桃子「ステルスモモで本領発揮しすぎたっすwwwwww」 (115)

私の名前は東横桃子。年齢的に言うなら、今が華真っ盛りの女子高生っす!

外見もそんな悪いわけじゃなく、おもちの方も水準以上!

自分で言うのもあれっすけど、引く手あまたの人材だと思うっすよ!

特技は元・麻雀。県大会で大将に選ばれて、見事母校を全国へと導いた輝かしい経歴もあるっす!

自分は存在感が昔から希薄な方で、目立たない方だったっす。

その特性を活かした私は、卓に入ってから、暫くすると「消える」ことが出来るっす。

消えさえすれば、特定の相手や条件以外からは私の捨て牌を感知することができないっす!

考えようによっては最強の能力っすよね!上がり放題っす!

え?そんな最強の能力を持ってるのに、何故特技が元なのかって?

だって、仕方ないじゃないっすか。



私の姿を視認出来る人物は、この世界にたった3人しかいなくなったのだから。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406559449

「えええええええええええ!私が大将っすか!」

高校2年生の夏、今年もインターハイ予選の季節がやってきた。

当時私が通っていた高校、鶴賀学園も当然参加する方針だった。

昨年の県大会での活躍が功を奏したのか、なかなかの有望株の新入部員も得る事が出来、昨年のリベンジへと一同燃えていた。

そんなタイミングで、私はむっちゃん先輩…いや、むっちゃん部長から大将への登録を要請された。

「うむ…。良い力を持った一年も入ったが、やはり大将といった格ではない」

「やはり一番強いモモにやってもらおうという話になってな…」

「3年の皆さんはどうしたんですか!かおりん先輩、むっちゃん部長!!」

「いや…。…やっぱな、大将卓は。魔物揃いだから…。」

「うん…ちょっと、私たちじゃ力及ばないかなーって…」

「私だったらそこに放り込んでも良いんすかーっ!」

「って、モモちゃんいたの!?私、睦月ちゃんは私に話し掛けてるものかと…」

「初めからいたっす!!」

「おお、モモの怒っている表情とは珍しい。写真写真」

「何勝手に写真撮ってるんすか!人の話聞いてくださいっす!!」

そりゃ、むっちゃん部長とかおりん先輩が決勝卓に入りたがらないのも分かっていた。

相手は咲、華菜先輩、衣ちゃん先輩。

咲はその前の年に、団体では史上最強のインハイ決勝大将戦と謳われた戦いで見事優勝。

おまけに個人戦では実の姉であるインハイチャンピオン照姉の三連覇を阻止してのグランドスラム。

正直、この年は戦前から『団体優勝候補No.1清澄』だとか『個人戦優勝候補NO.1宮永咲』とかそんなのばかり。

まぁ後で聞いたところ、本人はえらく迷惑がってたらしいけど。

華菜先輩も雪辱に燃えていて、その年は咲と衣ちゃん先輩の対策しかしてなかったって言ってた。

元々強い人ですから。部長という立場を選ばなかったのがその辺もあるらしい。

力だけを求めて日々精進…。…今の私からすると、羨ましいことだ。

衣ちゃん先輩は何というか、初めて見たときはモニター越しにとんでもない殺気飛ばしてた気がする。

けれど、もう翌年にはすっかり毒気は抜けて。一打一打を如何に楽しむか。

麻雀を如何にして楽しむか、ってのがテーマだったらしい。でもそんなんでもめっちゃ強い。

そんなこんなで、ぶっちゃけ当時の私もこんな化物どもを相手にしたくはなかった。

「うむ。モモの怒り顔、ゲット」

「なーにがゲットっすか!」

「いやなに、最近は私もモモをなかなか見つけられなくなってきているからな。貴重な一枚だ」

「モモちゃん、もしかしてまたステルスの腕を上げた?」

「……そんなことないっす。皆さんが見つけてくれないのが悪いっす」

「うむ。すまんな。ではこれはモモを見つけてくれる加治木先輩に送っておこう」

「やーめーてくださいっすー!」

加治木ゆみ。私を麻雀部に引き入れた存在。君が欲しいと1年生の教室に乗り込んで叫んだ変人さん。

それでも、確かに。私は…彼女のその行為は嬉しかった。それだけは今も間違いなく言える。

大好きだった。世界で一番大事な人だった。

…彼女は2つ上なので、私が2年次であるその時、当然彼女は卒業し大学へ進学している。

しかしながら、用事がなく手が空いているとなれば高校の部室に足を運んでくれる、頼もしいOGであった。

「送って欲しくなければ、私の要求を飲むことだ!ワハハハハ!」

「蒲原元部長の口癖が移ってるっすよ!!」

結局私が折れることになる。折れるというか折られたというか。

多数決制度は少人数の意見をバッサリ切る悪い制度だと私は思う。

無事に予選を通過することに成功した私たち鶴賀学園は、決勝へと駒を進める。

わざわざ試験前だというのに、加治木先輩と蒲原元部長は応援に来てくれた。ありがたい。

加治木先輩が見てくれている!当時の私はこれだけで頑張れる気になっていた。

私を麻雀部員たらしめる最大の理由だったから。私が頑張る最大の理由だったから。

気になる決勝の相手だが、まぁ戦前の予想通り清澄・龍門渕・風越である。

要するに私は、これもまた予想通り化物卓に放り込まれる訳である。

まぁ、化物といってもこの4校は非常に仲がよく、何度も合同合宿を行っている。

当然その中で対局することもあるわけで、手の内はみんな知っているわけだ。

咲は嶺上開花で上がりまくるし、華菜先輩は高打点上がりまくるし、衣ちゃん先輩は海底撈月で上がりまくる。

対する私と言えば、この面子でステルスになるためには当然最長の南4局までかかる。

おまけに咲にはステルスモードでも槓材だけは見破られるわ、衣ちゃん先輩も海底の打牌だけは見逃してくれない。

あ、華菜先輩だけはそういう特性なくて良かったと思います。いやホントに。

そんなわけで、当然私としてもこの二人に対する対策を練り直さなければならなかった。

妥当化物へのヒントを得たのは、その前の年のインハイ準決勝からだった。

北大阪、千里山女子の先鋒、園城寺怜さん。対戦相手は照姉。

彼女はもともと、1巡先を見る者と称されていた。牌譜を見ればそれも分かる。

だが、このインハイ準決勝の局の中で明らかにおかしい局が2つある。

後半戦東4局と、オーラスのそれだった。

まず、後半戦東4局では明らかに照姉の下家の人が鳴ける牌のみを鳴かせている。そして自らの上がり。

そして、オーラス。どう考えてもテンパイに結びつかない鳴きと打牌を、彼女は何度となく繰り返す。

結果、早い巡目で曲げた照姉のリーチは不発。不発どころか、子の倍満2本場の打ち込みを許すこととなる。

この映像と、牌譜を見て、私は思った。

この人は、1巡先どころか、数巡先を見ている。そうでなければ、こうなることはない。

つまり、能力(おっぱいさんはオカルトとか言ってるらしい)には段階があるのではないか。

私のこの、ステルスモモの能力も、もう数段階先があるのではないだろうか。

元からある存在感の希薄さを更に高める…。ステルスモモLv2の完成にこうして私は至った。

このステルスモモLv2。使用してみると、従来からあったステルスモモに比べてより早くステルス状態になれる。これは間違いない。

しかしながら、どうも使用していく毎に自分の存在感の薄さが更に高まっているような気がした。

まず、新入部員。これはもうレギュラー以外に私は殆ど認知されていない。会話しててスルーされるレベルである。

次に、かおりん先輩とむっちゃん部長。この二人とは一年の付き合いがあるので、割と気付いては貰える。

しかしながら、「モモいたのか!」「いたっす!」みたいな、私が麻雀部に入部したての頃のような対応が多くなっていた。

最後に、蒲原元部長と加治木先輩。

この二人は

「『この年の長野県県大会決勝が終わるまでの』東横桃子を如何に早く見つけ出せるか(対象は半径30m以内に存在)」

なんて競争を行ったら、まず間違いなくワンツーフィニッシュ出来る実力を持っているだろう。

ステルスモモLv2を何度か使用してからは、2人には会っていなかった。一体会っていたら、どんな対応をされるのであろうか。

もし仮に、ステルスモモLv2の使用において、蒲原元部長はともかく加治木先輩とのコミュニケーションに水を差す事があったなら、私は使用を控えていただろう。

しかし実際にはそんな機会はなく、私はステルスモモLv2を使う気満々で決勝卓へと挑む。

あくまで、気のせいだ。元からだし。程度の認識で…



あの時、私は確かに鶴賀学園の麻雀部員だった。

たまたま入ったネト麻の同卓者であるかじゅ、加治木先輩に誘われて。

県大会まで登り詰めて。おっぱいさんやアホ毛さんたちとの戦いで区間賞を取って。

清澄に敗れて。今度は、加治木先輩が消えたら私が見つけてやると言って。

合同合宿、阿知賀との対戦。そして、清澄の優勝を見届けて。

蒲原元部長の手荒な運転で、引退した2人も一緒に麻雀部員みんなで濃い半年を過ごして。

そしてその事を嬉しく、楽しく思っていた。誘ってくれた加治木先輩にも、感謝と、それ以上の気持ちでいっぱいだった。

この決勝卓でもし優勝できたら、加治木先輩へ思いの丈をぶつけよう。

会う度に大好きって言ってるから、いつも通りの対応をされてしまうのかな?

それでも、伝えずにはいられない。今度こそ、本気で加治木先輩の返事が聞きたい。

私は、確かにそう思っていた。

彼女の笑顔が見たい。彼女に褒められたい。みんなと全国に行きたい。

私が戦う理由は、それだけでいい。

この後起こる悲劇の結末を、知ることもなく、私は卓へと向かった。

順位は以下のようにして、私はバトンをむっちゃん部長から受け取った。微差ではあるがラス目だ。


1位:清澄 2位:龍門渕 3位:風越 4位:鶴賀


まぁ、妥当な順位である。清澄はその前の年のインハイ制覇メンバーが4人も残っていたし、龍門渕はベストメンバー全員だ。

風越は元々名門だし、毎年どうあっても一定以上の戦力にはなる。

こっちは新入部員等の頑張りもあったが、やはり自力勝負となるとこの3校からは遅れを取るのは事実。

むしろこの程度の微差で済んでいるのは上出来であった。

みんなが必死の思いで繋いだバトン。ここで断ち切るわけにはいかない。

早々から私はステルスモモLv2を発動させる。従来のステルスモモを使用している余裕などない。

結果として、私はこの化物揃いの卓で南1局において完全にステルス状態になることに成功する。

ステルスモモLv2の独壇場っすよ!

と言いたいところだが、実際はそんな甘くはなかった。

南2・3・4局で連続上がりを決め、見事トップに躍り出た私であったが、後半戦になると化物たちが本領発揮し始める。


「カン。嶺上開花、8000」

「ロン。それで隠れたつもりか?海底撈月、8000」

「ツモだし!4000・8000!」


まず、咲。ステルスモモLv2でも、やはり槓材だけは見逃してくれない。

次に衣ちゃん先輩。やはりこの人も海底牌だけは見逃してくれない。

最後に華菜先輩。出上がりに期待せず、ツモ上がりメインに戦い始めた。

こうなってくると、基本デジタルの私にとっては非常に厳しい戦いでしかない。

窮地に追いやられた私は、ステルスのもう1歩先へ進むことを決意する。

自分の存在感を極めて希薄に。…否、皆無に。

南場だけで良い。彼女らからの支配も、何もかも影響を受けない皆無の存在。

咲の槓材、衣ちゃん先輩の海底への嗅覚すらやり過ごす。

ステルスモモ…Lv3。

ただ、静かに私は南場を上がり続けた。

ワンテンポ遅れて、私が上がった事を知る3人。点棒の受け渡しは当然、打牌すら音を立てない究極のステルス。

オーラスの親番。最後までこの効果が続いてくれ。そう願いながら配牌も見ずに第一ツモに手を伸ばす。白。

不要牌を切ろうと無音で理牌。ここは面子が出来てる。ここも出来てる。ここも…。そしてここと、頭…。

4面子…1雀頭…。親の第1ツモで…出来上がっている…。


「つ…ツモ。16000オールっす…」

『決まったああああああああああああああ!優勝は鶴賀学園だああああああああああああ!!』


恐らく、麻雀史上一番静かな役満上がりが、ここに残された。

「や…やったっす…!優勝したっすよ!!」

「おめでとう、桃子ちゃん」

「うむ。最後に天和とは、見事であった!」

「悔しいけど認めてやるし!お前がNo.1だし!」


喜びに震える私に、3人が祝福の言葉をかけてくれた。良く覚えている。


「後半戦の南場、凄かったね!私、槓材すら見えなかったよ!」

「衣も、よもや海底の灯すら隠してくるとは…。天晴れ!」

「ていうか華菜ちゃんは前半戦の南場から全く見えなかったし」

「ありがとうっす!皆さんに勝つために努力したんすよ!ステルスモモLv2とLv3がっすね…」



「あの」



アナウンサーと解説者らしき麻雀プロ、藤田プロがこっちに向かってやってくる。


「優勝した鶴賀学園の東横桃子さんはどこに行ってしまったんでしょうか?」

「へ?あ、カツ丼さん」

「その呼び方はやめろ。…オーラスで第1ツモを確認してから、突然いなくなってしまってな…」

「何言ってんだし!横に居るだろ、東横は!」

「あー。そうか。まだLv3が解けてないんすね…。…ん、こんなんでどうっすか!?」


私は存在感を出すために精一杯アピールした。これも良く覚えている。


「桃子ちゃん…わざわざ踊らなくても…」

「…すみません、さっきから何の話をしてるんですか?」




「さっきから、お前ら3人しかいないだろ?」




この言葉を、私は生涯忘れることはない。

「…いくらなんでも酷いですよ、カツ丼さん!」


咲が藤田プロへと食って掛かる。


「ここに!桃子ちゃんはここに!いるでしょ!!」


ズイと私を藤田プロの目の前に引き寄せた。


「……あのなぁ宮永。お前らがいくらここにいるって言っても、私の目には全く映らないし」

「…ほら、手を振ったって何にも触れやしないじゃないか」


戦慄。私の顔が真っ青になる。

確かに、藤田プロは私に触れていた。否、触れなければおかしい距離だった。

しかし、私に触れられたという感触はない。当然、藤田プロにもないはずだ。


「バカ言うなし!このばかげたおもちに触っといて!」

「あひゃっ!ちょ、池田さん!おもち揉むのは止めて下さいっす!」

「ほら。悲鳴も聞こえた!これでもまだ、東横がここにいないって言うのか!?悪ふざけはやめろよ!」

「…こちらから言わせてもらえば、あなた方こそ悪ふざけを止めて欲しいですね」


アナウンサーが小型テレビを持ってやって来る。

液晶内を見る限り、この決勝卓が行われている部屋の映像のようだ。


「…この映像が何だというのだ?」

「あそこのカメラで映している、現在のこの部屋の状況です」

「…なっ!?」


そこには確かに、私を除いた5人の姿しか撮されていなかった。

「ば…バカバカしいです!私は詳しくないですけど、合成か何かでしょ!?」

「あのなぁ…何でそんなめんどくさいことをしなきゃならんのだ…」

「だが!確かにここに東横桃子はいるぞ!」

「そうだし!私たちには見えてるし!触れもするし!絶対、絶対ここに東横はいるし!!」


5人が言い争いをする中、私は呆然と立ち尽くしながら、最悪の仮説を打ち立て始めていた。

私がステルスモモという能力を高めるにあたった経緯。園城寺怜さん。

彼女は確かに一巡先以上を見る力を手に入れていたかもしれない。

だが、良く考えると、その力を発動したと思われるオーラス前後。

一瞬だけボーッとしてるなぁと映像を見て思った瞬間が数十秒ほどあった。

あれはもしかすると、完全に意識を失っていたのでは?

そして、オーラス後。彼女は病院へと搬送される。元々病弱らしかったので、疲れが出た程度の軽い考えでしかなかったが…

1巡先以上を見る力の、代償だったとしたら?

そして、その代償を彼女は知っていた。知っていたからこそ、連発しなかった。

では、私にとっての代償は?

ステルスモモLv2,Lv3を長期間使った私にとっての代償とは?





「モモいたのか!」「いたっす!」




やめて




「優勝した鶴賀学園の東横桃子さんはどこに行ってしまったんでしょうか?」




やめて やめて






「さっきから、お前ら3人しかいないだろ?」






やめて―――――――――――――っ!!!!



絶叫と共に、私は走り出した。3人が何か言っていたが、私は足を止めなかった。

向かった先は当然鶴賀の控え室。私と関わりのある人ならば、きっと、きっと私に気付いてくれるはず!

生涯で一番凄まじい音を立てて、私は鶴賀の控え室へ入室した。鶴賀のレギュラー5人がこれで揃ったことになる。


新入部員のA子。胸が大きくて肩が凝って辛いって話、よくしたよね。


「桃子先輩…どうしちゃったんだろう…」


新入部員のB子。去年の先輩たちの活躍を見て入ったんです!って言ってくれたよね。


「優勝ですよ?長野代表!どこ行っちゃったんですか、もう…」



どうして。どうして。

どうして反応してくれないの?どうして触ってもこっちを見てくれないの?



かおりん先輩。やたら役満上がりまくって実は鶴賀最強って話、よくしましたよね。


「モモちゃん、何かあったのかな…」


むっちゃん部長。部長がしっかりしてくれるから私はこのポジションでいられるって話しましたよね。


「落ち着け。ひょっこり帰ってくるかもしれん。まずはおつちけ。」



どうして…っ。どうして…?



「どうして私のことをみんな見てくれないんすか!!!!」

「私は!私は!!」

「ここにいるっすよ!!!」



その怒号は、4人には届かない。

「…どうして…どうしてっすか…!」


鶴賀控え室の入口前で、私は膝を抱えて座り込んだ。

チーム一丸となって勝ち取った、長野県代表。去年の雪辱を晴らす、快挙達成。

濃い1年を過ごしてきたつもりだった。レギュラー以上の麻雀部員とは、仲良くなれたと思っていた。

けれど、今は私を祝ってくれるチームメイト、労ってくれる人は誰1人としていない。

いや、正確にはまだ、この時点ではたった1人だけ可能性はあった。

しかし、私にはそれを確かめる勇気がない。

もし彼女にすら私の存在が認められないようならば、私は…。

いけない。ここは彼女の母校である鶴賀の控え室。いつやってくるとも限らない。

私がその場を後にしようと、立ち上がろうとしたその時だった。


「ワハハー。全く、どこ行っちゃったんだモモのやつ。匂いはするから近くにいると思うんだけどなー」

「お前ますます鼻が利くようになったな…。…どこにいったのやら、モモのやつ…」


運命は時に、猶予を与えてくれない。

立ち上がれない。立ち上がれるわけがない。それでも、立ち上がるしかない。

意を決し、私は、立ち上がってその声のする方に走り出した。

加治木先輩!私っす!東横桃子っすよ!!

また、あの時みたいに!私を見つけてください!


「!」


ほら、加治木先輩もこっちに向かって走ってくるっす!

みんな酷いんすよ?私のことよってたかって無視して!

でも、加治木先輩だけは見つけてくれる!それなら、私はそれで良いっす!

だから、今はこの赤く腫れ上がった顔を隠すために、その胸に飛びつかせて――――



「睦月。モモの行方は分かったのか?」

その願いは届かなかった。

「…いいえ。全く」

全速力で走った。全速力のまま飛びついた。

「ワハハ。むっきー、佳織。お久しだな」

けれど、私の身体は加治木先輩に触れることなく、床に叩きつけられた。

「智美ちゃん、加治木先輩。お忙しい中、わざわざ来てもらってすみません…」




4人が控え室に入っていくのを、私はただ呆然と見守ることしか出来なかった。

「…桃子ちゃん」

「…東横桃子」

「…東横」

「…あはは。やばいっす。私のメンタル、壊れたかもしれないっす」

「ちょ、めっちゃ怪我してるし!見せてみろ、傷!」


鶴賀控え室横で、3人が私を見つけてくれたのは、その数十分後だった。

地獄のような数十分だった。場所が悪かった。移動するべきだった。

何度となく通る現鶴賀のレギュラーと加治木先輩と蒲原元部長。

多分、自分を見つけるために走り回っているのだろう。その表情から必死さは読み取れる。

何度となく飛びついた。何度となく叫んだ。私はここにいると。

けれども彼女の耳に私の声は届かない。彼女らに触れることはできない。

加治木先輩に5回ほど飛びついた後、私は全てを諦め薄ら笑いを浮かべながら走る彼女らを見つめ続けた。

自分が彼女らと過ごしてきた1年間は何だったのか?

こんなに近くにいるのに、どうして反応してくれないのか?

私が何をした?私が一体、どんな悪いことをしたというのか?

どうして、どうして。世界で一番大好きなあの人のために頑張ったのに。

どうして、どうして。世界で一番大好きなあの人に触れることすら出来ないのか?

頭の中で負の感情が渦を巻く。

…もう、どうでもいいや。


「んー。何てことないっすよ。5,6回床に叩きつけられただけっす。1回は頭強く打ちましたね。あはは」

「ばっ…。とにかく、傷の手当てを…」

「いらないっすよ。どうせ私、もう誰からも必要とされてないっすから」

「いやー。お笑いもんっすよね」

「ステルスを極めた先が、全ての人や映像から認識されない、ですもん」

「鶴賀のみんなのために頑張ろうと思った結果が、これっすよ?」

「私はただ、あなたたちに勝ちたかった。そして、あの人の笑顔が見たかった」

「結果として、私は全てを失ってしまったっす」

「従来のステルスモモって、卓上で戦ってる3人にしか効果が行かないはずなんです」

「だから、卓外で見てると何でこんな棒テンリーチに打ち込むんだ?ってなるのがステルスなんすよ」

「いやまぁ、ステルスなくてもそこそこ戦える自信はあるっすけどね?」

「あはは。今回は真逆になっちゃうとは。笑いものっすね」

「あ、お笑いといえば結構私好きなんですよ。意外っすか?何とか言って下さいよー」

「ちなみにステルスモモなんすけど、今回は皆さんに対抗するためにLv2,Lv3まで作ったんっす」

「あれ、これもう前に言いましたっけ?いやー、もう。何を話したか覚えてなくて!」

「きっかけは去年のインハイ準決勝っすねー。宮永さんのお姉さんが無双した区間がありましたよね?」

「あれで北大阪の千里山女子の先鋒の園城寺怜って方がいたんです。あ、一発ツモしまくる病弱の人っす」

「1巡先を見る力があるって話だったんですけど、どう考えてももっと先も見てるって思う箇所があって」

「能力って鍛えれば鍛えるほどもっと伸びるのかなーって思ったんすよ!」

「そこで出来たのが、ジャーン、ステルスモモLv2,Lv3っす!」

「ステルスモモLv2の方は、皆さんと同卓して直ぐに発動させたんだけど、やっぱり皆さん強くて!」

「ちょっとLv2じゃ足りないかなーってことでLv3に昇華させてみました!」

「その後はもう皆さんご存知のとおり私の快進撃!天和まで出て優勝!」

「ーって終われば美談で終われるんですけどね!それだけじゃ終わらなかったんです!」

「天和は麻雀の神様がくれた私にとっての最後の贈り物、ってところっすか!いやー、残酷っす」

「実はこの能力、能力の強大さによって代償を支払わないといけなかったみたいなんです!」

「先ほど話した園城寺さんはそれのせいでぶっ倒れました!さて、では私にとっての代償は何でしょう?」

「ほらほら~。皆さん答えて下さいっすよ。私から答え発表しちゃいますよ」

「ジャーン!答えは…」


「もう良いよ、もう良いよ。桃子ちゃん」

「…な、何でいきなり私に抱きついてるんっすか。き、許可取ったんすか、許可」

「そんな貧相な胸で、おっぱいさんは喜んでも…わ、私は喜ばない…っすよ…」

「もう良いんだ。東横桃子」

「もういいんだし…」

「…は、ははっ。3人で私に抱きついて、よ、幼児体型の3人に抱きつかれて喜ぶ趣味…ないっす…」


震える声。震える体。その震える声と震える体に反応してくれる唯一の3人。


「……私の胸で良かったら、泣いて良いから。…ぺたんこだけどね?」

「うっ…ううっ…ぐずっ…」

「うああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「何で!どうして!!誰も私に気付いてくれないんすか!!」

「見つけて下さいよ!加治木先輩!!あの時みたいに!私を!!」

「私は…私は一体…何のために…っ!うあああああああああ!!!!」




ステルスモモLv3の代償、ステルスモモLv3発動時の同卓者以外の全ての者から視認、接触不能。

「…ありがとうっす。宮永さん、天江さん、池田さん。少し落ち着いたっす」


泣くことと人と話せたことにより、私は冷静さを多少取り戻した。

咲の胸は確かにぺったんこだったけど、とてもとても暖かった。


「どう致しまして」

「…でも…。もうどうすれば良いのか分からないっす…」

「鶴賀学園麻雀部が私の全てだった。それに誘ってくれた加治木先輩が特別だった」

「今はもう、その輪に私が入ることは叶わないっすから…」


落ち着きを取り戻したはいいものの、私の全てであった鶴賀との繋がりがなくなった今。

私は何をすれば良いのだろうか?


「…これから、お前はどうするのだ?」

「……どうするっすかね。私は、皆さん以外には恐らく、触れることすら出来ないっすから」

「まぁ、適当に一人で暮らしていくっすよ。父も母もどうせ私を視認出来ないでしょうし」

「コンビニもスーパーも何でも無料ですし。生きていく分には困らないっすよ」

「そんなのダメだし!コンビニの人もスーパーの人もちゃんと働いてるんだし!」


悪びれもなく言うと華菜先輩に怒られた。

この人はホント…何ていうか良い人だ。善人。


「う…。そう言われても…」

「…それなら、うちに来ながら元に戻る方法を探す?」

「宮永さんの家…っすか?でも、親御さんが…」


当時咲とはそこまで親しくなく、咲がどういう家族構成をしているのか、私には知る由もなかった。

鶴賀以外でコミュニティを作る理由がなかった。が正しいかもしれない。


「ううん、大丈夫。私、お姉ちゃんと同居の二人暮らしだから」

「麻雀プロのルーキーなのに、妹まで養っていくってんだから宮永のお姉さんは半端ないし!」

「えへへ。これまで無視し続けられた罰として、一緒に暮らして欲しいって言ったの」

「聞こえようによってはプロポーズに近いっすよそれ…。…私なんかが居候しても大丈夫なんすか?」

「勿論だよ。…あのね、桃子ちゃん。いや、モモちゃん!」

「は、はいっす!」


突然ニックネームで呼ばれてビックリした。


「誰からも必要とされてないなんて思わないで?」

「天和が麻雀の神様の最後の贈り物だなんて、私は絶対に思わない」

「ステルスモモLv3の代償は、確かに私たち3人以外からモモちゃんを遠ざけた」

「でも、私たち3人はモモちゃんと話せる。触れ合える。孤独なんかじゃないんだよ?」

「本当に麻雀の神様が残酷だったら、私たち3人すらモモちゃんを遠ざけたに違いないよ」

「だからさ、二度とそういうこと言うのはやめて?お願い!」

「…参ったっすね。そんなに喋れる人でしたっけ?宮永さんって」

「咲」

「へ?」

「咲って呼ばないと返事してあげない」


プイッとそっぽ向く咲は可愛かった。このあたりから、おっぱいさんが咲に惹かれた気持ちが分かり始めた気がする。


「ちょ…何とか言って下さいっすよ、池田さん。天江さん」

「んー、華菜ちゃんも華菜先輩って呼んであげないと返事してあげないしー」

「衣も衣先輩って呼ばないと返事しないもーん」


子供か。この人たちは。


「ぷっ。あははは」

「ふふっ、やっと笑ったね。モモちゃん」

「あっ…」


確かに、決勝卓終了後初めて私はここで、腹の底から笑った。

作り笑いや薄ら笑いではなく、きちんとした自然な笑い。


「諦めない。絶対にお姉ちゃんとお話して仲直りするんだ。その気持ちがあったから、私は仲直りできた」

「だから、モモちゃんも諦めないで。みんなで、戻す方法を考えよう。ね?」

「そのためには、笑顔が1番だよ!」

「…はぁ、何というか。参ったっす。本当に同級生っすか?」

「実は2個年上だったりして…」

「ははっ、なんなんすかそれ!」

「咲」

「ん」

「華菜先輩」

「おうだし!」

「衣ちゃん先輩」

「何でちゃんを付ける!」

「宜しくお願いします。私を、助け――」


「宮永に天江に池田!お前ら、モモを知らないか!?」


私に発言を遮らせたのは、決意を鈍らせたのは。

世界で一番愛した人。そして、もう出来るなら二度と会いたくなかった彼女だった。

「加治木、さん…」


息を切らし、彼女は走りながらこちらにやってきた。


「全くモモのやつ、どこに行ったのやら…」


彼女が来たからといって、もう私は飛びつくことはしなかった。喋りもしなかった。

分かっている。分かりきっている。飛びついても、私は空を舞うだけ。

身に染みている。染み付きすぎている。声を荒らげても、その声は届かない。


「…お前にも、やはり見えぬと言うのか」

「……どういう意味だ?」

「……だって、東横ならそk」

「華菜先輩」


華菜先輩が喋ろうとしたその言葉を、私は手で抑えて封じた。


「それ以上、言わないで下さい」


予想外の言葉が出たのか、彼女以外の3人は此方を振り向く。


「先輩には、もう私のことは忘れてもらおうと思うっす」

「な…」

「いや、もう先輩以外にも。誰にも言わないで下さい」

「これがいつ、治るかどうかすら分からないのに、待ってて貰うのは申し訳ないっすから」


悲壮な決意。加治木先輩との、別れ。


「…何だお前ら、3人とも何もない1点だけを見つめて…」

「!まさか、そこにいるのか、モモ!!」


3人を押しのけ、彼女は3人の視点が集まる先。要するに私に駆け寄った。


「いるのなら、返事をしてくれ、モモ!!」

「さよならっす、先輩。ずっと、ずっと大好きでした」


両者にとって、両者ともに感触のない口付けが、そこに交わされた。

本当は、あなたから塞いで欲しかった。

このうるさい口を。あなたの唇で。黙らせて欲しかった。

去年交わした約束を、このような形で破ることになってごめんなさい。

だけど、お別れです―――



さよなら、加治木先輩。さよなら。世界で一番大好きな人。

咲に拾われて早一ヶ月弱。

世間一般で言う、夏休みのシーズンを迎えていた。

私、東横桃子(野良)は相変わらず宮永家に居候している。

と言うか、他に行く場所がない。そりゃそうだ、誰も私に気付く訳が無いのだから。

たまに外に出掛けるにしても一人では近場の公園でボケーっとすることくらいしかやることはない。

休日午前9時。寝ぼすけ姉妹のお目覚めである。


「モモ~。いるのー?匂いがするからいるよねー?」

「いるっすよー。って照姉には聞こえないんすけどー」


私はフライパンを振りながら応対する。

このマンションの一室の家主。宮永照。通称照姉。

咲に拾われてこの家の敷居をまたいだ途端の発言にはビックリした。


『何か咲以外の匂いがする』


怖っ!超怖いんすけど!こっちはドロッドロの昼ドラの匂いがするんですけど!

どうやらこのステルスモモLv3の代償、視認と接触以外なら感知出来るようだ。

そういえば蒲原元部長もモモの匂いがするとか言ってた。

元々ステルスモモ状態になってる私ですら、匂いは消せなかったらしいし…。

彼女にもそういった感覚があれば…。いや、何も言うまい。

そんなわけで、照姉にも一応私の存在は認めてもらえている。

うーん、私の匂いってそんなに匂うんすか…?

「モモちゃんの匂いは良い匂いだよ。安心して!」

「ホントっすか?この卵の匂いとかじゃないんすかね…?」

「今日も一緒にお風呂入ろうね。今日は卵焼きかー」

「見える人に無視された!?あと卵焼きじゃないっす!」

「モモと一緒に入るとお風呂が凄く良い匂いする。モモに拒否権なし。見えないけど卵焼き楽しみ」

「照姉も便乗!?…いやまぁ、変な匂いじゃなきゃいいんすけど…」


照姉の手にかかると、見えない私でもあしらわれてしまうのだから恐れ入る。

宮永家に居候した初日、咲から事情を聞いた照姉は私を快く受け入れてくれた。


『よし、じゃあさっそく実験しよう』

『へ?』


視認可能な咲の視点と、視認不可能な照姉の視点との間で私が絡むとどう違いが現れるのか。

私が行うドアの開閉。咲から見ると普通に見える。照姉から見るとドアすら動いていない。

私が持つ白紙の紙。そこにペンで文字を付け加える。照姉からするとそこに白紙は存在しないらしい。

ただ、ペンのインクの残量が減っているのだけは確認できたらしい。

私がかける電話。携帯を使って宮永家にかけても、どうも繋がらない。咲には繋がった。

私が送信するメール。照姉には届かない。こちらでは送信完了と出ているのに。咲には送れた。

だが、二つとも照姉から咲の携帯を見ると、そんなメールも着信履歴もないらしい。

私が作る料理。作ってる最中の姿は相変わらず見えないらしいが、完成品が出来ると照姉にもそれは見えるらしい。


『突然、もぐもぐ。ホットケーキが皿と共に。もぐ。出てくる感じ。おいしい』


ちなみに私がホットケーキを食べると


『ホットケーキの一部が消えた!』


視認できない者には、突然物が消えたように見えるらしい。

総括すると、私が絡む全ての事象は、視認できない者にとってもっとも自然な形で処理されるらしい。

ドアの開閉や電話やメール等や文字の加筆等は、無かったことにされてしまう。

が、実際に行ったことによる消化だけは結果として残ることになる。

ペンのインクが消えたという結果だけは残る。文字は視認されないようだが。

私が作ったホットケーキは、ホットケーキの材料を消化し、ホットケーキが出来上がったという結果だけが。

私が食べたホットケーキというのものは、ホットケーキが消えたという結果だけが。

ただ、この理屈だと、何故メールと電話も無かったことにされてしまうのか非常に不思議である。

恨むよ、神様。

「出来たっす。スクランブルエッグに焼きベーコン。軽くバター塗って焼いたトーストっす」

「「おおおおおお…」」

「モモ、GJ」

「お姉ちゃん、そっちじゃないから。モモちゃん真逆にいるから」


そんなわけで、こんな状況ながらも、私は食事当番だけは出来る現状であった。

流石に何もしないで居候はバツが悪いので、やれることがあって良かったと心から思う。


「うーん、モモの料理は咲と私より上手い。間違いない」

「私もどっちかって言うとお父さんに料理は頼りきりだったから…」

「何とかお役に立てる事ができて良かったっすよ…」


朝食を済ませ、食器を洗っていると照姉が丁度出掛けるときのようだった。


「じゃあ、今日は対局で遅くなるから」

「いってらっしゃーい」

「いってらっしゃいっす。休日も対局とは…プロはきついっすね」

「モモ、ケーキ作っておいて。ケーキ」

「了解っす~」


照姉を見送ると、咲が目を輝かせてこちらを見ている。


「さて、モモちゃん!」

「ん、どうしたんすか。咲」

「買い物に行こう!」

「いいんすか?明日は4校合同合宿開始日なんすよね?家でゆっくりした方が…」


そのまま咲の強引な押しに引っ張られ、商品街へと私たち二人は繰り出した。


「んー。それなんだけど」

「体調が悪いから休むって言っちゃった」

「ええ!?」


ニコニコしながら笑う咲。だが、全く意味がわからない。


「何馬鹿なことやってるっすか!咲は今年も長野の個人代表じゃないっすか!調整はどうするんすか!」

「だって、今年はやるのが遅くて…24日から4泊もしたら………その間に、過ぎちゃうでしょ?」

「過ぎちゃうって…何がっすか?」

「秘密ー!」

7月26日。今日もあの寝ぼすけ姉妹のために朝食を作るべく7時に起床。


「ん…?二人共、起きてる…?」


二人共布団から抜け出している。温度も残っていない。そして、リビングが明るい。


「珍しいっすね。二人共こんな朝早く…」



「「モモ(ちゃん)、お誕生日おめでとうーっ!!」」



二人分のクラッカーが私を祝福した。

…そうか。今日は。7月26日は。

………私、東横桃子の誕生日だったっけ。

照姉は今日も対局があると言うのに、調整よりも見えない私を祝福してくれることを選んでくれた。

…いや、この人は対局があってもいつも通り9時まで寝てたんだろうけど、わざわざ早起きしてくれた。

咲は、合同合宿があると言うのに、それを休んでまで…。


「…もしかして、咲が4校合同合宿を休んだ理由って…」

「うん、そうだよ?モモちゃんの誕生日と被っちゃうから!」

「昔から咲は家族の誕生日祝うの大好きだったもんね」

「はーいそこー?お姉ちゃん、ケーキ食べるの早いよー」


身体の体温が上昇するのが否応なしにわかる。

胸の中に穴が開いたようなすっとした感じを確認出来て、思わず口角が上がった。


「…は、バカみたいっすー。咲も照姉も自分のことだけ考えてれば良いのに」

「ホント、バカみたいっす。こんな拾った猫みたいなやつの誕生日なんて、覚えてなくても良いのに」

「別にー?全然嬉しくなんかないっすよ?これっぽっちもっす」

「ホント、しかもショートケーキってなんなんすか。こんな甘いの私に食べさせるって言うんすか」

「大体、ショートケーキよりもお二人は甘甘っすよ。激甘っす。優しすぎるっす」

「私なんてこの家に住まわせて貰って、食事当番しかしてないって言うのに…」

「あ、でも食事はお二人にも勝ってる自信あるっすよ?この一ヶ月間、ずっと勉強してきたっすからね」

「だから、なんなんすか。朝からケーキにチキンとか…太るっすよ!うら若き10代のお二人が!」

「私に隠さないで言ってくれたら、ケーキもカロリー調整も全部私がやってあげたのに!」

「うわー、酷いっすー。隠されてて私、食事当番として超ショックっすー」



「出た!モモちゃんの感情をごまかすためのマシンガントーク!」

「うーん、聞いてみたい」

「で、本音は?」


何抱きついてるんすか。馴れ馴れしいっすよ。

そんなに強く抱きしめたら、痛いじゃないっすか。

ほら、咲の抱きしめが強いから、涙がポロポロ溢れてきたっす。


「…嬉しい」

「え?小さくて聞こえないなー」


目の前の小悪魔がニヤニヤして聞こえないフリをしている。

ぐぬぬ…。可愛いじゃないっすか…。


「ええ、嬉しいっす。ちょーーーー、嬉しいっすよ!!!」


「いやったーっ!モモちゃん、嬉しいって!」

「よし、サプライズパーティ成功」


楽しそうにハイタッチをする咲と照姉。この二人の絡みは、例え私が交じることは出来なくても、見ているだけで楽しくなる。


「さ、モモちゃん。食べよう!食べて二度寝したらデートだよ!たくさん色んなところ回るよ!モモちゃんのためのプレゼントも買おうね!」

「夕方くらいには、一時合宿を抜け出して衣ちゃんと華菜先輩も来るらしいから、それまでには帰宅して麻雀打とうね!」

「ちょ、突っ込みが多すぎてどっから突っ込めば良いか分からないっす!」

「デートって何すか!…というか、このメニュー食べて二度寝したら太るっす!!そりゃ、食べるっすけど!」

「プレゼントって、普通私にこっそり買っておくべきものじゃないんすか!?麻雀もしますけど!」

「あ、モモに狙ってたチキン取られた」

「へへーん。早いもの勝ちっす!」

「早い者勝ちだって」

「良し。その台詞は戦争だ。こっからここまでを私の皿に…」

「お姉ちゃん!」


確かに、私は、この時。

加治木先輩ではなく。宮永咲にも、恋をした。

お昼前には家を出たというのに、咲に色んなところを連れ回され、辺りはすっかり夜の帳を迎えようとしていた。


「遅くなっちゃった!早く帰ろう!急ぐよ、モモちゃん!みんなそろそろ着くっていうから!」

「何で咲はこんなに元気なんすか…」

「んー。何でだろう。モモちゃんと一緒だったからかな?」


うぐっ…。この人は時折、恥ずかしげもないことを良くもまぁ笑顔で発言出来る…。

咲に追い付こうと走り始めた瞬間であった。




「探しています 東横桃子 高校2年生 お心当たりのある人は、こちらの連絡先まで 東横家」




電柱に貼られているこのような張り紙を、発見したのは。

「モモちゃんどうしたの………って、これ…」

「…あはは、お笑いもんっすね。なーにが心当たりっすか」

「ふざけないでくださいっす。私のことを見えないばかりか、咲にまで酷いことを言って…」


そう。私と咲は、県大会決勝翌日には東横家。即ち私の家を訪問している。

色々持っていきたい物があったし、万一父と母に私が見えるなら越したことはない。

だが、当然のことながら両親に私を視認することは出来なかった。

まぁ、そんなことは予想済みなので、咲には両親の相手をしてもらい、さっさと宮永家に持っていきたい物を取り分けて家を出ようとしたところ。

咲と両親は大きな声で騒いでいた。


『どうしてモモちゃんがそこにいるのに、分かってあげられないんですか!』

『お二人は家族なんですよね!どうしてですか!?』

『何を馬鹿な事を!そこには誰もいないだろうが!』

『この子、頭がおかしいのかしら…。モモの友達っていうから話を聞いてたけど…』

『ちょ、ちょっと咲…。何やってるんすか…適当に時間潰ししてもらえばそれで良いのに…』

『じゃあ、じゃあ!』

『あ、バカ!』


瞬間、色々詰め込んだ私のリュックを咲が奪う。

照姉の実験結果から推測するに、突然両親の目の前には色々娘の私物を詰め込んだリュックが現れたに違いない。


『…な!?』

『そ、それって…モモの…』

『これで分かってもらえましたか?モモちゃんはそこに…』


逆効果だった。


『も、もしもし警察ですか?』

『どういう手を使ったのか分からないが…。娘の私物を持っていこうとするのか。この泥棒猫!』

『咲のバカー!さっさと逃げるっす!!』

『はぁ…はぁ…』

『ご、ごめんモモちゃん…』

『………』


何とか両親から逃げ切ることが出来た。が、私は咲に問いたださなければならない。


『何であんな余計なことを言ったんっすか?』

『私服だったからまだ良かったものの、制服だったら即効で特定されて大変なことになるっすよ?』

『昨日、言いましたよね?誰にも言わないで下さいって』

『返事次第では、私は今すぐ咲の視界から消えるっす』


実際、私は視認できる唯一の3人以外のコミュニティを築くつもりはなかった。

昨日からの決心を鈍らせるこの行動に、少し私は咲に腹を立てていた。


『……だって、家族なんだよ?モモちゃんの、唯一の!』

『そんな人が、横にモモちゃんがいるのに何の反応も示さない。何の聞く耳も持たない』

『私、悔しくて…。家族の絆って、もっと深いものだと思ってて…ぐすっ』

『何泣いてるんすか…。…ホント、強かったり弱かったり。面白いっすね咲は』

『私のために喧嘩してくれたんすね?じゃあ、今日のことは見逃してあげるっす』

『うん…ごめん、モモちゃん…』



『最後にもう一つだけ尋ねても良いっすか?』

『何でそんなに、咲は私のために親身になってくれるんすか?』

『…私は、一人ぼっちの辛さを知ってるから。無視されることの悲しさを、知ってるから』

『だから、モモちゃんは放っておけないんだ。昔の私を見ているみたいで』

『よし、決めたよ私』

『モモちゃんの実の家族が、モモちゃんを見えないって言うんなら』

『見えている私が、モモちゃんの家族になるよ』


「…どうするの、それ」


張り紙の前で一か月前の事を考えていた私に向けて、咲が尋ねる。


「決まってるじゃないっすか」


張り紙を電柱から剥がすと、私は躊躇なくその紙をビリビリと引き裂いた。


「私の家族は照姉と咲だけ。そして、華菜先輩と衣ちゃん先輩がいる」

「私にとってのコミュニティは、これだけで十分っす」

「…そっか。…じゃあ、帰ろっか」

「ええ。帰るっす。私たちの、家に」


咲と手を繋いで、家路を急ぐ。

鶴賀学園麻雀部でのコミュニティが全てだった、高一から高ニの県大会代表までの私。

とても大切な人が、加治木先輩だった。

それが、今は私を視認できる3人の周囲だけのコミュニティになった。

大切な人が、咲になった。

たった、たったそれだけのこと。

八月。咲の全国個人戦と、鶴賀の団体全国が始まる。

咲の東京に一緒に行かない?という誘いを蹴って、私は照姉と長野に残ることにした。

正直咲と離れるのは辛かったが、照姉のこの自由気ままな性格だと放っておけないという理由が一つ。

二つ。もう私は、鶴賀の面々と会うつもりはこれっぽっちもないということ。

咲に付いて行ったら、否応なく彼女らと絡む機会が増えてしまう。

なので、テレビで咲の個人戦の応援と鶴賀の団体の視聴だけをするつもりであった。

しかしながら、正直咲と数週間会えないのはきつい。咲もそう思ってくれてると良いけど。


「モモー。朝ごはんー」


照姉ももう慣れたもので、朝の開口一番は絶対にこの台詞である。


「今出来るっすよー」


私の返事と、料理が出来上がるのもほぼ同時。


「流石、宮永家専属シェフ・モモ。味も見栄えもタイミングも素晴らしい。もういっそうちに永久就職しない?」


割とその線も真面目に考えてるんですけどね…。

正直なところ、全くステルスモモLv3の代償を解く方法は見つかっていない。

というか、見つけていない。見つけるのを忘れるくらい、この2ヶ月近くは楽しかった。

咲がいて、照姉がいて。華菜先輩と衣ちゃん先輩がいて。

それだけで良かった。それだけで楽しかった。


「ごちそうさま。今日も美味しかったよ、モモ」


それじゃ、片付けしますね。


「さて…二週間分のノルマは終わったし。今週と来週はインハイ視聴インハイ視聴っと」

「確か今日はモモの高校の一回戦が…お、始まってる」

丁度画面では、新入部員のB子が残り持ち点23000とかいうとんでもない崖っぷちで席を立っているのが映し出されていた。


「…ちょっと、モモの高校は立ち上がりにつまづいちゃった感じだね」

「まぁ8万点程度のハンデは私にとってみれば大したことはない」


それは照姉だけだと思います。…にしても、母校の結果というものは、やっぱり多少は気になるものなのか…。

正確には私はまだ在籍しているのだろうけど、どうせ来年以降は授業料も払われることもないし、もう事実上の退学みたいなものである。

だから母校。華真っ盛りの高校2年生なんですけどね、私。

今日この日に鶴賀の一回戦が行われることは、前もって知っていた。

だから、見ようと思わなければその辺で時間を潰して回避することも出来た。

もうあの頃には戻れない。もう無関係な麻雀部である。それでもやはり、気にはなった。


「さて、インターバルが終わるまでに。モモシェフ」


何でしょう、照姉。あと、私はそっちじゃないです。


「何かお菓子を所望する」


またお菓子ですか。さっき朝食食べたばっかりです。太りますよ。あと、そっち指差しても誰もいません。



ピンポーン


何か有り合わせの物でお菓子でも作れないものかと冷蔵庫を物色していると、この家には珍しくインターホンの音が響き渡った。

いや、そう言えば私が転がり込んだ当初の頃は、咲の友人だったり照姉の取材のマスコミだったりが良く来ていた。

もしかすると、2人が私に気を使って、家では来客を少なくするようにしていたのかもしれない。

そんな事を考えながら、使えるものを探していると、卵に牛乳に小麦粉はある。

パンケーキなり、ホットケーキでも作ってみるかな…。私のお昼は照姉の余りでも良いし。

丁度、この照姉の誕生日祝いに買ってもらった…でっかいパン焼き器を試してみても良いかもしれない。

「はいはーい、今開けますー」

いやでも、全部食べられる可能性もある…。多めに作ろうかな?と、卵を1つ、2つ…

3つ目をパックから取り出した、その瞬間だった。



「東横桃子は、ここにいるか?」



その声を聞き、私は卵を落としてしまう。グチャリと卵の割れる音がキッチンに響いた。

どうして、貴方が今ここにいるんすか?母校がインハイ全国出てるんすよ?

加治木…先輩…。

「いきなり何なんですか、あなた。失礼ですよ」

「これは申し訳ない。私は鶴賀学園OGの加治木ゆみと言う」

「…っ!」

「その反応。やはり、モモはここにいるんだな?少し、お邪魔させてもらおう」

「…あっ、こら…!」


照姉の制止を振り切って、加治木先輩は玄関から乗り込んできた。


「モモ!」


風呂場。


「モモ!!」


リビング。


「モモーっ!!!」


そして、キッチン。

私は、余りの急な出来事に、突然の予期せぬ人物の来訪に、ただ固まって動かないままだった。

私が先ほど落とした卵の手前で加治木先輩の足は止まる。つまり、再び加治木先輩と私は至近距離にいることになる。

あの時以来の。

一方的な、別れを告げたあの日以来の。


「…今さっき割れた物に違いない。…割れた卵を放置して、訪問者の対応をする者はまずいない…」

「ここに、ここにいるんだな…」

「モモ…」

加治木先輩は私を見つけてくれた。

私がこんな状況になっても、その高い知識と視野で。


「…すまない。今の私には、お前を見つける事は出来ないみたいだ」

「でも、これだけは私に言わせてくれ」


「大好きだ、モモ」


突然の告白。私は、動けない。


「いなくなって、初めて気付かされたよ。お前が側にいるということが、どれだけ私にとって大事だったのかを」

「それだけ、たったそれだけが言いたかったんだ」

「来年。来年、私の告白に対する返事を聞かせてくれ。お前の誕生日に、またここに来る」

「絶対、絶対に。その時までにはお前を見つけてみせる」

「………もう良い?話なら、外で聞くから」


二人が玄関から出ると、その場は静けさを取り戻した。



『決まったあああああああああ!鶴賀の副将・妹尾佳織選手、満貫振り込みにより飛んでしまったああああああああ!』

『鶴賀の夏がここで終わってしまったあああああああああああ!』


終わってなんか、いなかった。

数十分後、照姉が一人で帰ってきた。


「……モモがここに来た次の日、咲とモモがモモの実家に行ったって話。イザコザがあったとか何とか」

「あの話と、モモが消えた日、モモが見える3人との対応だけで、彼女はここまでたどり着いたらしい。なかなか鋭い観察眼をお持ちのようで」

「で、咲が個人戦で東京に行き、いない隙を狙ってうちに来たらしい」

「モモの性格なら、わざわざ東京にまで来るわけがない、とのこと」

「仮に咲が玄関を開けようとした場合、覗き穴から鶴賀のOGがいたら居留守使うもんね」

「面識のない私が扉を開けたその一瞬を狙って、どうしてもモモにそれだけは言いたかったんだって」


大好きだ。来年、返事を聞かせてくれ。

…どうして、もっと早く言ってくれなかったのだろうか。

…どうして、どうしてあなたは私の心を引っ掻き回すのだろうか。

誰にもこの場所は見付からないはずだった。加治木先輩とは、お別れのキスと共に二度と会うことはないと思っていた。

大好きでしたよ。だからこそ、別れたんです。

こうして、宮永家の家族として、今後も生きていこうと決意してきた矢先に。


咲の事を、確かに好きになっていた矢先に。


どうして、いつもあなたは…。

「あの人がモモの事を良く考えていて、その性格も良く分かってるっぽいのは話して良く分かったよ」

「なんせ一瞬の隙を突くために、OGとして東京にも行かず、かつ鶴賀の試合ならば見ているに違いないと読んだ」

「そして、私や咲から、モモを力任せに引き剥がすと言う事はしない。あくまでモモの意思を尊重した」

「だって、警察呼ばれたら一発でアウトだもん。うち」

「なんせ失踪届や盗難届が出されているモモの私物がわんさかあるわけだし」


確かに…。リュックとかそのままだし。…なるほど、不法侵入で警察を呼びますって照姉が言わなかったのはそれで…。


「でも、彼女にも分かってないことが一つだけあった」

「咲も、モモも、二人共が両者を好きになり始めていたという事」


え…?何故それを、照姉が?


「うん。見えないけど、私の鏡を甘く見てもらっては困る」

「最近では雀卓の上だけでなく、日常生活でも多少使えるようになってきてる。ふふふ」


ふふんと鼻高々ですが、照姉…。能力を高めすぎるとロクな事ないですよ…。


「だからこの場合の返事をしてくれってのは、Yes/Noだけの単純な回答じゃなくて」

「私はこっちの方が好きだからYes/Noですっていう立派な理由付けもあるわけ」


…そうなる。


「モテる女は辛いね、モモ」

悶々とした夏休みを私は過ごす事になる。いや、毎日休みだから夏休みとか関係ないけど。

咲は、無事個人戦を連覇した。ちなみに団体の方は白糸台の優勝だそうで、照姉はその関係で東京に呼び出された。

要するに、照姉と咲は入れ替わりで東京から長野、長野から東京に行くこととなる。

つまり、咲と私は暫く二人きりである。


「ただいまー!」

「…お帰りっす、咲」

「モモちゃーん!会いたかったよー!」

「ぎゃっ、咲!飛び付かないで欲しいっす!危ないっすよ!」

「だって久々にモモちゃんと会えたんだもん!この胸が良いクッション!」

「咲…なかなか言ってくれるっすね…」


数週間ぶりの咲との触れ合い。二人で沢山、触れ合った。

会話ができる喜びを、その日は二人で噛み締め、二人で沢山、互いの名を呼び合った。

その日の夜。いつものように二人で一緒にお風呂に入っていた時の事だった。


「あのね、モモちゃん」

「んー。なんっすか、咲」


「私のことは別に、選ばなくても良いからね?」

「………なんすか、それ」

「え?だって、別に私モモちゃんの事好きなんかじゃないし」

「あくまで、可哀想だからっていう同情でモモちゃんを拾っただけだし」

「それに私、結構モテるんだよー?えへへ、意外だったかな?」

「やっぱさ、お姉ちゃんも麻雀強いし、私も強いから宮永姉妹ってだけで有名でさー」

「個人戦で沢山サイン書いてくださいって言われちゃって、手が疲れちゃったよー」

「待ち時間とかも色んな人が来てくれてさー」

「元部長とか、元風越のキャプテンさんとか…」

「鶴賀のみんなも来てくれたよ。そして、加治木さんが、その…」

「モモちゃんに、告白するって…ことも……うぇえ…ぐすん…」


「咲」


言葉を遮らせるマウストゥマウス。

しようとしたのは2回目。

実際に行えたのは、これが初めて。


「…ぷはっ」

「感情を隠すためのマシンガントークは、私だけで十分っすよ」

「…だって、だって!!」

「加治木さんに、私が勝てるわけないもん!!」

「モモちゃんと加治木さんには、一年以上の長い付き合いがあるのに、私には、それがない!たった、たった二ヶ月だけ!!」

「かないっこないもん…私なんて…」

「誕生日のプレゼントだって、私にはモモちゃんが何を好きなのかすら分からなかった!だから、私一人じゃ買えなかった!!」

「でも、その二ヶ月。咲と過ごした期間も濃い二ヶ月だったっすよ」

「正直に言うっすね。現段階でどちらかを選べ、と言われたら。私は加治木先輩を選ぶっす」

「ほら、やっぱり…」

「まさか、たったあれだけの情報で私が何処にいるのか探し当てるとは、流石先輩、と思ったっす」

「でも、私」

「動けなかったんすよ」


「あれだけ好きだった加治木先輩に告白されて、そりゃ当然嬉しかったっすよ?」

「でも、全く動けなかったっす」

「県大前の私なら、もう物凄い勢いで抱きしめに行ったっすね。でも、動けなかった」

「…どうして?」

「……私の中の加治木先輩が、どんどん小さくなっていくのが分かってたから」

「それに、私が判断するのは来年の誕生日っす。まだ、まだ10ヶ月もあるんすよ?」

「もし仮に加治木先輩が負ける要因があるとしたら、そこは大きなポイントっす。咲はそこにつけ込まなくて、良いっすか?」

「良くない!良くないよ!!」

「大好き!!私はモモちゃんが大好き!!!」

「譲りたくない…加治木さんにも、誰にも譲りたくないよ!!」

「こんなに他人と一緒に触れ合った事はなかった。こんなに楽しく他人とお喋りする事はなかった」

「気が付いたら、私の中にはモモちゃんが沢山いた。もう、モモちゃんなしの暮らしなんてありえないよ…!」

「……私も、同じ気持ちっすよ」

「そこは元々、加治木先輩の場所だった。ところが、お節介などこかの優しい女の子がそこに入り込んできた」

「誰からも必要とされてないと荒れていた私に、その子は居場所を与えてくれた」

「掛け値なしに優しく、そして強い子だった。凄い勢いで、私の中の加治木先輩を押し退けていく」


沈黙。見つめ合い。先に口を開いたのは、私だった。


「プールとか、行きたいっすね」

「うん…うん…」

「海とか、山とかもどうっすか?照姉は勿論、華菜先輩と衣ちゃん先輩も誘って」

「うん…行きたい。…モモちゃんと沢山、思い出…作りたいよ…!!」

「沢山、沢山作りましょうっす。咲」


「だから、泣かないで下さい。あなたが教えてくれたように、1番の笑顔で笑ってください。咲」

「咲の笑顔が、私は大好きっすから…」



そして、7月26日。私の誕生日がやって来た。



安価>>60-70

咲ENDorゆみEND

安価かよww
咲ENDで

咲END


午前8時。少し早い目覚ましのベルが鳴ると、私たち宮永家の3人はもぞもぞと目を擦りながら体を起こす。


「ん~…後5分…」


照姉は相変わらず朝に弱い。


「もー、何言ってるのお姉ちゃん!今日はモモちゃんの誕生日だよ!時間を無駄にしない!!」


咲は、今日が私の誕生日だからか、凄く張り切ってくれている。


「はっ、そうか。今日はモテ女モモがどっちかの女を振る日だった」

「人聞きの悪い言い方しないで下さいっす!!」

「あははは…」


いつものように、みんなで顔を洗いに洗面所へ。

咲から去年誕生日プレゼントで貰った髪留めで髪を留め、歯を磨く。

その後も、いつものように私が食事担当。3人分の朝食を作り、3人で一緒に食事を取る。

その後は朝のニュースを見たり、寛いだりしていると、予定の午前9時。

午前9時を少し回ると、予定通り宮永家のチャイムが鳴った。


「はい、今開けます」

「咲、照、モモ。来たぞー!」

「忙しい中来てやったんだし。感謝しろし」


私を視認できる唯一の3人がここに集まった。

「良し!衣ちゃんも華菜先輩も集まったところで!」

「ちゃんではなく」



「「「「麻雀大会の始まりだ(し)(っす)!!」」」」


「カン。対々・嶺上開花、三槓子・タンヤオ。責任払いの18000です、華菜先輩」

「げっ!!」

「華菜よ、いつも言っているだろうが。10巡目以降で生牌を切る時は気を付けろと…」

「咲はどっからでも跳ね満倍満作ってくるっすからね…」

「最近は平和系の手が来なくて困ってるよー。配牌開いたら暗刻が1つ以上あるし。無ければ国士2シャンテンとかだし」

「…いやいや、10巡目以降で生牌を切るなって言われたら、もう戦い用がないし?」

「だから、言ったろう。気を付けろと」

「気を付けるってどうやるんだし!!」

「気を付けるんすよ」

「意味が分からないし!!」

「華菜先輩、気を付けて下さいね?」

「咲まで!!にゃあああ!!」

この三人とやる麻雀は、本当に楽しい。

一人は、高校生最強の名を思うがままにしている咲。

一人は、今年プロとして入るも、ルーキーながら大暴れしている衣ちゃん先輩。

一人は、大学に入り、インカレで爆発的な収支を収める華菜先輩。

この人たちとしか、確かに私は麻雀が出来ない。

だが、この人たち以上にハイレベルな人たちと戦う事はそうあることではない。

私は能力を使えないから、どうしても3人とは遅れを取ってしまう。

しかし、みんな私が相手だからといって、手加減しないでくれる。それが私には一番嬉しかった。

結局、9時からお昼休憩を挟んで7時間ほど行われた麻雀大会の結果は…

咲がトップ5回、衣ちゃん先輩がトップ2回、華菜先輩がトップ1回。私はトップなし。

それでも、私は楽しかった。とても楽しい時間だった。

この後訪れる、とても大事な人との、どちらか一人との決別の決断を忘れさせるくらいに。

衣ちゃん先輩と照姉は対局、華菜先輩は妹たちの面倒を見るとかで17時過ぎには上がっていった。

誕生日会には出れないことをみんな詫びつつ、三人分のプレゼントが渡された。楽しみだ。

………照姉のだけ、またとても包みが大きいのだが、一体今度は何の料理グッズをくれると言うのか…。

そして、この場には私と咲だけが残された。

後一人の、主役の到着を待つばかりとなった。


「…なんだか、緊張しちゃうね」

「……そうっすか?」

「…ちなみに、どうっすか?咲には、私に選ばれてる自身があるっすか?」

「ええ!?それ今聞いちゃうの?」

「参考までにっすよ」

「むぅ…モモちゃんの意地悪」

「ぶっちゃけ、もうこの時点で殆ど私の中の答えは出てるんすよ」

「ただ、あの人がどこまでたどり着いたかが知りたい」

「…あの人が来たら、多分自分の中で見出した意見を話し出すと思うっす」

「……私の予想が正しければ、あの人は私の代償の効力まで見つけ出しているはず」

「………その後。問題はそのあとっす」

「もし、あの人がそれ以上の事を話すようなら…」

結局のところ、ステルスモモLv3の代償からの解放に、私は未だ至っていない。

あれから、色々と調べた。休日とあらば、咲と一緒に、色々と各地を回った。

この代償からの解放を求めて。…何故か毎回、行き先がずれるけど。

けれど、有力な情報もなく。

私がステルスモモの能力を上げるに至った経緯である、園城寺さんにも会いに行った。

しかしながら、そこも大ハズレ。何も得るものはなかった。

限定されたコミュニティ内での関係が続く日々。

それでも、私は――



ピンポーン


物思いに私が耽る中、今日二度目の宮永家のチャイムが鳴る。

午後6時。丁度、予定した時刻ピッタリである。あの人らしい。

当然、入ってくる人物は…。


「…久しぶりだな、宮永。モモがお世話になってる」

「……いえ、こちらこそモモちゃんにはお世話になりっぱなしです」


大学2年生になって、去年よりも更に大人びた加治木先輩の姿がそこにはあった。

「…モモは?」

「……そこで、座ってますよ」

「隣いいか?」

「良いっす。って言ってあげてください」

「大丈夫だそうです」

「…そうか。…すまない、未だに私はお前を視認することは出来ない」


それはそうでしょう。私がどれだけ叫んでも、届かないんですから。


「あれから、色々考えてみたんだ」

「何故決勝卓の3人にだけ、モモが視認出来て、私たちは出来ないのか」

「本来のステルスモモは、その全く逆の効果を発揮する能力のはずだ」

「つまり、ステルスモモに、何らかのバグが起こっていると推測出来る」


相変わらず、あなたは頭が回っている。恐らく、その通りでしょう。

そのバグとやらが、私たちが言う代償の事の他ならないです。


「本来の効力を発揮するオン・オフが逆転している、という事になっている訳だ」


止めて下さい。


「ここからは私の提案なんだが」


それ以上、喋るのをやめて下さい。


「そのオン・オフを再び元に戻すために」


それ以上、私が好きだった加治木先輩の姿で話を続けないで下さい。




「もう一度、ほかの二人を集めて、4人で卓を囲んでステルスモモを発動させてみてくれないか?」




私が大好きだった加治木先輩は、そんな事を言わない。

「本気で?」

「!?」


もはや照姉を凌ぎ、現役トッププロクラスの殺気とも称される咲の殺気が加治木先輩を襲う。


「本気でそんな事を言ってるんですか?」

「う…ぐっ…。な、何をする、宮永…」

「今なら冗談だったで済みますよ?そのふざけた口から出た提案の、撤回をするつもりはありませんか?」

「じょ、冗談の筈がない…だろう。私なりに、色々…モモのことを…考えて…」

「咲、もういいっす」


私の言葉で、咲はその殺気を収めた。


「も、モモ…。お前のおかげか?助かったよ…。一体どういう事なんだ、この宮永の変貌は…」


私は冷蔵庫から、昨日作った、具材の載っていないピザの生地だけをテーブルに置いた。


「な…突然、ピザの生地が…」

「私も、いろいろ考えたんすよ。あ、聞こえてないでしょうけど」


続いて、ケチャップを取り出し、その生地に垂らしていく。


「照姉との実験の結果、文字や電話やメール等で私は記録を残せない」

「けれど、消化したものはその場で結果として残る」

「何度も料理当番をして、私は一つの表現方法を手に入れた」

「つまり、これがあなたへの返事です。加治木先輩」


ピザの生地に、ケチャップの赤文字によって記された4文字の言葉。



サ ヨ ナ ラ



私から、大好きだったあなたへの。決別の印です。

「と、突然、生地に文字が…!?」

「…それがモモちゃんの返事だそうです」

「な!?」

「帰って下さい。あなたにモモちゃんとこれ以上、会話をする資格はありません」

「い、意味が分からない!順序建てて説明しろ!」

「モモ!聞いてるんだろ!?私が、今何かしたのか?お前の機嫌を損なうようなことを言ったのか?」

「……………」


これ以上、私は、あなたと会話をするつもりはない。


「モモちゃんは喋りたくなさそうですから、私が代わりに言いますね」

「あなたの考えは恐らく正しいでしょう。私たちも、同じ考えに至ったことがありますから」

「なら、何故試さない!?」

「試すわけないじゃないですか。何故かすら分からないんですか?」

「…ぐっ!」


再びの殺気が、加治木先輩を襲う。


「全部言わないと、分からないんですかね?…ごめんモモちゃん、私相当イラついてるんだけど」


私はイラついたというよりも失望してます。


「……ま、全く、見当が付かないな」

「…じゃあ、私が全部言ってあげます」

「モモちゃんの事を唯一視認できる私たちが、モモちゃんを交えて卓を立てました」

「貴方が言う、オン・オフの改善のために、モモちゃんはステルスモモを発動させます」

「ねえ、その瞬間」



「モモちゃんは誰からなら視認して貰えるんですか?」

「…誰、ってそりゃ、卓上以外の人物全員に…」

「それは通常状態のステルスです。モモちゃんがみんなから視認して貰える状態のステルスです」

「ねえ、加治木さん。誰が視認出来るんです?この状況下で、ステルスモモを発動したら」

「……うっ…!!」

「私たちは、ステルスモモで視認できない。卓外の人は、ステルスモモLv3の代償で視認出来ない」

「だ、だが、そうならない可能性だってある!オン・オフが上手く切り替わって…」


今日一番の殺気が、私が大好きだった人を襲う。


「ねえ、加治木さん。そうならない、可能性って、何です?」

「や、やってみなくては…分からないだろう!?やらないまま手をこまねくわけにも…っ!?」

「そうですか。やってみなくては分からない、ですか」

「…いや……すまん。……分かった、言いたいことが…」

「あ、やっと分かりました?ごめんなさい。私生まれてから一番怒ってるかもしれません」

「私怒ってるから、最後まで言っちゃいますね?」

「ねえ、加治木さん」




「それを行って、加治木さんの言うオンオフが成功しなくて」

「対局が終わって、私たちですら視認出来ない状態に陥ったら」

「モモちゃんが完全な一人ぼっちになったら、どうするつもりなんですか??」


「……………」

「やっと分かってくれましたか?」

「あなたが言ってることは正しいかもしれません。私たちよりも頭良さそうですし」

「けれど、あなたの考えていることには、モモちゃん自身の考えを考える事が欠けている」

「上手くいく保証は?何もなしに、やってみなきゃ分からないとか言ったんですか?」

「漫画の世界じゃないんですよ?ねえ、何とか言ったらどうなんです?」

「想像できますか?誰ひとりとして、自分の言葉を理解してくれる人がいない」

「……すまない」

「誰ひとりとして、触れ合うことのできる人がいない」

「…………すまない」

「世界にたった一人、取り残されるかもしれないモモちゃんの事を!!」

「………………すまない…っ」

「出てって下さい」

「そんな事を提案するあなたに、モモちゃんと会話する資格はありません。最後通告です」

「そして、二度と」

「二度とこの家の敷居を跨がないでください」

加治木先輩は、力なくフラフラと出て行った。

そして、私もフラフラと力なく、咲の胸に飛び込んだ。


「いやー。予想はしてたけどきついっすね…」

「昔の加治木先輩だったら、私自信の考えも考えて、提案の直前くらいで言葉を飲み込むはずなんすけどね」

「やっぱり、一緒に過ごさなかった時間が長引くと、そうなっちゃうんすかね…」

「はぁ…超ショックっす…」

「モモちゃん」

「何すか、咲」

「マシンガントークは?」

「……ははっ、あれは感情を隠すための物っすから」

「今ここにいる咲には、私が感情を隠す理由がないっすよ」

「うん、じゃあ」

「…お言葉に甘えるっす」


「うっ…うあああああああああああああああああああああああ!!!!!」


咲の胸で、私はただひたすら泣いた。

泣き疲れて、そのまま眠ってしまったのだろうか。

私は、寝室で毛布を掛けられて寝ていた。

時刻は、午前0時過ぎ。


「あ、モモちゃん起きた?」


咲は、その屈託のない笑顔でこちらを見つめてくれた。


「余りにもうなされてたから、起こすに起こせなくて。ごめんね」

「ん、良いっすよ。そういう咲の心遣いが、私は大好きっす」

「…誕生日、過ぎちゃったね。誕生日会出来ずか…。あの生地は捨てちゃったし、どうしようか…」

「咲」


キョロキョロしていた咲を抱きしめ、その唇を閉ざして、私は続けた。


「返事がまだだったっす。…と言うか、随分前から決めてたっすけど」

「…ふふっ、知ってたよ」

「…ですよねー。バレバレっすよね…」

「でも、きちんと言わなきゃいけないこともあるっす」

「私、東横桃子は宮永咲が大好きです」

「あなたのものにしてください」

「加治木先輩とかどうでも良い。ただ、あなただけのものに」

「…私、独占欲強いけど…良いの?」

「大丈夫っすよ。照姉と華菜先輩と衣ちゃん先輩なら、察してくれるっす」

「…嬉しい」

「じゃあ、私もモモちゃんに一日遅れの誕生日プレゼントをあげるね」


咲に強く突き飛ばされて、私は布団に倒れ込む。

そして、そこに乗りかかるようにして、去年のプレゼントの髪留めを私から取り、咲は言う。


「……モモちゃんが私だけのものだと言う、証拠を。その体に」

「…お手柔らかにお願いするっす、って普通なら言うところなんすけど…」

「今日の私は、めちゃくちゃに。めちゃくちゃにして欲しいっす」

「私が、咲以外のことを考えられないくらい、めちゃくちゃに」

「二度とあの人のことを思い出さないくらい、私を咲のものに、して欲しいっす」

私の名前は宮永桃子。年齢的に言うなら、今が華真っ盛りの女子高生っす!

外見もそんな悪いわけじゃなく、おもちの方も水準以上!

自分で言うのもあれっすけど、引く手あまたの人材だと思うっすよ!

あ、でも。私は咲の物だから。もう予約済みっす!!



私を視認できる人は、相変わらず3人のみ。

その周囲の限定されたコミュニティだけが、私の全てだ。

けれど私は、もうそれで良い。それ以上を望むことは止めた。

咲と、みんなとの関係さえ続けば。それだけで良い。




「…朝になっちゃったね」

「……咲、見掛けによらず凄いっすね…あー、これ。絶対跡残るっす」

「残すようにしたんだもん。めちゃくちゃにして欲しいって言ったのは誰だっけなー?」

「…ぐうの音もでないっす」

「…モモちゃん」

「何すか、咲」

「大好きだよ。世界で一番愛してる。もう、誰にも渡さないから」

「絶対、絶対に、一人ぼっちになんてしないから」

「私もっす。愛してるっすよ、咲。離さないで下さいね」

「「世界で一番大好きな人」」




咲END

カン!

お、終わった…。終わったけど1時間後には電車乗らないとwww草生えるwwwwwww

そんな訳でシリアスチックな咲桃でした。咲照・部キャプも良いけど、たまにはマイナーカプをね!
ゆみちんENDは…見ない方が良いと思います…。安価は絶対。

すみません。気になったレスとかはまた後で。電車内で何かミスがあるかの確認しつつ。
とりあえずHTML化の申請だけしておきます。読んで頂いた方、ありがとうございました。


かじゅ的には「みんながいる世界」は無条件のプラスだけど
モモ的には「4人だけの世界」の喪失、っていうか咲の喪失が無条件のマイナスになってたんだよな
百合の共依存SSって退廃的極まりなくて素晴らしいわ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月02日 (土) 21:04:50   ID: IJZ91EYG

かじゅモモにならなかったから低評価つけるカプ厨()

2 :  SS好きの774さん   2014年09月05日 (金) 14:19:54   ID: 94Ukh_KS

だな、ひたすら低くなっててワロス

3 :  SS好きの774さん   2014年11月12日 (水) 01:12:37   ID: RlKMGSd6

良かったと思うが…展開の強引さが気になる
このモモは自分がどれだけ勝手なことをしているのか分かってるのだろうか

4 :  SS好きの774さん   2016年03月27日 (日) 20:10:54   ID: jD8mWkET

ここはカプ厨と京豚の巣窟だから
王道じゃなけりゃ低評価、京太郎でなけりゃ低評価
毎日毎日ご苦労なこった

5 :  SS好きの774さん   2018年07月16日 (月) 04:02:19   ID: iGgogr9-

身勝手?意味不
鶴賀の連中は桃子におんぶに抱っこで本気で探してない、かじゅも解決策に対するリスクを考慮してないし、両親自体が子供がやってたことに対しての理解がなさすぎ保護監督不行き届きだからな
結局カプ厨でかじゅとくっつかなかったから身勝手とか言ってんだろ?
咲ジャンルが衰退したのはそういう組み合わせ固定の考え方なんだよ

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom