Dio「幻想郷」 (21)

それは…人々の求める最後の目的地

安らかな心を求める者にとって、そここそが最も安心できる場所なのだ




ある男は…その『天国』は覚悟を得ることで手に入れられると思っていた

自分の未来をすべて知っていることにより…未来に何が起きるかを理解し、覚悟することで…安らかな心を手に入れられると思っていた




ある男は……自分だけが決まった運命を変えられることこそ、『天国』だと思っていた

全ての者が運命通りに動く中、自分は…その運命を超越し、全ての者を支配できる…それこそが『天国』と……



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『天国』を得るには、世界を一巡させなければならない

映画を一度見終わった後、時間をおいてもう一度その映画を見るのと同じように

全ての時間が一巡し、もう一度自分の時代にたどり着いたとき、無意識の本能のうちに自分がどのような運命を辿るかを記憶しているのだ



時間の超加速

それが、『天国』を手に入れる方法

時間に干渉する能力を手に入れ…さらに、そこに『新月』の重力を加えることが必要だった

辿り着いた神父


プッチ「……こ…ここは……」

エンリコ=プッチが目を開けた時…そこには、見慣れない…というよりも、見たことのない風景が広がっていた

彼の住んでいたアメリカは、ビルの立ち並ぶ世界だったが……そこは、自然という物が残っている風景だった

プッチ「な、なんだ……?ここは……」

プッチ「…そうだ!わ、私は、あのエンポリオに負けたのだッ!!」

記憶の最後にあるのは…あの少年との戦いだった

『天国』を完成させる直前…DIOとの約束を成就する直前で、あの少年に敗北したのだ

プッチ(だが…だとすればここはどこだ?私はあの時、ウェザーの能力によって殺されたはずだ…)

プッチ(…こ、ここは、まるで…『天国』のようだ、死んだはずの私が辿り着くなど…)




プッチ「……」

彼が突っ立っていたのは…気づいた時には突っ立っていた…山道の真ん中だった


プッチ「……とにかく…わ、私はまだ生きているッ!!それならば私のすることはただ一つだ、もう一度時間を……はっ!?」



プッチがスタンドを発現させるが…それは、彼のもともとの能力、「ホワイトスネイク」だったのだッ!

彼が手に入れたはずの「メイドインヘブン」ではない!


プッチ「な…なぜだッ!?ま、まさか……わ、私はすでに死んでいるからなのかッ!?」

プッチ「…そ、それともあの時間の加速を終えてしまったからか……!」

プッチ(まずい…こ、このままでは時間を加速させられないッ!DIOの骨から手に入れた…「重力」を…いや、「時間」を操る能力のきっかけを失ってしまったのだッ!)

プッチ(……くそ…どうすればいいのだ……?)



魔翌理沙「おぉ?なんだお前、見かけない顔だぜ」


プッチ「…なに?」



突然だった、後ろから話しかけてきたのは……よく分からない恰好をしている女だった

年齢はプッチの半分ほどだろうか、どう見ても成人さえしていないと思われる

妙なのは、こんな山道に箒を持ってきていることだった

掃除をするような場所ではない、ではなぜこの少女は箒を持っているのか

プッチ「…君は……?」

魔翌理沙「霧雨魔翌理沙、アンタこんなところで何してるんだ?ここは結構危ない場所なんだけどな」

プッチ「……ここは…ど、どこなんだ?私の知っている世界じゃあないんだ」

魔翌理沙「!!!ま、まさか…お前も迷い込んだ人間か…?」

プッチ「…迷い込んだ、だと?違う、私は気づいたらここにいたんだ、なにもここに迷い込んだわけじゃ…」

魔翌理沙「お前、住んでいたのはどこの国だ?」

プッチ「…アメリカだ、ここはアメリカじゃないのか」

魔翌理沙「…」

訝しげな顔をした少女は……ぽつりと言った

魔翌理沙「ここは、アメリカではないし…お前の住んでいた世界でさえない」





プッチ「…どういう意味か分からないな」

プッチは…率直な意見を述べた

目の前の少女は、どう見ても人間だ

それが、「ここは自分の住んでいた世界とは違う」などと言っても現実味がない

プッチ「…一つ訊きたいんだが、君は生きた人間だと思うのだが…違うのかな」

魔翌理沙「いいや、私は正真正銘の生きた人間だぜ」

プッチ「それなら、ここは私の住んでいた世界と同じじゃないか、君が死んだことのある人間だっていうなら、ここは天国になるだろうが」

魔翌理沙「ところが、アンタは死んだことがきっかけでここに来たはずだ」

プッチ「……どういうことだ?教えてくれないかな」

魔翌理沙「ここは、幻想郷……アンタ達の住んでいた世界は、ここでは『外の世界』とも言われるんだ」

プッチ「外…?外だって?」

魔翌理沙「…こことその外は、結界によって隔離されている、外の世界で忘れ去られたり、死んだ者だけがここに来るんだ…尤も、死んだら絶対ここに来るのかっていうとそれは違うけどな」

プッチ「……つまり、ここは私にとっては死後の世界と言ってもいいのか?」

魔翌理沙「あぁそうだ、そして安心してくれ…二か月くらい前にアンタと同じ状況になったヤツが三人ここに来た、そのあと一人も明らかになったし…アンタだけが特別おかしなことになったってわけじゃあない」

プッチ「……」

魔翌理沙「?どうしたんだ?」

プッチ「その箒は…ここを掃除するために持ってきたのか?こんなところ掃除するなんて考えにくいんだが」

魔翌理沙「あぁ、これは私の道具だ…空を飛ぶための」

プッチ「空を飛ぶだって?君、魔法使いにでもなったつもりか?」

魔翌理沙「なったつもり、じゃなくて……私は魔法使いだぜ」

プッチ「…」

呆れた少女だ、とプッチはため息をついた

先ほど聞いた幻想郷とかいうのの話も、この少女の作り話かもしれない…というよりも、その可能性が一番高い

精神病でも患っている少女なのだろう


プッチ「……そうか、それで…どうやったらここから出られるか、知らないか?」

魔翌理沙「死んだ人間は戻ってもいいことないぜ、土の中に埋まってるだけだからな」

プッチ「……外に出て、どうしてもやりたいことがあるんだが」

魔翌理沙「…それは?」

プッチ「…友達を救う事さ、君には理解できないだろうが」

魔翌理沙「友達か……いいな、そういうの」

プッチ「…長話しすぎた、もうここに用はないし…まぁもともとなかったけどね」

魔翌理沙「泊まるところとかあるのか?なんならその外から迷ってきた別のヤツらのいる館にでも……」

プッチ「……あいにくと、知らない人の館に泊まれるほど無神経じゃあないんだ」

鼻で笑ってから、プッチはその場を去った…

考えていたのは、その少女の言葉だった

それは偽りのようにしか思えなかった……だがもしも、本当にそうだったとしたら







プッチ(…ここで……私に出来ることがあるかもしれない…)

魔理沙「ずいぶんと変わったヤツだったぜ……」

霧雨魔理沙は、紅魔館へと続く道を歩いていた

大図書館の本を盗み…もとい、借りに行くのだ

彼女の日常の中において、それは重要な日課の一つだった

面白い本を借りること、それは魔理沙にとって人生を彩る一つの方法だった

魔理沙「しかし……ジョジョといいシーザーといい、外から迷ってくるやつも増えてるな……」

魔理沙「外の世界で何かあったのか?魂がここにたどり着く確率はそんなに高くないはずなんだけどな」

魔理沙「まったく、外の世界ってのは不思議でしょうがないぜ……」

一時間後





妖夢「ですから幽々子様、私はあまり、幽々子様に大食いをしてほしいとは思っていないのです」

幽々子「あら、私もたくさん食べたいってわけじゃないのよ?気が付いたらたくさん食べてるだけで…」

妖夢「まったく…」



プッチ「……しかし、見れば見るほど不思議な場所だ……こんな風景は見たことはない」




幽々子「あら?面白い格好の男が向こうから来たわよ」

妖夢「…私達もずいぶんと奇抜な服装だと思いますが」

幽々子「そうじゃないわ、彼のあの服装、神父なんじゃないかしら」

妖夢「神父?」

妖夢は幽々子の言葉に、男の姿をもう一度観察してみた

確かに……ズボンのポケットから、十字架が覗いている

それに、服装にも十字架をあしらっている箇所が多い

妖夢「確かに……神父のようですね」

幽々子「少し話しかけてみない?面白い話が聞けそうよ」

妖夢「や、やめましょうよ……勧誘なんて私は御免ですよ」



プッチ「…先ほどから私を見ているようだが…どうかしたかい」



幽々子「ほら妖夢、向こうも話しかけてきたんだし」

妖夢「ゆ、幽々子様が見ているからですよ…」

プッチ「…ずいぶんと変わった服装をしているな、君達はここの住人か?」

幽々子「あら、変わった服装なのはあなたも一緒よ」

妖夢「幽々子様、大事なのはそこではないですよ…」

プッチ「…幽々子…?聞いたことのない名前だな、日本人かい」

幽々子「…日本人?あなた、何を言ってるの?」

プッチ「……一つ訊きたいのだが、君達もまさか、ここが幻想郷だ、とか言うんじゃあないだろうな」

妖夢「そうですけど…」

プッチ「…なんということだ…本当にここは幻想郷とかいう場所なのか」

妖夢「?あの、もしかして……外から迷い込んだのですか?」

プッチ「…よく分かるな、君も前例ってのを見たことがあるのかい」

幽々子「えぇ、というか……この幻想郷の住人なら、ついこの間のことを忘れは…」

妖夢「ゆ、幽々子様…あまりその話は」

幽々子「あら、いいじゃない…」

プッチ(……この女達も、ここに迷い込んだという外の人間を知っているのか…)

プッチ(…)

プッチ「…君たち、ここの近くで……重力を操れる者を知らないか」

幽々子「重力?どうしてそんな物を」

プッチ(…待て、ここはそもそも私のいた世界ではないようだ…スタンド使いもいないだろう…)

プッチ「いや、忘れてくれ……」

妖夢「重力を操る魔法ならあるんじゃないですか?」

幽々子「あぁ、それならありそうね」

プッチ「!!魔法…?」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年10月05日 (月) 23:32:38   ID: ZyD4qNqa

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