女神「ここに伝説の剣と盾があります」(23)

女神「伝説の剣は流動体を含めあらゆるものを真っ二つにでき」

女神「伝説の盾はあらゆる刃、魔法を通しません」

勇者「……」

女神「勇者よ、この剣と盾をあなたに授けます」

女神「これを使い、必ずや魔王を討ち倒すのです!」

勇者「あの……一つ質問が」

女神「なんでしょうか?」

勇者「伝説の剣で伝説の盾を斬ろうとするとどうなるのでしょうか?」

女神「!!」

女神「あわわ……」

女神「ゆ、勇者よ」

勇者「はい」

女神「伝説の剣が伝説の盾はこの世に一つしかありません」

女神「それ同士が触れる機会は皆無」

女神「知る必要のないことなのです」

勇者「お言葉ですが」

勇者「剣と盾の強度はどちらが上か、ということはそれなりに重要なのです」

勇者「盾が強いのならば、剣を投擲する際のリスクを減らせますし」

勇者「剣を強いのならば盾で隠しながら不意打ちをすることができます」

勇者「もちろん稀な例ですが、戦いの選択肢を増やすのは重要なことです」

女神「な、なるほど……」

勇者「それで」

勇者「どうなるのでしょうか?」

女神「あわわ……」

女神「……」

勇者「どうなるのでしょうか」

女神「ゆ、勇者よ。あなたはどうなればよいと思いますか?」

勇者「?」

女神「どちらが優るほうが使いやすいですか?」

女神「今、この剣と盾には私の力を均等なバランスで込めています」

女神「このバランスを崩し、どちらかをわずかに強くすることができますが」

女神「勇者よ、あなたはどちらを選びますか?」

勇者「……」

勇者「えっと……」

勇者「その均等な状態で盾に剣の刃を立てるとどうなるのでしょうか?」

女神「あわわ……」

女神「それは……」

勇者「それは?」

女神「お、教えません」

勇者「え?」

女神「それを教えることはできないと言ったのです」

勇者「なぜですか?」

女神「それも教えられません」

勇者「……」

勇者「もしかして、分からないのですか?」

女神「そ、そんなことはありませんよ!」

女神「私は神!全知全能! すべてを知っているのです!」

女神「その上で教えないんです!」

勇者「……女神様がそう言うのなら」

勇者「分かりました。もう聞きません」

女神「分かってくれましたか」

勇者「自分で試せ、ということですね」

女神「えっ!?」

女神「や、やめるのです勇者よ!」

勇者「なぜですか?」

女神「えっと……その……」

女神「た、大変なことが起こりますよ!」

勇者「大変なこととは?」

女神「……」

女神「爆発します」

勇者「えぇ!?」

勇者「爆発するんですか!?」

女神「はい」

勇者「だ、大規模なものですか!?」

女神「ええ、それはもう」

勇者「盾と剣を接触させたら発動するのですか!?」

女神「そうですね」

勇者「そ、そんな……」

女神「だから試すなどと恐ろしいことは」

勇者「そんな危険なものをなぜ渡したのですか!?」

女神「あ、いや、それは……」

女神「ど、どちらかに力を傾ければ問題ありません」

女神「だから爆発することもありません」

勇者「均等な状態で渡したじゃないですか!」

女神「あわわ……」

勇者「何故なのです!?」

女神「わわ……」

勇者「女神様! 答えてください!」

女神「ゆゆ、勇者よ……」

女神「えと……その……あ、そうだ!」

女神「勇者よ、あなたは勘違いをしています」

勇者「勘違い……ですか?」

女神「はい。爆発するのはあなたではないのです」

勇者「どういうことですか?」

女神「爆発するのは……」

女神「私の信者です!」

勇者「えぇっ!?」

勇者「し、信者の方が爆発するのですか!?」

女神「落ち着きなさい。本当に爆発するわけではありません」

女神「信者……つまり私のことを神と信じ崇めてくれる者」

女神「その信仰は私が全知全能であって初めて成り立つのです」

女神「それなのに、私の話に明確な食い違いが出てしまっては」

女神「信心……果ては自我の崩壊まで考えられます」

勇者「そ、それは爆発とどう関係が……」

女神「心の崩壊は爆発という表現がぴったりなのです!」

勇者「そ、そうなのですか?」

女神「そうなんです!」

勇者「……女神様」

女神「今度こそ、分かってくれましたね」

勇者「それだと女神様の話には食い違いがあると認めていませんか?」

女神「!!!!!」

女神「あわわわわわわわ……」

女神「……」

勇者「女神様?」

女神「こんなものぉー!」

ドガァァアアアアアン!!!

勇者「ぎゃぁああああああああ!!!」


こうして伝説の剣と盾は爆発し
女神の威厳は保たれた!

めでたしめでたし!

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