古泉「涼宮ハルヒは厨二病です」 (122)

学区内の県立高校へと無難に進学した俺はそこである美少女と出会った。

入学式の後の初顔合わせの自己紹介で、

「東中学出身、涼宮ハルヒ。
ただの人間には興味ありません。
この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

と突拍子もない挨拶をした少女だ。

そりゃ、中学生くらいの時まではそんなのが居たら面白そうだとか思ったものだ。

しかし高校生にもなって、まして自己紹介でそれを言ってしまうか?

それがいかにも邪気眼に目覚めたと自称しそうな男子生徒が言えばまだしも、
飛び切りの美少女が言うのだからその衝撃たるや箪笥の角に小指をぶつけたのを遥かにしのぐ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405696487

数日後、自己紹介では完全に痛い子だった涼宮ハルヒに声をかけた。

これで十人並の容姿だったのなら、わざわざ地雷を踏みに行くことはなかったが、なにせ涼宮ハルヒはえらい美人だ。

美少女高校生の真ん前の席という地の利を生かしてみたくなってとしても誰が俺を責められようか。

完全に空振りだった自己紹介の話題を振ってみた。黒歴史に触れられたように恥ずかしがれば通常人だ。

ところがハルヒは、

「あんた、宇宙人なの?」

と大まじめな顔で訊きやがる。

俺が否定すると、

「だったら話かけないで。時間の無駄だから」

と冷たい視線を寄越してくる始末だ。

後に知ったのだが、涼宮ハルヒはコミュニケーション能力に問題があった。

一部の女生徒がハルヒを気遣って調和の輪の中に入れようとテレビの話題等で話しかけても

「うるさい」

とイライラしながら追い返してしまう。

ハルヒと同じ中学出身者の谷口によれば、

「校庭にデカデカとけったいな絵文字を書きやがったことがある。しかも夜中に学校に忍び込んで」

他にも様座な奇行をしており有名らしい。

それでもモテるらしい。そりゃあの容姿でモテなかったら嘘だ。しかも成績優秀、スポーツ万能らしい。

そこまでいくと高嶺の花で告白するチャレンジャーは少なそうだが、
奇行癖があるお蔭チャレンジしやすいのだろうか?

かなりの人数と付き合ったらしい。告白してきた相手とは一応は全部付き合ったという話だ。

そして短期間で別れるらしい。あのコミュニケーション能力を見てれば当然の結果だが。

ただ、それでも美少女である事には違いない。俺も一度チャレンジしてみるかな?

