ほむら「あなたのいなくなった世界で」 (59)



忘れてたまるものか。




彼女が向けてくれたあの笑顔を。




忘れてたまるものか。




彼女と交わしたあの約束を。




忘れてたまるものか。




なにも変えられなかった、私の無力を





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タツヤ「~♪」カリカリ

コツコツ

ほむら「......」

タツヤ「?...てぃひひ、まろか!まろか!」

ほむら「...うん、そうだね。そっくりだよ」ニコッ

タツヤ「...ふわぁ?」

知久「こら、駄目じゃないかタツヤ。女の人の髪を引っ張るのは駄目!」

タツヤ「まろか、まろか!」キャッ キャッ

詢子「すみません、大丈夫でしたか?」

ほむら「いえ、こちらこそお邪魔してしまって...」

ほむら「...まどか、だね」

タツヤ「ふわぁ...あい!」

詢子「......」

タツヤ「いくよ~!」

知久「さあ、来い!」





詢子「まあ、その...あの子が一人遊びする時の見えないお友達ってやつ?子供のころはよくあることなんだけどねぇ」

ほむら「ええ。私にも覚えがあります」

詢子「まどか...ってさ、あなたも知ってるの?アニメかなにかのキャラとか?」

ほむら「さぁ...どうだったか。聞き覚えがあるような、ないような...」

詢子「...そっか。あたしもタツヤとどっかで一緒に見たのかなぁ?」

詢子「...たまにね、すごく懐かしい響きだなぁって思う時があるんだよね...まどか」

ほむら「...そうですか」

詢子「おっ...そのリボン、凄く可愛いね。アタシの好みド直球だわ!ちょっとビックリしたくらい」

ほむら「差し上げましょうか?」

詢子「あっはは、こんなおばさんには似合わないって!まあ、娘とかいたら付けさせたかもしれないね」

ほむら「......」

ほむら「...そろそろ、陽が落ちますね」

詢子「ありゃ、本当だ。もうこんな時間か。じゃあ、帰らなくちゃねえ」

ほむら「帰り道、気をつけてくださいね。物騒な世の中ですから」

詢子「あなたは大丈夫なの?」

ほむら「はい。家も近いですし」

詢子「ならよかった。...今日はありがとうね」

知久「タツヤ、お姉さんにバイバイは?」

タツヤ「ばいばい、おねえちゃん!」フリフリ

ほむら「...バイバイ」フリフリ





ほむら「さて、と...そろそろ出てきたらどう?」

杏子「なんだよ、気付いてたのか」

ほむら「ええ。魔力やらなんやらでバレバレだったわよ。覗き見なんて趣味が悪いわね」

杏子「そういうつもりじゃなかったんだけどさ。ただ、苦手なんだよ。ああいう、いい家族ってやつ」

ほむら「......」

杏子「悪く言ってるわけじゃねーぞ?懐かしく思っちまうだけだ」

ほむら「...そう」

杏子「...それに、雰囲気以上に珍しかったんだよね」

ほむら「珍しい...?」

杏子「あいつらといた時のあんたの顔。正直、あんな笑い方ができるとは思ってなかったからな」

ほむら「笑い方...?」

杏子「あんたはほとんど笑わないんだけど...たまに笑ったと思ったら、いつも無茶してやせ我慢で笑顔つくってるように見えてるんだよ。それと比べたら、さっきは自然に笑えてたっていうか、なんていうか...」

杏子「うまく言えねえな...とにかく、いつもと違ったんだ」

ほむら「...いいえ。なんとなくわかったわ。教えてくれてありがとう」

杏子「気にすんな。それに、さやかへのいい土産話が出来たしな。まさかほむらがショタk」

ゴッ

ほむら「くだらないこと言わないでちょうだい。ぶつわよ」

杏子「こういうのはさやかの役回りだ...」ボタボタ




―――キィン

ほむら「魔獣の反応...!」

杏子「さぁて、さやかの分まであたしらが働かねーとな」

ほむら「ええ、そうね」

――――――――――――――

魔獣「ギィィィ...」シュウウ

マミ「今日はこれで終わりみたいね」

杏子「はーっ、つっかれたー!」

マミ「私たちはこのまま美樹さんのお墓参りに行くけど、あなたはどうする?」

ほむら「私も行くわ」

チーン

杏子「よう、また来てやったぜ。...まあ、あんたがいなくなってから大変だけどさ、なんとかやっていってるよ」

杏子「だから、あんたはおもてなしの準備でもしてな。いつかそっちに行って、なんも用意してなかったらブン殴るから」

杏子「そうだ、あんたにいい話があるんだけどさ。ほむらの奴がな、川で小さい男の子を襲って...おぉっと!」サッ

ほむら「...外した」チッ

杏子「そう何度も喰らってたまるかよ!」

ほむら「」ムッ

マミ「まったく、もう...」

ガガガ ビシ バシッ

マミ「美樹さん、元気にしてますか?あなたがいなくなってからとても寂しくなったけれど、なんとか元気を取り戻しました」

キンキン バシュウ ジャラララ ドドドドド 

マミ「あなたが守ろうとしたこの街は、私たちが必ず守ります。だから、どうか見守っていてください」

チョイトデモアタシニカナウトオモッタカマヌケガァ! ヌウウゥゥ!

マミ「さて、と...二人共、それ以上やるなら一週間おやつ抜きよ」

杏子「げっ...それは勘弁してくれ」

ほむら「...反省するわ」

マミ「最後に暁美さん、何か言ってあげなさい」

ほむら「ええ」

ほむら「...正直、あなたとはあまりウマが合わなかったと思うわ。でも、あなたに助けられたことだって何度かあった...何度か、ね」

ほむら(なにより、あなたはまどかの親友...引っ込み思案な彼女が一人ぼっちにならなかったのはあなたのおかげだって聞かされたこともある)

ほむら(だから、あなたへの言葉はこれで十分よね)

ほむら「まどかを、よろしくね」

杏子「なあ、そのまどかってなんなのさ」

ほむら「いつか教えてあげるわ。さあ、もう夜も遅いし帰りましょう」




QB「......」

QB(まどか、か...)

仁美「………」

―――――――――――――――――――
ホムホーム

ほむら「自然に笑えてた、か...」

ほむら(笑っているなんて言われたのも、随分と昔の話な気がするわね)

まどかは、全ての魔法少女の絶望を受け止めるために行ってしまった。

私にできることは、そんな彼女が愛した世界を守り、希望を捨てないことだ。

私は、できているのだろうか。彼女のいない世界と向き合えているのだろうか

ほむら(そういえば、まどかの家族...大丈夫かしら。家は分からないけど、魔獣の反応も逆方面だったし、万が一のことも無いとは思うけど...あれ?)




ほむら「まどかの家って...どこだったっけ?」

>>10
仁美「………」

――――――――――――――

翌日


ほむら「思い出せない...」

他の場所は覚えている。

さやかの家、マミの家、杏子の教会、志筑仁美の家、上条恭介の家...

なのに、まどかの家だけが思い出せない。

どこをどう行けばいいのかすら思い出せない。

ほむら「なんで...?」

数日後

杏子「なあ、まどかってやつはさやかの友達なのか?」

ほむら「...?」

杏子「そいつがどんな奴だったのか知りたくてさ。気を悪くしたなら謝るけど...」

ほむら「ちょっと待って...美樹さやかが何の関係があるの?」

杏子「なに言ってんだよ、あんたがまどかを頼むって言ってたじゃねえか。友達でもない奴には言わないだろ?」

ほむら「???」

ほむら(彼女の友達は...あれ、まどかの友達って誰がいたっけ?)

杏子「憶えてねえのか?」

ほむら「...ごめんなさい」

まどかに関係する事柄が記憶から消えていく...

その症状は、日に日に悪化していった。

次は彼女の家族の名前。容姿とまどかの家族であることは憶えていたが、名前だけは思い出すことができなくなっていった。

その次は彼女の家族の存在。容姿も、漠然としか思い出せず、まどかと同じ苗字の人としか認識できなくなっていった。

やがて彼女がいた日々も思い出せなくなり、残っているのはまどかの存在だけ。

更に、彼女の趣味、髪の色、体つき、顔...彼女自体についても思い出せなくなっていき、最後に残ったのは彼女の声と、今にも消えそうな曖昧な記憶だけだった。

ほむら「......」

QB「やあ。僕を呼びつけるのはあの時以来だね」

ほむら「...そうね」

QB「また、興味深い話を聞かせてくれるのかい?」

ほむら「キュゥべえ...あなたは、絶対に嘘をつかないのよね?何もかもを知ってるのよね?」

QB「妙なことを聞くね。どうしたんだい、君らしくないじゃないか」

ほむら「早く答えて!」

QB「嘘は絶対につかないし、なにもかもを知ってるわけじゃないけど...君よりは知識は多いと思うよ」

ほむら「なら、教えて...今、私に何が起こっているのか...!」

QB「ふむ...?」

私は、あいつにもう一度全てを話した。

まどかが改変する前の世界について、まどかが願った奇跡について。

そして...私に今起きている現象について。

QB「ふむ...僕らの知る限りでは前例がないから難しいね」

ほむら「...そう」

最初からあてにはしてなかった。ただ、藁にもすがりたい気持ちだった。

QB「でも、推測くらいならできるよ」

ほむら「!!」

QB「もちろん、推測は所詮推測に過ぎないし、確立する証拠があるわけでもない...それでも聞きたいかい?」

ほむら「...お願い。聞かせて」

QB「君の話が絵空事でないという前提で話すよ」

ほむら「......」

QB「君の願いは、その"まどか"との出会いをやり直し、彼女を守る自分になること。つまり、そのまどかが死んでしまう世界での自分を否定することになる」

QB「そして、同時にそれはまどかが死んでしまう世界自体を否定するということだ。ここまではいいかい?」

ほむら「...ええ」

QB「その否定する気持ちが、本来の世界への抵抗力となっていた。だが、君の願いの根幹である"まどか"はこの世界にはいないし、どの時間軸にも存在しなくなった。そしてきみはこの世界を受け止めざるを得なくなった。つまりは、いまの君はこの世界を否定はしていないということだ」

ほむら「それのなにが...」

QB「否定する気持ちが薄れるにつれて、抵抗力も無くなっていった。現に、いまきみが使える魔法は時間操作ではなく、"まどか"が使っていたという弓矢だ」

ほむら「それじゃあ...まさか...!」

認めたくない。だってそれはまどかへの誓いを放棄することだから。

QB「その通り」

でも、それがわからないこいつの推測は、私が最も恐れていた答えにたどり着いた。




QB「きみがこの世界を受け入れるほど、きみはこの世界の"まどかを知らない暁美ほむら"に戻るんじゃないかな」


―――――――――――――――――――――――――

ほむら「......」

魔獣「ゴアアア!」

マミ「危ない!」パァン

魔獣「」シュウウ

マミ「今ので最後だったみたいね...」

杏子「オイ、なにボサッとしてんだよ!」

ほむら「...ごめんなさい。体調が悪いみたい。先に帰らせてもらうわ」フラッ

杏子「おい!...行っちまった」

マミ「......」

ホムホーム

ほむら「......」

ほむら(この世界を受け入れれば、それだけまどかの記憶が消えていく、か...)

ほむら(あいつのあれは、あくまでも推測。でも、それ以外には考えられない...)

ほむら(あの子の祈りも願いも、全て忘れてしまうのなら...私がこの世界で戦う意味はなに?)

ほむら(わからない...私には...)

ほむら「ねえ、教えて...まどか」

―――――――――――――――――
数週間後

ほむら「...話ってなに?」

マミ「最近、あなた疲れてるんじゃないの?」

ほむら「...気のせいよ」

杏子「そんなわけねえだろ。戦ってる最中もどっか上の空になりやがって。フォローするあたしらの身にもなってみろ」

ほむら「......」

マミ「佐倉さん、そんな言い方...」

杏子「甘いんだよ、マミは。...やっぱり、『まどか』が原因か」

ほむら「ッ!」

杏子「あたしらはその『まどか』ってのがなんなのか知らないけどさ、それの所為で戦えないのなら忘れちまった方が...」

ほむら「うるさい!」

マミ「暁美さん...?」

ほむら「あなた達は、何も知らないから...だから、私にあの子を忘れろなんて言えるのよ!」

ほむら「あなたたちにわかる!?守りたいものを何一つ、一時も守れなかった私の気持ちが!誰にも知られることなく独りで戦い続けているあの子の気持ちが!」

ほむら「わかるわけないわよね、だってあなた達は忘れてるんだもの。あの子の想いも、存在も、なにもかも...」

杏子「ほむら、あんた...?」

ほむら「...ごめんなさい。なに言ってるか、わけがわからないわよね」

マミ「...暁美さん、話してくれないかしら」

ほむら「...話したところで」

杏子「あなた達に理解できるわけがない...ってか?」

ほむら「......」

杏子「それで一人でずっと悩んでいて、何が変わるんだよ」

マミ「約束するわ。私たちは絶対にあなたの言葉を嘘だとは思わない」

ほむら「......」

私は、二人にキュゥべえに話したことと同じ内容を全て吐き出した。

二人は、ずっと黙って聞いていてくれた。それが、今の私にはとてもありがたかった。

ほむら「...私は、病弱で、貧弱で、何にもできない人間だった。周囲からは罵られ、両親にだって内心腫れ物のように思われてたかもしれない。気が付いた時には、とっくに独りだった。私にとっては、それが世界の全てだった。...まどかと出会うまでは」

ほむら「まどかは、こんな私に微笑みかけてくれた。手を差し伸べてくれた...優しく、してくれた」

ほむら「私は、彼女と一緒にいたかった。ただ、それだけだった。なのに、私は彼女を守れなかった。やっと見つけた一番...大切な...」

ほむら「私は何もできない!彼女を助けるために契約までして!色んなものを壊して...でもダメだった!彼女を犠牲にして無駄に生きているだけ...そのうえ、彼女のことも忘れそうになっている!これ以上私に何をしろっていうのよ!?」

二人の顔は見れなかった。『まどか』はお前の頭の中の幻想だと言われたら、哀れむような目で見られたら。今の私には耐えられる気がしなかったからだ。

だから、予想外だった。

彼女が、私を優しく包み込んでくれたのは。

マミ「ありがとう、話してくれて」

ほむら「巴...さん...」

杏子「......」

マミ「...私は、『まどか』さんのことは知らない。でも、あなたにとって、忘れてしまうことも憶え続けることも苦しいってことはわかったわ」

マミ「だから...あなたが『まどか』さんを忘れさっても、誰もあなたを責めない。忘れたくないのなら、私たちがどんな手段を使ってでも思い出させてあげる」

ほむら「どうしてそこまで...」

マミ「...今まで、あなたに散々迷惑をかけてきたかもしれない。でも、これだけは忘れないで」

マミ「私たちはあなたの味方よ」

―――――――――――――

河原



陽が落ちていく。

巴マミの家からの帰り道、私はふとこの河原へ立ち寄った。

特別な意味はない。単に、外の空気に触れていたかっただけだ。

帰り際に、杏子から貰った一つの林檎を眺める。

彼女たちは味方だ。それは揺るぎない事実だろう。

ほむら「...まどか。ねえ、まどか。私はもう疲れたよ。あなたのいない毎日に」

彼女は、私にどうしてほしいと願うだろうか。

少なくとも、私が逆の立場だったなら、彼女を苦しませるくらいなら、早く忘れてほしいと思う。

マミと杏子と手を取り合って戦えるのなら、彼女もそれを望むだろう。

ほむら「あなたを、思い出にしていいのかな?」

初めてまどかと会った時のこと。

初めて魔女に襲われ、まどかに助けられたこと。

初めて3人でお茶会をしたこと。

今までの彼女との思い出が走馬灯のように駆け巡っては消えていく。




頼れる先輩が殺され、それでも強大な魔女と向き合う彼女の後ろ姿。

私の懇願するような声を受け、それでも彼女は前へ進もうとする。

ほむら「ふふっ...駄目よ。そっちは駄目だってば、まどか」

泣きわめくだけの私に、彼女は微笑み、再び背を向ける。

そして、光に包まれ、まるで矢のようにまっすぐ魔女のもとへと飛んでいく。

ほむら「やめてよ。ねえ、やめて、まどか―――」








そして、彼女は死んだ。

私を守って、ただの肉塊と成り果てた。

私は、その光景を見ていることしかできなかった。



握っていた林檎が、グシャリと音を立てて飛び散った。


水面に映る私の顔。

その表情は、怒りに、恨みに満ちていた。

誰でもない、私自身に対してだ。

ほむら「くっ...ふふふ。そうよね。この世に希望や幸せなんてあるわけない。まどかはもういないんだから」

何が希望を持って生きるだ。何がまどかの友達だ。

目を背けるな。お前はただの役立たずだっただけじゃないか。

まどかを消したのはお前だ。私なんだ。

ほむら「あはは...大した茶番だったわ」

やっとわかった。

私は逃げていただけだった。

私には、最初から選択肢なんてなかったんだ。




まどかの記憶は、もう消えなかった。

――――――――――――――――――

ヤ○ザの屋敷

ほむら「動かないで」

組長「...な、なにもんだ。他の奴らはどうした?」

ほむら「安心して。誰も殺していないわ。ただ少し眠って貰っただけ」

組長「用件は何だ...?」

ほむら「話が早くて助かるわ。用件は一つ。これからずっと、私に銃火器を提供し続けなさい」

組長「なっ...!?」

ほむら「もちろん、ただでとは言わないわ。頼まれれば、他の組を全てあなたの傘下におけるようにしてあげるし、ある程度までなら警察だってごまかせるようにしてあげる。悪くない取引じゃない?」

組長「そんなこと、お嬢ちゃんにどうやって...」

ほむら「...拳銃を一つ貸して」

組長「......?」

ほむら「......」

パァン

組長「な...!?」

組長(自分の頭を撃ちぬいた!?)

ほむら「......」ムクリ

組長「ひっ!?」

ほむら「...これで、私があなたの力が及ばない存在だということがわかったかしら」

組長「あ...あぁ...わかった...あんたの言う通りにしよう」

ほむら「ありがとう。それから、このことは他言無用。私に関して僅かでも探りをいれようものなら...」

組長「」コクコク

――――――――――――――――――



マミ「...暁美さん、あなたの魔法はどうしたの?」

ほむら「......」

マミ「どうやってそれを手に入れたかは知らないけれど、あなたが傷つくのなら...」

ほむら「...うるさいわね」

マミ「え?」

ほむら「いつもそうよ。無駄に先輩ぶって、上から目線で知ったような口をきいて...あなたのそういうところ、凄くうっとうしい」

ほむら「ちょうどいい機会だわ。私はあなたたちが邪魔だし、あなたも私の戦い方が気に入らない。だったら、もうここで終わりにしましょう」

マミ「あ、暁美さん...?」

ほむら「呑み込みが悪いわね。こんな仲良しこよしのぬるいチームはやってられないといってるの」

マミ「!」

ほむら「...別に、あなたたちと敵対するわけじゃない。この街の縄張りもあなたたちに任せる。ただ、もう手を組むのは面倒なだけよ。それじゃあ...」

マミ「...待って」

ほむら「......」

マミ「あなたが本当に私を嫌いならそれでもいい。一緒に戦いたくないというなら、私は止めることはできない。でも...」

ほむら「...して」

マミ「だったら...なんでそんなに哀しい目をするの」

ほむら「離して、と言っているでしょう!」

バッ

ほむら「...何度も言わせないで。お節介がすぎるわ」

マミ「悪いわね。いますぐにでも壊れそうな人を放っておけるほど、割り切れる性格をしていないもの」

ほむら「今更どの口が言うのよ。散々私の邪魔をしてきたくせに」

マミ「...それについては弁解の余地も無いわ。でも、いまここであなたを見過ごすことがあなたのためになるとは到底思えない」

ほむら「本当に話が通じない人ね」

マミ「本当に手のかかる後輩ね」

ほむら「...いいわ。だったら、力づくでも!」


QB「急ぐんだ杏子!」

杏子「わかってるよ、こっちでいいんだな!?」

QB「間違いない。魔力の衝突が感じられる。まったく、下手をすれば住人に見つかりかねないというのに...」

杏子「ったく、あたしが少し風見野の方に帰ってる間にことを起こすなんてな...」

杏子(よりにもよってあのマミと...暁美ほむら、お前の狙いはなんなんだ?)

パラパラ

ほむら「ぐっ...」

マミ「...同じ条件で、私に勝てる?」

ほむら「......」

確かに、銃撃戦では勝ち目はない。

ただでさえ腕前が違ううえに、あちらは応用の聞く魔法。こちらは実弾。

...勝機はある。この世界での私の魔法。あの矢を使えば、少なくともこの場は切り抜けられる。

でも、あれを使っては駄目だ。それは、僅かでもまどかに頼ることを意味するのだから。

勝機はゼロだ。だからといって、諦めていいわけがない。

この程度の障害で挫けてしまうのは許さない。

マミ「少し、頭を冷やしてもらうわよ」

こんなところで終わるわけにはいかない。

終わるわけには―――






カ チ リ

杏子「どうなってんだよ、これ」

QB「見ての通りだ。勝者は彼女だったということだろう」

杏子「なあ、ふざけんなよ。なんであんたが寝てんだよ」

杏子「答えろよ...マミ」

ほむら「はぁ...はぁ...」

身体が重い。

全身が軋むし、脚に至っては撃ちぬかれている。

だというのに

ほむら「ふふっ...ははははは!あははははは!」

私は満たされていた。

ほむら「やっと戻った...思った通りだったわ」

このままでいれば、どうあがいてもこの世界の理には抗えなくなる。

だったらどうすればいいか?簡単なことだ。あの時と同じ状況にまで自分を追い詰めればいい。

攻撃魔法なんて強力なものを持たず、誰に頼ることもせず。

結果、あの盾は再び私の腕に現れてくれた。

物を収納することと、時間を止めること以外できそうにないが、時間を戻す意味はないのでそれだけで十分だ。

なにより、まどかのことをこれ以上忘れずに済む。

これ以上の望みがあるものか。

これ以上望みなんて...

ほむら「......」

気分は最高だった。なのに、身体だけは重いままだった。


マミホーム


杏子「...許さねえ」

あいつは敵だ。敵なんだ。

思い出した。チームで戦うことに慣れて忘れてたが、これが魔法少女なんだ。

自分以外の奴はみんな敵。コンビを組むのも利害の一致だけ。

そして、己に害を為すやつは誰であっても...

杏子「ぶっ殺してやる」

「駄目よ、佐倉さん」

杏子「もう目が覚めたのか。それより、駄目っていうのは...お前、あいつにそんなことされて許せるってのか?」

マミ「...私、何にもわかっちゃいなかった。暁美さんが過去を話してくれて、わかったつもりでいただけだった」

マミ「あの子にとってなにが一番大切なものかわかっていなかった...これは、その罰」

杏子「...あたしの時と同じだってのか?」

マミ「だめだなぁ...私、いつまでたっても成長しないや」

杏子「...いいや、あんたはそのままでいい。そのままでいいんだ」

あんたはあいつみたいに壊れてはいけない。あたしみたいに諦めてはいけない。

そんなお節介焼きのあんただから、さやかも慕ったんだ。

杏子「あいつのことはあたしに任せて、あんたは少し休んでな」

マミ「......」

杏子「心配すんな。あんたがこうして生きてるところを見ると、完全に敵ってわけじゃないんだろ?まあ、それなりに戦いはするかもしれないが、殺すつもりはないよ」

杏子「あんたがそんなに気に病むことじゃないさ。誰にだって、相性とか得手不得手ってものがあるんだからな」ニカッ

マミ「...ありがとう。よろしくね、佐倉さん」

杏子「おう」


パタン

杏子「...キュゥべえ」

QB「なにかな?」

杏子「頼みがある」

――――――――――――――――――――


魔法少女「ソウルジェムがもう...私、ここまでなんだ」


『もういいんだよ』


魔法少女「だれ...?」


『わたしが全部受け止めるから』


魔法少女「あなた...まさか...」


『誰も呪わなくていいんだよ』


魔法少女「......」ニコリ


シュウウウ

杏子「......」

QB「どうしたんだい?いきなり、導かれる少女のところへ案内してくれと頼むなんて」

杏子「別に。さやかの時は見れなかったからな。円環の理がどんなものか見たかっただけだ」

杏子「あの子...幸せそうだったな。さやかもそうだったのかな」

QB「そうだね。幸せの定義は個人によるようだけれど、痛みも苦しみもないのなら、それは幸せというんじゃないのかな」

杏子「そうか」

QB「それじゃあ、ほむらの捜索を再開しようか」

杏子「ああ」

まどかっていったか...

きっと、さやかもあの子と同じように、誰を呪うこともなく、苦しむこともなく逝けたんだろう。

きっと、あんたはあたしたちもあいつらのように導いてくれるんだろう。

でも、それはあいつを苦しめてまですることなのか?

顔も知らない大多数のためには、一人の犠牲は仕方ないのか?

死ぬ寸前に会えれば、それでいいのかよ。

だとしたら...まどか。あんた、あたしと同じだ。あたしと同じクソッタレだ。

あんたはあいつの夢を奪った。夢を奪われた人間がどうなるか...わかってんのか?

あんたには感謝するよ。でも、恨むぜまどか。

あいつをあんなにしちまったのは...お前だ。

――――――――――――――――――――
数か月後

どこかの砂漠のような場所


魔獣「」オオオォォォ

ほむら「......」

ズズズ

ほむら(...なんだかよくわからないけれど変な翼が生えてきたわ。まあ、未だにまどかについて覚えていられるということは、これが私の本当の魔法なんでしょうね)



―――がんばって


ほむら「!」

...笑えてくるわね。とうとう幻聴まで聴こえるようになったわ

本物の優しい彼女なら、巴マミを裏切った私なんかに『頑張って』なんて言うはずがないもの。

魔獣「」キュイイイン

ほむら「...かかってきなさいよ。一匹残らずつぶしてあげる」


―――――――――――――――――――

ポツポツと雨が降り始める。

雨は、私の身体を冷やしていく。

ほむら(...眠たいわね)

魔獣を消し去るのに力を使い果たしたせいか、全く身体が動かない。

ほむら(...だいじょうぶ。ちょっと疲れただけ...)

そうだ。死ぬわけでも、導かれるわけでもない。まだ早すぎる。

ほむら(少しだけ...少しだけ休もう)

そうして、目蓋を閉じる。

目が覚めたときに、また進めるように。

いつか、まどかを憶えている私が、再び彼女と巡り逢える時を夢見て...






QB「―――暁美ほむら、捕獲完了だ」

――――――――――――――――――
デパート前


マミ(暁美さん、あれからずっと音沙汰がない...どこにいったのかしら...)

マミ「あら?この服...結構イケるわね。暁美さんに似合いそう」

マミ(もし、彼女と仲直りができたら...着てくれるかな)




イタ マドカトワタシノセンパイノマミサンダ

ドウシヨウ?

ワタシ、アノヒトニガテ。デモ、キライジャナイ。

ツレテイコウ。ヤサシクテセンサイナアノヒトヲ、ワタシノオウチヘツレテイコウ。

定食屋

ガララ

店主「いらっしゃい...なんだ、泥棒ネコか」

杏子「いまはちゃんと金払ってるだろ、ガンコオヤジ」

店主「ふん...いつものでいいか?」

杏子「ああ。一番安いそれでいい」

杏子(ったく、あのやろう...どこをほっつき歩いてやがる...!)



イタ イチバンハナシガアウキガスルキョウコダ

ドウシヨウ?

ダイジョウブ、モンダイナイ。

ツレテイコウ。タヨリニナルケドクイシンボウナアノコモ、ワタシノオウチヘツレテイコウ。

――――――――――――――――――

―――起きて、私の一部

さやか「うーん...いやー、よく寝た気がするわぁ~」

なぎさ「どうしたんですか?」

まどか「ほむらちゃんが大変なの。これを見て!」

さやか「あいつが?どれどれ...うわっ、なにあれ?キュゥべえのやつ、なにしてんのさ!?」

まどか「わたしだけじゃ、ほむらちゃんを助けられない...だからお願い、協力して!」

さやか「オッケー!他ならぬあんたの頼みだ。断るわけがないよ」

なぎさ「私もお供するのです!」

なぎさ(ついでにチーズもいただくのです!)

まどか「ありがとうふたりとも」

まどか(待っててほむらちゃん、すぐに迎えにいくから...!)






QB「...さて、これで準備は整った。それでは始めようか」

QB「魔法少女の、本当の行き先の研究をね」



終わり

以上で終わりです。読んでくれた方はありがとうございます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年10月16日 (火) 23:38:26   ID: ImWX0NUp

これ反逆の物語に似てるな

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