姉妹「 「とある田舎町の姉妹の夏」 」 (66)

百合えろ注意

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姉「はあっ、はあっ……やばああっ、バス行っちゃう!」タッタッタ

妹「ば、バスー!! ま、待ってぇぇ!!」タッタッタ




プップー、ブロロロロロ……




姉「はあっ、はあっ、はあっ……あー」

妹「はあっ、はあっ……あー、行っちゃった……」

姉「はあっ、はあっ……何のためにこんなあっちい中走ってきたんだろ……」

妹「うう、汗だくだよー……」

―――――――――――――――――――――――




ここは、とある田舎町。
これと言った大きな娯楽施設もなく、また百貨店なんぞもなく、虫の声が鳴り響く田んぼやら原っぱが続いているような町。




妹「あー、次のバス、45分後だってさ」

姉「うげえ……遅刻確定じゃん……」




バスを1つ乗り損ねようものなら、次のバスが来るまで30分以上も待たされる。 なんてことも日常茶飯事である。




姉「あー、あぢー」

妹「座ってるだけで汗が出てくるよー……」




そんな田舎町に、仲のいい姉妹が住んでいた。
バスの停留所のベンチに座り、バスを待つ姉妹。
彼女らは、この狭い田舎町ではちょっとした有名人である。




姉「あつい」

妹「夏だもん」




恨めしそうに太陽を見上げる姉と、すずしげな表情で姉を見ている妹。
姉は活動的で、常に暴走しがちである。
その暴走を諌めるのが、妹である。

妹「……」

姉「う~、太陽なんて消えてしまえ~」




が。
やはり姉妹であるからか、妹も暴走するときがある。




妹「……」

姉「……ん? 妹?」




ジト目で姉を見ているかのようにみえる、妹。
だがその瞳には、どこか熱っぽさを含んでいた。




妹「……お姉ちゃん」

姉「ん? うわっ、わっ」




隣でだらけている姉の膝に、妹がまたがった。
対面になるような形で、姉の首から背へと姉の頭を抱くように両腕を回し、至近距離から妹が姉の目を見つめた。
その瞳にはやはり、熱がこもっている。




妹「まだ、時間あるから……」

姉「……どうして、スイッチ入っちゃったの?」

妹「……お姉ちゃんの制服」




二人は学校の制服であるセーラー服を着ていた。
バスに乗ろうと走ってきたため汗をかき、そのせいでセーラーが肌にはりつき、微かに肌が透けていた。




姉「……みょーなフェチを持ってるね、妹は」

妹「別にフェチってわけじゃないけど……」

姉「誰か来たらどうすんのさ?」

妹「来ないと思うけど……念には念を、だね」




妹は一度姉の膝から降り、姉の腕を引いて停留所の奥へと入った。
姉をベンチに座らせ、再び妹が膝にまたがった。

姉「……あんま変わってなくない?」

妹「多少は見づらくなったんじゃないかな? ほら、ここ暗いし、外は明るいし」




妹が姉の胸のリボンをほどき、上着をたくしあげた。




妹「ん……」

姉「んぅ……」




姉妹がそっと、唇を触れ合わせた。
妹はブラに覆われた姉の胸をふにふにと揉みながら、ついばむように姉とキスをする。




姉「んっ、ぅ、ん……」

妹「は……ん、ちゅ……」




唇を触れ合わせては離すのを細かく繰り返すキスが、だんだんと唇を触れ合わせる時間が長いキスへと変わってきた。
触れ合わせているときに、くちゅくちゅと舌を絡め合わせる水音が響く。




