さやか「その……さ。同性愛ってどう思う……?」杏子「え……?」(57)

◇上条家

恭介「ねえ、卵焼きと目玉焼き、どっちがいい?」

中沢「……どっちでもいいよ」

恭介「もう、またそれ? じゃあ目玉焼きにしちゃうよ」

中沢「ん」

恭介「味付けは何がいい? しょうゆ? ソース? それとも塩?」

中沢「どっちでもいい」

恭介「……まったくもう、そればっかりなんだから」

中沢「恭介が作ったメシなら、なんでも美味いから」

恭介「え?」

中沢「だから、どっちでもいい」

恭介「……ずるいよ、それ」

中沢「そうか?」

恭介「今日はお風呂沸かす? それともシャワーで済ませちゃう?」

中沢「どっちでもいいよ」

恭介「はいはい、そういうだろうと思ってたよ」

中沢「ん」

恭介「でもさ、たまには『どっちでもいい』以外の答えも聞かせてよ」

中沢「……考えとくよ」

恭介「もう……」

恭介「あ、そうだ。じゃあさ?」

中沢「?」

恭介「今夜一人で寂しく寝るのと、僕と一緒に寝るの、どっちがいい?」

中沢「……そんなの決まってるだろ、馬鹿」

恭介「ふふっ♪」

◇寝室

二人は一つのベッドで寝ている。

恭介「……もう寝ちゃった?」

中沢「……どっちだと思う?」

恭介「うーん、起きてるんじゃないかな、返事してるんだから」

中沢「正解」

恭介「……ねえ、ギュッてしてもいい?」

恭介「ダメなら、髪の毛撫でてもいい?」

中沢「……どっちでもいいよ」

恭介「ありがとう……」

中沢「でも両方はダメだ」

恭介「……ケチ」

恭介「……良い匂いがする。それにサラサラだ」

中沢「そうか」

恭介「シャンプーは何を使ってるんだっけ? 手入れとかはどうしてるの?」

中沢「別に、適当だよ」

恭介「ふーん……」

中沢「……いや、一つだけ気を使ってることがあったかな」

恭介「へえ、そうなんだ?」

中沢「知りたいか?」

恭介「……どっちでもいい」

中沢「…………」

恭介「ふふ、なーんてね。一度真似してみたかったんだ」

中沢「もう口きいてやらない」

恭介「ご、ごめん、許して……」

◇翌朝 登校時

中沢「あ」

恭介「うん?」

中沢「美樹がこっち見てた」

恭介「え、どこどこ?」

中沢「もうあっち行っちゃったよ」

恭介「なーんだ、そっか」

中沢「……いいのか?」

恭介「何が?」

中沢「退院してからろくに話もしてないんだろ、美樹と」

恭介「ふふ、誰かさんがヤキモチを妬くといけないからね」

中沢「……誰のことだよ」

恭介「口では『どっちでもいい』、とか言っておいて、僕がいないと寂しがる誰かさんのことだよ」

中沢「そんなやつは知らない」

◇下駄箱

恭介「あれ? これって……」

中沢「どうした?」

恭介「ほら、これ。僕宛ての手紙が入ってた。ラブレターかな?」

中沢「ふーん……」

恭介「ふふ、気になる? ねえ気になる?」

中沢「…………」

恭介「どっちでもいい、って言う気でしょ?」

中沢「どっ……ごほん」

恭介「あははっ」

◇放課後

中沢「恭介、今日は先に帰ってくれ」

恭介「うん? どうかしたのかい?」

中沢「先生に呼び出された」

恭介「あはは、また早乙女先生? 気に入られてるよね、ホント」

中沢「……別に嬉しくないけどな」

恭介「ははっ、まあそういうことなら分かったよ。先に帰るね」

仁美「あの……上条くん、今日はお一人なんですの?」

恭介「志筑さん。うん、そうだよ」

仁美「よかったら、一緒に帰らせてもらってもいいですか?」

恭介「うん、いいよ」

仁美「うふふ、ありがとうございます」

恭介「志筑さんの家はこっち?」

仁美「……はい」

仁美「荷物、お持ちしましょうか?」

恭介「ううん、大丈夫だよ。これくらい」

仁美「でも」

恭介「女の子に荷物を持たせるわけにはいかないし、ね?」

仁美「上条くん……」

恭介「さ、いこっか」

恭介「でも知らなかったなぁ」

仁美「何がですの?」

恭介「いや、志筑さんが帰る方向同じだったなんて」

仁美「…………」

仁美「……実は、まったく逆の方向なんですの。私の家は」

恭介「え? じゃあどうして……」

仁美「私、上条君にお話したいことがあって……」

中沢「恭介ッ!」

中沢が必死な表情で駆けてくる。

仁美「!」

中沢「はあっ、はあっ、はあっ……」

恭介「あれ? どうしたんだい、そんなに慌てて」

中沢「ど……どうでもいいだろ、そんなの……」

仁美「あ……あの……私……」

中沢「……志筑」

仁美「は、はい」

中沢「悪いけど、恭介は渡さないから」

仁美「……!」

中沢「帰ろう、恭介」

恭介「え? でも志筑さんが……」

仁美「……いえ、私のことは気にしないでください。大した用件ではなかったので」

仁美「さようなら、上条くん」

恭介「……? うん、またね」

中沢「行くぞ、恭介」

恭介と中沢は立ち去り、仁美だけが残される。

仁美「…………」

仁美「やっぱり、敵いませんわね……」

恭介「志筑さんの話ってなんだったんだろうなあ」

中沢「分からないのかよ」

恭介「だって、途中だったし」

中沢「はあ……」

恭介「うーん、明日謝ったほうがいいかな? でも大した話じゃないって言ってたし」

中沢「どっちでもいいだろ。好きにしろよ」

恭介「……なんで不機嫌なんだい?」

中沢「別に」

◇数日後 上条の家

恭介「さやか……」

中沢「……あまり、自分を責めるなよ」

恭介「……でも! 僕がもっとちゃんとさやかと話をしていたら!」

恭介「もしかしたら力になれたかもしれないのに……!!」

恭介「さやかがあんなことになるまえに、何とか出来たかもしれないのに……!!」

中沢「美樹の死は恭介の責任じゃない」

中沢「だから、『もしも』なんて話はするなよ……」

恭介「でも……でもッ!!」

中沢「恭介……」

恭介「……ゴメン」

恭介「本当は……こんなこと言ったって何にもならないことは分かってるんだ」

中沢「……」

恭介「でも、さやかは僕の大切な幼なじみで」

恭介「なのに僕は何もしてあげられなくて」

恭介「それがどうしようもなく悔しくて……!!」

中沢「……分かったよ、恭介」

中沢「今日は好きなだけ後悔しろ。好きなだけ泣けばいい」

中沢「でも気が済んだら、また前を向くんだ」

中沢「恭介がいつまでもクヨクヨしてるなんて、きっと美樹も望んでいないからな」

恭介「……うん」

恭介「じゃあ……さ」

中沢「うん?」

恭介「……胸、借りてもいいかな」

中沢「……どっちでもいいよ」

恭介「ありがとう……」

恭介「う……うううっ……」

中沢の胸で泣く恭介。

中沢「……恭介……」

そんな彼の頭を、中沢は優しく撫でてやるのだった。

◇数日後・避難所

風の音が鳴り響いている。

恭介「凄い風だね……」

中沢「台風、早く治まるといいな」

恭介「台風? スーパーセルじゃなかったっけ」

中沢「……どっちでもいいだろ」

恭介「……ふふ」

恭介「晴れたらさ、今度の休みに何処か行こうよ」

中沢「ああ……いいな」

恭介「海がいい? 山がいい?」

中沢「……山」

恭介「あれ? どっちでもいい、じゃないの?」

中沢「山なら温泉があるだろ」

恭介「ああ~、いいね。一緒に入りたいね、温泉」

恭介「……それにしても、凄い風だね」

中沢「ああ」

恭介「建物が揺れてるよ。もしかしたら倒れちゃうんじゃないかな」

中沢「流石にそれはないだろ」

恭介「はは。でも看板くらいは飛んじゃいそ……」

次の瞬間、轟音と共に避難所の天井が崩れ落ちた。

◇数分後

瓦礫の中、中沢を抱きしめる恭介。

二人の身体を一本の鉄骨が貫通しており、おびただしい量の血液が流れ出ている。

恭介「……は、は。まさか、こんな死に方をするなんて思わなかったな……」

中沢「…………」

恭介「ゴホッ! ……ね、ねえ……? 聞いても良い?」

中沢「…………」

恭介「死んだらさ……僕たち、天国に逝けると思う?」

中沢「…………」

恭介「それとも……地獄に落ちるのかな」

すでに中沢の呼吸は止まっている。

中沢「…………」

恭介「ふふ……答えは、聞かなくたって、わかってるよ」

中沢「…………」

恭介「どっちでも、いいよね」

中沢「…………」

恭介「二人いっしょに逝けるなら……どっちだって……」

そして恭介もまぶたを閉じた。

その両目が開くことは、もう二度とない。

~fin~

992 :vipにかわりましてnipperがお送りします [sage]:2013/04/12(金) 18:28:17.70 id:zoyyvzaso
よし決めた、俺は>>1000のネタでssを書くよ

999 :vipにかわりましてnipperがお送りします [sage]:2013/04/12(金) 18:59:19.18 id:uplbb/cjo
中沢と恭介のラブコメ

1000 :vipにかわりましてnipperがお送りします [sage]:2013/04/12(金) 18:59:45.86 id:sms6i9s00
>>999



そんなわけで書きました。
以下このスレはご自由に荒らしてください。


杏子「何言ってるんだよ」

さやか「いやさ……この前電車に乗ったんだけどさ……」
______

____

__

「私の愛は無限に有限だけど、無限に君に尽くすよ」

「……ありがとう、私もよ」
_____

___

__


杏子「電車の中で何してんだよ!」

さやか「見つめ合ってた」

杏子「恋人かよ! いや、恋人か……って同性じゃねーか!」

さやか「杏子ちょっとうるさい」

杏子「すまん……」

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