |


 異世界人について分かっていることは多くない。

 地球人と同じように息を吸うこと。

 地球上にある『何か』を使って魔法を使うこと。

 漫画やアニメに出てくるような“エルフ”のような姿をしていること。

 そして、彼らは地球人に対し残虐非道で地球人を殺すと笑顔で喜ぶこと。


友「いたぞ」


 エルフの手によって繁殖されたシダ植物のようなものが氾濫した森。

 友は俺に立ち止まるように合図して木の陰へと隠れる。

 俺も続いて友の後ろに隠れ様子をうかがう。


エルフ「………」


 エルフは基本二人で行動を共にしている。

 しかも男女二人だ。正直妬ましい。


友「あいつら緑のマントだから下級だぞ」

男「え?」


 マントによって地位が違う。

 そんな話は聞いたことがない。


友「いや、もちろん俺の経験上だがな」


 と、友は補足した。

 だが、言われてみれば赤いマントのエルフは一年間で数回しか見かけたことがないし、見かけても仲間が大勢いて手が出せなかった。

 青のマントには苦しめられたし、黄色のマントは特殊な魔法を使うから出会いたくない。


男「すごいじゃないか! それを上に報告すれば――」

友「いや、しない」


 友の表情は真剣だった。

 こんな時の友は何を言っても意見を覆さない頑固モードだ。

呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨呪怨
会わせてやんない



男「なんで――」


 もし、それが広まれば戦術の幅が広がる。

 緑のマントには力を制限したり、赤のマントは気をつけたり。


友「その説明はあいつらを倒してから行う」


 そういうと、友は忍者のようにタートルネックのようなものをマスク代わりにして戦闘態勢に入った。

 どうやら、この戦いに生き残らなければ、きになる疑問を残したままにすることとなりそうだ。


男「俺が気づかれないようにあいつらの10メートル先を真空状態にする」

友「分かった」


 友は頷くと、大きく息を吸い込んだ。

 そして、指を3本立てる。

 1、2、スタート。


 音もなく駆け出すと同時に、友の姿はこの森から完全に消え去った。


男「………」


 友の能力は自分及び自分に触れている物を消すこと。

 その透過率は100%で、この系統の能力者で頂点に立っている。


男(よく反対って言われるけど、俺はサポート役に徹する……)


 エルフたちの3メートル先の分子を無理やり周囲へ押しやる。

 この感覚は使える本人しか理解できないと思うが、強いていうならパソコンの範囲選択を三次元でおこなっているような感じだ。


男(……いまだ!)


 対エルフ用の範囲限定音響弾がエルフたちの後方で炸裂する。これは音の振動がある一定の距離で完全に止めることのできる優れもので、音響弾でありながら周囲のエルフに気取られる心配がない。


エルフ「!?」


 エルフたちは突如鳴り響いた巨大な音に反応して前方へ飛び出す。


男(かかった!)


エルフ「かっ……はっ…」


 酸素を吸って生きているのかは分からないが、身体に必要なものがそこにはなく水から出た魚のように口をパクパクさせるエルフ達。

 それでも、魔法を使おうと指を動かすが、残念エルフの魔法のほとんどがこれまた地球上の何かを必要とするので発動しない。


エルフ「………!」


 自分たちの置かれている状況にやっと気付いたのか、真空状態の場所から逃げ出そうと一歩前に踏み込む。


男「残念」


 そこには最強の暗殺者が控えている。


友「………」


 友は特注の刀を二回振ると、鞘へ収めた。

 チンという音が俺の耳に届くと、エルフ二人は地面へと倒れこんだ。


 やはり緑のマントは下級なのだろう。他のマントだともっとてこずることが多い。


男「事後処理しておいた方がいいな」

友「ああ、だが罠にすることもできるから、少し離れた場所からやろう」


 友の提案で数歩下がる。

 そして、友は俺に触れて森から姿を消し、俺は分子を操作してエルフを解体する。

 この解体作業が移動している対象にも使えることができれば無敵なのだが、いかんせんパソコンの範囲指定のようなものなので移動されると弱い部分がある。


 結局、他のエルフが現れることもないまま、解体作業は無事に済んだ。

 俺たちは少しだけ残したエルフの腕から血を啜り、次の対象を求めて移動することにした。


男「その前に、さっきの答えを聞かせてくれよ」

友「ああ、単純に油断だ」

男「油断?」

友「相手に弱い強いができると油断が起きるだろ。下級だからって戦闘が弱いとは限らねーんだから」


 もちろん、油断するつもりはないが、下級のエルフを見下したのは確かだ。

 それが何度も続けば下級エルフを見るたびに安堵し上級エルフを見るたびに恐怖するかもしれない。


友「俺たちは人類の武器であり害虫駆除のシステムだ。そんな俺らがくだらない感情を持つ必要はねーんだよ」


 友は淡々と言うが、俺にはその言葉が少し寂しかった。


男「俺たちだって――」


 その言葉を最後まで聞くことはなく、友は次の場所に向かって歩み始めたのだった。


 帰還すると、消毒兵達の出迎えが待っていた。

 エルフ達が作り上げた世界は、虫やウィルスの生態系も変えたようで、ごく稀に新種の悪性ウィルスや寄生虫が付着していることがある。実際、ロシアの方ではそれが原因で一つのプラントが滅びたと聞く。


男「日本には何体エルフがいるんだろうな」

友「さぁ、あいつらゴキブリのように増えてるからな」


 事実、実戦配備されてから今までに殺したエルフの数より増えたエルフの数の方が圧倒的に多い。

 地球人は時間が経てば経つほど不利になる状態だった。


男「それより、今日の討伐数が加われば、友もとうとうランク10位入りじゃねーか?」

友「ねーよ。ランキングはあくまで能力検定。物質を消す能力は評価が高くないから」


 俺はそれが悔しい。

 友は俺より多くのエルフを倒している。このプラントがばれかけた時に命を賭してプラントの存在を“一時的に消した”のも友だ。

 そんな彼がランク15位の“一般兵”なのが悔しい。

 だが、一方で上級兵がエルフ討伐に同行することはないので嬉しい部分もあるのだが……。


友「俺は帰って寝るぞ。能力検定したところで無意味だしなー」


 友はこちらを向くことのないままに自分の部屋へと向かった。


消毒兵「男はどうしますか?」

男「……俺は…」


 少し悩んだが、一応検定しておくことにした。



 能力検定は科学者数名が見ている中、偽造エルフを相手に能力を使用する。

 偽造エルフと呼ばれる理由は、それが本物のエルフの遺伝子を使っているにも関わらず魔法を使えない役立たずのクローンだからだ。

 その理由は様々な憶測が建てられているが、友はエルフの中で育たなきゃ使えないんじゃねーのと言っていた。俺もそんな気がしていた。


男「いきます」


 能力検定を討伐から戻るたびに行うのは、いくつかの理由がある。

 一つは、エルフの血を吸うことで超能力の変化が起きていないか確かめるためである。

 実際問題、対エルフ用に作られた俺たちはエルフの身体を構成している何かによって超能力を使用できるのだから、新しいエルフの血を吸えば新しい能力に目覚めたり今までの能力がパワーアップしたりすることはよくあることだ。