妹「んっ……ちゅぅっ……」

姉「んぷ、んっ……れりゅっ……」




妹が姉の胸を愛撫する手を止め、キスに没頭した。
ぐっと姉の頭を抱き、姉もまた妹の頭に腕を回し、抱いた。
お互いに唇を押し付け合うかのように、キスを続ける。




妹「ん、ぅ……ふぁぁ……」

姉「ぷはあ……はぁ……」




とろりと唾液の糸を引いて、二人の唇が離れた。

姉「妹……もっと……」

妹「んむっ……おねえひゃ……んっ……」




姉がぐっと妹の頭を引き寄せ、再びキスが再開された。
姉の舌が妹の口の中に入り込み、容赦なく蹂躙する。




妹「んむっ、んっ、んぅぅっ!」

姉「れるっ、んっ……ぷぁっ……!」

妹「はあっ、はあっ……お姉ちゃんのキス、きもちい……」

姉「妹のキスも、すっごく気持ちいいよ……」




うっとりとした表情で、姉妹が見つめ合う。




妹「お姉ちゃん……。 足、上げて……」

姉「ん……」




スカートをまくり、姉が靴を履いたまま、M字開脚のような形になるように両足をベンチに載せた。




妹「んしょ……」

姉「ぁっ……!」




妹がぐっと腰を擦り寄せ、下着をはいたままの秘部と秘部とを触れ合わせた。

妹「ん……うごく、ね……?」

姉「うん……」




停留所に、すりすりと衣擦れの音が響く。




妹「はっ……ぅっ……」

姉「んぁ……あっ……」




衣擦れの音は、やがて粘り気の混じった水音へと変わってゆく。




妹「はっ、はっ……ふうっ……」

姉「んぅぅっ、あんっ……」

妹「はあっ……お姉ちゃん、ちょくせつ……」

姉「うん……これじゃ、たりないよ……」




姉妹がお互いの下着に手をかけ、くいっとずらして秘部をあらわにし、再び触れ合わせた。




妹「んっ……あ……っ!」

姉「ひゃぁっ……!」




くちゅんっ、という音をたてて、姉妹の秘部がぴったりと重なった。
妹が、それを擦り合わせるように腰を動かす。

妹「んあっ……! ふっ、ふぅっ!」

姉「んっ……くっ……! はあっ、んぅぅっ!」




さすがに野外であるからか、姉妹は必死に声を抑える。
しかし、濡れそぼった粘膜同士が擦れ合う快楽に、どうしても声が漏れ出てしまう。




妹「ぁっ、ぅあっ、ああっ……!」

姉「はふっ、ふっ、んんっ……!」

妹「お、おねえちゃっ……」

姉「いもうとぉっ……」




姉妹は絡め合わせていた指を離し、お互いの口に自らの人差し指を挿し込んだ。




妹「んむっ、んちゅるっ!」

姉「ちゅるっ……んふぅっ!」




指をくわえ込み、声を抑えようとしているらしい。




妹「んぷっ、はむっ……!」

姉「ひゃむっ、ちゅぷぅっ……」




粘膜が擦れ合う水音と、指を吸い合う水音と、姉妹がくねくねと腰を動かした際にギシギシと鳴るベンチの音。
それらの音が、より姉妹を昂らせた。




妹「うあぁっ! んっ、くっ……おねえっ、ひゃあっ!」

姉「んちゅるっ、いっ、もう、とぉっ!」




バスの停留所で半裸になった姉妹が絡み合っていることに気がつく者は、誰一人としていない。
それもそのはず、この時間帯にはそもそも通行人が滅多に現れないのだ。

妹「はあっ、はあっ……!」

姉「んくっ、はっ、はあっ……!」




姉妹の呼吸が更に荒くなる。
限界が近づいてきているようだ。




妹「あっ……! わたしっ、わたしっ……!」

姉「んあっ、いもうとっ、私っ、もおっ……!」

妹「んっ、んちゅ、ちゅるるっ……」

姉「んくぅっ、ぢゅるっ……」




姉妹の腰の動きがより激しくなり、口の中に挿し込んでいる人差し指も、ずぷずぷと激しく抜き差しされている。




妹「んひゃあっ、あっ、だめっ、もうっ……!」

姉「あっあっ、いくっ、いくぅぅっ……!」

姉妹「 「んっ、ちゅっ……んんんーーーーっ!!!!」 」




最後に唇を触れ合わせて、ぎゅっと目を閉じ、姉妹は絶頂を迎えた。
身体はびくびくと痙攣し、きつく閉じた目尻には涙が浮かんでいる。




妹「んっ……ぷあぁっ……!」

姉「ふぁっ……はぁっ、はぁっ……」

妹「はぁっ……はぁっ……」




ぎゅっと抱きしめ合い、絶頂の余韻に浸る。




姉「気持ち……よかったあ……」

妹「うん……」




視線を合わせ、姉妹が微笑み合う。

妹「……あ、バス、そろそろ来るよ」

姉「……んー」

妹「どしたの?」

姉「よし、学校サボるっ!」

妹「へっ!?」

姉「暑いし! 川行こ川!」

妹「へ!? ちょっと待っ、わあああっ!」




乱れた衣服を素早く整え、姉が妹の手を引いて駆け出した。
程なくしてやって来たバスは、降りる人もいない無人の停留所に止まるはずもなく、そのまま通過していった。

―――――――――――――――――――――――




姉「どれどれ……。 うん、冷たい」




姉妹は、近くを流れる川にやって来た。
姉が足を突っ込んだ川は、人が横に三、四人並んでギリギリ収まるくらいの幅しかなく、また深さも足首より少し上が水没するくらいまでしかない。
けれど姉妹が来たのは割と上流の方だからか、川の水は透き通っており、種類はわからないが小さな魚が泳いでいたりする。




姉「それっ!」バシャッ

妹「ひゃあっ!? 冷たっ!」




姉が足元の水をすくって、妹に向かって放った。
妹は咄嗟に腕で顔を隠すも、腕にかかった水の冷たさに驚いた。




姉「ふふふ、もっと行くぞー!」

妹「いやあっ、制服濡れるでしょおがーっ!」

姉「いーじゃん、どうせ汗で濡れてるし。 汗より水の方がマシでしょ?」

妹「……確かに」

姉「ならば攻撃さいかーい!」

妹「くぅっ、負けるかーっ!」




ばしゃばしゃと手を使い、足を使って水を飛ばし合う。

姉「……お」

妹「あ」




ばしゃばしゃと水をかけあう姉妹の間に、小さな虹ができていた。
飛ばされた水の飛沫に太陽光が反射してできたものだろう。




姉「おー、虹じゃん」

妹「えいっ!」バシャッ

姉「うわっ!? このっ、虹見て感慨に耽る暇もくれないのかっ!」バシャッバシャッ

妹「感慨になんて無縁のお姉ちゃんが何を言うっ!」

姉「なにおー!!」




容赦なく照り付ける真夏の太陽の光をもろともせず、楽しげに水遊びをする二人。
傍から見ると、それはとても微笑ましいものであった。

姉「あー、涼しー!」

妹「こんだけびしょ濡れになったら、さすがに涼しくなるよ」

姉「ふふー」




姉が妹に擦り寄り、抱きついた。




妹「どしたの、お姉ちゃん」

姉「んふふ、涼しいならくっついてもいいよね?」

妹「もう、甘えんぼだなあ、お姉ちゃんは」

姉「いいじゃん、妹に甘えるくらい」

妹「これじゃあどっちがお姉ちゃんなのか……」なでなで

姉「お姉ちゃんだと妹に甘えられなくなるなら、お姉ちゃんなんてやめてやるー!」

妹「はいはい、甘えていいからメチャクチャ言わないの」

姉「わーい!」




姉妹が、ぎゅっと抱きしめ合う。
濡れた制服越しに感じるお互いの身体の温かさが、川の水で濡れた二人に心地よさを与えた。

姉「……あったかい」

妹「寒いの?」

姉「そういうことじゃなくて」

妹「知ってる」

姉「もう」




不貞腐れたような表情で、姉が妹を睨む。
妹は笑って、姉の唇を奪った。




姉「んっ!? んっ、ん……」

妹「ん……」




唇を触れ合わせるだけの、長いキス。
実際には10秒も経っていないのかもしれないが、姉妹にはとても長く感じられた。




姉「んぁ……」

妹「ふぁっ……」




姉妹は、うっとりとした表情で唇を離した。

姉「……スイッチ、入っちゃった」

妹「わたしも……」




頬を赤らめながら笑いあって、お互いのスカートに手を伸ばす。
下着の中に手を入れる。




姉「あ……濡れてる」

妹「当たり前でしょ、散々水かけられたんだから」

姉「でも、川の水はこんなにねばねばしてないよね」

妹「んんっ……お姉ちゃんだって……」

姉「んあっ……」




川の上で見つめ合いながら、お互いの秘部を責める。
川の水が流れる音と、姉妹の秘部から響く粘着質な水音が重なる。




妹「はあっ……お姉ちゃんのここ、あっつい……」

姉「妹のも、熱くて、とろとろで……」

妹「んっ、ぁっ……やぁっ……」




姉が、指に妹の愛液を絡ませるように指を動かした。

妹「んはぁっ……ぁっ……!」




妹の膝ががくがくと揺れ、姉を愛撫する指が止まった。
妹が倒れないように支えながらも、姉は妹を責める指を止めなかった。




妹「おっ、お姉ちゃん、だ、だめっ……いっちゃうっ……!」

姉「うん、いいよ。 イっちゃえ」

妹「ふあぁっ!?」




人差し指と中指が妹の中に入り込み、ぐりぐりと刺激し始めた。




妹「んぅぅっ!? はうっ、はあぁぁぁんっ!!」

姉「わっ、と」




悦びの声をあげ、びくびくと妹の身体が痙攣した。
姉の手からとろりと愛液が溢れ、川に落ちて流れていく。
妹は立っていられず、川に座り込んだ。




妹「はあ……はあっ……」

姉「気持ちよかった?」

妹「うん……」

姉「そっか……じゃ、次は私の番」

妹「ん、んむっ!?」




座り込む妹の口に、姉が自らの秘部を押し当てた。

姉「んっ……ほら、舐めて……」

妹「ふぁい……んちゅる……」

姉「はっ……あっ……」ゾクゾクッ




入り口付近をぬとぬとと舌でなぞっていく、妹。




姉「んあ……ふあぁっ……」

妹「れろっ、れろっ……」




なぞる度に姉の秘部がひくつき、愛液を零す。
零れた愛液は姉の太ももを伝い、妹の愛液と同様に川へと入り流れていく。




姉「はぅぅっ……やだ……妹、焦らさないで……」

妹「んちゅ……別に、焦らしてないよ?」

姉「だって、周りばっかりで……」

妹「んふふ……わがままだなあ、お姉ちゃんは……」

姉「んひゃっ……あぁっ……!」




ぺろりとワレメを舐め、妹が姉の中に舌を挿入していく。

姉「くふぅっ……はぁっ……!」

妹「んっ……」




姉の中で、にゅるにゅると妹の舌がうごめく。
その度に、姉の中は妹の舌を締め付ける。




妹「んっ……くっ……」

姉「あはぁっ、きもちいっ! もっと……妹っ、もっとおっ!」

妹「んぶっ!? んっ、んぅっ!?」




姉が、妹の頭を掴んで腰を振った。
突き出された妹の舌が姉の秘部に抜き挿しされ、姉を絶頂へと追い詰めていく。




姉「はっ、はっ、はっ……んんぅっ、あんっ! いっ、いき、そっ……!」

妹「んぷっ、んーっ!」

姉「んくぁっ……! あっ、んあぁぁっ!!」




背をのけぞらせ、姉が絶頂を迎えた。
ぱたぱたと愛液が妹の顔を汚していく。
姉はしばらく身体を痙攣させたあと、女の子座りをしている妹の膝に崩れ落ちた。

姉「はあーっ、はあーっ…………」

妹「ん、ん……ちゅる……」




姉が妹を抱きしめて絶頂の余韻に浸っている中、妹は顔に降りかかった姉の愛液を指ですくって舐めとっていた。




妹「んっ……ちゅぱっ。 ふふ、おいし……」

姉「ひゃっ」




一通り舐めとったあと、妹がぺろりと目の前にある姉の耳を舐めた。




姉「はぁっ、はぁっ……妹、えっちだ……」

妹「何言ってんの。 わたしの顔掴んであんなに腰振ってたくせに。 舌、どうにかなっちゃうかと思ったよ」

姉「あ、あれは……きもちよくって……」

妹「お姉ちゃんのえっち」

姉「うー……」

妹「……ふふ、いいよ。 もっとわたしで気持ちよくなって。 わたしも、お姉ちゃんに気持ちよくなって欲しいから」

姉「ん……」

―――――――――――――――――――――――




日が落ち、あたりが暗くなり始めた頃。
姉妹は既に家に帰っていた。




妹「おねーちゃーん、ちょっと手伝ってー!」

姉「んー!」




姉がのんびりテレビを見ている中、妹は台所で夕飯を作っていた。
基本的には、家事は主に妹がこなす。
それもそのはず、この姉、家事が全くできないのである。
部屋の掃除をしようものなら、掃除をする前よりも部屋を汚す。 料理をしようものなら、魔女の作り上げた薬を思わせるようなゲテモノ(実際に妹はそうツッコミをいれた)を作り上げる。
最低限彼女にできるのは、妹の手伝いと洗濯のみである。




妹「食器棚からお皿とってほしいんだけど。 その、二番目のやつ」

姉「はいはい。 これでいい?」

妹「ありがとー、そこに置いてくれる? いま手が離せなくて」

姉「あいよー」




では、姉はいったい何ができるのか。
スポーツはできる。 勉強はダメ。
けれど、こう見えて実は、姉はこの町において結構重要なポストについているのだ。




姉妹「 「いただきまーす!」 」




できあがった料理を皿に盛り付けてテーブルに並べ、姉妹で声を合わせて食べ始める。
姉が普段何をやっているのか。
それは、近々わかるだろう。

―――――――――――――――――――――――




翌日。
外はすでに気温30度を上回っている。
そんな中、姉妹は学校へと向かうバスの中にいた。




姉「あ゛~、涼しー」




外とは違いバスの中はクーラーが効いていて、程よく冷えていた。




姉「バスサイコー! 降りたくない!」

アナウンス『次は、学園前、学園前。 お降りの方は、ボタンを押してお知らせください』

姉「……降りたくない」

妹「ダメ。 降りるよ」ピンポーン

姉「降りたくないい!」




程なくして、バスが停車した。
嫌がる姉を引きずって、妹がバスを降りた。
ドアが閉まり、バスが発車した。




姉「ああ……バス……カムバック……」

妹「バカ。 昨日サボったんだから、今日は来なきゃダメでしょ」

姉「うううー……」




足取りの重い姉を引きずり、妹は学校の昇降口を目指した。




トモ「おはよー、妹ー」

妹「おはよー、トモちゃん」

トモ「姉先輩、おはようございます」

姉「おはよー……」

トモ「……大丈夫ですか?」

妹「バスとお別れして寂しいだけだから、気にしないで」

トモ「う、うん……?」

―――――――――――――――――――――――




姉妹の住む田舎町には、子どもが少ない。
なので、学校は小中高一貫校のようになっており、また校舎もひとつしかない。
この町には、学校がひとつしかないのだ。

……さて、こちらは妹が在学している中等部の教室。
中等部は全部で五人の学生が在学している。
ちなみに初等部は十八人、高等部は三人である。




妹「おはよー、ユウくん」

トモ「おはよー」

ユウ「おはよう、二人とも」

妹「ん、まだカズくんとヒロくんは来てないのかな」

ユウ「うん」

トモ「そういえば妹ちゃん、昨日はどうしたの?」

妹「……あー、ちょっとね」

ユウ「また姉先輩か?」

妹「あはは……」

カズ「おーっす!」

ヒロ「お、妹がいる」

妹「二人ともおはよー」

トモ「おはよー」

ユウ「おはよう」

先生「うーっし、ホームルーム始めっぞー」




ヒロとカズが教室に入ってきてから間もなく、先生が教室に現れた。
先生が細かな連絡事項を伝えて、ホームルームが終わった。

妹「トモちゃーん、あとで昨日の分のノート見せてくれない?」

トモ「いいよ。 いま持って来てるけど、使う?」

妹「ありがとう! さすがトモちゃん!」

トモ「ふふっ。 妹ちゃん、これから忙しくなるんでしょ? ノートなら任せて」

妹「ああ……トモちゃんが輝いて見えるよ……」

トモ「えへへ、大げさだよ、妹ちゃん」




トモが照れたように微笑む。




ヒロ「そいや、妹はそろそろ『アレ』の時期だもんなあ」

ユウ「だね」

カズ「学校もあるっつーのに、大変だな」

妹「ん、まあね。 でも、好きでやってることだから」

カズ「でも、姉センパイに無理やりやらされてるもんなんだろ?」

妹「最初はね。 今は違うよ」

トモ「ほんと、仲いいよね。 姉先輩と妹ちゃん」

妹「そうかな?」

トモ「うん」




学校の皆は────この町の皆は、姉妹がどういう関係のあるのかを知らない。
ただの仲のいい姉妹としか見られていないのだ。

妹「ずっと一緒にいるからかな?」

カズ「ずっと一緒にいると、逆にウザくね?」

ユウ「カズだけだろ、そう思うのは」

ヒロ「俺は兄弟とかいたことないからわかんないなあ」

トモ「私も……だから、妹ちゃんがうらやましいかも」

妹「あはは……。 ちょっと手のかかる姉だけど、ね……」





少し遠い目をして、妹がそう漏らす。
何かにつけて暴走をしては、常に妹になだめられる姉。
どちらが姉なのか妹なのか。
けれど妹は、そんな姉を心地よく思っていた。




妹(でも、迷惑だなんて思ってない。 お姉ちゃんは、あのままがお姉ちゃんなんだから)




良いところも悪いところも全てひっくるめて、人は人なのだ。
誰かを好きになるということは、その全てを受け入れることと同義である。
これは妹にも、例外ではなかった。

―――――――――――――――――――――――




姉「むにゃむにゃ……」

先生「……」スコーン

姉「あいたあっ!?」

先生「姉ちゃん? あなた、昨日サボったくせに授業始まった瞬間から寝るっていうのは~……どういうことなのかしら……?」

姉「いえっ、そのっ……ごめんなさい……」

先生「よろしい。 じゃ、34ページの5行目から読んで」

姉「はぁい」





ところ変わって、こちらは姉の所属する高等部の教室。




ユミ「姉ちゃん、さすがだね~」

ハル「まったく、真面目にやんなさいっていっつも言ってるのに」




姉が教科書を読み上げる隣で、二人の少女がそう漏らす。
高等部は、姉、ユミ、ハルという三人の女子しかいない。
中等部、初等部は男子の割合が多いが、高等部は女子オンリーの学年なのだ。




先生「はい、お疲れ様。 座っていいわよ」

姉「ぶひぇ~……」

ユミ「お疲れ」

ハル「次からは寝ないようにしなさいよね」

姉「うぐぐ……」




教科書を頭に被りながら、姉が机に崩れ落ちた。

ハル「それにしても、アンタ読むのうまいわね」

ユミ「うんうん、聞いてて気持ちよかったなー」

姉「そう? ありがとー」




姉も妹もまだ幼かったころ、姉はよく妹のために本を音読していた。
姉の音読を聞いている妹の真剣な表情が好きで、何度も何度も妹のために本を読んだ。
読むのがうまいと言われるのは、これが所以だろう。




先生「じゃ、次はこのページから始めるので。 今日はおしまい」

姉「ふいいぃぃ~……」




授業が終わり、姉が机に突っ伏した。




姉「やっぱり私にはベンキョーなんて性に合いませんよ……」

ユミ「あははー、確かに。 黙って姉が机に向かってるなんて想像できないや」

ハル「あなたは少しは妹さんを見習いなさいな。 あの子はきちんと授業を受けてると思うわよ?」

姉「妹は妹、私は私ですぅー」

ユミ「あはは。 ほんと、姉と妹ちゃんは似てないよねー」

姉「だねぇ」

ハル「自分で言ってどうするのよ……」

姉「私でもわかるよ。 全然違うなあって」




昔から、姉は妹とよく比べられる。
よくできた妹と、出来の悪い姉。
見事なまでに、対照的な二人である。




姉(でも、嫌なんかじゃない。 妹は妹、私は私。 違って当たり前なんだから)




人と人とは違う。
100人いれば、100人がそれぞれの個性を持っている。
誰かを好きになるということは、それを否定せず受け入れることと同義である。
これは姉にも、例外ではなかった。

―――――――――――――――――――――――




姉「つかれた」

妹「お疲れ様、お姉ちゃん」

姉「つーかーれーたー」

妹「はいはい。 今料理中だから、危ないよー」




学校を終えて姉妹が帰宅してから、数時間後。
宿題を終えた姉が、夕飯を作っている妹にしがみついた。




姉「宿題なんてなんであるのー。 やだー」

妹「お姉ちゃんみたいな、家に帰っても勉強しない人のためにあるんだよー」

姉「ぐぅぬぬぬぬ……」




後ろから妹を抱きしめながら、姉が歯軋りをする。




妹「ほら、これあげるから」

姉「ん、あむ。 むぐむぐ……」




妹が、作りかけの料理を姉の口に放り込んだ。

姉「おいしー! もっとちょうだい!」

妹「だーめ。 できたら好きなだけ食べていいから」

姉「む……我慢する」

妹「いい子いい子」




妹が姉の顔を見て、ふわりと微笑んだ。
姉の心臓が、どきりと高鳴る。




姉「う、うん。 じゃ、私はお皿準備しとくね」

妹「お願い」




顔が赤くなってしまっているのを妹に気付かれないように、そっぽを向いて姉が言った。

―――――――――――――――――――――――




妹「いただきます」

姉「いただきまーす!」




夕食ができあがり、姉妹は食卓についていた。




妹「ね、お姉ちゃん。 明日だけど」

姉「ん?」

妹「ちゃんと準備できてる?」

姉「んふふ、私は常にぶっつけ本番だよ」

妹「いや意味分からないから」

姉「へーきへーき。 妹は?」

妹「何とか完成したよ」

姉「うんうん。 なら大丈夫だ」

妹「なんでよ」

姉「妹が大丈夫なら私も大丈夫。 ね?」

妹「ね? って言われても、わかんない」

姉「わかんなくていいの。 私がわかればいいから」

妹「……もう」

―――――――――――――――――――――――




翌日。
昨日と同じく、太陽は容赦なく地上を照りつけ、朝で既に気温が30度を超えている。
そんな中、姉妹はある建物の一室に来ていた。




姉「……えー、ごほん」




姉が咳払いをし、その部屋にいる面々を見回す。
高翌齢者から30代ほどの男女合計5人と姉妹が、部屋に集まっていた。




姉「今年も、やって参りました」




部屋の照明が消えた。
場がざわつく。




姉「……さあ、ひと夏の思い出! 一大ビッグイベント!」

姉「我らが町の伝統イベント!!」

姉「第三回、夏 ・ 祭 ・ り!! を開催するための会議!!」




妹がノートパソコンを操り、プロジェクターを介してスクリーンに画面を映し出した。
スクリーンにはポップな文字で、『第三回 夏祭り』と書かれている。

妹「お姉ちゃん、まだ三回目なのに伝統もなにもないよ」

姉「そこ、うるさいよ。 ……さて、今回夏祭り実行委員会の皆さんにお集まりいただいたのは、今年も開催予定の夏祭りについて話し合うためでございます。 ではまず、町長からお話を」




姉が言い終えたところで、一人の老人が立ち上がった。




町長「皆様、今年もやってまいります、我が町の夏祭り。 去年に引き続き、夏祭り実行委員会、一致団結して盛り上げて行きましょう」




町長は一礼をして、着席した。
部屋に拍手の音が響く。




姉「町長、ありがとうございました! さて皆さん、おととしとは違い、去年は町外からかなりのお客さんが来てくださりました。 というか夏祭りの会場内に収まりきりませんでした」

姉「去年の反省から、今年はお祭りを行う際に使用する土地を広く取りたいと思っております……妹」

妹「はい。 初の開催となったおととしの夏祭りでは町内の人のみが参加しておりましたが、去年はなぜか町外からの観光客が多く、おととしと比べて約千人の増加……異常ですね」




スクリーンに棒グラフが映し出された。
おととしの来客数の棒グラフと、去年の来客数の棒グラフ。
去年の棒グラフの高さは圧倒的だった。




妹「原因は不明ですが、おととしと同じ敷地面積で行われた去年の夏祭りは、人が入りきらずそれはもう大変な事になりました」

妹「そこで、今年は去年のことを踏まえ、夏祭りを行うための土地をより広くしよう、という提案です。 幸い、この町は土地の広さによらず人口も少なく建物も少ないので、土地の確保は容易かと思われます。 具体的に必要な広さは――――」

現在町役場で行われているのは、近日開催される夏祭りの準備のための会議である。
夏祭りは、この町で最も大きな行事であると言っても過言ではない。
人の少ないこの町に観光客を呼び込む唯一の方法と言ってもいい。
ではなぜその重要な行事の会議にこの姉妹がいるのか。
ことの発端は、今から三年前に遡る。

三年前の夏のある日、姉が妹に突如として「夏祭りをやりたい」と言い出した。
出店の配置やらステージを作ってパフォーマンスしようだの、とにかく計画書のようなものを作り、妹に見せた。
最初は妹は呆れていたものの、姉の熱意に負けて、姉の計画書に細かな加筆修正を加え、町長に提案した。
町長は割と協力的で、すぐさま「夏祭りをやるかどうか」のアンケート調査を全町民に開始した。
なにせ、この町の総人口は200人にも満たないのである。 直接民主制が十分働くのだ。
アンケートの結果、大多数の賛成により、夏祭りは開催されることとなった。
これが三年前のことである。

それから条例の整備や夏祭りを行う土地の確保、出店の決まり事などを定め、ついにこの町初の夏祭りが開催された。
このとき、町民のほぼ全てが夏祭りに参加した。
これが二年前のことである。

結果的に、初の夏祭りは成功を収めた。
それから町長は「夏祭り実行委員会」を立ち上げ、委員長に発案者である姉、副委員長に妹を抜擢したのである。
そんな理由で、姉妹はこの重要な会議の場にいるのだ。
姉妹がこの町ではちょっとした有名人である、というのも、これが所以である。

妹「――――以上です」

町長「ふむ、今年は大規模になりそうじゃな」

姉「去年が去年でしたから。 これくらいの広さがあれば、むしろ余裕ができるからいかと」

町長「わかった、検討してみよう」

姉「あと、この夏祭りをPRするために、ホームページを作ろうと思うんです」

町長「ホームページ……町のホームページで告知するだけじゃだめなのか?」

姉「告知するだけじゃ、面白みがないです。 もちろん町のホームページからも行けるようにします」

町長「面白み……か。 わかった。 そのホームページは、誰が作るんだね?」

妹「わたしが作ります。 完成したら、実行委員会の皆さんでチェックして、OKが出たら公開します」

町長「わかった、君たちに任せよう」

姉「ありがとうございます」

妹「それでは、今回の提案まとめです。 ひとつ、去年より使用する土地を広くすること。 ふたつ、屋台の制限数を緩和すること。 みっつ、町外からのお客さんを予想してこの町のいい所をアピールすること。 よっつ、夏祭りのホームページをつくること」

妹「これらの提案に反対の方はいらっしゃいますでしょうか」




妹が場を見渡す。
異論は無いようだ。




妹「では、今年はこの案を踏まえて夏祭りに臨みましょう。 去年よりもかなり忙しくなるとは思いますが、町長のお言葉通り、委員会で一致団結し、また町民の皆さんの協力を得ながら、夏祭りを成功させましょう。 以上です」

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姉「ふひーっ、ちかれたあーっ!」




町役場から外に出て、姉がぐるんぐるんと腕を回した。




姉「さすがに黙ってずっと座ってるのはきっついわー」

妹「ずっとべらべら喋ってたでしょ」

姉「いやいや、普段の私はあんなんじゃないよ? ね?」

妹「そんなことより……これから忙しくなるね」

姉「だねぇ。 去年も準備は大変だったけど……」

妹「今年は規模が大きいから、ヤバイかも……。 来年は実行委員の人を増やしてもらわないと」




ヒロが言っていた『アレ』とは、夏祭りの準備のことであった。




姉「だね……。 まあ、頑張ろ! ね!」

妹「うん」




手を繋いで、姉妹が帰り道を歩く。
既に日が傾き始め、空が赤くなりだしていた。




姉「……あつい」

妹「うん、手、汗ばんでるもんね」

姉「あつい」

妹「じゃ、手離せばいいじゃん」

姉「妹が離してくれない」

妹「……お姉ちゃんだって、離す気ないくせに」

姉「うん、ない」




にこっと姉が笑った。
妹は一瞬だけ姉の顔を見て、すぐに目をそらした。




姉「ん? 照れてるのかな? こいつ~」

妹「照れてない!」




じゃれあいながら、姉妹が帰り道を歩く。
日が落ち、あたりはすっかり暗くなって、夏の虫たちが大合奏を始めた。

―――――――――――――――――――――――




翌日。
空は曇っていて、昨日よりは過ごしやすい気温になっていた。




妹「……うーん」




妹は机に向かい、コンピューターとにらめっこをしていた。
画面には、夏祭りのホームページ用と思われる文章が並んでいる。




妹「配置はどうしよう……色は……」




ぶつぶつと何事かを言いながら、並んでいる文章を白紙のページにレイアウトしていく。




妹「……あー、この言い回しは駄目だ」




レイアウトを考えながら、文章校正も行う。
妹の手はマウスとキーボードの間をせわしなく行き来していた。




妹「フォントのサイズはもう少し大きいほうが……ぶつぶつ……」

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一方、妹がコンピューターの前で頭を抱えているころ。
姉は、町長とともに夏祭りをやる敷地の下見に来ていた。




姉「ひろーい! これくらいあれば千人来ても大丈夫そう!」

町長「うちは人口が少ないからねぇ。 使ってない土地はいっぱいあるのじゃ」

姉「よし、土地は決まった。 あとは……」




広い敷地を見渡す。




姉「……草刈りしなきゃ……」

町長「じゃな……」




使われていなかっただけあって、雑草がそれはもう各自の思い思いに伸びきっている。
こんな状態だと屋台すら建てられない。




姉「町長はいいよ。 私がやるから」

町長「しかし……」

姉「んーん、無理しないで。 私は大丈夫だから」

町長「……なら、応援を何人かよこそう。 任せたよ」

姉「うん」




町長は急ぎ足で、町役場に戻っていった。

姉「……さて、やりますか!」




持ってきたバッグから、軍手と鎌を取り出す。
草刈りは、あらかじめ姉の想定内だった。




姉「むふふ、地味な作業は嫌いだけど、体力だけは無駄にあるのだ!」




軍手を装着し、ひたすら雑草を抜いていく。
姉の力じゃ抜けない雑草は、鎌でなるべく短く刈っていく。




姉「ふぅ、今日が晴れてなくてよかったよ……」




そうぼやきながら、雑草を抜き、刈る。




姉「妹もがんばってるんだもん、私もがんばらないと!」

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さて、所変わって妹の部屋。
華麗なブラインドタッチでキーを叩く妹の姿が、そこにはある。




妹「レイアウト……OK、色合いは……」




白紙だったページが、ポップな文字や、かわいらしい絵で埋まっていく。




妹「あとは、ここに去年の写真を……。 よしっ、完成!」




とはいえ、完成したのはトップページ。
これから夏祭りで行うステージのプログラムや、どんな屋台が出店されるのかなどを書いていかなければならない。
けれど、それらはまだ決まっていないので、妹の仕事はここでいったん区切りである。




妹「お姉ちゃん、確か敷地の下見にいったんだったっけ。 草取りやってると思うし、手伝おっと」




休めばいいものの、仕事を終えてすぐに姉の手伝いへと向かう妹。




妹「お姉ちゃんもがんばってるんだもん、わたしだけ休んでなんていられない」




離れていても、想いは同じ。
お互いを想い合うことが、姉妹が仲のいい所以である。

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さて、こちらは姉の作業する敷地。
現在町役場から二名の協力を得て、作業中である。




姉「んーっ、だいたい半分くらいかなー!」

役員1「だね」

役員2「これなら今日中に終わるかもしれんな」

姉「よっし、夏祭りのためにも、残り半分がんばろう!」

役員1「あいよー!」

役員2「うむ」




三人は黙々と、雑草を抜いていく。




妹「すいませーんっ!」

姉「んお? 妹?」




遠くのほうから、妹が駆けてきた。
手には小さな袋を持っている。




姉「どしたの? 妹の仕事は?」

妹「もう終わったから、手伝いに来たの。 ほら、これ差し入れ」

姉「おっ、レモンティーじゃん! ありがとー!」

妹「役員の皆さんもどうぞ。 コーヒーで大丈夫ですか?」

役員1「ありがとう、助かるよ」

役員2「大丈夫だ。 ありがとな」

姉「あれ、飲み物の数がピッタリ……どうして三人いるってわかったの?」

妹「一回この近くまで来て、三人が作業してるところが見えたから」

姉「なるほどね、そんで買いに行ったんだ」

妹「そゆこと」




作業をしていた姉と役員たちに、妹が飲み物を配った。
しばし一服してから、再び作業が始まった。
今度は妹が加わって、四人である。

―――――――――――――――――――――――




妹「よし……」

姉「終わったーー!!」

役員1「お疲れー!」

役員2「お疲れさん」




妹が雑草取りに加わってから、一、二時間後。
広大な土地の、それはもう思い思いに伸びきった雑草たちは一つの場所に積み上げられ、雑草で埋まっていた土地は土がむき出しになっていた。




役員2「この雑草の処理は、俺達に任せてくれ」

役員1「お疲れ、二人とも」

妹「ありがとうございます、助かります」

役員2「それじゃ、またな」

姉「お手伝い、ありがとうございましたー!」

姉妹が手を振って、役員の人たちと別れた。
二人並んで、帰宅路を歩く。




姉「んーっ、終わったー!」

妹「お疲れ、お姉ちゃん」

姉「妹も、お疲れ様。 ごめんね、手伝わせちゃって」

妹「ううん、平気平気。 あとちょっとだけだったし」

姉「でも、妹だってせっかく仕事終わらせたのに」

妹「お姉ちゃんががんばってるのに、わたしだけ休んでなんていられないもん」

姉「……ありがとう、妹」

妹「うん」




そっと手をつないで、帰り道を歩いた。

―――――――――――――――――――――――




その日の夜。




姉「さて、妹」

妹「うん」

姉「今年もやりますよ、アレ」

妹「アレって……アレのこと?」

姉「そう、アレ。 去年おととしと大盛況をいただいた、アレ」

妹「恥ずかしいんだけど……」

姉「アレがないとうちの夏祭りじゃないよ!! きっとお客さんもアレを期待して来てくれてるんだよ!」

妹「……確かにそんな気はするけど」

姉「というわけで、やろう。 がんばって練習しよう」

妹「むう……しょうがないなあ……」

姉「よっし、決定!!」

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こうして、夏祭りに向けて姉妹にとって忙しい時期が始まった。
この期間は、姉妹はあまり学校に行くことができない。
それは、学校も許可している。
その代わり、妹にはテストが多く出されるし、姉には宿題が多く出される。





妹「んうううう、だめだめだ」




妹は新たにホームページを設立するにあたって、その製作を任されていて忙しい。




姉「たこ焼きの屋台はこの辺で、射的はこの辺で……」




姉は姉で、夏祭りの屋台の配置を考えたり、屋台設営のお手伝いをしていたりして忙しい。
この時期は、姉妹にとって最もつらい時期なのだ。
もちろん体力的につらい。
しかしそれ以上に、二人は忙しすぎて会話をするどころか顔を合わすことすら少なくなる時期なのである。
仮に顔を合わせても大抵どちらかが忙しくて話している暇なんてない。
そういう点で、姉妹にとって最もつらい時期なのだ。
けれど、姉妹はそれを耐え抜いて、夏祭りを成功させようと必死にやっている。
もちろん必死にやっているのは、夏祭り実行委員会の皆も同じである。
皆、この町が大好きなのだ。

妹「うぐ……とりあえずここでいったん休憩しよっかな……」




妹が部屋から出て、居間へと向かう。
居間から台所に行って冷蔵庫に手を伸ばしたところで、もう一つ別の手が冷蔵庫の扉に伸ばされていることに気が付いた。




妹「んあ、お姉ちゃん……」

姉「あ、妹……」




お互い、疲れのせいか顔色が悪い。




妹「お姉ちゃんも、麦茶飲みに来たの?」

姉「妹も?」

妹「うん。 ちょっと休憩しようと思って」

姉「そか。 私はまだ仕事がたっぷり……」

妹「あはは、わたしも……」




姉がコップに麦茶を注いで、飲む。
妹は、それをじっと見つめていた。

姉「ん、飲む?」




姉が妹にコップを差し出す。




妹「んーん」

姉「そう?」




姉が、再びコップに口を付けた。




妹「こっちで、もらう」

姉「んっ!?」




その瞬間、姉の腕をつかんでコップをどけ、妹が姉にキスをした。




妹「んっ、ちゅるっ……んくっ、んくっ……」

姉「んむっ、んりゅっ……」




姉の口の中にある麦茶を、妹が飲み干していく。

妹「ぷはっ……ごちそうさま」

姉「……妹だけ、ずるい。 私にもちょうだい」




姉がコップに麦茶を注ぎ、妹に飲ませた。
そして今度は、姉からキスをする。




姉「ぢゅるっ……ちゅ、ちゅ……」

妹「んぅ……んちゅ……」

姉「ぷは……」

妹「ふうっ……」




お互いの顔が、離れる。
離れてからも、姉妹はしばらく見つめ合っていた。




妹「……そろそろ、再開しなきゃね」

姉「……そだね」

妹「じゃ、最後に……」

姉「うん……」




そっと唇を触れ合わせて、離す。
名残惜しそうに視線を交わしてから、姉妹はそれぞれの仕事場へと戻った。
仕事場へと戻る姉妹の顔色は、だいぶ良くなっていた。

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夏祭りプロジェクトが開始してから、一ヶ月が経過した。
早いもので、今日は夏祭り本番である。
このたった一日の夏祭りのために、姉妹たちは一ヶ月間死に物狂いで準備をしてきた。




姉「……始まっちゃうね」

妹「うん」




現在は早朝。
まだ夏祭りは始まっておらず、屋台の人たちがちょうちんをぶら下げたり、看板を作ったりしていた。
姉妹はその様子を眺めながら、特設ステージに座っていた。
この特設ステージは、町外からバンドがやってきたり、学校の初等部の子たちが劇をやったりするために作られた物である。




姉「準備は長くて大変だけどさ、いざ本番を迎えると、あっという間なんだよね」

妹「……うん」




姉妹にとって夏祭りの準備はつらいものだったが、それと同時に楽しいものでもあった。




姉「……」

妹「……」




ステージに置かれているお互いの片手を重ねて、姉妹が夏祭り会場を見回す。
これから、この町で一番大きなイベントが始まる。
すぐに終わってしまうという寂しさも感じるけれど、やっと始まるんだという高翌揚感もあった。
片手に感じるお互いのぬくもりをじんわりと味わいながら、姉妹は完成しつつある夏祭り会場を眺め続けた。

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第三回夏祭り。
今年も始まりました。
日が少し傾いたころに始まった夏祭りの会場は、開場10分程度であっという間にお客さんであふれかえった。




妹「ふえ~、今年もすごい人だね」

姉「そうだねぇ。 妹、はぐれないように……ね?」

妹「うん」




姉が差し出した右手を、妹が左手で握った。
その指を、ゆっくりと絡め合わせる。




姉「何から見て回ろっか?」

妹「んー」




会場には、たくさんの屋台が並んでいる。
そのどれもが、魅力的な屋台ばかりだ。




妹「んじゃ、まずは金魚すくいから!」

姉「よっしゃ、妹、勝負じゃ!」

妹「ふふん、お姉ちゃんには負けないよ!」

姉「言ったな~! よし、負けたらたこ焼き一個ね!」

妹「のった!」

姉「よ~し、急げ急げ~!!」




夏祭り実行委員である姉妹は、ある程度の自由時間を設けられている。
だが、しばらくしたらステージパフォーマンスのサポートをしなければならない。
だから、時間のあるうちに夏祭りを楽しまなければならないのだ。

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たくさんのお客さんであふれかえる、夏祭り会場。
大盛況のステージパフォーマンスも終わり、夏祭りの終了時刻が近づいてきた。
そんなときに……。




「いえーい! みんな、お祭り楽しんでますかあーー!!」




スピーカーを通して、女の子の声が会場に響き渡った。
照明が落とされていたステージに、スポットライトが灯された。




姉「みなさん、こんばんはー! はじめましての人は、はじめまして!」




ステージには、アイドルの衣装のようなミニスカートの浴衣を身にまとった姉妹が、マイクを持って立っていた。
髪形も、アイドルのような髪形になっている。
夏祭りに来ているお客さんたちが、一斉にステージの周りに集まった。

妹「わたしたち、この夏祭りの主宰者のうちの二人です!」

姉「むふふ、夏祭りのときのみ始動する、姉妹アイドル! その名も……」

姉妹「「『しすたーしすたー』でーす!!」」




わあっと歓声があがり、拍手が起こる。




姉「みんな、ありがとー! さて、今年もテキトーに選んだ曲を、私たちらしく歌って踊りたいと思います!」

妹「夏祭りは終盤に差し掛かりましたが、皆様ぜひ楽しんでいってくださいね!」

姉「それでは、ミュージックスタートー!!」




大音量で、曲が流れる。
それにあわせて、姉妹がかわいらしいダンスを披露する。
そう。
姉妹が言っていたアレとは、このステージパフォーマンスのことであった。
この姉妹のパフォーマンスは、第一回のときからやっていた。
第一回のときに口コミが広まり、その口コミは町外にまで広まって、第二回の夏祭りで姉妹のパフォーマンスを、しすたーしすたーのパフォーマンスを一目見ようと大量のお客さんがこの町に訪れたのだ。
ちなみに、この『しすたーしすたー』の名前は姉が考案したものである。
曰く、「私はお姉ちゃんでシスター。 妹もシスター。 だからしすたーしすたー」。

ステージ上で踊って歌う、姉妹。
とても弾けていて、かつ華やかであった。

―――――――――――――――――――――――




かくして、姉妹によるパフォーマンスも終わり、夏祭りは大盛況に終わった。
現在、その後片付け中である。
姉妹はというと……。




姉「ありがとうございまーす!」

妹「来年もよろしくお願いします!」




姉妹は、握手会兼サイン会のようなものをやっていた。
一人の男性が姉妹にサインを求め、それに応じたら、じゃあ俺も私もと大量のお客さんが詰め掛けてきた。
見かねた町長がお客さんを誘導して一列になってもらい、順番に握手やサインを行っているところだ。




姉「うう、サインなんて考えてないんだけどなあ」

妹「とりあえず、一枚目に書いたサインをがんばって書こう」




第二回夏祭りには無かった光景である。
握手やサインに応じるのは大変だけれど、同時に達成感を感じている姉妹だった。

―――――――――――――――――――――――




すっかり真っ暗になったころ、お祭りの後片付けに区切りをつけて、今夜は解散となった。
姉妹は求めるお客さん全員にサインを書き終え、帰り道を歩いていた。




姉「うあー、腕がー。 手がー」

妹「疲れたよね……」

姉「うん……ね、ちょっと休んでかない?」

妹「ん、どこで?」

姉「川の近く!」




姉が、妹の手を引いて駆け出した。
程なくして、川の水が流れる音が聞こえてくる。
姉妹は近くの草むらに腰掛けた。




姉「うーんっ、つっかれたねー!」

妹「ほんと。 でも、楽しかったね」

姉「でしょー? 来年もやるからね!」

妹「はいはい」




苦笑しながら、妹が答えた。




妹「……でも、終わっちゃったね。 夏祭り」

姉「うん……」




そろって、夜空を見上げる。
周囲に明かりはなく、星が夜空にこれでもかとばかりに散らばり、それぞれが輝いていた。

妹「ちょっとさびしいかも」

姉「うん。 でも、来年もあるから」

妹「……だよね」




夜空を見上げながら、姉妹が言う。




姉「来年も、再来年も、そのまた来年も。 一緒に夏祭りをやってこうね」

妹「うん」




夜空を見上げていた視線をお互いの顔に下げて、微笑み合う。




姉「好きだよ、妹」

妹「わたしも……好きだよ、お姉ちゃん」




満天の星空の下、夏祭りを大成功させた満足感の中。
姉妹は優しく、やわらかく、唇を触れ合わせた。

おわりです。
ありがとうございました。


今度こそ四季制覇を目指します

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