女「知らない女の子が部屋でまったりお茶飲んでる……」 (292)

初SS、文才なし、マイペースで更新でも宜しければどうぞです。

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女「えぇと……」

女「……どちら様でしょう?」

座敷童「座敷童なのじゃ」

女「……はい!?」

座敷童「なんじゃ。お前さんは何もわっしの事聞いておらんのかぁ?」

女「え?いつ?だれから?」

座敷童「いつかは知らんが、祖母殿からじゃ」ズズズ

女「おばあちゃんからですか?」

座敷童「そうじゃ。『孫娘に話しておく』とか言ってたおったがぁ」

女「全然聞いてないけど……」

座敷童「そんな訳ないはずじゃぞぅ」

女「そう言われても……」

座敷童「なんか心当たりだけでもないかのぅ」

女「う?ん…………アッ!」

座敷童「もしや思い出したかぁ!?」

女「うん。心当たりだけだけど」

座敷童「そうかぁ。で、どんな感じだったかのぅ」

女「あれはちょっと前に遡ります」

座敷童「ほう」

……

ちょっと前。女自宅。

<ピンポーン

女「はーい。どちら様ですか?」

祖母「おばあちゃんだよ。開けておくれ、女ちゃん」

女「いらっしゃい、おばあちゃん」ガチャ

祖母「おじゃまするわね」

女「お茶とお煎餅をどうぞ、おばあさま」コトッ

祖母「かたじけない、女さま」

女「まあ、おふざけは終わりにして……。電話で話したい事あるって言ってたけど、何?」ペリッバリボリ

祖母「これは大事な事だから、女ちゃんに話しておこうと思ってねぇ」

女「はぁ……」

祖母「なんだかんだで私も老い先短いしねぇ」ズズズ

女「そんな寂しい事言わないでよ。おばあちゃんは健康なんだし」

祖母「勿論、ひ孫の顔見るまでは生きるつもりよ。女ちゃんに良い人はまだいないのかしら?」

女「ごめんね、おばあちゃん。良い人がいたら、今おばあちゃんとお煎餅食べながら話してないよ……」バリボリ

祖母「それもそうね」

女「そんな反応だと、それはそれで悲しい……」

祖母「ごめんなさいね。でも、女ちゃん可愛いし、きっと良い人が現れるわよ」

女「だと、いいなぁ……」ズズズ

祖母「あら、いけない。すっかり脱線しちゃったわね。本題に入るわね」

女「うん。話したい事って?」

祖母「女ちゃんに私の家にぃ……ウッ!」バタッ

女「おばあちゃん!大丈夫!?」ガタッダキッ

祖母「……な、なっ…………!」ブルブル

祖母「…………なんちゃって。驚いた?」ムクリッ

女「もうおばあちゃん!洒落になんないから!」プンプン

祖母「ごめんなさいね。ひ孫見るまでは死なないわよ」

女「あまりふざけてると本当に駄目だよ」

祖母「そうね。善処するわ」ペリッ

<ピンポーン サーセーンオンナサンニオニモツーッス

女「はーい。ちょっと待っててね、おばあちゃん」トトトッ

祖母「お煎餅食べてるから行っておいで」バリボリゴク

<ハンコオナシャース ハイドウゾ アザース

祖母「ウッ!!……カ!……ァ……ォ…………」バタン

……

女「……私が荷物を取って帰ってきたら、また悪ふざけしていると思って放置したら、喉にお煎餅詰まっていたのに救助が遅れに遅れて、帰らぬ人になったの」

座敷童「」

女「たぶん、その時言うつもりだったのかも……」

座敷童「……あれだけ悪戯は程々にしろと言ってたんじゃがなぁ」ハァ

女「なんと言いますか……その……ごめんなさい」ペコリ

座敷童「お前さんが悪いとは言い切れんし、祖母殿も悪ふざけが過ぎたんじゃろ。頭を上げるんじゃ」

女「うん。それにしても、おばあちゃんの家に座敷童がいたとは驚きだわ」

座敷童「うむ、祖母殿が若い時から世話になっとるぞぅ」

女「若い時っていうと、いつくらいから?」

座敷童「年はお前さんと余り変わらない時期だったかのぅ……。年代的には……確か街中に昴三六十とか、得ぬ頃とかいうヤツがよく走ってた頃じゃ」

女「なぜ例えがそんな感じかは分からないけど、少なくとも戦後だとは分かった」

座敷童「花の冠と晴れの初代誕生、バブルの頂上現象、闇歴史の販売店5つ時代とか懐かしいのぅ……。今や電動機と原動機混合車が、6合くらいの燃料で10里も走るんじゃから良い時代になったもんじゃ」

女「いい加減人によって分かりにくい過去の思い出話やめようか」

座敷童「いやぁ、すまんのぅ。昔を語るとついのぅ」

女「まぁ、いいんだけど。どうせなら、おばあちゃんの若い時のお話聞きたい」

座敷童「良いぞぅ。見た目はお前さんにそっくりだったのぅ」

女「そっかぁ。ちなみにモテてた?」

座敷童「いんや、大してはモテんかったなぁ」

女「即答デスネ……モテないのは隔世遺伝なのか……」

座敷童「あんな性格じゃが、奥手で一途じゃからなぁ。その代わりというか、祖父殿とラブラブだったのぅ」

女「おじいちゃんとおばあちゃん、そんなに仲良かったんだねぇ」

座敷童「そりゃもう。新婚時代の夜はわっしが邪魔者じゃないか心配になる程に激しかったモノじゃ」

女「そういう身内の濃ゆい話はやめて……」

座敷童「じゃが、祖父殿と祖母殿の息子殿が……いや、お前さんの父上殿が産まれた時は、わっしもよく覚えてるし、感動したのぅ」

女「へぇ。ちなみに、パパって小さい頃はどんなだった?」

座敷童「息子殿の幼少期のぅ……」

座敷童「わんぱく坊やだったぞぅ」

女「わんぱくってなると、おじいちゃんとおばあちゃん大変そうだった?」

座敷童「そうじゃな、障子に穴開けるわ、何でも口に入れるわ……わっしも赤ん坊の時とかに髪引っ張られたり、泣き喚かれたりと散々じゃった……」

女「パパも人の子なんだなぁ」

座敷童「当たり前じゃ。もう少し大きくなってからは、ガキ大将と喧嘩して負けたからと泣いて帰ってきた事もあったしのぅ」

<ガチャ タダイマー

女「あっ、ママだ。お帰り?」

座敷童「……んな!もうこんなに時間が経っておったのか!」

女「そうだね。お話してると時間経つの早いよね」

座敷童「今夜の晩御飯はなにかのぅ?楽しみじゃ」

女「え?」

座敷童「え?」

女「座敷童っていうか、妖怪とかって御飯食べられるの?」

座敷童「勿論じゃ。ただ、食べないからと消滅したりはしないのぅ。嗜みというか、楽しみみたいなモンじゃ」

女「へぇ……って、それもなんだけど、完全に居座る気満々なの?」

座敷童「一応家にいると幸せ運ぶ存在に向かってそんな事言うの、座敷童を約300年やってきてお前さんが初めてじゃ」

女「だって、ねぇ、そんな事案私一人じゃ決められないし……」

座敷童「では、家主である息子殿に聞くかのぅ」

女「パパ夜まで帰ってこないよ」

座敷童「では、息子殿の奥さんに晩御飯とか諸々相談してくるかのぅ」

女「えっ?マジですか?」

座敷童「マジじゃ。では、行ってくるのぅ」スクッタタタッガチャバタン

女「大丈夫かな……」

ギシギシギシ

座敷童「久しぶりじゃな、息子殿と仲良くやっておるかのぅ?」

母「あら、座敷童ちゃん!いきなりどうしたの?」

座敷童「祖母殿がわっしを女殿に任せるとなっとるはずが、色々あって女殿に話しても駄目だから、息子殿に話さないといけない事になってのぅ」

母「そうだったのねぇ。でも、うちのパパ今日残業で遅くなるかもだから、電話で聞いてみる?」

座敷童「おお、良いかのぅ?」

母「私のケータイ使う?大丈夫?」

座敷童「わっし用の愛フォンあるから、旦那殿の番号教えてほしいのじゃ」サッサッ

母「良いわよ。パパの番号は……△△△-○○○○-◎◎◎◎よ」

座敷童「かたじけないのぅ」ピポパ トゥルルル……

ギシギシギシ

女「あっ、戻ってきた」

ガチャ

座敷童「わっしの愛フォンで父上殿に電話したら色々OKと言ってたぞぅ!」

女「なぜ愛フォン持ってるし……。って、パパOKなんだ」

座敷童「まぁ、オムツを替えたりで世話した者を邪険には扱わまい」

女「まぁ、小さな時にパパは座敷童と一緒だったから普通なのかな」

座敷童「しかし、お前さんの母上殿はいつまでも変わらず若々しくのぅ」

女「そういえば、ママとも面識あるんだね。びっくりしたんだけど、なんで?」

座敷童「お前さんの父上殿が祖父殿と祖母殿に結婚報告しにきた時に見たのが最初かのぅ」

座敷童「母上殿は見た目良し、家事良し、勉学良しで父上殿には勿体無いとか、座敷童なのに考えてしまったくらいじゃ」

女「確かにママ、何事も器用って感じだね」

座敷童「なのに、子供は奥手でフッツーな女子が産まれたのぅ……」

女「そういう事言わないで、泣いちゃうよ、私!?」

座敷童「いやぁ、一時はお前さんが知らないとか言うから心配したが、なんとかなって安心じゃ」ゴロゴロ

女「さっきまでの来客感が一気に無くなったね……」

座敷童「もうわっしとお前さんは、同じ釜の飯を食う仲になったんじゃし、別に良かろう」

女「まぁ、パパとママが良いなら、別に私は構わないけど」

座敷童「そうかそうかぁ。アッ、女、本棚のあの本取ってくれぬかぁ。続きを読みたいのじゃ」

女「勝手に漫画読んでたうえに、なんか小間使いされてる……。はい、これね?」

座敷童「おお、すまぬのぅ。じゃが、女。一つ良いかのぅ?」

女「ん?」

座敷童「本棚奥にあった美男子同士がまぐわっておるヤツ……確かビーエムとか言うたかのぅ?否定する気もないじゃがぁ、女はああいうのが趣味なのかのぅ?」

女「ドイツのバイエルンにあるエンジン屋だよ、それじゃあ!!てか、新しい身内にいきなりBL本見られた!!うわぁ恥ずかしい…………」ドヨン

座敷童「まあ、別に良かろう。これからもわっしがいる訳じゃし、隠し事は難しいじゃろ」

女「座敷童に隠す気とかはないけどさぁ、気持ち的にキツいの……。男の人が家族にエロ本見られた時って、こんな気持ちなのかもね……」

座敷童「女の父上殿にも昔、本棚奥にあった本の事を話したらのぅ……」

女「たまに出す身内のエロネタはやめよう?!てか、それ系統の本の場所、パパと私一緒なわけ!?」

座敷童「血は争えんのぅ……」ジィー

女「そんな目で見ないで!」

座敷童「親子というのは大なり小なりこんなもんじゃろ?……たぶん」

女「私は他人の家の本棚事情なんて知らないからね!?」

座敷童「そんなに荒ぶるでない。本棚事情はここまでじゃ。母上殿の晩御飯食べに行くのじゃ」スタッ

女「……うん。そろそろ晩御飯だし、そうしょっか」スタッ

リアル晩御飯食べたりするんで、今日は一先ずここまで。
あと、不慣れなせいか、ID何度も変わってスマソ……

百合かいなか

ガチャ

座敷童「うむっ、満腹じゃあ!」バフッゴロゴロ

女「いきなり私のベッドに飛び込まないでよ。食べてすぐ横になると牛になるわよ」

座敷童「何を言うかと思いきやぁ……。わっしは300年程生きてきてるが、牛になどなっとらんのじゃ。それに、最近だと食べてすぐ横になるのは大丈夫だか、良い事とかネットで見た気がするぞぅ」

女「……さいですか」

コンコン

座敷童「おー、入って良いぞぅ」

女「私がいるのにあんたが勝手に言わないでよ……。開けていいよ」

弟「姉さん、母さんがお風呂入っていいってさ」

女「はいはーい。んじゃ、先に行ってくるわ」

座敷童「なら、わっしも一緒に行くかのぅ」

女「ん?よく聞こえたけど、なんと仰いましたかな?」

座敷童「わっしも入る。ところで弟殿、わっしの分のタオルとかあるかのぅ?」

弟「お風呂場にタオル類一通りあるから、座敷童さんの分も大丈夫だよ」

座敷童「おお、そうかの。あと、さん付けは不要じゃ。適当に呼べばよい。」

女「てか、何で馴染んでるんだ、こやつ……」

弟「んじゃ、座敷童ちゃんでもいい?呼び捨ては抵抗あるし、座敷童さんみたいに可愛い妹欲しかったんだ!」

座敷童「構わんぞぅ。……弟お兄ちゃん!」テヘッ

弟「……?!なんか困った事あったらオレに何でも言ってくれよ、妹よ!」ギュッ

座敷童「うん、ありがとう!お兄ちゃん!」ギュッ

女「」

女「……はっ!って、あんたさ、いきなり私の部屋に知らない女の子いて、おかしいとか思わないわけ?!」

弟「えっ?母さんから座敷童ちゃんの事は聞いたし、縁起良いから良いんじゃないかな?」

女「だったら、あんた引き取って部屋に連れて行きなよ、その年増妹キャラ」

弟「いや、そういうのは女性同士じゃないと駄目じゃないかな。まあ、言う事言ったし、オレ行くよ」バタン

座敷童「バイバイ、お兄ちゃーん。…………のぅ、女よ」

女「何よ、いきなりキャラ戻して……」

座敷童「男ってチョロいのぅ」フッ

女「……あれでも私の弟だし、そんな風に言わないでよ」

座敷童「さて。じゃあ、一緒に風呂に行くのじゃ」

女「そうだよ!忘れてたけど、何で一緒なのよ。300年も生きてれば一人でお風呂入れるでしょ?」

座敷童「勿論じゃ。だがのぅ、わっしってサラサラロングな黒髪じゃろ?」

女「まぁ、いかにも和風な服装と相性バッチリなくらいの黒髪ロングね。で?」

座敷童「シャンプーとリンスしてほしいんじゃ」

女「えー……」

座敷童「祖母殿がいつも『座敷童ちゃんの髪が痛まないように』と洗髪してくれたんじゃよ」

女「なるほどね。……で、本当のところは?」

座敷童「これだけ長くなると、一人じゃ上手く洗えなくての。てか、黒髪ロング洗うのメンドイ」

女「最後正直すぎでしょ……。はぁ、まぁいいわ。お風呂行きましょ」

座敷童「わぁい!女お姉ちゃん大好き!」ニパァ

女「さっきの反応見たせいで、素直に喜べないからね?!」

お昼休み終わる前にゆっくりしたいので一旦投下終わり。
時間あればまた夜に投下したい。

お風呂場

座敷童「はぁ……極楽じゃあ…………」カポン

女「ほら、髪洗ってあげるからお風呂から上がって」

座敷童「うむ、丁寧に頼むぞぅ。わっしにとって大切なアイデンテテーとやらの一つじゃからな」ザバーン

女「その大切なアイデンティティーを洗うの面倒って……」

座敷童「ほらっ、すべこべ言わずに手を動かすのじゃ」

お風呂場

座敷童「はぁ……極楽じゃあ…………」カポン

女「ほら、髪洗ってあげるからお風呂から上がって」

座敷童「うむ、丁寧に頼むぞぅ。わっしにとって大切なアイデンテテーとやらの一つじゃからな」ザバーン

女「その大切なアイデンティティーを洗うの面倒って……」

座敷童「ほらっ、すべこべ言わずに手を動かすのじゃ」

ワシャワシャゴシゴシ

座敷童「はぁ……気持ち良いのぅ。女は洗うのが上手いぞぅ」

女「まぁ、弟が小さかった頃に髪よく洗ってあげてたからかな」

座敷童「そうだったかぁ。それとのぅ、祖母殿が洗ってくれてる時と、力加減とか洗い方が女はそっくりじゃぞ」

女「ふーん、離れて過ごしてたとはいえ、家族だから似てるモンなのかなぁ?」

座敷童「じゃが、祖母殿にはまだまだ及ばないかもしれんがな」

女「そうですか。じゃ、シャワーで流すわよ」ジャー

座敷童「うむ」シャワワワワワ

女「…………はい、終わり。じゃあ、次リンスね」キュッキュ

座敷童「わかったのじゃ」

ザバーン

座敷童「はぁー……女の洗髪、気持ち良かったのじゃぁ…………」

女「おばあちゃんには及ばないだろうけど、喜んでもらえたなら何より」

座敷童「これからも宜しく頼むのじゃぁ…………」

女「まぁ、たまにならね……」フゥ

座敷童「……のぅ、女」

女「んー?なぁに?」

座敷童「わっしは座敷童じゃろ。お前さんは仮に願いを叶えてやると言われたら、何を願う?」

女「何かと思いきや……。じゃあさ、願いってどんな事でも叶うの?」

座敷童「叶うとも言えるし……叶わないとも言えるのぅ……」

女「そこんとこはあやふやなのねぇ」

座敷童「わっしら座敷童が出来る事は、きっかけ作りって所だからのぅ。よく座敷童がいる所は繁栄し、いなくなると衰退するみたいな話があるが、あれは結果論みたいなものじゃ」

女「きっかけねぇ……。例えるなら、お金持ちになりたいと言われたら、埋蔵金がある場所は教えるけど、その埋蔵金の使い方はあなたたちが教えた人次第で、その先はわからない……みたいな?」

座敷童「まぁ、ざっくり言えばそんなもんじゃな。埋蔵金を現金に替えて豪遊するも、貧しい人たちに恵むも、わっしらたちには決定権が無くて、見つけた人自身のモノじゃからのぅ」

女「そっかぁ……。願いねぇ……」

座敷童「女はどうかの?何かあるかのぅ?」

女「うーん……。でも、私は今の楽しい生活が続いてくれれば、それでいいって願っちゃうかもなぁ」

座敷童「なんかフッツーでツマランのぅ……。彼氏欲しいとか駄目元で願っても良かろうにぃ」

女「そう言われてもなぁ……。今は学校の友達とか、家族とワイワイ楽しく過ごせられたら十分だよ」

座敷童「なるほどのぅ……」

座敷童「……これが、さとり世代というヤツなのじゃな。金や地位、性欲に食欲、様々な欲が無い塊なんじゃなぁ」

女「さとり世代言うな。それに性欲とか言わないの……」

座敷童「まぁ、別にそれで良いなら良い。わっしの気まぐれな質問じゃしの」

女「……でもね、さっき言った家族って括りには、座敷童も一応入れてるんだけどな」

座敷童「わっしは人間じゃなくて、妖とかの類じゃぞ」

女「それは関係無しで良いんじゃない?おばあちゃんとずっと一緒にいたって意味じゃ、座敷童は私にとっても親族とか、家族みたいなもんでしょ。最初いきなり部屋にいた知らない女の子が、親族だったり、家族になるとは思わなかったけどね」ニコッ

座敷童「……やっぱりお前さんは祖母殿に似ておるのぅ」ボソッ

女「ん?なんか言った?」

座敷童「いや、何でもないぞぅ」

座敷童「さて、のぼせるといかんからのぅ、わっしは上がるのじゃ」ザバァ

女「私は長風呂したいから、もう少し入ってるね。体とか髪拭くの大丈夫?手伝ってあげようか?」

座敷童「拭く位はわっしとて大丈夫じゃし、馬鹿にするでない。ではのぅ」ガチャバタン

女「はーい……」

女「……………………よく分からないけど、変なの」ブクブクブクブクブク……

女「ふぁ……気持ち良かったぁ……。弟、お風呂空いたよー」トテトテ

弟「うん、わかったー」

女「そういえば、座敷童は?先に上がったんだけど」

弟「座敷童ちゃんは着替えたら、すぐ姉ちゃんの部屋行ったっぽいけど?」

女「そっか、わかった。」

ギシギシギシガチャ

女「座敷童。冷たいお茶持ってきたけど飲む?」

座敷童「……Zzz」スースー

女「ありゃ、寝てたか。おばあちゃんの家から来たってなると、やっぱり人間じゃなくても疲れるのかな」

座敷童「……祖母どにょ…………」ムニャムニャ

女「夢でおばあちゃんに会ってるのかな……?」

座敷童「……ふふ……ふ……Zzz」スースーニヤッ

女「……何でおばあちゃんにそんな不敵な笑み浮かべるのよ」

座敷童「……Zzz」スースー

女「……まぁ、宿題やったら私も寝よ」ギシッ ペラッ カキカキ……

今日は外で仕事あったせいか眠い&切りが良いのでここまでです。
明日は不定期になるかもですが、また投下したいなぁと。

深夜

<ブォーンブルルン ガチャバンッ ピッピッ

座敷童「…………んん……祖父ぅ……帰ってきかのぅ……?」ムク ポワァ

座敷童「……ふぁあ……って、ここは女たちの家じゃし、祖父殿はおらんかったのぅ……」クルッ

女「……Zzz」スースー

座敷童「……久々にあいつと話してくるかのぅ」

コソコソコソキィーパタッ

座敷童「夜遅くまでお仕事お疲れ様じゃ」

父「おう、久々だな。悪いな、起こしたか?」

座敷童「なぁに、ちょっと祖父殿に似たお前さんの足音が、外から聞こえたからのぅ。これから世話になる家主には挨拶せねばなるまいにぃ」

父「お前らしくないな。別に小さい頃からの仲だし、母ちゃんもお前の事知ってるんだからさ」

座敷童「とはいえ、300歳程のばばあがいきなり家にくるんだから、母殿には悪い気がちょっとはするモンじゃ」

父「娘と息子も別にすぐ大丈夫だったろ?」

座敷童「お前さんの息子、妹キャラ使ったら、一発で落としたのじゃ」

父「はは、確かにお前は黒髪で端麗な美女だし、弟か妹が欲しいとか前から言ってたしな」

座敷童「道理でのぅ……。まぁ、わっしからすれば、弟殿こそ下の兄弟みたいなモンじゃがのぅ」

父「とりあえず、晩酌にでも付き合ってくれよ」バタンバタン

座敷童「仕方ないのぅ。付き合ってやるのじゃ」

父「ほら、ビール」カタン

座敷童「まぁ、頂くかのぅ」カシュ

父「じゃ、乾杯」コツン

ゴクゴク

座敷童「うーん……。いつになってもビールは苦くて後味が悪いのぅ」ケプ

父「そういうトコはお子様のままだな」プハァ

座敷童「日本酒ならまあまあイケるんじゃがのぅ」

父「昔はビール飲む人は少なかっただろうし、仕方ないのかな」

座敷童「ビールが美味いと思えるようになるのは、いつなのやらぁ……。いや、わっしはそもそも、座敷童としては中途半端な故、いつまで存在出来るのかのぅ……」ゴクゴク

父「そういえば、娘にはもう話したのか、あの事?」ゴクゴク

座敷童「まだじゃ……。試しにわっしが願いを叶えるならどうすると、質問してみたり位じゃな」

父「そうか……。でもな、万が一を考えたら、早く言った方が良いぞ……」






父「お前が座敷童としての力が無い事」




座敷童「だからこそ、さっきの質問じゃよ。お前さんの娘は、わっしをどういう存在として見ておるか、とのぅ……」ゴクゴク

父「娘なら大丈夫だと思うが……。答えは?」

座敷童「願いの件は祖母殿に似たモンじゃよ。わっしの事は受け入れてくれとる…………と、思う」フー

父「なんだよ、そんな不安がって。なんか変だぞ、お前……」ゴクゴク

座敷童「あのなぁ、父よ……。お前さんは、先の事を考えると、色々と不安になる事はあろう?」ゴクゴク

父「先、ねぇ……。今の世の中、不安じゃないヤツの方が少ないさ。自分自身もまた然りだ」

座敷童「……父よ。妖怪とか、妖の類は人間と違い、先の不安なぞ普通はせん。長い期間存在はするが、いきなり現れて、いきなり消えるような存在なんじゃ。昔は陰陽師やら、霊媒師やらが力を持ち、除霊だのしていた時は、それらの存在を目の前にし、恐怖したくらいらしいんじゃよ……」

父「つまり、お前は……」

座敷童「お前さんが思った通りじゃろうのぅ……」

父「もしや、オレの娘が産まれてから、暫く実家にいなかったのは、それとも関係あるのか?」

座敷童「そうじゃ。わっしはのぅ、祖父殿と祖母殿に存在を認めてもらえたのじゃ。そして、お前さんや母殿までもが、無力なわっしを受け入れてくれたのぅ」

父「母ちゃんは、お前との関係は日が浅いが、一人っ子だったからか、時に姉であり、時に妹みたいな存在だって言ってたぞ」ゴクゴク

座敷童「そうか……。お前の奥さんは、お前に勿体無い位、本当に出来た優しい人じゃのぅ……」ゴクゴク

座敷童「ちょいと脱線したのぅ。それでの、お前さんたちが結婚し、子を授かった時、心底めでたいと思った」ゴクゴク

座敷童「そしてのぅ、お前さんたちが産まれた娘、女を連れてきて、初めてわっしが見た時じゃ」ゴクゴク

座敷童「わっしは……、わっしはの、父……」

ゴクゴク

コトッ



座敷童「時の流れや、どんどん変わっていくお前さんたち家族を、何処かで怖いと思うてしまったんじゃ……」

父「そうだったか……」

座敷童「祖父殿や、祖母殿は先に……ぃってしまったがのぅ……。ぉ前さんゃ……母殿と、娘の女……、前は……ぉらんかった……ぉ前さんの息子も今は……ぃるが……のぅ……」

ポタッ……

座敷童「……ぉ前さんたちが、万が一……ぃっかわっしを拒絶したり……、……ぃつか……ぃなくなってしま……ぅ事を考えたらのぅ、わっしは、……ぉかしくしま……ぅではな……ぃかと……、存在を……認めてくれるぅ……者がいなくなったらぁ……消ぇ…………ぇてしま……ぅのではな……ぃかと不安でぇ……」



ポタッ……ポタッポタッ……







座敷童「父……!わっし、消えたりしとうない……!皆とずっと……ずーっと一緒におりたい……皆と一緒にいたいのじゃ……!」ポロポロ




午前はここら辺でストップします。
午後は用事あるんで、夜また少しだけでも投下したいなぁと。




ポフッ

父「……人間はな、怖いんだ。大事なひと、大事な時間、大事なモノを失う事、いつかくる死は、誰だって怖いさ」ナデナデ

座敷童「わっしは妖じゃ……、妖なのじゃ……、人間じゃないのじゃ!」

父「いいじゃないか。妖だって、人以外の存在が、大切なモノを失う時や、自分がいなくなってしまう瞬間を怖がったっていいじゃんか」ナデナデ

座敷童「そんな妖……、普通じゃないんじゃ……、変なんじゃぞぅ……」


父「あのな、座敷童。お前たちには、人間一人ずつ同じような、変わらないように見えるかどうかは知らないし、分からない。だけどな、一人一人全く、絶対違うんだ。普通ってあるようで、実は全く無いんだ」ナデナデ

座敷童「……それが、妖にもある……と?」

父「そんなの俺が決める事じゃない。それが良いか悪いか、時にはお前の仲間とか、お前自身が決めればいい」

座敷童「……勝手じゃのぅ。自身が価値観を決めるとは……」

父「ちょっとくらいなら、勝手したっていいじゃん。人間は案外好き勝手にやってるもんだぞ?」

座敷童「その答えは……、答えは見つけられるじゃろうか……」

父「見つかるさ。すぐ見つかるか、ながい時間がかかってから見つかるかは、お前次第だろうけどな」

座敷童「……ふぅ。300年も時を過ごして、わっしより若いお前に色々と教わるとはのぅ。……なんか悔しいのじゃ」フイッ

父「はははっ、やっと普段らしくなったよ、お前。……でもな、俺も気付けば中年のおっさんになっちまったんだ。色々と経験して今があるんだよ」ゴクゴク コトッ

座敷童「……うむ。なんか、荷が降りた気分じゃ。感謝するぞぅ、父」

父「ああ。……お互い一杯空けた事だし、もう一杯いくか?」

座敷童「……いや。もうこれ以上、変なお喋りする程に酔ってしまっては困るからのぅ、やめておく。それにのぅ……」

父「ん?」

座敷童「苦シュワなビール、口に合わんし飲みとうない」

父「そうか。まっ、飲み過ぎも良くないし、俺も適当にゆっくりしてから寝るか」

座敷童「なら、もう少し話し相手くらいには、なってやろうかのぅ」

父「それは良い。頼むよ」

座敷童「うむ。任せるのじゃ!」

ギシギシギシ

父「話し相手になってくれてありがとうな」

座敷童「なぁに。礼には及ばん。逆にわっしが礼を言うのじゃ。では、お前もゆっくり休むと良い」カチャ

父「あっ、最後に一つ良いか?」

座敷童「ん?何じゃ?」

父「明日……って行っても日にち変わったから今日か。朝から夕方まで俺と母ちゃんは家を開ける。だから、お前は娘と息子、二人に色々話してみろ」

>ギシギシギシ


おいおい嘘だろ…?そんなまさか…

座敷童「……うむ。そうしてみるのじゃ。では、お前さんも明日の母殿とのデートの為にゆっくり休め」

父「ああ、そうするよ」

座敷童「……何じゃったら、夕方と言わず、次の日帰宅でも良いぞぅ。弟殿の為と、更なる夫婦円満も兼ねて、頑張ってきても良いのではないかぁ。」フフフ

父「お前なぁ……」

座敷童「なぁに、単なる年寄りの冷やかしじゃよ。ではのぅ」パタン

座敷童「……ふぅ」

座敷童「……また寝るかのぅ」

モゾモゾ

女「…………」スースー

座敷童「……おやすみ、女」

……

日曜日だけど夕方まで社畜してくるからここまで。

>>86
階段登る音やで
決してそんな行為じゃないよ
ややこしくてすまん



女「……ん、んー。……ふぁー。朝か……。座敷童は……と」

座敷童「……Zzz」スースー

女「……もう少し寝かせてあげますか」

スタスタスタガチャバタン

座敷童「……Zzz。んにゃぁ……ビールぅ……不味いぃ……日本酒がいいのじゃぁ……Zzz」スースー

女「弟、起きてる?」コンコン

ガチャ

弟「姉さんか。朝からどうしたの?」

女「ちょいとね」

弟「何かあった?」

女「まぁ、そんな所。立ち話も疲れるし、部屋入ってもいい?」

弟「うん。良いよ」

バタン……

……ガチャ

女「じゃ、今日は宜しく頼むわよ」

弟「うん。まぁ、別に普段通りにしか過ごし様がないけどね、オレ」

ガチャ

女「あっ、噂をしたら……」

座敷童「おお、女に弟……。おはようなのじゃ……」ブスー

弟「おはよう、座敷童ちゃん。なんか、ダルそうだね?」

座敷童「うー、深夜にお前さんたちの父上殿の晩酌に付きおうてビール飲んだせいか、体がダルダルなんじゃ……。どうも、ビールは苦手じゃ……」

女「ふぅーん。深夜に目がたまたま覚めた時に部屋いなかったのは、そのせいなのねぇ……」

座敷童「もしや、お前さんを起こしてしもうたかのぅ?」

女「大丈夫だよ。その後、また寝たしねぇ」

弟「父さんと晩酌かぁ。俺も成人したら父さんと一緒に晩酌してみたいかもなぁ」

女「そうかもねぇ。座敷童はパパとはゆっくりお話し出来た?」

座敷童「……おう、昔話をしておちょくって楽しく話したぞぅ!全く、お前さんたちの父上殿は、昔と変わらんでお子様じゃったのぅ。それじゃ、顔でも洗いたいし、洗面所に行くのじゃ」トコトコトコ ギシギシギシ

女・弟「……」

女「全く……。パパと比べて、どっちがお子様なんだか……」

座敷童「おはよう。母殿」

母「あっ、座敷童ちゃん。おはよう。ゆっくり眠れた?」

座敷童「寝るには寝たが……。旦那殿とビールで晩酌したら、体がダルいのぅ……」

母「ふふっ、ビールは慣れてないんだったものねぇ。今度日本酒買ってくる?」

座敷童「いや、晩酌は旦那殿に合わせて飲んだだけじゃし、お酒は別にいらんのぅ」

母「分かったわ。それと、今日はパパとお出かけしてくるから、子供たちとゆっくりしてれば良いよ」

座敷童「なんかすまんのぅ。面倒かけてしまって……」

母「もう。座敷童ちゃんがそんなだと、私も調子狂っちゃうよ?お姉さんなんだから、しっかりしないと駄目よ」

座敷童「……うむ。伊達に300年生き取らんからのぅ。二人の事はわっしがしっかり面倒見ておくから、二人はゆっくりデートしてくるのじゃ」

母「じゃあ、座敷童ちゃんの言葉に甘えさせてもらう事にするわね」ニコッ

今日はもう少し投下しようかと思ってましたが、妻に呼ばれたのでここまでにします。
明日の朝に幾つか投下します。

キュルルル ブォーン

父「じゃあ、みんなで留守頼むな」

母「行ってくるわね」

座敷童・女・弟「行ってらっしゃーい」

ブーン……

座敷童「……行ったのぅ。さて、二人は今日どうするのじゃ?」

女「用事があるわけじゃないから、基本的に家でまったりかなぁ」

弟「姉に同じく。座敷童ちゃんはなんかしたいとかある?」

座敷童「わっしかぁ?んー……座敷童だけに自宅警備していれば十分じゃのぅ……」

弟「じゃあ、家で三人まったり楽しく過ごそうか」

女「そうしますか。じゃあ、家に入ろうか」

テクテクテク ガチャバタン

女「じゃ、座敷童は私と部屋に行こうか」

座敷童「あぁ、構わんぞ。何かするのかのぅ?」

女「まぁね。三人で楽しい事する為に準備しようかなってね。弟は適当に飲み物とか持ってきたら、私の部屋来てね」

弟「オッケー。じゃ、台所から取ってきたら行くから、姉さんたち先にやってて」テクテク

座敷童「?」


女の部屋



女「じゃあ、座敷童。何事も経験だし……これを……」

座敷童「女よ……。わっしは300年程生きとるが、こういうのは初めてでの……その……上手く出来るかぁ……」

女「私が言った通りにすれば大丈夫だよ。だから……」

座敷童「う、うむっ……。女がそういうのであれば……。ここじゃな……」

女「そうそう。焦らないでいいよ」


座敷童「……女よ、これで大丈夫かのぅ……?」

女「……うん、ばっちりだよ。じゃあ、次はこれを……」

座敷童「これを……ここに入れれば良いのじゃな……?」

女「うん。あっ、その前にここをっと……」

座敷童「はわっ……これ、こうなっとったのか……」


女「やっぱりちょっとびっくりした?」

座敷童「そ……そんな事ないのじゃ!た……ただ、祖母殿とわっしはこういうのに縁が無くてのぅ……」

女「やっぱりね。ほら、今のうちにそれ、入れないと弟来ちゃうよ?」

座敷童「うむ。弟殿が来る前に済まさぬとな……」

コンコン


座敷童「弟殿が来てしまったのじゃ……女、入れるぞぅ!」

女「うん、入れちゃえ!」

ガチャ

弟「姉さん、座敷童ちゃん、飲み物持ってきたよ」


ポチ ウィーン ガシャン

座敷童「おぉ!女が教えてくれたから出来たのじゃ!」

女「よく出来たじゃん!座敷童やるわねぇ!」

弟「なんか盛り上がってるけど……どうしたの?」

女「ん?別に何も?」

座敷童「女にプレステ2の用意の仕方を教えてもらってただけじゃが?」


弟「プレステ2の準備くらいで、そこまで盛り上がらなくてもいいんじゃ……」

女「座敷童がね、こういう機械類をあまり弄った事が無かったみたいだったから、座敷童に経験がてらやらせてあげてたんだよ」

座敷童「女が優しく教えてくれたお陰で、無事に用意出来たのじゃ!」

弟「うん。まあ、別にいいんだけど(百合は残念ながら無かったよ、>>36さん……)」

スーパー社畜タイムなんで、ひとまずここまで。


座敷童「ところで、どんなゲームをやるんじゃ?」

女「前に友達から借りたゲーム。見てれば分かると思うんだけど、ある街で様々な依頼をクリアしていくヤツ」

弟「……ん?……街で……様々な依頼?」

女「んでんでんで。友達に事前に聞いておいたチートを入れてっと……」ピコピコ

弟(……あっ、なんか右上に物騒なマーク一気に増えた)


女「良しっと……。じゃあ、依頼を受けに行きます!」カチャカチャ

座敷童「よぅ分からんが、このおっさんで街にいる依頼者に会いに行くんかの?」

女「イエス!じゃあ……、この速そうでイカした車を……運転手降ろして盗みます!」カチャカチャ

座敷童「……え?」

弟(座敷童ちゃんはゲーム初めてなのに、こんなゲーム見せて大丈夫なのかなぁ……)


座敷童「……まあ、良い。依頼者に速く会いに行けるしの!」ウンウン

女「……あ、ボインでイカした女性発見!」カチャカチャ

弟(えー……まさか、そこでそれイクの……?)

座敷童「勝手におなごが車に乗ってきたのぅ。あっ、発車したのじゃ」


弟(……車が物陰に到着しちゃったよ)

女「これで体力が125に!お金減るけどね!」

座敷童「……ギシギシ揺れとる。……あっ、おなごが降りた」

女「そうは問屋が卸さない!」カチャカチャ

弟(オレどうなっても知らない……)


女「喰らえ、鉄砲玉!そして、お金回収!」

弟(Oh……淫乱女性乙)

座敷童「……え?……おなごが……え?」

女「さて、準備ばっちり。ミッション行こ」カチャカチャ


座敷童「……女よ。そのぅ……なかなかエグいの、このゲーム」

女「そうかな?あっ、今、依頼受けたからちょい待って」カチャカチャ

弟(白いバンで、アイスクリーム販売車両て……あれか……)

座敷童「あっ、この白い車から音楽流しとると、柄悪そうなヤツが来たのじゃ」

女「よしよし……。今だ!」ポチッ


<ドーン! ミッションクリア

女「よっし……逃げろ!」カチャカチャ

座敷童・弟「」



座敷童「……のぅ、弟殿。女、楽しそうじゃの……」

弟「……うん、なんか色々ゴメンね」


弟「と、いうわけで、ゲーム初体験者の座敷童ちゃんいるのに、あれはマズいよ、姉さん……」

女「うん。反省はしてる。後悔はしていない」

座敷童「まぁ、一部の人向けなら仕方ない……と思うのじゃ……」

弟「とりあえず、座敷童ちゃんは初心者なわけだし、何本か持ってきたこの辺りで遊ぼうよ」トントン


女「んー。じゃ、この玉転がしゲームで。座敷童でも簡単だろうしね」

弟「オッケー。はい、座敷童ちゃん。このコントローラーの出っ張ってるヤツで操作してごらん」

座敷童「目の前にある玉と、それよりもやたらちっこい全身タイツを操作するんじゃな!」グリグリ

弟「そうそう!座敷童ちゃん上手だよ!」


座敷童「この玉に色々へばりついて面白いのじゃ」グリグリ

弟「ただ、人や障害物にぶつからないようにね」

座敷童「うむ。頑張るのじゃ!」グリグリ

女(もうちょっとデカくなれば犬猫辺りくっつくな、コレ。……あっ、引っ付いた)

<ワンワン ニャーニャー コロコロ ワーキャー ペトペト


数時間後……

座敷童「なかなか面白かったのぅ!ただ、王様が酔ってぶっ壊した惑星の為に、尻拭いで王子が街一つ飲み込むとか、冷静に考えると凄いゲームじゃな、コレも……」

女「確かにね。王様のキャラクターも濃いし」

弟「あとは、BGMが無駄すぎな位、豪華なラインナップだよね、このゲーム」

女「では、お昼になったし、御飯にしようか」

座敷童・弟「賛成」

今日はここまでだす。
不慣れにコントローラー使いながらゲームやる座敷童いたら可愛いだろうな……

食事終わり

女・座敷童・弟「ごちそうさま」

座敷童「……さて。女、弟殿。このあと時間はあるかのぅ……?」

女「うん。大丈夫だよ」

弟「俺も大丈夫だよ」

座敷童「そうかのぅ……。なら、わっしの事について話したい事があるんじゃ……」


女「話したい事って……座敷童としての力が無い事?」

座敷童「な……!?何故お前さん知っておるんじゃ!」

女「ごめんね。深夜に座敷童がパパと話してるのを、実はこっそり聞いてた。深夜にドア開けた音に気づいてさ……。弟には今朝に私が聞いた範囲だけ話してるよ」

座敷童「……うむ、そうじゃったか。じゃが、女は謝る必要は無い。……それに、多少知っとってもらった方が話しやすいかもしれんしのぅ」

弟「座敷童ちゃん。差し支えない範囲でいいからさ、俺たちに色々話してよ。ちゃんと聞くからさ」


座敷童「わっしが産まれた辺りから話すのじゃ。わっしは300年前に産まれた時、気づいたらある屋敷の部屋じゃった」

女「1700年として……まあ、いわゆる江戸時代よね」

座敷童「そうだったかの……。すまぬ、長く生きていたりもあって、年号やらは適当な記憶になっててのぅ。じゃが、そこの屋敷は座敷童のわっしを大切にしてくれた。先に言うた部屋は座敷童用になっておって、毎日供え物も兼ねて御飯を用意してくれたり、客人からの献上品があったりと何不自由なく過ごしたのぅ」

弟「まぁ、幸福の神様みたいなものだろうし、裕福な家だったなら、それくらいしていても不思議じゃないかもなぁ」


座敷童「そうじゃな、その屋敷は元々裕福そうじゃった。わっしが現れ、祀るようになってからは、更に財を成したと言うとった」

女「じゃあ、その時は座敷童は力があったのね。ちなみに、座敷童の力ってどんなのだったの?」

座敷童「わっしは、『先が見える』んじゃ」

弟「先が見える……未来が解るみたいな事?」


座敷童「未来というにはちょっとだけ違うかものぅ……。どちらかといえば、二手に分かれた道があった時、どちらに行けば良いか、その先にあるものが解るに近いやもしれん」

女「それって、考えや使い方次第だけど、かなり凄い能力だよね?」

座敷童「そうじゃの。屋敷の者たちは、商いの相談をよくしてきたし、わっしが見えた選択肢を選んだ事で、財を成したしのぅ」

弟「座敷童ちゃん凄いなぁ……」


座敷童「だが、ある時からじゃ……。先を見ると霞ががったようになってきてしまったんじゃ。その時は偶々かと思ったし、何とか見えた事を伝えていたんじゃ。しかしの……」

女「見えにくくなったせいで、何かあったの?」

座敷童「……その時は、冬じゃったの……。乾燥と火の不始末が原因だったはずじゃが、そこの屋敷の者が経営しておった商店が火事になったんじゃ……」

弟「乾燥時季の火事かぁ……。でも、それは座敷童ちゃんが悪いとは違うような……」

女「確かに。不始末な人が原因だし、直接座敷童に非は無いと思う」


座敷童「お前さんたちは優しいのぅ……。だがのぅ、実はわっしの先を見る力で一応は見えていたんじゃ……。商店で災いなどが無いか聞かれた時に霞がかっとったせいで、それが何なのか上手く見る事が出来んかったんじゃ……」

弟「それでも、火事は仕方なかったようにしか思えないけど……」

座敷童「……これを聞いたら、お前さんたち、同じ事言えんかもしれん……」

女「……どういう事?」

座敷童「……わっしはの、女……」






座敷童「『何も災いなど起きないだろう。安心して商いを行うと良い。』そう言ってしまったんじゃ……」





座敷童「見えにくい事を屋敷の者たちに伝えておらんかったし、見えにくいような位だからと、わっしも高を括っていたんじゃな……。しかし、その火事で失われたものが多かった。更にそれによる批判も沢山きてしまったようでの……」

女「火事の後は……?」

座敷童「屋敷の者たちは、いつも変わらず、供え物の御飯を用意してくれた。わっしには批判の声も寄越さなかったのぅ」

弟「下手したら座敷童ちゃんに八つ当たりしかねないのに、屋敷の人たちは優しかったんだね」


座敷童「……じゃがのぅ、力の衰退を屋敷の者たちには言い出せんかった。食事は喉を通らず、夜は夜で睡眠を取れんかった。結局、わっしは座敷童として重宝してくれ、良い生活をさせてくれてた屋敷の者たちに甘えておったんじゃ……」

女「その屋敷の人たちはどうなったの……?」

座敷童「火事による建物とかの負債、火事に巻き込まれた者たちへの賠償で、財をかなり減らした。じゃが、商いをしていた者たちが斬れ者だったんじゃろうの。負債を無かった事にする位、また商いが軌道に乗った……らしい」

弟「らしいって?座敷童ちゃんはその屋敷にいたんじゃないの?」


座敷童「わっしは……屋敷から逃げた。様々な事から胸が締め付けられる想いに耐えられず。屋敷の皆が苦労する中で、あの甘美な生活を続けるのが息苦しかった……」

女「そうだったのね……。その屋敷の人たちの今は知ってる?」

座敷童「過去に妖の情報網で聞いた話がさっきの話じゃ。今はあまり他の妖とかと縁をほぼ切っておるから、屋敷関係の事は正確に分からないのじゃ……。座敷童の云われだと、わっしがいない今は衰退しているかもしれんが……。ただ、わっしは今でも子孫が家を守っておると思いたいのぅ……」

弟「商売が軌道に乗ってたなら大丈夫だよ。座敷童ちゃんが今でも大切に思ってるなら、きっと今でもその家は大丈夫だよ」

座敷童「……そうだと良いのぅ」

今日の投下は一先ずここまでです
昨日投下したかったんですが、子供が凄い機嫌悪くて、夫婦で振り回されてました……


女「屋敷から出た後は一体どうしたの……?」

座敷童「様々な家にひっそりと立ち寄って休みながら、全国津々浦々を回ったのぅ。幸い、妖の類だけに、食う寝るは最悪何十日としなくとも大丈夫だったし、わっしの存在に気づいた者がいたりして、食べ物を恵んでくれたお陰で助かったのぅ……」

弟「全国津々浦々って……。座敷童ちゃん……やっぱり辛かった?」

座敷童「今思えば、辛かったのかのぅ……。だが、自業自得じゃったし、旅してた時は今ほど辛いと思う余裕がちょっと無かったかものぅ……」


座敷童「妖とはいえ、全国津々浦々をそんな無理ある旅をしてたからかのぅ。ある日、わっしはふと、思い出したように何かを『見よう』と思ったのじゃ」

女「座敷童は、その時、何を見ようとしたの?」

座敷童「わっしが見ようとしたのは……わっし自身じゃ。旅の終わりを見たかった。わっしは救われるのか、破滅してしまうのか、との……」

弟「その時、座敷童ちゃんは何が見えたの?」

座敷童「……何も見えなかったのじゃ」


座敷童「更に言えば、わっしはその時、急に意識が無くなってしもうた。そして、また意識が戻った時、また自分の先を見ようとしても、霞がかった物さえも見えず、力が無くなったと悟った……」

女「でも、力が無くても座敷童が無事だったなら……」

座敷童「女よ。妖の類が自身の力が全く無いという事はの、存在する事が全く認められないに本来等しい。現代においては、妖たちの本能的な力自体は弱くなっておる者たちも多いのじゃが、それでも僅かながらに力を持ち、存在が肯定されているんじゃ」

弟「存在する事が認められないって……。妖とかは力が無くなったら、死んでしまうって事?」


座敷童「そうじゃの。本来なら、力が極端に弱まるか、力が無い者は、この世から消える。本来ならの……」

女「じゃあ、座敷童は力が無いかもしれないけど、今ここにいる事が説明つかない事になるよ?」

座敷童「……この世に神や仏がいるかは、わっしでも知る術は持たん。じゃが、これは罰なのやもしれん。世話になった者たちへ嘘をつき、その癖自身は甘美な生活をタダで謳歌し、世話してくれた者たちに苦労をかけた上に、逃げたんじゃしのぅ。更に、辛い現実から目を背けたいと、力をわっし自身に使ったのじゃ。……改めて、自身で口にすると、救われるワケが無いと、つくづく感じるのぅ……」フゥ……

弟「座敷童ちゃん……」


女「うん……。そうだったのねぇ……。辛い状態で聞くかもしれないけど……、その後も旅していくうちに、おばあちゃんに会ったの?」

座敷童「そうじゃ。力が無いのに存在する以上、放浪するしかわっしには術が無かった。違う妖や他の座敷童に会う時もあった。しかし、わっしみたいに力が無い状態で存在する者はいなかったのぅ……。毎日毎日自身の存在を悩みに悩んで、自暴自棄になりそうな気持ちじゃった時、手を差し伸べたのが祖母殿じゃ」

弟「おばあちゃんと初めて会った時の事、詳しく知りたいけど聞いても大丈夫?」

座敷童「あぁ、構わんよ、弟殿。あれは、60年とかは前になるの……」

……


……



座敷童「……………………」



祖母「こんにちは。一人でいるようだけど、お母さんとかは?」

座敷童「……いない。……わっしは……、座敷童じゃから……」

祖母「座敷童っていうと、あの家にいる神様みたいなあれ?」


座敷童「そうじゃの……。わっしは今、どこかの家に世話になっとらんがな……」

祖母「そう。じゃあ、新しい家を探し中とかなのかな?」

座敷童「……どうじゃろうな。探してるとも言えるが……、どうでも良い事じゃ。わっしは…………いや、お前さんには関係無い事かの、忘れとくれ……」

祖母「……うん。じゃあさ、この後、お天気崩れるみたいだし、私の家で雨宿りくらいしていかない?」

座敷童「……気持ちだけで良い。感謝するのじゃ……。それにの……わっしは人と違って、ちょっとやそっとの天気では問題無いのでな……」


女「んー……。じゃあ、私の傘、ここに置いておくから、もし雨が降ったら使って?私の家ここから近いし、ここから離れるなら、置いておいてくれれば回収するからさ」トンッ

座敷童「……うむ」コクッ

女「……じゃあね、可愛い座敷童さん」

スタスタスタスタ



座敷童「……………………」



座敷童「……変わった女の子じゃの。……あっ、雨じゃ……」


ポツ……ポツポツ……ザーーー……

座敷童「……………………」



座敷童(傘……使おうかの…………)

バサッ



座敷童「……………………」



座敷童(……あの女の子に……お礼……言わねばのぅ……)


ザーーー

座敷童「……わっし。……あの女の子に……優しくされる資格なぞ……資格なぞ無いのに……」

座敷童「……わっしに……そんな資格無いのに………そんな……」



「あっ!良かった!まだいた!」



座敷童「ん、お前さんはさっきの…………何かあったかの?」

祖母「雨強くなってきたから心配でさ……あぁ、せっかく可愛い着物なのに沢山濡れちゃって……」


座敷童「……構わん。わっしは妖の類じゃし、着物は濡れておるが、問題無かろう」

祖母「ダメ。仮に大丈夫でも、私が気になるから!」

座敷童「……しかし、お前さんや親御さんに迷惑をかけるしの……」

祖母「うーん……。じゃ、分かった。……座敷童さま、私のお願い聞いて下さい。私の家で粗茶ですが、一杯だけでもぜひ飲んでいって頂けませんか?」


座敷童「……ちなみに、拒否したらどうするんじゃ?」

祖母「強引に連れていく!」

座敷童「……うーむ……強引はちと困るのぅ……」

祖母「拒否しない場合は、私が手をお引きします。勿論、丁重におもてなし致しますよ?」

座敷童「……ふぅ、お前さんに負けた。では……宜しく頼むかの……」


祖母「有り難きお言葉ありがとうございます。では、何とお呼びしましょう?」

座敷童「……座敷童じゃ。好きに呼んでくれてかまわん。あと、そんな他人行儀では気持ち悪いのじゃ。お前さんの普段通りの口調で良い」

祖母「じゃあ、座敷童ちゃん。家に行こうか?」

座敷童「それでは、お前さんの家にお邪魔するのじゃ……。あっ……あとのぅ……」

祖母「ん?」


座敷童「か、傘……有難かった。お、お前さんに返すのじゃ」スッ

祖母「ううん、どう致しまして。……じゃ、離れないように手繋いで行こ?」

座敷童「うむ……。宜しく頼む……」

ギュッ……



ザーーー……



……

ひとまずここまで
さっきまで社畜してきて眠いんで寝ます
おやすみです


……

座敷童「……こんな感じで、雨に濡れてたわっしを家に招いてくれたんじゃ。長い間、時を過ごしておるが、今だにあの時の事は鮮明に覚えておるのぅ……」

女「なんか、いかにもおばあちゃんらしいかもねぇ……。それで、私が産まれた辺りまで、ずっとおばあちゃんと一緒だったのね?」

座敷童「あぁ。祖母殿や祖母の親御さんらには、本当に大事にしてもらった。そして、祖父殿、お前さんたちの父や母殿にもじゃ。喜怒哀楽を共にし、わっしは何とか前みたいに笑ったり出来るようになったのぅ……」

弟「確かに、今の明るい座敷童ちゃんからは、昔の姿は想像出来ないかも」


座敷童「にしてもじゃ、お前さんたちの父のわんぱくさに苦労させられたが、祖母殿の悪戯好きには、もっと苦労させられたものじゃ……!」

女「まぁ、それは否定しないかな……」

弟「俺もおばあちゃんに悪戯しようとして、逆に驚かされた事、何回かあるよ……」

座敷童「全くじゃ。よりにもよって、そのせいで、祖母殿が喉に煎餅詰まらせたのに、女が気づかなかったんじゃから……。昔からいつか何かあったら危ないからと、よーく注意したもんじゃが……、まぁ、祖母殿がもし天界とかにおるなら、これに懲りて悪戯も控えるじゃろ」


女「そうだといいんだけど、おばあちゃん懲りない所ありそうだしなぁ……。それで、話を戻しちゃうんだけど……。私が産まれてからいなくなったって聞いたけど、その時は一体どうしてたの?」

座敷童「前と同じじゃ。ただ、家に置き手紙をして、『帰らない、さよなら』と書いて出ていったのぅ……」

弟「逆に座敷童ちゃんは寂しくなかったの?」

座敷童「最初はの、精神的と言っていいか分からんが、皆の幸せがいつか無くなってしまわないかとか、わっしの存在についてとか、そんな恐怖心からか、とにかく他の感情がすっぽり抜けてしまったような感じじゃった……」


女「確かに強い恐怖心とかあると、何も考えられないのかもしれないのは、あり得ると思うよ……」

座敷童「だが、わっしが余りにも弱すぎたんじゃ。過去を思い出したとしても、冷静になれていればこんな事しなかったじゃろう……」

弟「嫌な過去を思い出したら、きっと冷静さを失うよ。それに、トラウマみたいになってるなら尚更だよ、座敷童ちゃん」

座敷童「……そうかもしれん。だが、わっしが冷静に物事を判断出来た時、すっかり人間には十分すぎな歳月が流れていたの。その時には祖父殿はいなくなっておった。祖母殿に聞いたところだと、祖父殿はわっしの事を気にかけながら息を引き取ったらしい。……本当に申し訳ない事をしたと思う」


女「そっか……。じゃあさ、おばあちゃんの所に戻ろうとしたのは?言い方が悪いかもしれないけど……、また違う家や人を探したって良かったはずよ?」

座敷童「座敷童という存在なら、それが正解なんじゃろうが、わっしは異端な存在って事もあるじゃろうが……。だがのぅ、きっかけをくれた者がいたんじゃ」

弟「それって、どんな人?」

座敷童「それはの、人ではない。それは……」

……

ここが切り良いので、ひとまずここまで
社畜後なので、おやすみなさいです


……

トコトコトコ……



座敷童「今日はどうしようかの……。すっかり、道やらを誤ったせいか、ひと気、建物が無い道じゃの……」ウロウロ



狐「……コン」テトテト

座敷童「……ん?……狐かの」

狐「……コン」テトテト フリフリ


座敷童「なんじゃ?残念ながら旅しておるし、飯やらは持っておらぬぞ?それに、わっしは座敷童じゃし、食事はそれほどいらないしのぅ」

狐「!……コン!」ダッダッ フリフリ

座敷童「?何かわっしに用でもあるのか?」

狐「コン!」ダッダッダッ

座敷童「急にあっちに向かったのぅ……。まぁ、どうせじゃ、狐に騙されたと思うて着いて行くかの……」トコトコトコ


狐「コン!コン!」フリフリ

座敷童「ここは……寂れた神社じゃなぁ……。ここに用事があるのかの?」

狐「……コンコン!」ボンッ

座敷童「ん?!狐が人に……?」


シュン……

妖狐「旅の途中、邪魔をして大変申し訳ありません。我の事は妖狐とでもお呼び下さい。もし、宜しければ貴女の名は?」

座敷童「座敷童じゃ。驚いたのぅ。お前さんは一体……」

妖狐「只の寂れた神社を護るしがない狐ですよ」ニコッ

座敷童「そうか……。ところでの、その人間に狐の耳と尻尾装備で巫女姿なのは……お前さんの趣味かのぅ?」


妖狐「我の趣味では御座いませんが、現代の人にはこういう姿の方が需要があるとか、ないとか……」フフフッ

座敷童「……そうか。お前さんも大変なんじゃのぅ」

妖狐「いえいえ、我も決してこの姿は嫌いではありませんし……。ところで、本日はまだ先に進まれるご予定で?」

座敷童「そうするつもりじゃが……。どうかしたかの?」


妖狐「はい。ここ辺りから先は街までやや距離がありますので。もし宜しければ、ここで一晩ゆっくりされてはと思いまして」

座敷童「しかし、お前さんの住居みたいなモノであろう?わっしがお邪魔しても大丈夫なのかのぅ?」

妖狐「幸いにも、我以外の者はいません故、全く問題ありませんよ」

座敷童「そうか……。では、お前さんのお言葉に甘えるかの。ぜひ宜しくお願いするのじゃ」

妖狐「何もありませんが、ゆっくりしていって下さいな。では、どうぞ。狭い所ですが」

今日はちょっと早いですが、ここまでです
どうでもいい情報ですが、>>1は家族サービスがてら、一泊二日ドライブで蔵王に行くんで、次回更新は早くて月曜予定になります
若干ケモナーな>>1は宮城蔵王きつね村で狐見るのが非常に楽しみです
では、おやすみなさいです


神社の中

妖狐「しかし、貴女様は少々変わった座敷童ですね。座敷童とはどこかの家などに篭り、そこの家に福を運ぶという妖でしょう?」

座敷童「そうじゃの……。まぁ、ちょっと旅に出てみたいと思うただけじゃ。深い意味も……無い」

妖狐「そうですか。まぁ、我も気まぐれ起こして、ずっとここを護っておりますし、貴女様と我は似ておるかもしれませんね」

座敷童「ずっとというとお前さんはいつからここにいるんじゃ?」


妖狐「ざっくり言えば……1000年程にはなったと思いました」

座敷童「大先輩じゃったか……!すまぬ、失礼した」ペコッ

妖狐「いえいえ、頭をお上げ下さい。崩してお話しして頂けた方が、我も気を使わずに済みますので」

座敷童「そ、そうか……。では、そうするのじゃ」


妖狐「本日は無礼講と行きましょう。我は久々に妖の類と話をします故、宜しければ座敷童さまのお話しを聞いてみたいのですが、大丈夫ですか?」

座敷童「うむ。つまらない話しか出来ぬが……まぁ言える範囲で答えるかの」

妖狐「それでは。旅には深い意味など無いとは承知致したのですが、理由など教えて頂けたら嬉しいです」

座敷童「うーん……。ちょいと長くなるかもしれんし、あまり気分の良い話ではないかもしれんが……良いかの?」

妖狐「ええ。貴女様が無理無く話せる範囲で構いませんよ?我も無理強いしている訳ではありません。ただの狐に独り言を話されるような感じで話して頂ければ幸いかと」

座敷童「……うむ。あれは…………」

……


……

座敷童「……と、いう感じじゃ。どうもわっしは妖として、歳月が過ぎる事とか、世話になった人間を失うのが怖いと思うてしまうようになってしまった……。祖父殿、祖母殿、息子夫婦、更に今はその娘、元気にしてくれとればいいが……」

妖狐「なるほど。自身が妖として、座敷童として、本当に存在していて良いか。世話になってた人たちに対しては、大事さ故に不安や恐怖が勝ると……」

座敷童「全くじゃ。他の妖はこんなんでは無い。わっしは力も無くし、幸せを授ける事も出来んのじゃ。もしかしたら、いつか受け入れて貰えない時が来ないかと、震えてしまうのじゃ……」

妖狐「……ふむ。座敷童さま。我の話も宜しければお聞き頂けないだろうか?」


座敷童「もちろんじゃ。話とは一体どんな話じゃ?」

妖狐「軽い昔話です。昔は座敷童さまが先程歩いてた道は旅人がよく使う道でした。ですが、現代は違う道が出来たり、交通網とやらが発達し、すっかりひと気が無く寂しい道になったのです」

座敷童「確かに失礼を承知で言うと、全く人が通らなかったのぅ」

妖狐「ええ。ですが、昔はこの神社も人が多かった時は、大層人が寄ってくれたものでした」


妖狐「しかし、先に言った通り、人たちは我々より高い知性と技術を持ち、生活の利便性を上げていった結果、この道はお役御免となりました」

座敷童「人の進化具合は目を張るモノが確かにあるのぅ。わっしがこの世に出た時は人を籠で運んどったが、今や自動車、電車、飛行機と、様々な移動手段が出来ていったからのぅ」

妖狐「もちろん、それが人にとって重要で大切なモノでしょう。ただ、それによって神社を訪れる人が減ってしまい、只々我は消滅していくのだと思うておりました。ただ……」

座敷童「ただ……と言うと?」


妖狐「ごく稀に道に迷ったり、迂回しようとこの道に入り込む人がいるんです。しかし、ここは見ての通り、この神社くらいしかありません。ですから、我はそういう者たちの為に、ここを今だに護っているんです。人や妖、どちらも道標と言いますか、何かしら目に見えるモノがあると安心しますからね」

座敷童「お前さんがこの神社に案内してくれた時、確かにちょっと安心した気がしたのぅ。じゃが、結局お前さんは何の為にここを護っておるんじゃ?」

妖狐「そんな事は簡単な理由ですよ、座敷童さま」

座敷童「そんな焦らさず教えてくれても良いでは無いか。何じゃ、その理由とは?」


妖狐「我がこれを望み、必要としてくれた者がいたから、今もやっているので御座います」

座敷童「……要はやりたいから、と?」

妖狐「ここに迷って入ったモノはこの神社を見ただけで、少し安心した顔をしてくれた時がありまして。それ以来、我はここに居続けようと心に決めました」

座敷童「じゃが、お前さんみたいな妖であれば、歳を考えてもより立派な神社なりを護っていても良いのではないか?」


妖狐「確かに。座敷童さまの言う通りでも御座います。ですが、どうも歳を重ねると頑固といいますやら、我が古くからいるここを離れたくないという気持ちが強くなりまして……。まぁ、年寄りの道楽みたいなモノですな」

座敷童「道楽とのぅ……。……しかし、お前さんはそれだと妖狐としての本分とはブレてしまっておるようにも見えるが……」

妖狐「寂れてしまった神社と考えれば、それもそうでしょうが……。ですが、護るという本分からはブレておりますまい」

座敷童「そう言われると……まぁ、間違いではないのかの?」


妖狐「そうですとも。人、妖、動植物含め、己が大事と思ったものを護る。それが、家族、形あるもの、形なきもの……人や種族などにより様々ありますが、それが大事な事なのではと、我は考えております」

座敷童「大事なモノ……か」

妖狐「座敷童さまは一体何が大事なのでしょうか?自分自身ですか?はたまた力でしょうか?」

座敷童「……いや、わっし自身は大事ではあるが、自身や力については二の次でも構わない。わっしは……」


妖狐「おっと、座敷童さま。それ以上は不要ですよ。貴女様がまさに大事と感じたモノが、答えで宜しいじゃありませんか」

座敷童「それが他の妖と違うような考えだとしても……か?」

妖狐「我がこんなではありますが、1000ほどの時を過ごしたのですから。でも、結果はご自身次第かと……。さぁ、旅でお疲れでしょう。今日の話はここまでにして、ゆっくりお休み下さい」

座敷童「うむ……。少し休ませてもらうのじゃ」

……




座敷童「一泊させてもらい助かったのじゃ。今は無理じゃが、きっといつか礼をさせてくれ」

妖狐「いえいえ。我こそ話相手になって頂き、礼を言わねばならないです。感謝致しますよ、座敷童さま。……今日はやはり先に進まれるのですか?」

座敷童「……いや、ちょっとばかし用事を思い出したので、一度引き返そうかと思うての」

妖狐「……そうでしたか。では、どうか道中気をつけて下さい」

座敷童「あぁ、こちらこそ感謝するぞ。ではのぅ」

スタスタスタ……




妖狐「……どうか、小さく若い妖の貴女に、幸があらん事を……。遠くからですが、我が妖狐、座敷童さまの幸せを祈っておりますよ……」



スタスタスタ……ボンッ……ダッダッダッ……



……

誰も待ってないかもですがお久しぶりです
蔵王で狐見て楽しんできましたが、車のホイールを宿泊したホテルの駐車場の縁石でガリガリしたり、帰宅したら冷蔵庫壊れて新品買いに行ったりと、かなりグデグデでちょい凹んだりして更新止まってました
今日はここまでですが、明日もまた更新する予定ですので、宜しければ引き続きお付き合い下さい


……

座敷童「……と、まぁ、こんな事があったんじゃ」

女「へぇ……。ちょっと変わってるような気がするけど、その妖狐さんがねぇ……」

座敷童「わっしもその時は失念してたんじゃが、妖狐の中には1000を越えて生きた者は、千里眼が使えるとか言われとるのがあっての。もしやしたら、妖狐殿は千里眼でわっしについて『見た』のかもしれん……。もしくは、年の功というヤツかもしれんしのぅ……」

弟「まぁ、どちらかは分からないって事か……。妖狐さんの話の後はおばあちゃんの家に戻ったって事でいいの?」


座敷童「うむ。祖母殿の家に帰る事を決めたのぅ。家に着いた時は勝手に出て行ったわっしを入れてくれないやもと考えたりで不安しかなかったが、祖母殿は只々帰宅を喜んでくれたのぅ……」

女「そりゃ、若い時からずっと一緒の座敷童が帰ってきてくれたんだから、当たり前だよ」

座敷童「祖母殿もそんな風に言っとったのぅ。そして、祖母殿に謝罪し、わっしがどうしたらいいかとか、ふたりで話し合った。そして、お前さんたちの家に行く事に決めたのじゃ」

弟「それで、おばあちゃんはこの前急に姉さんに用事あるからって来た訳か」


座敷童「そういう事じゃ。まぁ、話をきちんと言ってなかったせいで、女に誰か分からない素振りで言われた時は少し驚いたの」

女「それはこっちもだよ。おばあちゃんが話してなかったとはいえ、いきなり部屋入ったらあんたいるんだよ?びっくりするって」

座敷童「じゃが、すぐ打ち解けあって、あんな事やこんな事したのぅ……」フフフ

弟「何したの姉さん!?」

女「何もしてないから。話聞いたりとかだけだからね、愚弟。あと、嘘っぱち言うな、年増妖怪」


座敷童「軽い冗談じゃよ。まぁ、それはここまでにして……」



座敷童「女殿、弟殿。改めてお願いしたい。座敷童として力は無いし、精神も弱っちいちっぽけな妖じゃ。こんなわっしを……わっしでも一緒にいてくれないだろうか……」



座敷童「頼む…………」ペコッ



女「……じゃあ一個お願いある」

弟「姉さん?」

座敷童「……願いとはなんじゃ?」

女「それは…………」




女「勝手にいなくならない事。居たくなくなったなら、それで構わない。構わないから、必ず、正直に、出て行きたくなったら言って。勝手にいなくなるのは無しだよ。突然いなくなるって寂しいからさ」



座敷童「……うむ。それは祖父殿と祖母殿の事で、十分分かったしの。だから、勝手にいなくなる事はせん。約束するのじゃ」

女「うん。じゃあ良し!」

弟「良かったね、座敷童ちゃん。俺からも、勝手にいなくならないようにお願いするよ」

座敷童「勿論じゃ。二人とも、本当に、ありがとうなのじゃ」


女「じゃあさ、弟。あれ言おうか?」

弟「そうだね」

座敷童「なんじゃ二人して?」

女・弟「「座敷童(ちゃん)」」





女・弟「「ようこそ我が家へ。これから家族として宜しく!」」




座敷童「……こっちこそ、宜しく頼むのじゃ!家族じゃからっての、甘やかしたりなんぞせんからな!」

女「それはお生憎様、こっちも改めて遠慮無く行かせてもらうからね」

座敷童「お前さんは少し年上を敬うとかしたらどうなんじゃ?わっし300歳じゃぞ?」

弟「じゃあ、俺は勿論座敷童ちゃんを年上として敬うよ。でも……」


座敷童「なんじゃ弟?何か言いたそうじゃな?構わんから言うてみい」

弟「えぇと……。正直、俺より小さくて可愛らしい感じだから、やっぱり妹みたいにしか見えないんだよね……」

女「うん。確かに妹みたいにしか見えない」

座敷童「お前さんら……」


女「でもさ、それが座敷童らしいって感じだし、良いんじゃない?」

弟「そうだよ。今の座敷童ちゃんのままで良いと思うよ」

座敷童「まぁ、二人がそういうならそれで良いのかもしれんのぅ……」

<ガチャ タダイマー

女「あっ、パパとママが帰ってきた」


父「ただいま。留守番ありがとうな」

弟「全然大丈夫だよ。父さんと母さんはゆっくり出来た?」

母「ええ、お陰様でパパとゆっくりデート出来たわ」

女「いつまでもお熱いですなぁ。親とはいえ妬けるなぁ……」

座敷童「全くじゃな。父殿、母殿、時間を作ってくれてありがとうのぅ」


父「なに、構わないさ。何より問題無かったようだしな。これからはうちで宜しく頼むな」

母「座敷童ちゃん。私からも改めて宜しく頼むわね」

座敷童「うむ。大した事無い座敷童じゃが、世話にならさせてもらうのじゃ」

父「おう、世話になってけ。こっちも大したもてなしは出来ないけどな」

座敷童「父殿……、皆、宜しく頼むのじゃ」ニコッ

……


……

その日の夜はわっしの歓迎会となった。

皆で楽しく過ごせた。

こんな風に自身を幸せだと感じたのはいつぶりだっただろうか。

願わくば、この幸せが永遠に続いていくと思いたいが、人間には寿命があり、わっし自身にも限界はいつかくる。

しかし。

その日の夜、わっしは夢を見た。

たまに見る過去の出来事や、訳の分からない夢ではない。

何か現実的な感覚の夢。

やや歳を重ねた父と母。

大人っぽくなった女と弟。

それだけではない。

見知らぬ男性と女性。

背格好が瓜二つの女の子が二人。

白い耳と尻尾の生えた女の子がこちらを見ていた。

あれは誰なのじゃろうか…………

……


……

家の庭

座敷童「……ふぅ、今日は良い天気じゃ。女と弟は学校じゃが、窓際で座りながら飲むお茶は美味いのぅ……」ズズズ

母「座敷童ちゃん。お隣いいかな?」

座敷童「母殿か。勿論じゃ」

母「お邪魔しまーす」スタッ


座敷童「ところで母殿や。その小皿に取ってある出涸らしの煮干しはどうしたのじゃ?」

母「これはね。だいたいこの時間にくるお客さん用よ」

座敷童「お客さんとな?」

ガサガサ……

母「たぶん来たわね」


猫「ニャーゴ……」スタスタ

座敷童「白い猫か……。成る程のぅ、それはこの客じんのご馳走という訳かの」

母「ちょっと前からよく来るようになったのよね。別に餌付けとかはしてないのによく来るから、今はちょうどこんな風に煮干しとかあればあげてるわ」

座敷童「そうじゃったか。……ふぅむ。白い猫のぅ」


猫「……」パクパク

母「じゃあ、私は買い物とか行くから、座敷童ちゃん、猫ちゃん、またね」

猫「ニャーゴ……」パクパク

座敷童「気をつけてのぅ」


座敷童「……」

猫「……ニャーゴ」

座敷童「食べ終わったのか。じゃあ、母殿は出かけたし、また好きな所に行けば良いのじゃ。わっしはここでまったりお茶をしてるからのぅ」ズズズ

猫「ニャーゴ」ボフッ

座敷童「…何故わっしが膝枕する事になるのじゃ」


猫「……ニャー……ゴロゥー…………」ウトウト

座敷童「猫め……。すっかりここで寝る気満々じゃな……」

……

猫「…………Zzz」スースー

座敷童「寝おったか。てか、寝付きよすぎないか、此奴……」


座敷童「しかし、何じゃろうのぅ……。お前さんを見ていると、昨夜見た夢をちょいと思い出すのぅ……」

猫「…………Zzz」スースー

座敷童「白い毛並みのせいじゃろうかのぅ……」

猫「…………Zzz」スースー


座敷童「うぅむ……まさかのぅ……。あの夢でちょっと雰囲気が違う女たちが出てきたのは気になるが……。それに全く知らん者たちもいたしのぅ……」

猫「…………Zzz」スースー

座敷童「……しかし、どうだとしても、お前さんとはこれからよく会う事になるじゃろうな。それに……長い付き合いになるかもしれんのぅ……」ナデナデ

猫「……ニャー……ゴロゥー……Zzz」スースー

……

今日はここまでです
あともう少しありますので、宜しければもう暫くお付き合い下さい


わっしがこの家に来て、家族として迎え入れてくれてからは様々な事があった。

家族の皆、楽しい事もあれば、辛い事もあった。

しかし、女と弟は勉学をしっかりとやり、無事に進学した。

父と母も相変わらず仲良くやっている。

女は進学後は就職した。

仕事は大変そうだったが、楽しそうだった。

そして、女は最愛の人を見つけ、籍も入れた。

しっかりとした男性で、わっしも安心した。

最初、女は一緒に来るか聞いてきたが、新婚生活を楽しんでほしい事と、まだ弟が家にいるので断った。

弟も進学し、無事に企業に内定を貰った。

働き出してからは、社会勉強も兼ねて一人暮らしをしたいと言って、弟は家を出て家からそれほど遠くないアパートで暮らしている。

今は家から家族が二人減ってしまった。

ちょいと寂しいと感じる時もある。

しかし。

二人が頑張っていると考えると、わっしは寂しいとばかりは思わない。

それに。

今はわっしに妹分も出来た。

まだまだ幼く、未熟者だが、頼りないわっしと一緒に歩んでくれる優しい奴。

そして。

時季は冬、年が明ける前。

今年の年末は、ちょいと忙しそうじゃ……




ダッダッダッ



「座敷童しゃまー!あけましておめでとうニャー!」



座敷童「……猫又よ。その挨拶はもうちょいと時間が経ってからじゃ」

猫又「うん、知ってるニャ。夜は眠くなるから先に言いにきましたニャ!」

座敷童「……まぁ、よい。どうせだし、今家の前を箒で掃除しようと思うてた所じゃし、お前さんも良ければ手伝うのじゃ」


猫又「……座敷童しゃま。近所の野良猫の出産に立ち会う予定があった気もしたのでさよニャらぁ……」

座敷童「母殿が出汁に使った煮干しあるって言っておった気がしたのぅ……」

猫又「!やっぱり出産は無かった気がするのでお手伝いしますニャ!」

座敷童「……お前さん、分かりやす過ぎじゃ」


ザッザッザッ……

猫又「しかし、今日は座敷童しゃま、嬉しそうな顔しっぱなしですニャー……」ニヤニヤ

座敷童「そ、そんなつもりはないがのぅ……。じゃが、久々にこっちに帰ってくるから、楽しみなのは間違いないのぅ」

猫又「可愛い双子ちゃんも来るんだろうニャー……」ニヤニヤ

座敷童「さっ、口を動かすのも良いが、手も動かしていくのじゃ」ザッザッザッ


ザッザッザッ……

猫又「座敷童しゃまー。これで一通り終わったニャー」

座敷童「うむ。お疲れ様じゃ。ひとりでは大変だった故、助かったのじゃ」

猫又「いえいえニャー。……あっ、こっちに車が来てるニャ」

座敷童「あれは……。弟の車だのぅ」


ブゥーンブルルン ガチャバンッ

弟「やっほー。座敷童ちゃん、ただいま。猫又ちゃん、こんにちは」

猫又「猫のお兄しゃん。こんにちはニャー」

座敷童「お帰りじゃ、弟。……ところで猫又よ、何故に弟を見て猫のお兄さんなのじゃ?」

猫又「車のここに猫がいるからニャ。だから、猫のお兄さんなのニャ」


座敷童「あぁ、砂漠のライオンのマークの事かの。猫足と言われとるが、走り良し、乗り心地良しの良い車よのぅ」

猫又「座敷童しゃまの言ってる事よく分からニャいけど、褒めてるのはよく分かったニャ」

弟「解説は終わりにしてもらって……。まだ姉さんたちは帰ってないよね?」

座敷童「うむ。父と母も買い物行っとるぞ」


弟「そっか……。じゃあ、座敷童ちゃんに先に紹介しようかな」

座敷童「む?誰をじゃ?」

弟「まぁ、待って。あっ、降りていいよ」

ガチャバンッ スタッ

「こんにちはー。座敷童さんと、猫又さんだよね?話は弟君からよく聞いてるよ。それにしても、ふたりとも可愛いなぁー!」


猫又「こんにちはニャー。猫又ですニャー。……ところで、お姉しゃま誰?」

座敷童「……弟の彼女殿?かの?」

弟「えっ、座敷童ちゃん、先に言っちゃう?まぁ、そんなんだけど……」

座敷童「……大体助手席に知らん女子など乗せる訳無いじゃろうし、年末年始なら、尚更彼女だと思うのが普通じゃ」


弟「まぁ、そっか。……じゃあ、改めて。彼女ちゃんだよ。会社の同期なんだ」

彼女「改めて、彼女です。弟君とお付き合いさせて貰ってます。今日はご家族に挨拶に来ました」

座敷童「話は聞いとるようじゃが、座敷童じゃ。こっちのは猫又じゃ。宜しくのぅ。……弟と付き合うとか大丈夫かの?」

彼女「えぇ。弟君とてもしっかりしてて優しいですし、頼りにしていますよ」


座敷童「仲良いなら良かったのじゃ。父や母はもう少ししたら帰ってくるじゃろうし、弟と家の中でお茶でも飲んでおれば良いのじゃ」

弟「じゃあ、父さんたち帰ってくるまで家で待ってようか。彼女ちゃん行こうか」

彼女「うん。じゃあ、座敷童さん。お邪魔します」

座敷童「うむ。ゆっくりしていくのじゃ」

多少時間空きましたが、今日はここまでです。
書き溜めてたので、明日は時間あれば投下できると思います。


ガチャバタン……

座敷童「……やっぱりのぅ」

猫又「んニャ?座敷童しゃまどうしたかニャ?」

座敷童「んや、何でも無いのじゃ。……む、父の車が来たのじゃ。……あともう一台きたのぅ」

猫又「母しゃま帰ってきたのニャ!後ろの車は誰ニャ?」


……

「「ママー!もうすぐでおじいちゃんのいえー?」」

「そうだよ。二人とも長い距離で疲れたでしょ?」

「ううん。だいじょうぶだよー」

「あたしもだいじょうぶー」

「そっかぁ。二人ともきちんとおじいちゃんとおばあちゃん、座敷童さんに挨拶するのよ?」

「「はーい!」」

「あなたも長い距離お疲れ様」

「ああ、ありがとう。さっ、着いたよ」

……


ブォーンブルルン ガチャバンッ
グォーンブルルン

父「座敷童、ただいま」

座敷童「お帰りなのじゃ。そういえば、弟が待っとるから二人はすぐ家に入ると良いぞぅ」

母「車停まってたと思ったら、もう入ってたのね」

座敷童「会わせたい人がおるそうじゃから、楽しみにしておると良いぞ」


父「会わせたい人か……。あれかな?」

母「そうね。もういい歳ですから。楽しみね」

座敷童「お察し通りじゃろうし、早く行ってやるのじゃ」

父「ああ。じゃあ、先に行ってるよ」


スタスタスタ……

座敷童「さて、あとは……」

ガチャバタン



「座敷童、ただいま。久しぶり」






「待っとったぞ。女」



女「あれっ?!座敷童、髪切ったの?随分思い切ったのねぇ」

座敷童「まぁ、気分替えじゃ。と言っても、肩辺りまでじゃがのぅ」

女「そっか。洗髪が楽になったでしょ?」

座敷童「まぁの。これなら誰かの手を借りずとも楽々じゃ」


女「長かった事考えると勿体無い気もするけど……、良く似合ってるよ」

座敷童「女に似合ってると言われたなら大丈夫じゃな。さて、双子ちゃんと旦那殿は元気かの?」

女「双子は元気有り余ってるくらいだし、旦那も病気知らずだよ。あっ、ちょうど降りてきた。……ほら、二人とも、ご挨拶してね」



双子姉妹「「こんにちは、座敷童おねえちゃん。おせわになります!」」ペコッ

夫「座敷童さん、お久しぶりです。今日は一家全員お世話になるから宜しくお願いします」

座敷童「長旅お疲れ様じゃ、旦那殿と双子よ。ゆっくりしていってのぅ」

双子姉妹「「はーい!」」


双子妹「座敷童おねえちゃん。おうちはいってあそぼ?」

双子姉「妹。座敷童のおねえちゃんは、おそうじしてたみたいだからあとでね」

座敷童「別に構わんぞ?掃除は済んだしの。片付けたら家に入るので、二人は父上と先に上がってると良いぞぅ」

夫「座敷童さん、すいません。じゃあ、二人とも、お母さんの家に入ってようね」

双子姉妹「「はーい!」」


スタスタスタ……

座敷童「ふむ。姉妹どちらも元気で良い子に育っておるのぅ……」

女「そう言ってもらえると、母親冥利につきますな」

座敷童「大丈夫じゃ。あと10年したら『パパとママウザい』とか言われるやもしれんがのぅ……」

女「そんな事言わないでよ。私はともかく、夫君溺愛してるからさ……」


座敷童「まぁ、未来は分からないモノじゃが……。あの子たちはお前さんの子供じゃ。親に優しいお前さんを考えれば、そんな事にはならんじゃろ」

女「うーん。思春期辺りは複雑だからねぇ……。どうなる事やら……」

座敷童「わっしが言うから大丈夫じゃ。安心せい」

女「うん。そうだね。じゃあ、うちの子たちと遊ぶ約束してたんだし、宜しくお願いしますよ?」

座敷童「うむ。まぁ、わっしにかかればお茶の子さいさいじゃ!」


女「そうそう、猫又ちゃんにお土産あるし、家でうちの子と遊んでいかない?」

猫又「あちきにお土産ニャ?!やったのニャ!あちきも座敷童しゃまと一緒に双子ちゃまの面倒見るニャ!」

座敷童「ふむ。では、双子を待たせるのも悪いし、早く家に入ろうかの」

女「それじゃ、久々に実家でまったり楽しもうかな」

スタスタスタ……


……


……



双子姉妹「「……Zzz」」スースー



女「……大丈夫?座敷童、猫又ちゃん」

猫又「あちきは大丈夫なのニャ……。街の野良猫たちや、その子供たちと遊んでるからニャ……。でも、疲れたのニャ……」

座敷童「なんというか……。あの年頃の子が元気余りまくりなのは、父の件で知っとるが……。お前さんの所は双子とはいえ、何とかなるかと思いきや……。お前さん、よく身体が持つのぅ……」

女「私も大変だけど、なんか慣れたというか、どうにでもなるからなぁ……」

座敷童「……母は強しというヤツかのぅ。わっし、子供産んだ事無いから分からんが……」


猫又「うニャ……!そういえば、もうこんな時間なのかニャ!あちきはそろそろおいたましますニャ!」

女「あっ、猫又ちゃん!お土産渡してないからちょっと待って!」

猫又「んニャ!そういえば、女しゃまからお土産貰って無かったニャ。お土産とは何かニャ?」

女「じゃあ、ちょっと目瞑っててね?」

猫又「はーいニャ……」


……リリーン

女「はい、猫又ちゃん良いよ。どうかな?私は似合うと思って、鈴の付いたチョーカー選んでみたんだけど……」

猫又「……うニャー!あちき、めがっさ嬉しいニャ!ありがとうなのニャ、女しゃま!」

女「いえいえ。これからも座敷童と仲良くしてあげてね」

猫又「勿論だニャ!座敷童しゃまはあちきのお師匠様ですからニャ!座敷童しゃまの事はあちきにお任せするニャ!」


座敷童「猫又よ。女からの贈り物に喜んどる所悪いが、わっしからもこれを渡すのじゃ」ガサッ

猫又「……ニャー!新品の煮干し沢山入ってるニャ!座敷童しゃま良いのかニャ?!」

座敷童「普段こちらも色々世話になっとるし、今日は掃除を手伝ってくれたからのぅ。野良猫の皆と分けて食べれば良かろう。ただし、食べ過ぎないように気をつけるんじゃぞ?」

猫又「座敷童しゃま、ありがとうございますニャ!皆も喜びますニャ!」


女「大丈夫だとは思うけど、夜道だし気をつけてね」

猫又「女しゃま、心配してくれてありがとうなのニャ。お土産大事にしますニャ」

座敷童「ではまたのぅ。……猫又よ、良い年を過ごすんじゃぞ」

猫又「はいニャ。座敷童しゃま、今日は遅くまでありがとうございますニャ。では、猫又はおいたましますニャ。お二方、良いお年をニャー」バイバーイ

ガチャバタン……リリーン…………

本日はここまでになります。
休日や書き溜めの関係で2~3日空くかもしれませんが、引き続き宜しくお願いします。


座敷童「いやぁ、双子の面倒見るはずが、猫又の相手をしてもらってすまんのぅ」

女「ううん。こっちこそ、双子が苦労かけちゃったからね。でも、二人とも楽しそうだったし、本当に座敷童と猫又ちゃんには感謝だよ」

座敷童「さて、わっしらはどうするかのぅ?父と母、夫殿と双子は明日の初詣に備えて寝たしのぅ」

女「じゃあさ、座敷童。ちょっとだけ付き合ってよ」

座敷童「?」


リビング

女「はい、これ」スッ

座敷童「……ビールかの。わっし、あまり好きじゃないんだが……。まぁ、女と酒を交わす事は貴重だからの、付き合うてやるかの」カシュ

女「そうこなくっちゃ。じゃあ……」カシュ



女・座敷童「「乾杯(じゃ)」」コツンッ


ゴクゴクゴクゴク……

女「ぷはぁ。あぁ……五臓六腑に染み渡るぅ……」フー

座敷童「お前さん、おっさん臭いぞ。それじゃと」

女「細かい事は気にしないの。せっかく座敷童と水入らずなんだしさ」ゴクゴク

座敷童「まぁ、わっしもお前さんと酒を交わすのは悪い気はせんのぅ」ゴクゴク


座敷童「しかし、こうやってふたりきりで酒を飲んでると、家に来たばかりの時に、父と深夜に話しながらお酒を飲んだ時の事を思い出すのぅ……」

女「そういえば、座敷童が来たばかりの時、そんな事あったわねぇ……。私は影で聞いてただけだけど」

座敷童「あれからだいぶ経つんじゃなぁ……。お前さんは結婚して二児の母、弟は就職して彼女も出来たと……。何だか感慨深いのぅ」

女「更に言うと、今は猫又ちゃんのお師匠様までやってると。座敷童さまは人気者ですなぁ」


座敷童「師匠とかはあやつが勝手に言うとるだけじゃ。……全く、猫又は騒がしいヤツじゃよ」ゴクゴク

女「まぁまぁ、慕われてるのは良い事だよ」

座敷童「……まぁ、同じ妖の類が近くにおるのは、案外悪くはないがのぅ」

女「ちょっとだけ素直じゃない所。座敷童は変わらないねぇ」ゴクゴク


座敷童「そうかのぅ……。じゃが、あやつのおかげか、最近は全く暇しないし、話相手になってくれるのは正直ありがたいのぅ」

女「一時期いつも来る白い猫が来なくなったと思ったら、まさかの猫又になって来た時は驚いたけどね」

座敷童「わっしもまさか妖の類になって現れるとは思わなかったのぅ。じゃが、母が慕っておった事や、あやつがそれだけ仲間に大事に思われてたんじゃろ。でなければ、あんな風になる事は無いはずじゃしのぅ」

女「座敷童もよく相手してあげてたし、案外猫又ちゃんは座敷童こそ、大切に思ってるんじゃないかな」


座敷童「あやつがかの?図々しいし、そんな事はないじゃろ」ゴクゴク

女「ま、それは猫又ちゃんのみぞ知るって事で。にしても、弟が今日まさか彼女連れてくるとは思わなかったわ……。お姉ちゃんびっくりだよ」ゴクゴク

座敷童「……それは、わっしもじゃ。今はもう彼女殿のご実家に行くというて、二人で出て行ったが……。もう無事着いた頃かの?」

女「○○市だと、もう着いた頃でしょ。夜だし、年末とはいえ、テレビ見たり家族団欒で、外は車少ないだろうからね」


座敷童「弟が挨拶する時に粗相が無いと良いが、どうかのぅ……」

女「弟はしっかりしてるし、大丈夫でしょ。お姉ちゃんが保証しますよー?」

座敷童「まぁ、女がそう言うなら大丈夫かのぅ」ゴクゴク

女「そうそう。……でも、失敗して帰ってきたら、それはそれでネタになるから面白いかもよぅ?」ゴクゴク


座敷童「ま、何事も経験じゃし、仮に失敗しても、明日の糧になるじゃろうしの」

女「そうだね。経験といえばさ、うちの娘たちが、私が炭酸飲んでた時に飲みたがってさ、渡して飲ませたら、『喉痛いからもう要らない』とか言って返されたし」

座敷童「双子はまだ小さいしの。確かにあのシュワシュワは苦手やもしれんのぅ……。と言っても、わっしも炭酸はあまり得意では無いがの……」

女「ま、そこは老若男女、得手不得手があるから仕方ないよ。私はお酒好きだしザルだけど、夫君は私よりは下戸で、あまり沢山は飲まないしね」


座敷童「そういえば、夫殿は酒の類に手を伸ばさなかったのぅ。苦手だったのじゃ仕方ないのぅ」

女「でも、全く飲まないわけじゃないんだけどね。あとは、パパやママも飲んでたし、いざって時に車運転出来るように、あえて飲まなかったんじゃないかな?」ゴクゴク

座敷童「まぁ、何かあるとは思わんが、万が一があるしのぅ」ゴクゴク

女「そうそう。それでさ、お酒入ったついでに聞いてみたい事あるんだけど……いい?」


座敷童「何じゃ急に?」

女「座敷童って力が無いって言ってたけど、戻る事って無いのかなぁって」

座敷童「力が戻る事のぅ……。しかし、何でまたそんな事聞くんじゃ?」

女「勿論、悪用したいとか、無いと困るって事じゃないんだけどさ……。双子の事が見られたならいいなぁって思ってさ」


座敷童「ようは、二人の事に心配するような事がないかが知りたいのじゃな?」

女「そうだね。なんだか、母親になると子供の事が心配になっちゃってねぇ……。勿論、二人とも悪い事したりしないけどさ、何かに巻き込まれないかとか、そういう事が無いかちょっぴり不安になるんだよ」

座敷童「妖なわっしじゃあまり言葉に重みが無いじゃろうが、そう思うのは親なら自然な事であろう?腹を痛めて産んだお前さんなら、それは尚更じゃろうしのぅ」

女「そうだろうねぇ。二人の事は信じてるけど、やっぱりそういう事なんだろうね」


座敷童「それはそうじゃろうのぅ。……じゃが、さっきの質問の答えはノーじゃな。残念ながらわっしの力は元には戻っていないの」

女「うん……。なんかごめんね。変な事聞いちゃって」

座敷童「構わぬ。女も母親じゃろうが、一人の女性であり、父や母から見たらなんだかんだで子供なんじゃ。不安な気持ちを持つのは変な事ではないじゃろ。わっしで良ければいつでも話や愚痴くらいは聞いてやれるしの」

女「うん。ありがと、座敷童」


ゴクゴク……コトッ……

女「ふう、ご馳走様」

座敷童「お粗末様じゃ。わっしもちょうど飲み終わったの」

女「どうする?もう一杯いかがですか座敷童さま?」

座敷童「一杯だけ言うたじゃろうに。わっしは、苦いしシュワシュワがあまり得意でないんじゃ……」


女「そういえば、そうだったね。ありがとう、付き合ってくれて」

座敷童「それは全然構わぬ。じゃが……、明日の寝起きは悪いやもしれんがの……」

女「私たちは初詣行くだろうし、座敷童はゆっくりしてればいいよ」

座敷童「そうしようかの。さて、お前さんたちは朝出かけるじゃろうし、年が明ける前に寝るとするかの」


女「それもそうだね。じゃあ、私の部屋行こうか」

座敷童「そうじゃな。すでに眠いし、早く行くかの……」ファー……

…………

……




『……ちゃん!座……ちゃん!座敷童さん!私、無事に高校卒業出来ましたー!』



『こら、……、座敷童さんでしょ。』



『もう、……はお堅いなぁ』



『全く、……ったら。座敷童さん、私も無事に高校卒業出来ましたよ』



『それに、二人とも大学受験もバッチリだったしね』



『座敷童さんが応援してくれたから、二人とも合格出来ましたよ。本当にありがとうございます』



『私も応援嬉しかったよ!ありがと、座敷童ちゃん!』



『大学に入ってからも、色々相談事とかするかもしれないけど、私たちの為に色々教えて貰えると嬉しいです』



『私も色々頼っちゃうかもだけど、これからもお願いね!』




……

…………

ムクッ……

座敷童「……ん……夢かの……」ポワァ……

クルッ

女「……Zzz」スースー

双子姉「……いもうとぅ……Zzz」スースー

双子妹「……座敷童おねーちゃーん……Zzz」スースー


座敷童「…………」



座敷童「……女よ。双子はお前さんが不安にならなくとも、大丈夫やもしれんのぅ」



座敷童「……まだ、こんな時間じゃし、もう一眠りするかの」



ポフッ…………

……


年が明けてから女たちは初詣に行ったり。

皆で家でご飯を食べたり。

わっしと双子姉妹や女と遊んだり。

とにかく楽しい時間を過ごした。

しかし……

名残惜しいが時間は進み女たち家族が帰る時が来た。

……


……バンッ

夫「女ちゃん、荷物積み終わったよ」

女「ありがと。じゃあ、また長距離運転宜しくお願いしますよ」

夫「ああ、任されたよ。そういえば、双子姉妹はまだ家かい?」

女「帰るの寂しいみたいでさ、今座敷童に妹ちゃんがべったりしてるよ」


トテトテ……リリーン……

猫又「女しゃま、おはようございますニャー!」

女「おはよう、猫又ちゃん。お見送り来てくれたんだ。ありがとう」

猫又「今日帰ると聞いてたからニャー。双子ちゃまたちが見当たらないニャー……。家かニャ?」

女「うん。今座敷童に帰りたくないって駄々っ子になってる」

……


女の部屋

双子妹「いやだー!座敷童おねえちゃんとはなれたくないー!わたしかえらないー!」グスグス……

双子姉「妹ちゃん、座敷童おねえちゃんにいじわるいっちゃ、め!」

双子妹「うわーん!かえるのいやー!」グスグス……

双子姉「妹ちゃんったら……。座敷童おねえちゃん、妹ちゃんがわがままいってて、ごめんなさい」


座敷童「双子姉よ、謝らんで良い。お前さんの年頃じゃ、仕方ないのじゃし」ナデナデ……

双子妹「うー……。座敷童おねえちゃんはバイバイしてさびしくないの……?」グスン……

座敷童「……誰じゃって、家族と離れるのは寂しいもんじゃよ。お前さんたちの母も、祖父と祖母と離れるのは寂しいと思ってるじゃろうしの」

双子妹「……ママも?」


座敷童「そうじゃ。お前さんたちの父や母は立派な大人で、お前さんたちの親じゃ。じゃがの、大人とはいえ、お前さんたちと同じ『人』なんじゃ」

座敷童「じゃから、まだ小さなお前さんたちを不安にしないように、強く振舞っているもんなんじゃよ」

双子姉「……そうだよね。ママもおじいちゃんとおばあちゃんと、はなれるのさびしいよね」

双子妹「……うー。でも、座敷童おねえちゃんとはなれるの、やっぱさびしい……」


座敷童「そうじゃの……。お前さんたちにちょっと話をしてやろうかの」

双子姉妹「「おはなし……?」」

座敷童「じゃが、お前さんたちとわっしの秘密に出来るかの?」

双子姉妹「「うん、できる!」」


座敷童「そうかの。二人とも良い子じゃ。……実はの、わっしはお前さんたちらしき夢をこの前見たのじゃ」

双子姉妹「「ゆめ?」」

座敷童「そうじゃ。夢の中のお前さんたちは、立派に成長しておった。昔、お前さんたちの母がこの家に住んでた頃と同じ歳くらいにはなってたかのぅ……」

双子姉「おっきくなったわたしたちって、どんなかんじ?」


座敷童「今と似た感じじゃったかものぅ。姉は落ち着いておって、妹はちょいとやんちゃというか、お転婆な感じじゃった。じゃが、二人とも優しそうな良い子じゃったな」

双子妹「ゆめのわたし、おっきくなって、ちゃんとしてたの?」

座敷童「そうじゃな。さっきみたいに泣いてしまうような弱そうな娘では無かったの。じゃから双子妹、そんなに泣くのはいかんのぅ」

双子妹「……うん。じゃあ、泣かないで座敷童おねえちゃんとバイバイする」


座敷童「そうじゃ、それで良い」ナデナデ

双子妹「うん。ありがと、座敷童おねえちゃん!」

座敷童「それと、お前さんにもじゃ。お姉さんだから大変じゃろうが、これからもしっかりするのじゃぞ?」ナデナデ

双子姉「うん!座敷童おねえちゃん!」

座敷童「さて、待たせてしまっておるし、外に行くかの」


女「あっ、来た」

座敷童「すまんのぅ。二人とも連れてきたのじゃ」

女「ありがとね。じゃあ、二人は車に乗っててね」

双子姉妹「「はーい」」


ガチャ……バンッ

女「それじゃ、座敷童さま、この度はお世話になりました。パパとママにも宜しく伝えておいてね」

座敷童「うむ。出かけてる二人に伝えておくのじゃ」

女「あと、弟には彼女さんと仲良くねって伝えておいて。次はまたお盆とか、年末年始になると思うけど、また来るね」

座敷童「分かったのじゃ。皆で楽しみに待っておるぞ」


女「猫又ちゃんもありがとね。今度またうちの子供たちと遊んであげてね?二人とも猫又ちゃんの事好きだからさ」

猫又「勿論良いのニャ!あちきで良ければ任せてほしいのニャー!」

女「じゃ、また来た時に宜しくお願いするね。じゃ、座敷童、猫又ちゃん、またね」

座敷童「……女よ。ちょいと一言良いかの?」


女「ん?何?」

座敷童「二人っきりで話した時の事じゃが、お前さんはしっかりしておるし、双子もしっかり良い子に育っておる。わっしの力があったとして、そんなもんなんぞで見ずとも大丈夫じゃ。あの子たちを信じて、共に歩んでいけば良いのじゃ」

女「うん、ありがと。……じゃ、私も帰る前に一ついい?」

座敷童「構わんぞ。なんじゃ?」


女「あんなに帰りたがらなかった双子妹がすぐ言う事聞くなんて珍しいからさ。座敷童がどうやって連れてきてくれたのかなぁ……ってね」

座敷童「……すまんの。これについては秘密じゃ。双子姉妹とも約束したしの」

女「……そっか。ま、座敷童なら変な約束とかじゃないだろうしね。じゃ、私たちそろそろ行くね」

座敷童「うむ。気をつけての」


バンッ……ウィーン

双子姉妹「「座敷童おねえちゃん、猫又のおねえちゃん、バイバーイ!」」

女「じゃあね、座敷童、猫又ちゃん」

座敷童「また来るんじゃぞ」

猫又「バイバイニャー!」

ブゥーン……

……


車内

夫「じゃあ、おうちまで帰るから、三人とも眠かったら寝るようにね」

双子姉妹「「はーい」」

女「夫君も無理しないでね。途中良ければ運転代わるからさ」

夫「ありがとう。キツくなったら頼むかもしれないから宜しくね」

女「オッケー、了解です!」


夫「そういえば。お姉ちゃんと妹ちゃんは、帰る前に座敷童のお姉さんとどんなお話してたのかな?」

双子妹「おはなしのことはないしょだから、パパにもママにもはなせないの」

双子姉「うん。座敷童おねえちゃんとやくそくしたから、だめなの」

女「ふぅーん。でも、良いお話だった?」

双子姉妹「「うん!」」


女「じゃあ、座敷童お姉さんが話して良いって時になったら、パパやママにもお話の事教えてね」

双子姉妹「「はーい」」

……

数十分後

双子姉妹「「……Zzz」」スースー……

夫「女ちゃん。座敷童さんはどんな話をして妹ちゃんを説得したと思う?妹ちゃんって、なかなか根負けしないから、気にならない?」

女「確かにそうだよねぇ。うーん……、わからないなぁ。でも……、あの子たちにとって大事な事、話してあげてたんじゃないかな?」


夫「大事な事か……。どんな事だろうなぁ」

女「それは二人と座敷童の秘密だって言うから、話してくれる時にならないと、私たちじゃ分からないかもね」

夫「それもそうか」

女「そうだよ。だからさ、話してくれる時が来るの、楽しみに待ってようよ」

夫「そうだね」




女(実家で話した時、座敷童は今も力が無いって言ってたけど…………)



女(案外、今は私たちの何かを『見てた』りして…………)



女「……まさかね」



……


……

家の庭

猫又「父しゃま、母しゃま、女しゃま家族、猫のお兄しゃんたち、みんないないと静かですニャー……」

座敷童「そうじゃの……」

猫又「やっぱり、座敷童しゃまでも寂しいですかニャ?」

座敷童「そりゃのぅ。じゃが……」


猫又「じゃが?」

座敷童「また来てくれるはずじゃ。じゃから、その日まで楽しみに待っておくのじゃ」

猫又「ニャ!あちきもまた双子ちゃまと楽しく遊びたいですニャ!」

座敷童「そうじゃの。また双子姉妹と楽しい時間を過ごしたいのぅ」


猫又「ニャ!では、あちきは町内のにゃんこパトロールがあるのでおいたましますニャ!」

座敷童「どうせじゃし、わっしも散歩がてら、ついていって良いかの猫又よ」

猫又「勿論ですニャ!みんな喜びますニャ!」

座敷童「そうかの。では、鍵をかけるので、待っておれよ」

猫又「はーいニャー!」

……


300以上の歳月を過ごしても、大切な人と離れるのは、まだまだ正直寂しい。



じゃが、祖母や女たちのお陰か、ちょいとじゃが、悲観的に感じなくなれた。



不安だったり、寂しいと思えるのは、きっと大切であるからなのじゃと気づけた。



今は大切なものがちょいと増えた分、寂しい気持ちも増えた。



じゃが、大切なものと会う嬉しさ、幸せな気持ちはもっと増えた。



願わくば、このちっぽけな妖のわっしを……



いつ消えてしまうか分からないあやふやな存在のわっしを……



どうか、少しでも長く、大切なものたちと過ごす時間を下さい。



せめて、大切な女が幸せな人生を終えるまで……



せめて、大切な双子姉妹と内緒話で話した年頃まで……



せめて、大切な妹分がしっかり一人立ち出来るくらいまで……



仏様、神様、もしいらっしゃるなら、どうか……どうか…………



嘘つきで、大切なものにちょっと隠し事をしてしまったわっしに……



力を無くしながらも存在する事が、罪や罰としておるなら……



昔、あやふやになった力によって、ついた嘘の罪を背負います。



大切なものたちに、予知夢を見てた事を内緒にしている罰を受けます。



だから……



それなら、わっしは予知夢を見る必要はありません。




でも、その代わりに……



その時は一分一秒でも長く、償いの時間を下さい。



でも…………



皆の幸せの為に、予知夢を見られるなら……



皆と幸せな時間を過ごす事を許しておられるなら……



こんなワガママなわっしに……



皆の幸せを見守る為に、この世にいられる時間を沢山下さい。




ガチャン……

座敷童「戸締まりは良いの。では、猫又よ、行くかの」

猫又「はーいニャー!」ダッダッダッ

座敷童「走るでない。わっしは走るの苦手じゃし、お前さん転んでしまうぞ」

猫又「あちきは猫ですし、大丈夫ですニャー……ニャニャー!!」ドテッ


座敷童「言うとるそばから……。猫又よ、大丈夫かの?」

猫又「……うニャ、大丈夫ですニャ。申し訳ないのニャー……」スタッ……ペコリ





座敷童「……焦る事は無いんじゃし、歩いていくぞ。今日は時間に余裕があるしの」





猫又「はいニャ、座敷童しゃま!」





トコトコ……
リリーン……





終り。

これにて終了です。
駄文に付き合って頂いた方、本当にありがとうございます。
初SSで一月近くかかりましたが、とても楽しくやれました。
書いてみたい題材はあるので、また機会があれば宜しくお願いします。

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