そんな下心もあって、俺は度々ハルヒに話しかけた。

酷い時は無視されたが、曜日ごとに髪型を変えていることを指摘したら話に乗ってきた。

なんでも宇宙人に注目して欲しかったらしい。

額面通りに受け取るとかなりの手遅れだ。

だが俺はそうは思わなかった。
宇宙人でもない俺がそこに注目して指摘するだけで乗ってくるのだから、
単なに構って欲しいだけなのかもしれない。

……そう思っていたら、翌日長かった麗しい黒髪をばっさり切って登場した。

まことに遺憾ながら前言を撤回しないといけなかった。

腰にまで届こうかと伸ばしていた髪が肩の辺りで切りそろえられていて、
それはそれでめちゃくちゃ似合っていたんだが、
やっぱりよく解らない女生徒だ。

それ以来、朝のホームルーム前にハルヒと話すのが日課となった。

全部の部活に入ったけど平凡でつまらない。

宇宙人と付き合いたい。

そんなことばかり言い、それを実際に行動に移すハルヒを変わり者と思うか、幼いだけと思うかは人次第だろう。

そんなある日の授業中ハルヒは叫んだ。

「ないんだったら自分で作ればいいのよ!」

「何を」

「部活よ!」

教師の質問に悪びれる事もなく答えるハルヒは幼い変わり者なのかもしれない。

何故かハルヒの部活作りに付き合わされることになった。

まぁ、美少女とお近づきになれるチャンスと思い手伝う。

クラス委員でもありこれまた美人----谷口によればAAランクプラス----の朝倉涼子も

「涼宮さん、いつまでもクラスで孤立したままじゃ困るもんね。
涼宮さんの友達は大変だろうけど頑張って、手伝えることがあったら協力するから」

と言ってくれた。評判が良いことは大事だ。頑張ろう。

翌日、終業のチャイムが鳴るや否やルヒは拉致同然に俺を教室から引きずり出してたったかと早足で歩き出した。
鞄を教室に置き去りにしないようにするのが精一杯だった。

「どこ行くんだよ」

俺の当然の疑問に、

「部室っ」

前方をのたりのたり歩いている生徒たちを蹴散らす勢いで歩みを進めつつハルヒは短く答え、後は沈黙を守り通した。

薄暗い廊下の半ばでハルヒは止まり俺も立ち止まった。

目の前にある一枚のドア。

文芸部。

そのように書かれたプレートが斜めに傾いで貼り付けられている。

「ここ」

ノックもせずにハルヒはドアを引き、遠慮も何もなく入っていった。無論俺も。

意外に広い。長テーブルとパイプ椅子、それにスチール製の本棚くらいしかないせいだろうか。
天井や壁には年代を思わせるヒビ割れが二、三本走っており建物自体の老朽化を如実に物語っている。

そしてこの部屋のオマケのように、一人の少女がパイプ椅子に腰掛けて分厚いハードカバーを読んでいた。

「これからこの部室が我々の部室よ!」

両手を広げてハルヒが重々しく宣言した。
その顔は神々しいまでの笑みに彩られていて、
俺はそういう表情を教室でもずっと見せていればいいのにとか思ったが言わずにおいた。

「ちょっと待て。どこなんだよ、ここは」

「特別教室を持たないクラブや同好会の部室が集まっている部室棟。通称旧館。この部室は文芸部」

「じゃあ、文芸部なんだろ」

「でも今年の春に三年生が卒業して部員ゼロ、新たに誰かが入部しないと休部が決定していた唯一のクラブなのよ。
で、このコが一年生の新入部員」

「てことは休部になってないじゃないか」

「似たようなもんよ。一人しかいないんだから」

呆れた野郎だ。こいつは部室を乗っ取る気だぞ。

俺は折りたたみテーブルに本を開いて下を向いている文芸部一年生らしきその女の子に視線を振った。

眼鏡をかけた髪の短い少女である。

これだけハルヒが大騒ぎしているのに顔を上げようともしない。
微動だにせず、俺たちの存在を完璧に無視してのけている。
これはこれで変な女だった。

俺は声をひそめてハルヒに囁いた。

「あの娘はどうするんだよ」

「別にいいって言ってたわよ」

「本当かそりゃ?」

「昼休みに会ったときに。部室貸してっていったら、どうぞって。
本さえ読めればいいらしいわ。変わっていると言えば変わっているわね」

お前が言うな。

俺はあらためてその変わり者の文芸部員を観察した。

白い肌に感情の欠落した顔、機械のように動く指。ボブカットをさらに短くしたような髪がそれなりに整った顔を覆っている。出来れば眼鏡を外

したところも見たみたい感じだ。どこか人形めいた雰囲気が存在感を希薄なものにしていた。身も蓋もない言い方をすれば、早い話がいわゆる神

秘的な無表情系ってやつ。

しげしげと眺める俺の視線をどう思ったのか、その少女は予備動作なしで面を上げて眼鏡のツルを指で押さえた。

レンズの置くから闇色の瞳が俺を見つめる。その目にも、唇にも、まったく何の表情も浮かんでいない。
無表情レベル、マックスだ。ハルヒのものとは違って、最初から何の感情も持たないようなデフォルトの無表情である。

「助けて」

と彼女は言った。聞いた三秒後には忘れてしまいそうな平坦で耳に残らない声だった。

彼女は瞬きを二回するあいだぶんくらい俺を注視すると、諦めたようにまた読書をしてるかのように下を向いた。

ハルヒが声を弾ませる。

「これから放課後、この部室に集合ね。絶対来なさいよ。来なかったら死刑だから」

桜満開の笑みで続ける。

「部員は最低後二人はいるわね」

同好会となる為には五人必要と知っていたようだ。

俺がそう思っているとハルヒは満足げに出ていった。

ハルヒが居なくなった文芸部の部室で俺は文芸部員に話しかけた。

「名前はなんていうんだ」

その文芸部員は下を向いたまま答える。

「長門有希」

「長門さんとやら」俺は言った。

「あいつはこの部室を何だか解らん部の部室にしようとしてんだぞ、それでもいいのか?」

「だめ」

長門有希は視線を上げずに答える。

「さっきのハルヒの話は?」

「嘘。その様な了解は与えていない」

「おいおい」

俺が呆れていると長門有希が本を濡らしていた。一滴、また一滴と涙が本に落ちていたのだ。

「悔しい」

「そんな泣くほどじゃ……」

「文芸部……パパとママも在籍してたのに乗っ取られた」

「それだけ思い入れがあるならハッキリ言った方がいいぞ」

長門有希はぽろぽろと涙を流しながら答えた。

「怖い」

「そんなに大事なら守った方がいいぞ。なんなら俺が言おうか?」

「だめ。報復がありそう」

「報復って……そんなのあるかよ」

「彼女の奇行は有名。高校でもその行動に変化がない」

「まぁ、そのようだな」

「あの様子なら遠からず、良くて停学。退学もあり得る」

確かに義務教育ではないしな。

「そうなったら恨みを感じたものに報復する可能性がある」

ハルヒがハルヒなだけにないとは言い切れないのが悲しい。

「また、彼女は可哀想な人。追い出したり、学校に報告したりして追い詰めたくない」

「そんなことでめげるような殊勝な奴とは思えんがな」

長門有希はいつの間にか泣き止んでいた。

「……逃げ場も大事。人助けに部室を貸すのは良いこと」

「いや、しかし、多分ものすごく迷惑をかけると思うぞ」

「それでも貸した方がパパやママや歴代の部員も喜ぶと思う」

「パパやママなら聞けばいいだろ」

長門有希は涙を浮かべながら答えた。

「パパとママはもういない」

「わ、悪い。知らなかったんだ。でもそんなに思い入れのある部なら……」

「大丈夫。さっき言ったようにその方が喜ぶ。そんなパパとママだった」

「悔しいって言うのがお前の本音じゃないのか?」

「悔しい。でも試練だと感じてる。それにこの方が人として正しい」

ハルヒは人として間違えてる気がするがな。

「話を聞いてくれて感謝する。あなたはいい人」

長門は漸く顔をあげて俺と目を合わせた。

「いや。長門の方が優しくて、俺が心配になるほどのお人よしだと思うぞ」

長門有希は視線を本に移しペラペラと本をめくり始めた。

今度は本を読んでいるようだ。或は照れ隠しだったのか。

次の日、一緒に帰ろうぜと言う谷口と国木田に断りを入れて俺は、しょうがない、部室へと足を運んだ。

ハルヒは「先にいってて!」と叫ぶや陸上部が是非我が部にと勧誘したのも解るスタートダッシュで教室を飛び出した。
足首にブースターでも付いているのかと思いたくなる勢いだ。おそらく新しい部員を確保しに行ったのだろう。

部室にはすでに長門有希がいた。

俺が入ってきたらビクッっとした。

昨日は動じてないのかと思ったが、極端に気が小さいのかもしれない。

「……本当にいいのか?」

長門は本から目を離さずに首をコクリと縦に振った。

「……」

沈黙。

突然、蹴飛ばされたようにドアが開いた。

長門がビクッと大きく体を動かす。

「やあごめんごめん! 遅れちゃった! 捕まえるのに手間取っちゃって!」

片手を頭の上でかざしてハルヒが登場した。

後ろに回されたもう一方の手が別の人間の腕をつかんでいた。

ハルヒが連れてきたのはすごい美少女だった。

「あの~なんですか?」

美少女が口を開いた。

「なんでわたしを連れてきたんですか?」

「紹介するわ。朝比奈みくるちゃんよ」

それだけ言ったきり、ハルヒは黙り込んだ。もう紹介終わりかよ。

「えっと……わたしへの用はなんでしょう?」

朝比奈みくると紹介された美少女はもう一度ハルヒに質問した。

「みくるちゃんは今日からこのSOS団の団員よ!マスコット役!いいでしょ!」

いつの間にか部の名前が決まっていた。

朝比奈さんは一瞬呆然とした後に口を開いた。

「あの~…部活の勧誘ですか?わたし、書道部に入ってるんでごめんなさい」

朝比奈さんはそれだけ言うと軽く会釈をして文芸部の部室から出ていった。

一瞬の間が空いて、ハルヒが元気な声を出した。

「団員は後一人ね!」

……まさかあれで朝比奈さんは部員扱いなのか?

「コンピュータも欲しいところね」

SOS団の設立を宣言して以来、長テーブルとパイプ椅子それに本棚くらいしかなかった文芸部の部室にはやたらと物が増え始めた。

どこから持ってきたのか、移動式のハンガーラックが部室の片隅に設置され、給湯ポットと急須、人数分の湯飲みも常備、今どきMDも付いていないCDラジカセに一層しかない冷蔵庫、カセットコンロ、土鍋、ヤカン、数々の食器は何だろうか、ここで暮らすつもりなんだろうか。

今、ハルヒはどっかの教室からガメてきた勉強机の上であぐらをかいて腕を組んでいた。
その机にはあろうことか「団長」とマジックで書かれた三角錐まで立っている。

長門は、『朝日顔に 釣瓶とられて 貰い水』とでも歌いたい気分だろう。

朝顔に配慮しているつもりの長門には悪いが、ハルヒは朝顔などでは無い。特定外来生物だ。

長門、知ってるか?特定外来生物は取扱いによっては罰則があるんだぜ?

その特定外来生物が口を開く。

「この情報化時代にパソコンの一つもないなんて、許し難いことだわ」

誰を許さないつもりなのか。

ハルヒは机から飛び降りると、俺に向かって実にいやぁな感じのする笑いを投げかけた。

「と言うわけで、調達に行くわよ」

俺を引き連れてハルヒが向かった先は、二軒隣のコンピューター研究部だった。

無理だろ。

ハルヒはコンピュータ研究部のドアをノックもなしに開いた。

「こんちわー! パソコン一式、いただきに来ましたー!」

一人が立ち上がって答えた。

「何の用?」

「用ならさっき言ったでしょ。一台でいいから、パソコンちょうだい」

「何言ってんだ、こいつ」という表情で首を振った。

「ダメダメ。ここのパソコンはね、予算だけじゃ足りないから部員の私費を積み立ててようやく買ったものばかりなんだ。
くれと言われてあげるほどウチは機材に恵まれていない」

「いいじゃないの一個くらい。こんなにあるんだし」

「あのねえ……ところでキミたち誰?」

「SOS団団長、涼宮ハルヒ。とその部下」

言うにことかいて部下はないだろう。

「SOS団の名において命じます。四の五の言わずに一台よこせ」

「キミたちが何者かは解らないけど、ダメなもんはダメ。自分たちで買えばいいだろ」

と、言うわけで当然パソコンは手に入らなかった。

もしかして部室にある数々の物もこうやって手に入れたのかもしれない。

長門の言う通り、退学も近いかも知れない。

部室に帰ったハルヒは癇癪を起していた。

後日、部室にはパソコンがあった『Apple IIc』と刻印されてるパソコンを前にハルヒが自慢げな顔をしていた。

これでwebサイトを立ち上げろと要求された。

三十年前のパソコンじゃ無理です。商用インターネットがなかった時代のパソコンです。

ハルヒの退学を心配したが、廃品回収扱いをされているようで一安心した。

つまり
いくらになるか知らんが、リンゴ売った金使って、最新から少しかた落ちした安いPC買えばOK?

ここの>>1は最近の奇行キョンの人?
今度は神じゃないハルヒなのだろか

ある日のこと転校生がやってきたらしい。

朝からハルヒが「謎の転校生よ!謎の!」と大はしゃぎしていた。

その日の放課後、例によって長門と沈黙の時間の過ごしていると遅れてハルヒがやってきた。

「へい、お待ち!」

一人の男子生徒の袖をガッチリとキープした涼宮ハルヒが的はずれな挨拶をよこした。

「一年九組に本日やってきた即戦力の転校生、その名も、」

言葉を句切り、顔で後は自分で言えとうながす。虜囚となっていたその少年は、薄く微笑んで俺たち三人のほうを向き

「古泉一樹です。……よろしく」

さわやかなスポーツ少年のような雰囲気を持つ細身の男だった。
如才のない笑み、柔和な目。適当なポーズをとらせてスーパーのチラシにモデルとして採用したらコアなファンが付きそうなルックス。
これで性格がいいならけっこうな人気者になれるだろう。





>>32
キョンを動かすSSだと、
自分に正直でややポジティブ&アクティブなキョンと、困ってる人を放っておけないキョンしか書いてないので違うと思います。

「ところでここは何をする部活なんですか?」

古泉が当然の疑問をぶつける。

「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」

得意満面の笑みを浮かべてハルヒが答えた。

古泉一樹が、

「さすがは涼宮さんですね」

意味不明な感想を言って、

「いいでしょう。入ります。今後とも、どうぞよろしく」

白い歯を見せて微笑んだ。

「そういうわけで五人揃ったことだし、これで学校としても文句はないわよねえ」

ハルヒが何か言っている。朝比奈さんには断られたし、長門も入部してないぞ。

翌日の放課後。

掃除当番だったため、俺が遅れて部室へ行くと、
ハルヒがフロッピーディスドライブにDVDを入れようと奮闘していた。

「おかしいわね!何で入らないのよ!」

フロッピーディスクドライブにガチャガチャDVDをぶつけた後に、DVDと睨めっこ。

「あら、キョン!丁度良い所にきたわね!」

部室に入りかけた俺を見て声をかけるハルヒだった。

ちなみに何時頃からかハルヒは俺のことをキョンと呼ぶようになっていた。イメージらしい。
こいつの交友関係が乏しい所為で一切広がってないあだ名なのは不幸中の幸いだ。


「……規格があってないんじゃないか?」

俺はそれだけ言うと席に着いた。

「そう……」

ハルヒ納得してない面持ちでDVDの裏面をしげしげと眺める。

DVDのラベルには『涼宮ハヒルの憂鬱』と書いてあり、女子高生風の女がポーズをとっている。

「なんだそれは?映画か何かか?」

「知らない。拾ったの」

拾ったDVDをパソコンに入れようとしていたらしい。

部室には長門がきていた。

相変わらず本を開いてみている。

読んでいるのかいないのかは解らない。

俺が長門を観察していると、

「キョン!入ったわよ!」

ハルヒが嬉しそうな声をあげた。

「なに!?」

俺が驚くと本を開いていた長門がこちらを向いて説明してくれた。

「そのパソコンのフロッピーディスクドライブは5.5インチ。厚ささえクリアーできれば入る計算」

「よく知ってるな」

驚く俺に長門が一言だけ言った。

「それパパの」

それだけ言うと泣きそうな顔になって再び本に顔を向けた。

なんでそんな大事なものを部室においたんだ。俺の疑問にハルヒが解答を与えてくれた。

「ほら!前にあたしがパソコンが手に入らなくて悔しがったでしょ?そしたら有希が用意してくれたの」

長門に目をやると「……これでいい。これでいいはず」と呟きながら本を涙で濡らしてた。

部室の微妙な空気は突如開いたドアによって払われた。

「すみません。遅れました」

古泉だ。救世主に見えた。

古泉の着席を確認するとハルヒは一方的に宣言した。

「明日!土曜日に市内を探索して不思議探しをするから、朝九時に北口駅前に集合ね!」

この日の活動はこれでお終い。



>>42ミスです。

×5.5インチ

○5.25インチ

休みの日に朝九時集合だと、ふざけんな。

俺はそう思いながら、市内の中心に位置する私鉄のターミナルジャンクションである北口駅に向かった。

時刻は九時五分前。すでにハルヒと古泉が雁首が着ていた。要するに全員だ。

「遅い。罰金」

顔をあわせるやハルヒは言った。

「九時には間に合ってるだろ」

「たとえ遅れなくとも一番最後に来た奴は罰金なの。それがわたしたちのルール」

「朝比奈さんと長門が着てないだろ?」

来るはずがない二人の名前を出す。

ハルヒはプイと顔を背けて、

「二人はこないわよ!」

振り返り、裾がやたらに長いロゴTシャツとニー丈デニムスカートのハルヒはどこか浮かない表情で、

「だから全員にお茶おごること」

うやむやのうちに俺はうなずかされてしまい、
とりあえず今日の行動予定を決めましょうというハルヒの言葉に従って喫茶店へと向かった。

古泉はピンクのワイシャツにブラウンのジャケットスーツ、
えんじ色のネクタイまでしめているというカッチリしたスタイルでハルヒの横に並んでいる。
うっとうしいことだが様になっている。俺より背が高いし。

ロータリーに面した喫茶店の奥まった席に腰を下ろす男二人に女が一人。
昔よくあったバンドの編成の様である。

ハルヒの提案はこうだった。

これから二手に分かれて市内をうろつく。
不思議な現状を発見したら携帯電話で連絡。
のちに落ち合って反省点と今後に向けての展望を語り合う。

以上。

「じゃあ私は古泉君と一緒に行くから、キョンは一人ね」

どうしてそうなる?

「キョン、解ってる?これデートじゃないのよ。真面目にやるのよ。いい?」

お前がそれをいうか?

要するに宇宙人とか未来人とか超能力者本人や、
彼らが地上に残した痕跡などを探さなければいいけないらしい。

……一人で。

古泉の顔は愉快げだった。

そりゃそうだろう。

「ではそろそろ出発しましょ」

勘定書を俺に握らせ、ハルヒは大またで店を出て行った。

マジ、デートじゃないのよ、遊んでたら後で殺すわよ、と言い残してハルヒは古泉と長門を従えて立ち去った。
駅を中心にしてハルヒチームは東、俺と朝比奈さんが西を探索することになっていた。何が探索だ。

>>45ミスです

×マジ、デートじゃないのよ、遊んでたら後で殺すわよ、と言い残してハルヒは古泉と長門を従えて立ち去った。
駅を中心にしてハルヒチームは東、俺と朝比奈さんが西を探索することになっていた。何が探索だ。



○マジ、デートじゃないのよ、遊んでたら後で殺すわよ、と言い残してハルヒは古泉と立ち去った。
駅を中心にしてハルヒチームは東、俺が西を探索することになっていた。何が探索だ。

俺は近くを流れている川の河川敷を意味もなく北上しながら歩いていた。
一ヶ月前ならまだ花も残っていただろう桜並木は、今はただしょぼくれた川縁の道でしかない。

散策にうってつけの川沿いなので、家族連れやカップルとところどころですれ違う。
そんななか意味もなく一人で歩く俺。なにしてんだろうね、本当。

護岸工事された浅い川のせせらぎを眺めながら時間を潰す。

水面を流れる木の葉の数でも数える。

飽きたので、桜の下のベンチに俺は一人座る。
休日に呼び出されて、喫茶店で奢らされただけでボーっとベンチに座り時間を過ごす。
そんな青春の一ページ。

流石に不毛だったので、街の中をブラついて過ごした。
ゲーセンなどで時間を浪費しているとハルヒから電話がかかってきた。

『十二時にいったん集合。さっきの駅前のとこ』

切れた。腕時計を見ると十一時五十分。間に合うわけがねえ。

十分ほど遅れて行くと開口一番、ハルヒは不機嫌な面で

「何かあった?」

「何も」

「昼ご飯にして、それから午後の部ね。勿論遅刻したキョンの奢りで」

どこから突っ込むべきなんだろうか。

ハンバーガーショップで昼飯を食っている最中にハルヒはまたグループ分けをしようと言い出した。

「じゃあ私は古泉君と一緒に行くから、キョンは一人ね」

デジャブ?

なぜか不機嫌な顔で、ハルヒはシェイクをチュゴゴゴと飲み干した。

何がしたい?

「四時に駅前で落ち合いましょう。今度こそ何かを見つけてきてよね」

今度は北と南に別れることになり、俺は南担当。

何故か散々に奢らされて財布が寂しかったので、俺は金のかからない図書館で時間を潰した。

空いたソファがあったから座って休んだ。

休日を潰して奢らされて、一人無駄に時間を潰す。

完全に時間と金の無駄使いだな。俺はそう思いながらいつの間にか寝ていた。

尻ポケットが震動した。

「おわ?」

飛び起きる。周囲の客が迷惑そうに俺を見て俺はここが図書館であることを思い出した。
ヨダレをぬぐいつつ俺は館外に小走りで出た。

バイブレータ機能をいかんなく発揮していた携帯電話を耳に当てる。

『何やってんのこのバカ!』

金切り声が鼓膜をつんざいた。おかげで頭がはっきりする。

『今何時だと思ってんのよ!』

「すまん、今起きたとこなんだ」

腕時計を見ると四時半を回っている。四時集合だったけ。

『とっとと戻りなさいよ! 三十秒以内にね!』

無茶言うな。

駅前に戻ってきた俺を、ハルヒはタバスコを一気飲みしたような顔で、

「遅刻。罰金」

と出迎えた。

結局のところ、家で寝ている方が百倍以上マシという、時間と金を無駄にしただけの日だった。

週明け、珍しく始業の鐘ギリギリにハルヒが入ってきた。

声をかけるのを迷うほど不機嫌だったので、放置しておいた。

さわらぬ神にたたりなしだ。

昼休み。ハルヒの奇行を目撃した。

鞄からティッシュ箱を取り出し、しょうゆをつけて食べだしたのだ。

見てはいけないものを見てしまった気がする。

俺の視線に気が付いたのか、ハルヒはジロリと睨んで、

「……なによ?」

と言ってきた。

「いや、別に」

と言って前を向き考える。

金がないのか?その割にはあれ鼻セレブとかいう高級ティッシュだよな?

ともあれ、なんとなく教室に居づらいので弁当を持って教室を後にした。

朝比奈さんと鶴屋さんは、あれ以来度々部室に顔を出すようになった。

始めは古泉の監視だったのだろうが、結構ハルヒのことを気に入ったようだ。

鶴屋さんはハルヒに「みくるは渡さないよっ。あはははは」等と言ってからかっている。

最近では土曜の不思議探索パトロールに参加することもある。

俺はというと、朝倉に愚痴をこぼしているうちに仲良くなった。

普段はゲス泉とハルヒと長門しかいない部室。

この空間の居づらさは想像できるだろ?

朝比奈さんと鶴屋さんがきた日の部室は明るいものの右も左も美少女だらけ。

たまに視界に入るのはゲス泉。

な?愚痴りたくもなるだろ?

そんな事を愚痴っているうちに仲良くなったのだ。

ハルヒが意外と良い子なことや長門が健気で可愛らしいことなどを話してたら、
SOS団にも顔を出すようになった。

そんなある日、朝倉から呼び出された。

「やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいいって言うよね。」

「たとえ話なんだけど、
現状を維持するままではジリ貧になることは解ってるんだけど、
どうすれば良い方向に向かうことが出来るのか解らないとき。
あなたならどうする?」

「でね、当の本人が周りの気持ちに鈍感で気が付いてないの。
でも周りはいつまでもそうしていられない。
手をつかねていたらどんどん気持ちが偏っていきそうだから。
だったらもう抜け駆けしちゃってもいいわよね?」

「ステキな女性だらけのあなたの環境に、あたしはもうやきもきしてるのね。だから……」

「あなたに告白してみる」

「だって、わたしは本当にあなたが好きなんだもの」

そんな流れで告白された。

俺の返事は言うまでも無いだろう?

それ以来、朝倉は毎日文芸部の部室にくるようになった。

鶴屋さんは「ふーんっ、へーっ」と言いながら、「めがっさ意外だったさっ」と、
俺の背中を一発叩き「少年っ、泣かすようなことをしちゃだめにょろよっ」と笑いながら言っていた。

付き合ったことは言っていないのに気が付かれたらしい。

目下の問題点は二点。

その一、部室の美少女比率が上昇してしまったこと。

その二、朝倉もキョンくんと言い始めた所為で急速にキョンと言う呼び名が広がっていることだ。

古泉改め、ゲス泉はというと、雑用兼財布の扱いを受けている。

自業自得とはいえ、時たま不憫になる。

もっとも本人はそうではないらしい。

ハルヒのストリップから朝比奈さんのビンタ、

鶴屋さんに投げられて、胸を付けた状態で押さえつけられて、

最後に自分の恥ずかしい行動を長門に動画で撮られてた。

その後のハルヒは放免を宣告してる間、パンツがずっと見えてたという。

そんな体験をした影響で変な性癖に目覚めたらしい。

まぁ、飛び切りの美少女達にあんな目にあわされたら、
新たな性癖の一個や二個が目覚めてもおかしくないな。

嬉々として雑用をしたり、怒鳴られたりしている。

そんなゲス泉がある日、笑顔で俺に言った。

「涼宮さんには願望を実現する能力があるんですよ」

「ですから、この前の僕は涼宮さんの所為であんな事をしたんです」

「そこで、もう一度三人で同衾にチャレンジしませんか?」

「もしOKされたら、それは彼女の望んだ事なんですし」

やっぱりゲスなままだった。俺が朝倉と付き合っているというと、

「朝倉さんですか?これは意外です。」

「彼女も美人ですから僕としては全然OKですよ」

「なんの話かって?やだなぁ。もちろん同衾の話ですよ」

「ちょっと!どこに行くんですか!
勿論そうなったら、それは涼宮さんが望んでたって事ですよ!」

後ろで叫んでいるゲスを無視した。

朝倉にゲス泉のことを注意するのを忘れてた。おかげで思い出したよ。

こうして俺はいつもの部室に向かって行く。


続きは、『逆襲のゲス泉~子宮落としに挑戦~』。

・・・・・・続かない。



チラ裏SS オチマイ

付き合って頂いた皆様においては、お疲れ様でした。

しまった!

涼宮ハルヒの憂鬱は解決した。とか、


涼宮ハルヒは退屈しなくなった。とか、


>>109 古泉「本当はあなたに助けて欲しかったのです。僕もそのつもりで時間を合わせたのですが」とか


幾つか決めてた決め台詞を入れ忘れたわぁ。まぁ、酔っ払ってたし、仕方がないですね。

また酔って書いたのか
では次の酒を用意してもらおう

オマケで「誰もいない部室でハルにゃんがみくるんに抱きついてたら、うっかり転倒→みくるんのおっパイにダイブする体制になってそのままおっパイに、チュパッちゃう母乳プレイに突入しちゃった!」

(´・ω・`)とかやってくれないかな3レスくらいのを

>>118
基本的に焼酎三杯以上飲んでからしか書いていません。
そこから飲みながらチビチビ書くので脱字を中心に段々と酷くなります。


>>119
エロは苦手でございます。

「おっぱい!おっぱい!ああ、おおっぱい!ステキなおっぱいチューチューチュー!」

ごめん一行で終わった。

母乳が出るのは脳が変な刺激を受けたホルモン異常の疑いが脳外科の診察が必要で有りんす。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom