海未「普通の少女の、普通の恋」 (230)


最近、ふと私の目を奪う人がいる。サイドテールの髪を揺らし、私に向かって微笑む可愛らしい笑顔。


ずっと前から私のそばにいて、ずっと前から見てきたはずなのに、最近は見ていると何故かドキドキしてくる。


私はどうかしてしまったのだろうか。心臓病の類だろうか。私は病にかかってしまったのか。


にしては何故だろう。
これが病だとすれば、ひどく心地のいい病だ。


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サイドテール?何果ちゃんだい?


穂乃果「でねーっ!雪穂がねー!今年はね!」

ことり「うんうん」

いつもと変わらぬある日の昼時。
彼女は今日も元気に私達に語りかける。

彼女の明るく軽快な声色は平凡な昼の時間にも花を添えてくれる。

あんなに楽しそうに話をする人が他にいるだろうか。まぶしい、太陽のような笑顔だ。


穂乃果「...海未ちゃん、そんなに見つめられるとちょっと話しづらいんだけど...」

海未「...え?あ、すいません。続きをどうぞ」


>>2
調べたらサイドポニーだそうですね...
訂正します



穂乃果「ええっと、そう!雪穂が音ノ木坂に来るって決めてくれたんだ!」

穂乃果「ずっと悩んでたから私嬉しくて...うわっ!このパン美味しい!」

ことり「穂乃果ちゃん、食べるか喋るかどっちかにしようよ...」

穂乃果「ごめん」アハハ

海未「そうです、穂乃果は行儀が悪いですよ。口にものを入れて喋らない」

穂乃果「うっ、ごめんなさい...」


海未「まったく...」

穂乃果「...うう」


私に怒られた彼女はさっきと打って変わって悲しそうな顔になる。

怒られた飼い犬のようだ。尻尾が垂れ下がっている姿が容易に想像できる。

表情豊かだ。
なんとも言い表しにくいが、私は彼女のこんなところが、とても、いいなと思う。

海未「...」

穂乃果「...う、海未ちゃんなんでそんなに怒ってるの!?」

海未「え?別に怒ってませんが...」


穂乃果「嘘だよー!じゃあなんでそんなにじーっと睨んでくるのー!」

海未「えっ...そ、そうでしたか?」

穂乃果「怖いよもー!助けてことりちゃーん!」

ことり「うわっ、ほ、穂乃果ちゃん、くっつきすぎだよぉ...」

海未「あ...」

海未「...」


海未「はぁ...」

中庭のベンチに一人で座り大きなため息をつく。

いつになく気持ちが晴れない。もやがかかっているようだ。無意識に独り言を漏らす。

海未「最近の私はおかしいですね...。穂乃果のことを見過ぎです...。」

海未「胸も異様にドキドキしますし...これが心の乱れと言うやつでしょうか...」

海未「私も修行が足りませんね。もっと強い心を持って...」

ことり「海未ちゃんに足りないのは修行じゃなくて経験じゃないかなぁ?」

海未「ぅひゃあ!!こ、ことり!
いきなり出てこないでください!」

ことり「あはは、ごめんごめん。
はいジュース」


海未「...どうも」

ことりから缶ジュースを受け取る。
ひんやりしていて気持ちがいい。

ことりは私の隣に腰掛けて口を開く。

ことり「海未ちゃん最近変だよね。
なにかあった?」

海未「...やはりそう思いますか。ことりが言うのなら間違いないのでしょうね」

ことり「当然でしょー?何年幼馴染やってるとおもってるの」

海未「ふふっ、そうですね」


ことり「で?どうしちゃったの?」

海未「...実は最近すこし心の乱れを感じるのです。動悸がしたり、胸が苦しくなったり...」

海未「どうやら穂乃果を見てる時に起こるようなのですが」

海未「...やはりおかしいですよね?」

ことりを見ていても何ともないので、やはり原因は穂乃果なのだろう。

すると、ことりの顔が心底呆れたような表情に変わった。

ことり「...」

海未「...なんですか?」

ことり「...やっぱり海未ちゃんは経験が足りないよね」

海未「は?」


ことり「ことりね、その心の乱れの正体知ってるよ」

海未「ほ、本当ですか!?
心臓の病かと真姫に相談しようと思ってたのですが、さすがことりです!」

ことり「知りたい?」

海未「もちろんです...しかし、待ってください、少し心の準備が...」

まだ死ぬ準備はできていない。
ここで言われて耐えられるだろうか。

ことり「あはは、大丈夫だよ。
不治の病とかじゃないから。」

海未「...そうなんですか?」

ことり「うん。
...でも一応、病気ではあるのかな?」


海未「ならば教えてください。
病気は早期発見が大事と聞きます。

ことり「...そうだね」

ことりが少し悲しそうな顔になる。
どうやら言い淀んでいるらしい。やはり私は結構重い病気なのだろうか。

考えてる内にことりの口が開いた。

ことり「海未ちゃん、穂乃果ちゃんのこと、好きでしょ?」

海未「え?」


予想外の発言に一瞬思考が追いつかなかった

いや、しかし何だろう、穂乃果が好き?そんなの当たり前だ

ただ、鼓動が早くなる。
また動悸だ。何故、ここに穂乃果はいないのに...

海未「どういうことですか、私の病気はなんなんですか!?」

ことりは微笑みながらこちらを向いて、はっきりと言い放った。

ことり「...恋煩いだよ。」

ことり「惚れてるの。穂乃果ちゃんに」

ことり「ことりが見る限り、海未ちゃんは穂乃果ちゃんにぞっこんのベタ惚れだよ!」


海未「...え?」

海未「ええええええっ!?」

...とても大きな声が出た。
人生で一番の音量かもしれないその声は、生徒会室まで届いたという。


ことりに突然宣告された病は、確かに心臓病でもなく、不治の病でもなかったようだ


しかし、どうやら私の病は他の人の物とは形状がすこし異なったようで、病にかかること自体初めてだった私はひどく混乱した


その日は結局練習が手につかず、早退して家に帰り、ただぼんやりと布団に寝転がっていた


ぼんやりとしているとあの可愛らしい笑顔が頭に浮かんでくるので、ああ、どうやらことりの言うことは正しいんだなと、いよいよ私は認めざるを得なくなった

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ことり「おはよう海未ちゃん」

海未「...おはようございます、ことり」

ことり「...やつれてるね。もしかして昨日は相当悩んだ?」

海未「おかげさまで...。なにせ人生で初めてなもので」

ことり「あはは、でも海未ちゃんもこれで健全な女の子だね」

海未「...そういうものでしょうか」

女性に恋する女は、果たして健全なのだろうか...
私には考えても分からないことだ


穂乃果「二人とも!おはよー!」


明るい声が、私の冷静な思考を完全にストップさせる。体温が一気に上昇するのを感じた。


ことり「あっおはよう穂乃果ちゃん!」

穂乃果「海未ちゃんも、おはよー!」

海未「...!」

海未「(いけません、また動悸が...!)」

海未「ほ...あっ...」

穂乃果「...?」

穂乃果「どうしたの海未ちゃん?顔真っ赤だよ?」

海未「お、おはようございます!」

穂乃果「...お、おはよう」


海未「さ、早く学校に行きますよ!」

穂乃果「ちょ、海未ちゃん、手と足が同時に出てるよ!?」

海未「遅刻してしまいます!急ぎますよ!」

穂乃果「まだ全然平気だよ!」



穂乃果「...なんか海未ちゃん今日おかしくない?」

穂乃果「昨日も早退したし...もしかしてまだ具合悪いんじゃ...」

ことり「そうかもねえ」

穂乃果「...もしかして、ことりちゃん原因知ってる?」

ことり「どうだろうねえ」ニコニコ


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恋。

一言で言えば恋とは、「私とは無縁の物」だった。

幼い頃から引っ込み思案で、人との関わりなどほぼ無いに等しかったからだ。ましてや異性など、父親くらいしか近くにはいなかった。

穂乃果達と仲良くなってからは、更に異性との交流は減った。

必要無かったからだ。
全て穂乃果達が教えてくれるし、何にでも穂乃果達が付き合ってくれたから。

海未「...だからといって」

海未「...穂乃果に恋をしてしまうなんて...!!」


結論から言えば、私の人生で初めてである恋の初日は最悪であった。

気付く前も動悸は感じていたが、穂乃果を想い人と認識してからはその比ではない。

穂乃果の声を聞くだけで、顔の表面がカッと熱くなり、声などとても出せない。

穂乃果に音が聞こえてしまうのではないかと思うほど激しく心臓は脈を打つ。

でも穂乃果の顔が見たい。しかし顔を上げれば自分の真っ赤な顔を穂乃果に晒してしまう。

そんなことをすれば気持ちに気付かれてしまうかもしれない...。


海未「はあ...」

溜め息が止まらない。

昔から自分の周りの女子は、暇さえあれば恋の相談ばかりしていた。

当時は理解出来なかったが、今なら少しは理解できる。この気持ちは、とても一人で処理し切れる物ではない。


しかし私が恋の相談など出来るだろうか?否、出来ない。
何故なら私は異端だからだ。

世間では蔑まれ気持ち悪がられるような嗜好だということは私にも分かる。穂乃果にさえ気付かれてはいけない気持ちなのだ。

だけど、もし相談できる人がいるとすればーーー


ことり「海未ちゃん何やってるの?」

海未「おわぁ!!ことり!!」

海未「音もなく背後に立たないでください!」

ことり「いや...一応声はかけたんだけど...」

海未「...」

海未「...ごめんなさい」

ことり「いや...絶対海未ちゃん考え込んでるって分かってたし、いいけどね?」


海未「穂乃果は?」

ことり「ぷりぷり怒って先に帰っちゃったよ。なだめたけどあれは相当怒ってるねえ」

海未「...穂乃果にはかわいそうですが、少し時間を必要です...いつも通り穂乃果といたら私がもちませんから...」

ことり「朝も酷かったもんね...」

笑いながらことりは隣に座る。
朝は緊張のあまり挨拶も困難で、何をしたかすらあまり覚えていない

ことり「まあ、こうして居残って生徒会の仕事ほぼ終わらせちゃってるんだし、許してくれるんじゃないかな?」

海未「すみません、ストレスを仕事にぶつける性分でして...」

ことり「便利な性格だね...」


海未「!」

ことりと他愛ない話をしてる中、ふとさっき考えていたことを思い出す

ことりなら大丈夫なのでは?

体を乗り出し話を切り出す。


海未「ことり、少しいいですか?」

ことり「ん?」

海未「...コイバナ、しませんか?」


勇気を振り絞って言った私の言葉を聞いて、ことりはお腹を抱えて笑い出した。


海未「なんですか!なんで笑うんですか!」

ことり「はぁー...面白い。
いや、ちょっと、海未ちゃんからそんな単語出てくると思わなくって...ふっ...」

海未「し、失礼ですよ!わ、私だって女子なのですから!」

ことり「うん、本当海未ちゃんは成長したよね」

海未「どういう意味ですか...」


海未「それで...その、相談に乗ってくれますか...?」

ことり「うん、ていうか海未ちゃんがしたがってるだろうなって思って今日は来たんだし」

海未「そ、そうだったのですか。お世話になります...」

ことり「ううん。で?海未ちゃんは何で悩んでるのかなー?」

海未「...その、ことりは」

海未「ことりは、私を気持ち悪いとは思わないのですか?」

ことり「え?気持ち悪い?」

ことり「...どうして?」


海未「どうしてって...だって私は女性なのに、女性に恋してるのですよ?」

海未「異常性壁というものです。
気持ち悪がられるのが普通だと思うのですが...」

ことり「ああ、そういうことね」

ことり「確かにね。気持ち悪いかもね!」


一刀両断。
ことりの甘い声色が、私の心に突き刺さる。

そうでした。ことりは、言う時は言う子でした。


海未「...」

ことり「ああっ!?違うの!!
違うんだよ海未ちゃん!」

ことり「あの...確かに世間では気持ち悪がられるかもしれないけどね!ことりは平気だから!」

海未「...いえ、大丈夫ですよ。
ことりの言いたいことはよく分かります...」

ことり「本当に?
いや、大丈夫だよ。同性愛は今や世界でも認められつつあるし...」

ことり「それに、どんな形だろうと、海未ちゃんが悩んでるなら私は相談くらいいくらでも乗るから!」

海未「そうですか...」


私のフォローもしつつ真面目に相談を聞いてくれることりはなんて優しいのだろう。

本当にいい親友を持ったものだ。


ことり「で?海未ちゃんはどうするの?」

海未「え?」

ことり「え?じゃなくて!
穂乃果ちゃんにアプローチしないの?」

海未「ア、アプローチ!?
どういう意味ですかそれは!」

ことり「そのままの意味だよ!
恋しちゃった以上、なんとかして穂乃果ちゃんに振り向いてもらいたいでしょ?」

海未「...あ」

そうだ。
恋なのだから、最終目標は告白、そして結ばれること...

気持ちの整理に忙しくて、そんな先のことは考えていなかった。


ことり「で?海未ちゃんはどうするの?」

海未「え?」

ことり「え?じゃなくて!
穂乃果ちゃんにアプローチしないの?」

海未「ア、アプローチ!?
どういう意味ですかそれは!」

ことり「そのままの意味だよ!
恋しちゃった以上、なんとかして穂乃果ちゃんに振り向いてもらいたいでしょ?」

海未「...あ」

そうだ。
恋なのだから、最終目標は告白、そして結ばれること...

気持ちの整理に忙しくて、そんな先のことは考えていなかった。


海未「...考えてもいませんでした」

ことり「海未ちゃん...
ただドキドキしてるだけじゃ何も始まらないよ」

海未「で、ですよね...」

ことり「そうだよ。行動しないと、この病気は本当に不治の病になっちゃうんだよ?」

ことり「...それとも、海未ちゃんはただ想ってるだけで満足なの?」

海未「そ、そんなことは!」

ことり「ふふ、だよね。
だったら行動しないと!穂乃果ちゃんは可愛いからすぐ取られちゃうよ」

海未「...はい。
ありがとうことり。すこし自分のやるべきことが見えた気がします」

ことり「海未ちゃんの役に立てて嬉しいよ。」

海未「ことりは優しいですね。
また相談に乗ってくれますか?」

ことり「もちろん!またコ・イ・バ・ナしようね!」

海未「も、もう...からかわないでくださいよ!」

ことりが笑う。

人生で初めて。
今まで下らないとさえ思えた恋の相談は、なんというか、とても楽しかった。


今日はここまでです

明日また同じ時間に書き始めます



海未「穂乃果!」

穂乃果「え?」


恋の相談から数日経った日の朝。
私はついにことりと練りに練った作戦を実行しようとしていた。

穂乃果を呼ぶ声が予定より少し大きくなってしまったが問題ない。

穂乃果「何?海未ちゃん」

海未「先程メールが来たのですが、ことりはすこし遅れるようなので先に二人で行きましょう」

穂乃果「え?そうなんだ!
穂乃果全然メール見てなかったよー」

海未「全く...では行きましょうか」

穂乃果「うん!」


せ、成功した。
久しぶりに穂乃果とまともに話せた気がします。

緊張を押し切り喜びが感情を支配する。

穂乃果と一緒に二人きり...今まで何回もあったシチュエーションですが、こんなにも嬉しかった瞬間がかつてあったでしょうか。

穂乃果「久しぶりだね、海未ちゃんと二人きりって」

海未「えっ、あぁー...そうですかね?」

穂乃果「そうだよー!いっつも三人一緒だったもん!」

海未「そう言われるとそうだったかもしれません」

穂乃果「だよねだよね!」

穂乃果「...それにちょっと安心したよ」


海未「え?」

穂乃果「最近海未ちゃんちょっと変だったから...なんか悩み事でもあるのかと思って」

海未「...ああ、まあ、あるにはあります」

あなたの事なのですがね。
と言ってやりたくなるがグッとこらえる。

穂乃果「...穂乃果でよければ聞くよ?」

ほ、穂乃果が私を心配してくれていたなんて...!

心臓が脈を打つ。でも今回はいつもの激しい動悸とは違い、心地よく私の体にリズムを刻む。

嬉しい。
浮き足立つとはまさにこのこと。
想い人と一緒にいることはこんなにも楽しいものだったのですね。


海未「大丈夫です。自分で解決しますから!」

穂乃果「そう?ならいいんだけど」

穂乃果「...なんか今日海未ちゃん機嫌いい?」

海未「そんなことありませんよ?ふふっ、そう見えますか?」ニヘッ

穂乃果「う、うん。ちょっと怖いくらいだよ...」


穂乃果との登校時間はあっという間に過ぎ去り、私は少し名残惜しさを感じながら校門をくぐった。


ことり「やったね海未ちゃん!」

海未「ええ!ことりのおかげです!」


最近は毎日ことりと生徒会室で相談をするのが日課になっていた。

今日は作戦の実行日。
作戦の成功を伝えるとことりは自分のことのように喜んでくれた。


ことり「すごいよ海未ちゃん、緊張しないでちゃんと話せたんだね!」

海未「本当にことりのおかげですよ...
私一人ではこんなこととても出来ませんでした...」

海未「ありがとうございます」

ことり「...うん」


ことり「それにしても海未ちゃん機嫌いいね。そんなに嬉しかった?」

海未「...恥ずかしながら、舞い上がってしまっていますよ。」

海未「想い人と一緒にいると、世界がまるで変わるのですね。周りの女性が恋に現を抜かすのも理解できます」

ことり「いいねー!
ことりもその気持ちわかるなぁ」

ことり「でもこんなにユルユルじゃ、海未ちゃんはまた修行し直さないとだね」

海未「...あ、そういえば」

先ジャンル教えてくれ、NTR的な感じか?


メールも含めるとかなり回数を踏んだことりのとの恋の相談だが、ひとつだけ気になっていることがあった。

海未「ことり、ひとつ聞いてもいいですか?」

ことり「なに?」


海未「ことりは、好きな人はいないんですか?」


私に快く恋愛のアドバイスをくれることり。
恋愛に関して間違いなく経験者だが、いままで一緒にいてそんな素振りは見たことがない。

ことりの恋愛遍歴が気になっていた。


>>53
先の展開をうっすらとしか決めていないのでハッキリ言えませんがNTRはないです

NTR展開はなくてもねっとりとした展開はあるのかな?


しかし聞いた途端、今まで笑っていたことりの顔が、少しだけ切なそうな表情に変わってしまった。

そして、小さな声で答えた

「...いるよ」

ことりの表情をみて我に返る。
やってしまったと思った。


海未「...あ。すみません...デリカシーがない質問を...」

ことり「いいよ別に」

海未「...」

ことり「...」

海未「...そろそろ、部室に行きましょうか?仕事も終わりましたし」

ことり「知りたい?」

海未「え?」

ことり「ことりの好きな人、知りたい?」


>>57
そうですね
できるだけさっぱりさせたいとは思ってますが多少のねっとりはあるかもしれません


海未「...えっと」

ことり「...知りたいから聞いたんだよね?」

海未「は、はい。それはまあ...」

海未「でも!言いたく無いのなら別に無理にとは...

ことり「穂乃果ちゃん」





海未「...え?」





ことり「ことりは、穂乃果ちゃんが...好き」



ことりの言った言葉は、私の頭の中で反響を繰り返し、何度も何度も、私の心に訴えかけた。

ことりも穂乃果のことが好き?

ことりは私にアドバイスをくれた。

ことりは応援してくれたのでは?


様々な気持ちが私の中で混ざり合い、そして、気持ちの整理がつかないうちに目の前のことりに行った私の行動は


海未「...ごめんなさい」


謝罪だった。



ことり「...なんで海未ちゃんが謝るの?」

海未「だ、だって!
ことりは私を応援してくれたじゃないですか!自分も穂乃果が好きなのに...」

海未「自分の気持ちを抑えて、私に協力してくれたのでしょう?私達が親友だから...幼馴染だから...!」


喋っているうちにことりへの謝罪の気持ちが強くなる

ことりは私よりもずっと前から穂乃果に恋をしていたはずだ

なのに、後から気持ちに気付いた私を幼馴染だからと応援してくれていた。

ことりは泣き虫だ。
きっと涙を堪えて笑顔で私を応援してくれたに違いない。


海未「...」

ことり「...ぷっ」

海未「...?」

ことり「あはははっ、ふふふ...!」

静かな生徒会室に、ことりの笑い声が響く。

いつも通りの明るく優しい笑い声。


ことり「もう...海未ちゃんは真面目なんだから...」

海未「...な、なんで笑っていられるんですか!辛くないんですか?」

ことり「...だって、謝らなきゃいけないのはことりの方なんだよ?」



海未「いえ、そんなこと...!」

ことり「海未ちゃんごめんね。
ことりも穂乃果ちゃんのことが好きなのに味方みたいなフリしてて」

ことり「ことりは嘘つきなんだ」

海未「ことり...」

ことり「だからね、今までは手助けしてあげたけど、これからはライバルだよ」

ことり「難しい恋だけど、お互い頑張ろうね、海未ちゃん」

海未「...」

海未「...はい、望むところです」


幼馴染のことりは、私が知らない間に随分と強かな少女に成長していたようだ。

私が思っているよりずっと。
私なんかよりも遥かに。


穂乃果が好きだと私に告白したことりの瞳は、その想いが紛れもなく本気であると認識するには十分すぎるほどに私をまっすぐ見つめていた

薄いピンク色に染まった頬は、ただ純粋に恋をする同世代の少女そのものだった。


私は、幼馴染と同じ人を好きになった。
そして今日その幼馴染と

敵同士になった


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ーーーーーー

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今日はここまでです

また明日同じ時間に再開します


ことり「今日はことりの勝ちだよね?」

海未「...むぅ。スキンシップではことりに敵いませんね」

ことり「へっへーん!」


ことりと敵同士になってから数日が過ぎたある日。

敵同士だからといってそっけなくなる...なんてことはなく、むしろ前より私とことりの距離は近くなっていた

恋の相談は依然として続いていて、穂乃果と3人でいる時は穂乃果を取り合い、いなくなれば即相談というくらいの重要事項になっている

今日も穂乃果と帰り道で別れた後に公園のベンチに座って話し込んでいた。


海未「やはり私もスキンシップを取り入れてみた方がいいのでしょうか...」

ことり「海未ちゃんのスキンシップは最終手段じゃない?今までドライだった人がいきなりそういうことするとグッとくるっていうよ」

海未「本当ですか?
なるほど、奥の手ということですね。メモしておきましょう」

ことりのアドバイスは非常に役に立つ。

敵である相手にアドバイスなど冷静になってみればおかしい話だが、すでに女性に恋する女性同士なのだ。

幼馴染という慣れ親しみもあればこれくらいどうということはない。


ことり「海未ちゃんってさぁ」

海未「はい?」


ことり「告白はするの?」

海未「え...ま、まあ?それを目標に頑張っているわけですし?」

ことり「へえ~、以外と積極的なんだねぇ」

言っていることとは裏腹に、ことりは嬉しそうな笑みを浮かべている。どうやら私に告白する勇気などないと踏んでいるようだ。

まあその通りなのだが。

海未「そ、そういうことりはどうなんです?告白する気はあるんですか?」

ことり「え、ことり?」

ことり「うーん。ことりはいいかな」

海未「ですよね...」


海未「ん?あれ、今なんて?」


海未「いま、「いいかな」って言いました!?」

ことり「え、うん。そう言ったけど...」

海未「...その「いいかな」は「いいかな」という、つまり「告白するのはいいかな」という否定の意味での「いいかな」...ですか?」

ことり「そうなるねぇ」

海未「...何故?」


正直驚いた。
ことりは私に宣戦布告した日から先手を取って穂乃果にはベッタリだったし、告白だっててっきり先を越される物かと思っていた。

まさか告白自体を考えていなかったとは。


ことり「うーん...なんていうのかな。勿論穂乃果ちゃんは好きだよ?でもね、今のままで幸せっていうか...」

海未「...でもそれでは私が穂乃果を取ってしまうかもしれませんよ?」

ことり「だからそうさせない為にことりも精一杯アプローチしてるの!要は穂乃果ちゃんが海未ちゃんに傾かなければいいんだもん」

海未「なるほど、そういう戦いでしたか。私はてっきり取った取られたの真剣勝負かと...」

ことり「え?その通りだよ?」

海未「え?」

ことりの目に光が宿る。
私に宣戦布告した日の時と同じ瞳。
強い意思を称えた恋愛モードのことりだ。


海未「告白しないでどうやって穂乃果を取るというのです!」

ことり「わかってないなあ...
私はもちろん告白しないけど、穂乃果ちゃんの方から誘って来たり告白したりしてきたら喜んで受けるよ?」

海未「はっ....受けるは受けるのですね...」

ことり「だからことりは受け身になっただけで気持ちは攻めの姿勢なの!海未ちゃんちょっと勝った気になるのが早いんじゃない?」


ことりがクスクスと笑う。
さすがことり。天然でどこか抜けているようで実はなかなかに計算高い少女だ。

思い出してみると昔から私はことりにだけは勝てなかった気がする。


海未「...ことりは昔からそうですよね。計算高いというか、要領がいいというか...」

ことり「海未ちゃんも昔からそう。
何にでも真面目ですぐに騙せちゃう」

海未「まったくことりには敵いませんよ...
なんだかこの勝負も自信がなくなってきました...」

ことり「...でもね?最終的に恋愛で大事なのは、海未ちゃんが持ってるような真っ直ぐな気持ちなんだよ?」

海未「え?つまり私にも勝機があると?」

ことり「それはどうだろうねぇ。
なにせ穂乃果ちゃん今は海未ちゃんなんて眼中に無いと思うしぃ?」

海未「ぐぬぬ...!あなたという人は!」


海未「わ、私だって負けていませんよ!穂乃果にどんどんアプローチして、ことりの付け入る隙など無くしてしまいますから!」

ことり「へぇ~。アプローチって例えば?」

海未「...え?」

ことり「具体的に!アプローチって何するの?デートに誘うとか?」

海未「デ、デ、デート!?
む、無理です!いきなりハードル高過ぎます!」

ことり「えー?でもそれくらいしないとことりには勝てないと思うけどなぁ」

海未「でも...うぅ...デートなんて私にはどうしたらいいか...」


ことり「...」

ことり「じゃあ、海未ちゃん...デートしてみる?」

ことりが、すこし伏せ気味の声で呟いた。

さっきまでのように軽口を叩いていた口調とは違い、表情も心無しか真面目に見えた。


海未「デート...ことりと私でですか?」

ことり「そうだよ。
シミュレーション。海未ちゃん二人きりでデートなんて初めてだろうからことりが色々教えてあげるよ」

海未「本当ですか?
しかし、そうですね。誘うとなれば万全を喫したいですし、お願いします」

ことり「ふふ、決まりだね。
じゃあ日時はメールで送るから」

海未「ええ、ありがとうございます」


デートの約束を取り付けて、長くなった相談を切り上げる。

赤い夕日が道を照らす中、私達は腰を上げてそれぞれの帰路についた。



海未「デート...ですか」

海未「着ていく服を考えておかないといけませんね」


家に帰ってから、私は柄にもなく浮かれてしまっていた。

恋は、相手と結ばれることが喜びと思いきや、実は他にも色々楽しいことがついてくるのだ。

最近、ことりと恋の相談している時間が楽しい。そばに穂乃果がいる時もドキドキはするが楽しいし、毎日が目まぐるしく、まさに青春といった感じだ。


...まるで私のような女性らしさのカケラもない女が、同世代の女の子達と同じようにになれた気がして、すこし照れくさい。



海未「ふふ、恋とは楽しいものだったのですね」

海未「この気持ちに気付かせてくれたことりには感謝しなくてはいけません」


この時、私はまだ気付いていなかった。

自分がどんな存在なのかを忘れていた。

恋は楽しいものだが、自分の抱えている恋が、他の人のものとは形状が違うものだということを、忘れていたのだ。

ことりがあんなに優しく受け入れてくれたから...

ことりのおかげでこんなにも楽しかったから...

ーーー
ーーーーー

ーーーーーーー

今日はここまでです
また明日同じ時間に


ことり「海未ちゃん!こっちだよ!」

海未「こ、ことり。すみません。準備が遅れてしまって...」

ことり「ダメだなぁ海未ちゃん。
穂乃果ちゃんを待たせたりしたらきっと怒るよ?」

海未「返す言葉もありません...」


待ちに待ったデートの日がやって来た。

駅の改札の前で待ち合わせという約束は一昨日決まったものだが...

なにせ相手はお洒落なことりだ。変に気合が入ってしまい着ていく服を決めるのに丸2日悩んで結局新しい服まで買った。

海未「(シミュレーションとはいえ、地味な格好ではことりと並んで歩けませんからね...)」

海未「(...しかし、これでも不安です。ちゃんとことりに見合った服装になっているでしょうか...)」



ことり「それにしても...」

ことり「海未ちゃん!今日すっごく可愛いね!」

海未「えっ!?
そ、そうですか...?」

ことり「穂乃果ちゃんとのシミュレーションだからって気合い入れ過ぎじゃない?」

ことりがクスクスと笑う。
これは穂乃果ではなくあなたのことを考えて努力した結果なのですが...

ん?そういえば私、穂乃果のことは全く考えていませんでしたね....

ことり「それにしても可愛いなぁ...ことり海未ちゃんに乗り換えちゃうかも!」

海未「なっ!何を言うんです!
私にはもう穂乃果という心に決めた人がいるんですよ!」

ことり「冗談だよ冗談」


海未「もう...ことり...」

頬がカッと熱くなる。穂乃果の時と一緒だ。
思えば私服を褒められたことなんて初めてかもしれない。

しかし...いくら褒められてもことりのファッションセンスにはかなわない。


海未「こ、ことりこそ...気合いが入り過ぎていませんか?す、すごく可愛いですよ...」

ことり「えへへ、穂乃果ちゃんのこと考えてたらつい!」

ことり「どう?これなら穂乃果ちゃんも可愛いっていってくれそうじゃない?」

海未「...まあ」

まあまず間違いないだろう。
今のことりを見て可愛いと思わない人間など、老若男女どこをとっても存在しないといってもいいくらいだ。


海未「まあ?穂乃果に負けずとも劣らずといった感じですね。きっと穂乃果も可愛いと言ってくれるでしょう」

ことり「そっけないなぁ海未ちゃん。まあいいや、穂乃果ちゃんと来た時にうんと褒めてもらおうっと」

海未「いやそっけなくしたわけではなくてですね、本当にかわいいですよ...?」

ことり「はいはい、わかってる。とりあえず最初はどこにいく?」

海未「そうですね。あ、せっかくことりがいますから、服選びに付き合ってもらえますか?」

ことり「いいよ!じゃあ服屋だね。
よし、じゃあ海未ちゃん手を出して」

海未「? こうですか?」

ことり「ぎゅーーーっ!」


差し出した手をことりがいきなり握る。

指と指が交差しあい...
これは恋人繋ぎだ。

海未「ことり!な、なんのつもりですか!?」

突然のことだったのでかなりドキッとした。
体温が上昇していく。

ことり「はい、慌てない!
穂乃果ちゃんともし手を繋ぐことになってそんなになってたらかっこわるいよ!」

ことり「これはことりのシミュレーションでもあるんだから!今日は一日こうだよ!」

海未「そ、そんな...恥ずかしいですよ...」

ことり「だよね。でも我慢するんだよ!」

ことりに引きずられるようにして私達は服屋に向かった。


ことり「うーん、海未ちゃんにはこれが似合うと思うな!」

海未「ちょっと、なんですかその短いスカート!舞台衣装じゃないんですから!」

ことり「えー?ダメなの?
じゃあこっちの服は...」

海未「なんで肩が出ているんですか!露出が多すぎます却下!」

ことり「もう!ことりが選んだの着てくれるんじゃなかったの?」

海未「うぐっ...それはそうですが...
あっことり!この服可愛いですよことりに似合うのでは?」

ことり「話を逸らそうとしたって...わぁ!可愛い!どうしよう試着しようかなぁ!」

海未「ふぅ...」


ことり「うーん、こっちの服を買うとしたら、合うのはこっちかな?」

海未「ことりは凄いですね。
私はそこまで考えて服を選んだことはありません」

ことり「これくらい普通だよ?
ねえ海未ちゃん、穂乃果ちゃんはどんな感じのが好きだと思う?」

ことり「こっちかなぁ...いやいやでもやっぱり穂乃果ちゃんなら...」

海未「私は穂乃果ではないので分かりませんが...こっちじゃないですか?」

ことり「本当に?本当にそう思う?穂乃果ちゃん可愛いって言ってくれるかなぁ...?」

海未「...」


服を選ぶことりの目は、真剣そのもので、若干の不安が垣間見得た。

ことりは服が大好きだ。
作ることにも着ることにも長けているし、本人も自信を持っている。

しかし好きな相手のことを考えるとやはり不安なのだろう。
今のことりの頭の中にはきっと穂乃果しかいない。

海未「(そんなにも...穂乃果が好きなのですね)」

胸がちくりと痛んだ。
何故だろうか。

ことりの穂乃果への想いには勝てないと、自ら悟ったからだろうか。


海未「...ええ。きっと可愛いと言ってくれますよ」

海未「幼馴染の私が言うのですから、間違いありません」

ことり「本当!?じゃあこれ買っちゃおうかな!」


ことりの顔に笑顔が宿る。
やはりことりは笑顔が一番だ。



ことり「結局ことりはあの服買っちゃったけど、海未ちゃんは何を買ったの?」

海未「秘密です!」

ことり「えーずるいなあ。
着た所を見れるのは穂乃果ちゃんだけってこと?」

海未「まあ、そういうことですね」

海未「(...あの短いスカートを買ってしまったなんて、恥ずかしくて言えませんからね)」

ことり「...」

ことり「海未ちゃん、ホラ、手!」

海未「あ、はい」

ことり「次はゲームセンターにいこう!」

海未「ちょ、ことり、早いですよ!」


海未「私、ゲームセンターとか来たことがないのですが...」

ことり「そんなこと言って、穂乃果ちゃんがゲームセンター行きたいって言ったらどうするの!」

海未「ことりは来たことあるのですか?」

ことり「あるよ!クレーンゲームとかは取れないんだけど結構ハマっちゃったり」

海未「取れないのにやるなんてお金の無駄です!私はやりませんよ!」

ことり「...!!
海未ちゃん!あれ!」

海未「なんですか!やりませんよ!」



ボトッ

店員「あー、残念!」


海未「クッ、取れません!
なんで!穂乃果のフィギュア!」

ことり「代わって海未ちゃん。
次はことりがやるよ...」

海未「もうやめましょうことり...
いくらお金を入れてもあのクレーンのアームは穂乃果を取ってくれる気がありません」

ことり「ちょ、ちょっと待って!
ひっかかったよ!アームに穂乃果ちゃん引っかかった!」

海未「本当ですか!?ああっ!すごいです、これはいけますよ!」

ことり「あっ」


ゴトンッ!


店員「おめでとうございます!
フィギュアふたつゲットですね!」


海未「穂乃果の隣にいた私のフィギュアまで落ちて来ましたね...。すごいですことり...」

ことり「...海未ちゃん。穂乃果ちゃんどうぞ!」

海未「え?いえいえ、取ったのはことりですから、譲りますよ。欲しかったのでしょう?」

ことり「でも、お金はほとんど海未ちゃんが入れてたし!ことりは貰えないよ!」

ことり「本物の穂乃果ちゃんはことりが貰うから、海未ちゃんにはフィギュアで我慢してもらうの!」

海未「なっ!またそうやって生意気な口を!フィギュアも本物も私の物です!」

ことり「それに海未ちゃんのフィギュアも可愛いしね」

海未「う、だからからかわないでくださいって...」


ことり「次は映画!もちろん恋愛映画だよ!」

海未「む、無理です!
恥ずかしくて見てられません!」

ことり「海未ちゃんがそう言うと思って、キスシーンとかは無い映画だってことはリサーチ済みだよ」

海未「え?そうなんですか?
ことりは用意がいいですね...」

ことり「当たり前だよ!
穂乃果ちゃんの時も徹底的にリサーチして絶対寝かせないようにするんだからね」

海未「なるほど...興味があるものでないと穂乃果は寝てしまいますからね」

ことり「じゃあ観ようか。
海未ちゃんポップコーン買ってきて!」

海未「任せてください!」


アナタハアノコガスキナンデショ!?

ソ、ソウダケド


海未「...」

ことり「スー...スー...」

海未「(ことりが寝てどうするんです...)」

海未「(まったく...これでは穂乃果と一緒じゃないですか)」」

バカラシイ ワタシカエルワネ

マッテクレ、ハナシヲキイテクレ


海未「(...しかし、恋愛映画など初めて観ました。なかなかいい物ですね)」

海未「(こういうものをちゃんと観ていれば、私も初めから穂乃果への気持ちに気付いていたのでしょうか)」


男優「違うんだ。
僕は彼女がすきだと言ったけど、本当は君のことが好きだったんだ!」

男優「君にだって他に好きな人はいるだろうけど...頼む。僕と付き合ってくれ」

女優「...どれだけ待ったと思ってるのよ」

女優「...私も、あなたが好き!」


海未「...」

海未「(...想いが変わるなんてこと、あるのですかね)」

海未「(...まあ、所詮物語ですか)」


ことり「...」


ことり「ごめんね海未ちゃん!
なんかことりどうしても眠くなっちゃって...!」

海未「いいですよ。
穂乃果が寝た場合のいいシミュレーションになりました」

ことり「もう!からかわないでー!」

海未「別にからかったわけでは...」

ことり「で?どうだった初めての恋愛映画は?もしかして以外と感情移入しちゃったりした?」

海未「そんなことありませんよ」

ことり「本当に~?」

海未「し、しつこいですよ。
さて、いい時間ですしお昼にしましょうか」


ことり「あはは、お昼の場所は二人とも同じところを予定してたんだね」

海未「そうですね。
まあ、穂乃果がいるというシミュレーションですから、まあここくらいしかありませんよね」

ことり「サンドイッチの専門店。
穂乃果ちゃんきっと喜ぶね」

海未「はい。それにとっても美味しいです」

ことり「海未ちゃんのそれなに?
トマトとベーコン?」

海未「ことりのは卵とレタスですか。美味しそうですね」

ことり「一口ずつ交換しようよ!
はいあーん!」

海未「えっ...えぇ...ことり...」

ことり「...食べないの?」

海未「...あーん」


ことり「ふふ、食べてくれた。」

海未「はい、ことりもどうぞ」

ことり「えー?」

海未「...はい、あーん」

ことり「ふふっ、あーん!」

ことり「本番も穂乃果ちゃんとあーん出来ればいいんだけどなぁ」モグモグ

海未「そうですね...」


ことりは無邪気だ。
きっと無意識でこんなことができるんだろう。

それに、ことりはとても女性らしく可愛らしい。

私に比べて、ずっと

私なんかよりも、遥かに....


海未「...ことりはいいですよね」

ことり「え?」

海未「ことりは、私と違って、普通に女の子らしいですから...」

今日のデートも、ことりにはリードされっぱなしだ

ことりの可愛さは、きっと女性相手でも通用するものに違いない。

きっと穂乃果だって、私よりことりのほうが...




海未「ことり、穂乃果に告白したらどうですか?」

ことり「...告白?」

海未「ええ。今日デートしてみて思いましたが、きっと成功すると思います」

海未「私のことは気にしないでください!精一杯応援しますからね!」


そうだ、きっとこれでいい。

きっと穂乃果だってことりの方がいいだろう。
私のようなろくにお洒落もできない、デートのプラン立ても出来ない人間では、役不足だ。


海未「ね?ですから、告白してみましょうよ、ことり」

ことり「...」

ことり「...なんで...?」

海未「え?」


ことり「なんで海未ちゃんがそんなこと言うの!?」



周りの席の人が何人かこちらを見るのが分かった。

ことりの声は大きく、少々目立ってしまったようだ。

海未「こ、ことり、どうしたんですか?私何かいけないことを...」

海未「あ...」


思わず口を噤む。

ことりは、泣いていた


ことり「...海未ちゃんは、海未ちゃんは...何も分かってないよ」

ことり「私だって!告白できるものなら今すぐしたい!」

ことり「でも...出来ないことだってあるの...。普通の子ならできるかもしれないけど...私は...私達は...」


ことり「...異常なんだから」


海未「...ことり」

ことり「ことりの気持ちも知らないで...なんで自分は勝手に穂乃果ちゃんのこと諦めようとしてるの...!」

ことり「ずるいよ今更...
ことりがどれだけ...どれだけその事で...」

ことり「なんで海未ちゃんがそんなこと言うの...ねえ...なんで?」

ことり「私は、穂乃果ちゃんを真っ直ぐに想ってる海未ちゃんが...」ボソッ


海未「...え?」

ことり「...ごめんね。お金ここにおいてくから。」

ことり「...今日は楽しかったよ。...バイバイ」



海未「ことり...っ」

ザワザワ

ケンカカ?

ヤッパリカップルダッタノカナ

アレオンナドウシダロ?

海未「...」

海未「...私は、勘違いしていたようですね」


ことりのことは追えなかった。

追う資格は無いと思った。


私は、普通の女性のように恋をしていた気がして、愚かにも浮かれていた

結果何も分かっていなかった私は、安易な言葉でことりを傷つけた。

私達は異端なのに。
それを認め合う仲間だったのに。
それでことりが悩んでいることなんて分かっていたことなのに。



私は


私は最低だ


今日はここまでです

明日また同じ時間に更新します


続きを書きます

この先若干の胸糞注意となります


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海未「...はぁ」


デートの日から数日経った学校での昼下がり。

私は中庭で一人、昼食をとっていた。

海未「...駄目ですね。食欲がありません」

海未「恋の病で食事も喉を通らないなんてよく言いますが、本当だったとは」

私が中庭で食事をとっている理由。

それはデートでの一件のせめてもの謝罪として、ことりと穂乃果を二人きりにしてやるため。

そして、まだ仲直りをしていないことりと顔が合わせづらいためであった。


海未「...あんなに悲しそうなことりは...初めて見ました」

海未「...謝らないといけないに決まっていますが...原因がよく分からないまま謝っても更に状況が悪くなるとしか...」

自分の発言が問題だったのは分かる。


しかし何故ことりがあそこまで悲しんだのかは分からない。


海未「...こんなに悩むのはあの時以来ですね」

海未「あの時はことりが相談に乗ってくれましたが、今は...」

もうことりと、恋の相談はもはや、話をすることもないかもしれない。

そう思うと、とても胸が痛んだ。


海未「...私に足りないのは、何なのでしょう」



「海未ちゃんに足りないのは、素直さじゃないの?」

海未「...!」

海未「...ことり...!」



海未「...」

海未「ほ、穂乃果...」


穂乃果「ことりちゃんじゃないよー?穂乃果だよー?」

海未「す、すいません。ことりのことを考えていたので...」

穂乃果「やっぱり、喧嘩だよね?」

海未「...まあそんなところです」

穂乃果「だからこんなところで一人で食べてたんだ」



穂乃果「なんか海未ちゃん元気ないから一緒にいてあげるね」

海未「...穂乃果、ありがとうございます」

穂乃果「...最近二人とも仲良かったもんね。何があったの?」

海未「...それは、穂乃果には言えません」

穂乃果「えー!?なんでー!?意地悪ー!」


なんだか、穂乃果と自然に話すのは久しぶりな気がした。

やはり、穂乃果と話すと落ち着きます。


おや?

待ってください、これもしかしてチャンスなのでは...?

中庭で穂乃果と二人きり、他には誰もいませんし、なかなかにいい雰囲気...


穂乃果に告白する絶好のチャンスなのでは?



いや、しかし、これは抜け駆けです
ここで成功したとしてもことりに何といえばいいか....

いや、すでにことりとは話せる状態じゃないんですが...


しかし今日はベストコンディションです。

久しぶりに話したからでしょうか、穂乃果と喋っても落ち着いていられてます。

体温も上がらないし、頭も冷静です。

告白するなら、きっと今日しかありません


そうです、今やらなきゃいけないのです

やるしかありません

言うのです

私は...

穂乃果が...



穂乃果「海未ちゃんさぁ」


海未「え?あ、はい」


穂乃果「前は穂乃果と一緒にいる時変だったけど、最近落ち着いてるよね」



海未「...そうですかね」


確かに

考えてみればおかしいですね。

なんで、穂乃果と一緒にいるのに、こんなにも落ち着いているのでしょう。

なんで、穂乃果に告白するというのに、手が震えないのでしょう

なんで顔が熱くならないのでしょう、なんで体温が上がらないのでしょう。

なんで私は...



穂乃果「海未ちゃん、最近恋してるんじゃない?だってなんだか、すごく可愛くなったもん」



『海未ちゃん!今日すっごく可愛いね!』



...今、ことりのことを考えているのでしょう。


穂乃果「ところでさっき何か言いかけた?」

海未「あ、いえ...」

穂乃果「ふーん、お弁当食べないなら貰ってもいいかな」

海未「自分のがあったんじゃないんですか?」

穂乃果「あはは...そうなんだけどまだちょっとお腹すいてて」

海未「仕方ないですね...ほら、口を開けて」

『はい、あーん』


海未「...」

穂乃果「あーん!んー!美味しいー!」




ことり「...上手く行ってるみたい」

ことり「...頑張ってね、海未ちゃん」


私は、告白に失敗した。

想い人が目の前にいて、コンディションも絶好調で、雰囲気作りも完璧だったはずなのに失敗した。

どうやら私の恋煩いはいつのまにか治ってしまったらしく、もう動悸や体温の上昇は起こらなくなってしまった。


しかし、後遺症だろうか。
まだ時々、動悸や体温の上昇を感じる時がある。


最近私の目を奪う人がいる

長い髪に、特徴的なとさか。
その可愛いらしい顔が、私の方を向くことはもうかなり減ってしまった。

やはりこれは病なのだろうか。

心臓病の類だろうか。

...だとすれば、酷く辛い病だ。


穂乃果「海未ちゃん!ことりちゃん!今日は一緒に部室行こうね!」

海未「あ、はい。あの、ことりも...」

ことり「...」

ことり「ごめんね、ことりちょっと用があるから」

穂乃果「そっかー...」

海未「...仕方ないですね」

ことり「うん、じゃあ...」

穂乃果「じゃあ、二人で行こうか海未ちゃん」

海未「...はい」

ことり「...」

ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー



私は、恋をしている。

相手は幼馴染の女の子で、付き合いはもうかなり長くなる。

小さい頃から、彼女の長くて真っ直ぐな髪と、綺麗に整った顔と、力強くて繊細な性格と...

彼女の全てが大好きだった。


でも、女性同士の恋愛がいけないことだと知ったのは、幼稚園児の時


幼稚園の保母さんに、好きな人を教えたら、両手を握られて、目をまっすぐ見つめられて、怒られてしまった


『いい?ことりちゃんは女の子でしょ?うみちゃんを好きになっちゃ駄目なのよ』

『...だめなの?』

『そう。他にもかっこいい男の子いるでしょ?普通の子は男の子を好きになるのよ』

『うみちゃんのほうが...かっこいいもん』

『だめよ。女の子は女の子を好きになっちゃいけないの。普通にしてないと後で苦労するのはことりちゃんなんだから』


『うみちゃんに嫌われたくないでしょ?』


『...いやだ』


『でしょう?だから、これはことりちゃんと先生だけの約束。いいわね?』

『...わかった』


先生の言葉は正しかったと、今でも思う

きっと私があのまま海未ちゃんに想いを示していたら、きっと嫌われていたし、校内では噂になったりして海未ちゃんにまで迷惑がかかっていただろう。


だから私は想いを隠した。

海未ちゃんへの強い想いを、胸の奥にしまっておいた。

私は海未ちゃんの親友。

小さい頃からの幼馴染。

だからもちろん、海未ちゃんが恋をしたら、応援してあげなきゃいけない。


海未ちゃんは、もう一人の幼馴染に恋をした。

私は幼馴染だから、悩んでる海未ちゃんを見てるのが辛くて、沢山手助けをした。

沢山嘘もついた。

辛かった。
でも、それで海未ちゃんが幸せになるんだと思えば頑張れた。


女の子同士の恋愛はいけないこと。
でも、海未ちゃんはそんなこと全然気にしなくて、真っ直ぐ恋にも全力で...


やっぱり私は海未ちゃんが大好きだった。



でも、大好きな海未ちゃんは

デートの日に穂乃果ちゃんを諦めるようなことを言った


ずっと前から諦めがつかずに悩んでた私に向かって、優しく

『告白してみましょうよ』

『きっと成功すると思います』

と言った。

告白できるならもちろんしたい。
成功しないのは私が一番分かってる。

なのに、なんで海未ちゃんがそんなこと言うんだろう。

ずっと想いを抑えて海未ちゃんの恋の手助けをしていたことが馬鹿らしくなった。


...私は、いけない子だ。


女の子に恋をする駄目な子だ。

気持ち悪い、他人から蔑まれるべき嗜好を持つ人間だ。

騙してデートに誘ったのも本当は自分の為だ。

私は、想いを抑えることなんて出来てなかった。

だから、これは罰なんだ。

気持ちの悪い、いけない子が受ける罰。

私はこれから、罰を受けなきゃいけない。



ことり「...こんにちは」


私が呼ばれた空き教室は、普段生徒が殆ど通らないような所にあった

中にはうちの生徒が4、5人

学年はみんな後輩で、顔はどこかで見たような人がちらほら。


「南ことりさんだよね?」

ことり「うん」

「ちょっとこっち来なさいよ」

「舐めた真似して...」

「なんで呼ばれたかわかってる?」


この子達、海未ちゃんのファンの子だ


「あなたさぁ、この前の日曜日、海未先輩と街で歩いてたでしょう」

ことり「うん」

「私見ちゃったんだけどさ、手繋いでなかった?」

「うわ、最悪」

ことり「...繋いでたよ」

「気持ち悪い...やめてよそういうの」

「あなた、海未先輩と部活が同じだか幼馴染だか知らないけど、越えちゃいけないラインってあると思わない?」

「どうして海未先輩にそんなことできるの?」

ことり「...別に。友達だから、一緒に歩いてただけ。手だって普通に繋ぐでしょ?」


「嘘つかないでよ!」

一番背の大きい子が椅子を蹴った。
大きな音を立てて椅子が倒れる。

「恋人繋ぎだったって聞いてるんだけど!?」

「私達はファンとしてやってるけど、あんたみたいな人が一番嫌なの!」

「レズなんでしょ!?海未先輩にまで迷惑かけないでよ!」

「気持ち悪い!」


ことり「...」

これでいい。

これが罰だ。これが当たり前なんだ。

彼女達は何も間違ったこと言ってないもん。

ことりが気持ち悪いのがいけないんだ。ことりが、気持ちを抑えられて
なかったから...


「海未先輩もどうなの?」ボソッ


ことり「...えっ?」


「海未先輩ももしかしたらレズなんじゃない?」

「ちょっとやめてよ」

「いや、この人にたぶらかされてさぁ」


え?
駄目、やめて


「でも手も普通に繋ぎ返してるもんね」

「えー、私海未先輩本当にかっこよくて好きだったのに」

「そうなの?海未先輩もそういう人なの?」

ちがう

海未ちゃんは関係ない


「海未先輩まで...気持ち悪い」


ことり「違うっ!!」


生徒が全員こちらを見る。

駄目、私はいい、でも海未ちゃんは、海未ちゃんは気持ち悪くない

海未ちゃんをそんな風に言うのは許せない


「...なに?いきなり」


ことり「海未ちゃんは、そんなんじゃない。あの日は、私が無理やり誘ったの」

ことり「手だって私が無理やり繋いだし、行くところだって殆ど私が決めたの」

ことり「だから海未ちゃんは...関係ないの」


全部真実だ。

生徒の顔が少しゆるむ。

「なんだ、やっぱりあんたがレズなだけじゃん」

「じゃあ海未先輩、本当に迷惑だったんじゃない?」

「あんた、レズなんでしょ?
海未先輩のこと好きなんでしょ?」


そう、私はレズ

同性愛者

異常性癖

虐げられて当然。
蔑まれて当然。
気持ち悪がられて当然。

そう思ってたのに、これくらい全然平気だと思ってたのに、然るべき罰だと思ってたのに。

ことり「...そうだよ。ことりは、海未ちゃんが好きなの...」ポロポロ


涙が止まらなかった。



「やっぱりね、気持ち悪い!」

「もう海未先輩に近づかないでよ!」

「海未先輩だって迷惑よ!」


わかってる

そんなことわかってるから

そんなこと言わないで

ことり「うっ...うう...」

海未ちゃんもこんな風に思うだろうか

私の想いに気付いたら、こんな酷い言葉を投げつけてくるんだろうか

いやだ、海未ちゃん、そんなの


いやだ...


「ことり?」

ことり「...え?」

懐かしい、声が聞こえた

今まで何回も聞いてきた、優しいけど力強い声。

「...あ」

「...」

「...海未先輩」


海未「...あの、生徒会に召集がかかったので今すぐことりも...と、探していたのですが」

海未「...何故泣いているんです?」

「あ...いや」

「...海未先輩、あの」

海未「私はことりに聞いているんですが、何故あなた達が答えるんですか」

海未「...あなた達が泣かせたのですか?」

「う...その」

「いや、違くて」


海未「はっきり答えなさい」

海未ちゃんが低い声で言うと、生徒達は喋るのをやめ、空き教室は静まり返った。


「...そうですよ」

一番背の大きい子が口を開く。

「南先輩が、海未先輩に迷惑をかけていたと聞いたので、私達が仕返しを」

海未「仕返し?なんのですか。
私はことりに迷惑をかけられた覚えはありません!」


あ、駄目...

「あるはずですよ。
南先輩が自分で言ってたんです」

それだけは、いや

「南先輩が、無理やり海未先輩をデートに誘って手も繋いで!」

やめて、お願い

海未ちゃんにだけは



「南先輩、異常なんですよ!」

「レズなんです、レズ!気持ち悪い!」

「海未先輩のこと





海未「違う!!!」



ことり「...え?」



海未「...あなた達は見たことがあるんですか?」

海未「好きな人を想って服を選ぶことりを見たことがあるんですか?」

海未「好きな人のことを考えてデートのプランを考えることりを見たことがあるんですか?」

「...それは」

海未「異常ですって?気持ち悪いですって?」

海未「そんなことあるわけない。ことりは、普通に好きな人に恋をして、普通に想いを募らせて、普通に恋のことで悩んで...」

海未「普通に恋をしていた、普通の少女でしょう!!」


「...ごめんなさい」


海未「...わかったら、出て行ってください。」

海未「2度とこんなこと、しないでくださいね」


生徒達は足早に教室を出て行った

泣いていた子もいたし、私を最後まで睨んでいた子もいた。

校内じゅうに言いふらされてしまうかもしれない。


ことり「...ありがとう、海未ちゃん...」

海未「いえ、叩かれたりしていませんか?」

ことり「...う」

ことり「うみちゃぁぁん...」ポロポロ

海未「だ、大丈夫ですか!?
痛いんですか?」

ことり「うぅ...」

海未「...辛かったですね」


海未「気にすることありませんよ、ことり...その」

海未「...デートの時は、すみませんでした。ですが、やはりことりは普通の少女だと思うんです」

海未「穂乃果に恋することも、恥じるべきことではありません。私が言うのもなんですが...」

海未「ですから、もっと堂々としてください!私など気にせずに、穂乃果にアプローチしてください!」

海未「私はことりに貰ってばかりでしたから、今度は私が手助けする番です。」

海未「...その、コイバナもまた出来たら嬉しいなと...」


海未ちゃんは少し照れ臭そうに言った。

そうか、海未ちゃんは最初から、気持ち悪いなんて思う人じゃなかったんだ。

私が勝手に思ってただけで
海未ちゃんは、昔から、なんでも全部受け止めてくれてた

ことり「...じゃあ、早速恋の相談なんだけど」

ことり「...ことり、告白したほうがいいと思う?」

海未「...はい。それがいいと思います。」

海未「そうしてくれれば私も踏ん切りがつきますから」

ことり「...そっか。じゃあ」






ことり「海未ちゃん、あなたのことが、大好きです」






海未「...え?」

ことり「子どもの時から好きだったの。今までもずっと好きだったの」

ことり「でも、言えなかったの、海未ちゃんに嫌われたくないから...」

海未「ま、待ってください、でも穂乃果は...?」

ことり「ごめんね、嘘なの!
そう言っておけば相談って言って海未ちゃんと一緒にいられるでしょ?」

海未「じゃあデートの練習は?」

ことり「あれも嘘!
ことりがデートしたかっただけ!
服も海未ちゃんの好みが知りたかったから海未ちゃんに聞いたの!」

海未ちゃんは、真っ赤な顔に戸惑った表情で、自分でもわけが分からない様子だったけど、

「そうですか...」

とだけ言って近くの椅子に座った。


ことり「ごめんね。
ことり嘘つきだから」

海未「...本当。
ことりは昔から計算高いというか、容量がいいというか...私はいつも騙されてばかりです」

海未「...やったじゃないですか。
凄いですよことり。告白出来たじゃないですか」

ことり「うん、嬉しいよ...」

海未「...私も、多分ですがことりが好きです」

ことり「...えぇ?」

海未「...その、まだ私には経験が少ないので全然分からないんですが」

海未「...ことりの目が見れないんです...。その、動悸が酷くて」

海未「...穂乃果の時のように」



ことり「...嘘だよね?」

海未「...本当ですよ。
自分でも最近知りました」

海未「...ここしばらく、恋の相談ができなくて、本当に辛かったんです」

海未「私は恋の相談が楽しいんだと思っていましたが、違いました。あれはことりだったから楽しかったんですよ」

海未「ことりはいつも私を手助けてくれて、いつも私を気遣ってくれて、そんなことりがもう頭から離れないんです」

海未「ことり、私はきっとあなたに恋をしているんです。」

海未「...あの、女性同士ですが、受け入れてくれますか?」

ことり「...」


ことり「もちろんだよ!」




ーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーー


「...あ、ことり。こっちですよ」

「海未ちゃん、ごめんね、準備に手間取っちゃって...」

「大丈夫ですよ。待ち合わせの時間には間に合ってますから」

「海未ちゃん早すぎ...あ!」

「海未ちゃん!そのスカート!すごく可愛いよ!」

「あまり見ないでください!
こ、ことりが褒めてくれたから買ったのですよ!」

「そっかぁ、ふふふ、やっぱり似合ってるねえ」

「見ないでと言ってるでしょう!」


「どうする今日、どこ行く?」

「そうですね。大体決めて来ましたが、とりあえずゲームセンターですかね」

「海未ちゃんすっかりハマったね」

「ハマってはいません。今のところ損はしていないはずです。」

「えー、でも前はクレーンゲームで2000円くらい」

「あれは仕方が無いです!
そんなことより時間が押してますよ。行きましょう」

「ことり、手を」

「うん、じゃあ行こうか」

「ええ」


最近、私の横を歩いてくれる人がいる。手を繋いで歩いてくれる人がいる。

長くて綺麗な髪に特徴的なとさか。
可愛いらしい笑顔にはまだ動悸を覚える。

聞く所によるとこれは病らしく、基本的に治ることは無いらしい。

まあ、酷く心地のいい病だ。
気にもならない。


私達は今日も手を繋いで二人で歩く。

普通に恋をして、普通に告白をして、普通に今ここにいる


普通の少女の、普通の恋だ。




ーおしまいー


お疲れ様でした。そしてすいませんでした。

完結です。
酷いほのうみ詐欺だと言われそうですが承知しております。

なにせノープランで書いたもので注意書きが出来ませんでした。

初めての百合、初めての恋愛SSだったので、最後の強引なハッピーエンドには目を瞑っていただけると幸いです。

以上です。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。



このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 04:08:06   ID: tpuT_q-j

≫83くらいから(ことうみになるなこれは…)と思いながら見てたらやっぱりことうみだった
『海未「ことりのためなら私は」』

2 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 08:21:33   ID: x9xQ1JAL

ラブライブ同人誌で9割同じ様なやつあるんだよなぁ…盗作

3 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 09:20:13   ID: 5XpSNzpl

盗作とまではいわんけどことうみってネタ無いんだなあって思う

4 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 10:05:45   ID: 3WzOmZBp

三人のどろどろが見たかったです!

5 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 10:25:23   ID: BUFaji9Y

ほのうみを出汁にしたことうみは至高の味

6 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 12:30:11   ID: 6kM5X6TL

君たちなかなか厳しいね…

7 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 12:49:26   ID: uPYbP84y

作品として駄作なら文句もでない
出だしが良かったから期待してたぶんの
文句だしいいんじゃねぇの
なんでもかんでも否定的な意見に反応しすぎ

8 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 13:36:29   ID: 2flxRxfw

ほのうみ好きで期待してたけど悪くなかったで
他の作品も見たいから気が向いたら書いてくだせえ

9 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 15:11:16   ID: UseBYGMd

ほのうみに釣られて読んでことうみもいいなとは思ったけど、どうしても穂乃果が出汁にされたり蔑ろにされてるのが気に食わない。他のことうみもそれが嫌で敬遠してる

10 :  SS好きの774さん   2014年08月19日 (火) 17:32:24   ID: Q9TnH0mH

※7
お前もそういうのに反応しすぎ
厳しい言ったくらいでギャーギャー言うなよ

11 :  SS好きの774さん   2014年08月20日 (水) 02:14:53   ID: bVUO-Wgh

ほのうみに期待した人たちには厳しいかもな

12 :  SS好きの774さん   2014年08月21日 (木) 22:59:05   ID: uqF9P41O

タグに悪意ありすぎ。詐欺じゃん。ほのうみ厨こわ

13 :  SS好きの774さん   2014年08月22日 (金) 02:46:33   ID: B93BBc0L

タグの事なんだけどさ、このサイトのタグ機能って不具合無い?
俺オススメにタグ付けしようとしてぽちったら勝手にマジキチに変わったんだけど

14 :  SS好きの774さん   2014年08月26日 (火) 13:03:17   ID: KDGCPMeF

普通によかった!

15 :  花陽依存症@かよキチ   2014年08月27日 (水) 11:14:15   ID: nLcV1uYl

ほのことうみ、ほのうみ、ことうみは良いですね♪穂乃果ちゃんの要素少ない気がしたけど感動しました……花陽の「優しいみんな」も感動して…最高です。あとタグは確かに感動を付けたんですがマジキチになっててショックしました…

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