【艦これ】矢車「お前……俺の妹になれ」 山城「……はい?」【仮面ライダーカブト】 (135)

注意
・仮面ライダーカブト(主に矢車さん)と艦これのクロス
・前書きの割にワームとネイティブがそんなに出ない
・轟沈ネタ。扶桑・山城提督は特に注意
・キャラ、設定の崩壊。ゲームの仕様の完全な再現とかは無理です
・遅い更新
・地の文多め



「深海棲艦」どこからか現れては通りがかる船を破壊して回る人類最大の敵。
これにより海上交通路は機能を維持できなくなり、多くの船が沈んでいった。
形は様々で、禍々しい姿から、遠目には可憐な少女まで存在すると言う。
中には一つの島が丸ごと深海棲艦となったという報告も見られている。

「ワーム、ネイティブ」かつて落ちてきた隕石によって地球へ来た、謎の存在。
ワームは時に人を襲い、彼らに擬態して繁殖をした。ネイティブは人と手を結び、
ワームを駆逐するために人間に技術を提供して協力する姿勢を見せながら、
彼らはひそかに人間に変わり世界の支配者たろうと画策していた。




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しかし、それに対抗する者も、確かに存在していた。

艤装と呼ばれる装備を身に纏い海を駆け、強力な火砲や魚雷を駆使して深海棲艦に
立ち向かう少女達。人々は彼女らを尊敬してこう呼んだ。

ネイティブによる技術提供を受けながらも、彼らの思惑を見抜く者がいた。
強固な鎧に身を包み、様々な思惑を持ちながらも、それを仮面の下に押し込んで、
密かに人の自由と平和を守る戦士達を、その仲間たちはこう呼んだ。


