【SideM】水嶋咲「ウソツキなあたしと甘い君」 (23)

・アイドルマスターSideMの水嶋咲ちゃん(男)のSSです
・咲ちゃんおよびCafe Paradeの面々の雑誌のネタバレが大量に含まれています
・咲ちゃんの家庭環境など、色々と妄想、捏造してるところがあります
・たぶんのんびり更新です
・男同士の友情の話です

水嶋咲
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Cafe Parade
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かわいいもの

キラキラしたもの

それがあたしの大好きなもの


だからあたしもかわいくてキラキラになりたかった

それなのに、周りの大人はそれを許してくれなかった

それはあたしが“男の子”だったから


いつからか、あたしがかわいい恰好をすると、お母さんが悲しい顔をするようになって

あたしは、自分が普通の人とは違うことを理解した

お母さんが悲しむから、中学生になってからは普通の男の子として過ごすようになったけど

それでもかわいいものに対する憧れは止められなかった

だからあたしは、いつからかこっそり女装をするようになったの

誰にも言えない、あたしだけの秘密のお楽しみ

女装は楽しいけど、たまにすごく胸が痛むことがあった

それはきっと、あたしが自分に嘘をついていたから

そうやって苦しんでたある日、あたしは、君に出会ったの

「雨、やまないねー」

いつものように女装で遊びに出た帰り道、あたしは捨てられたミニブタを見つけた。
…そう、ミニブタ。なんでこんなところにミニブタが?って思ったけどね。
でも、拾ってくださいなんて書かれた箱に入れられたミニブタを、放ってはおけないでしょ?
連れて帰るにしても、まずはどこかで着替えないと…なーんて考えてたらまさかの雨!
あわてて橋の下にもぐりこんだけど、雨がやむ気配はないし、どこかのお店に入ろうにもこの子がいるし…

「どうしよっか…」

今の空模様みたいにどんよりした気分でため息をつくと、誰かに傘を差しだされた。


「大丈夫?女の子が体冷やしたらだめだよ」

そこにいたのはすっごくかわいい顔をした男の子。
思わず女装したら絶対似合いそう…なんて思っちゃった。

「そんなところにいたら風邪引いちゃうよ。よかったら、この傘使って」

「あ、ありがとう。でもキミはどうするの?」

「俺は大丈夫だから気にしないで。それより、早く帰った方がいいよ」

「うん。でもこの子が…」

思わず腕の中のミニブタを見た。
とりあえずどこかで着替えたいけど、その間この子はどうしようか…

「…ミニブタ?」

「うん。捨てられちゃったみたいなんだけど、ほっとけないしどうしよっかなって」

「そうだね…あ、そうだ!よかったら、俺のバイト先においでよ」

「バイト先?」

「うん、カフェなんだけどね。オーナーがすごく良い人だから、きっと相談に乗ってくれるよ」
「それに、雨宿りもできるしね。どう?」

「じゃあ…お言葉に甘えちゃおっかな」

女の子がこういう誘いにホイホイ乗るのはよくないと思うけど、あたしは本当は男だし問題ないよね。
それに…彼はたぶん、善意で言ってくれてるんだと思う。なんとなくだけど、そう思うんだ。

「それじゃあ行こうか、すぐそこだからさ」

「うん。あ、あたし水嶋咲っていうんだ。キミの名前は?」

「そういえば自己紹介してなかったね。俺は卯月巻緒。よろしくね」

巻緒に案内されて(ちなみに道中は相合傘だった)着いたのは、ちょっと小さいけどとってもかわいいカフェだった。

「Cafe Parade?」

「うん。さ、入って。オーナーには連絡してあるから」

入ってみると、内装もすっごくかわいくて、思わず声が出てしまった。

「わっ、すごーいカワイ~!」

「気に入ってくれたならよかった。はい、タオル」

「うんっ、すっごく素敵!ありがとう、巻緒!」

こんな素敵なところでバイトしてるなんて、巻緒がうらやましくなっちゃう。
雨宿りにきたはずなのに、そんなことも忘れちゃいそうになる。

「ああ、来たね。雨にうたれたんだって?」

「あ、神谷さん!」

店の中から出てきたのは、すっごくさわやかなイケメンだった。
この人が巻緒が言ってた神谷さん…?
オーナーっていうからもっとダンディなおじさんとかかと思ったら、ずいぶん若く見える。

「初めまして、神谷です。災難でしたね」

うわっ、近くで見るとますますイケメン!
こんな風に微笑まれたら、だいたいの女の子はイチコロなんじゃないかな~。

「さあ、こちらへどうぞ。お嬢さん」

おじょうさん!おじょうさんだって!
女装にはちょっと自信があるし、ばれたことも今のところはないけど
こうやって女の子扱いしてもらえるのはやっぱり嬉しいな~。

「雨に濡れて体が冷えたでしょう?よかったら、どうぞ」

「ありがとうございます!いい香り…」

神谷さんはあたしをテーブルにつかせると、紅茶を入れてくれた。
動きもすっごくスマートだし、紅茶もおいしいし、本当に王子様みたいな人だなぁ…

「咲ちゃん、よかったらこっちもどうぞ」

「わっ、かわいいケーキ!ありがとう巻緒!」

「…!なにこのケーキ!すっごくおいしい!」

「でしょ?荘一郎さん…うちのパティシエさんのケーキ、すっごくおいしいんだ!」

「うん!今まで食べたケーキで一番おいしいかも!」

「俺、ここのケーキに感動して、ここでバイトさせてもらってるんだ」

そうやって話す巻緒はすっごくいい顔をしてて、本当にケーキが好きなのがよくわかった。
なんというか、輝いてるっていうの?すごく楽しそうにしてる。
神谷さんもそうだし、このケーキを作った人もきっとそうなんだろう。
このカフェの人は、みんな自分らしく生きているんだと思う。
だからここは、こんなに眩しく見えるんだ。

…ここでなら「僕」が、素の「あたし」でいられるかも…

「あのっ、ここってバイト募集してますか!?」


「あたし、ここで働きたいです。ぜひお願いします!」

自分でもどうかとは思ったけど、気づいたら口から言葉が出ていた。
雨宿りに来ていきなりバイト志願とか変な子だと思われそうだけど、しかたないよね。
ここにいたいって、ここで働きたいって思っちゃったんだもん。
断られるだろうとは思うけど…冷静に考えると、あたしだったらこんな子雇わないだろうし。

「こちらこそ、ぜひよろしくお願いします。お嬢さん」

ほらやっぱり…って、え、いいの!?

「えっと、本当にいいんですか?」

「もちろん。そろそろバイトの人数を増やそうかと考えていたところでしたし」
「お嬢さんのように可愛らしい人なら、大歓迎ですよ」

「俺も、咲ちゃんが一緒にバイトに入ってくれると嬉しいな」

ほ、本当にいちいち言うことがイケメンなんだから…!
でも嬉しい…あたしもここで働けるんだ!

「では改めて。オーナーの神谷幸広です。よろしく」

「バイトの卯月巻緒です。これからよろしくね」

「水嶋咲です、よろしくお願いします!」

こうしてあたしは、Cafe Paradeで働くことになったのです。

「おはようございまーす!」

あたしがCafe Paradeでバイトを始めて、早くも一か月がたとうとしている。
仕事の内容にもだいぶなれてきたし、今では看板娘とか言われちゃったりすることも。
一緒に働いてるみんなも、すっごくいい人たちばっかりで…

「うわあああああああ!!サタン、サタンはどこだあああああああああああああ!!」

…うん、ちょっと問題はあるけど、いい人たちなんだよ。

「おはよーアスラン、どうしたの?」

「おお、サキ!サタンが、サタンが何者かにさらわれてしまったのだ!」

「サタンってあのぬいぐるみだよね?どっかに置き忘れたとかじゃなくて?」

「サタンはぬいぐるみではない!我が仕える堕天使だ!」

この以上にテンションが高いのはシェフのアスランベル…なんだっけ?とりあえずアスラン。
うちのシェフなんだけど、ちょっと…いや、かーなーり変わってるんだよね。
ま、あたしも人のことはあんまり言えないんだけどさ。
でもこう見えて、料理の腕は確かなんだよねー。顔もいいし、性格さえマトモなら…

「ああ、サタンがいなくなってしまったら我はどうすれば…」

「もー、そんなに落ち込まないでよ。あたしも一緒に探してあげるからさ」


「なんや騒がしいですね。何事ですか」

「あ、おはよう荘一郎!」

「ソーイチロー!実はサタンがさらわれてしまったのだ!」

「ああ、サタンなら天気が良かったらから洗って外に干してますよ」

「さたああああああああああああああああああああん!!」

「あ、アスラーン。…行っちゃった」

「まったく、後でもう少し静かにと注意しないと。ああ、水嶋さん。おはようございます」

彼がパティシエの東雲荘一郎。あの、すっごくおいしいケーキを作った人!
荘一郎の作るケーキは、本当に魔法みたいなの!食べた人はみーんな笑顔になっちゃう、素敵な魔法。
ちょーっと怖いところもあるけど、本当は優しいってみんな知ってるんだ。
そうじゃなきゃ、あんなに素敵なケーキを作れるわけないもん!

「荘一郎は、仕込みはもう終わったの?」

「ええ、ついさっき。それよりも、神谷を見てないですか?」

「神谷?ごめん、見てないや。あたしも今来たばっかりだし」

「そうですか…まさか、また一人で出かけたんじゃ…!」

「店の前の掃除おわりましたー!あ、おはよう咲ちゃん!」

「おはよー巻緒!ねえ、巻緒は神谷がどこにいるか知ってる?」

「え、さっき買い物に行ってくるって…荘一郎さんかアスランが一緒なんだと思ってたんですけど」

「ああもう、あれほど一人で出かけるなとって言ってるのに!水嶋さん、ちょっと探してきてもらえますか?」

「はいはーい。神谷ってば、今日はどこで道に迷ってるんだろうねー」

神谷が実は方向音痴だって知ったのは、働き始めてすぐのことだった。
近所のスーパーに行って数時間帰ってこないこともあったって、荘一郎がグチってた。
そんな方向音痴なのに世界中を旅してたことがあるっていうんだから、神谷って本当にチャレンジャーだよね…

とかなんとか考えてるうちに、神谷はっけーん!どうやら誰かと一緒にいるみたい。

「本当に、本当にありがとうございました!」

「気にしないでください。じゃあね、もう迷子になるんじゃないよ?」

「うん、ありがとうお兄ちゃん!」

どうやら迷子の子供のお母さんを探してあげてたみたい。
神谷ってば、困った人を見ると放っておけないからね~。そこがいい所なんだけど。

「ふう、急いで帰らないとまた東雲に怒られるな」

「ざーんねんでした!荘一郎、もうカンカンだったよ」

「さ、咲!そっか、もうばれてたか…」

「あはは!しょーがないから、あたしも一緒に謝ってあげるよ」

「それは頼もしいな。頼むよ」

「じゃ、早く戻ろう!荘一郎たち待ってるよ。で、今日は何しに行ってたの?」

「ああ、店に飾る花を買いに行ってたんだ。ほら」

「わあ、キレイ…神谷ってこういうセンスは完璧だよね」

そのあと神谷は、戻る途中にまた道を間違えそうになってた。
本当に、欠点なんて無いようにに見えて、変な所で抜けてるんだから。
そういうところ、嫌いじゃないけどね。

「ただいまー!神谷見つけたよ!」

「お帰りなさい。…で、今度はどこに行ってたんですか?」

「はは、ごめんごめん。ちょっと花を買いに行ってたんだ」

「はあ…もういいから早く準備してください。神谷がいないと店を開けられないんですから」

「わかってるって。そっちは終わってるのかい?」

「フハハハハ!我らの準備はすでに完了しているぞ!」

あ、アスランが復活してる。
肩にはいつも乗っけてるぬいぐるみ…サタンがちょこんと座ってた。
どことなく、綺麗になってるみたい。

「こっちはとっくに終わってますよ。あとはみんな神谷待ちです」

「それは申し訳なかったな。それじゃあ、急いで開店準備といきますか」

「はいはーい!あたし手伝う!」

「あ、俺も手伝います!」

「うん、二人ともありがとう。それじゃあみんな、今日も一日頑張ろう」

これがあたしたちCafe Paradeの日常

この魔法みたいな空間では、あたしも魔法にかかっていられるの

でも、いつまでもこのままじゃいられないことはわかってるんだ

今はバレてないけど、いつかあたしが男の子だって知られちゃう日はくるんだと思う

でも…もう少し、このままでいてもいいよね?

とりあえずここまでです
こんな感じでのんびり書いていきますので、よろしければおつきあいください

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