輿水幸子「皆さん、明日はPさんの誕生日らしいですよ」 (51)


輝子「あ、そ、それ……私も言おうと思ってた」

小梅「私も……」

幸子「あれ、皆さんも知ってましたか」

輝子「う、うん……もうプレゼント用意したし、明日が楽しみ……フフ……」

幸子「え?」

小梅「わ、私もちゃんと買ってきた……これ……」ゴソゴソ

輝子「包んであるけど……な、なにかな……それ」

小梅「えへ……な、内緒……」

幸子「……ちょ、あれ、お二人共もう用意してあるんですか?」

輝子「うん……Pは、と、トモダチだから……ちゃんと、祝わないと……」

小梅「私も、いつもお世話になってるから……いっぱい、返さないと……」

幸子「……」

幸子(まだ買ってないから一緒に選びに行きませんかと言いだせなくなってしまいましたね……。
   というよりまだ用意してないのボクだけですか)


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輝子「ち、ちなみに私も……ちゃんと持ってきてある」ノソノソ

幸子「……机の下に隠してあるんですか」

輝子「か、隠すっていうか、一番置くのに適切な場所……あ、あった」

小梅「輝子ちゃんは、何をあげるの?」

輝子「こ、これ……」

幸子「……マイタケ?」

輝子「うん、そう……Pの、頭にソックリ……フフ……この日の為に、一生懸命育てた……」

幸子「……確かにPさんの頭はもじゃもじゃですけど、さすがにそれは……」

輝子「え……だ、ダメか?」

幸子「うーん……もじゃもじゃなのを気にしてるふしは無いですけど、ちょっと避けた方が良いような……」

輝子「そ、そんな……じゃあ、私、Pにプレゼント用意出来ない……これ以外、思い浮かばない……」ガクッ

幸子「あ、ちょっと、輝子さん」

輝子「……シィイーッツッ!」ブンブン

幸子「ヒッ」ビクッ


小梅「わ……輝子ちゃんが頭を、ブンブン振り回してる……お、怒ってる?」

幸子「お、おおお、落ちついて下さい輝子さん!」

小梅「しょ、輝子さん、落ちついて……」サスサス

輝子「……ハッ……ふ、ふぅ……お、落ちついたよ、ありがとう……あ、いや、それどころじゃなくて……わ、私は、一体どうすれば……」オドオド

幸子「あ、いや、その……あ、そうだ! それなら、これからボクと一緒に新しくプレゼントを見に行きませんか?」

輝子「……え?」

幸子「い、いや奇遇なんですけど、ちょ、ちょうどボクもまだプレゼントを用意していないので、一緒に見に行きませんか?
   この時間帯ならまだお店も普通に開いてますし、ね?」

