桃太郎「よし、行くぞ」(189)

―お爺さんとお婆さん家―

桃太郎「では鬼退治に行って来ます」

かぐや「気を付けてね」

お婆さん「はい、これキビ団子...」

??「待て、わしも行くぞ」

桃太郎「お爺さん!?」

かぐや「え!?」

お婆さん「あなた何言ってるんですか!?」

??改めお爺さん「わしも一緒に鬼退治に行くぞ!」

お婆さん「あなた自分の歳を考えて下さいよ」

桃太郎「そうですよ無茶ですよ」

お爺さん「大丈夫、山で鍛えたこの体と山仕事七つ道具で鬼共に目に物見せてくれる」

??「付いてくワンワン」

お爺さん「おや、お前は拾ってきた流木から出て来たシロじゃないか」

??改めシロ「一緒に行きたいワンワン」

お爺さん「そうか、じゃ一緒に行くか」

シロ「わーいワンワン」

桃太郎「え、シロも行くんですか!?」

お婆さん「鬼退治に行くんですよ!?やめなさいな!」

かぐや「...でもシロはひょっとしたら役に立つかも...」

??「自分もお供させて下さい!!」

桃太郎「今度は誰だよ!」

お爺さん「おや、雄鶏じゃないか」

??改め雄鶏「はい!お爺さんに命を救われた雄鶏で御座います!」

お爺さん「そうだっけ?」

お婆さん「確か普通に買って来ましたよね?」

雄鶏「卵を産まない雄は殆んどが処分されます...あの時お爺さんに買われなければ
自分の命は終わっていました!その御恩返しがしたいのです!!」

お爺さん「そうだったのか。ならば連れて行ってやろう!」

桃太郎「ちょっと待ってよお爺さん!」

かぐや「雄鶏がなにか役に立つのかしら...?」

お婆さん「心配だわ...」

??「わ、私もお供します!」

桃太郎「またかよ!」

かぐや「おつうさん!?」

お婆さん「えぇ!?」

??改めおつう「私もお爺さんにお供させて下さい!役に立って見せます!」

お婆さん「あ、貴方はもうすでにこの家の役に立っているわよ!?」

おつう「私もお爺さんに命を救われてますから」

お爺さん「家に泊めたぐらいでそんな大げさな」

おつう(いいえ、あの時猟師が仕掛けた罠から私を逃がしてくれたから...)

??達「「「「「「「あっしらも仲間に加えてもらいたいです!!!!!!!」」」」」」」

桃太郎「今度は知らない団体様で!?」

お婆さん「お爺さんの知り合いですか!?」

お爺さん「いや、わしは知らんぞ」

??代表?「あっしらは仮に傘小僧とお呼び下さい」

一同(一人だけ傘じゃなく手拭い被っているけど...)

お爺さん(七人中二人が被っているあの手拭いと年季が入った傘、
気のせいかどこかで見覚えが...)

??改め傘小僧①「お爺さんが行くという鬼退治、あっしらも付いていきます!」

桃太郎「気持ちは嬉しいんだけど...」

??「俺っちも付いていくぜ」

桃太郎「また増えた...」

お爺さん「おや、ウサギどんじゃないか」

??改めウサギどん「俺っちは悪い事は見過ごせねぇ性分だ、鬼退治に一緒に行くぜ」

桃太郎「また余計なのが増えたとしか思えない...」

お爺さん「ウサギどんは歩きながら歩いている奴に火打石で火を点ける程器用な上、
船についても詳しいんじゃ」

かぐや「歩きながらそんな事が出来るなんて...」

お婆さん「よく山仕事の相談をするとは聞いてたけど船についても詳しいなんて...」

桃太郎「意外だ...」

かぐや「私も付いて行こうかな...」

桃太郎「お前もかよ」

お婆さん「あれまぁ」

お爺さん「ふむ、わしと桃太郎とシロ、雄鶏、おつうさん、傘小僧七人にウサギどん、そしてかぐやか」

桃太郎「これ以上は増えないよな?とにかくまず、女性陣は留守番してて下さい」

おつう・かぐや「」

桃太郎「次にお爺さんも残ってて下さい」

お爺さん「いや、わしは」

お婆さん「お爺さん!」

お爺さん「うぅむ、仕方ない帰りを待つとしよう」

雄鶏「それじゃぁ自分も残りましょう」

おつう「私も残る決心が付きました」

傘小僧①「あっしらは帰る場所を守りましょう、安心して鬼退治に行って来て下せい」

桃太郎「...」

シロ「付いてくワンワン」

桃太郎「シロ...」

ポンポン

ウサギどん「俺っちも爺さんの友達だか、鬼退治する決心は変わらねぇぜ!」

桃太郎「ウサギどん...」

かぐや「私は残って武運を祈ってるわ」

桃太郎「そうか」

お婆さん「それじゃあこのキビ団子を」

桃太郎「はい、お婆さん」

桃太郎「よし、行くぞ」

シロ「ワンワン!」

ウサギどん「応!」

残留組一同『気を付けてな~~!!!』

―道、村近く―

ザッザッザ てくてく てくてく

ウサギどん「...たくさん居たのにこれだけになるとちょっと寂しいっすね」

桃太郎「そうだな...(やっぱあとちょっとは仲間が欲しいかもしれない...)」

シロ「仲間が欲しいワンワン」

??「もしもしそこの人、そこの餅取って」

ウサギどん「うわ、びっくりした」

桃太郎「餅?あ、ほんとだ落ちているや」

??「それ取って」

ウサギどん「そっちの方が近いじゃん自分で取れば」

??「こっちは寝ているんだよ。取ってくれないの?ものぐさな兎だな」

ウサギどん「!?」

桃太郎「はいどうぞ」

??「ありがとう」

ウサギどん「桃太郎...」

桃太郎「だってこの人の成り、なんかの病気かもしれないし」

??「いや病気じゃないよ、起きて餅を拾うのが面倒だっただけ」モグモグ

桃太郎「え」

??「この成りは洗うのが面倒だから」

桃太郎「ものぐさなのか...」

??「うん、ものぐさ太郎ひぢかすと呼ばれているよ」

桃太郎「そんなので今までどうやって生きて来たんだ...」

??改めひぢかす「雨と埃を食べて生きて来ました。というのは冗談で他から施しを受けてます」

桃太郎「...キビ団子一つやるよ」

ひぢかす「おっ、ありがとう」

ウサギどん「ちょっとはやる気出せよ」

シロ「やる気出せワンワン」

ひぢかす「よっこいしょ。やる気はあっても向けるものがない」

ウサギどん「じゃあ鬼退治に行くというのはどうだ?」

ひぢかす「鬼退治に行くとなんかあるの?」

桃太郎「鬼は人々に害をなす存在だ、うちのお爺さんの知り合いのお爺さんも鬼が惨殺したし
それに妊娠16カ月で生まれた子は鬼になる可能性が高いとかいう説がある所為で
なんか周囲から白い目で見られ始めてるし...」

ウサギどん「要は鬼を退治すれば周囲から認められるって訳さ」

ひぢかす「ふぅん」

ウサギどん「後、鬼の宝物も手に入るだろうし女の子にモテるかもな。
というか仲間になれよ。キビ団子もらっただろ」

ひぢかす「ついでに国から報酬が出るって話だしな、よし俺も付いてくよ」

桃太郎「うん、そういえば未だ名乗って無かったな、桃太郎って言います、で」

シロ「ワンワン」

桃太郎「こっちがシロで」

ウサギどん「俺っちはウサギどんだ」

??「拙者は一寸法師で御座る」

ひぢかす「よろしく」

桃太郎「あれ?今どこから声が...」

ウサギどん「今ちゃっかり名乗った奴、そこに居るっすよ」

??改め一寸法師「拙者も鬼退治を志している者で御座る」

桃太郎「...気が付かなかった」

一寸法師「同じ志の者に出会えて良かった、一緒に参りましょう」

桃太郎「...どうしょうか」

ひぢかす「別にいいんじゃないか?」

一寸法師「ではちょっと拙者を運んで下さらんか?」

桃太郎「はい良いですよ」

ひぢかす「シロの背中が安定していて乗り易いんじゃないか?」

桃太郎「じゃあシロの背中に」

シロ「ワンワン」

一寸法師「かたじけない」

ウサギどん「ちゃっかりしてやがる」

桃太郎「よし、行くぞ」

一同『おぉー!!』

ひぢかす「と、その前にちょっと寄ってく所があるや。先行ってて」

桃太郎「あら」

―鬼が島討伐隊宿営地―

ワイワイ ガヤガヤ

ウサギどん「凄いな、こんなに侍を集めるなんて」

一寸法師「そうは言っても50名そこそこで御座ろう」

ひぢかす「だか名立たる侍が集まってるな」

ウサギどん「しかしひぢかす、ちゃんとした物持ってたんだな」

ひぢかす「うん、これはな・・・

回想―村長宅―

ひぢかす「ごめんくださーい」

??「おや、ものぐさじゃないか!お前が立っているなんて今日は雪か嵐が来るのか!?」

ひぢかす「お久し振りです村長。今日は鬼が島討伐隊に参加しようと思い、別れの挨拶に来ました」

??改め村長「なんと!?天変地異が起きるのか!?」

ひぢかす「今までお世話になりました。けど討伐隊に参加出来なければまたお世話になります」

村長「」

今―鬼が島討伐隊宿営地―

ひぢかす「その後、二言三言会話したらちょっと待ってろと言われてこれを餞別に着せて貰ったんだ」

ウサギどん「そうだったんか...」

桃太郎「あ、熊がいる。俺たち以外にも動物連れがいるんだな」

熊「...」

シロ「ワンワン」

桃太郎(今でも少し浮いてるけど最初の面子全員で来てたら浮いてるどころじゃなかったな)

桃太郎「しかしちゃんとした討伐隊に参加出来て良かったよ」

ひぢかす「参加出来なかったらどうするつもりだったんだい?」

ウサギどん「そうだな、まず泥船と火傷薬と書いてある唐辛子入り味噌を用意して
次に鬼が島中に火を付け木の船も焼き払う。という作戦はどうだ?」

一寸法師「おぉそれなら少数でも勝てる見込みが在る。ウサギどんは策士で御座るな」

ウサギどん「鬼共が阿鼻叫喚している様が目に浮かぶぜ」

ひぢかす「...ウサギどんはまめだな、それは下準備に相当手間が掛かるよ」

桃太郎「でも火攻めは良いかも」

ひぢかす「いや、これから行く鬼が島は岩ばかりで緑も少なく
住居も岩の洞窟を利用していると聞く。火攻めなら燃料が大量に必要だ。
更に言うなら鬼に誘拐された人もいるからその人達も巻き添えだ」

一寸法師「しまった、失念していたで御座る...」

侍その一「皆の者静粛に!これより御大将より下知が在る!」

一同(わくわく)

侍大将「皆の者、鬼が島討伐の任の為、集まってもらい感謝する。さて早速作戦説明をする」

侍大将(コクン)

侍その二(コクン)

侍その二「まず我々は船にこの"神便鬼毒酒"と共に乗り込み、修験者に変装する。

次に霧が出るのを見計らって船で鬼が島に武器を隠し持って上陸する。

鬼に遭遇したら旅の修験者で霧で航路を見失ったと説明し停泊の許可を得る。

その見返りとして滅多にお目に掛かれない貴重な酒を振舞うと言ってこの、

"神便鬼毒酒"を飲む様進める。この酒を飲んで暫くすると鬼達は動けなくなるので、

そこで一気に鬼達を倒し、誘拐された人達を救出する!」

侍大将「基本の作戦はこの通りだが皆の者には状況によって柔軟に対応してもらいたい!」

一同『おぉ』

侍その一「何か質問は!」

桃太郎「はい、その毒酒を飲んでみろと鬼に言われたらどうするんですか?」

侍その二「飲んで良い。この酒は鬼には効くが我々には効かない、むしろ元気になる」

桃太郎(俺が飲んでも大丈夫かな...?)

侍その一「他に質問は!」

ひぢかす「はい、鎧の上から修験者に変装していいですか?」

侍その二「まぁ、ばれなければ良いかな?」

ひぢかす「はい、分りました」

侍その一「他に質問は!」

ウサギどん「はい、火攻めの予定はありますか?」

侍その二「全く無い」

侍大将「だが状況によってはボヤ騒ぎを起こして鬼の注意を引く、というのはあるかもな」

ウサギどん(良し!そういう状況来い!俺っちの腕の見せ所だぜ!)

侍その一「他に質問は!」

侍その二「無ければ解散!各々準備怠らぬ様に!」

一同『応!』

桃太郎「なんか結構、出たとこ任せな気がするな...」

ひぢかす「なぁに基本は決まってるんだ、後は臨機応変にやればいいんだよ」

―霧発生中の海―

キーコ キーコ

桃太郎「霧の所為で辺りが全く分からないね」

一寸法師「全くで御座る。おまけに十人ちょっとしか乗れない小船とは心細いで御座る」

侍その三「仕方あるまい。大きい船は鬼にやられた。
全員と荷をぎりぎり運べる数の小船を用意出来ただけでも重畳」

侍その四「しかしこの船、しっかり目的地に向かっているのか?周りの船が見えないのだが」

ウサギどん「大丈夫、海図の通りに船は進んでる筈」

シロ「ワンワン」

熊「...」

侍その四「しかしこの船は他と比べ作戦の要、神便鬼毒酒が多目に積み込まれているんだぞ」

ウサギどん「少し早めるか?」

ひぢかす「焦らない焦らない」

侍その三「焦っても駄目だろ。気を落ち着けろ」

侍その四「うぅむ...」

キーコ キーコ

桃太郎「こういう霧の時は鬼が島に灯りが点いて欲しいな」

ひぢかす「いや、それは」

シロ「灯りだワンワン」

ひぢかす「え?」

一寸法師「ほんとだ...」

ウサギどん「しかしあの灯り...」

侍その三「あぁ、罠かもしれん」

侍その四「いや、他の連中が先に着いて灯りを点けたのかもしれないだろ?」

桃太郎「とりあえずあの灯りを目標に進んでみませんか?」

侍その三「そうだな...」

―鬼が島、岸―

侍その三「やっぱり鬼が灯りを点けてるな」

ひぢかす「どうやら一番乗りだな」

鬼一「そこの船!何者か!?」

鬼二「あ、熊がいる...おまけに兎が船を漕いでる...」

熊「...」

侍その三「私達は旅の修験者でこの霧の為、航路が分らなくなったのです。
すいませんが暫らく停泊させてもらえませんか?」

鬼一「は、怪しいな、こおの場所が何処ら辺だか知っているんか?」

侍その三「それは...」

ひぢかす「存知ません」

鬼一「この姿を見ても知らないだと?」

ひぢかす「鬼が島の話を聞いた事はありますがこの霧の中を親切にも灯りを点けて下さっているのです。
悪逆非道な鬼が住む鬼が島とは違うでしょう」

鬼一「ふ、そほにこの場あ鬼が島と名札が出えいるぞ」

船の一同(マジで!?ホントだ!鬼が島って書いてある!!)

