ロボット「博士の贈り物」(12)

古びた研究所

ロボット「博士、ご用はなんでしょうか?」

博士「おお来たか…私が不治の病だと言うことは知っているだろ?」

ロボット「ええ、私が看病してるんですから当然です」

博士「私の命はもう長くない……未練はないがお前のことが気がかりでな」

博士「私がいなくなったら、お前はひとりぼっちになってしまう…仲間を作ってやりたいが私には新しいロボットを作る体力はもう無い」

博士「そこで一つの装置を開発したんだ…さあ取り付けるからこちらに来なさい」

ロボット「はい」

ロボット『それから数日後、博士は亡くなりました』

ロボット『今までずっと博士に仕えてきた私はこれから何をしたらいいのかよく分かりませんでした』

ロボット『なのでとりあえず博士と過ごしたこの研究所で生涯を終えてみようと思いました』




ロボット「薬品庫の掃除終了です」

ロボット「次は浴室へ……おや?」

ロボット「私の体から液体が出てますね……オイル? ではなさそうですね…」

ロボット「メンテナンスは毎日してるはずですが……私ももう古いですかねぇ」

ロボット「そういえば博士が付けた装置……もしかしてアレのせいですかね」

ロボット「ロボットの私に寿命を与えるとは博士も風変わりなことをしますね」

ロボット「ま、それも悪くないでしょう」

ロボット『それからだんだん体に異変が表れ始めました』

ロボット『頭部の異物感、エネルギーの大量消費、ソーラーシステムの誤作動など私のボディはどんどんおかしくなっていきました』

ロボット『体の異常とは反比例するように何故か私の心は軽くなりました』

ロボット『きっと天国と言う所で博士とまた会えると思っていたのでしょう』

ロボット『しかし、ある日……』





ロボット「さて、今日も掃除、掃除」

ロボット「おや?貯水タンクに水がありませんね」

ロボット「久しぶりに湖に出かけますか」



ロボット「相変わらず殺風景な所ですね」

ロボット「昔は緑で溢れてたというのに……」

ロボット「嘆いても仕方ありませんか……早く家に帰りましょう…うん?」

ロボット「おや……まぁ、私の頭から花が咲いてるではありませんか」

ロボット『研究所に帰って博士の部屋を調べると私に取り付けられた装置についてのデータが出てきました』

ロボット『なんでも「どんな環境にも対応すり植物」を研究していたらしく、私にはその種を育てて蒔く機能が備えられたそうです』

ロボット『博士の考えは分かりませんでしたが、この種を蒔くことが自分の仕事なんだということは分かりました』

ロボット『だから私はそれから世界中を旅し続けました、何年も…何年も……』





少年「で、それからどうなったの?」

「それからはあちこち放浪した後に貴方のおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんたちが暮らしていた集落に流れ着いたんです」

少年「へー、じゃああの森も野原も君が作ったってことなの?」

「そういうことになりますね」

少年「すっげー!」

「私はただ瓦礫や廃ビルに種を蒔いただけですよ、凄いのは博士と植物たちです」

少年「ふーん…あ、もう日が沈む、そろそろ帰らなきゃ」

「気をつけてお帰り」

少年「さよなら!御神木様!」

老樹(私がみんなを支えて見守り育む大樹になること……あの装置の本当の目的はこれですか)

ロボット(確かにひとりぼっちじゃなくなりましたね、博士)

end

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