輝子「ほ、ホントに、いいの?」

幸子「え、えぇ! 良いですよ!」

輝子「そ、そっか……なら、Pにプレゼント、用意できる……幸子、ありがとう……あ、でも、このマイタケは……」

幸子「それは……あ、ケーキも買って上に刺しときましょう」

輝子「え、でも……これは一生懸命育てたから……そのまま育てて欲しい」

幸子「じゃ、じゃあ……市販のもついでに買って行きますか」

輝子「そ、それ良いね……フフ……前に刺すのやって、P、喜んでたし……やろう……」

幸子「じゃあそうしましょう」


小梅「わ、私も行って、良い? プレゼント、買ってあるけど……」

幸子「勿論ですよ。皆で行きましょう」

輝子「う、うん……一緒……良いね……」

小梅「良かった……」

幸子「じゃあ行きましょうか(よ、良かった。一人だと色々と迷いそうですからね)」


……


幸子「とりあえず近場のデパートというか百貨店に来ましたけど……」

輝子「こ、これ……おいしそう……」

小梅「あ……ここに試食、あるよ」

輝子「本当に? じゃあ……ちょっと食べる……」モグ

小梅「どう?」

輝子「う、うん……おいしいよこれ」

小梅「ふふ……本当だ……」モグモグ

幸子「どうしてボク達は地下のお惣菜エリアににいるんですか!」

小梅「え、あの、ちょっとお腹空いてたから……」

輝子「幸子ちゃんも……食べるか?」

幸子「え? あ、は、はぁ……(いつもの事ですけどこの二人と一緒にいるとどうもペースが……)」

小梅「幸子ちゃんも、お腹に、何か入れてから、行った方が良いと思う……」

幸子「そ、そうですか? えっと……じゃあいただきます」モゴモゴ

小梅「……おいしい?」

幸子「あ、はい。おいしい、です」


小梅「ふふ……これで、準備万端……」

幸子「え、えぇ……じゃあ上の階に行きましょう!」

輝子「うん……行こう……ここ、人多いし……」

小梅「このエレベーターで、行く?」

幸子「うーんと……目的の階が五階ですからね。これに乗って行きましょう」ポチッ

輝子「さ、幸子ちゃんは……何を買うつもり……なんだ?」

幸子「ボクですか? フフン、ボクはですねぇ……いつも少しダサイデザインのネクタイばかりつけているPさんに、
   ボクの選んだオシャレなネクタイでもプレゼントしてあげようかと思ってます」

輝子「ね、ネクタイ……なんか凄い、オシャレ……フフ……その発想は無かった……」

幸子「フフーン、そうでしょう?」

輝子「私も……それにしようかな」

小梅「同じものにするのは、あんまり良くないと……思う」

輝子「そ、そっか……」シュン


幸子「……ま、まぁ! ここはデパートですから、歩いていればきっと他にも良い物が見つかりますよ!」

輝子「そ、そうかな?」

幸子「えぇ!」

輝子「そっか……なら、み、見つけよう……うん……」

幸子「えぇ、きっと良いものが見つかりますよ」

幸子(……輝子さんの分も色々検討しておかないといけませんね)


ティーン


小梅「あ、エレベーター、来たよ」

幸子「ちゃんと上行きですね。じゃあ乗りましょう」



ガコンッ


小梅「ふふ……エレベーターって、なんだか、素敵……」

幸子「えぇ。楽ちんですからね」

小梅「うん……それも、あるけど……こういう、密室は……ホラー映画でも沢山出て来る、から」

幸子「そうなんですか?」

小梅「うん……と、突然、エレベーターの電気が消えて……そして、電気がふっと戻って……。
   そうしたら、すぐ目の前に……」

幸子「目の前に?」

小梅「……魂をよこせぇええええ!」

幸子「ヒッ」ビクッ

小梅「……って、血まみれの幽霊が出て来て、エレベーターの紐が切れて……ひゅーって墜ちて……。
   それから……グチャアッて潰れちゃうの……」

幸子「は、はぁ……そうですか(び、ビックリした……)」

輝子「フ、フフ……耳に、ちょっとキーンって来た……」



ティーン ゴカイデス


幸子「(他のお客さんが乗ってなくて良かった……)え、えっと、着いたみたいですね。降りましょう」

輝子「おおう……なんか……広い……」

幸子「いわゆるデパ地下なんて所はお店がひしめいて狭く感じますからね。紳士服のコーナーに来れば、全然スペースに余裕が出てきますけど」

輝子「そ、そうなのか……えっと……ネクタイは、どこに置いてあるのかな」

小梅「なんだか、お店、いっぱいあるね」

幸子「そうですねぇ。確かにブランドが沢山あって何処が良いのかよくわかりませんね」

輝子「で、でもさ……何か、ブランド? っていうのは、高いんじゃ……」

幸子「一応予算は一万円ですね。さすがにこれだけあればネクタイの一つや二つ買えますよ」

輝子「おおう……幸子は太っ腹、だな」

幸子「フフン、まぁ当然ですよ。これくらいお金をかけないとあのPさんはオシャレに気を使ってくれないでしょうし」

輝子「そ、そっか……」


小梅「……あっ」

幸子「どうしました?」

小梅「輝子ちゃんは、ハンカチ、贈ってみたら……どうかな?」

輝子「ハンカチ?」

小梅「うん……パパも、いつもハンカチ持ってるから……多分、男の人はよく使うんだと、思う」

輝子「おおう……そ、それだ。それ良い。うん、それにする」

幸子「ハンカチ……ですか」

輝子「ん? どうかしたか、幸子ちゃん」

幸子「え? あぁ……何か、何処かでハンカチを贈り物にする事は手切れを意味するって、聞いたような……」

輝子「て、手切れ?」

幸子「だからあまり贈り物にするのは良くないって……」

輝子「そ、そう……なのか……そ、そんなものを……私は贈ろうと……」シュン

幸子「……あっ。い、いえ、その……ま、まぁ! 他のを探せば良いだけですから! ね?」

小梅「ご、ごめんね、輝子ちゃん」

輝子「フ、フフ……ううん……良いんだ……」


幸子「こ、小梅さんも悪くないですよ! こ、こんな事を知ってる人なんて、そう、いないでしょうし……」

小梅「でも、幸子ちゃんは知ってたから……」

幸子「ボクは、偶然つい最近調べたから知ってただけで、調べなかったら全く知らなかったですから!
   ね? ボク達の歳では、あまり知られてない事なんですよ」

小梅「そ、そう?」

幸子「えぇ。だから二人共気を落さないで下さい。ね?」

小梅「……わかった」

輝子「幸子ちゃんが、そういうなら……きっと、そう……なんだよね」

幸子「えぇ! このボクが言うんだから間違いないですよ!」

輝子「そ、そっか……良かった……」

幸子「……えっと、と、とりあえず沢山お店がありますから、ぐるっと回って大雑把に見てみましょうか!」

小梅「わかった……」

輝子「でも、いっぱいお店あるな……」テクテク

幸子「そうですねぇ……あっ、このアルマーニっていうのなら聞いた事ありますよ」

輝子「うーん……なんか、カッコいい名前だな……でも、私は知らない……」

幸子「まぁ男性物のブランドみたいですからね。実際ボクも名前だけでよく中身とかは知りませんし。
   でも一応後でよく見てみましょうか」


小梅「……あ」

幸子「どうしました?」

小梅「こ、このお店、知ってる」

幸子「どこですか? あぁ、グッチですか」

輝子「あ、それなら……わ、私も知ってる……ハッチポッチステーションの、アレだ……」

幸子「ハッチポッ……何ですかそれ」

輝子「え、知らないのか? ほら、人形とか出てきたアレ……小さい時にやってた……」

幸子「うーん……記憶に無いですねぇ。小梅さん知ってますか?」

小梅「私も……知らない……」

輝子「そ、そんな……と、歳一つ二つしか違わないのに……こ、これが、ジェネレーションギャップ……フ、フヒ……」

幸子「……ま、まぁとにかく。ここも割とゆうめ……て、手堅い所ですね。候補に入れておきましょう」

小梅「わかった……」


輝子「……あっ」

幸子「今度は何ですか?」

輝子「そう言えば……さっき幸子ちゃんが、贈り物に意味? みたいなのあるって……言ってた、けど……。
   ね、ネクタイには……そういうの、無いの?」

幸子「え? うーん……そういうのは調べてないのでよく知らないですね。
   まぁでも、もしかしたらあるかも知れませんね」

輝子「そ、そっか……」

幸子「……ふぅ。とりあえずぐるっと回れたみたいですね。じゃあ候補の所に行ってみましょうか」

輝子「じゃあ……さっきのカッコいい名前の方、行ってみよう……」

幸子「そうですね、じゃあまずはそちらに行きましょうか」

輝子「……うわ……来たは良いけど……いっぱいある」

小梅「ど、どれが良いのかな?」

幸子「うーん……どうでしょうねぇ」


「いらっしゃいませ。何をお探しですか」

幸子「あ、えと……ちょっと良いですか?」

「はい、何なりと」

幸子「あのですね……お、贈り物用に、ネクタイを選びたいんですけど……」

「成程……お父様にでしょうか?」

幸子「あ、いえ……その、お、お世話になってる人に……」

「あら、そうなんですか。では……そのお世話になっている方は、どんな人ですか?」

小梅「あ、あの……や、優しい人、です」

輝子「う、うん……優しいね……」

幸子「そう……ですね。あ、あと身長が高いです。185くらいあります。なんか、シュッとしてます」

輝子「あと……なんか、シブイよね」

小梅「シブイ?」

輝子「うん……比奈さんが、前に言ってた。Pは……し、シブイっスねー、って」


「左様で御座いますか。では、少し細めの方が良いかも知れないですね。
 失礼ですが、ご職業は?」

輝子「わ、私達はアイ……」

幸子「輝子さんボク達じゃなくPさんのですよ」

輝子「あ、そ、そっか……間違えた」

幸子「えっと職業は……営業? マンです。あと、女性がいっぱいいる職場です」

「それでしたら……こちらなどいかがでしょう。濃い桃色のストライプか……スタイルに合わせるならば、色違いの青などもございますが」

幸子「えーと……ど、どれが良いですかね」

輝子「うーん……私は……うぅ……どっちにしよう……こっちのもも……あ、青かな」

小梅「私は、桃色……何だか、綺麗な内臓みたいな色で、良い」

幸子「分かれましたね……うーん、じゃあボクが決めるしか……」

小梅「が、頑張って幸子ちゃん」

幸子「うーん……えぇと……じゃあ、ですねぇ……桃色で!」

「かしこまりました。ではこちらで」


幸子「はい……あっ(い、勢いで決めてしまいました……もう一つのお店も回るつもりだったのに……)」

輝子「さ、幸子ちゃん……決まって良かった、ね」

小梅「うん……Pさんも、喜んでくれると思う」

幸子「そ、そう、ですか? なら、良いですかね」

「こちら以外に、何かお求めの物はございますか?」

幸子「あ、いえ、無いです。お会計お願いします」

「かしこまりました。ではこちらでそのまま……9620円でございます」

輝子「お、おおう……け、結構するね……」

幸子「し、しましたね……まぁでも予算内ですから。はい、じゃあこれでお願いします」

「一万円で、かしこまりました。少々お待ち下さい……はい、お釣りが380円ですね。ありがとうございました」

幸子「ありがとうございます」

小梅「良かったね、幸子ちゃん」

幸子「えぇ、早々に決められて良かったです。後は……ゆっくり輝子さんの分を色々探してみましょう」

輝子「う、うん……そうしてくれると、助かる……」


幸子「どうしましょうか。あ、そう言えば予算はどれくらいですか?」

輝子「予算? ちょ、ちょっと待って……」

幸子「はい」

輝子「ひぃ、ふぅ、みぃ……さ、三千円」

幸子「三千円ですか。うーん……」

幸子(名刺入れ……は何か貰ったとか言って新しかったですし……電車通勤じゃないから定期入れも駄目ですし……。
   煙草を吸うからライター……あれ良いのは凄い高いんでしたっけ……)

小梅「……幸子ちゃん?」

幸子「……むぅ」

輝子「ど、どうかな幸子ちゃん。何か良いの……お、思いついた?」

幸子(ど、どうしたものでしょう……値段が張るものは買えませんし……。
   ボクも予算使い切っちゃってこれ以上使うとケーキ代が無くなるから、一緒に出すなんてのも出来ませんし……)

幸子「……と、とりあえず……」

輝子「とりあえず?」

幸子「……あっ、そうだ、さ、先にマイタケを買いに行きましょう。えぇ。
   そっちを先に済ませてから……色々と……」

輝子「あ、そ、そうだね……じゃあ先に、マイタケを、買いに行こう」

小梅「スーパーが、試食した所の奥にあったから、そこに行く?」

幸子「そうですね。ちょっと二度手間になっちゃいましたけど、そこ行きましょう」


……


幸子「……結局マイタケ以外にも色々買いましたね。増えたのは小梅さんのですけど」

輝子「フフ……キノコーキノコーボッチノ……あ、い、今はボッチじゃないか……」

小梅「輝子ちゃんが、ケーキにトッピングするって言った、から……私も乗せるの、作ろうと思って……」

幸子「成程……あっ、ケーキどうしましょうか。一応明日ボクが買ってくるつもりでしたけど、作ったりしますか?」

輝子「え……さ、さすがにケーキは、作れない……」

小梅「私も……そこまでは、できない……」

幸子「まぁ時間とかも無いですもんね。今日だって割と珍しく時間が空いてただけですし。
   じゃあケーキは皆で明日また見に行きましょうか。ケーキ屋さんは事務所の近くにありますし」

