リヴァイ「前世というものを信じるか?」エレン「え?」(13)

エレン「前世……ですか?」

リヴァイ「俺たちの中身が、生まれる前は何処の誰ともしらん奴の中に入っていたって話だ」

エレン「えぇ、前世の定義については、なんとなくですが、解かります……それで、それが本当かどうか?」

リヴァイ「お前は、信じるか?」

エレン「……前世、ですか……」

エレン「今とは……違う自分……」

エレン「……」

リヴァイ「……」

エレン「……信じる信じないというか、実感が、湧きません……」

リヴァイ「だろうな」


エレン「……兵長も?」

リヴァイ「俺か?俺もお前と似たり寄ったりだ」

エレン「似たり寄ったり……じゃぁ、思いつくってことは、やっぱり、何か心当たりみたいなのが、あるもんなんですか?」

リヴァイ「……時々だが、体が妙に軽くなる」

エレン「体が……軽く……」


リヴァイ「巨人どもと戦っている時、とんでもない直観が頭ん中を過ぎりやがる。此処をどうしてやれば、
こいつらをぶっ壊せる……ていうのがな。……いや、或いは昔から……ペトラのお喋りに聞いただろう?
俺が、昔はゴロツキをやっていたって話を」

エレン「えぇ、あぁ、はい……」

リヴァイ「その頃からだ。そういう感覚があったのはな。
もっとも昔はこんなことを考えたりはしなかった。自分はそういう人間で、
これは当たり前のもんなんだと。いちいち考えるまでもないと思っていた。
だが、巨人どもと戦うようになり、時々だが、なんだか……そうだな、懐かしいと、
思うような時があるんだ」

エレン「……懐かしい……」

リヴァイ「あぁ。まぁ、奴らの見分けなんざ俺には付かんから、昔殺った奴がまた会いに来た程度に思うだけなのかもしれないな」

エレン「ははっ……懐かしい、ですか……」


エレン「……あの、俺も、良いですか?」

リヴァイ「なんだ?」

エレン「……俺も、その、懐かしい、っていうの、あるんです」

エレン「知らないはずなのに、知ってる……リヴァイ兵長はさっき直観って、言いましたけど、
そんな感じで、でも、なんていうんだろう……もっと、記憶みたいなのが……」

リヴァイ「記憶、か」

エレン「はい……といっても、夢、なんですけど……」

リヴァイ「夢、か。なるほどな」

エレン「夢で見た人物像と、実際の人物像が違う、ってことがあって……でも、それは本当に些細なもので、
精々髪が長いか短いかくらいなもので……ちゃんと、そいつなんですよ。でも、なんか違うってことが……」ツー

パサッ

リヴァイ「使え」


エレン「あ、ありがとうございます……ははっ、なんでだろう、また、涙が……」ゴシゴシ

リヴァイ「夢じゃなく、本当に記憶なのかもしれないな」

エレン「ははっ、まさか……」

リヴァイ「俺たちは巨人だけではなく、自分たちのことさえ満足に知らないもんだな。そして、切っ掛けがなければそのことに
気が付かないまま死んじまう、か。……皮肉だな」

エレン「……皮肉、とは?」

リヴァイ「考える暇もねえってことだよ」

エレン「ははっ……まぁ、あの百年の間には、そうでもなかったでしょうけどね」

リヴァイ「そうだな。……となると、暇過ぎるからって考えるって訳でもなさそうだ」

エレン「こういうのって、宗教みたいなものなんでしょうか……?」

リヴァイ「あいつらはただの壁マニアだろうが」


エレン「ですよね。でも、こういうのから、神っていうのが生まれそうなものですけど」

リヴァイ「神、か。そいつはこの状況を楽しんでやがるのか、いや、だろうな。でもなければ、
とっとと巨人どもを焼き払っているだろうからな」

エレン「でしょうね……何処に居やがるんでしょう……見つけたら、一発くらいぶんなぐってやりたいですけど……」

リヴァイ「随分と謙虚だな」

エレン「ははっ、リヴァイ兵長なら勢い余って殺しそうですけど!」

リヴァイ「さぁ、どうだろうな」

エレン「……でも、もしも神なんていたら、どっちの味方なんでしょうね……
人間の味方じゃないってのは解かりきってますけど……でも、巨人の味方ってわけでも、
きっとない……だって、もしそうなら、ミカサとか、リヴァイ兵長は真っ先に、その、
邪魔になるじゃないですか……それに俺みたいな、巨人でありながら、人間の味方をする、
そういう、不安定な存在も居ますし……」

リヴァイ「両方の味方である、或いは、どちらにも味方はしない。
ただ、勝った方が生き残り、負けた方が、死ぬ」


エレン「そんな言葉じゃ!……納得なんて、出来ませんよ、俺は……」

リヴァイ「なら、勝しかないんだろうな、俺たちは。勝って勝って、殺すしかない。それが唯一の、
俺たちの正しさの証明だ」

エレン「……残酷ですね、この世界は……」

リヴァイ「そうだな……」

エレン「……なんで、俺たちは生まれてきたんでしょう……巨人も、皆……どうして……」

リヴァイ「それが本質というものなんだろう、俺たちの」

エレン「……本質、ですか」

リヴァイ「あぁ、性質が悪い――だが、そう悪いものじゃない」


エレン「諦めが悪い……ってことですね」

リヴァイ「歴史では、巨人が現れたのが、だいたい百年前だが……実はもっと昔から、奴らは居たんじゃないか。
様々な形で、俺たちの傍に。その度に俺たちは抗って生きてきた。でも、ただその為だけに
生まれてきたわけじゃなかった。だからこそ、反抗したんだろう。寄り道なんざしている暇はないってな」

エレン「……俺、外の世界を見たいんです……壁の外……そこには、炎の水や、氷の大地、砂の雪原が広がっているって……
だって俺は……この世に生まれたんだから……それを見るまでは、絶対に……死んでも死にきれません……!」

リヴァイ「……あいつらと過ごした時間は、悪くないものだった」

エレン「俺も……少しの間、本当にわずかな時間でしたけど、あの人たちの仲間になれて、良かったです」

リヴァイ「当然だ、俺の集めた面子だからな」

エレン「……本当に……。……ごめんなさい……!」

リヴァイ「勘違いするな。お前を責めている訳じゃない。言っただろう、結果は誰にも解からない、と。
悔いのない選択をしろ、とは言ったが……そんなものを毎度出来るほど俺たちが器用な代物じゃないというのも
解かっている」

エレン「……でも、だからって割り切れるなんてことは――」

リヴァイ「割り切る必要なんてねえよ。忘れるなんて、もっての外だ。
だからお前は、お前がお前の中で、この結果が駄目だったというなら、自分の一番深いところに、
彫り込んでやれば良い。もしも自分が道を外れようもんなら、脚の腱からズタズタに千切れるくらいのをな」


リヴァイ「エレン、俺は思う。俺たちはそうやって、間違いなく良い方向に向かってきていると、な。戦い散った仲間たちが
無駄なんて事は、ただの一つも無かった。兵士だけじゃない、どんな人間だろうと、そうした人たちが死に際に託した想いが
きっと……俺たちの中にある。俺たちはそれに報い、そして彼らを導く義務があるだろう。平和って、奴にな」

エレン「俺も……そう思います!誰の死も、無駄なんてことはなかった!!
必ずそれを活かして、人類の進撃は、絶対に終わらないと!!
どんなに蹴散らされようと、何度でも何度でも必ず蘇って!!」

エレン「奴らを駆逐し尽くすまで!!!俺は戦い続ける!!!」

リヴァイ「……思いの外語っちまったな……エルヴィンが来るまでの暇つぶしにでもと思ったんだが……
エレン、今日した話は、忘れろ」

エレン「いいえ!!絶対に忘れません!!!たとえ何度死のうと!!!兵長の熱い想いは絶対に潰えません!!!魂に刻み込みました!!!
たとえ何度生まれ変わろうとも何度も思い出して何度でも兵長と!そして皆と!!共にこの世界を生きます!!!」

リヴァイ「止めろ、消せ。いや、俺がやる。どうせまた生えてくるんだろう、てめえを虫けらくらいに切り刻んでやればいやでも忘れちまうだろう。よし、エレン、動くな。
今すぐ楽にしてやる」

バタンッ

ミカサ「エレン」


リヴァイ「……!」

エレン「ミカサっ……!アルミン!」

アルミン「あはは……どうも……」

ミカサ「エレン、これで涙を拭いて……」

エレン「わっ、ちょっ、自分で拭ける!!」

リヴァイ「……エルヴィン……てめえ……!」

エルヴィン「いやぁすまない、少々手間取ってね」

リヴァイ「にしては随分タイミングが良いじゃねえか……!」

エルヴィン「うん?何、たまたまだよ。安心したまえ、私たちは何も聞いていないからな」

リヴァイ「盗み聞きとは……良い趣味してやがるなぁ、エルヴィン……!」

エルヴィン「それよりも会議を始めよう。此処で憲兵隊が来て計画が潰えれば私は足の腱を切らねばならないからな」

リヴァイ「そんなに死にてえなら今すぐ殺してやるよ……!」

エルヴィン「私のことは導いてくれないのか、平和に?」

リヴァイ「ぶっ殺してやるから一人で勝手に行きやがれ!!」


アルミン「(……いつか、人類が勝利するまで、僕らは幾度となく戦いを挑み、全てを犠牲に捧げる……
それは人の屍で作った橋を渡るようなもので、
後ろ指をさされるような、悪足掻きに違いなく、酷く滑稽で、不毛のように見えるかもしれない……

だけど、無駄なんてことはない。

そうしなければ守れなかったモノがある、
そうしなければ知ることの出来ない美しいモノがある、
そうしなければ人として進むことも許されない。
命を賭した人たちが、全部教えてくれた。
残していってくれたモノはしっかりと受け継がれている。
それは僕らが何よりも欲していたものだ。しようとも、僕らは絶対に、それを無駄になんかしない。

なぜならそれは、僕たち人類の未来なのだから。

だからこそ……僕らは何度でも戦い、倒れ、その度に、立ち上がる……!


僕らの進撃は、終わらない……!)」


~終わルミン~

実は単純な平行世界じゃなくて歴史を繰り返しているんじゃないか
本編は天文学的確率での再現なんじゃないのか、という妄想を
最初はホラーっぽくしようと思ったけど伏線とか張れない安寧家畜知能が
なんとか頑張った結果出来たやおい話です

誰か調査兵団がメイド喫茶開くss書いてください。お願いします

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