【刀語】 七花「未来から戻ってきた」 とがめ「へ?」 (482)

■西尾維新の作品、刀語を題材としたss

■主人公七花が強くてニューゲームする話

■ssの内容はアニメ版に準拠

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408264523

否定姫「見てみて七花君、桜が咲いてるわよ」

七花「ああ・・・」

否定姫「綺麗ね・・・」

七花「(・・・そうか、もう桜が咲く季節になったのか
    あれから・・・とがめが死んでからどれだけ経ったんだろうな)」

――――――

七花「暗くなってきたな・・・
   今日はこの辺りで休むか」

否定姫「えー、また野宿?」

七花「仕方がないだろ」

否定姫「ちぇー・・・ん?」

七花「どうした?」

否定姫「あれ、あそこに家があるじゃない」

七花「・・・本当だ」

否定姫「ついてるわね
    今夜はあそこに泊めてもらいましょう」

―――とある家―――

否定姫「お邪魔しまーす・・・
    ってあれ? 誰もいないみたいね」

七花「・・・あちこちに埃が溜まってるな
   長い間誰も使ってなかったのか?」

否定姫「それは好都合ね
    遠慮なく泊まらせてもらいましょう」

七花「・・・」

否定姫「あら・・・
    何か大きなかまどがあるわね」

七花「その隣に何本か刀が並んでるな
   槌もある」

否定姫「どうやら刀鍛冶の工房だったみたいね
    まぁ寝泊りするだけだから、なんだっていいけど」

―――

七花「・・・よし、掃除は終わり
   これで気持ちよく寝れるな」

否定姫「・・・」

七花「どうしたんだ?
   さっきから立ち止まって」

否定姫「・・・七花君、これを見て」

七花「なんだこれ・・・
   日記かなんかか?」

否定姫「掃除してるときに見つけたの
    ・・・ここに書いてある名前を見て」

七花「!!・・・
   四季崎・・・記紀だと」

七花「・・・これは記紀が書いたものなのか?」

否定姫「多分そうだと思うわ
    私の家にあった記紀の書物と字が同じ形だし」

七花「・・・ここは四季崎記紀の工房だったってことか」

否定姫「そうみたいね・・・
    しかもどうやら完成形変体刀を作り上げた後に建てた工房らしいわ」

七花「こんな辺鄙な場所に工房なんか建てて、なんの刀を作ってたんだろうな」

否定姫「それについてなんだけど、この部分を見てくれる?」

七花「・・・時空を切り裂く刀って書いてあるのか?」

否定姫「ええ」

七花「なんだそりゃ」

否定姫「この手記によると、
    その刀を使うと好きな時代に行けるらしいわ」

七花「へ?」

否定姫「なんでも切り裂いて作った時空の穴から、過去や未来に飛べるんだとか」

七花「!!
   本当なのか?
   過去に戻れるのか?」

否定姫「・・・・・・
    あはははは」

七花「おい、どうしたんだよ?」

否定姫「こんなの笑うしかないじゃない
    いくらなんでも無理があるわよ」

七花「・・・」

否定姫「記紀もボケたのかしらね?
    天才って言ってもやっぱり人の子だわ」

七花「・・・・・・
   その刀は完成したのか?」

否定姫「ん?」

七花「その刀は存在してるのか?」

否定姫「・・・さぁ?
    手記には何本か試作品を作ったとしか書いてないわ
    というか信じるの? こんな馬鹿げた話を」

七花「・・・」

否定姫「そんなに気になるなら、そこらにある刀を振ってみたら?
    無駄だと思うけど」

――――――

 それから数10分後

否定姫「・・・本当に全部振ったわね」

七花「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

否定姫「随分と疲れてるわね」

七花「・・・虚刀流は刀を振るだけでも大変なんだよ
   必死に握ってないと簡単にすっぽぬけちまうからな」

否定姫「おまけに振るときはすごいゆっくりだったし
    本当に刀を使うのは苦手なのね」

七花「・・・あれだけ振ったのに何にも起きないな」

否定姫「当たり前じゃない
    どんな理屈があれば刀で時代を行き来できるっていうのよ」

七花「・・・」

否定姫「それにしても記紀はどうしてそんなものを作ろうとしたのかしらね?
    未来に行きたかったのか
    それとも過去にやり残したことでもあったのかしら?
    まぁ何にしても馬鹿馬鹿しいけど」

七花「・・・・・・
   あんたは過去に戻りたいと思わないのか?」

否定姫「ん?」

七花「右衛門左衛門が生きていた頃に戻りたいと思わないのか?」

否定姫「・・・」

七花「その仮面、ずっと持ってるだろ
   ・・・大切な人間だったんじゃないのか?」

否定姫「あいつが?
    そんな訳ないじゃない」

七花「とぼけるなよ」

否定姫「とぼけてなんかないわよ」

七花「過去に戻ることができれば、
   あいつが死なない未来を選べるかもしれないんだぞ」

否定姫「歴史の改竄なんか夢物語だって言ったのはどこの誰よ」

七花「・・・」

否定姫「人は生きていればいつか死ぬわ
    死なない未来なんて無いわよ」

七花「・・・少なくとも俺と戦って死ぬ未来は避けられるだろ」

否定姫「私はあのときやり直せたらなんて女々しいことは言わないわよ
    例え自分がしたことを後悔しててもね」

七花「・・・」

否定姫「まぁどうせやり直せなんかしないんだけど
    過去に戻れる道理なんてないんだから」

――――――

 それから数時間後

七花「・・・寝たか」

否定姫「ぐぅ・・・すぅ・・・」

七花「(・・・人は生きていればいつか死ぬ、か
    そんなに簡単に割り切れねえよ
    俺は・・・俺は・・・)」







 会いたいよ・・・とがめに

七花「・・・・・・」

ブンッ

ブンッ

ブンッ

七花「・・・・・・
   やっぱり何度振っても時空なんか切れやしねえ」

否定姫「ぐぅ・・・」

七花「・・・はぁ、俺も今日はもう寝るかな」

コオオォォ

七花「ん? 何の音だ?」

ゴオオォォ

七花「これは・・・切れ目?」

ゴオオォォォ

七花「切れ目が広がって・・・穴が・・・」

ゴゴオオオオォ

七花「!?
   吸い込まれる!?」

否定姫「んん・・・うるさいわねぇ・・・
    どうしたのよ一体」

七花「逃げろ!」

否定姫「へ?」

七花「くっ、間に合わない」

否定姫「な、何? なんなの?」

七花「う・・・うおおおお!」

否定姫「きゃあああ!?」

―――???―――

七花「(ん・・・ここは・・・
   森の中? どうしてこんなところに?
   確か、変な穴に吸い込まれて・・・)」

???「そなた、少し訪ねてもよいか?」

七花「(ん? 背後から声が・・・)」

???「この島に虚刀流6代目当主、鑢六枝殿はいるか?」

七花「!?」

???「・・・どうした?
    何故そんなに驚いた表情をしている?」

七花「そんな・・・まさか・・・」











とがめ「もう一度聞こう
    この島に虚刀流6代目当主、鑢六枝殿はいるか?」

ここまでで第一章終了です
今後は大体1,2週間に一章ずつくらいのペースで投下していく予定です

否定姫の出番はあるのかな…

七花がつよいってことはかませになる真庭はいないんですねやったー!

一瞬botかと思うくらいたくさんの期待、ありがとうございます。
なんとか週末に上げられるよう頑張ります。

あと、書き忘れたので補足
アニメ版で七花は字(かたかな)が読めない設定になっていますが、
地図を作るために字は読み書きできたほうがなにかと都合がいいので、このssの中では否定姫から字を学んだということになっています。

元の七花はいるのか?

タイムリープだと思ってた

お待たせしました、続きを投下していきます。
と、その前にいくつか質問があるので返信

>>24
あるにはありますが、かなり少ないです

>>26
どうでしょうねぇ・・・(ゲス顔)

>>37
元の七花はいません
このssでタイムパラドックスとかそういった面倒なことは書く予定はありません
>>38で書いてもらったタイムリープだと思ってもらえれば結構です

七花「・・・とがめ、なのか?」

とがめ「ん? どうして私の名前を知っておる?
    始めて会ったはずなのに」

七花「・・・」

とがめ「まぁよい
    改めて聞くがこの島に虚刀流6代目党首、鑢――」

七花「うっ・・・ぐすっ・・・」

とがめ「ど、どうした?
    何故泣いておる?」

七花「うっ・・・うあああぁぁぁ!」

とがめ「お、おい、やめろ!
    抱きつくな、この変態!」

―――鑢家―――

 数十分後


七実「すみません、弟が迷惑をかけたようで」

とがめ「いや、構わぬ」

七実「一体どうしたんでしょうね?
   急に泣き出して」

とがめ「何故か私を見た途端に涙を流してな・・・
    私には泣かれる覚えなど無いのだが
    そもそも今日初めて会った訳だし」

七実「今日のあの子は本当に変だわ
   私を見ても泣きだして・・・
   おまけに抱きついてきたし」

とがめ「(私にも抱きつこうとしてきたしな・・・)」

七実「・・・あの子の様子を見てきます」

―――裏庭―――

七花「・・・」

七実「七花、頭は冷えた?」

七花「・・・・・・
   姉ちゃん」

七実「何?」

七花「本物、なのか?」

七実「・・・はぁ
   もう少しそこで頭を冷やしなさい」

――――――

七花「(一体何がどうなってるんだ・・・
   とがめに加えて姉ちゃんまで生き返ってる・・・
   本当に過去に戻ってきたのか?)」

とがめ「そなた、少しよいか?」

七花「(否定姫はいないみたいだな・・・
    穴を作った刀も消えてる・・・)」

とがめ「おい、少しよいかと聞いておる」

七花「(とがめが俺のことを知らないってことは、
    戻ってきたのは初めて会った頃なのか?・・・)」

とがめ「おい! 無視するな!」

七花「(いや、戻ってきたんじゃなくて、単に夢でも見ているだけなのか?
    ・・・まぁなんでもいいか
    またとがめと姉ちゃんに会えたんだから)」

とがめ「ちぇりおー!!」

七花「!?
   ・・・とがめか」

とがめ「ようやく気がついたか・・・
    そなたに話がある」

―――鑢家―――

とがめ「よし、では改めて自己紹介だ
    私は尾張幕府の戦所総監督、奇策師とがめだ」

七実「奇策師?」

とがめ「うむ
    ではまず奇策師の説明からするとするか」

七花「・・・」

――――――

 数分後


とがめ「愛で動く人間は信用できる
    ・・・鑢七花、私に惚れていいぞ」

七実「・・・・・・」

七花「(あのときと全く同じ状況だ・・・
    ということは)」

ズバババ

七実「!!」

とがめ「な、なんだ!?
    ・・・これは、手裏剣?」

七花「やっぱりか・・・
   ちょっと行ってくる」

―――浜辺―――

蝙蝠「お前はひょっとしちゃって、
   この俺を追い詰めたつもりになってんじゃねえよな?」

七花「(真庭蝙蝠・・・やっぱりこいつもいるのか・・・)」

蝙蝠「逆だぜ逆、俺がここまでお前を誘導したんだっつうの」

七花「(そういえばこいつ絶刀鉋を持っていたな
    完成形変体刀・・・そんなものがあるからとがめの人生は狂ったんだ)」

蝙蝠「俺は真庭忍軍十二頭領が一人、真庭蝙蝠様だ!」

七花「(いっそここでへし折っちまうか・・・)」

蝙蝠「俺の目的はあの女が喋る情報なんだがな・・・
   邪魔するならお前も消してやるぜ?」

七花「(いや・・・とりあえずはやめておこう
    ここで刀集めが終わっちまったら、とがめと一緒にいられる理由がなくなっちまうし)」

蝙蝠「おい!
   お前人の話をちゃんと聞いてるのか!?」

七花「ただしその頃にはあんたは八つ裂きになっているだろうけどな!」

蝙蝠「・・・は?」

七花「行くぞ」

――――――

七花「(姉ちゃんや錆白兵に比べれば、なんてことないな)」

蝙蝠「うぅ・・・強ぇ・・・」

とがめ「私が駆けつける前には終わっていたか・・・
    虚刀流がこれほどまでとは」

七花「ほら、とがめ
   絶刀鉋だ」

とがめ「! 私にくれるのか?」

七花「おう
   唾液で汚れてるから、洗ったほうがいいぞ」

とがめ「・・・ありがとう、七花」

蝙蝠「・・・おいおい、虚刀流の兄ちゃん
   その女に協力するつもりか?」

七花「そうだ」

蝙蝠「・・・そいつは先の大乱を引き起こした飛騨鷹比等の娘だぜ?」

とがめ「!!」

蝙蝠「兄ちゃんの親父が殺したんだってなぁ、その女の父親」

とがめ「やめろ! 黙れ!」

蝙蝠「その女はきっとお前を憎んでる
   用済みになったら殺されるぜ?
   ・・・そんな奴より俺たちと組めよ」

七花「遠慮しとく」

蝙蝠「っ、なんでだよ!」

七花「俺はとがめについていくんで」

とがめ「! 本当か、七花?」

蝙蝠「おい、俺の話聞いてなかったのか!?
   お前はそいつのかたきの息子なんだぞ!」

七花「うん」

蝙蝠「百歩譲って俺たちと組むのは無しでも、
   そいつに協力するのだけはやめとけ!」

七花「やだ」

蝙蝠「・・・・・・
   俺には分かる、その女の目は野心に満ちてる」

とがめ「なっ・・・」

蝙蝠「どんな汚い手を使っても、何人裏切っても野望を果たしたいって目だ
   そんな奴と一緒にいたって破滅しかないぜ?」

とがめ「貴様・・・」

七花「言いたいことはそれだけか?
   そろそろとどめをさすぞ?」

蝙蝠「なっ・・・」

七花「とがめ、何かこいつに聞きたいことはあるか?
   無いならとどめをさそう」

蝙蝠「てめぇ・・・」

とがめ「待ってくれ、七花
    そいつにとどめをささないでくれ」

七花「ん? 了解だ」

とがめ「・・・真庭蝙蝠、お前誓えるか?」

蝙蝠「は?」

とがめ「二度と私たちの邪魔をせぬこと
    私が飛騨鷹比等の娘だと口外せぬこと
    この二つを誓えるなら見逃してやる
    七花もそれでいいか?」

七花「とがめがそう言うなら」

蝙蝠「・・・・・・
   なんだそりゃ? あんた頭でも打ったのか?
   本気で言ってるのか?」

とがめ「私は正気だ」

蝙蝠「・・・仮に俺が誓うって言ったら、
   あんたはその言葉を信じるのか?」

とがめ「あぁ、信じるとも」

蝙蝠「・・・・・・
   一体何を企んでやがる?
   その兄ちゃんの前で格好でもつけたいってのか?
   今更善人ぶるのはやめろよ、復讐に取り付かれた悪人の癖に」

とがめ「何も企んでおらんし、私のことはどうでもよいだろう
    お前は生きたくないのか?」

蝙蝠「・・・ふざけんな
   卑怯卑劣が売りの忍者にもプライドくらいあるんだよ
   あんたみたいな人間に情けをかけられて生き延びるくらいなら、死ぬほうがよっぽどマシだね」

とがめ「本当にそれでいいのか?
    何かやり残したことはないのか?
    お前の帰りを待ってる人間はいないのか?」

蝙蝠「!・・・」

とがめ「刀集めだけがお前の全てというわけでもあるまい
    私たちや変体刀のことを忘れて別の人生を歩めるのなら、生かしてやる」

七花「・・・というわけだ
   どうする?」

蝙蝠「・・・・・・
   けっ、こうなりゃどんなに醜くたって生き延びてやる
   いいぜ、誓ってやろうじゃねえか」

とがめ「・・・お前が漕いできた船はくれてやる
    陸地まで漕ぐ体力くらい残ってるだろう?
    それに乗って帰れ」

七花「どうだ? とがめは優しいだろう?
   あんたが思ってるような人間じゃないさ」

蝙蝠「・・・どうだかねぇ」

――――――

蝙蝠「・・・じゃあな」

とがめ「蝙蝠」

蝙蝠「なんだよ」

とがめ「利用して悪かったな」

蝙蝠「・・・」

―――船上―――

蝙蝠「・・・ようやく沖に出れたか
   きゃはっ、笑えるぜ 
   忍者を信用しちゃうとはな・・・
   誓うだぁ? んなもん嘘に決まってるだろうが」



・・・・・・
何が利用して悪かったな、だ 
腹の中まで腐ってる癖に・・・
くそっ、不愉快だ

―――鑢家―――
 
 翌日


七花「とがめ、姉ちゃんいるか?」

とがめ「んん・・・
    なんだ、こんな早朝に?」

七実「どうしたの、七花?」

七花「いや、二人が消えてないか心配で」

七実「・・・人が突然消える訳ないでしょ
   ましてこんな孤立した島の中で」

七花「そうだよな・・・はは・・・」

とがめ「まったく人騒がせな
    ・・・もう一眠りするか」

七花「(戻ってきたのか・・・本当に)」

―――浜辺―――

 数時間後


とがめ「ふぅ・・・
    ようやく船が完成したな」

七花「じゃあ姉ちゃん、行ってくる」

七実「気をつけてね・・・
   七花のこと頼みました、とがめさん」

とがめ「うむ、頼まれた」

七花「・・・姉ちゃん」

七実「どうかしたの?」

七花「誰かが姉ちゃんを狙ってこの島に来るかもしれないから、気をつけてくれ
   まぁ姉ちゃんなら心配しなくても大丈夫だろうけど」

七実「・・・どういうこと?」

七花「いや・・・あんまり気にしないでくれ
   それじゃあ姉ちゃん、またな」

―――船上―――

とがめ「・・・不思議だな」

七花「ん?」

とがめ「私が敵を生かしてしまうとは」

七花「・・・真庭蝙蝠のことか?」

とがめ「ああ・・・
    何故か昔、奴を死なせてしまったような気がしてな」

七花「!? 」

とがめ「そんな覚えはこれっぽっちも無いはずなんだが・・・」

七花「・・・」

とがめ「二度も死ぬ必要は無い・・・
    そう思ってしまったんだよ
    笑えるな、同じ人間が二度死ぬ訳などないのに」

七花「・・・なぁ、とがめ」

とがめ「ん?」

七花「人は過去に行けると思うか?」

とがめ「なんだ突然?
    ・・・そうだな
    今は無理かもしれんが、いつかできるかもしれん」

七花「どうしてそう思う?」

とがめ「過去に戻りたいという強い思いを持つものが、
    あきらめずに努力し続ければ、きっといつか何かしらの方法を見つける
    ・・・私はそう思うよ」

七花「そうか・・・
   とがめがそう言うなら、そうなんだろうな」

とがめ「それより七花」

七花「ん?」

とがめ「そなた、私が飛騨鷹比等の娘だと知って何故ついてこようと思った?
    蝙蝠が言っていたとおり、そなたは私のかたきの子供だ
    ・・・私はそなたを憎んでいるかもしれんのだぞ?」

七花「そんなの決まってるだろ」

とがめ「え?」

七花「俺があんたに惚れてるからだ」

~小ネタ 王国民七花~


とがめ「しーちーりん」

七花「なんだその呼び方?」

とがめ「私が考えた七花の愛称だ
    どうだ可愛いだろう?」

七花「子供っぽいからやめてくれよ、ゆかりん」

とがめ「ゆかりん? 誰だそれは?」

七花「へ?」

とがめ「え?」


~終わり~

せっかくの世界観を大しておもしろくもないメタなネタで潰していくスタイル
今日の投下はこれで終わりです。

次回の投稿は二週間後を予定しています。
遅くなり申し訳ない。

次回の投稿は二週間後と言ったな、あれは嘘だ

―――京の町―――

 数日後


七花「(ここに来るのも随分と久しぶりだな)」

とがめ「まずは服を買うとするか
    冬の寒空の下、ほぼ裸の男と歩きたくないからな」

七花「あぁ、そういえば服装が島にいたときと同じだな」

―――宿屋―――

とがめ「明日の目的地は稲葉の下酷城
    収集対象は斬刀鈍だ」

七花「とがめ、その話をする前に俺の話を聞いてくれ」

とがめ「話?」

七花「そうだな・・・
   結論から言うと」

とがめ「なんだ?」

七花「未来から戻ってきた」

とがめ「へ?」

――――――

 数十分後


七花「――そして俺は尾張の八代目将軍を殺した
   結局将軍の息子が後を継いで、歴史は変わらなかったけどな・・・
   その後は日本地図を完成させるために旅を続けたよ
   行くあてをなくした否定姫と一緒にな」

とがめ「・・・」

七花「その後、色々あって過去に戻ってきた
   正直俺は今でも実感が湧かないけどな」

とがめ「色々?
    何がどうなったら過去に戻れるというのだ」

七花「四季崎記紀が作った刀に、時空を超える力があったんだよ
   多分あれのおかげで戻ってこれたんだと思う」

とがめ「信じられんな・・・」

七花「だよな・・・」

とがめ「だが、そなたの話を嘘だと決め付けることもできぬ・・・
    実際、私しか知らないようなことも知っておるし
    ・・・とりあえずはその話を信じるとしよう」

七花「それならとがめ、提案がある」

とがめ「ん?」

七花「刀集めはやめて、ひっそりと旅でもしながら暮らしたらどうだ?
   いくら刀を集めたところで、命を無くしたら意味が無いだろ」

とがめ「父上の無念を晴らさずに生きることの方が、無意味だ」

七花「・・・」

とがめ「私は完成形変態刀十二本を全て集める
    そして上り詰められるところまで上り、復讐を果たす
    もちろんその途中で死ぬ気はない」

七花「・・・そうか」

とがめ「こんな私でもついてきてくれるか、七花?」

七花「もちろんだ
   おれはとがめの刀だからな」

とがめ「恩に着る
    ・・・なぁ七花」

七花「ん?」

とがめ「そなたがいた未来では、私は死に際に何と言っていた?」

七花「・・・・・・
   何も言ってない
   即死だったからな」

とがめ「そうか」

七花「(あのことは・・・
    とがめが俺を殺すつもりだったと言った事は黙っておくか)」

とがめ「それと七花」

七花「今度はなんだ?」

とがめ「私の死後、あの不愉快な女と一緒に旅をしたと言うが、
    何か間違いはなかっただろうな?」

七花「・・・・・・
   そんなに信用無いのか俺」

――――――

 翌日


とがめ「七花、そなたの話を聞いて改めて旅の計画を練り直したぞ」

七花「ん? 行く場所を変えるのか?」

とがめ「・・・まずはあの不愉快な女に会いに行く」

七花「そうか
   全てとがめに任せるよ」

とがめ「七花」

七花「ん?」

とがめ「改めて、よろしくな」

七花「ああ」



こうして、俺ととがめの二度目の旅が始まった

―――尾張―――

七花「ここに来るのも久しぶりだな」

とがめ「七花
    そなたはあの不愉快な女も謎の穴に吸い込まれたと言っていたな?」

七花「あぁ
   だからといって否定姫も俺と同じように戻ってきたとは限らねぇ」

とがめ「まぁどっちにしろあの女の様子は見ておかねばならん
    放っておけば私を殺すのだろう?」

七花「そうだ
   正確にはとがめを殺したのは右門左衛門だけどな」

―――――――

とがめ「着いた
    ここがあの女の家だ」

七花「ん? なんか家の門に張り紙があるぞ」

とがめ「なになに・・・
    しばらく腹心と一緒に旅に出るので家は空ける
    多分一年後くらいに帰る・・・だと」

七花「なっ?」

とがめ「くそっ、あの女め
    そんなの私は一言も聞いておらぬぞ」

七花「右門左衛門もいねえみたいだな
   ・・・どうする? とがめ」

とがめ「・・・とりあえず、待ってる時間が惜しいから刀集めをするか」

七花「いいのか?
   否定姫を放っておけば、とがめは死んでしまうかもしれないぞ?」

とがめ「だからといって、一年も無駄にしたくはない
    あと何本かは刀を集めよう」

七花「そうか・・・
   とがめがそう言うならそうしよう」

今日の投稿は以上です
ここまでがプロローグ
否定姫派の方には申し訳ないけれども、このssではほとんど出番ありません
次回の投稿は今週末を予定しています

お待たせしました
続き投稿していきます

―――江戸 不要湖―――

 数日後


七花「相変わらず、ここはがらくたの山でいっぱいだな」

とがめ「さて、前も言ったが、とりあえず刀集めの順番は
    今から回収する微刀、百刑場の誠刀、死霊山の悪刀、踊山の双刀の順にする
    時間のかかる王刀は後回しだ」

七花「了解」

―――

七花「無事日和号も回収できたな」

とがめ「・・・さすがは未来から戻ってきたと言うだけはあるな
    手馴れた動きだった」

七花「なぁに、過去にとがめが日和号の動きを分析してくれたからこその成果だ」

とがめ「ふん、やはりそうであろうな」

七花「・・・」

とがめ「さて、今のうちに手足を取り外しておかねばな」

七花「日和号・・・
   お前も主がいなくなった後、ずっと一人で言いつけを守ってきたんだな」

とがめ「ん、何か言ったか?」

七花「いや、なんでもない」

―――

とがめ「さて、次は陸奥の百刑城だな」

七花「・・・とがめ、別にあそこは後回しにしてもいいだぞ?」

とがめ「問題ない
    別に気を使わなくてもよい」

七花「・・・そうか」

―――陸奥 百刑場―――

 数日後


七花「(相変わらずここは胸が締め付けられる感じがするな・・・)」

とがめ「・・・」

七花「とがめ、大丈夫か?」

とがめ「・・・あぁ」

―――

輪廻「始めまして、僕の名前は彼我木輪廻だよ
   そして今後お見しりおきを」

七花「(俺にとって会うのは始めてじゃないんだけどな・・・)」

輪廻「それと・・・
   やぁ、とがめちゃん」

とがめ「!?
    ・・・父上?」

輪廻「ふーん、君には僕がそう見えるのか
   誠刀銓を取りに来たんだろ?
   そこに埋めてあるから好きに取りなさい」

とがめ「・・・」

輪廻「丁度十丈くらいあるのかな?
   君の真下にあるから掘ってみなさい
   ・・・もちろん君一人でね」

―――

輪廻「あれからとがめちゃんは健気に掘り続けてるようだね」

七花「あぁ」

輪廻「それにしても彼女はよく戦うね
   戦いなんて空しくて、勝ち負けに対した意味はないのに」

七花「・・・」

輪廻「戦いから得る経験なんて無益なもんだ
   有益だったとしても悲しいだけ」

七花「今の俺ならあんたの言うことも分かる気がするよ」

輪廻「なんだ、つまらないなぁ
   僕は君に嫌がらせをしようと思ったのに
   やけに素直じゃないか」

七花「何のために戦うか・・・
   そんなことを考えなければならないなら、そもそも戦わなければいい」

輪廻「ふぅん
   それが君の辿りついた答えかい?」

七花「・・・確かにそれが真実なのかもしれない
   でも、それでも・・・
   俺はとがめのために戦うことには意味があると思う
   まぁ、それは結局俺自身のためにやってることなんだろうけど」

輪廻「とがめちゃんのためにねぇ・・・
   でも君の感情は恋でもなければ愛でもないんだよねぇ」

七花「恋だの愛だのくだらねぇ
   俺はとがめを選んだ・・・ただそれだけだ」

輪廻「ちぇっ・・・
   仙人の僕より悟ってるんじゃないかい、君?」

七花「二度目だからな」

輪廻「二度目?」

七花「なんでもない
   俺からもとがめに戦いはほどほどにって伝えておくよ」

―――

輪廻「おめでとう、とがめちゃん
   見事誠刀を掘り当てたね」

とがめ「確かに頂戴した
    ・・・勉強させてもらった
    目的のためなら引き分けさえも飲み込まねばならぬとな」

輪廻「ご名答・・・じゃないね
   目的のためなら目的も捨てなきゃいけないって言いたかったんだけどね
   野望も野心も復讐心も捨てるべきだ」

とがめ「それはできぬな
    目的だけは捨てることができない」

輪廻「はぁ、意固地だねぇ
   まぁそれが君の生き方なら、貫き通してみればいい
   ・・・ところで君のお父さんの最後の言葉はなんだったんだい?」

とがめ「僕は君のことが大好きだった、だ・・・
    こっちはこんなに苦手に思っておったのに」

―――

七花「やったな、とがめ」

とがめ「あぁ
    二度とあの仙人には会いたくないがな」

七花「相変わらず苦手なんだな・・・」

とがめ「まぁ、何はともあれこれで三本目だ
    刀集めは順調に進んでいるぞ」

???「そこの二人、少し待たれよ」

七花「!?」

とがめ「お前は・・・」

鳳凰「仕事は何度か請け負っていたが、こうして会うのは始めてだな
   とがめ殿、いや奇策師殿」

とがめ「真庭鳳凰か・・・」

七花「(本当なら薩摩で会うはずだったのに・・・
    どうやら歴史が変わってるみたいだな)」

鳳凰「一つ私の話を聞いて欲しいのだが」

とがめ「・・・いいだろう」

―――

とがめ「私たちは死霊山の悪刀、蝦夷の双刀を狙う
    お前たちは他の刀から集めろ」

鳳凰「同盟成立か」

とがめ「同盟ではない
    一時休戦だ」

鳳凰「どちらにせよ同じことだ、感謝する
   ・・・あぁそうだ、お礼に他の刀の場所を教えよう」

とがめ「貴様らが掴んでいるのは出羽の天童だろ?」

鳳凰「! ・・・知っていたか
   さすがは奇策師殿だ」

とがめ「ふんっ、まあな」

七花「(教えたのは俺なんだけどな・・・)」

鳳凰「では我はこれで・・・
   いやまて、大切なことを伝え忘れていた」

とがめ「ん?」

鳳凰「蝙蝠を見逃してくれて感謝する」

七花「あぁ、あいつお前らのところに戻っていたのか」

鳳凰「礼と言っては何だが
   ある程度までの頼みは聞く気だ」

とがめ「なら集めた完成形変体刀をよこせ」

鳳凰「それは無理な話だ
   そんなことをするくらいなら蝙蝠を殺そう」

とがめ「ちっ・・・
    まぁ他の案を考えておこう」

鳳凰「それでは我はこれで」

とがめ「待て、鳳凰」

鳳凰「ん?」

とがめ「・・・真庭忍軍の中に私の隣にいる鑢七花の姉、
    鑢七実を人質に取ろうとしたやつがいるか?」

鳳凰「・・・」

とがめ「無言は肯定と受け取るぞ」

鳳凰「・・・同盟は破棄か?」

とがめ「いや、破棄しなくていい・・・
    確認したかっただけだ」

鳳凰「そうか、それはありがたい」

七花「(姉ちゃんが忍法足軽を取得して、
    本土に来るのは避けられないみたいだな・・・)」

鳳凰「それでは」

七花「なぁ、あんた」

鳳凰「ん? 今度はなんだ?」

七花「あんたらが刀を集めてるのは困窮した里を救うためだよな?
   ・・・変体刀を集める以外の道はないのか?」

鳳凰「里を救うには国を買えるほどの金を手に入れなければならぬ
   そのためには変体刀を集めるしかあるまい」

七花「他の方法で、地道にこつこつ稼ぐって訳にはいかないか?」

鳳凰「そんな悠長なことをしている間に里が滅びてしまう」

七花「そうか・・・
   だけどこのまま刀を集め続けると、あんたたち全滅すると思うぞ」

鳳凰「ほう・・・
   我らも舐められたものだな」

七花「・・・悪かった
   今の言葉は忘れてくれ」

―――

とがめ「行ったな、真庭鳳凰」

七花「・・・」

とがめ「さて、次は悪刀だ
    それさえ回収してしまえば、そなたが言っていた最悪の事態は避けられる」

七花「あぁ」

とがめ「その後は蝦夷の踊山にてやつを待ち受ける
    ・・・覚悟はいいな?」

七花「もちろん」

今日の投稿は以上です。
次の投稿は早ければ週明けにでも
次回、最強のあの人登場

書きあがってきたので少しづつ更新

―――丹後 不承島―――

 数週間前


蝶々「ようやく島に着いたぜ
   ・・・で、どっちがその女の拉致を担当するんだ?」

蟷螂「いや、ここは三人でいくぞ」

蝶々「え?」

蟷螂「奇策士と虚刀流は蝙蝠殿を見逃してくれただろう?
   その恩があるから、人質にするとはいえできるだけ傷付けたくない・・・
   安全に捕らえるため、三人がかりでいくぞ」

蜜蜂「そうですね・・・卑怯卑劣が売りの忍者でも恩は忘れませんから」

蝶々「虫組の指揮官はあんただから判断は任せるけど、
   俺はここまでくるのに疲れたから半時ほど休ませてくれ」

―――

蟷螂「・・・あの女か」

蜜蜂「綺麗な人ですね」

蝶々「見とれてんじゃねえよ」

蟷螂「蜜蜂、我々があの女の注意を引くから、
   お前は遠距離から巻菱指弾を当てろ」

蜜蜂「分かりました」

蝶々「それじゃあ行くか」

―――

七実「七花・・・今頃どうしてるのかしら?
   父さんが死んで、七花が出て行って、本当に私一人なのね・・・」

蟷螂「そこの女」

七実「あら、どなた?」

蝶々「俺たちは真庭忍軍の忍だ」

蟷螂「悪いが人質になってもらう
   抵抗せぬなら傷はつけん」

七実「・・・へぇ
   忍者なのに紳士的なんですね」

蟷螂「お前に恨みはないからな
   それにお前の弟は我々の仲間を見逃してくれた」

七実「ふふ・・・
   甘いですね」

蝶々「おとなしく捕まる気はないのか?」

七実「ええ、もちろん」

蟷螂「なら仕方がない
   少々痛い目にあってもらう」

―――

七実「この程度ですか?」

蟷螂「まさかこれほどまでとは・・・」

蜜蜂「巻菱指弾を当てる隙が全然見つからない・・・」

蝶々「化け物め・・・」

蟷螂「逃げるぞ
   こやつには、我ら全員で挑んでも勝てん」

七実「あら? 逃がすとでも?」

蝶々「俺の忍法足軽を使えば、いくらあんたでも追いつけねえよ」

七実「忍法足軽とはこれのことですか?」

蝶々「!? お前俺の技を・・・」

蟷螂「信じられん・・・
   まさかあの短時間で忍法を会得するとは・・・」

蝶々「くそっ、逃げるぞ!
   早く俺に捕まれ!」

七実「ふふ・・・鬼ごっこの始まりね」

――――海上―――――

七実「・・・結構走ってるのに追いつかないわね
   あっちは二人も抱えてるのに」

蝶々「はぁ・・・はぁ・・・」

七実「あぁ、そうだったわ
   重さを無しにするから、実質誰も抱えてないのに等しいのね」

蝶々「くそ、まだ追ってきやがる・・・」

七実「・・・!
   私の体力ではここまでが限界ね・・・」

蜜蜂「!? 蝶々さん、あの人追跡をやめましたよ!」

蟷螂「油断するな、罠かもしれん!」

蝶々「どっちにしろ陸地に着くまで休む気はねえよ・・・」

――――陸地―――――

蝶々「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

蜜蜂「良かった・・・なんとか逃げ切れましたね」

蟷螂「奴はどうして追跡をやめたのだろうな?」

蜜蜂「僕が見た感じでは疲れていたようでしたけど」

蝶々「あんな化け物が疲れを感じるのかよ・・・」

蟷螂「何はともあれ、三人とも無事で良かった
   ・・・最初から全員で戦っていて正解だったな
   もし一人ずつ戦っていたらと思うと、ぞっとする」

蝶々「まったくだ・・・
   間違いなく皆殺しだったろうな」

――――

七実「あーあ、見逃しちゃった・・・
   でもいいわ、便利な技を教えてもらったし」



・・・それにしても七花ったら、まだ三本しか刀を集めてないなんて情けないわね
やっぱり私も混ぜてもらおうかしら、刀集め

―――蝦夷 踊山―――

七花「・・・待ってたよ、姉ちゃん」

七実「あら、七花?・・・
   どうしてこんな雪山に?」

七花「言っただろ? またなって」

七実「・・・もしかして、私がここに来るのを知っていたの?」

七花「多少歴史が変わってるみたいから、きちんと来てくれるか心配だったけどな」

七実「歴史?」

七花「姉ちゃん・・・
   俺は未来から戻ってきたんだ」


七実「・・・外に出て変な妄想癖でも身につけたの?」

七花「妄想なんかじゃねえ
   姉ちゃんがまにわにと戦ったことや、
   この後死霊山に行って悪刀を手に入れようとすることも知ってる
   ・・・まぁ、悪刀はもう俺たちが手に入れちまったけどな」

七実「へぇ・・・
   じゃあ私がどうしてそんなことをしたか知ってるの?」

七花「俺に殺されるためだろ?」

七実「・・・・・・
   まぁいいわ、とりあえずその話信じてあげる
   それを踏まえた上で、どうして待ち伏せを?」

七花「姉ちゃんを生け捕りにしにきた」

七実「・・・ふふ
   おもしろい冗談を言えるようになったわね、七花」

七花「冗談なんかじゃねぇ
   手足を何本かもぎとってでも、生け捕りにする」

七実「随分と大きな口を叩くようになったわね
   そんなことができるとでも?」

七花「昔の俺なら無理だったろうけど、今の俺ならできると思う」

七実「ふぅん・・・
   それで、どうして私を生け捕りにしたいの?」

七花「姉ちゃんに生きていてほしいからに決まってるだろ」

七実「・・・」

七花「姉ちゃんは死にたかったのかもしれねえけど、
   俺は生きていてほしかった・・・
   たった一人の家族を失いたくなんかなかった」

七実「たった一人の家族だからこそ、
   私はあなたに殺してほしいのだけど」

七花「断る」

七実「・・・口で言っても無駄みたいね
   じゃあこうしましょう」

七花「?」

七実「これから戦って、私が負けたら生きていてあげる
   でも、私が勝ったら殺してちょうだい」

七花「・・・勝ち負けはどうやって決める?」

七実「相手を殺した方が勝ちでいいじゃない」

七花「馬鹿にしてんのか
   それじゃあ俺が勝っても意味ないだろ」

七実「ふふ、冗談よ
   ・・・一歩も動けなくなった方が負けっていうのはどう?」

七花「・・・分かった」

七実「それじゃあ行くわよ
   生け捕りなんて無理だってこと、直接体に教えてあげるわ」

――――

七実「へぇ・・・
   確かに以前戦ったときよりは強くなったわね、見直したわ」

七花「(俺はとがめが死んでからもずっと必死に修行をしてたんだよ・・・
    とがめを守れなかった弱い自分を許せなかったから・・・)」

七実「でも、そんなの無駄よ
   見稽古を使えば、あなたの強さはそのまま私に反映するから」

七花「・・・」

七実「それに・・・
   多少は強くなっても、やっぱりあなたは私よりも全然弱い」

七花「くっ・・・」

七実「いいわ、最後に見せてあげましょう
   ・・・私の本気を」

―――

七花「ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

七実「意外としぶといわね」

七花「もう後悔したくないんだよ・・・」

七実「そう、でもそろそろ終わらせてあげる
   ・・・!? 体が動かない?」

七花「ようやく体力切れになったみたいだな・・・
   どうして俺がこんな雪山で待ち伏せしてたと思う?」

七実「まさか・・・」

七花「そうだ、この気温、この吹雪・・・
   姉ちゃんの体力じゃ長時間戦うことはできない
   悪刀でもあれば話は別だったろうけど」

七実「くっ・・・」

七花「俺は結構前に来て、この寒さに体を馴らしていたからもったけどな
   まぁ、この策を練ったのはとがめだけど
   ・・・勝負はついたな」

七実「こんなの勝負じゃないわ・・・
   ただの持久力比べじゃない・・・」

七花「先に一歩も動けなくなったほうが負けって言ったのは姉ちゃんだろ?」

七実「屁理屈を・・・」

七花「とにかく姉ちゃんには生きてもらう」

七実「・・・こうなったら仕方がないわね
   とがめさんを狙うわ」

七花「!?」

七実「例え手足がなくなっても、私ならか弱い女を一人殺すくらいならできるわよ?
   それが嫌なら私を殺すのね」

七花「なんでだよ!
   どうしてそうまでして死にたがるんだよ!?」

七花「・・・七花、あなた想像できる?
   毎日身を引き裂かれる痛みを味わう生活を」

七花「・・・」

七実「想像できる?
   見るだけで全てを吸収できるが故に、何の努力も許されない生活を」

七花「・・・」

七実「そして・・・
   母にも父にも生を望まれない生活を」

七花「姉ちゃん・・・」

七実「七花・・・私は生まれてくるべきではなかったのよ」

やってしまった・・・
>>151
の最後は七花ではなく、七実です

七花「・・・頼むから・・・そんなこと言うなよ」

七実「あら?・・・
   泣いてるの、七花?」

七花「お願いだから生きてくれよ、姉ちゃん!」

七実「・・・」

七花「体中が痛みに襲われるっていうのなら、
   俺が日本中回って薬でも何でも見つけてやるよ!
   努力できないのが辛いなら、
   見ただけじゃ真似っこできないものを見つけてそれに打ち込めばいい!」

七実「・・・」

七花「・・・親父やお袋が姉ちゃんのことをどう思っていたのかは知らねえよ
   でも、俺は姉ちゃんのことが大好きなんだよ・・・」

七実「七花・・・」

七花「生きていればきっといつかいいことがあるよ・・・
   だから頼む・・・俺のためにも生きてくれ・・・」

七実「・・・・・・
   はぁ・・・
   やっぱり私は弟には甘いようね」

七花「・・・姉ちゃん?」

七実「いいわ、もうしばらく生きていてあげる
   どうせ私は長生きできないと思うけど」

七花「! 本当か姉ちゃん!?」

七実「ええ・・・
   でも、寿命が来たら殺してちょうだい」

七花「え・・・」

七実「七花・・・
   私はね、刀として・・・
   鑢家の人間として死にたいの」

七花「・・・」

七実「いつになるか分からないけど、寿命が近づいたらまた会いに来るわ
   そのときは私を殺して
   ・・・それだけが唯一のお願い」

七花「・・・どうしても、か?」

七実「ええ、どうしても」

七花「・・・分かったよ
   どうせ寿命なら・・・
   病で苦しみながら死ぬくらいなら、俺が姉ちゃんを楽にしよう」

七実「ありがとう、七花」

―――

七花「姉ちゃん、歩けるか?」

七実「ええ、とりあえずは体力が回復したわ」

七花「そうか、良かった」

七実「はぁ、結局骨折り損だったわ
   それじゃあ私は島に戻るから」

七花「・・・いや、悪いんだけど姉ちゃん
   ちょっとこの山にある村まで一緒に来てくれ」

――――凍空一族の村―――――

 数時間後


七実「なるほど・・・
   私の見稽古で村人の怪力を真似ろと」

とがめ「うむ
    忍法足軽を使っても問題ないが」

七実「そして双刀を盗んで私に運ばせる・・・
   そこまで考えて私を生かしていたのね」

とがめ「別に嫌なら断ってもよいぞ?」

七実「いいわ、やってあげる」

七花「悪いな、姉ちゃん
   ・・・でも、凍空一族には飯やら寝床やら世話になってるのに、
   双刀を盗むのは気が引けるな」

とがめ「仕方がないだろう・・・
    譲ってくれる気は無いようだし、まともに戦うのも得策ではない
    ・・・ん?
    なんだか村の様子が騒がしいぞ」

―――

狂犬「ぐっ・・・」

凍空一族村人A「こいついきなり双刀を盗もうとしやがったから、
       一発殴っちまったよ・・・」

凍空一族村人B「どこのどいつだ、一体?」

こなゆき「・・・大丈夫ですか?」

凍空一族村人A「こら、危ないから子供は下がってろ」

とがめ「・・・どうやらあの真庭狂犬が双刀を盗もうとしたみたいだな」

七花「そういえばいたなぁ、あんなまにわにも」

七実「あれも忍者かしら?」

とがめ「うむ
    真庭忍軍十二頭領が一人、真庭狂犬だ」

七花「確かに過去ではここに来たな、あいつ」

こなゆき「立てますか?」

凍空一族村人B「こら、近寄っちゃいかん」

狂犬「しめた!
   忍法狂犬発動!」

こなゆき「!?」

凍空一族村人A「な、なんだ?
        あの女の体が灰みたいになって消えたぞ?」

こなゆき「えぇ、代わりにこの子の体をいただいたけどね」

凍空一族村人B「!?」

七実「あれは?」

とがめ「狂犬の忍法だ
    あやつは他人の体を乗っ取れるんだよ
    使用できる相手は女だけだが」

七実「へぇ・・・」

七花「ちょっとこなゆきを助けてくる」

―――

こなゆき(狂犬)「さぁ、この子を生きて返してほしかったら、
         双刀をこっちに寄越すのね!」

凍空一族村人A「くっ・・・」

七花「こなゆきの体を返してもらおうか」

こなゆき(狂犬)「あら・・・
         あんた虚刀流ちゃんじゃない
         ようやく見つけたわ」

七花「こなゆきの体から消えろ」

こなゆき(狂犬)「それはできないわね」

七花「・・・本望じゃないが、もう一度倒すか」

こなゆき(狂犬)「もう一度?
         何だかしらないけど、やろうっていうなら臨むところよ
         この一族の体ならあんたにも負けないし、白鷺と喰鮫の仇もあるからね」

七花「だからあれは俺じゃねえって・・・
   ていうか、あいつらまた死んじまったのか」

―――

七花「虚刀流、飛花落葉!」

こなゆき(狂犬)「がっ!!」

七花「・・・終わったな」

凍空一族村人A「!? お前よくも村の子供を!」

凍空一族村人B「許さねぇ・・・」

七花「落ち着けよ
   俺が攻撃したのは刺青だけだよ
   こなゆきは死んでない」

凍空一族村人A「本当か!?」

七花「本当だ
   とにかくこなゆきを休ませられる場所に運ぼう」

―――

 翌日


とがめ「良かったな七花
    こなゆきを助けたら快く双刀を譲ってくれたぞ」

七花「あぁ
   でも一番良かったのは、これからもこなゆきが家族と一緒に暮らせるってことだな」

とがめ「・・・そうだな」

七花「ところで姉ちゃんはこれからどうするんだ?」

七花「まずは双刀を尾張まで届けるわ
   その後は島に戻ろうと思うけど・・・、
   その前にしばらく一人で本土を観光してみるのも悪くないわね」

七花「そうか
   無意味な殺生はやめてくれよ?」

七実「・・・本当に甘くなったわね
   誰のせいかしら?」

とがめ「・・・」

七実「まぁいいわ、草むしり・・・
   じゃなくて人殺しは控えましょう」

七花「姉ちゃん・・・
   俺、刀探しをしながら姉ちゃんの病気に効く薬を探してみるよ
   寿命が来たら楽にするとは言ったけど、やっぱり俺は姉ちゃんには少しでも長生きしてほしい」

七実「いえ、その必要はないわ
   薬がなくても治る方法を見つけたから」

七花「え?」

七実「七花、あなた生きていればいいことあるって言ったけど、本当にそうだったわ
   いいものを見れた」

七花「・・・いいもの?」

七実「ええ・・・
   また会いましょう」

七花「・・・・・・
   行っちまった・・・
   いいものって何のことだったんだ?」

>>168は酉が消えてますが、1が投稿しました

―――

鳳凰「ようやく追いついたか・・・」

七花「! お前は・・・」

とがめ「真庭鳳凰・・・」

鳳凰「・・・そなたらへ謝罪しに来た」

とがめ「謝罪?」

鳳凰「狂犬がそなたらを襲っただろう? その謝罪だ
   同盟を破棄して欲しくないのだよ」

とがめ「で、お詫びに連れてきた真庭川獺を殺すと?」

川獺「・・・」

鳳凰「ほう・・・察しがいいな
   ならば早速・・・」

とがめ「待て、殺さなくともよい
    その代わり、川獺の忍法は刀集めで使うな」

鳳凰「それは構わぬが・・・
   よいのか? 川獺を生かしておいて」

とがめ「忍法を使わぬと約束すればな」

川獺「・・・へぇ、忍者を信じると?」

とがめ「あぁ、信じてやる」

鳳凰「・・・我らはそなたを裏切ったのだぞ?
   しかも、そこの虚刀流の姉を人質に取ろうとした」

七花「・・・」

鳳凰「それでも我らを信じると?」

とがめ「何度も言わすな
    信じてやるからとっとと帰れ」

鳳凰「・・・感謝する」

川獺「ありがとうな
   この恩は忘れねえぜ」

とがめ「(どうせ川獺が死んだところで、鳳凰が川獺の忍法を会得するだけらしいからな・・・
     それなら恩を売っておくのが賢明だろう)」

―――

七花「・・・なんかいろいろあって疲れたな」

とがめ「次の回収目標は出羽の王刀だ
    そこでは別に激しい戦いをする必要無いのだろう?」

七花「・・・あそこはあそこで疲れるんだよ」

~小ネタ 百合語~


七花「なぁ、とがめ」

とがめ「ん? なんだ?」

七花「もしも虚刀流が姉ちゃん一人しかいなかったら、どうするつもりだったんだ?
   一体どうなっていたんだ?」

とがめ「どうなっていた・・・か」

―――

とがめ「愛で動く人間は信用できる
    ・・・鑢七実、私に惚れていいぞ」




七実「私はあなたに惚れることにしたわ」




七実「とがめ、ちょっとまずいかもしれないわ」

とがめ「何がまずいのだ?」

七実「その作戦は私が刀剣使いの素人が前提であることに考えられているのよね?
   十日前ならいざ知らず、私は達人である汽口から直々にずっと教えを受けていたのよ・・・
   私はもう素人とは呼べないんじゃないかしら?」

とがめ「よし、分かった
    ・・・ちゅぅ」

七実「!!」

とがめ「そなたといるときの安らぎが私には必要なのだ
    ・・・鑢七実、私にはそなたの腹心になってほしい」




とがめ「虚刀流七代目当主、鑢七実・・・最後の命令だ
    私のことは忘れて、これまでの何もかもを忘れて好きなように生きろ・・・
    そなたとの契約は私の死をもって終了とする
    そなたはもう私に惚れずともよい」

七実「ふざけないでよ!
   あなたといることが私の好きなことだったのに・・・
   私はあなたが本当に好きだったのに!
   これからどうすればいいのよ・・・
   あなたがいなきゃ、私は何にもできない!」

とがめ「本当にかわいいやつだ・・・
    なあ、七実
    私は 自分勝手で自己中心的で復讐のこと以外は何も考えることができず、
    死ななければ直らないようなバカで、そなたを散々道具扱いしたひどい・・・
    何の救いもないような死んで当然の女だけれど・・・
    ・・・それでも私はそなたに惚れてもよいか?」




七実「最後の最後まで自分勝手にね、私に好きに生きろとか言ったの
   本当に我侭でなんて言うんでしょうね、ああいうのは
   でも仕方ないのよ、私はそういうとがめのことが好きになったんだから」

―――

とがめ「とまぁ、こんな感じになっていただろうな」

七花「なる訳ねえだろ」


~終わり~

キマシ・・・
今日は休みが取れたので、大分更新することができました
次回の投稿は来週あたりを予定しています

やってもうた・・・
>>169
の中央あたりの七花も七実と間違いました
もう書くのやだ・・・この兄弟

百合語の人気に嫉妬
休みが取れたので更新
ちなみにネタも余裕もやる気も無いので百合語は書きません
このスレを見ている誰かが書いてくれると信じてる

―――出羽 天童―――

とがめ「次はここの王刀だな」

七花「正直刀集めはここが一番面倒だった気もするな・・・」

―――道場―――

慚愧「・・・参りました
   将棋の勝負は私の負けです」

とがめ「うむ
    では約束どおりここにいる鑢七花と王刀鋸をかけて勝負してもらおうか」

慚愧「はい」

―――

慚愧「人を馬鹿にするのも大概にしていただきたい!
   剣士が刀無しで戦えるわけないでしょう!」

七花「いや、だから・・・」

慚愧「それとも私に防具を付けず、刀も持たぬものに剣を振るえというのですか!?
   これこそ心王一鞘流を侮辱にしている!」

七花「・・・やっぱりこうなるのか」

―――

とがめ「案の定ぼこぼこにやられたな」

七花「はぁ・・・また慚愧の道場に通うことになるのか
   まぁ、それも悪くないかな」

>>197
で七花が汽口のことを慚愧と呼んでますが、1のミスです
決して浮気をした訳ではありません

―――

 数日後


慚愧「私にも別の人生があったかもと、考えない日はありません
   ・・・恋に生きる人生もあったでしょう」

七花「・・・」

慚愧「とがめ殿と七花殿をみていると、
   そういった諦めていた感情が湧き上がるのを抑えられません」

七花「別に抑えなくたっていいんじゃないか?」

慚愧「え?」

七花「別に恋に生きたら剣の道を捨てなきゃいけないってわけでもないだろ?
   剣の修行をしながら恋人でも見つければいいさ
   将棋が好きならそれも続ければいい」

慚愧「・・・あれこれと手を出していては、
   一つの道を極めることはできないのでは?」

七花「俺はそうだとは思わない
   むしろ俺はとがめと一緒にいることを選んだからこそ、
   強くなれたんだと思う」

慚愧「・・・どうして?」

七花「とがめと一緒に旅をしたから、多くの経験を得ることができた・・・
   とがめのためだったからこそ、強くなろうと思えた・・・
   まぁ結局それは俺自身のためだったんだけどさ」

慚愧「・・・」

七花「色々な道を生きるからこそ、見えてくるものっていうのもあるんじゃねえかな
   もちろん、ただ一つの道を極めるのが間違いだとは言わない
   あれやこれやと手を出して、中途半端に終わるのも問題だと思うしな」

慚愧「・・・」

七花「・・・なんか長々としゃべっちまったけど、
   結局俺は自分が生きたいように生きればいいって言いたかっただけだよ」

慚愧「ふふっ・・・
   そんなことを言われたら迷ってしまいますね」

七花「・・・ところでさ、汽口
   なんか一気に物を忘れる方法を知らないか?」

慚愧「ん? そうですね・・・
   私なら忘れるというよりも、他のもので頭を埋め尽くしますね
   例えば将棋の棋譜などで」

七花「・・・なるほど
   俺も試してみよう」

慚愧「どうしてそんなことを聞くのですか?」

七花「いや・・・その・・・」

慚愧「大丈夫ですか?
   顔が赤いですよ」

―――

 数日後


慚愧「・・・参りました
   御見それしました、七花殿
   知らなかったとはいえ、
   あなたのような使い手を私ごときの門下生として扱った無礼、お許しください」

七花「謝るなよ
   あんたの剣は何も間違っちゃいないんだから」

慚愧「約束通り、王刀鋸はお渡しします
   ・・・私はこの刀から既に十分な力を得ました
   天下国家のために使うなり、折って捨てるなりなんなりと」

とがめ「(折るわけないだろ・・・)」

慚愧「・・・七花殿
   色々考えましたが、私はこれからも心王一鞘流の看板を背負い続けようと思います」

七花「うん、あんたならそう言うと思ったよ」

慚愧「また、いつでもいらしてください」

―――

とがめ「さて・・・
    このまま尾張に戻るとするか」

七花「そうだな
   そろそろ否定姫の様子も見ておきたいし」

とがめ「けっ、汽口の次はあの女か
    この浮気性め」

七花「・・・なんなんだこの言われよう」

とがめ「覚えがないとは言わせぬぞ
    膝つき合わせて食事して、何度も体を触り合いおって」

七花「見てたのかよ・・・
   ていうか全部稽古のためにやってたことじゃねえか」

とがめ「はんっ、どうだか・・・
    大体そなた、本当に私に惚れておるのか?」

七花「あんたに惚れてるから、こんな面倒な刀集めに付き合ってるんだろ」

とがめ「・・・そなた、何故私に惚れたのだ?」

七花「ん?」

とがめ「私は未来から戻ってきたわけではないから、分からぬのだ・・・
    どのような過程を経て、そなたが私に惚れたのかを」

七花「別に大したことはねえよ
   一緒に旅してるうちに、気がついたらずっと傍にいたいと思うようになっただけだ」

とがめ「!!」

七花「とがめと一緒にいることが俺の好きなことなんだ
   ・・・彼我木輪廻はそれは愛でも恋でもないって言ってたけど、
   俺はとがめのために生きて、とがめと一緒にいられればそれでいい」

とがめ「・・・」

七花「とまぁ、こんな感じの答えでいいか?」

とがめ「・・・」

七花「ん? どうしたとがめ?
   顔が真っ赤だぞ?」

とがめ「うるさい」

七花「・・・・・・
   はぁ、結局機嫌は直らず終いか」



・・・でも、誰かのために何かをするなんて人にも刀にもできないんだよな
俺が自分のためにやっていることが、結果的にとがめのためにもなっている
ただそれだけだ


~小ネタ 中二語~


とがめ「鑢七花・・・
    私に惚れてもよいぞ」



迷彩「ならば君は一体何のために戦う?」



こなゆき「うちっちビックリ!」



七実「花のように散らしてあげる」



慚愧「私が看板です・・・
   看板娘ですっ!」



否定姫「そう、私こそ・・・
    例外なくすべてを否定する、否定姫」



―――

七花「なんで俺が出会う女は痛い人ばかりなんだろうな」

とがめ「お前ら男も変わらんだろうが」

    
   
~小ネタ 終わり~    

作者、200レス台でようやく申し訳程度の恋愛要素を書くに至る
続きは寝て起きたら書く予定です

―――尾張―――

とがめ「さて、尾張まで戻ってきたが・・・
    まだ帰っておらぬようだな、あの女」

七花「まだ一年経ってないからな・・・
   でもおかしいな」

とがめ「ん、何がだ?」

七花「俺がいた未来では、否定姫は今頃ここにいたはずなんだ
   何故かは知らないけど、歴史が変わっちまってる」

とがめ「・・・やはりあの女も未来から戻ってきたのではないのか?
    奴にも何かしら変えたい歴史があるのかもしれん・・・
    そのために動いているのでは?」

七花「どうなんだろうな・・・
   会ってみねえと分からねえけど」

とがめ「ともかく刀集めを続けるか
    ・・・次は因幡の下酷城だ」

―――因幡―――

七花「相変わらずここは見渡す限りの砂地だな・・・」

とがめ「・・・」

七花「ん? とがめ、何を書いているんだ?」

とがめ「刀を手に入れた経緯を報告書にして提出せねばならんのだ
    あと、本にして売るのも悪くない」

七花「そういえばそんなことを言っていたな」

とがめ「それより七花、あれを見てみろ」

七花「ん? ・・・あれは骨か?」

とがめ「おそらく宇練銀閣が斬った者の亡骸だろう」

七花「・・・あれは多分まにわになんだろうな」

―――下酷城―――

とがめ「・・・宇練銀閣だな?」

銀閣「・・・うるせぇな
   何の用だ?」

とがめ「私は幕府の使いだ
    ・・・そなたが持っている斬刀鈍を譲ってくれぬか?」

銀閣「・・・」

とがめ「もちろんただとは言わん
    幕府としてできることはさせてもらおう」

銀閣「・・・この因幡を元通りにしてくれたら、くれてやるよ」

とがめ「それは無理だ
    鳥取藩はもう存在しないし、砂漠化した土地を元に戻すこともできん」

銀閣「そうか・・・なら諦めな」

とがめ「・・・はぁ、やはりそなたが言っていたとおりだな
    後は頼んだ、七花」

七花「了解」

―――

銀閣「くっ・・・天井から強襲とはな・・・」

七花「勝敗はついたな
   じゃあもらっていくぜ、この刀」

銀閣「・・・どうしてとどめをささねぇ?」

七花「あんたを二度も殺したくなかっただけだよ」

銀閣「二度?
   なんだか知らねえが、その刀を失った俺に生きる意味はねぇ
   ・・・殺せよ」

七花「いやだ」

銀閣「俺にはもう何も残ってねえんだよ・・・
   守りたかったものは全部なくなっちまった」

七花「ないなら探せばいいじゃねえか
   こんな城に閉じこもってないで」

銀閣「・・・」

七花「俺はずっと孤島にいてさ
   その頃は虚刀流と姉ちゃんくらいしか守るものがなかった
   でも外の世界に出てみて、他にも守る価値があるものを見つけたんだ
   ・・・あんたも旅に出て見つけたらどうだ?」

銀閣「そんなに簡単に取り替えられるもんじゃねえ・・・
   かけがえがないものってのが世の中にはあるんだよ」

七花「そうか・・・
   でも、俺はあんたを殺さない
   死にたいのなら自分で勝手に死んでくれ
   まぁ、斬った腕の止血をしなきゃ死ねるだろうけどさ」

銀閣「・・・」

七花「じゃあな」

―――宿―――

七花「宇練銀閣、今頃どうしてるかな」

とがめ「・・・」

七花「死んだのか・・・それとも生きてるのか」

とがめ「・・・」

七花「とがめはどっちだと思う?」

とがめ「・・・」

七花「とがめ?」

とがめ「うるさい馬鹿者!
    人を踏み台にしおって!」

七花「あ・・・」

とがめ「何が俺の後ろにいてくれだ!
    思わせぶりに言った癖に、あんなことに利用しおって!」

七花「いや、でも仕方がないじゃないか
   天井に飛び移るには、ああするしかなかったんだよ
   悪かったって・・・」

とがめ「ふんっ・・・
    まぁ無事に刀を回収できたから今回は許そう」

七花「恩に着るよ、はは・・・」

とがめ「・・・そういえばそなた、まだ斬刀の刀身を見ておらぬだろ?
    今見てみるか?」

七花「いや、いい」

とがめ「ん? そうか」

七花「(今回こそいけると思ったけど・・・
    結局目で捉えることはできなかったな、あの居合い斬り)」

とがめ「さて、次は出雲大山の三途神社に行くぞ
    回収目標は千刀だ」

七花「千刀・・・敦賀迷彩か」

~小ネタ 刀語フレンド(仮)~


― 俺はあんたに惚れることにしたよ ―

鑢 七花 cv.細谷○正


― 私に惚れてもいい・・・甘酢っぱいねえ、俺もそう言ってほしかったねえ ―

真庭 蝙蝠 cv.鈴木○尋


― 声が小さ過ぎてよく聞こえねえなあ・・・もうちょっと近づいてきてくれねえか? ―

宇練 銀閣 cv.宮本○


― 拙者にときめいてもらうでござる ―

錆 白兵 cv.緑川○


― 一目惚れだ、俺の女になれ ―

校倉 必 cv.小山○志


― 話を聞いてくれるだけでいい・・・そなたが話を聞いてくれるなら、我はこの左腕を切り落としても構わない ―

真庭 鳳凰 cv.置鮎○太郎


― 私は戦うときは姫様・・・あなただけの意思で戦いたい ―

左右田 右衛門左衛門 cv.小山○也


―――

とがめ「(仮)を外すのは、あなた次第!」

七花「うるせえよ」


~小ネタ 終わり~

あのBGMと一緒にセリフを脳内再生できたら、あなたも一人前
ちなみに作者は○mebaの回し者ではありません

次回の投稿は週末を予定しています

―――三途神社―――
 
迷彩「聞いたよ、うちの巫女たちを手伝ってくれたんだって?
   礼を言うよ」

七花「気にするなよ」

迷彩「・・・完成形変体刀は彼女たちにとって必要なものなんだよ
   いや、必要悪かもしれないが」

七花「・・・」

迷彩「彼女たちは皆、被害者なのだよ
   昔男どもにひどい目に遭わされて、精神が崩壊してしまった」

七花「そうか・・・」

迷彩「そして捨てられるのさ
   その後捨てられた場所から拾ってきたのが千人の巫女だ
   ・・・これで君を怖がる理由も分かっただろう?」

七花「ああ」

迷彩「ついでにもう一つ分かっただろ
   変体刀の毒を薬として使っていることを・・・
   刀の毒は彼女たちの壊された心を立て直すのに一役買ってくれるはずだ」

七花「そんな風にあの刀を使ったのはあんただけだろうな」

迷彩「そうだろうね
   しかし、七年間見てきた身から言わせると、それなりに効果はあるみたいだよ
   刃物という強さを持つことで、女は男と対等になれるからね」

七花「・・・」

迷彩「心の傷のせいで眠ることさえままならない者たちだが、
   それでも千刀を帯刀することで、何とか自我を保っている
   ・・・彼女たちにとって千刀は心の拠り所だ
   だから私は千刀を失うわけにはいかない
   一人でも多くの女を救うために、君が持っている変体刀をもらっていくよ」

七花「・・・今の俺ならあんたの気持ちも分かる気がするよ
   確かにあの子たちは救ってやるべきだし、救ってやりたいと思う」

迷彩「そうだろう?」

七花「でも、刀の毒であの子たちを救うってことは、
   あの子たちは刀を手放せなくなってしまうだろ
   ・・・それはやっぱり毒でしかないんじゃないか?」

迷彩「・・・ははっ、驚いた
   私と全く同じ考えだ」

七花「(そりゃあ、あんたが俺にそう言ったからな)」

迷彩「確かに千刀を持っていても、起こるのはいいことばかりではない
   ついこの前も真庭忍軍とかいうのが襲ってきたからな」

七花「(そういえば過去では喰鮫ってのがここに来たな)」

迷彩「だが、刀を手放せなくなったとしても、
   死んでしまうよりはマシだろう?」

七花「どうだろうな・・・
   とにかく説得しようとしても無駄だぜ?
   俺は結局とがめが望んだように動くだけだからな」

迷彩「・・・そうかい」

―――

 翌日


迷彩「千刀を入手しても、君たちは尾張まで運ぶ手段を思いついてないだろう?
   もしも私が勝負に負けたら、巫女たち全員に千刀を運ぶように指示してある」

七花「・・・」

迷彩「その代わりと言ってはなんだが、三途神社と巫女たちの行く末を幕府で保障してほしい
   ・・・私の跡継ぎは分かるよな?」

七花「ああ」

迷彩「ただ、あの子もまだ万全に回復したわけじゃない
   誰か、人の心に関する教養と優しさを持つ人間を幕府から派遣してくれ」

七花「・・・」

迷彩「もちろん私は負ける気は無いよ
   ・・・ただ、矛盾してるようだが負けてもいいと思っている
   やはり刀の毒で彼女たちを救うのは間違ってる」

七花「だから俺たちみたいなのに止めてほしかったんだろ?」

迷彩「ははっ、察しがいいね」

七花「・・・虚刀流七代目当首、鑢七花だ
   こいよ」

迷彩「出雲大山三途神社・・・
   いや、千刀流十二代目当首、敦賀迷彩だ
   行くぞ!」

―――

迷彩「・・・どうして手を抜いた?」

七花「手を抜いてなんかねえよ
   全力で殺さないように戦った」

迷彩「・・・何故私を生かした?」

七花「何が人の心に関する教養と優しさを持つ人間を幕府から派遣してくれ、だ
   跡継ぎの面倒くらい自分で見ろよ」

迷彩「・・・」

七花「・・・刀の毒であの子たちを救うのが間違っているのなら、他の方法を見つけろよ
   あんたならきっとできるさ」

迷彩「それはどうだろうねぇ・・・
   まぁ、やるだけやってみるのも悪くないね」

―――

とがめ「でかしたぞ、七花」

七花「これで千刀も回収したな」

とがめ「ああ・・・
    だが次は一筋縄ではいかん相手だぞ?」

七花「よく知ってるよ」

今日の更新は一旦ここまで
続きは明日に書くと思います

次回、薄刀針!
乞うご期待!!

乞うご期待と言ったな
予想はついていただろうが、あれも嘘だ

―――巌流島―――

白兵「これほど技を見切られたのは初めてだ・・・
   拙者の完敗でござる」

七花「(最初に戦ったときに技はほとんど見たからな
    二回目は余裕を持って倒せたか・・・
    とはいえきつかったな)」

白兵「やはり錆は四季崎記紀の失敗作か・・・」

七花「そんなの四季崎記紀がそう言っただけなんだろ?
   俺はあんたを失敗作だなんて思わねえ
   実際今まで戦った中で一、二を争うくらいに強かったしな」

白兵「・・・記紀は虚刀を選んだ
   錆は記紀の血刀ではなかったのだ」

七花「・・・確かに今は俺のほうが強いのかもしれねえ
   でも、未来はどうなるかわからねえだろ?」

白兵「未来?」

七花「あんたはこれからも成長するんじゃないのか?」

白兵「・・・」

七花「確か四季崎記紀は全刀錆と虚刀鑢を作ったんだよな?
   そして自分の完成作として虚刀を選んだ・・・
   その時点では虚刀流のほうが強かったのかもしれねえけど、
   俺はいつまでも虚刀流が勝ち続けられるとは思わねえ」

白兵「・・・いつか全刀が虚刀を上回る日が来ると?」

七花「あんたが精進し続ければな・・・
   というかあんたは四季崎記紀に捕らわれすぎだ
   全刀はもうあんたのものなんだから、四季崎記紀なんか気にするなよ」

白兵「拙者のもの?」

七花「俺は自分で奥義を作って虚刀流を変えたんだ
   最初に虚刀流を作ったのが四季崎記紀だったとしても、
   今はもう俺のものだ」

白兵「・・・」

七花「だからあんたも俺と同じように全刀錆を変えて、自分のものにすればいい
   それこそ虚刀鑢を倒せるくらいにな」

白兵「・・・随分と簡単に言ってくれるな」

七花「あくまで俺はそう思うってだけだ
   これからどうするかは自分で決めればいい
   ただし、この薄刀はもらっていくぞ」

白兵「・・・・・・
   失望ながら生きるくらいなら、
   そなたが言ってるようにあがいたほうがマシだな
   ・・・鑢七花」

七花「ん?」

白兵「また、拙者と戦ってくれるか?」

七花「いいぜ
   ・・・ただし、その時俺が生きていたらだけどな」

―――

とがめ「やったな七花!
    これで日本最強の座はそなたのものだ」

七花「すぐに奪い返されそうな気がするけどな」

とがめ「・・・錆を殺しておけばそんな心配をしなくてよかったものを」

七花「なんだかさ、もったいねえって思っちまったんだよ
   あれほどの剣士は滅多に生まれてこねえさ」

とがめ「どうだか・・・
    所詮は刀に魅了され、裏切った男だ」

七花「刀はもう取り返したからいいじゃねえか」

とがめ「・・・まぁいい
    次は薩摩だぞ」

七花「賊刀鎧か・・・」

とがめ「なぁ七花」

七花「ん?」

とがめ「次に会う校倉必という男は、
    本当に私に惚れるのか?」

七花「・・・行ってみれば分かる」


~小ネタ 薔薇語~


七花「いけない、白兵・・・
   俺たちは男同士だ」

白兵「愛があれば、性別など関係ないでござる」

七花「白兵・・・」

白兵「七花・・・
   拙者にときめいてもらうでござる」



―――

とがめ「白×七よりも七×白にすべきか・・・
    悩みどころだな」

七花「どっちもねえよ」


~小ネタ 終わり~

・・・まさか薔薇語書いてとかいう人はいないよね? 

次回は投稿する日は未定です
多分二週間以内には投稿すると思います

お待たせ?しました
続き投下していきます

―――薩摩―――

必「俺が勝った場合はとがめ・・・
  あんたをもらいうけたい」

とがめ「なっ・・・」

必「一目惚れだ、俺の女になれ」

とがめ「・・・」

―――宿―――

七花「だから言っただろ?」

とがめ「まぁ悪い条件ではないが・・・」

七花「・・・今でもときどき思うんだ
   もしも校倉必・・・
   いや、海賊団ととがめが一緒にいたなら、とがめは死なずに済んだんじゃないかって」

とがめ「馬鹿かそなたは」

七花「へ?」

とがめ「私は惚れた女に素顔を見せられんような男と、一緒に旅などしたくない
    そんなつまらんやつの女になるなど、死ぬのと変わらん」

七花「・・・」

とがめ「七花・・・
    私に惚れているなら、力ずくで私を守ってみせろ」

七花「はは、そうだよな・・・
   そうだった」

―――闘技場―――

必「こいつ・・・限定奥義、盗賊鴎を素手で止めやがった」

七花「うおおおおぉ!」

必「!? やめろ、持ち上げるな! 放せ!」

七花「・・・あんた、亡くなった妹がとがめに似てるんだってな?」

必「!!」

七花「大切な人が死んだときの辛さは俺もよく分かる
   ・・・本当、あれはどうしようもなく苦しいよな
   でも、だからといって他人に死んだ人間の役を押し付けちゃいけねえ」

必「・・・」

七花「そして何より・・・俺の女に手を出すな!!」

必「!? ぐおおぉぉ!」

―――港―――

とがめ「必の奴、見送りには来ぬか・・・
    まぁなるようになるだろう
    賊刀鎧などなくとも、奴は十分に強い」

七花「・・・」

とがめ「さてと・・・
    この船はきちんと尾張に戻るだろうか?
    そなたの話によると、過去では必の悪戯で蝦夷行きの船に乗せられたのだったな?」

七花「そうだ
   でも今回は大丈夫だと思うぜ
   船員と乗客に、この船が尾張に行くかどうか確認してきたからな」

とがめ「ほう・・・そなたも気が利くようになってきたな」

七花「だろ?」

とがめ「しかし刀集めは順調この上ないな
    残すところ後二本ではないか」

七花「・・・とがめ、油断するなよ
   否定姫がとがめの秘密を知っていたとしたら、
   いつ右衛門左衛門が殺しにきてもおかしくないからな」

とがめ「あぁ、用心しておるよ・・・」

―――???―――

七花「とがめ、死ぬな!」

とがめ「うぅ・・・」

右衛門左衛門「虚刀流・・・全て貴様のせいだ」

七花「!」

右衛門左衛門「貴様のせいでその女が飛騨鷹比等の娘だと分かったのだ
       お前さえいなければ、その女は死なずに済んだのに・・・
       お前がその女を殺したのだ」

七花「う・・・うわあああああ!!」

―――

とがめ「おい、七花!? 大丈夫か!?」

七花「はっ!!」

とがめ「大丈夫か?
    うなされておったぞ?」

七花「・・・夢か」



二度目の旅を始めてから随分経ったが、俺はまだとがめに言えていなかった
・・・俺のせいでとがめが死んだということを

―――尾張―――

七花「・・・駄目だ、見に行ったけど否定姫はまだ帰ってきてなかった」

とがめ「ったく、あの女め・・・
    一体どこをほっつき歩いておるのか」

鳳凰「ようやく見つけられたか・・・」

七花「!? 真庭鳳凰!?」

とがめ「どうしてここに・・・」

鳳凰「そなたらに頼みがある」

とがめ「頼み?」

鳳凰「我らを助けてほしい」

七花「・・・どういうことだ?」

鳳凰「奇策師殿、海亀を知っているか?」

とがめ「知っているも何も、真庭十二頭領が一人だろう?」

鳳凰「ああ・・・
   奴を殺してほしいのだ」

とがめ「な!?」

鳳凰「我らは完成形変体刀の一本、毒刀鍍を手に入れたのだが・・・」

七花「もしかしてその海亀って奴が刀の毒に犯されちまったのか?」

鳳凰「・・・」

とがめ「その表情からするに、七花の言うとおりみたいだな
    ・・・しかし、何故私たちに頼む?」

鳳凰「我らでは毒刀を手に入れた海亀に適わんのだ
   海亀は剣術に秀でた忍だった・・・
   それが毒刀を手に入れてしまい、手がつけられなくなったのだ」

七花「そんなに強いのか?」

鳳凰「強い・・・というより恐ろしい
   刀の毒に犯されてからは単純に強くなっただけではなく、
   一切の恐怖やためらいもなく、あらゆる者に襲い掛かるようになったのだ」

とがめ「それは確かに恐ろしいな」

鳳凰「おかげで真庭人軍の頭領も何人か負傷してしまってな・・・・
   幸い死者は出なかったが」

七花「それで、海亀ってやつはどこにいるんだ?」

鳳凰「伊賀にある新・真庭の里だ
   奴が暴れまわったせいで、里は荒れ果ててしまったが・・・」

七花「(過去と同じことになってるじゃねえか・・・)」

鳳凰「奴は未だに里に留まっている
   なんとか生き残っている里の住人は避難させられたが・・・」

とがめ「・・・大体事情は分かったが、協力はできん
    お前の話が罠の可能性があるからな」

鳳凰「今我らに協力してくれるなら、毒刀は譲る
   他の頭領に手出しもさせん」

とがめ「話がうますぎるな・・・
    信用できん」

鳳凰「今まで我らを信じてくれていた奇策師殿はどこへいったのだ?」

とがめ「勘違いするな、妄信していた訳ではない」

鳳凰「・・・もう我らにとって完成形変体刀など、
   どうでもよくなったのだ」

とがめ「何?」

鳳凰「復興すべき里は修復が不可能なほどに荒れ果ててしまった・・・
   もはや完成形変体刀を集めることに意味などない」

とがめ「・・・」

鳳凰「海亀を楽にしてやることが、我らのせめてものの望みだ・・・
   どうか助けてやってはくれぬか?」

七花「いいぜ」

とがめ「おい、七花
    何を言っている?」

七花「どうせいつか毒刀を回収するのなら、
   所在が分かってる今のほうがいいだろ?」

とがめ「・・・真庭忍軍が待ち伏せているかもしれんのだぞ?」

七花「例えまにわに全員が襲ってきても、俺は負けやしねえ」

とがめ「・・・分かった
    そなたがそこまで言うのなら、行こう」

七花「よし、決まりだ
   刀がある場所まで案内してくれ」

鳳凰「・・・感謝する」

―――新・真忍の里―――

海亀「へぇ、お前が虚刀・・・
   鑢七花か」

七花「もしかして、あんた四季崎記紀なのか?」

海亀(記紀)「ほう、よく分かったな?
       まぁ正確には記憶を転写しただけだが」

七花「過去にも会ったからな」

海亀(記紀)「過去?」

七花「俺は元々未来にいたんだよ
   あんたが作った刀のおかげで戻ってこれたけどな」

海亀(記紀)「・・・そうか、うまくいったのか」

七花「あんた、なんであんなもん作ったんだ?」

海亀(記紀)「それをここで言っちまったらつまんねえだろ・・・
       さて、ここに来たからには毒刀を取りにきたんだろ?」

七花「ああ」

海亀(記紀)「ならかかってこいよ
       多分昔も戦ったんだろうが」

七花「そのときあんたが乗り移ったのは別人だったけどな」

海亀(記紀)「ほう・・・なら用心したほうがいいぜ
       この海亀って奴は刺剣使いでな・・・
       こいつの技術や経験は、俺がこれから使う剣術とは愛称が良くてな」

七花「確か未来の天才剣士だったか?」

海亀(記紀)「ああ・・・
       この型から繰り出される三段突きはかわしようがないって話だぜ?
       ・・・かかってこいよ」

七花「いいぜ
   ただし、その頃にはあんたは八つ裂きになってるだろうけどな」

―――

七花「くっ・・・
   鳳凰のときより強えな・・・」

海亀(記紀)「だから言っただろ?
       こいつと、この剣術は愛称が良いって」

七花「今のあんたは錆白兵以上に強いかもしれねえ
   ・・・でもな」

海亀(記紀)「!? がっ!」

七花「例え強くなっても、俺に同じ技は通用しねえよ」

海亀(記紀)「くっ・・・
       なるほど、悪くない」

―――

とがめ「よく戻った、七花」

七花「ああ、ただいま・・・
   無事毒刀を回収できたぞ」

鳳凰「・・・そうか、海亀は死んだのか」

七花「いや、生きてるよ」

鳳凰「何?」

七花「一度戦った相手だったから、なんとか急所を外す余裕はあったよ
   もう毒刀を持ってないから、正気になってるかもしれないぜ?」

鳳凰「・・・」

七花「でも重症だろうから、早く手当てしてやってくれ」

鳳凰「そうか・・・」

とがめ「では行こうか、七花」

七花「ああ」

蝶々「待ちな」

とがめ「!! お前たちは・・・
    真庭忍軍十二頭領か」

蝶々「その毒刀を置いていってもらおうか」

人鳥「悪く思わないでください」

とがめ「これはどういうことかな、鳳凰殿?」

鳳凰「・・・」

とがめ「他の頭領に手出しをさせぬはずだったのでは?」

蝶々「ああ、手出しはしてないぜ
   ただし、蝙蝠と川獺の二人だけがな
   あいつらはここに来てねえよ」

とがめ「・・・屁理屈を」

蜜蜂「忍者を信じるほうが悪いですよ
   卑怯卑劣が売りですからね」

七花「御託はいい
   やるならとっととかかってこい」

蝶々「なら遠慮なく・・・」

鳳凰「待て」

蟷螂「どうしたのだ?」

鳳凰「・・・我らの負けだ
   おとなしく引き下がるぞ」

蝶々「何言ってるんだよ!?
   こいつを海亀殿と戦わせて、消耗したところを狙う作戦だったはずだろ!?」

鳳凰「もうよいのだ・・・
   蝙蝠に川獺、それに海亀まで見逃してもらった・・・
   いくら我らが卑怯な忍者でも、この恩を仇で返すわけにはいかぬ」

蝶々「でも、それじゃあ里を復興するための金が・・・」

鴛鴦「もうやめましょう、蝶々さん」

蝶々「鴛鴦・・・」

鴛鴦「多少疲労していたとしても、私たちが虚刀流に勝てるとは思えない・・・
   私はあなたに死んでほしくない」

蝶々「・・・」

鴛鴦「どれだけ時間がかかるか分からないけど、
   真庭の里なら他の場所に新しく開けばいい
   命さえあればきっとできるわ」

鳳凰「鴛鴦の言う通りだ・・・
   里は無くなっても、我らがいる限り真庭忍軍は滅びぬ」

人鳥「鳳凰様・・・」

とがめ「話しはまとまったか?
    私たちはもう行くぞ?」

鳳凰「ああ
   すまぬな、迷惑をかけてしまった」

七花「・・・復興できるといいな、真庭の里」

―――

とがめ「七花、これで残すは炎刀のみだ」

七花「そうだな・・・」

とがめ「さて・・・これからどうするか
    何の策も無しに尾張に帰ってしまえば、私は撃ち殺されてしまうかもな」

七花「・・・なぁ、とがめ」

とがめ「ん?」

七花「ここから先は俺一人で行かせてくれ」

―――

とがめ「七花、これで残すは炎刀のみだ」

七花「そうだな・・・」

とがめ「さて・・・これからどうするか
    何の策も無しに尾張に帰ってしまえば、私は撃ち殺されてしまうかもな」

七花「・・・なぁ、とがめ」

とがめ「ん?」

七花「ここから先は俺一人で行かせてくれ」

とがめ「どういうことだ?」

七花「俺が先に行って、否定姫と右衛門左衛門に決着をつけてくる」

とがめ「・・・あやつらを殺すのか?」

七花「場合によっては」

とがめ「そうか・・・
    なぁ、七花」

七花「ん?」

とがめ「刀を集めが終わった後、そなたには私の腹心になってほしい
    ・・・私にはそなたといるときの安らぎが必要なのだ」

七花「俺はとがめのために生きると決めた
   いつまでもとがめと共にいるよ」

とがめ「・・・ありがとう、七花
    生きてまた会おう」

七花「ああ」


~小ネタ とがめ語~


とがめ「・・・」

七花「ん? 何を書いているんだ、とがめ?」

とがめ「これは刀を集めた経緯を報告書としてまとめておるのだ」

七花「あぁ、あれか」

とがめ「ちなみに報告書とは別に、売るために物語風にしたものも書いている
    そちらを読んでみるか?」

七花「ん、どれどれ・・・」




主な登場人物

とがめ : 才色兼備の天才女奇策士

鑢 七花 : とがめの(愛の)奴隷

真庭 蝙蝠 : 最強の大道芸人

宇練 銀閣 : 最強の自宅警備員

敦賀 迷彩 : 最強の元ヤン

錆 白兵 ; 最強のナルシスト

校倉 必 : 最強のシスコン

鑢 七実 : 最強のブラコン

凍空 こなゆき : 最強のロリ

日和号 : 最強のがらくた

汽口 慚愧 : 最強の看板娘(笑)

彼我木 輪廻 : 最強の糞じじい

真庭 鳳凰 : 最強のかませ

左右田 右衛門左衛門 : 最強の仮面

否定姫 : ばーか




とがめ「どうだ?」

七花「ははっ、1ページ目から悪意に満ちてやがる」


~小ネタ 終わり~

右衛門左衛門の本体は仮面だと思う(錯乱)

いよいよこのssも終わりが見えてきました
あと二、三回の投稿で完結すると思います

次回の投稿は今週末を予定しています

>>310
そこらへんの心理描写がきちんと書けていませんでしたね、申し訳ない
七花は過去に銀閣と戦ってから多くの経験を積んだのため、前回は見切れなかった銀閣の零閃を今度なら見切れるのではないかと考え、その考えが正しいかどうか武人として試してみたいと思っています。
しかし銀閣に奥の手である零閃を出させるためには、銀閣に奥の手を使わなければ勝てない相手だと思わせる必要があります。
そのため、あえて杜若の構えからの薔薇を浅く決め、一撃目で倒さなかったというのがこのssの設定です。

長々と書きましたが、要するに折角強くてニューゲームしたのなら、一週目では見切れなかったボスの技を今度こそ攻略してみせるというのが結論です。

ところでこの酉どう思う?
すごい・・・見えてます・・・

>>313
え・・・
もしかしてなんかやばい感じですか?

最近システム障害かなんかでトリップにいろいろついたり、◆が◇で表示されたりしてるけどそれ以外は特に問題ない

>>315
教えていただいてありがとうございます
◇がついていますが、>>312は間違いなく作者のレスです

続き投下します

ここから先は今までを超えるかなりとんでもない展開になるので、
もぅマヂ無理。。。ということになるかもしれません。
それでも温かい目で見てもらえたらと思います。

―――尾張 否定姫邸―――

七花「ようやく会えたな」

否定姫「あらあら、久しぶりね七花君
    あの女は一緒じゃないの?」

七花「俺一人で来た
   ・・・やっぱりあんたも未来から戻ってきたのか」

否定姫「どうしてそう思うの?」

七花「馬鹿にしてんのか
   この世界じゃあんたと俺はまだ会ったことがない・・・
   それなのに久しぶりって言うからには、
   あんたが未来から戻ってきたと考えるのが妥当だろ」

否定姫「ふふ、そうね
    悪かったわよ、あんまり怒らないで」

七花「どうしてもあんたに聞きたいことがある」

否定姫「私が奇策師を殺すつもりかどうか、でしょ?」

七花「そうだ」

否定姫「仮に殺すって言ったらどうするの?」

七花「・・・あんたと右衛門左衛門をここで始末する」

否定姫「えー、ひどーい
    一緒に旅した仲なのに」

七花「俺はどうしてもとがめに死んでほしくないんだよ」

否定姫「・・・安心しなさいよ
    私はあの女を殺す気はないわ」

七花「!! 本当か!?」

否定姫「ええ、殺す必要がなくなったから」

七花「・・・どういうことだ?」

否定姫「それを教えてほしかったら、あの女もここに連れてきなさい」

七花「・・・罠じゃないだろうな?」

否定姫「違うわよ
    それに、あの女を連れてきたら炎刀を譲ってあげる」

七花「!?」

否定姫「どう? 悪い話じゃないでしょ?」

七花「・・・一体何を企んでるんだ?」

否定姫「だから、それを教えてほしかったらとっととあの女を連れてきなさいよ」

七花「・・・」

否定姫「・・・もしもこれが罠だったら、今度こそ私を殺せばいいわ
    右衛門左衛門を倒せたあんたなら、できるでしょ?」

―――

とがめ「・・・来てやったぞ」

否定姫「あら、久しぶりね
    元気そうで残念だわ」
    
とがめ「こっちは命の危険を背負ってここまで来てやったんだ
    さっさと炎刀を寄越せ」

否定姫「相変わらずむかつく女ねぇ
    まぁいいわ
    ・・・右衛門左衛門」

右衛門左衛門「はっ」

否定姫「やりなさい」

バキッ

七花「!?」

とがめ「き、貴様何をやっておるのだ!?」

右衛門左衛門「見れば分かるだろう?
       炎刀を壊したのだ」

とがめ「なっ・・・」

否定姫「ほら、どうしたの?
    この炎刀はあんたのものよ、持ってきなさい」

七花「あ、あんた、なんてことをしてくれたんだ!?」

否定姫「何よ、約束どおり炎刀を渡したじゃない
    もっとも、原型を留めたまま渡すとは言ってないけどねえ」

七花「・・・・・・」

とがめ「・・・・・・」

否定姫「あっははははは!
    二人ともいい表情ね、傑作だわ」

とがめ「笑っている場合か!
    貴様ら自分が何をしているのか分かっておるのか!?」

否定姫「何度同じ事を言わせるつもりよ?
    炎刀銃を壊したんだって」

とがめ「それがどういうことか分かっておるのか!?
    貴様らは・・・いや、私たち全員が刀集めに失敗した罪で、
    幕府から命を狙われるかもしれんのだぞ!?」

否定姫「そうでしょうねぇ」

とがめ「・・・貴様ら乱心でもしたのか?」

否定姫「違うわよ、腹立つわねえ」

とがめ「・・・」

否定姫「まぁ、これで奇策師
    あんたは私と組まざるを得なくなったわけよ」

とがめ「・・・組むだと?」

否定姫「ちょっと企みごとがあるのよ
    それに手を貸しなさい」

とがめ「企みごと?」

否定姫「ええ
    私がどうして変体刀を集めていたかは聞いているわよね?」

とがめ「・・・歴史を修正して、百年後に来る侵略者どもから日本を守るためだろう?」

否定姫「違わないわ・・・
    そのために尾張幕府を滅ぼしたのだけど・・・
    どうせやり直したんだから、今回は滅ぼさない方法をとってみようと思うのよ」

とがめ「・・・どういうことだ?」

否定姫「あんたがやろうとしていることをするつもりなの
    幕府を消すのではなく、乗っ取って自分のものにする・・・
    私は自分の手で、百年後に来る侵略者に対抗できる日本を作ろうと思うのよ」

とがめ「乗っ取るだと?・・・
    一体どうするというのだ?」

否定姫「何のために私たちが一年も旅していたと思う?
    あちこち回りながら幕府に反感を持ってるやつらを説得して、
    味方につけてきたのよ」

とがめ「なっ・・・」

否定姫「私はあんたと違って、お傍人からじっくり乗っ取るつもりはないわ・・・
    武力で一気に片をつけるつもり」

とがめ「・・・」

否定姫「このまま幕府に殺されるくらいなら戦う方がマシでしょう?
    だから奇策師、私の策に手を貸しなさい」

―――尾張城―――

数週間後


とがめ「・・・準備はいいか、七花?」

七花「ああ」

とがめ「行くぞ」

―――

匡綱「よくぞ参った、表をあげよ
   余が尾張幕府八代目将軍、家鳴匡綱じゃ」

否定姫「・・・恐悦至極にございます」

匡綱「よくぞ全ての完成形変体刀を集めた」

否定姫「はい
    炎刀は少し到着が遅れておりますので、もうしばらくお待ちください」

匡綱「ふむ・・・ならば楽しみに待つとするか」

否定姫「(本当はいくら待っても来ないんだけどねえ・・・)」

右衛門左衛門「姫様、侵入者です」

匡綱「!? なんじゃ、天井から声が!?」

否定姫「安心してください、大御所様
    上にいるのは私の腹心です」

右衛門左衛門「賊が侵入してきたようです・・・
      どうやら虚刀流七代目当主、鑢七花と思われます」

匡綱「きょ、虚刀流じゃと!?」

否定姫「あらあら・・・
    しかし大御所様、これは好機です」

匡綱「ど、どういうことじゃ?」

否定姫「この歴史の、最後の仕上げをしましょう」

―――

七花「とがめ、俺から離れるなよ」

とがめ「ああ」

烏「虚刀流」

とがめ「な、なんだ!?
    烏がしゃべっているぞ?」

七花「落ち着けよ、これは右衛門左衛門だ」

烏「準備は整った・・・来い」

七花「・・・分かった」

――― 一番目の部屋 ―――

七花「とがめ、下がってろ」

とがめ「うむ」

般若丸「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、般若丸だ」

七花「・・・完成形変体刀を使う以上、手加減は難しい
   死んでもしらねえぜ?」

般若丸「余裕じゃねえか
    だがな、お前如きは俺一人で十分だ」

蝙蝠「それはこっちの台詞だっつうの」

とがめ「! お前は真庭蝙蝠か?」

蝙蝠「借りを返しにきた
   ここは俺に任せてとっとと行きな」

七花「・・・礼を言う」

蝙蝠「いらねえよ
   その代わりこれで俺とあんたらとの借りは無しだ、いいな?」

とがめ「ああ
    ・・・蝙蝠」

蝙蝠「なんだよ?」

とがめ「どうやら今まで私の秘密を漏らさずにいてくれたようだな
    感謝する」

蝙蝠「・・・分かったからとっとと行けっつうの」

般若丸「誰が行かせるか!」

蝙蝠「だから、あんたの相手は俺だっていってんだろうが」

般若丸「くっ・・・
    なんなんだ、お前?」

蝙蝠「そういや自己紹介がまだだったな・・・
   俺は冥土の土産は大盤振る舞いする、冥土の蝙蝠っつうもんだ
   ・・・さあ、接待してやるぜ」

――― 二番目の部屋 ―――

不埒「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、鬼宿不埒」

とがめ「・・・持っているのは斬刀鈍か」

不埒「教えておくが、わしは既に五人斬っている
   それがどういうことかわかるか?」

銀閣「零閃が出せるってことだろ?」

七花「! あんた、宇練銀閣じゃないか」

銀閣「久しぶりだな、虚刀流」

とがめ「私がこの男を勧誘しておいた
    協力すれば斬刀鈍を返すという条件でな」

銀閣「まぁそういうことだ」

不埒「ほう・・・それはわしを倒すと言いたいのか?」

銀閣「その刀を渡さねえならな」

不埒「舐められたものだな」

銀閣「虚刀流、ここは俺に任せて先に行きな」

七花「気をつけろよ」

銀閣「ご忠告どうも・・・
   なぁ、虚刀流」

七花「ん?」

銀閣「あんたと戦った後、やることがなくなっちまったから、
   城を出てしばらく外を彷徨ってみたんだよ・・・
   そうしたら偶然、鳥取藩の生き残りを見つけた」

七花「そうか、良かった」

銀閣「あんたの言うとおり、守る価値があるものってのは見つけられるものだな
   ・・・礼を言う」

七花「どういたしまして」

不埒「だらだらと無駄話を・・・
   貴様から先に斬ってやる」

銀閣「あぁ、すまねえ待たせたな
   それじゃあその刀、返してもらうぜ
   ・・・大切な物なんでな」

――― 三番目の部屋 ―――

暁「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、巴暁」

七花「千刀か・・・」

暁「ええ
  しかもあたしは千刀流を付け焼刃じゃない、完璧なものとして使えるわ」

七実「ここは私に任せて先に行きなさい」

七花「!? 姉ちゃん!?」

七実「おもしろそうだから、手伝いにきたわ」

七花「・・・姉ちゃんもとがめが勧誘したのか?」

とがめ「ああ
    別に内緒にしようと思っていたわけではないがな」

七実「さ、早く行きなさい」

七花「ああ、ありがとう姉ちゃん」

暁「行かせないわよ!」

七実「あなた人の話を聞いていたの?
   私が相手をしてあげると言っているの」

暁「!? くっ・・・」

七実「あら、その眼帯・・・
   あなた片目が見えてないの?」

暁「だったらどうしたっていうの?」

七実「ふふ、丁度いいわ・・・
   この目を失うための相手としては、なかなか洒落てるじゃない」

暁「・・・目?
  望むのならもらってあげるわよ
  命も頂くけど」

七実「勘違いしないで
   頂くのは私のほう」

暁「何?」

七実「一度しか見てないけど、ちゃんと成功するかしら?
   ・・・忍法狂犬」

――― 四番目の部屋 ―――

待秋「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、浮儀待秋」

とがめ「今度は薄刀か・・・」

白兵「ここは拙者に任せて、先に行くでござる」

七花「! あんた、錆白兵じゃねえか」

とがめ「ああ、薄刀を渡すという条件で私と手を組んだ」

白兵「そういうことだ・・・
   鑢七花、拙者との再戦の約束を忘れていないな?」

七花「ああ」

白兵「ふっ・・・
   次こそ拙者にときめいてもらうでござる」

七花「楽しみにしてるよ」

待秋「へぇ・・・これは嬉しい誤算だ
   まさか僕の好敵手と戦えるとはね」

白兵「・・・」

待秋「錆白兵・・・
   今こそ僕がお前を越える時だ
   そして僕こそが、この薄刀針の真の所有者だと証明してみせる」

白兵「それは無理であろうな」

待秋「何だと?」

白兵「お前には、少しもときめかぬからな」

――― 五番目の部屋 ―――

甲斐路「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、伊賀甲斐路」

七花「賊刀鎧か」

甲斐路「お前の肉体をぶっ貫いてやる」

必「ほう、それは俺に向かって言ってるのか?」

七花「! その巨体・・・
   あんた、もしかして校倉必なのか?」

必「よう、久しぶりだな虚刀流
  そしてとがめ」

七花「・・・校倉もとがめが呼んだのか?」

とがめ「ああ
    海賊団ごと私が勧誘しておいた」

必「倒幕なんて聞いたら、海賊として参加しないわけにはいかねえだろ
  ここは俺に任せて先に行きな」
  
とがめ「礼を言う」

必「・・・なあ、とがめ」

とがめ「ん? なんだ?」

必「少し謝りたいことがあってな・・・
  昔言った、あんたに惚れたっていうのは嘘だ」

とがめ「・・・」

必「あんたは亡くなった俺の妹に似ていた・・・
  ただそれだけだった」

とがめ「知っていたよ」

必「そうか・・・
  悪かったな」

とがめ「なぁ、必」

必「なんだ?」

とがめ「鎧を取った姿そなたの姿、
    なかなか格好いいではないか」

必「!!」

とがめ「七花がいなかったら、今頃私はそなたと一緒にいたかもな
    なんてな、冗談だ」

必「・・・ったく、食えねえ女だぜ」

七花「・・・」

とがめ「冗談だから、そう睨むな七花」

甲斐路「てめえら、いつまでお喋りしてるつもりだ」

必「おっと、待たせたな・・・
  それじゃあその鎧、奪い返させてもらうぜ」

――― 六番目の部屋 ―――

孑久「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、真庭孑久」

とがめ「真庭だと?」

孑久「ええ、僕は出自を辿れば真庭忍軍の者ですよ」

蝶々「へぇ・・・
   なら俺たちが後始末をしなきゃな」

七花「! あんたら、まにわにじゃねえか」

蟷螂「倒幕が成功すれば、伊賀の地を渡す・・・
   そういう条件だったな、奇策師?」

とがめ「ああ
    なんなら里を復興できるだけの財力と権力もくれてやる」

蜜蜂「はは、それはありがたい」

蝶々「ここは俺たち虫組に任せて、先に行きな」

七花「ああ、ありがとうな」

孑久「・・・いいでしょう
   全員相手をしてあげますよ」

蝶々「もしかしてお前が使ってるのは忍法足軽か?」

孑久「ええ
   この双刀鎚を使うのに一役買ってくれましてね」

蝶々「確かその刀って、重さが売りなんだよな?
   ・・・足軽を使っちまったら意味がないんじゃねえのか?」

孑久「・・・!? 
   し、しまった!」

蝶々「えぇ・・・」

蜜蜂「・・・」

蟷螂「・・・こんな奴が我らと同じ出自とはな」

――― 七番目の部屋 ―――

胡乱「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、胡乱」

七花「今度は悪刀か・・・」

鳳凰「ここは我に任せてもらおう」

とがめ「ようやく来たか、真庭鳳凰」

鳳凰「そう言ってくれるな、奇策師殿」

とがめ「ある程度までの頼みは聞く・・・
    約束、果たしてもらうぞ?」

鳳凰「倒幕に協力するなど、明らかにある程度を超えているだろう・・・
   まぁ、そなたらには多くの借りがあるから協力しよう
   先に行くがいい」

七花「そいつは悪刀を持ってる
   しぶといから気をつけろよ」

鳳凰「承知した」

胡乱「誰だか知らねえが、
   悪刀によって不死身になった俺に挑むとはいい度胸だ」

鳳凰「ほう・・・
   それはおもしろい」

胡乱「あん?」

鳳凰「不死身の男と不死の鳳凰・・・
   果たして生き残るのはどちらであろうな?」

――― 八番目の部屋 ―――

欧「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、灰賀欧
  ・・・それに微刀、簪」

七花「日和号か」

日和号「・・・」

欧「言っておくけど、日和号の設定は既に変えてあるわ
  今は私の命令を聞くだけの可愛いお人形さんよ」

とがめ「それはどうかな?」

欧「何?」

とがめ「私はお前よりも先に日和号の頭の中をいじらせてもらったからな・・・
    後からどれだけいじくられようが、私の言うことだけを聞くように設定させてもらったよ」

欧「なっ!?」

とがめ「日和号、その女を倒せ」

日和号「・・・了解」

欧「くっ・・・」

とがめ「さぁ、先に行こう七花」

七花「ああ・・・
   あんた、灰賀欧とかいったか?
   日和号の本当の実力、見ておくんだな」

――― 九番目の部屋 ―――

黒母「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、墨ヶ丘黒母」

とがめ「・・・王刀鋸か」

黒母「このような戦いに意味があるとは思えない
   今すぐ投稿するなら、私が口を利いてや――」

七花「虚刀流、錦上添花!」

黒母「ぐおっ!?」

七花「あんたの中身が無い言葉を聞くのは不愉快だからな・・・
   とっとと終わらせてもらったよ」

黒母「・・・」

七花「行こう、とがめ」

とがめ「ああ」

――― 十番目の部屋 ―――

工舎「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、皿場工舎」

とがめ「誠刀か?」

工舎「・・・私、これをどうしたらいいんでしょう?」

七花「とりあえず投げて使えば?」

工舎「・・・えいっ」

七花「ていっ」

工舎「ぎゃふん!」

とがめ「・・・・・・
    そなたが蹴り返した誠刀が当たって、気絶したようだな」

七花「行こう」

――― 十一番目の部屋 ―――

番外「家鳴将軍家御傍人十一人衆が一人、呂桐番外・・・
   ろ、ろぎり・・・し、しきざき?」

とがめ「・・・どうやら刀の毒に犯されているようだな」

右衛門左衛門「ここは私に任せてもらおう」

七花「!? 右衛門左衛門?」

右衛門左衛門「姫様がお待ちだ・・・
       先に行け」

七花「・・・分かった」

右衛門左衛門「鑢七花」

七花「なんだ?」

右衛門左衛門「姫様のことを恨んでいるか?」

七花「・・・」

右衛門左衛門「過去に姫様は奇策師・・・
        いや、容赦姫の命を狙うよう私に命じた・・・
        そのことを恨んでいるか?」

七花「別に恨んじゃいねえよ
   否定姫はとがめのことが嫌いじゃなかったからな」

とがめ「・・・」

右衛門左衛門「そうか・・・
        ありがとう」

七花「よせよ、気持ち悪い・・・」

右衛門左衛門「ふっ、そうだな・・・
        こんなことを言うのは私らしくない」

七花「じゃあ先に行ってるぞ」

右衛門左衛門「ああ」

番外「ろ、ろ、ろぎり?・・・し、しきざき?」

右衛門左衛門「・・・同じ中身を奪われた者として、
        私がお前を楽にしてやろう」

―――尾張城天守閣最上階―――

匡綱「だ、誰じゃ貴様ら!?」

否定姫「あら、早かったわねえ」

七花「・・・」

とがめ「ようやく会えたな・・・
    八代目将軍、家鳴匡綱」

匡綱「お、お前は奇策師か?」

とがめ「貴様の命、私がもらう」

匡綱「な、何を言っている!?
   そんなことをすればどうなると思っているのだ!?」

とがめ「おそらく将軍家と、それに仕える者達に狙われるだろうな」

匡綱「分かっておるなら今すぐやめろ!」

とがめ「心配ご無用だ
    私には刀がある、そう簡単には死なん」

匡綱「何故こんなことをする!?」

とがめ「私が飛騨鷹比等の娘だと言えば分かるか?」

匡綱「な!?」

とがめ「貴様ら将軍家は父上の仇だ」

匡綱「馬鹿な・・・何故生きている・・・」

否定姫「本当に残念ですわ、大御所様
    あなたはこれで終わりです」

匡綱「何を・・・」

否定姫「正確に言えばあなただけでなく、将軍家そのものがですね
    今まで私たちは、あなたたちを滅ぼせるだけの戦力を集めていましたから」

匡綱「き、貴様・・・」

否定姫「ほら、奇策師
    約束どおり、お傍人十一人衆の戦力を分散させた上に、
    大御所様が逃げないよう見張っておいてあげたわよ
    ・・・後は好きにしなさい」

とがめ「・・・何か死ぬ前に言い残すことはあるか?」

匡綱「ふ、ふざけるな!」

とがめ「七花・・・頼む」

七花「おう」

匡綱「い、命だけは・・・
   命だけは助けてくれ!」

七花「・・・悪いな
   二度も殺すことになっちまった」

匡綱「そ、そうじゃ、天下をやろう!
   そなた、天下が欲しくないか!?」

七花「いらねえよ、そんなもん
   俺はとがめがいればそれでいい
   ・・・じゃあな」

匡綱「ひっ・・・」

七花「ちぇりおーっっっ!」


―――――――――

――――――

―――

その後約一年間
俺たちは勢力を拡大しながら戦い続け、ついに将軍家を滅ぼした
そして・・・

―――とがめの家―――

とがめ「新たな日本は将軍や大名による政治ではなく、
    民主主義による民主政治を行う、か・・・
    私程ではないが、あの女も奇策を考えたものだ」

七花「俺にはなんのことかさっぱりわからねえけどな」

とがめ「とはいえあの女には腹が立つ・・・
    自分を首相などという役職に置き、実質上日本の支配者になったのだからな」

七花「とがめは大臣だったっけ?
   それもすごい上の役職なんだろ?」

とがめ「けっ、あの女の下についた時点で負けたも同然だ」

七花「・・・」

とがめ「まぁいい
    そのうち引きずり下ろしてやる」

七花「いい加減仲良くしろよ・・・」

とがめ「それは一生無理だな」

七花「はぁ・・・」

とがめ「それはそうと七花、真庭忍軍は無事里を復興させたらしいぞ」

七花「そうか、それは良かった」

とがめ「宇練銀閣は確か鳥取藩の生き残りを探しながら、
    旅を続けているらしいな」
 
七花「ああ
   錆白兵も旅をしているらしいぜ
   まぁ、あいつの場合は修行なんだろうけど」

とがめ「それ以外の完成形変体刀の持ち主だった者たちは、以前と同じように暮らしているらしいな
    まぁ日和号については私たちが不要湖に戻してやったのだが」

七花「ただ、姉ちゃんは別人になっちまったけどな」

とがめ「あぁ、あれは驚いた」

七花「病気を治す方法を見つけたって言ってたけど・・・
   まさか忍法狂犬で他人の体を奪うことだったはな」

とがめ「おまけに奪った相手が将軍家御傍人十一人衆の中の一人だったからな・・・
    最初見たときは敵の罠かと思ったぞ」

七花「でもまぁ、病が治って良かったよ
   おまけに見稽古も失えて・・・
   姉ちゃんは普通の人間になれて、すごく幸せそうだった」

とがめ「忍法狂犬は記憶を引き継げても、身体能力や特異体質を引き継げるわけではないからな
    ・・・それより、七実はこれから他人の体を奪いながら生き続けるつもりではないだろうな?」

七花「はは、それはないって
   ・・・多分」

とがめ「・・・」

七花「それよりとがめ、これからどうするんだ?」

とがめ「ん?」

七花「将軍家を滅ぼして復讐は果たしたし、権力や財力を得て飛騨家の復興もできた・・・
   この先どうする?」

とがめ「そうだな・・・
    政治はしばらくあの女に押し付けて、これからは日本地図を作ろうと思う」

七花「そうか・・・そうだよな」

とがめ「さて、善は急げだ
    明日出発するから早めに寝ておけ」

七花「了解」

とがめ「・・・ゆっくりと休むのだぞ」

―――

七花「ぐぅ・・・すぅ・・・」

とがめ「・・・」




私は今、ある男の背後に立っている
・・・その男を殺すために

・・・次回、最終回

早ければ明日の夜にでも投下する予定です

×早ければ明日の夜にでも投下する予定です
○早ければ明日の午前に投稿します

どうか最後までお付き合いいただければと思います

とがめ「・・・」



寝ている男の後ろで刀を抜き、
切っ先を男の心臓に向ける

とがめ「・・・後は振り下ろすだけだ」




そう、振り下ろすだけ
・・・それなのに



とがめ「くっ・・・
    震えが止まらぬ」

七花「・・・どうした?
   俺を殺さないのか?」

とがめ「!? そなた、起きていたのか?」

七花「まあな・・・
   俺を殺したければ好きにすればいい」

とがめ「何?・・・」

七花「知ってたよ
   とがめが俺を殺そうとしていることは」

とがめ「・・・いつから気づいておった?」

七花「最初からだよ」

とがめ「なっ・・・」

七花「今まで内緒にしていたが、俺が元々いた世界では、
   とがめは死ぬ間際に俺を殺すつもりだったって言ったんだ」

とがめ「・・・それを知っていながら、何故私についてきた?」

七花「あんたに惚れてるからに決まってるだろ」

とがめ「・・・そなた、馬鹿ではないのか?
    自分を殺そうとする人間と一緒にいるなど」

七花「仕方ねえんだよ
   俺はそういうとがめのことを好きになっちゃったんだから」

とがめ「・・・」

七花「それに、今までずっと言えなかったけど・・・
   未来でとがめが死んだのは俺のせいだったんだ」

とがめ「!!」

七花「俺のせいでとがめの父親のことがばれてしまったから、
   とがめは殺されたんだ」

とがめ「・・・」

七花「・・・俺はとがめに殺されて当然なんだよ」

とがめ「・・・たかが、女ではないか」

七花「・・・」

とがめ「全てを捨ててまで、どうして私のために尽くしたのだ?
    そなたの人生は何のためにあったのだ?」

七花「・・・」

とがめ「そなたにだって、幸せになる権利はあっただろうに・・・
    最後はこんな女に殺されようなど・・・
    そなた、馬鹿ではないのか」

七花「なんといわれようが俺は人として、
   自分の意思でこう生きようって決めたんだ」

とがめ「・・・そうだとしても、
    結局一番傷ついているのはそなたではないか」

七花「いいや、とがめ・・・
   俺は今、とっても幸せだ」

とがめ「何を・・・」

七花「とがめを死なせずに済んだ・・・
   とがめの目的を果たすことができた」

とがめ「・・・」

七花「そして今死ぬことで、
   とがめの刀としての役割を全うできる・・・
   これ以上の幸せはない」

とがめ「馬鹿者・・・」

七花「殺すなら好きにすればいい
   それとも自決しようか?」

とがめ「・・・・・・私がやる」

―――

とがめ「鑢七花、最後に言い残したいことはないか?」

七花「無い
   なんの未練も無い」

とがめ「そうか・・・」

七花「さようなら、とがめ」

とがめ「・・・」






ブンッ

七花「・・・・・・
   しっかりしろよ、とがめ
   持ってた刀がすっぽ抜けちまって飛んで行ったぞ?」

とがめ「すっぽ抜けたのではない・・・
    投げ捨てたのだ」

七花「え?」

とがめ「己の目的に従うのなら、私はここでそなたを殺さなければならんのだろうが」





・・・父上

とがめ「いくらそれが復讐を果たすために必要なことであっても、それだけは出来ない」





こんな愚かな娘のことを

とがめ「そなただけは・・・殺せない」





どうか許してくれ




とがめ「私はそなたのことが大好きだから」


―――とある茶屋―――

 数週間後


七花「いたいた・・・
   とがめ、ようやく見つけたぞ」

とがめ「・・・何の用だ?」

七花「何の用って、俺はとがめの刀なんだから一緒にいるのは当然だろう?」

とがめ「私のことは忘れて好きなように生きろと命令したはずだが?」

七花「だから好きなように生きてるじゃねえかよ」

とがめ「私のことを忘れろ」

七花「忘れたよ、そして思い出した」

とがめ「・・・・・・
    まったく、折角私と別れられる機会を与えてやったのに」

七花「いるわけねえだろ、そんなもん」

とがめ「はぁ・・・
    本当に仕方のない奴だ
    こうなったら折れるまでこき使ってやる」

七花「極めて了解」

とがめ「・・・なぁ七花」

七花「ん?」

とがめ「私は自分勝手で自己中心で、何の救いもないような女だが、それでも・・・
    私はそなたに惚れてもよいか?」

七花「ああ、もちろんだとも」

とがめ「そうか・・・
    さて、能登はもう十分に見たから次は加賀だ
    では行こうか、七花」

七花「おう」




こうして、俺ととがめの新たな旅が始まった
守れなかった約束を果たすための新たな旅が

これで終わり・・・ではないんじゃ
もうちょっとだけ後日談的なものが続くんじゃ

最後の更新は9/22の夜7時ごろを予定しています

一ヶ月に渡って書き続けてきたこのssもとうとう終わりを迎えます
それでは、最後の投下をします

―――尾張―――

数ヵ月後


否定姫「あっ、来た来た
    ようこそ七花君」

七花「よう、久しぶり」

―――

七花「・・・それで、用ってなんだ?」

否定姫「私たちが昔見つけた、次元を切り裂く刀についての話よ」

七花「!」

否定姫「ちょっと気になって、あの刀があった工房に行ってみたんだけどね・・・
    何故か刀は一本も残ってなかったのよ」

七花「へ?」

否定姫「どうやったのかは知らないけど、多分四季崎記紀の仕業ね
    あと、刀の代わりにこんな手紙が残っていたわ」

七花「手紙?」

否定姫「ええ、記紀からのね・・・
    読んでみて」

七花「・・・俺の子孫へ
   十三本目の変体刀をもって虚刀鑢を完成し、よくぞ歴史の改竄に成功した・・・
   何だこれ?」

否定姫「完成形変体刀は十二本ではなく、
    あの時空を切り裂く刀を含めて計十三本目あったのよ」

七花「!?」

否定姫「つまり、記紀は七花君や私が過去に戻ってやり直すことまで計算していたのよ
    私たちが幕府を乗っ取ったことも全部予想してたってわけ」

七花「・・・」

否定姫「そして記紀は思惑通り、歴史の改竄に成功した・・・
    結局、私たちは最後まであいつの掌の上で踊らされていたのよ
    あーむかつく」

七花「信じられねぇ・・・」

否定姫「・・・ねえ、七花君
    あなたは過去に戻れて良かったって思う?」

七花「ああ
   とがめを死なせずに済んだからな」

否定姫「そう・・・
    私は戻りたくなんかなかったわ」

七花「え?」

否定姫「人生は一度きりしかないのよ
    だから私もあの女も、七花君も右衛門左衛門も・・・
    皆必死に生きていたんじゃない」

七花「・・・そうだな」

否定姫「過去に戻ってやり直す・・・
    そんなことができたら、私たちが今を頑張って生きている意味が無いじゃない
    だから私は今の私と、この世界を否定する」

七花「でもあんた、右衛門左衛門と会えて本当は嬉しかったんだろ?」

否定姫「そんなわけないでしょ」

七花「・・・あんた否定するのが好きなんじゃなくて、
   ただ単に素直じゃないだけじゃないのか?」

否定姫「否定するわ・・・
    ふふっ、悪かったわね
    こんなことでわざわざ呼び出して」

七花「いや、いいよ
   おもしろい話が聞けたし」

―――

七花「悪いな、わざわざ見送りに来てもらって」

否定姫「七花君のためなら、これくらい構わないわ」

七花「それじゃあな」

否定姫「ねぇ、七花君」

七花「ん?」

否定姫「私、あなたと一緒に旅した日々・・・
    つまらなくはなかったわ」

七花「そうか・・・俺もだよ」

否定姫「あら、本当に?」

七花「ただ、俺はあんたよりもとがめと一緒にいるほうが十倍楽しいけどな」

否定姫「・・・・・・
    本当、嫌な人間になっちゃったわね
    一体誰に似たのかしら?」

七花「さぁな
   ・・・それじゃ、またな」

否定姫「ええ、またね」

―――

七花「とまぁ、これが事の真相だったらしい」

とがめ「・・・」

七花「大したもんだよな、四季崎記紀は
   まんまとしてやられたって感じだ」

とがめ「・・・」

七花「とがめ、どうしたんだ?
   さっきから一言も話してないじゃないか」

とがめ「・・・どうしてあの女のところに行った?」

七花「へ?」

とがめ「どうして一人であの女に会いにいった!?」

七花「と、とがめ?」

とがめ「そんなにあの女と二人っきりになりたかったのか!?」

七花「お、落ち着けって
   ただ話を聞きに行っただけだから、な?」

とがめ「・・・ふんっ」

七花「何もやましいことは無かったから、許してくれよ・・・」

とがめ「・・・次、私に黙ってあの女に会いに行ったら二度と口をきいてやらぬからな」

七花「分かったよ・・・
   ところでさっきから何かを書いてるみたいだが、それは何だ?」

とがめ「ん? これはそなたと私が完成形変体刀を集めた記録を本にして書いておるのだ」

七花「あぁ、そういえばそんなものを書くとか前に言っていたな」

とがめ「・・・・・・
    よしっ、完成
    あとはこの本に題名をつけるだけだ」

七花「おっ、どんな題名にするんだ?」

とがめ「第一候補は 【ただしその頃にはあんたは八つ裂きになっているだろうけどな】 だ」

七花「そんな物騒な題名にするのかよ・・・
   というかその名前じゃ、本の内容がちっとも分からないぞ?」

とがめ「そうか?
    なら第二候補の 【とがめと七花、愛の赤裸々日記】 にするか」

七花「頼むから絶対にやめてくれ」

とがめ「むぅ、文句ばかり言いおって」

七花「もっと普通の名前にしてくれよ・・・」

とがめ「ふむ・・・ならば分かり易くこう名づけるとしようか」










――――――【刀語】と

以上でこのssは終了です
ここまで読んでいただき、ありがとうございます
ちなみにこのssはピクシブに乗せていますので、もし読み返したいという方がおられましたら使ってやってください
小説カテゴリでスレタイをそのまま検索ワードにして検索してもらえれば、すぐに見つかると思います

あと、見ているかどうかは分かりませんが、まとめサイト管理人様へ
もしも転載する際は、>>35,>>39,>>153,>>188,>>312 の注意書きは載せてもらえるようお願いします
>>243から>>252までの流れも乗せていただければ幸いです
また、ところどころ誤字や脱字があると思うので、その部分は修正していただいても大丈夫です

それでは皆様、また会う日まで
・・・ただしその頃にはあんたは八つ裂きになっているだろうけどな

また会う日まで・・・とは言いましたが、
作品についての質問などは受け付けていますので何か疑問点があったら返信しますので書いてもらって大丈夫です

追記
・・・もっと・・・ほめてくれ・・・(スラダン風)

原作序盤の無機物的な思考じゃなかったからじゃね?
きにせんでもええと思うよ?

>>453
返信ありがとうございます。
確かに原作通りの淡白な考えの七花からは離れていますね
ただこれも書き忘れていたのですが、七花はとがめという大切な人が死んだことや、否定姫やとがめとの旅を経て
命の大切さを知り、物事を多面的に見れる人間に成長した・・・という設定です。
もっと早く書いておけばよかったなぁ・・・

最後のボスラッシュってみんなどうやって勝ったんだろうな
作者による解説が読みたい

>>466
まず一人目は後から駆けつけた虫組あたりとリンチでしょうね
蝙蝠は忍者なので正々堂々戦う理由はありませんから
ただ虫組が来るまでに負傷していたので、蝙蝠はそこでリタイアしたという設定です

二人目については確か部屋に階段があったはずなので、
そこから七花よろしく銀閣も飛んで攻撃したというのが作者の考えです
まぁ相手は零閃が目で追える程度の力量なので、居合いの達人の銀閣なら普通に戦っても勝てるでしょう

三人目はご愁傷様

四人目もご愁傷様

五人目についてですが、アニメや原作を見る限り鎧は突進するしか攻撃が無さそうなので、
避け続けて、持久戦にもつれこめば鎧を着ている甲斐路はそのうち疲労で動けなくなるでしょう
後はかついでいって海に沈めるなり煮るなりすればいいかと

六人目はサンドバック

七人目は後から来た虫組あたりと共にリンチです
鳳凰も忍者なので正々堂々戦う必要はないです
悪刀を奪ってしまえば不死身でなくなるので、対して苦労もしないでしょう

八人目は日和号に普通に負けるでしょう
例え生き残ったところで後から来る仲間にやられると思います

十一人目は右衛門左衛門なら実力で勝てるでしょう

余談ですが、最後のあのコメントは刀語のラストシーンを意識して書いたものです
決して悪意があったわけではありません(必死)

皿場ちゃんはまにわにに殺されてない...よね?

>>472
このssでは誰も皿場ちゃんが生きていることに気づかず、生き残っている設定です
作者も皿場ちゃんは癒し系キャラとして気に入ってるので死んでほしくないですね

>>474
やったぜ
でも新体制でどう暮らしてるんだろう
大臣の一人になってたりして

>>475
そういうのもおもしろいですね
新政府の器の大きさを見せ付けるために、元々敵だった者すら大臣に登用するというのは十分ありだと思います

ただ、もしも作者が皿場ちゃんのその後を書くとすれば、のんびり農業でもやって暮らしていることにしますね
皿場ちゃんには物騒な世界より、そういった落ち着いた環境の方が似合ってると思います

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月29日 (月) 23:25:50   ID: vPXggnUd

お疲れ様でした!

2 :  SS好きの774さん   2014年11月18日 (火) 23:26:05   ID: Nonips6i

よかった
ますます好きになった

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