この前ね、男の人から電話が来たのよ(17)

誰か聞いたら『母さん、俺だよ
…』だって。私は息子のマサヨシだと
直ぐにわかったから率直に聞いたの『
どうしたの?マサヨシ…何かあったの
?』って…そしたらマサヨシは『言いに
くいんだけど…お金貸して欲しいんだ…
』 当然理由を聞くわよね?で、返って
きた答えはこれ。『変な業者に騙された…』
あっさり100万円払ったのよ。
そしたら後で私、妙なことに気が付いたのよ。子
ども居たっけ…?そう!子どもは居な
かったの!そこでようやくわかったの
よ!“騙されたんだ!!”って…私った
ら流されやすくて嫌ねもう。私はまん
まと100万円という大金を失ったわけ。
」…と、いう話を旦那にしたのよ。そ
したらね主人は言ったのよ『マサヨ
シのことまで忘れたのか…?』

私『だから…マサヨシなんていないのよ!騙された話!』

主人『いつの話だ?』

私『最近よ』

主人『俺は定年退職した…お前とずっと家にいるがそれはいつの話だ?』

私『それは…電話がかかってきたのは4日ぐらい前で支払ったのは一昨日よ』

主人『そんな電話は無かったぞ?いいか?雅義は私達の息子の名前だ!母さんは認知症なんだ!』

私『また冗談ばっかり』

主人『お前…』



私『それに母さんって私のことですか?私は結婚をしてないしあなたはお客様なのに気が早いですよ』

主人『』

私『お茶でもお出ししますから少しお待ちください…』

主人『冗談を言ってるのはお前の方だろう?』

私『そんなまさか…』

主人『なんだ…今日は四月馬鹿じゃないか…性質の悪い嘘だ』

私『はあ…』

主人『』

私『すみませんね…お茶がお口に合わなかったでしょうか?』

主人『ちょっと待ってくれ母さん…雅義を呼ぶ…』

主人『雅義…母さんがお前の…』

雅義『どうしたんだ親父…お袋がどうした』

主人『(ダメだ…!こんなこと…こんな残酷なことを言えない!!)』

主人『な、なんでもない…』プチッ

雅義『おい親父!話を聞かせろよ親父!…おい!!』

雅義『クソッ』ガチャンッ



雅義『今日はエイプリルフールか…』

雅義『(あの親父に限って四月馬鹿なんてあり得ない…お袋の身に何か…何かがあったんだ…!)』

主人『(俺は…俺はどうすれば良いんだ…!)』








涙を流す主人。その理由を知る術もない“私”。そして…

早朝、バイクを飛ばす男がいた。


ブウゥゥゥゥン



高速道路を過ぎ故郷に辿り着いた。澄んだ空気。野鳥のさえずり。変わらなさすぎる風景に包まれていたその男はそんなことにもお構い無く…いや、構う余裕がなかったのであろう。おもむろにヘルメットを外す。そして戸を開けた。ガラガラと懐かしい音がした。




雅義『ただいま』

主人『!』

雅義『親父…』

主人『…久しぶりに帰ってきたな』

雅義『お袋は?』

主人『n、寝ている。そっとしてやってくれ』

雅義『相変わらず…嘘が下手なんだな』

主人『お、ぉい!』







テレビ『なんでやねん』ハハハ

私『ハハハハ』

私『あら、今日はお客さんが2人も来たのねえ…』

雅義『…!!』

主人『ま、雅義…!』

雅義『冗談だろ?お袋は冗談が好きだったよな…?親父と違って…』

主人『違うんだ!ま、舞ってくれ!!母さんは…』

雅義は総てを悟ったように天高く舞い上がった。

主人『遂に舞った…のか?』

雅義『ウオオオォォォォォォォォオ』

主人『頼む…!』










急降下する雅義!落下地点に立っている“私”の運命は…!?

私『ッ!!?』

雅義『ハアァァァァァァァァァァ…』

私『(ダメ!殺られる…!)』

雅義『ドゥラアアアアアアアアアアア!!!』

私『(これは…走馬灯…?)』




甦る思い出。記憶。そうこれで全てを取り戻した…それなのに無慈悲に迫り来る肉弾。




私『(私は息子の手によって死ぬ…最後に解って良かった。自分を。私は私なんだ。いい人生だった。祈りを。)』

雅義『』スッ…

私『…?』チラッ

雅義『今思い出せただろ?ようやく“お袋の顔”に戻って安心した』スタッ

私『まさか…!さっきの攻撃は私に走馬灯を見せるため…!』

雅義『ああ…親父が考えた作戦だぜ?』

主人『今の私にはかつてのように“天空の舞い”を出すだけの体力は残されていない…だから若い雅義にを頼んだんだ。』

雅義『親父が昔教えてくれたお陰だよ』

主人『それを今でも出来るということは俺でなくお前の日々の鍛練の賜物。』

私『…ありがとう』

4月の2日。こうして私は大切なものを取り戻すことができた。これからも私は…この家族と…!












                            終わり

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom