亜里沙「――ごちそうさまでした」ｽｯ

絵里「……ごちそうさまでした」ﾑｽｯ

亜里沙「なんでお姉ちゃんずっと機嫌が悪いの？」ｷｮﾄﾝ

絵里「オオカミ少年……いえ、オオカミ少女に騙されたからよ」ﾑｯｽｰ

亜里沙「ふぅんそうなんだ」

絵里「ふぅんって……亜里沙、この際だからハッキリ言うけど――」

亜里沙「ねえ、お姉ちゃん」

絵里「な、何かしら？」

亜里沙「それならオオカミ少年の最後の部分って知ってる？」

絵里「勿論」
絵里「最後は本物のオオカミが来て――――あっ！」ﾋﾟｺｰﾝ

亜里沙「気付いたみたいだね」ｸｽｯ
亜里沙「そう、あの物語の最後には『本物』が来るの」
亜里沙「だから――」

絵里「……っ」ｺﾞｸﾘｯ

亜里沙「本物の希さんもいつか全裸で来てくれるんじゃないかな」ﾆｺｯ

絵里「！！」

亜里沙「だけど、この起こし方はお姉ちゃんあまり好きじゃないみたいだし止めたほうがいいね」

絵里「や、止めなくていいわ！むしろ毎日それにして！」ｱｾｱｾ

亜里沙「え？ でも……」

絵里「ごめんね亜里沙」
絵里「……どうやら私は物事の真理を見落としていたようだわ」

亜里沙「それじゃあ――」ﾊﾟｧｧ

絵里「これからもオオカミ少女でいてね」ﾆｺｯ

亜里沙「お姉ちゃん！」ﾀﾞｷｯ

絵里「ふふっ、亜里沙のおかげで毎朝が楽しみになったわ」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ

亜里沙（…………いつからだろう、お姉ちゃんがこんなに残念になっちゃったのは）

絵里「――っと、もうこんな時間」ﾁﾗｯ

亜里沙「あ、ホントだ」

絵里「それじゃあ行きましょうか」

亜里沙「うん」

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

絵里「あら、誰かしら？」ｽﾀｽﾀ

ｶﾞﾁｬ

希「おはよ」

絵里「希！」ﾊﾟｧｧ

希「一緒に登校しようかと思ったんやけど……迷惑だった？」

絵里「そんなわけないじゃない」

亜里沙「おはようございます、希さん」ﾍﾟｺｯ

希「お、亜里沙ちゃんもおはようさん」

絵里（希がわざわざ私の家まで来てくれた――）
絵里（これなら全裸で朝這いを仕掛けてくる日もそう遠くないわね）ﾌﾑﾌﾑ

希（なんか真剣に考え込んでる）

絵里「……希」

希「なぁに？」

絵里「私はいつでも準備万端だからね」

希「そう？ なら行こっか」

亜里沙「いってきまーす」

―通学路―

亜里沙「それじゃあ亜里沙はこっちの道だから」

絵里「気をつけてね」

亜里沙「希さん、お姉ちゃんの面倒よろしくお願いします」ﾍﾟｺﾘ

希「うん、任せとき」ﾆｺｯ

ﾃｸﾃｸ ﾃｸﾃｸ

絵里「亜里沙ってば、まるで私がだらしないみたいな言い方して……」

希「亜里沙ちゃんはしっかりしてるからなぁ」ﾆﾔﾆﾔ

絵里「もう、希まで」ﾑｽｯ

希「ふふっ、冗談やって」
希「……亜里沙ちゃんが立派なのは確かだけどね」

絵里「私の妹ですもの」ﾌﾌﾝ

希「はぁ～、あんなに可愛い妹やったらウチも欲しいなぁ」

絵里「ご両親にハッスルしてもらうしかないわね」

希「わざわざその言葉を発する必要は無いんよ？」

絵里「確か希は一人っ子だったわね」

希「うん」

絵里「やっぱり姉妹や兄弟に憧れとかあるのかしら？」

希「あるよ～」
希「えりちやにこっち、穂乃果ちゃんを見てると羨ましいなって」

絵里（……私が希の妹になってあげるっていうのは流石にかしこくない提案よね）

希「でも、現実的に考えて姉妹は難しいしペットとかが妥当かな」

絵里「ペットが欲しいの？」

希「例えばの話だよ」
希「それならお家に一人で帰ってきても寂しくないやん？」

絵里「希、寂しいの？」

希「ふふっ、どうやろうね」

絵里「何よそれ」

ﾃｸﾃｸ ﾃｸﾃｸ

絵里（……ペット、か）