観測世界の艦娘達 (1000)

ガヤガヤ...

「そんでよー。あいつ失敗しやがってさ」

「ギャハハハ!ざまねぇな!」

「そんじゃあな!」

「おう!」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


ジャラッジャラッ

「……」コツコツ

「……この辺はなんつーか。うすぐれぇし気味悪りぃよな……」

「……」カチッ

「……ふー」

ジャキンッ...ジャキンッ...

「……あぁ?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408795039

「……今、あの影。動かなかったか?」

「……」

「……気のせい……だよな」コツコツ


ドクンッ


「さっさと帰って……酒でも呷るか」


ドクンッ


「……ふー」


ドクンッ


「……」ピタッ

「……」

ジャキンッ...ジャキンッ...

「あ、な……なんだ……」

ポロッ...

「……」ギョロッ

「ば、化け物……!?」

「……」ガバァッ!!

「う、うあああああ!?!?」

グジュッ


「あ、そういえば。あいつに借りたDVD返すの忘れてたな」

「今ならまだ追いつくか?」ダッ

「はっ……はっ……」タッタッタッ

「……」

「お、おーい!!ちょっと待ってくれ!!」

「……ぅ」フラッ

「……?」タッ...

「ゥ……ア……」

「……おい?どうした……?」

クルッ

「ア……ガ……」

「ひっ……お、おい……お前……!!」

「……グァァ!」ダッ

「な、なんなんだ!!なんなんだよ!!!」


「うわあああああ!!!!」

「……」コツコツ

(目撃情報があるのはこの辺りか)

(古いビルが建ち並び道幅はそれ程広くはない)

(路地裏が多くあまり綺麗ではないな)

(街灯も少ないせいか夜になれば薄暗く、路地裏はほぼ死角になる)

「……」コツコツ


ウアアアアア...


「……どうやら当たりを引いた様だな」ダッ


「やめろ!!やめてくれ!!」グッ

「シャアアアアア!!」ガチッ!!ガチッ!!

「……!」ダッ

(組み合っている男二人。一人は……まだ無事か)

(もう一人の方は……血走った目、顔中に浮かび上がる黒い血管)

(身体からはどす黒い血を流している)

(間違いない)


「深海棲艦化している」

チャキッ!!

「……」

パンッ!!パンッ!!

「グガッ……!」

ドシャッ

「無事か?」

「な、なんなんだよ。なんなんだこれよぉぉぉ!!!」ダッ

「おい!待て!」

「これじゃまるでゾンビ映画じゃねえか!!ふざけるな!!」タッタッタッ!!!

ガバァッ

グジュッ!!

「かはっ……!?」

「グジュッ……グジュッ……」

「……!!」

「……」コォォ...

「……本当の当たりを引いた……のか」

(深海棲艦。鋼鉄の様な装甲を纏った異形の化け物)

(並の武器で立ち向かえる様な相手ではないが……)

(俺の装備は……ベレッタM92F。コンバットナイフ)

(装填されている弾倉には13発。予備弾倉と合わせて27発)

「……いささか、分が悪いな」

パンッ!!パンッ!!

キンッキンッ

深海棲艦「……」

「……」

(やはり、装甲部分にダメージは皆無)

(人間からすれば戦車を相手に戦っているようなものだが……)

(体躯の小柄さにおおよそ深海生物を思わせる見た目から奴は恐らく……駆逐艦)

(あれで最弱の類に入るのだからこちらとしてはたまったものではないな)

深海棲艦「……」ジャキッ

「!!」ダッ

バララララ!!!

このSSはもし艦これの世界が現実にあったとしたら。という設定で書いています

時代背景に

電子世界の艦娘達
電子世界の艦娘達 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1393986664/)

を利用していますがこちらでも時代背景の説明を入れるつもりなので読まなくても大丈夫だと思います


元の艦これっぽさはほとんど消えると思いますがそれでもよければよろしくお願いします

すいません。今日はおやすみさせてください……

次は明後日になります

(機関砲掃射ッ……)

ザッ

「……」パンッパンッ

深海棲艦「……」

「悪いがまだ貴様の仲間になるつもりは無いぞ」ダッ

バララララ!!!

(だがこの銃撃、いつまでもかわし続ける事など……)

ドカッ

「ぐっ……!」

「ア……アガアアア!!」

(さっきの……!)

「……っ!!」ググッ

「アァ……」ガチンッ!!

「……喰われるつもりも……」ガシッ

「ないッ!!」ブンッ

ドサッ!!

パンッパンッパンッ

「……」

深海棲艦「……」カァァ

「しまった……」

「……」

深海棲艦「……」

ジャキンッ...ジャキンッ...

「……去って、いく……」

(いや、ここでみすみす逃せば更に被害者が……)

(……だが、今の武装で奴には)

「……」スッ

(とりあえず、連絡はしておいた方がいいだろう)

「……」

スッ

「電波障害……」

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今やインターネットの世界は広大だ。最初こそ小規模であったであろうそれは徐々に拡大していき、人間では抱えきれないほどに成長した

ある人はそれをもう一つの世界だと言った。人間が新たに世界を作り上げた、と


今から十数年前になる。とある施設でかたわの少女や孤児を使った実験が行われていた

つい数年前に日本でも導入された二足歩行人型戦車、そして艦娘技術

それの研究が行われていたのだ

だがその始まりは兵器運用の実験ではなかった

あまりにも広大になったもう一つの世界。電子世界に"生物"が生まれた事から始まる

様々な情報の切れ端から生まれたエラー。それが電子世界で生物として生息を始めた


ーーーーー深海棲艦だ


深海棲艦は人間に様々な影響を与えた。データの破壊、通信の妨害……

ファイアウォールやウイルス対策ソフトでもそれは駆逐出来なかった

様々な腕のあるハッカーもそれに挑んだが敵う事はなかった

「それなら人間が"直接"攻撃すればいい」

最後の手段として運用を開始した艦娘技術。だがそれは深海棲艦を駆逐出来る唯一の技術となった

情報の海を自在に移動し圧倒的火力で情報の海に住まう者を沈める。艦娘の名前はそこから来ている


だが何故それが少女である必要があったのか?

それは艤装と呼ばれる艦娘が使用する兵器と一番馴染んだのが少女だったからだ

男性でも大人の女性でもなく"少女"である必要があった

正確に言うなら十代後半から二十代前半の女性。それでなければ火力も速度も十分に出す事が出来なかった

当たり前だが異形の化け物との戦いに少女を駆り出すのだ。批判は当然避けられない

だからその研究施設を医療施設、孤児院に偽装して艦娘の運用、さらなる実験に利用していた


しかし、それも長くは続かなかった

艦娘達や施設関係者が一斉蜂起を起こしたのだ

それがきっかけで艦娘の存在や次世代兵器の情報が全世界中に流れ出した

内閣は当然解体を余儀無くされた。そして日本も各国から批判を浴びたが……

他の先進国でも同様の研究が行われていた事も露呈した

お仕事です

だがそれで全てが終わる事はなかった。むしろそれがきっかけになり、世界中にこの技術は浸透していくことになる

蜂起から数ヶ月が経ち、艦娘の利用も永久的に無くなる予定であったが

深海棲艦の攻撃の激化により再び艦娘は電子の海での死闘を余儀無くされる

それも健全な少女が、公式的にである

批判する者は後を絶たなかったがそれ以外に解決する方法は無かった

世界の情勢、安定とほんのわずかな少女の命。どちらが大切かと問われれば……答えは明白だった

さらに、次世代兵器の研究も続けて行われる事になった

災害や救助に役立つ、という建前で開発される人型戦車……

それは核抑止力をも消してしまう程の影響力を持つまさに最強の兵器であった

核をこの戦車一体で持ち歩く事が可能であり、どの様な場所からでも発射を可能とする

さらに迎撃でさえも迅速的かつ確実にこなすポテンシャルがその戦車にはあった

その結果、世界情勢は悪化を辿りついに……


ーーー第三次世界大戦が勃発したーーー


だがそれだけの理由ではやがてすぐに終結へと向かうだろう。そうでない理由がこの大戦にはあったのだ


深海棲艦の現実世界での出現ーーー


突如として現れた深海棲艦の群れはたちどころに小国を制圧した。それも世界のあちこちでである

どうして深海棲艦は現実に現れたのか?自分達の世界から自力で這い出てきたとでも言うのだろうか

彼らの身体はどうしたのだろうか?一説によれば虫の遺伝子を掛け合わせ組み合わせ、深海棲艦の情報を取り込み作り上げられたとも言われている

なんにせよ、何者かの手引きがあったはずだ。それも小規模でなく大規模な研究であったはずだ

疑念が疑念を呼び負の連鎖はたちどころに広がる。最早簡単に済む様な事態ではなかった


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ーーー

実際こういう兵器が開発されたとしたらこういう使い方になると思うんですよね

実際の戦車として運用するには武装が強くてもあまりにも装甲が貧弱だと思いますしいい的にもなる気がします。白兵戦なんか尚更ですね

それよりは輸送機としての運用か難所を行軍する場合に使用するか。または戦略的運用をするかのどれかになると思います。維持費とか個体の価格も馬鹿にならないでしょうし

それ以前に二足歩行にするなら、攻殻機動隊に出てくる様な六足にした方がまだ現実味はあるかも

ですけどこのSSでは深海棲艦に対抗する為の有効的な兵器として登場します。相手が民間の人間で編成された部隊や、練度の低い相手には牽制にも有効でしょうし、そういう点でも

少佐「これが例の事件からの背景だ。なおその蜂起に参加したと思われる艦娘及び関係者だが……」

男「……」

少佐「まず現実世界での主力に……加賀、赤城、扶桑、山城、伊19、伊58」

少佐「この先は自分で目を通しておいてくれ」

少佐「次に電子世界での主力だが……」

少佐「翔鶴、金剛、霧島、長門、木曾、電……」

少佐「これが蜂起の首謀者が統率していたと思われる艦隊編成だ」

少佐「他に支援艦隊として暁、雷、不知火、青葉、陸奥……」

男「何故……」

少佐「ん?」

男「何故、蜂起が起こったのでしょうか」

少佐「……彼女達からすれば。地獄そのものだっただろう」

少佐「不本意に連れて来られ命がけの戦いを強いられていたんだ」

男「……」

少佐「それと妙な事があってな」

男「妙な事……?」

少佐「蜂起の首謀者と翔鶴の行方だけがわからないんだよ」

男「……」

少佐「それならいいんだが……首謀者に関しては情報が一切無い」

少佐「綺麗さっぱり消されたみたいにな」

男「……当時公開されるとまずい事があった?」

少佐「そうかもしれないな」

少佐「まぁ、俺が知ってるのはこれくらいだ」

少佐「次に今回起きている事件についてだが……中尉。まずは君の報告から」

男「はい。感染者出現報告のある地区を巡回していた所、駆逐艦級と思われる深海棲艦を発見しました」

男「それがこの地点になります」

少佐「ふむ……」

男「感染者も二名、そちらは……当時の装備では射殺以外の対処方法が無かった為射殺」

男「深海棲艦の方は行方を眩ませました」

少佐「……人員を割くのはこちらとしても厳しいが、小隊以上中隊以下の規模で巡回任務を行うのが最善か」

少佐「何故防衛ラインの後方にあるこちらに深海棲艦が現れているのか……」

少佐「偶然防衛ラインを抜ける事が出来たかそれとも何者かの手引きか……」

男「国防軍の防衛ラインを偶然で抜けられるとは思えない……」

少佐「何者かの手引きだったとしても何故その様な事をするのか……」

少佐「餌でも使って引きずり出してやりたい所だが、今は被害を抑えるのが先決だ」

少佐「今まで通り巡回任務を頼む。深海棲艦を発見次第射殺出来るのなら射殺して欲しい」

男「はい……」

お仕事です。どの艦娘登場させようか結構悩んでます(電子世界で出てきた艦娘は当然年齢重ねてるので……)

最近忙しくてほとんど艦これ出来てないのが恨めしい……

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カチンッ...

男「……」パチンッ

男「……ふー」

男「……」

「なにを黄昏ている」

男「……武蔵か」

武蔵「随分、思い詰めた顔をしているじゃないか」

男「……すぅ」

ジジ...

男「はーっ……」

男「……深海棲艦が市内に現れた。丁度俺が巡回していた場所にな」

男「感染者を……二人殺した」

男「人を撃つのは……気持ちのいい物じゃない」

武蔵「……ふむ。だがそれとは違う事で思いつめている様に見えるがね。どうだい?」

男「……」

武蔵「私には……相談出来ない内容か?」

男「……すまない」

ポトッ

武蔵「……煙草を吸うのはいいが始末はどうにかしたらどうだ」

男「灰皿を忘れた」

武蔵「……」

サッ

男「……」スッ

武蔵「準備がいいだろう?」

男「いつもいつも助かっているよ」

武蔵「私は提督の姉の様なものだろう?」

男「姉……か。そうだな」

男「……確かに、姉の様な……存在だと思う」

武蔵「ところで、隣に座っても構わないか?」

男「勿論だ」


男「……」

武蔵「……」

男「……」カチンッ

武蔵「なぁ……提督よ」

男「ん……?」パチンッ

武蔵「何故ここからだと星空が見えない。何故だ……」

男「ふー……」

武蔵「雲一つ無い夜空だと言うのに、どうしてここからは見えない」

男「……武蔵は、星空が見たいのか?」

武蔵「そうだ。きっと美しいだろう」

男「俺は……星空は見たくない。ここでは……の話になるが」

武蔵「何故?」

男「星が見えるということは文明の明かりが消えたと言う事。交戦によって起こる炎も煙も無いと言う事」

男「深海棲艦に全て、飲み込まれたという事になる」

武蔵「……」

男「……」ジジ...

男「ふー……」

武蔵「……それほどにこの街が好きなのかい?」

男「……嫌いじゃないさ」

武蔵「……そもそも何故提督はこのかなみ市防衛機構に入ろうと?」

男「……この街に探し物があったから、か」

武蔵「探し物?」

男「探し物だ」

武蔵「……」

武蔵「大事な物?」

男「物……ではないが、大切ではある」

男「俺はただ、知りたいんだ」

武蔵「……」

男「そこにあった事を知りたい。記憶に留めておきたい」

男「それだけで、いい」

ここまでです

かなみ市防衛機構は有志が集まり結成された自警団だ

市内での深海棲艦関連の事件や凶悪犯罪が起きた場合に市の要請で動く

その他にも自分達で街を巡回したりと自主的に活動する

むしろ昔は後者が主であったが今では報酬をもらい任務に就く事もあり、PMCに近い存在となっていた


それの一員として活動を始めてもう4年は経つ。真実を知りたい、ただそれだけの為にここに来た

武蔵は俺がここに来てから俺の指導役として付き添ってくれている

武術、射撃、その他いろいろ……

確かに姉と言われれば姉の様な存在であるのかもしれない

武蔵「……どうした、顔なぞじろじろ見て」

男「いや……」

年齢は……俺よりも下だろう。だが明らかに俺よりタフでたくましい

そして俺の率いる艦隊の旗艦、つまるところ部隊のリーダーとしても共に戦ってくれている

すいません短いですけど。まだ出す艦娘とか展開に悩んでます

武蔵「そういえば、今度この艦隊に新しく艦娘が入隊するそうだ」

男「それは初耳だが……」

武蔵「あくまで噂だからな。だが人員不足のこの隊に艦娘が増えるのは自然だし信用性もある」

男「そうか……なら正式な話も近々あるだろうな」

武蔵「電子世界での戦闘も、実戦も苦労しているから助かる」

男「実戦はほぼ俺と武蔵の二人で行っているからな」

男「……」

武蔵「……」

キィィィン...

武蔵「……国防軍か」

男「あれは……九十九里の方へ向かうのか」

武蔵「先日の九十九里海戦もかなり苦戦したようじゃないか」


ここ数ヶ月、深海棲艦の攻撃は激化している

パプアニューギニアを実質制圧した深海棲艦だが、そこからオーストリアやインドネシア、そして日本への攻撃が続いている状態だ

沖縄、鹿児島に防衛線を敷いている国防軍であったが、つい先日九十九里沖合に深海棲艦の船団が現れ急襲を仕掛けてきた

少数精鋭の部隊が配備されてはいたものの深海棲艦の数は尋常では無く、海岸の防衛線を破り揚陸まで許す寸前まで陥ったそうだ

多少時間を稼いだお陰で国防軍の増援が到着し、更にミッドウェイからの米軍の援軍が後方から襲撃を掛けなんとか撃退に成功したらしい

男「……」

武蔵「……」

男「戦火になど飲まれたくはないな……」

武蔵「その為に私たちがいるのだろう?」

男「……」


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少しですが

男「……」

男「……」パチッ

ムクッ

男「……」ポリポリ


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ーー


男(今日は……どうするか……)

男「……」ガチャ

男(ここでは艦隊毎に寮での生活となっている)

男(各個人の部屋があり、中央には談話室兼執務室)

男(トイレと風呂は各部屋に付いているが、ダイニングは共用なので食事は全員で取る)

男(寮を出ると運動場に射撃場などがあり一通りの訓練は行える)

男(車両格納庫に兵器庫。そしてかなみ市防衛機構の本社ビルとも言える五階建ての建物)

男(そこそこに広い敷地ではあるがこれも地道に活動をしてきたからか)

男(今では国防軍一個大隊程の数の人間がここで生活、または働いている)


男「今日の朝食の当番は……」

あぁぁ……ダメだ。どうしても他の艦娘が決まらない……

という訳で男の艦隊に所属している艦娘を募集したいのですがお願いできないでしょうか?

巡洋艦他派生、空母、軽空母、戦艦他派生からお願いします。あと最近新しく増えた艦娘とかはわからないかもしれません

あ、あと電子世界の艦娘達の最終決戦で少佐側に付いた艦娘と死亡した艦娘は進行上使えないので……

龍鳳「はい。今日の当番は私です!」

男「今日は龍鳳か……楽しみだな」

(小柄なこの少女は龍鳳という。もちろんコードネームだが)

(必ずヘアバンドに桜をモチーフにしたなにかを身につけているのはこだわりがあるのだろうか)

男「さて、いい香りもしてきた所だが……皆を起こさなければな」


男「……」コンコン

「は、はい!」ガチャ

男「おはよう、古鷹」

古鷹「おはようございます提督!」

男(活発そうなこの少女は古鷹)

男(まず彼女に目をやるなら普通とは違う色をした左眼だろう)

男(網膜色素変黄症……という病気で彼女自身ほとんど左眼は見えていないらしい)

男「朝食がもうすぐ出来るようだ。他のみも呼んで来るから先に待っていてくれ」

古鷹「それなら私が……」

男「構わないさ。一人厄介者もいる事だ」


男「……」コンコン

「なんだ……君か」

男「おはよう。日向」

男(この女は日向。あまり明るい方では無く活発ではないが)

男(逆に言えば冷静沈着、慌てる事なく物事に対処出来る)

男(ちなみに何故女と言ったかというと……)

日向「……どうした?」

男「いや、なんでもない……もうすぐ朝食が出来る」

日向「わかった。すぐに行くよ」

男(年齢は聞いていないが……少なくとも少女には見えないからだ)

男(……)

「あれ?提督じゃん」

男「北上か。今起こそうとしていた所だ」

男(このどこぞの女子高生の様な話し方の少女は北上)

男(よく親友の『大井っち』という人物の話を聞かされるのだが)

男(一体どんな人物なのだろうか)

男「朝食の時間だ」

北上「今日の当番は誰なんですかー?」

男「今日は龍鳳だ」

北上「っしゃ、重雷装巡洋艦北上、出撃しまーす!」トテテ...

男「……さて」

「おはようございます」

男「む、神通か」

男(大人しそうなこの少女は神通)

男(性格も大人しい……というか少々気弱なのだろう)

男(だが電子世界での戦闘では人物が変わったかの様に勇猛果敢になる)

男「朝食の用意が出来そうだ」

神通「はい。今すぐに参ります」

男「……あとは」

神通「武蔵さんですか?」

男「あぁ。いつもの事で慣れたがな」

男「……」コンコン

男「……」

男「……」コンコン

男「……失礼する」ガチャ


武蔵「……」スピー

男「……相変わらずだらしのない寝相だな」

男(腹丸出しで寝てる"これ"は武蔵)

男(褐色肌で金髪。現実世界での戦闘は彼女と俺の二人をメインに行っている)

男(故にやはり身体つきもしっかりしているしその……)

男「……目の毒なのだがな」

男(しっかりとした性格なのだがどうも……所々男くさい)

男「起きろ、もう朝だ」

武蔵「あと少しだけ……寝かせてくれ……」モゾッ

男「では朝食は不要だな。存分に寝ているといい」

武蔵「なんだ、もう少し粘ってはくれないのだな」

男「しっかり起きているのは承知だからな」

武蔵「わかったわかった。すぐに行く」

男「全員揃っているからな」

武蔵「あぁ」ヒラヒラ

男(まぁ……気持ちもわからないではない)

男(秘書艦としていつも遅くまで仕事に付き合わせているからな)

男(一番苦労しているのは確かだろう)


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沢山ご意見ありがとうございました。このメンバーでお話を続けさせていただきます

ちなみに何故駆逐艦だけ弾いたかと言うと……それはまた後ほど

男「では、いただきます」

「「「いただきます!」」」

男(今日の朝食は白米に納豆。ほうれん草のおひたしに焼きジャケか)

古鷹「この鮭身がふんわりしていて美味しい……」

武蔵「塩加減も抜群だな。脂も乗っていて……おかわり」ドン

日向「……」モクモク

神通「おひたしも鮭に合わせて普通よりも薄味なんですね」

北上「いいねー。これなら毎日食べられるよー」

龍鳳「ありがとうございます!」

男「これは俺ももう少し腕を上げなくてはな」

龍鳳「提督のお料理も十分美味しいですよ」

男「いや、ここまで繊細な味付けは出来ないさ。バリエーションも少ないしな」

武蔵「朝食の後はどうする?」

男「ん、いつもの訓練だな。各自割り振られたメニューをこなす様に」

男「電子世界の警備は明日だ。今日は訓練が終われば自由に過ごせる」

男「食事の後は片付け。一時間後に寮の入り口に集合としよう」


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ジャキッ...スルスル...

男「……」

男(装備を一度確認しておくか……)

男(SCAR-L、米軍の主力小銃でありM4の後続)

男(M4の前身であるM16の欠点であったガス周りの問題を改善したのと同時に多少命中精度は落ちている)

男(5.56×45mm弾を使用し)

男(ストックの長さ調節は6段階。CQBにも対応出来る)

男(専用のグレネードランチャー、FN40GLを装備可能)

男(要は汎用性の高く信頼性のあるアサルトライフルだという事だな)

男(サブウェポンにはM1911)

男(1911年から今に至るまで使用され続けている。それだけ信頼性が高いという事か)

男(45ACP弾を使用。殺傷能力は極めて高い)

男(今の自動拳銃に採用されている機構の元となったものが利用されており、当時としては革新的なものだっただろう)

男(今ではカスタムパーツも多く出回っており、俺も自分に合わせて多少カスタムしてある)

男(それに加え、コンバットナイフ、グレネード……)

男(対深海棲艦装備にはジャベリンやスティンガーなどのミサイルを装備する事もあるが今回は不要だ)

男(ほぼ米軍が採用した武器ではあるが、同盟国である米国から武器が流れてくるのはごく当たり前の事だろう)

男「……さて、いくか」

よくわからない人は要は兵士みたいな装備してんだなって思ってくれれば大丈夫です

ところでSS書くときってその場の雰囲気に合わせた曲とか聞いて書くんですけど、テンション上がってくると自分で作ってみたくもなりますね

仕事中にふと思いついたフレーズとか口ずさんでみたり脳内で曲でっちあげてみたりとかしません?

男「皆揃ったか」

古鷹「はい!」

龍鳳「頑張ります!」

北上「今日のメニューは軽くしようよー……」

神通「日頃の鍛錬が……勝利に繋がるの」

日向「……」

武蔵「実戦にも出る私と提督はより怠る事は出来んな」

男「そういう事だな。仮にも戦闘を生業にしているのだから、鍛錬を怠れば即死にさえ繋がりかねん」

男「という訳だ。各自与えられたトレーニングをこなし、昼食は個別に取る様に」

男「解散」


武蔵「それではいつも通り、提督の訓練の指導を行わせてもらう」

男「よろしく頼む」

武蔵「まず言うと射撃からだ」

武蔵「どうしても重心を固定するのが苦手なようだな。連射していようが多少足場が不安定でも重心は一定を保たねばならん」

武蔵「しっかりと脇を閉め、肩の力を抜き、多少腰を落とす」

武蔵「確実に狙った部位に当てられる様に」

男「あぁ……」スッ

チャキッ

タタタンッタタタンッ!!

男「……」

武蔵「止まるな!撃ち続けろ!」

タタタンッタタタンッタタタンッ!!

男「……っ」タタタンッ!!

タンッ...

男「……」ジャキッ

ジャコン

武蔵「……だいぶマシにはなったか」

お仕事です

タタタンッタタタンッ...


男「……」ジャキッ

ポタッ

武蔵「……まぁ。それくらいでいいだろう」

武蔵「次は格闘の訓練を行うぞ。小銃の弾は抜いておけ」

男「いつも通りで構わないか?」

武蔵「小銃も拳銃も装備していて構わない。ナイフも抜刀しなければいいだろう」

男「……」

武蔵「私は……素手でいこう」

武蔵「ついてこい」ザッ...

男「……」

ザッザッザッ...

武蔵「この辺りでいいだろう」

武蔵「……こい、提督」スッ

男「……」スルッ

カシャン

武蔵「ほう……ナイフコンバットか」

男「……」スッ

男(さて……どう攻めるか)

男(先に言うと武蔵はかなり強い)

男(小銃を使った格闘を繰り出した所で掴まれて終わりだ)

男(ハンドガンは……弾が撃てない以上殴打以外の使い道はない)

男(必然的に素手かナイフを使ったスタイルになるが……)

武蔵「どうした?来ないのか」

男「……」

男(隙が見出せない……)

武蔵「ならば私からいくぞ!!」ダッ

男「……ッ!!」グッ

ビュッ!!!

男(右脚からのハイキック!!)

ガッ...

男「……ッ」

武蔵「腕が折れるぞ?」

男「タダで受けた訳じゃない!」

シュッ!!!

ガシッ

武蔵「右手に握ったナイフでの一撃……見えているぞ」

男「シッ!!」ブンッ!!!

男(本命は攻撃の隙を突いた脚払い!!)

武蔵「……」

バッ!!!

男「なっ……」

武蔵「まだまだ甘いぞ?」

男(跳んだ……ッ!?)

ガッ!!

男「かはっ……!!」

武蔵「首刈り……落とし!!」

ブンッ!!!!

ドシャアアア...!!

男「……」

武蔵「……」

男「けほっ……げほっ……!!」

武蔵「まだまだだな……」

男「実戦で……そんな攻撃をする敵がいるか……ッ!」

武蔵「居ないとは言い切れないだろう?」

男「く……げほっ……」

武蔵「私たちが相手にするのは人間だけでなく深海棲艦もだ。なにがあってもおかしくはない」

男「……とりあえず、今日は"普通"の組手で勘弁してもらえないだろうか」

武蔵「仕方ない……この技は別の機会に試すとしよう」

男「……」

CoD4~mw3までは良かったですねー。ソープが死んだ時は本気でショックでしたね……アドバンスドウォーフェアは面白いんでしょうかね?

ここまでです

今日は少し体調崩してるので帰りも厳しいかもしれません……

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神通「……ッ!」パンッパンッパンッ

チャリンチャリン...

日向「……」チャキッ

パンッパンッパンッ

神通「全弾命中……」

日向「いつまでも提督と武蔵に実戦を任せる訳にもいかないだろう」

日向「……指揮官を失うのはどんな状況であれ気持ちの良いものではないさ」

北上「はぁ……はぁ……」

タッタッタッ...

古鷹「っ……」

龍鳳「はぁ……っまだ」

タッタッタッ...

北上「は、走り込みなんてなんの意味があるのさぁー……っ」

古鷹「電子世界の戦いに少しでも耐えられる様に身体をっ……鍛えないと……!」

龍鳳「そうですねっ……!」

北上「ひぃ……少し休もうよぉー!」

少しですが

ザッザッザッ...

男「ん……」

ワーワー...

男「……走りながら会話とは随分余力があるようだな」

武蔵「……」

男「……そういえば。今日の夜間巡回はどうなっている?」

武蔵「今日は例の深海棲艦出現位置を重点的に巡回しよう」

男「それが妥当だな……援護は?」

武蔵「私服部隊を展開させるようだ」

男「そうか。わかった」

男「……」


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コツ...コツ...

男「……」

武蔵「……」

男「……通信する」

少佐『そこが深海棲艦の確認された位置か』

男「はい」

少佐『重点的に見て回る必要がありそうだ。路地裏、空いている店があれば聞き込みも頼む』

男「了解した。援護は?」

少佐『既に私服の人間を展開させている』

男「……」チラッ

「……」サッ

男(路地裏や後方に待機しているな)

少佐『他の小隊も各個巡回を行っている』

少佐『敵を発見した場合は援護に向かってくれ』


男「……」

武蔵「……」

男「夜になるとやはり……この辺りは特に死角が多い」

武蔵「電灯も……所々消えているな」

男「……」

武蔵「……」

コツコツ

男「……しかし。何故こんな所に」

武蔵「さぁな。奴らの考えている事は分からん」

男「……ただ迷い込んだかあるいは……」

男「……」

武蔵「考え事もいいが周りにも気を配るべきだな」

男「……敵か?」

武蔵「いや、もしもという事だってあるだろう?」

あげて書いてるとまぁこういう弊害もありますよね……

最近疲労感が全然拭えないというか……なにかこう癒しが欲しいです……

それと関係ないですけどたまにはゆるいSSも書きたいですね。こう……頭使わないで直感で書きたいです

あかん。身体めちゃくちゃだるいです

今日は申し訳ないのですがお休みさせて下さい。明日は休みなので休養して明後日の朝からまた書かせていただきます

最近毎日更新が出来てなくてほんと申し訳ないです

男「……とにかく、巡回を続けよう」

武蔵「巡回というよりは最早捜索の様な気がするがね」

男「……」


コツコツ...

男「……」

武蔵「……」

男(……やはり、薄暗くて危険だな)

男(歩行者が少ないのはいいが……一人で歩くには危なすぎる)

男「……」ザッ

武蔵「……どうした、急に立ち止まって?」

男「誰かに……見られている気がしてな」

武蔵「援護の部隊じゃないのか?」

男「……」

男「……」

コツコツ...

「……」

男(歩行者か……)

武蔵「……」

男「……」スッ

男「こちら捜索隊、応答を」

援護部隊『どうした。なにか見つけたか?』

男「歩行者が一人、念の為少し警護してもらいたい」

援護部隊『あぁ……今のサラリーマンか。わかった』

男「……」

武蔵「……」

男「……」

武蔵「このまま何事も無ければいいがな」

男「……そうだな」

少佐『中尉、聞こえるか』

男「はい」

少佐『近くで電波障害が起こっている。確認の為にそちらの援護部隊の一部を借りてもいいだろうか』

男「問題ありません。他の捜索隊は?」

少佐『その電波障害の中にいる。連絡が取れない』

少佐『それと捜索隊とはなんだ?巡回部隊の間違いか?』

男「あぁ……はい。そうです」

少佐『……まぁいいだろ。とにかくそのまま巡回を続けてくれ』

男「了解」

男「……聞こえてたな」

武蔵「電波障害か……」

男「……妙に引っかかるな」

武蔵「なにがだ?」

男「電波障害……そういえば」

男「俺が駆逐艦級と遭遇した時も電波障害だった」

武蔵「……」

男「……本部、応答を」

『ザザッ……ザザザ……』

男「……ッ」

武蔵「……」チャキッ

男「周辺の歩行者の避難を優先!急げ!」

男「……」チャキッ

男(正面に人影……)

少女「……」

男(パーカーを来た少女に……)

男性「……」

男(あれもサラリーマンか)

ダッ!!

男性「な、なんだ!?」

男「かなみ市防衛機構だ。すぐにこの周囲から避難して欲しい」

男「あちらに向かって急いでくれ!」

男性「あ、あぁ……」

武蔵「少女よ、話を聞いて欲しい」

少女「……」

武蔵「この辺りは少々危険なようでな、避難してもらいたいのだが」

少女「どうすればいいの?」

武蔵「あちらに向かってくれ。なるべく急いでな」

少女「わかった」

男「……」

武蔵「彼らは援護部隊に任せればいい。それで?」

男(援護部隊はかなり人数を割かれている。もし深海棲艦と遭遇しても……)

男「……このまま捜索を続ける」

男「壁際に寄って移動する」

武蔵「さて、どうなるかな」

男「……」

武蔵「肩に力が入っているぞ。もう少し落ち着け」

男「……あぁ」

武蔵「よし、それでいい。強張る必要は全くない」

武蔵「落ち着いて、普段通りに行動するんだ」


コツコツコツコツ...

男「……」チャキッ

武蔵「……」スッ

男「……」

武蔵「……」

男「……静かだな」

武蔵「……」

男「援護部隊は付いてきているのか?」チラッ

武蔵「誰もいない、な」

男「……無線も繋がらない。退却するか?」

武蔵「そうだな。その方がいいだろう」

武蔵「出来るのなら……な」チャキッ

「ア……アァ……」

ザッ...ザッ...

男「感染者……!!」

武蔵「それも随分いるな……30くらいか?」

男「それにあの服……」

武蔵「一般人も混ざってはいるが、大部分は……多分他の巡回部隊の人間だろうな」

男「……」スッ

カチンッ...シュボッ...

パチン

男「……ふー」

男「……突破するぞ」

武蔵「言われなくても分かってる」

お仕事です

スッ...ジャコン

男「……」タタタンッ!!タタタンッ!!

「グゴッ……」

武蔵「……」パンッ!!パンッ!!

男(武蔵が使っているのはP226か……)

男(P220の後続機種で装弾数は15発)

男(泥水に浸して尚機能する程に頑丈で信頼性がある)

男「というか何故ハンドガンなんだ……」タタタンッ!!タタタンッ!!

武蔵「持ってきた弾薬も少ないだろ、温存するべきだ」

男「そうは言うが……」

「ア……アガアアア!!!」

男「くっ……四方から囲まれては……」

武蔵「ふん……なら、とっておきを披露するか」

男「……とっておき?」

スッ

武蔵「……」ニィッ

カララララッカシャンッ

男「なっ……」

武蔵「シングルアクションアーミーだ」

ヒョイッ

男「っ……」

武蔵「すー……ふぅ……」

男(シングルアクションアーミーは西部開拓時代から使用されているリボルバーだ)

男(愛称はピースメーカー。今でも尚生産され続けている伝統ある銃だ)

男(装弾数は6発、.45弾を使用。M1911に更新されるまで米国陸軍で採用されていた)

男(西部劇には必ず登場する程に……と)

男「……まさか」

武蔵「そのまさかだ。まぁよく見ていろ」

スッ

武蔵「……フッ」

パンッパンッパンッパンッパンッパンッ!!

「グガッ!!」

「グォォ……」

武蔵「……」カララララッ

チャキッチャキッチャキッ...

男「全弾……命中か」

武蔵「まだまだ鈍ってはいないな」

男「……いや、鈍っているんじゃないか?」

「グゥゥ……」

スタッ...スタッ...

男(奴らは痛みを感じながらそれでも獲物に向かってくる)

男(殺し切らなければ無意味だ)

武蔵「ふん……」

男「チッ……」

タタタンッ!!タタタンッ!!

ここまでです

あ、それとやっとエンディングまでの選択肢……というか道筋も考えがまとまってきました

また途中で選択してもらう……かもしれないのでよろしくお願いします

艤装は装備してないです。あくまで"現実"世界なので……服装もごく一般的なものです。もちろん身体能力から言っても一般的なものになりますけど武蔵はそれでも強いですね

男(まずい……包囲が縮まっている)

タタタンッ!!タタタンッ!!

武蔵「今度は頭に一発ずつだ……」スッ

パンッパンッパンッパンッパンッパンッ!!

「グァァ……!」

ドサドサドサッ...

武蔵「……一発ハズレか」

男「リロード……」ジャキッ...ジャコンッ

男(それに先程から路地裏から奴らが増えて来ている……!)

「シャアアア!!!」ガバッ!!!

ガシッ

男「ぐっ……!」グッ

ブンッ!!!

ドシャアアアッ!!!

武蔵「ハッ!!」シュッ!!

ドゴォッ!!!

男「接近されている……ここままでは奴らに押しつぶされてしまうぞ!!」

武蔵「ふっ……面白い……!!潰せるものなら潰してみろ!!」

男「……」スッ

チャキッ

男「……ナイフ格闘は苦手なのだがな」

ジリ...ジリ...

男(ナイフでは射程も威力も足りない……)

男(軍刀か……あるいは……)

ピトッ

武蔵「これ以上は下がれないぞ」

男「……」

男「これだけの数……一体どうして……」

男(まるで待ち構えていた様だ……)

男(俺たちを殲滅する為に?だがその目的はなんだ)

男(俺たちを殲滅する事で得られる何か)

武蔵「覚悟を決めろ、提督!」

男「……」ギリッ


「うああああああ!!!」

バラララララララ!!!!!

男「なんだ!?」

武蔵「伏せろ!!」ガシッ

男「ぐぅっ!」

ドシャグシャグジュッ

バラララララララ!!!!!

男「……」チラッ


日向「うおおおおお!!!」バラララララララ!!!!!

男「日向!!!」

バラララララララカチンッ

日向「た、弾切れ!?」

武蔵「今だ!!」ダッ

男「……」スッ

「グォォ!!!」

武蔵「邪魔だッ!!」ゴッ!!

タッタッタッ!!!

男「日向!!どうしてここにいる!!」

日向「私だって、提督と戦いたいさ」ガチャガチャ

男「これは……」

男(ミニミ軽機関銃か……5.56×45mm弾を使用。日向が身体に巻きつけているのはM27弾帯。装弾数は200発か)

男(二脚を使用した伏射だった事であまりブレもなく奴らに当たっていた)

男「まだ弾はあるか」

日向「もう一つ……くすねてきたよ」ジャラッ

男「貸してくれ、お前にはこれを……」

日向「アサルトライフルか」ジャキッ

男「こいつらを殲滅していくぞ。これを街に放つ訳にはいかない」

武蔵「逃げるんじゃなかったのかい?」

男「……時と場合による」

男「日向!!俺の後方に着けてくれ。退路の確保と後方からの支援を」

日向「わかった」

男「武蔵は俺の横で、奴らを一掃する」

武蔵「いいだろう」

男「……攻撃開始」

短めにしたいですけどね。前のも短めで終わるとか言って結構長くなりましたし……

どうも簡潔に終わらせるのは苦手です。お仕事です

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ーーー


男「……」

少佐「……なるほど。わかった」

男「それで、他の巡回部隊は?」

少佐「君たち以外全滅だ。戦闘後回収した遺体で全員確認した」

男「……」

少佐「……一度、市庁に掛け合うべきだな」

男「このかなみ市以外でなにかそういった事件の報告は?」

少佐「いや、これほどまでの規模のものは確認されていない」

男「……なにか、狙いが?」

少佐「さぁな。詮索しようにも証拠が足りなすぎる」

少佐「想像だけならいくらでも膨らませる事は出来るがそれではキリがない」

男「……」

男(いや、これだけの事件だ。必ず何者かの意図があるに違いない……)

男(……まさか)

少佐「ん、どうかしたか?」

男「いえ……」

男(可能性としては十分あり得る)

男(だが……それを証明する証拠が無いのもまた……確かか)

男「……それでも、いずれは」

少佐「……なんだ?なにか思い当たる節でもあるのか?」

男「いえ……証拠が無ければただの妄想に過ぎません」

少佐「ふむ……そうだな。今はこの事件の解決と……奴らの目的を探らなければな」

男「はい」

少佐「では、もう夜も更けている。ゆっくり……」

プルルル...

少佐「こちらかなみ市防衛機構所属少佐」

少佐「……はい。わかりました」

ガチャ

少佐「すまないがもう少し、頑張ってはもらえないだろうか?」

少佐「現在国防軍かなみ市駐屯部隊のシステムが電子攻撃を受けているそうだ」

少佐「現在国防軍所属の艦娘部隊は別件で動いているらしい」

少佐「よって救援は困難。我々にお役が回ってきたという事だ」

男「艦隊出撃による敵深海棲艦の撃破」

少佐「そうだ。奴ら国防軍の電子攻撃やファイヤウォールを物ともせず攻撃を続けているらしい」

男「わかりました。ではすぐに出撃を」

少佐「頼んだ。第一進水室へ向かってくれ」

男「了解」

ガチャ

男「……」

バタン

武蔵「……休憩くらいくれてもいいとは思うがな」

男「そうも言ってはいられないだろう」

ここまでです

すいません今日もお休みで……

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男「作戦概要はこうだ」

男「まず目的だが、攻撃に晒されている国防軍の救援。深海棲艦を殲滅または撃退出来ればいい」

古鷹「でも、何故私たちなのでしょうか?」

男「国防軍の艦娘部隊は別作戦で出払っているらしい」

男「それに加え俺たちはここ所属の部隊の中では一番練度も高い」

男「成功させて恩を売りたいのだろう」

龍鳳「作戦決行はいつなのでしょうか」

男「直ぐにだ。叩き起こした様で申し訳ないが、よろしく頼む」

神通「一刻も早く救出しなければなりませんね……」

北上「ふあ……まー眠いけど……頑張りますか」

男「日向、やれるな」

日向「あぁ、問題ない」

武蔵「私の心配はどうなっている?」

男「ん、体調でも悪いのか」

武蔵「冗談だ」

短いですがお仕事です

男「それでは、第一進水室へ向かう。気を引き締めて、誰も欠ける事の無いように」


男「……」ピッピッピッ...

『暗証番号確認。第一進水室扉を解放します』

スー...

男(進水室とは。文字通り進水する為の部屋だ)

男(部屋の中心にある母体機器からベッドが七つ花開く様に設置されている)

男(一つは指揮官。残り六つは艦娘用だ)

男「全員位置へ。ヘッドギア装着」

男(ヘッドギアを装着する事で俺たちを電子世界。"電子の海"へ誘う)

男(理論やらはわからんが、肉体や精神などの自分を構成している情報を電子世界へ投影するらしい)

男(母体機器がその繋ぎ目の役目をしており、電子世界でダメージを受けるとその繋がりが削られていく)

男(もし仮に電子世界で死んだ場合。その繋がりは絶たれ現実世界での死を意味する)

男(ようは、非現実的な紛れもない現実だという事だな)

男「進水後すぐに俺の指示に従ってくれ」

カチャ

男「全員装着したな。少佐」

少佐『中尉、準備は整ったか?』

男「はい。いつでも向かえます」

少佐『よし。では早速カウントを始めさせてもらう』

男(今回は少佐がオペレートしてくれるが本来は部隊所属の者がする事になっている)

男(国防軍では妖精システムと呼ばれる武装やオペレートの自動、効率化ソフトを利用しているらしいが……)

男(高価で導入にも手間が掛かる。一般への使用も制限されている為防衛機構では採用していない)

また短いですが……

元々妖精システムは機密システムでしたが艦娘が一般的に認知された頃にその存在が公開されました

現在では軍や巨大企業(巨大PMC)などで使用されています。利用するのにも高度な技術力を要する為簡単には扱えず、悪用やシステムへの侵入を防ぐ為に制限がかけられている……という設定です

少佐『カウント開始。10、9、8、7……』

男(ベッドに横たわり目を閉じた)

少佐『6、5、4……』

男(カウントが終わった瞬間に意識が全て電子世界に引きずり込まれる)

少佐『3、2、1……ゼロ』

ゴォォォ...!!

男「……」

男(身体を地の底に引かれているような感覚……そのまま……意識も……)


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ーーー

男(一面の水、天候は良好。ただ普通の海と違う所は……)

武蔵「全員進水完了か」

日向「周囲に敵影は無し……」

男(全員が水面に立っている。という所だ)

男(まるで水面がコンクリートの様に硬く、しっかりと足をつけているのだと感じる)

男(そして水底には……)

北上「相変わらずすごい光景だよねこれって」

古鷹「なんだか……神秘的ですね」

男(ビルに道路、街灯に木々……都心にあるような光景が水の中に映されている)

男(そして一番異様なのが……)

龍鳳「艦載機、放ちますか?」

神通「まだ早いわ……」

男(各々先程とは違う……特徴的な服装に変化している)

男(まるで舞台衣装の様であったり、少々きわどいと思わせる様なものなど)

男(そして……)

男「全員、武装はどうだ」

日向「問題ない。いつでもいけるよ」

古鷹「私も問題ありません!」

男(砲に機銃……といった武装を身に纏っている。という所だ)

男(まさに人間兵器……そう言わざるを得ないだろう)

少佐『そこから東へ進んでくれ。国防軍の防衛基地が見えてくる』

男「全員移動を開始する。艦載機はもう少し接近してからだ」

ザァァ...

男(水面を滑る様に移動する。先頭に武蔵)

男(その後ろに龍鳳。左翼には日向、北上)

男(右翼には神通、古鷹を配置した)

男(ところで全員武装はしているが、俺は進水以前と変わらない姿でいる)

男(武器も現実世界で使っていたものと同じだ)

男(元々指揮官であるが故に戦う必要性が無いからだ。護身が出来ればそれでいい)

男(旗艦である武蔵についていく形で後方にいるが……)

男(立ち尽くしているだけで勝手に移動出来るのだから楽なものだ)

お仕事です

バララララ...

男(しばらく東に向かって進むと海上プラントの様な施設が遠くに見えた)

男(外周に沿って備え付けられたタレットから弾丸が忙しなく発砲されている)

ドゴォォォ...

男(だがそれも効いていない様だ。正面に深海棲艦の一団が隊列を成してプラントに砲撃を加えている)

男「ファイアウォールも破られ陥落寸前か」

男「龍鳳。艦載機を飛ばしてくれ」

男「奴らに気どられる前に先制するぞ!」

龍鳳「はい!」

男(艦娘にはそれぞれ艦種がありそれに寄って戦闘のスタイルも大きく変わってくる)

男(桜色の着物に似た服を纏う彼女は軽空母に属する)

男(故に彼女は艦上戦闘機を発射して戦うのだ)

龍鳳「行きます!」キリリ

男(空母系統の艦娘は弓などを装備している)

男(それを放つ事によって戦闘機を発進させる)

パシュッ!!


ゴゴゴゴゴ...

男(空に弓を向ける龍鳳の後方に黒い空間が現れる)

キィィィン...!!

ビュオッ!!!!

龍鳳「艦載機発艦成功。敵深海棲艦への攻撃を開始します!」

男(艦名などは大日本帝国軍の物であるが使う兵器兵装がその当時とは同じであるはずがない)

キィィィン...

男(龍鳳が使う戦闘機はF-14D。通称トムキャットだ)

男(艦上戦闘機の一種で米軍やイラン軍などで採用されていた)

男(F-4。ファントムの後続として採用された第四次ジェット戦闘機)

男(長距離ミサイル運用やRGM-84ハープーン。対艦ミサイルなどを運用。ドッグファイトに深海棲艦の攻撃二役をこなせる)

少佐『まずは、予定通りだな』

男「トムキャットでの攻撃成功後、砲撃で殲滅するつもりです」

少佐『うむ。なるべく施設への被害が少なくなるよう頼むぞ』

男「はい」

少佐『ん、敵も艦載機を発艦させた様だな』

男「予想よりも対応が早い……」

少佐『艦娘による攻撃は勿論想定済みなはずだからな』

少佐『確認したぞ。ファントムだ』

男「F-4か。機体性能ではこちらが有利か」

龍鳳「発艦直後を狙えるのでまず押し負ける事はないと思います」

男「それに当たり前だが誰も搭乗していない。融通もあまり効かないだろう」

男「まさに"ファントムライダー"か……」

武蔵「くだらん洒落を言う前に私達も前進した方がいいんじゃないか」

男「いや、もう少しだけ亡霊を墓に送り返してもらってからでもいいだろう」

男(奴らの戦闘機の特徴として、全てが黒塗りである事が上げられる)

男(夜間では捉えるのは難しいが昼間は目立つ)

男(みるみるうちに猫にハエが叩き落とされていく)

日向「出番がない様で残念だな」

男「いや、これから大いに戦ってもらうさ」

ここまでです

少佐『敵艦を識別した。どうやら空母が二隻、戦艦が二隻、軽重巡洋艦が五隻』

少佐『駆逐艦が十隻。と言った所か』

男「……」

男「日向、艦載機を発艦させてくれ」

日向「あぁ。航空戦艦の力、見せてやろう」

男(彼女は戦艦。通常では艦載機運用能力はほぼ無いがそれを付与したのが航空戦艦だ)

日向「少し離れてくれ」

男(日向に言われるがままに彼女と距離を取る)

ガッ

男(左手の盾の様な……甲板らしいが。それを前に突き出し、目を見開いた)

日向「艦載機、発艦」

ゴゴゴゴゴ...

男(水面が揺れ、彼女の周囲を取り囲む様に黒い空間が姿を現す)

ゴォォォ...!!!!

男(けたたましいエンジン音を鳴らしながら、海面に出来た穴から戦闘機が"垂直"に上昇していく)

男「ファントムは龍鳳に任せろ。戦艦、空母を狙って攻撃してくれ」

日向「うん。分かった」

キィィィン!!!!

男(垂直上昇を続けた戦闘機はそのまま前へ飛び出していく)

男(彼女の運用する艦載機はAV-8A ハリアー)

男(ホーカー・シドレー社開発のV/STOL機体。つまり通常の離着陸に加え、機体を水平に保ったままでの垂直離着陸が可能、という事だ)

男(その為エンジンを巨大化、多少機動性を失ってはいるが。狭い空母でもスペースを取らず)

男(例え甲板を損傷したとしても運用が可能な点でそれを凌駕している)

男「全艦!側面より敵深海棲艦を攻撃する」

男「対空砲を撃たせる余裕を与えるな」

武蔵「やっと、殴り合いか」グッ

神通「……」キュッ

古鷹「が、頑張ります……!」

北上「魚雷でパパーっとやっちゃうからねー?」

男「うむ。龍鳳はそのまま後方で戦闘機運用を続けてくれ。制空権は絶対に奴らには渡すな」

龍鳳「はい!」

男「日向も、航空攻撃をしながらの戦闘になるが。余裕はあるか?」

日向「航空戦も、海上戦も両役こなせての航空戦艦だからな」

男「よし。全艦、進軍開始」


「へぇ……あれがそうなんだ……」

「まずはお手並み拝見。って所かなー?」

「ふふ……」


キィィィン!!!!

バララララ!!!バララララ!!!

男「まずは斉射をお見舞いしてやろう。全艦構え」

ジャコン!!ジャコン!!ジャコン!!

男「撃て!」

ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ!!!!!!

ドゴォォォ...

男「重巡洋艦に命中したか……」

バララララ!!!!

北上「わわっ!撃ち返してきた!」

男「武蔵!日向!」

武蔵「わかっている。いくぜ!!」

日向「……」

男「他の艦も後に続け!」

武蔵「この戦艦はもらうぞ」グッ

ブンッ!!!

戦艦リ級「……!」


男(深海棲艦にも種類がある。そして完全に人ならざる姿をした様な者やあの戦艦リ級の様な艦娘に似た姿の者がいる)

男(四肢があり二足歩行であり、人の、女性の様な顔立ちはしているが。怪しく光る眼光はやはり人ではないのだと分からせてくれる)

男「さて……戦局はどう動くか……」

ゴッゴッゴッ!!!

武蔵「その程度かい?」

戦艦リ級「……」

ジャコン!!ドンッドンッドンッ!!!


武蔵「おっと!当たるわけにはいかないな!」

日向「武蔵!下がれ!」

武蔵「む……」

バッ!!!

武蔵「チッ……」


キィィィン...

バシュッバシュッ...

戦艦リ級「……」チラッ

戦艦リ級「……!!」

ドゴォォォッ!!!!

どうでもいいですけど。アニメやったらそのアニメの戦闘シーンと違いって出てきますよね……本当はこうだったのか!?みたいな

それはそれ、これはこれでやるつもりですし現代戦闘機出てる時点でアレですけど

あ……割と素で間違えてました。帰りに修正投げます

>>197 修正


男「他の艦も後に続け!」

武蔵「この戦艦はもらうぞ」グッ

ブンッ!!!

戦艦ル級「……!」


男(深海棲艦にも種類がある。そして完全に人ならざる姿をした様な者やあの戦艦リ級の様な艦娘に似た姿の者がいる)

男(四肢があり二足歩行であり、人の、女性の様な顔立ちはしているが。怪しく光る眼光はやはり人ではないのだと分からせてくれる)

男「さて……戦局はどう動くか……」

>>198 修正


ゴッゴッゴッ!!!

武蔵「その程度かい?」

戦艦ル級「……」

ジャコン!!ドンッドンッドンッ!!!


武蔵「おっと!当たるわけにはいかないな!」

日向「武蔵!下がれ!」

武蔵「む……」

バッ!!!

武蔵「チッ……」


キィィィン...

バシュッバシュッ...

戦艦ル級「……」チラッ

戦艦ル級「……!!」

ドゴォォォッ!!!!

日向「余計な事、しない方が良かった?」

武蔵「いや……」

武蔵「久々だから少し、昂ぶっているだけだ」グッ


古鷹「斉射!!」ドンッ!!!!

ドンッドンッドンッ!!!

古鷹「きゃっ!?」

ドゴォォォ!!!

北上「弾幕が激しすぎるっ!!」ドンッドンッドンッ

神通「……」キュッ

神通「提督に頂いたこの刀があれば……」シュッ

チャキッ

北上「ちょっと、どうする気ー!?」

神通「神通、参ります」

ドッパァァァンッ!!!!!


男「っ……!」

男(刀を抜き放った神通は踏み込むと、水柱を上げて敵の弾幕へ飛び込んで行った)

男「神通!焦るな!」


神通(大丈夫……私なら……!)

タタタタタッ!!!

バララララ!!!!

神通「……」ダッ

神通「一太刀……!」チャキッ

シュッ

駆逐イ級「……!?」ブシュウウウウウ!!!!!

神通「みんなを守る為になら、侍にだって、鬼神にでさえ、なってみせます……」

シュバッ!!ヒュッヒュッヒュッ!!


男(ギリギリの体勢で弾をかわしながら一刀で深海棲艦を斬り伏せていく)

男(肉薄する戦法は強いが命を最も危険に晒す戦法でもある)

古鷹「今が攻撃のチャンス!」ドンッドンッドンッ

北上「魚雷ありったけ撃ち込んであげなきゃね~」

ボシュッボシュッボシュッボシュッボシュッ

北上「まぁ、私って基本は雷撃だし~」

ドバァァァンッ!!!!!


キィィィン!!!!!

バララララ!!!!!

龍鳳「制空権確保しました!」

男「よし、兵装を空対空ミサイルから対艦ミサイルに変更。一気に叩き込むんだ」

日向「私も加わろう」

男「全艦一時後退!戦闘機団のハープーンで一掃する!!」

武蔵「ハッ!!」

ゴスッゴスッゴスッゴスッ!!!!

武蔵「呆気ないな」

ザァァ...


男「全機に隊列を組ませろ。一斉攻撃だ」

バララララ!!!!!

古鷹「対空砲を撃たせないで!」

神通「私たちも出来るだけ弾幕を張りましょう」


龍鳳「全機、攻撃目標を捉えて!」

日向「いくぞ……」

龍鳳、日向「攻撃!!」

バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ

男(空から大量のミサイルが深海棲艦の頭上へと降り注ぐ)

男(その光景はまるで流星群を見ているかのようでもあった)


ドンッドンッドンッドンッドンッ
ドンッドンッドンッドンッドンッ
ドゴォォォォォォ!!!!!


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

ここまでです

男「少佐」

少佐『よくやった。なんとか凌いだな……』

男「これより帰投を……」

少佐『いや、待ってくれ』

少佐『国防軍からの要請でな。施設の仮修復が終わるまでそこで駐留してもらいたいそうだ』

男「……どれくらいかかるのですか」

少佐『さぁ?だがそう長くは拘束させんよ』

男「……わかりました」

男「聞いたな?」

武蔵「まぁそうだろうな。今ここは丸裸の状態だ」

男「龍鳳、艦載機を飛ばして周囲を警戒してくれ」

龍鳳「はい」

男「小休止だ。だがいつでも戦闘態勢に入れる様にしておくんだぞ」


男「……」

サァァ...

男(ふんわりとした風が吹き、静かに水面が揺れている)

男(ここが……先ほどまでの戦場で、深海棲艦の住処になろうとしているとは)

男(到底……思えない)

男(思えば何故だ。何故深海棲艦と人間は敵対している?)

男(戦争にまで発展してしまった原因はどちらなんだ)

男「……」

武蔵「煙草は吸わないのかい?」

男「なるべく人前では吸わない様にしている」

武蔵「煙草にはストレスや緊張を解す効果もある。戦場に兵士が煙草を持っていくのはそういう側面もあるからだ」

武蔵「ま、大概は単に吸いたいからだろうが」

男「……」

スッ

男「……」カチンッシュボッ

パチン

男「……はぁー」

武蔵「私も一本貰おう」

カチンッシュボッ...

武蔵「ふー……」パチン

男「……」

男(まぁ……どちらに非があったにせよ。戦争に発展してしまった以上もう……どうしようもない)

男(戦争を起こした理由は覆せない。後には戻れない)

武蔵「……」チラッ

男「すー……」

武蔵「……」

武蔵「なにか、迷っている様な顔だな」

男「いや……」

武蔵「この間の探し物の事かい?」

男「……それとは違う」

男(いや、俺が知りたい事を知れればもしかしたら。発端がわかるかもしれないな)

男(……)

武蔵「どうしても言えない内容か?」

男「……言いふらしたくはない」

武蔵「……そうだな。悪かった」

男「いや、構わないさ……」

北上「ねぇ~提督~」

男「む、どうした北上」

北上「暇だよ~なんかしようよぉ~」グデー

男「暇なのはいい事だ。特に戦場ではな」

古鷹「それなら、なにかお話しませんか?」

古鷹「流石に……ボードゲームを始めたりしたら怒られそうですけど。お話くらいならいいですよね?」

男「それは構わないだろうが……何を話すんだ?」

男「それに……あまり皆が面白がる様な話は出来ないと思うが……」

神通「それなら大丈夫ですよ。私もあまり面白いお話は……」

日向「……」

龍鳳「……異常なし」

男「すー……」

北上「はいはいはい!!じゃあ提督好きな人はいないの~???」

男「ゴホッ!?!?」

武蔵「ほぅ……それは私としても気になるな」

龍鳳「……」ジー...

日向「艦載機が乱れているぞ」

龍鳳「ひゃいっ!?」

北上「んで、どうなのよ提督ー!」

男「い、いやまて少し落ち着け……」

古鷹「提督の好きな人……えへへ」

神通「て、提督が困って……」

北上「さぁさぁさぁ!このスーパー北上様にガツンと言っちゃいなよ!」

男「むぅ……」

武蔵「顔が赤くなってるぞ、うん?」

男「そういう話はその……苦手なのだが……」

古鷹「でも……気になりますっ!」

神通「あのー……」オロオロ

男「好きな人は……まだ居ない」

北上「ふむふむ、それじゃあ気になってる人は?」

龍鳳「……」ジー

日向「墜落するぞ?」

龍鳳「うひゃぁっ!?」

男「その……なんというか。色恋沙汰はよくわからん……」

武蔵「顔真っ赤にして言った所でなんの説得力もないぞ」

男「……むむむ」プスプス

北上「うーん……じゃあ仕方ない。他の質問にしよっか」

古鷹「ちょっと残念ですね」

男「質問というより詰問ではないのか……」

北上「そ~んな事はないよ。それじゃあ……好きなタイプは!」

神通「あの……そろそろ別の話題にした方が……」

北上「でも気になるでしょ?」

神通「そ、それは……その」

男「た、頼む。話題を変えてくれ……」

北上「むー……」

武蔵「珍しくたじろぐ姿も見れたしそろそろ勘弁してやるか?」

北上「わかった。それじゃあ他の話題にしようか」

男「……助かった」ボソ


神通「家族は何人いらっしゃるんですか?」

男「うむ。両親に……歳が少し離れた姉が一人だな」

古鷹「今はどうされてるんですか?」

男「両親は今も働きながら生活している」

神通「お姉さんはどうされているのですか?」

北上「歳が離れてるって事は……結婚はしてるんじゃない?」

男「姉はもうこの世にはいない」

武蔵「……」

神通「ごめん……なさい」

男「構わない。気にするな」

男「もう十年以上も前の話だ。今更どうとも思わんさ」

男「皆の両親は健在か?」

北上「そうだね~。うちはのんびり暮らしてるかな」

古鷹「たまに遊びに行ったりもしていますし」

男「仕送りもちゃんとしているだろうな?」

神通「はい。毎月必ず」

男「うむ。それがいい」

日向「……」

龍鳳「……異常なし」

お仕事です

少佐『中尉、たった今国防軍から連絡が入った』

男「はい」

少佐『防衛システム復旧の目処が立ったそうだ。全員帰投させてくれ』

男「了解、帰投します」

男「龍鳳、艦載機を収容してくれ。ご苦労だった」

龍鳳「わかりました」

男「全員退却ポイントまで移動するぞ」

武蔵「やっとか……」

北上「お腹空いたよー」

古鷹「早く戻ってシャワーを……」

神通「私は……少し稽古を……」

男「……」

男「ん……」チラッ

日向「どうした、提督」

男「いや……今、あそこから視線を感じたのだが……」

日向「……疲れているだけじゃないのか?」

男「……そうかもしれないな」

武蔵「……」


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ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

「へぇ……そういう事だったんだ……」

「厄介だなぁ……すぐにでも……」

「ふふ……」


男(国防軍の救援に向かったあの戦いから一週間が経った)

男(今も尚連日、深海棲艦によるものと思われる一般人の深海棲艦化が続いている)

男(メディアでは単なる行方不明事件として扱われているが……)

男(既に深海棲艦が街に現れていると噂が広まっている)

男(いくらサイレンサーを装備しているからと言って銃声を隠しきれる訳でもない)

日向「提督、少しいいか」

男「ん、どうした?」

日向「私も……現実世界での戦闘に参加させてはもらえないか?」

男「……」

日向「鍛錬が足りていないのはわかっている。二人に実力が追いつかないのもわかっている」

日向「……」

男「日向、人を殺せるか?」

男「自分の命に危機が迫った時、仲間の命が危機に晒された時」

男「例えそれが普通の人間であっても、殺せるか?」

日向「……」


『それが道を誤らぬ者に対してなら良かっただろうが』

『本当に恩義があるのなら!!その者の誤りを正してやるのが道理であるはずだ!!』

『ただみているだけついて行くだけ、そんなもの。ただの臆病風に吹かれただけのものだ』


日向「……あの頃の私は、自分でも驚くくらいに愚直だった」

男「……」

日向「場合による」

日向「もしそれが正しい行いであるなら。自分で間違っていないと思える判断だったなら」

日向「私は従うよ。躊躇いはしない」

日向「……」

ガチャ

武蔵「……どうした?」

男「……わかった。そこまで言うのなら」

男「次から一緒に来てもらおう」


男「という訳だ。次から日向にも付いてきてもらう」

武蔵「まぁ……いいだろう。無茶はするなよ」

日向「あぁ……わかってる」

男「それで……連日の事件の話だが……」

男「これは誰かの意志があって起きているものだと、予想する」

武蔵「……」

日向「……」

男「まず全ての案件で共通しているのは」

男「深夜である事」

男「目撃情報が少ない事」

男「数人の被害者を出して終わっている事」

男「この三点だ」

ここまでです

男「まず、何故深夜にだけ現れるのか」

男「奴ら深夜棲艦は昼間に行動出来ない訳じゃない」

男「昼だろうが夜だろうが構わず戦争は続いているからな」

男「次に目撃情報だが……」

男「いくら深夜と言えど目撃情報が少なすぎる」

男「広まるのが噂程度で助かってはいるが……」

男「そして、いつも被害者は数名。俺と武蔵が苦戦した時は例外として……」

男「大抵がそうだ。被害者は数名にとどまっている」

男「そして、重要な事が一つ」

男「俺が見たのは駆逐艦級の深海棲艦だ」

男「奴らに物事を計算して行動する程の知能は無い」

男「考えられるのは、深海棲艦側に加担している人間がいる」

男「または……知能の高い深海棲艦がかなみ市に潜伏している……」

男「少なくとも、空母、戦艦のそれ以外であると思う」

武蔵「だが目的はなんだ?一体なんの目的があって奴らは行動しているんだ?」

男「……ここからは俺の仮説になるが」

男「これはなにか大きな攻撃の陽動なのではないかと思う」

日向「大きな攻撃……?」

男「……」

武蔵「……」

男「……十数年前の、あの事件」

男「蜂起の首謀者である人間は、かなみ神社を拠点に当時攻撃をしていたと」

男「かなみ神社が目的ではないだろうかと考えている」

日向「だがあそこは機材や武器も調べた時にはほとんど無くなっていたらしいじゃないか」

日向「なにも無い所を調べたって仕方ないだろ」

男「奴らがそれを知らないか。それとも何かある事を掴んでいるのか」

男「だがおかしい部分もある」

武蔵「……」

男「おそらくあの蜂起では電子世界での戦闘もあったはずだ。インターネット上からの攻撃で施設情報が破壊されていた事は公表されている」

男「あの施設では大規模な戦闘が行われていた。進水する暇など無かっただろう」

男「ならば外部に逃走しかなみ市という離れた場所から抗戦していた首謀者が一番怪しい」

男「だがそこには、進水をする為の大規模な装置さえ無かった」

男「一晩であれが片付くか?まず無理だろう」

男「まだ何か残っているのではないだろうか。あそこには」

男「それに深海棲艦の現れるポイントはどれもそのかなみ神社から離れた場所にある」

男「陽動だとすれば大成功だろう?」

武蔵「……それで、どうする?」

日向「……」

武蔵「それを上に報告するか?ハッキリ言うがそう簡単に聞き入れるとは思えないがな」

お仕事です

>>239 修正


男「そして、重要な事が一つ」

男「俺が見たのは駆逐艦級の深海棲艦だ」

男「奴らに物事を計算して行動する程の知能は無い」

男「考えられるのは、深海棲艦側に加担している人間がいる」

男「または……知能の高い深海棲艦がかなみ市に潜伏している……」

男「少なくとも、空母、戦艦のそれ以上であると思う」

武蔵「だが目的はなんだ?一体なんの目的があって奴らは行動しているんだ?」

男「奴らにとって必要な情報があるのか……それとも。奴らにとって邪魔なものがあるのか……」

男「それはわからないが、本当だとすれば……」

男「なんにせよ、どうにかするしかあるまい」

武蔵「それが問題だと思うんだがな……」

日向「いっそ上層部を騙してなんとかするか」

男「……そうだな」

男「それなら、なんとかなるかもしれない」

武蔵「おいおい、流石にそれはタダじゃ済まないぜ……?」

男「防衛機構に損害を与えない様に俺たちがあそこへ近づく方法はある」

男「あの地域はかなみ市防衛機構が警備に当たっている」

男「私的に近づく事は基本的に無理だが……」

男「一時的に警備を交代出来ればいい」

武蔵「それはまた……どうやる?」

男「少佐に話を通せば……やってみるさ」


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ーーーーーー
ーーー

少佐「話とは?」

男「はい。現状俺たちの部隊は実戦に参加出来る者は二人です」

男「連日深海棲艦の被害が増える中これは少々由々しき事態かと」

少佐「ふむ……そうだな……」

男「それで、他の者にも現場を少し体験させてやり。訓練を行いたいのですが……」

少佐「構わない。好きにするといい」

男「はい。ですが、今受け持っている地域は一般人の深海棲艦感染の報告が上がっています」

男「いきなり危険地域での訓練は厳しいと判断し、数日の間だけ他の地域を当たりたいのですが……」

少佐「ふむ……」

男「……」

少佐「本当なら構わないと言ってやりたいが……戦力である君たちが前線から引くというのは……」

男「しかしこのままでは……」

少佐「ならば実戦経験のある者をそちらの人間と交換するというのはどうだ?」

男「それはお断りします」

少佐「……そう言うとは思っていたが」

少佐「少し考えさせてくれ。改めて答えを出そう」

男「はい。よろしくお願いします」

少佐「ちなみに……地区の希望はあるか?」

男「かなみ神社がいいかと」

男「神社の境内でなら訓練をしてもある程度迷惑にはならないでしょう」

男「それにあそこなら比較的安全と判断したので」

少佐「わかった。検討しよう」

男「ありがとうございます」

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すいません少し睡眠いただきました

ここまでです

男「さて……」

男(一応出来る事はこれくらいか……)

男(後は……)

カタカタ

男「ある程度……出来るうちでも調べておかなければな」

男(と言っても事件の詳細などは隠蔽されておりどこにも載っていないのは知っている)

男(深海棲艦の研究……)

カタン

男「……」

男(これは……鹵獲された深海棲艦の解体研究か……)

男(深海棲艦、駆逐イ級の報告……)

カチッ

男(本来駆逐艦クラスの深海棲艦に手足の様なものは無く、地上での活動は出来ないとされていたが)

男(それに代わるもの、又は手足が存在する個体が確認されている……)

男「……俺が見た深海棲艦にも脚の様なものがあったな……」

男(彼らの身体には、虫、魚、鳥、人間などに見られる特徴的な器官に似たものが確認されている)

男(電子世界で確認されている彼ら本来の姿に似せる為に様々な生物の遺伝子を取り込んで進化したものと思われる)

男(進化の速度も異様なまでに早く、これらはここ数年、または十数年のうちに行われたものだと推測している)

男(彼ら独自の力でここまでの進化を遂げたとは推測され難く、何者かの助力を得て進化したと思われる)

男(また、深海棲艦に襲われた人間の深海棲艦化について)

男(現段階の研究に寄れば、深海棲艦の体液には、特殊なDNAが存在し)

男(そのDNAを体内に取り込む事によりこの現象が起こるとされている)

男(人間の身体を構成するDNAの一部を破壊し侵入。遺伝子レベルでの再構築が行われる)

男(その結果、深海棲艦に襲われた人間は自我。脳細胞を破壊され、急激な身体の再構築に耐えきれず凶暴化、身体が豹変していくものと発表されている)

男「……」

男「つまり、奴らの体液を身体に入れた時点で。奴らに近づいて行く、という事か……」

男(という事は、あのまま放置していればいずれ深海棲艦と同じになるのか?)

男「ならば尚更無視出来んな……」

男(それに万が一アレがなにかの意思の下に動けるとしたら……)

男「……」

男「最悪の事態ではないのかこれは」

男(という事はだ、現状ワクチンの様なものかそのDNAを殺せるものが無ければどうにもならないという事ではないか)

男「……」

男(喰われた人間は……その場で処分する必要がある……)

男(そのデメリットは……誰も言わずとも分かるはずだ)

男「……」

男(なんとも言えない絶望感と、脱力感と)

男(先の事を考え、どうにもならないという思考が俺の中を駆け巡った)

男「……」ギリッ


男(だが、これらに対抗する兵器が無い訳ではない)

男「……」カタカタ

男(つい数年前に実戦配備され、第三次世界大戦の引き金にもなった次世代兵器)

カチッ

男(深海棲艦の情報や艦娘の技術を取り入れる事で完成した戦車)

男(六足歩行、蜘蛛型駆逐艦)

男(一番初めに完成を迎えた次世代戦車の一つ)

男(駆逐艦クラスであるが多彩な兵器を搭載出来、前線での戦闘に加え輸送、難所を行軍するのにも使える)

男(これは従来の戦車同様人間が乗り込み操作するようだ)

男(そして、四足歩行、無線操作により活動する)

男(通称『猟犬』狼型駆逐艦)

男(蜘蛛型に比べると搭載出来る兵器の量も少ないが無線で動く為人員的被害はまず無い)

男(更に蜘蛛型よりも機動力があり、コストもこちらの方が軽い)

男(そして、二足歩行。傀儡型軽巡洋艦)

男(人型戦車のうちの一つであり、これも狼型同様無線で操作するようだ)

男(体躯は狼型と比べても大きく、それよりも兵器を装備出来る)

男(四足では出来ない戦術もこれでならこなせるがコストは重い様だ)

男(それと、大蜘蛛型重巡洋艦)

男(蜘蛛型駆逐艦を巨大化させたものだと思えばいいか)

男(動きはさらに鈍くなったが、火力、積載量などが格段に大きくなっている)

男(そして、二足歩行。大戦の原因にもなった人型戦車)

男(虚構型戦艦)

男(傀儡型と比べさらに巨大であり、人間が搭乗し操縦を行う)

男(様々な兵装を装備し、近接武器や小型の核でさえ装備出来る)

男(機動力、火力、装甲どれを取っても現段階では最高峰とされているが……)

男(虚構型戦艦一番艦は現実には存在しない)

男(十数年前の蜂起事件がきっかけでその情報が発見されたが、何者かの手により情報の殆どが破壊されていたらしい)

男(虚構型戦艦二番艦から現実での完成を迎えているが)

男(どれも一番艦の劣化版にしかならなかったらしい)

男(劣化版と断言出来てしまう程に、情報の断片だけでも性能が良かったのだろう)

男(だがそんなもの現実に製造が可能なのだろうか)

男(他にも軽空母や空母、潜水艦などが存在するがもういいだろう)

男(かなみ市防衛機構にはそもそも配備されていない上、高価であるが故に配備は相当先になるはずだ)

男(結局、今の俺たちには遠距離から奴らを倒すという方法しか残されていない)

男(近づかれれば近づかれる程に危険性は増していく)

男(それと……与太話でしかないが)

男(人間の身体能力を上昇させる方法があるらしい)

男(それがあれば深海棲艦と対等に戦えるのだろうか……)

男「……いや、流石に非現実的すぎる」

お出かけついでに

男「あとは……これと言った情報は無い……か」

男(亡霊の具現化やら宇宙からの侵略者やら、未開の地の原生生物であるとか)

男「どこから来たにしろ脅威である事に違いはない」

男「……」


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ーーー

少佐「中尉、来てもらったのは他でもない君の頼みの話なんだが……」

男「はい」

少佐「君の実績などを見て今回は許可が降りた。かなみ神社への移動を許そう」

男「ありがとうございます」

少佐「明日の早朝より移動を開始してくれ」

男「わかりました」


武蔵「なんとかなったみたいだな」

男「あぁ……」

日向「かなみ神社とその周辺の地図をプリントしておいた」パサ

男「すまない」

日向「仮にここが攻撃目標だったとして。防衛出来るかどうかが問題だ」

男「一応近くには数個小隊が配置されているらしいが……」

武蔵「当てには出来んな」

日向「オートタレット神社境内に数機配置されているらしい」

男「では、タレットの射線内に入らず、尚且つ防衛に最適な配置を考えなければな」

日向「古鷹に神通、北上は」

男「補給に回ってもらう。戦闘を行うのはこの三人だ」

武蔵「まぁ……それが妥当だろうな。下手なパニックを起こされてもたまらないから奥に引っ込んでいて貰ってもいいが……」

男「きっとそれは彼女達が許さないだろう」

>>271 修正


男「一応近くには数個小隊が配置されているらしいが……」

武蔵「当てには出来んな」

日向「オートタレットが神社境内に数機配置されているらしい」

男「では、タレットの射線内に入らず、尚且つ防衛に最適な配置を考えなければな」

日向「古鷹に神通、北上は」

男「補給に回ってもらう。戦闘を行うのはこの三人だ」

武蔵「まぁ……それが妥当だろうな。下手なパニックを起こされてもたまらないから奥に引っ込んでいて貰ってもいいが……」

男「きっとそれは彼女達が許さないだろう」

日向「それと……日頃の訓練をみて思ったのだが」

日向「龍鳳は狙撃手に向いているんじゃないか?」

武蔵「確かに視力はかなり良いと思うが……」

男「……それも訓練次第だな。一応まともに行うつもりでいるから、それを見て考えるさ」

男「とりあえずこの配置を考えて、彼女達にも知らせよう」


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ーーー


武蔵「という訳だ。かなみ神社で実地訓練を行う」

古鷹「はい!頑張ります……!」

男「深海棲艦が攻撃してくるものと思って訓練する。皆、気を抜かないようにな」

神通「日頃の訓練の成果が試されますね……」

北上「パパッとやっちゃおパパッと!」

龍鳳「なんだか緊張しますね……」

男「そう硬くなる事はない。落ち着いてやれば何も問題はないさ」

男「それでは、明日早朝四時より移動を開始する。全員それまでに身支度を整えておくように」

男(こうして俺たちはかなみ神社へと赴く事となった)

男(あの事件の首謀者が潜んでいた場所……)

男(必ずなにかあるに違いない)


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ーーー

チュンチュン...

男「……」ザッ

男「ここがかなみ神社……」

男(落ち着いた面持ちの社、一応手入れはされているようだが……)

男(砂利が道に沢山散らばっているのを見るとあまり丁寧には扱われていないようだな)

男(道を挟んで立つ灯篭を背にそれぞれタレットが一機ずつ。正面の鳥居の向こうに向けられている)

男(これは深海棲艦の姿を認証して自動で攻撃を行うらしい)

男「まずは各々簡単に朝食を済ませてから、境内をマラソンする」

男「基本の練習を終えたら射撃訓練、昼の休憩を挟んで対深海棲艦を想定した実地訓練を行う」

男「俺は少しここを見て回る事にする。武蔵、頼んだぞ」

武蔵「任せておけ」

男(さて……どのようなものか……)

サーバー増強でしたっけ。頑丈になったようで良かった

折角ですしちょっとしたカラクリみたいなのも考えてみようかなと。お仕事です

男「……」ザッザッ...

男(特にこれと言っておかしなものがあるわけではないな……)

男「……」カチンッ...

パチン

男「……ふー」

男「……一つ一つ丁寧に見て回るか」


男(まずは入り口正面に構えてある鳥居だが……)

男(石造りで足の辺りには若干苔が生えているな……)

男(多少汚れているのは年季が入っているからなのだろう)


北上「……なにやってんのあれ?」

龍鳳「さぁ……」

神通「なにか特別な鳥居なのでしょうか……」

古鷹「そうなんですか?」

男(そして賽銭箱まで続く石畳)

男(所々ずれていたり端が欠けていたりするが……)

ザッザッ

男(タレットの裏側の灯篭)

男(見慣れた形の灯篭だ。帽子に正方形をくり抜いたもの。そして土台)

男(火を入れる代わりに球状の物が置かれているな)

ザッザッ

男(賽銭箱。これも年季が入っているようで、木の色もかなり黒くなっている)

男(……賽銭を投げ入れる場所になにか詰まっているな)

ザッザッ

男(社の正面だが……)

男(小さな階段があり、その先には障子がある)

男(頭上には縄の括り付けられた大きな鈴)

男「すー……ふぅ」

男「……裏手にも回ってみるか」


男(表同様砂利の敷き詰められた社の裏側だ)

男(社自体は骨組みや装飾が木、壁は土壁のようだ)

男(土壁の下の木の部分には丸い穴を掘った装飾がされている)

男(次は社の中を見てみるか)

ザッザッ

サー...

男(……なにもない)

男(恐らくここが調べられた時に全て持っていかれたのだろう)

男(畳だけの空間になっている)

ザッザッ

男(残るは休憩所の様な建物だが……)

男(あれは後から建てられたみたいだな……調べても無意味だろう)

男(……正直おかしな所は全く見当たらない)

武蔵「どうだい成果は?」

男「いや……まだだ」

日向「なにかあるとしたら……地下か」

男「そうだな……隠すならそれしかないだろう」

武蔵「その社の下の空間は見たのか?」

男「見たがなにも無い。野良猫はいたが……」

日向「なにかで地下への入り口が隠されている……」

男「見つけるしかないさ」

お仕事です

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ーーー


男「射撃!遅いぞ!」

タタタンッタタタンッ!!

神通「っ……!」

男「もっと重心を低くするんだ。反動で弾がばらけている」

神通「はい!」

北上「結構……難しいよね」タタタンッタタタンッ

男(北上はそこそこだな……)

男「目標の胸を狙って撃つんだ。まずは当たればそれでいい」

男「一撃で仕留めようとは思うな」

北上「魚雷なら楽なのになー……」

古鷹「……」ガチャガチャ

男「弾倉交換でもたついていたらその間に撃たれるぞ」

古鷹「は、はい!」

男「……」


武蔵「あの目標が視認出来るか?」

龍鳳「はい」

武蔵「ゆっくり、落ち着いて狙ってみろ」

龍鳳「……」チャキッ

タァンッ

龍鳳「……」

武蔵「スコープ無しでもここまでか……予想以上ではあるな」

武蔵「もう少し頑張れば狙撃手にもなれるかもしれないぞ」

龍鳳「頑張ります……!」

男「……そろそろ日が落ちる」

男「全員、今日の訓練はここまでだ。夕食を取り明日に備えて休養するといい」

古鷹「今日は私が料理当番ですね」

男「今日は古鷹か……楽しみだな」

男「俺の分は取っておいてくれ。後で食べるよ」

古鷹「ご一緒にはならないんですか?」

男「一応見張りが居なくてはならないだろう?」

日向「それなら私が……」

男「日向も疲れただろう、遠慮せずに休んでいるといい」

武蔵「……そうだな。では見張りは提督に任せよう」

日向「……!」

日向「……わかった。そういうならお言葉に甘えるとしよう」

男「うむ。ではゆっくりと休養を取るといい」スタスタ


男(さて……)

チャキッ

男(暗くはなったがフラッシュライトがある。とりあえずは大丈夫だろう)

男(どこから調べるか……)

ここまでです

男(その場所があるなら地下。地下への入り口がありそうなのは……)

男(物の下に隠すとしたら社が一番怪しいな)

男(社をコの字で囲む様に廊下が備え付けられている。縁の下を覗いてみたが特になにも無かった)

男(賽銭箱の下も怪しいがそこはなんとなくだが、既に調べられている様な気がする)

男(灯篭の下も怪しいがどうだろうか……鳥居の下はまず無いだろう)

男(物の下でなく地面に隠されているとしたら相当厄介だな)

男(探索範囲が広がりすぎて間に合わない気がする)

男(物の下にあると割り切って調べた方が良いな)


男(そう言えば……賽銭箱になにか引っかかっていたな)

コツコツ

男「……」カチッ

パッ

男(手を伸ばせば取れそうだな……)

スッ

男「……っ」グッ

男「もう……少し……」ググ...

男「……」

男(掴んだ)

ガチャガチャ

スッ

男「……」

眠気で首かっくんかっくんしててやばいっす

かなみ市自体は実際のモデルがしっかりあるので特定しやすいと思います

電子世界の艦娘達で出た研究所(鎮守府)は都内某所……という事になってます。どちらかと言うと神奈川寄りかなぁ……

お仕事です

男「鉄パイプ……」

男「何故こんなものが挟まっているんだ……?」

男(上の部分を破壊して賽銭を盗もうとでもしたのだろうか)

カラン...

男「……」

男「賽銭箱の中身も調べてみるか……」

男(賽銭箱は対外横部分に取手が付いていてそこが引き出しの様になっている)

男「鍵は……掛かっていないな」

ガララ...

男(中に入っていたのは賽銭ではなく空の薬莢だった)

男(錆びていて随分前のものなのだとわかった)

男「……当時のものがここに?」

男(いや、そんなはずはないか)

スッ

男「ここには……なにもなさそうだな」


男(灯篭だが見た目にはおかしな部分は無い)

男「……」グッ

男(押してみてもズレたりすることも無いな……)

男「どこかの一部が外れたりもするか?」

スッ

男(屋根は動かない。中心の球体は……)

ゴロッ

男(どうやらこれは取れるようだが下になにかある訳でもない)

男(反対側の灯篭も同じく球体が取れる以外にはなにも無かった)


男(一応鳥居も調べてみるか……)

男(石製の鳥居だ。所々切り傷の様なものが入っているな。それに銃痕も付いている)

男(何者かがここで戦闘をしたか……的にでもしたのか)

グッ

男(もちろんこれが動くはずもない)


男(一番怪しい社だな。縁の下には潜れそうだが、外から見た分にはなにも無い)

ザッザッ

男(裏側に回ってみた)

男(丸い形の窪みが等間隔で刻まれている)

男(何個か傷が着いていたり凹みがあったりしたが、古くからあるからこれだけ劣化しているのだろうか)

男(社の中には、なにもない)

男(小さな障子窓に畳が敷いてあるだけだ)

男(畳は……端に手を掛けて持ち上げられそうだがしっかりとはめ込まれていてそう簡単にはいかなそうだ)


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ーーーーーー
ーーー

ここまでです。それと一つお願いがあるのですが……

みなさんならどこをどう調べます?そんな難しいものでは無いんですけど自分で書いていると単調になりそうなので……

出来れば教えていただけると嬉しいです。次回はそれを参考に続けたいです

あ、もう一つ。男が調べた場所に重要なカラクリがあります

夜なので見落としてる可能性とかもありますね……

あいぽん6に携帯変えたんですけどBB2Cの送信ボタンが隠れて文字打てない……

打開策見つけるかアップデートするまで更新出来ないっす申し訳ありません……(´ ; ω ; `)

男「これだけ探してなにも無し……か」

男(いや……必ずなにかあるはずだ……)

男「……神社の中に無いならその外周か……?」

男(かなみ神社のすぐ脇には小さな川がある。だが反対脇は民家に店だ)

男(もし外にあるなら川沿いが怪しいが……)

男(下水道の入り口の様なものは無いし、川の中から入れるほど深い訳ではない)

男(それになにかあったとすれば既に見つかっているだろう)

男(巧妙に隠蔽されているからこそまだ見つかっていないのだから)

男「それなら……」

コンコン

男(やはり……石畳の下が怪しい。入り口があるなら空洞があるはずだ)

コンコン

男(音の変化でわかるはずだが……)

コンコン

男(……)

男(いや、これくらいの隠蔽では暴露るはずだ)

コンコン


男「やはり石畳のに音の変化は無い……」

男(わからない……一体……)

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ーーーーーー
ーーー

パンッ!!パンッ!!

男「……」チャキッ

男(残りの時間も少ない……早く見つけなければ……)

武蔵「提督よ」

男「む……」

武蔵「なにか進展は?」

男「……いや」

武蔵「そうか……」

日向「……多分だが」

日向「……当時は緊急事態だったんだろ?」

日向「手の込んだ入り方ではない……気がする」

男「……」

日向「合理的に考えるなら簡単な方法なはずじゃないか?」

男「……確かに」

男(手の込んだトリックだったとして、入るのにいちいちそれを戻すのは面倒極まりないはず)

男(実用的なものと考えるなら簡単な仕掛けになるか……)

日向「漫画に出てくる様なややこしいものじゃないと思う」

男「そうだな……」

男(こうなるなら首謀者や周囲の艦娘がどのような人物であったか聞いておくべきだったか)

北上「なにさ三人して~。面白い話でもしてるの?」

男「あぁ、新しい訓練内容についてな」

北上「げ……あんまり無茶な内容にはしないでよねー……」

武蔵「そう言われるとやりたくなるのが人間の性じゃないかい?」

日向「さて、それじゃあキツい内容にされる前に真面目に訓練をするとしようか」

男「そうした方が賢明だな」

北上「ちぇ……」

男「俺も射撃を続けるか……」パンッ!パンッ!

チャリン...

男「……」

男(……ん。そういえば……)

男(M1911は45ACP弾を使うが……)

男(賽銭箱で見つけた銃弾も形状や大きさが似ていたな……)

男「……また今夜調べてみるか」

男(もしかするとなにか見落としていた可能性もある。今度は注意して調べるとするか)


「……」

「……なにか、動き出そうとしてる」

「……」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

ガタッ...

男「……」

男(皆が寝静まった頃合いを見計らって表へと出た)

男(賽銭箱をまた開けて錆び付いた銃弾を調べるとやはり俺が使っている45ACP弾だった)

男「……」

男(別に特別な種類の銃弾ではない。誰が使ったまでは特定出来ない)

男「……成果にはならないな」スッ

カラン...

男「む……」

男(足元で乾いた音が鳴った。みると昨日の鉄パイプだった)

男(よく見るとこれも錆びているな。それに……先端が少し潰れている)


「……」


男「……」

男(まるでなにかを持ち上げた様な……)

男「……!!」

男(そこまで言って俺はなにを持ち上げたのか直感で理解した)

ありがとうございました。なんとか書き込みは出来ますね……アップデート早く来て欲しいのは変わらないですけど

ここまでです

男「持ち上げたとするなら……ここだろう」

男(先端の潰れた鉄パイプ。そして……)

ガッ

男(僅かに隙間の空いた畳)

ググッ

男「くっ……」

男(浮いた……やはりな)

ガシッ

男「後は手で持ち上げればいい」グッ

バタンッ!!

男「……」

男(床板が見えたが……特になにも……)

男(ん……なにか傷の様な物が……)

パッ

男(フラッシュライトで照らしてみるとその傷は彫られたものだと分かった)

男「これは……」

『平和の礎に』

男「……これは、どういう事だ?」

男(なにかのメッセージだろうか。なにか重要な意味が?)

日向「平和の礎に……か」

男「……!」

日向「すまない。目が覚めてしまってな」

男「そうか。しかしこれは?」

日向「……」

男「……どうした。なにか思いつめた様な顔だが」

日向「いや、なんでもないよ。それよりも他の場所を探すべきじゃないかな」

男「そう……だな。後めぼしいのは照らして……」

日向「屋根裏や縁の下は私も探してみたよ」

男「本当か」

日向「屋根裏に上がる方法が分からなくてね。探していたんだけど……」

日向「裏からよじ登って入ったら……これが」チャリ

男「これは……鍵か」

日向「保管が良かったのか場所が良かったのか。錆はほとんど出てないね」

男(日向が手渡してくれたのは小さな鍵だ。重みもある事から金属で出来ているのは分かるが確かに錆び付いてはいない)

男「……もう一度、探した場所を入念に調べている。手伝ってくれ」

日向「分かった」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

男「灯篭も鳥居も怪しくはない。石畳だが……」

男(賽銭箱の周囲だけ僅かに音色が違った。だが石畳はしっかりとはめ込まれていて動かす事は出来なかった)

男「次は……社の裏だな」

日向「って事は、あの模様が怪しいんじゃないかな」

男「そうだな……」

男(あの丸い模様を入念に調べていく)

男「……」

日向「……」

男「ん……ここになにか……」

男(穴の一つに奇妙な"穴"を見つけた)

男(球状の模様の中心にさらに奥まった穴が開いていた。そして模様の左側にも浅い穴……)

日向「……」

男「……」

日向「……もしかして」ダッ

男「……」

男(日向はなにか思いついた様で小走りに表へと消えていった)

男「怪しい……怪しいが……」

男(俺にはなんとも……)

日向「これ……もしかして丁度いい大きさなんじゃないか?」

男「それは……」

男(日向が持って来たのは灯篭にはめられていた球体だった)

男(よく見ると、小さな突起部がついていた)

日向「この球を、突起が中心に向く様にはめれば……」

ゴトッ...

男「……ぴったりだな」

日向「……」

男「……」

男「……なにも起きないな」ガタガタ

男(揺すってみたり、押しても回してもなにも起こらない)

ゴトッ

男「……そもそも。この突起と穴の大きさが合わな……」

男(そこまで言って俺はまた……思い出した)

チャコン

日向「ん……その銃の弾倉なんか抜いて……」

チャリン

男「45ACP弾。賽銭箱の中に錆びたものが落ちていた」

男「この穴……大きさも丁度良さそうじゃないか」

男(弾倉から抜いた弾を中心の穴にはめ込む……)スッ

カチャン...ガチャ

男「……聞いたか?」

日向「あぁ……!」

男(鍵を開ける様な音。僅かにだが聞こえた)

男「こいつが……鍵だったか」

日向「……それなら」

男(日向は球体を再び手に取ると今度は突起を左の浅い穴にはまる様にして……押し込んだ)

男「……」

日向「この球。鍵じゃなくて……」

男(そしてそのまま球体を、右に回す)

日向「ドアノブだと思うんだ」

カチャ

日向「っ……」

男(そのまま手前に引くと……)

ギギギ...

男「これは……!」

男(壁の板が……ドアの様に開いた。そしてその中には……)

『電源……作動。パスワードを入力して下さい』

男(青く光る小さな画面。マイクの様な入力装置に……)

男「パスワード……」

男(パスワード……そんなもの……)

男(首謀者達が考えそうな……なにか……)

男(おそらく音声入力でパスワードを入れるのだろう)

男「……」

日向「……平和の礎に」

男「日向?」

ピピッ

男(その音と同時に……隣の木製部分と、土壁が前に開く……)

男「……」

男(そこには……人一人が移動できる広さと。地下に続く階段が隠されていた)


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

お仕事です

男「……っ」

日向「随分……埃っぽいな……」

男(ここが……蜂起の主犯達が隠れていた場所……)


男(階段を降りるとリビングの様な場所に出た。埃を被ってはいるが確かにここには人がいたのだと分かった)

日向「扉が三つ。入ってみるか」

男「あぁ……それと口元は塞いでおけ」


男(リビングから続く部屋にはベッドルーム。シャワー、小さな執務室の様なものがあった。そして……)

男「これは……」

日向「進水室……だな」

男(古いタイプであろう。母機にベッドが敷き詰められている。そして電算機器……)

男(暗闇をフラッシュライトで照らしながら入念に調べていく)

男(……)

男「これは……」

男(床に転がる様に落ちていた武器)

男(UZIにAK-74……L96……)

男(スタングレネード……)

スッ

ガチャ...

男(流石に状態が悪いのか、引っかかりはあったが弾倉を抜き出す事が出来た)

男「……弾薬数が少ない」

男(恐らく、道中交戦したのだろう)

男(この部屋に交戦の後が無い以上そう想像は出来る)

日向「こっちにも扉がある」ガチャ...

男「……」コツコツ


日向「ここは……電算室か」

男(狭い部屋に電子機器が並べられている。一つの椅子を囲う様にコの字型に置かれていた)

男「オペレーターに……全ての計算は一人で行われた……?」

男(この規模だ。恐らくだが補助のシステムなどは最小限だっただろう)

男(しかしその全てをこなせる人間などいるのだろうか?)

男「いや……いたからこそ……対抗出来た」

男(当時最先端だったであろう技術と互角に渡り合ったのだ。そう考える他ない)

男「データなどは……引き出せないだろうか」

日向「いや……めぼしい外部メモリは全て外されてる」

男「そう残しておいてはくれない……か」


男(その後もあらかた探してはみたが、なにか重要そうな物は見つからなかった)

男(深海棲艦が狙うものはここにはない?)

男(あると勘違いしているのか?)

男(それとも……)

日向「おい、ちょっと来てくれ」

男「……」コツコツ


日向「これを……」

男(日向に呼ばれるままに執務室に向かう。すると日向がデスクの下を覗き込んでいた)

男「なにかあるのか」

日向「鍵の掛けられた……金庫の様だ」

男「引きずり出すぞ」

ズッ...ズッ...

男(出てきたのは重みのある。小さな箱だった)

男(確かに。中央に鍵穴がある辺り金庫の様だが……)

男「鍵……」ゴソゴソ

男(鍵なら……持っていた)

ガチャ...

男(重い音を立てて開く金庫。その中には……)

日向「書類……の様だが……」

男(黄ばんだ三枚の紙。それだけが金庫の中に仕舞われていた)

男(フラッシュライトを当てて、内容を伺う)

男「これは……!」

日向「……」


(やはり……俺はあそこに行かなければならないのか)

(いや、最初から。そのつもりだった)

(全ては。あの場所に……)


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

バララララ!!バララララ!!!!

男「なんだ!?」

男(一通り見終わった後、書類を懐に仕舞いこむと銃声の様なものが木霊した)

日向「表かっ!!」

タッタッタッ!!!!


武蔵「幸い、弾薬はたんまりある。タレットもあるから問題はない」バララララ!!!

北上「提督と日向はなにやってるのさ!」パンッパンッパンッ!!!

古鷹「あれって……人ですよね……」カタカタ

武蔵「人の皮を被った化け物だ。撃たなければ殺されるぞ」

神通「……」

男「なにがあった……!」

日向「あれ!」

男(真っ先に俺の目に飛び込んだのは銃を構え撃ち続ける皆。そして鳥居の先から迫る……)

男「感染者……!」

男(タレットが炎を上げ銃弾をばら撒く。だがそれに押されつつも徐々に感染者の群れはこちらへ近づいてくる)

武蔵「奇襲だ。タレットの発砲音で気がついたが……」

日向「ものすごい数だ……!」

古鷹「嫌……撃てないよ……!」

神通「……なら。私が古鷹さんの代わりに……撃ちます!」チャキッ

バララララ!!!バララララ!!!

男(くっ……まずいな……!)

男「全員体制を立て直し配置に着け!」

男「俺と武蔵は灯篭裏に!日向は賽銭箱裏!ミニミを固定し援護射撃!」

男「北上、神通、古鷹それに……龍鳳」

男(別棟の影からM14を構える龍鳳)

男「狙撃か……やれるか!」

龍鳳「はい!!」

北上「私だって……やる時はやるんだからね~!」

神通「私も……みんなを守ります!」

古鷹「……」カタカタ

男「北上、神通は援護射撃をしつつ弾薬の輸送を!古鷹」

古鷹「撃てません……だって。だってあれは……!」

「ヴァァ……!」

男「……後方に隠れていろ」

男「全員!援軍が来るまで耐えきるぞ!」

ここまでです

男「少佐、応答を提督……」

『ザザッ......ザザザ……』

男「……」スッ

バララララ!!!

男(しかし……本当にこれだけの数をどこに溜め込んでいたんだ……)

男(統率や戦闘能力はともかく。これを隠し通せた隠蔽工作能力は凄まじい)

バララララ...キュィィィン......

男「タレットの弾の補充を!」

>>346 修正


男「少佐、応答を……」

『ザザッ......ザザザ……』

男「……」スッ

バララララ!!!

男(しかし……本当にこれだけの数をどこに溜め込んでいたんだ……)

男(統率や戦闘能力はともかく。これを隠し通せた隠蔽工作能力は凄まじい)

バララララ...キュィィィン......

男「タレットの弾の補充を!」

武蔵「ダメだ。タレットの弾は装填されているだけだ」

男「なに……」

男「あまり良い状況ではないな……!」チャキッ

タタタンッ!!タタタンッ!!

日向「準備出来た。いつでも撃てるよ」

男「頼むぞ、日向!」

バララララ!!!

男「奴らを一歩も近づけるな」

パァンッ!!

龍鳳「……」チャキッ...

パァンッ!!

「ふふっ……」

「どうなるかなぁ?」


バララララ!!!バララララ!!!

男「流石に……敵の勢いも落ちてきたか」

北上「ほい!置いておくよ!」

男「そのまま頼むぞ」

神通「どうぞ……」

武蔵「うむ。助かる」

男「このまま持ちこたえれば……」

「ア゛ア゛ア゛!!」ガバッ

男「!?」

ドサッ

「カァァ……!!」ガチンッガチンッ

男「横から来ているぞ!!」ググッ

北上「……!」

北上「へっ!スーパー北上さまに任せな~!」チャキッ

パンッパンッパンッ

神通「一体どこから……」タタタンッタタタンッ

男「ぐっ……いい加減退いてもらおうか!」ドカッ

タタタンッ!!!

男「……」

古鷹「……」

男「っ……今ので前方が押されているか……!」

武蔵「数が多いというのも厄介だな」

お仕事です

男(しかしこれだけの数……やはり奴らはここを狙いに?)

武蔵「どうやら横からの敵は渡河してこちらに進入してきているのと」

武蔵「民家を突き破っているようだ」

男「被害は……」

武蔵「言うな。今はこの状況を打破するだけだ!」タタタンッタタタンッ!!!


(……)

バサッ

男「攻勢を弱めるな。射撃を続けろ」

北上「あいつら、撃たれてるのに普通に立ってくるけどー!?」

男「一撃で仕留めなければ攻撃の意味はない」

男「だが頭部を撃ち抜いて一撃で倒せとも言わない。とにかく奴らを撃て!」

神通「それだけの腕がまだ無いという事ですね……ッ!!」ギリッ

日向「弾倉を交換する」ジャコンッ

男「最初から完璧にこなせる者などそうそういないさ」タタタンッタタタンッ


龍鳳「……」

龍鳳「狙い澄まして……撃つ!」パァンッ!!!

グジュッ...

龍鳳「私だって。戦えますよ」チャキッ

男「……」

男「よし。そのまま攻撃を続けるぞ」


古鷹「私は……私は……!」

流石に終電はキツイっす(白目

ここまでです

男「射撃続けろ!」

バララララ!!!

日向「弾倉交換……」ピタッ

男「どうした日向!」タタタンッ

日向「変えの弾倉がもう無い……」

男「弾帯に弾込めして使うしかないな……」

日向「やってみる」

北上「こっちくんなー!!」パンッパンッパンッ!!

「グァァ!!」ガバッ

パァンッ!!

北上「た、助かった……」

神通「敵が多すぎる……」

神通「……」ポイッ

カシャンッ

スッ

神通「……!」

武蔵「あいつ……居合いで戦うつもりか……!?」

男「なにっ……!」


神通「私はここに来た時に神通の名前を頂きました」

神通「最後は仲間の為に囮となり、探照灯で照らし、船体が大破しても攻撃を続けたそうです」

パッ

神通「……」グッ

キュッ

チャキッ

神通「提督、私に任せて下さい」

男「神通!!まだ死に急ぐ時ではない!!」

神通「死に急ぐつもりはありません。ただ……」

神通「この化け物を屠るだけです」バッ!!

男「違う……!!」

男(接近戦に持ち込んではまずい!!)

男「龍鳳!武蔵!神通の援護に回ってくれ」

男「北上と日向と俺で他を食い止める」

武蔵「援護もなにも彼女から接近戦に持ち込んでいてはな……」

武蔵「まぁいい。久しぶりに面白くなって来たぞ……!!」

お仕事です

神通「疾ッ!!」シュッ!!!

ザバァッ!!!

「ゴフッ……ゴボ……」

男(一瞬の居合いで感染者の首を刎ね落とした)

神通「単調な動きであれば回避も一撃も容易です!!」ダッ

ズシュッ!!ドッ...ズブッ!!!

男(まるで剣舞を見ているかの様だ。一撃の元感染者を屠っていく)

男(血飛沫が花の様に開き神通の周囲を彩っていく)

男「まさに鬼神……だな」

男(銃撃はまだまだ使えるものではないが、剣の腕は圧倒的だ)

男(しかし敵の湧きが収まらない。やはり……)

男(近隣の住人を食らっている……!!)

男「防衛機構の兵士はどうしているんだ……」

男(それ以前にこれだけの戦闘だ。国防軍が既に動いていてもおかしくはない)


武蔵「まさかこの程度とは言うまい?」タタタンッ!!!

「ゴキュッ……」

龍鳳「……」パァンッ

ジャコンッ

龍鳳「……」

男「……ッ」タタタンッタタタンッ

カチッ

男「……弾切れか」

男「予備の弾薬も……ない」

スルッ

男「あとはこいつだけ……」チャキッ

パンッパンッパンッ!!!

北上「こっちも弾がやばいって!」

日向「弾帯に込める弾薬もこれで最後だ……」

男「チッ……」

男(これほど長期戦になるとは思わなかった)

男(采配を誤ったか……)

タタタンッタタタンッタタタンッ!!!

男「む……!誰かまだ弾を保持しているのか!」


古鷹「……」

チャリンチャリン...


男「……」

古鷹「……私はまだ、撃てます」

男「……やれるのか」

古鷹「……やってみせます」

チャキッ

タタタンッタタタンッタタタンッ!!!

男(だが……まだまだ射撃のブレが激しい)

男(ほとんど掠めるだけで当たっていない……!)

男「……」

男(それでも……今はあの弾を奪う訳にはいかない)

古鷹「私だって……撃てるんです!」タタタンッタタタンッ!!!

男(さて……この状況。どう打破する)

「……」タタタタッ

シュッ

ドスッドスッドスッ


男「……」パンッパンッパンッ


チャキッ

シュッ!!!

ドシュッ!!!

「……」

男「……」

男(前方からの湧きが緩くなった)

男「前進するぞ!ここから撤退する!」

男「武蔵、神通を後方に。俺が先頭に立つ」

男「全員動け!!」


神通「後方からの敵は任せて下さい」

武蔵「撤退戦か……まぁ。ここに籠城するよりは余程いい」

北上「頑張ったね」

古鷹「私は……」

日向「精密な狙撃、素晴らしいものだった」

龍鳳「ありがとうございます!」

男(鳥居を潜り、階段を降りたら左手へ向かえば……)バッ

男「な……」

男(角を曲がり見たのは。倒した覚えのない感染者の屍体だった)

男(何故すぐに屍体だと分かったのか。それは……)

男「頭部に刺さっているのは……ナイフの刃か……」

男(柄の無いナイフが感染者の頭部に突き刺さっていたのだ)

男「誰だかは分からんが……感謝しておこう」

男「全員このまま進む……」

バララララ...

男「……今度はなんだ」

龍鳳「あ、あれ!空に赤い光が!」

男(空を見上げると闇の中に赤い光点が点滅しているのが見えた)

武蔵「ヘリか!今頃お出ましとは……」

バララララ

「いけいけいけ!!」

男(ヘリ……暗くてよく見えないがあれはV-22オスプレイ)

男(国防軍のヘリだ。近くの空中で止まったかと思うと垂らされたロープから兵士が降りてくる)

タタタンッタタタンッタタタンッ!!!