「艦娘」と               「マスクドライダー」と


一話「残された者」


南西諸島。深海棲艦の活動が活発になっている主な海域の一つ。

既に日が傾きかけたその海上を駆ける五人の少女がいた。

華奢な体格に見合わぬ巨大な火砲を持ち、

巫女服を思わせる衣に身を包む少女が二人。

その前を行く、短い髪にショートパンツの活発そうな少女。

彼女らよりも小柄な、温厚そうな黒髪の少女。

勝気な表情の、赤みのかかった神の少女。

最上「もう少しだよ。そろそろ敵の主力とぶつかるはずだ」

ショートカットの少女が偵察機からの報告に耳を澄ます。

山城「各艦、もう少しの辛抱です。敵の主力を撃退すればこの海域を突破出来ます」

旗艦である、巫女服の少女の一人が声を張る。

深海棲艦の中にも組織に近いものがあるらしく、彼女らが「主力」と呼ぶ、

強力な部隊を叩くことでその海域での深海棲艦の行動が減るとされていた。

「でも、私たちもボロボロ。この戦力で行けるのかしら……」

彼女の不安も尤もだった。誰もがどこかしらに損傷を受けていた。

砲塔に、機関部に、その肌に。

満潮「やるしかないわ! 文句なら帰投指示を出さない司令官に!」

時雨「……無茶な作戦だとは思うけど、満潮に同感かな。帰って間宮さんのアイスを貰おうよ」

扶桑「そうね。後はラムネでも、ね。無事に生きて帰りましょう」

山城「あの。ふ、扶桑姉さまは……」

扶桑「私は大丈夫よ。山城は自分の心配をして。旗艦なんだから、ね?」

最も損傷が激しいのは扶桑、次いで山城だった。彼女らの艤装は「戦艦」。

強力な火砲のために速度を犠牲にしている。武器の大きさの都合で被弾は

珍しくなく、特に彼女らの装備は頑丈な戦艦の中でも装甲の一部に難を持っていた。

山城「わ、分かりました……」

扶桑「そう、いい子ね。あなたは私の自慢の子よ」

山城「扶桑姉さま……」

山城の表情が一瞬だけ恍惚のものになる。姿は似ているが、厳密には

二人は姉妹ではない。艤装の型が姉妹艦だった、それだけだった。

しかし、山城は扶桑を実の姉のように慕い、扶桑もそれを受け入れていた。

健全な関係とは言い難いが、死線に幾度となくぶつかる彼女らを

そういった点から咎める者はほとんどいなかった。

最上「索敵機から反応! 敵艦隊に遭遇」

「艦種は!?」

最上「戦艦ル級三! 重巡リ級一! 駆逐二級が二!どれもエリートやフラグシップ!」

冷静な敵の特定。その声に焦りが滲む。深海棲艦の主力。エリートや

フラグシップとは彼らが通常よりもさらに強力な火砲や装甲を

有しているということだった。少女達に緊張が走る。

山城「落ち着いて。まだ敵の攻撃は届いていません。各艦、砲撃戦用意!」

山城の声を合図に、時雨と満潮は間合いを詰めるために加速する。

扶桑、山城が背中の35.6cm砲の照準を定める。

扶桑「主砲、副砲。撃てぇ!」

山城「主砲、良く狙って! てぇー!」

耳をつんざく轟音と火薬の爆発。巨大な砲弾が飛び、遠く離れた海面に

水柱を作った。

最上「外れた! 撃ち返してくるよ!」

偵察機から着弾の様子を見る。詳細な距離を処理するまでは出来ない。

山城「その前に仕留めます! 第二射。てぇー!」

合図と共に砲撃。彼女と深海棲艦の距離が近づくなか、今度は最上も

火砲を放つ。水柱と共に三つ、大きな火柱が上がった。

最上「命中! やった!」

戦艦ル級の二隻に撃沈とは行かないまでも大きな損害を与える。

重巡リ級が炎を吹上げ沈む。しかしその炎の中から砲弾が飛んだ。

山城「アウッ!」

扶桑「だ、大丈夫!?」

「ッ……各艦は、私を顧みず前進して!」

衝撃で主砲がひしゃげる。弾薬に誘爆して小さな爆発が起こり砲塔の

いくつかが使い物にならなくなった。それでも山城は叫ぶ。

山城「敵を撃滅してください!」

沈む重巡リ級の間を縫って時雨、満潮が駆ける。

彼女らの真横に戦艦のものよりは小さな、けれど

「駆逐艦」の彼女にとっては十分致命的な砲弾が

刺さる。怯まずに突撃。比較的損傷の浅い自分たちが

前に立ち、敵をかく乱しなければという矜持。

満潮「ウザいのよっ!」

時雨「残念だったね」

二人が12.7cm連装砲を立て続けに放つ。駆逐二級が衝撃に何度も

揺れて沈んでいく。

太陽は沈み、夜が訪れた。かすかな星の光と砲撃の光が夜を照らす。

その闇に紛れて、駆逐二級の懐から小さな飛沫が海面を滑る。

最上「敵の魚雷! 山城、回避して!」

山城「ッ!」

魚雷と彼女との距離は十分にあった。

しかし、山城の主機は今までの無茶な戦闘に悲鳴を上げていた。

魚雷を回避しきったところで、突然彼女の動きが止まる。

山城「こんな時に……!」

時雨、満潮がお礼参りとばかりに魚雷を放つ。損傷を負った二隻の戦艦ル級の胴体に突き刺さり、

その身が割れて沈んでいく。しかし、無傷の一隻が砲塔を山城に向けた。

重たい火薬の爆発音。砲弾が風を切る音。全てがスローになる。

山城の双眸に、飛来して徐々に大きくなる砲弾が見えた。

視線を逸らすことさえ出来ず、自分の死を告げる砲弾を眺めていた。


砲弾が目の前に来る。それと同時に、白と赤の布が、身体に見合わぬ巨大な

艤装が山城の視界を塞いだ。見慣れた背中。潮風の痛みにも負けない艶やかな髪

山城「――――ふそ」

爆発。少女の艤装が小さな爆発を起こして燃え上がり身体が倒れる。

山城「おね――――」

水面に一度浮かぶが、主機が沈黙して少しずつその身が沈む。

扶桑「やっぱり私、沈むのね……」

扶桑が顔を山城へ向ける。その表情は苦痛と、山城が無事であることへの

安堵の笑みが入り混じったものだった。山城の口から嗚咽が漏れる。

扶桑「山城は……無事…………だと……」

山城「ふそっ、扶桑お姉――」

山城が腕を伸ばす。もう少しでその手が届く。

指先が触れたと思った瞬間。強い力で引っ張られ、

山城は扶桑の手を放した。

山城「最上さん……何をしているの?」

扶桑「……十分、相手に損害は与えた。ボクらの勝ちだ」

山城「扶桑お姉様はどうするの」

扶桑「的になって一緒に沈む気かい?」

最上が一瞬体勢を崩す。至近弾の衝撃で、彼女の艤装も傷だらけだった。

山城「それでもいい!お姉さまと一緒の世界にいられるなら――」

満潮、時雨が最上に手を貸した。お姉さま、お姉さまと繰り返す

山城を引っ張り、その海域を去っていく。

最上「旗艦を沈めさせるわけにはいかないから、ゴメンね」

満潮「また。こんな……」

時雨「……」

血が滲むほど唇を噛みしめ、山城を引っ張り続ける。

山城の眼に深海棲艦は既に見えなかった。

水面に横たわり、その身を沈めていく扶桑のどこか寂しそうな、

それでも普段通りの柔らかな笑み。それが全てだった。




『Rider Kick!』

無機質な合成音声が夜の港に響く。
緑色の鎧、そしてバッタの顔を思わせるマスク。赤い複眼が目の前の、

彼の色違いとも言える鎧を纏った男を見据える。

マスクドライダー「キックホッパー」。その名の通り、彼の右足に

光が集まり、膨大なエネルギーを生み出す。そのエネルギーを解放し

キックホッパー、矢車想は力強く地面を蹴った。落下の勢いを乗せ、

その右足を褐色の鎧。パンチホッパーに向けて強力なキックを放った

パンチホッパーが吹き飛び、その鎧が消える。そこにいたのは

黒いコートと赤いタンクトップの、どこか幼い顔立ちの青年だった。

影山「お……れ……ホントは……」

口から血を流し、影山瞬はその顔を鎧を解除しない矢車に向ける。

影山「兄貴と……白……や」

影山の身体が変化する。人間のそれとはかけ離れた緑の肌。

昆虫の顔。そして頭部に生える一本の角。ネイティブと呼ばれる異形の生物。

影山は人間をネイティブに変化させる装置を知らずに身に着け、

その身を人ならざる者へ変えていた。その絶望が、兄貴と慕う

矢車に自分を殺すよう頼んだのだった。

影山「見たか……」

金網にもたれて何度も人間とネイティブの姿を行き来し、

人間の姿で動かなくなった。

矢車「……ああ」

変身を解除した矢車はゆっくりと動かなくなった影山の隣に座り込む。

細雨が二人の身体を濡らしていった

矢車はぼんやりと水面を眺めた。目の前に映る海は少ない街灯の光を受けて

弱弱しい光を放つ。しかし、彼らが望んだ光ではなかった。

矢車「相棒。俺たちは永遠に一緒だ。行こう、俺たちだけの光を掴みに」

その躯に肩を貸すように腕を回して立ち上がる。

行く先は小さな船だった。どこまで行けるか怪しい漁船だが、

彼はゆっくりとキーを回し、その船を動かした。

自分たちだけの光、白夜を見に行くために。

―――

小さな船が遅くも早くもない速度で暗い海を渡っていく。

矢車「……」

彼の視界にぼうっとした二つの青い光が見えた。

海の生物にも、そうした光を発する生物がいるのは珍しいことではない。

しかし、それらと何かが違うことを矢車は感じ取っていた。

青い光は四つ、六つ、八つと増えていく。それが何かの眼である

と気付くまでにそう時間はかからなかった。矢車は思い切り舵を切る。

ドンッという重い音が響き、数秒前まで船の居た場所に大きな水柱が上がる。

淀んだ光を湛えたその眼たちに、矢車は見覚えがあった。

どん底を見て、全てを憎んでいる者特有の眼。

矢車「お前たちも、闇の住人か」

軽く鼻を鳴らしてバッタを模したツール、ホッパーゼクターを構える

矢車「変身」

『Hen-shin!』

腰のバックルに差し込むと同時に矢車の姿が鎧に包まれる。

同時に再び放たれる四発の砲弾。それを見上げ、キックホッパーは

バックルの側面にあるレバーを操作する

矢車「クロックアップ」

『Clock-up!』

時間が止まった。赤い複眼が宙で静止した砲弾を見る。

右足に光が宿る。跳躍。同時に砲弾に向けて鋭い蹴りを放つ。

その砲弾を蹴って再び跳躍。別の砲弾を蹴る。四発全ての砲弾の

蹴り、キックッパーは着地点の船を見た。そして、それに向かう

白い飛沫に気が付いた。「魚雷」そう気づいた時には遅かった。

『Clock-over』

再び砲弾が動き出した。しかし飛ぶ方向は真逆。

四つの巨大な砲弾が青い目の間に吸い込まれるように飛ぶ。

しかし、同時に魚雷が船の腹部に吸い込まれる。

五つの爆発が起こる。キックホッパーは燃える船に着地し

自身の戦果を確かめることなく船室に戻る。

炎の中に横たわる影山の姿。それに手を伸ばそうとした瞬間。

矢車「相ぼ――」

燃料に引火し、爆炎がキックホッパーを吹き飛ばした。

その爆発に耐えることが出来たのはひとえに彼が

マスクドライダーシステムによって守られていたからだった。

それでも至近距離の爆風を、砕けた船の破片の衝撃は殺せない。

赤い複眼の光が消える。そこでキックホッパーは、矢車は意識を失った。

割と書いたと思ったら20ぽっちだったことに気付いて焦る。



――――――――


鎮守府。そう言えば聞こえは良いものの、横須賀や呉のような大規模なものとは違う、

ちょっとした港と団地程度の小さな場所。それが山城達の帰る場所だった。

扶桑型を失いながらも、沖ノ島(にーよん)は突破した。しかしそれは彼女らにとって

何の意味も為さなかった。小ぢんまりとした娯楽室に、山城を除いた三人が居た。

既に沖ノ島の戦いから一か月が経過していた。


最上「……あれ、山城はどうしたの?」

満潮「いつもの〝アレ〟よ」

時雨「ちゃんと指揮をする人がいれば話も変わるだろうけど……」


最上は頭を掻いた。あの後、なけなしの高速修復材を用いて最上たちは扶桑を残した

海域へ走った。しかし、そこに残されていたのは水面に浮かぶ彼女の髪飾りだけだった。

上は早々に捜索を打ち切った。山城は違った。お姉さまは生きている。頑なに彼女の死を

拒み、単身扶桑が姿を消した海域に足を運び続けた。


満潮「その司令官が逃げ出しちゃあ、話にならないわ!」


司令官、もしくは提督――艦娘を指揮する者は彼女たちからそう呼ばれていた。

様々な場所で老若男女様々な者が艦娘を指揮している。風の噂では、

ウサギや柴犬、果てにはPやTという形をしたもはや人でさえない存在が

彼女らを導いているとも。

彼女らを指揮する提督は、良くも悪くも優しい青年だった。

少しでも被害が出れば彼女らを撤退させて手当をする。

大破をしようものなら涙目で彼女らに謝り倒した。

それと同時に、周囲の眼をひどく気にする悪い癖があった。

彼の行動はしばしば他の提督たちに「腰抜け」と揶揄されていた。

その焦りが、沖ノ島での無理な進撃を引き起こしたことを誰もが

理解していた。その過失を受け止められない程度に未熟だった。


最上「あの人の気持ちも分からなくはないけどね……」

満潮「そいつ一人のせいで! 私らにどんだけとばっちりが出たと……ああ、もう!」


満潮が声を荒げる。ソファから身を起こし、身体全体で怒りを露わにする。

当り散らしても仕方が無いと気付くまでにはそう時間はかからない。

満潮は再びソファに沈みこんだ。


時雨「この際猫でも何でも、僕たちをまとめてくれる人がいればいいけれど」

最上「山城をなんとかしないと、僕らの居場所も危ういしね」

南西諸島。扶桑が消えた海域を一隻の戦艦が進んでいた。

ロクな整備をしていないのか、その速度は鈍い。


山城「扶桑姉さま……どこなの……?」


自愛しないせいか艶のある髪は傷み、肌も荒れていた。

かさついた唇が扶桑の名前を呼び続ける。声は水面に吸い込まれるだけだった。


山城「……」


燃料が心もとなくなり、山城は踵を返す。提督が消えてから出撃を続けるのは

彼女程度だった。燃費の悪い戦艦と言えど、単艦で、他の出撃も無ければ支給されるもので

十二分に事足りていた。明日も明後日も、彼女は同じことを繰り返すだろう。

昨日と、おとといと、一か月前と同じようにゆっくりと鎮守府に向けて航路を進める。

しかし、この日は何かが違った。


山城「……バッタ?」


海面に、手の平に乗るほどのサイズのバッタを模した機械が浮かんでいた。

片面は緑、もう一方は茶色をしており、色を除けば対象になっていた。

その足が力なくカチカチと動く。機械とはいえ昆虫を模したそれに

山城は良い感情を抱かなかった。


山城「帰って妖精さんに渡せばちょっとした賄賂になるかしら」


そんな気まぐれで、彼女はそれを服の裾で拭い、再び帰路についた。

山城「……?」


鎮守府が見えてくる。その傍にある海岸に、一人の男が倒れていた。

扶桑の影を追い続けているとはいえ彼女も人を守る仕事に就く艦娘。

ひとまずはと、その男へと進路を変える。


山城「……あのう、大丈夫。ですか」

矢車「……」


気を失っているかと思えば、その男は目を開けてぼんやりと空を見ていた。

ずぶ濡れの服に擦り傷だらけの身体。少なくとも喧嘩や海水浴の手合いでないのは確かだった。


矢車「笑えよ……」

山城「……はぁ?」

矢車「俺は光を掴もうとした。だが、このざまだ」


ワケが分からなかった。言うに事欠いて光とは何だ。初対面の女に笑えとは。


矢車「空の青さも……今の俺には眩しすぎる……」

山城「っ!」

今回はここまで、一話はもうちと続きますん。扶桑提督さんには本当に悪いと思っている。
だが私は謝らない。轟沈ネタが出ると前置きした以上、その手合いを嫌う提督は見ないと信じているからだ。




