【悪魔のリドル】香子「黒組を終えて」 (11)

以前短編スレに少し書いたものです

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香子「ハァ・・・ハァ・・・」

香子「これで最後だ・・・」 パスン

シスター「ぐあぁっ」バタリ

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脱走直後に送られてきたホームからの追手を逃れた私は、とある街に潜伏していた

香子(ここまでなんとか逃れたのはいいが・・・)

香子(ホーム時代に貯めていたお金も底をついてしまった)トボトボ

香子(支給品を売って得た分も、そのうち尽きるだろう)

照り付ける陽が、心の奥の暗い感情を光の下へ引きずり出す

香子(やはり、私にあそこからの脱出なんて無理だったのか?いっそ、ここで始末されてしまう方が・・・)

少女「あのぉ、どうしたんですか?かなりやつれた顔していますけど・・・」

香子「!!」ビクッ

少女「やだなぁ、怖がらないで下さいよ。ここに来る旅の人にしては、暗い顔してるなぁって思っただけですから」

香子「あ・・・えっと、その・・・」

少女「旅の人・・・ですよね?」

思えば・・・脱走の後にまともな会話をしたのは、これがはじめてだった。
その会話で、真っ正面からされたこの質問に、私はついーーそう、「つい」という表現が最もふさわしいーー正直に答えてしまった

香子「逃げているんだ、私の犯した・・・罪から」


クローバーホーム日本支部・支部長室

支部長「クソ!神長香子はまだ始末できていないのか?」

シスター「はい。シスター達を差し向けましたが、力及ばずに皆命を落としました」

支部長「なぜこれほどまでに手こずっているのだ!確かにプランニングにおいては優秀だったが、実戦においては無能の極みであったろう!」

シスター「はい、その点はわたくし共も疑問に思います。一応、ホームに残れる程度の実力を有してはいましたが、あの人数のシスターを全て返り討ちにできるはずが・・・」

支部長「言い訳などどうでもいい!奴のせいでここが甘く見られている。昨夜も、また脱走者が出たのだぞ!」

シスター「申し訳ありません」

支部長「・・・まあ、一人二人の脱走者であれば、いくらでも始末はつく。それよりも、このまま神長を取り逃がし続けることで、ホームの拘束力が弱まる事が最もマズいのだ。大至急、神長香子を始末しろ」

シスター「了解致しました」

prrrr...prrrr...

支部長「出ていってよし」

シスター「はい、失礼致しました」バタン

支部長(今本当にマズいのは、私の首と立場だろうがな)ガチャリ

支部長「はい、こちら日本支部支部長室、支部長の・・・」

???「フフ、いつも言っているでしょう?そこまで丁寧に言わなくてもよろしいと」

支部長「これは、私個人の心の整理と、事務としての意味を兼ねているのです・・・室長。」


室長「あら、本日はそんな話をしようとした訳ではありませんでした。日本支部のイレギュラー、神長香子についてでしたね」

支部長(クローバー・プロジェクト執行室の室長、つまりはホーム全体の統括者にして監視者・・・やはり、この人の放つ言葉は異質だ。熱を感じさせないが、いつでもその感情を露にしそうで・・・例えるならば、金属)

支部長「その件につきましては、全くもって私の失態でございます。大した案件ではないと見ていた黒組で、奴がこのような事を考えるようになるとは」

室長「想定していなかった、というのね」

室長「・・・今の彼女は、言うなればガン細胞。症状が出たときには皆言うのよ、 『 気づかなかった』って」

室長「日本支部のcancerは、早めに取り除いておくべきよ。そうじゃないと、それは器官全体に影響する。転移しそうならば、プロジェクトからはよろこんで切除させてもらう」

支部長「・・・はい、一刻も早く奴を排除します」

室長「焦って余計な部分まで切り取るのは喜ばしくないけれど、宿主を滅ぼしたらおしまいなの。期待してるわ、それではまた」ガチャ

支部長「・・・」ツーツー

支部長「終わらせるものか、私の復讐を・・・」


少女の家

少女「ふぅん、そんなことがあったの。なんかイマイチ信じられないけど、まあいっか」

ホームからの逃亡で心身共に衰弱していた私に、嘘をつき通すことができるはずもなかった。
ごまかそうと試みたが、結局ここまでの顛末を (暗殺に関わる所は除いて)話してしまった。

香子「これで満足か?私はあまり一つのところに長く留まる訳にもいかないんだ。分かったならもう・・・」

少女「待って!ねえ、もう少しの間ここにいない?あなただって、ずっと逃け続けると疲れるでしょう?あたしの家にしばらく居ていいからさ」

去ろうとする私に、少女はこう提案する。何故なのだろう。

香子「ホームは手荒な方法も使ってくる・・・下手に助けてもらうと、巻き込んでしまうかもしれない」

少女「そのホームっていう所の人たちだって、ずっとあなたを追ってくるんじゃないでしょ?」

言われてはじめて気付く。そういえば、3日前の深夜から今まで追っ手が来ていない。もしかして、撒く事ができたのだろうか?

香子「確かにそうではない・・・が」

少女「ね?それなら、ここにいなよ。それがいいって、私が保証する」

私だって、安息が得られるのであればそれを無下に断る由も無い。
しかし、気になる事があった。

香子「なぜ私を匿おうとする?私はお前の知り合いでもなければ、利益になるようなことができる訳でもないのに」

少女「・・・半分は、教えだから」

香子「教え?」

少女「うん、神様の教え。『汝の隣人を愛せよ』って言われてきたの。善い人っていうのは、敵ですらも愛せる人なんだって。だから、知らない・・・つまり敵でもないあなたに親切にするのは、普通の事でしょ?」

香子「分かった。それで、もう半分は?」

少女「もう半分は・・・」

少女「あなたの事が気になって・・・気に入ったから、かな?」

そう言ってはにかんだ彼女に、私は何も言う気になれなかった。


支部長(神長香子。奴の行動に怪しい部分が現れ始めたのは、確かこの日だったな)カチカチッ

支部長(慕う先輩の死亡事故。原因は、神長が設置していた爆弾の誤ったタイミングにおける爆発。つまり、奴自身のミスという訳だ)

支部長(彼女の死を知らされた日からしばらく、奴の仕事効率は大きく低下していた。仕方の無い事だと見逃してはいたが・・・)

支部長(いずれにせよ、この事故から黒組までの間に他の目立ったものはない。この件については詳しく調べておくとするか)

コンコン

シスター「失礼します」

支部長「どうした」

シスター「神長香子を取り逃がし、行方を見失ったとの報告が入りました」

支部長「・・・分かった。可能な限り迅速に見つけ出せ」

シスター「!」

シスター「・・・了解致しました」バタン

支部長(驚きもするだろうな。普段の私であれば、確実に怒鳴り散らしていただろう)

支部長(今は、この日本支部にとって大きな問題を抱えているにも関わらず、非常に落ち着いている)

支部長(考える事が多過ぎるのだろうか。少し気分を変えた方が良いな)

書き溜めは以上です
まずは大きく遅れてしまい、量も少なかったことを謝罪します。本当にすみませんでした。リアルが予想を遥かに上回る多忙さでして・・・
8月には余裕ができるのでそこから一気に行く予定です
次に投下ペースですが、基本週一で行うことになると思います。ゲリラ投下などはあまりできません
最後に、1日遅れですが香子ちゃん誕生日おめでとう

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