キミト「『死んだら最初からやり直す能力』っすか?」 (8)



~~ホテルのロビー


謎の男「はい。それがメモン・キミト様の獲得された『能力』でございます」

キミト「はぁ」

謎の男「あまりお喜びでないご様子」

キミト「はあ……まあ、そうっすね」

謎の男「何かご質問は?」

キミト「いや、べつに」

謎の男「……ここまで驚かない方というのも珍しい」



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キミト「じゃあ社交辞令的に……質問していいっすか」

謎の男「はい。なんなりと」

キミト「小学校の時、学年で遠足に行くじゃないっすか。そんとき友達と写真とる時『心霊写真~』って後ろから手ぇ出すやつ……やりませんでしたか?」

謎の男「能力に関する質問をして下さい」

キミト「え……ああスイマセン」


キミト「オレ、よく『空気読めないな』って言われるんすよ。普通は何て質問されるんすか?」

謎の男「多い質問は『能力とは何か?』や『お前は何者で目的は何か?』でしょうか」

キミト「はあ……じゃあ今まででいちばん面白かった質問は何っすか?」

謎の男「あなたのその質問です」


キミト「じゃあ『能力』って何すか?」

謎の男「……人知を超えた超常現象をその身体より発生させる『時空改竄能』のことです。『時空改竄能』とは現行の物理法則を歪曲するほどの……」

キミト「あ、外雨降ってきたみたいっすね」

謎の男「露骨に興味を失わないでください」


キミト「三行でまとめてもらっていいっすか?」

謎の男「……あなたは超能力が使えるようになった。使えるようにしたのは私。あなたの他にも同じように『能力』を持つ人がいる」

キミト「はあ……」

謎の男「分かってもらえましたか?」

キミト「はあ、まあ一応。でも極めて重要な質問があるっす」

謎の男「やっと興味を持って下さいましたか……なんなりと」

キミト「あんたの言ってる事が真実だという証拠は?」


謎の男「ありますとも」

キミト「見せてもらっていいっすか?」

謎の男「ええ。それでは……」


 男は背広の内ポケットから拳銃を取り出し、キミトの額に突き付けた。


キミト「あー……最後に質問いいっすか?」

謎の男「なんなりと」

キミト「その銃、本物っすか?」

謎の男「それはこれからわかります」


 乾いた銃声が一発、二発とホテルのロビーに響いた。女性客の甲高い悲鳴が上がる。キミトは脳味噌撒き散らしながら高級そうな絨毯の上に倒れ……

 二秒後に心停止。死亡した。




メモン・キミト死亡
死因:脳機能損壊による心停止


=====

『ケイゾク』の発動条件を満たしました。最初からやり直します。

=====


~~ホテルのロビー


キミト「死んだら最初からやり直…………」

謎の男「はい。それがメモン・キミト様の獲得された『能力』でございます」

キミト「らしいっすね」


 キミトは足元に視線を落とした。高級そうな絨毯はシミひとつない、綺麗なままだった。


謎の男「どうやら『能力』が発動したご様子」

キミト「はあ……おかげさまで」


謎の男「『ケイゾク』が発動したのならこれ以上の説明は不要でしょう。それでは私はこれで失礼します」


 男は席を立ちホテルの玄関口へ向かった。

キミト「あ~……あの」

謎の男「なんでしょうか」

キミト「もうすぐ雨降るっすよ」

謎の男「タクシーですので。お気遣い感謝します」


 男が立ち去った後、キミトはロビーの天井に吊されているシャンデリアを見上げた。

 あれが頭上に落ちてくれば、さっきの男との会話がまた唐突に始まるのだろうか……

 キミトは取り留めのない空想を遊ばせながらしばらくぼーっとしていた。

 いつの間にかガラスの向こう側では、小雨が降りはじめていた。

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