息を呑む声に、矢車はようやく顔を動かした。近付いてきたのが

背中に不釣り合いな大きさの大砲を背負った少女であると認識する。


矢車「どうせ俺は闇の住人……笑えよ」

山城「……取りあえず、起き上がれますか? 闇の住人さん」


山城が手を伸ばす。少しの逡巡のうちに、矢車はその手を取った。
細い腕に似合わぬ力で彼を立たせ、その肩を貸すように歩く。


山城「一応、ここは海軍の管轄で、一般の人は立ち入れないんです。手当てをして、然るべき対応を……」

矢車「お前。何を溜め込んでる。何を見てきた」

山城「変なことを聞かないでください」


矢車の問いに、山城はあくまで事務的に対応する。矢車の物言いに慕っていた扶桑の影が

一瞬だけ重なった。それを否定しようと、全力で押さえつけていた。


矢車「お前も同じ眼だ……俺と。あの青い眼と……瞳の奥に闇が見える」

山城「青い眼……! 深海棲艦のことを言っているのなら、私は違いますけど」

矢車「いいや。同じだ……お前も、地獄を見たか?」


山城は手にしていたバッタ状の機械を強く握りしめた。突起が手に強く食い込む。

その痛みが、何かを見透かしたような男の言葉を耐える手段になった。

おつ

投下文以外の書き込みや返レスをするなら投下とは別のレスに書き込んでくれると嬉しい

海洋ならXだろ

>>30 ありがとう。これからそうする。
>>33 Xというか昭和作品についてはSPRITSと春の映画程度の知識しか無いの。ごめんね。

ちょっと書き溜めして出していく感じで行きます。筆が遅いから進むのはたかが知れてるけど

矢車「良い顔をしてるぜ、お前」

山城「何なんですか、あなたは」

矢車「お前……俺の妹になれ」

山城「……はい?」


突拍子のない矢車の言葉に、山城は目を剥いた。

格好や暗い表情、正気を疑うような言葉。おかしな男だと

分かってはいたが言うに事欠いて妹とは何か。

山城「あの? ひょっとしてからかってます?」

矢車「……」

山城「あの! 私の話を聞いて……」


そこまで言って、山城は、彼が既に気を失っていることに気が付いた。


山城「まったく、もう……」


大きなため息をついて、重い艤装と男を背負って山城は歩いた。

彼女の無茶とはいえ、連続した出撃で疲労がたまっていた。

額に汗を滲ませながら山城は改めて帰路についた。

「何で私がこんな……不幸だわ……」

山城を迎えた最上は、彼女の担ぐ男を見て目を丸くした。

扶桑が消えてからの虚ろな表情では無く、疲労を滲ませた山城の顔。

それを見て最上はかすかな安堵を覚えた。


最上「お帰り山城。収穫は……あったみたいだね。望んでた人かどうかは別として」

山城「闇の住人さんよ。怪我をしてるみたいだから、手当てをと思って」

最上「病院に連れて行った方がいいんじゃないの?」

山城「それも思ったけれど。倒れてたのが立ち入り禁止区域だったから」

最上「事情を聞く。内容によっては然るべき措置ってこと?」

山城「そういう事。医務室にでも運びましょう。手伝って」

最上『でも、うちに医者なんて贅沢なの、いやしないけど』

山城「消毒薬やガーゼくらいあるでしょう。無ければバケツでもかければいいじゃない」

最上「……時雨や満潮にも手伝わせるよ。山城は部屋を見て来て」

山城「けれど……」

最上「拾ったのは山城じゃないか」

山城「捨て犬か何かなの?」

最上「どっちかというと捨て犬っぽいのはそっちだけれど」

山城「……」

最上「ゴメン。ちょっと、言い過ぎたかも」

山城「いいわ。あながち、間違ってないもの」

最上「あ……」

最上「……言い過ぎたかな。どう思うかな、お兄さん」


言葉を撤回する間も無く、山城は立ち去った。

わしわしと髪をかき撫でて、最上は矢車を抱えて、二人を呼びに行く。

見ず知らずの男をこの中に入れることに抵抗が無いわけではなかった。

しかし、することも無かったし、何よりも勝手に出撃する

彼女を引き止める口実が出来た。短い間でも重い空気の鎮守府を変えられれば。

贅沢すぎるとも思うが、最上はそんな小さな期待を持って歩き出した。

――――


矢車「……はぁ」

天井の白。その眩しさに矢車は開いた目を細める。

身に纏っているのは慣れたジャケットたちでは無く病人の着るようなガウン。

身体のあちこちに不格好な包帯が巻きつけられている。

動かすたびに体中の傷が滲みて痛みを訴える。

埃っぽいベッドから身を起こす。


山城「目が醒めたようね。闇の住人さん」

矢車「……そうらしい」

山城「あまり動かないで。赤の他人に見せられるものは少ないから」

矢車「ここは病院じゃないのか」

山城「残念ながら。鎮守府よ」

矢車「鎮守府……?」

山城「知らないわけじゃないでしょう。新聞とか読まないの?」

矢車「知ってはいる。光の中を進んでいる奴らだ」

矢車「その割に、色々と粗末だと思ってな」


足でベッドの骨を軽く叩く。所々に錆が見えた。

置かれている薬も学校の保健室に毛が生えたようなものだ。


山城「私たちの使う方はもう少しマトモよ。けれど、その感想は間違ってないわ」

矢車「光が大きければ大きいほど、闇も深い……」


山城が首を縦に振る。華やかな横須賀や呉、舞鶴、佐世保。

山城達が配属されている鎮守府はそれらの主力が集う場所とはお世辞にも

言えない。仕事も落穂ひろいのようなものが少なくない。


山城「ねえ、あなたは一体何者なの?」

矢車兄貴は彼女じゃなくて妹にするのか…

山城「何であんなところにいたの。傷だらけで」


矢車が嘆息をついた。そうしたいのは自分だと怒鳴りたい衝動を堪えたのは

彼が水に塗れ、インクの滲んだ写真を突き出してきたからだった。


山城「……これ、白夜?」

矢車「そうだ。俺たちの住む、闇の中でも見える光」

山城「またそれなの……でも、日本じゃ見れないと思うのだけれど」

矢車「そんなことは関係ない」

山城「あなた、まさか船を出したっていうの?」



山城「艦娘が何か知っているなら、今の海がどうなっているかも知っているでしょう?」

矢車「ああ」

山城「呆れた……このご時世に護衛も無しで海に出るなんて考えられないわ」

矢車「それでも、相棒が見たいって言うなら」

山城「あい……ぼー……?」


古ぼけたパイプ椅子に座る山城の膝。その上に乗った

バッタを模した機械に、矢車はようやく気が付いた。


矢車「……そいつは」

山城「海に浮かんでいたの。あなたのもの?」


答えずに矢車は膝の上のホッパーゼクターをひったくる。

緑の面、裏の茶色の面。それを見比べ、再びため息をつく。


矢車「相棒のものだ」

山城「そう……じゃあ、あなたが持ってる方がいいのかしら」

矢車「悪いな」

山城「……」

矢車「今、俺を笑ったか?」

山城「い、いえ。変な格好の割にお礼とか、言うんだなって」

矢車「……それで。俺はこれからどうなる? 警察にでも突き出すのか」

山城「そう、なるのかしら」

矢車「あいまいだな」

山城「あなたに言われたくありません」

矢車「どんな組織でも長はいる。判断を仰がないのか」

山城「……」

矢車「提督なり司令官がいるんだろう。兵器を背負わせて、雑務までさせれば何のためにそういう男がいる」

最上「逃げちゃったんだよ」

最上が入ってくる。部屋の隅のパイプ椅子をもう一つ取り出し、

挨拶もそこそこに山城の隣に座り込んだ。


最上「ボクは最上。山城。この人の名前は?」

山城「え? ええと……」

最上「そんなことだろうと思ってたけど……」

矢車「矢車だ。矢車想」

最上「矢車想……矢車草……」


矢車と山城をしきりに見比べる。その様子に二人は

軽く首を傾げた。


山城「どうか、したの?」

最上「いや、面白い組み合わせだなと思って」

矢車「……」


矢車が最上を軽く睨む。その視線に気づいた最上が身体の前で手を振って

悪意が無いことを必死に伝えた。

最上「変な意味じゃないよ。ヤグルマソウって花があるんだよ」

最上「その花言葉が確か、幸福とか幸運って意味だったような」

矢車「……はぁ」

山城「それなら呉の雪風か時雨の方が良い組み合わせじゃないかしら」

最上「いや、それは……」


部屋の中の淀んだ空気を良くするはずがさらに重苦しくなったようで、

最上は曖昧な笑みを浮かべるだけだった。


矢車「最中とか言ったか」

最上「最上だよ」

矢車「提督が逃げ出したってのは」

最上「言葉通りさ。色々あってね」

矢車「お前らが追い出した……ってわけでもなさそうだな」

山城「………結果て」

最上「まさか。それが出来ればあちこちで暴動が起きてるかも。提督のセクハラ被害でね」

矢車「それで、ここでは何をやってる」

山城・最上「……」

矢車「俺を突き出すほどの人でも無いってことか」

×人で ○人手



最上「そういう事。提督が失踪したこと、実は上にまだ報告してないんだ」

矢車「……それを何故俺に言う」

山城「そうね。あまり関係の無い人間に伝えるようなものじゃないわ」


最上は二人の言葉を無視して話を続ける。


最上「今この鎮守府は結構危ない状況なんだ」

最上「寄せ集めの艦しか居ない。指揮や事務を処理する人間もいない」

最上「今の現状を知られれば、きっとここは解散。上の人たちの都合でね」

矢車「それに関してはどこも同じらしい」

最上「話が分かるね、お兄さん。山城、提督が消えてどれだけ経ったっけ」

山城「……一か月よ」

矢車「そんなに長い間放置されるものなのか?」

山城「普通はとっくに査察なりが入ってるところよ」

矢車「つまり、お前らも見捨てられた人間って事か」

最上「決めるのは早いけど、わざわざ伝えて上に振り回されるのも嫌かなって」

山城「……まさか、最上」

最上「そのまさかさ。矢車さん、ちょっとの間。提督とかやってみない?」

山城「バカなこと言わないで! 素人にそんな仕事を……」

最上「形だけさ。形だけでも鎮守府の体裁を繕わなきゃ」

山城「だけど……」

矢車「……」


最上の提案に、矢車は過去の自分を見ていた。

矢車『一人でワームに立ち向かった勇気は評価するがスタンドプレーは二度とするな。』

矢車『戦場において最も重要なこと。それはパーフェクトハーモニー。完全調和』

ZECT……ワームと呼ばれる異形に立ち向かう組織。その中でもエリートが所属する

特殊部隊「シャドウ」。そして、その後の転落。仲間に裏切られ、追放されたこと。

影山『これ以上の地獄が……どこにあるというのさ』

矢車『地べたを這いずりまわってこそ、見える光もある』

矢車『影山……お前、俺の弟になれ』


その自分の姿と、彼女らがわずかにだが重なるようなそんな気がした。


矢車「……その話、乗った。」

山城「矢車さん!?」

矢車「アイツから貰った燃えカスの正義感。そいつを火にくべるのも悪くない……」


動かなくなった影山のホッパーゼクターを弄びながら矢車は立ち上がった。

山城「そんな……」

矢車「それで、最初に何をすればいい」

最上「取りあえず、出撃の許可証が山みたいにたまってるから、片づけちゃおう」

山城「……!」

矢車「どうした」

山城「いえ、何も」

最上「それじゃ、秘書艦を選ばなきゃね」

矢車「秘書……?」

最上「ちょっとした責任者みたいなものだよ。なんならボクでもいいけど」


最上の言葉に、矢車は山城の方を見た。視線を逸らす山城。


矢車「来い、きょうだい」

山城「……その、きょうだいってのはどちらさまのことでしょうか」

矢車「……来い。この鎮守府で、皆で地獄に堕ちよう」

山城「お誘いなら、丁重にお断りしますけれど」

矢車「命令だ」

山城「……ああ、もう! 不幸だわ!」

最上「ほら、あのセリフ」

山城「はぁ。てーとくが鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮を執ります! これでいいんでしょ!?」


山城がこの滅茶苦茶な提案を受け入れたのは、自分にも利益のあることだからだった。

正当な出撃の理由が出来るなら、変な場所に飛ばされるよりも動きやすい。

必ず扶桑を見つけ出す。山城は心に強く誓っていた。


―続く―


次回予告

時雨「提督は、雨とか好きかい?」

満潮「なんだってこんな変な奴を連れてきたのよ……」

山城「インスタントラーメン……妹豚骨?」

矢車「とにかく前に突っ込め。怯んだ方の負けだ」


ここは地獄の果て、暗闇の果てだ

>>42 間宮(ワームの方)で一回酷い目に遭ったから、兄貴……


取りあえず一話は終わり。最初にガツンと重たいの入れた(つもり)なので
これからは演習とか出撃とか、多少緩めにやってきます。

それにしても兄貴のセリフ難しい……西村艦隊、お姉さま以外に纏まりが無い……
もがみんがやけに動いたけど、比較的お姉さんってことでこういう役回りです。
違和感とかあったらごめんね

おつ

緩めに・・・間宮・・・砲撃・・・・
また吹き飛ぶ矢車くんが見れるのか

おつ

矢車さんならきっとブレイク限界してキラキラ世界を山城さんに見せてくれるはず

>>53 間宮ネタはいつか挟みたい。いつになるかは分からぬ

>>56 そういや、そっちには妹がいたよね。


あんま進まないけどぼちぼち行きます

二話「地獄の鎮守府」

しばらくは止む気配の無い雨が執務室の窓を叩いていく。

窓から見える母港は活気から最も離れた静けさを見せる。

四人の少女が集まったのを見て、矢車は机に腰掛けたまま

彼女らを見据えた。誰もが一様に不信や期待、困惑を浮かべる。


矢車「はぁ……今日からここを仕切ることになった。矢車だ」

時雨「失踪した提督の後任……ってことかい?」

最上「まあ、そんなところだね」

満潮「なんでアンタが答えるのよ」

最上「昨日のうちに会ってたからさ」


最上たちは矢車が正式な人間でないことを黙っていた。

時雨ならばともかく、プライドの高い満潮が提督でも何でもない

人間に指揮されることを嫌がるのは目に見えていたからだ。


矢車「それで、これで全員なのか」

山城「そうよ。駆逐艦の時雨と満潮、重巡洋艦の最上。そして戦艦の私、山城」

矢車「少ないな」

満潮「そりゃそうでしょ。なんたって寄せ集めなんだから」

矢車「そうか」

満潮「何笑ってんのよ。アンタだってそれを押し付けられたはぐれ物じゃない」


薄く唇を歪める矢車。それを見た満潮が噛みつくような

言葉を浴びせかける。山城がフォローするべきか否か考える。

しかし矢車は意に介した様子も無く話を続ける。


山城「満潮、あまりそんな言い方は……」

矢車「はぐれ物、アウトロー、地獄、結構なことだ」

満潮「や、そこまでは言って無いし」

矢車「せいぜい暗闇の中を好き勝手に這いずりまわろう」

満潮「……変なの」

時雨「山城が増えた……」

山城「と、とにかく、やる気はあるみたいだし……がんばりましょう」


時雨の言葉は聞かなかったこととして、山城がどうにか仕切ろうとする。

一か月前の戦闘ではたまたま調子が良かったから旗艦の扱いにされていただけで、

普段の秘書艦は扶桑が行っていた。戸惑っているのは満潮たちだけでない

最上「あ、そういう感じで解釈すればいいんだ」

満潮「ホント……何でこんなところに配属されたのかしら」

時雨「でも、燻ってるのも飽きたからね、よろしく。提督」

山城「とはいえ、まだ引き継ぎの仕事が残っているから、もう少し待っていてちょうだいね」

矢車「ひとまずは解散だ」


退出していく艦娘たちを見送ってから、矢車は机から降りて

積み重ねられた出撃許可証の束を眺めた。

同じ海域。同じ名前。同じ時刻。

矢車は自分の見初めた妹分の闇を薄らと知った。

山城「さあ提督。残りの仕事も終わらせましょう」

矢車「……あぁ。しかしお前らも無理を言う。けが人に、一日でこれを覚えろと」

山城「それはそうだけど……けど、矢車さんは普通にこなしてるじゃないの」

矢車「公務員なんざどれも似た仕事だろう」

山城「公務員……あなたが?」


彼女には全く想像できなかった。警察官か消防士か。はたまた市役所職員か

そのいずれもしっくり来ず、ましてや防火服に身を包んだ矢車を想像し、

山城は噴き出しそうになるのを必死でこらえた。

矢車「そんなに変か。笑いたきゃ笑えよ」

山城「え、いや……あなたみたいなこう、陰気な人が……」

矢車「人のことを言えたことか」

山城「それは、また別の話でしょう……」

矢車「まあ、何でもいい。仲良く日陰を歩くぞ、あい……」

山城「あい……?」

矢車「ああ、妹」

山城「何を言おうとしたかは分からないですけど、そうじゃないでしょう……」


二人は決して無能では無く、むしろ有能に分類される

類の人間だった。山のように積んであった紙束はそれなりの時間を

かけてではあるものの、滞りなく処理されていった。


山城「んんっ。これで一通りは終わりましたね」

矢車「あぁ……昼には少し遅いが、飯にするか」

山城「ええ。どちらへ行きます?」

矢車「……行く?」

山城「ええ」

矢車「仮にも居住施設でもあるんだ。食堂の一つあるだろう」

矢車「仮にも居住施設でもあるんだ。食堂の一つあるだろう」

山城「あるにはありますけど……当番制で、この人数ですから」

矢車「今日はそこに穴があるってことか。さっさと埋めればいいだろう」

山城「……」

矢車「まあ、何でもいいさ。飯にしよう」


そう言いながら矢車は部屋の隅にある申し訳程度の水場と

コンロに足を運ぶ。古ぼけたやかんを引っ張り出す。


山城「あの……」

矢車「お前も食うか」

山城「あ、はい」

矢車「そうか」

山城(ちょっと上機嫌になってる……)


