魔王「50年の眠りから覚めた」 (19)

ほぼバトルメインのssです。15レス程度で終わる予定です。

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>魔王は勇者との戦いの末、敗れた。
>邪神により不死の身を授かった魔王が施された処置、それは封印。
>魔王は魔王城にて封印され、眠り続けた。

>そして、50年後――


魔王「く…くく…」

側近「お目覚めですね、魔王様」

魔王「少し眠りすぎたようだな…だが、気分が良い!!」

魔王「人間どもよ、我に逆らったことを後悔するがいい――!」

魔王「人間どもに絶望を!世界に暗闇を!魔物達よ、我が許す!さぁ、思う存分暴れるが良い!!」

魔物達 ワーワー

チュンチュン

魔法戦士「ハッ」ガバッ

魔法戦士「嫌な夢を見た…」

魔法戦士(50年前、じいちゃんが封印した魔王が…まさか、な)

母「魔法戦士、起きたの?」

魔法戦士「あ、あぁ。おはよう母さん」

母「朝早く悪いんだけど――王様からお呼び出しよ」

魔法戦士「!」

魔法戦士(この時俺は、嫌な予感がしていた。そして俺の予感は、現実のものとなる――)





王「各地で魔物が凶暴化した。占い師によると、魔王が復活したようだ」

魔法戦士「やはり…!」

王「魔法戦士。お主の祖父は50年前、勇者として魔王を封印したな」

魔法戦士「はい」

王「そしてお主は、祖父の名に恥じぬ戦士になるべく、修行を続けてきた。お主程の実力を持つ者は、我が臣下にもいない」

魔法戦士「…はい」

王「魔法戦士よ――」

魔法戦士「…はい!」

=魔王城=

魔王「半世紀は、人間が老いるには十分な月日だな」

側近「はい。勇者はあの後、仲間の賢者と結婚したそうです」

魔王「50年も経てばあの美しかった姫も、見る陰もない老いぼれとなったのだろうな」

側近「それに引き換え魔王様は、人間ならば10代後半位の容姿のまま…そういえば、勇者にはその位の歳の孫ができたそうです」

魔王「ほう孫。詳しく」

側近「はっ。情報によると剣と魔法を使いこなす魔法戦士…勇者の孫の名に恥じぬ実力者との事」

魔王「そうかそうか…ではその孫とやらが我を討ちにくるかもしれんな!」

側近「他の勇者一行の孫達も、祖父母の技を受け継いだ戦士となっているようです」

魔王「勇者一行の技を受け継いだ、か…」


その者に切れぬ物は存在しない。剣の申し子――勇者

あらゆる魔法を習得し、人間を超越した魔法の使い手――賢者

己の肉体の限界を極めた肉体兵器――武闘家

身も心も神に捧げた信仰の民――僧侶

狙った獲物は逃さない、物欲と背信の権化――盗賊



魔王「面白い…!!我の元へ来るが良い!かつての勇者一行への見せしめとして、その首を貰おう!!」

ギギィ…

魔王「早速、我を討とうとする者が来たか…!」

魔法戦士「魔王だな」

魔王「我が目覚めてから来るのが早かったな?」

魔法戦士「魔王城の場所はわかっていたからな」

魔王「お前は?」

魔法戦士「俺は魔法戦士。お前を封印した勇者の、孫だ」

魔王「勇者の――そうか、貴様か。1人で殺されに来たのか?」

魔法戦士「いや、1人じゃない。お前を封印する為、これ以上ない程のベストメンバーで来た」

魔王「面白い…」ニヤリ

魔王「良いだろう、相手してやろう。その前に…」

ドゴオオォォン

>魔王は魔法を放ち、扉を破壊した。
>魔力を感じる。扉の後ろに隠れている奴らをまるごと吹き飛ばすつもりだったが、魔王の魔法を防いだ者がいる――

>面白い――魔王の気持ちはますます高ぶる。

魔王「さぁ姿を現せ!」

>舞った煙が晴れていく。そして姿を現したのは――

魔王「…!!」

>その男は、鋼のような上半身を晒け出し、魔王を威圧するようなポーズで身構えていた。

武闘家(73)「破壊力は相変わらずじゃな…長い眠りで寝ぼけてないようで、安心したわい」


>その女は、おどけた表情を浮かべながらも、刃物を握り締めながら軽い調子で言った。

盗賊(75)「やれやれ、姿を現す前にやるとは怖い怖い。やられる前にやれってのは基本だねェ」


>その女は、煙が晴れると同時に護りを解き、魔王を冷静に見つめていた。

賢者(67)「姿かたち、まるで変わりがない…思い出しますね、昔の戦いを」


>その男は、使い古した剣を堂々と掲げ、自信と高潔さを全身から溢れさせていた。

勇者(69)「久しぶりだな魔王…この勇者、貴様を封印しに再び参った!!」


魔王「え…勇者一行?」

勇者「フッ、やはり50年も経てばわからなくなるか。そう、俺たちは、お前を封印した勇者一行だ!」

魔王「ちょっと待てぃ、普通その子孫とかが来るだろ!!何で年老いたお前達が来るんだよ!」

賢者「貴方の言う「普通」がわかりませんが」

武闘家「こんな重要任務、若造には任せられんわい」

盗賊「ま、あの頃の私らも十分若造だったけどねェ」

魔王「お、お前、年寄り連れ出して何とも思わんのかッ!!」ビシッ

魔法戦士「王の命令だからなー…」

魔法戦士(てっきり俺が勇者として旅に出ろって言われるのかと思いきや、じいちゃん達を集めろって命令だもんな。しかも俺の役目は皆のスタミナ節約の為の「道中の雑魚敵処理係」だもんな)

魔王「年寄り相手とかやる気失せるわ…そういえば勇者一行の僧侶はどうした?」

武闘家「奴は道中ぎっくり腰になって離脱したわい」

魔王「ほら見ろ、そういう歳なのだ!!無理せず元気な若者に戦わせろ!!」

盗賊「僧侶は万年座り仕事だったから、足腰が弱くなってたんだよ」

賢者「まぁ良かったのではありませんか。昔は我々のツッコミ役でしたが、近年では1番のボケ役でしたし…」

魔王「それは物忘れ始まってるのだ!!笑えないぞ!!」

勇者「魔王…お前優しいな」

魔王「我はおじいちゃん子だったのだ!!晩年のじいちゃん思い出して戦いにくい!!」

勇者「俺は生涯現役、手加減無用!!そちらがやらぬならこちらがやる!!」

魔王(やるしかないのか…)

賢者「唸れ…雷の雨!!」

魔王「うわぁ!?」

バチバチィッ

賢者「防がれましたね…」

魔王(く、年月を経てあの頃より魔力が上がっている…一瞬でも遅れれば我は致命傷を負っていた)

魔王(少々気は進まんが…勇者一行の英雄譚に、終止符を打つ!!)

魔王「こちらの番だ、魔法弾10連発――ッ!!」ダンダンッ

武闘家「下がっていろ。すううぅぅ――――――」

>武闘家は前に出て、呼吸を思い切り吸い込んだ。

魔王(そこは賢者による魔法のガードだろう…何を考えている…!?)

武闘家「――――喝ああああぁぁぁッッッ!!」

ビュオアアアァァッ

>武闘家の声で辺りの空気は乱れ、魔法弾は掻き消えた!!

魔王「!?」

武闘家「覇あああぁぁ――ッ!」ダッ

魔王(筋肉が向かってくる…!!)

ゴオオォォ

>魔王を囲むように火柱が立った!

魔王「所詮貴様は近接型!近寄れねば手の打ちようはあるまい!!」

武闘家「覇あぁぁ…」

>武闘家は立ち止まり、気を沈めている――そして次の瞬間!!

ビュンッ!

>武闘家から放たれた「弾」が火柱を突き抜く!!

魔王「何っ!?」バッ

>魔王は間一髪避けた!!

魔王「貴様魔法を習得したのか!?」

武闘家「ほっほっほ、発想が可愛いのう。これは魔法ではない…気功弾じゃよ」

魔王「き、気功弾!?」

武闘家「そう。お主を封印した後もワシは己を鍛え、遂に己の「気」を操ることに成功した…今のワシは、お主に近寄らんでも」

ビュンビュンッ

魔王「くっ!」バッ

武闘家「この程度の攻撃、何万発でも打てるぞい…ほっほっほ」

魔王(何て奴…!!――んっ)

>その時背後から嫌な気配がし、魔王は即座に首を右に傾げた!
>そして次の瞬間、魔王の首があった位置を、鋭いナイフが通り抜けた――

盗賊「あらま、失敗しちゃったねェ」

魔王「な…」

>ナイフはそのまま壁へ突き刺さった。もし、首を傾げなかったら今頃――

魔王「い、いつの間に俺の後ろ側に…」

盗賊「アンタが武闘家と遊んでいる内にだよ。こっちはベテランの盗賊だ、アンタの目ェくぐり抜けるくらい動作ないね」

武闘家「ほれほれ、お喋りしている場合ではないぞい」ビュンッ

魔王「…!!」

>魔王を挟んで、武闘家の気功弾、盗賊の投げナイフが繰り出される。それは魔王の身体能力を持ってしても避けるのがギリギリの、抜群のコンビプレーだった。

盗賊「腕上げたんじゃないかい武闘家?昔よりいい男だよ」

武闘家「惚れてもいいんじゃぞ盗賊や?」

盗賊「私ゃおっ死んだ旦那一筋でね。口説くのが50年遅かったねぇ!」

武闘家「やれやれ、ワシも勿体無いことをしたわい。武道一筋で生きてきた結果が一人身の余生とはのう」

>私語を交わしながらも攻撃の手は緩まない。

魔王(だが――)

>魔王の体から魔力が溢れ、それは武闘家の気功弾、盗賊のナイフを一瞬で溶かした。

魔王「いつまでも同じことを繰り返すとは芸がないな!」

盗賊「やれやれ歳を取ったせいかねェ。僧侶も最近同じこと何回も繰り返して言うし」

魔王「忘れっぽくなってるだけだからそれ!!」

勇者「ただ経験値を得るだけで強くはなれない…強くなるには、経験から何を学ぶか…」

魔王「むっ!?」

>勇者は剣を構えている…。

勇者「我らが重ねた人生経験…それは多くの学びを与えてくれた。魔王よ、俺は嬉しく思う…あの頃より多くの経験を身に付けて、再び貴様に挑めることに!!」

>勇者はそう言って魔王に向かってきた!!

魔王(こいつまで気功みたいな非常識な技使いはしないだろう…火柱を強める!)ゴォッ

>火柱はより大きな炎となり、部屋中を熱くした。
>しかしそれでも勇者は臆さず突っ走り――

勇者「でりゃあああぁぁ――ッ!!」

ビュアッ

魔王「な、何だと――ッ!?」

>勇者のによる一閃は、火柱をかき消したのである!

勇者「魔王、覚悟ぉ―――ッ!!」

魔王「!!」

ガキイイィィン

魔王「フン」

>魔王は瞬時に己の腕を硬質化し、勇者の剣を止めた。

勇者「昔は「切れぬ物は存在しない」とまで言われた俺だったが、歳には勝てねぇなぁ」

>勇者はそう言ったものの、その表情に悔しさは微塵も浮かんでいない。

魔王「年寄りと侮るべからずか…貴様には特に容赦はせん!喰らえ――」

>炎、氷、雷、風――あらゆる魔法が勇者に襲いかかるが――

勇者「何のォーッ!!」

ビュン、ビュッ…

>勇者が剣を振ると、魔法はかき消されるのである。

勇者「この程度の魔法、うちのカカアだってできるぞ?」

賢者「お父さん、私はそれをできるようになるまで何年もかかったんですよ」

勇者「すまんカカア、決してカカアをバカにしたわけじゃないんだ」

魔王(う、嘘だろ…)

>封印されていた50年間、魔力を溜めていたからこそできる芸当。そう思っていたものを、人間に易易と攻略されるとは――
>魔王にとって50年とは、さほど長い年月ではない。

魔王「しかしその50年で、人間は恐ろしい程進化するのか…!?」

盗賊「でも僧侶はその50年で進化しすぎて」

魔王「僧侶の話はもうするな!!話聞く度悲しくなるだろう!!」

賢者「さぁさぁ…何だかんだで皆さん歳なんですから、長丁場は良くありませんよ」

>賢者の口調は穏やかだった。しかし、そう言った次の瞬間――賢者を中心に大地が揺れた。

魔法戦士「うわああぁ――っ!!」ドタッ

>立っていられなくなったのだろう、魔法戦士は転げてしまった。
>人間という枠内であれば彼も十分な実力者。その彼が立っていられなくなる程、膨大な魔力なのだ。

>しかし、それだけの魔力を至近距離で浴びながら――

勇者「おーコエェコエェ、やっぱ本気を出したカカアにはかなわんなぁ」

武闘家「ふぅ、いい風じゃわい」

盗賊「年寄りには堪えるねぇ、こりゃ」

>魔王ですら圧倒される魔力の前に、3人の人間は、平然と立っていたのである。

>賢者を中心に地面に亀裂が入る。室内の空気が暴れだし、耐え切れなくなった壁がそこらを舞っていた。
>壁の破片が魔王の肌をかすめるが、大したダメージではない。それよりも、いつでも反撃できるように構える。

魔王(…!!何かが来る!)

>そう察知した魔王は、瞬時に全魔力を防御に切り替えた。そして自分に向かってくるものの正体を見た。炎、氷、雷、風――魔王がついさっきやった攻撃と同じだ。

魔王「人間にしてはやるな…!」」

>魔王を覆うように魔法が炸裂していた。だがそれでダメージを喰らわない。

魔王「流石に、我のガードを突き破る程ではないようだな!!」

勇者「そりゃオメェ、人間だからな」ビュンッ

魔王「――!!」

>魔王を囲っていた魔法の数々を文字通り「斬った」。その先から見えてきたのは――

武闘家「ほっほ、魔法は目くらましじゃよ」

盗賊「手段は何重にも備えておけ、ってね」

勇者「覚悟ォ――ッ!!」

ドゴッザクッザザァーッ

>その一撃一撃が会心の一撃であった。

魔王「グハッ…な、何故だ…何故お前達には、加齢による衰えがないのだ…」

勇者「何でって…そりゃなぁ、俺は勇者、カカアは賢者、武闘家も盗賊も…平和になった所で己の道は変わんねー。ま、つまり」

勇者「人生の半分を費やした経験値による賜物ってとこよ」

魔王(か、勝てねぇ…)ガクッ

魔法戦士「す、すげぇ…じいちゃん、ばあちゃん…」



>こうして魔王は再び、封印されることとなった。

>そしてまた、50年の月日が流れ――

魔王「復活したぞ…クク…」

側近「おはようございます」

魔王「一応確認を取っておく。勇者どもは流石に生きてはいないな!?」

側近「はい。僧侶が100歳超えの大往生でしたが、全員もうこの世にはいません」

魔王(長生きできたのか、僧侶…)

側近「今の人間どもは大分平和ボケしております。魔王様、人間界を制圧する好機です…!!」

魔王「そうだな、もう2度と強い奴と戦うのは御免だ。さーて…」

バァン

?「魔王ー!!勝負だ!!」

魔王「むっ!?侵入者か!?しかし平和ボケした人間よ、我が返り討ちに…」

魔法戦士(69)「あれから50年…俺は更に技を鍛えた」

魔法使い(66)「待ちに待った瞬間ねぇ兄さん」

暗殺者(71)「貴様が魔王か…祖母から受け継いだこの技、この大舞台で披露しよう…!」

武闘家2世(82)「師匠…見守っていて下さい。貴方に教わった全てを、ここで全て発揮します!」

神官(74)「皆さん、ここで一休みしたいんじゃがのう」

魔王「」

魔王「ま…まさかお前達、あいつらの…」

魔法戦士「貴様が封印から目覚めるだろうというのは50年前に学習済み!我々は再び貴様を封印すべく、それぞれの祖父母から受け継いだ技を磨き上げた!」

魔法使い「長かったわねぇ」

魔王「し…しかし平和ボケしている時代に生きてきた貴様らなど…」

暗殺者「平和ボケ?とんでもない…あの祖母との生活は命懸けの修行だったぞ」

武闘家2世「師匠が建てた道場には既に100人近い門下生がいる!毎日が命懸けの修行だあぁ!!」

神官「はて、魔法ってどうやるんじゃったかのう~」

魔王(う、嘘ぉ…)

魔法戦士「…というわけで魔王よ」

魔法戦士「勝負だあああぁぁ――ッ!!」

魔王「うわあああぁぁぁ――ッ!?」


>勇者が死すとも、勇者の意思と技は受け継がれてゆく。
>こうして魔王は50年ごとに目覚めては、爺さん婆さんに封印されるというのを未来永劫繰り返していくことになったとさ。


めでたしめでたし

お付き合いありがとうございました。

強い爺さん婆さんが戦うのは燃えます。
けどドラクエ7ではメルビンを外します。

爺婆かっこよかったよ乙
前作のオチでじいさん出したから今回はメインで出したくなったんすか?

>>18
な ぜ ば れ た し

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