真紅「おもちゃは箱を飛び出すのだわ」 (29)

某所に投下したSSを修正したものです。
このお話に出てくる真紅はローゼンメイデンではありません。ただの呪い人形です。
ネジを巻かなくても勝手に動き出します。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405692674

 
今日はクリスマス・イヴ

ジングルベール ジングルベール スズガ~ナル~♪



――――桜田家


ジュン「あぁ~あ、こんな日でも父さんと母さんは仕事だなんて…」

のり「ジュンくん、しょうがないのよ。パパもママも忙しいんだから」

ジュン「でも、最後に会ったのってけっこう前だぞ?クリスマスくらい帰ってこいよなぁ」ハァ…

のり「そ、それよりケーキ食べましょ!あとプレゼント交換も!」

ジュン「うん。そうだな」

ピンポーン!


<こんばんはー、お届けものでーす!


のり「あらあら、こんな時間にお届けものなんて珍しいわね」トタトタ

ジュン「大きなダンボールだなぁ。誰から?」

のり「ちょっと待って。え~っと…、あっ!パパとママからよ!!」

ジュン「えっ!?」ガタッ!

のり「何が入ってるのかしら~」ワクワク

ジュン「クリスマスプレゼントかな?」ワクワク

のり「開けるわよぅ。えい!」パカッ


真紅「」


ジュン「人形?」

のり「あらあら」キラキラ

のり「綺麗なお人形さんね~」

ジュン「人形かぁ。姉ちゃん宛かな?」

のり「でも、紙に『のりとジュンへ』って書いてあるわよ」ピラッ

ジュン「僕にそんな趣味はないけど…。それにしても真っ赤な人形だなぁ。サンタクロースみたいだ」

のり「ふふ、そうね。じゃあ居間に飾っておきましょ」

ジュン「…なんかリアル過ぎて起きそう…」

のり「うふふ、ジュンくんったら想像力が豊かねぇ」

ジュン「ち、違っ…!あまりに精巧だからそう思っただけだ!」

のり「じゃあ、ケーキ配るわよぅ」

ジュン「聞いてないし…」







真紅「……」

 
深夜


♪そらに キラキラ おほしさま

みんな スヤスヤ ねむるころ

おもちゃは はこを とびだして~♪



真紅「ふふ…」パカッ

真紅「ねぇ、ホーリエ。そんな歌があるのよ。知ってる?」

ホーリエ「」コクコクッ

真紅「そう。世の中のおもちゃたちは真夜中になると皆そっと動き出すの。この真紅のように」

ホーリエ「」ソーナノ?

真紅「えぇ、そうよ」

真紅「さて、ジュンとのりの所に行きましょうか」

ホーリエ「」コクコクッ

真紅「まずは…そうね。ジュンの所に行きたい…けど、のりも……」ウーン…

真紅「最初はジュンの所に行くのだわ!」トテトテ…

ホーリエ「」ウンウン!

真紅「階段を上って…」ウンショ コラショ

ホーリエ「」ファイト!

真紅「杖でドアを開けて…」ピョン! ピョン!

ホーリエ「」ガンバッテ!


ガチャッ

真紅「あ、開いたのだわ…」ゼェ…ハァ…

ホーリエ「」ヤッター!

 
――――ジュンの部屋


真紅「まずはジュンね。はい、あなたのお父様とお母様からクリスマスプレゼントよ」つプレゼント

ジュン「うぅ~ん…」スヤスヤ

真紅「ふふ、かわいい寝顔」

真紅「さて、次はのりね」




――――のりの部屋


のり「すぅ…すぅ…」

真紅「のり。あなたのお父様とお母様からクリスマスプレゼントよ」つプレゼント

真紅「まだ高校生なのに家を守ってくれてありがとう」ナデナデ

真紅「っと、あなたのご両親がつぶやいていたわ」



真紅「ふぅ、プレゼントも配り終わったわね」

真紅「さて、ホーリエ。私の真の目的は別にあるのは知っていて?」

ホーリエ「」フルフル

真紅「知らなくて当然なのだわ。だって私しか知らないのだもの」

ホーリエ「」エー…

真紅「あの人間がいつも持っていた写真。写っていた家族。私はこの家にどうしても来たかったの」

ホーリエ「」ウンウン

真紅「正確に言えば、ジュンに会いたかった」トテトテ

ホーリエ「」ヘー

真紅「お人形にもクリスマスプレゼントがあってもいいと思わない?……あなたにも後でプレゼントを渡すのだわ」

ホーリエ「」ホント!?

真紅「えぇ、本当よ。さてと…」

真紅「おもちゃとしてはルール違反だけれど…。ホーリエ、見逃してね」

 
翌朝


<ジュンくーん、朝ごはんよー!



ジュン「ふわぁ~あ…、よく寝た。………ん?」


真紅「」


ジュン「………」

ジュン「?!!」




ジュン「ね、姉ちゃん!!姉ちゃん!!」ドタドタ!

のり「あら?そんなに慌ててどうしたの?」

ジュン「姉ちゃんの仕業だろ!?僕のベッドにこの人形入れたの!」つ真紅

のり「まぁ!」

のり「ジュンくん、お人形さんと一緒に眠ってたの?」ウフフ

ジュン「違う!!朝起きたら横にあったんだよ!」

のり「そうなのぅ?そういえば、お姉ちゃんの枕元にもプレゼントが置いてあったのよ。あれってジュンくんが置いたの?」

ジュン「えっ?プレゼント?僕はそんなの知らないよ」

のり「変ねぇ。ジュンくんじゃないとしたら誰が置いたのかしら?……あっ!サンタクロースさんかしら?」

ジュン「そんな訳ないだろ!はぁ…、もういいや。元あった場所に飾っとこ」つ真紅

のり「さぁ、朝ごはん食べちゃいましょ!」

のり「ところで…、ジュンくんはどんなプレゼントをもらったの?」

ジュン「えっ?僕の所にもあるのかな?後で見てみる」






真紅「………」

 
深夜


真紅「おもちゃは はこを とびだして~♪」パカッ

ホーリエ「」?

真紅「どうして歌うのかって?この歌が気に入ったのよ」

真紅「それにしても…、寝るときはちゃんと鞄に入れてくれるなんて。のりも良い下僕になりそうね」

ホーリエ「」…!…!

真紅「いいえ、ホーリエ。私はやめないわ。おもちゃのルールを破ってもやめないのだわ!」

ホーリエ「」ナンデ?

真紅「なんでこんな事をするのかって?それはね…その……///」モジモジ

ホーリエ「」??

真紅「な、なんでもいいじゃない!ホーリエは鞄に戻ってなさい」

ホーリエ「」イジワル!



真紅「……ごめんね、ホーリエ」

 
――――ジュンの部屋


ジュン「すぅ…すぅ…」

真紅(ホーリエにも言えないのだわ)寝顔 ジー…

真紅(まさか…この真紅が一目惚れするなんてね)ジー…

真紅(いけない事だとわかっているのだけど…)ジー…

真紅(それでも、あなたの体温を感じさせて…ジュン)








翌朝


チュンチュン チチチ…



真紅「」

ジュン「」

ジュン「ね、姉ちゃん!!姉ちゃん!!」ドタドタ!

のり「あら、そんなに慌ててどうしたの?」

ジュン「ま、ま、ま、またこの人形が僕の部屋に…!!」つ真紅

のり「あらあら。きっとジュンくんの事が好きなのね」

真紅「////」

ジュン「そんな訳あるか!も、もしかして呪い人形かな?」

のり「パパとママが送ってくれたお人形さんなんだから大丈夫よ。ジュンくんったら心配性なんだから」ウフフ

ジュン「明らかにおかしいだろ!あぁ…、きっと僕が呪いグッズをバカにしてイタズラ通販ばかりしてたからバチが当たったんだ…」ガクブル

のり「でもでも、こんな可愛いお人形さんが呪い人形さんだとは思えないわよ?」

ジュン「はぁ…、もういいよ…」





真紅「………」

 
深夜


真紅「………」パカッ

ホーリエ「」モーッ!

真紅「そうね。ごめんなさい、ホーリエ。私が間違っていたわ」

真紅「私の私利私欲のためにジュンを怖がらせてしまった…。おもちゃ失格よ…」

真紅「ホーリエは私がどんな気持ちでジュンと接してるか…もう知ってるのよね?」

ホーリエ「」ウン…

真紅「そ、そうなの…。知っていたのね…。私もまだまだなのだわ」

ホーリエ「」

真紅「えぇ。これで最後にするわ」

 
――――ジュンの部屋


ジュン「くぅ…くぅ…」

真紅「ジュン…、驚かせてごめんなさい。でもね、ジュン…」ナデナデ

真紅「あなたにとっては呪い人形だけれど、私はあなたを愛しているの」ナデナデ 髪サラサラ

真紅「お人形に愛されるのは気持ち悪いでしょうけどね…」ナデナデ

ジュン「すぅ…すぅ…」

真紅「そもそも、これは恋なのかしら…?執着…?独占したい気持ちの表われ?」

真紅「けど、この気持ちには正直でいたい」

真紅「私はお人形。あなたの幸せを願うことしかできない。それでも…」



ジュン「すぅ…すぅ…」

真紅「…愛してるわ…ジュン」チュッ…

ホーリエ「」キャー!

真紅「あ、あら…、ホーリエ。見ていたの?恥ずかしいわね///」

真紅「…内緒よ、ホーリエ。夜は眠りの時間だけれど、照れくさいから力を借りたくなる時もあるの」

ホーリエ「」オトメチック!

真紅「まぁ、ドールの私にはあまり関係ないのだけれど」

ホーリエ「」…

真紅「さぁ、そろそろ鞄に戻りましょう」

ホーリエ「」ウン


真紅「ジュン…。どうか明日もあなたに幸せな一日が訪れますように…」

真紅「ずっと見守っています。 ずっとずっと…幸せを願っています」

真紅「おやすみなさい、ジュン」ガチャッ パタンッ






ジュン「………」

 
翌朝


ジュン「……」ポケー

ジュン「夢…だったのかな」


<ジュンくーん!ゴハンよーー!


ジュン「ごはん食べよ」





朝食中


のり「ジュンくんは冬休みの宿題もう終わったの?」

ジュン「もう終わったよ」

のり「早いのねぇ。お姉ちゃんはまだまだよぉ…」

ジュン「姉ちゃんは家事もあるだろうし…、僕も皿洗いくらいは手伝うよ」

のり「ジュンくん…、ありがとぅ~」ジーン…

ジュン「大げさだなぁ」チラッ




真紅「」

 
朝食後


ジュン「さて、食器も洗ったし…暇だな」

真紅「」

ジュン「なぁ、お前…なんて名前なんだ?」

真紅「」

ジュン「喋るわけない…か」


<ピンポーン!


ジュン「お!来たな」


<ピンポーン!

ジュン「はいはーい!今行くよ」タタタッ



真紅「……」チラッ

巴「おじゃまします。朝からごめんなさい」

ジュン「あぁ、いいよ。それより本貸してくれてサンキュ」

巴「んーん、気にしないで。それより、そのお人形…」

真紅「」

ジュン「ん?あぁ。この間送られてきたんだ」

巴「そう…」

ジュン「ちょっと飲み物持ってくるから待ってて」

巴「えぇ、ありがとう」




巴「……」チラッ

真紅「」

巴「……」ジー…

真紅「」

巴「………」ジー…



真紅(すっごく見られてるのだわ…)

巴「……」ジー…

真紅(ちょっと…なんなのかしら?ジュン、早く来て…!)

ジュン「お待たせ」ガチャッ

巴「いえ、待ってないわ」

巴「ところで桜田くん。このお人形…しゃべる?」

真紅「」ドキッ

ジュン「えっ?なんでそんなこと聞くんだ?」

巴「この間、私の家にもお人形が来たの。その子とよく似ていたから」

ジュン「その…柏葉の人形って喋るのか?」

巴「えぇ。とっても可愛いわ」



真紅(私以外に言葉を話す人形が居るの…?)

巴「雛苺っていうんだけど、この子はうちのヒナに雰囲気が似ているの」

ジュン(うちのって…順応力高いな)

ジュン「人形が勝手に動いたら怖いだけ……あっ!」

巴「どうしたの?」

ジュン「…夢かもしれないけど、この人形に『愛してる』って言われたんだ」

真紅(き、聞かれてたの!?じゃ、じゃあキスしたことも…///)

巴「ふふ、赤くなっちゃって。かわいい」

真紅「!?」ドキッ

ジュン「えっ?」

巴「桜田くん、この子に愛してるって言われたのね。なら、桜田くんはその気持ちに応えなきゃいけないわね」

ジュン「な、なんでそうなるんだよ!ただの夢かもしれないんだぞ」

巴「夢でもいいわ。応えてあげて」

ジュン「そ、そんなの知るもんかっ!」プイッ

巴「………」



真紅(ど、どうしましょう…バレてるのかしら…?)

巴「ねぇ、あなた。本当にそれでいいの?」ボソ

真紅(それでいいのよ。だって、お人形ですもの…)シーン

巴「そう…、わかったわ。ねぇ、桜田くん」

ジュン「なんだよ…」

巴「私とキスしてみない?」

ジュン「」ブフォッ!!

真紅(えっ!?)

巴「…嫌なの?」

ジュン「げほっ!ごほっ! か、柏葉!いつもの冗談だろ?」アタフタ

巴「………」

ジュン「か、柏葉…」

真紅(うぅ…)ハラハラ



ジュン「……」

巴「……」

真紅「だ、ダメなのだわ!!」ガバッ

ジュン「うわっ…!?ほ、本当に動いた!!…夢じゃなかったのか…!」

巴「ふふ」

真紅「ちょっと!あなたたち離れなさい!!」プンスカ


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――――――――――――――――――――――――――――
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ジュン「へー、真紅っていうのか」

真紅「そうよ。覚えておいて頂戴」

巴「ふふ、さっきはごめんね」

ジュン「ホントだよ。やっぱり柏葉の冗談だったか」

巴「……(半分冗談じゃないのよ、桜田くん)」



<ただいまー
 

のり「すっごくよく出来てるのねぇ!まるで本物の女の子ちゃんよぅ!」カワイイ!

真紅「褒めてもなにもでなくってよ」

ジュン「ところで、うちの親はお前が普通の人形じゃないって知ってるのか?」

真紅「知らないわ」

ジュン「えっ?じゃあ…」

真紅「えぇ。写真であなたに一目惚れしてからは、あなたのお父様とお母様の枕元で囁き続けたのだわ」

のり「あらあら、大胆ねぇ」ウフフ

ジュン「本当に呪い人形じゃん」

巴「では、そろそろ帰ります。雛苺も待ってるだろうし…」

真紅「私もその雛苺に会ってみたいのだわ」

巴「今度連れてくるわね」

のり「また来てね、巴ちゃん」

ジュン「またな」

巴「えぇ、おじゃましました」



真紅「トモエと言ったわね。負けないのだわ」ヒソ

巴「こちらこそ負けないわ」ヒソヒソ

のり「さぁて、お昼ごはんにしましょうか。真紅ちゃんはごはん食べられる?」

真紅「問題ないのだわ」

ジュン「本当にどういう体してるんだよ…」

真紅「隅々まで調べてみる?」

ジュン「本当に大胆なやつだな///」





のり「ジュンくーん、真紅ちゃーん、ごはんよー」

ジュン真紅「はーい」




こうして、呪い人形の真紅は桜田家に住み着いたのでした。
その後、さらに呪い人形が集まってきましたが、それはまた別のお話し。
それからも真紅は幸せに暮らしましたとさ。


真紅「おもちゃは箱を飛び出すのだわ」

~おわり~


短いですが、これで終わりです。
ありがとうございました。

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