二つ並んだ発泡スチロールのカップ。それにかやくを入れ、

お湯を注いで蓋をする。その上に香油を置いて三分。

いかにも作り物の出汁の匂いが部屋に漂った。

矢車「食え」

山城「インスタントラーメン……妹豚骨?」

矢車「おう」

山城「……い、いただきます」


ちらと矢車の持つほうのラーメンのラベルを見る。

そこにあったものは『兄貴塩』という無骨な三文字。

ニッチ産業もここまで来たのかという妙な感慨に囚われながら

山城もラーメンをすすった。麺こそレトルトのそれだったが、

スープに限ってはそれなりだった。かと言って、感想を大仰に言うほどでもない。

良くも悪くも普通のラーメンを二人は黙々と食べ進める。

矢車「それで、食った後はどうする」

山城「取りあえず、工廠とドックを見て回ってから……」

矢車「まるで見学ツアーだな」

山城「最初はそんなものですから」

矢車「不満か」

山城「それは……ええ、まあ。何だって私がこんなこと」

矢車「そうか。俺もだ。深海棲艦だとかいう奴らが気に食わない。それだけだ」

山城「自業自得な気も、しますけど」

矢車「何でもいい。俺は俺の場所で好きなようにやる。お前も、お前の好きなようにやれ。俺たちはひなたの道を歩けない。それだけ忘れなければな」

山城「言われなくても、そのつもりです。ひなたの道が何か、よく分からないですけど」

伊勢や日向には負けたくないの

少し遅い、インスタントラーメンの昼食を終えた山城は

矢車を質素な倉庫のような場所へと案内した。傘を閉じ、

水滴を払うのもそこそこに傘を引っかけ二人は鉄臭い中へ入り込む


山城「ここが工廠です。資材や私たちの艤装を管理しているの」

矢車「まるで廃工場か漁協だな」

山城「あながち間違ってませんね」

矢車「こんなところで管理が出来ているのか?」

山城「こんなところでも出来るのが強みなんです」


山城がぱちんと手を叩く。それからしばらくして、

物陰から十センチほどの、二頭身の小さな人型の生物が現れた。

一人、二人ではなく。いくつも列を作って二人の前に並んだ。

矢車「……」

山城「大丈夫、私も矢車さんも正気よ」

矢車「艦娘についての情報が出回らない理由か」

山城「多少素人でも提督を任せられる理由でもあるわ」

矢車もそのことは薄々と理解していた。

超常的な現象に遭うのは今に始まった話ではない。

ここも、ゼクトと同じような場所だと直感的に察した。

そして、あの屈辱を再び思い出していた。


山城「あの、」

矢車「どうした」

山城「妖精たちが恐がってます、笑うのも気持ちが悪いですけれど」

矢車「あぁ?」

山城「いえ、何も。ですがこの子たちのヘソを曲げないでくださいね」

矢車「艤装の油に角砂糖でも入れられるのか」

山城「みみっちいですね……兵装の開発もこの子たちの仕事なんです」

山城の言葉に、矢車は妖精たちを見た。棒のような眼に警戒が

宿っているのが見えた。それぞれの服装にも種類があり、ツナギやら

初心者マークの帽子やらとバラエティに富んでいる。


山城「この子たちの気分で、作られるものも変わっちゃうんです」

矢車「……」


矢車が一人の妖精の前に指を差し出す。

妖精は矢車の顔とその指を見比べ、ほんの先だけ触れて

すぐにまた物陰に隠れた。他の妖精もわらわらと戻っていく。

山城「だ、大丈夫ですよ。緊張してるだけでしょうし」

矢車「振られた、か……」

山城「あの、兵装の設計依頼の時は私がしますから」

矢車「お前はいいよなぁ……どうせ俺なんか」

山城「……それ、八つ当たりって」

矢車「いいよなぁ……」

山城「不幸だわ……」


雨の湿気。そして二人が作り出すどんよりした空気が

資材などで埋まった工廠の中に重苦しい空気を残した。

物陰に隠れた妖精たちはその様子を唾を呑んで見守っていた。

矢車「艤装ってのは、男は着けれないのか」

山城「無理でしょうね。どういう事か、装備できるのは女だけよ」

矢車「変な話だな……最上は」

山城「女の子です」

矢車「……冗談だ」

山城「アメリカでの艦の呼び方がSheだとかいろんな説はありますけど」

矢車「……」

山城「どうかしましたか?」

矢車「いや、男でも使えそうな奴がいたと思ってな」

山城「適正検査は大変なのよ……」


山城がため息をついた。訳の分からない映像を延々と見せられる。

穴と言う穴を覗かれる。やれ血だ尿だとプライバシーもクソも無い。

その状況に放り込まれる男……山城の脳裏に、やや耽美な想像が湧いた。

矢車「検査か。じゃあ、無理だな」

山城「ですよね。穴と言う穴を覗かれる」

矢車「いや、人に指図されるのが嫌いなやつだ」

山城「ぁ……そ、そうですね。何かと制約も多いですし」

矢車「どうした。次はどこに連れて行かれるんだ」

山城「は、はい。そうですね」

先に外に出た矢車を追って山城も傘を用意して入口に出る。

雨足は少しずつ強さを増していた。あるく二人の肩に

ぽたりと滴が落ちる。ほとんど同じタイミングで見上げる。

安っぽいビニールが破け、そこから雨水が垂れてきた。


矢車・山城「はぁ……」

山城「これって、さっき引っかけたとこが悪かったんでしょうね……って」


山城が続ける言葉を失い、口をパクパクさせる。

矢車は傘を放り、そのまま雨に濡れて歩き出した

山城「矢車さん! 風邪を引きますってば」

矢車「傘を差そうが濡れることには変わりがない。いっそ濡れた方が俺の居場所を確認できる……」

山城「どこでもいいですから、変なとこで思い切りが良すぎます!」


放り棄てられた傘を拾い、山城が隣に並ぶ。その傘を

掲げ、矢車に突き出す。矢車は一歩引く。再度一歩寄る。

その応酬が延々と続いた

やさぐるまさんイイ感じに甘っちょろいよなぁ

>>71 そのネタをさせないために平仮名にしたのに。くそうくそう

>>83 地獄地獄言って、そうなりきれない辺りが好きなんです。カッシス戦大好きですもの

時雨「あれ、矢車さんに山城? 何をしてるのさ」

矢車「案内だ」

時雨「山城、傘……入れてあげたら?」

山城「入るならこんなことにはならないのだけれど」

時雨「雨の日に傘を差さなくてもいい。自由とは……ってやつ?」


係船柱……船を係留するための突起に座り、時雨は

波と雨の波紋でめちゃくちゃな模様を作る雨を眺めていた

自前の水玉の傘を差し、座る場所にはタオルを敷いている。

静かな笑みを浮かべる彼女とその風景はひどく絵になっている。

片や矢車は濡れそぼり、山城も先ほどの応酬のせいで髪や

衣服に水を染みこませている。


山城「風邪ひくわよ」

時雨「隣に言ってあげなよ、まず」

山城「言ったのに聞かないの」

時雨「まあいっか。二人は雨、好きかい?」

山城「嫌いではないけれど……こう、気が沈むというか」

時雨「矢車さんは?」

矢車「雨はいい……相棒を思い出す」


影山『これ以上の地獄……どこにあるって言うのさ』

矢車『俺が見た地獄はこんなもんじゃない……』

自ら手にかけた相棒、影山と再会したのもこんな雨だった。

マスクドライダーとなる資格を奪われ、ゼクトから切り捨てられた

男の暗い淀んだ眼がまざまざと蘇る。共に暗闇を歩く者が出来た喜びの熱を

降り注ぐ雨が奪っていく。傷の舐めあいでも友情でもない、醜いが確かな絆。

それは矢車にとっても、影山にとっても救いだったのかもしれない。

時雨「相棒? 珍しい表現だね。今時僕らみたいな人間でもそう使わない」

矢車「他に表現しようのない奴だった……行くぞ」

山城「ええ……時雨も、早いところ戻るのよ」

時雨「はーい」


わしと時雨の頭を矢車のごつごつした手が撫でる。

彼の手で湿った髪を整えながら時雨は気の無い返事を返す。

時雨「……傷の舐め合い、なのかな。あの人も」


視線をわずかに上げ、水平線をじっと見る。

次第に黒の割合を強めていく灰色の雲。それから

太くなっていく雨の一粒一粒。そのずっと向こうに

サイズの様々な五隻の船が見えた気がした。

サイズの大きな船からその姿を消していき、最後には一番小さな

船だけが、ボロボロになってゆっくりと近づいてくる。

眼を閉じて大きく息をついてから再度海を眺める。船の姿は

どこにも無かった。白露型駆逐艦の名を継いだ彼女しか見えないもの。


時雨「僕も、そうなのかもね」

時雨「……もう少しだけ、ここにいよっと」


彼女のつぶやきは雨の打ち付ける音に吸い込まれた

随分と間が開いたようで。仮面ライダーカブトのBlue-layが楽しみです。

山城「そして、ここがドック。傷の手当てをするところよ」

矢車「……まるで銭湯だな」


トタン屋根の雨避けを通り、最後に連れて来られたのは

小ぢんまりとした浴場だった。当然ながら誰も入ってはいない。

いくつかのシャワーや並べられた桶。大きな湯船が一つのみ。


山城「ここで治療をするの。怪我とかのね」

矢車「血まみれで浸かるのか」

山城「まさか。治した後の最後の仕上げか、すぐ治るのは擦り傷くらいね」

矢車「風呂に入って怪我が治るとはな……羨ましい」

山城「あるところでは一般開放されたりもしてるそうよ」

矢車「健康ランドか何かか……?」

山城「そういった場所もある、という話ってだけ」

矢車「そうか……へくしっ!」

山城「ああ、もう。こうなるとは思ってましたけれど!」


脱衣所らしき場所に戻ったところで大きなくしゃみをした

矢車を見て、山城は大きくため息をついた。言わずもがな、

雨に打たれたことで彼の身体は冷え切っていた。

山城「ほら、予備の着替えを持ってきますから、暖まってて下さい」

矢車「ここでか……」

山城「他にお風呂らしいものは無いの」

矢車「ここが本当に軍事施設で、まして最前線とは思えないな……」

山城「残念だけれど、本当に軍事施設で、行方不明者も出る所なの」

矢車「死人じゃなくてか……?」


山城は答えず、ぴしゃりと戸を閉じて出て行った。

取り残された矢車はすることもなく、再度大きなくしゃみをした。

地獄と常に言う彼でも、好き好んで風邪をひきたいわけでもなく、

大人しく山城の言い分に従い、一人で使うにはおおきな湯船に身を沈めた。


山城「全く、もう……」

最上「ただいま……あれ、矢車さんは?」


前の提督の着ていた制服を探し出した山城に最上が話し掛ける。

ショートの髪から雨粒が滴り、湿った靴下のせいで

床にはぺたぺたと足跡が出来る。手に着替えを抱え、山城の先を進んでいた。

山城「ちょっとね。傘、持っていかなかったの?」

最上「あはは、工廠に行くくらいでって思ったら結構濡れちゃってさ」

山城「……身体冷やさないようにね」

最上「はーい」


気の抜けた返事を返した最上の背中が小さくなる。

その背中をぼんやりと見送ったところで、どうも進行方向が

同じでいることに山城は気が付いた。

山城「も、最上? 着替えを持ってどこに」

最上「おふろー」

山城「そう………ふへ?」


山城が制止する間も無く、最上は廊下の角を曲がって行く。


最上「うわっ!」

山城「こうなるとは思ったけど、お約束ね……どうしたの」

何度目かも分からぬ大きなため息をついて、山城は

着替えを抱えたまま脱衣所へと向かう。いそいそと

服を着直している最上の姿がそこにはあった。


ほどよく焼けた肌を薄らと赤めながら唇を尖らせる


最上「先客がいるんなら、早めに伝えてくれてもいいじゃないか」

山城「伝える前にあなたが行ったのよ」

最上「そりゃそうだけどさぁー」

山城「はいはい……着替え、入れておきます!」


替えの服を突っ込みながらドア越しに矢車に叫ぶ山城。

数テンポ遅れて矢車の響く声が届く。


矢車「そろそろ上がらせてもらえないか」

山城「……裸を見られたいのなら、どうぞ」

矢車「……」

山城「冗談です。一分くらい待ってて下さい」

最上「あの、ボクのことはいいから、ゆっくりしてなよ」


矢車からの返事はいつまで経っても返って来なかった。

二人はゆっくりと顔を見合わせてから、あの男にも

誰かに気を遣うようなことがあったのかと目で語り、

小さく頷き合った。いつまでそうしていたのか、

ぺたぺたという足跡と擦りガラスの戸に移る大きな

人影を見て、二人は慌ててその場を後にした。

山城「あの、矢車さ……提督」


脱衣所でのささやかな騒動を終え、軽い夕食を

摂ったのち、山城は神妙な顔つきで矢車の前に立つ。

互いの、どこか別の場所を見ているようなような暗い視線が

重なり、簡素な執務室に重たい空気が流れた。

山城は無造作に一枚の紙を置く。

山城「明日の出撃の許可をお願いします」

矢車「沖の島……南西諸島海域。お前一人か」

山城「許可をお願いします」

矢車「はぁ……」


大きなため息をつき、矢車はその紙を一気に引き裂いた。

驚いて目を見開く山城を他所に、矢車は千切った紙で

折り紙のように紙飛行機を作った。

山城「なぜですか!」

矢車「言っただろう。俺たちは日の光を浴びれない闇の住人」


歪な形の紙飛行機を、隅にあるゴミ箱に向けて放る。


矢車「お前が掴もうとあがいているのは強すぎる光だ」

山城「……光でも何でも、出撃は必要なことです」

矢車「求めるものがデカいほど、痛いしっぺ返しが来るぜ」


山城が怒鳴ろうとした矢先に、矢車は彼女に向けて一枚の紙を突きつける。

それと同時に、歪な紙飛行機はゴミ箱の淵にぶつかり、中に落ちていく。

矢車「出撃命令だ、喜べよ」

山城「……鎮守府近海。海上護衛任務?」

矢車「俺たちにはお似合いの仕事だ」

山城「……」

矢車「不服か」

山城「……ええ」

矢車「だろうな。だが、」

そこで矢車は一度言葉を切る。お前も分かっているだろう

とばかりに溜めてから再度言葉を続ける。


矢車「ここの仕事をしろと言ったのはお前だ」

山城「そう、です」

矢車「明日の朝、全員集めろ。追って内容を伝える」


そっけない矢車の言葉に、山城は唇を噛んで頷くだけだった。

やがて来た、今までの調子と変わらない声で「下がれ」と

言われたところで山城は力なく部屋を出て行った。

矢車「今日の午後、近くの港から商船が出る」


翌日、執務室に集められた四人艦娘は粛々と

矢車の言葉を聞いていた。少女とはいえ彼女らも

ひとかどの訓練を受けた者。矢車が頭に入れていた

山城も特に目立った反論なども無く話を聞いている。


矢車「はぐれ者にしちゃ、上等な仕事だ……」

満潮「その簡単な護衛に戦艦まで引っ張り出すわけ?」

矢車「四隻付けろってご所望だ。他にアテでもあるのか……」

満潮「……りょーかい」

矢車「装備を整えて指定の場所に行け、遅れるなよ」


言うだけ言って、矢車は彼女らよりも早く

部屋を出ようと足早に歩き出す。


最上「あれ、矢車さんはどこに行くのさ」

矢車「お前らが護衛する船に、だ」

最上「ってことは……」

時雨「見学でもするの?」

矢車「見たことの無いものについて、素人が口を出すのも変な話だ」

最上「そりゃ、指揮してくれる人の理解はあって損はしないけどさ」

山城「多分大丈夫よ。この辺りまで深海棲艦が出るって話は無いし」

満潮「その報告がいつのものだかは分かんないけどね……」

時雨「まあ、護衛任務は護衛任務だし、いつも通りさ」

矢車「気は済んだか。準備に入け」

最上「了解。しかし矢車さん」


艦娘たちがじろりと矢車の服を眺める。

糊付けされた二種軍装と呼ばれる白い制服に

身を包んでいる。初対面のラフと言うか、アウトローな

格好を見ていた彼女らには、その服がどうも窮屈に見えた。


矢車「何だ」

最上「いや、何でも。うはは……」

矢車「着られているのは分かってる……」


それだけを言い残して矢車は部屋を出て行った。

満潮は曖昧な笑みで固まった最上のわき腹を小突き、

時雨と山城はそれを宥めるように押さえて執務室を後にした。

輸送船に乗り込んだ矢車は、甲板の手すりにもたれ、

ぼんやりと広い感覚を開けて動く艦娘らを眺めていた。

先頭を時雨と満潮、両翼に最上と扶桑が並び、護衛の速度に

合わせ、付かず離れずの距離を保っている。


山城「……今のところ、問題は特に無さそうね」

最上「電探があればもう少し手を抜けたんだけどね」

満潮「油断しないの。安全な海域っても、百パーセントは無いんだから」

時雨「大丈夫じゃないかな。敵に喰われるならまず僕だろうし」

満潮「ちょっと、変ないこと言わないでよ縁起でもない!」

時雨「ん? ああ、ゴメン」

最上「あはは、でも。漫画とかでこういう話をした時って割と悪い事が起きたりするよね」

山城「……ありえそうだから、笑えないわね」


矢車「……優秀だな」

「ええと、君が提督さんかね」


インカムで彼女らの会話を聞き流しながら、それとは裏腹の

きびきびとした行動に舌を巻いていた。

矢車は航行の間隔や細かいことは分からなかったが、

彼女らの迷いの無い行動に見える自信は鈍りは感じなかった。

数度の呼びかけでようやく気が付き、矢車はその視線を

背後に向けた。皺は目立つが、若い頃の精悍さを残した男がいた。

ピンと伸びた背に、デニムの青がよく映えていた。

矢車「……」

「若いもんがそんな顔するんじゃない」

矢車「いきなり何を言うかと思えば……アンタは?」

「手伝いの医者だよ。元々は船乗りを目指していたがね」

矢車「羨ましい……こうして夢を叶えてるじゃないか」

「いいや。まだ叶っちゃいない。俺が見たい海は、こうじゃなかった」

矢車「どう違う」

「深海棲艦、艦娘……どちらも、本来あってはならんものだろう」

矢車「……」

「年頃の若い女が自分の身体ほどの武器を背負って戦う……悲しいことだとは思わんか」

矢車「贅沢だな……夢すら持つことの出来ない奴だっている」

「贅沢だとは思うさ。こうしてケチをつけれるのも彼女らのお陰だからな」

矢車「……何が言いたい?」

「何も。単なる年寄りの茶々だ」

矢車「……名前は」

「名前? ああ、俺のかい。俺は、じ……」

山城「三時の方向! 敵艦多数!」

インカムから山城の声が聞こえるのと、男が

名前を名乗ろうとしたのはほとんど同時だった。

船の横っ面に、大小の水柱が吹き上がる。男と矢車は

とっさに手すりに捕まり、揺れる船から振り落とされることを防いだ。


「大丈夫かね?」

矢車「多数じゃ分からん。詳しい報告をしろ」

山城「駆逐2、雷巡……いえ、軽巡が2、戦艦が1!」

矢車「こちらの船で振り切れるか」

山城「冗談! 駆逐に脇を刺されるわ!」

最上「偵察機から連絡、電探付けた戦艦相手じゃ狙い撃ちもあるかも」

矢車「死ぬ選択肢だけはいつも多い……」

満潮「それで! どうするわけ?」

矢車「敵の陣形は」

山城「単横陣よ」

矢車「そうか。満潮と時雨でかき乱せ。後の二人はそこを狙え」


水柱の音に負けない少女らの声。自分たちを見せつけるように

大きく動き、山城らは水面を滑りそれぞれの得物を構える。

「……あの青い眼。あれが深海棲艦というやつか」

矢車「ああ……」

「あの眼は……何故か見ていて悲しくなる」

矢車「敵は敵だ」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月16日 (金) 14:08:47   ID: BE_p1w33

続き、待ってるよ

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