ドラえもん「音痴の劣等と優越」(29)

俺のものは俺のもの

お前のものは俺のもの

力に頼りすぎて見失う
そんな事ばかりじゃないけど

でも

思いつくまでも、俺は力で生きていた。

もともと身体は大きい方だった

それに伴って力もついてきた

小学生の頃にはガキ大将の異名から

ジャイアン、と呼ばれるようになった。
まぁ、悪い気はしなかった

嫌なことがあったらすぐに解決できた
怒ればよかったから

スネ夫からおもちゃを奪い
のび太から道具を奪う

弱みといえばかあちゃんぐらいだ

そんな俺は喧嘩に負けたことなどなかった
いや、

まず誰も俺に挑んでなどこなかった
もし最強なんて言葉があったら

当時の俺は最強だった。

そんなある日だった
俺は静香ちゃんからあるモノを奪った

いつも通りに、静香ちゃんは引き下がり
スネ夫達も何も言えずにいた

そういつも通り
でも、あいつだけは違った

「それは静香ちゃんの大切なものだ!」

そう言い俺に殴り掛かってきた

初めてのび太が俺に刃向ってきたのには驚いたが
俺も意地になっていた

返り討ちにした
でも

あいつは引き下がらなかった

食いつき、投げ飛ばされ
それでも引き下がらず、また殴られ
蹴られうずくまり

メガネが割れた時に俺も我に返った

「やばい、本気で殴りすぎた」、と

小学生の力で死ぬことはないだろうが
それでも、のび太ほど貧弱なやつなら病院送りになりそうなほど殴っていた

呻いて転がるのび太
やっちまったのは俺だが、ちょっと心配してしまった

だからと言って「大丈夫か」なんて声をかけることはできない
そう、今思えばいらない

ただの意地だ

俺は自分が何をしたのかわからなくなってしまった

奪ってきた
身を、時間を、モノを、

傷つけ、からかい、諦めろとは言わずに屈服させる
それが俺の普通になっていたからだ

「、、、、ごめん」

静香ちゃんにモノを返し、俺は家へと帰った

のび太に投げかける言葉、
スネ夫に謝るための言葉、

思いつかない
そんなことしたことが無かったから

そう、俺はジャイアンでいた、ずっと、、、、

次の日
いつも通りの日常に戻っていた

誰も変わらない

でもわかる
今まで気づかなかった事


みんな、俺を恐れている

当時の小学生の俺には重すぎた

それについて考えてしまった俺には
もう、その事を楽観的に思うのは無理があった

馬鹿な俺でもわかる
もう戻れないのだ

俺がのび太にやってしまった事
スネ夫にやってきた事









「後悔した。」

放課後
いつも通り、そういつも通りに終わった
みんなと笑い、みんなと話
のび太をからかい

そうやって終わった。

それが怖かった
それを普通にしてしまった自分が、悲しかった

ある日俺は空地の土管の裏で昼寝していた
何も考えていなかった

眠気に負けて寝てしまった、
夢は見ていたかわからない

のび太「ジャイアン?」

ジャイアン「、、、、のび太」

のび太「どうしてこんなところで寝てるの?」

ジャイアン「なんとなくだよ」

のび太「そっか、」

ジャイアン「のび太、、、」

のび太「ん?」

ジャイアン「その、、、悪かったな、、、あんなに殴って」

のび太「ううん、僕こそ、殴り掛かってごめんね」

辛かった
謝ることがじゃない

のび太は許してくれる
謝れば、いつもの関係に戻ってくれる

そうわかってしまうのが
辛かった

ジャイアン「俺は、、、」

「後悔してるんでしょ?」
、、、、あぁ

「でも、大ジョブだよ」

え?

「まだ間に合うから」

のび太「みんな、ジャイアンの事が好きだから」

ジャイアン「そんなこと、」

のび太「僕達をいざって時に助けてくる、守ってくれるジャイアンを知ってるから」

ジャイアン「のび太、、、」

のび太「あ、でもジャイアンリサイタルは勘弁してほしいなぁw」

ジャイアン「あ、この野郎!」

痛みを伴った

身体の大きさに力がついてきたわけじゃない

今、俺は初めて力ができたことに気づいた
弱いけど確かに

心に対して痛みを伴い
助けてくれる友達がいて

その友情を守る力を、今感じた

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