鳳翔「取材ですか?」 (27)


青葉「そうです! 取材です!」

鳳翔「どうして、私に?」

青葉「読んで下さっているかわからないのですが、私、新聞を発行してまして」

青葉「その人気コーナーの一つに、『艦娘の一日』というのがあってですね……」

鳳翔「もしかして、『鎮守府新聞』ですか?」

青葉「そうです! それです!」

鳳翔「ああ、それなら毎週読んでます。あれ、青葉さんが作ってたんですね」

鳳翔「『艦娘の一日』は、皆さんの意外な一面がみれたりして、大変興味深いですよね」

青葉「あはは、ども、恐縮です」


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青葉「あれ、皆さんからの投票で、誰を取材対象にするか決めてるんです」

鳳翔「そうだったんですね。それで、今回は、私に白羽の矢が立った、と」

青葉「そういうことです。なので、ぜひとも鳳翔さんに一日、密着取材させていただきたく……」

鳳翔「でも、私なんて、取材しても面白いことなんて無いと思いますけど」

青葉「大丈夫です! そこのところは、この青葉に任せていただければ」

鳳翔「そう、ですか?」

鳳翔「……」

鳳翔「なら、いつも楽しませてもらっているお礼に、お受けしようかしら」

青葉「本当ですか!? ありがとうございます!」

青葉「では、明日、改めてお伺いします!」

鳳翔「はい、お待ちしておりますね」






翌日


青葉「では、今日はよろしくお願いします!」ペコリ

鳳翔「朝も早いのに、元気いっぱいですね」

青葉「『取材には、いつも全力で!』がモットーですので」

鳳翔「真剣に取り組んでいるのですね」

青葉「はい!」

鳳翔「ふふふ、あなたになら良い記事を書いてもらえそうですね。じゃあ、参りましょうか」

青葉「はい! お供します!」






青葉「ここは……弓道場、ですか?」

鳳翔「ええ、毎朝、必ず鍛錬をするようにしています」

青葉「鍛錬、というと、発着艦訓練ですか?」

鳳翔「いえ、機体を使うのは資源を使いますので、普段は、ただの矢を使います」

青葉「純粋に弓道を行う、というわけですね」

鳳翔「ええ。狙った場所に矢を射るということは、空母としての技量に直接関わりますので」

青葉「なるほど……」

利根「だ、大丈夫 もうカタパルトの心配はないぞ」


金剛「タイムスリップしないか心配デース」


軍医「ふざけている場合ではない! 一刻も早く!」


響「…任せた」


利根「み、皆心配しすぎじゃ」

すまん

いたみすった


加賀「おはよう、鳳翔さんと……青葉さん?」

鳳翔「あら、加賀さん。早いのね」

加賀「ええ、まあ」

鳳翔「青葉さんは、今日一日、私を取材するので、同行してもらってます」

青葉「ども、恐縮です」

加賀「取材?」

青葉「『鎮守府新聞』の『艦娘の一日』というコーナーのために、一日密着取材させていただいています」

加賀「そう、なの」

鳳翔「迷惑をかけないように気をつけるけれど、気に障るようだったら言って下さいね」

青葉「よろしくお願いします」

加賀「……わかったわ」


鳳翔「じゃあ、始めましょうか。青葉さんは、静かに見ていて下さいね」

青葉「わかりました」



鳳翔「……」キリキリ

鳳翔「……っ」ヒュン

ストン

加賀「……」キリキリ

加賀「……っ」ヒュン

ストン

青葉「……」

青葉(これは、静かにしろと言われなくても、自然と黙ってしまいますね……)

青葉(お二人とも、すごい集中力です)

青葉(特に、鳳翔さんのいつも見せる温和な表情とは、またひと味違った真剣な表情……うぅ……撮りたい)

青葉(後で頼んで、射る姿だけでも撮らせてもらおう……)




加賀「……ふぅ」

青葉「!」

青葉(加賀さんが、緊張を解きました。休憩でしょうか)

加賀「……」

青葉(タオルで汗を拭くその姿……撮りたい)

青葉(はっ! いけない、今日は、鳳翔さんの取材です)

青葉(……次の取材は、加賀さんにしましょうか)

加賀「……」

青葉「!」

加賀「青葉さん」

青葉「す、すいません、お邪魔するつもりは……」

加賀「いいえ、そんなことないわ。隣、良いかしら」

青葉「あ、どうぞ」


加賀「……どう? 空母の鍛錬をみた感想は」

青葉「すごい集中力ですね。写真に撮りたいぐらいに」

加賀「一部の空母の娘たち以外は、こういう鍛錬が実戦でものいうから」

加賀「とくに、この鎮守府は、資源の関係から、私達正規空母より、軽空母が多用される傾向にあるわ」

加賀「鳳翔さんが鍛錬を欠かさないのも、そのため」

青葉「へぇ、そうなんですね」

加賀「……」

加賀「あなたは、鳳翔さんの本当の強さが何かわかるかしら」

青葉「うーん……練度の高さ、とか?」

加賀「確かに、それもあるわ。でも、本当の強さはそこじゃない」

青葉「空母のことは、よく分からなくて……すいません」

加賀「いいのよ」


加賀「鳳翔さんの本当の強さ、それは、集中力、そしてスタミナよ」

青葉「集中力と、スタミナ……?」

加賀「空母は、射る順番によって発現できる艦載機の数が異なるの」

加賀「いわば、慣れのようなものかしら。私でいえば、三射目が一番本気をだせる」

加賀「それまでの、一射、二射目は、少し数が減ってしまうの」

青葉「ほぇー、そんなことが……」

加賀「でも、鳳翔さんは違う。彼女には、慣れが無い。必要ないのよ」

加賀「全体の数が少ないのは、認めるわ。でも、それは軽空母である以上仕方の無いこと」

青葉「うーん……」

加賀「……口で言うよりも、実際に見てもらったほうがわかりやすいかしら」

青葉「! ……すいません」

加賀「いいのよ」


加賀「鳳翔さん」

鳳翔「ふぅ……はい?」

加賀「せっかくの取材なのだから、あれを見せてあげたらどう?」

青葉「? ……あれ、ですか?」

鳳翔「しかし、それでは、矢が無駄になってしまいます」

加賀「気にしなくていいわ。本当の鳳翔さんを見てもらえる良い機会なのだから」

鳳翔「本当って……少し、大げさではないかしら」

加賀「良いから。ほら、青葉さん」

青葉「は、はい! よろしくお願いします」

鳳翔「もう……致し方ありませんね」

青葉「あ、そ、その前に!」

鳳翔「はい?」

青葉「射る時の姿、一枚だけ撮ってもよろしいでしょうか……?」

鳳翔「ふふ、構いませんよ」

青葉「ありがとうございます!」




鳳翔「……」キリキリ

鳳翔「……っ」ヒュン

ストン

青葉「……」

青葉(容易く的のど真ん中に……すごいです)

加賀「まだ、驚くのは早いわ」

青葉「え?」

鳳翔「……」キリキリ

鳳翔「……っ」ヒュン

パキン

青葉「!」

青葉(あわわ……まったく同じ場所に……)

青葉(先に射られた矢が綺麗に裂けちゃってます)

加賀「……ふふ」


鳳翔「……」キリキリ

鳳翔「……っ」ヒュン

パキパキン

青葉「うわっ」

青葉(さ、三発目も……すごい精度です)

鳳翔「……ふぅ」

加賀「どう? これでわかったかしら」

青葉「え、ええ、とても」

加賀「それは、良かったわ」

青葉「鳳翔さん、ありがとうございました」

鳳翔「いえいえ」

鳳翔「そろそろ行きましょうか」

青葉「はい!」

鳳翔「加賀さん、ごきげんよう」

加賀「はい、鳳翔さんも」

青葉「加賀さん、色々とありがとうございました!」ペコリ

加賀「当然のことをしただけよ。……一ファンとしてね」

青葉「え……?」

鳳翔「先に行ってしまいますよ?」

青葉「あ、ま、待って下さい!」タッ


加賀「……ふふ」






青葉「次は、何を?」

鳳翔「買い出しに行こうかと思っています」

青葉「買い出し……夜のために、ですか?」

鳳翔「そうですね。ありがたいことに、常連さんも出来ました」

青葉「居酒屋『鳳翔』……。いつ頃から、やっているんでしたっけ」

鳳翔「いつ頃からかしら。提督の晩酌にお付き合いして、簡単な食事を作るようになってからだから……」

青葉「ば、晩酌……」

青葉(こ、これは、ものすごいスクープなのでわ……!)

鳳翔「? どうかしました?」

青葉「い、いえ! 何でもありません」

鳳翔「そうですか? ……だから、えっと一年、ぐらいかしら」

青葉「もう、そんなになるんですね」

鳳翔「時間が経つのは、本当に早いですね」

青葉「そうですね」





鳳翔「さ、ここです」

青葉「……普通のスーパーですね」

鳳翔「そうですよ」

青葉「何か、こう…勝手なイメージですけど……もっとこだわっているのかと思ってました」

鳳翔「ふふ、そう見えますか? もちろんあるものの中では、こだわりますけれど、料理のおいしさは、食材だけでは決まりませんから」

青葉「そうなんですか?」

鳳翔「ええ、焼いたり、煮たりする時間、調味料の量、食べてもらう人を想う気持ち。そういったものも、料理の善し悪しを充分左右します」

青葉「なるほど」

鳳翔「さあ、早く買い物を済まして、鎮守府に帰りましょう」

青葉「はい! 青葉もお手伝いします!」



青葉「次は……の前に、この荷物をどうにかしないと、ですね」

鳳翔「ごめんなさいね。いつも一人で行っていたから、つい買い過ぎちゃったみたい」

青葉「いえいえ! これくらい、何てことありません」

鳳翔「今日は、出撃も無いし、このまま、お店のほうに行ってしまいましょうか」

鳳翔「そこで、何かごちそうするわ」

青葉「そんな、悪いですよ」

鳳翔「良いの。手伝ってくれたお礼をさせて」

青葉「き、恐縮です」







青葉「ふー……ごちそうさまでした」

鳳翔「ふふ、お粗末さまでした」

青葉「思わず、食べ過ぎちゃいました……」

青葉「すいません、今日の夜のための食材だったのに」

鳳翔「良いの。どうせ買い過ぎだったくらいなんだから」

青葉「ありがとうございました」

鳳翔「いえいえ、こちらこそ」

鳳翔「じゃあ……どうしましょうか。今日することといえば、このくらいなのだけれど」

青葉「あ、そうなんですか」

鳳翔「強いて言えば、そうね、下ごしらえはするつもりだけれど、それは、取材できないものね」

青葉「じゃあ、その姿を二、三枚撮らせていただけますか?」

鳳翔「そんなことで良いなら、いくらでも」

青葉「ありがとうございます!」







鳳翔「ああ、そろそろかしら」

青葉「あ、じゃあ、私は、これでお暇します」

鳳翔「良いのよ、いてくれても」

青葉「いえ、お忙しい中、お邪魔するわけにもいかないですし」

青葉「記事にするには、充分取材できましたから」

鳳翔「そう? なら、良いけれど」

青葉「ええ、今日はどうもありがとうございました」

鳳翔「こちらこそ」









鳳翔「気をつけて帰るのよ」

鳳翔「……ふぅ」



シャ―

鳳翔「……」カチャカチャ

鳳翔「……これでよし、と」

鳳翔(こんな時間……今日は、皆、遅くまで飲んでいたのね)

鳳翔(さて、私も、寮に帰りましょう)










鳳翔(今日も一日、疲れました)

鳳翔「……ふふ」

鳳翔(でも、皆の、そしてあの人の笑顔を見ていると)

鳳翔(この疲れも悪くないかな、と思えるのです)

鳳翔「おやすみなさい……提督」チュ

パシャ


青葉「ふふふ……」

青葉(この青葉、見くびってもらっては困ります)

青葉(人をあっと驚かせてこそ、スクープです)

青葉(そのためなら、この程度のこと雑作もありませんよ)

青葉「ふふふ……」

青葉(どこで撮ったのやら、提督とのツーショット写真に、頬を赤らめながらお休みのキスをする鳳翔さん……これは、大スクープです)







青葉「と、いうわけで、どうです、提督」

青葉「お望みの品、撮ってきましたよ」

提督「……」

青葉「提督?」

提督「で……」

青葉「?」

提督「でかしたあぁぁあぁあぁぁ!!」バッ

青葉「おっと」

提督「うおぉぉぉぉ!?」ドンガラガッシャ―ン

青葉「ただでは、あげられませんねぇ?」

提督「何だ、望みは! 言え! 早く言え!」

青葉「ま、まあまあ、そうがっつかないで下さいよ」

青葉「んーと、そうですねぇ……」

青葉「じゃあ、写真を一枚、撮らせてもらいましょうかね」

提督「……毎度毎度、思うんだが、そんなことで良いのか」

青葉「ご不満ですか?」

提督「いやいやいや、そんなことはない!」

青葉「今の気持ちを、満面の笑みで表して下さいね」

提督「! わかった、まかせろ」

青葉「じゃあ、いきますよ。はい、チーズ!」








青葉「ふう……」

青葉(あの二人にも困ったものですね)

青葉(素直になれば良いのに、規律がどうたら、風紀がどうたら……)

青葉(まったく、馬鹿げてますね)

青葉「ふふふ……」

青葉(でもそのおかげで、私は、甘い蜜を吸わせてもらってるんですけどね)

青葉(この写真、今回はいくらで売れるでしょうかね)

青葉(間宮アイス十個? いやいや、この写真には、それ以上の価値があります)

青葉(今夜の『オークション』が楽しみです)

青葉(っとその前に、今週の新聞を書き上げてしまいますか)






そうして出来上がった『鎮守府新聞』は、今回も多くの読者の支持を集めた。

しかし、提督以下、何人かの艦娘は、その裏で起こる『オークション』なるものを知ることはないのであった。

鳳翔さんは、可愛いだけじゃなく、本気を出せば強いんだよ、ということを書きたかった。

正直、それだけなので、後はグダグダ。お許し下さい

依頼出してきます

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