岡崎泰葉「虹を作っている場所が在る」 (25)



―――


ブロロロ…


泰葉「――道、混んでますね」

P「んー……だなぁ。すっかり渋滞に嵌まっちゃったな」

泰葉「ですね……」

P「いつもならもう事務所に着いてるんだけど……ごめんな、疲れてるだろ?」

泰葉「あ、いえ。私は平気です……けど」

P「ん? ……あぁ」チラッ


李衣菜「……くぅ……くぅ……」

加蓮「すー……すー……んぅ……」


P「……うん、後ろは気持ち良さそうに寝てるよ」

泰葉「ふふ。そうですか」クス

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P「泰葉も、寝たかったら寝てもいいぞ。着いたら起こすからさ」

泰葉「ん……ありがとうございます。でも……」

P「でも?」

泰葉「今日のライブの熱が、まだ残ってるみたいで。眠れそうにないです」

P「ふふ、そっか」

泰葉「……えへ」

P「初めての単独ライブ、楽しかったか?」

泰葉「……はい、もちろん」

泰葉「ステージを作るのも、ファンのみんなを盛り上げるのも、全て私たちに掛かっている……」

泰葉「そういうプレッシャーもありましたけど」

P「うん」

泰葉「……そんなもの、全部吹き飛んでしまうくらい……本当に楽しかったです」

P「……うん。そう言ってくれると俺も嬉しいよ」

泰葉「サイリウムの光と、天井のたくさんの照明で……」

泰葉「まるで宇宙に浮かんでいるような、不思議な感じでした」

P「ああ。星空の下で歌ってるみたいだったぞ」

泰葉「ふふ、綺麗なステージでしたね……」

P「いや、キラキラしてる泰葉たちが一番綺麗だったよ」

泰葉「……そういうの、ずるいです」プイ

P「あはは」

泰葉「……本当、夢みたいな時間でした」

P「夢、か」

泰葉「はい。どこか現実離れしているというか……白昼夢、みたいな」

P「……でも、ちゃんと現実だったろ?」

泰葉「ふふ、そうですね。スポットライトの熱、声援……それに」


泰葉「私たち三人の気持ちが合わさった瞬間を……確かに感じましたから」

P「うん、俺も感じたよ。みんなの熱い心」

泰葉「それなら、良かったです。……ファンのみんなにも、伝わったかな?」

P「うーん、それは泰葉たちが一番分かってるんじゃないか?」

泰葉「ふふふ、そうでした。みんな喜んでたと思います。……ううん、喜んでました」

P「ああ、そんなの当然だろっ」

泰葉「ふふ♪」

泰葉「まぁ、でも……」

P「ん?」

泰葉「終わってみて、私たちもまだまだだな……って思い知りました」

P「んー……うん」

泰葉「もっともっと、上を目指せるんじゃないか、って」

P「……そっか」

泰葉「もっとみんなを楽しませたい。もっと自分たちも楽しみたい……」

泰葉「そんな想いが、どんどん湧いてくるね……なんて、控室で話しました」

P「…………」

泰葉「李衣菜の、何事にも挑戦していきたい気持ち……」

泰葉「加蓮の、夢は叶えるためにあると伝えたい気持ち……」

泰葉「それに、私の……誰かを笑顔にしたい気持ち。その全部を持ち寄ったら……」

P「……うん」

泰葉「きっと、どこまででも行ける。……そう信じてるんです」

P「……俺だって」

泰葉「はい」

P「俺だって信じてるよ」

泰葉「…………」

P「どこへでも羽ばたいて行けるって。いつも信じてるんだ、俺は」

泰葉「……はい。信じてください、あきれるくらい。もっともっと、見ていてください」


泰葉「私たちのその先を……一緒に!」

P「……ああ!」



―――


ブロロンブロロン…


泰葉「……ふふ」


P「ん、どした」

泰葉「いえ……さっきの話、昔の私が聞いたらなんて言うかなって、ふと思ったんです」

P「昔の泰葉かぁ」

泰葉「たぶん、冷たくあしらったりとか、そんなの無理って決めつけたりとか。ふふ」

P「はは……もう随分時間が経ったように感じるなぁ」

泰葉「そ、そうでしょうか……」