「かなみ市防衛機構の方々ですね」

男「あぁ。防衛機構所属、中尉だ」

男「残弾も残り少なく戦闘を行う余力はない」

「はい。誘導しますのでこちらへ」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


男(その後事態は収束したが死傷者は百人近いものとなった)

男(流石に隠蔽工作も難しい状況ではあったが、政府はこれを敵対国のテロリストの仕業であると発表)

男(まぁ、妥当な言い訳ではあると思うが)

男(これにより政府の信頼が落ちた事は明白であり。軍備の増強や一層の深海棲艦に対する対策を余儀なくされただろう)

ここまでです

少佐「……」

男「以上が報告です」

少佐「ふむ……それだけの感染者が……」

少佐「……奴らが何故ここを狙うかはわからないが」

少佐「これは最早戦争だ」

男「……」

少佐「各国、いや。日本国もだが」

少佐「異形の勢力を認めたく無い様だが……そうも言っている場合ではないだろう」

少佐「我々もなんとか対策を練らねばならない」

少佐「……と。その前に」

少佐「中尉。よく死線を乗り越え誰一人失う事無く帰還した」

男「はい」

少佐「しばらく休暇を与えよう。想像を絶する戦闘であった事は私も承知している」

少佐「戦いの疲れを癒し、次に備える様に」

男「ありがとうございます」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー


男「皆、よく頑張った。誰も傷を負った者が出ず良かった」

神通「あれが……提督や武蔵さんが戦っていた相手だったんですね……」

北上「あんまり気分が良くなる相手ではないよね」

龍鳳「はい……」

男「深海棲艦に汚染され人で無くなった存在。それがアレだ」

男「奴らに傷を負わされ体内にその分泌液が混じる事でああなる。神通、正直かなり焦りを感じたぞ」

神通「申し訳ありません……」

男「次は……頼む」

古鷹「あ、あの!」

男「どうした?」

古鷹「本当に……ごめんなさい。私……」

男「……普通の人間であれば当然の反応だ。慣れるしかない」

男「俺も最初は奴ら感染者を手に掛けるのは抵抗があった。だが……」

男「やらなければ殺られる。だからやるんだ」

古鷹「……」

日向「……」

武蔵「……」

男「だが全員成長はよく見られた。足りない部分は多いがな」

男「苦手部分、訓練の足りない部分を補える様に訓練内容を考えるとしよう」

男「少佐からしばらくの休暇をいただいている。今日はもう少ないが……明日明後日は各自自由に過ごすといい」

男「それでは。一時解散」

男「……」コツコツ

スッ

カチッ

武蔵「……」

男「ん……」

男「すぅ……はー」

日向「他のみんなは部屋に戻ったよ」

男「そうか……」

武蔵「あのナイフ。どこかで見た事がある」

男「……あの感染者の頭部に刺さっていたものか」

武蔵「刃だけが残っていた。柄と刃が分離するもの……そう多くはないだろう」

お仕事です

男「……スペツナズナイフか」

男(スペツナズとはソ連の特殊部隊の名前だ)

男(そのスペツナズが使っていた事からスペツナズナイフと呼ばれている)

男(ロシア語では弾道ナイフとも呼ばれる)

男(グリップ内部に仕込まれたバネの力で刃を飛ばす。5メートル程の射程を持っていたらしいが)

男(そもそもスペツナズの存在自体が疑問視されている以上この武器も架空の存在である可能性はある)

男「だが仮にスペツナズナイフだったとして。使用者はロシア所属か?」

日向「ロシアは……一応敵国だからな……」

男(同盟の関係上ロシアとは敵対してはいるが、実際は中立程度の関係である)

男「まぁ……なんにせよあの状況から脱する事が出来たのもあのナイフ攻撃の影響は大きいとは思う」

武蔵「そうだな……さて。それもいいが……」

武蔵「成果は上がっているのか?」

日向「……」

男「……数枚だが資料を見つけた」スッ

武蔵「……随分黄ばんでいるな」

武蔵「これは……どこかの施設の見取り図か」

武蔵「大規模だな……」

武蔵「もう一つは……」

武蔵「……これは」

男「……」

日向「……」

『深海棲艦を利用した兵器の運用、活用について』

武蔵「……」

『深海棲艦の攻撃能力、装甲を流用した次世代戦車の開発』

『現段階ではパワードスーツ、又は戦車に代わるものを想定しているが……』

『……開発テストは最終段階に入っており、電子世界を経由した精神接続を行い、これの成功を持って試作機の完成を目標とする』

武蔵「……これはどういう事だ」

男「恐らく、当時行われていた虚構型戦艦の開発レポート、報告書ではないかと思うが……」

日向「精神接続は結局今の段階では成功していない……な」

男「存在しない虚構型戦艦一番艦の事ではないだろうか」

男「実験が成功せず一番艦は未実装と考えれば……」

武蔵「……もう一枚は」ペラッ

武蔵「……手紙か」


『もし俺たちがこの作戦を失敗に終えていたとしたら。今頃これを読んでいるお前たちの周りでは次世代兵器が完成しているのだろう』

『もし、平和を求め。これを拒む人間であるなら。立ち上がって欲しい』

『現政府はこの兵器を各国に売りさばき、死の商人に成ろうとしている』

『戦争が起こる前に、これを止めて欲しい』

『研究やその目論みの全ては、この施設にある』

『元帥が全てを握り、計画を推し進めている』

『平和の礎に。平和を維持する為に……』

武蔵「……この先はよく読めないが」

武蔵「私たちは、とんでもないものを見つけてしまったのではないか?」

男「もしこれに書いてある事が本当なのであれば……」


男「時間はもう残されていない」

ここまでです。ナイフで感染者を倒した人物は誰なのか。もう少ししたら分かると思います

武蔵「……この手紙を鵜呑みにするのなら。兵器はほぼ完成しているに等しい」

武蔵「そして。他国よりも抜きん出た技術を擁し、高度な兵器開発を行っているのも確か」

日向「……だが当時の内閣と今の内閣は閣僚も総入れ替えを行っている。別物だ」

男「……」

男(なんだ……この妙な不安感は)

男(違う……これだけでは……)

男「なにか。別に特別な何かがあるような気がする」

男「深海棲艦が狙っていたのはこんなものではないだろう。もっと重要ななにかがあるはずだ……」

男「……」スッ

日向「……いくのか?」

男「あぁ」

武蔵「行くとは言うがそもそもここはどこなんだ?」

日向「今ここは国防軍が警備を行っているはずだ」

日向「容易には近づけないし入れない」

男「……それでも、行かなければ」

男(そうだ。俺は最初から……)

武蔵「……なんだ。私を差し置いて話を進めるな」

武蔵「そもそもその不安感とはなんだ?」

男「……いや。こんなにも落ち着いた話だったのかと思ってな」

男「強力な兵器を開発して他国に売りさばく。たったこれだけの話か?」

男「兵器を売るだけ売ってどうする?また新たな兵器を開発するのか?」

男「こんな大それた事をするなら一回きりではないだろう」

男「そもそも。強力な兵器を売りさばくなどして各国からの批判は免れないはずだ」

男「行き着く先は誰にだって想像出来る」

男「現に、日本はこの兵器を公にした時。各国の批判や国民からの批判を一斉に浴びたはずだ」

男「国際社会での立場を危うくするような事を自ら行うか?」

男「これはあくまで代わり身であって本質的な部分は別にあると思う」

男「深海棲艦はそれを狙っているのではないか」

ここまでです

武蔵「……借りにそうだったとして」

武蔵「そこまで深入りする必要などあるのか」

男「……」

武蔵「国家の重要機密を暴くんだ。深海棲艦の目的を知るよりもはるかに高いリスクがある」

武蔵「今現在この研究が行われていないとしても公にすべき事ではないし、もし今現在も続いているとしたら……」

武蔵「最悪消されるかもな」

男「……」

日向「……」

武蔵「そこまでして調べる理由がどこにある?」

武蔵「全員を納得させられる理由があるのか?」

男「……」

男「……煙草、一本吸っても構わないか?」

武蔵「あぁ」

スッ...カチン

男「……」ジジ...

パチン

男「……ふー」

男「……」

男「……日向には話していなかったと思うが」

男「そもそもここに入ったのは……ある事が知りたかったからだ」

日向「……ある事?」

武蔵「……」

男「すー……はぁ……」

男「ただその事の真実を。知りたかった」

男「それがこの場所にある」

日向「……!」

武蔵「……」

男「……俺には父と母、姉の三人の家族がいる。という話はしたな」

日向「聞いたよ」

男「姉は既に他界しこの世にはいない。両親は未だ健在」

男「……そう話したが本当は」

武蔵「……」

男「父も既にこの世にはいない」

男「自殺したんだ」

日向「……」ガタンッ

男「どうした。日向」

日向「い、いや……なんでもない……」

武蔵「で、その話がこれとどういう関係が?」

男「……俺の父は。この施設の……所長だった」

日向「……っ」

武蔵「この施設この施設と言うがこの場所は……」

男「表向きは病院兼孤児院」

男「本当はそこに適当な人間を収容、研究材料として利用する」

武蔵「……まさかッ」

男「あの蜂起の……起きた場所だ」

男「姉は……自殺した父の代わりとして所長となり、あの蜂起に巻き込まれ。死んだ」

男「当たり前だな。そこで父と姉は次世代兵器の開発と艦娘の研究を主導していたのだから」

武蔵「……提督、私は」

男「俺はそこで。父と姉がどのように生活し、研究を行い。そして死んだのか」

男「その全てが知りたいんだ」

男「勿論俺と母には知らせが入った。だがそれが真実の全てであるとは思っていない」

男「……ここ最近の深海棲艦の動向。深海棲艦の狙うものときっと、関係がある」

男「深海棲艦の欲する何か。それが……俺の、求めているものなのではないか。そう思った」

男「まぁ……そうでなくともいずれこの場所に行くつもりではあった。同じ事だよ」

武蔵「……すまない」

日向「……」

男「いや、いいさ。こうでもしなければ納得して貰えないだろう」

男「もしこの話でも納得して貰えないのなら……一人でもここに向かうつもりだ」

武蔵「……提督の母は、無事なのか」

男「……家族が国家の、国民の汚点として晒し上げられたんだ。風当たりは……言わなくても分かるだろう」

男「まともに出歩く事も出来ず、匿われならが過ごしてきた」

男「俺も素性を隠して今まで……生きてきた」

男「俺よりも余程辛かっただろう……」

男「今は……施設に入って過ごしている」

男「まともに会話すら行えないほどに……壊れてしまった」

お仕事です。つまり男は電子世界の艦娘達でラスボスでもあった元帥の弟でその父の息子であった、というわけですね

この話はもっと取っておくつもりだったんですけど。武蔵を説得する為の材料ってこれくらいしか無かったと思ったので

男「家族の存在や自分を失って、考えたのは……」

男「真実を、全てを知りたい。ただそれだけだった」

男「父や姉が追い求めていたものは何か。研究所での暮らしはどうだったのか、それだけが知りたい」

男「母と二人残され、なにも知らないままになにもかも奪われた一人の人間の我儘だ」

武蔵「……その全てを知った後。提督はどうするつもりなのだ」

男「……それは。わからないな」

男「それだけ考えて、今まで生きてきたようなものだ」

武蔵「……」

日向「……」

男「今夜すぐに出発する。皆には母の元に帰ったとでも言っておけばいい」

ガタンッ

男「……」コツコツ

武蔵「待て」

日向「誰も一人で行かせるなんて言ってはいないだろ」

男「……」

男「付いて来た所でなにもないぞ」

武蔵「提督の過去を無理に掘り起こしたのは私だ。けじめは付けさせてもらうぞ」

日向「……きっと。私がいた方が早く辿り着ける」

男「……」

男「……すぐに準備をしてくれ」

男「都内までは電車を使う。ある程度まで進んだ後はタクシーでも拾えばいい」

男「足がつかない……というのは難しいが分かりにくい方がいいだろう」

男「……」

武蔵「……」

日向「……」

男(こうして俺たちは、俺の求めていた場所へと。足を運ぶ事となった)

男(自然と心臓は落ち着き払い、頭は冷えていた)

男(ただ……全て知った後に俺はどうするのだろう。それをずっと考えていた)

男(答えは出ないまま目的地へと近づいていく)

男(研究所。国防軍の警備ラインよりも少し遠くでタクシーを降りる)

男(生温さの抜けた少し冷たい夜風がいよいよだと物語っていた)

タッタッタッ

男「止まれ」スッ

武蔵「……」

日向「……」


「……」

「……異常無しか」

「気を抜くな。ここは……」

「あぁ……いつ来るかわからない、だろ」

「かなみでの事件もある。警戒をより厳しくしておく必要がある」

「そうだなぁ……」

男「前方に二人……」

日向「こっちに迂回路がある」

武蔵「警備の配置情報を盗めなかったから辛いものがあるな……」

日向「大丈夫だ。道は知っているから…すぐに辿り着ける」

武蔵「来た事があるのか?」

日向「……こっちだ」タッタッタッ

男「……」

武蔵「……」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

日向「こっちも警備がいるのか」

武蔵「周辺の家々は今無人だろう?通り抜けられないか?」

男「いや……変に物音を立てるのは良くない」

武蔵「かと言って昏倒させる訳にもいかない……か」

日向「……ん」スッ

男「む……石でどうするつもりだ」

日向「これを向こうに投げて気を引けないだろうか」

武蔵「……」

男「……やってみる価値はあるか」

日向「それじゃあ……投げるぞ」グッ

ヒュッ...

カツンッ

「……!」チャキッ

「……聞こえたな」

「様子を見てみる。バックアップを頼む」

「了解」


男「……今だ」

武蔵「……」

日向「……」

スッ...


「……なにもないな」

「一応報告はしておくか?」

「いや……物音だけでは……」

「少し散開して調べるぞ」

「あぁ……」

男「……近くにあるのに遠く感じるとは」

武蔵「それだけ国防軍の警戒が厳しいという事だ」

武蔵「それでも……私たちがここまでこれるくらいには弛んでいるがな」

日向「この坂を登れば研究所の正面に出る」

男「……だが恐らく。正面に陣地が構成されているだろうな」

武蔵「……だがここで足踏みしている時間はないぞ。身を低くしろ」

日向「……!」


「……」コツコツ

「こちら第四巡回部隊。ポイントB異常無し」


日向「……この林に入ろう」

男「林に隠れてやり過ごすか……」

日向「いや、ここに研究所の敷地への抜け道があるんだ」

武蔵「……何故それを?」

日向「それは後で。早く行こう」

ザ...ザ...


日向「……」

男「……」

武蔵「……」

日向「この先に……」


日向「あった……」

男「……フェンスか」

武蔵「匍匐すればなんとか通れそうなくらいの穴……だな」

男「……最近のものではない。随分……時間が経っている」

日向「……ここから身を低くして外周に沿って進めば施設に進入出来そうだ」

男「日向……」

日向「行こう。私に付いて来てくれ」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

男「……ここが」

男(ガラス張りの壁、病院とは思えない程に美しい形状。海外の公園をイメージした正面広場)

男(最先端の医療技術が集結した日本有数の巨大医療施設)

男(それと同時に孤児や様々な理由で保護者と生活を送れなくなった子供達の収容、育成施設)

男(だがその裏ではそれを偽装として非道な軍事研究を行っていた研究所)

男(の……成れの果てだ)

男(敷地は荒れ果て、外周は草が伸びきり、中央部には軍車両が止められ、陣地が形成されている)

男(病棟だったものは……)

男(ガラスは割れ、柱は削れ、一部は崩れていた)

男(鉄筋が剥き出しになり錆びが見えている部分もある)

男(巨大な廃墟と化していた)

ここまでです

男「正面突破は不可能だな」

日向「……」

武蔵「日向」

日向「あ、あぁ。うん」

日向「こっちから行こう……」


男「……」

日向「……」

武蔵「……」

ザッザッ

男「止まれ……」

「……」ザッザッザッザッ

「……」ザッザッザッザッ

ザッザッ...


男「……行ったか?」

日向「急ごう」

日向「ここに裏口が……」

「ん?なにか聞こえなかったか?」

日向「ッ!?」

男「……」

武蔵「……」

「いや……気のせいだろう」

日向「……」スッ

日向「……」クイッ

男「……ん」

武蔵「……」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

日向「裏口がダメなら……」

武蔵「ん、あそこ。ガラスが割れているぞ」

男「あそこからなら進入出来るが……」

日向「ガラスが散らばってるね」

武蔵「物音は避けられないが進入経路もあそこだけ……」

男「兵士がより離れてから移動する……」

日向「……」


男「今だ……」スッ

日向「……」

武蔵「……」

タッ

パキッパキッパキッ...


男「……」

武蔵「……」

日向「……」


パキッパキッ...バキッ!!


日向「ッ!早くこっちに!」

男「……」

武蔵「向こうさん音に気がついたみたいだな……」

タッタッタッ!!!

「今の音は……!」

「小隊三つで施設内部をクリアリングする」

「いけ!いけ!」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー


男(内部に進入し出たのは病室の前の廊下らしい)

男(白く清潔であっただろう壁や床は最早見る影もない)

男(患者を運ぶ器具や細かな道具が床に散乱している)

男(と……あまりゆっくりと観察している時間は無さそうだ)

男(後方からフラッシュライトの光が揺れながら複数こちらに近づいてきていた)

日向「こっちに地下に行くエレベーターがあるんだ」ダッ

男「見取り図にもあったものか」

日向「そう。そこから……研究区画に行けるよ」

武蔵「だが電力など供給されているのか?」

日向「必要最低限の電力はあるかもしれない」


男(埃の舞う通路を抜け、奥まった場所まできた)

男(そこには光の消えた掲示板と半開きになった扉があった)

日向「チッ……」

武蔵「ここから降りるか?」

日向「無理だ。降りるには少し深すぎる」

男「梯子にも……届かなさそうだな」

コツコツコツコツ...


男「……中まで捜索しに来たのか」

日向「それならこっちに……!」

武蔵「まだ通路が?」

日向「非常用階段がすぐそこにあるよ」

男「ならば向かうとしよう」


ギギギ...

日向「……凄い埃だ。口元を塞いだ方がいい」

男「ここから下に行けるんだな」

日向「最下層までね」

武蔵「よし。すぐに行くぞ」

男「……」スッ

チャキッ

パッ

男(扉を閉めると光は完全に消え失せ、暗闇になった)

男(三人でフラッシュライトを点けなんとか視界を確保する)

日向「付いて来て」

男(人二人分ほどの広さの階段を降っていく)

男(強烈なまでの埃が視界と呼吸を遮ろうとする)

日向「……ここだよ」

男(階段を降りきると目の前に巨大な障壁が現れた)

男(すぐそこには先ほどのものであろうエレベーターのドアがあった)

男「人一人分の隙間はある……」

日向「……この障壁から先が」

武蔵「……」

男「……行こう」

男(口元を塞ぎ俺たちは、障壁の隙間を潜り抜けた)


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

お仕事です。いよいよあの場所へ……

男(障壁を潜ると先ほどよりも埃が舞い、視界を塞ぐ)

男(フラッシュライトの光も先までは届かず、目の前がぼんやりと照らされる程度だ)

男(まるで深海を探索しているようだ……)

男「……」

男(あちこちに銃撃の跡が残されている。床のいたるところに付いている染みは血痕だろうか)

日向「……」

武蔵「……それで。日向」

男「……」

武蔵「この施設の周囲だけでなく内部まで詳しく知っていた」

男「……」

日向「……」

男(歩みを進め、探索しながら日向に問う)

男(その表情は重く、どこか遠くを見つめていた)

日向「……それは」

武蔵「……」

男「……」

日向「かつて私は……この場所に……」

日向「元帥……君の姉の元にいた」

男「……」

武蔵「……」

日向「君の姉のしていた事も、少しは見ていたつもりだ……」

日向「……あぁ」

日向「私は……」

武蔵「……」

日向「……止める……べきだった」

日向「過去を悔いても仕方がないのは分かっているさ」

日向「けれど……気がついた時に。止めるべきだったんだ」

日向「彼女に拾われ、命を救われて……紛い物の忠誠心に……縛られていた」

男「日向……」

日向「……すまない」

男「……いや。いいさ」

武蔵「……」

男(そうか……そうだったのか)

男(まさか……こんなにも近くに。姉を知る人間がいるとは思いもしなかった)

男(正直驚きと困惑と……様々な気持ちが混ざり合って……なんとも言えない様な気持ちになる)

男(今すぐにでも話を聞きたいが……)

男「今は……探索を続けよう」

日向「そう……だな」

武蔵「……」


男(地上の施設とは違いこのフロアは相当な広さだ)

男(娯楽施設に食事処、銭湯に買い物をする場所まで併設されていた)

男(どれも埃をかぶり、廃れていたが……)

男(そういえば……)

男「この施設群の中には戦闘の跡は無かったな」

日向「戦闘が行われた場所は居住区画の方だからな」

男「区画分けされ、これだけの施設があるとは……一体どれだけの人間がここにいたんだ」

日向「防衛機構の人間よりもずっと……」

男「よく存在が露呈しなかったな……」

日向「ここで過ごしていた人間はほとんど地上に出る事は無かった。生活の全てがここで補える様になっていたのはそのせいだ」

男「……まるで檻の様だ」

男「……区画……か」

男「見取り図には地上の部分しか示されていなかった。ここはどの様な構造に?」

日向「中央部……今私たちがいる施設群のある区画を中心として、六角形に居住区画が割り振られている」

日向「十二時方向から時計回りにA、B、C、D、E、F」

日向「東西南北に地上への昇降機が取り付けられていて。私たちは南、六時方向の入り口からここまで来た」

武蔵「蜂起の首謀者もここに?」

日向「あぁ……彼は……少佐と呼ばれていたが」

日向「Eブロックが彼とその仲間の艦娘達が過ごしていた場所だ」

男「……」

日向「君の姉は……Aブロックに……」

日向「私もそこで……暮らしていた」

ここまでです

お出かけついでに書こうと思ってたんですけど、復習も兼ねて前作の最初から読み返してました

自分で書いてるんで当たり前ですけど最後の方の展開は音楽聴きながら読み耽っているとかなり良さげ(自分の中では)だったと思います。BGM効果かな???

それで先の展開を考えてて思ったのは、前作で語られなかった部分を暴くのが観測世界の艦娘達のメインになるのかなと

伏線張りっぱなし部分の回収に重要な裏設定の描写……とか

まだまだ説明ばかりで盛り上がっていないと思いますが、最後は盛り上げて終わらせたいと思っているので引き続きお付き合い下さい

武蔵「さて、どこから探索する?」

男「……あまり時間がない。先にEブロックから探索しよう」

日向「……」


男(埃被った通路を進み、Eブロックとの境目の扉の前まで辿り着いた)

男「扉が閉まっている」

男(重く頑丈そうな扉がぴっちりと口を閉じている。丁度右に液晶画面と数字キーがあるが……)

日向「そうだ……この扉は電子ロックだった……」

男「手動で開けないのか?」

日向「多分……非常用に開ける様にはなっているとは思うけど……」

武蔵「……見当たらないか」

男「……ここで手詰まりとは」

武蔵「……」

男「……」

日向「……いや、まだある」

日向「施設内部では戦闘が行われていたが、その場所はFブロックだったらしい」

男「という事は……」

日向「Fブロックの扉が破壊されていればEブロックにもAブロックにも移動出来る」

武蔵「だったらしい……というのは?戦闘には参加していないのか」

日向「私は……電子世界で戦闘を行っていたから……現実世界での事はよくわからないんだ」

日向「終わってすぐに……捕まってしまったしな」

今日は寒気と関節痛と戦いながらだったので少しで……

別の選択肢を選んでいた場合はかなり変化あったと思います。前作よりも救いようの無い話になってた可能性も……

いずれまたみなさんに展開選んでいただくと思いますけど、そういう話になる可能性も十分ありうるとだけ

男「だが可能性があるなら向かうしかないだろう」

武蔵「では、向かうとするか」


男(戦闘の跡とは言ったが想像以上だった)

男(厚みのある扉は切断され、内部に進入する事が可能だったが……)

男(銃痕が壁中に撃ち込まれ、床には大量の血痕と錆びた空薬莢が転がっている)

男(爆発跡に、壁が抉れ崩れていたり)

男(想像を絶する戦闘が行われていたと考えるには容易かった)

男「これは……」

武蔵「酷いな……」

日向「……」

男(暗闇の中だが日向がの表情が悲しいものに変わったように見えた)

男(かつての仲間がここで殺し合いをしていたのだ。当然だろう)

日向「……ここに調べるものはないだろう」

男「そうだな。先へ進もう」

男(空薬莢を足で退けながら俺たちは先へと進んだ)

>>454 修正


男「これは……」

武蔵「酷いな……」

日向「……」

男(暗闇の中だが日向の表情が悲しいものに変わったように見えた)

男(かつての仲間がここで殺し合いをしていたのだ。当然だろう)

日向「……ここに調べるものはないだろう」

男「そうだな。先へ進もう」

男(空薬莢を足で退けながら俺たちは先へと進んだ)

男(破壊された扉を抜けると、先ほどまでの惨状が嘘の様に落ち着きを取り戻す)

男(細い廊下の片側に扉が並んでいる)

男(一つずつ調べていく必要があるか……)

男「手前から一つ一つ進入して調べるぞ」

男「他人のプライバシーに踏み込んでいるようであまり気分は良くないが」

武蔵「仕方ないだろう」

日向「……」

短いですが

すいません。今日(昨日)はお休みでお願いします。次は火曜の朝に……

ガチャ

男「……」

日向「……」

武蔵「……」

男(最初に入った部屋は最低限の生活用品以外置いていない様な部屋だった)

男(だがよく見渡してみると……)

男「写真……だな」

武蔵「ここにもあるぞ」

日向「……」スッ

男(写真の埃を払いフラッシュライトで照らす)

男(気の強そうな少女と優しそうな少女二人が写った写真だ)

武蔵「少女二人か……」

男「どの写真もそうか?」

カタッ

男「ん……この写真だと、片方の少女は眼帯をしているな」

武蔵「そういえば、日向ならこの首謀者達と関わりがあるのではないか?」

日向「少し話したくらいだが……」スッ

日向「この二人は……うん。確かに知っているよ」

日向「天龍に龍田。そう呼ばれてた」

男「天龍に龍田……」

日向「こっちの眼帯が天龍、片方が龍田」

男「何故眼帯をしているんだ……」

日向「さぁ。そこまではわからないけど」

日向「ある日から突然着けていた気がする」

男「それに龍田という名前は少佐に見せてもらった艦娘リストには……」

日向「龍田は……その時には死んでいたからね」

武蔵「……」

日向「死因は……確か……」

日向「心臓の何かだったと聞かされた覚えがあるけど……」

男「心臓……」

武蔵「他にめぼしいものはないな」

男「そうだな。次の部屋に向かおう」


男「……」

男(次の部屋は入って女性の部屋とわかる様な部屋だった)

男(淡いピンクを基調にした落ち着いた雰囲気の部屋)

男(だが……壁に竹刀が掛かっていたり、引き出しの中から自動拳銃が出てきた)

男(手入れをしていなかったからか。当然動作は悪い)

武蔵「ここにも写真があるぞ」

お仕事です

男「……これは」

日向「天龍に龍田」

武蔵「という事はここと前の部屋が天龍と龍田の部屋だった場所。という事か」

男「だがここにも……これと言って目ぼしいものは無い」

武蔵「次の部屋に向かおう」


男(次の部屋はぬいぐるみや置物が沢山置かれた少女らしい部屋だった)

武蔵「ここは……子供部屋の様だな」

武蔵「勉強机。引き出しの中には……」スッ

武蔵「……どうやらここでは学習も行われていた様だな」

武蔵「いくら強引に連れてきたとは言え、やはり教育は必要か」

男「名前は……電」

男(あまり綺麗な字ではないが……)

日向「彼女はこの施設の中でもかなり幼い部類に入っていたと思う」

男「そんなに小さな子供まで……」

ギリッ

武蔵「む、床になにか落ちているな……」

男「それは?」

武蔵「手紙……の様だが」

男「読めるか?」

武蔵「所々色褪せているが……大体読める」

『みんなへ 』


『急で本当にお父さんとお母さんもごめんなさい、……います 』

『これから二人で少し遠い所へ行かなければいけなくなりました 』

『…………の友達の元帥さんについて行って下さい 』

『……は優しい人だから、きっとみんなを……してくれると思います 』

『今までお金が無くて、みんなを…………なさい。忙しくて構って……くてごめんなさい 』

『が元帥さんの所に行ってくれるおかげで、お父さんとお母さんは沢山お金がもらえます 』

『次に会う時はみんなで…………ましょう。それまで……下さい』

男「……」

武蔵「……」

日向「……人身……売買……!!」

男「……」

武蔵「……」ギュッ

男(心の底から……怒りがこみ上げてきた)

男(俺の家族は……こんな事までしていたのか)

日向「……」

武蔵「こんなに大切な手紙を放置していくほど、状況は切迫していたのか」

男「……ッ」

武蔵「……お前が気にする事じゃない。何も悪くない」

男「……あぁ」

男「……次の部屋に……行こう」


武蔵「……この部屋だけ、扉が鉄製なのか」

日向「……」

男(次の部屋の扉は何故か鉄製だった)

男(錆び付いた扉はどこか牢獄を思わせる様な佇まいだ)

武蔵「フンッ……!」

ギギッ...ギギギ...

武蔵「……入るぞ」

ここまでです

男(錆びた扉を潜るとそこには……)

日向「……なにもないな」

武蔵「……あぁ」

男(この部屋は最初に入った部屋よりもより殺風景だった)

男(棚やテーブルはあるものの肝心の置いてあるものが無い)

男(壁を見るとなにか引っ掛けていたのだろうか。ラックの様なものが幾つも取り付けられているが……)

日向「……奥の方に水と食料が散らかってる」

男「それ以外はなにも無いか」

武蔵「……所々荒らされた形跡があるな」

武蔵「壁にはなにかで殴りつけた様な凹み……ベッドもよく見るとシーツが破かれている」

武蔵「それに部屋の端に染み……これは血痕か?」

パッ

日向「なにか書いてある」

男「……血文字」


『死にたい』


武蔵「……」

日向「……」

男「まるでこの部屋は……獄中だ。一体ここで何が……」

武蔵「なにか……当時不穏な噂などはなかったのか?」

日向「いや……なかったよ。何も」

日向「ここの提督も艦娘も仲が良いイメージならあったけど……」

男「……次に行こう」


男(次に入った部屋はまた今までの部屋とは違った雰囲気だった)

男(おしゃれなインテリアに、目を引くのは壁際の棚に沢山並べられたティーセット)

男(紅茶の葉の様なものまで置いてある)

男「……」

日向「……」

武蔵「……ここにも無いか」

男「そう簡単に重要な情報をくれたりはしないだろう」

男「次の部屋だ」


男(次の部屋は落ち着いた印象の部屋だった)

男(家具も綺麗に纏められている)

男「……」

日向「……」

武蔵「……」

男「所で……当然事後には警察やら特殊部隊やらがここに入ったはずだな」

日向「……」

男「なのに探られた形跡もないとはどういう事だ?まともに調べていないんじゃないか?」

日向「間も無くすぐにここは廃棄され、立ち入り禁止になったから……それとなにか関係がある気がする」

武蔵「むぅ……それでも、確かにおかしいな」

武蔵「現場検証ぐらいはするだろう」

男「……次だ」


ガチャ...

男「なっ……!?」

武蔵「なんだこれは……!」

日向「散乱しているな……」

男(次に入った部屋は……どうやら男の部屋らしい)

男(壁に掛かったスーツ。小物が少し散らかっている)

男(そして何より目を引いたのは……)

武蔵「……何故こんなにも武器が。まるで投棄された様だ」

男(小銃や自動拳銃。果ては軍刀に手榴弾まで)

男(入ってすぐの場所に散乱していた)

男「……」スッ

チャキッ

男(やはりどれも状態が悪いのか。上手く動作しない)

男(手榴弾も保存環境が悪く、少々危険そうだ)

男「……」チャキッ

スッ

日向「……」

武蔵「……ほう」

男(だが一本だけ落ちていた軍刀だけは違った)

男(しっかりと油が塗られ、手入れされていたからか。鞘こそ汚れてはいるが刃は錆びや刃こぼれ一つ無い)

武蔵「貰って行ったらどうだ?」

男「いや……人のものを勝手に持っていくのは……」

武蔵「どうせそれはもう誰にも使ってもらえんよ」

男「……」

日向「まぁ……いいんじゃないか?」

男「……」

男(押されるがままに俺は落ち着いた軍刀を帯刀した)

男「……少々借りる」

男「しかしこの量の武器が……こんな所に投げ捨てられているのは異常ではないか」

武蔵「もしかしたら蜂起の時に皆に武器を配布する為にここにぶちまけた……というのは考えられないか」

男「あぁ……それなら」

武蔵「男の部屋ならここは蜂起の首謀者の部屋だろう。武器を集めてきて……」

日向「……」

男「……この部屋は念入りに調べる必要がありそうだ」

武蔵「そうだな……」

>>481 修正


武蔵「貰って行ったらどうだ?」

男「いや……人のものを勝手に持っていくのは……」

武蔵「どうせそれはもう誰にも使ってもらえんよ」

男「……」

日向「まぁ……いいんじゃないか?」

男「……」

男(押されるがままに俺は落ちていた軍刀を帯刀した)

男「……少々借りる」

お仕事です

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー


男(首謀者の部屋と思われるここを念入りに調べたが……)

男(有用そうなものはなにもなかった)

男「……なにも残されてはいないのか」

武蔵「まだ部屋は残っている。次だ行くぞ」

日向「……そうだな。まだ諦めるには早い」

男「……」


男「ここは……?」

男(畳が敷かれ、居間の様な空間がそこにあった)

男(小さなテーブルには……ペン立てに書類か……)

男(少し大きめの本棚もある)

武蔵「……執務室のようだな」

日向「随分落ち着いた空間になっているな……」

男「……」

男(本棚には艦娘について記述のある本や、深海棲艦の調査文献)

男(戦術の指南書に……薬物についての書物まで収められていた)

武蔵「この書類は……経費や武器、出撃翌予定のものらしい」

日向「それは役には立たなそうだな」

男(薬物についての書物……これだけ関連性が無い様に見えるが……)ペラペラ

男(特におかしな部分は見られない)


日向「……」ペラッ...ペラッ...

武蔵「……」

男「……」コンコン

武蔵「お前はさっきから壁を叩いているが……」

男「隠し通路、ありそうではないか」

武蔵「……自分達でこの場所を作ったのならあり得るかもしれんが」

男「……」

日向「……ん」

男「……どうした?」

日向「この紙……」

武蔵「どれ……メモの様だな」


『第一に幻聴、幻覚が襲う。第二に精神を蝕み、もう一人の自分に侵される』

『第三に、衰弱し自分を奪われ狂人と化す』

『又は抗い続け、死ぬ』


男「……これはどういう意味だ?」

男(幻聴や幻覚……精神が蝕まれる。なにかの病気の事だろうか)

武蔵「……わからん」

日向「……」

男(……薬物の書物)

男(薬……と関係がある?)

男「一応持っていこう。不可解だが……なにか意味がありそうではある」

男(その後も探してはみたものの、これと言って収穫がある訳でもなかった)


男「結局このメモ一つだけ……か」

男(それと、姉と父が人身売買まで行っていた事も)

男「……Aブロックへ向かおう」

日向「それなら私が誘導しよう」

武蔵「先ほどの……Fブロックを抜けて向かうのだな」

日向「あぁ……現状それしか方法はない」

探索も中盤に。ここまでです

男(俺たちは再び惨劇の色を残す場所に足を踏み入れた)

男(先ほどとはまた違う場所を歩くからかそれとも見落としていたからかは分からないが)

男(床だけでなく壁にさえも血の跡がべっとりと残っていた)

男(それに加えテーブルなどでバリケードまで形成されている)

男(勿論銃弾で穴だらけな状態で)

男「……」

男(気味悪さと不快感を感じながらも先へと進んでいく)

日向「ここだよ」

男(Aブロックまでの扉。これもまた破壊された状態になっていた)

武蔵「……」

日向「行こう」

男(日向に先導され、俺たちは姉のいた場所へ足を踏み入れる)

男(ずっと、この時を待っていた……)


(……)

(彼らは……)


日向「多分、元帥の部屋と。執務室を調べればそれで十分だと思う」

武蔵「そうだな。重要な場所を重点的に探せばいいだろう」

日向「でもその前に……」

男「なにか他に思い当たる場所が?」

日向「私の部屋に寄らせてもらいたい」

男(変わらず埃の舞う廊下を日向は黙々と歩いていく)

男(慣れた様な足取りだが、どことなく誰かの墓標に向かっていくかの様に重い)

日向「……」

武蔵「……ここかい?」

日向「うん。ここが……私の昔住んでいた部屋」

男「……」

ガチャ...

男(そこはまた落ち着いた様な雰囲気の部屋だった)

男(物も整頓され、綺麗に纏められている)

日向「あぁ……懐かしいな」

男(日向はゆっくりと足を進めると、机の上を指でなぞった)

男(分厚い埃の膜が剥がれ、本来の表面が見える)

日向「こんなにも……時間が経っていたのか……」

男(悲しみと懐かしみが混ざりあった表情)

男(ここに来て見た日向の表情はどれも今までに見た事の無い新鮮なものであった気がする)

男「……」

日向「……」

武蔵「……」

日向「……行こう」

男「もう……いいのか?」

日向「あぁ……いいんだ」

武蔵「……」

お仕事です

帰りはお休みで……

そろそろルート選択の時間が来ますよ

コツコツ

日向「ここが……君の姉の部屋だよ」

男「……」

武蔵「……開けるぞ」

男「あぁ……」

ガチャ...


男(そこには、本や書類が山の様に置かれていた)

男(本棚を埋め尽くし、テーブルも書類で埋まっている)

男(床にまでいろいろと散乱している始末だ)

男「ここで……生活を……」

日向「……」

武蔵「なにか、手がかりになるものを探してみるか」

男「……」

日向「君は……」

男「こっちはこっちで調べさせてもらう。なにかあれば教えるさ」

日向「わかった」

武蔵「……」

男(床の書類を踏みつけないように慎重に移動する)

男(まずはテーブルの上から探ってみる事にした)

ガサッ

男(物を少し動かすだけで埃が大量に舞う)

男(それに気をつけながら埃の塊を払い一つ一つ見る)

男(テーブルの上に置かれていた本のほとんどは深海棲艦について記述されたものだ)

男(運営や業務内容についての書類は端の方に纏められていた)

男(まずは手がかり無し……か)

男「……む」

男(このテーブル。引き出しが付いているな)

スッ...

男(中には……鍵が入っていた)

男「……」

男(どこを開けるものかはわからないがもらっておこう)

お仕事です

男「……まだなにか」

スッ

男「これは……古い……日記帳のようだな」

ペラッ...


『私は、妻と息子を残し……娘を連れてこの施設で暮らす事になった』

『妻に子ども二人をたった一人で育てさせるのは辛かろうと思いこうしたが、結果的に姉弟を引き裂く事になった』

『申し訳ない気持ちでいっぱいだが。もうここから出る事は出来ない』

『未知の敵に世界を破壊されるその前に、この研究を完成させねばならない』

『今後なにか進展があった時にこのノートに記しておこうと思う』

男「……これ……は」

武蔵「なにか見つけたのか?」

日向「……」

男「……父の、日記……」

武蔵「……」

日向「……!」

男「……」ペラッ

『娘とこの施設にやってきてから数ヶ月が過ぎた』

『時折家族が恋しくすすり泣くのを見る』

『父親としても辛いが、今はこの研究に意識を注がなければならない』

『ファイアウォールやウイルス対策ソフトでも歯の立たないコンピューターウイルス』

『これは最早ウイルスではない』

『電子の世界が確立してからそう時間は経っていないだろう』

『だが彼らは……(黒い外見をしているので黒き者と仮称する)最初からあの姿で産まれた訳ではないはずだ』

『漂う情報を元に形成され、適応し、姿を変えてきたはずだ』

『インターネットが普及した時を電子の世界の産まれた時だとしても、かなりの早さで進化している事が分かる』

『我々が電子の世界を認識したのはほんの一、二年前の出来事だ』

『我々の知らないその時間の中で黒き者はどのような進化を遂げて来たのか、調べる必要がありそうだ』

とりあえずここまでです

『自動攻撃や外部からの攻撃では撃退、破壊するのは難しい』

『それならどうすればいいのか』

『私を含めた研究者達の出した結論は……"直接"黒き者を攻撃する事』

『だがまず自分達の姿形を電子の世界に投影しなければならない』

『そして彼らに対抗する為の兵器が必要である』

『研究は困難を極めそうだ』

『私と娘がここに来てから数年が経った。どうも研究に夢中で記録をつけるのを疎かにしてしまう』

『妻とは連絡が取れない状況にある。この研究は極秘のものであり、病院施設を偽装に地下部分に建造されている』

『国民や各国にはまだばれる訳にはいかないのだ』

『娘は順調に成長している。女の子であるのにも関わらず心は強く、私の研究を手伝おうとまでしている』

『正直な所、私はこの研究に娘を巻き込みたくはない』

『……ここに娘を連れてきてしまった私の自業自得なのだろうが』

『既存のVRシステムを利用して電子の世界に身体を送れないか、改良を続けている』

『各地でハッカーによる攻撃のような症状が度々現れているが、それも日を追う毎に増えていく』

『私に時間は残されていない。一刻も早く黒き者を排除する方法を完成させなければ』

『電子の世界を観測する事には成功している』

『そこはまるで……海の様な場所で……』

『そうだ、情報の海だ。0と1が無数に漂う情報の海』

『これを私たちが分かりやすく視認出来る様にし、その情報に逐次リンク出来る様なシステムにしなければ』

『それと……この"海に潜った時"に使う武装についても。考えなければなるまい』

『……遂に完成した。自分の身体を電子の世界、電子の海に落とすシステム』

『簡単に書くなら……』

『自分の脳を電子の世界とを仲介するコンピューターに接続。身体を動かす際に発せられる電流を信号として認識させ』

『DNA情報を元に形成した電子の世界の身体を動かす』

『使用者からすれば身体が転送されそこに存在しているような感覚になる』

『情報の海に飛び込む、故にダイビングシステムと命名されたこれ』

『これで黒き者を排除出来るのか……いや、やらなければならないのだ』

『膨大な情報を扱うのだからメモリの容量も問題になる』

『だがそれもなんとかなりそうだ』

『メモリの容量は現在開発中の物を使用すれば全く問題ない』

『……妻と息子はどうしているのだろうか』

『息子は相当……大きくなったはずだ』

『時たま、妻と息子とはもう一生会えないのではないかと思ってしまう』

『この研究が終わった帰ろう。今までを全て償う為に一生妻の側にいよう』

『だから早く……』

『武装の研究も成功した』

『実在の武器をモチーフに、だが身体と一体になるような』

『私はこれを艤装と名付けた』

『艤装を纏い、電子の海を駆ける人間は艦兵』

『電子の海から湧いて来る黒き者は深海棲艦』

『これで……やっと……』

お仕事です

『どういう事だ……艦兵と艤装が上手くリンクしない』

『20代の青年兵士を数名、30代後半の指揮官を電子の世界に送ったが、艤装が上手く機能せず敗北した』

『何度か人間を変えて試してみたが結果は同じ。これは改良の必要があるか』

『だがもう時間は無い。奴ら深海棲艦は私たちの施設の攻撃を開始した』

『一体どうすればいいのだ……』

『艤装の改良を始めて数週間が経った。今日私は……愚かな事に娘を……戦場へと送った』

『だがなんという事だ。娘は艤装に適応し、驚異的な動きで深海棲艦を駆逐した』

『……もしや少女こそがこの艤装に馴染めるのではないか?』

『酷だが、数名の女性兵士にも電子の世界へと赴いてもらう事にした』

『実験の結果は、十代後半から二十代前半の女性に限り艤装に適応出来る事が分かった』

『艦兵改め、艦娘。少しでも戦場に出ているという事を楽に考えてもらう為に艦娘と命名した』

『娘によると一回でも相当の体力を消費するらしい』

『深海棲艦に攻撃を受けた時には痛みさえ感じるらしい』

『……もし、電子の世界で死んでしまえばどうなるのだろうか』

『この問題に関しては研究の余地は今の所無い』

『……娘だけは、死なせたくない』

『男性でも艤装を扱える様にする研究は全くと言っていいほど進まない』

『だが、その間にも艦娘達は徐々に増えていき、数個艦隊を擁するほどになった』

『もう……何年経ってしまったのかわからない』

『娘は艤装の適応が難しくなり、指揮官として艦隊を指揮している』

『それにこの艦娘や深海棲艦の研究にも没頭し、私と肩を並べて研究の一端を担うほどにだ』

『それがどことなく……父親として誇らしく感じてしまう事に嫌気が差した』

『娘をこの世界に連れ込んだのは私だ。娘から普通を奪ってしまったのも私だ』

『心のどこかで娘は私を恨んでいるだろう……妻と息子もきっと私を恨んでいるだろう』

『妻と息子の顔もはっきりと思い出せないほどに……私たちは離れてしまったのだ』

『捨てたも同然だ』

『今まで死者も無く、皆で戦って来た』

『だが、つい先日。大規模な戦闘が発生し……』

『娘の指揮する艦隊から死者が出た』

『コードネームは大和(艦娘が増えてからは識別の為に旧日本国軍の艦船の名前を付けている)』

『彼女は電子の世界で死に、現実でもまた死んでいた』

『心臓マヒの様な症状であったが、神経も所々焼き切れていた様だ』

『娘は彼女を手厚く葬ると言って、自ら彼女を運んで行った』

『私は罪人だ』

『少女らを戦場に連れ込む事はどこにも漏らす事は出来ない』

『地上階の偽装である病院に、孤児院まで隣接させた』

『そこからより適応性のある少女を選抜し、地下のこの場所へと連れて行く』

『勿論これは極秘である』

『国家的プロジェクトではあるが民間に知られる事があってはならない』

『それ故に……少女達は……』

『この研究、プロジェクトは《対情報生物用特殊攻撃部隊計画》と呼称され』

『アメリカや、ドイツ、ロシアなどの国々でも同様の研究が行われているらしい』

『無論、この事は関係者以外知る事はない』

『"私でさえも知らなかった"』

『この計画の……真の目的は……』

『艦娘の技術を現実世界に流用する事』

『深海棲艦との戦闘をシミュレーションとして記録し、艦娘の情報などとを合わせて計算』

『現代の最先端技術を用いて、次世代の戦争兵器を開発する……!!』

『私は愚かだ。この事に偶々気がつくまでになにも知らなかった』

『ただ、踊らされていただけだった』

『この事を日本国民に知らせるよう、止めるよう、考えもなしに訴えた』

『どうして、冷静になれなかったのだろう』

『娘を人質に取られた』

『これ以上騒ぎ立てれば娘がどうなっても知らないと』

『私は……この知ってしまった計画を手伝う以外に、選択は残されていなかった』

『男性を適応させる為にはどうしたらいいか』

『薬物を使用し、脳の活動を活性化させればいい』

『私はこの薬物の研究を進めた』

『脳内の使用されていない部分を活性化させ、脳の出力を最大限にまで上昇させる』

『これにより人間に元々備わっているリミッターを解除し、能力を高める』

『さらに、脳波を適性のある少女達に近いものにし、艤装に適応させる』

『だがこの薬物には大きな危険が付きまとっている』

『非認可の薬物を調合し、使用している』

『どのような副作用が起こるかわからない』

『だがこの研究は私の手を離れ、続けられる事になった』


『娘の手で、研究は続けられるのだ』

次のページからは血の様なものがべっとりとついていて読む事が出来ない

一枚一枚丁寧にくっついたページを剥がしてみたがそれでもダメだった

だが、最後のページだけは読めた。そこには血文字で……


『娘を……止めて……くれ……』


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ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

ここまでです

男「……」

武蔵「……」

日向「……」

男「……あの蜂起の、裏が見えて来そうだ」

武蔵「それほどまでに重要な事が?」

男「あぁ……」

男(それにあの血は……まさか父は殺された?)

男(日記がこの部屋に保管されているという事は……)

男「……」

男(……いや。その考えに至るにはまだ早い)

男(しかし……これほどまでの事が秘密裏に行われていたと思うと)

男「……」

男「そういえば……」

日向「何か……思い当たる事が?」

男「二人も読んでくれ……」


武蔵「……」

日向「……こんな事があったなんて」

男「それで、この部分……」

男「薬物についての記述があるが……これは初めて聞いた」

武蔵「……確かに。この薬物についてはニュースや……話題にも上がっていないな」

日向「……まだなにか隠されている?」

男「可能性は十分にある」

男「そして……首謀者の執務室にあった薬物関係の本」

男「全く無関係であるという事は無い気がする」

武蔵「その辺りも調べてみなければわからないな」

男「あぁ……」

武蔵「それと……大丈夫か?」

男「……」

男「……いちいち気にしていてはキリがない」

男「確かに……やり場の無い気持ちはあるが……今は……」

男「時間がない。早く調べよう」

武蔵「……」

日向「……」


男(結局あの日記以外にめぼしい物は無かったが、あれだけでもあって良かった)

男(母と俺を置き去りにして出て行った理由が……ようやくはっきりとわかった気がする)

お仕事です

男「次だ。執務室に向かおう」

日向「もうあまり時間も無いな」

男「……なるべく急ごう」


男(執務室はいたって一般的な)

男(机に深く座れそうな椅子。本棚に書類棚)

男(余計なものは一切置かれていない)

男「各自またよろしく頼む」


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ーーーーーーー
ーー


コンコン

男「……」

武蔵「また壁など叩いて……」

男「ここまでなにも無いのはおかしい。一番怪しい所になにもないとは……」

男「入念に調べて損はしないはずだ」

武蔵「夜明けまでに終わればいいがな」

男(必ず……なにかあるはずだ……いや)

男(あってもらわなくては困る……!!)


日向「……特に怪しいものはない」

武蔵「艦隊の運用記録や支出管理表……」

武蔵「この部屋は他に怪しい所は……」

コンコン

男「……」

男(壁全体を叩いて回ったが音が変わるような事は無かった。おかしな穴も傷も)

武蔵「……提督、次を探しに……」

男(あとは本棚に机……)

男(本棚はいたって普通のものだ。落ち着いた茶色で棚部分には本がぴっちりと収納されている)

男(側面にも怪しい所は……)

男「……あった」

日向「……なにか見つけたのか?」

男「これは……鍵穴か?」

ゴソゴソ

男(先ほど手に入れた鍵を……本棚の側面端にあった穴の様なものに差し込む)

ガチャ

武蔵「……」

日向「……」

男「……やはり間違っていなかった」

男(軽く力を入れて横にずらそうとすると簡単に棚は動いた)

ゴゴゴゴ...ガコン

男(裏には地下に続く階段。こここそが本当に調べるべき場所……!!)

男「いくぞ……」ダッ

武蔵「おい、そう慌てるな」

日向「……」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

男(暗い階段をやや駆け足に降りる)

男(焦らすに焦らされようやく当たりを引いたのだ)

男(これで……全て……!)


男(階段を降りきるとそこには分厚い鉄製の両開きドアがあった)

男(側面には認証パネルの様なものがある)

男「……チッ」

男(電源が無い以上ここは通る事が出来ないではないか……!!)

武蔵「ふむ……」キョロキョロ

日向「重要そうな場所……だな」

日向「ここに非常電源のボタンがある」

男(どうするか思考を巡らせ始めた時に日向がそう言った)

男(フラッシュライトで照らされたそこをみると確かに、文字が薄れてはいるが『非常用電源ボタン』と書かれた文字が)

男(その下には赤いボタンが設置されている)

男「……動くか?」

日向「押してみるよ」

武蔵「……」

カチッ

ブォォォン......ゴォォォ......

男(けたたましい動作音と共に、正面がチカチカと点灯していく)

武蔵「まずい……この音は……」

日向「周りが静かな分地上に聞こえる可能性もある……?」

ピピッ

男(認証パネルに電源が入る)

『DNA認証を、開始します。血液を、認証板の上に付着させて下さい』

男「DNA認証……」

男(これが……姉や父の隠していたものなら)

シュッ

男(俺は先ほど拝借した軍刀を取り出すと指先を軽く滑らせた)

ポタッ...

『分析中……しばらくお待ち下さい』

武蔵「もし気づかれているなら、すぐにでも脱出する必要がある」

日向「細かく調べている時間はない……か」

男「……」

『DNA認証完了。お入りください』

ブシュゥゥゥ......ガコン

男(重厚な扉が開いていく)

男「急ぐぞ」

男「……な、なんだ……これ」

武蔵「……これは」

日向「……」

男(照らされた部屋は隅までよく見えた)

男(円柱状の水槽の様なものが数個並んだ部屋だった)

男(中には……全裸の女性が浮いている)

武蔵「……」

日向「……」

男「……」

男(なんと言っていいのかわからない。全員口を噤んだまましばらく硬直してしまった)

男(入り口からまっすぐ道が伸びている。両脇に二つずつ計4基)

男(そして道の行き着く先に1基)

武蔵「……人体実験でもしていたのか」

日向「……腐乱していない……という事は保存液……?」

男(俺は吸い寄せられる様に中央の1基へと歩みを進める)

男(長い黒髪、美しい顔立ちに……女性らしさを強調された身体)

男(まるで眠っているかの様に、柱の中に佇んでいる)

男(柱の周囲を見渡すとネームプレートが付いている事に気がついた)

男「……」

男「大和」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー


男(ゆっくりと眺めている時間は無い。周囲にレポートの様なものを確認し、別の部屋へと歩みを進めた)

男(次の部屋は電算室のようだった)

男(沢山のデスクトップの様な機器が並び、パソコンが一台中央に鎮座している)

男(俺はすぐに電源を探し当て、起動する)

武蔵「レポートだ。回収しておくぞ」

日向「USBメモリもあるぞ」

ガコン

男(パソコンの起動を待ち、日向と武蔵が周囲を漁っていると遠くの方から物音が聞こえた)

武蔵「チッ……」チャキッ

男「拾えるものは拾ってすぐに退却するぞ」

男(まずい……ほぼ確実に何かがいる)

男(焦燥感に駆られながらもパソコンの画面を眺めていると、パスワードも無しにメインの画面が映る)

男(デスクトップ上には沢山のファイル)

男「……一体どれが」

男(ドライブを開こうとした時、画面の端に3つのファイルが置かれているのが目に入った)

男「器、昇華薬、解放旅団」

男(どれもパッと見ただけではなにかわからない)

ガコン...ゴトッ

男「日向!USBを!」

日向「あぁ!」

男(ハードディスクを慎重に抜いている時間はない。咄嗟に日向の持っていたUSBメモリを受け取りパソコンに差し込む)

男「中身は……空か」

男(2Gのメモリ。ファイルの容量を確認するとどれもギリギリのものだった)

男「どれか……一つだけか」

男(この選択で……全て決まる)

男(そう確信した。そして俺は……)

はい。駆け足でしたがここで分岐選択です

この選択でエンディングまでのルートが決まります。今回は、王道なかんじのルートとバッドエンドと、正直エグいルートの3つを用意しました

明後日の朝まで多数決で募集します。どれをUSBにコピーするか選んで下さい。みなさんよろしくお願いします

男「……ッ!」

カチッ

男(咄嗟に、解放旅団と名のついたファイルをUSBメモリにコピーした)

男「……」

武蔵「むぅ……しかしここは埃の密度が一層濃いな……」

日向「私たちが動き回ったせいで舞ってしまっている」

男(確かにここは執務室外と比べて密度が高い気がする)

男(いや、今までゆっくりと動いていたのが忙しなく動いたからか)

男(なんにせよあまり良い事ではない)

武蔵「おいまだか?もう……」

男「あと少しで終わる」

日向「とりあえず……めぼしい書類は纏めたぞ」

武蔵「……」

男「……」

日向「……」

ガコン...

武蔵「……」

日向「……」チャキッ

男「まだ……距離は遠いか」

男「……」

武蔵「……」

日向「……」

男「……!」

男(コピーが完了した。すぐにUSBメモリを抜くとパソコンをシャットダウンする)

男(焼け石に水だろうが少しでも痕跡は消しておいた方が良いに決まっている)

男「よし。すぐに戻ろう」

武蔵「だいぶ時間が経った……」

日向「……」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

タタタ...

男(先ほど来た道を小走りに戻る)

男(眠る女性達を見送り、認証扉の場所へ)

男「……パネルの血は拭いておくか」

サッ

男「……これで良し」

武蔵「急ぐぞ」

日向「また先導しよう」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー

男(隠し通路の階段を抜け、執務室へ)

ゴゴゴ...

男(本棚を元あった場所に戻し、鍵をかける)

男「日向を前衛に、武蔵は後方を頼む」

男「落ち着いて、かつ素早く行動する」

武蔵「わかった」

日向「……いこう」

ガチャ...

日向「……廊下には誰もいないよ」

男「壁際に寄りながら進むぞ」

男(各々小銃を構え、前進していく)

男(先ほどの物音の様なものは聞こえないが……)

日向「あそこの壊れた扉を潜ったらFブロック」

日向「直線に進んで左手にある扉から中央に出よう」

男「あぁ……気を抜くな」

武蔵「……」

男(そして、AとFを繋ぐ扉へと向かう)

武蔵「誰もいないな……」

日向「他の場所を探しに行ったか……」

男「なんにせよ。用心するに越した事はない」

男(しかし……妙だな)

男(地上部隊の人間がここに踏み入れたならもう少し埃が舞っていてもおかしくはないのだが)

男(先ほどと大して変わらず。それでも視界は悪いが)

男「それと、あまりフラッシュライトをちらつかせるなよ」

武蔵「わかっている」

男(そして何事もなく壊れた扉へと着いた)

日向「ここを潜り抜け……て」

ピタッ

男「……どうした?」

男(日向が足を止めて扉の向こうを見つめている)

日向「……提督」

男「……」

男(険しい顔でこちらを見る日向。扉の向こうに何が……)

男(姿勢を低く、扉の向こうを覗き込む)

男「なっ……!?」

男(……待ち構えていた)

男(進もうとした道の先を塞ぐ様に、黒い影が佇む)

男(怪しく光る瞳、艶やかな装甲。巨大な口)

男「何故……ここに」

武蔵「一体どうしたと……」

武蔵「……深海、棲艦……!!」

みなさんありがとうございました。一番多かった解放旅団でいきます

ちなみにBADENDとエグいルートの違いですけど。BADENDはそのまま、エグいルートはBADENDでもかなり酷い展開になる予定です

どれになったかは最後に。ではお仕事です

すいません帰りはおやすみで

男「何故ここに深海棲艦がいる……」

武蔵「表の国防軍の陣を破ってきたのか……」

日向「という事は……相当酷い事になっていそうだな」

男「……」

武蔵「……とりあえず。奴をなんとかしなければな」

男(状況を把握しよう)

男(まず深海棲艦だが……)

男(我々が現在目指している脱出路を塞ぐ様に陣取っている)

男(見た目は駆逐艦級のようだが……)

男(次に我々だが……)

男(まず深海棲艦に対抗出来る武器は装備していない)

男(小銃に自動拳銃、グレネードにコンバットナイフ。おまけで俺が軍刀を装備しているが)

男(まともに戦って勝ち目はまずない)

男(ならば……)

男「こちらに引き寄せて、背後を取るしかないか」

男「それと下策ではあるが……」

男「撃たれる前に接近して振り切る」

男(深海棲艦に殺される訳にも、国防軍に見つかる訳にもいかない)

男(速攻でカタをつける必要がある)

武蔵「とりあえず、この距離では無理だ」

日向「なんにせよこちらに誘き寄せる必要がある」

男「……」

チャキッ

男(SKAR-Lを構え、壁際から覗き込む)

深海棲艦「……」

男(動く気配がない……)

深海棲艦「……」ジャコンッ

男(まずいっ……!!)

バララララ!!!!

ドゴォォォンッ!!!!

男「!?」

男(発砲音と同時に爆音が響く。爆風に煽られたのか埃がこちらまで押し寄せた)

武蔵「なんだ!?」

男(深海棲艦の姿が掻き消された)

男「……粉塵爆発か?」

日向「粉塵爆発なんてこれくらいの埃で起こるものなのか」

男「可能性は低いがあり得ない事もない」

男(まぁ……だとしても奴は無傷だろう)

男(逆に俺たちが起こしてしまえば火傷の危険がある)

武蔵「……」

>>588 修正


男(深海棲艦に殺される訳にも、国防軍に見つかる訳にもいかない)

男(速攻でカタをつける必要がある)

武蔵「とりあえず、この距離では無理だ」

日向「なんにせよこちらに誘き寄せる必要がある」

男「……」

チャキッ

男(SCAR-Lを構え、壁際から覗き込む)

深海棲艦「……」

男(動く気配がない……)

ジャコンッジャコンッ

男「……来るか!」

ドッ!!

男(姿の消えた深海棲艦は轟音を上げ、埃の幕を突き破る!)

ガガガガガッ!!!

男(弾丸の様に突っ込んでくる深海棲艦。その身体から碇の様なものが落とされ、硬い地面を穿った)

男(勢いが減速され、俺たちの目の前で止まる)

武蔵「チッ!!」チャキッ

男「……まずいッ!!」

深海棲艦「グオオオオオ!!!」

日向「あ……」

男(一番深海棲艦の近くにいた日向に、狙いを定めた様に見えた)

ブンッ!!!!

男(真っ白な腕が日向を狙って振られる)

チャキンッ

シュッ!!!!

男(だがその瞬間、俺は無意識に軍刀を抜き放っていた)

ドゴッ!!!

深海棲艦「グギャアアア!!!」ブシュゥゥゥ!!!

男「ぐぅぅッ!!!」

カランカランッ

男(居合いの型からの一瞬の一撃。放った瞬間に想像を絶する衝撃が軍刀を吹き飛ばした)

武蔵「提督!!」

男「ぐっ……」

男(まずい……腕をやられた)

男(まるで車にでも当てられたかの様な衝撃だった。一瞬で腕が悲鳴を上げ、手首に激痛が走る)

武蔵「シッ!!」

ビュッ!!!

男(武蔵の鋭い蹴りが飛ぶ)

ゴッ

深海棲艦「ギャアアアアア!!!」

男(先ほどの軍刀で傷を負っていたのか、ドス黒い血が流れ出している)

男(そこに武蔵の蹴りが命中した)

日向「す、すまない……」

武蔵「怯んでいるうちに走るぞ!」

男「あぁ……」

男(ブラブラと揺れる右手の痛みを抑えながら、左手で落ちた軍刀を拾い上げる)

ダッ!!!

タッタッタッ!!!

男(あとは全力で走るだけ)

男(怯んだ深海棲艦を尻目に出口を目指す)

日向「君……その手」

男「大丈夫だ……それよりも……!」

ジャコンッ

武蔵「伏せろ!!」

バララララ!!!!!

男(後方から弾丸の追撃が迫る。咄嗟にヘッドスライディングの様に伏せたお陰で掠めるだけに留まった)

男「止まるな!走り続けろ!」

タッタッタッ

ここまでです

男(走る。走って走って……疾走する)

男(埃が舞い上がり視界を塞ぐ。だがそれでも止まる訳にはいかない)

日向「こっち!」

武蔵「後方、付いてきているぞ!」

男「なんとか巻くぞ!」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー


男(残骸の様なFブロックを抜け中央へ出た)

男(広い廊下に開け放たれた店舗)

男(生活感を感じさせながら、人が消え埃を被った様はやはり異様だ)

「へぇ……しぶといんだね」

男「……」

キュッ

男(廊下の前に誰か立っている。聞くに今のは女性の声だが)

日向「……誰?」

武蔵「……」チャキッ

パッ

男(フラッシュライトで照らされた人物は……)

男(黒のパーカーに身を包み、鼻から上を隠している)

男(両手をポケットに入れ、歯を見せて笑っていた)

男「一般人……ではないな」チャキッ

ジャコンッ...ジャコンッ...

武蔵「……」

男(チラリと俺の顔を見る武蔵)

男「……ふむ」

男「それで……俺たちになんの様だ?」

「用があるのは君だけ」

男(ピッと俺に向けて指を指す)

男「悪いが今は忙しいんだが。用件だけ手短かに頼みたい」

男(嫌な予感がする……)

「今から私の血を飲ませてあげるよ」

男「……」

武蔵「深海棲艦に異常者か。好かれたものだなお前も」

日向「もしかして……深海棲艦?」

男「……アレはお前の犬か?」

「犬?違うよ。大切な同胞」

男(今の言葉を聞いた瞬間。痛む右手に力を込めて……)

バッ!!!

男(身を低く相手の懐に飛び込む)

ゴッ!!!

男(勢いのまま顔面へハイキックを打ち込むが、片手で受け止められた)

「挨拶も無しなんて。そんな人じゃないと思ってたんだけどなぁ……」

男「名乗ってやる名前なぞ無い」

「それじゃあ……私の名前を教えてあげる」

「いや、君たちがそう呼んでるだけだけど」

日向「人型の深海棲艦……」

武蔵「ならば……戦艦空母級か!!」

バッ!!!


「私の名前は……戦艦レ級」ニィッ

男(ふわりと風を孕み、動く!)

男(フードが浮き上がり……狂気を宿した少女の顔が現れた)

キュッ...ガッ!!!

男「……ッ」

男(取られた脚を降ろし右を打ち込む!)

男(だがそれも軽く受け止められる)

戦艦レ級「痛くないの?さっき……怪我したんじゃない?」

男(こいつ……相当に強い)

武蔵「シッ!!」シュッ!!

男(横から武蔵の中腰からの一撃)

戦艦レ級「君には用事はないよ」

男(ふわりと軽くかわすと……)

シュッ!!!

武蔵「がはっ……!!」

男(見えないほどのパンチが武蔵にヒットした)

ドサッ!!!

ここまでです

男「ッ……!!」

シュッ!!

男(奴の注意が引いた今……!!)

男(腰の軍刀を抜き放ち、そのまま柄で打撃を加える!)

戦艦レ級「そう簡単にはもらわないよ?」

ヒュッ!!!

男(風を切る音。次の瞬間……)

ドゴォッ!!!

男「……!?」

男(脇腹に強烈な痛み。気がつけば身体が宙を舞っていた)

ドサッ!!!

男「がっ……!!げほっ……」

日向「……」チャキッ

ジャコンッ...ジャコンッ...

深海棲艦「……」

日向「挟まれた……」

男(これは……危機的状況か……)

男(あの深海棲艦はともかく……)

男(戦艦レ級を抑え込められなければ……まずい)

武蔵「流石に人型でも深海棲艦か……ふざけた強さだ」チャキッ

タタタンッ!!!タタタンッ!!!

戦艦レ級「当たらない」フワッ

武蔵「銃弾を……回避するなど……!!」

タタタタタタタタタンッ!!!

戦艦レ級「銃弾をかわしてる訳じゃないよ」フッ

武蔵「消えた!?」

戦艦レ級「最初から射線にいないだけ」ボソッ

武蔵「……!!」

深海棲艦「……」ジャコンッ

日向「やらせない……!!」

タタタンッ!!!

深海棲艦「……!」スッ

日向「っ……」ダッ!!

バララララ!!!

日向「……」タッタッタッ!!


男(なんとかこの状況を脱しなければ……)

男(……どうすれば)

お仕事です

戦艦レ級「ふふ……これでやっと……」グイッ

男「がはっ……なんの……つもりだ……!!」

戦艦レ級「言ったでしょ?私の血を飲ませてあげる」

カリッ

男(右手で俺の首を締め上げながら、左手の人差し指を噛んだ)

男(口元から唾液の糸が引き、傷口から黒い血が溢れ出している)

戦艦レ級「これで私たちと一緒になれるよ」スッ

男(ニコリと微笑みながら吐息のぶつかる距離まで顔を近づける。視界の端からは黒い血を垂らす指が迫っていた)

男(ここで頭突きでもかましてやる所だが首を固定されていてはどうにもならなかった)

男「一緒……だと……」

男(……そうだ。深海棲艦の体液を体内に取り込むと……)

男(細胞が変異して深海棲艦となる……!!)

戦艦レ級「ふふふ……」

武蔵「提……督……!!!」グッ

バララララ!!!

日向「はっ……はっ……!!」ダッ

深海棲艦「ギャアアアアア!!!!」

男(ここで……俺は……)

男(死ぬ。そう思ったが……)

シュッ!!!!!

戦艦レ級「っ!?」バッ

男(突然俺の首を絞めていた手を放り出す)

キンッ!!!

男(再び宙を舞った俺が見たのは……)

男「弾……丸……」ドサッ!!!

男(キラリと光る何かが戦艦レ級目掛けて放たれている)

男「がっ……げほっ……はっ…はっ……」

シュッ!!!シュッ!!!

戦艦レ級「折角いい所だったのに……」

キンッキンッキンッ!!!

男(手刀でそれを次々とはたき落としていく戦艦レ級)

カランッ...

男(跳ね飛ばされたそのうちの一つが俺の目の前に落ちた)

男「弾丸……じゃない……」

男(それは……柄の無いナイフの刃だった)

コツ...コツ...

戦艦レ級「出来れば邪魔しないで欲しいんだけどなぁ」

「断る。好きにはさせないよ」

男(舞い上がる埃の向こうから人影が現れる)

チャキッ

「ナイフならまだまだいくらでもある」

男(紺色のパーカーを着た……少女だった)

男(流れる様な銀髪。すっきりとした顔立ち)

男(すらりとしているが女性的な身体つき)

「司令官、立って。ここは私に任せて」

男「……」

男(敵ではない事は確かか……)

男(だが見知らぬ人間でもある。それでも……)

男「武蔵!日向!」

戦艦レ級「逃げちゃうの?」

「貴方の相手は私」

シュッ!!!

深海棲艦「グオオオオオ!!!」

男(戦艦レ級は彼女に任せるとしてこれはどうする?)

武蔵「放っておく訳にもいかないだろう」パンパン

キュッ

日向「倒せるのか!?」

男「……やるしかないだろう」

男「全員、戦闘開始!」

スペツナズナイフ。銀髪……深海棲艦と渡り合える謎の少女との共闘

自分の中のレ級のイメージってこんなかんじなのでこういうキャラ設定にしました

ここまでです

武蔵「射撃は!?」

男「構わん!ありったけ喰らわせてやれ!」

日向「はぁ……はぁ……」チャキッ

男(日向の疲労が相当溜まっているな……)

男「今度は俺が相手をしてやる」チャキッ

タタタンッ!!!

深海棲艦「グォォォ……」クルッ

男「要は奴の生身の部分を狙えばいい」

男「俺は奴を陽動する。武蔵、日向。頼むぞ」

武蔵「フッ……なんとか、こいつを倒せそうな気がしてきたぞ」

日向「……」チャキッ

男「さぁ、こちらを向け!!」チャキッ

タタタンッ!!!タタタンッ!!!

シュッ!!!

戦艦レ級「あと何本っ!」

キンッ!!!

カランッ...

戦艦レ級「飛んでくるのかな?」

「……」

「……弾道ナイフがダメなら。これで斬るだけ」チキッ

戦艦レ級「私、結構格闘も自信あるよ」スッ

バッ!!!


タタタンッ!!!タタタンッ!!!

深海棲艦「……」ジャコンッ

男「ッ……!!」ダッ

バララララ!!!

男(深海棲艦の射撃で壁や床に穴が穿たれていく)

男(当たればひとたまりもない……か)

深海棲艦「グオオオオオ!!!」グバァッ

男(口を開けた!?)

日向「まずい!!奴の主砲だ!!」

男「主砲だと!」

バッ!!!

深海棲艦「ギャアアアアア!!!!!」

ドンッ!!!!!

男「ぐっ……!!!」

男(一瞬視界が暗転した。キィィンという音が俺から全ての音を奪う)

日向「み、耳が……」グッ

武蔵「くっ……こんな閉所で撃てば当たり前だ!!」

キィィン...

男(まずい……聴力を奪われた)

深海棲艦「……」

男(奴は開けた口から煙を吐き出しながらこちらを向いている)

男(間一髪……ではないが。当たらずにすんで良かった)

男(そして……今が好機か)

男(小銃を構え直し、深海棲艦の口内目掛けて放つ!)

深海棲艦「ーーーーーッ!!!」

男(弾倉の弾丸を全て撃ち込むつもりで撃つ。撃つ)

男(苦悶の表情で叫んでいる様に見えるが……多分効いているだろう)

男「……」

男(チラリ、と。一瞬だけ横を見る)

男(そこでは戦艦レ級が今まさに少女に手を掛けようと……)

男「……ッ!!」スッ


「くっ……これは……」

戦艦レ級「すごい音……だけど。これはチャンスだよね」

シュッ!!

ガッ

「……!」

戦艦レ級「今だ……!!」グッ

パンッ!!パンッ!!

戦艦レ級「うぐっ……!」チラッ

男「……」チャキッ

お仕事です

「……!」

シュッ!!

ガッ!!!

戦艦レ級「やっぱり君は私と遊びたいんだ……」キュッ

男(少女の拳を受け止めてからの……)

ビュッ!!!

ゴッ...!!

「くっ……!!」

男(蹴りが襲うがそれを腕で受け止めた)

戦艦レ級「ふふ……」ダッ!!

男(まずい、俺の方へ向かってくる!)

シュッ!!!

男(見えない右拳。だが……)

男(例え音が聞こえなくとも!!)

ガシッ!!

戦艦レ級「……!?」

男「ふっ……!!」

グルンッ!!!

男(相手の勢いを利用した背負い投げ。これならば……)

キュッ

戦艦レ級「楽しくなってきたよ」

男(片手で身体を受け止めた……!?)

シュッ!!!

男「ぐぅっ!!」

男(足払い!!)

ドサッ!!!

深海棲艦「グオオオオオ……!!」ジャコンッ

男(まずった……)

タタタンッタタタンッ!!!

深海棲艦「ギャアアアアア!!!」ブシュゥゥゥ!!!

男(深海棲艦の身体から黒い血がほとばしる)

武蔵「隙を見せたな」

「今……!!」チャキッ

シュッ!!!!!

ドスッ!!!!!

深海棲艦「ガッ……!?」

男(さらに視界からナイフの刃が一直線に、深海棲艦の目に直撃した)

深海棲艦「グオオオオオ!?!?!?」ドゴッ!!!ガンッ!!!

日向「暴れ出したぞ!!」

武蔵「視界が塞がれた……?」

男(深海棲艦が暴れて壁や物に当たる音が聞こえる。聴力も回復してきた様だ)

武蔵「見えていないのなら……」チャキッ

武蔵「格好の的だな!!」

タタタンッタタタンッ!!!!

ブシャアアアアア!!!!

深海棲艦「ガ……グゴ……」

ズドォォォン...

ここまでです

日向「倒した……」

武蔵「耳も元に戻って来たか……」コキッ

戦艦レ級「へぇ……」

「……」チャキッ

男「……」スクッ

戦艦レ級「4対1じゃ少し分が悪いかな?」クスクス

武蔵「あまり舐めてもらっては困るぞ……!」

日向「……」

男(静まり返ったこの場だが……)

ドンッ...タタタンッタタタンッ...

男(遠くから銃声や爆発音が聞こえる)

日向「地上でも戦闘が行われている?」

武蔵「早々に決着をつけたいものだが……」

「私に任せて司令官達は逃げて」

戦艦レ級「一人で私と戦うの?」

「私一人で十分」

戦艦レ級「……大丈夫だよ。逃げても」

男「……」

戦艦レ級「すぐに殺して追いつくから」

男(笑みを浮かべる瞳には明らかに冷たい殺意が籠っている)

男(それはまるで狂人のそれだった)

武蔵「提督、任せるが……」

日向「……」

男(この場を少女に任せてしまえばここからの脱出は可能だろう)

男(表に出てしまえば逃走もなんとかなるかもしれない)

男(だが……)

男「……」チャキッ

「っ!司令官!ダメだ!」

戦艦レ級「そういう所……嫌いじゃないよ」ダッ

男(来るッ!)

タタタンッタタタンッ!!!

男(戦艦レ級はまるでダンスでもするかの様に銃弾をかわしていく。いや……)

男(やはり射線に捉えられていないか……!!)

武蔵「ハッ!!」シュッ

ガッ!!!

戦艦レ級「……」

日向「私だって……!」チャキッ

タタタンッタタタンッ!!!

「……」グッ

シュッ!!!

戦艦レ級「あはははは!!」

男(全員の一斉攻撃。にも関わらず戦艦レ級はたじろぐ様子も無く、最小の動きでそれをかわしていなす)

男「……」

男(しかし……ここでふと思った)

男(奴らがここまでする理由はなんだ?結局狙っているものとは……)

男(深海棲艦には狙いがあるとは判断したが、現状それだと思える様なものは見つけられていない)

男(……丁度話せる深海棲艦がここにいるが)

男「……貴様らの目的はなんだ」

戦艦レ級「ん?どうしたの急に」

男「ここまでする理由だ。ただ単に人間を殲滅しようとしているとは思えない」

男「何か狙いがあって動いている様に見えるが」

戦艦レ級「私達の目的が知りたいの?」

男「国防軍の戦線を出し抜いてまで狙うものはなんだ」

「深海棲艦の狙いはっ」

戦艦レ級「私達の狙いは……」




「君だよ?」

お仕事です

男「……」

男(目的が……俺だと?)

武蔵「返答がそれとは。まともに取り合うつもりも無いか」

「っ!」チャキッ

戦艦レ級「投げるナイフも無くなった?」

「一本あれば足りる」

日向「……!」チャキッ

タタタンッ!!!タタタンッ!!!

カチッ

日向「ッ……予備の弾倉も無い」

男(目的が俺とは……どういう事だ……)

男(もしかして……俺の持っているUSBが目的……?)

「司令官!早く逃げるんだ!」

男「……」チラッ

「私はいい、私も後で脱出する!」

武蔵「……」ピトッ

男「……武蔵」

武蔵「奴の目的は提督の持っているものかもしれない」ボソッ

男「……あぁ」

男「……撤退する」

戦艦レ級「行かせないよ」ダッ!!

ガキンッ!!!

「……」ググッ

男「武蔵、日向!走れ!」

日向「あぁ!」ダッ

男「くっ……!」ダッ

武蔵「……」ダッ

キンッキンッ!!ガンッ!!

男(走り出す俺たちの後ろでは人間離れした肉弾戦が行われていた)

男(俺の持っているものが目的なら……ここで捕まる訳にもいかない……か)


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

短いですが

男(来た道を戻り、階段を駆け上がる)

男(地上に近づくにつれ戦闘音は大きくなっていた)

男「地上階だ。扉を開けたら速やかに行動するぞ」

武蔵「敵にも味方にも発見されないようにしなければ」

日向「同じルートで移動して、林を逆方向に行こう。裏手から出た方が見つかりにくいと思う」

男「そうだな。とりあえずはそれでいいだろう」

男「では……いくぞ」

ガチャ...

タタタンッタタタンッ...

男「……誰もいないな」

武蔵「籠城という所までは追い詰められていない様だが……」

日向「……」


男(俺たちが侵入した割れたガラスの場所にも国防軍に深海棲艦の姿は無い)

男(だが、入り口中央の陣地形成部には沢山の国防軍兵士がいた)

男「迫撃砲に……戦闘車両か」

武蔵「砲兵も多い。感染者だけならばあれだけの展開はしない」

日向「予想以上に芳しくはない様だな」

男「だが……手を貸す訳にもいかないからな。早々に離れるぞ」

男「砲声に合わせてあの草が生い茂っている場所へ移動する」

武蔵「私達が通ってきた場所か」

男「フェンスを抜ければなんとかなるな?」

日向「あぁ。大丈夫だ」

男「よし、では……」

ドォォォン...

男「走れ!」ダッ

パリンッパリンッ

男(砲声に紛れれば踏んだガラスの音も目立たないだろう)


男「身を低く。行こう……」

武蔵「……」

日向「……」

お仕事です

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ーーーーーー
ーーー


男(国防軍の戦線を上手く抜け出し、俺たちは明け方にはかなみ市防衛機構にたどり着いた)

男(三人とも疲れ果て、足元すらふらつく始末だった)

男(極度の緊張の中、深海棲艦という脅威に立ち向かったのだ。当たり前といえば当たり前だ)

男(特に日向は酷く、最低限の会話すら億劫そうにしていた)

ガチャ...

日向「……」

男「……」

武蔵「……」

日向「……休んでもいいか」

男「あぁ……資料だけ渡してくれ。報告やその他は……明日でもいいだろう」

日向「……」スッ

男「ん……ゆっくり休んでくれ」

日向「……」フラフラ...

ガチャ...バタン

武蔵「私達も……休もう」

男「そうだな……それでは」

武蔵「……ん」


ドンッ

男「……で」

男「なんで俺の部屋にいる?」

武蔵「なにか問題でも?」

男「いや……休まないのか」

武蔵「なにも睡眠を取る事だけが休養ではないさ」スッ

男「黒霧島……芋焼酎か」

武蔵「芋は嫌いか」

男「……もらおう」

トクトク...

男「つまみになるような物はなにもないぞ」

武蔵「土産話と煙を肴にすればいい」

男「……土産話はともかく部屋は煙臭くしたくはないのだが」

武蔵「そう言いつつ煙草を取り出している辺りまんざらでもないのだな」

男「……」

カチンッ...ジジジ...

武蔵「ん」

男「……」スッ

パチン

武蔵「ふぅ……」

男「……」モクモク

連日のハードな戦闘(仕事)でちょっと疲れてるのでここまでにします

何度もすいませんけど今日はお休みでお願いします……

仕事で変なトラブルに巻き込まれてちょっと疲労困憊してます……すいません

男「……」

ゴクッ

男「……」コト...

武蔵「……深海棲艦の狙いの話は後でいいだろう」

武蔵「お前の父と姉の話、聞かせてはもらえないだろうか」

男「……父の日記には。あの施設にやってきてからの研究の結果や進展が記されていた」

男「深海棲艦は以前黒き者と呼ばれていた」

男「艦娘計画は数多の失敗を重ねて完成した物でもあった」

男「……それはどうでもいいか」

男「父と姉はあの施設にほぼ監禁状態で、母に連絡を取る事も叶わなかったそうだ」

男「姉は強い人間だった。苦悩を乗り越え、父の研究を手伝うまでになっていた」

男「だがそれでも、父はいつか母の元へ帰ろうとしていた……」

男「帰りたいと願いながら、父は人間の存亡の危機と戦っていた」

武蔵「……」

男「やがて艦娘の研究は成功し、姉は……初期の艦娘の実験体となり」

男「適齢期を過ぎると指揮官として深海棲艦と戦っていた」

男「そして……その裏で、次世代兵器の開発が推し進められていて、父は利用されていた」

男「半端したがせいで姉を人質に取られ、その研究に引き続き加担する他無く……」

男「全ての人間を艤装に適応させるための薬を開発し……」

男「……あぁ」

男「どうしてこうも……上手く言葉にならないのだろうか……」

武蔵「混乱しているのはわかる。提督の家族が国家に利用されていた事もわかった」

パサッ

武蔵「……」

男「……読んでくれ」

武蔵「……いいのかい?」

男「構わないさ。読んだ方がわかりやすい」

男「俺は……あぁ……」

武蔵「……」

ペラッ...


武蔵「……」

パタン

男「……」

武蔵「……最後のページ、というより後半部」

武蔵「血でくっついて剥がれなくなっているな」

武蔵「かろうじて開ける、実質最後のページには血文字で……」

武蔵「娘を止めてくれ……か」

武蔵「……という事は、姉がなにかをしようとしていて」

武蔵「それを止める事を父は願っていた」

武蔵「そしてこの血の量では……恐らく重症」

武蔵「字がブレている所を見ると瀕死か」

男「……姉か、あるいはそれに近しい人間に……殺された事は容易に想像がつく」

男「……今まで俺は全ての真相を知るために生きてきたと言ったな」

武蔵「……あぁ」

男「こういう事態も想像しなかった訳ではない。それでもいいと思っていた」

男「なのに……」スッ

プルプル

男「こうも……先を知りたくないと思ってしまうものなのか……」

男「俺は……俺は……!」

男「違う……俺の本質は……俺の願ったものは……」

男「それでも……父と姉は……幸せに過ごしたのだと……そう……」

男「そうであって……欲しかった」

武蔵「……」

男「……この先は、最悪の展開でしかないだろう」

男「それを全て知った時、俺はどうなる」

男「生きる目的を果たし、希望を失い、俺はどうなるのだ……」

男「……俺にはなにも……残らない」

武蔵「……提督」スッ

ギュッ...

男「……」

男(柔らかな感触、女性特有の甘い香りが鼻腔を通り抜ける)

男(俯き、混沌としていた俺はそれで。武蔵に抱かれたのだとわかった)

武蔵「お前がこうも感情的になったのは初めて見た」ナデナデ

男(優しい手が俺の髪を、背中を撫でる)

武蔵「……きっと恐ろしいだろう。辛い現実が待ち受けているだろう」

武蔵「だがそれでも……提督は知るべきだ」

武蔵「お前の追い求めたものを、全てを」

武蔵「……それでもし生きる目的も希望も無くしたのなら」


武蔵「それでもいいじゃないか」

男「……」

武蔵「それでお前の存在が消えて無くなる訳ではない。全て失ったのなら……また手に入れればいいだけの話だ」

武蔵「それに……まぁ……そうだな」

武蔵「例え最悪の展開だったとしても、お前は全てを失う訳ではないぞ?」

男「……」

武蔵「私だって、他の艦娘だっているだろう?」

武蔵「お前の中では、私達の存在は無価値か?記憶の欠片にすら残らないような存在か?」

男「……それは、違う」

武蔵「……お前の生きる目的をまた、今度は一緒に探してやる事も出来る」

武蔵「私達に出来るなら全力でお前をサポートしてやるし、それに……」

武蔵「私はお前の姉のような存在だろう?弟は黙って姉に甘えていればそれでいい」ニヤッ

武蔵「だからこそ……ここでお前が折れてしまえば中途半端で終わってしまうだけだ」

武蔵「男なら最後まで貫いてみせろ」

男「……武蔵」

武蔵「……ん?」

男「……すまない」

武蔵「……ふっ」

武蔵「……たまにはこうして吐き出せ。お前はどうも溜め込む節がある」

武蔵「吐き出さなければいつか溢れかえって壊れるぞ」

男「……」

スッ

男「そうだな。次からは……そうさせてもらう」

武蔵「……ん。だいぶマシな顔になったぞ」

武蔵「もしお前が望むなら本当の姉になってやってもいいぞ」ケラケラ

男「それは……検討しておく」

武蔵「さぁ飲め飲め!いくらでも瓶は容易してやる!」

男「……ほどほどに飲ませてもらうさ」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

武蔵「……ぐご、すぴー……」

男「で、これか……」

男「寝るなら自分の部屋で寝てもらいたいものだが……まぁ今日くらいはいいだろう」グッ

男「っ……そこそこに、重いな……」

武蔵「すぴー……ふへっ……」

男「……相変わらずだらしのない寝顔だ」

男(……また探せばいい……か)

ボフッ

男「俺は……あぁ……床しか空いていない……」

ガシッ

男「……む?」

武蔵「……すぴぴ……」

男「……抱き枕にするなら他を当たれ」ググッ

ギリギリ

男「くっ……何故こんなにも力が強いんだ」ググッ

ギリギリ...

男(男の腕に特にやらわらかな物が二つ。潰れんばかりにあてがわれている)

男(流石にこれは……交際などしてもいないのにこれは……)

男「起きろ!」ムニムニ

武蔵「はふぇ……ふぉ……」

男「……」

男「……解放されるまで抱き枕役をするほかないのか」

男「……はぁ」

前作主人公が出るかどうかはお楽しみ、という事で

ここまでです

>>667 修正


武蔵「もしお前が望むなら本当の姉になってやってもいいぞ」ケラケラ

男「それは……検討しておく」

武蔵「さぁ飲め飲め!いくらでも瓶は用意してやる!」

男「……ほどほどに飲ませてもらうさ」


ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー

男「……」スースー

男「……む」モゾッ

男「……眠ってしまったか」

武蔵「……」スースー

男「……」

男(相変わらず身体を密着、もとい抱き枕の様にされている)

男(首元に吐息が掛かるのがくすぐったく感じる)

男「今度は……」スッ

武蔵「……んむぅ……」

男「……やっと離れたか」

男「今は……17時。もう夕方か……」

男「まだ眠気は払いきれないが……」

男「……少し腹になにか入れておくか」


ガチャ

男「……」

北上「あれ?提督じゃん。いつ帰ってきたの?」

男(あぁ……そういえば母の元へ帰った事にするのだったか)

男「他の皆は?」

北上「みんな出掛けてるみたいだけど。私も今さっき帰ってきたし」ゴソゴソ

男「では丁度その時に帰ってきた様だな。誰もいなかった」

北上「ふーん……」パリパリ

男「……」

北上「……どしたの?」

男「煎餅か……久しく口にしていないな」

北上「食べる?」スッ

男「いただこう」

男「……」パリパリ

北上「……」パリパリ

男「……茶でも入れてこよう。飲むか?」

北上「もらうよー」


コトッ

北上「おぉ……ありがとね」

男「うむ。煎餅にはやはり茶だな」

ズズッ...

男「……」

北上「……」パリパリ

北上「……」

男「……どうした?」

北上「提督が自分からお菓子を食べる所って見た事ないかも」

男「間食はあまり取らないし、皆からくれればそれで十分だからな」

北上「そんなもんなの?」

男「そんなものだ」

プルルルル...

男「内線か」スタスタ

男「こちら中尉」

少佐『いたか。すぐにこちらに来てもらいたいのだが』

男「わかりました」

ピッ

男「少し出てくる。煎餅、美味かったぞ」

北上「いってらー」

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー


少佐「すまないな、折角の休暇中に」

男「いえ、それで……」

少佐「あぁ……今日の未明の事だが……」

少佐「都内の研究所跡地で中規模の戦闘が起こった」

男「戦闘……ですか」

少佐「感染者に駆逐艦級の深海棲艦の襲撃があってな。国防軍に多少の犠牲者が出たようだ」

男「……」

少佐「こうも内部から敵が湧いてくるとは……」

男「やはり深海棲艦の拠点がどこかに?」

少佐「その可能性は極めて高いだろうな」

少佐「休暇の剥奪はしないが、備えはしておいてもらいたい」

男「わかりました」

お仕事です

ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー


男「……」

男(深海棲艦の内部からの襲撃。戦闘レ級は俺を狙っていると言った)

男(あのUSBに入っている『解放旅団』と名のついたファイル)

男(やはりあれが……)

男(今夜からでも……調べる必要がありそうだ)


古鷹「提督!おかえりなさい!」

龍鳳「今晩御飯を作っているのでもう少し待ってて下さいね」

神通「私は……今のうちにお掃除をしておきますね……」

男「皆帰っていたか」

北上「ついさっきねー」ゴロゴロ

男(武蔵と日向の姿が見えないな……まだ寝ているのか)

男(……無理に起こすのは気が引けるが)

男(一応声は掛けておくか)


コンコン

男「日向。起きているか?」

男「……」

ガチャ

日向「……」

男(まだ眠そうな顔をしているが、とりあえずは大丈夫そうだな)

男「夕食はどうする?」

日向「……もらうよ」ゴシゴシ

男「さて……ふむ」

男(そういえば武蔵は俺の部屋で寝ているのだったな……)スタスタ

古鷹「提督?武蔵さんを起こしに行くんじゃないんですか?」

男「う、うむ……まぁ、そうなんだが……」

古鷹「……?」

ガチャ...バタン

男「……」

武蔵「……すぴぴ」

男(またいつもの酷い寝相で俺のベッドをシワだらけにしていた)

男「武蔵、夕食はどうする?」

武蔵「……」

男「……」

男「……寝ているのなら起こす必要はないか」

武蔵「……」

男「……」

男(大の字になって気持ち良さそうに寝ているのは構わないが……)

男(へそを出しながら寝ていたら風邪を引くぞ……とは何回か言ったか)

男「……仕方ないな」

スッ...

ガシッ!!

男「……」

武蔵「……」ニィッ

グイッ

ボフッ

男「……」

武蔵「ようこそ提督、私の身体の上へ」

男「……酔っているのか?」

武蔵「なぁに……提督が出て行った後に少しだけ飲んだだけさ、少しだけ……」

武蔵「……へへっ」ギュッ!!

男「ぐっ!?」

男(締め付けられるというか押し付けられている!)

男(それに酒臭い。こいつあの短時間でどれだけ飲んだんだ……)

男「早くしないと夕食を食べ損ねるぞ」

お仕事です

帰りは睡眠いただきました

こう……報われない話とかいいですよね。大切なものを守ろうとして壊してしまうとか

大衆一般的な正義とかも、それよりは自分の為の正義とかむしろ絶対悪な感じの主人公とか最高だと思うんです

武蔵「別にいいだろう?」

男「俺は腹が減った」

武蔵「まぁそう急くな……」

男「急いてる訳でもないんだが。ほら行くぞ」グッ

武蔵「……」ギュッ

男「……」

武蔵「……」

男「ええい離せ!!」ググッ

武蔵「離してみろ」ニヤッ

コンコン

古鷹「提督ー?どうしたんですかー?」ガチャ

男「あ……」

古鷹「……」

ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーー


男「……」モグモグ

古鷹「……」

武蔵「……」モグモグ

北上「……なにこれ?」

神通「さ、さぁ……」

龍鳳「……?」

日向「……」モグ...モグ...

男「……」

武蔵「……」ニマニマ

古鷹「ぅ……」カァァ

日向「……」ウツラウツラ

男「……ごちそうさま。今日も美味かったぞ」

龍鳳「はい!ありがとうございます!」

男「日向、武蔵。後で話があるから俺の部屋に来い」

男「眠いのなら無理する事はないがな」

日向「わかった」

武蔵「あぁ……」

古鷹「今度は三人ですか!?」

男「先ほどのは事故だ!古鷹が思っている様なそんな事では断じてない」

北上「なにかあったの?」

男「少し酔っ払いに絡まれただけだ……」

いや、選択肢関係なくたまたま装甲悪鬼村正とか刃鳴散らすとかのOP見ててそう思っただけなので……

苦味があったほうが話にも味が出るなと思ったのです。何も考えないでただ甘いのも嫌いではないですけど

お仕事です

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


男「……」カタカタ

男「一応……ウイルスが入っていないか確認するか」

ガチャ

武蔵「失礼するぞ」

日向「……」

男「二人共、大丈夫か?」

武蔵「あぁ……酔いも覚めた」

日向「私も大丈夫……多分」

男「……缶コーヒーが丁度あったな」スッ

ポイッ

日向「ん……」パシッ

男「……さて」

男「事を急くのは良くないとは思うが、そうゆっくりしている訳にもいかない様だ」

男「深海棲艦が、このデータを狙っている」

男「深海棲艦共に俺たちの顔がばれたとなれば……」

男「……必ずここに奴らは現れる」

武蔵「だろうな……」

日向「……」

男「奴らに対抗する為には、奴らの狙いを理解し。その上で対策を講じる必要がある」

男「今からあの施設で手に入れた『解放旅団』と名のついたファイルを開き、捜索する」

男「他にも持ち帰った資料から……」

日向「……君はさ、なんの為にここまでするんだ?」

男「……」

日向「父と、姉の暮らした痕跡を。生きた痕跡を調べたかったんだろう?」

日向「その為に今まで……戦って、ここまで来たんだろう」

男「……あぁ、そうだな」

日向「今君はその全てを知る目前にいる。じゃあ全てを知った後は?」

日向「何故ここまでリスクを犯して深海棲艦の目的を暴こうとするんだ?」

武蔵「……」

男「……さてな。それは俺にもわからん」

男「かなみ市防衛機構の一員としてかなみ市を、お前たちを守りたいのか」

男「ただ惰性でこの様な事をしているのか」

男「家族を失う原因にもなった深海棲艦が憎いからか」

男「……俺にはわからない」

男「だが、この資料の山をなんとかすればまた違うかもしれないな」

日向「……」

武蔵「……やるなら早くするぞ」

男「そうだな。今ファイルを開く」

カチカチッ

男「……」

男(ファイルを開いて見てみると壊れたデータが多い。まともに見れるのは数個程度だろうか)

男「上から順に生きているものを調べる」

男「まずはこの文章ファイルだな……」

ここまでです

『数年前から、解放旅団と名乗る武装集団が戦地に現れるらしい』

『内戦地域においては反政府派を支援し』

『時に軍施設周辺でゲリラ的な攻撃を行う危険な集団である』

『またある時は国家機密にハッキングし、厳重に保管されている情報をばら撒こうとする』

『彼らは愚かなテロリスト集団に過ぎないが、だからと言ってそれを野放しにする訳にもいかないだろう』

『我々の研究や実験にも干渉してこないとは言いきれない。注意するに越した事はないと言う事だ』

『彼らは民衆の戦争からの解放を謳っているらしい』

『そのような事を言いながらテロ紛いの行動をしているのだから笑いものだ』

『絶対的な力による平和維持を否定する訳ではないが、彼らのやり方では不可能だろう』

『それにしても、彼らが扱う武装はアメリカ軍やロシア軍等の正規装備らしい』

『いずれかの国家が裏で手を引いている可能性も視野に入れなければならない』

『解放旅団を利用し、我々の成果を強奪しようとする可能性も十分にある』

『……噂に過ぎないが、解放旅団は独自に戦闘兵器を開発しようとしているらしい』

『各国から新型兵器の情報を盗み出していると。その様な噂が広まりつつある』

『もしそれが本当なら、我々は十分に狙われている』

『次世代戦車、艦娘技術の情報を漏らす訳にはいかない』

『我々の施設にも、スパイが紛れ込んでいるかもしれないな』

『炙り出して、居るなら色々と吐いてもらわねば』

そういう技術って意外と進歩遅いイメージ

短いですが

今日はお休みでお願いします……

『解放旅団のスパイと思われる人間を発見。拷問を加えたが情報を得る事が出来なかった』

『だがそれでもいい。その人間が本命ではないからな』

『それに指示を与えていた人間がいる。少なくとも近くに』

『それを浮き足立たせる事が出来たのならそれでいい』

『あとはなにか行動を起こしてくれれば……』

『深海棲艦の大規模掃討作戦。部隊の指揮を高める為にも必要だと思ったが、第一にスパイの炙り出しに十分たり得るものだと思い行う事とした』

『スパイの存在は前々から気がついていたが、どうにも施設所属の艦娘が怪しい』

『司令である男はまだここに来て浅いが、中々に面白い人物だ』

『……是非、アレの被験体にしてみたい』

『まさか向こうから仕掛けて来るとは思いもしなかった』

『大規模掃討作戦が大規模防衛作戦になってしまった』

『それでも構わないが』

『結果として言うとデータ最深部への進入は認められず』

『だが……面白い物を見つけた』

『恐らくダシに使われたか囮にされたか……』

『なんにせよこれは楽しめそうだ』

『正直な所を話すと、解放旅団の事は最早眼中にない』

『脅威である事は間違い無いのだが、何故だろうか』

『私自身の心境の変化に多少困惑はしたが』

『楽しめればなんでもいいじゃないか』

『次世代戦車が完成すればいつかその情報は自然に広まる。艦娘技術もいつまでも守り通せるものではない』

『それに……混沌とした日本を見るのも面白そうではないか』

『さて、いつ仕掛けてくるか。楽しみで仕方がない』

お仕事です

男「……」

武蔵「……」

日向「……」

男(ほんのわずかな記録ではあったが……)

男「……解放旅団と言う名のテロリスト集団があの施設で暗躍していた。という事か」

武蔵「……蜂起が起こったのは解放旅団の手引きがあったから?」

男「……首謀者がその解放旅団の一員だった可能性も十分にあるな」

日向「……」

男「日向、どう見る?」

日向「……私が当時いた時には既に解放旅団の手が回っていた、のか」

日向「だが元帥は……外国の手をのこのこと許すほど馬鹿ではなかった」

男「姉が施設を……掌握する前。父の時既に手が回っていた可能性は?」

日向「……」

男「……これは考察しても仕方ないか」

男「ともかく、なんらかの形で解放旅団という勢力が施設での出来事に関わっている可能性が出てきた」

男「……深海棲艦が狙うもの。施設で起きた事の真相」

男「……混沌として来たな」

武蔵「提督よ」

男「どうした、武蔵」

武蔵「私が気になるのは最後の記述だ」

男「……」

武蔵「心境の変化。これほどの一大事をどうでもいいと。楽しめればなんでもいいと投げ捨てられる状況」

武蔵「それがわからん」

男「……精神に異常をきたした人物だったか、あるいは」

男「それに繋がる出来事があった」

武蔵「……全く、とんでもない場所だな」

日向「……」

短いですがここまでです

男「……さて、次も調べるとしよう」カタカタ

男「……これは」


『解放旅団の存在について』


男「……」カチッ

『解放旅団の噂はやはり戦場では絶えない』

『灰色の迷彩服を来た、アメリカ軍装備の……』

『突然現れ、軍事施設などを襲撃し……』

『私は少しずつ調べて疑いを持った事がある』

『それは……解放旅団の存在についてだ』

『解放旅団の噂は絶えないが……』

『噂でしか情報が回って来ないのだ』

『アメリカ軍装備やロシア軍装備。はたまたドイツや日本などと言った国の装備をしていたと』

『いくらなんでも情報が曖昧すぎる』

『それに、解放旅団を捉えた写真も、彼らの犯行声明などと言った直接彼らと繋がる情報が無いのだ』

『解放旅団による軍事施設の襲撃などと言った事件も聞くが、果たしてそれは"本当に解放旅団なのか?"」

『……私の考えでは、まず解放旅団という存在は』

『UMAや都市伝説の様な捏造された存在であると言う事』

『もう一つは、解放旅団などと言う"テロリストや集団"は存在しない』

『……恐らく、後者であるだろう』

『解放旅団とは元から戦闘集団では無いのだ』

『世論や情報の操作に長けた者、ハッキングに長けた者』

『そんな者達の集団なのではないだろうか』

お仕事です

『ならば尚更次世代兵器の情報も艦娘の情報も渡す訳にはいかない。解放旅団に渡れば恐らく……』


男「これは解放旅団についての考察か」

武蔵「確かに、このような考え方もある」

日向「……」

男「……」

武蔵「……次のファイルを」

男「あぁ……」

男「……なに」

武蔵「どうした?」

男「……これ以外全てのファイルが壊れている」

日向「それでは手がかりは……」

武蔵「……まだだ。持ってきた資料の中にもなにかあるはずだ」

男「そうだな。一枚ずつ調べていこう」

男(俺はとりあえず薄汚れたノートと留められた資料の束に手をつけた)

男(ノートの1ページ目から、見落としの無い様に、頭に叩き込む様に文字を眺める)

武蔵「私はここから見ていこう」

日向「それじゃあ……これから」

男(これも……誰かの日記の様だ)

『私がこの施設に幽閉されてからどれだけ時間が経ったか分からない』

『文字、国語、数学を学び、パパの研究を側から見続け。私の人生の殆どをここで過ごしている』

『いつしかパパの研究に興味を持ち、その分野の勉強を必死にした』

『ここは牢獄だ。ママや……弟の顔も私の記憶から薄れていく』

『同年代の人間も殆どおらず、私は一人取り残されていく。そう感じて、怖くなったのだろう』

『そしてパパの研究の手伝いをするようになる。世界を救う為に皆必死に戦っていた』

『私も戦わなければならない。皆の為に、パパや顔も忘れてしまった家族の為に』

男「……」

男(自然と手が震えていた。様々な負の感情が混ざり合い、泥水に押し流される様な気分だった)

男(次のページに手を掛けるのが怖い。自ら終焉に歩み寄っているような感覚)

武蔵「……どうした、提督」

日向「……!」

男「……」

男(武蔵は不安気な表情で、日向は衝撃を受けた様な表情で、俺を見ていた)

日向「……尋常ではない表情をしているぞ。手も震えている……」

日向「……こんな君は初めて見た。一体なにが」

武蔵「……提督、そのノートは」

男「……これは……」

男「……恐らく、いやきっと」

男「姉の……手記」

日向「……元帥の……!?」

武蔵「……」

男「……」

男(ごくりと唾を飲む音が、じっとりと伝い始める汗が、俺の緊張感を物語っている)

男「……は、ははは。どうしてこうも俺は……運が良いのだろう」

男「俺の知りたかった事の全てを、やっと知る事が出来る」

男(……読まなければ)

男(読まなければ……いけないのだ)

男「……」

ガンガン話を進めていく予定です。今日はここまでで

『艦娘の技術が完成したのはそれから数年後の事だ』

『長く、過酷な研究の日々だったがやっと。深海棲艦に報復出来ると。そう思った』

『私は艤装と呼ばれる装備を身に纏い、電子の海に降り立った』

『異形の者、黒き者、深海棲艦。人間を苦しめていた存在、私達の敵を砲弾で穿つ事を私は快感に思っていた事を覚えている』

『それから私は、存在しない嘘の戦艦』

『コードネームを、虚構型戦艦一番艦、虚構として戦いの日々に身を投じた』

武蔵「……提督よ。そこまで不安なら……私達にも見せてくれ」

日向「あぁ、そうだな。一緒に見れば随分負担も違うと思う」

男「……そうだな。頼む」

武蔵「……これは」

日向「……」

男「虚構型戦艦一番艦……」

武蔵「完成しなかった"虚構"の戦艦……か」

男「それもそうだが……姉は、艦娘だった……のか」

日向「元帥が艦娘だったとは……知らなかった」

男「……」

武蔵「提督の姉の艤装が、現実世界での戦車のモデルになっている?」

男「……」

『パパの指揮下で私は戦い続けた。いつしか艦娘の仲間も増え気がつけば、大部隊になっていた』

『そこで知り合ったのが大和。私の一番の友人となる人物だった』

『同じ艦娘同士、多少年齢は違えども私達は一緒に戦って心を通わせた』

『ここで初めて私は、友人というものを手に入れたのだ』

『やがて艤装の適齢を過ぎた私は、今度は司令官として電子の海に飛び込む』

『私自身が戦えなくともやるべき事は一つ。深海棲艦を一隻残らず駆逐する事』

『寝る間も惜しんで指揮の勉強をし、少しでも艦娘達を最適に動かせる様努力した』

『対深海棲艦や艦娘技術向上の為に独自に研究も重ねた』

『結果は……そう上手くはいかなかったが』

『そんな日々を過ごしているうちに私は……そう。私を変える事件に巻き込まれる事になる』

『いや、あの結果を招いたのは私のせいか』

『大規模な深海棲艦の襲撃があった』

『もちろん私に指揮下の艦娘も出撃し対処に当たった』

『そこはまさに地獄だった』

『海面を踊る炎、焼けて沈んでいく深海棲艦』

『炎の間から瞳を光らせて、我々を喰らおうと襲い来る奴ら』

『無数の深海棲艦を相手に、私達は奮戦した』

『だがそれも、一時的なものだった』

『私の指揮が、私の指示が、相手に隙を与えたのだ』

『何人もの艦娘が傷ついた。何人もの艦娘が苦しんだ』

『そして、私の大切な友人は……』

『深海棲艦から私を守り、一人殿を務め、燃える海に沈んだのだ』

ここまでです

『孤独な生活の中で手に入れた大切な友人を殺したのだ』

『空虚な心を押し込めて私は、大和の遺体を引き取った』

『この施設に幽閉されれば、外界とは通じる事は出来ない』

『大和の両親は彼女が死んだ事さえ知らないのだ』

『だから私は彼女を手厚く葬ると言って傷一つ無い彼女を……私が密かに使っていた隠し部屋へと連れ込んだ』

『彼女を殺した責任は私が取る』

『彼女の身体を腐らせないように、培養液と保存液を兼ね備えた液体の中へと保存した』

『どんな手を使ってでも彼女を……大和を……』

『蘇らせる』

『今思えばここから、私はおかしくなり始めていたのかもしれない』

『今、まだ私の意識が残っているうちに。これを記して置かなければならないだろう』

『私は……人ならざる者になろうとしている』

男「……死者を、蘇らせる」

日向「……狂っている」

男「……あぁ」

日向「ッ……!!済まない……」

男「いや……いいさ」

武蔵「という事はあの隠し部屋でみたケースに入っていた女……」

男「……!」

男「……確かに、ネームプレートに……大和と記されていた」

武蔵「しかし、いくら技術を結集した所で死者を蘇らせるのは……」

日向「それと、人ならざる者とは……」

男「……」

武蔵「……」

男(深海棲艦、人ならざる者と聞いてそれしか思いつかなかった)

男(だが深海棲艦になる……とは。姉は感染者だった?)

男(だがこの当時深海棲艦は現実には……)

男「……続きを、読もう」

『私はいかにしてして彼女の身体を元に戻すかを考えた』

『神経は所々焼き切れていたがそれだけだ。なんとかなる』

『生きた人間の神経細胞を培養し、大和に移植する』

『培養液の中であれば、それも可能かもしれない』

『上手く上層部を騙し、神経細胞を手に入れた私はそれを培養し彼女の身体に移植した』

『友人の身体を切開するのは、心が痛んだ』

『それでも彼女が蘇るなら……私は。狂人にでさえなろう』

『そう心に決めたのだ』

ここまでです。段々と話が繋がっていきます

いかにして大和を取り戻すのか。どう話が続いていくのか、予想しながら続きもお付き合い下さい

『父が知らぬ間に国に利用されている事は知っていた』

『父の研究、艦娘の技術が現実世界での兵器運用に流用されようとしている事も』

『大和を取り戻す為に奔走する最中、元々は人間を守る為に開発されていた艦娘の技術が人間を[ピーーー]為に使われるのはやはり許せなかった』

『ならば、それを止めてみせよう。私が止めるべきなのだ』

『大和の身体を生き返らせる研究と並行して私は』

『父を利用していた研究者の弱みを徹底的に。調べ上げた』

『どいつもこいつも欲にまみれている。弱みはいくらでも私の手元に集まってきた』

『それを利用し、私は研究者達を脅した』

『ばらされたくなければ私に従え』

『……私はこれでも、貧弱な大人に負ける程弱くはない』

『艦娘として戦う為、精神を鍛える事と肉体の鍛錬も欠かさなかった』

『CQBや射撃。戦闘に使えるものならなんでも覚え訓練していた』

『最早執念に近かったと思う』

>>763 修正


『父が知らぬ間に国に利用されている事は知っていた』

『父の研究、艦娘の技術が現実世界での兵器運用に流用されようとしている事も』

『大和を取り戻す為に奔走する最中、元々は人間を守る為に開発されていた艦娘の技術が人間を殺す為に使われるのはやはり許せなかった』

『ならば、それを止めてみせよう。私が止めるべきなのだ』

『大和の身体を生き返らせる研究と並行して私は』

『父を利用していた研究者の弱みを徹底的に。調べ上げた』

『研究者達が父の研究を利用して開発していた兵器の事や私達に隠していた事も洗いざらい吐かせた』

『私の艤装。コードネームでもあった戦艦虚構を現実の兵器に利用しようとしている事』

『そして、適性の無い人間でも艤装に適応させる為の薬物を開発していた事も』

『その研究の為に、沢山の孤児や病気の人間を実験体に利用していた事も』

『私がそこで知った薬物の効果や副作用についても記しておこうと思う』

『人間の脳には使われていない部分がある。まずはその部分を活性化させ、通常の人間よりもさらに神経レベルでの反応速度を高め、演算能力や思考性を向上させる効果がある』

『そして、艤装が適応するために必要とされている。適齢期の少女だけが発する脳波を人工的に起こさせる』

『こうする事で適性の無い人間でも艤装を扱えるようになり、より強く、強力な艦娘として機能させる。というものだ』

『副作用としては、脳の活動が異常に活発になる為』

『幻聴や幻覚などが現れる。性格までも変化させてしまうという』

『研究者達はこれを≪昇華薬≫と呼んでいた』

男(昇華薬……というとあの時のフォルダにもあった名前か)

男(……薬)

武蔵「提督。薬と言えば……」

男「あぁ……」

男(俺は首謀者が居たブロックの執務室で手に入れたメモを取り出した)


『第一に幻聴、幻覚が襲う。第二に精神を蝕み、もう一人の自分に侵される』

『第三に、衰弱し自分を奪われ狂人と化す』

『又は抗い続け、死ぬ』


男「……」

日向「これは。この昇華薬の事だったのか?」

男「……恐らく、そうだろうな」

武蔵「……首謀者はこの薬の存在を知っていた。という事か……」

男「……」

ここまでです

『この薬さえ無ければ……あぁ』

『私はまだ……』

『私がこの薬の話を聞いた時に、なにか強い衝動に駆られた様な気がした』

『副作用の事など。頭に無かった』

『彼女を殺したのは誰だ』

『彼女の命を奪ったのは』

『彼女との絆を裏切ったのは』

『……私だ』

『私が指揮官としてでは無く、艦娘としてあの戦場に立っていたのなら違ったのではないだろうか』

『私に力があれば救えたのではないだろうか』

『なにもせず立ち尽くして、ただ命令だけを下して』

『痛みを伴いながら必死に戦う艦娘達を』

『見殺しにするのは……』

『嫌だ』

『気が付いた時には、私は薄桃色の錠剤が入った小さなビンを握りしめていた』

『蓋を開ける事になんの躊躇いも感じなかった』

『乱暴に錠剤を私の手のひらに取り出し』

『音を立てて飲み干した』

『私が最初に見たものは、悪夢だった』

『私でない私が人を殺している』

『見知った顔ばかりが赤く濡れ、地面を這っていた』

『私の大切な指揮下の艦娘達』

『パパ』

『大和も』

『それから。私は……おかしくなった』

『電子の世界では艦娘と同等の力を発揮し』

『幻覚や幻聴が常につきまとう』

『そして……躊躇いや悲しみという感情を無くした』

『私はこの施設を完全に掌握し、全ての研究を引き継いだ』

『私が飲んだ薬物を、副作用無く効果を発揮させる研究』

『電子の世界だけで強くともだめだ』

『現実においても強くなければならない』

『次世代兵器の研究も私が引き継いだ』

『さらに強力な艤装の研究に』

『……深海棲艦の研究も』

お仕事です

突然ですが、宣伝です!




