キノ「教会のある国」 (22)

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第?話
「グラビアの国」
- Promotion Photograph -



ある国にちっちゃなモトラドと一眼レフカメラを携えて、
トラックを運転する女の子がおりました。

見かけからして十六か十七であろう彼女は、写真を撮るのが得意で、故にそれを生業としていました。


「こんにちは、カメラマンのフォトです、今日はよろしくお願いします」


今日のお仕事は、近くの国で大きな室内型の遊泳施設が出来たというので

その宣伝用の写真を撮ってくれとの依頼なのでした。


「こちらこそお願いします、いやぁお噂はかねがねうかがっておりますよ、お若いながらいい腕だとか」


「それほどでもありませんよ~、なんて」


何やら依頼主の男性に褒められて照れ臭そうに女の子が頭をかきます。


もしこの場に彼女の相棒がいたなら

「いや、これは社交辞令だぜフォト」

と、皮肉を言ったに違いありません




「それでは早速、こちらへ」


そう促されて、フォトが裸足のまま進んで行った先には
彼女がこれまで見たこともないくらい大きさの人口の池かがいくつも並んでいました。


「うわぁ…なんだかスゴイですね」


これには彼女も、思わず感嘆の声をもらします。


「でしょう?これはプールといいまして、運動しながら涼のとれる施設なんですよ」


「へえ、プール…」


プールにはいくつも種類があり、単に水がたまっているものから川のように水が流れるプール、大きな滑り台が設置されているプールなんかもありました。

そして、すでに何十人も人が入っていて水の中で戯れていました。


彼女はその楽しげな風景を切り取り、宣伝に使えそうな写真に撮ろうとその水場へ一歩を踏み出します。


「それでは、早速…」


そのとき、カメラの準備をしようとした彼女を依頼主であるここの責任者が呼び止めました。


「ああ待ってください、その格好では入れませんので、こちらへ」


「はい?」


何事かと彼女が依頼人に連れて行かれた先は、なんと更衣室でした。

ようするに、そこで彼女もレンタルの水着に着替えて欲しいとのことなのでした。


「……こ、これは」


彼女が選んだのはいわゆるビキニタイプというやつで

ヒラヒラとした装飾で部分的に自信のない人でも着ることができるデザインでした。


「恥ずかしい……お、おへそとか丸出しだし、コレ」


一番露出の少ないものを選んだはずなのですが、
それでもフォトは恥ずかしげにモジモジとしてしまうのでした。


それでも、そこは彼女もプロなので一旦レンズを覗き込めばそんなことは忘れて

撮影に没頭するのでした。



しかし、この客の中には実は何人かサクラのモデルが混ざっていたので

時々、そんなスタイル豊かな方の身体を見てしまうと、
どうしても自分の姿を思い起こさずにはいられませんでした。


「うわ、あの人スゴイ筋肉が……あ、あっちの人とか、くびれてるのに…おっきい、いいなぁ」


そんな風に続けていたので、この仕事が終わる頃には

撮影のテクニックとは別のところで自信がなくなってしまったのでした。


「…………はぁ」


ちなみに借りた水着は報酬とは別にオマケとしてフォトに差し上げるとのことでしたが

その真意としては、"また是非遊びに来てください"ということなのでしょう。


彼女にはその気はさらさらありませんでしたが



「つ、疲れたよソウ……いつもと違う意味で…」


自分の住処に戻ったとたん、椅子に座るとそのままテーブルに突っ伏してしまいました。


「ふぅん、まあそう落ち込むほどのもんでもねえと思うがなあ」


「えー?………そうかな」


その姿をみて、モトラドの相棒も珍しくフォローの言葉をかけました。


「ああ、試しに自分の写真でも撮ってみたらどうだ?どうせなら水着で」


しかしその言葉は、普段の言動からしてどうしても皮肉っぽく聞こえてしまいました。


「だっ、ダメダメダメ!そんなのっ……自分の写真を撮るなんて変だよそんなの!」


「ああん?フォトお前、写真屋のクセに"自撮り"も知らないのかよ」


「し、知ってるよ…けど……うぅ」


相棒の言葉は効果はイマイチどころか、どうやら逆効果のようでした。


「……ふぅ、まあいいけどよ」



ソウが諦めたように静かになってから、フォトは相棒から見えないところでカメラを構え

そして、そのレンズを自分に向けてみました。


「………………」


ポートレートは今まで何度も撮りましたが、自分を対象にするのは初めてでした。

ピースサインをしたり、何かしらポーズをとるのは彼女の一眼レフでは無理がありました。


それより何より、そのレンズを見つめていると


「…………///」


だんだんと頬が赤くなって、たまらなく恥ずかしくなってしまって、あえなくカメラを下ろしてしまいました。


「~~っ、やめやめ!やっぱり似合わないもん、うん!」


そして、今後ゼッタイに自撮りなんて恥ずかしいことはしないと固く誓いました。


もちろん、貰ったビキニの水着もありがたく封印しました。

キノだろ
フォトって高原で草食って全滅したところから逃げた女の子でいいんだよね?

いきなり文字化けとか幸先悪い
前作
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>>9
そう、完璧に把握してないから矛盾はあるかも


第?話

「主張する国」
- I Have Ever Written Before.-


「おや?旅人さん、出国ですか?」

「ええ」「うん」

「どうでしたか私たちの国は、滞在中快適でしたか?」

「そうですね、特に料理が美味しかったです。少し辛味が少ない気がしましたけど」

「…………」

「なるほど、ところで旅人さん、実は貴方に話があるのですが」

「はい?」

「実は貴方のその格好などが、権利侵害であると主張する方がいまして」

「えっと、どういう意味なのか、よく分からないんですが」

「おやおや、なんだか怪しい雲行きになってきたね」

「つまりですね、貴方のお名前、コート以外の服装、スタイル、携行している武器弾薬類、モトラド、またその趣味趣向や携帯食料の種類などが、この国で出版されている小説にことごとく類似していましてね」


「………」「………」


「その著者の方から著作権侵害だとのお声が上がりまして、旅人さんには裁判所から召喚状が」

「すみませんが、もう出国します、そう決めているので」

「ちなみに、この小説にでてくる旅人も3日間だけ滞在するということを信条にしているとか、貴方も今日で3日目ですけど…」

「………」「こりゃだめだ」

「今後もそのような旅を続けるというのなら、使用料を払ってもらうことになるかとも思いますが」

「なにそれ、まるっきりジ・エンドじゃん」

「…もしかして守銭奴?」「そうそれ」

「あっそれ!そのやりとりも!」


「……よかったの?かなり強引に無視して出てきちゃったけど」

「仕方ないよ、それにあのままだと永遠に出国できない気がしたからさ」

「ふうん、でも裁判だなんていうなら戦っちゃえばよかったのに」

「面倒だよ、弁護士だって探さなくちゃならないし、それにもし負けたらこっちは大損だよ?」

「そっか」

「勝ったとしても、それまでに余計な宿泊費やら食費やらかかるし、なにより時間は有限だからね」

「もしかしたら、それが相手の算段だったのかもね」

「はあ、なんか前も、とやかく言われた気が…」

「だったっけ、もしそうなら使用料を払わなくちゃ」

「かもね」




「教会のある国・b」
-Creed・b-


そこの木の陰で、旅人はモトラドを停めて積荷を確認した。


積んでいた袋の中には、そこそこの金目の物が詰まっていて、普通なら見ているだけで顔がほころびそうなほどだった。


「…あーあ、いっけないんだー、泥棒なんてさ」


しかし、そのモトラドは旅人を責めるようなこと言うのだった。

どうやらこの荷物はいわゆる盗品のようだ。


「仕方ない、まあそこは大目に見てもらうよう祈るしかないよ……エルメスにも手伝ってもらおうかな、共犯として」


「へえ、キノが祈るなんて、それこそ誰にだい?」


キノと呼ばれたその旅人は、モトラドのエルメス言われて大仰に肩をすくめると

少し躊躇いがちの様子で言った。


「もちろん、神様に」


「はいはい、でもそんなアブラゼミはきっとすぐに使っちゃうんだろうね」


「それを言うなら、あぶく銭でしょ?」

「そうそれ」


キノは積荷の袋を、元通りエルメスの荷台に戻すと

またエンジンをふかせて、次の国を目指して出発した。


出来れば、目的の国でこのお宝が高価で売れてほしいなあと、心の片隅で願いながら




第?話

「極端な話」
-Compromise And Regret-



曲がりくねった街道沿いの林の中で、三人の男女が相対していた。


よく見ると、二人の男がハンドパースエイダー(※銃器のこと、この場合は拳銃)を構えて睨み合っていたのだった。


「やろう!ぶっ殺してやる!」


「やめてくれ!兄貴!」


「おねがい!アナタ、銃を下ろして!」


どうやらここまでの経緯を鑑みるに
いわゆる、痴情のもつれというやつであった。


彼らは、兄夫婦とその旦那の弟との三人でちょっとした旅をしていたのだが

道すがらに、ひょんなことから、その妻の浮気疑惑が浮上してしまったのだった。


もちろん旦那である兄は激昂、見つけた証拠を掲げて真っ先に容疑者である弟へと詰め寄った。


「貴様!これは一体どういうつもりだ!」


それを見せつけられた弟はまったく心当たりがなかったので、


「そんなもの俺は知らないぞ!」

そう否定したのだった。


諍いもそれで終われば良かったのだが、実は弟が浮気をしていたのは本当のことであって、脇で見ていた妻が

「やめて!彼は悪くないのよ、私が!」


よく事情も分かってないうちにそう言い放ってしまったので、余計に話がこじれてしまった。


しかも言うに事欠いて、彼女が

「ごめんなさい、でも仕方ないの!お願いだから私たちのことを認めてちょうだい!」


などと言い出したのだった。


「な、何を…っ!!」


「悪い、兄貴…そういうことなんだ」


その果てにあったのは、この状況

まるで映画のように銃口の突きつけあい、にっちもさっちもいかない膠着状態であった。


「撃ってやる!」

「撃つな!」

「やめて!」


そんな、異常な強情っぱりが三人合わさったその様子を

すぐそばの茂みの中から、モトラド乗りの旅人が隠れて見ていた。


別に好きでそうしているわけではない。

「……まいったなあ」

「そうだねえ」


ただ草むらで休んでいたら、いつの間にか三人がやってきて、勝手に言い合いや喧嘩を始めたので

すっかりその場を離れるタイミングを逃して、立ち去ることができないでいただけなのだった。


「どうしたらいいと思う?」


「さあ、とりあえず流れ弾にだけ気をつけてよ、タンクに穴でも空いたら大変だ」


「そうだね」


せめて穏便に済んでくれと、赤の他人ながらにそう願った旅人であったが

その解決は実にあっけなく

三発の銃声によって、あっさりと終わりを迎えたのだった。



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