勇者「君達が王様より推薦された仲間か! よろしく頼むよ!」(34)

魔王「フハハハハ! よくぞ来た人の子よ!」

魔王「ここまでの武勲褒めてやろう! だがしかぁし、お前達はここで我が手によって滅びるのだぁ!!」

戦士「なんて……威圧感なんだ」

盗賊「まずいね……こりゃあ死んだかもね」

剣士「おまけに玉座に禍々しいオーラの宝玉……」

僧侶「まさかあれから魔力が延々と供給されていたりしたら……」

魔王「ふんっこんなものはただの飾りよぉ……人間であるお前達では触れる事もできんし」

魔王「そもそも我の力を増幅するような作用も無いのだ」


勇者「君達が王様より推薦された仲間か! よろしく頼むよ!」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1365938859/)


勇者「……」

戦士「くそ……皆、気合を入れろ!!」

勇者「……」スタスタ

盗賊「お、おい勇者っ!」

僧侶「き、危険すぎますよ!」

魔王「んん~? 地べたに落ちた士気を取り戻す為に自ら前に出たか?」

勇者「いやぁこの位置でギリギリ届くからね」コウコウ

盗賊「……ちょ、え、その宝玉……え、いつの間に?」

僧侶「あ……剣士さん、魔石が!」フワッ

盗賊「勇者の方に……?」スィー

剣士「……!」ドクン

剣士「な、何だ今の胸の高鳴り……」

勇者「それは神の啓示が正しく君を示したのさ」

勇者「神の啓示を受けた者……今回の啓示は勇者。その者に与えられるのは戦いの使命と」

勇者「魔物に対する絶対的な力、退魔の力だ」

戦士「お、おい……勇者?」

魔王「」ガタガタブルブル

勇者「私の言っている話、お前には分かるだろう?」

僧侶「ゆ、勇者……様?」

勇者「ふぅ……やっとここまでこれたよ」ビシィバキン

戦士「な、宝玉と魔石が自然に割れた……?」

勇者「君達も本当に頑張ってくれた。心から感謝しよう」ウゴゴゴ

剣士「何が……起こって」

盗賊「勇者からとんでもない魔力が……あんた、人間じゃないのか?」

勇者「……ああ」ニヤリ

勇者「その通り人間ではない……そうだろう? 魔王よ?」

魔王「う、あ……あぁ」ガタガタ

魔近「なん……馬鹿な」ガタガタガタ

側近「今、今まで……何処に?!」ガクガクガク

勇王「人間として生活をしていたよ」

魔王「最も、人間ほどに見た目が成長しないからな。世界各地を渡り歩いたさ」ゴゴゴゴ

剣士「つ、角……勇者、様」

魔王「四人を騙す形になった。その非礼を詫びよう」

盗賊「待てよ……どういう事だよ……あんた、何者なんだよ!」

魔王「我は魔王……百年ほど前に就任し、人間への攻撃を中止させ和平に尽力した者だ」

戦士「……何が起こっているんだ?」

魔王「まあ、説明してやるにしてもまずはこいつだな」

魔王「暴言なら許そうものだが……お前のとった行動は立派な反逆だ」

側近「ひぃぃぃ! お許し下さい! 魔王様!」

魔王「私の考えは知っているだろう……その上での行動だ。責を取れ」コォォォ

側近「あぎぎぎ、うぎぎ! あががああああああ!」ゴロゴロ

盗賊「いきなり地べたでのた打ち回りだしたけど大丈夫なのかい?」

魔王「構わんさ……さて話だったな」

魔王「と、その前に」カッ

メイド「こ、この魔力!」バタン

兵士「お、おお……魔王様! よくぞご無事で!!」

魔王「各地に伝令を。人間との争いは終わった。即時撤退せよ。人間側に対しては私が行動しよう」

魔王「メイドは食事の準備を。ああ……流石に体が冷えたな。熱い茶を先に用意してくれ」

魔王「さて何処から話そうか……長くなるが時事系列でも良いか?」

戦士「あ、ああ……」

魔王「あの砦の魔物が話したとおり、二十年ほど前に侵攻が始まった」

魔王「あの時、側近の策略で大部分の魔力や力は奪われ、さきほどの宝玉に封じられてしまったのだよ」

魔王「奪われる魔力を少しでも分散し回収しようとしたが、できたのは魔石一つに更には奪われる羽目となった……」

