ガブリアス「オオタチさん…」 (25)

ボックス内

ニドキング「よぉみんな知ってるか?今日、新入りが来るらしいぜ」

アブソル「ほう、それは興味深い」

ヌオー「ようやく君にも後輩が出来たわけだね~」

ガブリアス「・・・ええ、そういう事になりますね」

ニドキング「なあ、どんな奴なんだ?お前は捕まえる時に野生のソイツと戦ったんだろ?」

ガブリアス「別に大したことないッスよ。まあ、頑丈なのは認めますがね」

ピッ

ヌオー「あっ、早速転送されてきたみたいだよ~」


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エアームド「どうもはじめまして。新入りのエアームドです」ペコリ

アブソル「ほう、我々のパーティでは初のひこうタイプだな・・・」

ニドキング「よろしくな、エアームド!俺はニドキングだ」

ニドキング「こんなナリに似合わねぇが、いわゆる器用貧乏って奴でな」

ニドキング「技のタイプだけは無駄に豊富だから、技の事で聞きたいことがあれば遠慮なく質問しな」

「あっ、はい!よろしくお願いします!」ペコリ

ヌオー「オイラはヌオー。見ての通りのんきな奴さ」

ヌオー「緊張するのも分かるけどさ、そんなに硬くならなくてもいいんだよ~?」

エアームド「あ、すいません。俺、はがねタイプなもんで…」

ヌオー「あははは。君って冗談も言えるんだね~。ま、これから仲良くしていこうよ~」

アブソル「私はアブソルだ。このパーティに来る前・・・私は正直、群れるのが嫌いだった」

アブソル「来たばかりの君にこんな話をするのもどうかと思うが…私の種族は人間達に迫害されてきた過去があってな」

エアームド「そ、そうだったんですか…」

アブソル「しかしそんな私でも、マスターやパーティの仲間たちは暖かく出迎えてくれた・・・」

アブソル「だから君も、きっとここに馴染めるはずだ。もし悩み事があれば、私に相談してくれ」

エアームド「はい!どうかお願いします!」

ガブリアス「んで、知ってると思うけどアタイはガブリアスだ」

ガブリアス「ウチらの中じゃ唯一の女だけど、ナメたら痛い目見るよ?」

ガブリアス「これからガンガンしごいてやるから、覚悟しな」

エアームド「ひぃっ!す、スイマセン!」

アブソル「ガブリアス、あまり新人いびりをするんじゃない」

ガブリアス「兄さん、すいませんがこれはアタイと新入りの問題なんです。こういうのは初めが肝心・・・」

ピッ
オオタチ「あれ~?見かけない顔だね。新入りさんかい?」

ガブリアス「お、オオタチさん!」

オオタチ「ん?どうしたのガブリアスちゃん?そんな怖い顔して・・・」

ガブリアス「えっ!?あ、いや、その・・・し、新入りにバトルの厳しさを教えていたところです!」

オオタチ「そう?ならいいけど…あんまり厳しくしすぎないようにね?」

オオタチ「せっかく君にも後輩が出来たんだから、仲良くしなきゃ!」ニコ

ガブリアス「は、はい・・・///」

エアームド「あの、あちらの方は?」

ニドキング「オオタチさんだ。俺らの中じゃ一番の古株にして、マスターの一番のお気に入りでもある」

ニドキング「きっとさっきまでマスターにモフモフしてもらってたんだろうな・・・くぅ~!羨ましいぜ!」

エアームド「そ、そうなんですか・・・」

オオタチ「やぁ、君が新入りさんだね?」トコトコ

エアームド「あっ、どうもはじめまして。エアームドっていいます」

オオタチ「僕はオオタチ。これからよろしくね」

オオタチ「ガブリアスちゃん、ちょっと荒っぽい所もあるけど、根はいい子だからそんなに怖がらないでね」

エアームド「はい。分かりました」

ガブリアス「・・・///」モジモジ

エアームド「・・・?」

オオタチ「じゃあ、今日はもう遅いからそろそろ寝ようか。また明日ね」トコトコ

ヌオー「おやすみ~」

ニドキング「おう。じゃあな」

アブソル「今日は疲れただろう?君も早く休むといい」

エアームド「ありがとうございます。おやすみなさい」

ガブリアス「・・・」

ガブリアス「・・・」

エアームド「あの・・・お隣いいですか?」

ガブリアス「ん?なんだアンタか。まだ残ってたのかい」

エアームド「はい、少しお聞きしたい事があって」

ガブリアス「そっか・・・まあいいさ。座りな」

エアームド「はい」ストン

ガブリアス「その・・・さっきはキツく当たって悪かったな」

エアームド「いえ、先輩が後輩を指導するのは当然の事ですから」

ガブリアス「そういや、さっき言ってた聞きたい事ってなんだい?」

エアームド「はい、オオタチさんの事について・・・」

ガブリアス「へっ!?どうしてそれをアタイに聞くのさ!?」

エアームド「いえ、オオタチさんが来てから、ガブリアスさんがずっと挙動不審だったのが気になって・・・」

ガブリアス「そ、そんなに変だったか?」

エアームド「まぁ、どちらかといえば・・・」

ガブリアス「べ、別にそんな特別な関係じゃねーけどさ!そんなに聞きたきゃ話してやるよ!」

エアームド「はい、お願いします」

エアームド(今までの態度で大方の予想は付いたけどね…)

ガブリアス「アタイがこのパーティに来る前・・・まだ野生のポケモンの頃の話だ」

ガブリアス「その頃のアタイは、アブソル兄さん以上に群れるのが嫌いだった」

アタイがまだ無邪気なフカマルだった頃、同い年くらいのポケモン達と遊ぼうと思って近づいて行ったのさ。
ところが、そいつらはアタイの顔を見るなり足早にどっかに行っちまった。
そんな事が何度も続いて、悲しくなったアタイはそいつらに聞いてみたんだ。

「どうして一緒に遊んでくれないの?」

ってな。そしたら奴らは口をそろえてこう言ったよ。

『お母さんがフカマルちゃんとは遊んじゃダメだって』

『フカマルはいずれ狂暴なガブリアスに進化するから、何されるか分からないって』

それを聞いたアタイは思わずキレちまって・・・我に返った時にはそいつら全員血祭りさ。
当然、それが原因で周りからは完全に白い目で見られるようになって・・・
嫌気がさしたアタイは故郷の洞窟を飛び出し、放浪の旅に出たのさ。
きっとどこかには、アタイと友達になってくれる子がいるハズだと信じてな…
けど、どこに行っても同じだ。どいつもこいつもアタイがフカマルってだけで差別しやがった。
そして気づいたら血祭り・・・その繰り返しだ。これじゃ悪循環だと分かってたが、どうにも我慢できなくてね。
そんなことを繰り返すうちに、あっという間にアタイの悪名は広まってね。もう自分でも友達探しは無理だと分かったよ。
いつしか旅の目的は、友達探しから嫌いな奴をボコる事に変わってた。
そんな旅を続けてたもんだから、ガバイトに進化した頃には一丁前のワルの出来上がりってわけだ。

エアームド「それは・・・すいません、なんか悪い事聞いちゃって」

ガブリアス「気にすんな。過去の話だ。で、ちょうどその頃だな。マスター達と出会ったのは」

ガブリアス「もうその頃になると、アタイは相手の顔を見るなり構わずケンカを売るようになっていた」

ガブリアス「そんでいつものようにケンカを仕掛けたわけだが…相手が悪かった。バンギラスだった」

ガブリアス「まだガバイトになったばかりじゃ流石に手も足も出なくてな。瀕死状態まで追いつめられたよ」

バンギラス『悪く思うなよ。不用意に喧嘩を売ったお前が悪いんだからな』ズシンズシン

ガバイト『あ…が…』

ああ、アタイはここで死ぬんだ。結局何もない人生だったな・・・
そう思ってた時、偶然近くを通りかかったマスターがアタイをポケモンセンターまで運んでくれたんだ。
そうして一命を取り留めたわけだが…正直、その時はマスターに対してちっとも感謝してなかった。
このまま生きててもいい事があるとは思えなかったし、いっそあの時・・・ってな。
それにアタイを助けたのだって、どうせガブリアスに進化すればバトルに役立つから、程度に考えてると思ってたしな。

そんな心構えだから、はじめのうちは兄さん達とも仲良くしようなんて思わなかった

ヌオー『おはようガバイト。今日も一日がんば…』

ガバイト『うっせーな!気安くアタイに話しかけんじゃねーよ!』ドン

兄さん達はこんなアタイにも優しい言葉をかけてくれたけど、今まで荒みきった人生を送ってきたアタイはどう接していいか分からず、ついつい怒鳴り散らしちまった。
今考えれば酷い話さ。はじめて向こうからアタイに話しかけてくれたってのにさ。
その頃は、オオタチさんに対してもそれほど特別な感情は抱いてなかった。
モフモフしてて可愛い先輩だなー、程度には思ってたけどね。

そんな意識が変わるきっかけになったのは、あの夜の事だ・・・
その日アタイはバトルで冷凍ビームを喰らって、こおり状態になってな
こおり状態自体はポケモンセンターで治してもらったんだが、その影響で風邪をひいちまってな。
夜になっても震えが止まらなかったよ。
そんなアタイを看病してくれたのが、他でもないオオタチさんだ。
オオタチさんはドーナッツみたいに丸まって、一晩中アタイの体を包んでくれてたんだ。
翌朝、アタイが目を覚ますとオオタチさんは笑顔でこう言ってくれた。

オオタチ『おはよう!少し顔色がよくなったみたいだね!』ニコ

そう言うオオタチさんの顔には明らかに疲れの色が見えてたし、アタイの風邪がうつったのか、頬も赤かった。
おまけにアタイの鮫肌のせいで、あのモフモフな毛並みまでボロボロになってて・・・
それを見たアタイは涙を堪え切れなくなってね。わんわん泣き喚きながらオオタチさんに土下座したんだ。

ガバイト『すいません兄さん!アタイなんかのために、そんなボロボロの体になっちまって…』

それでもオオタチさんは笑顔を崩さす、優しくアタイの頭をなでてくれたんだ・・・

オオタチ『大げさだなぁ。そんな気にすることないよ。君がこうして心を開いてくれただけで僕は満足さ』ナデナデ

ガバイト『オオタチさぁん…!』ボロボロ

エアームド「そんな事があったんですか…」

ガブリアス「ああ。それからだよ。他の兄さん達とも仲良くしようと考えるようになったのは」

ガブリアス「といっても、今まで他人付き合いなんてロクにしてこなかったからね。いわゆるコミュ障ってやつだ」

ガブリアス「そんなアタイにも、オオタチさんは挨拶やコミュニケーションの仕方を手取り足取り優しく教えてくれたよ・・・」

ガバイト『あっ、あの』

ニドキング『ん?どうした?』

ガバイト『そ、その・・・お、お、おは・・・』

オオタチ『ガバイトちゃん、落ち着いて。練習通りにやれば大丈夫だよ』

ガバイト『お、おはようございます!』ペコリ

ニドキング『ああ、おはよう。お前から挨拶するなんて珍しいな』

ガブリアス「こんな関係が続いて、アタイがオオタチさんに惚れるのにはそう時間はかからなかった」

ガブリアス「ま、アタイとオオタチさんの関係はざっとこんな所だ」

ガブリアス「さっきアンタにキツく当たったのは、オオタチさんとアタイが触れ合う時間が減るのが怖かったんだ」

ガブリアス「オオタチさんは優しいから、誰とでも均等に接して・・・って、アンタ泣いてるのかい?」

エアームド「だ、だって…だって…」ボロボロ

ガブリアス「よ、よせよ、みっともない・・・」

エアームド「俺、ガブリアスさんのこと応援します!頑張ってくださいね!」

ガブリアス「そ、そうか…ありがとよ・・・///」

翌朝

ガブリアス「オオタチさん、おはようございます!」

オオタチ「おはよう。今日は一段と元気がいいね」

ガブリアス「あ、あの・・・もしよければ今度のダブルバトル、アタイと組んでくれませんか!?」

オオタチ「うん、いいよ!お互い頑張ろうね!」ニコ

ガブリアス「はい!」パァァ

ニドキング(ガブリアスの奴、今日も張り切ってんな)ニヤニヤ

ヌオー(オイラ達はいつでも見守ってるからね~)

アブソル(君とオオタチ殿の未来に幸あらんことを・・・)

エアームド(ガブリアスさん・・・オオタチさんは鈍感そうだから時間はかかりそうですけど…)

エアームド(でも絶対大丈夫ですよ!なんたってあなたは天下無敵の600族、ガブリアスなんですから!)

おしまい

ガブリアスがオオタチに告白するところまで書こうかなーなんて思いましたが、どうにも思うように書けず、
なんだか中途半端な終わり方になってしまいました…
ssだと何かと悪役にされることの多いガブリアスだけど、強いポケモン、弱いポケモン、そんなの人の勝手だよ!

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