P「あはは、今のイメージが強いんだよな」

泰葉「……聞いてもいいですか?」

P「うん。いつも笑顔でふにゃってしててかわいい」


泰葉「ふにゃってなんですかふにゃってっ」ペシペシ

P「痛い痛い叩かないで」

泰葉「もう」

P「ま、まぁ……ほんと、変わったよ。いい意味でさ」

泰葉「……みんなのおかげです」

泰葉「ずっと前からアイドルに憧れてはいました。……でも、あのときの私は、何も出来なかった」

泰葉「……いえ。どうすればいいか、分からなかったんですね、きっと」

P「……うん」

泰葉「誰かの意思に依っていれば、楽でしたから。それとも、逃げていたのかも」

泰葉「臆病だったんです、私」


泰葉「でも、だから……」

泰葉「今、こうして……みんなに出会えたこと。感謝してもしきれないんです」


泰葉「Pさんにも、ちひろさんにも。李衣菜にも加蓮にも……」

泰葉「いっぱいいっぱい、笑顔をもらいました」

泰葉「だから今度は……私の番」


泰葉「いつか、たくさんの人を笑顔にしたいな……ふふっ♪」

P「……泰葉……」

泰葉「……あっ、ご、ごめんなさいPさん。私ったら一人で喋って……」


P「今俺が運転してなかったら、お前を思いっきり抱きしめて頭撫でまくってたと思う」

泰葉「え、……えぇ!?」

P「泰葉お前、可愛すぎるよ……。くそぅ、早く事務所着かないかな……!」ソワソワ

泰葉「あ、あのっ……その……う、うぅぅ……!」

P「……まぁ、なんだ。泰葉」

泰葉「……はぃ」


P「これからも笑顔でいてくれ。それだけでいい。……ずっと見てるから」

泰葉「……!」


泰葉「はいっ♪」

―――
――



ブロロブロンロ…


P「ふー……ようやく見慣れた景色になってきたな」

P「泰葉、ほんとに寝なくて良かったのか?」

泰葉「ええ、平気です。Pさんとお話しできて、疲れも吹き飛びましたから」

P「……ふふ、誰かさんと同じこと言うんだな」

泰葉「え、……ど、どっちですか? どうせ後ろのどっちかでしょうっ?」

P「さあなー? あとで聞いてみたらどうだ?」

泰葉「むぅ……。じゃ、じゃあ……Pさんと話すのは幸せですから。これでどうですっ」

P「あはは、なに張り合ってるんだよ」

泰葉「は、張り合ってなんかっ……」

P「負けず嫌いというかなんというか……。ちなみに、それも誰かさんと一緒な」

泰葉「なっ……!?」ガーン


泰葉「Pさんなんかきらいですっ」

P「何故に!?」

泰葉「うぅ……」

P「ほ、ほら泰葉。もうすぐ事務所着くぞ」

P「ちひろさんが『単独ライブおめでとうパーティ』やるって言ってたからさ、な?」

泰葉「…………」ツーン

P「はぁ、泰葉ぁ……」

泰葉「……さっきのこと」

P「え?」

泰葉「さっき色々話したこと、ここだけの秘密にしてください。私とPさんだけの秘密」

P「う、うん……?」

泰葉「二人に私の想いを伝えるのは、まだ出来そうにないですから。……恥ずかしくて」

P「……ん、了解」

泰葉「これから先、ずっと一緒にいられるなら……いつでも話せますしね」

泰葉「……ずっと一緒にいましょう? ね、Pさんっ」ニコッ

P「……ああ、一緒にいようなっ」

泰葉「ふふふっ、はいっ。信じてますから♪」


ブロロロ…



P(……さて……)チラッ


李衣菜「…………」ニコニコ

加蓮「…………」ニヤニヤ


P(いつから起きてたか知らないけど、顔を見るに……)

P(泰葉、強く生きろ。たとえイジり倒されようとも……!)


李衣菜「♪」

加蓮「♪」


泰葉「♪」



おわり

というお話だったのさ
だりやすかれんの泰葉編ってことでひとつ

北条加蓮「煌めくセカイが鮮やかに」
多田李衣菜「理想なんて飛び越えて」
こっちも合わせてどうぞ

イメージソングは『Dramatic daydream』
良かったら聴いてみてね

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