ひぢかす「ハハハ、ご冗談を。
ここが鬼が島であれば問答無用でこの船に積んでいるとても貴重な酒を奪われていますよ」

鬼一「ほう、とても貴重な酒と」

ひぢかす「はい。ところでもっと灯りを大きくまたは多く出来ませんか?
私達以外にも仲間がおり、霧で難儀していると思います」

鬼二「お前ら以外に仲間がいるのか?」

ひぢかす「はい、その仲間もとても貴重な酒を積んでおり、このまま行方知れずにするのは惜しいです」

鬼一「そうか、ちょっと待ってろ、皆に報告してする」

ひぢかす「はい、よろしくお願いします」

船の一同(ほっ)

ひぢかす「(これで第一段階は何とかなるかな)」

侍その三「(お主、見直したぞ)」

ウサギどん「(やるじゃん)」

暫らく経ってから―鬼が島、岸―

キーコキーコ ワイワイ ガヤガヤ

ワイウア ガヤダラ

鬼三「おーい、こっちだ!」

鬼四「今、縄を放るぞ!」


桃太郎「明るいと周りが良く見える」

ひぢかす「お、良く見ると大きな船があるな」

侍その五「ほんとだ、百人は乗れそうだな」

ウサギどん「帰る時はあの船に乗りたいな」

侍大将「いや~海で遭難しかかったところを助けて頂き、ありがとうございます」

鬼五「いえ。ところで部下に聞きましたがなんでも貴方方は修験者で、
とても貴重な酒をもっているとか」

侍大将「はい。もし助けて貰わなかったらこの貴重な酒が無駄になるところでした。
だからこの酒、感謝の印としてどうぞお受け取り下さい」

鬼五「話が早くて良かった。ついでに宴会をやろうと思うのであなた方も一緒にどうですか?」

侍大将「(話が早くて良かった)ではお言葉に甘えてご一緒させてもらいます」

鬼五「ところでそのとても貴重な酒、なんていうのですか?」

侍大将「"神変奇特酒"といいます」

―鬼が島、洞窟内、大広間―

鬼五「さぁここが宴会場です。入って下さい」

侍大将「では失礼します」

鬼六「ようこそお客人。お迎えしますよ」

鬼七「今、料理を用意させますから」

侍大将「助けて頂いた上に御馳走まで、重ね重ね感謝します」

ワイウア ガヤダラ

鬼六「酒は全員に回ったかな?」

鬼五「後ちょっとです」

ウサギどん「(...なんかここは本当に鬼が島じゃない気がしてくるな...)」

侍その三「(そんな事は無いぞウサギどん)」

ウサギどん「(どうしてそう言い切れるんで?)」

侍その四「(おいおい、俺達は村々を襲い人を攫って食べちゃったりする鬼を退治しに来たんだぞ。
ちゃんと調べはついている)」

ひぢかす「お、これは美味しそうなモモ肉ですね」

ウサギどん「?」

鬼八「それはモオ肉じぇねーよ、客人」

ひぢかす「おっと、それはすいません」

ウサギどん「(モオ?)」

ひぢかす「(あの鬼、人をよく食ってる)」

ウサギどん「(え!)」

ひぢかす「(あの鬼だけじゃない、岸で合った鬼もよく人を食うほうだと思うし、
ここにいる鬼の何人かは結構人食いだ)」

ウサギどん「(まじで!)」

侍その三「(人食い鬼は同じ語を続けて言えなくなってくる。
だから仲間に声を掛ける時は"もしもし"や"こっちこっち"と言う様に。
人食い鬼は"もしもし"や"こっちこっち"と言えないからな )」

侍その五「(ついでに鬼達が運んでいる食事の肉は人肉の様だな)」

ウサギどん「()」

桃太郎「(緊張してきた...)」

一寸法師「(拙者もで御座る...)」

シロ「(クゥン...)」

熊「(...)」

侍その五「(熊も緊張してきたみたいだな)」

侍その三「(大丈夫、ここまでは上手くいっている)」

鬼六「...それでは!乾杯!」

一同『乾杯!!』

侍大将 ゴクゴク

侍その二 ゴクゴク

鬼五「(...大丈夫かと)」

鬼六「(そうだな...)」ゴクガキュ

侍その二(...大丈夫かと思ったが警戒は一応されてたか)

侍大将(飲んでくれたか...後は効いて来るのを待つのみ)
   「ふぅ、未だ酒は有りますからじゃんじゃん飲みましょう」

一同 ゴクゴク ゴクガキュ

ひぢかす「ん?どうした?飲まないのか?」

桃太郎「う、うん、飲むさ」

鬼八「そうだモオといえば、
   客人達はモオから生まれた人の話を聞いた事があるか?」

桃太郎「え!?」

ウサギどん「!?」

一同『?』

鬼六「おや、それは新しい鬼の話か?」

桃太郎「...何故その者は鬼だと?」

鬼六「そえは俺が身籠って16カ月で生まれたからさ。このとうり鬼となった。
   それと、なぁ?」

鬼七「こっちは大蛇と人の娘から生まれて来た。でもあんたは呪われたからだろ?」

鬼六「まぁな」

鬼八「この話は新い鬼の話と違う」

鬼六「じゃぁどんま話だ?」

鬼八「仙にの夫妻が暮らちてそ話だ」

桃太郎「え?」

鬼八「仙にを食ったろうと思ってな、その仙に夫妻が暮すっちゅう山へ行ったんが。

   そしたら嬰児もいてな、親子まとめち食ほうとそしてまず夫を殺した。

   次に女を殺し掛けたざ、その前に子と一緒に川へ飛び込んだ。

   そしたら女が消えたと思っあらでっかいモオば子をつすんで川ば流れて行った。

   その後、行方は知らない」

仙人を食べようと思い、その仙人夫妻が暮らすという山へ行った。

そうしたら赤ん坊もいて、親子まとめて食おうとしてまず夫を殺した。

次に女を殺し掛けたが、その前に事一緒に川へ飛び込んだ。

そしたら女が消えたと思ったら大きな桃が子を包んで川を流れて行った。

その後の行方は知らない

鬼六「成程、そりゃ新しい鬼の話じゃないあ」

鬼七「というか仙人を食ったことがあるのか」

鬼五「あの...(人を食った喰わないの話は今は未だ...)」

桃太郎「」

ウサギどん「」

ひぢかす「(...どうした?)」

ウサギどん「(...桃太郎は川から流れて来た大きな桃から生まれた)」

近くの一同『え!?』

鬼八「そだ、俺が食う奴だどそこの奴が欲しいな」

桃太郎「!」

鬼八「似ているからな、その夫妻に」

鬼五「あの、だからね、部屋に案内すると言って閉じ込めた後にする話でしょうよ...」

一同『』

鬼七「なぁに、ほとんど隠す必要無いだろ。俺らがこいつらを殺す算段をしている事をよ」

侍一同 ガタタッ 鬼一同 ガタザッ

鬼六「おや?」

鬼八「ふん、俺らと殺り合おうってのか?身も程知らずだ」ガタン

侍大将(しまった!あの鬼、未だ酒を飲んでない!)

侍その一(まずい!)

桃太郎「...」ググッ

ひぢかす「桃太郎!三国志演義の関羽に倣って酒を飲もう!!」

一同『え!?』

ひぢかす「関羽は汜水関で一騎打ちの前に曹操に酒を勧められ飲んで戦いに臨み、
見事に敵将を討ち取った時に勝利の余韻と共に酒の酔いが回り、
とても気持ち良かったと聞く!飲め!!」

侍その五(あれ?汜水関の一騎打ちの話は確か...)

鬼八「そらじゃ俺ぁ飲もうかな」ゴクガキュ

侍一同『!!』

ひぢかす「桃太郎!お前も飲め!!」

桃太郎「よし!飲むぞ!!」ゴクゴク

桃太郎「よっしゃ!心機一転!俺は桃から生まれた桃太郎だ!!」

鬼八「そうか、名乗りを上げるなら返そう。
   俺は白豪寺で死人を食って!生者を食べる様になり!いつしか鬼となった、

   大和国の朱呑童子だ!」

侍一同『!(あいつが噂の!)』

侍その四「ふんっお前だけにいいかっこはさせないぜ!俺も名乗る!俺は頼光四天王が一人!足利山の熊殺し、
     坂田金時だ!!」

熊「...」

侍その五(ふーやれやれ、実際は殺してないのに。って顔だな)

鬼六「は!調子乗るな!鍛冶屋の息子で人死にが出る程の美少年な為に呪いを受け鬼と化した、

   越後国の酒天童子だ!」

侍一同『!!何!!』

ひぢかす「聞いた噂に矛盾があったがまさか二人いたのか!!」

鬼九「(実際は女に対する態度が悪くて呪われたんだよな?)」

鬼十「(それはゆわないほうが...)」

鬼六改め越後酒天「おい!」

鬼九・鬼十「すいません!」

侍その二「怖気づくな!我が名は平井保昌!頼光の友人にして討伐隊副将!!」

鬼二「あれ?修験者の集団って言ってなかったっけ?」

侍その三「騙して悪いがありゃ嘘だ」

鬼十「今更!?」

鬼三「俺は最初から気付いてた」

鬼九「嘘だな」

鬼七「基本、鬼に横道ないからな」

侍その二改め平井保昌(とりあえず毒酒が効いて来るまで無駄に時間が過ぎてくれれば...!)

鬼七「こちらも名乗ろう!八岐大蛇と人の娘より生まれて来た、伊吹山の酒呑童子だ!」

侍一同『!?!?!?』

ひぢかす「もう一人!?それに八岐大蛇だって!!?」

侍その四改め坂田金時「ハッタリだ!そんな訳無いだろ!!」

鬼七改め伊吹酒呑「え」

熊(...)

侍その五(お前の熊殺しもハッタリだしなって顔だな)

鬼八改め大和朱呑「ガハフ!」

ウサギどん「あれって笑ったんか?」

侍その一「我は」

大和朱呑「うるさいもお黙れ!」

侍その一「え?」

大和朱呑「俺は一度にたかあいで名乗りを上げる奴は六人までと決めている!
     それ以上は名乗るぢゃねぇ!始めるぞ!」

侍その一「く、名乗りたかった…」

名乗りたくて名乗れなかった人達『俺も…』

越後酒天「大和は気が短いたらな」

鬼五「もっと名乗り合いを楽しめば良いのに」

侍大将「後は勝って勝ち名乗りを上げればよい。気合を入れろ!」

桃太郎「よし!行くぞ!!」

仲間一同『おおー!!!』

越後酒天「こちらも行くぞー!」

鬼一同『おわー!』

  ワーワー ワーヤー カキンカキン カキンダフツ

桃太郎「てりゃ!」シュ!

大和朱呑「フン!」ズバ!

坂田金時「どっせい!」ブン!

越後酒天「ハッ!」ヒュ!

  ザッ! バッ!

一寸法師「おわわっ」

ひぢかす「わわっ」

侍その三「危ない!」

  ヒュン カキン

ひぢかす「お、ありが」

侍大将「君らはここから離れて誘拐された人達を探して来てくれ!」

ひぢかす「はいはい!」

一寸法師「は、承知!」

ウサギどん「心配だから俺っちも付いてくぜ!シロ、お前の鼻と俺っちの耳で探し出すぞ!」

シロ「ワンワン!」

  タッ タッ タッ タッ

鬼十一「逃がすかよ!」

熊「グルル」

鬼十一「うおっ」

侍その五「そうはさせるか!って感じです」

鬼五「なぁに、この広間以外にも鬼はいる。雑魚はすぐ死ぬ!」

平井保昌「くっ!」

侍大将「焦るな、あの者らならば見事にやってのけるさ!」

桃太郎(無事でいてくれよ…!)

―鬼が島、洞窟内、迷宮―

シロ「クンクン、こっちだワンワン!」

ウサギどん「ちょっと静かに…よし、鬼は居ないな行くぜ!」

一寸法師「冷静になってみるとこの面子で大丈夫で御座るか?」

ひぢかす「ウサギどんと白が居れば鬼を避けながら迷宮を進める筈さ」

ウサギどん「待て!静かに!」

  タッ テッ ツッ トッ

ウサギどん「(鬼だ)」

ひぢかす「(広間のほうへ向かうみたいだな)」

一寸法師「(今思ったが我々が無事救出出来たしても広間の仲間が全員やらてしまったら…)」

シロ「(クゥン…)」

ウサギどん「(フッフッフ、ここは俺っちが何処かで火を点けるべきだな)」

ひぢかす「(え?)」

ウサギどん「(シロ、お前がひぢかす達を人質の所まで案内しろよ。では)」

一寸法師「(あ、ウサギどん)」

ひぢかす「(…無事でいろよ、ウサギどん…)」

シロ「(無事でワンワン)」

―鬼が島、洞窟内、大広間―

桃太郎「はぁ、はぁ」

大和朱呑「どうした!俺は未だ本気じゃないぞ!」

鬼五「最初から本気出して欲しい…」

鬼三「俺は最初から本気出してるぜ!」

鬼九「嘘付け、押されてるじゃねぇか」

鬼三「ちゃんと力出してるつもりなんだけど…」

侍一同『!!(毒酒が効いて来てる!!)』

熊(…!)

侍その五「むっ!新手の敵がこっちに来るぞ!!」

平井保昌「なに!」

侍大将「皆の者!隙を見付けて酒を飲んで英気を付けろ!機会が来るまで持ち堪えろ!!」

侍一同『おおー!!』

桃太郎(よぉし、あとひと踏ん張りだ!)

―鬼が島、洞窟内、牢屋前―

ひぢかす「(何とか見つからずにここまで来れたが…)」

一寸法師「(鬼が見張りに着いているで御座る…)」

シロ「(クゥン…)」

ひぢかす「(どうしたものか…)」

―鬼が島、洞窟内、食糧庫―

ウサギどん(この袋の中身は、…何かの粉だな、麦かな?まぁいいや、
      火の回りが早くなる様にこいつをぶちまけるか)

 ザックザック バッサバッサ ザックザック バッサバッサ ザックザック バッサバッサ

ウサギどん「けほっけほっけほっ」(調子に乗ってやり過ぎた、手元が良く見えねぇ程だ)

??「おい、誰かそこにいるのか!?」

ウサギどん「!?っ、も、もしもしって言う約束の筈だぞ!けほっ」

??「もし...?その発音出来ない事ゆう決まり事知らんぞ?」

ウサギどん(!!っ、とりあえず火ぃ点けてずらかろ!)

  ゴソゴソ

??改め鬼十二「どうした?」

 カッチ カッ ド

―鬼が島、洞窟内、大広間―

 ドオオオオォォォォーーーーン

一同『!?』

大和朱呑「なんだ!?」

侍大将「火山噴火か!?」
 パラパラ ピシピシ ゴッゴッ
鬼五「まずい!天井が崩れる!」
 ガラガラガラ
一同『うわぁー!』
 ガラガラガラ
侍大将「皆避けろ―!」
 ガラッ...

侍その一「崩落は収まったか…」

鬼二「...空が見える様になったね…」

鬼九「のんきな事言ってんじゃねぇよ」

侍その五「空間を広くする為、洞窟の壁を削り過ぎたんだな…」

桃太郎「一体何が起こったんだ!?」

越後酒天「誰かひとっ走り外から様子を見て来い!」

鬼五「はっ!自分が見て来ます!」

 タッ テッ ツッ トッ

鬼五「大変です!多分食糧庫辺りから凄い量の煙が立ち上ってます!」

越後酒天「なに!?すぐに何人か連れて現場に行け!」

鬼五「はっ!でもこの場は...?」

大和朱呑「俺達だけでなんとかなるさ!」

鬼五「では!」

桃太郎(まさかウサギどんがやったのか...?)
ゴゴゴ

時を同じく―鬼が島、洞窟内、牢屋前―

 ドオオオオォォォォーーーーン

一同『!?』

鬼十三「なんだ!?」

鬼十四「凄い音だ!」

ひぢかす(天変地異か!?)

鬼十三「おい、様子を見に行こうぜ」

鬼十四「おう!」

 タッ テッ ツッ トッ

ひぢかす「よし、今の内だ!」

一寸法師「承知!」

シロ「ワンワン!」

 タッ タッ タッ タッ

ひぢかす「もしもし、誘拐された人達ですか?」

女性一「ど、どちら様ですか?」

ひぢかす「私達は鬼討伐隊の者です。誘拐された人達を助けに来ました」

女性二「私達は助かるんですね!?」

女性三「ああ、良かった...」

一寸法師「今、鍵を開けるで御座る」

シロ「ワンワン」

 ガチャリ

一寸法師「さぁ、どうぞ」

 ゾロゾロ

女性四「いつ、鬼に殺されるか不安でいっぱいでした」

女性五「でももうその心配はないのですね?」

ひぢかす「はい、無事にここから抜け出せれば」

一寸法師「(意外と人数がいるで御座るよ。島からの脱出はどうするで御座るか?)」

ひぢかす「(岸に有った船を頂こう。鬼も船が無ければ追って来れないしな)」

一寸法師「(成程、承知したで御座る)」

ひぢかす「はい皆さんこちらへ」

シロ「ワンワン」

女性六「あのぅ、先程の轟音は何だったんですか?」

ひぢかす「はい、分りませんがご安心を」

ひぢかす「(ウサギどん…無事でいろよ)」

シロ「無事でワンワン」
                               ゴゴゴ

―鬼が島、元洞窟内、元大広間―

侍一同『はぁ、はぁ』

鬼一同『はぁ、ふぃ』

大和朱呑「だらしねぇなお前ら」

越後酒天「く、なぜだか思えといりに動けねくなってきた...」

鬼三「俺も…」

侍大将「はぁ、はぁ」(なんとか勝てるか...?)

桃太郎「はぁ、はぁ」(よし、もう一息...!)

大和朱呑「なら、俺が本気を出すか...。ハァ!」
                                     ゴゴゴゴ

ブゥン!

桃太郎(!!)

カキィン!!

桃太郎(こいつ、まだこれ程の力を!?)

大和朱呑「終わりだ!」

ザシュゥ!

桃太郎「がはっ」

坂田金時「桃太郎ー!!」
                           ゴゴゴゴ

時を同じく―鬼が島、岸、船の前―

ひぢかす「(よし、鬼の見張りは居ないな)」

シロ「(ワンワン)」

一寸法師「(あちら側に凄い量の煙が立ち上っているで御座るな)」

ひぢかす「(鬼はあっちに気を取られているんだな)」

ひぢかす「さぁさぁ皆さんこの船にお乗り下さい」

シロ(!!)

一寸法師「む、どうしたで御座るシロ殿?」

シロ「桃太郎さんの所に戻るワンワン!!」

一寸法師「わわっ」

ひぢかす「あ、シロ、それに一寸法師...」

 タッ タッ タッ タッ

なんか桃太郎伝説を思い出したわ

―鬼が島、元洞窟内、元大広間―

坂田金時「うぐぅ」

侍その一「ぐぐ」

平井保昌「こ、こいつは」

侍その三「強い…!」

大和朱呑「ガハフ!」

侍大将「くっ!」

熊「…!」

侍その五「む、誰か来ます!」
                       ゴゴゴゴ

 タッ タッ タッ タッ

シロ「ワンワン!」

一寸法師「も、もしもし!」

侍大将「!っお前達!」

大和朱呑「ふん、やられに来たのか」

シロ「桃太郎さん桃太郎さんワンワン!!」

大和朱呑「ハフ!モオ太郎ならすでに死んでいる!」

一寸法師「えっ!?」
                             ゴゴゴゴ

―鬼が島、岸、船の前―

ひぢかす「人質は全員乗船した。後は仲間を待つのみか…」

??「おいっ!」

ひぢかす「はいはい!」(やべぇ鬼だ!)

??改め鬼十三「そこで何している!」

ひぢかす(ええいっどう切り抜ける!?)

「もしもし!」

『!?』

ひぢかす「!こっちこっち!」

 ヒュンッ! ドコッ!

鬼十三「ぐ、」

ひぢかす「えい!」

 ザシュッ!

―鬼が島、元洞窟内、元大広間―

一寸法師「桃太郎殿!しっかりするで御座る!!」

シロ「桃太郎しっかりワンワン!」

大和朱呑「無駄でぃ」

桃太郎「...うぅん…」

一同『!?』

大和朱呑「馬鹿なっ死んだ筈ぞ!」
                                 ゴゴゴゴゴ

―鬼が島、岸、船の前―

ひぢかす「助かったぁ」

ひぢかす(飛んで着たやつは...これは火打石?)

「大丈夫か、ひぢかす?」

ひぢかす「ウサギどん!無事だったのか!!」

ウサギどん「ああ、死んだかと思ったけど怪我一つしてないよ。

      不思議な事も色々あるもんだ。

      ところで島全体から嫌な音が響いてきてるんだ。

      船の出航準備はどうなってるんだい?」

ひぢかす「未だ全然出来てないよ」

ウサギどん「じゃぁ指示出すからどんどん準備を進めよう」

ひぢかす「応!」
                                      ゴゴゴ

―鬼が島、元洞窟内、元大広間―

桃太郎「ここは…俺は戻って来たんだな」

シロ「ハァッ...ハァッ…」

一寸法師「はっ!まさかシロのおかげでは...?」

シロ「...…」バタリ

桃太郎「あ、シロ!?」

一寸法師「気を失っただけで大丈夫で御座ろう...」

桃太郎「そうか、不思議な奴だな。
    そもそもシロはお爺さんが拾って来た流木から出て来たからな」

鬼九「まさかそいつは犬の姿をしているが
   何でも願いが叶う"打ち出の小槌"じゃないか?!」

一同『なんだってぇー!?』

桃太郎「そう思えば色々と思い当たる節がある...」
                                   ゴゴゴゴゴ

鬼九「そいつを寄越せ!」

一寸法師「何おうえい!!」ブスッ!

鬼九「いてぇ!」

越後酒天「何やってるんだ」

鬼九「体の動きが鈍くって…」

            ゴゴゴゴゴゴゴ
  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ                ゴゴゴゴゴゴゴ
                ゴゴゴゴゴゴゴ
越後酒天「今度はなにだ!?」
                    ゴゴゴゴゴゴゴ
  ピシピシ        ゴゴゴゴゴゴ
                            ゴゴゴゴゴゴ
熊「!!」             ゴゴゴゴゴゴ
侍その五「うわ、床が」             ゴゴゴゴゴ
一寸法師「地割れだ!」        ゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
侍その一「無事な方へ飛べ!」             ゴゴゴゴゴゴ
 ガラガラガラ ガラッ       ゴロゴロ
「うわぁー」 ゴロガト

侍大将「誰か落ちたか!」

平井保昌「我が方は無事、落ちたのは鬼が何人か」

侍大将「一体この島どうなっておるのだ!?」

一寸法師「この島、洞窟が四方八方に伸びておりましたから、
恐らく先程の轟音で...」
                    ゴゴゴゴゴ
熊「...」

侍その五「あっちこっちで洞窟が連鎖的に崩壊してるんじゃないかな?」

侍その三「最終的にこの島、沈むんじゃね?」

侍大将「...撤退するしかないか…」          ゴゴゴゴゴ

越後酒天「く、俺らも脱出するぞ、船へ!」

一寸法師「そうだ、誘拐された生きている人達は無事救出しました!
今は船に案内しました!」

侍大将「そうか!よし!」                     ゴゴゴゴ

越後酒天「ちっ、皆強いのにしてやられたのか」 グラッ「うおっ!?」「わっ!?」
  ガラゴロボツンガラゴロボツン
坂田金時「あ、落ちた」
                         ゴゴゴゴゴ

侍その三「これでこの場に居る鬼はお前だけだな」

大和朱呑「ふん、もお太郎だけじゃねぇかまともにたかあいが出来るのは」ゴクガキュ

侍その五「あ、いつの間にか酒を回収して飲んでる」
                               ゴゴゴゴゴ
侍その三「余裕だな...」
                             ゴゴゴゴゴ
侍その一「奴には毒酒が効いてないのか?」

平井保昌「もしかしたら仙人を食べたと言うがその所為か...?」

侍大将「奴は確実にここで討ち取っておきたい。
    しかし、こちらは消耗している上に脱出も考えなくてはな...」
  ガラガラガラ
一寸法師「うわまたか!」

坂田金時「桃太郎!一寸法師!シロ!」        ゴゴゴゴゴ

侍その三「向う側に取り残されたぞ!」              ゴゴゴゴゴ

大和朱呑「ち、あゆつらは追えないか。回り道をすればいっか」

桃太郎「...俺はここに残ります。皆さんは先に行って下さい」

侍大将「…分った、武運を祈る。行くぞ!」

侍一同『...はっ!』                      ゴゴゴゴゴ

 タッ タッ タッ タッ             ゴゴゴゴゴ


桃太郎「…」

大和朱呑「…」

一寸法師「(ゴクリッ)」

桃太郎「...体の調子はどうだ?」

大和朱呑「?変わりないが?そっちはどうだ?さっきまで死んえだろ?」

桃太郎「確かに貴様に殺された両親に会って来た気がする程死んでだが、
    貴様を倒し、皆の所へと戻る!」

大和朱呑「は、死んだ親の元へまた行かせてやるよ!」

 ヒュン! ブゥン! ザッ!

大和朱呑「む!」グラッ 「体が!?」

桃太郎「そこだ!」

大和朱呑「何おう!」

 ザッ! ガキンッ! ピシッ!

一寸法師「おお!鬼の剣の刃にひびが入った!!」

桃太郎「父に助言を貰ってな」

鬼九「あの剣は由緒正しい和銑で出来た剣なのに」

一寸法師「うお!?よじ登って来たのか!落ちろ!!」プスプス

鬼九「痛、落ちるから手に針差すのやめて。(くそ、体が思う様に動けば...)」

大和朱呑「鎬をかわすとはやるな」

一寸法師「死の技?」

鬼九「"しのぎ"だよ、剣の腹の分厚い鈍角の所だよ。

   相手の刃はこの鎬で受け自分の刃は鎬をかわす様にするのが基本の戦い方だよ。

   そうする事で相手の武器を壊し、自分のは鎬以外は無傷で済ませられる。

   つまり、今まで鎬で刀を受けていたのがかわされて刃で受けちゃったんだよ、きっと」

一寸法師「成程、解説御苦労。もういいぞ」プッスウッ!

鬼九「いってぇっ!っあ手離しちゃった」

 ヒュゥーン 「また落ちるのかぁー!」

桃太郎「今までとは違う!覚悟しろよ!!」シュッ!

大和朱呑「それがどうした!」ブンッ!

シロ「桃太郎勝ってワンワン!!」

  『!!』

   斬ッ! ガリンバシュ!

  …バタリ…

桃太郎「はぁ、はぁ」

一寸法師「見事で御座る!桃太郎殿!!」

シロ「クゥン…」パタリ

桃太郎「シロ…」

一寸法師「シロ殿はまた気絶しただけで御座る」

桃太郎「そうか...」パタリ

一寸法師「あ、桃太郎殿!?」

桃太郎「体力の限界の様だ…」

一寸法師「そんな!早くここから脱出せねばならぬのに!」

??「私に任せて下さい!」

一寸法師「えっ?!」

―鬼が島、岸、船上―
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
熊「…!」

侍その五「このままだともうすぐ鬼が島が沈み始めるぞ!」

侍その三「早く離れないと島が沈むのに引きずり込まれる...」

ウサギどん「でも未だ桃太郎にシロ、それに一寸法師が来て無いよ!」

侍その一「しかしこのままでは...!」

侍大将「...やむを得ん、出航だ!」

ひぢかす「くっすまねぇ、桃太郎、シロ、一寸法師...」

ウサギどん「波で激しく揺れるぞ!皆何かにつかまって!」

ゴゴゴゴザザァーゴゴゴゴザザァー

―海、船上―

坂田金時「鬼が島が...」

平井保昌「跡形もなく沈んだな...」

ウサギどん「桃太郎、シロ、一寸法師...」

ひぢかす「…」

一同『…』

「おーい!」

ウサギどん「!今のは!」

ひぢかす「え?」

「おぉーい!!」

ひぢかす「この声は!」

侍大将「どこからだ!」

ウサギどん「あそこだ!!」

侍その三「あれは、鶴?!」

 バサバサ トン

桃太郎「ふう」

一寸法師「助かったぁ」

シロ「ワンワン」

鶴「はぁ、重かった」

ウサギどん「皆無事だったか!」

ひぢかす「良かった良かった!」

桃太郎「この鶴が助けてくれたんです」

侍大将「この鶴はいったい...?」

鶴「通りすがりの鶴です。あと桃太郎さん、
  お爺さんお婆さん達が心配してますから寄り道せずにまっすぐ帰って来て下さいね。では」

 バサバサ

侍その一「あの鶴、ほんとに何だ?」

桃太郎「さぁ?心当たりはありません」

侍大将「何にしても無事で良かった」

坂田金時「ところで、大和国の朱呑童子は?」

桃太郎「応!見事に討ち取ったぞ!」

平井保昌「それは真か!?」

桃太郎「はい!奴が使っていた剣の残骸を持って来ました!」

侍大将「それはめでたい!者共勝鬨だ!都へ凱旋だ!!」

一同『おおー!!』

こうして、鬼が島討伐隊は救出した人達と一緒に都へ凱旋しました。

しかし、その中に桃太郎とシロとウサギどんはいませんでした。

桃太郎一行は鶴に言われた通りに寄り道せず、真っすぐお爺さんお婆さん家へ帰り、

傘小僧さん達が用意した沢山の食料品で家に集まった皆で宴会しましたとさ。

お終い。



この話はフィクションです。実在の人物、実在の団体、実在の言い伝え等とは一切関係ありません。

ここまでお付き合い下さりましてありがとう御座いました。

これにて私のお話は終わりです。おやすみなさい。

あと、忘れる所だった
レス下さりありがとうございました。
元ネタ的には実写映画の桃太郎(確か台湾製だったかな?)
を結構使ってますね。

鬼九wwwwwww

面白かった、乙!
昔話の小ネタが多くて日本昔ばなし見てたものとしては非常に楽しめた。

面白かった。
そして>>1が見た実写映画は台湾版であってる。
台湾版実写映画桃太郎が好きだった自分はとっても嬉しいです。

そして台湾版には続きがある・・・

桃太郎Ⅱを期待する。

日本の話を外国版にするとこういうカオスな事が起きるから意外と好きだぜ。乙




  <昔々、ある所に鬼が島の鬼達を討伐した桃太郎達が平和に暮らしていました>

  <だが平和な暮らしは長くは続かなかった。不作で飢饉が発生したからです…>


――お爺さんお婆さん家――


桃太郎「ただいまー」

お爺さん「帰った来たか」

お婆さん「お帰りなさい」

シロ「お帰りワンワン」

かぐや「お帰りー、どうだった?」

桃太郎「...山菜しかないよ。町は不作で薪が売れない上に物が無くて...」

お婆さん「そうでしたか...」

お爺さん「そうか...わしも腰の具合が良けりゃぁなぁ…」

シロ「クゥン...」

おつう「・・・」

  <その夜>


お爺さん「...なぁ、おつうさん」

おつう「はい、なんでしょうか...?」

お爺さん「確か、おつうさんは両親が亡くなり、遠くに住んでいる親戚を頼って

     旅をしている途中じゃったと聞いたと思ったんじゃが...」

おつう「はい。会った事も無い親戚を頼るより、旅の途中であたたく迎えてくれた

    この家にお世話になりたいという我がままを聞いて下さり感謝しております」

お爺さん「その事なんだか、...今からでもその親戚を頼る事は出来ないか?」

おつう「えっ」

お爺さん「正直言ってこのままじゃと皆を養っていけなんだ。

     もし、親戚の方がこの家より余裕があったら...」

おつう「分りました。私がなんとかしましょう!」

お爺さん「え?」

おつう「この家にある機織りを使わせて下さい!」

お婆さん「別に良いけれど、糸が無いわよ?」

おつう「大丈夫です!その代わり三日三晩、部屋を覗かないで下さい」

一同『え?』

おつう「絶対に覗かないで下さいね」

  <こうして、おつうは機織り部屋に籠った。部屋からは機織りを動かす音が響いて来る>

  <一同は約束を守っていたが糸も無いのにどうやって織物をしているのか気になって仕方がない>

  <そしてとうとう約束を破ってこっそり覗こうとした…>


「(そぉっと、そぉっと)」     シャッシャッ
「(この体勢きついんだけど)」    パタン
「(これ、静かにせんか)」     シャッシャッ
「(よし、中が見える)」       パタン
                  シャッシャッ
「(あれは!?)」          ガタン!
「(鶴?!)」           ガタタタ!

おつう「...見ましたね…」

桃太郎「おつう、お前」

おつう「さようなら」

ッタッタッタッタッ  バサバサ!

一同『おつうさーん!!』

  <しばらくして>


桃太郎「では、おつうさんを探しに行って来ます」

お婆さん「気を付けてね」

お爺さん「しっかりとな」

桃太郎「はい」

かぐや「私も付いてくわ」

一同『えっ?!』

かぐや「おつうさんに再会した時、なんて言って連れ帰るの?」

桃太郎「それは・・・とくに考えてないな。

    何故ならおつうさんがこの家にいちゃいけない理由がないからな」

雄鶏「その通りです!」

桃太郎「雄鶏!?」

雄鶏「自分もおつうさんを連れ戻す旅に参加させて下さい!鳥の自分がこの家に居るのに

   同じ鳥のおつうさんがいちゃいけないだなんて決まりは無いですから!」

お爺さん「うむ、その心意気や良し!お前も旅に付いて行け!」

雄鶏「はい!」

桃太郎「えっ!?ちょっとお爺さん!」

かぐや「雄鶏が付いて行くのに私は駄目というのは無いんじゃない?

    それに私はおつうさんを連れ戻す為にちゃんと考えているんだから」

ウサギどん「俺っちもついてくぜ!」

桃太郎「ウサギどん!」

かぐや「ちょうど良かったわ、二手に別れて探したいと思ってたのよ」

シロ「ついて行きたいワンワン」

桃太郎「シロ、お前は駄目だ。体調が悪いんだろ」

シロ「クゥン...」

桃太郎「留守番しててくれ」

シロ「分かったワンワン」

ウサギどん「ところで二手に別れるって具体的にどういう事で?」

かぐや「人里を探すのと山中を探すのに別れるのよ。

    こう言っちゃなんだけど、おつうさんが人に捕まってるかもしれないし、

    普通に山中を飛んで行ってるかもしれないしね」

お爺さん「成程、一理あるな」

桃太郎「それじゃぁ俺は山中を、かぐや、お前は人里を頼む」

かぐや「任せて!」

ウサギどん「俺っちは桃太郎と一緒に山中を行くよ。山の方が得意だ」

雄鶏「では自分はかぐや殿と一緒に人里に行きます」

桃太郎「よし、行くぞ」

かぐや・ウサギどん・雄鶏「「「おおー!!!」」」

お爺さん・お婆さん「「気を付けてなー!!」」

シロ「ワォーン!」

  <桃太郎・ウサギどんペア>


――山の中――


 ザッザッザッザッ

ウサギどん「...なかなか見つかりませんね...」

桃太郎「あまり時間を置かずに出発したからすぐに見つかると思ったんだけどな...」

ウサギどん「やっぱりおつうさんは飛んで行ってるからでしょうかね」

桃太郎「そうだね…。ところでウサギどん、その荷物は何だい?」

ウサギどん「こいつは鬼が島の時、力不足を感じましてちょっと用意しました」

桃太郎「へぇ、何を用意したんだい?」

ウサギどん「む」ピタッ

桃太郎「どうした?ウサギどん?」

ウサギどん「(ちょっと静かに)」

桃太郎「(?)」

ウサギどん「(誰か人がいます)」

桃太郎「もしもーし!」

ウサギどん「ちょ、桃太郎、相手が悪い奴だったらどうすんのさ!」

??「はいはーい!何々でしょうか!?」

桃太郎「とりあえず人食い鬼じゃなさそうだよ」

ウサギどん「まったく...」

桃太郎「いやー、こんな山奥で出会うなんて奇遇ですね」

??「そうですね」

桃太郎「私は桃太郎といいます。こちらが」

ウサギどん「俺っちはウサギどんだ」

??「私は名をコウリョといいます」

桃太郎「異国の方ですか?」

ウサギどん「じゃぁリョウさんですか」

??改めリョウ「はい、そうですね」

桃太郎「私達は知り合いの鶴を探してこの山奥へ分け入ったのですが、

    リョウさんは何しにこの山奥へ?」

リョウ「はい、私は刀剣が大好きでして色んな国を旅している途中です。

    この山奥へはいつの間にか、さ迷い込んでしまったのです」

桃太郎「そうなんですか」

リョウ「ところでその腰の刀、見せてもらっても宜しいですか?」

ウサギどん「怪しいからダメだ」

桃太郎「おいおいウサギどん」

リョウ「では先に私のコレクションをお見せしましょう」 スラリ

ウサギどん「うわっ!?どっから剣を出したんだ?!」

リョウ「どうぞ」

桃太郎「では」スゥ、パク

リョウ「?その白い紙を口に咥えるのは何ですか?」

ウサギどん「刀を見る時の作法だよ」

リョウ「ほう、そんな作法があるのですか」

桃太郎「・・・」

ウサギどん「あと息をしたりしゃべったりすると刀に余計な水気が着くからね」

リョウ「成程、感心しました」

桃太郎「...拝見しました」

リョウ「はい。私の方はその様に見る用意が無いので今回は遠慮します」

桃太郎「そうですか」

リョウ「その刀剣に対する所作、感心しました。しばらく貴方方に付いて行って宜しいですか?

    それにその刀も見てみたいですしね」

桃太郎「ええ、いいですよ」

ウサギどん「...まぁ桃太郎がいいなら別にいっか」

リョウ「鶴を探しているという事は北へ向かっているのですか?」

桃太郎「はい、そうですね」

  <かぐや・雄鶏ペア>


――都――


 ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ ガヤガヤ

露天商「御嬢さん、何処から来たのかな?」

おじさん「御嬢さん御名前は?」

行商「御嬢さん、お茶しない?」

商人「僕と契約して看板娘になってよ」

若者「ヘイ彼女!一緒に遊びに行かない?」

おっさん「結婚して下さい!」

かぐや「えーと...」

雄鶏「凄いモテモテですな」

坂田金時「こら!通りの通行を妨げるのは何者か!」

若者「うっせーなっ、って熊がいる!」

一同『うわわゎ』 ザザザッ

坂田金時「これで良し」

かぐや「ふぅ、助かった」

坂田金時「はっ、美しい...」

熊「…」

侍その五「お前もかよってあきれてるぞ」

坂田金時「俺は頼光四天王の一人、坂田金時と申します。趣味は相撲です」

かぐや「えーと...」

坂田金時「あと読経も趣味です。読経も出来ますよ」

熊「…」

侍その五「他人の趣味を自分の趣味と言うなよ。御嬢さんも困っているぞ」

坂田金時「何か困り事ですか?御嬢さん」

かぐや「はい、実は知り合いの大切な鶴を探しているのです」

坂田金時「鶴ですか?」

かぐや「はい。他の家の者が山を探していて、

    私は鶴が捕まっていないかこうして町を探している訳です」

坂田金時「成程分かりました。おぉーーい!最近鶴を見かけた者はおるか!!」

商人「いいえ」

行商「最近は見かけてないな」

露天商「知らないなぁ」

かぐや「そうですか…」

坂田金時「お前達、鶴を捕まえるのは禁止な」

『はい!』

かぐや「え!?」

雄鶏「勝手に決めていいのかなぁ?」

侍その五「まぁ皆が良ければいいんじゃないかな」

行商「鶴といえばこの時期は北の方へ行ってるんじゃないかな」

かぐや「そうですか!ありがとうございます!さぁ行こ、雄鶏」

雄鶏「おつうさんが捕まる可能性が減ったからこのまま北へ行くんですね」

坂田金時「俺もついて行きます!」

侍その五「不安だから私もついて行きましょう。

     私は頼光四天王の一人、碓井貞光です」

雄鶏「おお!それは心強いです!」

かぐや「そうですね、旅のお供よろしくお願いします。

    私はかぐやと申します」

雄鶏「自分は雄鶏です」

熊「…」

坂田金時「こいつは俺の熊です」

熊 ペコリッ

かぐや「よろしく」

  <桃太郎一行>


――山外れ、村近く――


ウサギどん「だいぶ北に来たね」

桃太郎「おや?山から出ちゃったみたいだ」

ウサギどん「この辺の地理にあんま詳しくないからねぇ」

リョウ「しかし久しぶりに山から出たなぁ」

桃太郎「それじゃぁ一旦村に寄って行きましょうか」

リョウ「そうしましょう」

ウサギどん「おや?誰か揉めているみたいだな、行ってみよう」タッタッタッタッ

リョウ「あまり揉め事に首を突っ込むのはどうかと思うよ」

桃太郎「そういう性分なもので」タッタッタッタッ

リョウ「そうなんですか」タッタッタッタッ

リョウ「男が女の子を怒鳴っているな」

ウサギどん「やいやいやい、その娘が何したっていうんだい!?」

男「なんだ兎、関係無いのにこちらの事情に口を出すな!」

桃太郎「いったいどうしたんですか?その女の子と貴方は関係無いのならば何故怒鳴るのですか?」

男「関係ならある!こいつは俺が買ったんだ!」

桃太郎「女衒か」

リョウ「見たところその子は異国人だな」

桃太郎「いわれて見れば...」

ウサギどん・男改め女衒「「それがどうした!!」」

リョウ「この国の勝手が分からない異邦人を騙くらかして何処ぞに売る気じゃないのかな?」

桃太郎「女衒の中には人さらいをやって女性を集める悪党もいると聞く。どうなんだ?」

女衒「そんな事は無いぞ!」

ウサギどん「娘さん、どうなんですか?」

娘「?」 キョロキョロ ビクビク

桃太郎「...言葉が通じないのか」

リョウ「なら私に任せなさい。昔、すごく寛大で世界中から富と人が集まり、

    そして世界中に人と富が広がって行く、そんな国際都市にいた事がありますから」

ウサギどん「すげぇ、そんな都市があるんだ」

桃太郎「おお、それは頼もしい」

リョウ「では...」


  <リョウ、娘と会話を試みる>


ウサギどん「通じているのかいないのか分からない…」

桃太郎「リョウさんが話す言葉に一応反応しているから通じているのでは?」

リョウ「難しいな...、私があまり覚えてない言葉が辛うじて通じているだけだ」

ウサギどん「どういう事?」

リョウ「私が単語十個程度しか知らない言葉に反応しているという事です。

    聞き出せたのは名前が"ゲルダ"という事位...」

女衒「おい!そろそろもういいだろ!」

娘改めゲルダ「」ビクッ

坂田金時「何を揉めているのか?」

女衒「なんだよまたか、って熊がいる!?」

桃太郎「おや、坂田さんじゃないですか」

坂田金時「おや、桃太郎じゃないか、こんな所で会うなんて奇遇だな」

かぐや「あ、ほんとだ、こんな所で何しているの?」

桃太郎「かぐや!?お前こそ坂田さんとどうして一緒に?」

碓井貞光「私と熊も一緒だけどね」

熊「…」

坂田金時「桃太郎とかぐやさんは知り合いで?」

かぐや「家族です」

坂田金時「えっ!?」

雄鶏「とりあえず事情を話すと…」

  <・・・事情説明中・・・>


雄鶏「とまぁこんな感じです」

坂田金時「そうなのか」

桃太郎「とりあえずおつうさんを探すのに協力してくれてありがとう」

坂田金時「なんのなんの。ところで女衒...」

女衒「はい、私は潔白ですがこの娘を連れていると

   あらぬ疑いがかかるというのならばこの娘を置いて失礼しますでは」

  タッタッタッタッ

ウサギどん「行っちゃった...」

リョウ「素早いな...」

ゲルダ「?」キョロキョロ

碓井貞光「どうやらやましい所があった様だな」

坂田金時「娘さん、安心しなさい」

ゲルダ「?」

碓井貞光「そういえば言葉が通じないんだったな」

雄鶏「自分が話してみましょう」

ウサギどん「お前が?大丈夫なのかよ」

雄鶏「こうみえて渡り鳥から異国の話を聞いた事がありますから」

桃太郎「それは知らなかったな...」

かぐや「私もやってみるわ」

桃太郎「かぐや、異国の言葉が分かるのか?」

かぐや「大丈夫、任せて」

リョウ「いやぁ、異国の言葉が分かる人がいて助かるな」

  <・・・かぐや、雄鶏そしてリョウでゲルダと会話を試みる・・・>


かぐや「どうにか通じたわ」

桃太郎「本当か!?」

かぐや「ええ」

リョウ「ほとんどかぐやさんのお手柄ですよ」

雄鶏「全然役に立たなかった...」

かぐや「この子も人を探して旅をしているみたいね」

桃太郎「そうなのか」

雄鶏「自分達と一緒ですな」

ウサギどん「それじゃぁ一緒に行くかい?」

桃太郎「ウサギどん、急じゃないかな?」

碓井貞光「まぁ旅は道連れ世は情けというしな」

リョウ「旅の仲間が増えるのは心強いからな」

坂田金時「別にかまわないぞ、俺は」

桃太郎「そうかい、じゃぁこの娘について来るか聞いてみてくれ」

かぐや「分かったわ」

  <かぐや、ゲルダと会話中>


かぐや「頼れる人もいないし一緒に行くって」

桃太郎「そうか、分かった。これから宜しくゲルダさん」

ゲルダ「tak、спасибо」

ウサギどん「タク?スパシィボ?」

桃太郎「?なんだって?」

かぐや「ありがとう、そしてありがとう。って言ったのよ」

ウサギどん「なぁに、あまり気にしなくていいって。悪い事は見過ごせないだけだから」

坂田金時「その通りだ」

リョウ「とりあえず旅をしながらちょっとずつ意思疎通出来る様に努力しよう」

碓井貞光「そうしましょう。あと探し人の話も聞きたいですしね」

桃太郎「では、おつうさんが居ると思しき北へ!」

一同『おおー!』

  <一行はゲルダを加え、おつうさんを探して北へ北へと旅を続けます>

  <途中、鶴の行方を尋ねて>


馬子「鶴の行方なら知ってるよ。ただし、この洗い水を飲み干せたら教えるよ」

坂田金時「分かった。やれ!熊!」

熊「…」


  <といったやり取りや、>


ゲルダ「カイを探しているのです」

桃太郎「そうなのか。しかし聞いた事がないな...」

ゲルダ「ならば"氷の女王"はご存知ですか?その者がカイを連れ去ったらしいんですが...」

一同『う~ん…』

ウサギどん「まぁ氷の女王の事は知らないけど、ゲルダの国の言葉をちょっと教えてよ」

ゲルダ「はい、では…」


  <言葉が通じる様になったゲルダの話を聞いたりしながら、とうとう北の大地へ辿り着きました>

――北の地――


雄鶏「ずいぶんと北に来ましたね」

桃太郎「だいぶ寒くなってきたな」

ウサギどん「おつうさん居ると良いな...」

坂田金時「きっと会えるさ」

碓井貞光「鶴が居ると聞いた場所にそろそろ辿り着くぞ」

雄鶏「む、あそこに鶴が居りますぞ!」

かぐや「まさかおつうさん!?」

桃太郎「行ってみよう!」

  タッタッタッタッ

鶴「!?」バササッ

ウサギどん「あっ!」

雄鶏「飛ばれた!」

桃太郎「そこの鶴待ってくれ!」

碓井貞光「これは逃げられるな」

ウサギどん「俺っちを鶴に向けて投げてくれ!」

坂田金時「よし!俺が投げよう!せいっ!!」ブンッ!

ウサギどん「シュワッチ!」

ウサギどん「てぃっ!」ゲシッ!

鶴「!!」バサリ

リョウ「ウサギどん、鶴に思いっ切り蹴りを入れたな」

かぐや「でもまぁこれであの鶴には追いつく事が出来たわ」

  タッタッタッタッ

桃太郎「大丈夫ですか?」

鶴「・・・」

坂田金時「だんまりか」

リョウ「違う鶴の可能性もあるからなんとも言えないんじゃないか?」

桃太郎「いや...、おつうさんだ」

鶴「!!」

碓井貞光「分かるのか?」

桃太郎「俺には分かる!!」

鶴「…どうしてここまで来たんですか?」

一同『!!』

桃太郎「もちろんおつうさんを連れ戻しに来た!」

鶴改めおつう「無理ですよ...。帰れません」

桃太郎「何故だい?」

おつう「何故って...それは」

かぐや「おつうさんには家を出て行く理由なんか無いわ。家に帰れない理由も」

おつう「だって、私は騙してましたし」

桃太郎「気にしてないよ」

おつう「普通の人じゃないですし」

ウサギどん「それが何だって言うんだい。お爺さんもお婆さんもそんな事気にしてないぞ」

雄鶏「そうですよ」

桃太郎「それにそれを言うなら俺は桃から生まれたし」

かぐや「私は竹から出て来たのよ」

おつう「や、約束を破ったじゃないですか!」

桃太郎「家族だから心配だから!覗いちゃうよ!!」

おつう「うっ、わ、私は、皆さんとは違うんです!」

雄鶏「どこが違うっていうんですか!おつうさんと自分との差なんか四歩しかないじゃないですか!!」

ウサギどん「俺っちからみたら三歩だ」

おつう「…」

坂田金時「(なぁ、今のはすべってないか?)」

碓井貞光「(いや、これで良いだろう。空気が少し変わった)」

熊「(…)」コクリ

おつう「...私からみたら二歩ですけどね」

桃太郎「それにおつうさん、あの沈む鬼が島から助けてくれたのはおつうさんなんだろ?

    俺から見たらおつうさんは命の恩人だ」

おつう「気付いたんですか...。私はあの家に居て良いんですね」

桃太郎「!もちろんだとも!!」

かぐや「それじゃぁ帰って来てくれるのね!」

おつう「はいっ」

リョウ「無事に話がまとまって良かった良かった」

ゲルダ「はい」ホロリ

ゲルダ「私もカイを無事に連れ帰れる様に頑張りたいです」

桃太郎「そうだ、ゲルダさんの人探しも手伝わなくちゃな」

おつう「ゲルダさん?それにそちらの方は...?」

かぐや「あぁ、この娘とこの人はね・・・」


  <一同、おつうさんに事情説明する>


おつう「そうだったんですか」

リョウ「よろしく」

ゲルダ「初めまして」

おつう「こちらこそ。ところでゲルダさん、

    その探している人は何処に行ったのか分かっているのですか?」

ゲルダ「はい、カイは氷の女王に連れ去られたらしいんです」

おつう「そうなんですか?あの氷の女王が...」

かぐや「まさかおつうさん、氷の女王を知っているの?」

おつう「はい、この近所に来てますよ」

一同『えっ!?』

ゲルダ「本当ですか!?」

おつう「えぇ、案内しますよ」

坂田金時「いやー、おつうさんも見つかって、

     ゲルダさんの探し人も見つかりそうで早く帰れそうだな」

ウサギどん「良かった良かった」

雄鶏「万々歳ですね」

――北の地、森の中の広場――


おつう「見えて来ました。あっちこっち物見遊山している方で今はこの辺に居るんですよ。」

かぐや「へぇ、旅行好きな女王なのね」

おつう「あ、居ました。あそこで踊っているのが氷の女王です」

桃太郎「あの人が...」

リョウ「ほう、これはこれは...」

坂田金時「美しい人だな、お近づきになりたい...」

熊「…」

碓井貞光「お前はまたかよ」

ウサギどん「でもきれいな人には違いないよ」

雄鶏「同感です」

かぐや「そんな事言ってないで早く問い詰めましょう」

ゲルダ「あの~、すみません!」

氷の女王「!?」

ウサギどん「ゲルダ、こういう時は"もしもし"をつけて挨拶をしたほうが良いんだぜ」

雄鶏「もしもし、今日は。自分は雄鶏です」

氷の女王「...今日は。私は氷の女王と呼ばれる者です。あなた方は何者ですか?」

かぐや「怪しい者では御座いません。人を探しているんです」

氷の女王「人探しですか?」

ゲルダ「はい!カイという人を探しているんです!

    貴方が誘拐したと聞きました!カイを返して下さい!!」

氷の女王「えっ?! 私は誰も誘拐なんかしてませんよ!」

ゲルダ「えっ!?」

坂田金時「惚けているのか?」カチャリ

碓井貞光「魔性の類ならば騙そうとするは必然。ならば...」スチャリ

桃太郎「気は進まないが一戦交えるか...」チャキチ

リョウ「まぁそう簡単には行かなかったって事だな」チャキチャキ

碓井貞光(む、このリョウと名乗る人物、二刀流、しかもどっから剣を出したんだ?)

氷の女王「え?え?」オロオロ

熊「…」

ウサギどん「う~ん...」

おつう「え、え~と、」

雄鶏「ちょっと待ってほしいであります」

桃太郎「?どうしたんだい雄鶏?」

雄鶏「そのぉ、なんていうか...、違う気がするのですが...」

桃太郎「違うって...」

坂田金時「いや、そんな事言われても...」

碓井貞光「まぁ確かにそんな気もするな」

リョウ「…ゲルダ、本当に氷の女王が誘拐したのか?」

ゲルダ「はい!」

かぐや「...もしかしたら訳が違うのかもしれない...」

一同『え?』

かぐや「ねぇゲルダ、貴方が言う氷の女王は貴方の国では何て言うの?」

ゲルダ「え?"snedronningen"って言います」

ウサギどん「スニードニングン?」

氷の女王「sneって雪じゃないですか。氷はiceですよ」

ウサギどん「スニとイーゲじゃかなり違うな」

桃太郎「じゃぁ勘違いだったのか...」

おつう「やはりこの人は悪い人じゃなかったんですね」

ゲルダ「そんなぁ…」

かぐや「気落ちしないで。つまり"雪の女王"が探すべき相手なのよ。おつうさん心当たりある?」

おつう「いえ、残念ながら...」

氷の女王「雪の女王なら知ってるわ」

一同『えっ!?』

ゲルダ「本当ですか!」

氷の女王「えぇ、本当よ。住んでいる場所を知っているわ」

ゲルダ「教えて下さい!お願いします!!」

氷の女王「ここから人の足で移動すると辿り着く可能性は殆んど無い、そんな所よ」

ゲルダ「それでもです!!」

桃太郎「俺も力になります」

坂田金時「俺も協力するぜ!」

熊「…」

碓井貞光「熊も行くみたいだし私も協力しましょう」

ウサギどん「もちろん俺っちもお供するぜ!」

かぐや「心配だから私も」

おつう「私も連れてって下さい!」

雄鶏「自分も!」

リョウ「ここまで来たら俺も一緒に行くぞ」

ゲルダ「皆さん...、tak」

氷の女王「そう...、なら私の居城まで皆を移動させましょう。

     そこからなら徒歩でも雪の女王の城に辿り着けるでしょう」

桃太郎「そいつはありがたい」

ゲルダ「ありがとうございます!」

氷の女王「では…、<人数が多いので気合を入れて、うんとこしょ>」

一同『!?』

氷の女王「<北風>よ!」

 ビュウーン ビュウーン


  <桃太郎一行は空をすごい速さで北へ飛んで行った…>

――北極、氷の女王の城前――


 カチカチカチ ブルブルブル

桃太郎「さ、寒い...」

おつう「ほ、本とに寒い...」

坂田金時「ま、まさかこんなに寒い所だとは」

ウサギどん「ま、薪を拾って来るべきだった...」

碓井貞光「同感だ...。熊は温かいな」

坂田金時「あ、俺も」

熊「…」

リョウ「いやー、結構あっちこっち旅して回ったが、こんな所まで来た事は無かったな」

かぐや「ウサギどん温かい...」

ウサギどん「抱っこなんて恥ずかしいよ」

桃太郎「そうだ、雄鶏を」

雄鶏「小動物は湯たんぽがわりですか」

桃太郎「おつうさん、ゲルダさん」

おつう「あ、ありがとう御座います」

ゲルダ「もうすぐカイに会えるのね...」

氷の女王「雪の女王の城へはこの方向へ真っ直ぐ行けば徒歩でも充分に辿り着けるでしょう」

ゲルダ「はい!分かりました!」

坂田金時「その前にこの寒さ、何とかならないか?」

かぐや「確かに辿り着く前に凍え死んじゃいそう...」

ウサギどん「あ、俺っちこういう状況に良さそうな物持って来てるよ」ゴソゴソ

かぐや「え、何々?」

ウサギどん「火傷薬」

桃太郎「!!」

ゲルダ「<火傷薬>?」

かぐや「火傷薬って、ここでは全く役に立たないわよ?しもやけも火傷じゃないのよ」

ウサギどん「こいつは食べられる火傷薬だよ」

桃太郎「やっぱりそいつは...」

かぐや「?」

ウサギどん「桃太郎、一口食べてみるか?」

桃太郎「では」パクッ「やはり唐辛子入り味噌か」

おつう「え!?唐辛子入り味噌!?」

かぐや「それのどこが火傷薬よ!」

ウサギどん「まぁまぁいいじゃないか」

坂田金時「ほう、そいつはこの状況に良さそうだな。俺にも一口」

ウサギどん「どうぞどうぞ皆さんも」パクッ

碓井貞光「私も」パクッ

リョウ「どれどれ」パクッ

雄鶏「なかなか良さそうですね」パクッ

かぐや「じゃぁ...」パクッ

おつう「お言葉に甘えて...」パクッ

熊「…」パクッ

ゲルダ「変わった食べ物ですね」パクッ

氷の女王「うむ、見た事無いな」パクッ「うっ?!」

おつう「あ!、大丈夫ですか!?」

氷の女王「辛!?」シュウウゥゥ

ウサギどん「うわ、溶けてきてる!?」

一同『ええ!?』

かぐや「大変!冷た!」

氷の女王「あぅ」シュゥ

おつう「あ、触った所からまた溶けてる!」

氷の女王「わ、私の事はお構いなく...」

坂田金時「縮んだ...」

氷の女王「と、とりあえず雪の女王へは道は雪の軍勢に気を付けて、

     帰る時は悪いのですが私では無く雪の女王に頼って下さい」

桃太郎「はぁ、分りました」

ゲルダ「雪の女王に頼って大丈夫でしょうか…」

ウサギどん「悪い事しちゃったな、ごめんなさい」

氷の女王「いえ、私も不注意でした」

リョウ「まぁ、気を取り直して行くか」

桃太郎「よし、行くぞ」

一同『おおー!!』

桃太郎「雪の女王の城へ!!」

氷の女王「行ってらっしゃい」

――北極、雪原――


  ザッザッザッザッザッ

桃太郎「しかし寒いな」

坂田金時「ああ、寒いな」

ゲルダ「寒いね」

雄鶏「寒いでありますな」

ウサギどん「ほんとに薪を拾って来るべきだった。寒い」

かぐや「寒い寒い言わないでよ。余計寒くなるわ」

坂田金時「すいません」

リョウ「それじゃぁ代わりに何か言ってようか」

碓井貞光「読経でもしようか」

ゲルダ「なんですか、それは?」

ウサギどん「お経なんて詳しく知らないよ」

雄鶏「自分もあまり知りません」

おつう「実は私も...」

坂田金時「俺は実は出来るぜ!」

碓井貞光「簡単な奴にしましょうか。六根清浄と唱える」

ウサギどん「ろっこんしょうじょう?」

ゲルダ「<ろっこんしょうじょう>...」

雄鶏・おつう「「ろっこんしょうじょう...」」

碓井貞光「人に備わった六根を清らかにするという意味で、唱えるだけで良い」

桃太郎「それは簡単だな。六根清浄」

かぐや「まぁ寒いと言うよりかはましね。六根清浄」

坂田金時「ま、いっか。六根清浄」

一同『六根清浄』

一同『ろっこんしょうじょう』

  『六根清浄』

  『ろっこん清浄』

  『六根しょうじょう』

  『ろっこんしょうじょう』

  『よっこんしょうじょ』

  『どっこいしょうじょ』

  『ろっこいしょじょ』

  『よっこいしょじょ』

  『どっこいしょ』

  『よっこいしょ』

  ザバッ!

一同『!?!』

桃太郎「何だ!」

雄鶏「雪の中から何か出て来ました!」

坂田金時「それは分るがこいつは!?」

ウサギどん「雪のヒトデだ!それもでっかいとげとげの!!」

ゲルダ「ヒトデ!?」

坂田金時「ヒトデって見た事無いがこれが?!」

おつう「確かにヒトデっぽい!」

かぐや「いえ、これは雪の結晶よ!」

ゲルダ「言われてみれば...」

碓井貞光「結晶のくせに動くとは!」

熊「グルル...」

リョウ「もしやこれが雪の軍勢とやらか」

  ザバッ! ザバッ! ザバッ! ザバッ!

ウサギどん「また出て来た!」

雄鶏「今度はいっぱい!」

おつう「全部形が微妙に異なってますね」

かぐや「雪の結晶が元になっているからでしょうね」

桃太郎「のんきな事言ってるなよ」

  キシャン! キシャン! キシャン!

碓井貞光「これは凶悪そうな...」スチャリ

桃太郎「来るぞ!」チャキチ

  ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ

おつう「そこそこ滑らかに歩いてますね」

ウサギどん「やっぱヒトデなんじゃないの?」

かぐや「雪の結晶のはずよ」

坂田金時「ふ、良い運動になるな」カチャリ

  シャキン!シャキン!シャキン!シャキン!

雄鶏「凶悪そうなとげとげですね」

かぐや「でも雪の結晶っぽくあるわ」

リョウ「七支刀みたいな腕だな」チャキチャキン

ウサギどん「そうだリョウさんその剣どこから出して」

碓井貞光「危ない!!」

 ヒュン!

ウサギどん「おっと」ピョン!

坂田金時「おりゃぁ!!」ブン! バリン!

ゲルダ「あ、簡単に砕けた」

桃太郎「てりゃ!」シュン! パキン!

  ザッザッザッ シャン!

碓井貞光「遅い!はぁっ!」ヒュン! パリン!

碓井貞光「遅い上に本当に簡単に砕けるな」

リョウ「ハハッ!」シュシュン! パキリン!


熊「...ッ!」シュ! バキン!

  パラパラパラパラパラパラパラ

坂田金時「準備運動にもならねぇな」

リョウ「雑魚だったな」

ゲルダ「皆さん凄い…」

雄鶏「余裕でしたね」

桃太郎「凶悪なヒトデみたいだったのにな」

かぐや「だからヒトデじゃないでしょ」

おつう「見かけ倒しってやつですね」

ウサギどん「む、新手が来るぞ!」

熊「...!」

ザバッ! ザバッ! ザバッ! ザバッ! ザバッ! ザバッ! ザバッ! ザバッ! ザバッ!

碓井貞光「さっきの倍近くだな」

坂田金時「なぁにこの程度」

ウサギどん「まだ来るよ!」

   ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!
ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!
   ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!

坂田金時「…」

碓井貞光「...数えるの飽きるな」

桃太郎「軍勢と言うだけあるな」

リョウ「なぁにこの程度の数、軍勢と言う程じゃない」

ウサギどん「更に来るよ!!」

ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!
   ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!
ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!
   ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!  ザバッ!
リョウ「…」

ゲルダ「これはまずいのでは...?」

碓井貞光「一人十殺は確実にこなさないとな...」

  ザッザッザッザッザッ ザッザッザッザッザッ ザッザッザッザッザッ

かぐや「頑張ってね」

坂田金時「はい!」

おつう「応援してます!」

ゲルダ「頑張って下さい!」

桃太郎「応!!」

  ザッザッザッザッザッ ザッザッザッザッザッ ザッザッザッザッザッ

リョウ「こいつを使うか」チャキチ

ウサギどん「その剣は?ていうかどっから出しているの?」

碓井貞光「私も気になってます」

リョウ「剣は剣の池から出しているよ。

    そしてこの剣は持ち手の気力を消費して炎を出す!」ブゥン!

  ゴオオオオオォォォォォ!!  ドロドロドロドロドロドロ

桃太郎「おお!」

坂田金時「凄いな!」

ゲルダ「温かい」


おつう「それに一気に複数体が溶けていきますよ」

ウサギどん「初めからそれ出してよ」

リョウ「これは気力を消費するんだ。誰か代わってくれないか?」

桃太郎「あ、やらせて下さい」

坂田金時「俺にもやらせてくれ」

リョウ「ほいっ、気合を込めて振るだけで炎は出る!」

  ザッザッザッザッザッ ザッザッザッザッザッ ザッザッザッザッザッ

桃太郎「では、やります!」ブン!

  ゴオオオオオォォォォォ!!  ドロドロドロドロドロドロ

雄鶏「おぉ、桃太郎殿でも炎が出せた」

坂田金時「おーい、こっちにも回してくれ」

桃太郎「はいどうぞ」

坂田金時「応!行くぜ!!」ブウン!

  ゴオオオオオォォォォォ!!  ドロドロドロドロドロドロ

  ザッザッザッザッザッ ザッザッザッザッザッ ザッザッザッザッザッ

碓井貞光「まだまだ数が多い!炎を振り撒くのもいいが

     接近して来た奴は普通に倒した方が早いと思うぞ!」ヒュン! ザキンッ!

桃太郎・坂田金時・リョウ「「「応!!!」」」

ブウン!  ゴオオオオオォォォォォ!!  ドロドロドロドロドロドロ

シュバ! ザンッ! パラパラパラ  シュンッ! パラァー

 ザッ! ヒュッ!

雄鶏「ゲルダ殿危ない!」

ゲルダ「あ、」

坂田金時「しまった!」

 「クマァ!」シュ! バッキィン!

ゲルダ「え?」

おつう「ゲルダさん無事で良かった」

ゲルダ「えぇ...」

坂田金時「久しぶりに熊の声らしい声を聞いたな」

ゲルダ「え!?今のって...」

熊「…」

坂田金時「こいつ、しゃべると語尾がクマになるんですよ」

ウサギどん「そういや熊はクマって鳴くから熊って聞いた事があるな」

雄鶏「へぇ~」

碓井貞光「以前、それを笑われて以来ほとんど喋らなくなったんですよ」

ゲルダ「そうなんですか...」

熊「…」シュッ! ベキリンッ!

リョウ「そうこう言っている内にあらかた片付いたなっと」シュパパ! パキパキン!

坂田金時「やっぱ雑魚だったな。これで終わりだ、とう!」ブゥン! 

ゴオオオオオォォォォォ!!  ドロドロドロドロドロドロ

桃太郎「いや~、体がすっかり温まったな」

おつう「そうですね」

ゲルダ「ええ」

ウサギどん「本当に暖かくなったね」

雄鶏「ですね」

坂田金時「結構炎を撒いたからな」

かぐや(それだけじゃない気がするけど…)

かぐや「とりあえず雪の女王の城へ向けて移動しましょう」

おつう「雪の軍勢が現れたという事はもうすぐそこなのでしょうね...」

ゲルダ「いよいよカイに会えるのね」

桃太郎「よーし、もう一息だ!」

一同『おおー!』

――北極、雪の女王の城、城門前――


桃太郎「これが、雪の女王の城か...」

坂田金時「なかなか立派な城だな」

碓井貞光「ああ、氷の女王の城より立派だ」

おつう「緊張してきました...」

かぐや「えぇ...」

ゲルダ「…」

リョウ「しかしこの城に似つかわしくないのが城門脇にあるな...」

ウサギどん「雪で作ったカマクラだな」

雄鶏「門番小屋みたいなものでしょうか?」

リョウ「何故この様な物を作ったのか...?」

桃太郎「門番小屋だったら門番の人が居るかな?ごめんくださーい」

かぐや「ちょっと、いきなり声かけて大丈夫なの!?」

鬼二「はい、なんでしょうか?」

桃太郎「あ、」

鬼二「あ、」

かぐや「鬼?!」

桃太郎・坂田金時・碓井貞光・ウサギどん・鬼二「「「「「あーっ!!」」」」」

 スチャ ボワァ~~~~~ン

リョウ「これまたこの城に似合わない銅鑼の音だな...」

碓井貞光「貴様!何故ここにいる!!」

坂田金時「それにその銅鑼!!」

鬼二「暫くしたら門が開くからそれまでお待ち頂ければとっても嬉しいなって」

ウサギどん「その間にちゃんと説明してくれるんだろうな!?」

ゲルダ「あのぅ、知り合いなんですか?」

桃太郎「えぇ、後で話しますよ。とりあえずこちらが先だ!」

ウサギどん「どうしてここにいるんだ!」

鬼二「えーと、ありのままに起こった事を話すと崩壊してゆく鬼が島の地下に落っこちた後、

   広い空間に出て、そこをさ迷ったらこの城近くの大穴に出たんです。

   何を言ってるのか分からないと思いますが私もどうしてこうなったのか分かりません...

   鴨とり権兵衛の鴨飛行だとか傘飛行だとかそんなものがちゃちなものに思える

   もっと凄い移動を味わいました…」

かぐや「ここの近くの穴と鬼が島の地下空間が繋がっていたという事?」

鬼二「はい、そうだと思います」

桃太郎「そうだったのか」

リョウ「へぇー、面白い事があるもんだな」

坂田金時「で、この城の外で門番の真似事をしているのか?」

鬼二「はい、私達はこの城の主に泊めてもらってます」

かぐや「私達?」

ゲルダ「あの、この城の主、雪の女王にお会い出来ますか?」

鬼二「え?」

ゲルダ「雪の女王に用があるのですが...」

鬼二「雪の女王様はこの城に居ると思うけど会えるかな?」

ゲルダ「この城に居るんですね!?」

  ギギギギギギギギ

坂田金時「お、城門が開いてく」

ウサギどん「門に油でも注しといた方が良いんじゃないか?」

雄鶏「同感です」

リョウ「音も装飾の一種だよ」

おつう「そうなんですか?」

ゲルダ「じゃあ門が開く時の音はわざとなんですか?」

リョウ「まあそうです」

碓井貞光「油注して音を無くす時もありますよ」

桃太郎「門から誰か出て来るぞ!」

鬼五「どうしました?ってあなた方は!?」

鬼九「あっ!?俺らを追って来たのか!?」

桃太郎「お前等も生きていたのか!?」

坂田金時「意外としぶといな!」

越後酒天「ほう、こんな地の果てに辿り着くとは」

桃太郎「貴様も生きていたのか!!」

越後酒天「ふん、あの程度でやられるか」

伊吹酒呑「その通りだ」

坂田金時「ち、まさかここでこれだけの鬼と出くわすとは...」

碓井貞光「予想外だな...」

鬼二「ところで塩持ってない?」

桃太郎「塩?」

鬼二「うん」

ウサギどん「塩は無いな!」

鬼二「毒入りでも構わないぜ」

鬼九「いや、駄目だろ!」

坂田金時「そんなに塩が欲しいのかよ」

碓井貞光「まぁこの辺は塩が採れなさそうだしな」

リョウ「ひょっとして塩不足なのか?」

越後酒天「塩が無くたって!」

鬼五「人の体は約親指3、4本分位の塩が巡っているという...」

鬼九「だから塩は消費したら直ぐ補給しないと不足するし取り過ぎると直ぐ過剰摂取になる」

伊吹酒呑「人の体に塩があると...」

鬼五「おまけにこんな地の果てに追いやられた恨みもある...」

越後酒天「お前等、覚悟しろ!」

リョウ「どうやら戦わないといけない様だな」

桃太郎「そうだな、桃太郎参る!」チャキチッ!

越後酒天「越後国酒天童子参る!」チャキンッ!

坂田金時「坂田金時参る!」ヂャキチッ!

伊吹酒呑「伊吹山酒呑童子参る!」チャキッ!

碓井貞光「頼光四天王が一人、碓井貞光!」スチャッ!

鬼五「鬼の副首領、茨木童子!」スチャッ!

坂田金時・碓井貞光((あいつが副首領!!))

リョウ「性はキ、名はコウリョ!刀剣収集が趣味だ!」チャキチャキンッ!

ウサギどん「え!?リョウさんって性がコウじゃなかったんだ!?」

リョウ「今まで通りリョウで良いですよ」

鬼二「えーと、かね童子です!」スチャ

 ボワァ~~~~~ン

鬼二改めかね「よろしく!」

鬼九「もっとまともな自己紹介しろよ!意外と物知り次郎丸!」カチャッ!

坂田金時「熊も自己紹介するか?」

熊「…」フルフル

坂田金時「そうか」

雄鶏「自分は」

越後酒天「雑魚は出しゃばるな!」

雄鶏「はい...」

ウサギどん「俺っちは」

リョウ「ちょうど五対五になるな」

桃太郎「ウサギどん、かぐや達を頼む」

ウサギどん「うーん、ま、しょうがないか」

桃太郎「よし、行くぞ!!」

一同『おおー!』

  ウオリャアー!  ナンノー!  ソリャアー!  ドッコイショー!

桃太郎「てりゃ!」シュッ!

越後酒天「ハッ」ヒュッ!

  ガキンッ!

越後酒天「む!その刀は!」

桃太郎「ふ、そうさ大和朱呑の剣の残骸を打ち直したものだ!」

越後酒天「はっ、おまけに鎬厚くなってるとは...」

かね「忍技熱く?」

鬼九改め次郎丸「"しのぎ"だよ。あと、戦闘中に余所見は危ないよ」

熊「…」シュ!

かね「うわっと!」

次郎丸「刀なのに鎬が厚いってそれってどうなのよ?」

リョウ「うん、珍しいな。だが守り易くて良いんじゃないかな?」

かね「高みの見物してないで戦ってよ!」

次郎丸「では、加勢するぞ!」

リョウ「おっと、そうはさせるか!」ヒュヒュン!

次郎丸「く!、そういえばあんた、どこから剣を出したんだ!?」

ゲルダ「互角、何でしょうか?」

かぐや「鬼相手に凄い。と言いたい所だけど鬼は塩不足だから元気が無いんでしょうね」

雄鶏「成程。しかし鬼って普通、金棒を振り回してると思ったんですが...」

おつう「そういえば鬼達は剣で戦ってますね...」

ウサギどん「鬼が島では金棒で戦ってる奴も居たよ」

かぐや「金棒で戦う鬼は比較的新しい世代の鬼よ。

    古い世代の鬼は剣や槍、弓を扱ってたそうよ」

ウサギどん「そいつは知らなかった」

ゲルダ「…今の内に城に潜入しませんか?門も開いてますし...」

かぐや「でも城にまだ敵が居たら...」

ウサギどん「俺っちに任せろ!敵に遭遇しない様に耳を澄ませながら進むから!」

雄鶏「それは頼もしい!」

ゲルダ「じゃあ行きましょう!」

かぐや「確かにここに居ても仕方ないし...」

おつう「五人居れば敵一人位なら勝てるかもしれませんしね!行きましょう!」

ウサギどん「よし、行くぞ!」

一同『おおー!』

  タッタッタッタッタッ

鬼五改め茨木「む!あいつら、城の敷地内に!」

碓井貞光「そこだ!」シュンッ!

茨木「何を!」カキンッ!

越後酒天「雑魚は無視だ!」

伊吹酒呑「だけど今、城には確か一人と一頭しか居ないんじゃないか!?」

坂田金時「そいつは良い事聞いた!安心して戦える!」ブンッ!

伊吹酒呑「ちっ!」ガキンッ!

桃太郎「うん?待てよ、一人と一頭て事は」

越後酒天「どうした!ハッ!」ヒュッ!

桃太郎「おっトゥッ!」ガキリッ!

桃太郎(今は今に集中するか!)

――雪の女王の城内――


  タッタッタッタッタッ

ウサギどん「敵の気配は全然しないな...」

雄鶏「不用心ですね」

かぐや「でもそのおかけで楽に進めるわ」

おつう「ですね」

ゲルダ「…カイ、何処に居るの...?」

  タッタッタッタッタッ

かぐや「…ねぇウサギどん」

ウサギどん「何だい?」

かぐや「先頭切って進んでいるけど何か根拠が有って進んでいるの?」

ウサギどん「…」

  タッタッタッタッタッ

一同『…』

雄鶏「あのー、うさ」

ウサギどん「(む、ちょっと止まって)」

かぐや「(どうしたの?)」

ウサギどん「(この部屋から微かな音がする)」

雄鶏「(では早速中を調べてみましょう!)」

ウサギどん「(そおっとそおっと)」

  ギ......ギ......

おつう「(微妙に音が出てますよ)」

ウサギどん「(これは仕方無いよ)」

ゲルダ「(中は厩舎みたいですね)」

かぐや「(あ、大きなトナカイがいる)」

一同『(トナカイ?)』

トナカイ「そこに居るのは誰かね?」

ウサギどん「あ、気付かれた」

かぐや「仕方無いでしょ」

雄鶏「おや、鎖で繋がれているみたいですよ」

おつう「ほんとだ。奥には大きなソリがありますね」

ゲルダ「あのー、トナカイさん、私はゲルダと言います」

トナカイ「そうかい。名乗り返すと私はべーと言う」

ゲルダ「じゃあべーさん、カイと言う人を知りませんか?」

トナカイ改めべー「ああ、知っている」

ゲルダ「ほんとですか!?」

べー「最近は会って無いがね」

ゲルダ「何処に居るんですか!?」

べー「この城の広間に居ると思うよ。多分だけど」

ゲルダ「教えて頂きありがとうございます!!」

ウサギどん「ところで広間への道順は?」

べー「ふむ、まぁ教えよう」


  <ウサギどん一行はべーに広間への行き方を教えてもらい広間へと行った...>

――雪の女王の城内、広間――


  タッタッタッタッタッ

ウサギどん「よしっ!ここが教えてもらった広間に違いない!」

雄鶏「いやー、広くて天井が高いですなぁ」

おつう「ええ」

ゲルダ「…あそこに居るのは...、カイ!」タッタッタッ

かぐや「えっ!?」

ウサギどん「とりあえず行こう!」

  タッタッタッタッタッ

ゲルダ「カイ!私よ!ゲルダよ!」

おつう「この人がカイ...」

ゲルダ「返事をして!」ユッサユッサ

雄鶏「でももう血の気が...」

ゲルダ「...冷たい…」

かぐや「…ゲルダ、カイはもう...」

??「まったく、何を騒いでいる?」

一同『!!?』

ウサギどん「気付かなかった!」

??「お前達、私の城で何をしている?」

おつう「それじゃあ...」

かぐや「この人が...」

雄鶏「雪の女王...」

ゲルダ「カイを誘拐し、こんな目に遭わせた張本人!」

??改め雪の女王「何しに来た?」

ゲルダ「カイを、取り返す為に来ました!」

雪の女王「ふん、その様な事で...。カイは自分から私のソリに乗ったんだ。

     それと我が軍勢と鬼達はどうした?」

ウサギどん「軍勢は倒した!鬼達も倒されるのは時間の問題だろうぜ!」

雄鶏「それよりもカイ殿を返してもらう!

   あと、ここからお家に帰れる距離まで帰して下さい!」

雪の女王「無意味だ。カイはもう魂まで凍っている」

ゲルダ「そんな!」

雪の女王「寒いというからカイから寒さを吸い取ってあげたんだ。

     そしたらあの様よ」

おつう「よく解りませんが酷い...」

雪の女王「酷いのはカイの方だろ?」

ゲルダ「カイは酷い人じゃありません!優しくて頭が良い人です!」

雪の女王「カイはここへ来た時から悪い奴だった。

     人の性根は変わらないから将来も悪人だろう」

かぐや「人は変わっていけるわ!

    こんな人里離れた所に住んでいる貴方が決め付けないで!」

雪の女王「解るさ。こう見えて結構人里を見ている。人は変わらないさ」

ゲルダ「ならばカイは優しい人です!

    私は幼い頃から隣同士でカイと一緒に過ごして来ましたから!!」

雪の女王「…ふん、もういい。<死を賜ってやる>」

ウサギどん「どうやら戦わなくちゃいけない様だな」

雪の女王「<この世の吹雪をもって死へ送り込んでやる>」

雄鶏「五対一でこちらが断然有利です!」

おつう「そうですね!」

雪の女王「<あの世からも死へ引き込む吹雪で死へ引き込んでやる>」

雄鶏「何ですか口先だけですか!」

かぐや「貴方もどうなのよ?」

雪の女王「<二つの吹雪で死を感じたらそれは死>」

ウサギどん「さっきから死っ死っ死ってそう簡単に死ねかよ!

      死なんざ俺っちは経験済みで乗り越えて来たぜ!」

雪の女王「<エターナルフォースブリザード>」

  パタリ パタリ パタリ パサリ

雪の女王「ふん、詠唱が少し足りなかったかな?」

――雪の女王の城、城門前――


ブゥンッ! カキンッ! シュンッ! ザッ! 

  ブチッ

桃太郎「!鼻緒が切れた!?」

リョウ「危ない!」ヒュンヒュンヒュンヒュン

越後酒天「おっと!」バッ!

  ザクザクッ!

次郎丸「仲間を助ける為に武器を放り投げるのは立派だが丸腰で戦えるのか?」キラリッ!

リョウ「大丈夫、代わりはある」スチャスチャッ!

次郎丸「何!?また!?」

桃太郎「鼻緒が切れるとは不吉な...」

リョウ「大丈夫、気にするな。厄落としの意味もあるから」

桃太郎「厄落とし?」

次郎丸「死んだ人間を埋葬する時、履いて来た草履を置いて行く。

    この時、死んだ人間がその草履を履いて追い駆けて来ない様に

    草履の鼻緒を切っておくんだ」

桃太郎「成程、それが厄落としの意味か」

越後酒天「講義は終ったか?なら行くぞ!」ザッ!

桃太郎「ああ!来い!」シュッ!

桃太郎(しかし皆無事だと良いんだが…)

――雪の女王の城内、広間――


ウサギどん「うぅ...」

雪の女王「よく耐えたな」

ウサギどん「く、かぐや、おつう、雄鶏、ゲルダ...」

雪の女王「死を経験したそうだがその所為でお前だけ死ななかったのか?」

ウサギどん「俺っち一人残して皆死んじまったのか...?」

雪の女王「ああ、そうだとも。先程の魔法は本来、

     周囲の大気ごと凍らせ相手は死ぬ魔法なのだが、

     上手く扱えなくてな。相手がただ死ぬだけだ」

ウサギどん「ちくしょう...」

雪の女王「貴様も後を追わせてやる」

ウサギどん「敵討ちだ!やってやるぜ!こんちくしょう!!」

雪の女王「出来るかな?<氷の矢>」ビュゥーンッ!

ウサギどん「うわっと」ピョンッ ザクッ!

ウサギどん「危ねぇ」

雪の女王「良く避けたな。では、

     <冷気を纏い、使い、我は放つ><氷の矢>」ビュビュビュビュビュンッ!

ウサギどん「今度は複数かよ!」ピョンピョン! ザクザクザクザクザクッ!

――??――


 キー コ  キー コ  キー コ

かぐや「う、う~ん...」

??「おや?気が付きましたか?」

かぐや「ここは...、船?」

??「はい」

おつう「う~ん...」

かぐや「あ、おつうさん!それに皆も!」

ゲルダ「う~ん、ここは何処ですか?」

雄鶏「おや?いつの間に我々は船に...?」

??「覚えてないですか?貴方達は死んだんですよ」

一同『えっ!?』

かぐや「それじゃぁここはこの世とあの世の...」

おつう「そんな...」

ゲルダ「引き返せないんですか!?」

??「残念だけどこの船は引き返せないな」

ゲルダ「じゃあ自分で泳いで行けば生き返れるんですね!?」

雄鶏「成程!その手がありますな!!」

かぐや「そう簡単に行くのかしら...?」

おつう「確かにそうですよね...」

??「ハハ、元気が良い娘さんだ。聞いた話によるとこの川で溺れると生き返れると」

  ドボンッ!

??「え?」

かぐや「ゲルダ!」

雄鶏「善は急げって言いますし後を追いましょう!」

  ポチャンッ

おつう「雄鶏さん!?」

かぐや「こうなったら私達も行くわよ!」

おつう「は、はい!」

  ドボンッ! ボチャンッ!

??「やれやれ、せっかちだな。ま、無事に溺れて生き返れる事を願ってますよ」

――??、川?の中――


かぐや「これは?水の中なのに全然息苦しくない」

おつう「それも驚きですけど、どんどん下に沈んでいきますよ!」

雄鶏「あ、かぐや殿、おつうさん」

おつう「雄鶏さん、ゲルダさん」

雄鶏「鳥なんですぐに溺れると思ったら全然溺れてる感じがしないんですよ」

ゲルダ「私もです。それに泳げてる感じもしないし...」

おつう「ほんとだ。ばたついてもほとんど水を掻けてない...」

かぐや「それにどんどん沈んで辺りが暗くなってきたわね...」

雄鶏「うん?下の方に小さな星粒が一つ見えますよ」

かぐや「え?どこ?」

おつう「あ、ほんとだ。小さな星粒が一つだけ光ってますよ」

ゲルダ「あ、見えた!」

かぐや「本当だ。下に星があるなんて...」

雄鶏「お、星がだんだん大きく、ってあれは星じゃないですよ!?」

かぐや・ゲルダ「「えっ!?」」

おつう「あれは...、魚!?」

かぐや「まあ水の中みたいだから魚ぐらい居るんじゃ...」

雄鶏「ただの魚じゃないです!かなり巨大な魚ですよ!」

かぐや「えっ!?」

ゲルダ「...確かにだんだん星粒が大きなって来ますね...」

おつう「あの巨大魚、こっちに来たら皆まとめて

    ぱくっと食べられちゃうんじゃないでしょうか...?」

雄鶏「は、早く逃げましょう!」

かぐや「逃げるたってどうやって!?」

雄鶏「溺れて生き返るってのはどうでしょうか!?」

ゲルダ「こんな変な水の中じゃ溺れないですよ」

おつう「でも生き返る前にあの魚に食べられちゃったら...」

かぐや「だいぶ近づいて来たけど本当に巨大魚の様ね...」

おつう「いえ、まだまだ距離があるみたいですよ」

かぐや「どんだけでかいのよ!?」

雄鶏「ええい!自分は鳥なんだ本来泳げないんだ!水に入ったら溺れるはずなんだ!」

おつう「わ、私も空飛ぶ鳥です!水に入ったら溺れます!」

かぐや「そうよ!ここは水の中!それもかなり深い水の中よ!」

ゲルダ「きょ、巨大魚がどんどん接近して来てます!」

雄鶏「う~ん、溺れろー、溺れろ―!」

おつう「溺れます、溺れます!」

かぐや「頑張って!もうすぐ溺れるかも!」

ゲルダ「そもそも泳ぐって何?だから<溺れます>!」

おつう「巨大魚に食べれちゃうのは嫌!鳥なのに!」

  かぐや...、おつう...、雄鶏...、ゲルダ...

一同『!!』

――雪の女王の城内、広間――


ウサギどん「はぁ、はぁ」

雪の女王「ちょこまかと往生際の悪い兎だな」

ウサギどん「何おう!」

雪の女王「大人しく仲間の所へ逝くがよい」

ウサギどん「く、かぐや...、おつう...、雄鶏...、ゲルダ...」

かぐや「う、うーん...」

ウサギどん・雪の女王「「!!?!」」

雄鶏「ぷはっ」

おつう「溺れた~」

ゲルダ「うーん、はっ!」

ウサギどん「皆、生き返った!」

雪の女王「な、何故?!...なっ!?」

かぐや「どうやら無事に溺れたみたいね」

ゲルダ「無事に溺れるって変な言い回しですけどね」

雄鶏「ふぅ、良かった良かった」

おつう「えぇ、巨大魚に食べられなくて良かったです」

ウサギどん「くぅ~!皆生き返って良かっ...っな!?」

雄鶏「どうしました?うさぎど...」

かぐや「?どうし...」

ゲルダ「あ、」

おつう「えっ!?」


雪の女王「何だ?この巨大な魚は!?」

――雪の女王の城、城門前――


熊「…」シュッ!

かね「ひぇっ!」

熊「!?」

かね「…あれ?...ってこれは!?」

一同『!!?!』

桃太郎「何だ!?こいつは!?」

碓井貞光「巨大な魚か!?」

坂田金時「竜か!?」

茨木「何なんだ?突然現れたぞ!」

かね「何か透けてる...」

伊吹酒呑「おまけにちょっと光り輝いている...」

茨木「これだけ巨大なのに城に影響を与えてない...?」

伊吹酒呑「幽霊みたいなものかな?」

かね「ちょっと突いてみようかな?」

次郎丸・リョウ「「止めとけ!」」

越後酒天「幽霊ならば無視だ!」

リョウ「確かに地面や城の壁にめり込んでいるのに

    地面も壁も何も影響が無いなら無視が一番だろうな。

    というかこちらに気付かないで大人しく何処かへ去って欲しい...」

桃太郎「とりあえず、こいつは何なんだ?」

次郎丸「俺もこいつが何か知りたい...」


熊「...こいつは凄い魚だクマァ...」

――雪の女王の城内、広間――


雪の女王「・・・」

ウサギどん「・・・」

雄鶏「(...開いた口が塞がらないとはああなんでしょうね)」

おつう「(とりあえず雪の女王が茫然自失している内にウサギどんとカイを連れて逃げません?)」

雄鶏「(確かに雪の女王には私達は敵いませんからね)」

ゲルダ「(はい...、そうですね)」

かぐや「(そういえばウサギどんは死んで無かったわよね?)」

雄鶏「(言われてみれば...)」

かぐや「(もしかしたら...。ねぇウサギどん)」

ウサギどん「(お、おう、何だ?)」

かぐや「(貴方、もしかして未だ火傷薬を持ってるかしら?)」

ウサギどん「(あ、ああ、火傷薬なら未だ残って...、あ)」

おつう「(火傷薬...)」

雄鶏「(あの火傷薬ですか?)」

ウサギどん「(なあまさか...)」

かぐや「(雪の女王に勝てるかも...!)」

ゲルダ「!!」

ウサギどん「(よし、いっちょやってやるぜ!)」

雪の女王「む!」

ゲルダ「(気付かれた!?)」

かぐや「(いえ、違うわ!)」

おつう「(魚が...)」

――雪の女王の城、城門前――


かね「巨大魚が…」

リョウ「...どうやら消えていくみたいだな」

坂田金時「結局何だったんだ、半透明で光っていて竜の様な魚の様な奴は?」

次郎丸「俺も知りたい」

リョウ「関わりになら無い方が良いと思うよ」

桃太郎「しかし本当に巨大だったな...」

碓井貞光「そうだな...」

――雪の女王の城内、広間――


雪の女王「いったい何だったんだ...?」

  ピョンコッ!

雪の女王「!?」

ウサギどん「えいっ!」ピョンッ!

  パクッ!

雪の女王「何を?!っ!?辛!?」シュウウゥゥ

ウサギどん「火傷薬だ!どうだ!!」

雪の女王「うぐぅ」

おつう「ちゃんと溶けてますね」

かぐや「でも油断しちゃ駄目よ」

雄鶏「はい!ついでにちょっと触ってみよっと」

雪の女王「あぅ」シュゥ

雄鶏「冷た!」

ゲルダ「あのー、ウサギさん」

ウサギどん「うん、どうしたんだい?」

ゲルダ「その火傷薬、カイに試してみたいんだけど...」

ウサギどん「おう良いともさ!」

ゲルダ「ありがとうございます!!」

  タッタッタッタッ

ゲルダ「さぁカイ、これで元気になって...」パクッ チュッ

雄鶏「(口移し...)」

おつう「(だってあの状態じゃそうしないとカイに食べさせてあげられないでしょ)」

ゲルダ「カイ、お願い、元気になって...」ギュッ

一同『…』

ゲルダ「カイ...」ポロッ

一同『…』

ゲルダ「………<どっこいしょ>」

かぐや「……六根清浄」

ゲルダ「…<六根清浄>」

一同『六根清浄』

カイ「う、うーん...」

ゲルダ「カイ!」ギュッ

一同『おおー!!』

カイ「…う、うん?」ポロッ

ゲルダ「カイ?」

  キラッ

おつう(何かしら?何かがカイから出て来た?)

カイ「やあゲルダ、ゲルダじゃないか。今まで何処に行ってたの?」

ゲルダ「カイを探しに旅してきたのよ」

カイ「そうか、そういえば、僕は何処に居たんだろう?」

ゲルダ「カイったら。フフ、ハハ」ポロポロ

雄鶏「いやぁ、笑ったり泣いたりですな」

かぐや「そうね、ふふ」

おつう「こっちまで楽しくなってきちゃいますね」

ゲルダ「」チュ

雄鶏「接吻だ。カイ殿真っ赤」

ウサギどん「見てるこっちも真っ赤になるや」

ゲルダ「さぁ、帰りましょう!私達の故郷へ!!」

かぐや「あっ!しまったすっかり忘れてた!」

一同『?』

雄鶏「どうしましたか?」

かぐや「帰りの事よ!確か雪の女王に帰してくれる様に頼むんじゃなかったっけ!?」

一同『あ、』

ウサギどん「それだったら俺っちに良い考えがあるぜ!」

一同『え?』

――雪の女王の城、城門前――


リョウ「さて、仕切り直しと行こうか!」

次郎丸「応よ!」

桃太郎「ああ!」

越後酒天「望むところよ!」

坂田金時「そろそろ決着だな!」

伊吹酒呑「確かにな!」

熊「…!」

  ドカラッ ドカラッ ドカラッ ドカラッ

茨木「今度は何だ!?」

碓井貞光「今度は大きな鹿か!?」

桃太郎「あの巨大魚を見た後だと別にそんなに大きくない様な気が...」

リョウ「それでも充分でかいだろ」

かね「あいつはこの城のあるソリを引いてる鹿のベーですね。ソリ引いてますし」

伊吹酒呑「こっちに来るぞ!」

桃太郎「わわっ!」

  ドカラッ ドカラッ ドカラッ ズシャアァ

ウサギどん「どうどう」

べー「はっはっ、そんな事せずともちゃあんと仕事をこなすさ」

桃太郎「ウサギどん!その大きな鹿とソリは...!?」

カイ「やあ、初めまして」

かぐや「さあ早く乗って!」

雄鶏「目的は果たしました!」

桃太郎「!、そうか!では!」

碓井貞光「いくらソリが大きくてもこの人数じゃきついだろ」

坂田金時「それじゃ俺は熊に乗ってくぜ!」

熊「…」コクッ

リョウ「ではとっとと乗ってしまいましょうか。ってこの子供は?」

ウサギどん「おう、この子は」

越後酒天「待ちやがれ!」

茨木「逃がすとでも思っているのですか!?」

ウサギどん「ふっふっふっ、こっちには人質が居るんだぞ!」

雪の女王「むぅ」

かね「く、卑怯な!って女王小っちゃくなってる!?」

越後酒天「はっ、構いやしねぇよ!」

ウサギどん「え?人質無視するの?」

かね「そうなんですか?」

茨木「この状況から抜け出す為、女王にはまぁ協力してきましたが、

   そのソリを使えば抜け出せるなら当然、ソリを取るでしょう」

ウサギどん「せっかく連れ来たのに...」

雪の女王「ふん、だったら...。べー」

べー「何ですかな?」

雪の女王「カイ達を故郷に送り届けたら自由にしていいわよ」

べー「本当ですかな?」

雪の女王「ええ本当よ」

ウサギどん「女王さん何する気ですか!?」

雪の女王「こうするのよ<北風>よ」

  ビュウーン  ビュウーン

雄鶏「女王様一人だけ居なくなっちゃった...」

べー「!、ソリにしっかりつかまってろ!」

  ドカラッ ドカラッ

ウサギどん「うわっと」

坂田金時「!っ熊!」

熊「!」ドカラッドカラッ

越後酒天「しまった!追うんだ!」

かね「え?」

次郎丸「女王が居なくなってソリまで居なくなったら俺達はどうなるか分かるだろ!」

かね「あ!」

鬼一同『待てぇー!』

坂田金時「鬼達とは決着を付けたかった気もするがまぁいっか」

碓井貞光「これは鬼達は島流しも同然だな」

おつう「どんどん鬼達を引き離してますね」

かぐや「当然よ。ソリは今のところ地上最速を出している乗り物よ。

    それにトナカイと雪原で競争するのも無謀だわ」

ウサギどん「熊は追い付いて来てるよ」

かぐや「ソリを引いてないからでしょうね」

べー「ところでカイさん、何処に向かえば良いかな?」

カイ「あ、べーさんは僕と出会った場所を覚えてますか?」

べー「ああ、覚えているともさ」

カイ「ではそこへ向かって下さい」

べー「うむ」

  ドカラッ ドカラッ ドカラッ ドカラッ ドカラッ ドカラッ

  <こうして桃太郎一行はトナカイのべーが引くソリに乗って、

   無事にゲルダとカイの故郷に辿り着く事が出来ました>

  <その後、べーは自由の身になり、べーも自分の故郷へ>

  <桃太郎達も自分の故郷へと向けて出発しました>

桃太郎「よし、行くぞ」

一同『おおー!』

お終い。

この話はフィクションです。実在の人物、実在の団体、実在の言い伝え等々とは一切関係ありません。

ここまでお付き合い下さりましてありがとう御座いました。これにて【Ⅱ】は終わりです。

あと、酒場で台湾版桃太郎の続編の話をして下さった方々、重ねてお礼申し上げます。おやすみなさい。

読みました。まさかあれから続編を書き上げるとは…
そして秦の始皇帝前の人物と産業革命後の物語を一緒にした上に
賛美歌を歌うところを六根清浄に置き換えるなんて…
でも面白かったです。乙



台湾版桃太郎は更に続編の【Ⅲ】があるよ
更に期待しているよ


  <桃太郎一行はゲルダとカイの故郷から旅立った後、いったん南に下り、

   それから東へ向かう事にし、今は海を進んでいます……>


―――海、船の上―――


桃太郎「いや~、ちゃんと船を作れちゃうウサギどんは感心するな」

ウサギどん「応よっ。それにしても外洋は風があって自分で船を漕がないから楽だな~」

坂田金時「船造りは皆で力を合わせたじゃないか」

雄鶏「しかしちょっと波が高くないですか?」

リョウ「外洋はこんなものだろう」

坂田金時「しかしこの旅程はかなり遠回りじゃないか?」

おつう「はい、とっても遠回りです」

かぐや「確かにそうね」

リョウ「仕方ないさ。真っすぐ帰ろうとすれば

    人跡未踏の山脈を越える努力をしなければならないからな」

碓井貞光「うん更に途中で遭難したり、食糧が無くなってしまったら致命的だ」

桃太郎「それに寒いのももうこりごりだしね」

おつう「おや?あっちの方に船が見えますよ」

雄鶏「本当だ、船が見えますね」

桃太郎「うん?」

ウサギどん「どこだどこだ?」

坂田金時「見えないな...」

リョウ「う~ん...」

おつう「ほらあそこですよ」

かぐや「おつうさんと雄鶏は目が良いわね」

熊「…!」

碓井貞光「お、見えて来たぞ」

桃太郎「本当だ、船だ」

坂田金時「ありゃ何だ?」

雄鶏「船首がなんとなく竜の様な...」

おつう「なんかガラが悪そうな武装した人達が乗ってますね」

リョウ「もしかして海賊船か?」

坂田金時「それだったら腕が鳴るな」

かぐや「未だ敵と決まった訳じゃないでしょ」

ウサギどん「あ、櫂を出した」

桃太郎「本当だ、船の左右に突き出したな」

雄鶏「一気にぐんぐん近づいて来ますね」

碓井貞光「ああ、漕ぐ息ぴったりだな。良く訓練されている様だ」

坂田金時「かなりの速度だな」

ウサギどん「このまんまだとぶつかるよ」

リョウ「…ぶつける気なんだろうな」

かぐや「それじゃあ......」

桃太郎「海賊船か!」

坂田金時「ふっ! 返り討ちにしてやるぜ!!」

ウサギどん「いや、その前に海賊船の体当たりを避けないと」

坂田金時「え? 船をくっつけないと戦えないじゃないか」

碓井貞光「いや、ウサギどんの言う通りだ」

リョウ「そうそう。海賊船の方がこちらの船より大きい上に速度も出ている。

    体当たりを喰らうのは不味い」

坂田金時「とは言うがもうすでにすぐそこまでに」

ウサギどん「あ、避けられないや」

碓井貞光「! 衝撃に備えろ!!」

 ドカッ バキッ メキッ バリッ メリッ


桃太郎「うわっ」

坂田金時「うおっ」

ウサギどん「やばい! 船が」

 バキンッ

碓井貞光「割れた!」

リョウ「もう戦うどころじゃないな」

雄鶏「どうしましょう!船沈んじゃいますよ!」

熊「…」

 ぶくぶくぶくぶく…………



 パッ

おつう「網?あっ!?」

かぐや「きゃっ」

桃太郎「!っ かぐや!おつうさん!」

坂田金時「あいつら!投網でかぐやさんとおつうさんを攫って行きやがった!」

雄鶏「そしてそのまま行っちゃいましたね。うわっぷ!」

ウサギどん「ちきしょう、折角の船を沈めてとんずらこきやがって!」

碓井貞光「あの海賊、最初から女性目当てだったのか?」

リョウ「そうみたいな手際だな」

桃太郎「とにかく、ここでたゆたってないで追いかけよう!」

坂田金時「応!」

碓井貞光「急いで泳いでもあの船に追いつけないが泳ぐしかないか...」

ウサギどん「すぐに見えなくなっちゃうよ」

雄鶏「方向なら自分は分ります!あっちが北こっちが南でそっちが東そして西!」

坂田金時「お、それは頼もしい」

ウサギどん「あの海賊、今度会ったらただじゃおかないぞ!」

リョウ「そういえばあの海賊、もしかしたら...」

ウサギどん「リョウさん知っているの?」

リョウ「聞いただけで実際見た事はなかったんですが、

    あれが”バイキング”と呼ばれる海賊かもしれませんね」

一同『バイキング……』

桃太郎「相手の事も分った事だし、

    よし、行くぞ!!!」

一同『おおーー!!!』




―――海、バイキング船、船上―――


おつう「(この船の人達、何者なんでしょうか?)」

かぐや「(そうね... ずっと喋らないまま 黙々と航海しているわね)」

おつう「(毛布と 毎日食事をくれるのは良いのですが...)」

かぐや「(なんだか圧迫感、威圧感みたいなのが滲み出ていて息苦しいわね...

     ……なんか海賊というより戦士みたいな感じね......)」

おつう「(あ、塔が見えてきましたよ)」

かぐや「(え、どこ?)」

おつう「(あっちです。お城みたいですね)」

かぐや「(そうするとこの人達の拠点かしら?)」

おつう「(あ、島...というか陸地が見えて来ました)」

かぐや「(この人達の国、なのかしら?)」




―――海、桃太郎一行…―――


坂田金時「おかぁちゃんの為なら」

一同『えーーーん や こぉーーーらぁ』

坂田金時「おとぅちゃんの為なら」

一同『えーーーん や こぉーーーらぁ』

坂田金時「あ の 子 の為なら」

一同『えーーーん や こぉーーーらぁ』

リョウ「ところでこの掛け声、いったい何々ですか?」

坂田金時「う~ん、実は良く知らない。が、遠泳する時の定番の掛け声って事だけは知っている」

雄鶏「とりあえず未だ先は長そうですよ」

桃太郎「なんのこれしき、かぐやとおつうさんを取り戻す為、この程度いつまでも泳いでやる!」

坂田金時「その意気だ!あ の 子 の為なら」

一同『えーーーん や こぉーーーらぁ』




―――城、居館、客室―――


おつう「なんだかここまであれよあれよという間でしたね」

かぐや「そうね...」

おつう「それに侍女さん達にこんな立派な異国の服を着せて貰えましたし」

かぐや「ドレスね。そしてこの侍女達はメイドね」

おつう「そうなんですか」

執事「かぐや様、お食事の用意が整いまして御座います」

かぐや「えっ!?何で私の名前を?!」

執事「それからお連れの方もご一緒にどうぞ、我が主がお待ちです」

かぐや「…その主、何者なの?」

執事「はい、我が主はこの国の王、ヴォーティガン様で御座います」



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