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なんと!つまらないと今話題のこのSSスレが…

とうとう宣伝用のスレになってしまったぁ!





文句があればこのスレまで

P「俺が…タイムスリップ?」
ex14.vip2ch.com

『私がある日、電子の海に降り立った時の事だ』

『いつもの様に私の指揮の元、深海棲艦を撃滅する』

『ただ一つだけいつもと違う事があった』

『それは……私が昇華薬を服用した後だと言う事だ』

『まるで黒に飲み込まれる様だった』

『深海棲艦に私が近づいた時、落ちる様な感覚に襲われた』

『それと同時に"なにか"が私の中に入り込む』

『……後から知った事だが。昇華薬にはさらにもう一つの副作用がある』

『活性化した脳は情報を吸収する』

『私は、深海棲艦の情報を。頭の中に取り込んでしまったのだ』

『脳が侵されていく。幻聴や幻覚に飲み込まれる』

『泥の海で溺れる様に、足掻けば足掻く程に沈んでいく』

『今私がこうして記している間にも私の中の深海棲艦は根を強く張り、私の身体中にまとわりつこうとしてきている』

『私はもう……』

『それからというもの。私の意識は時に深海棲艦に奪われる様になっていた』

『私の意識はここにあるのに、口からは思いもしない言葉が走り、身体は勝手に動き出す』

『それでも、私は……やり遂げなければいけない事があった』

『……大和の蘇生』

『神経を繋げる事にはほぼ成功していた。時折微弱な電流を流し更に再生を促す』

『だがそれでも、大和が蘇る事はない』

『脳が動かない。心臓が動かない』

『どうして、どうして、どうして……!!』

『……』

『……きっと。大和の魂はもう、そこにはないからだろう』

『大和はとうに、ここにはいないのだ』

『私は、気力を失った』

『大和を、友を救えない』

『その事実が深々と私の胸に突き刺さった』

『そこから溢れてきたのは、黒い、黒い血だった気がする』

『もうどうでもいい。救えない、廃棄すべき存在ならば』

『研究の糧にしてしまおう』

『私の狂気は……もう誰にも止められない』

『大切な親友を私は深海棲艦の研究の材料にしてしまった』

『大和の身体を利用して、深海棲艦をこの現実世界。いや』

『電子の世界を観測する世界。観測世界とでも言おうか』

『観測世界に呼び出す為の器にするために』

『大和の魂がもしあったとしても、もう大和の魂が入る余地はとうに無くなっていた』

『邪魔する者は私の手で殺した』

『弱みを握られた研究者が不意を突いて私に襲いかかった事もあった』

『それを私は、苦痛を与えた上で殺した』

『それは……パパも同じだ』

『私はこの手でパパをも殺してしまった』

『正気が戻っている今でこそ後悔している。肉親を殺したという事実が私に苦痛を与えている』

『だがパパの身体を軍刀で斬りつける瞬間。私の頬は微かに上に上がっていたと思う』

『私が私で無くなっていく。私という存在が消えていく』


『最後に……大和。君に……会いたかった』

男「……」

武蔵「……」

日向「……元帥。あの人は……」

男「……」ギュッ

男(やり場の無い怒りと、悲しみが、俺の中で渦を巻いていた)

男(姉もまた……)

武蔵「……まだ。少し続きがあるようだぞ」

男「あぁ……」

ギリッ

男(歯噛みしたところで、なにも変わる事はない)

男(それでも俺は、そうせざるを得なかった)

『大和の身体を弄っているうちに、深海棲艦のDNAを利用すれば死んだ身体さえ再生させられるのではないかという結論に至った』

『まぁ、電子の世界からDNAを取り出すというのは今の技術では相当に困難であるだろうし』

『大和の魂が、大和の情報が抜けたこの死骸では完全な蘇生など無理だろうが』

『そう思っていた矢先の事だ』

『私は直属の艦娘部隊を率いて深海棲艦を狩っていると。海に佇む一人の少女を見つけた』

『私はすぐに気が付いた。あれは……大和だ』

『後々分かった事だが、電子の世界で死ぬという事は両方の世界で死ぬ訳ではない』

『電子の世界で死ぬと観測世界との繋がりが絶たれる』

『魂は電子の世界に残る。一方観測世界では魂の抜けた殻だけが残る』

『つまり、電子の世界では生きているのだ』

『涙を溜め、私の元に駆け寄る大和を……』

『私は拘束した』

『とうの昔に大和の身体は魂の器として機能しなくなっていた』

『観測世界で私と肩を並べる事は出来ない』

『だから、電子の世界で私は大和を拘束し、研究の材料にする事にした』

『大和が電子の世界で沈んだ後の事を正確に、ゆっくりと聴かせてやりながら』

『私は大和の魂を弄った。深海棲艦の情報を掛け合わせ、新たなものを作り出そうとした』

『苦痛を感じて涙を流す姿は中々に楽しいものだった』

『パパの"元帥"という号を引き継いでこの施設を掌握してどれくらい経ったか』

『昇華薬の研究に勤しんでいるが耐えきれずに死ぬ者が後を絶たない』

『そこで私は関係者を利用して外部から一人の男をこの施設に入れた』

『事前の検査では十分な適性があったが果たしてどうなるのか』

『楽しみで仕方がない』

『記録をつけるというのは中々面倒な事だが、今日は記念に記しておこうと思う』

『この前招いた男、少佐の事だが』

『昇華薬の幻覚や幻聴の症状に苦しみながらも適応し始めていた』

『私の研究を始めてから初めての症例だ』

『面白くなってきた……!』

『だんだんと細かい事に気を使う事が面倒でたまらなくなってきた。この記録をつけるのもあと何回か……』

『楽しければなんでもいい。細かい事など気にする必要はないのではないか』

『明らかに理性が蒸発してきていると自分でも分かったが』

『まぁ……それでもいいだろう』

『少佐はどんどん強くなる。昇華薬によって彼は電子の世界で艦娘すら凌駕する力を手に入れた』

『私など簡単にひねりつぶせるほどに』

『そろそろ……私も考えなければならないか』

『どうすれば私は彼よりも強くなれる?』

『……いっそ深海棲艦にでもなってしまおうか』

ここまでです

『もしかすると。私がこれを書くのは最後になるかもしれない』

『少佐が艦娘を連れ施設を脱出した。そして他の指揮官と艦娘、施設関係者が暴動を起こし始めた』

『まるで内戦だ。戦争が私の目の前で起こっている』

『まぁ……前々から怪しい動きがあったのは知っていたが』

『……少佐は必ず戻ってくる』

『私を殺しにな』

男「……」

パタン

男(つまり。まとめると、父と姉は国の施設に幽閉され)

男(国の陰謀に利用され、姉は友人を失って狂い)

男(父は姉に殺された)

男(姉は狂人となり、非道な研究を続け……恐らく)

男(蜂起の首謀者。少佐と呼ばれていた男に殺された)

武蔵「……」

日向「……」

男「……これが。俺の知りたかった真実」

バサッ

武蔵「提督……本を……ん?」

武蔵「なにか。挟まっているぞ?」

男「……」

男(俺が本を落とした衝撃で間に挟まっていたなにかが飛び出した様だ)

男(二枚の写真……の様だが)

ペラ...

男(一枚目には白髪混じりの白衣を着た男と、長い黒髪でほっそりとした、同じく白衣の女性が並んで写っていた)

男(お互いになんとも言えない様な、むず痒そうな笑顔をしている)

男(二枚目は……今写っていた白衣の女性と、制服の様なものを着た美しい女性が写っている)

男(こちらでは二人共、はにかむ様な笑顔で写っていた)

男「……」

ドクン

男「……これは」

日向「……元帥だ」

武蔵「……」

日向「白衣の男は……君の父で制服の女性は多分……大和」

日向「……こんな普通の笑顔の君の姉は初めて見た気がするよ」

男「……」

男「……あぁ」

男「……二人共、仲良さそうではないか」

男「……」

男(歯がカチカチと音を立てるのを強く食いしばって抑える)

男(目頭が、鼻先が、熱くなった)

男「……全部読み終わった瞬間。絶望しかなかったのだと思った。父と姉は本当の地獄で生きてきたのだと」

男「救われる要素など何一つなかったのだと」

男「けれど……この写真……」

男「……ぐっ……!!」

ギュッ

武蔵「……絶望だけではなかったな」

男「あぁ……!そうだ……絶望だけでは……なかった……!!」

日向「……」

男(暗闇の中に少しだけ光が射した様な気がした)


ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーー

お仕事です

日向「……そうか。元帥は……なるべくしてああなった訳ではなかった」

日向「……」

男「ぐ……うぅ……!!」

男(嗚咽を押し殺し、息を止めても涙が伝うのは止められなかった)

男(やりきれない思いと、家族をここまで堕とした当時の政府への怒りと)

男(少しでも、ほんの少しでも救いがあったのだという安堵と)

男(最早この感情を抑え続けるのは……不可能だった)

武蔵「……」

男(暖かな胸が俺を優しく包み込む)

男(しばらくの間俺は、武蔵の胸の中で震え続けていた)

ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーー


男「……すまない。取り乱した」

武蔵「構わない。お前の可愛い所も見れたからな」

男「……」

武蔵「そんな目で見るな、誰にも言わんさ」

日向「……」

男「……日向」

日向「ん……」

男(俺は俯いたままの日向に話しかけた)

男「姉は。日向が一番初めに姉を見たときには……」

日向「……私があの施設にやってきた時には大和は伝説の艦娘と呼ばれていた」

日向「その時最初期の艦娘があまり残っていなかったのもそうだが……」

日向「不敗の戦艦。その名に相応しい実力」

日向「彼女が死んだその時まで一度の敗北もなかったそうだ」

日向「……まぁ、その大和が死んだ時から狂ったのなら」

日向「私が見た時既に……」

男「……そうか」

日向「……すまない」

男「日向。お前が謝る必要など無い」

男「お前も巻き込まれた人間の一人だ。落ち度はなにひとつ無い」

日向「……すまない……!!」

男「……」

武蔵「それで提督。ほぼ全てをこれで知り得たのではないか?」

武蔵「父と姉がどの様に過ごしていたかを知ること。その為にここまで来たのだな」

男「……あぁ」

武蔵「今のお前は……どうだ。空虚か?全て終わったか」

男「……」

男「……いや。まだだ」

武蔵「……」

日向「……」

男「深海棲艦の狙うものについては未だ不明」

男「解放旅団に昇華薬」

男「……蜂起の首謀者の事も」

男「なに一つ正確に把握出来ていない」

男「まだすべき事は山のようにある」

武蔵「……なにか。失ったか?提督の中には……」

男「……確かに。最悪の結末だった。俺の希望は……消えた」

男「だが……それでも俺には」

男「武蔵」

武蔵「……」

男「日向」

日向「……」

男「龍鳳、神通、北上、古鷹」

男「……俺の元には、まだ友が残っている」

男「断じて、空虚などではない」

男「……そうだな、武蔵?」

武蔵「……そうだ。お前の言う通り、お前の元には私達がいる」

男「日向も、そうだな?」

日向「……勿論だ」

男「ならば……大丈夫だ」

男「急いで残りの資料を確認する。少なくとも俺たちは答えに近づいているはずだからな」

武蔵「わかった。日向、こちらを頼む」

日向「あぁ」

男「……」

男(そうだ。俺はまだ全てを失ってなどいない)

男(ここに来て彼女たちと会ったその時から)

男(全てを失う事などなかったのだ)

ここまでです。これであの施設で起こっていた出来事の裏が暴かれました

多分このペースだと次のスレまで跨ぎそうですね。結局長編になりました

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男(その後も資料を漁ったがこれと言って有力な情報はなかった)

男「……知り得た情報をまとめると」

男「姉や首謀者は昇華薬の被験体であり、死亡していない辺り成功であると見ていい」

男「服用、もしくは実験の成功には適性が必要らしいな」

男「神経回路の強化により電子の世界での能力を飛躍的に向上させる。姉に至っては現実の世界でも強くなっていたようだが……」

男「さらに、昇華薬を服用する事で深海棲艦の情報が脳内に進入し、精神を犯される」

男「解放旅団についてはUSBの中身以外になんの収穫もなかったな」

男「結局未知の存在であるままだ」

武蔵「人間と深海棲艦の情報を利用して行う研究」

武蔵「……もしかすると人間を深海棲艦化させる実験だったのでは?」

男「……ならばやはりそういった研究が行われていて、その影響で今現実の世界に深海棲艦が現れている可能性はかなり大きいな」

男「姉の研究は成功したのかどうかわからんが……」

短いですがお仕事です

男「……」

日向「まとめる内容はこれくらいか」

武蔵「この中で一番深海棲艦が喰いつきそうなものは」

男「やはり、昇華薬か」

日向「同族を増やす為に……?」

男「昇華薬を使う事によって深海棲艦化する」

男「だが内容を見る限り俺たちが見てきた感染者とは違う」

男「奴らは屍人の様だが姉と首謀者は自分の意識を持っていた」

男「……性格の変貌などはあるが」

男「現実での能力も向上する。これは……」

武蔵「深海棲艦の上位個体」

日向「あのレ級のような?」

男「だろうな……確かに感染者を増やすよりも上位個体を増やす方が格段に戦力になる」

武蔵「だが適性も必要なのだろう?適性の無い者は次々死んでいた様だ」

男「……適性、か」

武蔵「……」

日向「……」

武蔵「……提督」

男「武蔵。言わんとしている事は分かる」

日向「……」

男「……あり得ない。とは言い切れない」

日向「……君」

男「これを踏まえての結論を出すと」

男「深海棲艦化させるには昇華薬と適性のある人間の二つが必要になる」

男「これが目的なら……」

男「俺たちが持っているもの。これが重要になる」

男「昇華薬……は当然手にしていない。が、情報は手にしている」

男「あの施設で襲撃を受けたのも頷ける。昇華薬の在りどころを知っていた可能性があるからな」

男「だがよく考えてみろ。俺たちが深海棲艦の異常な襲撃に会ったのはアレだけか」

日向「……かなみ神社での襲撃に」

武蔵「……提督の巡回区域内でも」

男「……俺の知る限り、国防軍の防衛線内部での深海棲艦の大襲撃といえば……」

男「この三つだけだ」

男「この三点に共通する重要なポイントは……」

男「俺と、武蔵が居る」

武蔵「……」

日向「……」

男「巡回時の襲撃の時とかなみ神社での襲撃の時には当然昇華薬の存在は知らなかった」

男「だが奴らは明確に、俺たちを狙っていたとする」

男「……と、するとその時既に奴らが狙うに値するものを持っていた事になる」

男「昇華薬と……適性のある人間」

男「共通するのは、俺と武蔵がいた事。つまり」

男「俺と武蔵のどちらかが昇華薬の適性を持っていた事になる」

男「そして。一番適性を持っている可能性があるのは……」

男「当然俺だ」

とりあえずここまでです

男「……それに加えあの施設でレ級と戦闘した時にも……」


戦艦レ級『ふふ……これでやっと……』

男『がはっ……なんの……つもりだ……!!』

戦艦レ級『言ったでしょ?私の血を飲ませてあげる』

戦艦レ級『これで私たちと一緒になれるよ』


男『……貴様らの目的はなんだ』

戦艦レ級『ん?どうしたの急に』

男『ここまでする理由だ。ただ単に人間を殲滅しようとしているとは思えない』

男『何か狙いがあって動いている様に見えるが』

戦艦レ級『私達の目的が知りたいの?』

男『国防軍の戦線を出し抜いてまで狙うものはなんだ』

『深海棲艦の狙いはっ』

戦艦レ級『私達の狙いは……』




『君だよ?』

男「アレは妄言でも冗談でも無かった」

男「奴らは本気で俺を狙っている。深海棲艦に変える為に」

武蔵「……」

日向「……」

男「奴らは、また襲撃を掛けてくるだろうな」

男「撃退したとしても……何回でも襲撃を掛けてくる可能性は十分にある」

武蔵「……それで。対策はどうする」

男「……対策、か」

日向「警備を厳重にするか。一刻も早く潜伏場所を見つけて攻撃するしか……」

武蔵「……そうだな。奴らに交渉を持ちかけた所で聞くはずもない」

武蔵「先手を打ち、叩きのめすまでだ」グッ

男「……この話は次にしよう。ここで話を煮詰めるのも悪くはないが……」

男「少し休んでから、改めて考えた方がいい案も浮かぶだろう」

日向「……この話、上層部に持ちかけたら……」

男「……確実に、どこかに拘束されるだろうな」

男「まず三人共無事で済むはずはない」

男「よってこれは却下だ。俺たちだけでなんとかする他ない」

日向「……そう、だな。なんとかしよう」

武蔵「では……この場はお開きでいいのだな?」

男「そうしてくれ。二人共、ありがとう」


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男「……だいぶ、外も寒くなってきた」

男(息を吐くと煙草の煙の様に白く目の前を曇らせる)

男(外套を羽織らなければかなり肌寒いだろう)

男(俺はいつもの位置に腰掛けると、胸ポケットから残り少なくなった煙草を取り出し、加える)

男(カチリと音を鳴らしオイルの香りがふわりと漂う。これが心地よかった)

男(先ほどよりも深く息を吸い込み、先ほどよりも濃く目の前を曇らせた)

男「……」

男(星空は無いが月だけは何時も通りに宙に佇んでいる)

男(俺は……思考を巡らせながらじっと……月を眺めていた)

男(深海棲艦の狙いは俺……か)

男(思えば、深海棲艦という存在がいたからこそ。父も、母も、姉も、人生を狂わされ、破壊されたのかもしれない)

男(そして俺も……人生を狂わされようとしている)

男(……奴らがいなければ、このような事にはならなかったのだろうか)

男(父と母と姉と。全員揃って暮らせていたのだろうか)

男(……そう考えていると、鬱で、空虚で仕方がなかった)

男(……今更こんな事を考えてもどうしようもない……か)

男(今考えるべきなのは明日の事だ)

男(俺が狙いであると言う事は、俺がいる場所に奴らは現れる)

男(出現位置がわかっているという事はある意味こちらにとって有利である)

男(だが……どうやって奴らの潜伏先を特定すればいい?)

男(まさか街中を徘徊させて後を尾ける訳にもいくまい)

男(それに……殲滅しなければ被害が出る。関係の無い人間の被害は極力避けたい)

男(……深海棲艦の出現する位置には必ず電波障害が起こる)

男(……ならばどこか電波障害が発生している場所を見つけて……)

男(……ダメだ。どうやって上層部にばれずにそのような大掛かりな事が出来る)

男(シラミつぶしに探す時間は恐らく残されていないだろう。それに危険すぎる)

男(その後も何個かは案が思い浮かんだが全て実行は無理なものだった)

男(俺たちには、時間も力も無い)

男「……すぅ……」

男「ふー……」

男「……」

男(いや。一番楽ですぐにでも効果を発揮する案なら、最初に思いついていた)

男(俺を狙って奴らが現れるなら……)

男(当然俺が消えればいい)

男(俺が……俺がここで頭を撃ち抜いてしまえばそれで終わりなのだ)

男(奴らの目的は果たせず。終わり)

男(……)

男(死ぬ以外には俺がここを抜け出し行方を晦ませる事)

男(……だがそれではいつか見つかりそこでまた襲撃が起こる)

男(……)

ここまでです

男「……ふー」

男(まぁ、これは最後の手段だ)

男(俺も一晩で自分の命を投げ出してやる程お人好しではないし馬鹿でもない)

男(それに俺が死んだ所で他に事情を知っている人間を生かしておく理由もないだろう)

男(まだ……奴らに対する手段はあるはずだ)

男(時間も力も無いのなら、その上で行動に移せる戦略を立てるまで)

男(誰も失わずに全て終わらせる事が最善だが……)

男(果たしてそう上手くいくものなのか……)

コツコツ

武蔵「一本貰うが?」

男「……」スッ

武蔵「ん……」シュボッ...

パチン

男「……」

武蔵「……」

武蔵「なにをそう真剣に考えていたんだ?」

男「今後の戦略を……な」

武蔵「それで、なにかいい案は」

男「いや。上策とも言える下策の下策なら」

武蔵「すー……ふぅ」

武蔵「どうせお前の事だ。俺が[ピーーー]ば全て終わる、なんて考えていたんじゃないのか?」

男「……」

武蔵「……図星か」

男「……最後の手段だ。今の所使うつもりも無い」

>>838 修正



武蔵「なにをそう真剣に考えていたんだ?」

男「今後の戦略を……な」

武蔵「それで、なにかいい案は」

男「いや。上策とも言える下策の下策なら」

武蔵「すー……ふぅ」

武蔵「どうせお前の事だ。俺が死ねば全て終わる、なんて考えていたんじゃないのか?」

男「……」

武蔵「……図星か」

男「……最後の手段だ。今の所使うつもりも無い」

武蔵「ふん……ハッキリ言わせて貰うがそれは策にすらなっていないぞ」

男「……」

武蔵「守らなければいけないものを自ら放り出のは根本から間違っている」

武蔵「深海棲艦の狙いは提督。ならば私たちが守るべきは提督」

武蔵「お前は何を守ろうとしている」

男「……」

武蔵「……なぁ、言っただろう?」スッ

パチン

男「……」

ギュッ...

武蔵「お前はすぐに溜め込もうとする。自分一人で抱えようとする」

武蔵「私たちを気にかけているなら余計なお世話だぞ」ナデナデ

男「……」

武蔵「私たちはお前の事が迷惑だとも思っていなければ嫌いな訳でもない」

武蔵「私たちの好きでお前を守ろうとしているんだ。私たちの好きで……お前に手を貸そうとしているんだ」

武蔵「それでも気にするならそれは失礼だし……」

武蔵「それが嫌なら自分の身と私たちを守る方法を考えてみせろ」

男「……」

ここまでです

今日お仕事だったので明日はお休みです

男「……俺は皆に甘えてばかりだ」

男「本来ならば皆を支え、導いてやらねばならんのに……」

男「いつも……先に導かれているのは俺だ」

男「特に……武蔵にはな」

武蔵「ふふ……気にする事はないぞ提督」

武蔵「私は……お前の姉のような存在だからな」ニッ

男「……あぁ。そうだな」

男「武蔵は……俺の姉のような存在だ」

男「だから……」

男「もうしばらく、俺を導いてくれ。道のわからない弟の為に」

武蔵「任せておけ。かわいい弟よ」

男「……もう一本吸うか?」

武蔵「もらおうか」


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少佐「何度も呼び出して申し訳ないな」

男「はい」

少佐「先日の襲撃を受け。国防軍は本格的に深海棲艦の潜伏先の特定と殲滅に乗り出した」

少佐「前線からも兵を割いて、だ。最早なりふり構っている場合ではないしな」

少佐「我々にも支援要請が入った。いずれ君の部隊にも動いてもらう」

男「わかりました」

少佐「……しかし。本当にどこから奴らは内部に……」

男「国防軍の前線が強固になる以前から潜伏していたか。何者かが手引きしていたか」

少佐「……深海棲艦の上位個体であれば侵入も可能か」

少佐「深海棲艦に加担する頭のおかしな連中がいるのか……」

男「どちらにせよ我々の本部がいつ深海棲艦の攻撃に晒されてもおかしくはない状況です」

少佐「そうだな……これは既に……戦争だ」

男「防備の強化は必須として……一刻も早く深海棲艦を見つけ出さなければまた市民にも被害が……」

少佐「これ以上好きにはさせん。我々かなみ市防衛機構が存在するうちはな」

少佐「……」

男「……」

少佐「……それとだな。中尉」

男「はい」

少佐「オーストラリアが攻撃に晒されているのは知っているだろう」

男「状況は芳しくないそうですね」

少佐「そうだ。戦況は悪化し続けている」

少佐「だが最近妙な事が起こっているらしくてな」

男「妙な事……?」

少佐「深海棲艦の艦隊を発見して急行した所、その艦隊は全滅していたそうだ」

男「……」

少佐「破片や死骸を残して動くものは無し」

少佐「他にも深海棲艦の死骸が浜に流れ着くなど……」

男「……誰かが深海棲艦を攻撃している?」

少佐「いや、それはないだろう。重度の電波障害の嵐の中、敵の集団の中だ」

少佐「どう考えてもあり得ない。国防軍が一個師団を送ったとしても不可能だ」

少佐「良くて大損害を受け周辺国へ逃げ延びるのがオチだ」

男「……敵の同士討ちですか」

少佐「そう都合よくは考えたくはないが、そう考えた方が話も早い」

少佐「深海棲艦にも派閥があり争っている……」

少佐「なんにせよ。奴らの数が一体でも減るなら我々にとっても好都合ではある」

少佐「だが……それが我々にとって都合の悪い事態の予兆であれば……」

男「このような出来事は初めてですか?」

少佐「いや。実を言うと前々からそう言った事はあったらしい。だがここ最近その頻度が高くなっているそうだ」

少佐「……どこぞのホラー映画のように深海棲艦を喰らって上位個体が強くなっている。なんて事態になっていなければいいがな」

男「……それは。危機的状況に陥りそうですね」

少佐「要塞の様な深海棲艦が現れたりしてな。なんて冗談でも言わなければ正直やっていられん」

男「……ところで、どこからその情報を?」

少佐「上層部に国防軍の人間と親交のある者がいてな。そこからだ」

少佐「その繋がりにはいろいろ助けてもらっているんだぞ」

男「それは……知りませんでした」

少佐「あまり他の者に言いふらさないで欲しい。広まっていい内容ではないからな」

男「……わかりました」

お休み宣言しましたけどお出かけついでに。昨日無かったのでいいですよね

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『聞こえるか』

『うん。大丈夫だよ』

『そっちの状況は?』

『私なら順調。戦況なら……芳しくないね』

『……いよいよか』

『そうだね』

『あまり人を巻き込む事はしたくない。発見次第一気に叩くつもりだけど……』

『一瞬のタイミングを見極める必要がある』

『私は私に出来る事をする』

『頼むよ』

『アレさえなんとか出来れば……』

『私たちにとっても、有利になる』

『あぁ……アレなら必ず現れる。あそこには虚構型の兄弟艦があるからな』

『確認したよ。オリジナルには程遠いけど』

『そりゃあ原型なんてわからないさ。外装も内装も』

『それで、簡単そうか?』

『うん。少しいじるだけで終わりそうだよ』

『わかった。引き続き頼む』

男「……」

バタン

男(深海棲艦の死骸……か)

男(本当になにかの予兆か……それとも)

男(……俺が知っている情報に合わせる事は出来ないな。まるで関連性がない)

コツコツ

男「……む?」

男(少佐の部屋を出て思考に耽っていたが目の前で立ち止まった足音にそれを遮られる)

「……」

男「……君は」

「また会ったね、司令官」

男(目の前に佇んでいたのは……あの時の銀髪の少女だった)

「私の名前は響。今日から司令官の元でお世話になるよ」

はい。ほぼ大人響ちゃんです。大人っぽいグラマラスなイメージ

もうそろそろ終盤ですねー

男(会った時はほぼ暗闇の中で姿はよく確認出来なかったが……)

男(腰まで伸びた淀みのない銀髪)

男(肌は白く、吸い込まれそうな程の青い瞳)

男(まるで人形のように整った顔立ちはキャリアウーマンの様なきっちりとした印象を強く与えていた)

男(初めてその姿を見た時とは違い、白のジャケットの上から外套を羽織っていた)

男(黒のスカートの下には同じく黒のタイツ。そして、頑丈に作られているであろうブーツ)

男(そして、顔立ちに反せず身体つきも衣服越しでもはっきりと分かる程に女性らしく……)

響「司令官。怪我は無かったかい?」

男「ん、あぁ……怪我なら大したものは……」

男(確かめるように身体を少し動かしてみるが……)

男「ぐっ……」

男(そういえば……右手首をやられたのだったか……)

響「……」

男「……生活する分にはあまり支障は無いが、戦闘では十分障害になりうるな」

響「しばらくは安静にしておいた方がいい」

男「そうせざるを得ないな……それよりも」

男「俺の元で世話になるとはつまりどういう事だ」

男(まぁ……以前からそのような話は聞いていたが)

響「新たに防衛機構の艦娘として配属される」

男「……ふむ。そうか」

男「上層部からはなんの連絡も無かったが……」

ガチャ

少佐「中尉、談話も構わんがせめて……ん、君は……」

ビシッ

響「予定よりも早まりましたが、響、着任しました」

少佐「おお、そうか。それでたまたまここでという訳だな」

響「お騒がせしたのなら大変失礼を」

少佐「いや、構わない。中尉、本日付けで君の部隊に所属する事となった響だ」

男「少佐、こちらには何も連絡が入ってきていないのですが」

少佐「すまんすまん。彼女が来る事は知っていたが決定事項ではなくてな」

少佐「彼女がここに正式に着任する事となったのは"今"知った所だ」

少佐「彼女はロシアからの帰国子女で、現実での戦闘も電子世界での戦闘もこなせるそうだ」

少佐「人出不足もやっと解消されるか?」

男「はい。ありがたい限りです」

少佐「それなら良かった。まずは彼女にいろいろと施設を見せてやってほしい」

少佐「かなみ市防衛機構がどういうものかというのは……」

響「事前に情報を手に入れているから問題ないです」

少佐「そうか……中尉。よろしく頼むぞ」

男「はい」

お出かけついでです。響ちゃんの服装は別にストーリーとは関係ないので好きなもので想像して下さい

男「では。施設を案内しよう」

響「……」

男「後に付いてくるといい」コツコツ


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男「で。ここが最後だ」

男「俺たちは共同で暮らしている。言うなればそうだ……シェアハウス、とでも言えば分かるか?」

響「自分の部屋以外は共同って事かい?」

男「そうだ。炊事や洗濯、掃除も当番制で行っている」

男「響の部屋は丁度空き部屋がある。そこを使ってもらおうか」

ガチャ

古鷹「おかえりなさい提督!」

龍鳳「丁度晩御飯が出来た所なんですよ」

北上「なに?提督帰ってきたの?」

武蔵「では早く食事の支度を……」

神通「あ……それなら私が……」

日向「……」ペラッ...

男「丁度全員揃っているか……」

男「皆。食事の前に重要な話がある。卓に付いてくれ」

男「……こほん」

男「突然だが、今日から俺たちの艦隊に新たな戦力が加わる」

武蔵「む……突然だな」

北上「新入りかー」

古鷹「仲良く出来るといいな……」

男「では入ってくれ」

スッ

響「特型駆逐艦22番、暁型2番艦、響だよ。よろしく」

日向「……ッ!?」

響「……」

龍鳳「日向さん……?」

日向「……なんでもない」

神通「綺麗な方ですね……」

北上「駆逐艦……」

武蔵「……」

男「皆。よろしく頼むぞ」

男「とりあえず……食事でもしようか?」

響「Спасибо」

古鷹「す、すぱ……?」

男「彼女はロシアからの帰国子女だ。敵対国とは言え形だけだ。ありえない話ではない」

男「それより、食事は足りそうか?」

龍鳳「いつもと同じくらいはありますよ」

男「なら武蔵がお代わりを控えればなんの問題も無いな」

武蔵「なっ……提督!私を[ピーーー]気か!?」

男「……少しは我慢というものを覚えた方がいいのではないか」

>>872 修正


神通「綺麗な方ですね……」

北上「駆逐艦……」

武蔵「……」

男「皆。よろしく頼むぞ」

男「とりあえず……食事でもしようか?」

響「Спасибо」

古鷹「す、すぱ……?」

男「彼女はロシアからの帰国子女だ。敵対国とは言え形だけだ。ありえない話ではない」

男「それより、食事は足りそうか?」

龍鳳「いつもと同じくらいはありますよ」

男「なら武蔵がお代わりを控えればなんの問題も無いな」

武蔵「なっ……提督!私を殺す気か!?」

男「……少しは我慢というものを覚えた方がいいのではないか」

ここまでです

男「食事を終えたらまずは響の部屋をどうにかしなければなるまい」

武蔵「ベッドやマットレスは本部の倉庫を探せばあるかもな」

男「そうだな。机や椅子も欲しいか……」

響「そこまで気を使ってもらわなくても……」

男「構わんさ。それに部隊員の部屋が無いのは重要な問題だと俺は思うが」

古鷹「私たちも手伝います!」

神通「全員で動けば……早く終わりますね」

日向「……」

男「……もし、響の部屋の設営が間に合わなければ俺の部屋で眠るといい」

龍鳳「!?」

北上「ぶっ……!!」

響「……」

男「……なんだ。なにかおかしな事を言っただろうか……?」

古鷹「て、提督の部屋で……」カァァ

武蔵「……ほう。そうかそうか」ニヤニヤ

男「なんなんだ一体……」

男「……はっ!?」

男「ち、違……そういう意味ではなくてだな!その……他意は無いというか……」

武蔵「やってきた初日に自分の部屋に連れ込もうとするとは……いやいや」

古鷹「……」プシュー

龍鳳「はわわ……」

男「そうではない!!その、俺はリビングで眠ればいいが他の皆にそれを押し付けるのは良くないと……」ブツブツ

北上「とか言ってぇ。本当はどうなのさー?」

神通「あの……!提督が困って……」

日向「……ふふ」

男「と、とにかく!響の部屋を最低限使えるようにするぞ!」

男「……ごちそうさま」ガタッ

武蔵「どこへいく?」

男「食後の一服だ。そうただ一服にいくだけだ……」コツコツ

北上「あっははは!提督はさーああ見えてほんっとウブだよねー」

龍鳳「……こほん。普段は固く見えると思いますけど、提督はとても人思いのいい人なんです」

響「今のでよく分かったよ。彼は純粋なんだね」

ここまでです

男(食後の一服を終えた後。響の部屋を全員で最低限使えるようにしようと、本部の倉庫や使われていない部屋を漁り家具を運び出していった)

男(予想以上に時間を使う事も無く、作業を終わらせた後)

男(俺は響、武蔵、日向を部屋に呼び出した)

男「……」

武蔵「……」

日向「……」ソワソワ

響「……」

男「……さて、響。俺たちの部隊に来てくれた事は歓迎しよう」

響「……」

男「……知っている事を教えてくれ」

響「……どこからどこまで?」

男「深海棲艦、昇華薬、戦艦虚構」

響「……」

男「……解放旅団」

響「……!」

男(一瞬だが……表情が変わったな)

武蔵「……これではまるで尋問だな」

日向「……」ソワソワ

男「……日向」

日向「ん……!?どうした……」

男「先ほどから落ち着かないが……」

日向「……」チラッ

響「……」

武蔵「……」

男「……」

響「……」

響「久しぶりだね。日向」

日向「……やはり」

>>884 修正


男「……日向」

日向「ん……!?どうした……」

男「先ほどから落ち着かないが……」

日向「……」チラッ

響「……」

武蔵「……」

男「……」

響「……」

響「久しぶりだね。日向さん」

日向「……やはり」

男「……知り合いなのか?」

日向「僅かだが見覚えがあると……どこかで会った事があるような気がしてた」

日向「彼女は……私と同じ施設にいた」

男「……!」

武蔵「……」

響「所属は違ったけどね。何回か一緒に戦った事もある」

日向「あの後ロシアへ行っていたのか……」

響「私に帰る場所は無かった。だから国外へ出たんだ」

日向「確か……姉妹がいたはずじゃ」

響「暁に雷、電。みんなそれぞれ別の場所にいるはず」

響「きっとどこかで……幸せに暮らしてるはずさ」

男「……」

響「話がそれてしまったね。教えるよ、司令官」

響「まず、司令官はどこまでしっているのか。教えて欲しい」

男「分かった。少し長くなるが、いいか」

響「うん」


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ーーーーー

ここまでです

男「……」

響「……司令官の姉はあの元帥だった」

響「それは……知らなかった」

武蔵「……」

響「司令官が深海棲艦に狙われる理由はやっぱりそれが一番近いと思うよ」

日向「……」

男「……」

響「それじゃあ、私が知っている事。話すよ」

響「まず……深海棲艦について」

響「多分、深海棲艦がここまでして攻撃してくる理由は司令官に適性があるからで間違いない」

響「適性のある人間は……少ないからね」

男「という事はやはり、俺を深海棲艦にしようと?」

響「……そう。だけど少し違う」

響「司令官が考えているような戦艦、空母のような深海棲艦じゃない」

響「深海棲艦達に足りないものを、調達しようとしているんだ」

男「……奴らに足りない物」

響「深海棲艦の行動は上位個体が存在しないと纏まりがなく、バラバラに行動してしまう」

響「例えヲ級、ル級、レ級などの上位個体が存在したとしても、深海棲艦が纏まって行動出来る数は限られている」

響「現状現実の世界で深海棲艦の上位個体を撃破してしまえば下位の深海棲艦の統率が取れずに指揮系統に混乱をきたしてしまう、という事になる」

男「奴らには指揮能力が足りないのか」

響「九十九里沖海戦に勝利出来たのはそこも大きいと思う」

男「……」

響「だから、深海棲艦には強大な軍団の指揮を取れる存在が必要なんだ」

響「適性のある人間に昇華薬を打つ。打った後に深海棲艦の血を分け与える事で深海棲艦と同じ存在にする」

響「それで深海棲艦となった人間は……」

男「強力な力を得る」

響「戦闘能力、演算能力、指揮能力」

お仕事です

響「深海棲艦が一番欲しがっているのは……深海棲艦達を指揮する者」

日向「……深海棲艦の提督、という事になるか」

響「そう。膨大な量の深海棲艦を指揮出来る提督が欲しいんだ」

武蔵「それが……適性のある人間」

響「逸脱した指揮能力、上位個体さえもねじ伏せる身体能力、状況や戦況を把握し次に繋げる思考能力」

響「昇華薬はつまり、人間を強化する薬でも艤装適性を与える薬でもない」

響「深海棲艦の指導者を作り上げる薬なんだ」

響「司令官のお姉ちゃん。元帥はその適性があって、しかもそれが他の適性者よりも抜きん出ていたんだ」

響「司令官。貴方もそうだ」

男「……」

響「絶対に司令官を深海棲艦の元に渡す訳にはいかない」

武蔵「……これで。私たちが守るべきものは再認識出来たな」

日向「……」

男「……俺が、深海棲艦の指導者の器」

響「未完成の器を昇華薬で完成させ、そこへ……」

響「深海棲艦の血、DNAという液体で満たす。それが目的」

響「そして……戦艦虚構だったね」

響「司令官の知っている通り、戦艦虚構は存在し得ない架空の艤装」

響「情報がほぼ抹殺されてしまった事で完成しなかった嘘の兵器」

響「一番最初の単純な艤装としての使用者は元帥」

響「そして……兵器の姿として完成した艤装を纏って……」

響「元帥を殺したのは、少佐。蜂起の首謀者である人間」

男「……やはり姉を殺したのは」

響「……恨んでいるの?」

男「……いや。狂っていた姉を止めたのは首謀者だ」

男「肉親を……家族を殺されたのは……あぁ……許せないかもしれない」

男「けれど、恨む事など……出来んさ」

響「……」

ここまでです

あ。関係ない話ですけど

やっぱり主人公とか登場人物にも人間味って必要だと思うんですよね。どんなにクールで冷静で完璧超人だったとしても、やっぱり必要だと思うんです

心の奥を抉られたらどんなに強くてもやっぱり取り乱すと思いますし、短期間で絶望的な事実ばっかり聞かされたらネガティヴにもなるだろうし

それで何事も無く流せるような人間なんて人間じゃないか破綻者だと個人的には思ってます

いや。主人公があんまクールっぽくないなと思ったので。表面では抑えてるけど内面は荒ぶって煮えたぎらせてるような、そんなイメージです

響「……戦艦虚構は。電子の世界で完成していた」

響「そして今、戦艦虚構は……」

響「現実でも完成してる」

男「なっ……」

武蔵「……」

日向「……」

響「存在し得ない架空の戦艦は存在するんだ」

響「電子の世界での能力と比較すると性能は落ちるけど……」

響「今現在存在する新型兵器の中では一番強い」

男「……どこにある」

響「それは……分からない」

武蔵「存在を知っているが場所は分からないのか」

響「移動し続けてるから、今どこにいるかは分からない」

日向「移動している?」

響「今もどこかで深海棲艦と戦っているよ」

男「……!!」


少佐『だが最近妙な事が起こっているらしくてな』

少佐『深海棲艦の艦隊を発見して急行した所、その艦隊は全滅していたそうだ』

少佐『破片や死骸を残して動くものは無し』

少佐『他にも深海棲艦の死骸が浜に流れ着くなど……』

少佐『どう考えてもあり得ない。国防軍が一個師団を送ったとしても不可能だ』


男「……深海棲艦の群れに飛び込み殲滅を繰り返している」

男「つい最近は特に……頻度も多く……か?」

響「……そう。だね」

武蔵「む?何故提督がそれを知っている?」

男「先ほど少佐から話を聞いた」

男「オーストラリア近海で深海棲艦の死骸が見つかっていると」

男「……だが。単独で出来るものではないはずだ」

男「いくら最強の兵器だとしても、現実のものである限りは……」

響「……」

響「解放旅団」

日向「!!」

男「解放旅団……!!」

武蔵「……」

響「……解放旅団だよ」

響「解放旅団が、戦艦虚構を保有してる」

響「圧倒的な軍事力で敵の中枢を叩いているんだ」

男「首謀者の……やはり首謀者である"少佐"が解放旅団を率いているのか」

響「……」

武蔵「……」

響「わからない」

男「……」

響「わからないんだ。解放旅団の事はどうしても」

日向「それだけ情報の隠蔽もしっかり行っているという事なのか?」

響「そうだと思う。解放旅団について知ってるのはこれだけ」

男「……」

響「……」

日向「君、何者?」

響「私は……知りたいから。解放旅団の事」

響「一人で調べていたんだ。そして……司令官が狙われている事を知った」

響「気をつけて司令官。必ずまた深海棲艦は来るよ」

男「……」

武蔵「私も聞きたい事があるのだが」

響「なに?武蔵さん」

武蔵「深海棲艦の提督はもう……何人か存在するのか?」

武蔵「それがいるだけで奴らは大規模な作戦を行える」

武蔵「九十九里沖海戦は……深海棲艦の提督がいたんじゃないのかい」

響「……」

響「いるはずだよ」

日向「……」

男「……」

武蔵「……」


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ここまでです

(白い壁に黒のソファー。テーブルの上には吸い殻の山と無造作に転がっている拳銃)

(ヤニの臭いが染み付いたこの場所が私の帰る場所)

(扉を開けると、ソファーにもたれかかる金髪で顔にまで刺青を入れた男と)

(腕を組み静かに佇むくたびれたサラリーマンの様な男が私の帰りを待っていた)

「やぁっと帰ってきたか……待ちくたびれたぜ……」

(酷く臭う煙草を口に咥えながら鋭い目で私を見る)

「それで、どうだった」

「邪魔が入ってね。ダメだった」

「まぁーた"アイツら"かよ……邪魔臭え事この上ねぇ」

「でも、かっこいい人だったよ。真面目そうで」

「真面目ちゃんは一人で十分だよ……」

「しかし、強力な戦力を取り逃がしたのは痛手だな」

「けっ!!ただでさえクソッタレビッチの肉親だってんだから俺ぁ清々したぜ」

「そう言うな。その女がやった事で男は関係ない」

「チッ……」

「どうするの?」

「我々にも時間は無い。ならば打って出ると同時に対象を捕獲するのが上策となりうる」

(男はスーツのポケットから赤い液体の入ったアンプルを取り出す)

「薬も、お前の血もある。すぐに済ませてしまえばいいだけの話だ」

「なぁ!もういいじゃねぇか!」

(テーブルを激しく叩き立ち上がる。吸い殻の山がポロポロと崩れ落ちた)

「俺達の作戦は失敗でした。なら俺達だけでアイツらもあのうす汚ねぇ国もぶっ潰してやりゃいいんだよ!!」

ガシッ

「それとも、俺達だけじゃ不満かよ」

(ヤニの臭いが鼻に刺さる。だけど不快ではなかった)

「不満……じゃないよ。ただ戦力が増えるに越した事は無いと思う」

「その通りだ。お前の嫌う国をより安全に潰す為には、あって困る事はない」

「ったく……どいつもこいつも……」

「君の事を嫌いになった訳じゃないから。安心してっ……」

(台詞を全て言い切る直前に、開く口を塞がれてしまった)

「んっ……んん……っ!」

(ねっとりと唾液が混ざり合い絡みつく。蛇の様に長い舌が私の口内を蹂躙していく)

「……目の前でそういう行為をされる方の身にもなってもらいたいんだが」

(だけどそんな言葉も御構い無しに彼は私の舌を撫で回し、唾液を吸い上げてくる)

(いやらしい水音が部屋に響いていた)

「はむっ……じゅるっ……ちゅるっ……」

(強張る身体を彼は強く抱き締め、硬い身体に押し付けられている)

(それだけの行為が私の体温を上げ、脳漿まで蕩け出しそうな程の威力を持っていた)

「んぅ……っ!ちゅるっ……」

「っ……はぁ……はぁ……」

(ようやく塞がれた口が解放されたかと思うと、篭っていた熱と共に妖しく光る糸が彼の口元までぶら下がっている)

(きっと今の私は誰が見てもだらしないと思うような表情をしているに違いない)

「とりあえず……話は後だ。今は俺の熱を少し冷ましてやらねぇとな」

「……早めに済ませてもらえると助かるが」

「どうだかな。いくぞレ級」

(ぐいっと手を引かれて私はまたシワだらけのベッドへ連れて行かれる)

(それも……悪い気分ではない)


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お出かけついでに

男(俺は最後の休日を使い、昼間のかなみ市を歩いていた)

男「……」

男(必ず深海棲艦は現れる……か)

男「……」

男(今のまままたあのレ級と対峙したらどうなる?)


男『チィッ!!』チャキッ

レ級『遅いよ……?』

ゴキュッ

男『ガッ……ゴボッ……』


レ級『遊んであげるよ』ブンッ

男『ハッ!!』シュッ

ガキンッ!!!

男『ぐっ……腕が……!』

カランカランッ...

レ級『残念』シュッ

ドスッ!!!

男『あ……ぐぁぁぁあああ!!!』

男(なにをどう考えても勝てる見込みが無い……)

男(射撃も格闘も未熟だ)

男(電子世界に降り立てば……より無力にもなる)

男(せめて、深海棲艦から護身程度は出来る様にしなければ……)

コツコツ...

男(かなみ神社の近くまで来た)

男(周囲は封鎖されており、壊れた家屋や穴の空いたコンクリートが目に入る)

男(警備をしているのは……防衛機構ではなく国防軍か……)

男(PMCとしての力不足と捉えられてしまったか。なんにせよ、あれは異常な事態だ)

男(原因が俺にあると思うと……胸が痛む)

男「……」

コツコツ

男(俺は尚も街並みの中を練り歩いていく。地理を把握するのも大切だが……)

男(この景色を自分の中に留めておきたかった)

男「……好きにはさせんぞ」


男「……少し休憩でもするとしようか」

男(自動販売機でコーヒーを買うと、目に付いた公園へ足を運ばせた)

カシュッカチ...

男「ん……」

カチンッチッチッ...シュボッ...

男「……ふー」

パチン

男「たまには……一人で穏やかな時間を過ごすのも悪くはない……」

男(身体の力を抜き、ベンチに体重を預けながら煙を吐くのは心地よかった)

ワーワー...

男「……ん」

男(近くに保育所でもあるのだろうか。子供の声が聞こえる)

男「……」

男(ならば特に、深海棲艦の襲撃には晒せないな)

男「……もう少し休んでから見てみるか」

男「すー……はぁ……」

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コツコツ

男「……」

男(サッカーコート程の広さの庭に小さな建物)

男(子供達が元気に走り回っている)

男(また小さな正門には……)

男「……天河龍子養護院」

男(どうやら保育所ではなく養護施設らしい)

男(近くにこのようなものがあったのは知らなかった)

男「……」

ワーワー

男(……俺の子供時代は、こんなに楽しそうなものだったのだろうか)

男「……」

男(まぁ……今更だな)

コツコツ

「おい!」

男「……」

男(歩き出そうとした瞬間。女性の声に呼び止められる)

男「……なにか?」

「アンタ、ここに用でもあるのか?」

男(キリリと整った顔立ち、ショートカットからは勝気なイメージが与えられた)

男(だが身体付きは女性らしく、青のジャージの上からでもよくわかる程だった)

男(そしてなにより目についたのは……左目の眼帯だった)

男「いや……ただ通りすがっただけだ」

「ふぅん……」

男(まじまじと俺の事を観察する女性)

「……その物腰、一般人には見えねぇな」

「歩き方、姿勢。お前軍人だろ」

男「ただのサラリーマンだ」

「国防軍じゃなくて防衛機構か……どっちも同じだな」

男「……そうだな。同じかもしれん」

「……どこかで会った事あるか?」

男「……初対面だな」

男「かなみ市防衛機構。少佐だ」

「俺はここの院長の天河龍子。看板見りゃわかるだろ?」

男(天河龍子と名乗った女性はニヤリと笑いながら俺に近づいてくる)

龍子「視察なら視察と言えばいいじゃねえか。別にやましいものなんかねぇ」

龍子「付いて来いよ、中も見せてやる」

ここまでです

>>925


「歩き方、姿勢。お前軍人だろ」

男「ただのサラリーマンだ」

「国防軍じゃなくて防衛機構か……どっちも同じだな」

男「……そうだな。同じかもしれん」

「……どこかで会った事あるか?」

男「……初対面だな」

男「かなみ市防衛機構。中尉だ」

「俺はここの院長の天河龍子。看板見りゃわかるだろ?」

男(天河龍子と名乗った女性はニヤリと笑いながら俺に近づいてくる)

龍子「視察なら視察と言えばいいじゃねえか。別にやましいものなんかねぇ」

龍子「付いて来いよ、中も見せてやる」

「龍子先生!その人誰ー?」

龍子「見学に来たんだとよ。俺は案内するからお前らまだ遊んでていいぞー」

男(子供達の視線がこちらに向けられるがそれも一瞬の事だった)

男「……小さな子が多いんだな」

龍子「それもそうだけど大きいのはこの時間は学校だ」

男「……成る程」


男(建物の入り口から中へ入る。入り口は一般の家とあまり変わらない様な作りだ)

龍子「ほとんど一軒家を改造したようなもんだから変わったもんはねーと思うけどな」

男(案内されるがままに中を見ていく)

男(リビングと直結したキッチン。畳の居間)

男(二階には部屋が多めに配置されていたが、何人かに分けて共同で子供部屋にしているそうだ)

男(二階を見終わった後一階の奥に通される)

龍子「普通の家と大きく違うのはここかな」

ガララ...

男(木製の戸を開けるとそこは……)

男「……道場?」

男(磨き上げられた床に木製の壁。ロッカーの様なものまで置いてある)

「お掃除終わりましたよー」

龍子「おう!ありがとな」

(目の前に現れたのはエプロン姿の少女)

(龍子と似た髪型ではあるが、何処と無く茶色に見えるのは差し込む光に当てられてか)

(柔和そうな顔。龍子が格好いいと言われるならこの少女はまさに可愛い、だろう)

(身体付きは龍子と比べるとまだ小さめに見えるが、女性としては十分だと思う)

「お客様ですか?」

龍子「あぁ、ここの見学だそうだよ」

「そうなのですね。私は天河稲(あまかわ いな)です」

「……中尉。とでも呼んでくれ」

稲「中尉さん?変わったお名前なのですね……」

龍子「……まぁ、こんなかんじの子だ」

稲「なにか馬鹿にされた様な気がするのですが!?」

龍子「気のせいだろ?」

男「気のせいだな」

稲「……なんだか釈然としないのです」

男「ところで。同じ名字な所を聞くと二人は姉妹なのか?」

龍子「あぁ……そうだな」

男「こう言うのは失礼な気もするが……あまり似ていない様な……」

龍子「血は繋がってねーから当然だな。こいつは義妹だ」

龍子「理由を聞くなんて野暮な事は……無いだろうな?」

男「勿論だ」

男(恐らく養護施設だからこその理由があるのだろう。無闇に聞いてやる必要も無い)

龍子「建物の中はこんなもんだ。外には見る様なもんもねぇ」

男「そうか。ではこれで全部だな」

龍子「……お前、剣は使えるか?」

男「……」

男(唐突な振りである。が、横目に見えた竹刀が目に入ったのでなんとなく察した)

男「チャンバラ程度ならな」

龍子「なら十分だ。少し相手してけよ」

稲「すぐに準備してきますね」

トテテ...

男(……まだやるとは言っていないんだがな)

お仕事です

稲「これと……これと……これがあります」

男(稲が持ってきたのは竹刀だった)

男(恐らく普通の長さのもの。それよりも柄の長さを足した様な長いもの)

男(児童用か短めのものの三種類)

男(どれも刀身に布が巻きつけてある)

龍子「万が一防具が無い時に当たってもいいように布は巻いてあるぜ」

龍子「アンタに合う防具は無さそうなんだ。悪りぃけどそのままで相手してくれねーか?」

男「俺は構わない。そちらは付けなくてもいいのか?」

龍子「そうしたらフェアじゃなくなる」

稲「万が一怪我をされたら私が救護するので安心して下さい」

龍子「……久々に思いっきりやりたかったんだ」

龍子「やっぱりその身のこなしを見ると……剣も素人じゃねえな」

龍子「好きなのを選んでくれ。俺は余りでいい」

男(悪いが俺には相手が素人か玄人かを明確に見分けられる程の眼力は持ち合わせていないが……)

男(一般人相手なら……手加減はしないとな)

男「俺は短いものを使わせてもらおう」

龍子「へぇ……長物で来ると思ったんだけどな。それじゃ俺は普通のでいくか」

男(お互いに竹刀を取ると、床に引かれていた白い線の前に立つ)

龍子「一撃重いのが入ったら終わりだ。"サラリーマン"がどれだけ鍛えられてるのか見せてくれよ」

スッ

男(彼女が取ったのは剣道で言う所の正眼の構えだった)

男(鋒を俺の鼻先に向けて、俺を待っている)

男「……」

スッ

男(対する俺は、右手で竹刀を持ちサーベルの様に扱う)

龍子「フェンシング……じゃねぇよなぁ……」

龍子「片手軍刀術ってやつか?」

男「さぁな」

龍子「ま、んなこたどーでもいい」

龍子「行くぜ!!」ダッ

男(瞬間。俺は驚愕した)

男(女性のものとは思えない一瞬の踏み込み。一気に懐へ迫られる)

スパァンッ!!

男「……ッ!」

男(鋭い突き上げを間一髪で左へ払いのける)

男(……手加減などと考えたのが間違いだった)

男(相当に強い……!)

男(彼女の剣も剣道などというものでは無かった)

男(時に片手に切り替え、無茶な体勢からでも鋭い一撃を加えてくる)

男(まさにチャンバラだ)

パンッ!!パンッパンッパンッパンッ!!!!

スパァンッ!!!

男「……」

龍子「結構やるじゃねぇか……!」

ググッ

男(鍔迫り合いに持ち込むと、拮抗した押し合いとなる)

男「……君も、只者ではないな」

男(状況に応じた型にとらわれない攻撃。側から見れば遊びに見えるかもしれないがこれは……)

男(本当の戦いを見ている者の戦闘方法だ)

ここまでです

「あれ?龍子先生剣道やってるの?」

「すげー!りゅーこと同じくらい強いぞ!」

稲「みんな危ないから離れてみましょうねー」

男(小さな外野も増えて来たか……)

龍子「ガキ共の前とあっちゃ負ける訳にはいかねーよな!」

スパァンッ!!!

男「くっ……」

男(右から、左から縦横無尽に打ち放ってくる)

男(俺は攻撃の隙を作れずに防戦一方になっていた)

男(もう……何合打ち合ったかわからないが……)

男(相手の体力が切れる兆しが全く見えない)

男(このまま徐々に押されていては……)

グッ

男「はぁッ!!」

スパァンッ!!!

男(左脚の踏み込みから一気に相手の側へ潜り込む!)

スパァンッ!!!スパァンッ!!!

龍子「やっとやる気になったか?」ギュッ

パンッパンッパンッパンッパンッ!!!!

男(今度は俺が相手に竹刀を連続で打ち込む)

男(相手の隙が見える部分へ、絶え間なく竹刀を振るい続ければ……!)

男(どれだけの時間が経ったかはわからない)

男(額から汗が落ち、酸素不足が心臓を痛めつける)

男(手の痺れと痛みが増していく)

男(一進一退の攻防)

男「ふんッ!!!」

スパァンッ!!!!!

龍子「まだまだァッ!!」

キュッ

スパァンッ!!!

男「……!」ガッ

カランカランッ

男(しまった……!!)

前書いたSS読み返してて、こんなのも書いてたんだなぁと。感慨深かったです

龍子「そこだッ!!」

ブンッ

男「ぐっ……!」グッ

男(風を切る音が鼻先を掠める)

キュッ

ダッ!!!

男(右脚に力を込めて龍子から離れる)

龍子「拾わせねぇぜ?」

ビュッ!!!

男(さらに追撃。だがこれも間一髪でかわすとはたき落とされた竹刀を再び拾い上げた)

男「ふっ……!」

男(体勢を切り替え、反動を利用して竹刀を打ち込む)

スパァンッ!!!

龍子「おもしれぇ……!」

スパァンッ!!!パンッパンッパンッパンッ!!!

男(尚も打ち合いは続く。拮抗した戦いはまだまだ長引くと思ったが……)

ピキンッ

男「ッ!?」

男(手首が……!!)

男(右手首に強烈な痛み。負傷の治っていない場所に負担を掛けたのだから当たり前ではある)

男(焼け付く様な痛みが断続的に襲う。先ほどまでは意識の外にあったからか、気がつかなかったのかもしれない)

男(だが、意識し始めた途端に痛みの度合いは大きくなり、竹刀を満足に握る事さえ許さない)

龍子「……お前。手首をやったのか!?」

稲「や、やめ!」

男(稲が救急箱を持ってこちらへ駆け寄ってくる)

男「いや……元から痛めていた。今しがたまで忘れていたが」

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稲「これで大丈夫なのですよ。あとは安静に、動かさないで下さいね」

男「あぁ……済まない」

龍子「悪かったな。怪我してんのに無理に付き合わせてよ」

男「いや、構わない。俺も楽しめた」

龍子「しっかし怪我しててそれとは……結構やるな」

男「並の人間を相手にしている訳ではないからな」

男(俺の脳裏に黒い鋼鉄の塊と褐色の女の姿がよぎった)

男(うむ。全く嘘は言っていないな)

龍子「オレの本気もまだまだこんなもんじゃないぜ?」

男「本気を出さずにこの実力とは、俺ではなかわないか」

龍子「教えてる人間が筋がいいのか悪くねぇが……」

龍子「基本がなってねぇ。基礎がしっかりしてりゃまだまだ伸びはある」

稲「お姉ちゃんが言える事ではないと思います」

龍子「ぐ……ここまで崩してるけどこれでも剣術はかじってただろ!」

男「そうか……最初の構えは確かにらしかったが」

龍子「切り落としに始まり切り落としに終わる。小野忠明が基礎を作って小野忠常が開祖の小野派一刀流」

龍子「聞いた事はあるだろ?」

男「あぁ……」

男(確か柳生新陰流の柳生宗矩と一緒に徳川の指南役になったのが小野忠明だったか)

お出かけついでに

龍子「まぁ……それを何年か前までな」

男「剣の道でも目指していたのか」

龍子「いや……自分を鍛える為、だな」

龍子「剣の腕も、内面も」

龍子「誰かを守る為には強くなきゃいけねぇ。なにかを成し遂げる為には絶対の覚悟が必要だ。だろ?」

男「……全くその通りだ」

龍子「……あの頃は、守られてばっかだった」ボソッ

稲「……」

「龍子先生はやっぱり強いなー!」

「でもでもあの人だってすげー強かったぜ!」

「僕も龍子先生みたいに強くなりたいなぁ」

龍子「大丈夫だ、絶対に強くなれる」

龍子「だから目一杯遊んで、勉強して、練習するんだぜ!」

「「「はーい!」」」

稲「みんなー、そろそろおやつにしますよー」

「わーい!」ドタドタ!!

「早く手洗おうぜー!」

龍子「ちゃんと綺麗にしてくるんだぞ!」

男「……ふ」

龍子「お前はなんでそこまで鍛えてるんだ」

男「俺か……」

龍子「やっぱ、仕事の為か」

男「いや、俺が強くなりたい理由は自分の為だった」

男「だが今は……少し違うかもしれん」

男「誰かを守る為……誰かが死ぬ場所がみたくないから」

男「……やはり自分の為だな。これでは」

龍子「いや、いいんじゃねーか?それも立派な理由だと思うぜ」

男「そう言われると少しは気分も楽になる」

稲「あの……お水良かったら……」スッ

男「ん……済まないな」

男「ごくっ……ごくっ……ふぅ……」

龍子「……」

稲「それじゃあ私はみんなのおやつを用意してきますね」

龍子「おう、頼むぜ」

男「……さて、そろそろお暇させていただくとするか」

龍子「ちょっと待ってくれ」

男「む……」

龍子「良かったらなんだけどよ……」

龍子「しばらくここで稽古つけてかねーか?」

男「……それは嬉しいが毎回来ては迷惑に……」

龍子「オレの練習にもなるしお前に基礎を教える事も出来る。迷惑どころか大歓迎なんだけどよ」

男「……」

男「……では、休みの日に顔を出させてもらっても?」

龍子「あぁ!暇になったらこいよ」

男「そうさせてもらう。今日は楽しかったぞ」

龍子「こっちこそ」


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忘年会でした。そろそろ次スレの頃合いですかね?

男(その後も街を歩いて回ったがすぐに日が落ち始めた)

男(あの養護施設を見つけられたのは良かったかもしれない)

男「……さらに己を磨かなければ」

男(決意を胸に俺は防衛機構の寮へと戻っていった)


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はい。一レスだけですが……

実を言うと最終決戦までもうストーリーは進められるのですが……このままあっさり行ってしまうのもアレなのでなにかお題というかリクエストみたいなのがあればそれを書いてから臨みたいと思います

よろしければなにかいただけると嬉しいです。よろしくお願いします

ダイブ中の男の意識をハッキングして、あり得たかもしれない平和な家庭を見せて籠絡しようとする作戦とか?

確かに過去の掘り下げはしてないですね。最終決戦の前にそれも書いていこうと思います

>>969 そのネタ自分も思いついたんですけどボツにするか悩んでたんです。ネタとしていただいたのでそれも使わせていただきます

今日はストーリーとか考えたいのでお休みでお願いします。再開は明後日です

まだまだお題あれば書いていきますので、よろしくお願いします。そして次スレに移っても最後までお付き合いいただけると嬉しいです

男「ただいま」

武蔵「帰ったか」

男「少し街を見て回っていた」

北上「お土産はー?」

男「土産……」

龍鳳「お土産ですか!」

男「済まん。失念していた」

古鷹「ま……まぁ、いいじゃない。それより提督!今日は私が晩御飯担当ですよ!」

男「ん、そうか……楽しみだな」

神通「準備、お手伝いしますね」

日向「……」

響「……」


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武蔵「ごちそうさま」

日向「提督、少しいいかな」

男「む、どうした日向」

武蔵「それは私から説明しよう」

武蔵「ここ数日……休暇をすごしてきて思ったのだが」

武蔵「今まで皆と一日どこかで過ごしたりはした事がないな」

男「……確かに。休日は全員が被っても各自自由に過ごしていたな」

龍鳳「それで、みんなで考えたんですけど……」

北上「全員でどこかに遊びにいかないかってさー」

神通「響ちゃんも新しく加わりましたし……ね?」

男「むぅ……それは、思いつかなかった」

男「響はどう思う?」

響「私は……それは嬉しい限りだよ」

男「ならば構わんか。それで……」

男「休みを合わせるのは容易だが……果たして遠出は出来るものなのか……」

日向「確かに、襲撃があったばかりで緊張もあるだろうしな」

武蔵「ならば遠出出来た時のプランとそうでない時のプランを考えればいいではないか」

男「では、そうしようか。異論はないか?」

北上「いいんじゃない?」

古鷹「賛成!」

龍鳳「私もいいと思います!」

響「私も賛成だよ」

神通「私も……賛成です」

男「うむ。ならばまずは遠出出来た時のプランを考えよう」

男「冬のレジャーがいいか。山の方へ行けば雪も降っている事だろう」

武蔵「雪見酒に牡丹鍋などあれば最高だな」

男「まず食い物から思いつくのでは無くてメインの観光から考えて欲しいんだが」

武蔵「だが食いたいだろう、牡丹鍋」

男「……あぁ」

神通「それなら……やっぱりスキーでしょうか」

北上「おっ、意外にアクティブだねぇ」

古鷹「私スキーってやった事無いんですけど……誰か経験者っているんですか?」

男「……」

神通「……」

日向「……」

龍鳳「……」

北上「……」

武蔵「……むぅ」

響「……あるよ」

男「流石は帰国子女と言った所か。スキーに行くのならば響に指導願えばいいな」

男「他に提案はないか?」

北上「私は温泉がいいなぁ……」

龍鳳「冬と言ったら確かに温泉ですね!」

男「温泉か……日頃の疲れもこれで落としたい所だ」

武蔵「湯船の中で一杯雪見酒。うむ、これがいい。これにしよう」

男「酒ならばいつでも飲めるだろう……」

武蔵「雰囲気というものが大事なのだ雰囲気というものが」

響「武蔵さんはお酒が好きなのかい?」

武蔵「そうだな。酒と飯があれば大抵なんとかなる」

古鷹「あははは……」

響「なら今度一緒にウォッカを飲もう。あれは最高にХорошоだよ」

武蔵「はらしょう?」

響「最高に美味しいって事さ」

男「他にはテーマパークなどもあると思うが、どうせなら冬らしい事がしたい」

男「スキーをした後に温泉でいいのではないだろうか」

龍鳳「そうですね」

日向「それが一番無難だな」

男「では異論が無ければ今度は遠出出来なかった時の事を考えよう」

龍鳳「基本的には室内で過ごす事になりそうですね」

男「そうだな。外出しても特に面白い場所は無い」

北上「ウノとかババ抜きとか?」

日向「テーブルゲームなら将棋や囲碁、モロッコでもいいな」

男「将棋など差せるのか?」

日向「嗜み程度だ」

古鷹「映画鑑賞もいいですよ!」

武蔵「映画も十八番ではあるな」

龍鳳「テレビゲームはどうですか?」

北上「あぁ……スマ◯ラならあるよ」

男「室内ですることならいくらでも思いつきそうだな」

男「とりあえずこのくらいにしておくか。取らぬ狸のなんとやらだ」

男「少佐に話を持ちかけてみる。少し待っていてくれ……」


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ほのぼの回から先に進めさせていただきます。お題ありがとうございました

ちなみにレジャーと家でゴロゴロぬくぬくどっちがいいですか?

すみません。今日は忘年会で泊まりなので更新は無しです。お仕事帰りに更新します

少佐「……」

男「……」

少佐「いくらなんでも少し我儘が過ぎんかね中尉」

少佐「あまり君達ばかり贔屓にする訳にはいかん。他の者に面目立たなくなる」

男「はい」

少佐「休暇は与えん。その代わりに任務を君達にこなしてもらう」

少佐「長野県の国防軍駐屯地に赴き、資料を届けてもらいたい」

少佐「これは深海棲艦に関わる案件であり、悪いが資料の中身を教える事は出来ない」

少佐「到着後長野駐屯地へ宿泊。訓練の様子なども視察してから翌日に帰ってくる事」

男「……少佐」

少佐「なにか、質問は?」

男「いえ。わかりました」

少佐「うむ。今回は一般の人間を装い向こうに向かって欲しい」

少佐「一種のカモフラージュというやつだ」

少佐「交通費や宿泊費はこちらで捻出する。任務の空き時間に多少の観光は許すがその金は自分で出してくれよ」

少佐「……今回だけだぞ、中尉」

男「……計らい、ありがとうございます」

少佐「言っとくが資料の輸送自体はれっきとした任務だ」

少佐「国防軍の人間では目立つという事で我々に白羽の矢が立った」

少佐「国防軍は……深海棲艦が意志を持ち、計画的な犯行に及んでいると見解を出した」

少佐「ここしばらくでのここまでの攻撃は明らかに異常だ。奴らの行動の予兆かもしれん」

少佐「気を引き締めてかかれ」

男「はい」

少佐「それと……もう一つ重要な任務を与える」

男「……」

少佐「絶対に忘れるなよ」

男「はい」

少佐「で、その任務の内容なんだが……」

男「……」

少佐「なんでも信州豚というブランド豚がいるそうじゃないか。ワインと合いそうな信州豚の加工食品を買ってきてくれ」

男「……はい。必ず」

少佐「うむ。出来ればソーセージやハムがいい」

少佐「他にもめぼしいものがあれば買ってくるように」

男「わかりました。その任務必ず達成してみせます」

長野いいですよね

すいません。今日は眠気が酷いので睡眠とらせて下さい……

次スレだけ立てておいたのでよろしくお願いします


観測世界の艦娘達 日常・完結編
観測世界の艦娘達 日常・完結編 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418744344/)

少佐「行ったか」

少佐「ふむ……しかし信州といえば葡萄」

少佐「今の時期はりんごか。それも頼んでおけば良かったな」

少佐「シナノスイートも好きだが個人的にはふじが一番だな……パリッとした食感で甘みも抜群……」

少佐「まぁ、信州豚が食べられるだけでも良しとしよう」

少佐「まさか他の部隊の人間に頼む訳もいかんし……」

少佐「彼もああ言っていた事だし丁度良かった。うむ」

少佐「この防衛機構には冗談の通じる人間が多くなくて困る……その点彼は真面目に見えて意外と話は分かるからな」

少佐「うむ……次は……北海道辺りがいいか」

少佐「……そういえば私の紹介した宿」

少佐「いい宿にはいい宿なんだが……」

少佐「ぷっ……くくく……真面目な彼が部下と一泊して……どんな反応をするのか……」

少佐「少し見れないのが残念だな……くくっ」

少佐「はぁ……さて。次の書類は……」


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次回、男と艦娘達の旅行が始まる

艦娘達と初めての時間を過ごし、彼が体験するもの。そして見つかるものとは……


そして……時勢は着々と動いている。男達の前には、想像を決する自体が待ち構えていた


次スレもお楽しみ下さい

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