剣士「で、侵攻の指揮はそちらに転がっている」ゥァァァ

魔王「元は私の側近だったが酷いタカ派でな。よく影で私の事を日和見だと言っていた様だ」

戦士「知っていて無視したのかよ」

魔王「なに、言うだけならタダだ。それとも私に対する失言を全て許さない方針のほうがいいか? なあ、二人とも」

戦士「……っは」ビク

盗賊「……いや、今のままでいいんじゃないか?」フルフル

僧侶「戦士さん……盗賊さん……」

剣士「二人とも……」

魔王「私の力は時間を巻き戻す事、事象に干渉し操る事……それと魔王となった者だけが使える精神破壊魔法だ」

魔王「魔法の効果はそこに転がっている男よ」

僧侶「あの、その力ってあの砦で聞いた話そのものでは……」

魔王「あらゆる、などとばかげた話ではないし、今までの私はかなり制限された中にいたからな」

魔王「まずは時間だが魔界で日付が変わる時に世界の事象は確定する。一日を超えて巻き戻す事はできん」

剣士「魔界……人間界との多少の誤差があると聞くが」

魔王「こちらだと夜明け……だいたいにして五時ぐらいであるな」

魔王「巻き戻し自体は、極々僅かな魔力消費で済むが……私は人間と違って大量の魔力の回復には、魔界に行く必要があるのでな」

魔王「そして事情に干渉する力……基本的に大量の魔力が消費される」

魔王「行える事は様々だ。精神を破壊するもよし、瀕死にしてやるもよし」

魔王「与えた事象を確定させて時間を巻き戻す事もできる。最も今までの私はかすり傷一つ確定させられない程に弱体化していた訳だが」

盗賊「どっかの砦の魔物が戦意喪失してたのってどういう原理よ」

戦士「そういやあいつ、急に怯えだしたよな」

魔王「やつは即死魔法が使えるが為、通常の戦闘ではどうしようもなかったからな」

魔王「四人が魔法で殺された後、精神破壊魔法をかけて確定せずに時を戻す、それを繰り返した」

僧侶「はあ……?」

剣士「条件付けで恐怖を……しかしそれは確定されていないはずだが……」

魔王「完全な時戻しではないのだ。私がその未来を知ったまま戻っているのが何よりの証拠だ」

戦士「おいおい、最強じゃないか」

魔王「そうでもないな……もしも相手が強靭な精神を持っていたとすれば」

魔王「今現在、自身が健在している事を安全な証拠とし、挑み続けてくるだろう」

魔王「それは……逆に言ってしまえばもう、勝ちようの無い状況なのだ」

盗賊「即死魔法に対し……じゃあそれ以外の攻撃であたしらを倒し始めたら?」

魔王「……恐らく負けが確定するな」

魔王「複雑なものや複数の条件付けは時を戻した際に相手への影響も強まる」

剣士「……相手もまた記憶が残ったまま時が戻る事も?」

魔王「そうなれば相手も気づくだろう。私の力では脅ししか出来ない事を」

魔王「そして根競べに踏み切るだろう……そうなれば時戻しすら有限である私の負けだ」

僧侶「そ、そんな……」

魔王「まあ……あれに耐えられる精神力を持った者はこちらにはいないのが幸いだ」

戦士「魔界にはいるのか?」

魔王「……彼等の内一人でも出てこられたらこの戦いそのものが終わっていた。そういう輩は総じて戦闘狂なのだよ」

剣士「……」ブルル

魔王「基本的に魔力さえあればだいたいの事がどうとでもなる、という意味では確かに最強なのだがな」

戦士「だいたいねぇ……」

盗賊「例えばどんなさ?」

魔王「そうだな……本当に大量の魔力を消費するが、神の目を欺く事や占術の結果を捻じ曲げる事もできる」

剣士「まさかそれは……信託が変わったのは」

僧侶「え……信託が変わっていたのですか?」

戦士「……元々は剣士のやつが勇者だったって話だ」

盗賊「そういえば……急に信託が変わってパニックになっていたわねぇ。牢屋からでも聞こえたわよ」

魔王「私が勇者であると神々を欺いた次に、お前達が召集されるように干渉してきたのだ」

戦士「な……俺達が?」

魔王「お前達は私を運ぶ力だ」