男「………」


 しかし、緑マント10体程度の血じゃ何の変化もなかったらしく、異常なしという結果に終わった。


科学者「ねぇ男くーん。今夜空いてるー?」


 全裸に白衣という奇特な格好をしている女科学者は俺を解剖したくてたまらないらしい。

 何度も誘われたが一度として受けたことはない。


男「今日は予定がありますので」

科学者「あーん、この前もそう言っていたじゃなーい」

男「そうでしたっけ。でも、今夜は本当に予定がありますので」


 正直思春期の身体を持てあましているところはある。

 性欲も戦闘能力の向上に必要不可欠と結論付けた科学者たちのおかげで俺たちは無駄に性欲が強い。

 そのくせ、どんなイレギュラーが起こるか分からないとして一般人との生殖行動を禁止されているのだから拷問に近い。


男「今度その白衣も脱いでいたら空いてるかもしれませんが」


 その瞬間白衣を脱ごうとして仲間に止められていたが、俺はそれを最後まで見ることなく自室へと帰った。


 自室へと変えると、まずはノートパソコンを開く。

 俺たちに許された唯一の娯楽、それがインターネットだ。

 能力者は基本的に人類に対して脅威にならないように生後間もなく洗脳されるので、インターネットのような情報の海を自由に泳がしても問題ないとしていた。

 事実俺たちは人間が大好きで大好きで仕方がない。

 さらに言えば性欲が強いので異性に対しての関心が一般人よりだいぶ強い。

 だからなのだろうか、俺はチャットの向こうにいる彼女のことが愛おしくて愛おしくて仕方がなかった。


男「こんにちわ、と」


 ログインすると、俺の部屋の椅子に座っていた赤い髪の女の子。

女『こんにちわ』

 このゲームは性別を偽ることができないので、ネカマの可能性はない。あるとすれば年齢の偽りだが、何才だろうと女は女だ。……さすがに50歳以上は悩むかもしれないが。

男『そっちは平和ですか?』

 チャット相手は日本の関東プラントにいる女の子だ。関東は比較的安全とは言われているが、それでも毎日確認しておいて損はない。

女『もちろん、平和ですよ』

 と、彼女は答える。

男『それじゃあ、昨日は何を食べましたか?』

 チャットを始めて半年以上、彼女とチャットするようになって三カ月以上経つのにいまだに敬語なのは滑稽だが、慣れてしまったのだから仕方がない。

女『昨日は芋を食べました』

男『へー、良いですね。こっちでは芋は高級品です』

女『芋だからへーですか?(笑)』

男『え?』

女『な、なんでもないです(照)』


男「彼女が……おやじギャグ…?」


 衝撃だった。

腹減ってたら力出なさそうだけどそういうことではないのか?



少女「お母さん!!」

 
 関東プラントのコンテナの一つに怒号が響き渡った。


母親「あらら、引いちゃったかしら」


 画面を見てキーボードを叩いている中年女性は失敗失敗と頭を叩く。

 それを見てますます激昂する少女。


 ――しかし、彼女に母親を止めるすべはない。


母親「あら、大丈夫みたいよ。ギャップが可愛いですって」

少女「………」


 少女は少し頬を赤らめた。横たわった身体を丸めて照れを隠したいがそれはかなわなかった。


母親「………」


 母親はそんな少女の姿を見て、嬉しそうに優しい笑みをうかべた。

 一か月前、関東プラントを襲った強い地震。

 エルフのせいなのか、元々地震の多い場所だったせいかは分からないが、


 その際に起きた崩落により少女は身体を動かすことができなくなった。


少女「お母さん、会いたい……」


 少女は呟いた。目じりからこめかみ、こめかみから耳へと大量の涙が伝う。


少女「元気な姿で男さんに会いたいよぉ」


 こんな何もないプラントで我がまま一つ言わずに育った娘の唯一の願い。

 母親は自身の無力さに嘆くことしかできなかった。


 結局、今日も保留にされてしまった。

男「まぁ、いいか。新たな一面を見ることができたし」

 それにしても、関東ではもう芋を食うことしかできないのか。

 こっちの一般人は俺たちが勝ちえた島で育てた作物と肉を食べている。

 三か月前はおかずと米を毎日食べていた状況から見ても、関東プラントはかなり情勢が悪いようだ。

男「………」

 かといって、救助に向かうことはできないだろう。

 関西プラントと関東プラントは距離こそさほど離れていないにせよ、異世界人の集落がある。

 最後に偵察した時は、巨大な城――中世ヨーロッパに建てられるようなファンタジー世界のそれが半分以上出来上がっていた。

 地下の開拓が地盤の関係上これ以上進めないので、地上を通るしかない。


 どうあがいても、守ることで必死の関西プラントがランキング2位の俺をそんな無謀なことに使用してくれるはずがなかった。


男「……くそ」


 無力さに打ちひしがれていると、部屋にチャイムが鳴った。


男「こんな時間に誰だ?」


 友は能力の消費量から考えて遠征した日は朝まで起きない。

 とすると、女科学者か。出たくないな。

 しかし、何度も何度もチャイムは鳴らされる。


男「あーもう! なんでしょうか!」


 扉をあけるとそこには――、


姫「………」

男「……ひ、め?」


 ランキング一位エルフ討伐数1万以上、美しさと強さを兼ね備えた姫がそこにいた。


 

訂正 ランキング2位→3位

姫「貴様がランキング3位の男か?」

男「あ、はい。一応」


 なんだこの威圧感。まじで一国の姫じゃねーのか。

 見た目も黒髪を腰辺りまで伸ばし、背も高い。出るところは出てるし肌はつやつやして白い。

 そのくせ顔は欧米的な雰囲気もあって二重瞼に高めの鼻、長いまつ毛にぷるんとした唇。

 世の中に完璧な女性というものがあるのなら、今のところ俺は彼女を推すしかないようだ。


姫「命令が下った、読むのじゃ」


 そう言って、渡された紙には一文だけ。


『ランク1位姫とランク3位男は早急に子作りをするように』


 筆跡から言って女科学者なのは間違いない。間違いないのだが――。


男「……え?」

姫「そういうことじゃ。失礼するぞ」


 遠慮なく部屋へと入る姫。歩くたびに世界に良い香りを振りまいているのかこいつは。くんくん。


男「ちょ、ちょっと待てよ。そんな急に!?」

姫「急ではない」


 と、姫は真剣な表情で説明を始める。

 それは、ランキング2位のあの男の死についてからだった。



姫「ランク2位、いや元ランク2位雷雲については覚えておるか?」

男「……それは嫌みかよ」


 雷雲。

 元ランク2位にして姫に次ぐエルフ討伐記録を持つ男。

 見た目は屈強で岩石のような男。

 だが、その性格は柔和で気遣いの激しい苦労症だった。


姫「はて、どこに嫌みがあるのか」


 本当に分かってないようで俺はさらにいらついた。

 だから、怒鳴ってしまった。


男「俺があいつの代わりに討伐に出ていればあいつは死ななかったんだ!!」


 あの日、雷雲は体調不良を訴えていた。

 だが、雷雲の代わりなど誰も務まるはずがなく、科学者たちは迷った結果俺に打診した。

 その時、俺は5日連続で疲労困憊だった。

 それでも出れない訳じゃないので、あの雷雲が言うのだからと変わろうとはした。


姫「じゃが、変わらなかったのか?」

男「違う、変われなかったんだ」


 言葉のニュアンスは違っても結果は同じ。

 そんなことは分かってる。

 だが、俺にだって弁解の余地は欲しい。


男「あの時、俺が電話に出ていれば変わっていた。……変わっていたんだ」

姫「………」

突然ですがここで宣伝!!

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77 :ドライさん :2014/08/25(月) 20:37:22.87 ID:i3/HsLf8O



姫「まぁそんなことはどうでもいいのじゃが」

男「」

 と、姫は何の興味もなさげに話を再開した。

姫「要は雷雲という男がいて、そいつが死んだ。わしはそれを言いたかったのじゃ」

男「あ……そっすか」

 本当に心の底からどうでもよかったんだな。

 俺はもう逆に心が救われた気がして笑うしかなかった。

姫「その時、すでにこの計画は始まっていたのじゃ」

男「え?」

 まさか――、

姫「雷雲は貴様の代わりにわしと子作りするはずだったのじゃ」


 姫はさも当然かのように訳の分からないことを言った。


男「いや、待て。だって、それは……」

 動揺する俺をよそに、姫はこちらとの間合いを測ると――、

姫「さぁ、時間は待ってくれぬぞ」

 と、飛びついてきた。

 良いにおいと柔らかい感触と温かみに、俺は成す術もなくベッドへと倒れこんだ。


 女の子がいかに最高か知った初めての夜だった。


今日はここまでです!

いまさらですがエルフに支配された地球で、地下に追いやられた地球人たちが抗う壮大なファンタジーの一角に咲く小さな恋愛ssです。では。


タイトルから全く想像できない内容で笑った
世界観が面白いから期待してる、頑張って


 地下に逃げ込んだ人類にとって、人工太陽の光によって朝を知る。

 人工太陽と言っても、蛍光灯のような形をしており、人々はただの電気程度にしか思っていないが。


姫「………」


 科学者の部屋を訪れた姫の顔は暗い。

 全裸に白衣がスタンダードの科学者はもちろん部屋では全裸だ。姫にお茶を出すと、小さくため息を吐いて、


科学者「ランク一位のくせに男一人誘惑することもできなかったんだ」

姫「なっ/// そ、そんなことはっ!!」


 顔を真っ赤に染め上げて、姫は科学者に抗議する。


姫「わ、私だって乙女だ! じ、自分から誘惑など……」


 頑張った方だとは思う。

 だが、結果として子作り出来ていないのだから科学者の言い分は最もか。

 姫は大きく息を吐いた。そして――、


姫「だが、当初の目的は果たした」


 と、報告した。

男「………」

 ぼーっとする。

 夢のような時間。


友「おーい」

男「………」


 柔らかい肌。

 身体を支配するような甘い香り。

 潤んだ瞳、照れた表情、少し荒い息遣い。

 彼女の全てが、魅力的かつ魅惑的だった。


友「何があったんだ」


 友の目が棒のように細くなる。

 この表情の時は、俺の考えを見抜こうとしている時だ。そんな時の友に嘘は通じない。


男「実は――」


 仕方ない。友になら話しても大丈夫だろう。

 俺は説明を始める。もちろん主観的な説明だ。

 友の後ろに姫がいることにも気がつかずに。

男「昨日な、姫が来たんだよ」

友「姫ってお前のチャット相手か? 関東プラントから?」

男「ちげーよ。ランク一位の姫だよ」

友「……ランク一位の姫様がお前に何の用だよ」

姫「………」

男「いや、最初は俺もそう思ったんだが、上からの命令らしい」

友「どういうことだ?」

男「なんか、子供作ってその子供に能力が宿るかどうか試すんだって」

友「こづっ!?」

姫「………」

男「俺もその反応だった」

友「じゃ、じゃあしたのか!?」

男「お、落ち着けって」

友「ああ、すまん……」

男「もちろん俺だってそんな急に言われたって心の準備とかあるし断ったさ」

友「じゃあ――」

男「でも、押し倒された」

友「え」

姫(死にたい……///)

男「ベッドに倒れこんだらさ、姫の柔らかい体や綺麗な顔がすぐそばにあってさ……」

姫「//////」

友「……それで?」

男「めちゃくちゃ良いにおいもするし」

姫(何もつけてないけど///)

男「目もぱっちりで潤んでて可愛くてさ」

友「………」

姫(す、好きになったの?///)


男「……そしたら、思い出したんだ」


友「……そうか」

姫(何を!?)

男「だから改めて断った。すでにかなり幸せすぎて申し訳なかったけど」

友「ああ、偉いな」

男「でも、上の命令だからいつかはしないといけない」

友「………そうだな」

男「……ただ、一つだけこの計画を変更する方法があるらしい」

友「?」




男「俺がエルフを一万体殺してランク一位になること」



友「なっ」

男「いや、もちろん無謀だと言うことは分かってる」

友「そうは思わないけど……」

友(むしろそっちが本命だったんじゃ……)

男「でも、もしそうなったら……」

友「まさかっ」

男「ああ、“各プラント最強能力者は地球人類全ての財産である”」

友(つまり、プラント内のランク一位は世界中を飛び回る“仕事”が与えられる)

友「関東プラントにも行くこともある」

男「というより、ネットで調べた限り世界中で最も危険なのが関東プラントだ」

友「その救助隊になるにはランク一位になる必要がある……」

男「……どっちみち俺にはその道しかないようだ」

友「そうか……」

友「でも、もったいない気もするけどな」

男「何が?」

友「姫とエッチできないことだよ」

男「ぶっ」

姫「っ!?」

友「世界で最も美しいって言っても過言じゃないだろ」

男「そ、それはそうだけど……」

姫(そう思ってはくれていたのか……///)

友「身体もボンキュッボンだし、俺たちと同じように性欲も強いだろうから夜も激しそうだし」

男「夜も……」

姫(そ、想像するなぁあああ///)

友「どっちみち俺らが一般人と性行為することはできないんだし、姫と寝れば?」

姫「………」ドキドキドキ

男「………」

科学者「それで、フラれた、と」

姫「ふ、振られてなどいない!」

科学者「でも、関東プラントの子に心を捧げてるからそういうことができないんでしょ?」

姫「そう言っていたが……」

科学者「じゃあ振られたんじゃん」

姫「まだ勝負は分からぬ!!」

科学者(好きにはなったのか……)

姫「なんなんだあいつは。一晩一緒に寝た責任もとらず」ブツブツ

科学者(あーあ、こじらせちゃったかなぁ……)

姫(あいつが一万殺すなら私は3万殺してランク一位は守り抜いてやる!)


 エルフを一万体殺す。

 それは単純に100体殺してきた方法の100倍頑張ればいいという話ではなかった。


友「今日から俺がサポートに回るが、今までみたいに窒息死じゃ目標は到達できないぞ」


 基本的にサポートに徹していた俺がエルフを殺す機会がある時、その大体は窒息死させてきた。

 だが、それははっきり言って銃や剣で殺せば済む話であって、俺の能力で殺せた訳じゃないのだ。


友「俺があいつらを追いたてるから、お前がとどめを刺せ」

男「……分かった」


 とりあえず、やってみるしかない。


エルフ「………」


友(ちっ、青マントか……)


 中級魔術師である青マントのエルフが四人。

 青マントに毎回てこずるのは、彼らが探索魔法を使用できるからだ。


友(男、作戦変更だ。今回は今まで通り俺主体でや――)

エルフ「………」


 やばい。

 エルフたちはすでに探索魔法を使っている!

 友を見つめるエルフ達。

 それぞれのマントが風もないのに浮き上がる。


男(この勢い……上級魔法!?)


 魔法にもレベルがあり、レベルが高い魔法ほど威力も範囲も大きい。

 特に上級魔法は一帯を跡形もなく消し去ってしまうようなとてつもない威力がある。


男「友!!」

友「男!! 信じてるぞ!!」

男「!!」


 信じている。

 友は俺を信じている。

 それはおそらくだが、俺が友を助けられると信じているのではない。


 “この程度でてこずったりしない”と信じているのだ。


 つまり、友を助けるためにエルフを殺すのではなく、“エルフを殺した結果友が生きてた”という未来を残さなくてはならない。


男「俺に出来ることは……」


 考えろ。

 俺の能力は分子を操作すること。

 分子。それはこの世界を構成する全て。

 相手が動く前に範囲指定できれば一瞬で蒸発させることさえ可能。


男「これしかないか……」


 今まで限界だった範囲指定を“むりやり引きのばす”。

 両手を前に突き出し、対象をとらえる。


男「………」


 いや、違う。

 これじゃあ力の無駄遣いだし、仲間も死んでしまう。


男「範囲を指定するのではなく……対象を指定する?」


 マニュアル操作からオート操作へと変更させることができれば……。


男(人間とエルフとの違いは……耳か)


 耳の尖っている生物を自動的に対象に選択。

 ぴぴぴと音がして、エルフ四人がロックオンされる。……もちろんぴぴぴは嘘で演出だけど。


男(これなら相手が移動しても自動追尾される……)


 今まではサポート優先で相手をおびき寄せる“罠”に使っていたけど、これを武器と考えたらなるほど戦術が広がりそうだ。


男「……いち…に…さんっ!」


 ぼんっ、という音と共に四人のエルフが一瞬にして塵と化す。


友「おお……すげぇ」

男「これなら……いけるかも…」

いったんここまで! エルフがどういう意図をもって行動しているかはまだ分かりません!

ただ、人間を殺して喜ぶ種族なのは確かです。

では!


個人的には、設定というか男のネット相手についてちゃんと知りたい
母親が娘のためにネット相手のフリをしていたことがあるのかそれとも最初から母親がネット相手なのか
後者だと>>4でも思ったけど嫌すぎる……

>>41
俺も最初はそう思ってたわ。だから>>4の反応

>>40>>42、違います。そう思うように誘導しましたが、少女ちゃんの母です。

それでは続きー


 結局、自分がエルフと認識するもの――つまりとんがり耳だったら何でも範囲指定してしまうので、何百メートル離れていようが視界にとらえることさえできれば能力の発動が可能だった。

 結果、プラントへ帰還した時には大歓声と熱烈な歓迎が待ち受けていた。


科学者「いやーーーっ! まさかこれほどとはねぇ!」


 興奮しすぎたのだろうか最後の砦である白衣を放り投げて抱きついてきた。

 大きすぎず小さすぎない胸が、腕に当たる。

 女性の下半身がどうなっているのか興味あったが、今はなぜこのような状況になったのか確認しないと。


科学者「そんなの衛星をジャックしたに決まってるじゃん」


 その瞬間、ゴンという音とともに地面へと倒れこむ全裸。


疾風「ったく……アンタって奴は…」


 ランク2位の疾風。男みたいな名前だけど、見た目はショートカットでもすぐに美女だと分かるくらいオーラのある女性だ。

 元ランク3位で能力は風。毒薬との相性がよく、基地周辺の警備隊長をしている。


男「疾風さん、あの一体どういう……」

疾風「……衛星をジャックしたってことは、ネット通信が混乱したってことよ」

男(そうか、地上をエルフに占拠されている以上、土の下か空の上しか回線ひけないもんな……)

科学者「そ……それだけ重要だったのよ…」


男「……重要?」

科学者「ええ、今までのデータと私の勘から言って、男君が覚醒するのは今日に間違いなかったから」

男「……もしかして」

姫「よくやったな! 男!」

男「姫!!」

姫(良かったー/// 子作り計画が延期になりそう///)

科学者「今日でランク一位は男、あんたに決まりよ」

男「!!」

友(良かったな)

姫(……でも、少しだけ残念かも…って何言っとるんだ私は///)


科学者「あー姫、そんな残念な顔しなくてもあんたが子作りすることは継続するから」アハハ


姫「」

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