勇者「僧侶と賢者で回復役がダブってしまった」(25)

勇者(とにかく心が痛かった)

勇者(俺は滅びかけた異世界を救って回る勇者でこの世界に絶対悪の良い魔王がいるというので召喚されてみたが予想を上回る殺伐さだった)

勇者(そのうえ人心荒廃が甚だしいせいか大団円に最悪の展開が多く、鬱や寝取られがひどい)

勇者(まったくの無駄足だった)

勇者(おまけにどうやら俺はまたも魔王城で迷ったらしい)

勇者(しかも……追い打ちをかけるように謎解きフロアが始まる)

謎解きフロア終了

勇者「ふう」

腰を振るオーク「ハアッハアッ」

うつろな目のエルフ「ぁ……ぅぁ……ゃぁ」

勇者(まいったな……いったいどこに迷い込んでしまったんだ)

粘液まみれのエルフ「たす……け……」

勇者(焦るんじゃない)

勇者(俺は魔王を倒したいだけなんだ)

勇者(心が痛くて死にそうなんだ)

鞭を持つオーク「バカヤロー、二度とこっから逃げんじゃねえぞっ!」

鞭を持つオーク「この!」

ボテ腹のエルフ「ゴメンナサイゴメンナサイ」

勇者「あ……しまった。このフロアはここで終わりか」

勇者(ああ……情けない。宝箱も見つけず何をやっているんだ。引き返すか……いやいや。リーダーがウロウロしていたら仲間に勘繰られる)

僧侶「こんな場所でレベル上げですの?」

戦士「へへっ、腕が鳴るぜ」

賢者「雑魚どもに係う暇はないよ」

勇者(くそっ、それにしても仲間うぜえなあ)

勇者(魔王は……)

勇者(どこでもいい、魔王はいないのか)

回復ポイント前の扉

勇者(ええい! ここだ入っちまえ)

?「しゃ~い」

・角
・マント
・黒っぽいオーラ
・闇っぽい大剣
・幼女

勇者(……)

勇者「勇者の使命と正義のため魔王を倒す!」

魔王「やだ」

勇者(俺はできるだけ物怖じせずハッキリという。質問を聞き返されるのはやっかいだ)

勇者「あと世界平和のため!」

魔王「へーわ、なに?」

勇者「何も覚えてないというのか!」

魔王「えーと、ころしたのとおかしたのとたべちゃったのと……」

勇者「殺すから死んでくれ」

勇者(こういう魔王の倫理観ってのはきっと独特なんだろうな)

魔王「やーだもーん。へーわとかせーぎとか」

勇者「あ……あとすまんが仲間のためにも死んでくれ!」

勇者(勇者アピールをしてしまうと少し気が楽になり、仲間を見回すゆとりがでてきた)

勇者(しかし……みんな不意打ちを仕掛けないのはなぜだろう? でもある種の美意識が感じられる)

魔王「いらっしゃい。おねえちゃんたちもあたちをころすの?」

賢者「復讐だ! 世界平和などどうでもいい!」

勇者(復讐! そういうのもあるのか)

僧侶「ですわ! 獄死したお父様と自害したお母様、そしてわたくし自身の復讐のためですわ!」

魔王「はーい。ふくしゅーね」

勇者(多いんだな……復讐。しかし大義なしとは、自分のことで戦うのか)

魔王「はーい。おまちどうさま」

魔王が襲いかかってきた!

勇者(……)

<僧侶>
魔族の計略により没落した貴族の娘。
娼館で贔屓の司祭に身請けされシスターとなる。
回復魔法が得意。

<賢者>
魔族に森を焼かれ慰み者にされたダークエルフの少女。
孕み腹を裂かれて打ち捨てられたが生き延びた。
全体回復魔法が使え、ちょっとだけ攻撃魔法も使える。

<戦士>
元兵士の男。
ヘマで城を首にされ、勇者の仲間となる。
こうげきとぼうぎょが出来る。

<勇者>
なんでもできる。

勇者(うーん……僧侶と賢者で回復役がダブってしまった)

勇者(なるほど……このパーティは戦士と賢者で充分なんだな)

勇者「ハッ! フッ!」

戦士「ハッ! フッ!」

魔王「きかないよ」

勇者「ウン、強い」

僧侶「オーホッホッホッ! 魔王を倒せばわたくしは聖女になれるのです!」

賢者「アハッ! そんな姿だからこそ剣で股ぐらをかき回してやる!」

戦士「へへっ、よくわかんねえけど魔王って悪いやつなんだろ?」

勇者(この戦士は正解だった)

勇者(脳筋ぐあいもちょうど良い。鬱づくしの中ですっごく爽やかな存在だ)

戦士「魔王ー! こいつでとどめだー!」

魔王「ばーりあっ」

勇者(まるで小学校の休み時間に廊下でするごっこ遊びのようだ)

勇者(なんだか純粋悪っぽくていい魔王じゃないか)

僧侶「魔王の血によってこそ! わたくしの身は清められる!」

賢者「全身の肉を削ぎ落とし、じわじわとなぶり殺しにしてくれる!」

勇者(しかし結局、この世界の中で戦う仲間ってのは、ほとんど正義より私情の仲間なんだな)

魔王を倒した。

勇者「ふう。強かった」

魔王「いたいよぉ……いたいのとれないよぉ……」

勇者「とどめ?」

僧侶「はぁい」

賢者「えーと」

魔王「ぁ」

国王「褒賞800万gです」

勇者「ごちそうさま」

国王「ありがとうございました」

勇者(俺はゆったりと城を出る。財布ははちきれそうだ……ふっかけすぎた)

勇者(俺は数十メートル歩いたところで城を振り返った)

国王「勇者さまには英雄になってもらう」

兵士長「狙えっ!」

勇者(おそらく……俺はこの世界には不釣り合いな客だったんだろうな……)

勇者(矢の雨はあがっていた)

僧侶「ねえ、どうして死んで下さらなかったの」

勇者(なるほど……これがさっきの復讐か)

戦士「城のみんなが……この、ばっきゃろう!」

賢者「勇者、今なら間に合う。ボクと――」

勇者(ようやく召喚の光に包まれた。魔王がいれば倒そう。いなければ次の世界へ召喚されるまでただの人間として過ごせばいい。そう思った)

パロになってねえやと書き終わってから思った。

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