杏子「歌を歌おう」なぎさ「パート2なのです!」 (595)


さやかff「……と言うわけで続きです、どうぞ!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406666856

リボほむ「これがパート1」

杏子「歌を歌おう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1389638733/)

リボほむ「こっちがその前の話の体育祭編」

杏子「体育祭ねぇ……」ほむら「当然、勝つわよ」さやか「おう!」まどか「」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367435513/)


さやかff「R―18、観覧注意です!」

なぎさ「ガンガン行くのです!」



~さざ波ホール~


本来なら白い塗り壁と、音響効果を考察されて作られた波模様の壁、二階建の豪華な客席まで完備した真新しいホール

しかし一人の少女の感情が全てを台無しにするほどの破壊を生み出した

二階席は全て消しとび、前部分の客席と舞台は魔力の嵐で焦土と化しており、空中にはソファーからお菓子まで様々ながらくたが浮かび、最新の照明を取り揃えていた天井は多種多様の花々が咲き乱れる

血だらけでボロボロの制服に身を包み、背中からどす黒いオーロラの翼をはやした少女と対峙するさやかとほむら


ほむら「さやか……」

さやか「夢を見たよ、よく覚えてないんだけど、変な夢」

ほむら「回復魔法……ありがと」

さやか「ほむら、あたしもやる!あんた一人になんでも背負わせたりしない!」ジャキン

ほむら「無理しないで、殺すことになるかも」

さやか「いつか言ったよ、あたしにも背負わせろって!覚悟はある……あたしは戦う」

あゆむ「死ぬ準備は良い!」

ほむら「……っ!?」


青い電撃を纏った球体が突如として二人を取り囲み


さやか「掴まって!」

あゆむ『プリズン・メランコリア!』パチン


球体の爆発よりも先にほむらを抱えてさやかが飛翔し、同時に土煙の中から軽快タンバリンが鳴り響いてひまわりの花が大量に出現した

さやか「降りて!あたしが引き受ける!」

ほむら「わがまま!」


なかばほむらを投げ捨てるような形で降ろして自分は天井付近まで舞い上がった

なぎさ「支援なのです」


タンバリンの音と共に無数のひまわりがさやかを取り囲んで一斉に収束する


あゆむ『ゴールド・フォルテ・バースト!』

さやか(引き付けて……この高さなら!)

さやか「響け!ローレライ!」


さやかの体を楽器にして発するけたたましい爆音と衝撃波が全てのひまわりを撃ち落とし、爆炎を振り払ってあゆむが襲い掛かった


あゆむ『良いものもってて!!』

さやか「ありがとッ!!」


速度と勢いに任せて振り回されるフレイルを弾いて距離を取り、魔方陣を背後に展開しつつ居合の構えを取り


さやか「ラップル・ザ・セイバー――」

あゆむ『リン・ビット!』

さやか「ポーコ・ア・ポーコ!」ヒュン

恭介「さやかが消えた!」

あゆむ『見えるよ!』クルン

さやか「やる!」ガキィ!


高速の突撃をフレイルで受け止め、さやかがマントで作った死角から一斉に飛び掛かってくる剣は鈴の放つビームで叩き落とす


ほむら(不意打ち剣術を見破った!?)

さやか「けど!」


空中で足場を形成して、両手で持って踏ん張るさやかと、翼で力場を操作して無理矢理にベクトルを作り出し、片手でフレイルを構えるあゆむとの鍔迫り合い


あゆむ『押し勝てる訳ない!』

さやか「馬鹿力!?」


フレイルで打ち上げ光線を放って追撃、さやかの胸に直撃させても攻撃の手を緩める事なく手のひらから光の剣を生成して斬りかかった


さやか「っ……この!」

支援


さやかの剣は体制を反転させて回避しそのまま太ももから肩へと袈裟に切り付け、鳩尾を蹴り飛ばして光線で追撃し接近、さらに蹴りばして壁に叩きつけビームサーベルで左肩を貫いて壁に押し付けた


さやか「いったい!!」

あゆむ『あゆむを困らせた罰だよ!このまま魔女にしてあげる!』

さやか「――やられない!」

あゆむ「きゃ!」


下半身を蹴り上げられて思わず変な声が出た

さやかに右肩を掴まれ横の壁に叩きつけられ、衝撃でサーベルが消失し今度はさやかにマウントを取られた


さやか「ゆきなちゃんなら分かって!こんなこと許されないって!」

あゆむ『知った口を利かないで!』

さやか「ゆきなちゃんならもっとかわいい言い方が出来るでしょ!」

あゆむ『さやかちゃんには分からないの!?これはあゆむの希望だよ!』

さやか「誰かを貶めなきゃ得られない希望なんて!」

あゆむ『それが真理!!』

さやか「もっと無邪気な物言いをする子でしょ!あんたは!」

あゆむ『サハスラプジャ!!』


さやかの背後から迫った影の触手を間一髪で避け、再び空中でのドッグファイト

機動力でこそさやかが勝っているが、運動性や旋回、慣性制御の面ではあゆむが勝る

四方からのさやかの猛攻を右手の武器だけで防ぎ、一瞬の隙に光線やビットでの砲火を集中させて攻撃

あゆむからの光線は自力で避け、迫るビット兵器は剣を射出して対処

加速を乗せ、十分な破壊力を誇る斬撃は全て受け流されていなされる


さやか(駄目、これじゃあジリ貧!)


絶え間ない弾幕を空中のルーレットの裏でやり凄し飛翔する剣で死角から攻撃、自分はその反対側から突撃……空中で藍色の光と紫苑の光が入混じってぶつかり合う

支援

支援


あやか「ビームにサーベルにファンネルにバリアに……」

中沢「ガンダムかやつらは……」

恭介「さやか……」

かえで(あ……アカン……限界や……)バタ

葵「かえで!」


織莉子(人間の感情エネルギーを吸い上げることは即ち体力を吸い取ることに直結する)

織莉子(大人たちには口づけで悪夢を見せつけ無理矢理に呪いを募らせて吸収、子供たちからはより純粋な恐怖のエネルギーを吸い上げて

呪いを力に変えられる……感情を理解出来る魔女って最悪ね)

織莉子(…………でも)


ガキン!!


さやか「っ!強い!」

あゆむ『知ってるよ!そこのソファーの裏!』バッ

ほむら「!」

あゆむ『サンシャイン・シュート!』


手首から先が黄色く輝いて光弾を放ち、ほむらがさっきまで潜んでいたソファーを砕いた

その隙を見逃さなかったさやかがあゆむの左手側から切り込んだが、読まれて蹴りばされ同時に頭上からほむらが襲い掛かる


ほむら「取った!」バッ

あゆむ『トシキック・パイプ!』


カラフルな胞子がほむらを包み込んだ……しかしそんなものは気にせずあゆむの背中に右手を押し当てて


あゆむ「ガスマスク!?なんで!!」

ほむら「……ごめんなさい」ズリュウ

魔力でグリーフシードを吸着させ無理矢理に引きずり出した

あゆむ「いっ……っ!!この!」


傷口を止血しようと離脱しないほむらを踵落としで地面に叩きつけ、追撃しようと右手のタンバリンで狙いを付けた時


さやか「貰う!」

あゆむ「うっ……」


さやかが正面から組み付いて脇腹に右手を当ててグリーフシードを取り出す


さやか(皮膚を直接裂いてる!?……気持ち悪い……内臓までくっついて出てきそう……)

あゆむ「ぐ……ああああっ!?!!」


直接内蔵を引き抜かれるような痛みで一瞬意識を喪失し、がくんと地面目がけて堕ちる

すんででバランスを取り戻したが、目の間にはすでにほむらが迫っており今度は胸を掴まれて三度グリーフシードをもぎ取られた


あゆむ「あっつ!!――ば……バハルック・スウェル!!」

さやか「ひゃああ!!」

支援


ジリリリリリリリ!!


さやか「火事……?」

あゆむ「ぐうぅぅッ!!」

ほむら「何が……」

『ただいま……中庭で火事が確認されました、管内の皆様は速やかに』

あゆむ「うるっせえ!!」ビッ


突如として怒り狂ったあゆむが光線を放ってスピーカーを吹き飛ばした


さやか「中庭ってただの植物園でしょ?火を使う魔女も見当たらなかった、なのに火事って……」

ほむら「フードコートがあったわ、そこに悪戯されたりしたら……」

さやか「あ!じゃあ早く脱出しなきゃ!」

あゆむ「……火事……中庭……うっ!」

ほむら(生徒だけでも逃がしたい……なんて聞かないわよね)

あゆむ(…………成程、呪いに身を任せるってこういうことか)

あゆむ「ふふふっ!あっはははははは!!」

さやか「人が死ぬって言うのに、あんたは!」

あゆむ「……だって外に居るのは所詮大人、死ねばいい」

さやか「そんなにまで憎んで……それでどうなったの?本当にそれが希望になるの?」

あゆむ「最終警告だ、あたしはここにいる大人と、あたしの存在を拒んだ全ての大人たちをぶち殺す、邪魔立てするなら……」

さやか「あんたは魔女の呪いに憑かれてる、ゆきなちゃんはあんたがそんなことするのを望んだりなんてしない」

あゆむ「……あ、そ――ゲートオープン!!界放!!」パチン

ほむら「結界を!?」

あゆむ(このまま火事で揉み消すのがあいつらのシナリオ……もう関係ないか)

支援


どこまでも広がる夜空と美しく煌めく星々、普通では考えられない程に大きな下弦の月

足元には色とりどりの花と雑草が咲き乱れ、冷たい風が吹き抜ける野原……そこかしこに人が倒れているということはホールの外までも結界に巻き込んだということだろう


あゆむ「太陽は地球そのものに光を与え、地球はそれをエネルギーに変える」

さやか「……!」


背筋が凍るほど優しくて、でもこの妙に早口な喋り方はいつものあゆむに近い


あゆむ「それは全ての命に力を与える事。けど月は望む者、求める者にだけ光を与える」

さやか「…………」


翼を広げてふわり、と浮かび上昇していく


あゆむ「太陽を反射しただけの偽物の光、文明の光にも届かない位に弱弱しくて、優しくて」

ほむら「さやか……」

さやか「大丈夫、ほむらは皆を回収して織莉子さんの結界まで運んで……そのための時間を稼ぐ」

あゆむ「だ・か・ら」


翼から数多の鈴が飛び出して幾何学模様を描くようにあゆむの周囲で飛び回って鈴を鳴らす


さやか「アルスノバ・セイバー!」

あゆむ「これはあたしが望んだ戦争だ!!」


飛翔する剣がビームを弾き、それでもいくつかが貫かれて爆発する。鈴も切り裂かれたり、叩き落とされて形を保てなくなると内包しているエネルギーを炸裂させた

眩い光の中をさやかが突っ切ってあゆむに斬りかかった


あゆむ『どんな道理で戦う!!』

さやか「あたしの届く範囲で良いの!誰にも不幸になってほしくない!!」

あゆむ『エゴだよそれは!!』

さやか「戦うだけなら十分!」


スピードに任せて振りぬいた剣をビームサーベルで受け流し、慣性を殺せないさやかはあゆむの脇を高速で抜けて距離が離れていく

あゆむ『あたしのリビドーを否定するなぁッ!!』

さやか「そんなプレッシャー!」

支援


展開した鈴でさやかの背後から集中砲火を浴びせる、だがさやかも素早く体制を反転させ被弾を覚悟で弾幕の中に飛び込み、最短距離であゆむに迫った


さやか「でも!やっぱり誰かを傷つける理由になんてならない!!」

あゆむ『それがエゴだよ!じゃああたしが死ねばよかったか!?』

さやか「違う!」


あゆむもさやかへ突進してすれ違いざまの一閃をいなしてまた距離が開く、しかし二人ともすぐさま相手へ向き直り弧を描きながら接近し、激突とすれ違いを繰り返す


さやか「誰かと分かち合う道だってあった!それをしなかったあんたが勝手に潰れただけ!」

あゆむ『そうかよ!!』

さやか「正しさも間違いも一人じゃ分からないんだよ!だから――」

あゆむ『じゃあ言えばよかったか!?触られても何も感じませんって!!』


あゆむの怒りに応えるように鈴が荒れ狂い、さやかに光線を放つ


さやか「うッ!?」

あゆむ『痛みも無い!冷たさも感じない!!何かを食べたって味も分からないんだよ!!』

さやか「きゃあッ!!」


感情のままに鞭を振り回してさやかの体中の皮膚と衣装を引き裂いて血で染め上げる


あゆむ『体もほとんど言うこと聞かなくて!もう生きていたくないって何度も思ったのに!!』

さやか(造花の使い魔の働き蜂!?)


左右から働き蜂が迫ってることに気が付いた時にはもう遅い、さやかは息を止めて痛みに備えた


さやか「――ッ!!」


量の脇腹を貫かれ、引き換えに二体の働き蜂を切り裂いて鞭の合間を縫ってあゆむへ向けて斬りかかった


さやか「でも――生きるだけの理由があったでしょ!!」

あゆむ『あったのは死ねない理由だけだ!!みんなであたしを惨めにしてッ!!』

さやか「敵意だけでぶつかるから!」

あゆむ『お前も大人の味方かああ!!』


斬撃を軽い上昇で避けてさやかの背中に向けて飛び込みつつ蹴り、すぐさま光弾を連射して直撃させた


さやか「うわああッ!!」

支援

支援


あゆむ『佐倉が余計な呪いをかけるから!!希望を捨てないでいることがどれだけ――』

さやか「……っ!呪いなんかじゃない!あれは祈りなんだ!杏子の優しさに気がつきさえすれば」


剣の引き金を操作して刃を飛ばしてあゆむに攻撃、お互いに軸をずらしながら一定の距離を保ちつつの射撃戦になった


あゆむ『あれは呪いだ!!』

さやか「子供の祈りを否定する!?」

あゆむ『佐倉を否定している!!』


あゆむの射撃を確実に回避しつつ両手に次々と剣を取り出しては引き金を引く


あゆむ『いつもだ!そうやってあたしの感情を逆撫でる!』

さやか「いつもそう!あんたは何をやっても必ずあたしの上を行く!」


一瞬静止して火戦を引きつけ、脇に入って一気に距離を詰めて剣を構える


あゆむ『必ずあたしに突っかかる!力も無い癖に!何も知らない癖に!』

さやか「勉強でも運動でも遊びでも!魔法なんて初めて使うくせに、あたしに優位を取って!」


あゆむが体を上下反転させながらさやかの剣を弾いて射撃、旋回して回避、上から回り込みつつ距離を詰めてもう一閃、藍色の光が角度を変えて幾度となく切り抜ける

何度目かにして鍔迫り合いとなり、お互いに感情をむき出しにした押し付け合いが始まった


あゆむ『いつもいつも……』

さやか「いつも――」

「「いつも!!」」


凄まじい火花を散らしてさやかの剣が折れ、同時にあゆむを蹴り飛ばして距離を作り接近して斬りかかる

あゆむもすぐさま突撃して切り抜けあい、一般の生徒にはもう何が起きているのか分からないほどの高度での空中戦

愛と私怨が反響する空、ぶつかり合うたびに炸裂する魔法の力、それらが二人の激闘を物語る


ゆま「こんな戦いって……」

えりか「これはもう、女の戦いだよ……」

つぼみ「女の……戦い……」

織莉子「敗者と弱者の傷の抉りあい……そうね、女の戦いってしっくりくる」

ゆま(マミお姉ちゃん……早く起きて……!)ギュ


あゆむ『正義を決めるのはお前じゃない!』

さやか「守るって決めたんだ!」

あゆむ『優しさだけじゃ癒せない!笑顔じゃ過去は拭えない!!』

さやか「どれだけ傷ついたって――生きてこそ!!」

あゆむ『生きていることを否定された!生きるために憎んだんだ!!』

さやか「ッ!」


さやかの剣を結晶で覆った胸で受け、蹴りで地面へと叩き伏せる


あゆむ『失くしてしまった寂しさを身軽になれたと笑えるのかよ!』

さやか「違う!!」

あゆむ『ゴールド・フォルテ・バースト!!』

さやか「ライフォジオ・サーフェース!!」


物量で押すひまわりを全て魔法のマントで受け止め、押し込まれて地面へと叩きつけられた


さやか(……押し切られる!)

ほむら「バウンス・バックル!」


ほむらが盾を発光させて射線に無理矢理割り込んだ


さやか「ほむ――」

あゆむ『ゴールド・フォルテ・ウェイブ!!』


一際大きなひまわりが二人を押しつぶして爆発し、疲労困憊のあゆむが地面に降りた


織莉子「……時間ね」

ゆま「え?」

あゆむ「……ぐッ!う……ああああ!!」


膝をついて頭を押さえ、そのまま蹲って苦しそうに悲鳴を上げている

支援


さやか「ほむら!」

ほむら「……大丈夫、どうせ魔法少女だもの」

さやか「……ありがと」


ボロボロの二人が立ち上がり、あゆむに武器を向ける……と同時に乾いた笑い声を発し天を仰ぐ


あゆむ「くっふふふふ……はははははッ!!あーっはっはっは!!」


強烈な瘴気が空間を埋め尽くす、これまでにないほどの呪い


さやか「……な……何!」

ほむら「……恐怖!?……けど、もっと冷たい……これは?」

葵「力が……?」

恭介「こ……これは……」

バタバタバタ

つぼみ「 」

えりか「 」

ゆま「み、皆倒れちゃった!?」

織莉子「タガが外れた……限界よ」


さやか「ちょ……ちょっと!!」

あゆむ「ははっ……そう、憎しみは全てを呑み込む力――邪悪こそが純粋な進化……変化が……始……まった」

ほむら「あゆむ!?」

あゆむ「ふふふっ――ねえ、教えてよ……あた……し……どう……て……イキ……チャ……カッタノ……ドゥワアアア…!!!!!」


もはや感情などない、断末魔とでも言うべき凄まじい奇声を発してあゆむは力尽きたように崩れ落ちた

そしてそのまま、こんどは完全にトチ狂った笑い声をあげて、圧倒的な闇を放ちながらゆっくりと立ち上がった


ほむら「そ、そんな……」

あゆむ「アハハハハッ!!アーッハッハッハッ!!」

さやか「わ……ワルプルギス……」

あゆむ「ハーッハッハッハッハノ\ノ\ ノ\ ノ\ ノ\  ! ! ! 」

ゆま「ひっ……!!」

あゆむ「――なんて!冗談ですよ☆」

なぎさ「と言うわけでここまでなのです、お疲れさまでした!」

…んんん?

乙です

帰宅して読み直した。
そこで冗談とか言われても
帰ってきた!リアルポンキッキはっじまるよー→雨の裏山
みたいなノリしか想像できんかったよ



私はネオあゆむ言われても驚かない

a

中沢が出てるなら読むよ

出ないから読まなくていいよ

現行最強のカオス&ダークだし今まで荒れてなかったのが奇跡だわ
荒らし回避のための前半だったような気もするが

夏になったんだなぁ……

あゆむって誰

あゆむはぼくでありみんなだよ

こんにちは、再開します

クラスメイト
http://livedoor.blogimg.jp/sayakawasayakawa/imgs/a/6/a687a185.png


さやか「……はあ?」

ほむら「……?」

あゆむ「えーっと……バキュン☆」

さやか「ちょ!」


いきなり指先から光弾を放ってほむらを攻撃、すぐさま間に入ったさやかが受け止め、疑問と困惑と不安であゆむを睨み返した


さやか「いきなり何よ!緊張させたり急に気を抜きに来たり!」

あゆむ「あたしは全てを憎むもの!だから目に入るもの、ぜーんぶ破壊!!」

ほむら「あ、あゆむ!!」

あゆむ「ほらほらほらぁ!!」


赤黒い光線が無数に打ち上げられ、その全てがほむらとさやか目がけて降り注ごうとしていた


さやか「こっち入って!」

ほむら「!」


マントを広げて防御体制のさやかに庇われて攻撃を凌ぎいだ……が


あゆむ「アホ!自ら弱点をさらしてどうする?」


一瞬の動けない隙をついてあゆむが懐まで踏み込みフレイルでさやかの腰を殴って飛ばす


さやか「ぐっ!」

ほむら「何を!」

あゆむ「つまりこの黒髪はお前が『守らなきゃならない』事情を抱えているという弱点を俺にわざわざ教えた!」

さやか「!?」


ほむら目がけてふりおろされたフレイルをどうにかゴルフクラブで受け止め、しかし周囲から影の触手がほむらへ襲い掛かった


ほむら「っ!」

あゆむ「武器を使うと隙をさらすなぁ小娘ぇ!!」


何十と言う数の触手の先端の口が開いてほむらの全身至るところに噛みつき、血を滲ませながら宙に持ち上げた


ほむら「きゃッ!!」

さやか「ほむら!?」

あゆむ「ひゃーひゃっひゃっひゃ!!さらに隙をさらしたな!?」


ほむら「あぐ……うッ!!」


さらに触手を絡ませて全身を縛り上げ、牙がしっかりと食い込むように締め上げた

ハイヒールの先からぽたぽたと血が垂れて、衣装が徐々に赤く染まっていく


さやか「あんた!!」

あゆむ「こいつが苦しむとお前は思考の幅が狭くなる、そしてコイツを助けるために動くことで立ち回りの幅が絞られている事を俺に曝した!」

さやか「だまれぇッ!!」


遮二無二な突撃で刃を向けても軽くいなされるだけ、それでもほむらを助けるためにはどうにかして近づく必要がある


あゆむ「危ないですよ~?」

さやか「!」

ほむら「さやか!」


すぐさま触手が伸びてきたがさやかの機動力なら容易くは捕まらない、だがこれでは距離を詰めることがかなり難しい


あゆむ「さーて、まずは周りに転がってるゴミから行きますか!」


陰の触手が倒れている人々を縛って3mほどの高さに吊し上げた。先ほどまではアーニャの力でボールに変えられていた人々……そして杏子とキリカ


ほむら「……ッ!」

さやか「ちょっと!!」

あゆむ「あーあ、なんで君たちはそんなにも無能なわけ?自分から弱点曝してどうするの?」

さやか「!!」

あゆむ「数多もの悲鳴が奏でるオーケストラ……さぞ聞きごたえがあるでしょうねぇ……!」

「ぐわあああ!!」「ぎゃあああっ!!」

杏子「いっつ!……な……なんだ……?」


吊し上げた人々を締め上げて悲鳴をあげさせ、二人の動揺を誘う


ほむら「あゆむやめて!こんなこと意味ない――ぐうぅっ!!」

あゆむ「はい、嫌でーす☆」

杏子「っつう……!!」

キリカ「 」

さやか「ほむら!杏子!キリカさん!!」

あゆむ「バーカバーカ!くたばっちまえ!!」

支援


いつもと違う黄色のリボンで一本縛りの髪型……しかし顔は額からの出血と鼻血で赤黒く染まり、体と顔のそこかしこに青痣が出来ていてその上、何故か裸足で腕ごと胴体を簀巻きにされて吊るされている

無事で良かったと安堵する気持ちと、なんでこんなところで、しかも大けがをしているのだと怒鳴り散らしたい衝動……それらの後から、まどかが怪我をしているという事実が重くさやかにのしかかった


あゆむ「お前ら本当に馬鹿だな!自ら弱点を曝すのトレンドなのか?」

さやか「ぐっ……邪魔するなああッ!!」


一瞬視線を外した隙に二人の斬り合いは完全にさやか守勢となった

レイピアがさやかの身体のあらゆる部分の肉を削ぎ取り、次々に魔法で治癒しながら斬撃の嵐を防ぎ、致命傷だけは避ける


杏子「バリア解除……?あいつ、何を……!」

ほむら「織莉子さん!」

QB「まさか君は……まどかを!」

織莉子「オラクル・レイ」


無数の刃が織莉子の頭上からまどか目がけて飛翔する

さやかの脳裏に浮かんだのは自分がキュウべぇ契約した日、まどかが織莉子とキリカに狙われる理由を聞かされ、契約してはダメな理由をキリカから説明されたあの日だ


さやか「駄目ぇ!!」

ほむら「ちょっと!?」

杏子「さやかぁッ!!」

織莉子(そんな!さやかさんの動きが予知できなかった!?)


ほとんど反射で動いた

織莉子からまどかへの射線を一瞬で計算してそこに自分の身を挟んで遮る

背中にドスドスと刃が刺さって、それでも何本かがまどかの方へ行くのを見て遠隔操作の剣を射出、織莉子の魔法を全て斬り伏せた


あゆむ「ひゃーっはっはっは!!!極限の馬鹿め!!」

織莉子「う!」

QB「織莉子、急いでバリアを再展開しないと!このままでは影の触手によって意識のない人々が狙われる」

織莉子「分かっているわ」

あゆむ「捕まえた!」

さやか「あ」


触手が仰け反ったさやかの足首を捕まえて振り回し、地面に叩きつけて引きずり回した


あゆむ「そのピンクのチビが人質として有用であることを俺に示し!」

さやか「きゃあああ!!」


振り回した遠心力で投げ飛ばされ地面を転げまわり


あゆむ「あまつさえそっちのバケツとお前は連携が取れない、信頼関係の薄い間であることを俺に曝したぁ!」

杏子「さやか!!」

ほむら(まどかもさやかもほとんど真後ろ……これじゃ見ることも!)

さやか「っ!!」


真上から触手が雨のように降り注ぎ、さやかの肘、膝、腰を貫いて地面へ縫い付けた

そこはまどかを捕えている触手のすぐそば


さやか「ま……まどか!」


うつ伏せに磔にされてしまったためまどかの様子が良く見えない、が少なくとも呼びかけに対して返事は無い


あゆむ「カス以下の以下だなゴミ屑野郎!!」

さやか「まどかぁっ!!」

あゆむ「じゃあ起こしてあげる!」パチン

まどか「いっ、ああッ!!」

さやか「え……?」


あゆむが指を鳴らして、まどかが悲鳴を上げて……それから少ししてまどかの太ももをつたって数滴の赤い液体がたれてきた

目の前で起きた事が呑み込めず、さやかの腹の内側で何かが目覚めつつあった


さやか「…………あ」


あゆむ「……ん?このピンクどこかで見た事あるな」


指先で指示して足が付かない程度の高さまでまどかを下し、髪の毛を掴んでその顔をジっと眺めまわした


さやか「やめて!!」

あゆむ「うるさい雑魚」

まどか「さ、やかちゃ……?」

さやか「まどかを離して!!離せよ!!」

あゆむ「い・わ・し☆ 人の困る顔を見るとゾックゾクする!こんな気持ちになるために君たちを苦しめて楽しむ価値は十分ある」


歪んだ笑顔でさやかの顔をぐりぐりと踏みつけ、額を地面にこすりつけさせた


さやか「っ――お前……誰だっ!!」

あゆむ「さあ?興味ないね」

さやか「っ!…………」

まどか「そんな……どうし、て」

あゆむ「うーん……俺は気が付いたらここに居て、いきなり襲ってきたアブナーイ人達をやっつけただけ、むしろ正当防衛だよねー」

あゆむ「と、言うわけでして貴女の事なんて覚えてませーん☆……と言いたいのに何故か引っかかるんだよなー」

まどか「でも……良かっ、た」

さやか「まどか……」


沙々に殴られた腹部の痛みをこらえ、絞り出すように語るまどかの声

聞いてるだけで不安になってくるほど儚くて弱弱しい喋り方だ


まどか「い、いきて、て……私……怖かっ、た」

あゆむ「うーん???」

まどか「や、くそく……して、くれた……じゃ、ない」

さやか「約束……?」

あゆむ「約束……ん!あー、あれだ!!」


まるで今思いついたみたいなしぐさで指を鳴らす……すると触手の内側、まどかの胸を覆っているあたりの内側から鋭い針が幾重にも生えてまどかの皮膚に直接突っかかり、そのままぎゅっと締め上げた


まどか「うッ、あああッ……!」


下着で覆われている部分はともかくとして、ブラの微妙な隙間などの皮膚に直接突き立てられた部分からはじんわりと滲むように出血し、小さな赤い筋を描き出した


あゆむ「一人にしないって……そう約束したじゃないですかぁ?」


声色こそ申し訳なさそうだが顔は最高に歪んだ笑顔、ただまどかが泣いてさやかが激昂する姿を楽しんでいるだけだ


さやか「この――クズ野郎ッ!!」

あゆむ「ははは、無駄無駄、関節部分抑えてますからねぇ!」


ゆま「織莉子お姉ちゃん!助けなきゃ!」

織莉子「あの子、私の援護は歓迎してないようだし……このまままどかさんが亡き者となるならそれはそれで好都合でしょう?」

QB「信じられないほどの外道だね、僕に感情があったらぶっ飛ばしてるよ」

織莉子「と言うのが建前よ、くたばれボケウサギ」

QB「!?」

織莉子「3分後、ポロロッカを発動してからゆまさんを前線に出します」

織莉子「あの子の読心魔法は自分の視界内の人間にしか使えないとみていい」

ゆま(そっか、ほむらお姉ちゃんの死角からの射撃を躱せたことが無いからだ)

織莉子「マミの回復は間に合わない、確実に仕留める算段で行くわ」

ゆま「う……うん」

織莉子「今全員からノーマークの魔法少女ならあの子に対して不意打ちで仕留めることが出来る、ゆまさんの役割はその魔法少女を戦闘態勢にまで持って行った上でほむらさんと杏子さんを戦線に復帰させ、一度も彼女の視界に入らないでこれら全てを実行すること」

ゆま「そ、そんなの……」

織莉子「ええ、だからほむらさんを囮に……いえ生贄ね、彼女の選択次第では」

QB「感情が無いはずの僕でもドン引きの畜生だね君は」


あゆむ「さ・て・と!」

まどか「い、や……い……た!」

あゆむ「あ、もしかして『気持ちのイイ』方がお好みですか?」ポン

まどか「!?」ブルッ

さやか「おいッ!!」

あゆむ「そうそう!この青いの、濁り殺すんで手伝って欲しいんですよ」

まどか「だめッ!」

あゆむ「はあ?」

まどか「きゃあッ!!――わた、しなんか……す、すきにして……いいか、うああッ!!」

あゆむ「じゃあ好きにしよ」


自分のコメカミの辺りに指を当てて、銀色の靄のようなものを指先に付着させて引きずり出した


さやか「何やるの!待ちなさいよ!!」

まどか「ぅ……ぁ……」

あゆむ「君が『あゆちゃん』ってうるさいからその記憶を君にもあげるよ」


ふよふよと漂う靄をまどかの額に押し付け、それは自然に吸い込まれて無くなってしまった


まどか「え……?」

あゆむ「手遅れでーす☆さあ――どおなるかなぁ?」

さやか「待てって言ってるだろ!!おいッ!!」

まどか「  」


しゃがみこんでさやかの髪を掴んで顔を覗き込み、これまでにないほどの笑顔でさやかの怒りと悔しさに歪んだ顔を眺めた


あゆむ「答えは お餅のツモ!」


頭をさらに持ち上げて、もうこれ以上は骨を折らなければ無理と言うほど持ち上げてから


さやか「っ……!!」


あゆむ「あ・た・ま・が―― パ ー ン ! !」


歓喜のあまりか声が裏返り、天を仰いで大笑いを始めた

さやかの頭は床に埋め込むような勢いで叩きつけられ、思考に白くて凄まじい光が走って視界がグラングランする

身体にも力が入らず、あゆむの高笑いが遠くで聞こえるだけになった

――完全に殺害する決意で挑んでいれば……

そんな後悔とまどかへの罪悪感とで挟まれたさやかの意識は再び落ちていった

>>25>>26>>27>>28>>29>>30>>31>>32>>33>>34

コメントありがとうございます!

>>27

ポンキッキ懐かしいですね

>>28

無の力とは一体……うごごごご

どちらかと言えばクリエイターを意識しています

>>30

出番はありますけど役割が無いです

>>33

八月の風

>>36

ふへー……そんなのあったんですね……

敵が強すぎて勝てないから歌を歌ってなんとかするんだな

>>51
リアルポンキッキはごっつええ感じやでポンキッキちがう

乙です

そろそろ本気だそうぜみんな!

途中飛ばしてない?

こんばんは、再開します

支援


>>56
oh……ご指摘ありがとうございます、確認しました


>>39>>41の間で鹿目ちゃんを発見するシーンが抜けてます……

なぎさ「そんなわけで次が抜けてしまった分なのです……」

本来>>40辺りに挿入されているべき分です……

さやか「……馬鹿にしてぇ!!」


一瞬で身を翻して触手たちの合間を縫って接近、剣で斬りかかってきたさやかをレイピアでいなしたが今度は一味違う

腕を切り裂いても胸を貫いてもひるむことなく攻撃を続けてきた

およそ人の物とは思えないほどの高笑いを挙げるあゆむとどれだけの傷を負っても気にしないさやか


織莉子(さて、いい加減諦めがつくころだと思うけども)


織莉子の予知で人格崩壊の大体のタイミングは掴めていた、そしてこうならなければさやかが戦えないことも


織莉子『さやかさん、聞こえる?』

さやか『あ、はい!』

織莉子『彼女の人格は崩壊したわ、もうその子は魔女と言っても過言でない存在よ』

さやか『! でも!』

織莉子『今ここにいる魔女を全て殲滅すること、それしか皆が生き残る手段は無いのよ』

さやか『……』


織莉子の予知した未来ならここでさやかがあゆむを魔女と認識し、介錯するために動く


ほむら『ダメ!!』


そんな織莉子の予知を何度でも覆すのがほむらだ

確定しているはずの未来にほむらが介入すると高確率でねじ曲がる

それはほむらの未来であっても変わらない……だからこそ織莉子はほむらを信じてきた


ほむら『やるなら私がやる、貴女がやるべきじゃないわ!』

さやか『…………』

杏子『よく分かんねえけど、結構マズイ状況じゃねえのこれ……』

織莉子『ほむらさんでは戦力的に無理、それにあまり時間をかけると最後の理性の欠片まで失われてしまう、そうなれば私たち以外は皆死ぬわ』

QB「彼女は人格が崩壊する寸前で新しい人格を無理矢理作り上げて、今はそいつに全て制御させている」

QB「もっとも、その人格は嗜虐癖があるようだけどね……だからこそ君たちを殺さずに楽しもうとしている面が強いわけだが……」

織莉子『その新しく作られた人格まで崩壊してしまったら本当に暴走してしまう』


QB「そうなれば取り込んだ感情エネルギーを放出し尽くすまで彼女は暴走を続ける、当然ワルプルギスよりは小さな規模になるだろうけど……疲労した今の状態で前準備なしにそんなものと戦うことになるが、それでも良いのかい?」

さやか『……』

QB「もっとも、最後はまどかが契約すれば全て解決なのだから問題は無いけどね、丁度この結界に取り込まれたみたいだし」

織莉子「!」

さやか「え?」

ほむら「嘘……?」

ゆま「……いた!!」

さやか「ま、まどかぁッ!!」

杏子『おい馬鹿!目の前に集中しろ!』


触手に捉えられてつるされた人々は全体で十数人、それらが一塊にそびえたっていて人質の森とでも形容すべきものが出来ている
だが、そこから10数メートル離れたところに一本だけそびえている触手に捕まっている制服の少女がいた

なぎさ「平常運転に戻るのです!」


身体が軽くて、海の中をふわふわと漂うな心地よい感覚


まどか「……」


気が付いたら自分はこの宇宙の様な空間にいた

無限とも言える数の星が煌めき、少しの温もりでつつまれた真っ暗闇の宇宙


あゆむ「おはよう」

まどか「……」

あゆむ「おはようございました」

まどか「へ?……」


それが自分に話しかけてきた声だと一瞬理解出来なくて、はっとなったまどかが急いで起き上った

……起き上ったと言うよりは体の向きを変えて声がした方を見ただけなのだが


あゆむ「……」


肩より少し下まで伸びた紫紺の髪、一目で冷たい性格だと思わせる垂れた目じり、なんとも不機嫌そうに尖らせている口……全体的にめんどくさがりで無愛想な少年を思わせる顔立ち

隣のクラスの同級生、葉月 あゆむがそこに居た


まどか「え……っと……これは、夢の中……?」

あゆむ「ここは人の脳みその中を抽象化して映像っぽく仕立て上げた空間、物理法則も通じないし、現実とは体感的な時間の流れも大きくずれてる」

まどか「えっと……え?」


言っている言葉が難しくて理解できず、戸惑いを口にすることしかできない


あゆむ「ま、概ね夢の中だ」

支援


自分の予想は的中していた。ならなんでわざわざ難しい言い方に変えたのだろう……

彼女の性格を考えると今の言葉には重大な説明があったのかもしれない


まどか「ああっとうん、って……きゃああっ!!」

あゆむ「なんだよ五月蝿いな……」


顔をちょっと左上に向けてまるで見下すようなジト目で睨んできた

自分が不愉快だとアピールするときの彼女の癖だ

自分が真っ向から睨むと相手が怖がることを分かっているのかもしれない


まどか「だって私の服っ!!」

あゆむ「誰にも見えないから大丈夫」


わざわざ目を閉じ「見たくもねーよ」とアピールしている


まどか「胸丸見えだし……裸足だし……」

あゆむ「大して無いくせに一丁前に恥じてんなチビ、B越えてから気にしな」


自分だってさやかちゃんと比べれば大したことないじゃん!と大きな声で言い返したくなった

ただし、言われてから気が付いたがここはそもそも宇宙みたいなところなのだ

恥ずかしがる理由がどこにもないことに気が付いて自意識過剰なんじゃないかと自己嫌悪、その感情がまどかを冷静にさせてしまった


まどか「あゆちゃん、私怒って良い? 」

あゆむ「あたしはプログラム。お前が言うことに対してパターンで返すように仕組まれてるだけだから」

まどか「へ?」


パターンで返してるにしてはあまりに的確な返答だったように思える


あゆむ「お前の言ってる意味はあたしには分からない、思考パターンじゃなくて、条件を感知して応じる『感応』の魔法で作った、言わばナビ」

まどか「???」

あゆむ「……と説明をするよう『あゆちゃん』と言う単語に対してカウンタートラップで仕組んであった……という具合」

まどか「成程」


いつかだったかほむらの携帯で『シリー』とか言うものを試させてもらった

喋りかけたらちゃんと反応して画面が切り替わり、凄い時代になったものだと感心したものだった

ほむらがそれを有効活用している場面は想像できなかったが


まどか(さっきの悪口は『胸』に対するカウンターだったんだろうな……)

支援

支援


まどか「えっと……じゃあ私もしかして死んじゃったの?」

あゆむ「推測だがお前の脳味噌を破壊するとか言ってほむら達に迫ったんだろ」

まどか「え?」


恐る恐る聞いてみた

今まさに黄泉の国へ向かう最中だとしたらそれはそれで納得できる

しかしその疑念はバッサリと斬られ、代わりにもっと怖い事を言われた


あゆむ「んで抵抗されて実際にぶっ壊す最中と見る」

まどか「ええぇぇぇッ!?」


そして怖い事は現実だった


あゆむ「記憶を過剰に流し込んでのオーバーフロー狙い、外からじゃ止められない……と思うのでトラップとしてナビを仕込んだ」

まどか「…………?」


やはり言ってる事が理解出来ない、あるいはもう脳みそが壊れて考える力が低下してしまっているのか


あゆむ「ようするにELSとトランザムバーストで意識共有して刹那が死にかけたろ?あれをやるって訳」

まどか「あ!」


まどかの頭の中でその場面が鮮明に再生された

刹那が異星体であるELSの脳量子波を感じ取って、その中に敵意以外のものがあったから理解し合うために意識を共有し、不要な戦いならば避けようとしたのだ

あまりに膨大な情報量をまともに受け止めた刹那は意識不明となってしまった


あゆむ「一度に再生するから脳味噌が耐えられない、だったらあたしのナビゲートで少しずつ情報として処理させて脳の負担を減らしつつ、統合できる部分は統合して回想の量自体を減らす」

まどか「じゃあ、あゆちゃんがティエリア?」


これも映画と同じだ、脳が壊れてしまうほどの膨大な情報を超高性能なコンピューターであるヴェーダで管理、制御してついに刹那はELSの言葉を聞き出して無事分かり合えた

最後、ELSは自らの姿を地球から見えるほどの大きな花へと変えることで敵意が無い事を示し、人類はその花を見て戦争が終わったと悟る


あゆむ「……が、多分共有記憶が強くなりすぎてそれ以外が回想しづらくなるかもしれん」

まどか「私だけの思い出が弱くなる?」

あゆむ「壊れるよりマシだろ、自己と他個をしっかり認識していれば時間をかけて元に戻る」


現実は映画とは違う

分かりあうためとかでなく純粋に破壊を目論む攻撃をどうにかして凌ごうというもの

その結果、まどかやあゆむに残る物はなんなのだろう

支援


まどか「……あゆちゃんはどうなっちゃうの……?」

あゆむ「回答は無い」


腰に手を当て、気怠そうな顔をしながら淡々と答えた

それは彼女が強がったり、何かを隠そうとするときの癖だ


まどか「どうして私を助けてくれるの?」

あゆむ「回答拒否」


両手を肩まであげて、さあ?と自分も分かってないかのようなそぶりを見せた


あゆむ「一応最後の最後にトラップとして魔法を4つ仕込んでおいたのだが……お前がここにいるってことは、まあ二つは機能しなかったんだろうな」


三つ目はこれな、と付け足してあゆむは笑った


――さいごって、何?


あゆむ「さあ、感覚を閉じて……感性の画用紙を塗りつぶして、感じるんじゃなくて分かること……でも自分の事を決して忘れない、人格を呑まれるから」

まどか「うん……」


これ以上はきっと何を言っても聞いてくれないだろうな、と思う


あゆむ「知識として認識しない、全てを印象として受け止める、流れる映像を呆然と眺めるだけ……」

まどか「む、難しいよそれ……」

あゆむ「集中しないことに集中するんだよ、簡単だろ」

まどか「えー……」

あゆむ「他人事だと思ってスルーしれ」

まどか「う、うん…………」

あゆむ「始めるよ」


あゆむの一言で宇宙の時間が動き出したように、全ての星々がまどかへ一斉に集まっていく

一つ一つは小指の爪にも満たないような大きさ、それがまどかの体にぶつかると同時にはじけて粒子となって皮膚から吸い込まれていった


まどか「ん……」


流れ去る記憶の欠片、木霊する無数の声

星のような小さな光がまどかの身体へ溶け込む度に、少しずつ自分では無い何かに変わっていくのを感じる

自分は『鹿目 まどか』だ、としっかり言い聞かせて心を落ち着けた

支援


――女なんて所詮は選ばれる側、人の上に立つもんじゃないよな

――歴史が証明してんだって、女が指導した国って録なモンじゃねえよ

まどか(こんなこと言う大人がいる……)

あゆむ「こら、同調するな」

――あの海里とか言う女、お目付け役に取り入るなんて上手いよな

――自分の子供が家長になればまさに濡れ手で粟って訳だ

まどか「やめて!こんなの……!」

あゆむ「受け流せ、どうせ大人の言うことだ」

――葉月……あゆみさん?……え?あゆむ?

――変な名前、女の子なんだからあゆみってすれば良いのに

まどか「そんな言い方……」

あゆむ「親の躾がオワコンなんだよ、ほっとけ」

――女のくせに……

――ガキの分際で屁理屈ばっかだな

――あんな泥棒猫の娘なんか!


言葉は刃物、ペンは剣より強し、そんな本とか偉人伝で聞く程度の諺

それらは全くの言葉遊びでなく、実感の伴う現実から生まれた物なのだと分からされた


まどか「なんで、こんな……!」


一つ一つの思い出が流れていく、それはつながりのある映像としてまどかの頭をぐちゃぐちゃにかき混ぜた


あゆむ「デストルドー出し過ぎだ、落ち着けって」

――あたしが女だってだけで大人たちがあたしを認めない、だからあたしも大人を認めてやらないし、頼らない

まどか「でも違うでしょ?本当は認めて欲しかったの!だからなんでも頑張れたんでしょ!」

――どこのだれが馬鹿にしたって構わなかった、でもママだけはちゃんと認めてくれた……そのママを馬鹿にされちゃったら悲しい気持ちになる

まどか「その為に頑張ったの……?お母さんは間違ってないって言うために?」

あゆむ「おーい、何と会話してんだ?」

――実力さえつければあたしを女だって馬鹿に出来る奴は居なくなった。お前が生まれて来なければ良かった、女でなければ良かった、なんて言われたら悔しいし……苦しくて悲しい

まどか「……それでも」


そこで声が途切れて景色が宇宙に戻った

まどかは肩で息をするほど疲れ切っていた

全身が恐ろしいほど気怠くて、泣きそうなくらい頭が痛い……まるで脳みその上下をひっくり返されたかのようだ

支援


あゆむ「んー……予想の二割増し」

まどか「え?」


まどかは目に入りそうなくらいに溢れてる汗を袖で拭うのに夢中で話を聞いていなかった

それくらい頭の中を整理できていなかったし、消耗していた


あゆむ「死亡三割、自我失調二割、記憶喪失一割、植物人間一割、無事な確立三割……死にさえしなきゃどうにかなるとは思うけど」

まどか「あの……」


まどかの目に映っているのはこれまで流れていた星々と比べ物にならない程大きな光


あゆむ「ごめん、ちょっと感情が強すぎて圧迫しきれなかった部分……この辺で一気に負担が行くから他を可能な限り減らしたんだけどさ」

まどか「あの……凄く大きな星の光が迫ってきているような……」


全長は4メートルほどだろう、まどかの3倍近い大きさの光だ


あゆむ「よーく見てごらん」

まどか「え……あ、二重になってるんだぁ!」


もうどうしようも無くっておどけて見せた。それと無事な確立は百歩譲っても0だと思った……そういう覚悟をした


あゆむ「効果音で言ったらぐしゃあからのぷちっ!かな」

まどか「あんなに小さいのでこんなに頭痛くなるのに……」


指で作ったわっかは直径1センチにも満たない、それくらいの大きさの記憶でこれだけのダメージになるのだ

動く気にもならない程疲労している身体が物語っている


あゆむ「お前がほむらだったら共有化が使えなくてとっくの昔に死んでるんだ、感謝しな」

まどか「あ、そう」


考えられる中で一番つっけんどんに言った

貴女がいなければこうならなかったでしょ?という恨みのニュアンスが伝わるように

ほむらや杏子が狙われなくて良かった、という安心を隠すように


あゆむ「あ、この言葉を送っておこう」


ついに光に激突して、今までの入ってくるような感じとは違う。今度こそ飲まれて、引きずり込まれるような感じ


あゆむ「頑張れ」


重力がある、腰から下へと落っこちていく

瞬きをした一瞬のうちに周囲の景色が変わり、青空を見ながらまどかはまだまだ落ちていく


まどか「え?お、落ち……落ちちゃ――えふっ!!」


背中から地面に叩きつけられ、肺の空気が抜けてうめき声の一つも上げられなかった


まどか「っ~~!」

ゆうに10分かけて呼吸を落ち着かせ、ゆっくりと起き上って周りを見渡した

支援


まどか「あー……」


まず目に入ったのは白い綺麗な壁で作られ一面はガラス張りの五階建てのビル、右手側に大きな噴水と周囲を車が通るための円形の道路、その奥には大きなテニスコートが二面

まどかの位置からは見えないが噴水とビルは丘の上に出来ており、斜面に沿って二階建のオフィスとプール


まどか(噴水があそこに見えるってことはつまり……)


二度だけ遊びに来た記憶をたどり、自分の背後にあるであろうものを予想して振り向いた


まどか「……最低でも2年前の記憶って事だよね」


そこにあったのは大きな青い屋根の一軒家、外様であるあゆむの母親は一族からやっかまれ、母屋での寝泊まりを歓迎されなかったのだ

だからあゆむの母親……海里とあゆむ、そして弟のまもるは基本的にこの家で寝泊まりしていた

元々は来客を応接したり宿泊するためだけの物で、あまり有効活用されていなかったのだから無駄が無いと言えば無い

まどかが中学一年生になった年の秋頃、この家は火事にあって無くなってしまい、その時にあゆむは母親を亡くしてしまっている


まどか(圧縮しきれなかった記憶っていうのは……まさか……)


当時のあゆむの様子はまだ覚えている

数か月は学校を休み、ようやく登校するようになっても意識がはっきりしてなくて会話もロクに出来なくて、廃人ってこういうものなんだな、と恐怖さえ覚えたものだ

「花蘭の方がまだマシだ」とあんまりなからかいをした男子が仁美や葵に制裁された

ようやく喋れるようになっても、周りに毒を吐いて自分の殻に篭るだけ、まどかも周りもそれを「仕方ない」と言ったし、思ったし、受け入れた


まどか「……」


ただ、タイミングが悪かった

二年生になってすぐのこと、上条 恭介が事故に会って精神的に余裕のなくなったさやかと自己喪失状態のあゆむが激突してしまった

何がきっかけかなんて、知ったらちっとも大したことじゃない

ただ、お互いがお互いに嫌気がさすほど仲たがいするきっかけには十分すぎた

二人は元々中の良い関係では無く、あゆむの無意識な上から目線はさやかを逆撫でしていたし、さやかもあまり嫌悪感を隠さなかった

けどあゆむの態度は自分の能力と努力に対する自信から来るものだし、それをいっそ清々しいと感じさせるだけの実力が、あゆむにはある

さやかが気に食わなかったのは、きっとそこだ


まどか「って、今は目の前に集中……したらダメなんだっけ」

支援


「行ってきます」

まどか「って、私の服っ!?」


服がそのままだ、そういえばさっきから使用人がうろうろしている

どうせ見えてないのだろうが、きちっとした大人たちがいる側で自分だけ惨めな格好をしているのだ、と思うと途端に恥ずかしくなって、とりあえず近場の花壇に身を隠して玄関を眺めた

扉が開いて、淡いブルーのズックの踵を指で整えながらあゆむが出てきた


まどか「あれ?」

海里「ハンカチ、ティッシュ、あと携帯も持った?」


腰まである黒い髪の女性があゆむに聞いて、あゆむは振り向くことも無くポケットから言われたものを見せびらかし歩き出した


あゆむ「持った持った、じゃあ行ってきます」


紺色のフードがついたトレーナーと黄土色の短パン、特に手を加えていないであろう髪は首を覆い隠す程度の長さで、綺麗に長さの整った前髪が髪質の良さを辛うじてアピールしている……しかしあれではボーイッシュではなく髪を伸ばしている少年だ


まどか「まだ……小学生?」

海里「……やっぱりスカートにしない?」

あゆむ「良いよ、走り辛いし蹴り辛い」

海里「前提が変だしスカートの方が可動範囲は広いのよ?」

あゆむ「パンツ見えるじゃん」

海里「スパッツ履けばいいじゃない」

あゆむ「蒸れる、やだ」

海里「もう、ちゃんとゆきなちゃんをお家へ送ってから帰るのよ?」

あゆむ「へいへい」

海里「じゃ、行ってらっしゃい」


いってきます、という代わりに彼女は手をひらひらと振って行った


まどか「あ、追わなきゃ駄目なのかなこれ」


自分の姿は見えていない筈なのに周りの視線が気になり、制服のボタンを高い位置で止めて取り敢えず誤魔化した……が、これではその下の素肌が強調されているような気もした


まどか「誰にも見えてない!オフコース、よし!」


取り敢えず隠せたのだからこれで良い

もういっそ開き直って服なんて脱いでしまおう、という衝動を押さえてあゆむについて歩き出した

なぎさ「取り合えずここまでなのです!お疲れ様でした!」

>>52>>53>>54>>55>>56

コメントありがとうございます


>>52

なぎさ「かなり近いのです!もしかしてニュータイプなのですか?」

>>53

なぎさ「ぬぬぬ……分からないのです……」

>>55

なぎさ「前半のマミとか結構本気だったのです」

さやかff「キラ・ヤマトみたいな不殺は楽じゃないってことだね」

乙です

リアルポンキッキはこれ
ttps://www.youtube.com/watch?v=tBIoHvu0DBk

あゆあゆがコレ1話目の緑のに見えておっかねえよ!
って話だった
そして最新話では2話目に見えておっかねえよ!


俺はまどかの胸だろうがほむらの胸だろうがあゆむの胸だろうが興奮するよ

中沢は中の人繋がりで戦闘面での活躍もありうる

あゆむの命が助かって欲しいけど………遠慮も容赦も、要らないんだよ?

中の人繋がりで活躍ならどう考えてもまどかとつぼみだと思うけど

中沢ってキリトだろ?

「おちんぽみるくすてぁんばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいッッッ!!」

まだかなまだかな


なぎさ「間が空きまくって申し訳ないのです……」

なぎさ「明日にはきっと更新するのです!」

気にするな 待つ時間もデートのうちだ

了解


こんばんは、再開します

支援


~さざ波ホール~

まどか「 」

さやか「 」

あゆむ「おんやあ?でっかい魔力を感じます?」

杏子「この感じ!」

ほむら「……ええ」

ゆま「超常現象!」

織莉子「ポロロッカ」


バリーン!!


あゆむ「わっふー……あっちにも残ってたかぁ!」

ほむら(硬質化させたバリアを内側から魔力の噴出で割る局所的カウンター魔法)

杏子(これでバリアを割っちまうってことはつまり……もう守らない)

あゆむ「あっふふふ!!デッサイダデステニーッ!!」バッ

織莉子「行って!」ボボボボ

ゆま「うん!」ダッ

織莉子「オラクル・レイ」

あゆむ「ひゃあっはっはっは!!全部読めてんだよぉ!!」リン リン


ヒュンヒュン ズドオンッ!


ゆま「怖い!頭上でファンネルが飛び交ってて凄い怖い!!」タッタッタ

織莉子(やはりこちらの動きを読まれてる……リン・ビットの迎撃行動は的確で無駄がない)

織莉子「キュウベぇ!私の胸に入りなさい!」ムンズ

QB「訳が分からないよ」ズポッ

織莉子「こっからは勝負……」ギロ

あゆむ「未来予知?……いいもんもんじゃんじょん!」リン リン

織莉子「鈴の音のプレッシャーなんて……!」

ほむら「お互いにオールレンジ攻撃を止めたわ……」

杏子「未来予知と読心魔法じゃ、埒が明かないんだ……だから睨み合いになっちまう」

ほむら(でもそうなれば千歳ゆまが動きやすい……この触手さえなんとかなればまどかを

杏子「あ、ゆまの衝撃波攻撃が来る」

ゆま「シューティング・ソニック!」ボシュッ!

ほむら「ちょ」


ボゴオオンッ!

支援


~見滝原 駅前バスターミナル~


あゆちゃんの歩くペースはとんでもなく速くって、早歩きでなければ置いて行かれてしまいます

途中、電光掲示板の天気予報で今日が4月2日なのだと知ることが出来ました

つまりこれは私達が中学生になったばかりの頃の記憶


まどか「……もしかしてゆきなちゃん?」


すれ違う人々なんて居ないかのようにすいすいとあゆちゃんが進んでいく先には周辺の避難場所と主な施設が記してある案内板があって、その前で同い年くらいの女の子が一人で待っていました

紺色の髪を右側で結った女の子はゆきなちゃんで、私がその子を一瞬ゆきなちゃんだと思えなかったのは

髪がいつもの下した三つ編みでは無くてサイドポニーだったことと、お洋服がとっても可愛らしくて普段の子猫みたいな無邪気さからかけ離れていたからだと思います

明るいピンクでレースがついフレアワンピースに、動きやすそうなデニムのジャケットとスニーカー

全体的に大人っぽくて、でもどこかゆきなちゃんらしい無邪気さと可愛らしさが溢れています


まどか「そっか、ゆきなちゃんと遊びにいく思い出なんだ」

まどか(圧縮出来ないじゃなくてしなかったんじゃ……)

ゆきな「あゆむ遅い!」

あゆむ「いや、まだ約束の5分は前だろう」

まどか「ゆきなちゃんはあんなにおめかししてるのに、あゆちゃんときたら……」

ゆきな「そーじゃないの!」

あゆむ「何が?」

ゆきな「むー……朴念仁!」

あゆむ「はぁ?」

まどか「……?」

ゆきな「……」

あゆむ「あー、待った?」

ゆきな「ううん!今来たところ!」パアア

あゆむ「やりたいだけだろお前……」

ゆきな「へへ♪」

あゆむ「そう言うの、普通はうざがられるからな」

ゆきな「あゆむにしかやんないよ」ギュ

あゆむ「……」プイ


まどか「ずっとこの調子なら本当に発狂するかも」

なぎさ「これは良からぬ事なのです」ワクワク

さやかff「おい」


~バスの中~


まどか(私、バスを無賃乗車しちゃった……)

アナウンス「次は桐生市立北小学校、桐生が丘動物公園へは~~

あゆむ「押して」

ゆきな「分かって(

あゆむ「ところがぎっちょん」ピンポーン

アナウンス「次、止まります」

ゆきな「ちょっと!」

あゆむ「ははは、のろまめ!」ムギュウ

ゆきな「酷い!」

あゆむ「ほれほれ」ホッペムニムニ

ゆきな「あひゅふほばはぁー!」

あゆむ「お?」ムギュ

ゆきな「へへっ!」モミモミ

あゆむ「ふふっ!」ムニムニ

まどか「お互いほっぺつまみ合って何が楽しいのぉ……」

~~

ゆきな「はい、愛の手帳です」

運転手「ありがとうございます、えーっと料金は……」

あゆむ「……」

ゆきな「おにーさん!」ジー

運転手「ん?」

ゆきな「んーん、何にも」キィィィン

運転手「はい子供二人、愛の手帳で割引だね」

あゆむ「は?あたし小学生だけど」

運転手「? こちらの子の付き添いですよね?」

まどか「愛の手帳の割引って高校生以上の付き添い人に適用じゃ……」

あゆむ「え、えぇ?」

ゆきな「はいありがとうございます!行こうあゆむ!」

あゆむ「って、待てって!」

ゆきな「サービスだよサービス!貰えるものは貰っちゃおう!」ガッシ

あゆむ「え、おわああっ!!」

まどか「ちょ、ちょっと待ってぇ!!……あ」

まどあゆゆき「「「ありがとうございました!」」」


まどか「あれ?……愛の手帳って、何?」

支援


~桐生が丘動物公園~


まどか(ペンギン可愛かったな~)

あゆむ「へえー結構綺麗に咲いてるんだな、桜」

ゆきな「良いでしょ?無料だし一回位は来て見たかったんだ」

あゆむ「ああ、ジェラート買ってくりゃ良かったな」

まどか「腕まで組んじゃって完全にカップルだよねこれ、人ごみの中なのにこの二人の周りだけ空間出来ちゃってるもん、ていうかフラミンゴがいつにもましてピンク色に見えるよ」

ゆきな「見て見て!あのアヒル可愛い!どうしよう!」

あゆむ(ローストしても美味くなさそう……)イヤ、ヤイテモマズソウダガ

ゆきな「あゆむ今美味しくなさそうって考えたでしょ……」ジト

あゆむ「お、良く分かったじゃん」

まどか「あんなに可愛くお尻をぴょこぴょこさせて歩くアヒルを食べようだなんてどうかしてるよ」

ゆきな「あゆむの考えなんて顔にすぐ出て分かるんだからね」

あゆむ「良く言う、じゃあ今あたしが何考えてるか当ててごらん」

ゆきな「えっと……あ、これちゃんと可愛いって思ってくれてたんだ!」

あゆむ「へぇ、やるじゃん」

ゆきな「でしょ!」

あゆむ「うん……元気な感じがして凄くいいよ、その髪型」

ゆきな「ん、ふふふっ!」

あゆむ「ん?」

ゆきな「口で言われるとくすぐったいなぁって」

あゆむ「なんだよそれ」

ゆきな「あゆむだって可愛いって言われたら照れるでしょ!」

あゆむ「ん……ゆきなに言われたらそうかも」

ゆきな「う……」

あゆむ「何照れてんだよ……」

まどか「お砂糖吐きそう」

なぎさ「こう言うのバカップルって言うのです」

リボほむ「貴女みたいなのを耳年増って言うのよ」


ゆきな「ねえ、お寿司食べに行こう!」


動物園をほぼ一周した所でゆきなちゃんが提案しました

あゆちゃんはとてもそっけない返事をして、でもゆきなちゃんと手を繋いですいすいと道を進みます

隣街の来たことも見たことも無いような街、なのに彼女は迷うことなく進みます

時間と太陽で方角を、自分の歩くペースと時間で距離を割り出す事が出来るから

だから地図で大体の場所さえ覚えておけば、彼女は道に迷いません

後はお寿司やさんのありそうな所、駅の繁華街へ向けて歩いてみるだけ

ゆきなちゃんがどれだけあゆちゃんを振り回しても大丈夫です

全部どうにかしちゃうし、どうにもならなくなる前に止めてくれるから


ゆきな「ねえねえあそこ!」

あゆむ「あん?」

ゆきな「やっぱステーキ食べたい!」


……こんな風に振り回しても大丈夫です、と言うかこうなると思ってます

でもゆきなちゃんのそんな極端な素直さが私は大好きで


まどか「好、き……かな?」

まどか(いやでも修学旅行で京都行ったとき結構散々だったし、それを加味して……いや、嫌いじゃないんだけど)

まどか「あれ?え?」

支援


ゆきな「ど……どりーどなーす?」

あゆむ「ドレッドノート、勇敢とか恐れ知らずって意味」

ゆきな「へー……って、ガンダムなんだ」

まどか「Xアストレイの事……って、あれ?そんなガンダム居たっけ?」

あゆむ「良く分かったな」

ゆきな「あゆむは考えが顔に出るからね!」

まどか「ってここ、一人前が最低でも4000円するじゃない……」

あゆむ「はいはい、今日は調子が良いね」ポンポン

ゆきな「本当なんだから!」

まどか「え?入るの!?」


~ビストロ ドレッドノート~


まるでホテルです

お店はとても清潔で綺麗で、天井にぶら下がる大きなシャンデリアがここは高級店だとアピールしています

もう日が暮れ始めている外より暗いと感じさせるはずの照明と店内に流れてる静かなオーケストラがより一層高級感を引き立てていて、こんなお店はTVでしか見た事ありません

見渡しても他のお客は三組、楽しそうに会話しながらステーキを切っている老夫婦

なんだか自慢げにワインを燻らせる中年のおじさんと適当な愛想笑いを浮かべて困った様子のお姉さん、後はステーキの大きさに驚いているお兄さんとそれを見てクスクスと笑うお姉さん

共通しているのは男女の組であることと全員がドレスとかスーツとかの綺麗な服を着て行儀よく食べている事です

私がさやかちゃんとこんなお店に入ってしまったら、すぐさま回れ右をしてしまうでしょう

女性「いらっしゃいませー!」

あゆむ「二人」

女性「え」


とても丁寧に挨拶をしたお姉さんが思わず素の声を出してしまい、しまった、というような顔になります


ゆきな「ん?小学校卒業したばっかりだよ?」

女性「えっと……おk

ゆきな「二人だよ二人!」


ゆきなちゃんの声は特別大きいわけではないけれど、あまり広くない上静かなこのお店では良く通りました

従業員もお客さんも、皆が二人に注目しています


女性「えっと、その……うちはファミレスとかとは違ってね」

あゆむ「カードあるから平気、さっさと案内しろ」

女性「あ、はい……こちらの席へどうぞ……」


表情が引きつりながらも、どうにかスマイルと呼べる顔をしたお姉さんが二人を席へと案内します


まどか「もうどっちがドレッドノートなのか分からないよ……」

なぎさ「今回はここまでなのです!お疲れ様でした!」

なぎさ「次回ついに……ついに!なのです!」

>>81>>82>>83>>84>>85>>86>>87>>88>>89>>92>>93

コメントありがとうございます!!


>>82

なぎさ「見れないのです……」

さやかff「あんたがみたら泣くぞ」

>>83

なぎさ「ほむほむがOKならもちろんなぎさの胸もOKなのです!」

リボほむ「表出ろ」

>>84>>87

中沢の中の人ネタやってるんですがユキヤ君はマイナーですかそうですか

……他を知らんのです

>>85

なぎさ「そのうち遠慮なんてしなくなるのです、多分」

>>86

なぎさ「それ二人が無双して終わってしまう気がするのです」

さやかff「ダークプリキュアとか出てきそう……」

>>88

リボほむ「R18なのにまだスタンバってなかったの?もう3回は抜きどころを過ぎたわ」

さやかff「どこだよ抜き所」

こんばんは、再開します

……もうお仕事嫌だよぉ


あゆむ「しかしあれだな、なんでまたステーキなんだ?」

ゆきな「だって目に入ったんだもん」

あゆむ「だろうな」


あゆちゃんは会話をしながら腰を軽く浮かせて、運ばれてきたサラダをお皿に取り分けています

素早く、音をたてることもない自然な動きは、彼女に大人としての行儀が身に付いているのだと感じさせました


まどか「あー……お腹空いたぁ……」キュゥ


どうしてこんなにもお腹が空いてるのか自分でも不思議になりました……

そういえば魔法少女に襲われた時、胃の中の物を全部吐きだしてしまったのでそのせいかもしれません


まどか「あー……柑橘系のドレッシングの香りが空腹を極限に高めていくぅ……」


次に届いたのはスープと丸くてなんの変哲も無いパン

焼き色の付いたパンから漂う焼きたてベーカリーな香りはやっぱり私のお腹をこれでもかと刺激します

もはやこれは拷問です、今にも何かを自白してしまいそうです


まどか「うぁ~……ひもじいってこういうことを言うのかなぁ……」


ゆきなちゃんは鷲掴みでパンを齧って美味しい!と声を大にして絶賛しました

あゆちゃんはそんなゆきなちゃんに一仕切の嫌味をぶちぶちと言いながらパンを半分にちぎって、切り口にマーガリンを塗って静かに食しているのでした

そのあと美味しいって小声で言いました……とてもおいしそうだったので手を伸ばしてみましたが、残念ながら私の手はパンとヒョイっとすり抜けてしまって触ることも出来ません

――顔ごといっても駄目でした

この光景は学校の給食でも良く見られた光景で、ゆきなちゃんがあゆちゃんの真似をしてもっと大きな声を上げて、あゆちゃんに拳骨を落とされるところまでがお約束です

今回もおおむね違えることはありませんでした

それから運ばれてきた大きなお肉を見て、ゆきなちゃんのテンションはいよいよクライマックスです


ゆきな「うわぁ……!!」


ゆきなちゃんが頼んだお肉はお店では一番小さい120グラムのカットで、焼き加減はあゆちゃんによって勝手にレアにされていました

それでもファミレスで見るようなステーキの1,5倍は大きいお肉に私も興奮してしまいます、そして空腹に喘ぐのです……この香りだけでご飯食べれます、お腹すきました


ゆきな「うわ!あゆむの凄ーい!」


あゆちゃんのステーキは大きめの240グラム、焼き加減はやっぱりレアです

鉄板の上にどでんと寝そべっていて、あまりの大きさに付け合せのコーンやポテトが肩身の狭い思いで身を寄せ合っています

その様子は「食べ切れるものなら食べてみろ!」とお肉が威張ってるように見えて――今の私なら大盛りのライスが付いても食べ切れます


まどか「お腹すいたぁ~……私呪われてるかも……」


ゆきなちゃんと会話をしつつ、食事のマナーをあーだこーだとつっこみながらですが

あゆちゃんはほとんど30分かけてそのエアーズロックみたいなお肉を食べ切りました……店員さんが凄い顔であゆちゃんを見ています

ゆきなちゃんが最後の一切れを残してしまい、あゆちゃんがそれを待ってましたと言わんばかりの得意げな顔で平らげて……信じられないことにこの期に及んでメニューを開き、デザートを注文したのです

それもゆきなちゃんの了承無しに勝手に二つ頼みました……女の子に対してこれは虐めです

しばらくの間、ゆきなちゃんは食絶対にべれないと愚痴を零していましたが、運ばれた来た金縁の白くて大きな四角いお皿に乗った、コントラストの弱めな三色のロールケーキを見てコロッと笑顔になりました

生クリームの白の上にイチゴの赤、ケーキの中にキウイの緑と桃の薄い黄色が程よく映えていてその上からチョコレートソースでお皿とケーキ全体に模様が描いてあります

さっきのステーキのような傲慢さで「この大きなお皿を独り占めしている私は美味しそうでしょう?」とふんぞり返ってるように見えます――美味しそう……

お会計はあゆちゃんがカードを一枚叩きつけて終わらせてしまいました

ゆきなちゃんがいくら払えばいいのかあゆちゃんに尋ねると「千円で良いよ」と言われ、二人の割り勘はほぼ9対1で解決してしまいました

ゆきなちゃんはお金の価値が分からない子で「うんまい棒あげるから百円頂戴」と言えば「良いよ」と言っちゃう子です

数字の計算は得意なのに、何故かお金の計算が出来ないんです

結局あゆちゃんはゆきなちゃんに伝票を見せないで会計を終わらせてしまったのでゆきなちゃんは今回の正確な食費を全く把握してないと思います

……レシートはその場で破り捨ててしまったので、ゆきなちゃんの両親もこの事を知る由はありません

店員さんがあゆちゃんを凄い顔で睨んでいます、そして私は空腹のあまり腹痛で苦しんでいます


帰りのバスの中、二人は他愛の無い会話を続けました

可愛かった動物とか美味しかった料理とか……はまだ良かったんですけど、その内どの動物なら素手で倒せるのかの話になってしまいました

ゆきなちゃんはカンガルーまでは倒せると主張し、あゆちゃんはカンガルーが如何に強いのかを語ってそれを否定しました

結局キリンが地上最強だ、と決着した頃には目的地の一つ前でした


あゆむ「ん、次か」


いち早く気が付いたあゆちゃんがボタンを押して、車内にアナウンスが響きます


ゆきな「え……うん」

あゆむ「……」

ゆきな「……」

まどか「?」


突如として訪れた沈黙はバスを降りて二人が手を繋いで歩いている間も続きました

二人は無言のままゆきなちゃんの家についてしまいました
ゆきなちゃんが玄関のカギを開けて、中に入って……なんとなく目が合ったんだけど直ぐに逸らして
あゆむ「それじゃ、元気で」
少しだけゆきなちゃんの返事を待ちました
……でもゆきなちゃんが顔をあげないと見て、ゆっくりと振り替えって歩き出します
玄関を出て、三歩歩いた所であゆちゃんの裾を掴んで引き留めました
振り払うことも、振り向く事も無く……でもちゃんと歩くのを止めました


多分この二人が考えてることは同じなんだと思います

その気持ちを上手に他人に伝えることが出来ないか、感情そのものを上手く呑み込めないのか……それだけの差しかありません


まどか「見滝原小学校に転校してくるまで、あゆちゃんは友達がいなかったんだよね……」


その友達とお別れをする、というのもあゆちゃんにとって初めての体験で……

障害者学校に入るゆきなちゃんは三年かけて職業訓練をするはずです


まどか「……私が障害者学校の事を知っている、知識だけだけどもその後の事も」


卒業したらすぐに職場に出るか、もっと高度な職業訓練を積む為に専用の施設に入って忙しい毎日を送ることになります

それでなくても、函館に引っ越してしまうゆきなちゃんとあゆちゃんが次に会えるのはきっと何年も先……そう考えた時、ゆきなちゃんは手が伸びてしまいました

言葉こそありませんでしたが、ゆきなちゃんの目は赤く充血していて涙が零れています


まどか「この感情は寂しさ……あの子は感じることも出来ないんだ」


まるでその涙を誤魔化すように、ポツポツと雨が降ってきました

雨はあっという間に本降りになって、二人をビッショリに濡らします

……永遠に思えるほどの数分が過ぎて、それからゆきなちゃんが思い切りに息を吸い込んで喋りました


ゆきな「――雨宿り!……してかない?」

あゆむ「……うん」

ゆきな「じゃあえっと……お風呂入ろう!服もびっしょりだし」

あゆむ「……そうだな、そうしよう」


二人は、静かな家の中へと入っていくのでした

まどか「……ってあれ?ゆきなちゃんのお父さんとお母さんは?」

乙ー

寝落ち?

なんという まどか虐待スレ
顔から行って空振りするまどかを写メして ほむさんに送ってあげてくんしゃい

なんか青春してるな



気長に待ってるから無理の無いペースで

ほのぼのしてて最高に良い感じの百合なんだけど
造花の魔女とクダンの限界のせいで一切安らげない……

そろそろ続きが読みたいぞよ

パンツと靴下とネクタイで待ってる

待ってる…


こんばんは、再開します

なお今回は「お前の穴を埋めたいぃぃぃ!!」なお話です

なぎさ「ワクテカなのです!」キラキラ

リボほむ「眠りなさい」タン!

なぎさ「う!」バタ

さやかff「なんてことを……」

リボほむ「大丈夫、麻酔銃よ」

支援


ゆきなちゃんの寝室の、大きなベッドの上に座りながら下着だけの姿になったあゆちゃんが髪を拭いています

服を洗濯に入れて、二人はお風呂ではしゃぎました

さっきまでの暗い空気を忘れようとしたんだと思います


ゆきな「乾燥もかけるから二時間位で終わるよ」


まだ夜の七時なのにパジャマを着たゆきなちゃんが部屋に入ってきました


あゆむ「ありがと……けど、親は?」

ゆきな「なんかお引っ越しのあれこれで忙しいみたい、最近は帰りが遅いの」


言いながらあゆちゃんのとなりにすとんと腰を下ろし、自然に身を寄せました


あゆむ「そう……ん」

あゆむ(良い臭い……桃にチョコレートを足した感じの)

ゆきな「どうしたの?」

あゆむ「え……いや……何かする?」

ゆきな「何する?」

あゆむ「ぁっ……と……」

ゆきな「ナニを――する?」


今にもくっついてしまいそうな距離で二人は見つめあって、それから


あゆむ「……? ゆきな?」

ゆきな「……」

あゆむ「ん……!?」

まどか「わ」


ゆきなちゃんがおもむろに唇をくっつけました

咄嗟に身を引こうとしたあゆちゃんを抱き寄せて殆ど一方的に、その唇を貪るようにぎゅうぎゅうと押し付けて、あゆちゃんをベッドに押し倒しました


まどか「え?え?え?」

さやかff「苦手な人はほむらが出て来る所まで飛ばしてね」

リボほむ「ほむ」

さやかff「あんたじゃないっつうの」


ゆきなちゃんは左手だけであゆちゃんの両手首を信じられないほどの力で掴み、あゆちゃんの頭上の枕に沈めました


あゆむ「んんーっ!」


唇を奪われているあゆちゃんの声はくぐもっていて何を言いたいのか伝わりません

あゆちゃんの頬を涎が伝っています

ゆきなちゃんは左の膝であゆちゃんのお臍より少し上を押さえつけ、右足をあゆちゃんの両足の間に入れて、さらに自分の胸で身体を抑え込みました


あゆむ「ん!や……っ!」


開いた右手があゆちゃんの胸を撫でまわします

八の字を描くように両方の胸の上を滑らせ、その軽微な感触であゆちゃんの血圧が跳ね上がります


あゆむ「ん……!む……ぅ!」


それから指が一本ずつ離れて行って、同時に少しずつ愛撫と呼べる強さにまで力がこもってきました

人差し指だけで乳房を弄び、その感覚であゆちゃんの体に電撃が走ります


あゆむ「ふっ……うぁ……ッ!」


体中の神経が熱くなって、全身に熱を持たせ四肢の先端を痺れさせ、逆にあゆちゃんが冷静になって周りを観察するだけの余裕を持たせてしまいました

今、自分の唇を強引に奪っている少女の顔をじっと見つめて……目を閉じて自分の唇の感触を味わう少女と、結ばれる相手が決まっている自分の未来を想像しました

それからゆきなちゃんと自分が過ごした時間を思い出し、そんなにも自分を求めてくれたことを少しだけ、嬉しく思ってしまったのでした


あゆむ(ちょ……ディ、ディープキス!?どこで覚えたそんなの!?)


唇をゆきなちゃんに吸われ、微妙に開いた隙間からゆきなちゃんの舌が入ろうとして、でもそれはあゆちゃんの理性が拒みました


あゆむ(あのな、流石に一線ってものが……)

支援


侵入が許されないと分かったゆきなちゃんは少しムッとした顔をして右手であゆちゃんの鼻をつまんで呼吸出来なくしてしまいました


あゆむ「んんんんんっ!!」


どれだけの力で抵抗しても駄目でした

抑えられた両手はほとんど動かせないし、胴体も僅かに揺らせるだけで、抵抗しても胸部を圧迫されてさらに息が苦しくなるだけ。結局足をばたつかせるくらいしか出来ません

身体が酸素を求めて口を開けた瞬間にゆきなちゃんの舌が入ってきてあゆちゃんの舌と絡み合いました

その刺激は唇を触れ合わせる程度の物とは段違いで、あゆちゃんはその刺激に驚いて舌を引っ込めてしまいました。でも顔の位置を整えたゆきなちゃんが奥まで舌を入れ込んで舐め回し、生まれて来る快楽を堪能しています

あゆちゃんは生まれて来る快楽の信号を頭の中で上手く処理できず、パニックを起こしていました

意識が朦朧とする今のあゆちゃんを悩ませているのは、口の中で滅茶苦茶に暴れまわるゆきなちゃんの舌と、体が少し揺れるたびに僅かに性器を刺激してくるゆきなちゃんの膝、そして甘くてしつこくい、でもベビーパウダーのようにふわりと漂うゆきなちゃんの臭いでした

酸欠で思考能力を欠いてしまったあゆちゃんが「女としての」刺激を受け入れるようになるまで少し時間を要しました


あゆむ「ん……んんん…!」


ゆきなちゃんが右手で今度は頬をなぞって体を辿り、脇の下をくるくると渦を描くように撫でると、あゆちゃんから零れるくぐもった声は少し色を帯びてきます

支援

支援


ゆきな「ぷはっ」

あゆむ「はあっ、はぁっ、はぁっ……ッ」


ゆきなちゃんが唇を離し、ようやくまともな呼吸を出来るようになったあゆちゃんが過呼吸なんじゃないかと心配になるほど大きく息を吸いました

顔は真っ赤で、口元は唾液でべちょべちょ、目からは涙が零れていて――それはマイナスの感情だけで流れ出た涙では無いような気がします


ゆきな「ありがとう」


ゆきなちゃんは顔を耳元まで近づけて、囁くように言葉を続けました


ゆきな「受け入れてくれて、ちゃんと私で感じてくれて」

あゆむ「……こういうのは大人になってからやれよ」

ゆきな「…………初めてはあゆむが良い、あゆむの初めてもあたしが欲しい」

あゆむ「つーか……どこで覚えて来たんだこんなの」

ゆきな「ふふっ!、嫌なことををね、いっぱい知っちゃたの」


ゆきなちゃんの言葉には徐々に嗚咽が混じってきて、聞いてる私も胸がきりきりと痛むような思いでした


あゆむ「は?」

ゆきな「私ね、もう大人になれないの」

まどか「え……あの指輪って」


私はそこで、ゆきなちゃんが魔法少女であることにようやく気が付きました

そしてその指輪の光は見たことも無いほど濁っていて、彼女の運命を物語っていることも


あゆむ「それって病気かなんか?」

ゆきな「――まあ……そんなとこ、かな」

あゆむ「……手、離せよ」

さやかff「これどっちが受けか分かんないね」

リボほむ「双方受け攻め出来なきゃ同性愛は続かないわ」

さやかff「何いってんだあんた」


手を離すと、あゆちゃんはしっかりとゆきなちゃんを抱きしめてありったけの「愛」と呼べる感情をこめてキスをしました

感情のこもったキスは二人を深い快楽の海に沈めて、その思考を完全にマヒさせてしまいました

唇を押し付け合うだけだったのが、あゆちゃんの方からゆきなちゃんの口の中へ侵入して咥内を舐め回していきました

ぴちゃぴちゃと艶やかな音をたててディープキスに夢中になっています


ゆきな「ん……ひゃあぁつ!」


油断しているすきをついてあゆちゃんが体の上下を返してゆきなちゃんの上を取りました


あゆむ「さーて、今度はお前が喘ぐ番に(おわ!」

ゆきな「だーめ!すっと私のターンだもん!」

あゆむ「んの野郎!」


あゆちゃんがどんな風に暴れても当然魔法少女のゆきなちゃんには敵わず、あゆちゃんはうつ伏せの姿勢を無理矢理とらされて、さっきまで髪を拭くのに使っていたバスタオルで両手首を縛られてしまいました


あゆむ「はあ……はあ……マジかよ」

ゆきな「ふぅ……こっちの寝技は私の勝ちだね!」

あゆむ「参ったよ、もう好きにしな」


言い方こそつっけんどんでしたがあゆちゃんの瞳には明らかな期待の色が浮かんでいました

支援


それはゆきなちゃんが最後に選んでくれたのが自分であることが嬉しくて

家族よりも、友達のあゆちゃんを選んでくれたような気がして嬉しくて

――何より、いつまでも心に残る「何か」をあゆちゃんは求めました

きっとゆきなちゃんもあゆちゃんの心に残る「何か」になりたかったんだと思います


ゆきな「じゃ、遠慮無く!」


それさえあれば二人はいつまでも、永遠に繋がっていられるような気がして


あゆむ「ん……!」


あゆちゃんからの同意を勝ち取ったゆきなちゃんが首筋をつーっと舐めて、お尻を揉むとあゆちゃんはさっきよりも甲高い声をあげてしまいます


あゆむ「はぅ……ん!」

ゆきな「へー、縛られた方が感じるの?」

あゆむ「……うっさい――いったぁ!!?」

ゆきな「あ……ごめんね!そんな強くやるつもりじゃ!」

あゆむ「お前一回自分の乳首つまんでみろよ!」

ゆきな「じゃあもうつままないね」

あゆむ「うわ……ぁッ!」

ゆきなちゃんが手をまわして、下着の上からあゆちゃんの乳首を指で軽く弾くように撫でると、ぞくぞくとした何かが走りました

それは背中の筋肉をある一点へ向けて強制的に収縮させ、あゆちゃんの体がビクンと仰け反ります

そんなあゆちゃんの姿を見て、ゆきなちゃんもたまらずあゆちゃんにキスをして、さらに自分の股間をあゆちゃんの太ももに押し付けて刺激を求め始めました

乳首とお尻と、太ももと唇の四点を犯されてるあゆちゃんも流石に疼いてきたのか、ベッドに擦り付けるようにして刺激を求めました

支援


あゆむ「う!ちょ……苦し……」

ゆきな「んあ!なんか……良く分かんないけどぞわぞわしてきた!」


その内ゆきなちゃんの方が我慢できなくなってあゆちゃんの胸に手をまわして抱きしめ、膝であゆちゃんの脇腹をがっちり締め上げて自身のパンツをずり下して露出した性器をあゆちゃんを縛っているバスタオルに押し当て、体を前後させて刺激を与えました


ゆきな「はあ、はあ、はあ……ああッ!!」

あゆむ「むっ……ぐぅ……ッ!!」

あゆむ(ち、力ありすぎ!!締め付けめっちゃ苦しいんだけど!!)

あゆむ(……でも)


苦しければ苦しいほどあゆちゃんは昂ぶって、刺激に敏感になって体が疼くのです

ゆきなちゃんが前後するたびにあゆちゃんの体も僅かに揺れて、布団に押し付けられている性器に刺激が走って、高められていきます

そしてゆきなちゃんのそれはどんどん激しさを増していき


ゆきな「ハア、ハア……ん……んああああッ!!」

あゆむ「ぢょ……マジでぐるじぃ……」


ゆきなちゃんがピークを迎えると同時にあゆちゃんをとんでもない力で抱きしめ、あゆちゃんの上でぐったりと力尽きたように倒れ込み、ピクピクと痙攣して余韻に浸っています

体がぴったりとくっついて熱いとさえ思うほどの体温とうるさいくらいに高鳴る心臓があゆちゃんにも感じられました

支援


あゆむ「……ほれほれ」

ゆきな「ふっ!?――いやッあぁッ!!」


倒れ込んでいるゆきなちゃんの性器をあゆちゃんが手首のバスタオルで擦りました


あゆむ「人の上でオナニーして絶頂かよ、真性じゃねえかこの変態」

ゆきな「ま、待って!……な、なんか――変な、のぉ!」

あゆむ「とか言いつつどかないとかどんな神経してんだよ?馬鹿だろお前」

ゆきな「ふぁ!?ひゃあッ!あ、ああッ!」


縛られてる両手で突き上げるようにしてゆきなちゃんを責めます


あゆむ「ちょっと腰浮かせろ、重いんだよゴミ屑」

ゆきな「うぅッ!」


ゆきなちゃんが四つん這いで腰を浮かせた瞬間あゆちゃんは縛られた手でゆきなちゃんの股間を軽く叩きました

ドアをノックするような軽い叩き方でしたけど、それでもゆきなちゃんの全身に電流が走ってまた倒れ込んでしまいます

あゆちゃんがまた口汚く文句を言ってゆきなちゃんがぷるぷると震えながら腰を浮かせて、叩かれて倒れ込んで――倒れ込んでくるたびにあゆちゃんも痛くて苦しいんですけど、今はゆきなちゃんから受ける苦痛なら何でも気持ち良いのです

もう10回は同じことを繰り返してついにゆきなちゃんがあゆちゃんの手を掴んで自分の性器に押し当てました

支援

さやかff「マニアックなのが始まったなぁ……」

リボほむ「これ昂ってるから気持ちいいだけで素でやられてら内蔵が突き上げられたみたいな感じがして苦しいだけよ」

さやかff「何いってんだあんた」


何度も何度も寸前で止められて、ついにゆきなちゃんもギブアップしました


ゆきな「いぅ……!」

あゆむ「はん?」

ゆきな「逝く!逝きます!逝きますぅッ!」

あゆむ「えー、どうしよっかなぁ」

ゆきな「嫌だぁ!!逝きます!いきますぅ!!」


あゆちゃんはその返事を聞いても何も言わず、代わりに彼女の手が誰の目にも分かるような激しいピストン運動を始めました


ゆきな「ああ、ああっ!!うああーっ!!」


ぎゅぅっとあゆちゃんの指を締め付けて、熱い液体を噴きながらゆきなちゃんが崩れ落ちました

涙を流していますが表情はとても満足そうで、うっすらと笑みを零してすらいます


あゆむ「さて」


あゆちゃんがゆきなちゃんを背中から振り落とし、起き上った瞬間でした

ゆきなちゃんが飛び掛かるようにしてあゆちゃんを押し倒し、キスをして言いました


ゆきな「オナニーして鎮めて終わりだなんて、そんな寂しい思いはさせないよ」

あゆむ「ふん!ちょっと期待してたけど、立ち直りが早いんじゃない?」


そんなことを言っても表情はとっても嬉しそうで期待に満ち溢れています


ゆきな「今度はお返し、泣いたって叫んだって許してあげないからね」

支援


~さざ波ホール(魔女の結界)~


ほむら「まどか!さやか!」


触手に捕まり、あゆむによって何かの魔法を受けたまどかは完全に力尽きた様子で首をもたげ、常に口元が動いて何かを呟いている

目を開けてこそいるがその瞳には光も宿っておらず、焦点もあっていない

全身を貫かれて地面に縫い付けられ、頭を潰されたさやかの方はもはや見るに堪えない悲惨な姿であった


あゆむ「おらぁッ!!」


光線を放ってほむらを攻撃したが、その光線は織莉子の水晶玉をぶつけられて僅かに進路が逸れて外れた


あゆむ「へえ、あいつ今変身出来ないんだ!!」バッ

ほむら「しまった!杏子!」


羽を持つ鈴が無数に出現して杏子目がけて襲来し、各々が光線で杏子を焼き払おうと迫る


杏子「っ!」

ゆま「杏子!!」


素早く射線に割り込んで薄い黄緑色の球状バリアを形成して杏子を守った


織莉子(ゆまさんが視界に入った、これで思考が読まれる……でも、もう遅い)

キリカ(せめて一撃で!)


ガィインッ!!


あゆむの首を確かに捉えたはずの爪は現出した赤い飴に守られて、金属音だけが鳴り響いた


キリカ「んなっ!?」

あゆむ「残念でした!吐息がきこえてましたよぉう!!」


右手を光の剣へと変化させてキリカを切り払った、その斬撃を間一髪で回避して距離を取ったところへ鈴が集中砲火をかけて追い込む


キリカ(ぐ……!数が多くて、躱し切れない!?)


キリカの機動力をも捉える絨毯爆撃、だが次の瞬間それらの攻撃の一切がやんだ


キリカ「え、なに……?」

支援


攻撃を仕掛けていたあゆむ本人がいきなり崩れ落ちたのだ

ほむら「……あ、あゆむ!!」

杏子「あいつ、なんでいきなりぶっ倒れたんだ?」

あゆむ「あ……あれ?体が動きません?」

織莉子「それが貴女の未来よ」


湧き上がる破壊衝動を実現させるために起き上がろうとするあゆむ

織莉子はそんな彼女に歩いて詰めより、冷静に語りかけた

あゆむ「ははぁん?」

織莉子「私が見た未来、その新聞には『原因不明の失血死』と言う一文があるの」


それはあゆむの今の状況と、この戦いが絶対に勝ち目のないものであることを物語っていた


ほむら「!!」

あゆむ「ほほう、それで?」

織莉子「これで終わりにするか、続けるか」

あゆむ「んな決定権はてめぇにねーよばーか!」


それは差しのべられた手にナイフを突き立てるような愚行

魔力があゆむの全身を覆って、操り人形のような挙動であゆむが立ち上がった


織莉子「そう」

QB「外骨格を魔女の飴で形成して動けなくなった体を無理矢理動かすなんて……恐ろしい執念だね」

織莉子「それが恨みと言うものよ」


中空の鈴から放たれ、飛び交う光線を躱しながら織莉子は淡々と言った

さやかff「今回はここまでですお疲れ様でした!」

>>120>>121

はい、寝落ちしました……ごめんなさいorz

>>122

沙々「嫌ですねぇ!虐待なんてしてませんよぅ!」

さやかff「表に出ろ」

>>124

さやかff「安らいでいいのよ?」

リボほむ「落差が大きいほど感情エネルギーが出るって言ってたわ」


>>127

リボほむ「パンツも脱いで良いのよ?」


>>123>>125>>128

コメントありがとうございます!

こんばんは、再開します


「づき……おい、葉月!」

かえで「葉月!」

あゆむ「――えっ!?」

和子「葉月さーん?居眠りはせめて「私は眠らないように努力しました」って伝わる態度でして欲しいのですけれど」

あゆむ「……」


~~


ゆうか「あっははは!あれは堂々と寝過ぎだって!」

あゆむ「……」

あやか「でもどうしたの?とっても寝不足みたいな顔してるよ」

ゆうか「そりゃ明日から夏休みだし、気が抜けっぱなしになるのも分かるけどさ」

あゆむ「いや、その…………ちょっと悩み事があってな」

あやか「悩み事って?」

あゆむ「普通のジークヴルムを三積みするかヴェガを三積みするか」

ゆうか「うーん……あたしだったらヴェガをガン積みしてマジック差し込むかなぁ……」

あゆむ「どの道中盤はダノヴァ頼りだしなぁ……」

ゆうか「そう言えば昨日ジェミニ軸作ったから試したいな」

あやか「…………」


あゆむ「どうせ我が友でごり押しだろ」

ゆうか「まあアスクレとジェミニで荒らしまくってからのレオだね」

あやか「ねえ」

あゆむ「ん?」

あやか「本当にそれだけなの?」

あゆむ「取り合えずな」

あやか「…………」

ゆうか「ま、ヒョイっと相談出来る内容なら考えこんだりはしないよね」

あゆむ「良く分かってんじゃん」

ゆうか「一応聞いておくけど夏休み中には解決する用事なのかにゃー?」

あゆむ「……お歯黒祝い」

ゆうか「え?」

あゆむ「夏休み中に解決する程度の案件だよ」

あやか「お歯黒、って……昔のお化粧だよね」

あゆむ「うちの女は13才になるとその状態で屈辱的な写真を撮るの」

あゆむ(……水揚げしてからな)

ゆうか「うわ、それめっちゃ痛いやつじゃん!つか黒歴史確定!?」

あやか「それは……うん、悩むね」

あゆむ「故に8月23日まではナイーブなんだよ」

ゆうか「ギリ乙女座乙」

あやか「センチメンタリズムなんだね」

あゆむ「そして我慢弱い」


~~


姫名「お帰りなさいませ」

あゆむ「……ただいま」

姫名「昼食の用意は出来ています、取り敢えず喉が渇いているでしょうし……はい、ガラナ」

あゆむ「何故ガラナ」


昼食のパスタ(イカスミ)が思ってたより良い味だったのと、お腹に溜まらなくて食べやすかったので三回お代わりしてしまった

部屋で私服に着替えながら今日の予定を決めていたら、ドアの外から姫名が話し掛けてきた


姫名「そういえば旦那様がお呼びです、食事が済んだら屋敷へ出向いて欲しいそうで」

あゆむ「は?なんで?」


取り合えず集合時間までスパロボをしようと決めた所だったので、言い方もぶっきらぼうになる

ゲイナーに再攻撃を覚えさせ、次に参入するキラに援護攻撃を習得させ……と具体的な所まで組み立てていたので余計に


姫名「父親としてお話をしたいのでしょう」


しかも心底下らない理由と言うのが余計にイライラさせる


姫名「まもる様も先程出向かれましたので後を追ってあげて下さい」

あゆむ「……はぁ」


あいつを一人で行かせるとどうなるのか分かっているんだろうか、こいつは

…………分かってるんだろうなぁ


執事「おやお嬢様、何か用事ですかな?」

あゆむ「ああ」


母屋の屋敷は5階建のビルで、葉月一族が暮らす家で有ると同時に父親の経営する会社のオフィスでもある

一階から三階はオフィスなのでエレベーターで一発だが「人の住む家にエレベーターなど!」と発言した耄碌ジジィのおかげで四階から上は歩いて行かなければならない

このせいで毎回、遊んでるんだか働いてるんだか良く分からないバカ供に絡まれる


叔母「あらあゆむ、なんの用があって来たのかしら?」

あゆむ「喋るな無能」

叔母「……クソガキが」ボソ


エレベーターを降りた所で早速馬鹿に噛みつかれた

入れ替わりに乗ったババアが扉が閉じるのと同時に呟いた一言も、あたしにはちゃんと聞こえる

小さいころから陰口を言われ続けたあたしの耳は異様に良く、どんな小さな声でも聞き逃さない

火災報知機のベルを聞くと立ちくらみをするほど


あゆむ「……無能だよな、ああいう大人って」


あたしの母親はこの会社の社員で、かなりの実力者だそうだ

元々身内絡みの人事が多くて、外様は割と冷遇される中でも実績で地位を築きあげて行った

その最中で葉月 毅と結ばれてあたしを産み、現在も『花乃歌』へ名を変えたこの会社で働いている


女性社員「こらあゆむ君、そんな言葉使っちゃ駄目だよ」

あゆむ「…………」


『あゆむ君』ってのはあだ名だ

名前が男っぽい、態度が男っぽい、見た目もなんだか少年的

あたしが5才の頃「娘が生まれた」と説明した2年後に「息子が生まれた」と説明された事で勘違いしたとある男性社員が偶然そう呼んだのがきっかけ

あたしもその時はすんなりと返事をしたし、特に不快な気持ちも無かった

……今ではたまにイラッと来る、悪気が無いのは分かっていても

身内人事で威張っている馬鹿に暴言を吐けるあたしは、社員達にとって不愉快な存在ではなく、むしろ自分たちの仲間たちの娘ですらあるのでそれなりに歓迎される

……本当は歓迎してくれる人と、八つ当たりに近い嫌味を吐く人に別れる


無意味に重くて大きな木の扉を開けると、そこから先が葉月一族の巣となっている

開いたすぐそこはまずリビング、というよりはピアノの置いてある大広間だ


従弟「うわ、怪物野郎だ!!」

従弟「やめとけよ!食い殺されるぞ!」

あゆむ「……」


叔父が12人、叔母が7人もいるのだから従妹弟の数も相応。数えるのが嫌になる

そいつらの親が親なので、あたしのハブられ方も酷いもの

年が近い奴らは「バケモノ」「ケダモノ」と呼んで嫉妬と嫌悪の気持ち悪い視線

もっと圧倒的に幼い子達は「怪物」「悪魔」「妖怪」と呼んで好奇心と共に恐れる


あゆむ「腰の辺りから引きちぎるぞガキ共」

従弟「うわー!」

従弟「やべえ逃げろ逃げろ!」


少し凄んで脅かせばさっさと退散し、物陰から窺ってまた凄まれてびくっと逃げて……


あゆむ「腕もぎ取るぞテメェ」

従弟「やべ、怖ぇっ!!」

従弟「捕まったら死ぬぞ!」


まだ小学校にも通っていない子供が邪悪な気持ちでそういうことをしている訳ではなく、あれが自分たちの親や兄弟とのコミュニケーションの取り方になってる

あの子達なりに構って欲しいから、真似をしてみてるだけ……そう分かるから、なんて言うか怒る気にならない

それに気づけたのはゆきなのおかげだ……いやゆきなのせい、か?

そんなあの子達も何年かすると気が付いてしまう

このままだとあたしがこの家で一番偉くなってしまうことに

ガキ共をスルーして階段を登ってすぐの廊下で従妹に出くわした


従妹「あら、あゆむ様。ご機嫌はいかが?」

従妹「ああ、今日もまた凛々しいですわ」


この家で「様」されるのは男だけ、つまりそうやってあたしを虐めているつもりだ

こいつらはあたしと1つしか年が違わないのだから、仕返しに手加減がいらないので気が楽だ

機嫌も悪いし泣かすことにしよう


あゆむ「ああ、もっと褒めてもいいぜ」


吊り上った口元と、わざわざ顔を上に向けて見下すような視線を向ける


あゆむ「それしか能の無いモブキャラ共」


頬をがっちりつかんで目を覗き込み、顔を思いっきり近づけて……自分より年下の女子が恐怖に震える顔は最高だ


従妹「は……離しなさい、ケダモノが!」

あゆむ「そう言うなよ、これでも結構好きなんだぜ」


ノースリーブのシャツの脇から手を突っ込むと言葉も失って固まった


あゆむ「お・ん・な・の……こ」

従妹「い、き、気持ち悪い!!」


振り払おうとしたのか、あるいは突き飛ばそうとしたのか、ともかく向けられた手を捕まえて引き寄せ、軸足を蹴り飛ばして体制を崩して抱きかかえた


あゆむ「つれない事言うなよ、可愛がってあげるからさ」

従妹「い、嫌……!」

あゆむ「……胸も無えし、お前なんか臭えし――価値無えじゃん、くたばれよ」

従妹「ひ……!」

あゆむ「は、ニキビも出来てるし、ああ腋毛も生えてるな……身だしなみ位まともに整えとけよカス」

従妹「ぅ……ぅ」


あゆむ「頭も悪いようだしな、おっと、これはお前の親の教育が悪いのか……さぞかしお頭の足りない大人なんだろうな、お前の親。ちゃんと社会に貢献出来てるの?つーか今後出番あるの?」

従妹「…………」ウルッ

あゆむ「へえ泣くの?一言も言い返せないまま負けをお認めになられますか?いやいや、優秀な親御さんに生まれた子供はモノが違うね」

あゆむ「ああ違うか、獣(ケダモノ)と会話するなんて無意味な事をしないその判断、尊敬するね。お父様とお母様から習ったの?」

従妹「う、ぅぅッ!……ひっ……!」


まあここまで言えば大体泣く


あゆむ「おっと、逃げんなよ」


もう一人の従妹もがっちりと捕まえて……こっちはどういたぶろうか考えてなかった


従妹「いやあああ離して!バケモノ!!」

あゆむ「へえそっちがお望み?じゃあバケモノとしての真骨頂をお見せしようか」


去年、親族同士の集まりで、あたしは年の近い従妹弟12人を同時に相手取ってこの上なく圧勝した

最初は3対1だったのだけど、いつの間にか人数が増えてそんなことになって、姫名が止めるまでフルボッコとしか言いようの無い蹂躙ぶりだった

それ以降ついたあだ名が「バケモノ」だ、実は気に入っている


まもる「姉ちゃん!何やってるの!?」


関節技をがっちり決めたところで偶然にもまもるが現れた

というより泣き声を聞いて様子を見に来た風だ


あゆむ「喧嘩を売られた、言い値で買った」

従妹「うわああああん!!」

まもる「ちょ、ちょっとぉ!!」

あゆむ「殺されたいのか、ゴミ以下」

乙です

つまりあゆあゆは睡眠障害出る前から寝まくりだった、と

そういやまどかは相変わらずコレ観察してるのか
空腹と戦いながら
食事シーン見るたびに×××ながら

こんばんは 再開します

さやかff「あ、下ネタとか普通に出て来るよ……って今更か」


iphone「スタンダットゥ・ザ・ヴィクトリィー♪ いくつもの(

あゆむ「ん……いつ寝たんだ……」ツイ


昨夜、布団の上でスパロボをしていたらいつの間にか寝落ちしていたようだ


iphone〈クールシミ シカ ミーエナクテ♪

あゆむ「ふぁー……ん?」ツイッ

あゆむ(メール……)ツイツイ


予想通りというべきか、あやかとゆうかから来たメール


あゆむ「……ふふっ!ハッピーバースデイ、あたし」


予想通り、だからちょっとだけ、今日が嬉しくなる


寝起きのシャワーだけ浴びて部屋に篭ってスパロボをプレイ

昨日はスローネツヴァイと戦っている最中に寝落ちしてしまった、なので仕留める


まもる「姉ちゃん、ちょっと良い?」


ドアの向こうから弟者が話しかけてきた、もちろん聞かない


あゆむ「話しかけんな死ね」


このゲームのデュナメスのトランザム攻撃は超絶格好いい、つい戦闘ムービーをONにしてしまう


まもる「しゅ、宿題で分からないところが……」

あゆむ「殺されたいか」


ちなみに宿題については捲りもしない派だ

義務教育期間は勉強しないことに決めている

つーかしなくて困ったことが無い、あれなら筋トレをしていた方がマシだし、今は何よりスパロボをしていたい


姫名「まもる様、今日のお嬢様は食事を禁止されているゆえ大変不機嫌です。話しかけないほうが賢明かと」

まもる「えぇ……と、うん」

あゆむ「…………」


まあ、まもるなりに気を効かせてくれたってのは分かる

ので殴りには行かないし、あたしにしては珍しく貶めるようなことも言わない


あゆむ(セックスかぁ……)


ゆきなとしたのを思い出すと体がかあっと熱くなる

でも、自分が男性器にやられているのを想像してもなんともない……触手とかおもちゃならまあまあなんだけど


あゆむ「……あたし男嫌いなのかな」

支援


日も沈んで夜になった

今日という日をもて余し、日中特に意味もなく三回シャワーを浴びたあたしは、多分一部の隙もなく清潔だ


あゆむ「…………」ジー


……清潔だから姿見を覗いてる訳じゃない

水揚げの時に着る服があんまりにアレだからつい眺めてる

ざっくり言うなら白い無地の浴衣

膝より少し上まで切り詰めて有るのとノースリーブなのを除けば、だけど


あゆむ(……エロい)


自分の身体とは思えないほど……何て言うのか、可愛い

いや、やらしい?

布切れ一枚と帯一本だけで覆い隠してる、と思うとなんてはしたない格好なんだろう

足をあげてみたり腰を下ろしてみたりしたけど、意外な程性器は露出しない

……駄目だ、今の自分を見てると身体が熱を持って色々止まらなくなる

最後にスマホで自撮りを初めて、際どい角度を極めた辺りで姫名が戸を叩いた

写真を鍵つきフォルダにしまって、それから上着を羽織って部屋を出た

なぎさ「なぎさには訳が分からないのです」

リボほむ「子供ね」


夕方頃から降り出した雨は土砂降りになっていた

むき出しになってる脚に水滴が当たって冷たい、そして下着の無い性器に外気が当たると体の奥底が一気に冷えるようだ

ぶっちゃけ寒い


海里「大丈夫?」


傘をさしてくれているお母さんが話しかけてきた


あゆむ「んん」


やる気がない返事なんて物じゃない

けど、あたしは半分聞いてなかったんだししょうがない


姫名「要するに黴臭い風習です、我慢してください」

あゆむ「あー」

海里「聞いてる?」

あゆむ「聞いてない」

毅「来たか……準備は良いか、あゆむ」

あゆむ「良くねえよ」

海里「大丈夫よ、いつかは誰もが通る道だもの……私だってちゃんと恋した男性として欲しいと思っているけど……」

あゆむ「……」


母屋に入って奥へと進んで、目的地は5階にある家長のお部屋

途中の広間で従兄弟達が7、8人集まってスマブラⅩで遊んでいた

上は11歳、下は6歳……よくもまあ喧嘩にならないもんだ

一応叔母が二人いて、少し離れたテーブルでお酒を飲んで笑っている

こっちに気づくと一応の会釈と「おめでとう」「しっかりね」とだけ言葉をくれた

通り過ぎた後「テクノブレイクで死なないかな」と言っていたのはあたしの耳にだけ届いている

そのあとは自分たちの初体験の話を始めたので、意識を割くのを止めた

なぎさ「テクノブレイクってなんなのですか?」

リボほむ「[らめぇぇっ!]語を言いながら死ぬことよ」

なぎさ「……なぎ?」


家長の寝室は大きな畳の和室で、すでに叔父と祖父である家長が揃って正座している

全員和服姿で、それこそ時代劇でも無きゃ見れないような絵図

最初に良く分からない呪文でお祓いをする坊さんの坊主の話を聞いて、ジジィがなんかぐちぐちと言った後乾杯をして、アホみたいにマズイ日本酒を一杯飲まされて、あたしの両親はここで退出

姫名は布団だけ手早く敷いて場を整え、燭台に火をつけて

それからあたしの顔に薄めのナチュラルメイクを施した後、頭に手を置いてから「大丈夫、怖くないから」とだけ囁いて去った

…………なんだろうね、この胸の内側にある小さな対流みたいなものは

やがて部屋の照明が落ちて、蝋燭の弱い明かりと静寂が部屋を支配する

ああ嘘ついた。雨の音が信じられない程うるさい、ので静寂とは言わない


~~


ほむら「止めて!!このまま続けても貴女が死んでしまうだけなのよ!」

あゆむ「あああああああッッ!!!!」


身体を赤い水晶体で覆ったあゆむが獣のごとく吠え、鈴が呼応してその殺意を具現化するかのように光線をほむらへ放った


ほむら「!?」

ゆま「えい!ってごめんやっぱダメェッ!!」

ほむら「ぐっ!」


とっさにゆまが飛び込み、緑色のバリアで防いだがそれも一瞬で貫かれて吹き飛ばされた


キリカ「ゆまちゃんの『ヴィクティム・サンクチュアリ』が一瞬で!?」

ゆま(そんな名前つけてないんだけど……)

あゆむ「うああああッ!!」


強化した四肢で二人を潰そうと飛び掛かるあゆむ


ゆま(やられちゃう!!)

     オ ネ ス ト
織莉子「『手札の光』!」


長方形の光の壁があゆむを受け止めて押し返した

織莉子の水晶玉が続けざまに反撃を繰り出してあゆむの足を止める


ゆま「ふぇぇ、怖かったー……」


支援

支援


キリカ「『スリリング・スリング』!!」

織莉子「キリカ!」

キリカ「おーらい!!」


三本のカギ爪で作られたアームに魔法のワイヤーを付けて飛ばすアンカー

スリングであゆむの右腕を捕え力技で振り回して地面へ叩きつけ、さらに上から水晶玉が降り注いで土煙が上がる


QB「鬼畜の如き連携攻撃だね、慈悲も何もないじゃないか」

織莉子「この程度で死ぬような子にここまで苦戦するわけないでしょ」

あゆむ「があああああッッ!!」

キリカ「それ見たことか」


叩きつけは質量キャンセルで無理矢理に軽減し、水晶玉は全身の飴を膨張させてバリアのようにして防いだ


織莉子(あの飴をどうにかしないとまともに攻撃も通らない……)


事実あの赤い水晶のような飴は『七色の翼』の攻撃を悉く防御していて、まともに通った攻撃は巴 マミの打撃位だった

その巴 マミも今はダウンしていており、ゆまの治癒魔法をもってしても回復までかなり時間がかかる状態だ


ほむら「もう止めてよ!あゆむ!」

ゆま「無茶だよ!!」

ほむら「聞こえているでしょ?私の声!」

あゆむ「アアアアアッ!!」


ほむらの呼びかけも虚しく攻撃を止めないあゆむ

そのあゆむからほむらを守るため、ゆまが横からハンマーで殴りかかった


ゆま「うりゃあああ!!――えっ!?」

ほむら「ゆま!!」


その一撃は一瞬だけ膨張した飴によって軽くいなされ、頭上の鈴が素早く敵意の排除に乗り出す


ゆま「あ、ありがと……きゃあッ!!」


ほむらが飛び込んでゆまを助け出したが、不安定な体勢であゆむ本人との攻防を強いられる


ほむら(こんな体勢からじゃ……!)

支援


キリカ「おりゃ!」

織莉子「やらせない!」


キリカが上から救い上げるように爪で斬りかかり、あゆむが視線を向けた瞬間織莉子の掌底が炸裂しあゆむを空へ吹き飛ばす、しかしすぐに体勢を立て直してビームの乱射へと攻撃を切り替えてきた

各々が避けて散開し、機を窺う


ほむら「やめてよあゆむ!ゆきなちゃんの魔法で誰かを傷つけないで!!」チャ

ゆま(ゆきな……会ったことも無い、私の先輩……)

織莉子「言葉も届かない、約束をしたわけでもない」

キリカ「後輩を泣かせるのは忍びないけど、『ヴァイブレイション・ネイル』!!」

織莉子「『ズワルトピアス』!」


ほむらの発砲を防いだのに合わせて二人が仕掛けた

銃弾を防ぐために膨張した飴に向かってキリカが爪を突き立て、杭の生えた水晶玉が全方位からあゆむに飛び掛かる


あゆむ「!!?」


全てを防ぐため全身に飴を纏って防御の体制になった


キリカ「絶対防御だろうが関係ない!」

織莉子「このまま時間切れまで抑えさせてもらうわ」

QB「姑息極まるね君たち二人は」


実際これが織莉子の狙いであり、これまでの戦闘で飴をあやつる魔法と鈴を操る魔法をあゆむは上手く両立出来ないでいた

よって防御に集中させてしまえばほとんどの反撃を封殺出来る

時間さえかければ失血死するあゆむの弱点を突く戦法であり、実際姑息だと織莉子も感じてはいる


織莉子(余裕があればもう少しいい方法を考えるのでしょけど……ね)

支援


ほむら「あゆむ……」

杏子「これで決まりだ……あいつがくたばるまで二人が上から押さえつけ続けるだけだ」

ゆま「……」

ほむら「あの子と分かち合えたものが、いっぱいあるつもりだった……でも……」カクン

杏子「あんたが悪いわけじゃないさ、さやかの話だって聞きやしなかったんだから……あたしも、最後にちゃんと謝ってやれないのが悔しい」

ゆま「違うよ!」

ほむら「……グスン」

ゆま「言葉じゃなくって、約束でもなくって、それでも……分かち合える何かがあるよ!それはきっと力になる!」

杏子「ゆま……」

ゆま「だから泣かないで……泣いて大人になるなんて、悲しすぎるよ」

ほむら「……」ゴシゴシ

杏子「ほむら……」

杏子(あゆむとはちゃんと友達になれてたんだな……)

ゆま「このまま終わったら……私だって嫌だ!……あのあゆむって人はきっと……」

杏子「あいつを知っているのか?」

ゆま「多分……だけど」

ほむら「……まどかとさやかを助けなきゃ」スク

杏子「おい、ほむら……行っちまった」

ゆま「すぅー……はぁー……すぅー――」

ゆま(12で笑って、34も笑って、56で前見て、78せーの――)

支援


~~


あゆむ「はあっ……はあっ……!」


もうすぐ日を跨ぐ夜の中、冷たい雨が風邪で流れて横から体を叩く

工業地帯の真ん中にある大きな川に沿って生えている防波堤を兼ねた森の中を、あたしは独りで必死に走っていた

身に着けているのは布きれ一枚だけ、下着も無い上裸足のままで、とにかく人がいないと思う方へ走っている

……水揚げの儀から逃げてきた

最初はそれなりに順調だった、聞いていた通りというか想像していた通りというか

祖父があたしの性器をまさぐってしばらくしたら、顔色を変えて怒鳴りだした

あたしが処女じゃなかったから、そのことを問い詰めた

あたしも答えに詰まってしまって、その場にいた叔父達にも散々に言われた

その内祖父が手を出してきて、頬を力いっぱいに叩かれた

周りの男たちに両手を掴まれて髪を掴まれて顔をあげさせられて、また罵倒されて罵られて、突き飛ばされた

そして叔父達の中でも一番若い、大学1年生の葉月 まことの「まだガキなんだから縛って拷問すれば答えるんじゃね?」という言葉はあたしがとっさに逃げ出すのに十分な恐怖を与えた

目の前にいた祖父を蹴り飛ばして部屋を抜けて、途中のふすまを外して足止めにしたりして4階に降りた

そこにはみんなが集まっていた

両親もそうだし、従兄弟たちもまだゲームをしていた

最悪なのはそこに姫名がいた事だ、姫名にかかればあたしなんて一瞬で拘束される

説明すればお母さんも姫名も味方をしてくれたのかも知れない

でもあたしの味方をして、その後は……?

冷静に考えれば、あたしは別に悪くなかったかもしれない

ちゃんと説明すればみんな案外納得したのかもしれない

でも、あたしは暴力への恐怖と、貶められたことへの怒りで冷静じゃなかった

支援


姫名が静止の声をかけると同時に駆け寄ろうとしたのを見て、近くにいた6歳の従妹を捕まえて人質にして、姫名に離れるよう言った

お母さんが心配して言葉をかけようとした時に、叔父達が追い付いて口々にあたしのしたことを責めた

それを聞いた叔母や他の従兄弟達もあたしと、お母さんにも悪口をぶつけてきて……

そのあたりで何もかもがどうでもよくなった

従妹を姫名に投げつけて洗濯物入れに飛び込んで落ちた先、一階の洗濯室の窓から飛び出した

プールのための貯水室、そこにある大きな排水路に飛び込んで、真っ暗で何も見えない下水道を何も考えずに走った

途中で柵があったりして進めないところがあったけど、そういう所は近くに外に出るための出入り口があって……ほとんど全裸だったので人目を避けるためにまた近くの排水路に入って、この川の所まできた


森の中にはホームレスがいるからか、人が歩ける程度の道があった

足の裏で泥の感触を憶えながら、たまに石が落ちているので目測で回避しながら近くの大きな橋の下まで逃げて、柱に囲まれて道から見えにくいところに身を潜めた

そこは橋のほとんど真ん中で、コンクリートの打ちっぱなしで作られている床は悪路を走り抜けてきた素足にはとても優しく感じられた

川の水位は雨の影響でかなり高くなっていて、水中へ伸びている坂のタイルの上から二枚目まで浸食している

とにかくそんななにも無い所でもようやっとたどり着いた落ち着ける場所

倒れ込むようにして柱にもたれかかって、まずは息を落ち着かせる


あゆむ「はあっ……はあっ……」


ここまで普通に最短ルートをたどって走っても15分はかかるだろう

そんなところまで遠回りをしながらノンストップで、しかも裸足のままかけて来たんだから、足にもかなりの負担となっている

体中の筋肉が解けて地面に流れていくような錯覚もある、しばらくは動けそうもなかった

支援


あゆむ(これからどうしよう……)


とてもじゃないが家には帰れない

相手はあたしなんていないほうが何かと都合が良いのだから、これを機に行方不明になってくれるよう願っているだろう

あのクズみたいな叔父達がここぞとばかりにあたしの悪口をぶちまけて、とばっちりで両親も詰られるし、多分まもるも虐められる

姫名は……あたしが人質なんてした段階であまり許してくれそうにない

それ以上に助けてくれるかもしれないけど、それじゃ姫名がどんな目に合うか分からない

友達は……私事に巻き込んで何かあったら嫌だ

家にはヤクザや県会議員や警察の上層部とも繋がりがある

……水揚げが嫌で逃げた上、のたれ死ぬと言うのはあの人たちにとってこの上なく都合がいいような気がする


あゆむ「う、ううぅ……」


寒さに震えて体育座りで膝を抱えて、今の自分の格好を改めて見て……何よりお腹もすいていて


あゆむ(独りだ……あたし)


そう結論づけてしまったら、もう涙が止まらない

暖かくて、とっても大粒で……


あゆむ「うあああああ……っ……あはああああぁっ!!」


なんと情けない泣き声かと自分でも思う

でも止まらないしもうそんなことどうでもいい

今はただ、泣きたい……なんでそう思うのか分からないけど、とにかく泣きたい



……でもお腹空いた

さやかff「と言うわけで今日はここまでです、お疲れ様でした!」

なぎさ「何が、と言うわけなのですか!?」

リボほむ「それは次回よ……ね?」

なぎさ「なぎ……!」

さやかff(なぎさは次回寝かせておかねば……)

>>179>>180>>181

コメントありがとうございます


>>180

さやかff「まあ何?興味ないことに関しては一切やらないタイプ……だったような?」

なぎさ「さやかが分からなかったら誰も分からないのです!」


>>181

リボほむ「食事シーンを見るたびに何をしているのかしら、まったくまどかったら……ふぅ」

さやかff「おい」

こんにちは、再開します

リアルの方が来週にはひと段落するので、それまでゆっくり目になります……

支援

暫くすすり泣いて、ようやく気持ちが落ち着いてきた辺りであたしは気が付いた


あゆむ「……足音」

あゆむ(人数は……男が3人か?)


柱の裏に身を隠して息を潜めた

近くに街灯も無い暗闇の中、迷う事なく真っ直ぐ向かってくる


あゆむ(居場所がバレてる?……足跡を辿ってるだけか?)


だとしたらあたしが逃げ切るのはかなり厳しい

いや、見知らぬ人間なら不意打ちで倒してその隙に逃げれば良いか……


「うわ、マジで居るっぽい?」

「ガチJCキタコレ?」

あゆむ(は?)


まるであたしがこっちに隠れてるのを知っているような口振りだ


あゆむ(通りすがりって訳じゃない……なんでだ?)


途中からつけられてた?……それにしては間が空いてる


カシャン


あゆむ(何の音?)


何かを嵌め込むような硬い音が聞こえた

その音が何だったのかは、次に聞こえたバネの弾けるような音と目の前の地面に刺さっている金属製の矢を見て察しが付く


あゆむ(クロスボウ……)

支援


クロスボウは日本で唯一の合法的な銃器

その理由は携帯性と秘匿性に乏しく、犯罪に利用するのが難しいから

ただし下手なハンドガンよりよっぽど凶悪かつ強力


あゆむ「うぁッ!!」


暗闇からガシュン、と音が聞こえた

聞こえたと思ったら左肩に激痛が走っ て、思わず声が出た


あゆむ「うっ……うぅ……!」


多分、改造されたモデルガン……BB弾を喰らった部分は鬱血して変色している

撃ってきた奴は三十メートルは離れているはずだ


あゆむ(とにかく、まともな連中じゃない……!)

「ようあゆむ、抵抗なんてするなよ」


……成程、色々納得した


あゆむ「っ……まこと……」

まこと「怖いなおい」


葉月まことは一番年若い叔父……別に好きでは無いし、あたし的には数多いモブキャラの一人でしか無い


あゆむ(この馬鹿供はまあ勝てるとして……仮にも柔道家だったコイツを倒せるかって話か)


この場から逃げる算段をいくつか建てたが、どう転ぼうともコイツが最後の壁になる


まこと「まあ取り合えず出てこいよ、柱の陰から顔を覗かせるだけで良いからさ」

あゆむ(……)


どの道時間が必要


まこと「俺は、レイプとかしようって訳じゃない……本当だって」

あゆむ「……」


少しだけ顔を覗かせて周囲を探る

まことを含めて正面に二人、直接見えないが左方にあたしを狙撃した奴が一人

それと気配を殺してる奴がもう一人、右側の死角から迫ってきてる


まこと「フッ、恐い顔してるなぁ」

あゆむ「……なんなんだよ!」

まこと「わざわざ捜しに来てやったんだぜ?」

あゆむ「はぁ?」


捕まえに来たの間違いだろ


リボほむ「そう言えばあゆむの異様な気配察知ってどういう理屈なのかしら? 」

ゆきな「なーんだ?」

リボほむ「!!??」


まこと「良かったな、家の人間はお前を無かったものとして扱うことに決めた」

あゆむ「……」

まこと「だから俺が見つけるまで誰一人としてお前を捜す努力すらしていない」


違う、それはあたしがそうやって逃げたからだ


まこと「冷静に考えろよ、カメラでお前が逃げ込んだ先が貯水室だと分かったなら下水道を辿って逃げることは容易に想像がつく」

あゆむ「……」


右の気配がかなり近づいてきた、左の気配は場所を定めたらしくさっきから動かない


まこと「今日は一日食事もしていない、着の身着のまま……行動範囲と逃走経路が限られているなら後は人海戦術で簡単に見つかると思わないか?今のお前は尋常じゃなく目立つしな」


右の気配の呼吸が荒くなる……飛び込むタイミングをカウントしている


あゆむ「このフル装備の意味が分かんない」

まこと「ふん、それはまあ……俺の事情だな」

あゆむ(!)


飛び込んできた男の袖を掴んで一本背負い、完全に不意を突いたつもりの男はいともたやすく宙を舞い、肩口からコンクリートの地面に叩きつけられた


男1「マジかよ!?」


左の男は驚きこそすれ、発砲してくる気配はない


まこと「ふふっ、そうでなきゃな」

あゆむ「気色悪いんだよ糞が!!」

まこと「いや、予想はしてたさ……そうでなきゃ俺が求める意味がない」

あゆむ「うあああッッ!!!!」


脇腹に灼熱が走った

細胞の一つ一つを引き裂くような痛みが一瞬で全身を駆け廻って体中の力が抜ける


あゆむ「――っ!」

支援


まこと「なあ?持ってて正解だったろう?」

男2「お、おう……」

あゆむ「クソがッ……!」


投げ飛ばされた男はスタンガンを持っていた

首元を抑え込んで注意を逸らした隙に、手加減なしにぶち込んできた

痺れているうちに上から左の手首と首を押さえられて無理矢理に仰向けにされた

そして最悪なことを口走りだした


男2「おい、捕まえたら好きにやっていいんだろ?」

まこと「焦んなよ童貞」

あゆむ「……てめぇっ!!」

まこと「もっとも、楽しめるかどうかはお前ら次第だが」

あゆむ「ああそうかよ!!」

男2「痛!!」


あたしを抑え込んでる男はわりとガタイが良い

肌も日に焼けていて、どうやら何かのスポーツをやっているようだ

……何より汗臭い

あたしはとにかく顔目がけて出鱈目に殴った

手に液体の感触が伝わって、何かを凹ませる感じも覚える


男2「ぶああああァツ!!」


拳を目元に直撃させると、デブ男は情けない声をあげて手首を掴んでた手を離して顔を庇った


あゆむ「うああッ――」


拘束が緩んだのは一瞬、今度のスタンガンは胸に来た

背中が仰け反った後、頭がくらくらして意識が飛んだ

支援


あゆむ「――っぅう……」


何だろう……異様に息が苦しい


あゆむ「んうぅッ!!」


苦しいわけだ……水をしっかり含んだハンカチを押し込まれて、ガムテープで固定されている

手首と足首もおそらくガムテープでぎっちりと拘束されているようだ


あゆむ「ん!?んんんッ!!」


そんな状態で男たちの手で全身を弄ばれている

下半身に皮膚を剥がれるような痛みを感じて意識が覚醒し、ようやく現状を理解するに至った

童貞でロリコンで大学生とか言う救いの無い馬鹿どもへの報酬とか言ってたな、まことは

……そのまことは離れた所で周りの様子をうかががいながら携帯をいじっている


~~♪


……なんでだろう、歌が聞こえる

歌が聞こえてくると同時に痛みも圧迫感も消えて、布団の中で半分寝ている時のような暖かくてふわふわした感覚に包まれた


「###っ!!」


誰かが私を呼んでるはずなのに、あたしを呼んでない……ん、そうじゃない?

違うな……あ……私の名前、なんだっけ?

さやかff「今日はここまでです!お疲れ様でした!」

さやかff「次回、『その 歌声は 賛美』」

さやかff「セレクター、面白かったね!」

ごめんなさい、もはや朝ですが再開します

さやかff「仕事の前にズバッとサクッと行くよ!」


状況は誰が見ても圧倒的だった

あゆむはキリカと織莉子の最大の攻撃を同時に受けて防ぐ一方、後は時間が経てば大量の出血が元で彼女は死ぬ

ベテランの杏子も、諦め切れないほむらも同じ気持ちだ


織莉子「! キリカ下がって!!」

キリカ「え?」


指示を理解するよりも早くキリカの体は宙を舞った

あゆむがキリカの攻撃だけが通るように防御を解除し、クロスカウンター狙いで拳を振り抜いた


キリカ(私も甘ちゃんだなぁ、思わず爪が引っ込んじゃった……いや、そこまで読まれたのか)

織莉子「キリカ!!」

QB「織莉子前だよ、前!」

あゆむ「ああああああッ!!!」

織莉子(駄目……私一人だと力押しに対抗できない)


顎を打ち抜かれ床を転げるキリカに意識を取られた隙をついて魔力を拡散させて織莉子の水晶玉を破壊し、身を翻して飛び掛かる


織莉子「っ!」

QB「それ見た事か」


赤い結晶を纏い圧倒的な硬度と重量の拳を軽くいなしてあゆむの袖と襟を掴んで上下をひっくり返したが、空中で受け身を取られそのままの姿勢で打撃を続けてくる


織莉子(流石に投げ技は効果が薄い……)

QB「質量キャンセルしてる相手に投げ技なんて効果がある訳ないだろう」

支援


重力を無視した動きで繰り出される連撃を捌き、距離を離そうと試みるがあゆむも決して離すまいと激しく攻撃を仕掛ける


織莉子(……こちらの手を読まれてる!)

QB「全く、姑息な事ばかりしているか( 織莉子「黙れ淫獣」


織莉子があゆむとの戦いで矢面に立ちたくなかった理由がこれで、あゆむの硬さと速さに対抗する術が織莉子には無い

短期的な未来予知は読心の前では相性が悪く当てにならない、そしてほむら達のように武器を持っていない織莉子にとって、硬い相手との肉弾戦は極めて不利である

それでも保つのは織莉子本人に格闘の心得があるからであり、魔法少女としてこの距離でのダイヤグラムは詰みと言って差支えなかった


ゆま「やああッ!!」

織莉子「ゆまさん!?」


あゆむの背後からゆまが飛び掛かった。死角からの攻撃であるはずのゆまの攻撃を目もくれずに結晶で防ぎ、織莉子への攻撃の手は緩めない


ゆま「まだ……終わりじゃないよ!」


武器を弾き飛ばされたゆまだったが、膨張した結晶にしがみ付いて大きく息を吸い込んだ


ゆま(私は貴方に直接会ったことは無かった……でもね)


ありったけの気持ちを込めて、自分の中の優しさが全てを包み込んでくれるように祈って彼女は歌った

支援


ゆま「金のシンバル 鳴らすように」

織莉子「ゆまさん!?」

ゆま「囁くのは お日様」

QB「知能を持たない存在へ言葉を投げかけても無意味だろうに……訳が分からないよ」


だが効果はあった、先ほどまで織莉子だけに向けていた殺意がゆまに向いたのだ


ゆま「一緒においで 木々の宴に 耳を澄ましましょう」

あゆむ「があああああッ!!」


向き直って激しい一撃を繰り出したが、一瞬で間に割り込んだ織莉子がそれを弾いて立ちはだかった


ゆま「!」

織莉子「続けて!」

ゆま「うん!」


ゆまを狙う攻撃は織莉子が受け流し、少女の歌声を聞いた夜空はさんざめく星の光で応えた


ゆま「シャボンの雲で顔を洗い そよそよ風と散歩」

あゆむ「っぐ!!うううううっ!!」

織莉子(攻撃が雑になってきた、この歌は彼女の心に届くと言うの?)


ゆまを背にして防戦一方だった織莉子が徐々に押し返していく


ゆま「大丈夫きっと 羽になる心 光へとかざしてご覧」

支援


杏子「あんなのって、ありかよ……」

ほむら「信じられないわ……」


離れた位置から見ていた杏子とほむらにとってもそれは奇跡のようなことに思えた


ゆま「虹を 結んで 空のリボン」

QB「訳が分からない!どうしてだ!」

あゆむ「いっ……た……い!!」

織莉子「!」


右手でこめかみを押さえながら絞り出したあゆむの言葉

それは彼女が理性を取り戻した証でもある


ゆま「君の 笑顔へ贈り物よ」


もはやあゆむに攻撃の動きは無く、お腹を庇うようにしてゆまを睨むのみだった


ゆま「願い を駆けましょう夢日和」

えりか「んん……歌?……って、つぼみ!」

つぼみ「えりかぁ……まだ夜ですよぉ……」

えりか「しっかりしてよ!夜空が見えるって変でしょうが!!」

つぼみ「ふぇ?……ああっ!!」

支援


QB「馬鹿な!深層意識下に干渉出来る言葉なんて!それこそ魔法だ!!」

織莉子「……」

QB「今の人類に統一言語は存在しない!一定の知性が無ければ言葉を介したコミュニケーションを取れない筈なんだ!意識の無い人間なんて論外だよ!」

織莉子「魔法じゃないわ、こんなのどこにでもある奇跡よ」

ゆま「明日また 幸せで あるように」

あゆむ「……んの……ガキがッ!!」


右手にレイピアを持ち、織莉子目がけて突き出す


ほむら「はああっ!!」


上から現れたほむらの蹴りでレイピアは折れ、正中線を狙った織莉子の正拳は辛うじて防いだ


ゆま「雲の綿菓子 つまんでは」

ほむら「ありがとう、まどかを守ってくれて」


飛び込んだほむらは一切抵抗の素振りを見せなかった


あゆむ「っ!!」


あゆむの右手から発射された光線を避け、あゆむの目をしっかりと見て


ゆま「一休みの草原」

ほむら「まどかの怪我、ほとんど治ってた」


ほむらの気持ちは感謝と、信頼が報われた嬉しさで一杯だった


キリカ(へえ……)

あゆむ「だったらなんだよ!!どけって言ってんだ!!」


フレイルを振り回して襲い掛かったがほむらはその全てを紙一重で回避し、決して彼女から目を離さない

支援


ゆま「風は何処へ 帰ってゆくの?」

ほむら「もうやめようよ、こんなこと……意味なんてないよ」

ゆま「鳥に 尋ねましょう?」

あゆむ「だから邪魔なんだよ!!」

ほむら「きゃあっ!!」


魔力を炸裂させ、ほむらが吹き飛ぶはずだった


ゆま「夕日のレース 肩にかけて」

あゆむ「この……!」

織莉子「腰を据えて、しっかり」

ほむら「はい!」

ゆま「伸びてく 影とかけっこ」


ほむらは織莉子の防壁で衝撃を緩和しつつ、しっかりと踏ん張ってあゆむに前に立ちはだかって見せた


ゆま「見守ってる ずっと!」

あゆむ「無意味なことしてくれて!!」

ゆま『無意味じゃない!』

キリカ「速度低下!」




支援

ほむら達の背後からキリカが現れ、一気にあゆむの動きが鈍くなった


あゆむ「だから」


あゆむの右手に光が集まる


ゆま「光る宵月の」

ほむら「あゆむ……!」

あゆむ「邪魔だって」


光が収束し、魔方陣へと形を変えて前面に展開した


ゆま「優しさに――」


一気に光を開放してほむら、織莉子、ゆまを呑み込もうとした


あゆむ「言ってんだよ!!」


激しい爆音が鳴り響いて砂埃が舞う


ゆま「抱かれて ごらん」


しかし、それでも少女の優しい歌声は途絶えない


さやか「ぎりぎりセーフ……ってやつ?」


すんでの所でさやかが割り込み、マントで光線を弾いたのだ


ほむら「2秒遅いわ」

さやか「ほむらが3秒早いの!」

支援


ゆま「星を 列べて 空のボタン」

キリカ「ゆまちゃんの歌は――」

さやか「邪魔させない!」


二人からの攻撃は膨張した結晶で受け止められ、今度はあゆむが防戦一方となる

そして優しい歌声の中から、語りかける声が聞こえてくる


ゆま「夜のカーテンを 留めてあげる」

ゆま『誰かを憎しむ気持ちと、それが生きるための勇気になるって気持ち、私には分かるよ』

あゆむ「っ!」


あゆむにとって聞き捨てのならない言葉を聞いて、不思議と周囲の雑音が消え、まるで二人で会話をしてるかのような感覚に見舞われる


ゆま『もしここにお父さんとお母さんが居たら、わたしは絶対にぶっ飛ばすよ』

ゆま『いっぱい意地悪されて、虐められて……でもね、思ったの』

ゆま『お母さんと暮らしてるときは怖いって気持ちだけで一杯だった、自分が悪いんだってずっと思ってた』

ゆま『私が誰かを憎んだり、本気で嫌いになったりできるのってね』

ゆま『私が……杏子やマミお姉ちゃんたちに、愛してもらえてるらだと思うんだ』

あゆむ『は……?』

ゆま『本当に愛を知らない人に感情なんて無いんだよ……怖いから、痛いから、そうやってどんどん逃げて、弱い自分を嫌いになって、自分で自分を傷つけちゃう』

ゆま『貴女が誰かを憎めるのは、貴女を愛してくれた人がいるからだよ』

あゆむ「……」

支援


ゆま『貴女のやりたい復讐は、その人たちを全部裏切ってまでやらなきゃ駄目なことかな?』

あゆむ『何知った口効いてんだよ!』

ゆま『……悠木先生がね、ゆきなちゃんの話を良くしてくれるの』

あゆむ『それで!』

ゆま『いつも言ってたよ。自分の持っている力を、誰かの為に使ってあげられる人になりたいって』

あゆむ『あの愚図がなんだってんだよ!』

ゆま『ゆきなちゃんの為に一生懸命な、貴女を見てそう思ったんだって』

あゆむ『!』

ゆま『嫌になりそうなくらい辛くても、二人を見て頑張ろうって思い直したんだって』

ゆま『そんな風に思ってもらえるくらいに凄い事を、あなたはしたんだよ』

あゆむ「…………」


ゆうか「えりか……」

えりか「そっか、あの子……あたし達の後輩なんだ……!」

つぼみ「え?え?なんですか?またテレパシーですか?」

えりか「まあ、なんだかんだ幼馴染だしね……ちょっとくらい身体張ってくるよ」

つぼみ「え?ちょ、ちょっと!どこに行くんですか!」

えりか「つぼみはゆうかのことお願いねー!」タッタッタ

支援


ゆま「明日また 幸せで あるように……」

さやか(反撃しない……ゆまちゃんの話を分かってくれたの?)


警戒はしながらも攻撃を止めて、顔をふせたあゆむの選択を見守ることにした


キリカ「糞鬱陶しい装甲だね、まったく!」

さやか「ってキリカさん!?」


キリカの右爪が金色に輝いて轟音をあげ、振り下ろそうとした


ほむら「止めてください!もう、これ以上は!」


ほむらが入り込んでその攻撃を静止させた

キリカは怪訝そうな顔をしたが、あゆむが下腹部を押さえて蹲ったのを見て攻撃の手を止めた


杏子「すげぇ……歌で鎮圧しちまった……」

えりか「大丈夫?」

杏子「……こんなの怪我の内に入んねえよ」

えりか「ってまどっち!?凄い血だらけなんだけど!?」

杏子「生きてるよ。あと怪我はほとんど治ってて、むしろこの会場で一番健康なくらいだ」

えりか「あー、良かった……あれ?これあゆのリボンじゃん」

杏子「ん、ああなんかここに来たときにはもうつけて……っ!!??」


突如空気が変わったことに全ての魔法少女が気付いた


あゆむ「っ……あああああっ!!」

ほむら「あ、あゆむ!?」

ゆま「え?え?」

キリカ「おいおい、往生際が悪いなんてもんじゃないだろ!」

織莉子「違うわ、でも構えなさい」

さやか「違う!この子……自分でお腹の中からグリーフシードを引きずり出してる!?」

QB「いや、引きずり出さざるを得ないんだろう」

キリカ「どういう事さ!?」

ほむら「待って!そんなに無理矢理引っ張り出したら貴女が死んじゃう!」

支援


『決して絶望してはならない!』

あゆむ(そりゃ魔女に体を乗っ取られるよりはましだけど……正直死んだって構わない、なのに)

『生きている限り、希望は必ずあります!希望を胸に抱いていれば、必ず救われます!』

あゆむ(くっそ……余計な魔法かけてくれやがって……これじゃ枢木スザクじゃねえか)


ぶちっ と千切れる音がして現れたグリーフシードが放つ、ただならぬ邪気に全員が気を構えなおした


QB「気を付けて!この魔女は彼女の体内で変質している!」


孵化した魔女は影の魔女と蝶の魔女

影の魔女は純白の体に、蝶の魔女はさきほどよりずっと大きくて流麗なオーロラ状の翼を広げていて、次々と翼を持つ鈴が射出されて音を鳴らし、幻想的とすら言える雰囲気を作り出している


ほむら「あゆむ!ここから離れないと!」


二つのグリーフシードを投げ捨てた後、傷口を手で押さえて弱弱しく呼吸するあゆむを連れて行こうと近寄るほむらをさやかが後ろから捕まえて大きく飛びのいた


さやか「待ってほむら!先に周りの魔女を倒さないと!」


純白の姿となった影の魔女による大樹のような触手による打突を回避し、さやかは空中で剣を抜いて懐に飛び込んだ

支援


織莉子「影と蝶の深化魔女……」

キリカ「性質ごと変わってるよね、これ」

ゆま「ど、どうするの……!?」

織莉子「砲火が来るわ……下がっ――!!?」


仁美「あ、あれはさっきさやかさん達が倒した魔女では!?」

中沢「見た目がちょっと綺麗になってるな……」

恭介「とにかく今のうちに倒れてる人たちを安全なところに……」

葵「うん、そうだね」

あやか「あの……安全な所って――え?」


その会話は刹那で悲鳴に変わった

蝶の魔女が呼び出した鈴型の使い魔は問答無用で生きている人間を狙い砲撃してきたのだ

とっさに気が付いた織莉子とキリカが滅茶苦茶に攻撃を仕掛けたおかげで直撃した生徒はいなかったものの、着弾点の爆発に巻き込まれて吹き飛ばされた生徒は多い


さやか「――っ!!」


先ほどまでの状況とは違う、魔女が人間を殺すことを優先して動く

キリカとさやかが蝶の魔女へ接近を試みるが、影の触手が邪魔をして進ませない

ほむらが鈴を叩き落としてもなかなか数が減らず、現れた鈴は次々と砲火を開始して魔法少女と奥の生徒達を的確に狙い撃つ

火線の間に水晶を放り込んで無理矢理射線を曲げて直撃は防いでいるが、これでは織莉子とほむらが攻撃に回れない

ゆまはキリカやほむらの治療で手一杯と、間違いなく激戦で見ている人間をひやひやさせる場面も多々ある

支援


恭介「痛ったたた……」

つぼみ「だ、大丈夫ですか!?」

あやか「う、うん……直撃はしなかったから……少し飛ばされたびっくりしただけ」

かえで「あの鈴、立ってるやつだけを狙っとるみたいやな……」

葵「取り敢えず見渡した感じで大怪我した人はいないみたいだけど……」


えりか「杏子ほらしっかり!ってかまどっち軽い!」


意識の無いまどかをおぶって歩きながら後ろに振り返って杏子に激励を飛ばすえりかと、ふらふらとおぼつかない足取りの杏子を狙う鈴は偶然にも皆無だった


杏子「だからあたしはほっといてそいつ連れて行けって」

えりか「今のあんたほっといていける訳ないでしょうが!」

杏子(駄目だ、まだ頭ガンガンしてまっすぐ歩けねえ……)


ともかく皆と合流しようというのがえりかの言い分で、二人はゆっくりと皆の元へ歩んでいた

先ほどの一斉射撃にはえりかも動揺したのだが、杏子が大丈夫だと言い放ち、実際に目立った怪我人も出ていないようだと、無理矢理に自分を落ち着けていた

だから自然と口調も強くなる

振り返ると魔法少女たちが魔女と激突していて、絶え間なく光線が飛び生徒達の方を撃ち抜いて爆発する

それでもよくよく観察すると魔法少女たちは防戦一方に見えるものの、確実に一歩ずつ魔女を追い詰めていた

さやかやキリカの牽制の射撃は蝶の魔女や影の魔女の身を刻み、時折ほむらかゆまの援護を受けてさらに接近していく

支援


えりか「うわっ!」


前をちゃんと見ずに歩いていたら、足をぶつけて思わず倒れそうになった

どうやらここらへんには二階席に居た大人たちが倒れているようだった


杏子「おいおい、あんた姫様背負ってんだろう?ちゃんと気を付けろよな」

えりか「むー!あんたの方こそ自分のこと――」


振り向きざまに杏子が吹っ飛んできて、自分の足元に転がる


あゆむ「はぁ……はぁ……うっ」


全身血だらけで左手を力なくたらし、びっこを引くように歩いてきたあゆむがフレイルで杏子を殴り飛ばしたのだった


えりか「あ……あ……!!」

杏子「いっ……クソ!」


後頭部からだらだらと血を流して杏子がどうにか立ち上がった

それと入れ替わるようにえりかが腰を抜かして尻もちをついた

とっさにまどかの腕を掴んで頭を打たないようにしたが、それ以上えりかは動けなかった


杏子「……っ」

あゆむ「この……!」


横殴りに殴り飛ばして杏子をえりかから引きはがし、僅かに見える程度のエネルギーを衝撃波として杏子にぶつけてさらに打ち転がした

数メートルも転がったところであゆむがゆっくりと歩いて追いかける


えりか「ま、待ってよ!!」

あゆむ「…………」


まどかをゆっくりと寝かせ、這うようにしてあゆむの足にしがみ付いたが、肩口を軽く蹴り飛ばされて後は無視された


えりか「待ってよ!ねえ!!」


追いかけようにも腰が抜けて立てず、あゆむの背中を見送るだけだった


杏子「ぐ……」


頭がぐらぐらして立つだけの気力も湧かない

このままだと殺されるだけなのは想像ついていたが、もうそれでもいいとすら杏子は思っていた


杏子(格好悪いなぁ……こんなラスト)


それでも魔女になるよりかは幾分かマシな気もしていた


まどか「ライド・ザ・ライトニング!!」

えりか「 」


まどかの全力の肘鉄があゆむの左脇腹を打ち抜いて吹き飛ばした


杏子(……は?)

まどか「状況も分からないままいきなりぶっ飛ばしちゃったけど、もしかして良くなかったかな?」

杏子「……良くないっつーか、なんつーか……」

まどか「だがあたしは謝らない」凛っ!

杏子(ああ、頭打ったのかコイツ……)

あゆむ「どけよ……そいつ殺さないとあたしが死ねない……あたしが死なないと誰かが死ぬんだよ……」ムク

杏子「!」

まどか「そこであゆちゃんが死なないといけない道理が分からないけど、まあ理由があるんだと思う」

まどか「確かに杏子ちゃんをリリースすれば全員無事確保って言うのは魅力的だね、あたしが逆の立場だったらそうするかも」クル

杏子「……」

まどか「だが断る」シャフ度ッ!

杏子(ああ、やっぱ駄目だこいつ)

さやかff「今回はここまでです!お疲れ様でした!」

なぎさ「平常運転なのです……」

あゆむって「神名あすみ」なのですか?

あゆむって「神名あすみ」なのですか?

こんばんは、再開します


あゆむ「……よう、喧嘩なら後で買ってやるからちょっとすっこんでな」

                   プラチナ・ザ・トリニティ
まどか「そうは行かないかんね!今の私は《三重人格》!」

えりか「ぷ、プラチ……?」

ゆうか「……ブレイブルー?」

あゆむ「あ、そう……」


まるで糸につられた人形のような起き上り方だ、とまどかは思った

そして彼女の体が、もうまともな手段で動かない事にも察しが行った


まどか(この子、本当に痛みとかが無いんだ……)

杏子「馬鹿……!構えんな……逃げろ……よ」


普段のまどかならばさっさと逃げるか、意固地になって残るか……とにかく思考停止してしまう所だっただろう

しかし今のまどかには、あゆむの経験値と知識がほぼそのまま入っている


まどか(どんなふうに体を動かせばいいとか、どんな風に攻撃すれば相手がどうなるとか、そういうことが分かる……人間ってこんなに隙だらけで生きてるんだ)

まどか(確かに、知識は万物に変わる宝なんだね)



自身でも不思議になる位にいろんなものが見える、いろんなやり方といろんな答えが思いつく


まどか(背中に防衛背負って戦うなら――)


わざわざ背中を見せて見栄を切り、くるくると回りながら右手であゆむを指差して


まどか「事情はどうあれ、理由はどうあれ、原因はどうあれ! 勝てない戦と分かっても、私も引けない時がある!――負けて上等!当たって砕けて、やなことあってももう一回!!」


もう一回、とともサムズアップで決めた後、天を指差してめい一杯の大きな声で叫んだ


あゆむ「……」ハァ

杏子「…………」

ゆうか「あれ駄目じゃない?ねえ、あれ駄目じゃない?」

つぼみ「えーっと……その……」

まどか「女にゃ女の、意地があるっ!!」

えりか「まどっちが消え――!?」


えりかが驚きを口にするよりも早くまどかが動いた


あゆむ(見栄切のテンポとリズムを少しずつ遅くして、周りの体感時間を遅らせた上で全員の視線を上に向けた……後は自分が一瞬でしゃがみ、全力駆動でその場から動けば取り敢えず初手で間合いを詰めることは出来る)


あゆむが軽く舌鼓を打つと魔女の結界が解除されて、草原と夜空が消えボロボロになったホールが再び姿を現した


まどか(大きな声を出したのはゆっくり話すことに違和感を憶えさせない為と、みんなに気づいて貰う為……局所の盤面は不利でも全体のダイヤグラムはむしろプラス)


真っ向から仕掛けたのはあゆむの回避能力の低さをつくのと、小細工で手数を積むほど自分が不利になると考えたから

そして今、まどかは自身の異様なほど軽い身体を好き勝手に動かしたかった


あゆむ(なんでだろう……コイツの心が読めない――いや、無意識に魔法を閉じて見ないようにしてるのかな)


あゆむが結合結界を解除した段階でそれぞれの魔女の結界に他の魔法少女は呑み込まれた

魔力の供給は減るが、取り敢えず杏子を殺せればそれでいい今のあゆむにそこまでの魔力は必要ないと言える


まどか「おわっ!?」

つぼみ「怖いです!見てられません!」

あゆむ(怖い……こんなチビの頭の中を覗こうとすると頭が痛くなる!?)


まどかが間合いに踏み込むタイミングに合わせてフレイルで薙ぎ払い、まどかもすんでの所で止まってそれを回避、上着を脱ぎつつ再び懐に飛び込もうとするが


まどか「ちょっ!?」


あゆむが左手に鞭を生成して振り下ろし、それを回避したところで踏み込みからフレイルの返し薙ぎ。しかしフレイルは振り抜けずに先端を脱いだまどかの制服に絡め取られ、遠心力であゆむの手を離れた


まどか「もしかして今の私って――すっごい強い!?」

ゆうか「まどか速っ!」

あゆむ(なんで……?)

『人間は忘れることが出来るから生きていけるんだよ』

あゆむ(! そう、あたしはこいつに何か魔法をかけた!)

えりか「おお、まどっち凄い!」

まどか「名付けてそのまま、『モチモチ黄粉餅』!反撃行っくよー!」

ゆうか(何故イナゴ?)


奪い取ったフレイルに振り回されながらも中心部を両手で持ち上げて振り下ろしたが、あゆむの頭上まで膨張した赤色の飴が軌道を軽く逸らし、何もない地面を抉った


あゆむ(なんの魔法をかけた?なんの……?)

まどか「……ま、まままあ重い武器ってば私に似合ってないかんね!」凛っ!

えりか「動揺してるよ方言出てるよ無理しないで!?」

杏子(持ち上がんねえのかよ……)

まどか(どうしよう、今ので援護が来るの期待してたんだけど……)

あゆむ「……まあいいや、受け身は取れよ」グ

まどか「ふぇ?」


あゆむが凸ピンで空を切るのと同時に衝撃波のようなものがまどかを弾き飛ばした

誰が反応するまでも無いほどにあっけなく十メートル以上吹き飛び、地面についてからもごろごろと転がって杏子よりもさらに後ろの客席に叩きつけられた


杏子「な……!?」

まどか「あっ……っつう……!!」

仁美「まどかさんッ!?」

あゆむ(……空中受け身までしっかり取ったのな)

かえで「お、おい葉月!!あんた何しとん!?」

あゆむ「はあ……ビヒーダ」パチン

あやか「ひぃっ!!」


惨状を黙って見ていられなかったかえでの怒鳴り声を軽く流して指を鳴らすと、あゆむの周囲に浮かんだ魔方陣から蜂型の使い魔《ビヒーダ》が六匹現れて生徒達に近づいてくるなと言わんばかりに威圧して追い立てた


葵「く、来るなら来い……!!」

中沢「馬鹿!早く倒れてる大人たち担いで下がるんだよ!」

かえで「だ、大丈夫や!葉月がコントロールしてるうちは派手にはしかけてこん!」

仁美「まどかさん!?それに杏子さん達も!」

恭介「志筑さん落ち着いて!必ずチャンスは来る!だから其の時を待つんだ」

杏子「はっ……最後は人間に守ってもらうなんてね……あたしも落ちぶれたもんだよ、本当」


自分の情けなさに顔をあげる事すらしない杏子を、もはや感情も込めまいとする瞳で見据えるあゆむ


あゆむ「……」

えりか「ま、待ってよ!杏子を殺さなくたっていいじゃん!」バッ

ゆうか「そうだよ!それに……友達を殺さなきゃいけないのって、やっぱり変だよ!」


その間に入り込むえりかとゆうかの声は先ほどまで震えていた少女とは思えないほどには生気のある声だった


杏子「いいよ……良いんだって……」

えりか「ちょっと!あんたも何言ってんの!」

杏子「もう良いから、……あたしのソウルジェム潰して……終わりにしてよ……」

ゆうか「だ、だから……!」


諦めの入った口調を聞いて焦ったのは二人だ

ただ、何に焦ったのかと問われた時、答えられそうになかった

それが分ってるから二人は本気で泣きそうになるし、あゆむも何も言わない


杏子「罰を受ける時が来たんだ、それだけのことなんだって……」

あゆむ「……合意の上だろ、そこどけよ」


冷たい――というよりも完全に透明な声だ

もはや冷たいという概念すらないのかもしれない

それくらい空っぽな声だった


えりか「ちょっと待ってってば!」

あゆむ「……うるさい」

えりか「う……いやああああああっ!!!」


あゆむがえりかの目を覗き込んで指を鳴らし、それと同時にえりかが悲鳴を上げてのた打ち回る


ゆうか「ちょ、ちょっと……冗談……だよ、ね……」

あゆむ「答えは否」


あゆむに覗き込まれたゆうかの瞳に、まるで炭酸水を流し込まれたかのような激痛が走った

立っていられないほどの激痛に左腕が重傷なのも忘れて両手で目を押さえて、倒れ込んだ

二人は数分絶叫を続け、遠くから見ていただけの生徒達も何人かが駆けつけようとしたが、ビヒーダが飛び掛かってくるとすぐにまた逃げ出し、無力を噛み締めるようにその光景を眺めているだけとなる

やがて絶叫が止み、苦しそうに呻くだけになった二人に一瞥をくれた後つぼみの方に向き直って話しかけた


あゆむ「……おい花咲、ちゃんとキャッチしろよ」

つぼみ「……え?」


右手で軽く払う動作をしただけで突風が少女を吹き飛ばした

飛ばされたえりかは地面を転げてつぼみの元へいきつき、つぼみはすぐさまえりかを抱き上げた


つぼみ「大丈夫ですか二人とも!?」

えりか「う、うん……」

ゆうか「目は……ちゃんと見えてる……」


それを見たあゆむは今度こそ標的を杏子に変えて、右手から光の剣を発生させてふらふらとおぼつかない足取りで歩み寄る


あゆむ「あんたの親父のウゼー声も、やっと聞き納めだよ」

杏子「悪かったな……」


まどか「ちょっと!何勝手に最終回の空気だしてしんみりおしまいにしようとしてんのよ!」

杏子「馬鹿……!なんで立つんだよ……!」

あゆむ「……」


再び立ち上がって両者の間に割り込んだまどかを見て、絶望的な気分になったのはむしろあゆむの方だ


あゆむ「……喧嘩ならあとで買ってやるからさ、後にしてくんない?」

まどか「喧嘩をするときは弱い方の味方……あなたがいつだってそうじゃない」

あゆむ「あ、そ」

杏子「な、おい!」

まどか「あぐッ!!……いっ……たぁ……!!」


再び衝撃波でまどかを吹き飛ばした、が今度は地面を転がらずに摩擦で慣性を殺して飛ばされないように踏みとどまった

表面が剥がれ、剥き出しになっているボロボロのコンクリートの床でそんなことをすればどうなるか等想像するまでも無い


あゆむ「はあ?……何、馬鹿なのお前?」

杏子「立つなよ……立ってどうすんだよ、この馬鹿……!」

まどか「づっぅ……今更だよ、そんなの!」


無理なブレーキに使われた右腕と両膝は擦りむけて真っ赤に染まっている

ましてやまどかは靴下すら履いて無い上に制服の上着は脱ぎ捨ていて、今来ているYシャツも真ん中から裂けて肌が露出しており、防御力は極めて低い


杏子「なんでだよ……なんで……!」


杏子のソウルジェムの光は相変わらず弱い……しかし、弱弱しくも小さな光は宿っている


まどか「貴女が本当に憎むべきなのは葉月まこと、ただ一人のはずだよ!貴女の事を大切にしてくれた大人の人たちや、杏子ちゃんを巻き込む必要なんて――無い!」


誰の目にも虚勢と分かる大きな声をあげながら三度あゆむの前に立ちふさがるまどか、それとは対照的にあゆむの顔から力が抜けた

いつものなんともやる気のない表情に少しだけ近づいた

そして次の二人のやり取りで杏子の緊張までも緩むこととなる


あゆむ「………………誰、そいつ?」

まどか「……え?――えー……」

杏子「…………?」

まどか「待って、待って………………あー……そういうことかぁ……」

杏子(どういう事だってばよ……)

あゆむ「何勝手に納得してんだよ殺すぞ」

まどか「えっと……ちょっと待って、話し合いで解決できそうだし」

あゆむ「いや――あたしは……まことを知って……?」

『あゆみの事は関係ない!あゆむはあゆむ!』

あゆむ「――!」

『落ち着いて、大丈夫……まずは――』

あゆむ(魔力が必要……)


ゆっくりとまどかへ向けて手を伸ばし、左手を掴む


まどか「だから、ちょっと待っ――!?」

あゆむ「え?」


まどかが異変を感じ、あゆむの顔に向かって頭突きを喰らわせ回し蹴りで腹を蹴り飛ばした


杏子「……???」


少し離れた位置から見ていたえりか達にも一瞬何が起きたのか分からなかった

まどかは怪我だらけの右手で左手を庇うようにしてあゆむを睨みつけていたし、あゆむはあゆむでうつ伏せに倒れたまま起き上ろうとしない


まどか「はぁっ……はぁっ……!」

まどか(まだ痺れて……凄く冷たいし、感覚もほとんどない……!)


あゆむに腕を掴まれた瞬間、ちょっと寒気を感じた

それが確信に変わったのは左手が一気に冷たくなったのと、あゆむの目の色が少しおかしかったからだ


まどか(あれじゃただの捕食者……ってそっか)

まどか「魔女……だった、ね」


あゆむがまどかから奪ったものは命を維持するためのもの、生命の源の一部である

それは魔法少女にとっては単純に魔力であり、人間にとってのそれは生体電気とでも言うべきものだ

まどかの腕は一時的にブレーカーが落ちて動かなくっただけ、もちろんそれだけではとてもあゆむの命は維持出来ない

その衝動を無理に抑え込もうとするが、そうすると今度はあゆむの体が勝手に、生きるための動きを始める


あゆむ「ぐっ……うぅっ!!」


倒れているあゆむは右手を脇腹にあてがって魔力を込め、何かを引き出そうとしているように見える


まどか(……何?)


その行為が何を意味するのかはまでは、まどかや普通の生徒達には良く分からなかった


杏子「おい……!今、そんなこと……したら!」

まどか「な……何……?」

杏子「な……あんた達、一体何しに……!?」

仁美「まどかさん!杏子さん!お怪我は!?」

まどか「仁美ちゃん……!」フラァ


仁美の声を聞いたことでまどかの緊張の糸が一瞬切れた

がたがたに崩れた自我を無理矢理形作る為に、過剰なまでの集中力と思考を巡らせていたまどかは見た目よりもはるかに消耗し、衰弱していた


恭介「大丈夫か鹿目さん!?……って」


もはや完全に体の力は抜け切り、全体重を上条に預けて倒れ込んだまどかは想像以上に重い


恭介(胸見えちゃった///……そうじゃなくて!)


恭介「鹿目さん!熱が!?」

まどか「ああ……」

恭介(熱っ、ていうか……こんなのって!?)


情報を情報として……つまりは電気信号として整理し始めた脳は、あゆむから押し付けたれた大量の情報を前にオーバーフローを起こしていた

そんな脳みそをさらに酷使した結果が、異様な高熱

この時のまどかの体温は実に44℃に達している

熱中症や致死レベルまで進行したインフルエンザですら42℃前後であることを考えれば、今のまどかに意識があるのは奇跡に近い


恭介「と、とにかく運ばなきゃ!」


杏子「馬鹿……!早くあたしなんか置いて逃げろよ!」


脇から抱えられた杏子が仁美に文句を言っていた

あゆむが倒れた辺りで使い魔達の動きが鈍った為、隙をついて何人かの生徒を囮に仁美たちが駆けつけたのだ


仁美「出来ませんわ、そんなこと!」

あゆむ『ごめん……手遅れ』

杏子「……!」


あゆむの謝罪と同時に魔女の結界が顕現し、杏子達を呑み込んでその命を喰らおうと悪意を向ける

魔女の結界は古代遺跡とでも言うような老朽化した石で造られた壁と床

そして地下室のような湿り気と、黴臭さと血のような生臭い臭いを帯びた大きな部屋


まどか「ああ……ここ、知ってる……」

上条「なんだここ!?地下牢なのか!?」

仁美「ど、どうなっているんですの!?」

つぼみ「もう嫌ですこんなの……!!えりかぁッ!!」

えりか「つぼみ……泣かないで……」

ゆうか「あゆ……なんでこんな……」


前回戦った時も杏子単独の火力では全開でも厳しかった魔女、考えられるかぎり最悪のケースかもしれない


杏子「豚の……深化魔女……」


前に見た時は赤いバターの様な粘液が覆っていたが、深化した豚の魔女は何かに覆われることも無く、さしずめ水色のレオタードのようなものを着込んだ普通の大きな豚

左右非対称の歪な目玉と4本も生えている長い尻尾を覗けば現実に居る豚そのものだった


豚の魔女(深化)「にゃあぁぁぁぁぅっ!!」

上条「猫……だと……?」

まどか「寝子と聞いて」ガバッ

上条「鹿目さん、無理しないで」

まどか「モノ切ってから物言いなよ」チッ

上条(えーっと……)

体温計が42℃までしかないのって
それ以上体温上がるとたんぱく質が非可逆的に変質して死ぬからそれ以上の目盛があっても無駄だから
じゃなかったか?

乙です

なぎさ「なぎさが答えるのです!」

なぎさ「基本的にはたんぱく質の凝固温度は50度手前、つまりここを越えると脳味噌とか筋肉の一部が凝固し始めるのです!」

なぎさ「正確には色んな物が混ざっているのでもう少し低いらしいのですが、高熱が原因で死ぬってことはほぼ無いのです。でも男性ならばモノがいきなり機能停止することは有り得るのです!!ザマァナイノデス」

なぎさ「後これは業界の話になるのですが医療用なら45度までは基本的に計れるし、電子体温計ならば天元突破も余裕なのです!」

なぎさ「一応熱中症で46度まで行って後遺症無しで助かった例も有るにはあります」

なぎさ「まあ普通は42越えた=御陀仏の認識でおkなのです!」

さやかff「認識はそれで良いけどカラクリとしては逆で、御陀仏するほどヤバイ=42度を超えることが多いってことだね!」

リボほむ「一応捕捉しておくわ」

リボほむ「モノがダメになるって話だけど、その原因はたんぱく質の凝固だけでは無いの」

リボほむ「体温が高すぎると脳の中の海馬あたりがやられてホルモンバランスがコントロール出来なくなってしまうのよ」

リボほむ「そうなると人間は意識を保つ事も難しくなるわ、脳がオーバーヒートを押さえるために機能の一部と情報を遮断するからね」

リボほむ「だから熱が有るときはテレビを見たりしないで、暗い静かな部屋でふかふかの椅子にゆったりと腰かけるのが一番よ」

リボほむ「ちなみにこの目安は概ね41度よ」

リボほむ「これ以上の時に意識を保っているときなら関節がミシミシと言って面白いので動かして見ると良いわ」

リボほむ「でも一つ忠告しておくわ、死ぬほど痛いわよ」

さやかff「悪魔め」

なぎさ「悪魔なのです」

リボほむ「ええ、悪魔よ」

珍切に興味を持っちゃったのでまどかのファン止めます
あんこ!あんこ!

葉月あゆむって「神名あすみ」なのでしょうか?
また、後、どのくらい続く予定なのでしょうか?

葉月あゆむって「神名あすみ」なのでしょうか?
また、後、どのくらい続く予定なのでしょうか?

SSまとめの評価数が凄いことになってるからきっともの凄いSSなんだろう

おはようございます、更新します


ゆうか「あゆ!ねえ!返事をして!ねえったら!!」


そんな豚の足元で倒れている少女に意識は無い


豚(パーン)「うなあああああっ!!」

仁美「つぼみさん!上条君!みんなを連れて下がって下さい!」

つぼみ「志筑さん!!」


つぼみの静止を聞くことも無く両手が空を切って右足を一歩下げて構え


仁美「私が――守って見せます!」


豚へ向かって果敢にも走り出した


パーン「にゃっ!」

仁美「うっ!」


豚の魔女は凄まじい跳躍力で後ろへ飛びのきながら尻尾を振るって仁美を打ち据えた

とっさに腕で防ぎ、しかし怯まず魔女との距離縮める仁美


仁美(まどかさんも杏子さんもあゆむさんもボロボロ……今は、私しかいません!)

パーン「ギィエエエエッ!!」

豚の使い魔(ビーツ)「ふぅッ!ふっ!」


豚の魔女が挙げた雄叫びとともにどこからともなく全身をラバーで覆わた上で目隠しをされ、口にはギャグをはめ込んで涎をだらだらとたらした大型犬が数匹現れた


仁美「――っ!?」


思わず足を止めてしまった

思い直しても、足が釘付けになったかのように動かない


仁美(怖い、怖い……でも!……でも!)


歯を食いしばって自分を奮い立たせても体は動かず、ただただ恐怖にすくむ


恭介「志筑さん!こっちだ!」


不意に肩を掴まれて思わず飛び上がりそうになったが、それが恭介だと分かると仁美の体は素直にその手に引かれて走ることが出来た


まどか「仁美ちゃん!後ろ!」

恭介「僕は!?」


まどかの声に反応し後ろを振り向くと一匹の大型犬がその爪で仁美を切り裂こうと飛び掛かる所だ


仁美(負けません!)


その爪が仁美を捕えるよりも先に蹴りを鼻っ面に叩き込み吹き飛ばす


仁美「なんて軽い犬……!」


蹴った感触に思わず驚く仁美

もしかしたらあのラバーの中身は空洞なのかもしれない、と思うと先ほどの豚の運動能力にも納得がいく


仁美(この魔物達には、現実の質量なんて無いんですわ!)


これならば最低限の敵だけ蹴散らしながら逃げることが出来るかもしれない

つぼみとえりかが杏子を担いで移動を始めている、まどかはあれだけの高熱と怪我にも関わらずこちらに向かって笑顔で駆け寄ってくる


恭介「二人は立って動けるね?佐倉さんは僕が連れて行くから (まどか「退いて!」ドンッ! うおッ!?」

杏子「馬鹿野郎っ!!」


体当たりで恭介をどかすと同時にまどかが吹き飛んだ

豚の魔女が鞭を一纏めにし、強力な打撃として振るってきたのだ

左肩から腰までを切り裂くように打ち据えられたまどかは声をあげることも出来ずに吹き飛んで地面に叩きつけられた


まどか「――ぅ……」


もはやYシャツは服としての意味をなさない程吹き飛んでしまった

露出した胸には紫色の大きな痣が肩から斜めにバッサリと通っている

背中に走った寒気を押し殺して仁美は泣きながらまどかへ駆け寄った


仁美「ま、まどかさん!!」

恭介「駄目だ志筑さん!そっちには大型犬が!!」

仁美「いやっ!!」


動きそうにないまどかを庇うようにして上から抱きしめて目を閉じた

周りの皆が声にならない悲鳴を上げている

まどかが優しく仁美の背中に手を乗せてくれたような気がして、少し恐怖が解けて覚悟もついた


仁美(命を張っても良いと思える親友に出会えたのですから……私は幸せでしたわ)


しかし数秒経っても、仁美の体に痛みが走らない

不思議に思って顔をあげると赤い衣服の少女が大型犬の爪を胸で受けて、血を大量にながしながら立っている


杏子(変身……!変身出来たっ!)

杏子「ぐっ!」


苦痛に顔を歪めながらも、爪を突き立ててきた犬を蹴り上げて膝をついた


杏子(身体が……関節が重くて全然動けねぇ……)


魔力が枯渇寸前の自分にとても満足な戦闘が出来るとは思わない

それでも、確実に時間を稼ぐ方法がある


杏子「……みんなを連れてここから離れて」

恭介「え……でも佐倉さんも怪我をしているじゃないか!とてもじゃないけど置いてなんか行けないよ!」

杏子「大丈夫……魔法少女舐めてんじゃねえよ……」


今にも消え入りそうな、明らかに苦痛をかみ殺したような声で語られても説得力は無い


今にも消え入りそうな、明らかに苦痛をかみ殺したような声で語られても説得力は無い


恭介「けど!」

杏子「下がれ!」


恭介が反応するよりも先にえり首を掴んで杏子の後ろ側へ投げ捨て、振るわれてきた鞭をその身で受け止めて踏ん張る


杏子(いってぇ……!!こんなの、生身で受けたら死ぬって……)

杏子「ぐぅっ!!」


ただ耐えるだけの杏子目がけて尻尾の鞭を振り回し、杏子の全身をくまなく打ちまくる

その合間を縫うようにして大型犬が迫ってきている


杏子「早くしろ!ぶち殺すぞ!!」

恭介「……っ!志筑さん、鹿目さん!こっちだ――って!?」

仁美「そんな!!」

杏子「んなっ……?」


まどかのショルダータックルが杏子の体を吹き飛ばし、数発の鞭で吹き飛ばされた

倒れたまどか目がけて飛び掛かろうとした大型犬を仁美の拳が打ち抜いて吹き飛ばし、続いて飛んできた鞭は仁美が喰らった


仁美「ッ……きゃああっ!!」

えりか「仁美!!」

杏子(クソ馬鹿の死に急ぎ野郎!!)


仁美の悲鳴を聞いた杏子がすぐさま間に入り左手を前に向けて陽炎のような鎖で結界を作った


杏子「おいこのボケ姫ッ!!何考えてんだテメェ、死にてえのかっ!!」


先ほどからは想像できない程の怒鳴り声

魔法を使うとソウルジェムから木の根が生えて体中を蝕むような、そんな激痛が走る

だがそんなものよりも、今はこの苛立ちをぶつける方が先だ


まどか「死にたくない、よ……でも……杏子ちゃんにも、死んでほしく……ない、から……」

杏子「なんでだよ!?別に良いだろ、あたしなんか!!」


鞭の連打ですぐに砕ける結界を何度も作り直して杏子は怒鳴り続けた


まどか「良く、ないよ……私……杏子ちゃんの事……大、好き……だもん」

恭介「喋っちゃ駄目だ、鹿目さん!」


臍の上から首の下あたりまで大きく皮膚を持っていかれて、複数の刃物で切り付けたかのような傷が出来ている、更にその傷周りも痣になっているようでかなり歪んだ形の切り傷になっていた

それでも良く見れば皮膚が剥げているだけで今すぐに死ぬような傷では無いが、その判断は素人には到底無理だ

それでなくてもショック死の危険はある


杏子「あたしは大っ嫌いだよ!!あんたなんかっ!!」

仁美「きょ、杏子さん……」


仁美の救いを求める声で杏子の結界は少し色が強くなって硬さを増した

答えを聞く位なら魔力を使い切って魔女になっちまった方が良い、杏子はそんな風にさえ考えていた


まどか「……知ってる」

杏子「……は?」


まどかは大きく息を吸って、さっきよりも少し大きな声で言い放った


まどか「でも……今日までに杏子ちゃんが見せたくれた笑顔、その全部が嘘じゃないでしょ?」

杏子「……」

まどか「だから――私は貴方を信じるよ」

杏子(なんだよ……なんで泣きそうになってんだ、あたし……!)


右手で爪を立て、強く握りしめて痛みで誤魔化そうとした



まどか「嫌々だとしても……私を助けてくれたことも、さやかちゃんを守ってくれたことも、一緒に居てくれた事も……全部が本当の事だよ」

杏子「……」

まどか「私は、杏子ちゃんが大好きだよ!――だから!」

仁美(き、キマシタワーッ!!!!!)


まどかがまた大きく息を吸い込んだ瞬間に杏子の結界が三度砕け、再展開しようとしても何も起きない


杏子(もう、結界が作れない……!)


ならばと素早く両手で胸を庇うようにして梃子でも動かない覚悟を決め


まどか「お願いゆまちゃん!『ヴィクティム・サンクチュアリ』!!」

ゆま「やあああっ!!」


緑色の光が壁となって杏子達を守り、青い光が駆け抜けて使い魔どもを切り伏せた


ゆま(なんで気が付いてたのに黙ってたの!?っていうかなんでそんな怪我するまで頑張っちゃったの!?間に合わなかったらどうするつもりだったの!?)

杏子「ゆま……!」

恭介「さやか!」

ゆうか(ちょっとかっこいい……)

さやか「よくもあたしの大事な親友に怪我させてくれたわね……!!」


青い光がまどかを包んだ、大きく皮膚が剥けてしまった胸のあたりは特に濃い光で覆われている


まどか(ん……ちょっと性的に気持ちイイ……)ゾクゾク

えりか「が、ガチギレしてるっしゅ……」

つぼみ「怖いです……」

仁美「ひ、久方ぶりにさやかさんが本気で怒っていますわ……」

まどか「そりゃ私のためだもん」エヘッ!

えりか(このまどっちは絶対変だ……)

つぼみ(この人怪我も酷いし、冷や汗だらだらで顔色も悪いのでやせ我慢なのは分かるんですが、なんかこう……心配する気をなくします)

仁美(二股!?トライアングラ―ですか!?これは捗りますわぁっ!!)キラキラ


さやか「絶対殺す!!ぶちのめして、粉みじんにしてやるっ!!」

まどか「ゴーゴーさやかちゃん!ズバッとやっちゃって!」

ゆうか(この三人、揃いも揃って頭の螺子が外れてるよね)

杏子「さやか!」

ゆま「待って杏子!織莉子お姉ちゃんが使えって、これ!」


魔女へ突撃していったさやかを追おうとした杏子の手を捕まえ、ゆまが懐から暗い色のグリーフシードを取り出して杏子のソウルジェムに宛がった


杏子「これって、深化した影の魔女のグリーフシード……」

ゆま「あんまり性能良くないけど……それと」ギュ


少し下を向いていたゆまが決意したように杏子の目を見て、一息に言い切った


ゆま「全部大人が悪いと思うのが私の悪い癖かもしれないけど……でも、なんでも自分が悪いんだって考えるの、杏子の悪い癖だと思う」

杏子「……」

まどか「杏子ちゃんのお父さんが言ってた事は間違ってないよ!あの子もそう言ってた!」

杏子「お、おう」

まどか「あんなの杏子ちゃんの事分かってくれないお父さんがいけないんだよ!」

杏子「分かった、分かったって」

まどか「大人の方が譲歩すべきだよ!人類を幸せにしたいとかいう前に自分の家族幸せにしろタコって話だよね!」

杏子「分かった!まどかがあたしの味方なのは良く分かった!」


まどか「やったよ仁美ちゃん!杏子ちゃんがまどかって!まどかって!」

仁美「ええ!ええ!良い百合ですわ!」

ゆうか「ゆ、ゆりって?」

まどか「ああ!それって、ハネクr」

杏子「分かった!!分かったからちょっと黙ってろ、うざい!!つーか怪我どうした!!」

まどか「あーもう駄目だいつ死ぬかも分かんないってくらいには痛いけど、これくらいなら放っておいても今日中には死なないと思うから空元気してる」

ゆま(いや皮膚が剥げてて大分グロいんだけど)ハダシノゲンデミタヨウナカンジ

杏子「黙ってゆまの治療を受けやがれぇぇっ!!」

まどか「凄く嬉しいの!!……私を名前で呼んでくれたこと!」

杏子「う、うるさい!」

ゆうか(あ、照れた)

えりか「まあ怖くなくなったから良いんだけどさ」

つぼみ「絶体絶命なのが錯覚に思えてくるので漫才しないでください」

まどか「そうだよ杏子ちゃん、この世界がアニメなら視聴者から『声優演技しろ』とか『まるで意味が分からんぞ』とか『脚本家頭病んでんのか』とかコメントされて『病院が来い』『ゆま先生こっちです』ってタグが付いてるところだよ」

ゆま(痛くてこんなになってるんだよね?早く痛みを押さえてあげなきゃだよね?)パァァ

杏子「あたしが悪いのかっ!!?」

ゆうか(……僅かにね)

まどか「笑う門には福が来るんじゃない!笑ってるやつだけが今を幸せにする方法を考えるんだ!」凛ッ!

杏子「分かったよ!あんたのせいで元気出たよ畜生っ!!」

仁美「あ、照れてます?」

杏子「うっせ!!」プイ

ゆうか(シリアスは粉砕していくスタイルなのね)

仁美(この二人の照れ隠し具合、良いですわぁ……)モンモン

>>291>>292>>295>>296>>298

なぎさ「観覧ありがとうございますなのです!」

>>295

なぎさ「珍切り云々……と言うよりはこのSS自体が男性をディスっていくスタイルなのです」

さやかff「振られたからじゃないよ」

リボほむ「男子と会話したことないとかでもないわ」

なぎさ「なぎっ!」

>>296

なぎさ「あすみちゃんって噂しか知らないのです」

さやかff「ああ神名ね、神名」

ニコ「呼んだ~?」

さやかff「引っ込め!!」

なぎさ「とりあえずあゆゆとは何の関連もないのです」


>>298

なぎさ「展開のぶっ飛び具合とスケールのでかさだけは保証するのです!」

おはようございます


更新します


さやかは新たに出現した大量の使い魔には目もくれずに魔女目がけて突進していく

両手の剣で余計な相手だけを切り伏せて進撃

魔女の方も尻尾の鞭でさやかを攻撃し、進路を使い魔で塞ぎながら後退して距離を空けようと動く


さやか「止まると思うなぁッ!!」


怒号をあげたさやかは、受けるダメージの一切を無視し最短距離で突き進む

あらゆる角度から飛び掛かる刃で隙を作って強引に切り込み、丁寧かつ豪快に一太刀ずつ魔女へ喰らわせ、確実に動きを鈍らせていく


恭介「さ……さや……か……?」


身体を喰いちぎられようが骨を砕かれようが爪や牙がその身を引き裂こうが本当に一切の躊躇もなく魔女だけ狙って攻撃を続ける姿は、果たして友人たちにはどのように映るのか等さやかにとってはもはや問題でなくなっていた(ただし見てるのは恭介だけ)


さやか(数が多くてとてもじゃないけど突破しきれない……!)


噛みついてきた犬をそのまま引きずって暴れまわるさやかでも、相手の圧倒的な物量の前にはいい加減辟易してきていた


杏子「おいおい、戦い方無茶過ぎんだろ!」


背後から聞こえた杏子の一声とともに使い魔や自身の影と言う影から無数の槍が生えて刺し貫き、使い魔の数を一気に減らした


さやか「杏子!」


現れた杏子とは自然と背中合わせになって、二人は襲ってくる使い魔の数を確実に減らしていく

父親の話を聞いてくれなかったみんなを恨んだ

さやかに守られるみんなが妬ましかった

何喰わぬ顔で日々を過ごすみんなが羨ましかった


杏子(でも違う、本当は――)

杏子「あたしだって、みんなと一緒に生きたい!」

さやか「うお、気合入ってる!?」


杏子の思いは槍に乗って、敵を討つ

乗せた思いにはさやかへの気持ちだってある……あったら良いな、とも思う


杏子「なあさやか……」


でも、思っただけでは気持ちはきっと伝わらない

だから、これが『普通の女の子』しての第一歩になる


さやか「ん、何?」

大方の使い魔を片付け、鞭を振るって襲い掛かる豚の魔女をいなしながらの会話

それは杏子の意思を確かに感じ取れる言葉だと思える


杏子「例えどれだけ自分が傷つくって分かってても」


乱雑に飛んでくる鞭の打撃をさやかが盾になって受ける


杏子「目の前で苦しんでる人が居たら、手を差し伸べずにいられない」


魔女の攻撃が当たらない角度から杏子が突っ込み、振り下ろしの一撃


杏子「そんな優しさをみんなは馬鹿だって言うかもしれない……でも、さ」


魔女も素早く反応して杏子の攻撃をかわし、攻撃がやんだところですぐさまさやかが距離を詰める


杏子「あたしはね、そんな風に馬鹿正直でお人好しで」


さやかの斬撃を避け、足下への斬り払いをジャンプで避けた


杏子「おちゃらけた正義が本気で実現出来ると思ってる」


空中で槍を向けてくる杏子に使い魔の犬が後方から襲い掛かる


杏子「あんたの事が大好きだよ」


襲い掛かっていた犬をさらに背後から分身した杏子が切り払った


杏子「さやか」

さやか「――え?」


杏子の言葉を理解するまで一瞬の間を置き、理解した後は顔が一気に熱くなって目の前がくらくらしてしまった


仁美「キマシタワーッ!!」ガタッ

まどか「杏さやー!!いたたた……」

ゆま「!?!?」ビクッ


さやか「ちょ、え?あ?えぇ!?」


誰かに告白することは妄想したことあっても、される所は考えた事の無いさやかにとって、杏子の言葉は致命的な隙を作り出すほどの動揺を与えた


恭介「さやか!!」

さやか「――ん?」


さやかがはっと顔を挙げた頃にはもう遅く、飛び掛かった豚の魔女の腹が開いて、中から肋骨をそのまま殺意に変えたと言わんばかりのおどろおどろしい数のハサミがさやかを刻むその寸前であった


杏子「あたしは!」


下から現れた杏子が蹴りで豚の魔女を打ち上げ、7人の杏子が槍を小さな棍に分割し、その全てから刃を出現させて豚の魔女の体中を滅多刺しにして一瞬の内に沈黙させた


杏子「さやかが好き!――大好きっ!」


崩れ去る結界の中で自身の髪の毛のように赤く染まった顔と、これまでにない「少女」の笑顔を見せる杏子に、さやかも恥ずかしくなって思わず目を逸らした


まどか「チッ」

ゆま「!?」ビク

仁美「キテますわぁ……捗りますわぁ……」

えりか「今の告白!?告白!?」ギュ

つぼみ「お、おおおお女の子同士でそそそそそんな……!!?」ギュ


かえで「おお!あんたら生きとったか!」

あやか「……つぼみとえりかは何抱き合ってるの?」

ゆうか「結構凄いもの見聞きしちゃったからね……ってあゆは!?」

葵「そうだよ!あいつが一番重症でしょ、一応!」

杏子「一応って言い方はあんまりじゃね……」

あゆむ「 」

あやか「あゆ!……どうしよう、凄い冷たい……!」

杏子「落ち着けって、弱ってるけどたぶん大丈夫、早いとこ連れ出して病院に行けば間に合うよ」

かえで「魔法でばーっと治らんの?」

杏子「血流を良くするとか、細胞の動きを活発にするとかなら出来るんだけどな、魔法で直した細胞は魔力が無いとすぐに腐っちまうんだよ」

ゆうか(つまりかさぶたを作るのが魔法の限界とか言う……)

葵「そっか……世の中そう都合よくは回んないね」

ゆうか(まあ誰でもさやかにみたいにひょいひょい怪我が治ったら命の軽視に繋がっちゃうし、そういう意味じゃ妥当なあれなんだろうね、キュウベぇ)

ゆうか「……あれ?返事がない」

杏子(あとはシンメトリーダイアモンドで全員の記憶を飛ばすだけなんだけど、えりかとゆうかはどうすっかな……)


まどか(杏さやも良いけど!捗るけど!!……でもなんか死ぬほど腹立つ!!)ギリギリ

ゆま「あの……動かれると治療しづらいかなぁ……」

ほむら「まどかぁ!!」ガバッ

まどか「ほむらちゃーん!!」ダキッ

ゆま「聞いてないよね、知ってた」

ほむら「まどか……こんなボロボロになってしまって、しかもこんな高熱まで」

まどか「どう?セクシー?」クイッ

ほむら「い、いいいやそのあの……と、とにかくTシャツならあるから……その」ゴソゴソ

まどか「え?何、聞こえない?」スリスリ

ほむら「わわ!え、えっと、だから良ければ……着ても……」

まどか「うん、誰のTシャツを?」

ほむら「わ……わ、わたしの……シャツ……だけど……い、い、嫌……かな」

まどか「ふふっ!ごめんね、ほむらちゃんがかわいいから意地悪したくなっちゃった!」

ほむら「か、かわッ!?ま……まどかの方が……可愛い……よ」ボソ

まどか(あーあ、後半ゴニョゴニョしちゃった)


まどか「ん?聞こえなった、もう一回」

ほむら「あ……っと……その……」モジモジ

キリカ「君たち、公然と変なプレイに勤しむのはやめなさい」

まどか「私たちが変態みたいな言い方は駄目です!あたしがほむらちゃんを愛でているだけなんですッ!!」凛ッ!

キリカ「……君、キャラ変わった?」

まどか「無い胸を張る!!」凛ッ!

キリカ「良いから服を着なさい、仮にも処女なんだからトップレスは不味いよ?」

ほむら(まどか、熱で頭がやられてしまっているのね……)

まどか「じゃあキリカさんはトップレスOKなんですか?」

キリカ「もちろんさ!――って何言わせんだ!!」

まどか「ええ~結局どうなんですかぁ?やっぱり織莉子さんが一方的に?」クイクイ

キリカ「いや、織莉子は意外と積極的で無理矢理タチをさせられることも……ってだから何言わせるんだ!!」

ほむら(な、なんの話なの……?)

キリカ(なんか調子が狂うなぁ、もう……)

ゆま「あの……まだ止血しただけだから、動かないでほしんだk(むぎゅ!」ギュゥ

まどか「ゆまちゃんありがとー!可愛いよぅ愛してるよぅ……!」スリスリ

ゆま「!?!?!?」

キリカ「魔女にキスでもされたのか君は」



中沢「なんで鹿目ちゃんが変態になってるの?」

恭介「さやか……君は……」ブツブツ

中沢「そしてお前はなんなの」


織莉子「……」

織莉子(どうしてだろう……こんな終わり方では無いような、そんな気がする)

QB「やあ織莉子、何を考え込んでいるのかな?」

織莉子(あまりにも基本的な、でも基本的過ぎて見過ごしてしまった伏線がまだあるような……)

QB「あの……」

織莉子「そう、例えるなら算数のひっさんで繰上りを書かずにいたら計算し忘れてしまったかのような」

QB「その例えは他人に通じると思っているのかい?」


杏子「ゆまから離れろ変態野郎ぉぉぉぉっ!!」

まどか「ゆまちゃんを愛でることが出来るなら、あたしはペドフィリアになる!」スリスリ

ゆま(いや、このまま引っ付かれてる方が治療しやすいかも……とりあえずこれでお腹の捻挫は抑えたし)

ほむら(私にはくっついてくれない……よね)

キリカ(乙女の表情だなぁ……というかまどかにそんな性癖があったのか、意外だ)

まどか「ていうか何きゃんきゃん喚いてんだよ、こっち来いよ一緒ににゃんにゃんしようぜ」

杏子(だめだコイツ、マジで頭がやられてる……)



とりあえずここまでです

お疲れ様でした


なぎさ「次でラストバトルなのです!」

なぎさ「奇跡も魔法もありまくるのです!」

あゆは生き返るか・・・

まだ東京行ってないし作文コンクールもまだだし
バトルは終焉しても最終回にはまだほど遠かろ

で、まどかがほんと誰だよおまえ
陵辱されるあゆあゆ眺めてサドに目覚めでもしたのかね?

おはようございます、更新します

支援



~見滝原市 某所~


沙々「ひっ……ひいいい……!」

ユウリ「んっふふふふふっ!!良いよねぇ!馬鹿で能天気な大人たちの――正しく悲鳴合唱団!」


少し離れたビルの屋上で、炎に焼かれる『水のせせらぎ館』を眺める二人の少女がいた


沙々「き、聞いてないですよぅ……!聞いてないですよこんなの!」

ユウリ「はあ?お前がしくるから証拠隠滅に大掛かりな仕掛けが必要になったんじゃないか」

沙々「誰も殺さないって言ってたじゃないですか!抵抗してくる『七色の翼』以外は誰も殺さないって!」


あゆむに鼻を裂かれ目を抉られていたが、その傷もだいぶ直された

今はもう、大きな傷痕と呼べるものとなっている

痛みが無くなったのもあって、普段の威勢を多少なりとも取り戻していた


ユウリ「はっ、こんな程度で死人も出さずに他人を守れない奴らだっていうなら、今からアタシが一人で乗り込んで!全員叩きのめしてやるよ!」

沙々「……っ!」


大した自信だ、と沙々は思う


沙々(でも、このサイコパス共は……)

QB「やあ!何をしているんだい?こんなところで」

沙々(げ!一番見つかりたくない奴に!?)

支援


ユウリ「ようクソ野郎、デカい魔女の気配があったんだ。それを覗きに来ることの何が悪い?」

QB「いや、一応警告をと思ってね」


そういいながらも口調はいつものふざけた軽いものだ


QB「なにせこの街の魔法少女は警戒心が強くて、余所者はすぐ排除に乗り出すからね。排他的かつ攻撃的、そして極めて冷酷だ」

QB「もっとも、『ワルプルギスの夜を倒した』というのはそれだけ大きな影響のある英雄的なものだからね」

QB「疑心暗鬼になるだけの攻撃を彼女たちは何度も受けている」

ユウリ「へえそれが?やつらは強いからアタシに手を出すなって?」

QB「いいや、これはいわゆる世間話という奴だよ」

ユウリ「世渡りを憶えたもんだな、インキュベーター」

QB「出来れば情報も得たいからね、普段は『アンジェリカ・ベアーズ』に篭っている君達が出てきてこんなところに居るんだ」

QB「沙々の怪我も心配だしね、あの遮断結界の中で何が起きているのか――


その台詞を遮るように銃声が響いて、白い身体がが二つに割れて吹き飛んだ


ユウリ「良かったな沙々、心配してもらえて」

沙々「……」

QB「中で彼女たちに接触したのならとても生きて帰って来られるとは思えない、特に沙々程度の魔法少女ではね」

沙々「っ!な、何を言うんですか!?」

QB「ユウリ、まさかとは思うけど君たちプレイアデスは――


また銃声、首から上が跡形もなく消し飛んだ

支援


ユウリ「『七色の翼』との対決でも企画しているのかい?」


キュウベぇの口調を真似たユウリが面白そうに続きを語った


QB「なんせ今回の魔女を消しかけたのは沙々、君だろう?」


三度死角からぬらりと現れたキュウベぇは自らの死体を貪りながらいつもと変わらぬ口調で語る


沙々「っ!だったらなんだってんです!」

QB「しかし失敗した」

ユウリ「へぇ?」

沙々「……っ!?」

QB「造花の魔女に見つかったのが不味かったね。あの魔女の元となった魔法少女は掛け値なしに強力な子だった」

QB「彼女は北海道で魔女になったんだ、だが一人の友人を求めてゆっくり彷徨いながらこの街にやってきた」

QB「もちろん道中で幾千という数の人と魔法少女を喰らってね」

QB「吸収、捕食を繰り返し、魔法少女との戦いで研鑽されたあの魔女の力は強大だった」

ユウリ「……」

QB「更に条件が悪い事にあの子の魔法は沙々の魔法にたいしてほぼ上位互換として機能してしまったんだ」

QB「結果、君は仕込んだ魔女のコントロールの全てをあの魔女に奪われてしまったのだろう?」

沙々「ぃ……ち、ちが――


ユウリの銃弾が捉えたのはキュウベぇではなく沙々の右足だった

一瞬で力を失った右足から崩れ落ち、焼き尽くされるかのような痛みが銃創から駆け巡る


沙々「ぎゃああああ!!!」

支援


ユウリ「はっ!まあ良いや……話は帰ってからゆっくり聞くとしようか」

沙々「痛っ!いやだああああ!!」

ユウリ「海香に隠し事は出来ない……って、分かってるよね?」

沙々「ひっ!ひいいっ!!」

QB「こちらからも情報を提供した訳だし、そちらの目的についても聞かせて欲しいのだが」

ユウリ「やっこさん方の持ってる『舞台装置の魔女』のグリーフシードが欲しいのさ」

QB「君たちが全員でかかってもプラスが出るとは思えない、手を出さない方がお勧めだ」

ユウリ「今回はただの武力偵察のつもりだったけど、こういうやり方だと困ることでもあるのかい?」

QB「魔法少女の候補者を巻き込むような手口は、僕としても勘弁してほしい所だ」

ユウリ「成程ね……ま、今回は手を引くよ……あの戦力で当たって勝てないなら確かにメリットが薄い」

QB「キュップイ、君たちがプレイアデスと七色の翼が魔女になった時のエネルギーには僕も大きく期待しているんだ」

ユウリ「そうだ、沙々のポカを教えてくれたことへのお礼をしていなかった」

QB「オチが見えたよ」

ユウリ「イエス!もちろん謝礼は鉛弾」チャカ

QB「わけわか」

支援


~さざ波ホール前 広場隣の駐車場~


十数台もの消防車による懸命な消火活動と、突入手段を検討する消防隊員達

それらを取り囲むように集まった数百にも上る見学者と、それらを現場から遠ざける大量の警察官と境界線のロープ

今、この現場は恐怖よりも緊張よりも、興奮と好奇心で塗り固められようとしている


隊長「火災鎮火に協力をお願いします!」

男性A「すげー、超燃えてんだけど……」

男性B「さざ波ホールオワタ」

JK「大火事なう……っと」

隊長(駄目だ……全員が野次馬しに来ただけで、モラルなんてありゃしない!)

少女(魔ー女♪魔ー女♪……と思ってきたんだけど)


緑色で大きめのショルダーバックを背負い、白いTシャツに黒いベスト、歩きやすいブーツに黄土色の裏起毛ズボン

そして右手の中指に煌めく指輪をした少女が、金髪ショートカットの髪型で際立って目立つ前髪の大きなアホ毛を揺らしながら、この場の誰よりも楽しそうにやって来た


少女(もう戦い始まってるんだよね……しかも中にいる魔法少女……二、三人なんて数じゃないし)

隊長「落ち着いて!!落ち着いてお母さん!!」

詢子「どけっ!!中に家族が居るんだ!!」

隊長「火が強すぎるんです!!基本的に木造建築だから、突入するにしてもある程度鎮火してからじゃないと!」

少女「うわ、凄い……」

隊員「コラ、君!あまり近付くんじゃない!」

支援


隊員(ん、可愛い……)


年齢は13、4歳だろうか

年相応の胸はラフな少女の格好だと目立たないが、それなりにスタイルは良いように思える

なによりも少女のぱちくりとした大きな目、僅かな丸みを持った頬と絶妙な鋭角の顎、小さめの鼻とは対照的に少し大きめの唇

化粧っ気の無さとぽかんとしたような、なんとも無防備な表情は隊員の好みにドストレートだった


隊員(可愛い……)ホンワカ

詢子「離せオラァ!」ボカァ

隊長「グフォォッ!……離しませぇぇん!!」

少女「ちょっとおばさん、何マジになってんの」

詢子「家族が中にまだ居んだ!誰も行かねえってんだからあたしが行く!!」

少女「はぁ……これだから大人って頭が悪いんだ」

詢子「んだと!!」

ショウ「おいおい、子供相手にムキになるなよおばさん。ついでに君も、イライラしてる大人を煽るんじゃない」

詢子「ふざけんなよ!!まどかも、さやかちゃんも仁美ちゃんもほむらちゃんもまだ中学生だぞ!!」

ショウ(あれ?ほむらってあのほむらちゃんかな?)

詢子「知久だっているんだ……まだ五才のタツヤだって……ぅッ……」

少女「……じゃあ、泣いてる場合じゃ無いじゃん」


ため息を吐きながら、少女は隊員や警察官の手を潜り抜けてロープの内側に入って走り出す


隊長「あ、ちょっと君!……あああお母さん泣かないで……」

支援


警察や消防隊の静止の声と手を振り切って少女は駆け、手近な消防車を登ってその天井に立つ

マスコミのカメラややじ馬たちのスマホのカメラが向けられたが気にならない、いやそれらが心地良くさえあった

大勢の人々の前で歌うのは初めてではないし、目立つことは嫌いじゃない


男性C「なあ、あの子ってせっつん?」

男性D「かもな……この前ツベに上がってたの、見たぜ俺」


そして数名が気が付いた、少女が何者なのか、これから何が起きるのか


せつな「はーい!私は せつな・オクト=バージニア!!よろしくね!」

QB「やれやれ……また魔法少女にたかりにきたのかい?」

せつな『嫌な言い方だなぁ……旅の途中にブラっと寄っただけだよ、魔女に釣られてだけど』

QB「そうかい……で、目的はなんだい?」

せつな「決まってるでしょ!歌を歌い来たんだよ!」

QB「いつもの事なのだが、やっぱり訳が分からないよ」


せつなの指輪が煌めき、四角と三角を複雑に組み合わせたような白銀のギターのようなものが顕現した

警察(どこから出したんだあのギター……)

せつな「リッスン!トゥー、マーイソングッ!!」


せつながギターを操作すると、何処からともなく音楽が流れだす

とてもギターだけで鳴らせるような音楽ではないし、どのようなものを源として流れている音楽なのか誰にも分からない、この場にいる人間の2割ほどがただ一つ分かったことは曲名だけ


ショウ(ほ、ホワイトリフレクション……)

支援


せつな「アイ フィール ユア ラブ――」


静かな歌い出しから初め、ここで大きく息を吸って


せつな「リィーッフ レェクションッ!!」

隊長「」ビクッ!

せつな「見つめ返す瞳に 描いて 遥かな――」


またここで大きく息を吸う


せつな「ネバ エェェンッッディンッ!!ストォ――リィィィィッ!!!」

詢子「……」ポカン


あり得ない場所での声が裏返るほどのシャウト

原曲を半ば無視していると言って良い歌い方


せつな「絶望も 傷痕も 振り切るように羽ばたく」

せつな「あなたがくれた勇気を この胸に広げて」

ショウ(なんだこの子は……なんだって急にガンダムなんだ……)

せつな「ああ かけがえない 愛の煌めきを せつなく くるおしく 感じていたい」

ショウ(あ、またやるのかな)

せつな「アイ フィール ユア ラブ――」

せつな「リィーッフ レェクションッ!!」

男性D「どうしたせっつん、なんだあのシャウト」

男性E「馬鹿だあの子、絶対に馬鹿だ」

支援


せつな「あつく理想を重ねて! 過ち 恐れずに」

せつな「求めあぁぁう!せぇぇいしゅんッッ!!」

隊員(奇行可愛い)

せつな「アイ フィール ユア ラブ――」

男性F「あそこだけ全力出していくスタイル」

せつな「リィィーッフ レェックションッッ!!!!」

せつな「見つめ返す瞳に 描いて 遥かな」

せつな「ネェバ エェェンッッディンッ!!ストォッ――リィィィィッ!!!」

男性G「奇声が聞こえたので」

女性A「TWOMIXを聞きに来ますた」

女性B「ツイッターで注目ランキング一位の事件をやじ馬しに……ってこりゃ一位になるわ」

隊長「まさかあの子……!」

詢子「え?」

せつな「溢れ出す思いを 素肌でそっと伝える」

詢子(あっ!やじ馬たちが全員黙ってあの子の歌を聴いている?)


せつなの歌が響く中、拡声器を通した声が人々の耳に入った

今度はざわめきなどに消されることなく、確実に


隊長「消火活動のお手伝いをお願いします!!今、さざ波ホールの中に居るのは見滝原中学の子供たちです!!」

隊長「お願いします!!消火栓が足りないんです!!バケツで水を運んでくれるだけで良いんですッ!!」

せつな「アイ フィール ユア ラブ?」


少し発音が変わって、問うような笑みと共にウィンクを投げた


「「「リィィーッフ レェックションッッ!!!!」」」


汚いうえに揃わない咆哮が返事になった


詢子「!?!?!?」ビクッ

支援


ショウ「ま、中には俺の知り合いもいるみたいだしな」

男性A「任務了解、ただちに行動を開始する」

男性C「私は……歯医者になりたい……」

男性D「勉強頑張って」

男性E「全く!ここでやんなかったらツイッターに乗った時超恥ずかしいじゃねえか!!」

女性A「そんで動画とかで『これだから女は……』とか書かれるんだから、それはちょっと嫌かな」

せつな「口づけ 交わしたら もう何もいらない!」

QB「モノ好きだよね、君の魔法をちゃんと使えばもっと効率よく多くの人々から共感を得られるだろうに」


せつなの歌声に感化された人々が手を取り合い、協力しようとしたその時、さざ波ホールの天井の一部が爆発と共に吹き飛んで穴が開いた


「きゃああああ!!」

「なんだ!?何がおきたんだ!?」

せつな(ッ!?魔女の気配が……変わった?)

隊長「天井の一部が崩れてこちらに降ってくる!!皆さん、一度離れて!!」

警官「君もだ!来なさい!」

せつな「え、まだおひねり貰ってな――


せつなの声は愚か、衆人たちの阿鼻叫喚の声すらもかき消すほどの爆音と地響きが連続する

連続で起きる爆発音と、がらがらと少しずつ崩れて堕ちていくさざ波ホール

物理的な効率を一切無視したかのようなド派手な装飾を施されたホールは、芸術性を追求して外付けされた支えの弱い部分。すなわち乗せられた彫刻や、無意味に周りを照らすライトなどが次々と破損し、降って人々の頭上から襲い掛かった


「どけ!!俺が先だ!!」

「いってえなおい!!」


しかし、今回の一連の事件での初めての死者は崩れ去るホールにパニックを起こして駆け出した一人の若者であった


せつな「あ」

詢子「っ!?」


なるべくその場から離れようとまっすぐに走った結果、その若者は他の者にぶつかって転倒し、歩道と風のホール前の広場にある花壇の段差で頭を打ったのだ

その場で彼が死んだと言い切れるものは居なかったが、少なくとも公式記録に残る最初の死亡者であった

リボほむ「上げては落とす」

ななぎさ「悪魔なのです」

さやかff(寄せて上げるとか言ったら流石に怒るかな)


続いて起きた連続の爆音と、さざ波ホールの天井に空いた穴から噴き出した爆炎で再び群衆がパニックを起こし、一台のTVカメラに激突した

あらゆる状況での撮影を可能とする人間が肩に担いで運ぶような大型のカメラは、見た目通りの恐ろしい重量を誇り、叩きつけられた時の音も凄まじいものとなった

その音に驚いた一部の人間が思わず方向転換し、後ろから来る人間がぶつかって一つの障害物となる

後は芋づる式に障害物にぶつかって、無意味なけが人の塊を大きくしていく

その中で響いた女性の叫び声がまた新たな悲劇を招いて、ホールの駐車場と歩道を繋ぐ10段ほどの幅広な階段は次々と命を奪う『怪談』と化した


隊長「落ち着いて!!落ち着いて避難してください!!順番に!まずは子供と老人から!!」


そんな拡声器での叫びも虚しく、みんながみんな最短で距離を取れる階段へと殺到し、文字通りに殺到していく


せつな(ああもう、本当に大人って馬鹿ばっか!!)


せつなの脳裏によぎったのは、生まれ故郷で自分を迫害する大人たち


せつな「でも、これを捨て置けるような奴はクズだ!!」


そして、その後過ごした第二の故郷での思い出


詢子「っ!……う、ああっ……なんだよこんな!地獄かよ!?」

せつな「狼狽えるな!!」

QB「魔法を使うのかい、せつな」

せつな「……」

せつな(……こんな歌しか思いつかない私を呪う)


一切のイントロを無しにせつなが歌う

それは、どれだけの騒音にも飲まれない、静かな歌


QB(せつなの魔法は深層心理を操作して興奮と鎮圧を操る)

QB(より正確に言うならば相手に現実を強く認識させるか、あるいはその逆)

QB「いずれにせよ大衆を扇動することに特化した魔法というべきだね」

支援


恭介「い、一体なにが……ぐ!!……痛っ……!?」

恭介(事故で痛めた足が、こんな時に……ッ!?)

???「グェアアアアアアアアアッ!!!!」

恭介「な、なんだあれは……!?」


土煙の中から現れたのは、体色こそおどろおどろしい紫であったが、おおよそ全長5m程の巨大なカンガルーだった

目には機械で作られたスコープを付け、右腕に身の丈ほどの巨大な人工物のような四角い箱を盾のように取りつけ、左腕は巨大な三角形の盾が同様に取り付けられていた

肩の部分にはいくつもの赤い水晶玉のようなものが埋め込まれている


恭介「あ……ああっ!!」


両手で無理矢理体を引きずって下がろうと試みるが、体中の痛みが邪魔をして上手く動けない


???「ボオオオオオオオッン!!!」


右腕の盾をこちらに向け、咆哮をあげる

盾の外側にあった幾何学的な模様がせり上がり、いくつもの孔が四角い盾に出来上がる

いや、開いたというべきなのだが


つぼみ「えりか!!えりかぁ!!」

恭介「!」


頭から血を流してうなだれる少女と、その少女を抱いて呼びかける少女

魔女の狙いはその二人だ


恭介「逃げて!!二人とも!!」


魔女の四角い盾から無数のミサイルが斉射され、それぞれが複雑な軌道を描いて入り乱れながら二人の命を狙った


恭介「ああ……!!」

支援


しかし爆発で吹き飛んだ人影は三つ

二人にぶつかる寸前で割って入ったさやかによって直撃は回避できた、しかし爆風だけは殺し切ることが出来ず三人纏めて吹き飛ばされたのだ


恭介「さ……さや……」

つぼみ「あ、ああ……あああ……」

さやか「うっ……づ!」


爆発をもろに受けたさやかの右腕と脚は付け根から吹き飛んでおり、顔も半分が焼けていて、穴の開いた頬から奥歯が見えている

それでも立ち上がろうとするさやかを見て、完全に腰の抜けたつぼみは恐怖のあまり失禁してしまった

光の粒がさやかの失われた手足を形作るように集まり、一瞬発光したかと思うとその怪我はなにも無かったかのように元通りとなった


恭介「さ……」

さやか「逃げてぇ!!」


悲痛な叫びは爆音と悲鳴ですぐにかき消される

魔女の左腕の三角形は二つに割れ、中からガトリングが姿を現した

肩の水晶からターゲットを追尾する赤い光弾をさやかに向けて連射しながら、両手の重火器を辺り構わずばら撒いて無秩序に破壊を繰り返す


杏子「んなろっ!!」


カンガルーの頭上から槍を振るうも、濃縮された魔力の塊とでも言うべき身体にはロクな傷を付けられない


杏子(まるでゴム切ってるみたいだ!刃がたたねぇ!)


刃が食い込み、隙を曝した杏子を魔女は見逃さない


杏子「やば――」

中沢「さ、佐倉さん!!」


宙返りをしながら杏子を蹴り上げ、天井に叩きつけて、ミサイルを叩き込んで天井の一部ごと吹き飛ばした


キリカ「杏子!!」

杏子「いや、分身しといて良かったぁ……」

キリカ「知ってた」

杏子(しかしあの巨体でなんつう運動性だよ……)

なぎさ「今回はここまでなのです!お疲れ様でした」

リボほむ「結局せっつんはなんなの?」

さやかff「こう……変数値的な力が働いて……」

なぎさ「観覧ありがとうございますなのです!」

>>335

なぎさ「ま、まだ死んでないのです!」

リボほむ「一応ね」


>>337

なぎさ「YES!最終回はまだなのです!」

なぎさ「障害者はこのSSにおける大きなテーマなのです、あゆゆの障害は思わず全員が「ちょ」と言いたくなる恐ろしいものだったりするのです」

さやかff「っていうか折角取材したのに使わないとかもったいないって言うか……」

なぎさ「なぎっ!」

お待たせしました

更新します

支援


知久「まどか!まどか!!」

タツヤ「ネーちゃーん!!」


体中が痛いのも構わず、娘の名を呼ぶ男性と子供

そんな二人の声に反応したかのように右腕のランチャーを向ける魔女


???「ゴギャアアアアア!!」ブッピガン

知久「――!!」

知久(詢子……ごめん!)

キリカ「何念仏唱えて頭抱えてんだ!!良いから走って!」


爆音とともに聞こえたのは少女の声


知久「ッ……ぁぁ……!!」

キリカ「全く!ぷるぷる震えて立つこともしない!!」

キリカ(まあ、無理ないんだけどさ)


普通の大人からすれば、変な魔法よりもこう言った現代兵器の方がよっぽど恐怖の対象だった

どのように死ぬのか、明確に想像させるから恐怖する

ホールの中は悲鳴と、それを掻き消す爆音とで満ち満ちていて、そこにある感情と言えば恐怖と諦めが濃厚だった


ゆま「腰が抜けてるのはしょうがないとして、立たない大人はなんなの!!」


ゆまが憤慨するのも無理はない

少しでも身の安全を確保しようと動くのは大半が子供たちで、その親である大人たちは諦めたり、これは夢だと決めつけ動かないものが多いのだ

先ほどまで意識があった子供たちとは違い、今を現実と認識していない節もある


織莉子(あの子、やはり子供達には手加減していたのね!)


あゆむに体力を吸い上げられ、動こうにも動きたくない者が多いのも事実だ

体が弱っていれば心も弱る

諦めに入るのが早いのも無理からぬことだと言えた

支援


まどか「ん……うっ……!」

ほむら「まどか!」


とっさの攻撃を避けるためまどかを抱えて跳んだのは良いのだが、唐突に行動した結果抱えられたまどかへの負担を考えない動きで機動したため、気を失ってしまったまどかを揺り起こす


QB「やあ、二人とも!随分とピンチなようだけど?」

ほむら「インキュベーター……!」


いつもと変わらぬ朗らかな声色は余計にほむらを苛立たせる


QB「そう怒らないでくれほむら、さっきやっと結界が消滅して中の様子が窺えるようになったんだ。何が起きているのかは僕だって分かっていない」

まどか「……」

QB「さて、まどか!この地獄絵図を一発で解消する良い方法があるよね?」


まだ若干呆けているまどかに向かって悪魔のようなささやきを始めたキュウベぇを、ただで置くわけにはいかない

余計なことを言う前にと、すぐさま顔面に風穴を空けた

しかしキュウベぇは構わずに現れ、まどかへ話しかけ続ける


QB「見たところ君も酷い怪我をしている、さらにかなりの高熱だ」

まどか「……」

QB「君も苦しいだろうし、この状況が長く続けば何人が死ぬか分かったものじゃないよね」


その言葉は現状を表すには的確で、ほむら達の躊躇で行動が遅れ、後手に回った部分は大きい


ほむら「黙りなさい!」

支援


QB「現に外ではもう死者が出たよ、ホールの爆発音でパニックを起こした人間が将棋倒しになってね」

ほむら「……!!」

QB「君たち一人一人が理性で制することの出来ない感情を持つ限り、それが牙を剥いて次々と自滅していくだろう」

まどか「……はあ」


軽くため息をついて、目を閉じて物思いにふける


QB「魔女が手を下すまでも無くね」

まどか「それじゃ、人に品性を求めるなんて絶望的だね」


諦めに近いような声色はほむらを大いに不安にさせる


ほむら「ま、まどか?」

QB「どうする?品性の無い人間の排他された世界でも創るかい?」

まどか「失せろ下等生物」

ほむら「ま……」


どんな並行世界でも聞くことの無かった、ドスの効いた声

キュウベぇは愚か、ほむらも思わず絶句してしまうほどの衝撃的な発言だった


まどか「品性も知性も無くたって、馬鹿なことする感性のあるやつの方がよっぽどマシ」

QB「僕に感性を求めるか……」

まどか「そもそも周りをちゃんと見てるの?魔法少女はだれも諦めてないし、皆生き残るために協力してるし、そもそもあたしの見えないところで知りもしない大人がどんだけくたばろうが知ったこっちゃないんだけど」

QB「君は……」

まどか「で、何が絶望的なの?」

ほむら「まどか……」

QB「……」

支援


まどか「ほむらちゃん」


まどかが指をねっとりと絡ませながらほむらの手を握る


ほむら「え……?」


それからゆっくりと、自分のおでこでほむらの胸をすくうように撫で上げ、ほっぺたを下あごになすりつけた


ほむら「ま、まどか……」


髪の毛が首元にあたって一瞬くすぐったのが少し心地よくて、ほむらをもどかしくさせる

まるで子犬のように甘えて、体をくっつけて誘ってくるまどかに全てを投げ出したいのをぐっとこらえた


ほむら「あ、あの……私……」


ぐっとこらえて、言葉を選んで、まどかの肩を少し押し返す自分をイメージした

そうやって自分を落ち着けてから、イメージした動きを実行しようとまどかの肩に手を乗せた

しかし手を乗せた途端にまどかの頬と肩で手を挟まれ、湿った瞳でぎょっとなったほむらを見つめる


ほむら(わ、私……!)


お腹の中、お臍の下あたりが存在を大きく主張しだすのを感じる

とても水流の弱い噴水がほむらのなかで湧き出て、冷静さを奪っていく


ほむら「まどか……」


ずっと憧れていたまどかが、自分のものになるかもしれない、そんな誘惑に心が傾きそうになった途端、まどかの手がほむらを抱き寄せ、耳たぶに吐息が当たるように囁きかけた

支援


まどか「大丈夫だよ……ほむらちゃんなら出来るって、私信じてるから」

ほむら「私……私は……」


まどかの声は、甘くて、耳の奥に張り付くようにしてほむらの脳みそを犯していく


まどか「ほむらちゃんのやりたいことは何?今、望むことは?」

ほむら(私が望むこと……)


背中をさすりながらまどかが問いかける


まどか「どうしてそれを望むの?」

ほむら「それは」

まどか「うん、ほむらちゃんのそんな優しいところ、大好きだよ」


ほむらの答えを遮るように言葉を挟み、少しきつく抱きしめる


まどか「分かってるよ、私はちゃんと分かるから」

ほむら(まどかが……分かってくれる……)


無理矢理体を引っ張って体勢を崩させ、ほむらの体を自分に預けさせた


まどか「もう、誰にもいなくなって欲しくないんだよね?」

ほむら(そう……出来ればみんなって……何度も思った)

まどか「目の前で、誰かが死んでしまうのが嫌なんだね」

ほむら(ええ、死んでほしくない)

まどか「当然、あゆむを助けたい」

ほむら(でも……)

まどか「ねえほむらちゃん」


人差し指だけでほむらの顎を持ち上げ、自分の目と向き合わせる


まどか「あゆちゃんを助ける良い作戦を考えたの、でもちょっと準備が必要だから、手伝ってね」

まどか「色々考えたけど、ほむらちゃんにしか出来ないんだ」

ほむら「うん、なんでもする」

まどか「まずやることは三つ、良く聞いてね」

まどか(あの子、どこまで考えてたんだろう……でも、あの子の願いがやっと分かった)

まどか(もちろん、ここまでやられたのに思い通りにさせて上げる訳がないよね)

まどか(ちょっとだけごめんね、ほむらちゃん)

支援


男子生徒「い、いやだぁああ!!」

???「オォォォオオ!!」ブッピガン

杏子「やらすか」


魔女に一撃を喰らわせて自身に注意を引付けた

すぐさま壁を蹴って飛び、攻撃は出来るだけ人のいないほうへ誘導する


杏子(クッソ……!)


度重なる爆撃からみんなを守ろうと動き回る杏子の体力と集中力は確実に削れていく


杏子(デカいの食らわすにも、変に隙作って周りを危険にさらす訳には……!)


広範囲へ弾幕を張る魔女の攻撃に対し、魔法少女たちは各個での防戦を余儀なくされていた

生徒や大人たちはホールの中で散り散りになっていたし、ホールの外に居た一部の人間も結界に巻き込まれてこの場に召喚されていたからだ

いつも前線を切り開く役割のさやかとキリカが人命救助に奔走している内は反撃の目が薄い


女の子「うわあああんっ!!」

キリカ「みんな落ち着いて!避難だよ!あっちの白い人がいる方へ急いで!!」

男の子「あ、あ、あ、ああああっ!!」

キリカ「んもう!!」


思うように非難が進まないのも大きな要因

もう一般人にはこの状況は受け入れがたく、パニックを起こして思考停止か現実を諦めている人間が大半となっている

支援


???「ゴァアアアアア!!」

杏子「さやか!そっち行くぞ!!」

さやか(分かってはいるけど!)


自分が動くと後ろにいる友達に被害が行ってしまう

銃口の真正面に陣取ったさやかが動かなければ少なくとも人間に直撃はしないのだから


ほむら「はあああッ!!」


状況を覆す……というよりは予測不能な方向に転がしたのはほむら

魔女へ駆け寄り、真下から顎目がけて跳躍しつつ蹴り上げたのだ


さやか「ほ……」


魔女はさやかが呼ぶよりも早く、ほむらを殴り飛ばそうとさやかを狙っていた立方体を振り抜いた


杏子「ほむら!」


しかし、叩きつけられたはずのほむらはすぐさま立ち上がり、自身の叩きつけられた壁を蹴って魔女へ飛び掛かる


ほむら(接近……接近する!そうすれば皆助かる!皆を助けられる!)

キリカ「な、なんだありゃ……」

杏子『さやか、キリカ、織莉子、ゆま!援護しろ!ほむらが冷静じゃない!』

支援


さやか「ほむら!」

キリカ『待って!そんな速度で突っ込んだら!』


ほむらの異常に気が付いた杏子の号令に、一番早く対応できたのはさやかだった

ほむらを抱きかかえて、自身を衝撃に対するクッションの代わりにする

魔法で衝撃に備えたのもあり、一撃で失神とはならない

だがさやかの体中の骨がまとめて折れたと言わんばかりにガタガタで、最速での治療と痛覚遮断を用いても、復帰がほむらより遅れた


杏子『おい、ほむら!おい!』

杏子(感覚遮断を強くし過ぎてるのか!?)


再び格闘戦を挑もうとするほむらを援護するため、魔法少女たちは意識をそちらに向ける

しかしほむらの無謀ともいえる接近を援護しきれるはずもなく、再び一撃を貰いそうになったとき、またしてもさやかがほむらを庇い二人纏めて地面に叩きつけれた


恭介「さ、さやかぁっ!!」

???「ボォォォンッ!!」

織莉子(一斉射撃が来る!)


魔女が持てる火器を一気に起動して砲撃体勢に入った

ほむらに気を取られ、魔法少女たちの防衛線は崩されている

支援


杏子「舐めてんじゃねえぞっ!!」


まさに砲撃を開始しようとしたその瞬間、10mはあろうかという槍を作り出した杏子がそれを思いっきりに投げつけた

槍は魔女の胸に軽く刺さって、その衝撃で大きくよろめかせ、しかしそれでも攻撃の手を緩めようとはしない


ゆま「撃ってくる!!」

杏子「っ!」


右腕の立方体に開いた孔からは小型のミサイルが、左腕のガトリングガンは弾を撒きながら薙ぎ払うように振り回し、型の水晶体のレーザーは無作為にホールを焼き払う


ゆうか「うああああっ……!!ああッつ……!!」

かえで「いっつ……!大丈夫か、夏希!」

知久「う……大丈夫か、タツヤ!?」

知久(気絶しているだけか……)


タツヤを抱えて伏せた知久は、爆撃が生み出した悪夢に泣き出しそうになった

崩れてむき出しになったコンクリートの床と、散らかった瓦礫の上に横たわる大勢の人間

蹲って泣いている女性も、血を流して気絶している少年も、その全てが自分たちと同じ普通の人々である


あやか「ゆう!……ゆうっ!!」

ゆうか「大丈夫……ちょっと痛いだけ……!」

かえで「大丈夫なわけあるかアホ!!あんた腕の肉を喰いちぎられ取んねん!すぐにまた止血せな!!」

支援


蜂須「ちょっとそこのあんた!!た、助けて!!助けてッ!!」

知久「!」


見れば小太りの中年女性が足を瓦礫に挟まれて動けなくなっている

タツヤを手近なところに寝かせ、すぐに助けに向かった

幸いにも瓦礫の重さは大したものではなさそうだが、知久一人では動かすのに手間取りそうだった


蜂須「赤羽!純!あんたらも手伝いなさいよ!!」

かえで「こっちかて余裕ないねんアホ!!純、夏希見とけ!」

知久「……!すまない!」

かえで「気にすんなや、おっさん行くで――1、2の、3!!」


二人で足を挟んでいる瓦礫を僅かに持ち上げ、抜けたのを確認して手を離す

ボン、と鈍い音をたてて瓦礫はあるべき位置に収まった


蜂須「ほら、次!私を安全な所まで運びなさい!」

知久「え……は、はあ?」

かえで「阿呆抜かせ!この人かて子供連れとんのやで!」

蜂須「アホはお前だ!こっちは足を怪我してんだよ!」

かえで「大人のくせに!」


泣き顔でヒステリックに中年女性は怒鳴り散らす

そんな元気があるんなら自力で歩けと怒鳴り返したくなった知久だが、今はそんなことよりもまどかとタツヤだ優先だ、と無視していくことにする


蜂須「あんたも!そんな死んでるんだか分からないガキ連れて歩くなら!あたしを助けなさいよ!!」

知久「――なっ!!」


ふざけるな!と渾身の力で怒鳴り返そうと息を吸った時、中年女性の頭頂部に拳骨が振り下ろされ、とても少女の物とは思えない怒声が響き渡った


まどか「――ふっざけんな!!私の弟に、なんて口効いてくれてんだでめぇッ!!」

知久(……一瞬詢子がキレてるのかと)


女性は一瞬鹿目――と呼ぼうとしたように見えたが、口をついて言葉が出るよりも早くまどかのアッパーが顎を打ち抜き、無防備な腹目がけて体重を乗せた蹴りを喰らわせて沈黙させた


かえで「やったれ鹿目!!そいつぶん殴れッ!!思いっ切りや!!」

まどか「お前みたいなやつはクズだ、死ね!むしろ殺すッ!!」

知久「お、落ち付いてまどか……」


あまりの迫力とあざやかな一連の攻撃を前に、やっと知久が絞り出した言葉であった

なぎさ「まどからおこなのです?」

さやかff「激おこだね」

今回はここまでです、お疲れ様でした

なんのかんので、今夜更新いたします

なぎさ「お待たせなのです!」

なぎさ「今回はシリアスが薄めなのです」

さやかff(また落とされそう……)


まどか「うぇひひひ……えっと、二人とも元気?」

知久「ま、まどか……」


ちょっと照れくさそうに笑うまどかだったが、知久の不安はそんなものでは拭いきれない

まどかは全身傷だらけで、来ているものはTシャツとボロボロのスカートだけ……うっすらと見えるだけだが、少なくともブラは付けていない

誰に痛めつけられたのか、それとも辱められてしまったのか


知久「まどか!一体誰にそんな!?」

まどか「幼気な女子中学生にやられました」


思わず声が裏返るほどの感情を滲ませる知久と、あっけらかんと答えるまどか


知久「まどか!!そんな冗談を言ってる場合じゃ――」

まどか「あー分かった分かった、どうせそう言うと思ってた」

知久「まどかッ!!」


逆なでするようなまどかの発言に思わず苛立った知久だったが、それでも一番つらかったはずなのはまどか本人だと思い直し、ぐっと言葉をこらえる


まどか「私は大丈夫、ちょっと擦り傷と打ち身が多いだけ……あとは服装が若干扇情的って程度だから」

知久「……本当に大丈夫なんだね?」

まどか「オッケーオッケー!」


その笑顔に隠し事は、多分無い

肝心の頭以外はきっと大丈夫だ

なぎさ「なのです!」

支援


まどか「ちょっとやることがあるんだ」

知久「……分かったよ、僕に出来ることがあったら」

まどか「あやかちゃん、ゆうかちゃん、二人の知恵を貸して欲しいの」クル

かえで「うちはスルーかい!」


知久の行為をさらっとスルーして後ろの女子に話しかけるまどか

大分イラッと来たが、ここは取り敢えず静観する

少なくともタツヤの為に怒ったまどかだからだ


あやか「え……?」

ゆうか「知恵?……なんで?」

まどか「あゆむちゃんを助ける」


わざわざクルリと一回転して見せてからはにかみながらまどかが続ける


まどか「その為に」

かえで「助けるって……魔女になってもうたら、助かれへんちゃうん?」

まどか「いや、魔女って魔法少女だから」

あやか「へ?」

ゆうか「……」


かえでのぶつけた疑問を軽く手を振って答えるまどか


まどか「要するにさやかちゃんのMPが切れたら魔女になるの?オーケー?」

あやか「じゃ、じゃあ……ゆきなちゃんが魔女だって話は……」

ゆうか「魔女少女だったって事。そして、それが魔法少女を作る目的……」

あやか「え?え?自作自演?」

かえで「自作自演なら笑ったる……もっとゲロイ目的があんねや」

まどか「魔女って効率の良いエネルギーになんの、んで前提としてあゆむちゃんは魔法少女じゃない、だから魔女じゃない」

まどか「単純に戦力として魔女を作ろうとしたプレイアデス聖団って奴らの擬似魔女は人間に戻せた」

かえで「!」

まどか「その知識を得たはずの二人が、それを元に魔女と化したのなら元に戻せるはず」

かえで「ど、どないして戻すん!?」

支援


まどか「レベルを上げて物理で殴る」

あやか「ふざけていでよ!」

まどか「ふざけてないよ、叩きのめしてあの形を維持できなくすりゃ良いんだもん」

ゆうか「理屈は……分かるけど……」

まどか「冗談だよ冗談!作戦はねぇ……ひそひそ」

かえで「……鹿目、あんた頭がやられとるんちゃう?」

あやか「えぇー……」

ゆうか「そんなのを思いつくのってどうなの……」

まどか「お願ーい!私一人じゃ出来ないのー!」パン

知久「まどか、僕も手伝うよ」

かえで「すまんの」

あやか「男の人はちょっと」

まどか「今女子トークしてるから邪魔しないで」

知久「う、うん……」

まどか「名付けて『オリュンポスの女神作戦』だよ!」

かえで(どっちかつうとギリシャじゃ……)

ゆうか「成功しちゃったら暁美さんとあゆに普通に接せられる自信がないなぁ……」

かえで「ま、まあ……それかて生きるっちゅーことやしなぁ」

知久「???」

まどか「……と、言うわけで後は最低でもえりかちゃんの協力が欲しいんだよね」

あやか「はぁ……それも手伝えって言うんでしょ」

まどか「あはは……はい」

知久「……?」

支援


まどか「ッと言うわけで!」

あやか「あ、タツヤ君はあたしがおぶります」

知久「あ、うん」

まどか「レッツ!ゲキガイン!」ピョン

知久「え……えぇ!?まどか、おんぶしなきゃ駄目かい?」グラ

まどか「お姫様抱っこでも良いよ」

知久(いや、熱もあるし裸足だしで、むしろおんぶしてあげないとダメか)

知久「よっと……大きくなったなぁ」

まどか「パパのご飯が美味しいからだよぉ」スリスリ

知久「こう言う時ばっかり、全く……」

知久(でも胸は詢子に似なかったなぁ……)

まどか「あ!えりかちゃん達発見!あっちだよあっち!!」グイグイ

知久「う、うん」

あやか「都合に良い事に仁美とおまけも」

かえで「上条のことをおまけはあんまりちゃう?作戦が上手く行くなら切り札やろ」

まどか「モノが無ければねぇ……」

支援


恭介「起きて……うん、二人とも無事だね」

えりか「……いたっ!」

つぼみ「……」


上条の呼びかけで目を開けても、目の前は何も変わっていない

えりかは頭を打ったせいで眩暈と頭痛がするし、つぼみはまともに動けないし、銃声も爆音も止むことはない

それよりも先ほどの爆風で吹き飛ばされた時に叩きつけられた衝撃で、二人は動く気にもならない程体中が痛いのだ

次に弾が飛んできたら、今度こそ死ぬしかない


仁美「か、上条君」

恭介「志筑さん、良かった……本当に良かった」


脇腹を押さえながらやってくる仁美を見ても、二人は目の焦点が合わずにいた


えりか「ねえ……これ、どうなってるの……」

つぼみ「分かりません……」


ようやっと絞り出した言葉だった

もう何度も繰り返したようなやり取り

それでも、そうしなければ今を受け入れることは難しい

支援


えりか「あたしらの家族……大丈夫かな……」

つぼみ「分かりません……でも……こんな……」


爆音が鳴り響くたびに、知っているはずの人たちが死んでいってるかもしれない


えりか「……」

つぼみ「……」

仁美「上条君、寄り添っても……良いですか?」

恭介「……うん、でもごめん。足が痛くて歩けないんだ」

仁美「ええ、分かりました」


そう言って、仁美はその肩に自分の頭をもたげるようにくっついた


えりか「もう……さやか達は本当に人間じゃなくなっちゃってるんだね……」

つぼみ「……」

えりか「今度さやかとつなぐ手は、今までつないでたものとは別の手なんだね」

つぼみ「もう……嫌です……こんなの……夢です……!」

えりか「あたし考えた、あたしの願いであいつを消しちゃってさ……そうすればみんな助かるじゃない?」

つぼみ「……」


一瞬えりかの言葉を逡巡して


つぼみ「えりか!!」


咄嗟に上半身だけ起こして怒鳴る

なぎさ「ところでさやかとまどかはどこまで行ったのです?」

さやかff「世界線によってはキス位まで」

リボほむ「どういう……こと……?」


えりか「じょ、冗談だよつぼ……み?」ギュ


ふと愛する人の姿を見た

制服はボロボロであちこち埃だらけ、体中に傷を作って横たわる痛ましい姿を

そんなえりかに覆いかぶさるように、つぼみは上から抱き着いた


つぼみ「えりかは……怖くないんですか」


愛する人の胸に顔をうずめて、少女は涙をこぼした


えりか「……怖いよ、怖いけど……あたし、友達を見捨てなきゃいけないかもって……それが一番怖い」


どこかばつが悪そうに、目を逸らしながら答える


つぼみ「……どうしてですか」


じっと耳を澄ませなければ聞こえない程の小さな声

怒りを滲ませる震え声だ


えりか「さやかとかほむら達が、毎日こんな思いをして戦ってるのかなって思うとさ……なんて言うか……あたしこのままでいいのかなって、思う」

つぼみ「えりかは……優しいです」

えりか「……」

つぼみ「いつだってだれかの為に一生懸命になれるえりかが、私は大好きです」

えりか「つぼみ……?」


えりかの肩を握ったまま、埋めていた顔を俯いたまま離す

支援


つぼみ「私、嬉しかったです……中学生になって、不安で一杯だった私に元気をくれたのはえりかでした」


声がかすれる……でも、自分を鼓舞するように少しずつ大きな声にしていく


つぼみ「朝は元気いっぱいにおはようって言ってくれて、一緒にお昼を食べて……えりかは私の料理を、いつもおいしいって言いながら食べてくれて……」

えりか「つぼみ……」

つぼみ「私はッ!!」


今まで一番大きな声。爆発音がいくつかしたが、そんなものにも呑み込まれない大きな声


つぼみ「えりかが好きですッ!!大好きですッ!!」

恭介「い、今の何?」

仁美(キマシタワーッ!!!)ギュ

まどか(捗るミラクル百合ップル!!むらむらしてきたー!!)ギュ

かえで(アカン)

つぼみ「私は……えりかが……大好きです……」


真っ赤になった顔を隠すために伏せたまま、もう一度小さな声で同じ言葉を繰り返す

肩を握る小さな手はぷるぷると震え、信じられない程に強い力でえりかの肩を握っている


つぼみ「み、皆の為に一生懸命なえりかが好きです……でも、私の為に……一生懸命に……なって、欲しい……から……」


肩までも震えさせながら、つぼみは念仏のように言い訳とも取れる言葉をぶつぶつと呟いていた


えりか「つぼみ」


つぼみの顎を手でつまみ、顔をあげさせた

そのまま手をつぼみの後頭部に回し、ゆっくりと自身の顔に引き寄せ、その唇目がけて自らの唇を突き合わせた

少しだけ逃げようとしたつぼみを無理矢理自分の体に乗せ、ゆっくりとさすりながら抱きしめた

支援


えりか「あたしも、つぼみの事大好き!」

つぼみ「……!!」


もう言葉にならないといった様子でつぼみは涙を零す

溢れた感情の全てが涙に代わって、二人は泣きながら抱き合った


かえで(うちはつっこまんわ……)

知久(今時の女の子って……)

まどか(やっとくっついたかこの二人……さて、この場合はどっちが攻めなのかな?)

タツヤ「世界に広がるビックな愛!」

あやか「ナンバーズ11の話はやめなさい」

知久(それでいいの!?これは大人として何か言うべきなのか?)

恭介(ああ、現実の百合はクソって意味が良く分かるよ)

まどか「はーい、カット!それじゃあ二人とも耳貸して!あのバカンガルーをとっとと退治するかんねー!」

つぼみ「み、皆さんで覗いてたんですか!?」

まどか「見られていたんじゃない、見せていたんだ」

知久(なんだそれ)

つぼみ「な、なるほど……」

えりか「ってちょっと待って!そんなこと出来るの!?」

まどか「いや、本当はさやかちゃん達にかかればあんなのイチコロだよ?でもほら、やっぱ殺したくないじゃん?」

えりか「そのための作戦があるんだ……」

支援

支援


ゆうか「ええ、名付けて『オリュンポスの女神作戦』よ」ドヤァ

えりか「おお、なんか行けそう」

あやか「思ったんだけどさ」

かえで「なんや」

あやか「『オペレーション・アフロディーテ』とかのが格好良くない?」

かえで「まさかのド変態ガチレズ作戦でええわ、もう」

ゆうか「それは置いといて、作戦はこうよ!」

まどか「はい、こっから男子禁制でーす」シッシッ

仁美「禁制ですわ」ヒラヒラ

知久「あ、うん」

ゆうか「カクカクシカジカ」

あやか「四角いムーブ」

まどか「ま・ど ま・ど さ・や さ・や♪」

タツヤ「ゆ・り はかどるよ♪」

かえで「って堂々と何を教えとんやこんボケェ!!」

恭介(タツヤ君は良いんだ……)

まどか「あ、タツヤはまだちんちん生えてないから」

恭介「!?!?!?」

まどか「私の弟にそんな汚らしいモノがあるわけないだろ!」

かえで(つっこまんからな)

支援


えりか「……ってかちょっと待って!それ行けんの!?」ガバッ

まどか「どうして今えりかちゃんは立っていられるの?」

えりか「あー……それ言われると行ける気がする」

つぼみ「大丈夫ですえりか!」

えりか「え?」

つぼみ「花にも心はあります!だって花は、歌を聴いて育つんです!」

かえで(アカン、こないクソみたいな作戦が成功する気ぃしてきたわ……)

まどか「やろう、つぼみちゃん!」

つぼみ「はい!魅せましょう!戦場に轟く、戦姫絶唱を!」

まどか「でも、どうせなら上条君の協力が欲しいよね」チラ

仁美「そうですね、私も手伝うとは言いましても……」

まどか「そんな訳でまずはモノを切り落としてくれる?」

恭介「な、何を言い出すんだ鹿目さん……」

まどか「上条君ってモノを落とせば結構いい顔してると思うんだよね」

恭介「鹿目さん……君は本当の気持ちと、向き合えますか?」

まどか「ニューハーフとか滅びてしまった方が良いと思うの」

仁美「男が女性をそんな風に思っているのかと思うと鳥肌が立ちますわ」

恭介「男性を全否定じゃないか」

仁美「本当の気持ちを公開しました」

まどか「後悔した?」

恭介「後悔なんて、ある訳ない……取り敢えずやることは分かったよ」

まどか「な、なんで……?」

恭介「花咲さんが戦姫絶唱ってヒントをくれたじゃないか」

まどか「私、呪われてるかも」

知久「まどか、僕は……」

まどか「今日の晩御飯はパイン・サラダとステーキが食べたいな」

知久「分かった……とっておきのサラダ、作っておくよ」

タツヤ「ねーちゃん、頑張れー!」

まどか「大丈夫、タツヤを置いてどこか遠くに行ったりなんてしないよ」

かえで「フラグ建てんなや」

なぎさ「今回はここまでなのです!お疲れ様でした!」

ゆきな「モノが無い兄弟って妹じゃないの?」

さやかff「まどかは少し錯乱してるんだよ」

申し訳ないんだぜ……

ブラック労働が続いてたんだぜ……

支援


まどか「パパストップ!この辺!」

知久「あ、ああ」


知久におぶられたまどかが一番早く定位置に辿り着いた

つぼみと仁美の位置が魔女を挟んで対になり、その二点から直角三角形の頂点になるようにまどかが陣取る

二人はあくまでジャミングで、まどか自身が本命の囮

まどかの命運は父親と、自分の親友に全て預ける


まどか(まだ少しかかる)


十分に体力のある仁美はともかく、元来内向的なつぼみは移動に多少の時間を要することは目に見えていた

だから、この時間で魔法少女達に協力を仰げる


まどか『みんな、聞いて!今からあの魔女をかく乱する!』

ほむら『……え?』

キリカ『君は一体何を言い出すんだ』

まどか『良いから!あの子を助ける方法を見つけたの!ほむらちゃんはえりかちゃんの所に!みんなはあの魔女を少しの間引き付けていて欲しいの!』

キリカ『って言ってもねぇ……』

杏子『分かったよ、どうせ殺すしかなかったのを殺さなくて済むって言うなら試してみようぜ』

さやか『うん!命を守るためなら、あたしは戦える!』

ほむら『ええ!』

キリカ『勝手に盛り上がるなー』

ゆま『私は杏子の味方だよ』

キリカ『4対2で多数決か……』

織莉子『私はまどかさんに賛成よ』

キリカ『よし!満場一致だね!』

QB『君ねぇ……』

支援


二人が配置についた

指揮者として、これから歌う人たちにアイコンタクト

今、この歌はまどかの色に染めあがる


まどか「地球に――愛をッ!!」


両手を挙げて、二人が足を開く


つぼみ「命に、歌を!!」

中沢「なんだ、いきなり!?」


つぼみの口上でまどかの右手がリズムを刻み、仁美のもっとも歌いやすいタイミングを計る


仁美「すぅー――」

まどか(1、2で笑って)

仁美(3、4も笑って)

まどか(5、6で前見て)

仁美(7、8……)

まど仁((せーの!))



仁美「what is reason of may birth!」

さやか「仁美のこの歌!」

???「ウォオオオオオ!!」

仁美「reason of my life question of man!」


それが歌だと理解した魔女は、その歌を否定した

未来を否定したはずなのに、その歌は彼女を未来へ導く思い出だからだ


杏子「けど、こんな歌が流れたくらいで!」

仁美「What he is What he wants!」


そして、彼女に思い出は否定出来ない

思い出を否定できない人間が、安らかな死を迎える事なんてない


???「ヴオオオオ!!!」

キリカ「いや、集中力を乱した!……ってか錯乱した!」


ありったけの火力をあるがままにぶっ放し、ホールの壁を、天井を、床を、焼いて砕いて傷つけていく


織莉子(違う、自身の存在の矛盾に気が付いたのね)

支援

支援


それは、起こした奇跡だと言えるもの

人間だけが手にしたそれは、あらゆる生命が求めたもの

魔女だって例外ではない


QB(成る程、これなら一度に大勢の人間を落ち着かせられる……せつなの魔法に近いものがあるね)

まどか「よし」  


―― 花に勇気 感じた ――


それだけ聞いたまどかは知久の頭をよじ登り、大きく息を吸い込んで声を発した


まどか「おい!!この、むっつりスケベのガチレズ変態ロリコン女ッ!!!」

知久「え」

???「ボオオオンッ!!」ガッチャコン


右手の立方体が二つに割れ、間から大砲のようなものが姿を現す

その照準の先に居るのはどう考えなくても、まどか


キリカ(何を言い出すんだあいつ)

支援

支援

支援



―― いつも君の そばに居るよ ――


まどか「本当はほむらちゃんにベタベタくっ付いて甘えたいんでしょ!!」

ほむら「ちょ」


―― だから もう 一人じゃない! ――


まどか「膝枕してもらった時、落書きするってかこつけてほっぺ揉んだり脇腹撫でたり二の腕触ったりなんだりしたりしたくせに!」

杏子「ひざま……!?」

ほむら「な!?なんでまどかが!?」

杏子『分かった分かった、えりかはそっちだから早く行け』


―― 君が 道に迷う時は ――


まどか「私なんか――ほむらちゃんの寝相の良さ、良く知ってるんだからぁぁぁッ!!!」

さや杏『『ほむらあああああああッッ!!!』』

ほむら「ち、違いますッ!!」


―― 僕が 先を 歩くよ ――


???「ゴアアアアア!!」


まどかをおぶって走り回る知久めがけて、大砲が唸りをあげる

しかし全ての弾はさやかに切り払われ、まどかに害をなすことは無い


知久「うちの妻と娘がごめんなさあああい!!」

支援



―― 遠い空 越えて 僕らは ――


キリカ「飛・び・立・つ♪」

キリカ(両親公認か、やるな)ウインク

織莉子(流石に親に認めさせる器量はないわ……完敗ね、私)フゥ

ほむら「ち、違います!違いますって!ちょっと!?なんですかその眼!?」

QB「眼だけで語られたね、感情が無い僕にも分かるほど露骨に」


―― きっと そこにある そうさ それが ――


まどか「君ぃの夢ぇぇぇええええッッ!!!」

ほむら(なんで私が悪いみたいな空気になるの……)グスン

まどか『皆!せめて歌が終わるまで足止めをお願い!』

さやか『OK!』

キリカ『別に倒してしまっても構わんのだろう?』

ゆま『負けそうなセリフ……』

まどか「パパ!次はあっち!落ち込んだほむらちゃんを元気づけてあげないと!」

知久「それまどかのせい」

まどか「いいから黙ってGO!GO!GO!!」バンバンバン

知久「痛い痛い痛い」

支援


えりか「ほむほむ、やっと来た!」

あやか「さあ!まずは変身を解除するのよ!」

ほむら「え、ええ……?」

かえで「鹿目が考えた作戦やで!はよせーや」

ほむら「わ、分かったわ!」パヒュン

ゆうか「いくぜ野郎共!押し倒せ!」

かえで「おっしゃあ!」ガバッ

えりか「やってやるっしゅ!」ガバァ

あやか「とりゃああ!!」

ほむら「ちょ、ちょっと何!?嫌!離して!」

ほむら(そうよ!変身して蹴散らせば!)

あやか「指輪取った!」キラーン

ほむら「ちょ、ちょっと!?何してるの!返して!!」

かえで「ええから黙って!」

えりか「服を脱げー!」グイー

ほむら「嫌ああああああっ!!!」

ゆうか(どこかで見た事あると思ったけどただのレイプ系AVだった)

あやか(どうしよう……暁美さんが泣いてるのを見ていると、腹に蹴り入れたくなってくる)ゾクゾク


なぎさ「ニーベルングってなんなのです?」

さやかff「ニーベルングっていうのはジークフリートって言う英雄が主役のね」

リボほむ「よくもそんな嘘がつけたわね」


~~


ほむら「ひっく……ぅぅ……ぐす」

かえで(上着とスカートとタイツ脱がしただけなのにガチで泣いとるな)

えりか(パンツを脱がすのは良心がゆるしてくれなかったっしゅ……)

あやか「頭踏みたい」ボソ

ほむら「ひ……」ビク

かえで「え」

えりか「あ、あやか……?」

あやか「え、どうしたの?」

ゆうか「あんた今とんでも無い独り言言ったからね」

まどか「ほむらちゃああん!!」

知久「げぇっ!!」


知久が駆けつけた時には大体の状況が完了していた

ほむらはYシャツと下着だけを身に着けた格好であやかに羽交い絞めにされ、他の少女達に囲まれて酷く怯えている

普段のイメージとは違う弱り切った泣き顔で項垂れるほむらを見て、娘の友達であることが分かっていても、知久のモノはその出力を上げてしまう


知久(う……鎮まれ、僕のニーベルング!!)

ゆうか(これでまどかのお父さんがアレだったら完全にJCレイプにしか見えないよね……どうしよう、捗ってきた)

なぎさ「今回はここまでなのです!お疲れ様でした!」

ゆきな「ごめんなさい、因果律の改変が発生して来たるべきワルプルギスの夜はなくなってしまったの……」

なぎさ「お仕事のお休みがなくなってしまったのです」

ゆきな「私とあゆむがいちゃいちゃするチャンスをつぶしやがってぇ…!」

さやかff「次そんな展開になるの!?」

おはようございます

再開します

支援

知久「な、なんだ君たちこれは!?こんなの」
まどか「モノ立てながら言われても」ボソ
知久「う……」
腰を折って若干前かがみになった知久をよそに、ほむらの元へとまどかは歩いた
ほむら「まどかぁ……こんなの……」
まどか(あ、マジ泣きだ)ムラムラ
滾る衝動を抑え、ほむらに話しかけた
まどか「ほむらちゃん、聞いてね……ほむらちゃんにはあのカンガルーの中に入り込んで、あの子に会って欲しいの」
ほむら「ま、まどか……」
ゆうか(さり気無いけど死刑宣告に等しいよね)
あやか(モビルスーツもかくや……なカンガルーに突撃して来いって事だし)
まどか「大丈夫、ほむらちゃんの容姿にはあの子を幻惑する要素があるから!」
ほむら「ど、どういうこと……ちょ?!」
すうっとほむらに顔を寄せ、その頬に軽く口づけをし
まどか「可愛いって事だよ、思わずキスしちゃいたいくらいには」
と、妙にはにかむ
ほむら(まどかが混乱してる……このままでもいいけど、どうにかしないといけないんだけど)
耳が熱くなるような衝動に、思わず足元へ視線を移す
途中でまどかの敗れたスカートと、その中にある紅葉が散りばめられた下着が目に入って、どこに目をやっていいのか分からなくなる
そうやって混乱している隙に左手を持ち上げられて、頭の上に手を置かれた

支援


まどか「なんてね、確かにほむらちゃんは可愛いけど、それ以上にほむらちゃんはあの子のお母さんに似てるんだ……あの子が思い出せない、大好きなお母さんに」

ほむら「え……」

まどか「あの子はほむらちゃんの事、ずっと気になってた……初めて見た時から」

えりか(それって男子が女子に一目惚れする理由じゃないかな)

あやか(言われてみるとまもる君って暁美さんに少し似てるかも……)

ほむら「あ……え……?」

まどか「あの子は貴方に一目惚れしたんだよ、ほむらちゃん」

ほむら「え……あ……いや……」

まどか「恋だよ、恋」

ほむら「ごめんなさい……恋愛とか……その、まだ早すぎるって言うか……あの」


艶やかな目つきで見つめられ、ひたすら褒められ続けると言う未知なる高揚感に流されに流された結果、まどかの無茶な言いつけを肯定するまでに時間はかからなかった


知久(まどかが友達を手玉に取るなんて……)

支援


杏子「ぶっ倒れてな!!」


十数人に分身した杏子が槍に乗ったエネルギーをぶつけ、巨大な爆発でカンガルーを吹き飛ばした

真正面から数と力でぶつかって無理矢理に押し倒し、攻勢の状況を維持する

相手がどれだけ強大でも、かつての願いを取り戻した杏子はマミに次ぐ実力者、この程度は敵ではない


中沢「凄い!凄いぜ魔法少女!」

葵「まさかあそこでさやかがあんな風に動いてこんな風にピンチを乗り切るなんて!」

恭介「さらにそこであの子があれをしてその子がこれを決めて逆転したね、何が起きたのか僕にはさっぱり分からなかったけど」

キリカ『歌なんかで……とは思ったけど、みんなが立ち上がるきっかけになったのは大きいかな』

ゆま『危ない時に自力で避難してくれるだけでも手間かからなくなるしね』

織莉子『その分だけさやかさんと杏子さんが攻撃に回れるもの』

杏子(ほむらは居ても居なくてもあんま変わんないしな)

まどか『お待たせ皆!準備出来たよ!』


まどかの呼び声と共に魔法少女姿のほむらが現れる


さやか『待ちわびたよ、ほむら!』

キリカ『今頃来てもねぇ』

ゆま『本当の事だからって口にしたらダメだよ!』

ほむら「う……」


さやかの歓迎とキリカの嫌味にほむらも少し罰が悪そうな顔をしつつ視線を逸らす


キリカ(あれ?心なしか目元が色っぽい……?)


微妙な違和感を見つけられたのはキリカだけであった

支援


杏子『ちゃんと方法も用意してきたんだろうな!』

QB「僕から説明す( 織莉子『要するにあのカンガルーは使い魔なのよ、魔女はあの使い魔の中に居る』

QB「つまり( まどか「これがラストミッション!」

ほむら「じ、人類……の」ゴニョ

まどか「 こ れ が !ラストミッション!!」ペシペシ

知久「ま、まどか!痛いよ」

ほむら「じ……人類の存亡を……か、かけた!」

まどか「……」イラッ

ほむら「た、対話の……ま、まどかぁ!?」

まどか「ほむらちゃんノリ悪いし、もう知らない!」プイ

ほむら「だ、だって……」

まどか「ふーんだ、早く行っちゃえばー、だ」プーン

ほむら「ほむぅ……暁美ほむら、行きます……」

キリカ「どういう関係だよあの二人」

つぼみ(ほむらが生き恥を曝しています……)

QB「要するにあのカンガルーの腹部を切り開いて物理的に侵入すればいい」

QB「ま、使い魔自体が魔女の結界の外殻って事なんだよ」

杏子「そういうことなら!さやか!ほむら!AC2P!」ジャキン

ほむら(なんだっけ……)

さやか「オッケー!!」ガシャン

杏子「特注の一本だ!大事に使えよ!」ブン!

ほむら「ひゃ!槍を急に投げないで!」パシ

中沢(折角貰ったのに盾にしまうのか……)

さやか「頼んだよ!ほむら!」


マントを翻すと同時に現れた数十本の剣をほむらに次々と投げつけた


キリカ「あれこそアンリミテッド……いや、言うまい」

ほむら「ちょっと!私の腕二本よ!?」


飛んでくる剣を上手く蹴り上げ、落ちてきた剣を直接盾の入口でキャッチして収納する

皆でやってきた日頃の訓練の賜物だ


つぼみ(って言いながらしっかりリフティングでキャッチしていますが)

支援


杏子「まずはあたしが行く!」

???「ボオオオオオンッ!!!」


杏子が両手を地面にあてると赤い光が魔方陣を描き、強烈な輝きと共に使い魔の手足を鎖で絡めて、お腹への射線を作った


ほむら「九星十字手裏剣!!」


先ほど受け取った刃だけを盾から覗かせ、ほむらの魔力で巨大化させて質量と体積を大きく上乗せし、本来は時間素行の為に使う回転ギミックで速度も乗せた一投


ほむら「シュートォッ!」

中沢「いったぁぁ!!」

あやか(……中のあゆは大丈夫なのかな?)


刃が腹に突き刺さると同時に仕込んでいた爆薬が爆発して、使い魔の腹に大人が容易に入り込めるほどの穴を空けた

その穴に映るのは、ノイズが入り混じって不可解な数列がいくつも走る物理法則を無視した空間


キリカ「今だよさやか!私の魔法を剣に込めて!」

さやか「葬る!不動無明剣!!」


青白い雷撃が剣の先から飛び出して使い魔を襲い、その全身を強烈に焼いた


かえで「動きが止まった!」

ゆうか(聖剣技……)


キリカの速度低下をさやかの魔力で束ねてぶつけ、回復速度を大きく落とす

使用したさやかとキリカはもちろん、その雷光を間近であびた者の魔法回復効率を大きく悪化させ、ワルプルギスの夜の再生すら止めて見せた協力無比な合体魔法

支援


杏子「突っ込めほむら!」

まどか「行っちゃえほむらちゃん!ハートの全部でゴー、ゴー、ゴーッ!!」バンバンバン!!

知久「痛い痛い痛い!なんで叩くの!?」

まどか(あ……私の空元気も限界な感じ……)クラ

キリカ「ちょっと待て!回復早すぎない!?」

ほむら(速度低下喰らっても尚あれなの!)

ほむら「ごめんなさい、もっと接近してからタイミングをぉぉッ!?」

仁美「ほむらさんがリボンに飲み込まれてしまいましたわ!」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

恭介「す、凄い爆発だ!うわああ!!」


思わず身を竦めるほどの衝撃が走り、使い魔の腹部分をほとんど吹き飛ばすほどの損害をたった一撃で与えた


キリカ(あんな大穴が一発で空くのか……)

杏子(あたしらの攻撃は何だったんだ……)

マミ「レギュレイト――ティロ!」

ほむら「ま、待って!この技嫌っ!」


マミが身を翻して手をあげると、ほむらを取り込んだリボンが大砲へと形を変え、使い魔目がけて照準を合わせ、そして


さやか(マミさんがいれば最初からどうとでもなってたんじゃないかな)

マミ「イニッツォ!!」

ほむら「いやあああああ!!」


悲鳴を顧みられることなくほむらは飛ばされてしまった

支援


えりか「ほむほむがぶっ飛んで行っちゃった……」

あやか(あれ死んだんじゃないかな)


ザブン

結界の中に入った感覚は、さながら水の中に飛び込んだかのようだった


織莉子『10分で片を付けなさい……さもないと――』

ほむら(さもないと……な……に……?)


水中を彷徨うよう感覚は心地よい

落ちているのか、進んでいるのか……一定の方向へ流されているのは間違いない

でも、それでいいのかは分からない


ほむら(っ……眠くなってきた……)


とにかく暗くて、静かで、自身の重さも、体も感じる事の無い空間を流されている


ほむら(なのに……暖かい……私は……ここを…………知って……――え)


それは一瞬だった


ほむら「うごおッ!?」


光のあと1mほどの高さから頭を下に落ちて、無様な姿勢で地面に倒れ、しばらく悶絶する羽目になった

中々に笑える構図ではあるが、魔法少女でなければムチウチになって立てなかっただろう


ほむら「あっ……痛ッ……凄い痛い……」


首の痛い所を魔法で直しながら周りを見渡し、状況を整理する

支援


ほむら「……」


そこは燃え盛る家の中

キレいな絨毯が、豪華なソファーが、大きなテレビが、豪勢なテーブルが、そこにあったはずの温もりが、人が暮らしていた場所だと思わせる


ほむら「何……?何で……?」

???「ああ、あんた『ここ』は見た事無いんだっけね」

ほむら「ッ!?」


それはほむらが捜していた声だ

背後に覚えた殺気を、自身の勘のままに動いて避けて振り返る

後ろで窓ガラスが割れ、その窓ガラスを割った人物をしっかりと見定める


あゆむ「ここはあたしが昔暮らしていた家だよ、あいつはあんまり覚えてないみたいだけどね」

ほむら「あゆむ!」


いつもの見滝原中の制服で、彼女はそこに居た


あゆむ「本当、わざわざご苦労だこと」

ほむら(何か……違う!)


何かは分からない、でも何かが違う

彼女を見ていると本能的な違和感を覚えるのだ

こればっかりはニュータイプ的な勘でしかなかったが、とにかく何かが違う

それはほむらにとってはとても難しい間違い探しだ


あゆむ「ふん……見てるだけで殺意の湧くツラだな」


右手を振ると黄金の円がいくつも現れ、そして


ほむら(っ!!)


それらの円からいくつもの金色の円柱が飛んできて襲いかかる

速度こそ大したことないが、それらが当たった床などは一撃で粉砕されて大穴が空くほどの威力を持っている

支援


ほむら(あれじゃ受けるのは危険……)


一瞬で拳銃を取りだして目の前のドアを蹴り空けて、見えた階段を駆けのぼろうとした

しかし、それよりも早く黄金の円柱がほむらの背中を捉え、質量で叩きつけた


ほむら「ぐっ……!?」


痛みを感じるよりも早く、体の中のものが押し出される嫌悪感に襲われた

叩きつけられた、というよりは押し潰された、という方がしっくりくる

階段に胸からぶつかると同時にゴキッと聞こえて、それは自分の背骨が折れた音だと言うのはすぐに理解できたが、それを理解したところでどうにもならず倒れ伏した


あゆむ「はい終わり」

ほむら「……う……ッ!?」


あゆむの声に反応してどうにか振り返ると先ほどの円が一面に出現し、黄金の円柱が一斉に投下され、家の壁や床ごと――ほむらもそれらの一部だと言わんばかりに無差別に吹き飛ばし、砕き、潰す


ほむら「きゃああああ!!」


何発も円柱に殴られ、衝突されて、ほむらは壁を突き破って表へ放り出された


ほむら「……あ……っう……」


屋外へ放り出されるまでに何発喰らったのかも分からない、あの円柱はとにかく重いのだ

大きな衝撃こそなくとも、ほむらの体中の骨を砕くには十分な威力を誇っていたし、右の二の腕は潰され半ば断裂している


ほむら(こんな……こんなの……)


折れた骨が軽く飛び出した自分の右ひじを顧みて痛覚を消し、自分の体の動く部分を確かめながらよろよろと起き上る

支援

支援


ほむら「けほっ……!うぇッ……」


肺の中で溢れた血に咽ながら吐きだし、ぐらぐらと揺れる視界で燃え盛る屋敷に焦点を合せる

めらめらと燃える炎は、真夜中の景色の中でひときわ煌めいて、その在り様を煌々と感じさせる


ほむら(右頭部に挫傷、出血あり……左腕はまともに動く、左足はアキレスごと折られてる、腰は砕けてこそいないでしょうけど、背骨はどうにも……あとは肺が若干潰されてる程度かしら……)

あゆむ「へえ、良く生きてる」

ほむら「あゆむ!……私は……!」

あゆむ「……」スッ

ほむら「くっ!」


手をあげると同時に今までよりも一際大きな円が現れ、そして円柱が飛ぶ

動く足で地面を蹴って飛びのき、盾からデザートイーグルを出して、口と左手だけで安全装置を外して射撃

照準はあゆむの眉間


あゆむ「ちっ!」

ほむら「え……?」


弾丸は確かにあゆむを狙って撃たれた、しかし上半身の捻りでそれを回避しすぐに黄金の円柱を投射して反撃してくる

あまりに無駄のない動きに思わず面喰らい、盾で防ぐことはしたものの、直撃と言ってなんら差支えない程強烈な一撃を貰ってしまった


ほむら(何、あれ……私は……こんなことの為に来たわけじゃ……)

あゆむ「……」


あゆむが歩いてこちらへ来る

何かをするつもりだとしてもいまのほむらに禄な抵抗は出来ない


ほむら(……ここ、あゆむの家だ……)


目に映った風景でなんとなく分かった……ここはあゆむの家

自分が最初に現れたあそこには、確か花園と石碑があったはずだ


ほむら(ここって……まさか……)

ほむら「……」


襟を掴んでほむらを引き起こし、覗き込むように瞳を見つめて、それから


あゆむ「ま、さようなら」


とだけ挨拶すると左手に黄金のレイピアを持ち出して躊躇うことなく心臓に突き刺す

支援


ほむら「っあ……!」


そこでようやく違和感の正体に合点がいった


ほむら(背が……低いわ……ね……)


本来ならほむらのほうが1、2センチほど背が高いのだが、今の彼女は軽く見積もっても5センチは低い


ほむら(全く……昔の自分の家が結界だなんて、ね)


霞み始めたほむらの視界で返り血で真っ赤になったあゆむが無表情のままで、倒れていく自分を見ている

心臓を貫かれ、血液が循環しなくなった身体は急速に熱を失っていく

もちろん錯覚なのだが、血が行きわたらない魂の入れ物は普通の手段ではもう動かない

脳が止まって、思考できなくなったらそこで完全に終了だ

ほむらは魔法少女、血液や神経系を魔力で代替して体を動かすなど造作も無い


あゆむ「……まだ動くのか」


自身を魔力で覆い、その覆った魔力を動かすことで身体を動かす

あゆむが飴を外骨格の代わりにして自分の体を動かしていたが、あれを魔力でやるだけ

多少の怪我があろうが関係ない

こうなったらもはやゾンビと何も変わらない

魂を潰すか、脳を潰すか、魔力を切らさなければ魔法少女は止まらない


あゆむ「どこまですり潰せば立てなくなるか、試してやるよ」

ほむら『先に言っておくわ』


連続で投射される黄金の円柱を紙一重で避け、ほむらが念話で宣言した


ほむら『私は宇宙一諦めが悪いのよ!』

あゆむ「正気かよ、あたしは負の感情の塊みたいなもんでさ、死への欲求、タナトスの権化だぜ」

ほむら『……そういう馬鹿への対処は昔から決まっているの』

ほむら(今なら分かる……まどかの言いたいことが)

あゆむ「へえ?」

ほむら「貴女の中にあるせいへの感情を……引っ張り出してやる!」

ほむら(あるはずなんだ!みんなの歌に反応した心が……そのために!)

さやかff「今日はここまでです!お疲れ様でした!」

なぎさ「心臓を貫かれても普通に生きてるほむほむは怖いのです……」

さやかff「流石のあたしもドン引きかな」

なぎさ「どの口が聞いてやがるのです」

待ってくれてる人!


待たせてすいません……

ごめんなさい……睡魔にやられたわ……

支援

あゆむ「精神論は、物理的に潰す」


ほむらを円陣で取り囲んで完全に逃げ場をなくし、黄金の質量を以て踏み潰す

それでこの少女は無くなるはずだ

そうすれば、再び夢の中に浸ることが出来る

自身の母親を見捨て、燃え盛る屋敷から脱出したあの夜を再現した結界

母親の暖かさを、その強さをもっとも思い知った日

そして、一番に望んでいたものを失った日

あゆむが前を見ることをしなくなった、その日


あゆむ(ああ本当、見てるだけで殺意が捗る女だ、こいつは)


円陣の箇所で座標を固定、生成する物質の情報の書き出し、無理関数を用いた因果律の書き換えと演算、それらが位相構造を越えてユークリッド空間へ干渉するための計算

デカルト座標か解析幾何学を用いればもっと複雑な形の黄金を作り出せるが、流石にそこまでの習熟は見込めない

ユークリッド幾何学だって、ちゃんと成立していれば質量のロスをもっと減らせるし、そもそも成立しているなら出来上がる金は立方体のはずだ。決して円柱にはならない


ほむら「……っ!」

あゆむ「跡形もなく、潰れろ!」

「なーんて、本当は思ってない癖に」

支援

ほむら「え!?」

あゆむ「は……?」

「ゴールド・フォルテ――バースト!!」


襲い掛かる円柱目がけて輝くひまわりが次々と飛び掛かって爆発

砕くことは叶わなくとも、軌道を捻じ曲げてほむらへの直撃を全て凌いで見せた


「初めましてだね、暁美ほむらちゃん!」


華麗な見せ場と共に空から舞い降りた少女はほむらのそばへと着陸し、紺色のツインテールを少し揺らしながら笑いかけた


ほむら「あ、貴女は……?」


妙に露出の高いコスチュームに身を包んだ魔法少女に問いかける

くるりと振り返った魔法少女はいたずらっぽくはにかんで元気に応えた


ゆきな「私、花蘭 ゆきな!好きなものはお花!一番大切な人は」

あゆむ「……」

ゆきな「葉月 あゆむ!」

ほむら「訳が分からないわ」

ゆきな「なんで!?」

ゆきな「だってまどかちゃんから……なんにも聞いてなんだ」

ほむら「勝手に納得しないで」

あゆむ「ゆきな」

ゆきな「へへ、お互いに梔子での再会だね」

あゆむ「死人だけに、な」

ゆきな「私はほむらちゃんの魔法に応えるために出て来たよ……今は」

あゆむ「ああ、分かってるよ」

ほむら「……!」


ゆきなの髪が靡くと同時に距離を詰めた二人はぶつかり合った


ゆきな「『魔法少女 ゆきな』の感応と、『魔女 紫苑』の鑑賞の魔法を、あゆむの量子論で組み直した『哲学干渉』の魔法」

支援


格闘戦を繰り広げながらの口論と、あゆむの幾何学具現演算と、その発生個所を寸分の狂いも無く妨害して見せるゆきなのひまわり達が入り乱れる様は、ほむらにも理解し難い数式の討論となっていた

式よりも解を優先するあゆむの性格と思考方式は、いざ戦闘となればゆきなの『感応』ととことん相性が悪い

円陣を作り出した所にひまわりを放り込んで阻害し、共感覚を感知の要としているあゆむの解を読んで茶々を入れる

だが一方的に見える格闘戦も、ゆきなの拳と脚があゆむの急所を捉えることは無い

数秒にも満たない小競り合いの中、魔力を乗せた拳をぶつけあった衝撃で弾け、距離が開いた状態で身を翻して着地

あゆむとゆきなは互いに睨み合いのままとなる


ゆきな『流石はアソシエイター……全部読めてるのにちっとも抜けない』

ほむら「アソシエイター……?」

あゆむ「……」


感心したゆきなの言葉にほむらが疑問を投げる

あゆむが燻すような表情をしたが、ゆきなはほむらを一瞥すると勝手にペラペラと語ってゆく

支援


ゆきな『共感覚の中でも、あゆむみたいなタイプをそういうの!簡単に言うなら、あゆむは『耳で音を視る』ことが出来るんだよ』

ほむら「耳で……」

あゆむ「便利なだけじゃないさ、制約だって多いし……そもそも本来『色聴』って名前の病気だ」

ほむら「病気……」

あゆむ「そりゃ気味も悪いだろう」

ゆきな『足音なんかは当然で、呼吸音、動くときに擦れる服の音、僅かに出る声の震えや心臓の音』

あゆむ「そんな音を全て聞き分ける……ま、あたしの耳が良いのは周りの大人たちに陰口を言われ続けたせいだけど」

ほむら「でも!それは使い方によっては誰かの助けにだってなるでしょう!」

ゆきな『そうだね、そういった感覚を持った人たちの作る音楽は総じて高い評価を得る物だし、生前の私の気性を誰よりも敏感に察知できたりした』

あゆむ「……けどな、今はいつでもどこでもがんがん煩いんだよ!昔はもっと弱くて頼りない力のはずだったのに!」

ほむら「昔は?」


あゆむが一瞬言葉に詰まって、でもその言葉の続きはゆきなが勝手にしゃべる

もはや人の身でないゆきなにとって感応の魔法は障害ではなくなっている


ゆきな『葉月 まことって人が居た、その人はあゆむの感性を新世代――ニュータイプのものだって言ったんだ』

あゆむ「その話は……」


ゆきなを取り囲むように現れた円陣、しかしゆきなは臆することも無く踵でリズムを刻み、つま先で地面に円を描く

描いた軌跡に光が生まれて、複雑にからみあったそれらは魔方陣として機能する


ゆきな『止めたいのなら、私を倒すしかないよね!』

支援


ほむら「ちょ、ちょっと!?」

あゆむ「上等だ」


黄金の円柱がゆきなの頭上から降り注ぎ、大地を揺らす程の衝撃が走る

ゆきなは描いた魔方陣を浮き上がらせて上に立ち、まるでサーフィンのように降りしきる円柱の間を滑って避けあゆむの頭上に躍り出た


ゆきな「カットバック――」

あゆむ「ドカスが」

ゆきな「ドロップターン!」


空中で自身の上下前後を入れ換えて一度推力を切り、自由落下の開始とともに再び加速、その際にタンバリンに集約した魔力を剣状に固めて斬りかかる

加速と重さの乗った一撃を見たあゆむも地面に手を添えて魔方陣を描き、そこから全長1メートル程の金色の分銅を引っ張り出して殴りかかる


ほむら「止めてよ二人とも!こんなの、絶対おかしいよ!」



~さざ波ホール前広場~


せつな「はーい!ゴミ屑以下の以下の皆さんこんにちは!こんな程度で一々パニック起こして、馬鹿なのお前ら?」


先程までの明るい曲調とは打って変わった、攻撃的なギター音とドラムの音楽に変わる

夜のディスコで流れるような激しいロック

その音楽を聞いた人々にせつなの言葉は突き刺さる

これがせつなの魔法『煽動』だ


QB「普通は命の危機が迫るとパニックを起こすよね?」

詢子「ちゃちな煽りだけどマジで頭に来た」

ショウ「ざけんじゃねえよ!こちとら別にパニックじゃねえやい!」


群衆からの雑言を糧にせつなの気持ちは昂っていく


せつな「夢に見てるわロマンティック!」

せつな「ロリータの時代よ♪ペドフィリック♪」

せつな「馬鹿な 大人は生ゴミ♪」

男性(心の底から……)

男性(何故かすっげーカチンと来る)

せつな「キラキラな――そう!少・女・が・好・きーーっっ!!」

支援

ショウ「yes!!ロリータぁぁっっ!!」

詢子「は!?え!?はぁっ!?」

男性A「プルプルプルプルーーー!!愛してるよ、プルーッ!!」

男性B「ルリルリ!!僕の青春だよルリルリーー!!」

男性C「さくらちゃぁぁあんッ!!」

「イリヤーッ!!」「リディアァァッ!!なんで大人になっちまったんだぁぁ!!」「哀ちゃんのパンツ見た上で殺して貰いたいぃぃぃ!!」
「大丈夫だ!俺は第一部のニアが水着で手錠かけられてる所で抜いた!」「俺が愛して止まないのは!いつだって綾波レイだぁぁぁっ!!」
「CD買ったよほのかちゃんッ!!」「ソルティ・レヴァントォォッ!!」「ツンデレロリロリビッチなあむちゃんこそ至高!!」

「A30エヴォトラDトラD剣持ってるから、VRマリーちゃんとお友達になりたいんだよぉぉぉッ!!!誰か売ってよぉぉぉッッ!!」

女性「女神なんてなれないまま私は生きる……」

詢子「どういう……事だ……」

せつな「いえーいロリ最高!ロリこそ生きる源だぁっ!!」

「ポロム!俺は五歳の頃の君が好きだった!天野画の君の、ませたような得意気な笑顔に心奪われた!ところがいざドット画になったらどうだ!俺はスーファミを馬鹿にしていた!渋谷女史を甘く見ていたんだ!まるでぬいぐるみのようなポテッとした君のボディーに俺は魅入られた!あれこそ理想の幼女体型!真ん丸なお腹を中心に伸びる未成熟な四肢!大きなお顔のパッチリした目で俺を見て!いざとなれば精一杯声を出して!ちょっと怖がる感じであざとく構えて!足を閉じて目をギュッてして詠唱するのは可愛すぎだろ!3頭身のドット画で抜くとは思わなかったよ!!」

せつな「あー醜い醜い、キモいキモい、大人ってなんでこんなに気持ち悪いんだろう?絶滅させちゃえ!」

男性達「「「イェーーイッッ!!!」」」

詢子「え?えぇぇぇッ!!?」

せつな「立ち上がろうよ少女達!皆の願い♪」

「「「生・ゴ・ミ・処・理!」」」

せつな「地上のゴミ全てを焼いて!ロリの国に」

せつな「変・え・ちゃ・い・た・い♪」

詢子「ポル・ポトも真っ青だよそりゃ……」

「長谷川先生!是非トゥインク・ステラ・ラベラドゥが主役の話を一本!!」

「亜久里ちゃんに手作りの御菓子食べさせて不味いって言われたい!そして、作り方教わりながら一緒に作りたい!」「俺、キマちゃんの帽子取って結婚するんだ…… 」「一番可愛いロリはフェイトちゃんだって、それ一番言われてるから」「エーコ!エーコ!愛しのエーコ!」 「リチュア可愛いよリチュア」

せつな「オッケーオッケー!皆で愛を叫ぼう!そして、このホールの中には……」

ショウ「はっ!現役の女子中学生がいる!?」

男性「そこに気付くとは……やはり天才か……」

詢子「気持ち悪いから全員死ね!」

リボほむ「キモ……いや、ほんと……もう、キモ……」

恐怖を上塗りする高揚と一体感

せつなの魔法が生み出すカリスマは、どのような奔放な発言でも、思いを重くできる

中途半端な自信やプライドを持つものなら効果はてきめんだ


せつな(さて、全員をいっぺんに移動させるのは難しいけど……)


これはこれで異様な空気だが、パニックで冷静さを失って暴走する人間は少なくとも居なくなった

後は順繰りで安全な所まで非難させるだけだ

問題と言えば消防隊がほとんど活動を止めてしまっている事と、ホール内の爆発音と火事が止まる気配を見せないこと、そして魔女の反応がむしろ活発になってきていることか

せつなの魔法がなければ、魔女の障気にやられた人間がどれ程になっていたか、想像もつかない


詢子「ん?」


突如として表れた深緑色の大型トラックやバス、装甲車達

中から降りてきた兵士たちは素早く隊列を押しのけてホールの入口やその周囲の窓などに立ち並ぶ

その隊員の全てが重々しく光る銃を所持し、ゴーグルとマスクで顔を覆った完全装備だった


隊長「皆さん、落ち着いて下さい!我々は自衛隊です!」

せつな「……は?」

「どういう事だってばよ?」


まるで映画の撮影のような光景に、全員あっけにとられた


隊長「爆発物が使用されたと思われる爆発の他、銃器の発砲と思われる音が幾度も確認されています!」

詢子「お、おい!ここ日本だぞ!」

隊長「政府はこの件をテロリストによる武装蜂起の可能性があるとし、我々特殊作戦軍《JGSDF》の投入を決定しました」

隊長「以降は我々の指示に従ってください」

せつな「冗談じゃない!あたしのライブはここからだよ!」

隊長「ごめんねぇお嬢ちゃん、私たちにも市民の平和を守るって言う使命があるんだよ」

せつな「じゃあ裏口から勝手に入っててよ!あたしの邪魔しないで!」

隊長「危ないから君にも離れていて欲しいんだ」

せつな「安全よりも刺激!平和な毎日クソ喰らえ!」

ショウ「良いぞせつなちゃん!」

「俺もせっつんの歌聞きたい!」

「俺も!」「僕も聞きたいです」

なぎさ「ガンダムってどういうお話なのです?」

さやかff「まどか☆マギカみたいなもんだよ」

隊長「んー……この国は平和を大切にしたい国なんだ、だからそれを乱す芽は早いうちに摘み取らなくちゃいけない。分かるね?」

せつな「あたしが大切なのは皆じゃなくて、あたしの歌を聴いてくれてる人たち!」

隊長「神代、彼女は治安維持法違反の容疑で現行犯逮捕」

せつな「!」

詢子「ちょ、子供だろ!?」

隊員「は、はい!」ダッ

せつな(う……これ抵抗すると罪が色々乗っかってめんどくさくなる奴だ……かと言って……)

QB「こう言う時に戸籍を持たない君が捕まるのは好ましくはなさそうだね」

せつな『本名名乗っても皆真に受けないと思うしね』

せつな「それでは皆さん御機嫌よう!暫くは見滝原に居るからあたしの歌、聴いてね~!」


ステージ代わりに乗っていたはしご車から近くの木に一度の跳躍で飛び移り、人ごみの外れまでこれまたひとっとび

誰かが声をかけるまでも出来ない、あっという間の逃走


隊員「あ、待て!くそ!」

隊長「追うのはこっちが済んでからで良い、今の我々には数百もの民間人の命がかかっているやもしれんのだ」

隊員「はい!」

詢子「中に居るのがテロリストって本当なのか!?」

隊長「その可能性が推察されたからこそ、私たちが派遣されてきました」

詢子「中にはあたしの家族が居るんだ!犯行声明とか、そういうの出てないのかよ!皆は無事なのか!?」

隊長「落ち着いて下さい、必ず全員を無事に救い出して見せます。だからお母さんは一刻も早く隊員たちの指揮に従って避難してください」

詢子「分かったよ……ほんと、頼むからさ……」

ショウ「行きましょう。せつなちゃんは破天荒だったけど、あの子の生き方は私にも伝わります」

詢子「いやあいつは意味わかんなかったけどな」

支援

支援

ショウ「冷静でいられなくなるほどの問題を抱えてしまった時に、冷静でいられる方法、それはその問題が小さなことだと思えるほど大きな問題を抱える事です」

詢子「は、はあ……」

ショウ「あの子の歌で、私は自分がしなくてはならない事を考え直せました」

ショウ「誰にでも出来ることを、あなたがやることに意味がある。みんなが知ってる歌をあの子が歌ったことに意味があったように」

詢子「私が知らない歌だったけどな」

ショウ「家族の無事を願う、目の前の女性をエスコートする……これを私たちがやることにこそ、意味があるはずですから」

詢子「……意外と良い事言うな……」

ショウ「え、俺初見の女性からそんな扱い……」

詢子「それと私、既婚者で子供二人いるから」

ショウ「え」


隊員「神帰隊長、今回の作戦はどうしてここまでの装備が必要と判断されたのですか?」

神帰「もしもの可能性を考慮して、だ。知ってのとおり、内部の事情は誰にも測れないでいる」

隊員「しかし……」

神帰「相手の戦力を見誤るなよ、先ほどの少女を軽く凌ぐような身体能力の女の子が相手かもしれんぞ」

隊員「魔法少女なんてイリヤちゃんだけで満足であります、隊長」

神帰「プリヤか……現実にあのような少女が居たら、彼女たちは何を思って日々を生きるのだろうな」

隊員「理解ある友がいれば、自身の特異性とも折り合いをつけて生きることが出来るでしょう」

神帰「いなければどうなる」

隊員「悪役待ったなしであります」

神帰「まるでガンダムの主人公たちだな……似たような境遇の人間でも、友に恵まれたならば主人公となり、逆ならばライバルとなる」

隊員「Zガンダムの最後に示されたニュータイプの可能性とは『隣人を大切に出来る者』であると解釈しています。ですので、隊長の考え方には強い共感を覚えます」

神帰「自分の歌を聴いてくれる目の前の人間を大切にする……そういう意味ではせつなというあの少女もニュータイプと言えるのやもしれんな」

隊員「いえ、彼女はXラウンダーでしょう……とはいえ、凡人にそれを測ることは出来ないのでしょうが」

神帰「よろしい、ではミーティング通りに。作戦コードは『ミッションプレイアデス』個人コードは星座由来のものを使用する」

隊員「チームジェミニ、了解」

神帰「ミッションプレイアデス、開始」

神帰(見せてもらおうか、新しい時代を作るニュータイプとやらの実力を)

なぎさ「ニュータイプってなんなのです」

さやかff「進化した人間って感じかな」

なぎさ「人間が進化するとどうなるのですか?」

さやかff「それは人の身ならざる神様に聞いてみよっか」

まど神「うーん……私はそこにある大切なものを、そのまま大切にして欲しいなぁ……進化とか変革とか、そう言うことの為に必要なものじゃないと思うんだ」

リボほむ(だからまどかはニュータイプには……なれない)

お疲れ様でした、今回はここまでです

なぎさ「明日はお仕事お休み!つまり今夜は更新のチャーンス!なのです」

ゆきな「ついにあゆむがほむらちゃんと……!」

さやかff「浮気されてもOKってなんなのよ……」

支援

おはようございました

更新します

支援



~袋の中の魔女、結界内~


ほむら「……」


あゆむとゆきなの激突は熾烈を極める魔法のぶつかり合いだった

あゆむは空間に次々と黄金の円柱を作り出したり、光子を剣やバリアとして使いこなす

ゆきなも背中に光の菱形を四つほど翼のように発現させたと思えば、物理法則もなにもあったものではない超機動で飛び回り、エネルギー弾を好き放題に飛ばしまくって攻撃している


ゆきな「サンシャインフラッシュ!」


あのキュウベぇをして無敵と言わしめただけのことはあり、圧倒的に有利なのはゆきなの方

技名を叫んであゆむを挑発する余裕すらある


あゆむ「!」


光が霰となって降り注ぎ、一帯をまとめて焼き払う

あゆむの家があったはずのその場所は、もはや一面が焦土と化していた


ほむら(またあの護り……)


煙の中に歪な球体が見える

青白い光子があゆむを球状に包み込み、物理法則に干渉してベクトルを書き換えて受け流し、周囲に乱反射させる

ほむらも何度か流れ弾を受けそうになった

支援


ゆきな「うーん……」


二人の戦いが終わらないのはこれのせいだ

所を選ばない機動力、強固なバリア、距離を問わずとも相手を確実に葬り去る攻撃力、不意を突かれても問題なく応戦できる本人の格闘能力、豊富な魔法の応用手段と、それらを一斉に起動出来る莫大な魔力

これらの強みに『感応』の魔法を併せ持つゆきなは確かに無敵だ

そんなことはゆきなの記憶を内包していたあゆむが良く知っている

だからこそ造花の魔女の魔法を使い、自身の記憶から『ゆきな』を再生した

今のゆきなはあゆむによって行われるであろう破壊に対する、カウンターの一つとして存在している


ゆきな「どうしよう……」


ゆえに諦める訳にはいかず、どうにかして彼女を一人だけで地獄へと旅立たせなければならない


あゆむ「ったく……お前と五分なんて、なんつう様だ……」


その軽口が閉じる前にゆきなの猛攻が再開する

タンバリンを叩くと、その効果音がひまわりとなって飛び出し、それらが熱線を照射して獲物を追いかけ回すように地面を焼いて行く


あゆむ(クソ……結局避けきれない!)

支援


目の前に光の粒子で盾を作り出し、熱線を受ける


あゆむ「……フラッシュタイミング……だからな」


同時に地面から魔方陣が発光して現れ、そこから青と黒の稲妻を内包した球体が複数現れた


ゆきな「プリズン・メランコリア」


その攻撃が発動する間際、ゆきなの視界に空き缶のようなものが飛び込み、強力な閃光と耳鳴り音が辺りを支配した


ゆきな「っぐ……ぎゃああああ!!」

あゆむ「っづぅ……!!」


魔法を発動する為に集中していたゆきなはその光をもろに見てしまい、過敏ともいえる聴覚を持つあゆむにも、抜群の効果をもって動きを封じた


ゆきな「い、嫌です!なんで!?」

あゆむ「ゆ……ゆきな……!」


何が起きたかはもう分かっている

ほむらがスタングレネードを投げつけたのだ

ゆきなからすればあゆむの攻撃から助けてあげたはずのほむらから攻撃されたのだから、たまったものではない


ほむら(悪いけど……貴女の魔法で、あゆむを傷つけさせはしない)


形はどうあれ、ゆきなは魔女……正確には魔女の魔法で記憶から再現した土塊だが、それは相手を苛めて虐めるための魔法

それは魔女と同類ともいえる


ゆきな(そんな……)


空中でどうにか墜落しないようにふらふらと浮かぶゆきなへバレットM82を向けて、大きく息を吐く


ほむら(魔力で動かす身体じゃ、照準を付けれてもリコイルを抑えきれない)

支援


ならばと、変身を解除して地面に腰を付ける

足の指でスタンド掴んでを支え、脇で銃身を抱え込み体重の全てで抑え込みつつ、唯一まともに動く左手で、ゆきなを照準の真ん中に収める


ゆきな「うぅ……!!?」


爆裂音とでも言うべき銃声に反応してとっさにバリアを展開したが、もう遅い

バリアごとゆきなの体を打ち抜いて半身を爆散させつつ吹き飛ばし、さらにその半身目がけて5連射

2発は外れ、3発目で両断、さらに2発で本当に木端微塵に吹き飛ばし『ゆきなを真似た土塊人形』はただの土煙となった


ほむら(っまだ……!)


魔法少女に変身してから右足で地面を蹴り、銃を支点に転がりながらあゆむの方へ狙いをつけ引き金を引く


あゆむ「ちょっ!?」


弾丸はあゆむの足元に着弾して地面ごとあゆむを吹き飛ばす

少女の体を吹きとばすには、あまりに役不足な弾丸の威力

10mは後ろへ飛ばされたあゆむは、ほとんど減速しないままに背後の家の2階の部分の壁を貫通して部屋の中へ


あゆむ「っ……んの……野郎……」

支援


続けざまの炸裂音と共にバレットM82が吐いた弾丸が部屋の壁を、床を爆砕し、ついでに発生した衝撃波だけで部屋のドアの向こう側の廊下の壁に叩きつけられ、一瞬意識の飛んだあゆむは背中をもたげたまま横向きに倒れ込んだ


あゆむ「ぅ……っ……」


目の前に広がるのはゆきなとの戦いで焼かれた自分の家の庭と、対物狙撃中で攻撃されて半壊した自分の家

そして魔法少女の姿のまま、しゃがみこんでほとんど動かない暁美ほむら

しかし、ほむらの姿を見ると同時に先ほどの破廉恥な格好が思い出されて重なる


あゆむ(助けに来るとかなんとか言っときながら……今のは死んだかと思ったよ)

あゆむ「……生きてたいって、思ったって事か」


敵として、でもゆきなが自分にぶつかってきたことは嬉しかった

倒してやろうと攻撃して敵わなかったとき、気分が高揚してとても楽しかった

思いっきり手を伸ばして、それでもまだその先があると分かった時、どんなに惨めなことになっても、いつも楽しくて仕方がなかった


あゆむ(あいつはあんたと居るのが楽しいだろうね!……でも、とってもむかつく!)

支援


水揚げの儀から逃げてまことに捕まって虐められた後、あゆむは屋敷の中ではほとんど孤立していた……いや、させられていた

近しい家族は彼女に掛ける言葉が無く、彼女もまことから『教育、調教』と称した拷問まがいの虐待を受けていて、それらも家族を引き合いに出されて沈黙させられていた

元々好ましく思っていなかった者たちには、まことが裏で手を回し、居ない者として扱わせた

なんだかんだで遊ぶこともあった従兄弟たちも、あゆむが居ると逃げるように居なくなり、悪口や罵声の類も全て無くなった

だが、何よりも屈辱だったのは――


ほむら(来る!)


バレットM82を盾にしまい、上空から降り注ぐ黄金を避けた


ほむら(片手で狙撃なんてするもんじゃないわね……)


M82のリコイルを抑えるために脇で銃を抱えたのが致命傷だったらしく、ほむらの左肩が外れてしまったのだ

もはや満足に動かせる部位など存在していない、魔力で身体を動かしまわすのも限界が近い


ほむら「っう!」


立ち上がったあゆむが跳んできてほむらの頭を鷲掴みにして叩きつける

支援


あゆむ「分かる!?あたしは昔虐待されてた!凌辱もされたし、暴行も受けた!」

ほむら「っな、何が!」


腕を掴み返して体をひねり、あゆむの顔面につま先で蹴りを入れ、掴みが緩くなったと同時に身を翻して立ち上がる

しかし、あゆむが左手で叩き潰すような仕草をすると、すぐ背後に円柱が現れて逃げ道を塞いだ


あゆむ「ママはね、そんな人たちからあたしを助けようと戦ってくれた!」


ほむらが円柱に背中を付けると同時に距離を詰め、右足でほむらの脇腹を蹴り上げて、くるりと振り返ってから頬を狙って左足で回し蹴り、手加減なしに繰り出された蹴りは、ほむらの顔を地面に叩きつけるほどの威力を誇っている

歯を何本かへし折ったらしく、無様に転がるほむらの口から白いものがいくつか飛び出た


あゆむ「そしたらある日ね、その犯人達にあたしの住んでる家を放火された!良く出来た話だったよ!丁度その時家に居たのは薬物で廃人同然のあたしと、まもると、ママだけだった!」


痛めつけられてもほむらの目から光が失われない

蹴り飛ばして仰向けにし、ほむらのお腹の上にどすんと腰を下ろして馬乗りになって、平手を一発喰らわせた


あゆむ「用意周到だったよ、玄関にも一階の窓にも板が貼ってあって出れなくなっててさ……ママの部屋に言ったら、殴られた上に両手を鎖で縛られてて、部屋からどうやっても連れ出せなかった」

あゆむ「こんなかんじでさぁ!!」

ほむら「あっ」


ほむらの両手首を黄金の鎖が一瞬で盾もろともまとめて縛り上げ、拘束した

支援


あゆむ「ママの最後の言葉ははね、『お前は私をママと呼んでくれたことが無いね』だった」


ほむらの無いに等しい胸を右手で掴みこんで握りつぶさんと力を込める

あまりの苦痛にほむらも悲鳴を抑えきれなくなってきたようで、今にも泣きだしそうなうめき声をあげながら体をよじりだした


あゆむ「恨み言の一つでも言ってくれれば良かったのにさ!まもるもだ!『お前なんかいなければ良かった』って!」

ほむら「痛……い!……痛いッ!」

あゆむ「あたしは!!もっと!ずっと痛くて恥ずかしくて!怖くて辛くて苦しくて!!――悔しかったんだよ!!」

ほむら「きゃああ!!ぐはッ!!」


怒鳴り散らしながら、感情をぶつけるようにほむらの胸を思いっきりに叩く

苦痛に呻くほむらの悲鳴はだんだんと心地の良いものに感じられる


あゆむ「ほら泣けよ!」ギュゥ

ほむら「いっ……いやあああああああ!!」


左肩を思いっきりに握りつぶす、そうすると脱臼した肩に神経や筋肉引きちぎられるような凄まじい痛みが走る


ほむら「ああッ!!……だめ!……ま、だ……!」


次の瞬間、ほむらの体が光に包まれ魔法少女の変身が解除され、Yシャツと下着だけを身に着けただけの、あられもない姿になってしまった

痛覚遮断に無茶な身体駆動を続けたほむらの魔力はもう尽きかけていて、変身の維持さえ困難になってしまったからだ

支援

さやかff「今回はここまででーす」

なぎさ「ほむほむが大ピンチなのです!?」

ゆきな「爆発四散の私の心配は?」

なぎさ「亡霊は暗黒に帰るのです

支援

あけましておめでとうございます

おはようございます

ごめんなさい、色々あったのです……

更新します

なぎさ「ちなみに今回で終われるのです」


あゆむ「ふふっ!良い恰好」


無い胸を揉みながら不敵に笑う


ほむら「嫌っ……!」


頬を掴んで顔を引き上げて瞳を覗き込みながら吐き捨てるように言った後、あゆむの目が怪しく光った


ほむら「うあああああ!!」


目を直接焼かれたような痛みが走る

で庇おうにも縛られてる上、まともに神経の繋がってない腕はもはや動く気配も無い


あゆむ「あたしが独りになってもゆきながどこかで頑張ってるって思うと、結構がんばれてたんだけどね……もうゆきなも死んじゃった世界だし、本格的にどうでもいいや」

ほむら「あゆ……む……やめ……」

あゆむ「てやんねえ!」


嗚咽交じりのほむらの懇願を踏みにじり、光る指先でほむらのYシャツをなぞると、その部分から綺麗に切り裂かれて、ほむらの素肌が曝された……もう上半身を守っているのは緑色のスポーツブラだけだ


ほむら「いや……いや……!」


ブラの下に手を滑り込ませ、皆無に等しい脂肪を無理やりかき集めるようにして揉みしだく

ほむら「ああ!!っぐ……!」


挟みあげられて、潰されそうな痛みもそうだが、肩や脇の筋肉も引っ張られるのでそれらへの激痛も凄まじい


あゆむ「何我慢してんだ、もっとピーピー泣けよ!」

ほむら「痛い……痛いよ!やめて……」

あゆむ「ふふっ」


ブラの真ん中を指でなぞり、綺麗に切り裂く


ほむら「っ……!」


息を飲んで、もう本格的に泣き出す一歩前の表情

さやかff「この辺で延々とレズセックス書いてたんだけどボツにしちゃったんだよね」

リボほむ「!!?」

肩ひもはそのままにして切り口からめくり上げて乳首まで露出させた


ほむら「うっ……やめて……ねえ、こんな……嫌!」

あゆむ「はっ、胸でそんなに喚いてたらさ」


左手を背後に伸ばし、ほむらの太ももの上に置いて、人差し指だけでつーっとなぜながら移動


ほむら「……!」

あゆむ「こっちじゃ、どんな反応するのかな」


緑の布地に白いアルファベットの下着は色気に欠けるが、真髄まで達したロリコンならばむしろそちらの方が興奮する

そして彼女は真髄へ半ば達している彼女にとっては、凹凸もなくて日焼けの少ないきれいな肌のほむらはあゆむの好みにド直球と言えた


あゆむ「ふふっ!うふふっ!……男の人たち、きっとこんな気持ちで楽しんでいたんだろうな!」

ほむら「……っぅ」


もう恐怖のあまり涙が零れそうなり、ぎゅっと目を閉じた

閉じた途端に生暖かい液体がほむらの顔にピチャっとかかる

それからフラッシュバックするように聞きなれた火薬の音が聞こえたような気がした、というか聞こえてた


あゆむ「な――」

ほむら「…………え」


どこかで落としてしまったほむらの拳銃を用いて彼女を撃った者がいる

一秒近く硬直し、彼女が自分の上から崩れたのを待ってからほむらは顔を上げ、再び硬直した

支援

ほむら「なんで――」

ゆきな「え、私……?」


二人が言葉を交わすより早く世界が割れた

空の紺色はジグソーが剥がれるように、亀裂と共に崩れていく

地面が突然虚数のプールに変わって体が沈む


ほむら(こんなのって……)


最後にほむらの瞳に映った世界は、ダイヤモンドの空だった


~さざ波ホール(崩壊)~


織莉子「外から自衛隊が……」

キリカ「……十分どころかコンマ一秒だね、多分」


ほむらが突入した途端に畏敬のカンガルーは風化し、砂となって崩れ落ちた


杏子「ちょっと待て、様子が……」

中沢「ふぁッ!?」


その中に居たのは半裸でへたり込むほむらと、死体のように倒れているあゆむ

そして、居なくなったと言われていたはずの人間


マミ「あら?貴女、小学校で見た顔ね」

さやか「ゆきなちゃん……」

ゆうか「嘘、なんで……マジ?」

ゆま「でもこの人!」


懐かしい顔に衝撃を受ける者も多い、しかし明らかに魔女の魔法で作られたヒトガタ……使い魔に近いものだと魔法少女たちは感づいた

支援

ゆきな「え……あ……」


少女の右手には銃が握られていて、なのに状況を理解出来なくて茫然としたその表情が、いかにも花蘭 ゆきなのそれであった


キリカ「ほむら?」

杏子「っておい!ゆま、グリーフシード!」

ゆま「う、うん!」


杏子が駆け寄るのと同時にリボンがゆきなを簀巻きに拘束し、あゆむの負傷部位を覆って淡く輝く


マミ「銃創……それに、こんなに弱ってちゃ……」

さやか「マミさん……」

マミ「諦める訳じゃない、やるわよ」

さやか「はい!」

マミ(けど、血が足りてないのだけはどうにも……)

まもる「姉ちゃん!姉ちゃん!ねえ、姉ちゃん死なないよね!?」

さやか「当たり前じゃん、これくらいでくたばる奴じゃないって」


姉を心配したまもるへのさやかの明るい返事

それを聞いた周りの人間は事態が収束したことにやっと実感が湧いてきたらしい

力が抜けたように崩れる者や怪我の痛みを思い出したかのように蹲る者が徐々に増えていく


知久「終わった……のか」

まどか「うん……私……ちょっと疲れちゃった……」ガク

知久「ま、まどか?まどか!」

沙織「落ち着きなって知久、少し休ませてやろうよ」

知久「でも……熱も凄いし、呼吸も苦しそうだし!」

沙織「いいから!膝枕でもしてあげなって!」

支援

ゆきな「え……あ……」


少女の右手には銃が握られていて、なのに状況を理解出来なくて茫然としたその表情が、いかにも花蘭 ゆきなのそれであった


キリカ「ほむら?」

杏子「っておい!ゆま、グリーフシード!」

ゆま「う、うん!」


杏子が駆け寄るのと同時にリボンがゆきなを簀巻きに拘束し、あゆむの負傷部位を覆って淡く輝く


マミ「銃創……それに、こんなに弱ってちゃ……」

さやか「マミさん……」

マミ「諦める訳じゃない、やるわよ」

さやか「はい!」

マミ(けど、血が足りてないのだけはどうにも……)

まもる「姉ちゃん!姉ちゃん!ねえ、姉ちゃん死なないよね!?」

さやか「当たり前じゃん、これくらいでくたばる奴じゃないって」


姉を心配したまもるへのさやかの明るい返事

それを聞いた周りの人間は事態が収束したことにやっと実感が湧いてきたらしい

力が抜けたように崩れる者や怪我の痛みを思い出したかのように蹲る者が徐々に増えていく


知久「終わった……のか」

まどか「うん……私……ちょっと疲れちゃった……」ガク

知久「ま、まどか?まどか!」

沙織「落ち着きなって知久、少し休ませてやろうよ」

知久「でも……熱も凄いし、呼吸も苦しそうだし!」

沙織「いいから!膝枕でもしてあげなって!」

支援

落ち着きを取り戻しつつあった雰囲気をぶち壊す銃声

三度魔法少女と化したほむらが、ゆきなの左足を撃ち抜いた

ゆきなは痛がる様子も無く、撃たれた足はその部分から砂となって消え去った


ゆきな「あ……違います、違います……」


拘束されたまま念仏のように言い訳を続ける様が、ほむらの怒りのボルテージを急上昇させる


ほむら「そう、違うの……そう」

杏子「おい、ほむら」


次の照準はゆきなの眉間


ゆきな「あ、違、違う。違います……えーと……」

ほむら「魔女なんだから、魔女のくせに私の邪魔をしないで!」

ゆきな「私、あの……私……私……」

葵「ま、待って!こんな状態のゆきなちゃんを撃たなくたって」

ほむら「……」

えりか「待ってあげてよ!ゆきなちゃんは自分の考えを話したり、そういうのが苦手で、だから……」

ほむら「だから何」

えりか「あ……だから……!」

ほむら「障害者なら何しても良いなんて理屈は無いし、少なくとも私は認めない」

ゆきな「え……あ、え……」

支援

『待てよ……ほむら』

ほむら「!……あゆむ!」

えりか「へ?」

まもる「お姉ちゃん!お姉ちゃん……!」

姫名「よくもまあ……!」

さやか「……流石」

マミ(これだけの出血と消耗で意識を保てるなんて……)


怪我の具合、治療されることなく放置されていた時間、出血量

人間なら生きているはずがない

ただ彼女も無事というわけではなく、体はほぼ動かせないし、念話で意思を伝えるのが精いっぱいだ


ほむら「あぁ……!生きてる!あゆむが生きてる!」

杏子(なんか、ちょっとヤバい方向にほむらが覚醒してる様な……)

ほむら「ふふ!うふふふ!本当、魔女のくせに手間ばっかりかけさせてくれて!」

あゆむ『だから待てって』

ゆきな「え……杏子ちゃんに……?」


ゆきなの両目が光を放ち、杏子の顔を照らし出す

閃光は一瞬で消え、とっさに顔を庇った杏子が腕を下した時、杏子の表情は茫然としたものになっていた


マミ「何をしてくれたの!!」

ゆきな「っああ……!」


マミのリボンがゆきなの首を捉え、骨が折れる寸前の強さで締め上げる


杏子「マミ、大丈夫」

マミ「……本当に?」

杏子「うん、後で説明する」

支援

ゆきな「え?え?」


杏子「なんであんたが?って顔して……ってそっか、あゆむの作ったマネキンだから、この事は知らなくてもおかしくは無いのか……」

ゆきな「……え?」


ゆきなの魔法は『感応』

相手の心を、記憶を感じることが出来る

目で見た相手の考えた事、感じていることはゆきなにも感じられる

魔法少女の時にはみんながゆきなにたいして思っていた『こうしてくれればいいのに』といった考えを感じて振舞うことで、健常者に近い立ち回りをすることが出来た

極めて優秀な魔法であり、戦闘にも日常生活にも役に立つもの

欠点があるとすれば、この魔法は人間の精神で使うには危険すぎると言うことだ


さやか(こいつはこれくらいでもう死なないでしょ……まどか、あたしのせいで……)

織莉子(記憶を封じて脱出する算段はある……あとはこの騒ぎが世間にどう取られるか、ね)

キリカ(今日はほむらをご飯に誘ってあげようかな)


そして、未来予知や通常の感知系の魔法に比べ圧倒的に優れている点がある

かえで(クソ、あいつらさえいなけえりゃ……こんなん……)

えりか(魔法少女……か、こんな世界が当たり前の人たちがいるんだ……)

仁美(さやかさんが魔法少女になった時期をほむらさんの転校してきた時期と考えると……さやかさんの願いって)

まもる(お姉ちゃん……こんなに冷たくて、本当に大丈夫なの……)

あゆむ(どうでもいいけど、早く『こいつ』退場させてくんねーかな)

ゆきな「ねえ……こいつって、何?」

支援

杏子「?」

さやか「ん?」

ゆきな「ねえ……こいつって何?……あゆむ」


顔を伏せながら、最後は消え入りそうな声になる

『感応』出来る以上、ゆきなが質問を投げかければ人は無意識に答えを思い浮かべる

ゆきなは必要な情報をほぼ無制限に聞きだせるも同然ということだった


ほむら「ふふ……そりゃ、貴女でしょ!!」


ほむらがヒステリックに怒鳴りながら銃口を改めてゆきなの眉間に合わせる

口元と指先が震えて、歯を食いしばって引き金を引かないように堪えている


さやか「会話に……なってる……の?」

ゆきな「あ……は……」


でも人が隠し事をしたり嘘をつくのは優しさでもあり、相手を理解する『愛』に他ならないものだ

それを理解したからこそ、自分の魔法の負に呑み込まれたのだが……

生前の嫌な記憶からくる予感を押し殺して顔をあげた

彼女が思ったことはゆきなの想像通りで、それを口にしないことが優しさなのに、ゆきなの魔法はその優しさを蔑ろにして止まない

だから魔女になったゆきなは作り物の花に心を開いた

支援

ゆきな「はははっ!!私は作り物だもんね!凄いよ、涙も出ない!」

さやか「ゆ、ゆきなちゃん……?」


さやかの心配そうな声とは対称的にほむらの声はかなりの怒気を含んでいる


ほむら「良くもまあ笑うわね、そんなに逆撫でたいの?」

ゆきな「気を付けてねほむらちゃん!あゆむって女の子の脚とうなじばっかり見てるんだから!」

ほむら「……」


三度の銃声、ゆきなの残った手足をリボンの拘束ごと吹き飛ばし、照準をまた眉間に合わせる

周囲の人間も動揺こそすれど、制止の声は無い

……というか出せない

ほむらの鬼気迫る表情を前に、さやかも杏子も圧倒されている


ほむら「はぁ、はぁ……ふう……」


無理矢理深呼吸をして気を落ち着け、少し表情が戻って銃を下ろす


杏子「おう……落ち着いたか?」

ほむら「……」

さやか「ゆきなちゃんは障害者なんだしさ、いちいちカッカしてたら大変だし……」


さやかの励ましを受けてほむらの空気が一変し、さやかがしまったという表情になる


ほむら「そっか……障害者なんだ……」

ゆま(なんか凄くヤバイものを感じる )

盾からゴルフクラブを取り出してスタスタとゆきなに歩みより、腹をヒールで思いきり踏みつけ、誰かが止める間もなくゆきなの顔面をゴルフクラブで殴りだした

一度や二度では無く、何度も何度も潰すように殴り付ける

十回も殴ったあたりでゆきなの顔が砂にかわって消え、そのまま全身が崩れていった

支援

ほむら「ふっ……ふふ、ふふふっ!」


ほむらは身体中の力が抜け、ゴルフクラブを杖がわりにして座り込んだ


杏子「おい」

ほむら「障害者だもんね、それって頭の病気でしょ?病人でしょ」

杏子「ほむら……」

ほむら「ふふふ、親からもクラスメイトからも病人は疎まれるものだもの 、独りぼっちで誰にも理解されなくて、終いにはなんで自分なんか生まれたんだって」


杏子が顔を覗きこむと、その長い髪の裏でほむらは泣いていた


杏子「……」

ほむら「誰の役にも立てなくて、何もかもが大切ではなくなって……そんな時に優しくしてくれた人が居たら、そりゃその人のために願うでしょ……願わなきゃ嘘よ……」

杏子「なあほむら、取り敢えず着替えよう?服、あのまんまだろ?」

ほむら「……うん」

杏子「さやかー、マントくれよ」

キリカ『マミ、ちょっとこっちに来てくれないか?」

マミ『もう、何よ今度は』タッ

あゆむ『あ、離れて』

さやか「は?」


あゆむの念話を一番近くで聞いたのはさやかだった

その音に気付いたのがあゆむしかいなかった

さやかはあゆむの治療をしていたし、まもるも姫名もあゆむばっかり見ていたからだ


織莉子「マミ!」
マミ「そんな!」


マミや織莉子がはっとなって見上げても、もう遅い


キリカ「嘘だ!」


天井に吊られていた物騒な照明の一つが外れて落ちてきた

ピンポイントにさやか達のほぼ真上から

さやかが訳も分からぬ内にあゆむの右手から魔力の塊が放たれて暴風が巻き起こり、姫名もまもるも、近くに居た数名も吹き飛ばした

支援

さやか「ちょ!」

しかしさやかの行動は早かった

風が吹き荒れると共に重症なあゆむの身体を抱えて飛ばないように踏みとどまった

自身を覆う影があると気付いて、急ぎ跳んだがもう遅い

横3メートル、縦は8メートル、高さは2メートル程で重さはゆうに1トン

鮮やかな色を放つそれは、ただの質量兵器として二人の少女を押し潰した


仁美「さやかさん!!」

恭介「さやかぁぁあっ!!」

和子「あ……あぁぁ!!」

沙織「嘘……さやか……!」


魔法少女は知っている

その少女だけは心配無いのだ


姫名「っ……まもる様、怪我は!」

まもる「え……うん、大丈夫みたい」

ゆうか「あゆ!」

あやか「あゆ!あゆっ!」


その少女の安否が大きな問題なのだ


杏子「砕けろ!」


槍が赤い光を放ち、照明器具を粉々に打ち砕く

破片が飛び散り、何人かに当たったようにも見えたがいまの杏子にそれを気にする余裕はない


杏子「さやか!あゆむ!」

支援

砕けた照明器具の下から白いバルーンのような物が姿を現した

それはさやかがマントを巨大化させて硬化させたもの

変質を解除していつもの姿に戻ると、さやかとあゆむは抱き合うような形横になっている


杏子「良かった、無事――」


あゆむを抱いているさやかの左腕を、一本の鉄のパイプが貫いている


杏子「ッ……マミ!」

マミ「そんな……これは……!」

ほむら「……」


マミが絶望的な声を出しながら怪我の具合を見ている

後から来た織莉子と目を合わせ、織莉子が無言で首を横に振るとリボンであゆむの身体を覆った


杏子「おい!早く引き抜けよ!でないと血が止まらないだろ!」

マミ「ごめんなさい、これはもう……私と美樹さんの治癒魔法じゃ……」

鉄パイプの切っ先は辛うじてあゆむの心臓は避けた

しかし心臓の近くにある大静脈に食い込んでしまい、抜けば大出血を余儀無くされる

織莉子の予知にあった『大量出血による死』が体現されようとしていた


ほむら「あ、諦めるんですか!!?」


ほむらの声はもはや悲鳴だ


織莉子「そうじゃないわ、今は抜けないってだけ」

キリカ「ど、どうして?」

マミ「今抜いて血が吹き出たらリボンで止血しきれないわ……せめて心臓が止まって、大量出血の危険を少しでも減らさないと……」

ほむら「……でも、そんなの!」

織理子「半分はこの子の自業自得よ、それに諦めてる訳じゃない、一瞬でも血が止まればマミの治療は間に合う」

キリカ「……一瞬って、どれくらい?」

マミ「コンマ5秒で良いのに!それだけあれば、止血するのは訳無いわ!」

キリカ「3秒でよければそのお時間を提供しようか?」

マミ「ふざけてる場合じゃないのよ!生死がかかってるの!」

キリカ「おおう……」

支援

杏子「じゃあ、取り敢えずは……」

織莉子「なんとも言えない……杏子さん、シンメトリー・ダイヤモンドの支度をして」

杏子「……っ……分かったよ」

あやか「あゆ……あゆ!!」


二人の少女が悲劇の中心に駆け寄り、返事をしない友人の名を叫んだ

ゆうか「うそでしょ……あんな会話が最後だなんて、嫌だよぉ……!」

ほむら「……あの女……!」

あやか「そうだ!契約!」

ゆうか「そっか、それで助けてもらえばいいんだ!」

杏子「ダメだそんなの!こうなる可能性をまた作るって、そういうことだぞ!」

ゆうか「……それでも」

マミ「……私たちの力不足で招いたことだもの……私から言うことはない……」

杏子「おい、マミ!」

ゆうか「良いよ、あたしの魂をあげる……契約しよう、インキュベーター」

QB「ほい来たまいどありぃっ!……と、言いたいところではあるんだけどね」

織莉子「……」

QB「あすなろの呪印……とでも言おうか」

ゆうか「え、あれ……キュウべぇ?」

杏子「どういうことだよ……」

QB「ゆきなの魔法を利用して、どさくさ紛れにあすなろの呪印を彼女たちの網膜に焼き付けた……これでは僕を認識することができないし、認識されない僕とでは契約をすることができない」

ほむら「……」

QB「彼女たちの世界から、僕という存在を殺してしまったわけだ」

杏子「あすなろの呪印……あの時か……!」

マミ(あすなろ……?)

支援

ほむら「そう……結局、この子は死ぬってわけね」

ゆうか「なんで!キュウべぇは!?」

杏子「あんたちに契約してほしくないって、あゆむが魔法をかけたんだ」

ゆうか「嘘……そんな……」

QB「まあ常識で考えればそうなるよね」

ほむら「……さやか、何かしゃべったら」

さやか「もう……嫌だ」

杏子「さやか……」

さやか「まどかは傷だらけで、目の前の人さえ護れなくて……そんな魔法……いらない、いらないよ……」

ほむら「そう……」

さやか「……」

杏子「……」

キリカ「あー、ごほん」

織莉子「杏子さん、幻術の伝播の用意は出来たわ」

杏子「ああ……」

あやか「げ、幻術って……」

織莉子「ここ数時間の記憶を思い出せなくする、この魔法は耐性を持たない人間すべてに効果があるわ」

ゆうか「そんな!」

キリカ「私スルーされてない?」


パアン、と弾ける音がして織莉子の水晶玉が砕けて雪を降らせる

その雪を通して杏子の幻術を広範囲に渡って一斉にかける魔法こそが『シンメトリー・ダイアモンド』と呼ばれる連携魔法

支援

杏子『こんなことになってごめん……みんな、結構練習に付き合ってくれたのにな』

恭介「う……意識が」

仁美「杏子さんの声が……聞こえますわ……」

杏子『今度、ちゃんとあたしたちの歌を聴いてもらえる機会を作ろう』

えりか「ああ……そりゃ、そうだね」

かえで(これは……アカン奴や……)

知久「タツヤ……おいで、お姉ちゃんのそばで、一緒に寝よう」

タツヤ「パパ、ねーちゃん……」

杏子「だから約束、そん時はさ……みんなで歌を歌おう」

あやか「みんなって……あゆも入ってる……よね」

杏子「……ああ」

ゆうか「そ……なら、まあ……」


杏子の幻術にかかり、人間たちが一斉に眠りにつく

目が覚めてもここ数時間のことは思い出せない

忘れてしまうわけではないが、思い出すとしても数年後のことだ

それが夢か記憶かなんて見分けがつかないだろう


ほむら「……」

さやか「……」

マミ「……」

ゆま「……」

杏子「……」

織莉子「……さあ、事態の収拾を考えましょう」

キリカ「ごほん、ごほん」


沈痛な空気の中発せられた織莉子の号令と「まあ私の話を聞き給え」と言わんばかりのキリカの大きな咳

支援

支援

織莉子「キリカ……」


ついに織莉子ですらも諫めるような視線でキリカを見始めたが、彼女は大手を振って仕草をとり、これまでの不遇を薙ぎ払うとばかりに明るい声色で演説を始める


キリカ「私が大好きな小説ではね、最初の登場人物が持っていた警察官のコスプレが物語での大きなカギになったんだ」

マミ「キリカ、なんの話?」


マミは半分困惑している


キリカ「同じ作家の違う話ではね、最初のほうで6人の父親と息子が一緒に見ていた番組の真似事で窮地を脱したんだ」

マミ「キリカ、なんの話?」


マミは完全に困惑している


ほむら「……」


キリカはしゃがみこんでほむらの左手を取り、大事そうに両手で包んだ


キリカ「君の魔法は何のためにあるんだい?」

ほむら「まどかを守るためです」


ほむらの返事はそっけない、ふてくされた子供のような返事だ


キリカ「それは君のやりたいことだ、君の魔法の本質を、ほんの少しも表していない」

ほむら「何の話ですか」


キリカの手から魔力が流れ、ほむらの盾が淡く光る

支援

キリカ「君の魔法の本質はやり直すこと、君の武器の本当の使い方は、いつか役に立つものをしまって、役に立つその時に使うことだ」

ほむら「……!」

キリカ「君の願いは『諦めない魔法』……そうだろ、ほむら!」

ほむら「私の魔法……私の……魔法!」

キリカ「君の魔法は私の魔法に似ているんだ、だからきっと私の魔法は君のかつての魔法を、こうして疑似的にでも引き出せるんだろうね」

マミ「キリカ、なんの話?」

キリカ「さあマミ、神経を尖らせておくれよ」


ほむらの背中に寄り添い、両手を添えてあゆむへと照準を合わせる

ほむらが指で銃を作って、それから―—


キリカ「クロック――」

ほむら「ロック!」


カチッ


マミ「え!ちょっ、ちょ、あ、ちょ!!」


マミの反応も動作も素早い

時間が止まった一瞬であゆむから鉄パイプを引き抜き、リボンで上から止血し、魔力で殺菌まで施したのだ

その時間、じつにぴったりコンマ5秒だ


ガチャン!ドカン!


自衛隊がドアを開けて中に突入しようとしたとたんに水晶玉が降り注いでノックアウトしてしまった

支援

杏子「あ、やべそうだ、死んだふりしとかないと!」

さやか(あたしの魔法なんか……なくても……)

ゆま「ばたん、きゅー」

ほむら(はやく着替えよ)

織莉子「時間は稼ぐわ」

キリカ「後輩のためならえんやこらだ!」

織莉子「キリカ」

キリカ「なんだい織莉子」

織莉子「格好良かったわ」

キリカ「え、えへへ」ニマニマ

織莉子「帰ったらご褒美、あるわよ」

キリカ「今日は普通にしたいな!」

マミ「キリカ、なんの話?」

さやか(誰かを守ることは……出来るし……あたしの魔法って……)

さやか(なんの役にも立ちやしない……こんな……魔法……)

「あ、やりすぎたわ……」


織莉子のそんなつぶやきを最後に、さやかの意識は潰えた

なぎさ「ここ話はここまでなのです」

さやかff「なんだと……」

リボほむ「どういう……事なの……」

なぎさ「でも次回は魔女と戦わなくてすむ箸休めらしいのです」

さやかff「この空気で箸休めとか言われても……」

なぎさ「次回予告なのです!」

「君のその『少しだけ未来から来た少女』って感じ、実にハーフボイルドだね!」

「んん、ああやっぱそんなことなんだろうなーって思ったよ」

「まどかがさやかに隠し事をするとしたらって考えたら、これは納得できる話だからね」

「ヒロインが緑髪で、タイトルが『ヒロイン名+数字』で主人公よりもヒロインのほうが断然強いアニメ?」

「私たち『切り裂きシスターズ』を敵に回したこと、切り刻まれてから後悔するといいよ!」


次回 キリカ「アーユー ハッピーナウ?」

なぎさ「キリカの出番なのです?」

せつな「あたしもばりばりだよー!濡れ場もあるし!」

リボほむ(寒気が……!)ガクガク

なぎさ「おはようございますなのです!」

なぎさ「続きもある程度出来たので今日辺りに投下するつもりなのです!……んで」

なぎさ「次回はあゆゆの出番が壊滅的に無い(筍を食べたいと発言する程度)ので、こっちでスピンオフでもやろうと思うのです」

なぎさ「『あゆゆ東京に行く』と『まこっちゃんのあゆゆ虐待日誌』のどっちが見たいかリクエストを募るのです」

なぎさ「返事が無くても気が向いた方をやるのです!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月09日 (水) 01:37:03   ID: j_12iSKx

前作(体育祭)から見てますが、とても面白いと思います。それこそ同人誌的なものにして買いたいくらいには。
シリアスムードが軽快な会話運びによって全くシリアスに見えないところやちょいちょい挟まれるガンダムネタ、プリ⚪︎ュア的なモブやらなにやら、ここまで続きが楽しみになるまどマギssは今までありませんでした。続き待ってます、頑張ってください

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