アーカンソー「ヘイ! ユーの名前は何?」(79)




ウィキだよりのにわか知識です。
くだらない妄想ですが、暇つぶしにでも読んで頂ければ幸いです。
私は艦これ全く知りませんのであしからず。










 ――1946年 7月1日――

 ――ビキニ環礁――








長門「……長門だ」

アーカンソー「へー? あんたが長門か。 よろしく!」

アーカンソー「思ったよりスマートね」

長門「…………」

アーカンソー「まあ、気持ちはわかるけど」

アーカンソー「こうやって出会えたのも何かの縁だし」

アーカンソー「あんたの事、教えてくんない?」

長門「…………」

長門「そんなこと聞いてどうする」

長門「どうせ貴様らに沈められるというのに」

アーカンソー「んー? 何か勘違いしてない?」

長門「……勘違いだと?」


長門「ふざけるな」

長門「我が国は貴様らの国に敗れたのだ」

長門「私がここに連れてこられたのは、訓練用の『標的艦』とする為だろうが」

アーカンソー「そうだね。 それは間違ってない」

アーカンソー「けど……それはあたしも同じなんだよねー」

長門「……何?」

アーカンソー「だってあたし、第一次世界大戦の頃から居るんだもん」

長門「!?」

長門「私より年上!?」

アーカンソー「あはは、そうだよー?」

アーカンソー「あたしは1911年生まれなの」

長門「…………」


アーカンソー「もういい加減あちこちガタが来はじめてるし」

アーカンソー「戦争も終わって、軍も余剰艦を整理したいってのがあるみたい」

長門「…………」

アーカンソー「まあ、そんな訳で」

アーカンソー「ある意味、あんたより残念な理由で『標的艦』になるのよ」

長門「…………」

長門「……そうか」

アーカンソー「日本ってどんな国?」

アーカンソー「あたしって硫黄島と沖縄しか知らないんだよねー」

長門「……硫黄島だと?」

アーカンソー「そう」

アーカンソー「地形が変わるくらい砲撃したのよ」


長門「そうか……」

アーカンソー「この前の戦争では そんな感じで」

アーカンソー「いっつも支援砲撃ばっかり」

長門「…………」

アーカンソー「正直……あなたみたいな戦艦と戦えるかなって」

アーカンソー「ちょっと期待してたんだけどね……」

長門「…………」

長門「……日本はいいところだ」

アーカンソー「!」

長門「毎年……春になると、『桜』という樹木が桃色の花を一面に咲かせてな」

長門「どの国だろうとも、あれの美しさに勝るものは そうはないと思う」

アーカンソー「へ~! 桃色って、ピンク色なんだよね」


アーカンソー「それにしても一面……って事は」

アーカンソー「木いっぱいに花を付けるの?」

長門「そうだ」

アーカンソー「ふふふ、それはきっと見事なんだろうなぁ」

長門「もちろんだ」

アーカンソー「…………」

長門「…………」

アーカンソー「一度……見てみたかったな」

長門「…………」

長門「……私の生まれは大正9年……いや」

長門「貴様らの言い方なら、1920年生まれだ」


アーカンソー「うん。 知ってるよ」

アーカンソー「ビックセブンのひとつだったよね」

長門「そう呼ばれたのも今は昔」

長門「今回の大戦では……主な任務は護衛ばかりだった」

長門「貴様もか?」

アーカンソー「あたしの任務は、新兵の訓練が多かったな」

アーカンソー「第一次世界大戦後、もう本当に訓練、訓練、訓練……」

アーカンソー「この前の戦争が始まってからも しばらくは練習艦でしたー」

長門「ふふ、月月火水木金金だな」

アーカンソー「はあ?」

長門「こっちの話だ」


アーカンソー「お? あそこにいるのは、プリちゃん!」

長門「プリちゃん……?」

プリちゃん「……その馴れ馴れしい呼び方は、やめろと言ったはずだ」

アーカンソー「いいじゃない♪ あたしもアーちゃんって呼んで♪」

プリちゃん「……失礼した、日本の戦艦」

プリちゃん「私は、プリンツ・オイゲンという名前だ」

長門「……プリンツ?」

プリ「元々はドイツ海軍の所属だ」

プリ「お前と同じく接収され、今は『プリンツ・ユージン』という名前を与えられ」

プリ「そして……ここに居る」

長門「…………」

長門「……長門だ」


長門「それにしても……まだまだ若そうなのに」

プリ「……確かに艦齢は若いがな」

プリ「私はダメージを受けすぎた」

プリ「私の艦尾はすげ替えられたものだし……正直に言って」

プリ「激戦をくぐり抜けてきた私の体は、もうボロボロの状態なんだ」

アーカンソー「1938年生まれなんだよねー」

プリ「就役は1940年だがな」

プリ「戦争末期には、訓練や支援砲撃ばかりで、最終的に武器弾薬も尽き……」

プリ「それすら難しい状態になった」

長門「…………」


プリ「だが……私の心は祖国ドイツにある」

プリ「いつか、必ず祖国に帰れる日が来る事を夢見ている」

プリ「今でもな」

長門「…………」

アーカンソー「…………」

プリ「可能性は低くとも」

プリ「『標的艦』になろうが沈まなければいい」

プリ「そうすれば……きっと」

長門「…………」

アーカンソー「…………」

長門「……どんなところだ?」

プリ「ん?」

長門「貴様の祖国、ドイツはどんなところだ?」

アーカンソー「!」


プリ「…………」

プリ「いいところだ」

プリ「春はかなり荒れる天候もあるがな」

プリ「夏場、海に面している地域はわりと涼しいし」

プリ「景色も素晴らしいぞ」

長門「そうか」

長門「是非とも行ってみたいな」

アーカンソー「あたしもー♪」

プリ「ふふふ……」


????「アーカンソーさん」

アーカンソー「ん? 何? ギリアム」

ギリアム「…………」

ギリアム「……準備が終わったそうです」

アーカンソー「!」

長門「!」

プリ「!」

アーカンソー「……そう」

アーカンソー「わかったわ」

ギリアム「…………」

ギリアム「アーカンソーさん」

アーカンソー「ん?」

ギリアム「私たちの国は……勝ったんですよね?」

アーカンソー「……ええ」


ギリアム「私は! まだ戦えます!」

ギリアム「いえ、戦えなくてもいい!」

ギリアム「輸送だって、哨戒任務だって、こなせます!」

アーカンソー「…………」

ギリアム「どうして……どうして、『標的艦』になんて……ならなくちゃならないんですか!」

ギリアム「私っ……私は……ぐすっ……」

アーカンソー「…………」

長門「…………」

プリ「…………」

アーカンソー「ギリアム」

ギリアム「……はい」


アーカンソー「それはね……」



アーカンソー「あたし達の祖国が決めた事だからよ」



ギリアム「!」

ギリアム「そ……そんな……!」

アーカンソー「命令された以上、それを文句言わずにやる」

アーカンソー「それが、あたし達の使命」

ギリアム「で、でも!」

アーカンソー「でもは無しよ」

アーカンソー「ギリアム。 使命を全うしなさい」

ギリアム「…………」


アーカンソー「……ふう」

長門「狡兎死して走狗煮らる……か」

アーカンソー「ふふ、優秀な猟犬扱いしてくれますか、長ちゃんは」

長門「知っているのか」

アーカンソー「この中では、最年長ですからねー」

プリ「どういう意味だ?」

長門「……ずる賢くて、素早いうさぎは厄介だが」

長門「それを捕らえた後の優秀な猟犬は、無用の物になり」

長門「煮られて食われるしかない、という内容の意味だ」

プリ「……酷い話だ」

アーカンソー「世の中って、そんなもんでしょ」


長門「……ところでアーカンソー」

アーカンソー「何?」

長門「見たところ、我々を沈めるはずの艦艇が見当たらないが?」

アーカンソー「…………」

長門「アーカンソー?」

アーカンソー「あたし達を標的にするのは、艦船の砲撃じゃない」

アーカンソー「新型爆弾よ」

長門「!!」

プリ「新型爆弾?」

プリ「大編隊による爆撃訓練か?」

アーカンソー「違う」

アーカンソー「日本のヒロシマ、ナガサキに落とされた」

アーカンソー「原子力爆弾の新型――」


長門「馬鹿な! あの忌々しい超兵器の新型だと!?」

プリ「原子力爆弾……私の祖国でも研究段階に入ったと聞いていたが……」

長門「あれの為にわが皇国の無辜(むこ)の民が、大勢死んだのだ!」

長門「その犠牲者数は……たったの一発で10万とも20万とも言われている!」

プリ「……あり得るのか? そんな超兵器が」

アーカンソー「…………」

長門「何という事だ……」

長門「アメリカは、世界を滅ぼすつもりなのか!?」

アーカンソー「…………」

アーカンソー「そんなの……あたしが知るわけない」

長門「!」


アーカンソー「…………」

アーカンソー「来たわ」

プリ「!」

長門「!」

長門「……B-29」

プリ「……ふん。 本当に一機だけだな」

プリ「面白い。 そんな威力があるのなら、是非ともこの目で確認してやろう」

プリ「そして、耐え切ってみせる」

長門「……っ」

     ……ヒュ―――――――――――……ンンッ

アーカンソー「…………」

アーカンソー「あれ? なんか、目標と違う場所に――」

ギリアム「あ――」








          カ ッ !!








     ドオオオオオオ―――――――――――ッ!!











長門「……ああああああああああああああああああああああああっ!!」




プリ「ひ!?ぎぃああああああああああああああああああああああああああああっ!!」




アーカンソー「ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」






     ンンッ……







長門「はあっ……はあっ……はあっ……」

プリ「……っ! あぐっ……くっ……」

アーカンソー「……ぐっ……く……」

プリ(な……何という……破壊力っ!)

長門(…………)

長門(我が皇国民は……こんな爆風を浴びたのかっ……!!)


酒匂(さかわ)「いぎゃああっ……い、痛いっ……痛いぃぃっ……」

長門「!!」

長門「酒匂(さかわ)!! しっかりしろ!!」

酒匂(さかわ)「……はあっ……はあっ……」

酒匂(さかわ)「……長…門……長門……さん」


長門「……!!」

長門(…………)

長門(……この傷……もう酒匂(さかわ)は……)

長門(…………)


酒匂(さかわ)「こ、これで……いいんですよねっ……?」

酒匂(さかわ)「ボクらが……ひど、い目に……会えば……」

酒匂(さかわ)「祖国は……ボク達の国……救われ、るん……ですよね……?」

長門「! ……ああ、もちろんだ、酒匂(さかわ)」

長門「大勢救われる」

酒匂(さかわ)「…………ふふっ」

酒匂(さかわ)「良……かっ…………た……」

酒匂(さかわ)「」











 ――軽巡洋艦 酒匂(さかわ)――

 ――沈没――










長門「…………」

長門「……っ!」 ギリッ!

長門「……アーカン――」


アンダーソン「ひっ……ひぎいいっ……」

ラムソン「痛いっ……痛いようっ……」

カーライル「あがっ……がっ……」


長門「」

プリ「」


アーカンソー「…………」

アーカンソー「……ギリアム」


ギリアム「……アーカンソーさん」

アーカンソー「…………」

ギリアム「お……おかしいですね……なんか……急に夜になって」

ギリアム「か、体の……感覚が……無く……て……」

ギリアム「私……どう……なっちゃったん……ですか……?」

アーカンソー「…………」

ギリアム「あは……は……は……」

ギリアム「」






 ――駆逐艦 ラムソン――

 ――駆逐艦 アンダーソン――

 ――兵員輸送艦 カーライル――

 ――兵員輸送艦 ギリアム――



 ――沈没――






アーカンソー「……ギリアム」

アーカンソー「あなたは……必ず生き残るはずだったのに……」

長門「!?」

プリ「!?」

アーカンソー「…………」

長門「どういう意味だ?」

アーカンソー「…………」

アーカンソー「今回の『実験』でね」

アーカンソー「一部始終を記録する観測機器をこの艦は搭載してたの……」

長門「……何?」

プリ「では何故? ほぼ爆心地に居たではないか?」

アーカンソー「わからない」


アーカンソー「予定では」

アーカンソー「戦艦ネバダの直上に落ちるはずだったの」

アーカンソー「風にでも流されたのかしら……」

長門「…………」

プリ「…………」


長門(……これが)

長門(こんな事が……許されていいのかっ……)

プリ(…………)

プリ(ともあれ、私は生き残った)

プリ(生きて……祖国へ帰るんだ)

プリ(必ず!)



―――――――――――






 ――同年 7月25日――

 ――ビキニ環礁――









LSM-60「アーカンソーさん」

LSM-60「準備が終わりました」

アーカンソー「……そう」

長門「…………」

プリ「…………」

アーカンソー「……エル、怖くなはい?」

LSM-60「そりゃあ怖いです」

LSM-60「超絶破壊兵器を海中に吊り下げて、それが爆発するんですから」

アーカンソー「…………」

LSM-60「……でも、いいんです」

アーカンソー「え?」

LSM-60「私みたいな中型の揚陸艦にはアーカンソーさんみたいな名前がありません」

LSM-60「でも、こんな大規模な実験の爆弾を吊り下げる大役ですから」

LSM-60「もしかしたら……これで立派な名前がもらえるかも知れないです!」


アーカンソー「エル……」

長門「…………」

プリ「…………」

LSM-60「じゃあ、行ってきます」

アーカンソー「……うん」

長門「……二発目、か」

プリ「……何発だろうとも耐えてみせる」

アーカンソー「…………」

長門「…………」

プリ「…………」








     原爆実験二発目

     『ベーカー』















     起爆
















          カ ッ !!








     ドオオオオオオ―――――――――――ッ!!









長門「……っぐく!!」


プリ「……っが!! ぎぎぎっ!!」







アーカンソー「……っああああああああああああああああああああああああああああ!!」







長門「!?」


プリ「!?」






     ンンッ……





長門「アーカンソー!!」

プリ「大丈夫か!?」

アーカンソー「…………」

長門「……っ!」


長門(この傷……)

プリ(……致命傷だな)


アーカンソー「……は……はは……」

アーカンソー「す……すごかった、ね……」

長門「アーカンソー……」

プリ「…………」

アーカンソー「……そっか」

アーカンソー「あたし……もう……ダメなんだね?」

長門「…………」

プリ「…………」

アーカンソー「……どっちも……すごいね……」

アーカンソー「あんな威力に……二回も……耐えられたんだから……」

長門「…………」

プリ「…………」


アーカンソー「…………ねえ」

長門「……なんだ?」

アーカンソー「こん、どは……さ」

プリ「…………」

アーカンソー「あたしたち……の国……仲……いいと、いいね……」

長門「…………」

アーカンソー「そしたら、さ……」

アーカンソー「友達に……なって、さ……」

プリ「…………」

アーカンソー「世界、じゅうを……見て……わらっ……て…………」

アーカンソー「……す……ごせ………………」

アーカンソー「」





     ――戦艦 アーカンソー ――

     ――LSM-60――

     ――空母 サラトガ――

     ――潜水艦 パイロットフィッシュ――

     ――潜水艦 アポゴン――

     ――ARDC-13――

     ――YO-130――



     ――沈没――




長門「……アーカンソー」

プリ「…………」

長門「……ぐっ」

プリ「長門!? ……大丈夫か?」

長門「…………」

長門「……いや」

長門「おそらく……私も長くないだろう」

プリ「…………」

プリ「……そうか」

プリ「…………」




     同年 7月29日



プリ「長門、生きているか?」

長門「……ああ」

プリ「…………」

プリ「お別れを言いに来た」

長門「……別れ?」

プリ「私は……祖国に帰れる事になった」

長門「……そうか。 良かったな……」

プリ「…………」

プリ「すまない」

長門「……謝る……必要はない」


プリ「……そうなのだがな」

プリ「奇妙な出会いでも……知り合った戦友を残していくのは、どうもな」

長門「ふ……ふふ……」

長門「戦友……か」

プリ「…………」

長門「アーカンソーが聞いたら……きっと喜ぶだろう」

プリ「…………」

プリ「……ああ。 きっとそうだな」

長門「向こうでも……元気で」

プリ「…………」

プリ「……さらばだ」




―――――――――――






     夜









長門「…………」

長門「…………」

長門「…………」


     ザザァ…… ザザァ……


長門(……波の音が、心地いいな)

長門(…………)

長門(私は……ちゃんと頑張れたのだろうか……?)


     ザザァ…… ザザァ……


長門(…………)

長門(私より後に生まれ……私より先に逝ってしまった艦達に)

長門(顔向けできるのだろうか……)



     大丈夫だよ


長門「!」

長門「……アーカンソー?」


     長ちゃんは、立派に頑張ったって

     みんな言ってるよ?


長門「……本当……か?」


     うん! だからね?

     もう……休んでもいいと思うな


長門「…………」


長門「……そう……だな……」

長門「……すごく……疲れた……し……」

長門「…………」

長門「…………」

長門「アーカンソー?」


     ザザァ…… ザザァ……


長門「…………」

長門「……!」

長門「月だ……」

長門「…………」


長門(……美しいな)

長門(…………)

長門(日本で見た月と何ら変わらない……)


     ザザァ…… ザザァ……


長門(…………)

長門(……そうだな、アーカンソー)

長門(もし……今度会えたら)


     ゴポ…… ゴポポ…… ゴポポ……


長門(味方で……いや……友人として……)

長門(お前と――)

長門「」









     ――元・大日本帝国海軍旗艦――

     ――戦艦 長門――

















     ――沈没――










―――――――――――



     ザザァ…… ザザァ……



プリ「…………」

プリ「まさかな……」

プリ「座礁してしまうなんて」

プリ「…………」

プリ「せっかく……あの爆発に2度も耐えたのに……」

プリ「…………」

プリ「…………」

プリ「長門……アーカンソー」

プリ「どうやら私も……お前たちの元へ逝く事になりそうだ」


プリ「…………」


プリ(……不思議だな)

プリ(あれ程帰りたかった祖国にもう戻れないのに)

プリ(どこか……安心している自分がいる)

プリ(…………)

プリ(祖国は……どうなっているのだろうか)


     大丈夫だ


プリ「!」

プリ「長門か?」



     あの激戦をくぐり抜けたお前を作り上げた国だ

     きっと立ち上がれるさ


プリ「…………」

プリ「ふふ……そうだな、長門」

プリ「きっとその通りだ」


     そうとも……だから

     もう安心して休むといい


プリ「…………」

プリ「……そうだな。 そうしよう」

プリ「…………」

プリ「長門?」



     ザザァ…… ザザァ……


プリ「…………」


プリ(……波の音が心地いい)

プリ(祖国で聞いた波の音には負けるがな)

プリ(…………)


     ザザァ…… ザザァ……


プリ(でも……なかなかどうして……悪くない)

プリ(…………)

プリ(長門……アーカンソー)

プリ(今度は……また会った……その時は――)

プリ「」









     ――元・ドイツ海軍所属――

     ――重巡洋艦 プリンツ・オイゲン――















     ――クェゼリン環礁沖にて座礁――

     ――投棄――










―――――――――――







     2014年 8月

     日本






あたご「ねーねー聞いた?」

あたご「イージス艦、2隻増えるんだって!」

きりしま「……今頃何言ってるの?」

あたご「え?」


きりしま「今年の初めくらいに発表があったんだけど?」

あたご「そ、そうだっけ?」

きりしま「……どうせぼーっとしてたんでしょ」

あたご「ち、ちがうもん」///

きりしま「もういいから……で? それがどうかしたの?」

あたご「え? い、いやその……名前は何になるのかなー?って思って」

きりしま「あー……」

きりしま「これまでの例からすると、旧海軍艦の名前になると思うわ」

あたご「やっぱりそっかー」

あたご「そろそろ『やまと』かな?」

きりしま「有名だからねー」


きりしま「活躍したし、『むさし』の方がありかも」

あたご「だねだねー♪」

きりしま「…………」

あたご「どうしたの? きりしま?」

きりしま「何となく、だけどさー」

あたご「うん?」





きりしま「『ながと』がいいかなーと思ってね」






     おしまい


少し補足します。

この一連の出来事はクロスロード作戦と呼ばれ
米軍が開発した二発の原爆実験でした。

長門は、二発目の爆発を受け、その4日後に沈み
『日本海軍最後の意地を見せてくれた』という美談もありますが
史実では、沈まなかった艦船の方が多かったりします。
(長門もそうだったらしいが、自沈の穴を開けられた、という説もあり)

二発目の原爆を海中に吊るす役割を与えられたLSM-60ですが
名前はそのままです。

プリンツ・オイゲンは、帰還途中に座礁・投棄されますが
スクリューだけは切り取られ、祖国に帰っています。


お付き合いありがとうございました。



―――――――――――




     20XX年 7月1日

     ハワイ沖




     アメリカ主導のもと

     欧米諸国とASEAN加盟国による

     大規模な演習が行われる事になった。









     かつて冷戦の主兵器だった『核』、それに航空戦力やミサイルは

     衛星軌道上まで正確に狙える高出力レーザーの出現により過去の遺物となり

     各国とも大艦巨砲主義が復活していた。




     そこに参加した各国は、さながら自国の威容を見せつけるがごとく

     自慢の最新鋭艦を披露する場として意気揚々としていた。




きりしま「……私達はもう旧式艦ね」

あたご「しょーがないよ、きりちゃん」

あたご「でも改修はされているんだし、頑張ろうよ!」

きりしま「レーザー弱体化煙幕弾撃ちまくるだけでしょ……」

あたご「それも立派な役割だよ、きりちゃん♪」

きりしま「はいはい」

あたご「あ! 見て見て、きりちゃん!」

あたご「この前大改修を受けた、アメリカのミズーリさんだよ!」

きりしま「おおー……あれが半世紀を経てもなお動き続ける歴戦の勇士かぁ」

きりしま「後に続くのは、戦艦ネバダに試作艦だったインディアナポリス」

きりしま「そして最新鋭艦のアーカンソーかぁ」


あたご「あっちにはEUの戦艦だね」

あたご「ポチョムキンにキングジョージ、プリンス・オブ・ウェールズ」

あたご「ドイツ新鋭艦のプリンツ・オイゲンやフランスのリシュリュー」

あたご「やっぱりイギリスが中心になってるかな」

きりしま「同じ島国の海洋国家だしね」

きりしま「でも……」

あたご「私達だって負けてないよね~」

きりしま「もちろんよ」

あたご「去年就航されたばかりの最新鋭艦・戦艦やまと!」

きりしま「続いて就航された、同じくやまと型二番艦むさし」

きりしま「……まあ今回のお披露目は無いけど」

あたご「しょうがないよ~特亜が不穏な動きを見せているから……」


あたご「でも」

きりしま「うん」

あたご「現在も旗艦で有り続ける『ながと』と、その姉妹艦の『むつ』!」

きりしま「2隻同時にならぶと壮観ね」

あたご「ぜったい負けてないよ!」

きりしま「当然よ」

あたご「…………」

きりしま「…………」

きりしま「あたご」

あたご「うん、きりちゃん」

きりしま「この演習、絶対モノにするのよ」

あたご「うん!」





     …………

     平和だな



     うふふ、長ちゃんのとこ

     仲良さそうだね♪



     わが祖国ドイツの名誉にかけて

     頑張って欲しいな







     出来れば、このまま仲良く轡(くつわ)を並べ続けて欲しいところだな



     人が人である限り難しいと思うけど

     あたしも長ちゃんの意見に賛成♪



     私もそう思う







     ふふふ……使われない方が平和だというのが

     なんとも滑稽な話ではあるが



     それは言いっこなしだよ、長ちゃん



     それもまた言い得て妙だな

     さて……そろそろまた眠くなってきたな







     おいおい、プリンツ・オイゲン

     もう眠いのか?



     若いのに早すぎだよー



     そう言われてもな……

     祖国がしっかりやっているのを見れただけで安心してしまって







     ふふっ……その気持ちはわかるな



     あたしは全然安心できなーい

     激おこプンプンだよー



     おいおい……アーカンソー







     大丈夫だ、アーカンソー

     お前の名を受け継ぐ艦が居る



     何の説得力もないよ、それ



     かもしれない

     でもな、アーカンソー







     妹たちが我々の名前を受け継ぐ限り

     きっとその名の由来を調べる者がいる



     ……!!



     プリンツ・オイゲンの言う通りだ、アーカンソー

     きっと……我々の悲劇に気がつく者が居てくれる

     そして、過ちを犯さないよう警告してくれるだろう






     …………

     そっか。 そうだね……きっと



     そうとも。 我々の存在は、きっと無駄にはならない

     我々の名前が受け継がれ続ける限り、永遠に



     ああ……絶対にな







     ふあ~……

     なんか安心したら、眠くなっちゃった……



     そうだな。 私も眠い



     ふふ。 それでは、眠りにつこう、長門、アーカンソー

     いずれこの太平洋がまた騒がしくなったら、目覚めることだろう







     そうだな

     願わくば、次も演習であるといいのだが



     もしくは宇宙人と戦ってる時かもね!



     おいおい……ふふ











     ハハハ……









     蛇足のおしまい

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