提督「退役後喫茶店を開いた」 (27)

提督「……のは良いんだが退役したのにまだ提督って呼ばれるのはどういう了見だろう」

霞「何ぶつぶつ言ってるのよ」

提督「お、おう……霞、帰ってたのか」

霞「ただいまって言ったじゃない。何も聞いてなかったわけ?」

提督「いや……すまん」

霞「ふん、別に良いけど……」

提督「学校はどうだ? 勉強、わかるか?」

霞「あのねえ。私、元軍人よ?」

提督「それもそうか……」

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霞「着替えてくるわ」

提督「いってらっしゃい」


提督(深海棲艦との戦いが終わって早一年……)

提督(艦娘たちはほとんどが解体され、兵器から普通の女の子へと戻った)

提督(いきなりの解体が強行されたのは「意思ある兵器」に恐れをなしたからだと聞いている)

提督(彼女達を知る身からすれば何を巫山戯たことを、という話だが……)

提督(彼女達の直属の上官、そしてその人心を掌握していると見なされた俺もまた軍を退くこととなった)

提督(なんやかんやで、俺は普通の女子小学生となった霞を引き取り暮らしている)

提督(……普通の女子小学生ってなんだよ)

霞「それで、司令官」

提督「おいおい……司令官はよせよ。俺も霞も、もう軍人じゃないんだから」

霞「あら。じゃあクズをお望みかしら?」

提督「よしてくれって」

霞「冗談よ」

提督「クズ呼ばわりが冗談になる日が来るなんてなぁ……」

霞「文句あるわけ?」

提督「まさか。でも時折懐かしく思う時はある」

霞「司令官、もしかしてそういう趣味があるの?」ブルッ

提督「どういう趣味か一度問いただしてみたいなおい」

提督「……じゃ、なくてさ。新米の頃霞に叱咤されたからこそ、今の俺があるんだろうなって」

霞「な、なによそれ……」

提督「霞は一見口が悪そうに思ってしまうけど、違ったんだよな」

提督「あれは悪口なんじゃなくて、いわゆる愛の鞭なんだったんだろうなって」

霞「んなっ……!」

提督「ありがとな」ナデナデ

霞「あ、頭を撫でないでったら……! 子供じゃないのよ!」

提督「はい、今日の晩御飯はカレーライスだ」コトッ

霞「ん……」

提督「あれ、カレーライス好きじゃなかったか?」

霞「す、好きだけど……って、いや……えっと」

提督「子供っぽいって?」

霞「い、言わないでったら!」

提督「いいじゃないか、カレーライス。俺は好きだよ」

霞「そう……うん、そう……ね、ありがと……」

提督「召し上がれ」

霞「うん」

提督「……」

霞「司令官」

提督「ん?」

霞「司令官は食べないのね」

提督「ああ、うん……俺は足柄を待ってようかなと」

霞「……先に食べてるあたしが酷いみたいじゃない」

提督「いいんだよ。さっき霞の腹が鳴ったの、聞き逃してないからな」

霞「忘れなさいよ!」

提督「はいはい……」

提督(俺はいま喫茶店を営みながら霞と共に暮らしているが)

提督(実は足柄も共に暮らす同居人である)

提督(飢えた狼と渾名され、敵深海棲艦相手に常に勇猛果敢に戦った重巡洋艦)

提督(彼女には戦場で幾度となく助けられたが、実はそれ以外でも面倒見がかなりいい)

提督(解体が決定し塞ぎがちだった霞を引き取るよう、俺に勧めたのは他でもない彼女なのだ――)



足柄「ただいまー……」


霞「おかえりなさい」

提督「よ、おかえり」

足柄「ふう……疲れた……。提督、なにか冷たいものを……」

提督「はいよ」

足柄「ありがとうございます。……ん、んぐっ……ぷはぁ!」

霞「いい飲みっぷりね」

足柄「あぁ、生き返った気持ち!」

提督「それはよかった」

足柄「あら……この匂い、カレーね。晩御飯はカツカレー?」

提督「足柄はそう言うと思って用意してるよ」

霞「えっ」

足柄「ん?」

霞「な、なんでもない……わよ」

足柄「ははーん……霞ぃ、カツが食べたかったのね~?」

霞「べ、別にそんなことないったら」

提督「言ってくれればいつでも用意するよ」

提督「言いたいことがあるなら目を見てはっきり言わなくちゃな」

霞「あ、あんたに諭される日が来るなんて……屈辱だわ……」

足柄「素直が一番よー、素直がねー」

霞「ふん……カツ、いただけるかしら?」

提督「はいはい、喜んで」

霞「……どうもありがと」

提督「足柄も、はい。カツカレー」

足柄「これで明日も勝つわ。よっし、いただきます!」

足柄「霞、学校の方はどうなの? 順調?」

霞「司令官と同じことを聞くのね。いたって普通よ」

足柄「そう、ならいいのだけれど。なにかあったら相談しなさいよ? どーん、と任せなさい」

霞「はいはい。足柄の方はどうなの。仕事が忙しいみたいだけど」

足柄「そうね……忙しいのは確かだけど、充実してるわ。戦場だけが戦場じゃないって感じかな」

提督「なぞなぞみたいだな」

足柄「ふふ、まあ……提督絡みの戦場では私たちが一歩リードかしらね?」

霞「……なんのことだか、わからないわね」フイッ

足柄「素直が一番よ?」

霞「う、うるさいわよ……」

足柄「ごちそうさまでした!」

霞「ごちそうさま」

提督「はい、お粗末さま。さて……もう風呂も沸いてる頃だろうし、二人とも入ってきたらどうだ?」

足柄「そうですね。それじゃ、お先にいただきます。霞もいらっしゃいな」

霞「はいはい……」

提督「こうして見ると二人は姉妹みたいだな」

足柄「姉妹か……ねぇ霞、お姉ちゃんって言ってみない?」

霞「言わないったら」

足柄「ちぇっ」

足柄「はぁ、さっぱりした」

霞「そうね……」

足柄「そういえば明日は私休みなんだけど、霞は?」

霞「あたしも休みよ」

足柄「そう。それじゃ提督にどこかへ連れて行ってもらいましょうか」

霞「へ?」

足柄「折角の休みなんだから、リフレッシュしなくちゃ!」

霞「……」

足柄「どこか行きたいところはないの?」

霞「特には……思いつかないけど」

足柄「そう。ま、ゆっくり考えながら寝るといいわ。提督もきっと霞と出かけたいはずよ」

霞「……違うわね」

足柄「そうかしら」

霞「私だけじゃなくて、足柄も一緒によ」

足柄「あら……。あらあら、霞ってば、本当に可愛い子ね、あなた!」ギュッ

霞「あ、暑苦しいったら……」


提督「あれ、何してるんだ二人共。寝ないのか?」

足柄「霞分の補給中よ」

霞「司令官、見てないで助けなさいよ……」

提督「ふーん……俺も霞分補給しようかな」

霞「だ、ダメよ!」

提督「おっと……振られたか」

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