魔王「ほぼ魔力を失い、出来る事と言えば時間を巻き戻し未来の事象に対策を立てるぐらいだ。その私の」

魔王「剣と」ピッ 戦士

魔王「盾」ピッ 僧侶

魔王「魔法と」ピッ 剣士

魔王「鍵」ピッ 盗賊

魔王「誰一人とて欠ける事は許されなかった……欠ければここまで辿り着けはしまい」

戦士「いや、ある程度代替はできるんじゃないか?」

盗賊「あたしもそう思うわねぇ」

魔王「少なくとも私の見立てではそうであった。ただ単に戦力だけの話ではない」

魔王「互いの摩擦や思想、行動に対する評価……人間関係と言うのも大きな課題となる」

魔王「四人には私の方からも褒美を取らせよう」

魔王「魔王は討伐し、新魔王が即位した。その者は共存を志している、と国王には伝えて欲しい」

剣士「だが勇者様が帰ってこないのでは……」

魔王「直、城にやってくるとでも言えばいいだろう」

戦士「なんだか釈然としない終わり方だな」

盗賊「でもまあ……魔王なんぞと戦わなくていいってんならあたしは大喜びだけどもさ」

僧侶「そ、そうですね……さっきのアレを見せられては」

剣士「インターバル皆無で発動していたようにみえたしね……」

……
剣士「再び和平が結ばれたそうだ」

僧侶「勇者さ、魔王は今もお城に?」

剣士「らしいけど……流石においそれと会う事はできないだろうね」

戦士「なんか変な感覚だよなぁ」

盗賊「あたしらには共に旅した仲間だもんね」

戦士「あいつ……あんな戦えなかったが魔王なんだよな」

剣士「多分、そういった力さえも魔力の為に切り捨てたんじゃないだろうか?」

盗賊「その為のあたしらって事かねぇ……」

魔王「ここにいたか」ギィ

剣士「ゆ、魔王!」

戦士「お前……こんな所に来ていいのかよ」

魔王「私自身が戦争を起こしたわけではないからな。だがまあ果たすべき責はある」

魔王「四人には富を与えたい……というよりも人間である四人にしてやれる事はそれぐらいしかない」

戦士「じゃあ俺は魔界のすんげー強い装備な」

魔王「心得た」

僧侶「いいんですか?!」

魔王「此度の活躍、この程度であればお安い御用だ」

盗賊「あたしゃぁ保留で。魔王に貸し1、こいつはでかいぜ」ニヤ

魔王「よかろう、必要になった時に返そうではないか」

僧侶「え、えと、私も保留で……すぐには決められませんし」

魔王「まあ、普通はそうなるだろうな」

剣士「……」

魔王「剣士も決めあぐねているようだな」

剣士「ああ、それはな」

魔王「四人にはこの魔石を与えておく。何時でも魔王城に転移できる魔石だ」

戦士「お、サンキュー」

僧侶「あの、戦士さん……今は仮にも王なのにそんな」

魔王「構わんさ。皆も魔王としてより、勇者として接したほうが楽だろう」

盗賊「そりゃあねぇー」

魔王「さて、そろそろ戻るのだが……剣士」

剣士「?」

魔王「私と共に来ないだろうか?」

剣士「ええ?!」

戦士「お前……それ凄い発言じゃないか?」

魔王「仕方がないだろう。旅をしている間に惚れてしまったのだから」

盗賊「うへぇ……マジ?」

剣士「いや、ちょ、待って欲しい! それは魔王のって事は……」

僧侶「お、お后様ですか……」

戦士「すんげぇ玉の輿だな」

魔王「言ったはずだよ……私は本気であると」スッ

剣士「え、あ……えぇ?!」カァァァ

戦士「すげぇ、リンゴみたいだな」

剣士「~~~」

剣士「ほ、本当にあたしでいいのだな?!」

戦士「むしろ立場的にはどうなんだろうな。一応、今の神託だとお前が勇者だろ?」

魔王「神託は飽くまで魔王を討つ者として定められた。戦いが終われば、他に為さなければならない事は無い」

僧侶「でも……そうしますとこの戦いの功績者不在ですね」

魔王「それは君達がいるじゃないか」

盗賊「って言ってもあたしら、魔王を倒した訳じゃないからねぇ」

魔王「何か問題があればこちらに来るといい。共存派からしてみれば、四人は英雄なのだよ」

魔王「話が逸れたな……剣士、私を受け入れてくれてありがとう、嬉しいよ」

剣士「ま、待った!」

魔王「」

盗賊「勇者が完全に固まったわねぇ……あら目から急速に光が」

剣士「ち、違う! そういう意味じゃない!」

剣士「あ、あたしは戦うことしか学んでこなかった。だから急に言われても……困る」

剣士「それに挨拶をしていきたい人たちもいるんだ」

戦士「言いたい事は分かるが相手は魔界の王だぞ? 礼節ならだいたいできるんだしよぉ」

盗賊「剣士は相手に料理とか作ってあげたさそうねぇ……庶民的で可愛いわねぇ」

剣士「うぐ……ぐぐ!」カァァァ

僧侶「でも、そういうの凄く分かります」

魔王「そうか……私としては剣士のいない時間がとても空しく辛いのだが仕方が無い」

戦士「愛されているなぁ」ニヤニヤ

盗賊「まったくねぇ」ニヤニヤ

剣士「出会って一ヶ月でに及んだ君らも君らだ」

僧侶「……!」ギクッ

魔王「……ふ」

戦士「んだよ?」

魔王「いや、もう私にはこの輪で生活する事は無いのだなと思ってな」

盗賊「そりゃそうでしょ、あんた魔王なんだし」

僧侶「そんな身も蓋も無い言い方……」

魔王「いや、その方がらしいな……次にこちらに来れるのは半年は先だ」

魔王「もしも、剣士の気持ちが固まったのなら来てくれると嬉しい」

剣士「……その、必ず行くよ……それまでにはその、君の妻として胸を張れる様になって行くよ!」

盗賊「……なにこの純愛」ボソ

戦士「というか魔王相手に妻として胸張れるってすげー宣言だよな」ヒソヒソ

僧侶「そこまで考えが纏まってらっしゃらないみたいですね」ヒソヒソ

魔王「そうか……これからの時代の為に身を粉にして働きつつ心から待つとしよう」

剣士「ああ、必ず行くから待っていてくれ」ギュ

盗賊「本来性別が逆だと好ましいのにねぇ……」

戦士「まあ、あいつはクソ忙しい時期になるし迎えに行くのはしんどいだろ」

僧侶「今こうして私達に会って下さったのも時間を割いての事でしょうし……」


その後、魔王の統治の下、二十年前まであった平和が取り戻された。
そして、魔王討伐から間もなく、その討伐隊の者が新生魔王と添い遂げたという話が話題になったという。

……
戦士「で、お前らの調子はどうなんだよ」ニヤニヤ

魔王「久々に会ってする話か……」

盗賊「三年ぶりったって、そう気軽に来る訳にもいかないし、何時聞くってんだい」ニヤニヤ

僧侶「ふ、二人とも~」

剣士「三人は相変わらずそうだな」

戦士「まあな。で?」

魔王「こちらとてこうして共に暮らすようになって約三年だ。やる事はやっている」

剣士「ちょ! 何で言うの?!」カァァ

魔王「こちらも三人の嬌声が聞こえていた訳だしなぁ」

戦盗僧「え?」

剣士「……あれだけ大声で騒いでいて気づいていなかったのか?」

僧侶「何処か良い木と紐はありませんか?」

盗賊「もう三年前の事よ……諦めな」

戦士「……なんか悪かったな」

魔王「戦士もか!」

盗賊「なんか悔しい! 戦士、いい反撃とかないの?!」

戦士「えー……? あー……あんま関係無い話だけどもよ。お前、なんか物事を操る力あんだろ? なんでそれ使って剣士を嫁にしなかったんだ?」

魔王「愚問だな。そんな事をして剣士を手に入れたかったのではない」

魔王「お互いが同じ立ち位置で結ばれるからこそいいのだろう。そこに能力を介在させるなど」

剣士「ふふ、戦士と違って魔王は真面目だからな」

盗賊「確かに」

僧侶「……否定できませんね」

戦士「なんかすっげぇ酷い事言われた気がする……じゃあ時間戻しは使っていなかったんだろうな」

魔王「……」

僧侶「?」

魔王「……」

剣士「え? 魔王……? え?」

戦士「何回?」

魔王「……二回」

盗賊「三回目のプロポーズかぁ」

剣士「え?」


  勇者「君達が王様より推薦された仲間か! よろしく頼むよ!」  終

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom