幼馴染「バレンタインのお返しに」(174)

幼稚園

幼「今日も交換ごっこしよ!」

男「それじゃ、これ幼ちゃんにあげる!」

幼「ありがとう!それじゃあこれはおかえしです!」

男「ありがとう!幼ちゃん!」

幼「かいぐいしてるのバレたら怒られるから…」

男「うん。あそこの公園でたべてかえろう!」

ペリペリ
男「ぼく、チロルチョコだーいすき」
パクッ

ペリペリ
幼「わたし、すももキャンディーだーいすき!」
パクッ

男・幼「えへへー」

男「おいしいね!」

幼「うん!」

幼「男くんはチロルチョコとわたし、どっちがすき?」

男「もちろん幼ちゃんの方がすきだよ!だいすきだもん!」

幼「えへへー。私も、すももより男くんの方がだいすき!」

男「ずーっといっしょにいたいね」

幼「そうだね!ずっといっしょにいたいね!」

幼「わたしを男くんのおよめさんにしてくれる?」

男「うん!ぼくのおよめさんになってください!」

男・幼「えへへー」



幼「あ、男くん」

男「幼ちゃん、こっちにボールがこなかった?」

幼「ううん、きてないよ…って」

幼「また男子aに無理やり野球やらされてるの?」

男「う、うん…」

幼「また私が言ってあげる!行こう!」

幼「男子a!男君は野球が苦手なんだから!」

男子a「うっせー。オンナが口出しするなー」

男子a「ブーちゃん!また幼の後ろにかくれるのかよ!」

男「う…」

男子a「お前デブだし、野球もできないし」

男子a「幼にかくれてばっかりでチョーカッコ悪い!」

幼「男君はカッコ悪くない!」

男子a「カッコ悪いだろっ!」

幼「弱いものイジメする方がカッコ悪い!」

男子a「幼もブーちゃんのこと、弱虫って思ってるんだろ!」

男子a「それを俺たちがきたえてるんだ!」

男子a「だからジャマすんな!」

幼「ちがう!」

幼「男くんは弱虫じゃない!優しいんだっ!」

男「あ、あの…ふたりとも、ケンカしないで…」

男子a「ブーちゃんはだまってろよ」

幼「男くん、ちょっと待っててね」

幼「今、あいつやっつけるから!」

ポカッ

男子a「やったなこいつ!」

ドカッ

幼「いたっ!」

男「お、幼ちゃん、大丈夫?」

幼「わたしはっ…大丈夫だから!」

男「も、もうケンカはやめてよ…」

男「ぼく、幼ちゃんがケガしたらイヤだよ!」

幼「男くん…」

先生「こらっ!またあなた達!?何してるの!」

男子a「幼が先に手だしたんだ!」

幼「でも男子aが先に男くんをいじめてたんです!」

先生「喧嘩は駄目!どっちも悪い!」
ポカッ ポカッ

男子a・幼「いたっ!」

男「せんせい!2人はわるくないんです!」

男「ぼ、ぼくがダメだから…」

男「だから2人をしからないでください…」

先生「…それじゃ、男君も」
コツン

男「うっ…」

先生「喧嘩した人は皆、悪い!」

先生「だから、喧嘩はしないように!」

先生「わかりましたか?」

園児達「はーい」

男(ぼくがしっかりしてないから、幼ちゃんが…)

男(しっかりしなきゃ…)

幼稚園の卒園式

幼「わたし、男くんのこと、ほんとにとってもだいすき!」

男「うん!ぼくも幼ちゃんのこと、だーいすき!」

幼「わたし、ぜったい男くんのおよめさんになる!」

男「うん!やくそくね!」

幼「小学校にいっても、ずーっとなかよしでいてね?」

男「もちろん!」

小学1年生

幼「おんなじ組じゃなかったね…」

男「うん…でも、しかたないよ」

幼「だけどずっとなかよしのともだちだからね?」

男「もちろんだよ!」

幼「それじゃ、今日いっしょにかえろうね!」

男「うん!またあとでね!」

幼「うん!」



男「お、男と言います!みなさんなかよくしてくださいっ!」

担任「はい、男君、元気な挨拶ありがとうね」

男子a「デブだから、あだ名はブーちゃんでーす」

アハハハ

男「う…」

担任「こらっ!男子a君!意地悪な事、言わないの!」

男子a「ほんとーのことだし!なー?ブーちゃん?」

男「ぅ、うん…」



放課後

幼「おーい、男くー…」

女子a「ねぇねぇ、幼ちゃんっ」

幼「…ん?な、なぁに?」

女子a「これからみんなで遊ぼうよー」

幼「え…あの…」

女子b「運動場で鬼ごっこやろーよ」

幼「う、うん…」

男「あ…幼ちゃん…」

男「…」ショボン

男子a「なーなー、ブーちゃん」

男「な、何?」

男子a「運動場で野球やろうぜー」

男「え、ぼく、野球は…」

男子a「いいから行こうぜー」
グイッ
男子a「いつもジャマしてた幼のやつもいねーし」

男「う…うん…」



男子a「行くぞー、男子b!」

男子b「こい!ホームランにしてやる!」

男子a「おりゃー!」
ブンッ

ガスッ
男「いたっ!」

男子a「ちゃんと取れよ、ブーちゃん!」

男「ご、ごめん…」

男子a「早くボール取ってこいよー」

男「う、うん…」

男「ボール、ないなぁ」
ガサガサ


幼「つかまらないよっ!」
タタタッ

女子a「幼ちゃん、ちょーはやいー!」

女子b「ぜ、ぜんぜん…おいつけない…」


男「幼ちゃん…みんなと楽しそうに遊んでる…」

男「ぼく、幼ちゃんと遊びたいのに…」

男「…」ショボン

オーイ、ハヤクボールトッテコーイ

男「あ、早く探してもっていかないと…」

男(幼ちゃん、女の子たちと楽しそうに遊んでるし…)

男(ジャマしたらダメだ…)

男(ぼく、幼ちゃんがだいすきだから…迷惑かけたくない)

男(自分でなんとかしないと…)

男子a「ブーちゃんはダメだなー」

男子b「デブだからダメだなー」

男「ご、ごめん…おそくなっちゃって…」

男子a「きょうは5時までとっくんだな!」

男子b「オレたちがボールのとりかたおしえてやるよ!」

男「あ、あの、ぼくは…」

男子a「にがさねーぞ」

男(幼ちゃんと、いっしょにかえるやくそくが…)

女子a「はー。やっぱり幼ちゃん足はやいー」

女子b「ぜんぜんおいつけないよー」

幼「ね、ねえ、今日はそろそろ帰ろう?」

女子c「ねーねー!帰りにみんなでコンビニ行こうよー」

女子b「おー!いいねー!」

幼「あの…わたしは…ちょっと…」

女子a「いいじゃん!みんなでいったら楽しいよ!」

幼(男くんと、いっしょにかえるやくそくが…)




3ヶ月後

男子a「ブーちゃん、やっぱりお前はちゃんとボール取れないなー」

男「や、やっぱりぼくには、キャッチャーは向いてないよ…」

男子a「デブはみんなキャッチャーって決まってるんだよ!」

男子b「そうだぞ、ブーちゃん」

男「う、うん…」

男子a「それじゃ今日も特訓なー」

男「…う、うん」

男(さいきん、ぜんぜん幼ちゃんと遊んでない…)

男(幼ちゃんは1組の女の子たちと楽しそうに遊んでるし…)

男(ぼくは毎日、野球の特訓だし…)

男(さびしいけど、幼ちゃんに心配かけないように…)

男(がんばらなくっちゃ…)



女子a「今日はわたしの家であそぼー」

女子b「いいねー!」

幼「う、うん」

女子a「みんなでお菓子食べながら、ゲームしようよー」

女子b「じゃ、またコンビニに寄ってからかえろー」

幼「…」

幼(…さいきん、ぜんぜん男くんと遊べてない)

幼(学校の帰りも別々だし…)

幼(男くん、わたしのこと、きらいになったのかな…)

幼(私も同じ組の子たちと一緒に遊ぶことが多くなったし…)

幼(…)



小学3年生

幼(また男くんと別の組だ…)

幼(…もう全然お話しもしてない)

幼(男君…)


男(また幼ちゃんと別々の組だ…)

男(幼ちゃん、いつも女の子達と楽しそうに遊んでるし…)

男(もう、僕とは友達じゃないのかな…)



男子c「なぁなぁ」

男子c「何でお前ら、男の事をブーちゃんって呼ぶんだ?」

男子a「それはあいつがブタみたいだからだぜ」

男子c「ブタ?」

男子b「前はブクブク太ったデブだったんだぜ」

男子c「へぇ、でも今は別にデブじゃないじゃん」

男子c「ちょっと身体は大きいけどな」

男子a「でも今さらあだ名は変えられねーよ」

男子b「だよなー!あいつはブーちゃんのままだ!」



男子a「おら、ブーちゃん、俺たちのカバン持てよ」

男「お、重い…」

男子a「これは修行なんだからなー」

男子b「そうだぞー。デブじゃなくするための修行だー」

男子a「しっかり持てよー」

男「う、うん…」


男(うぅ…重くてキツい…)

男(僕がデブだからこんなにキツいんだ)

男(それにきっとデブだから幼ちゃんも…)

男(僕、やせなきゃ…)



男「お母さん、僕、やせたいんだけど」

男「どうしたらやせられる?」

男の母「うーん。男ちゃん、そんなに気にしなくても…」

男「でも僕、やせたいんだ」

男「それにもう、運動オンチって言われるの、イヤなんだ…」

男母(…特別太ってる訳じゃないのに)

男母(これは…どうすれば良いのかしら)

男「か、空手の道場とかに行きたいんだけど!」

男母「うーん…お母さんは反対です」

男「な、なんで?お母さんは僕がずっとデブのままでもいいの?」

男母「男ちゃんは全然太ってないわよ」

男「でも僕、学校で、デブデブって…」

男母「それじゃ、毎朝ご近所をウォーキングとかどうかしら?」

男「ウォーキング?」

男母「男ちゃんは優しいから、空手は向いてないと思うの」

男母「男ちゃんは誰かを叩いたり出来ないでしょ?」

男「う…うん…無理かも…」

男母「だから、痩せたいのならね」

男母「毎朝ちょっぴり早起きして、歩くだけで良いと思う」

男母「お母さんも付き合うし、食事にも気をつけるから」

男母「しばらくはそれで、ね?」

男「う、うん…それで…頑張ってみるよ!」



半年後

男「お母さん、早く早く!」

男母「はあっ…はあっ…ちょっと待って、男ちゃん」

男母「これはもう…ウォーキングじゃなくて…」

男母「ランニング…」

男「僕、先に行くよー」
タッタッタッ

男母「あの子ったら、す…すっかり健康的になっちゃって」

男母「ハァッ…ハァッ…」

男「お母さん、おそいー」

男母「男ちゃんが早くなったのよ」

男母(とは言え、この歳で息子に負けるなんて…)

男「ねぇ、お母さん、もっとやせるにはどうしたらいい?」

男「もっといっぱい走ればやせる?」

男母「もう男ちゃんは充分痩せているでしょ?」

男「でも、僕もっともっとやせたいんだよー」

男母(…どうしましょ)



近所のおばちゃん「なるほどねぇ」

男母「どうしたら良いと思う?」

おばちゃん「小3で過度なダイエットなんて危険よ」

男母「私もそう思うんだけど…」

男母「どうやら学校で太ってるとか」

男母「運動音痴って言われてるらしくて」

男母「確かに幼稚園の頃はぽっちゃりしてたけど」

男母「今は体重的には普通なはずなんだけどね」

おばちゃん「そうよね。むしろ痩せて見えるわよ」

おばちゃん「んー…小3だとちょっと早いかもしれないけど」

おばちゃん「ウチのバレークラブに参加させてみる?」

男母「バレークラブ?」

おばちゃん「私が監督だから無理はさせないし」

おばちゃん「スポーツすれば、健康的に痩せられるって説明すれば…」

男母「そうして貰えると助かるわ」

おばちゃん「それじゃ、男君の意思確認しておいて」

男母「今夜、聞いてみるわ」



男母「と言う訳なんだけど…どう?」

男「バレーボール…」

男「僕、デブだし、運動神経にぶいけど、できるかな?」

男「僕のせいで試合に負けたら…」

男母「大丈夫。皆が健康になる為にやる事だから」

男母「勝ち負けで怒られたりはしないわよ」

男「じゃ、じゃあ僕、やってみようかな…」

男母「うん!頑張ってみなさい!」




男(やせて、バレーも出来るようになったら…)

男(幼ちゃんもまた僕と話してくれるかも…)

男(…頑張って、カッコ良くなりたい!)



おばちゃん「今日からみんなと練習する事になった男君です」

おばちゃん「はい、挨拶して」

男「男と言います!よ、よろしくお願いしますっ!」

バレークラブの皆「よろしくー!」

キャプテン「宜しく、男君!」

男「は、はい!えっと…頑張ります!」

キャプテン「このバレークラブは4年生から6年生で」

キャプテン「全員男君より年上だから」

キャプテン「皆にはさん付けな?」

男「はい!」



3ヶ月後

おばちゃん(思ってた以上に動けるわね…)

おばちゃん(小3だから身長は全然足りないけど)

おばちゃん(ボールにはちゃんと付いて行けてる)

おばちゃん(これで運動音痴なんてとんでもない)

おばちゃん(これは…)

おばちゃん「どう?男君、バレーは楽しい?」

男「はい、監督!楽しいです!」

おばちゃん「そう。良かった」

男「身体動かすの、とっても楽しいです!」

おばちゃん「その調子で続けてれば、試合にも出られるわよ」

男「えっ?し、試合は…僕には無理です…」

おばちゃん「男君、もっと自分に自信を持って!」

おばちゃん「おばちゃんが保証する!」

おばちゃん「男君は出来る子だよ!」

男「は、はい…頑張ります!」


男(身体動かすの楽しい!)

男(クラブの皆も優しいし…)

男(バレー始めて良かった!)



男子a「なぁブーちゃん」

男「何?男子a君」

男子a「お前最近…なんか…」

男「ん?」

男子a「いや、やっぱなんでもねーよ」

男子b「おーい!2人とも、野球やろうぜー」

男子a「おー!俺の魔球を見せてやるぜー」

男子a「行くぞ、ブーちゃん!」

男「あの…僕はバレーの練習があるから」

男子a「…なら仕方ねーな」

男子a「じゃーな、ブーちゃん」

男「うん、また明日ね」

男子a「…」

来た!ガタッ

支援支援

幼(男君、バレークラブに入ってから)

幼(毎日放課後は体育館だ…)

幼(話しも全然できない…)

幼(…もう、私の事も忘れちゃってるんだ)

幼(…きっとしかたない事なんだ)

幼(………)ショボン

女子a「幼ちゃん、今日も帰りにコンビニ行こー」

幼「う、うん」



小学4年生

幼(あっ!やったっ!男君と同じ組だっ!)

幼(また、幼稚園の時みたいに一緒に遊べるかな…)

幼(おしゃべり出来るかな…)

幼(…楽しみだなっ)

幼(また幼稚園の時みたいに…)


幼「あ、あの…男君っ」

男「あ、幼さん。1年間よろしくね!」

幼(幼…さん…)

幼「う、うん。よろしく…ね」

幼(…)



7月中旬
幼(もうすぐ夏休み…)

幼(ほとんど会話もしてないけど)

幼(夏休みなら、一緒に遊べるかも!)


男子a「ブーちゃん、夏休み俺らと旅行行こうぜ」

男子b「ウチのばあちゃんの家に皆で行くんだ」

男子a「家の裏がすぐ海らしいぜ!」

男「あ、僕、夏休みはバレー部の練習と合宿があるから…」

男子a「何だよ、全然休み無いのかよー」

男「ごめんね、男子a君、男子b君」

男子a「まぁ、お前バレー頑張ってるし仕方ねーな」

男子b「練習頑張れよ、ブーちゃん」

男「うん。頑張るよ!」


幼(男君…バレー、頑張ってるんだ)

幼(私が声かける間も無いや…)

幼(…私、ホントにダメだ)

夏休み中頃

幼母「それじゃ、そろそろ出発するわよ」

幼「はーい」

幼母「幼ちゃん、玄関の鍵よろしく」

幼「はいはい」
ガチャガチャカチッ

幼母「今年もおばあちゃん、幼ちゃんが来るの楽しみにしてるって」

幼「私もおばあちゃんと会うの楽しみ!」

幼母「それじゃ、駐車場から車出して来るから、ちょっと待っててね」

幼「うん」


幼「あ!男君!」

男「あれ?幼さん、こんにちは!…お出掛け?」

幼「う、うん。おばあちゃんの家に…」

男「そっか。気をつけて行ってらっしゃい!」

幼「お、男君は?」

男「今、合宿の帰りなんだ」

幼「そ、そうなんだ?」

男「それで明日から一週間、バレーの練習お休みなんだ」

幼「!」

男「でも、一週間休んだら、××小学校のバレークラブと」

男「また一週間の合同合宿があるんだけどね」

幼「そ、そうなんだ…」

男「だからこの一週間の休みで、頑張って宿題を終わらせようと思ってるんだ」

男「幼さんは宿題終わった?」

幼「は、半分くらい。残りはおばあちゃんの家でやろうと思って」

男「そっか、お互い頑張ろうね」

幼母「幼ちゃん、行くわよー」

男「あ、それじゃあね、幼さん」

幼「うん、またね、男君」

幼母「なぁに?幼ちゃん」

幼「え?な、なに?」

幼母「ニヤけちゃって…そんなにおばあちゃんの家に行くのが楽しみなの?」

幼「う、うん。すっごく楽しみだよ!」


幼(男君と久しぶりにお話し出来た…)

幼(何か、嬉しいなー)

幼(でも一週間しかお休みないんじゃ…)

幼(丁度私がおばあちゃんの家から戻ってくる頃に)

幼(男君はまたバレーか…)

幼(全然上手く行かないなぁ…)ショボン



数ヶ月後

幼(…せっかく一緒のクラスになれたのに)

幼(夏休みにした会話が一番長い会話だった…)

幼(全然お話し出来ない…)

幼(バレー頑張ってるから、声かけにくいし…)

幼(もう…仲良く出来ないのかな…)




2月12日

幼「…はぁ」

幼「もう4年生も終わっちゃう…」

幼「結局ほとんど話しも出来ないし…」

幼「…はぁ」
トボトボ

幼「あ、駄菓子屋…」

幼「幼稚園の頃は男君と一緒によく来たなぁ…」

幼「最近はコンビニでも駄菓子はあるもんね」

幼「久しぶりに入ってみよ」
ガラガラ

幼「こんにちはー」

駄菓子屋のおばあちゃん「あら幼ちゃん、いらっしゃい」

おばあちゃん「久しぶりだねぇ」

幼「おばあちゃん、久しぶりー」

おばあちゃん「随分大きくなって…今何年生?」

幼「今、4年生です」

幼「4年生かい。お姉ちゃんになったわねぇ」

おばあちゃん「今日は男ちゃんは一緒じゃないの?」

幼「えっ?あ、あの…」

おばあちゃん「幼稚園の頃はいつも一緒に来てたじゃない」

おばあちゃん「喧嘩でもしちゃった?」

幼「いやっ…その…ケンカした訳じゃないんだけど…」

幼「小学校に上がってから、一緒に遊ばなくなって…」

おばあちゃん「また仲良く遊べるようになるさー」

幼「ホントに?ホントにそうかな?」

おばあちゃん「2人がいつもニコニコ仲良しだった事」

おばあちゃん「おばあちゃんはちゃんと覚えてるからね」

おばあちゃん「だから絶対大丈夫!ね?」

幼「おばあちゃん、ありがとう!」

おばあちゃん「それじゃ、2人がまた仲良くニコニコ出来るように…」
ガサガサ

おばあちゃん「これをあげよう」
サッ

幼「これ…」

おばあちゃん「明後日はバレンタインデーでしょ?」

幼「バレンタイン…」

おばあちゃん「ウチには高級なチョコは無いけど」

おばあちゃん「これ、男ちゃんが好きだった味だから」

おばあちゃん「男ちゃんも喜んでくれると思うわ」

おばあちゃん「ね?」

幼「うん!ありがとう、おばあちゃん!」

幼「私、頑張ってみる!また男君と仲良くしたいから…」

おばあちゃん「幼ちゃん、またおいでね」

おばあちゃん「今度は男ちゃんと2人で、ね?」

幼「うん!」



幼「おばあちゃんから、10個ももらっちゃったけど…」

幼「たくさんだと、男くんも気を使っちゃうかもだし」

幼「…3個くらいを可愛い袋に入れてあげようっと」
ガサガサ
ギュッ

幼「これで良しっと」

幼「明後日…ちゃんと渡せるかなぁ…」

幼「また、仲良く遊べるかなぁ…」

幼「男君…」



次の日

女子a「えー?男の子にチョコあげるの?」

女子a「面倒だし、あげないでいいでしょー」

女子c「そ、そうだよね。面倒だよね」

幼「そうかな?面倒かな?」

女子a「え?幼ちゃん、もしかしてチョコ用意してるの?」

幼「え?ううん。ぜ、全然用意とかはしてないよ…」

こういうあまずっぱいはなしっていいよね…支援

女子a「だよねー」

女子a「義理チョコの為に自分のおこづかい使いたくないしー」

女子b「そ、そうだよね。義理チョコとか意味わかんないよねー」

女子a「帰りに自分達が食べる用のお菓子買って帰ろう」

女子c「そ、そうだね…」

幼「うん…」

幼(…どうしよう)

2月14日

男子a「おはよー、男子b」

男子b「オッス」

男子a「あれ?ブーちゃんまだ来てないのかー」

男子b「バレーの朝練みたいだぜ」

男子a「あいつ、バレーやり始めて変わったよなー」

男子b「だよなー」

女子c「あの…おはよう、男子a君」

男子a「おはよう…ん?なんか用か?」

女子c「えっと…これ…バレンタインのチョコなんだけど…」

女子c「う、受け取ってくれる?」

男子a「お、俺にかよ?いいのかよ?」

男子b「マジかー」

女子a「ちょっと!アンタ!チョコあげないって言ってたのに!」

女子c「ゴメン、女子aちゃん…これ義理チョコじゃないから…」

女子b「なら…あの…男子b君…これ私から…チョコ」

男子b「マジかー?ありがとー!」

女子a「女子b!アンタまで…裏切り者ー!」

女子a「お、幼ちゃんは何も準備してないんだよね?」

幼「う…うん…」

幼(男君にあげたいけど…)

幼(…)



放課後

男子a「ブーちゃん、俺らの分もトイレ掃除よろしくなー」

男子b「俺ら野球の練習あるから、頼むなー」

男「う、うん…」

男(早く掃除終わらせて、バレーの練習に行かなきゃ…)

30分後

男「はぁ…やっと終わった…」

男「早く荷物取って、体育館に行かなきゃ…」
ガラッ

男「あっ!」

幼「ひゃっ!?」

男「あれっ?幼さん…今日って日直だっけ?」

幼「ち、違うけど…」

幼(みんなが帰るの待ってたら、こんな時間になっちゃった)

幼(男君のカバンにチョコ入れようとしたら急に入ってきたから)

幼(ビックリして変な声出しちゃった…)

男「もう誰も残ってないと思ってたからビックリしたよ」

幼「わ、私もビックリしたけどね」

男「っと…僕、もう行かなきゃ」

男「もう幼さん以外は帰っちゃってるよね?」

幼「うん、ついさっきみんな帰ったよ」

男「幼さんも出るなら、教室の鍵かけちゃうけど…」

幼「う、うん…私ももう帰る所だったから」

男「それじゃ、戸締り確認するね」

幼「う、うん…」

幼(今だ!今、渡さなきゃ…)

幼(でも、何て言って渡せば…)

男「窓、全部締まってる」

男「幼さん、忘れ物無い?」

幼「う、うん、大丈夫」

男「それじゃ、鍵かけるよー」
ガチャガチャ

男「これで戸締りオッケー」

幼「…鍵、私が職員室に持っていくよ」

男「ホント?ありがとう」

男「それじゃお願いします」
チャリッ

幼「…これから体育館?」

男「うん!バレーの練習なんだー」

幼「ふーん」

幼(…知ってるけど)

男「それじゃ、鍵、お願いね」

男「また明日」

幼「お、男君!ちょっと!」

男「うん?なぁに?」

幼「男君は今日、誰かからチョコ貰ったの?」

男「チョコ?」

幼「今日はバレンタインデーでしょ?」

男「あー…いやー、誰からも貰ってないよー」

幼「そ、そう言えば、男子a君たちは貰ってたみたいよ」

男「そうなんだー。良いなー」

男「僕、チョコレート好きなんだけどなー」

幼(知ってるし)

男「僕だけもらえないや、えへへ」

幼「そっか。そ、それじゃ、これあげる」
サッ

男「え?これって…」

幼「一個も貰えないと可哀想かなって」

男「ありがとう!幼さん!」

幼「べ、別にお礼とか、良いから」

幼「中身、チロルチョコ3個だし」

男「それでも嬉しいよ、ホントにありがとう!」

幼「そ、それじゃ、バレー頑張ってね」

男「うん!それじゃ!また明日ね!」


幼(結局…また仲良くしたいとか)

幼(何も言えなかったなぁ…)

幼(もう、一生仲良く出来ないのかなぁ…)

幼(せっかくおばあちゃんがくれたチャンスだったのになぁ…)

幼(はぁ…もうダメだ…)



男の妹「兄ちゃん、それ何?」

男「あぁ、これ学校でもらったチョコレート」

妹「私にちょーだい!」

男の弟「ズルい!僕にも!」

男「あはは、3個あるから、3人でわけようね」

妹「なーんだ、チロルチョコかー」

弟「俺、きなこ味あんま好きじゃなーい」

妹「なら私にちょうだい!」

弟「だめー!きなこ味でもチョコはチョコ!」
パクッ

妹「なら最初から文句言わなければ良いのに!」
パクッ

男「2人とも、喧嘩しないでね」
パクッ

1ヶ月後

男母「あんたそう言えば、誰かからチョコ貰って無かった?」

男「あ!幼さんから貰ったや」

男「しまった…僕、お返し用意してない…」

男母「丁度貰い物のクッキーあるから、これ包んで持って行きなさい」

男「ありがとう、母さん!」



男「幼さん、ちょっと良い?」

幼「な、何?」

男「これ、先月のお返し」

男「クッキーなんだけど」
サッ

幼「あ、ありがとう…」

男「出来合いの物でごめんね」

幼「別に気にしなくて良いわよ」

幼「私なんか、チロルチョコだったんだし」

男「それでも、嬉しかったから」

幼「そ、そう…それは良かったわ」

男「あ…僕そろそろバレーの練習に行かなきゃ」

男「それじゃ、また明日ね、幼さん」

幼「あ…うん…また明日、ね」


幼(お返し、ちゃんと貰えた…嬉しい…)

幼(だけど、やっぱりちょっと胸が苦しいよ…)

小学6年生

男「キャプテンとして一生懸命頑張ります!」

男「皆さん、よろしくお願いします!」

バレークラブの皆「よろしくお願いします!」

おばちゃん「男君、頑張ってね!」

男「はいっ!」

幼(男君、バレークラブのキャプテンになったんだ…)

幼(背も凄く高くなって、カッコよくなって…)

幼(私はチンチクリンのまんま…)

幼(もう違う世界の人みたい…)

幼(せめて普通に話しだけでも出来れば…)

幼(組も違うし、無理か…)

幼(はぁ…)




男「それじゃ、今日の練習はこれで終わります」

バレークラブの皆「はいっ!お疲れ様でしたっ!」

男「皆、気をつけて帰ってね」

バレー部員「男さんは帰らないんですか?」

男「僕はちょっと用事があるんだ」

男「気にせず帰って」

バレー部員「はいっ!それじゃ、お疲れ様でした!」

男「また明日ね」

キュッキュッ
男「…っと、こんなもんかな」

おばちゃん「一人で居残りして、掃除?」

男「あ、監督…バレちゃいましたか」

おばちゃん「まぁ、ちょっと前から気付いてたけど」

男「もう片付け終わりますんで…」

おばちゃん「なんで掃除?」

男「あの…僕もうじき卒業じゃないですか」

おばちゃん「もう2月だもんね」

男「だから、お世話になった体育館を綺麗にしたいなぁって」

おばちゃん「そう…男君、中学行ってもバレー続ける?」

男「はい!頑張ろうと思ってます!」

男「監督にはとっても感謝してます」

おばちゃん「感謝?」

男「僕を、このバレークラブに誘ってくれて」

男「おかげで僕は変われました!」

おばちゃん「そう言って貰えると嬉しいわ」

おばちゃん「すっかり格好良くなっちゃって」

男「そ、それは…解らないですけど…」

おばちゃん「大丈夫、男君はもう、大丈夫!」

おばちゃん「私が保証する!」

男「ありがとうございますっ!」

中学1年生

幼(…男君は中学もバレー部なんだろうなぁ)

幼(私も何か部活入ろうかな…)

幼(…そうだ)

幼(バレー部って、マネージャーとか募集してないかな?)

幼(こう言うのって、直接バレー部に行くのかな?)

幼(顧問の先生に聞くのかな)

幼(どうすれば良いんだろう…)

男「○○小学校からきました、男と言います!」

男「よろしくお願いしますっ」

友「友と言います!ガンガン頑張るタイプです!」

友「よろしくお願いします!」

バレー部部員「よろしく!」

バレー部部長「今年の1年は元気良いな!」

部長「3年間、しっかり頑張ってくれ!」



友「なぁなぁ、男」

男「何?友君」

友「俺も高い方だけど、お前、背高いな」

友「何センチ?」

男「ん…今178くらいだと思う」

友「小学生で178あったら、学校一デカかったろ?」

男「いやー、全校生徒の中では3番目だったよ」

友「マジで?1番と2番の奴はバレーやってねーの?」

男「その2人はバスケットやっててね」

友「あぁ、そっち行ったのかー」

男「レギュラーになれるように、お互い頑張ろうね」

友「お、良いねー。そんで全国制覇とかしようぜ!」

男「ぜ、全国は…まぁ…」

友「夢はデカい方が良いだろ?」

友「なんなら、世界制覇でも良いくらいだぜ!」

男「ふふっ、世界制覇って…」

友「へへっ、良いだろ?」

男「うん…夢はデカい方が良いもんね!頑張ろう!」

友「おうよ!やるぜやるぜー!」
タッタッタッ

幼友(あの2人、喋りながら走ってるのに、何で他の部員より速いのかしら)

幼友(友のバカは良いとして…)

幼友(男君…か)

幼友(○○小って言ったら…幼と同じかな?)



幼友「ねぇねぇ、幼」

幼「んっ?何?」

幼友「幼って○○小学校から来たんだよね?」

幼「うん、そうだけど」

幼友「3組の男君も、○○小学校だよね?」

幼「う、うん…なんで?」

幼友「彼、かなり格好良いと思うんだけど、どう?」

幼「う、うん。まあ格好良いと思うけど」

幼友「何か、接点とか、無い?」

幼「と、特に無いかなぁ…」

幼友「そっか…私バレー部のマネージャーになったんだけどさー」

幼友「男君、ちょっと良いなーと思って」

幼「そ、そうなんだ?」

幼友「優しいし、練習一生懸命だし」

幼友「背高いし、顔格好良いし」

幼「そ、そうかもね…」

幼友「彼女とか好きな人とか居るのかなぁ」

幼友「知ってる?」

幼「ちょっと解んないなぁ」

幼(私も知りたいけど…)

幼「ね、ねえ、幼友ちゃん」

幼「男子バレー部って、マネージャーまだ募集してる?」

幼友「あー、私が最後の一枠だったんだー」

幼友「2年生のマネージャーが5人も居るんだよ」

幼友「マネージャー多過ぎだって」

幼「そ、そっか」

幼友「幼、入りたかった?」

幼「いやー、折角中学生になったんだから」

幼「私も何か始めたいなぁと思って」

幼「マネージャーなら出来るかなって」

幼「でもまぁ、他の部活考えて見るよ」



幼友「男君、お疲れっ。コレどうぞ」

男「あ、幼友さん、ありがとう」

友「幼友、俺の分は?」

幼友「今ので最後でーす」

友「ひでーな、オイ。イジメかよ」

幼友「冗談よ、はい」
ポイッ

友「っと。男に対する態度と随分違うじゃねーか」
パシッ

幼友「男君、今のやり取りちゃんと見てた?」

友「そうだぞ、男。俺達は仲良くは無いぞ」

男「でも2人、すっごく楽しそうにおしゃべりしてたじゃない」

男「2人は同じ小学校だっけ?」

幼友「まぁ、保育園から一緒だわね」

友「でも仲良しでは無いぞ?」

幼友「むしろライバル的ポジションだわ」

男「やっぱり仲良しでしょ?」

友・幼友「仲良くは無い!」

男「息ピッタリ、ふふっ」

友・幼友「…」

部長「おいそこー。そろそろ休憩終われー」

男・友「はいっ!」

幼友「…」



幼友「はぁ…」

幼「どうしたの、溜息なんかついて」

幼友「男君って格好良いし、良い人なんだけど…何て言うか…」

幼「何?」

幼友「ニブいよね」

幼「そ、そうなの?私良く知らないけど」

幼友「私、部活で結構喋りかけてるんだけどさぁ」

幼友「なんかいつもふわふわっと返されちゃうんだよね」

幼「そ、そうなんだ」

幼友「それとも誰か好きな人が居るのかなぁ」

幼友「小学生の頃はどうだったの?」

幼友「やっぱり凄くモテたんでしょうね」

幼「私、知らない…男君ってモテてたのかな」

幼友「今は凄いよー」

幼「そうなの?」

幼友「体育館で部活してたら目立つからねー」

幼友「1年の中でも一番動けるし」

幼友「女子バレーの連中とか、クリスマスパーティに誘ったらしいよ」

幼友「家族と過ごすからって断られたらしいけど」

幼「そ、そうなんだ」

幼友「来月のバレンタイン、凄い事になるんじゃないかなー」

幼「…バレンタインかぁ」

幼友「私もあげるけどね!」

幼「幼友ちゃん、本気なの?」

幼友「まぁ、ダメ元で、ね」

幼友「幼は誰かにあげないの?」

幼「あ、あはは、私はそう言うのは…」

幼友「気になる人とか居ないの?」

幼「うん…居ない…かな」

幼(本当は1人、居るんだけど…)



2月14日

女子バレー部員「男さん、これ、受け取って下さいっ」

男「あ、ありがとう」

女子バスケ部員「男君っ!これ、私の気持ち!」

男「ど、どうも…ありがとう」


友「部長、アレ、どう思います?」

部長「まぁ、アイツ格好良いからなぁ」

友「どうにかなれ!って思いません?」

幼友「僻み?みっともないわね、友」

友「なんだよ、お前も男に渡すのか?」

幼友「まぁね。準備してきたし」

幼友「イチかバチかの賭けよ!」

友「分の悪い賭けだと思うがなぁ」

幼友「うっさい!」

友「ほれ、さっさと渡してこいよ」

幼友「もうちょっと落ち着いてから渡すわよ」



部長「男ー!そろそろ練習始めるぞー!」

男「はーい!今行きまーす」

男「あの…皆さん、どうもありがとう」

男「必ずお返ししますから」

女子達「はいっ!練習頑張ってくださいっ!」

男「うんっ。それじゃ!」

幼友(あんなに沢山…)

友「俺とお前の違いはなんだろうな」

男「そう言われても…」

幼友「顔じゃないの?」

友「顔…そんなに悪くねーと思うんだがなー」

友「俺、チョコ貰った事ねーし」

幼友「だから顔じゃないの?」

友「…」

幼友「ほら、ボヤいてんじゃないわよ…練習始まるわよ」

友「へいへい」

幼友「あと…男君、これ、私からもチョコ」

男「どうもありがとう、幼友さん」

幼友「…おまけでアンタにも」
ポイッ

友「お?マジで?ありがとよ」
パシッ

友「イャッホー!初めて家族以外からチョコ貰ったぜー!」

幼友「うっさい。ほら、さっさと練習始めなさいよ!」

男「やっぱり、2人は仲良しだなぁ」

友・幼友「仲良く無いっての!」

男「あはは、相変わらず息ぴったりだね」

友・幼友「…ぐ」

幼(一応、チョコ準備して、体育館まで来てみたけど…)

幼(やっぱり駄目だ)

幼(あんなに沢山貰ってるし)

幼(今年もこのチョコは自分で食べよう…)

幼(はぁ…)

中学2年生

幼(あ…男君と同じ組だ…)

幼(嬉しいけど、切ないなぁ…)

幼(また話しも出来ないで終わるんだろうなぁ)

幼(幼友も男君の事本当に好きみたいだし…)

幼(私、いつからこんなダメな感じなんだっけ…)




幼友「男君ってさぁ」

男「ん?何?」

幼友「好きな人とか、居ないの?」

男「今は…居ないかなぁ」

男「強いて言うなら、バレーが恋人…的な?」

幼友「去年あれだけバレンタインにチョコ貰っておいて」

幼友「一人も良い人居なかったの?」

男「うーん…本当に今はバレーするのが楽しくてね」

男「あんまり他の事、考えられないんだ」

幼友「私とか、どう?」

男「え?」

幼友「なーんてね。今のは冗談!」

男「ビックリしたー」

幼友「…でも、男君の事、好きって言う子、結構居るよ?」

男「うーん…俺、そう言うのあんまりわからなくて」

男「小3の頃からずっとバレー頑張って来たから」

男「やっぱり今はバレー頑張りたいんだ」

男「俺、バカだから、2つの事一生懸命にはなれそうもないしね」

幼友「そっか。バレーが恋人か、ふふっ」

幼友「そう言う一途な所、見てる人は見てるもんだよ」

男「そんなもんかな?」

幼友「鈍感な男君は一生気付かないかもしれないけどねっ」

男「あはは、ひどいなぁ」



幼友「…なんて会話がありましてね」

幼「そうなんだ」

幼友「はー…、私にはどうにもならないと悟ったわー」

幼「ど、ドンマイ?」

幼友「あぁ…私の運命の人はどこに居るのかしらね」

幼「案外近くに居るかもよ?」

幼友「本当にそうなら、今すぐ出てきて欲しいわー」

ガラッ
キョロキョロ
友「おーい、幼友」

幼友「んー?何?」

友「悪い、歴史の教科書貸してくれ」

幼友「男君から借りれば?」

友「あいつ今いねーじゃん」

友「頼むよ!俺、今日当てられそうな気がするんだ」

幼友「しょうがないわねー。落書きとかしないでよ?」
ガサゴソ
ポイッ

パシッ
友「助かった!サンキュ!」

幼友「今度ミスドおごりね」

友「…まぁ、金ある時にな」
タタタッ

幼「幼友と友君って仲良いよね」

幼友「そんなでもないけどね」

幼友「家が隣り同士の幼馴染なのよ」

幼友「小学校の頃もずっと同じクラスだったしね」

幼友「まぁ、腐れ縁ってやつよ」

幼「…何か羨ましいなぁ」

幼友「そう?」

幼「案外、友君が、幼友の運命の人なのかもよ?」

幼友「ちょっとー、冗談でもそんな事言わないでよ」

幼友「私はもっと格好良い人とお付き合いしたい!」

幼(贅沢だなぁ)

幼友「取り敢えず、男君の事は諦める事にする」

幼友「次の恋を探す!」

幼「が、頑張って!」



2月14日

男「友ー、今日練習無しだって」

友「マジで?でもまぁ、たまには良いか…」

友「そんじゃ、帰りは久しぶりにゲーセンでも…」

後輩女「あ、あの、男先輩っ!」

男「は、はい?後輩女さん、俺に用事?」

後輩女「これ、バレンタインのチョコです!」

後輩女「受け取って下さいっ!」

男「ありがとう、嬉しいよ」

友「…」

後輩女「そ、それじゃっ」
タタタッ

男「えへへ。チョコレートを貰ってしまった」

友「チッ…去年も沢山貰ってただろ?」

友「モッテモテで羨ましいですなぁ」

友「お返しで破産しろ!」

先輩女「あ、あの、男君、ちょっと良いかな?」

男「あ、先輩女さん、お早うございます」

男「今日って3年生は登校日でしたっけ?」

先輩女「あ、あぁ。今日は普通の3年は休みだな」

男「何か用事でした?」

先輩女「べ、別に他意は無いのだけど」

先輩女「いつも部活で頑張っている君に…これを」
サッ

先輩女「チョ、チョコレートだ」

男「は、はい」

先輩女「これからもバレー部の事を、よろしく頼む」

先輩女「これは先払いの報酬と思ってくれ」

男「ありがとうございます!先輩女さん」

先輩女「う、うん。それではな」
タタタッ

友「…恋する乙女って感じだったな」

友「あの厳しかった先輩女さんが…」

男「そうかな?バレー部の仲間としてくれただけじゃないかな」

友「なら何で俺には無いんだよ!」

友「お前、そこまで行くとイヤミだぜ?」

男「あ、あの…何かゴメン」

委員長「あの、男君、ちょっと良いかな?」

友「…またかよ」

男「うん?何?委員長さん。また何かお手伝い?」

委員長「そ、そうじゃなくてね」

委員長「いつも色々手伝ってもらってるから、これ」
サッ

委員長「お礼の気持ちをこめたチョコレート…」

委員長「受け取ってくれる?」

男「ありがとう、委員長さん」

委員長「出来ればこれからも、その、お手伝いとか…」

男「いつでも声かけてよ。出来る事なら何でもするから」

委員長「うん、本当にいつもありがとうね」

委員長「そ、それじゃ」
タタタッ

友「ほら、これは最近流行りのアレだ」

男「何?」

友「リア充爆発しろってやつだ」

男「そう言われても困るんだけど」

放課後

男「チョコ、またこんなにもらっちゃったなぁ」

友「自分のモテ度を誇示してる訳か?爆発しろよ」

男「そんな事無いよ」

友「まぁ、お前好きな人とかいなさそうだもんな」

友「ひょっとして、俺の事が好きとか?」

男「そんな趣味は無いよ」

幼(男君…今年もあんなに沢山チョコ貰って…)

友「それにしても…そんなに沢山、食べきれるのか?」

男「うーん…甘いもの好きなんだけど…さすがに多いかなぁ」

友「俺が食ってやろうか?」

男「それは…」

友「いいだろ?家族からしかチョコ貰えない俺に」

友「少しでも幸せを分けてくれよ!」

幼(まさか、友君に分けるつもり!?)

男「うーん、じゃあ何個か貰ってくれる?」

友「イェイ!じゃあ半分位くれっ!」

友「俺は三度の飯よりチョコが好きなんだ!」

幼「ちょっと待ちなさいよっ!」

男「え?な、何?幼さん」

幼「あんた今、友君にチョコわけようとしたでしょ!」

男「あぁ、うん。さすがにこんなに沢山は食べられないし…」

幼「バレンタインのチョコなんだよ?」

幼「たとえ義理チョコでも!」

幼「その一つ一つに、女の子の気持ちがこめられてるんだよ?」

幼「それをアンタは他人に譲るって言うの?」

男「ご、ごめんなさい」

友「あの…幼さん、俺がくれって言ったからで…」

友「こいつは悪くないんだ」

男「ごめんなさい、幼さん」

男「俺、このチョコくれた人の気持ち考えて無かったよ」

男「教えてくれて、どうもありがとう」

幼「…別に、解れば良いのよ、解れば」

男「このチョコ全部、食べてから帰るよ」

幼「なんで?」

男「家に持って帰ったら、妹や弟が欲しがると思うから」

友「大変だなぁ…」

男「ウチの家族、皆甘いもの好きだからね」

友「んじゃ、俺、お茶でも買って来るぜ」

男「ありがとう、友」

友「ダッシュで行ってくるぜ!」
タタタッ

男「…それじゃ、一個目」
ガサガサ

男「手作りだ…」
パキッモグモグ

幼「ちゃんと全員にお返ししなさいよ?」

男「う、うん…」
モグモグ

幼「そ、それだけあると、食べるの大変そうね」

男「まぁ、でも俺チョコ好きだし」
モグモグ

幼「そうだよね、昔から…」

男「ん?何?」
モグモグ

幼「それじゃ、一個くらい増えても問題無いよね?」

男「え?」

幼「ほらっ」
ポイッ

男「おっと」
パシッ

男「チロルチョコ?」

幼「バレンタインだから、私からもね」

男「あ、ありがとう」

幼「義理ですけどね」

男「あ…そういえばさ」

幼「何?」

男「小4の頃、こんな事あったよね」

幼「お、覚えてるの?」

男「今、思い出した」

男「俺だけ誰からもチョコ貰えないーって言ったら」

男「幼さんがチロルチョコを三個くれたんだよね」

幼「…あの頃からは想像も出来ないわよね」

幼「アンタは今や校内一のモテ男だもんね」

男・幼「…」

ガラッ
友「ふぃーお待たせー」

友「温かいお茶と冷たいココア、どっちがいい?」

男「それ、選ばせる気無いよね?」

幼「ふふっ」

男「…幼さん、ありがとうね」

幼「…別に。それじゃ、私帰るね」

男「うん、それじゃあ、また明日ね」



幼「…今年は渡せたなぁ」

幼「チロルチョコでも、チョコはチョコだもんね」

幼「…もうこれで忘れよう」

幼「男君は小さい頃仲良しだった人」

幼「それ以上でもそれ以下でも無い…」

幼「今は只のクラスメイト」

幼「寂しいけど、仕方無いよね…」



男「ちょっとチョコ食べ過ぎたかな…」

男「3日位に分けて食べれば良かった…」

男「このチロルだけ、明日食べよう」

男(チロルチョコかぁ)

男(あぁ、なんか、懐かしいな…)

男(昔、よく駄菓子屋で買ってたなー)

男(お返しにキャンディーを準備しよう)

男(駄菓子屋で…あ…そう言えば、幼さんの好きだった…)

男(そう言えば小さい頃はよく公園で食べたなぁ)

男(俺がキャンディーを買って)

男(幼さんがチョコを買って)

男(それを交換して、食べて…)

男(…いつも2人で笑ってて)

男(仲良しで、ずっと一緒に…)

男(!)

男(そうだ!俺、幼さんと…)

男(結婚の約束とかする位仲良しで…)

男(でも小学校に上がってから、組が別になって…)

男(幼さんに心配かけないように、色々頑張って…)

男(なのに、同じクラスになっても、殆ど話しもしてない…)

男(俺がバレー始めた理由だって…)

男(何でこんな大切な事、忘れちゃってたんだろう)

男(…)

男(気持ちのこもったチョコ…)

男(それなら俺も…気持ちを込めて…)

3月13日

男「帰り道なのに全然寄らなくなったなぁ」

男「おばあちゃん、元気かな…」
ガラガラ

男「こんにちはー」

おばあちゃん「あら!男ちゃん!久しぶりねぇ!」

男「おばあちゃん、お久しぶりです」
ペコッ

おばあちゃん「もうすっかりお兄ちゃんになっちゃって」

おばあちゃん「今、何年生になったんだい?」

男「今、中学2年です」

おばあちゃん「ずいぶんと背も伸びてー」

男「はい、幼稚園の頃と比べたら大きくなりましたよー」

おばあちゃん「ふふ…久しぶりに来てくれて嬉しいよ」

男「今日はちょっと欲しいものがあって…」

おばあちゃん「なんだい?」

男「すももキャンディー、ありますか?」




3月14日

男「幼さん、これ」

幼「え?何これ」

男「ほら、先月チョコ貰ったから、お返しに」

幼「…あ、ありがと」

男「中身はクッキーが3枚だけどね」

幼「他の皆にはコンビニで買ったっぽいの配ってたじゃない」

幼「なんで私だけ、クッキー3枚なのよ」

男「幼さんから貰ったのは、チロルチョコ1個だったからね」

男「3倍返しだよ、ふふっ」

幼「ぐっ…そうね。確かに3倍ね」

幼「まぁ良いわ。別に期待もしてなかったし」

幼「元々、偶然持ってたチョコを義理であげただけだし」
ガサガサ

幼「いただきまーす」
カリッモグモグ

幼「あ、このクッキー美味しい。何処のクッキー?」

男「ふっふっふ、それ皆に配った、出来合いのクッキーじゃないよ」

男「特別、俺の手作りクッキーです」

幼「へぇ?男君って料理出来るんだ?」

男「実はお菓子だけは作れるんだよ」

男「普通の料理と違って、分量きっちり量って、レシピ通りにやれば」

男「ほとんど失敗もしないしね」

幼「凄く美味しいよ」
モグモグ

男「それとね…」

幼「ん?まだ何かあるの?」

男「はい、これ」

幼「この包みは何?」

男「バレンタインのお返しその2だよ」

男「…どっちかって言うと、こっちが本命だったりして」

幼「ほ、本命って…」
ガサガサ

幼「これ…これって私が昔好きだったすももキャンディー…」

幼「3個…」

男「3倍返しだしね」

男「駄菓子屋に行って買ってきたんだ」

幼「あ、あぁ…男君も行ったんだ」

男「おばあちゃんが、今度は2人で来なさいねーって」

幼「…」

男「幼稚園の頃に…僕とした約束って覚えてる?」

幼「と、突然何?何の事?」

男「覚えて無い?」

幼「…」

男「ちょっと個人的な話しなんだけどさ」

男「実は俺、最近までその約束を忘れててね」

幼「ふ、ふーん」

男「バレーやり始めたのも、最初は目標があったのに」

男「やってるうちにバレーが楽しくなっちゃって」

男「身体動かすのに夢中になっちゃって」

男「目標を完全に忘れちゃってたんだ」

男「本当に馬鹿だよね」

幼「目標?」

男「ある人に心配かけたくない」

男「ある人に頑張ってる所を見て欲しい」

男「スポーツして、格好良くなりたい」

男「最初はそんな邪な気持ちだったんだよ」

幼「別に邪じゃないんじゃない?」

幼「誰かに見て欲しい、認めて欲しいって、普通でしょ?」

男「でも俺はその目標を忘れちゃってたんだ」

幼「何で今、それを私に言うのよ」

男「バレンタインの夜、思い出したんだよ」

男「幼ちゃんが、言ってくれた言葉でね」

幼「わ、私、何か言ったっけ?」

幼(い、今、私の事、幼ちゃんって…)

幼(昔の呼び方で…)

男「義理でもチョコの一つ一つに気持ちがこもってるって」

幼「そ、そんな事言ったっけ?」

幼「覚えてないし」

男「小4の時も、今年も…」

男「あのきなこ味のチロルチョコをくれたのは」

男「昔みたいに仲良くしたいって事なのかなって…」

男「そう言う気持ちを込めてくれたのかなって…」

男「だから…」

幼(やめてよ…何を言うつもりよ…)

幼(変な期待しちゃうじゃない…)

男「俺、幼ちゃんの事が好きだって事、忘れちゃってた」

幼「!」

男「それを思い出させてくれて、ありがとう」

幼「あ、あれは義理だって言ったでしょ?」

男「でも、気持ちこもってたんだよね?」

幼「う…」

幼「よ、幼稚園の頃の男君はぽっちゃりで」

幼「いっつも私の後ろに隠れてて」

幼「男子aとかに無理やり野球やらされて」

幼「泣いたりしてたもんね」

男「あ、あはは…懐かしいね」

幼「そんなアンタが今や校内一のスポーツマンだもんね」

男・幼「…」

幼「私が傍に居なくても…別に困らないもんね」

幼「だから昔の約束なんて無効だよ、無効」

幼「それこそ、子供の言った事だもんね」

幼「男君は何も気にしなくて良いよ」

男「そう言う訳にはいかないよ」

男「確かに結婚の約束は…まだ解らないけど」

男「俺が幼ちゃんの事好きだって言うのは、今の気持ちだからね」

男「俺の事、嫌いなら嫌いって言って欲しい」

男「もしそうじゃないなら、まずは友達から…」

男「昔みたいに、2人で遊んで、話して、笑って…」

男「そうしたいんだけど…どうかな?」

幼「…ありがとう、男君」

男「え?ありがとう?」

幼「バレンタインのお返しに」

幼「男君は、今、私が一番欲しい言葉をくれた」

幼「こんなに嬉しい事って無いよ」

幼「私、ずっと…ずっとね?」

幼「昔みたいに、男君と仲良くしたいって思ってたよ」

幼「だから、ありがとう、男君」

幼「これから、よろしくね」

幼「出来れば、ずっとずっと、ね?」

幼「大好きだよ、男君っ」




大学2回生の2月14日

幼「またそんなにチョコ貰って…」

男「あ、あはは…サークルの皆から…ね」

幼「ちゃんとお返しはしなさいよ」

男「もちろんするよ」

幼「それじゃ、これも追加で」
ポンッ

男「ありがと。これが一番嬉しいよ、幼」

幼「今年も、お返し、期待してるわよ、男」

男「おばあちゃんの駄菓子屋で、交換ごっこ、ね?」

幼「うんっ!」


おわり

これで終わりです
途中支援くれた人、どうもありがとうございます
長くて読みにくいと思うけど、最後まで読んでくれたら嬉しいです

次スレは
幼馴染「超能力が使える様になった」 男「へー、どんな?」
ってタイトルで立てると思います

やっと仕事も一段落で、気ままにss書ける時間が出来てきたので
これからも幼馴染ssをちょいちょい書いていきます
見かけたら読んでくれたら嬉しいです
では。


頑張れ

乙、よかったです。なんだか切なさで胸がいっぱい。また書いてくださいね。

乙乙
書くの辞めてなくてホッとした次第
次も期待してるよ、幼なじみの人!

なぜか男のイメージがジョナサン・ジョースター





毎度面白いですね!

ああああああああああああ
久々に幼馴染分を補給したわ



待ったかいがあった
次回作も期待してる

乙!あなたの幼馴染ssをずっと待ってました!

なるほどねえ、前に書かれていた【幼馴染「ちょっと聞きたい」 幼馴染の弟「何?」】の幻の兄編は中二の頃の話だったんですね。
その内に幻の弟編の続編を書いちゃったりなんかしても・・・・いいのよ?



読んでくれた人、本当にありがとうございます
待ってたと言って貰えてホントにありがたいです

>>163
…紳士だから?

>>166
自分の書いたssであなたの幼馴染分が補給されたなら
こんなに嬉しい事はないですよ

>>169
実は弟の話しも書いてますー。
そのうち投下しますんで、読んでくれたら嬉しいです

結婚式の話とか見てみたい。今までのカップルの誰かでもオリジナルでも。

>>172
結婚式…いよいよあのssに復讐する時が来たのかも
心の準備が出来次第、書いてみます

期待
しかし、あのssとは一体?

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