向日葵「夢で逢えたら」 (20)

向日葵(う……眩しい……)

向日葵(もう朝ですの……)

向日葵「ん……」

向日葵「……」

向日葵「……」

向日葵「……あれ?」



気がつくと私はお花畑に寝転がっていた。

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向日葵「あ、あれ、私……昨日は勉強をして、ちゃんと布団に入りましたよね?」

向日葵「どうしてこんな所に……」

向日葵「……」

向日葵「……」

向日葵(お花畑……ですけど、花の匂いも草の匂いもしませんわ)

向日葵(という事は……これは夢?)

向日葵(お花畑の夢を見るなんて、まるで子供みたいですわねぇ)ハァ


「おーーい!」


向日葵「?」

向日葵(お花畑の向こうから誰かが走ってきますわ)

向日葵(あれは……)


京子「ひまっちゃーーん!」


向日葵「歳納先輩!?」

京子「おう!」

向日葵「と、歳納先輩がどうしてこんな所に?」

京子「どうしてって……そんな事、私が聞きたいってば!」

向日葵「そ、それはそうですが……」

向日葵(というか、夢ですし、別に誰が居ても不思議じゃないですわよね)

向日葵「あ……」

京子「ん?どったの?ひまっちゃん?」

向日葵「い、いや、意識……が……」フラッ

京子「おーい、ひまっちゃーん?」

向日葵(意識が遠く……浮き上がるような感じが……)

向日葵(ああ、これはきっと目が覚める感覚……)

向日葵(目覚ましベルの音が……聞こえ……)

京子「ひまっちゃーん!」

向日葵「なん……で……す……か……」

京子「四月に雪が降る事もあるよね」

向日葵「は……あ……?」

向日葵(歳納先輩……何を……言って……)

向日葵(……)

ピピピピピピピピピピピ


カチッ


向日葵「んっ……んーっ!」ノビー

向日葵「ふう、良い朝ですわー……」ゴロン

向日葵(けど、何だか変な夢を見ましたわねえ)

向日葵(お花畑と、歳納先輩の夢)

向日葵(どうしてあんな夢を見たのでしょう)

向日葵「……」

向日葵「……」

向日葵「まあ、夢ですし、別に何があっても不思議じゃありませんわよね」

向日葵「さて、学校へ行く支度をして櫻子を起こしに行かないと」ゴソゴソ

楓「あ、おねえちゃんおはよう」

向日葵「おはよう、楓、もう起きてたんですの?」

楓「うん、今日は早く目が覚めたの」

向日葵「そう、今ご飯にしますから、ちょっと待っててね」

楓「うん」

向日葵(昨日の晩御飯の残りがありましたし、あれを温めて……)


「ひまわりー!でてこーい!」


向日葵「え、櫻子の声?」

向日葵「まだ6時半なのに?」タタタッ

向日葵「どうしたんですの櫻子、朝自力で起きるなんて珍しい」

櫻子「朝は花子に起こして貰ったの!それよりまだ着替えてないのかよー」

向日葵「え?」

櫻子「昨日、杉浦先輩が朝7時に集合するようにって言ってたじゃん」

向日葵「……あ!」

櫻子「忘れてたの?もー向日葵は駄目だなぁ!」

向日葵「くっ……た、たまにはそんな事も有りますわよ!」

櫻子「ほらほら!そんな事より急いで!はやくはやく!」

向日葵「わ、わかりましたわよ!」タタタッ

楓「おねえちゃん?」

向日葵「あ、楓すみません、ちょっと急いで学校に行かなくてはならなくなりまして」

向日葵「昨日の晩御飯を温めて、食べておいて貰える?」

楓「うん」

向日葵「火の元には注意してね?」

楓「だいじょうぶだよ、おねえちゃん」ニコ

向日葵「楓は良い子で助かりますわ」ニコ

こうして、ドタバタと忙しい……それでいて楽しい日常が始まった。


向日葵「ふー……何とか生徒会の仕事には間に合いましたわね」

櫻子「向日葵が寝坊して遅刻しかけたけどね」

向日葵「寝坊じゃありませんってば」

櫻子「はいはい……あ、歳納先輩、おはやー!」ブンブン

向日葵「あら、歳納先輩、おはようございます」ペコ

京子「おっはよー、2人とも早いねえ」

櫻子「生徒会の仕事があったんっすよー」

京子「そっかー、ご苦労様!ご褒美に飴ちゃんあげよう」

櫻子「やったぁー!」

向日葵「あ、ありがとうございます」

向日葵(そういえば、歳納先輩の夢を見ましたわね)

向日葵(変な夢でしたわ)

京子「四月に雪が降る事もあるよねー」

向日葵(そうそう、確かそんな歳納先輩が事を最後に……)

向日葵「……」

向日葵「……ん?」

京子「おー、これは通じた……と考えていいのかな、ひまっちゃん」

向日葵「え?」

櫻子「んー?どったの向日葵」

向日葵「と、歳納先輩?どうしてその言葉を」

京子「いやー、昨日寝る前に夢の中で仲間と一緒に冒険するって漫画を読んだんだけどさ」

京子「その直後に見た夢でひまっちゃんが出てたんで、もうビックリよ」

京子「で、もしかして一緒の夢見てるんじゃないかって閃いて、それで夢の中で暗号を言ってみたの」

向日葵「あんごう……」

京子「そ、夢の中の言葉を相手も覚えてるなら、夢が共有されてるって事の照明になるでしょ?」

向日葵「そ、それじゃあ歳納先輩も昨日、あのお花畑の夢を!?」

京子「うん」

向日葵「そ、そんな事が……」

京子「いやあ、私もビックリしたよ~」

向日葵(けど、確かにあんな変な言葉を偶然言い当てるなんて出来るはずが無いですわ)

向日葵(という事は、やっぱり本当に昨日見た夢は共有されていたのでしょうか……)

櫻子「ぶー、何言ってるか判んないってば!」

京子「櫻子ちゃん、どうとう」ナデナデ

櫻子「わあい、撫でられた♪」

京子「ひまっちゃんもさ、あんま気にしなくてもいいと思うよ~」

向日葵「は、はあ」

京子「友達同士で一緒の夢を見るなーんて、確かに有り得なさそうだけど、何かがかみ合ってそうなっちゃう事もあるんじゃない?」

京子「四月に雪が降るみたいに」

向日葵(四月に雪が降るみたいに)

京子「じゃ!私はもう教室に行くね~!」

向日葵「あ、はい」

櫻子「また部室で会いましょうね~」

京子「おーう、お菓子用意して待ってるよ~!」



向日葵「……櫻子、最近生徒会の仕事が終わった後に居なくなってると思ったら、ごらく部に顔を出してるんですの?」

櫻子「うん、居心地いいしね~」

向日葵「まあ、まったりした空気で確かに居心地は良いと思いますが……」

向日葵(私の事も誘ってくれてもいいのに)

櫻子「んー?どうかしたの?」

向日葵「いえ、別に……さあ、私達も教室に行きますわよ」

櫻子「おう!」

あかり「櫻子ちゃん向日葵ちゃんおはよう~」

ちなつ「おはよ、2人とも」

櫻子「あっかりちゃーん!おっはようー!」ダキッ

あかり「あはは、櫻子ちゃん朝から元気だねえ」

櫻子「ううー、これでも元気3割引きなんだよー」

あかり「何かあったの?」

櫻子「あのねー、朝から生徒会の仕事があってさー」

あかり「うわあ、櫻子ちゃん達偉いねえ」

櫻子「でしょ?ほめてほめて!」

向日葵「櫻子、もう先生が来ますわよ」

櫻子「うわ、やべ、宿題まだだった」

向日葵「もう……」

向日葵(何時もと同じ日常)

向日葵(何時もと同じ時間)

向日葵(一つだけ違うのは……あの夢の事でしょうか)

向日葵(歳納先輩と同じ夢を見た、ただそれだけなので、歳納先輩が言うように気にする事はありませんが)

向日葵(……)

向日葵(……)

向日葵(……今夜も、同じ夢を見るのでしょうか)

目を開けると、またあのお花畑にいた。


向日葵「あー……またあの夢ですわね」

向日葵(歳納先輩もいるのでしょうか)キョロキョロ


京子「~♪」


向日葵「いましたわ」

向日葵(何をなさっているのでしょうか……お花摘み?)

向日葵「歳納先輩?」

京子「!」

向日葵「また一緒の夢を……」

京子「ひまっちゃんだー!やっほうーい!」ダキッ

向日葵「え、ちょ、歳納先輩!?」

京子「ひまっちゃん、見て見てほらほら!」

向日葵「な、なんですか?」

京子「四つ葉のクローバー!こんなに沢山!」

向日葵「え、あ、はい」


1.2.3.4……


向日葵「うわあ、ほんとに沢山」

京子「でしょー?」

向日葵(まあ、夢ですし、そういう事も有りますわよね)

京子「楽しい!何か楽しい!あはははは!」

向日葵「歳納先輩、ハイテンションですわね」

京子「だって四つ葉のクローバーだよ!?幸運の証だよ!?」

向日葵「は、はあ」

向日葵(夢だから、とか言うのは無粋なのでしょうね、これは)

京子「ほら!ひまっちゃんも一緒に摘もう!」グイッ

向日葵「あ、はい」

向日葵(歳納先輩、何だかとても元気ですわね)

向日葵(夢を楽しんでらっしゃる感じがしますわ)

向日葵(確かに、このお花畑は綺麗ですし、良い天気ですし)

向日葵(私ももう少しはしゃいで見ても良いのかもしれませんわね)

京子「~♪」

向日葵「はい、歳納先輩、こちらにも沢山ありましたよ」

京子「ありがと!ひまっちゃん!」

向日葵「これだけ集めれば何か出来そうですわねえ」

京子「んー、じゃあひまっちゃんの為に四つ葉のクローバーで髪飾りを作ってあげる~」

向日葵「……髪飾り?私の?」

京子「そ」

向日葵「私の為に、ですか?」

京子「もー、変な事聞かないでよ、他にいないじゃん」

向日葵「あ、ありがとうございます」

向日葵(……)

向日葵(ああ、何故だかとても嬉しいですわ)

向日葵(歳納先輩からは飴とか頂いた事があるのですが)

向日葵(その時よりも、ずっと嬉しいですわ)

向日葵(夢だから?)

向日葵(それとも、2人きりだから?)

向日葵「あ……」フラッ

京子「ん?どったのひまっちゃん」

向日葵(ああ、意識が浮き上がる感覚が……)

向日葵「いえ、もうそろそろ……目覚まし時計が……」

京子「ひまっちゃん?」

向日葵(目が覚めてしまう……)

向日葵(歳納先輩から、まだ受け取ってないのに……)

向日葵(あれだけ頑張って集めた四つ葉の……クローバーが……)

向日葵(………)

向日葵(……)

向日葵(…)

ピピピピピピピピ


楓「お姉ちゃん、起きて、もう朝だよ」ユサユサ

向日葵「んんー……くろおばあが……」

楓「くろーばー?」

向日葵「むにゃむにゃ……」

楓「お姉ちゃん、せっかく起きたのにまた寝ないでぇ」ユサユサ

向日葵「あ……」

楓「おはよう、お姉ちゃん」

向日葵「おはようございます楓……」ゴシゴシ

向日葵(私、また夢を見てましたね)

向日葵(歳納先輩と同じ夢を)

向日葵(なんだか不思議ですわ)

楓「お姉ちゃん?」

向日葵「あ、ごめんなさい楓、今、ご飯作りますね」

楓「うん、ありがとお」

楓のごはんを作って、櫻子と一緒に登校する。

こうして、ドタバタと忙しい……それでいて楽しい何時もの日常が始まった。



向日葵「おはようございます」

ちなつ「おはよう、向日葵ちゃん、櫻子ちゃん」

櫻子「あかりちゃん、おっはよー!」

あかり「おはよう!」

櫻子「ねえねえ、あかりちゃん、昨日のアニメ見た?」

あかり「うんうん、見たよぉ!可愛かったねえ!」



一つだけ違うとすれば、最近、櫻子が赤座さんと妙に仲が良い事でしょうか。

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