飛鳥「十四歳と初夏」 (38)




蘭子「ぐぬぬぅ、灼熱の太陽が…」

晶葉「ほら、…チューペット」ペキッ

蘭子「んむ」モグ

晶葉「まったく暑くてはかなわないな…」モグ

蘭子「逃れられぬ定めね…」

蘭子「廻り続ける刃こそ我等の救いよ」


晶葉「定めか……」

蘭子「む?」

晶葉「いや何、……嫌な予感が、な」

蘭子「くく、予感とは、存外に馬鹿にできぬ物よ」




 ……ドタドタドタドタドタドタドタ


 ガチャリ

飛鳥「蘭子!」
光「晶葉!」


「「勉強教えて!!」」




晶葉「…らしい」

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蘭子「課せられし使命か?」

飛鳥「そうそう、これさ」バサッ

蘭子「………」

飛鳥「お願いだよ、学校ではそれなりに頭いい感じで通しちゃってるんだ」

光「あーきはー…」

晶葉「人に教えるのはそう簡単な事じゃないんだぞ…」

晶葉「分からなかったら答でも見たらいいんじゃないか?」

光「だってあれ本当に答えしか書いてないんだもん」

飛鳥「まったく配慮がなってないね、あれは」


「「ねー」」



蘭子「……一筋縄ではいかぬか」



蘭子「この刻まで、如何様な業で智を得てきたのだ?」

飛鳥「いままでは光と一緒に幸子に教えてもらっていたんだけれどもね」

光「夏休みもお願いしようとしたらさー」



───………

──────…………


幸子『まったく、カワイイボクにも限度がありますよ!』

幸子『ボクは忙しいので!』


──────…………

──………


飛鳥「……って」

晶葉「どこまで頼りきりだったんだ……」

光「五分ぐらいほめちぎってもダメだった」

蘭子「…ご、五分……」




光「だからさ、お願い!」

光「あとアイスちょうだい」

蘭子「冷涼たる結界を開け!」

飛鳥「どれ……ポッキンアイスか……」

飛鳥「光、半分こしよう」

光「おう、いいよー……」





光「……ポッキンアイス?」

飛鳥「何かおかしかったかい?」


光「なにそれ?」

飛鳥「これさ」

光「…チューペットだよ」

飛鳥「ポッキンアイスだろう」

蘭子「チューペット」

晶葉「チューペットじゃないのか?」


飛鳥「………」



飛鳥「まあ、いいさ、所詮は記号でしかない」

光(ちょっと寂しそう)

晶葉(初めて聞いたな、ポッキンアイス)



飛鳥「レモンでいいかな?」

光「いいよー」

飛鳥「投げるよ」ヒョイ

光「うおっと」パシ



光「……で、やっぱり教えてくれないか?」

晶葉「さっきも言ったがな……」


飛鳥「…物を教えられるっていうのは、本当に頭のいい人なんだそうだよ」

晶葉「……!」

蘭子「………」モグモグ


光「…………」


光「あー、どこかにいないかなー」

飛鳥「博士って呼ばれちゃうような頭のいい人いないかなー」




晶葉「…………」




晶葉「流石に私をナメ過ぎだろう」

光「だめかー」ゴロン

蘭子「実に浅はかね」

飛鳥「直球だね蘭子、効くよ」



蘭子「どれ、見せてみよ!」

飛鳥「ん?」

蘭子「我が英知、貸してくれようぞ!」

光「おお!」



飛鳥「じゃじゃ、ここ、ここ」ピラッ

蘭子「ふむ……」

 

蘭子「…ふ、聞きなさい」




蘭子「先ずこれは聖なる円環を貫く一筋の光条を捉えるのだ」

光「……ん?」

蘭子「同じ相貌を示し表裏を成す光と闇とが……」

光「ち、ちょっと待」

蘭子「……なれば、ここに黄金三角形の理が」

光「蘭子?」

飛鳥「………」






飛鳥「蘭子教えるの上手だね」

光「うそん!?」

晶葉「知ってた」


飛鳥「この調子で次も頼むよ」

蘭子「ふ、任せなさい!」


光「あー…と、……」


晶葉「…………」



晶葉「ちょっと見せてみろ」

光「お?」


光「…ああ!これだ」

晶葉「…ふむ、これならな…」




光「……へへ」

晶葉「……なんだ?」

光「なんだかんだやってくれるんだな!」

晶葉「……っ、うるさいな…」

光「やっぱり持つべき物は良き友って」

晶葉「私の気が変わらんようにな」

光「ええっ!?なんでさ!?」


飛鳥「この調子で次も頼むよ」

蘭子「ふ、任せなさい!」


光「あー…と、……」


晶葉「…………」



晶葉「ちょっと見せてみろ」

光「お?」


光「…ああ!これだ」

晶葉「…ふむ、これならな…」




光「……へへ」

晶葉「……なんだ?」

光「なんだかんだやってくれるんだな!」

晶葉「……っ、うるさいな…」

光「やっぱり持つべき物は良き友って」

晶葉「私の気が変わらんようにな」

光「ええっ!?なんでさ!?」



 <プゥー………ン

            プゥー…………ン>



飛鳥「…虫」

晶葉「蚊か?」

光「うへぇ、吸われたくない…」

蘭子「生き血を啜る魔物め…!」



晶葉「そこっ!」ペシッ

光「あたっ」

晶葉「…ん、すまん…」

飛鳥「…ふんっ」パシンッ

光「いたいっ」

飛鳥「……にがした」


光「うう、わざとじゃないよな?」

晶葉「いやなに、そこに居たものだから」

飛鳥「ごめんごめん」



蘭子「………」



蘭子「光よ」

光「ん?」


蘭子「刺客より刻まれし烙印が」チョイチョイ

光「…あ、ホントだ、食われてる……」





光「…これじゃ叩かれ損じゃないかー…」

晶葉「何か申し訳ないな…」

蘭子「薬」ヒョイ

光「ありがと…」



光「ああーっ、意識するとすごく痒い…」

蘭子「しかし、耐えねば秘薬の効能が…」

光「…これぐらい堪えてみせるっ!」

晶葉「頑張れヒーロー」

飛鳥「………」パシンッ パシンッ





光「…かーゆーいーっ…」モジモジ

晶葉「早いぞ」

光「夏はこれがあるからなぁ」

晶葉「何か対策グッズあったか…」



飛鳥「……仕留めた」フンス

蘭子「誉めてつかわす!」



光「…今気付いた」ハッ

晶葉「どうした、藪から棒に」

光「クーラーがついてないぞ!」

飛鳥「…由々しき事態だね」

蘭子「ちひ……事務を司る者が言うには、このガイアに降り注ぐ熱量では、未だ冷涼の術式の作動は早計……」

蘭子「注がれし贄の血時計が三十の高みに昇るとき、その時は来るであろう!!」

飛鳥「三十度かー……」

晶葉「今日何度だ?」

飛鳥「そーねだーいたい
光「二十……九度…だって…」

光「一足りない!」

蘭子「運命は尚も我等を翻弄するか……」


光「…うぐ…もうだめだぁ……」



光「アタシ夏きらーい…」

飛鳥「今日は何時になくネガティブだね?」


光「虫は出るし暑いしさー…」

光「太陽ハッスルしすぎだよ!」

蘭子「どうした光よ!」


飛鳥「…………」




飛鳥「池袋博士ェ…計画は首尾よくイっているようだ、ネェ?」(裏声)

蘭子「!?」

晶葉「…………」



晶葉「くっくくくく……」


晶葉「随分とまぁ、呆気ない…」

光「………」


光「池袋、博士……?」


光「はっ!まさかあの時!」

飛鳥「そうサァ!そのまァーさかサァ!?」(裏声)

晶葉(なんなんだそのキャラ)



飛鳥「ゲ─ッゲゲゲゲゲッ!」(裏声)

晶葉「ヒーローといえども、こうだぁ!」

光「ぐああああっ!頭がああっ!!」


  『待てーい!!』


飛鳥「ゲェ?」(裏声)

光「ンフッ…」


蘭子「大いなるブリュンヒルデの名において、貴様等を断罪してくれる!」ババーン

光「らん…ブリュンヒュルデ!」

晶葉「ぶわぁかなぁ!?(ガタッ)お前はあの時……」

飛鳥「心配はいりませんよ」(マジトーン)

飛鳥「……ブリ─ュンヒュルデェ!!」(裏声)

光(今のマジトーン何…)プルプル


飛鳥「キキキきッサまに!?このォおれが!」(裏声)

飛鳥「倒せるワッキャね──だrrrrrろぉ!」(裏声)

飛鳥「ゲッゲゲゲゲゲ!ギャヒウハフカクク!!ヒケヤカタアカハヒヒハァ─、ヒヒャヒヒゲキガガ──ッ!!!」(裏声)

光「ぶふっ!」

蘭子「くっ…我が覇道を阻むのならば容赦はせんッ!!」


晶葉「…………」


晶葉「暑苦しい、止めよう」

飛鳥「だね」

蘭子「命の風ー……」ブゥーン…

光(飛鳥の演技腹筋に悪い……)ピクピク



飛鳥「扇風機は一台しか無いのかい?」キョロキョロ

晶葉「だな」

光「まあ、そう何台もあってもね」

蘭子『あー……』ブゥーン…


光「蘭子独り占めは良くないぞー」

晶葉「気持ちはわからんでもないが」

飛鳥「集まったら全員浴びやすいかもね?」

光「それは良い案かもれな……」




光「騙されないぞ」

晶葉「暑いに決まってるだろそんなの」

飛鳥「てへぺろ」


蘭子『われわれはー…』ブゥーン… ブゥーン…

晶葉「取り敢えず、扇風機と首の動きを合わせるのは止めてくれないか…」


飛鳥「ほら、蘭子、晶葉に叱られちゃうよ」グイ

蘭子『ああああ……」ズリ

光「うちわとかないか?」ヒラヒラ

晶葉「見た限りはー…無いな…」



光「そうだ、飛鳥」

飛鳥「何かな?」

光「それエクステ持ってさ」

飛鳥「うん」




光「ぐるぐるーって」

飛鳥「一度扇風機の仕組みを調べてみるといい」

蘭子「………」グルグル

晶葉「変に動くと暑くなるぞ」


晶葉「…うちわを扇ぐロボでも作ってみようか」

蘭子「鉄の隷の鋳造はどれほどの刻を求めるのか?」

飛鳥「それぐらいだったら、既存のロボにもできそうじゃないかな?」

晶葉「何にせよ一度研究室に行かないとな」

光「『ロボ!扇げ!』とかできないのか?」

晶葉「そんな動作パターンは組んでない」

蘭子「難しいのね」

晶葉「そうだぞ?そもそもロボット工学というのはだな、工業力学、制御力学、物理学、電子工学、コンピュータープログラミング、機械要素設計、材料力学……」

晶葉「単にロボット工学なんて一言で片付けていいもんじゃないほどの技術の結晶なのだ、難しいなんてもんじゃない」


晶葉「それを一人でこなす私は…ま、怪物だな」フンス


飛鳥「…………」




飛鳥「光、ロボットの怪物だそうだよ」

光「おのれ許さん!」ガタッ

晶葉「言葉の綾だっ!?」

晶葉「……どれ、やってみよう」スッ

晶葉「少しラボに行ってくる」

光「いってらっしゃーい」



  ガチャン



蘭子「……大いなる苦難を暗示しておきながら、消え行く往く姿は風のよう…」

飛鳥「ちょっとコンビニ行ってくる、みたいなノリだったね」

蘭子「天より授かりし才故か?」

光「スゴいのはホントだからなー」

光「案外さっくり戻ってきたりしてね」



 ガチャ



晶葉「ただいま」

蘭子「早っ!?」

飛鳥「言うだけのことはあるって事かな?」

晶葉「いや、そんなんじゃないぞ」

光「完成したんじゃないのか?」

晶葉「そのな」



晶葉「ラボあっつい」

光「あー」

蘭子「封じ込められた煉獄が…」

晶葉「だめだな、あんな所で作業したら間違いなく倒れる」

晶葉「今は扉開けて空気を入れ換えてるが」 

飛鳥「しかたないね」




晶葉「多分あそこなら三十度超えてたぞ」

光「そんな暑かったのか?」

晶葉「こう…扉を開けたらだな、むわぁ、って感じで……」

飛鳥「晶葉がオーバーヒートするのが先か、コンピューターが先か」

晶葉「どっちもゴメンだな」

蘭子「しかし、冷涼の術式起動の曉には、その恩恵を余すことなく受けることができそうね」

飛鳥「狭いからね、さぞ居心地が良いことだろう」

光「えっ、ラボにクーラーあるのか?」

晶葉「無いぞ、元々倉庫に近かった物を改造しただけだからな」

蘭子「むむ…灼熱を遮る結界の完成かと思われたが」

飛鳥「ざんねん、だね」

晶葉「我が侭を言うわけにもいかないから、な……」





晶葉「…まさか私のラボをたまり場にしようとか考えてないよな?」

蘭子「………」プイッ

飛鳥「滅相もありません」


晶葉「まったく、あそこはデリケートなんだぞ、色々と」

光「気持ちは、わかるけどなー」

蘭子「この熱気ですら未だ序の口…真の力をまだ見せてはいまい」

飛鳥「デリケートって、そんなに過敏になることなのかい?」

晶葉「というよりも、気分的な所が大きいが」

蘭子「その心は?」

晶葉「自分の領域に踏み込まれるのは嫌だろう」

飛鳥「なるほどね、納得だ」






晶葉「…飛鳥に同意された…」

飛鳥「同類なのかもね?」

晶葉「絶対に嫌だ」

蘭子「鉄の軍勢を繰る思春期の権化」

光「キャラ濃っ」

晶葉「撤回する、是が非でもだ」

飛鳥「流石に傷付くよ?」


光「チューペットって後幾つ残ってるんだ?」

晶葉「チューペット以外にも色々あったぞ?」

蘭子「…………」ガラッ

蘭子「…数えるのも烏滸がましいわ」

飛鳥「…気が利いてるねぇ」

晶葉「大所帯だしな」

蘭子「更なる供物を望むか?」

光「…うん、………」



光「…うーん…待って……」

 < ピピッ

蘭子「あっ」バタン

光「なんか、…一人で何本も食べちゃうのは申し訳ないような……後ろめたいような……」



光「…食べても大丈夫かなぁ?」クル

晶葉「聞くこともないと思うぞ?」

飛鳥「気分は理解る」

蘭子「永劫に超えられぬ課題よ」



光「…いいや、ちょうだい、何でもいいよ」

蘭子「ほいっ」ヒョイ

光「よっ」パシ



飛鳥「…………」ジー

光「…な、何?」

飛鳥「いや?食べるんだなー、って思って」

光「…何かあるのか?」

飛鳥「別に?食べるのは光の勝手だしね」

光「何だよぅ、気になるじゃないか…」


飛鳥「…まあ、何の意味も無いけど」

光「何がしたかったんだよっ!」


晶葉「私にもくれ」

蘭子「ほい」ヒョイ




光「………ん、今何時だ」

飛鳥「そーねだーいた
晶葉「…7時回ったな、もう」

飛鳥「えっ?」

蘭子「時は人の意識を置きざりにするのよ…」

光「あぶなー…まだ明るいから時間経ってる実感が無かったよ」

蘭子(じかん経ってるじっかん…)

飛鳥「何か用事でもあったのかい?」

光「うん、まぁちょっとした事だけど…」

光「じゃ、アタシはちょっと戻るね」

飛鳥「うん、また今度だね」



晶葉「ふむ…私のラボも冷えてきた頃かな」

晶葉「尻馬に乗るようだが、私もお暇させてもらおう」

蘭子「また会おう!」


 ガチャ


 バタン


飛鳥「…………」


蘭子「…………」



飛鳥「…ボク達も部屋に戻ろっか」

蘭子「心得た!」


───…………

───────………………



──────……………

────………

 次の日



          ふはははははーーーっ!>


光「……ん、誰だろう…」



  ガチャン


晶葉「光ぅ!」

光「晶葉、おはよー」


光「どうしたんだ?元気だね」

晶葉「見ろ!完成したぞ!」


  ゴトン


晶葉「全自動うちわロボだ!」

光「………」

晶葉「いやあモーションを入力するのは簡単だったがな?それ故に拘りが出てしまってだな」

晶葉「少しばかり夜更かししてしまったが、お望み通りの物を───」

光「………晶葉」

晶葉「───仕上げることが……何だ光?」

光「…あれ、見て」チョイチョイ

晶葉「…ん」チラッ



温度計『30℃』


クーラー『…フハハハハハ』




光「………うん、その」


光「…ごめん」ペコリ



晶葉「」












 パチパチパチパチ……



モバP「……何やってんだ、晶葉」

晶葉「……………」



晶葉「秋刀魚を焼いている」

モバP「何でそんな暑苦しいこと」

晶葉「うるさい、黙れ」



うちわロボ『コレゾワガシメイ』



おわり

過去のss見返すと
  自信が無くなる
       最上川

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