黒川千秋「スキのない空間」 (44)

ガチャッ

モバP「ただいまー…って誰もいないか」

千秋「おかえりなさい」

モバP「うおっ!?っと…なんだ、千秋か」

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千秋「ずいぶんとご挨拶ね」

モバP「ごめんごめん。まさか人がいるとは思わなくてな」

千秋「はぁ…まあいいわ。で、どうだったの?」

モバP「どうって?」

千秋「……」ジロッ

モバP「そんな顔するなよ。出張のことだろ?まぁ、ボチボチだよ」

モバP「そっちはどうだった?俺がいない間、ちゃんとやってたか?」

千秋「当然よ。あなたがいないからって、仕事に穴は開けられないもの」

モバP「そっか。そりゃそうだ」

千秋「…別に、いなくてもいいってわけじゃないけど」

モバP「わかってるよ」

モバP「それにしても、本当に誰もいないんだもんな。もっとこう、おかえりーってかんじで出迎えてくれるのを期待してたんだけど」

千秋「今日はみんな休みだもの。当たり前でしょ」

モバP「そうだな」

千秋「そうよ」

モバP「…じゃあなんで千秋は来てるんだ?」

千秋「…忘れ物」

モバP「…そっか」

千秋「どうして私の隣に座るの?」

モバP「別にいいだろ」

千秋「すぐに帰るんじゃなかったの?」

モバP「千秋は帰らないのか?」

千秋「あなたが帰るなら帰るわ」

モバP「忘れ物はいいのか?」

千秋「……」

モバP「……」

千秋「今日はすぐ帰るの?」

モバP「ん?あぁ、まぁ事務所の様子とか確認しにきただけだし、すぐ帰ると思う」

千秋「そう」

モバP「……」

千秋「……」

モバP「ちょっと失礼」ボスッ

千秋「……」

モバP「…どうした?」

千秋「どうして隣に座るの?」

モバP「別にいいだろ」

千秋「すぐ帰るんでしょ?」

モバP「千秋は帰らないのか?」

千秋「あなたが帰るなら帰るわ」

モバP「忘れ物はいいのか?」

千秋「……」

モバP「……」

千秋「…ばか」

モバP「ごめん」

千秋「別に謝ることないけど…」

モバP「……」

千秋「……」

モバP「…もうちょっと事務所にいようか」

千秋「えぇ」

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ーー

モバP「あ、そうだ」ゴソゴソ

モバP「これ」コトッ

千秋「…なに?」

モバP「お土産。クッキーだけど、みんなの分も買ってきてるから、これは千秋の分」

千秋「そう、ありがとう」

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ーー

千秋「……」ペラッ

モバP「……」

千秋「……」ペラッ

モバP「……」ペリペリ

千秋「……」チラッ

モバP「……」パカッ

千秋「……」ペラッ…

モバP「食べない?」

千秋「じゃあ…」

モバP「いいよ、本読んでて」

千秋「…そう」

モバP「あーん」スッ

千秋「…ん」パクッ


サク…サクサク…


コクン

モバP「もう1個」スッ

千秋「…んむ」


サクサク…



コクン

モバP「もう1個」スッ

千秋「…ねぇ」

モバP「どうした?」

千秋「遊んでる?」

モバP「多少」

千秋「…もう」

モバP「まあまあそう言わず」スッ

千秋「…ん」

サクサク…?サク…



チュプ


千秋「ッ!?」

モバP「ん」


サクサク…サク…



チュプ


千秋「ッ!?」

モバP「ん」

千秋「ご、ごめんなさいっ」

モバP「ははっ、指食べられちゃったな」

千秋「えっと、その…ごめんなさい…」

モバP「いいよ」

千秋「……」

モバP「……」

千秋「…ごめんなさい」

モバP「いいって」

ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーー

モバP「よっと」スッ

千秋「帰るの?」スッ

モバP「タバコ」

千秋「そう」ボフッ


ガチャッ

バタン

千秋「……」ペラッ



千秋「……」ペラッ…



千秋「……」パタン



千秋「……」スッ

コツッコツッコツッ


ガチャッ


千秋「……」キョロキョロ

モバP「何してんだ?」

千秋「きゃあ!?」

モバP「どうかしたのか?なんかいたとか?」

千秋「ううん、もう帰っちゃったのかと思って…」

モバP「あれ?タバコ吸ってくるって言わなかったっけ?」

千秋「言ったけど…」

モバP「だいたい、荷物置いたまま帰るわけないだろ?」

千秋「うん…」

モバP「……」

千秋「……」

モバP「…そろそろ帰るか?」

千秋「…まだいましょう。もう少しだけ」

モバP「…そうだな」

とりあえずここまで、続きは明日書けると思います。
近くに水野さんssがあることにただならぬ運命力を感じる。

再開します

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ーー

千秋「…そうだ、これ」スッ

モバP「二千円…お小遣いですか?」

千秋「……」ジロッ

モバP「そんな顔するなって。でもなんの二千円だ?俺貸した覚えなんてないぞ」

千秋「クレーンゲーム…ほら、この前の」

モバP「クレーンゲーム…?あーあったなそんなこと。べつにいいよ、返さなくて」

千秋「でも…」

モバP「前も言っただろ?プレゼントだと思ってさ」

千秋「…やっぱりダメ。貸しっぱなしは性に合わないわ」

モバP「…寂しいこと言うんだな」

千秋「えっ…?」

モバP「俺は千秋のためじゃなく、自分のために金を使ったんだよ」

千秋「……」

モバP「千秋だからこんなこと言うけどさ」

千秋「…うん」

モバP「2千円ぽっちであんな幸せそうな顔見せてくれたんだから、俺のほうがお礼をいいたい気分だよ」

千秋「…ごめんなさい。その、私も嬉しかったのよ?だから…」

モバP「……」

千秋「…えっと」

モバP「そんな寂しいやつの口元には…」

千秋「…?な、何?」

モバP「クッキーだ!」シャッ

千秋「えっちょ…むぐっ!?」

千秋「ケホッ…な、何?急に…」

モバP「ごめん、つい」

千秋「ついって…けほっけほっ」

モバP「…大丈夫か?」サスリサスリ

千秋「水を、もらえるかしら…?けほっ」

モバP「待ってろ」

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ーー

モバP「落ち着いたか…?」

千秋「えぇ、もう大丈夫」

モバP「そうか、よかった」

千秋「……」ジッ

モバP「……」

千秋「ねぇ、どうしたの?」

モバP「何が?」

千秋「今日のあなた、変よ?」

モバP「そうかな?」

千秋「えぇ、なんていうか、子どもみたいな…そう、行動が幼稚よ」

モバP「ひどい言われようだ」

千秋「…何かあったの?」

モバP「何もないよ」

千秋「私には教えてくれないのね」

モバP「…あなたが言いたくなったら」

千秋「言えばいい、なんて言うと思った?私はそこまで人間ができていないの」

モバP「そんなに知りたい?」

千秋「えぇ」

モバP「くだらないことだよ」

千秋「くどいわね」

モバP「…隙を見せてほしいんだよ」

千秋「隙…?」

モバP「もっとこう、子どもっぽいところを…いや違うな」

モバP「甘えてほしいんだ、千秋に」

千秋「そんなに冷たく見えるかしら?」

モバP「そんなことないけどさ」

千秋「これでも、あなたを頼りにしてるつもりなのだけど」

モバP「仕事ではな。でもそれ以外では、全部1人で済ませようとして溜めこむだろ?」

モバP「なんて言えばいいのかな…もっとどうでもいいことで俺をアテにしてくれてもいいと思うんだ。もちろん、事務所のみんなもな」

千秋「たとえば?」

モバP「たとえば…?えっと、瓶詰めのフタを開ける…とか?」

千秋「ふふっ、なにそれ?」

千秋「…あなたからはそんなふうに見えていたのね。でも私、甘え方なんて知らないわ」

モバP「なんでもいいよ」

千秋「100万円ちょうだい」

モバP「子どもみたいなことを言う」

千秋「冗談よ。そうね…」

モバP「……」

千秋「……」

モバP「……」

千秋「もう少しだけいましょう。まだ2人がいいわ」

モバP「やっぱり子どもみたいだ」

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千秋「…ねぇ」

モバP「んー?」

千秋「さっきのって、どこまで本気だったの?」

モバP「いつのさっき?」

千秋「ほら、寂しいこと言うんだなってやつ」

モバP「んー?あぁ、うん」

千秋「歯切れが悪いわね」

モバP「いちおう、全部本気のつもり…いや違うな」

千秋「……」

モバP「金を使ったのは俺のためじゃなくて、千秋のためだよ。間違いなく」

千秋「…よくそんな恥ずかしい台詞が出てくるわね」

モバP「実際恥ずかしい」

千秋「私もよ…ばか」

千秋「……」

モバP「……」

千秋「…ねぇ」

モバP「ん?」

千秋「…なんでもない」

モバP「そっか」

千秋「……」






ギュッ




千秋「好き」




おわり

ありがとうございました。千秋とふじともはキュート、はっきりわかんだね。ゲームセンターのくだりはそのうち書くかもしれません


過去作

卯月「恋愛能力診断?」

美優「腰が痛い……」

渋谷凛「無言、いろっぽい」

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