輝子「そ、そうだね……うん、また、皆で見に行こう」

小梅「うん……皆で……」

幸子「じゃあ決まりですね(……ボクも何か乗せるものを考えないといけませんね)」

輝子「えっと……幸子ちゃん」

幸子「……あっ、はい。何ですか?」

輝子「その……わ、私は何を買えば……いいかな?」

幸子「あっ……えぇと……」

幸子(結局思い付いてませんよ……ど、どうしましょう……)


小梅「……あっ」

幸子「……ん? どうしました小梅さん」

小梅「輝子ちゃん……あれ……」グイグイ

輝子「うん? あれ……あっ」

幸子「(一体何を二人で……あっ)……トリュフ?」

輝子「トリュフ……知ってる……凄い、高いキノコだ」タタタッ

幸子「あっ、輝子さん、待って下さい」タタタッ

小梅「ま、待って、幸子ちゃん……」トトトッ

輝子「おおう……凄い……綺麗……」

幸子「トリュ……あぁ、チョコレートの事でしたか」

輝子「これ、凄い……チョコで、キノコ包んでるのかな」

幸子「いえ、それはただの……」

幸子(……)


幸子「……まぁ、包んでるんでしょうね。えぇ、そうですよ、きっと」

輝子「そ、そっか……チョコ、前にあげたらすごく喜んでくれたし……」

幸子「あの人も、割と甘いもの食べますからね」

小梅「輝子ちゃん、これにするの?」

輝子「うん……これに、する」

幸子「じゃあ、決まりですね。えっと値段が……あっ」

輝子「さ、三千……五百円……」

幸子「……ご、五百円玉とかは?」

輝子「な、無い……全財産、三千円……」

幸子「あぁ……」

輝子「か、買えない……そんな……」ガクッ

幸子(ま、マズイ……これはまた豹変するんじゃ……)

輝子「ウウウー……」


小梅「しょ、輝子ちゃん」ツンツン

輝子「フ、フフ……な、何かな」

小梅「はい……五百円……」

輝子「え……」

小梅「これ……使って、いいよ?」

輝子「う……え、い、いいの?」

小梅「うん……これくらいなら、大丈夫だから……だからこれ、使って?」

輝子「……こ、小梅ちゃんっ……うぅ……ありがとう……」ギュウッ

小梅「わっ……しょ、輝子ちゃん」

輝子「こ、今度……絶対返すから……あ、ありがたく、つか、使わせて貰う……」

小梅「だ、大丈夫……わ、私の気持ち、だから返さなくても、大丈夫……」

輝子「そ、そっか……なら……も、貰うね……あ、ありがとう」

幸子「……じゃあこれ、買いますか」

輝子「う、うん。買う……」

幸子「すみません。あの、これ一つお願いします」

「はい、かしこまりました。税込で……3500円でございます」


輝子「は、はい」

「3500円ちょうど、お預かり致します」

輝子「フ、フフ……」

「では、レシートと、こちら商品で御座います。ありがとうございましたー」

輝子「か、買えた……買えたよ、小梅ちゃん、幸子ちゃん」

幸子「やりましたね輝子さん」

小梅「う、うん……やったね」

輝子「フ、フフ……これも、二人のおかげ……ありがとう」

幸子「……フフン、良いんですよ」

小梅「……ふふ」


輝子「な、なんか、こういう事してると……凄い、友達っぽいね、これ……あ、でも、私はボッチだし……違うか……」

幸子「え、ボク達友達じゃないんですか?」

輝子「えっ……そ、そうなの?」

幸子「え?」

輝子「え?」

幸子「……」

輝子「……」

幸子(……と、友達と思われてなかった……)


輝子「ほ、本当に? 本当に、友達なの?」

幸子「え? そ、そうですよね? ね? 小梅さん」

小梅「え? 友達じゃ、ないの?」

幸子「ですよね? ほら」

輝子「あ……そ、そう、だったのか……」

幸子「そうですよ」

輝子「そ、そっか……フヒ……フヒヒヒ」

幸子(……凄い満面の笑顔……)

輝子「や、やったっ……友達……二人も増えた……えっと……や、やっぱり……ちゃんとか、つけないで呼んだ方が……良いのかな……」

幸子「どっちでも大丈夫ですよ。輝子さんの好きなように」

輝子「そ、そう? じゃあ……幸子、と……小梅……で、良い、かな?」

幸子「良いと思いますよ」

小梅「うん……」

輝子「じゃ、じゃあ……これから、こう呼ぶね……フフ……幸子と、小梅……フフ……」

幸子(……やっと、友達と認識されたみたいですね……)


輝子「……あれ……でも、幸子と小梅は、私の事、さん、とか……ちゃん、とか……つけて、呼んでる?」

幸子「あ、あぁ……これですか。一応、輝子さんも年上ですしそういう所はちゃんと……。
   あっ、で、でも、親しみというか、そういうのも籠ってますから」

輝子「そ、そうなの?」

幸子「はい! ですよね、小梅さん」

小梅「え? ……う、うん」

輝子「そ、そういうのもあるのか……知らなかった……」

幸子「まぁ……呼びやすいように呼ぶというのが、一番だと思いますよ」

輝子「そ、そっか……そう、だね。うん……」

幸子「……さてと。じゃあもう一旦事務所に戻りましょうか。そろそろ帰らないといけない時間ですし」

輝子「うん、じゃあ、皆で帰ろう……友達皆で……」

小梅「……」

幸子「じゃあ行きま……あれ、小梅さん? 帰りますよ」

小梅「……そっちに、あるの?」

幸子「……小梅さん?」


小梅「うん……」

幸子「小梅さん? あれ、聞こえてますか?」トントン

小梅「……え、あ、幸子ちゃん……ごめん、なさい……ちょっと、私、行く所出来ちゃった……」

幸子「行く所? 何処ですか」

輝子「フ、フヒ……一緒に、行くよ」

小梅「あの……その……ふ、二人には、まだ内緒……だから、ここで待ってて……」

幸子「内緒?」

小梅「すぐ、戻るから」トトトッ

輝子「あっ……い、行っちゃった……」

幸子「行っちゃいましたね……」

輝子「な、何しに行ったのかな……」

幸子「さぁ……でも、まだ内緒って言ってましたし、そのうちわかるんじゃないですか?」

輝子「そ、そうだね……」

幸子「とりあえずここで待ってましょう。すぐ戻ると言ってましたし」

輝子「うん……じゃあ待とう……」


……


小梅「お、お待たせ……」

幸子「用事は済みましたか?」

小梅「うん……」

幸子「じゃあ今度こそ帰りましょうか」

輝子「フヒ……帰ろう……」

幸子(これで全員プレゼントを揃えられましたね……後は明日ケーキを買って、ちひろさんに少し手伝って貰って……。
   驚かせるには、やはりクラッカーなんかもあった方が良いんでしょうか……事務所にあるのは確認しましたけど……)

輝子「ね、ねぇ小梅」

小梅「何?」

輝子「さっきは……何、してたの?」

小梅「さっき……ま、まだ秘密……」

輝子「そ、そっか……じゃあ、そのうち……わかる?」

小梅「……うん」

輝子「フフ……じゃあ、わかるの……楽しみに、しておく……」

小梅「お、驚いてくれると……嬉しい……」

輝子「うん……絶対、驚くから……」

幸子「あれ、輝子さん、小梅さん! 早くしないとバス来ちゃいますよ!」

輝子「えっ、あ、ごめん、今行く」タタタッ

小梅「あ、ま、待って……」トトトッ



――



幸子「ふぅ……とりあえずこんなものですかね」

輝子「フフ……輪飾りいっぱい作ったし、綺麗だね……」

小梅「ち、ちひろさん……その、ありがとう、ございます……」

ちひろ「いえいえ、こういうお手伝いならいつでも大歓迎ですよ」

幸子「時間も……そろそろ帰ってくる頃ですね」

ちひろ「あ、じゃあ私は下に行って、プロデューサーさんが来るの見張ってますね。
    入口まで来たら連絡しますから」

幸子「あ、はい。お願いします」

ちひろ「それじゃあ皆、頑張ってね!」


ガチャッ
バタンッ


輝子「な、なんか……緊張、してきた……」

小梅「はい、輝子ちゃん……」

輝子「あ、クラッカー……ありがとう、小梅……」

幸子「……あ、ちひろさんからもうプロデューサーさんが来るってきましたよ」

小梅「じゃあ、Pさんが来たら……パーンってやって……」

輝子「み、皆で……誕生日……お、おめでとう、ございますって言う……」

幸子「そうです。あ、言う前にちゃんとせーのって言いますから、それに合わせて下さいね」

輝子「うん……わ、わかった」

小梅「えっと……今、エレベーターで、上がって来てるって……」

幸子「そうですか。じゃあ……あれ、何でそんな事わかるですか?」

輝子「さ、幸子……あ、足音聞こえてきた……」

幸子「え、もうですか。じゃあ、ほら、構えて下さい」


ガチャッ


P「ったく、梅雨ってのは何でこうも雨が――」



パンッ パパンッ


P「ん?」

幸子「せーのっ……」

「「「Pさん、お誕生日」」」

幸子「おめでとうございます!」

小梅「お、おめでとうございます……」

輝子「おでめ……あ、噛んじゃった……え、えっと、おめでとう……」

P「……なんだ、お前ら……」

幸子「Pさん今言ったじゃないですか、お誕生日おめでとうって」

P「……あぁ。今日、俺の誕生日だったか?」

幸子「そうですよ。何で自分の誕生日も把握してないんですか」

P「いや……そうか、すっかり忘れてた」

幸子「ほら、こっちですよ。蝋燭の火を消して下さい!」

P「あ、あぁ……」


幸子「あ、小梅さん電気お願いします」

小梅「う、うん」パチッ

幸子「はい、じゃあ一息でいって下さいね」

P「……このケーキに乗っかってるのは、何だ?」

幸子「それは後で良いですから、ほら、暗いんですから早くして下さいよ」

P「……わかったよ。じゃあ……」


フゥーッ……


輝子「ま、真っ暗……」


パチッ


幸子「ちゃんと消せましたね。じゃあ自分の誕生日も覚えてないような冴えないPさんに、
   カワイイボク達からプレゼントをあげますよ! 今世紀に二度とあるかないかのサプライズですから感謝して下さいね!」

P「あ、あぁ……ていうか、さっき俺に飲み物買いに離れたスーパーまで行って来いなんて言ったのはこれの準備する為か」


輝子「ほ、本当は飲み物買うの……忘れただけ……」

幸子「シーッ……それは言っちゃ駄目ですよ……お、おほん。ま、まぁそれもありますね」

P「そうか……なんか、悪い事したな。覚えてれば適当に時間潰してきたんだが」

幸子「そんな事より……はい、カワイイボクからのプレゼントですよ!
   もうこれ以上無い程に感謝しながら受け取って下さいね!」

P「……じゃあ、ありがたく受けとっておくよ」

幸子「ちょっとアッサリ過ぎません?」

P「えっと……何だ、随分高そうな梱包だな」ガサゴソ

幸子「フフン、開けてみて下さい」

P「……お、ネクタイか。しかもアルマーニ……お前、これいくらしたんだ」

幸子「ボクみたいな人気アイドルになればそれくらいのなんて簡単に買えますよ」

輝子「あれ、予算ギリギリって……」

幸子「シーッ!」

P「……嬉しいが……あまり、無理はするなよ?」

幸子「む、無理はしてませんよ。ちゃんと余裕がある範囲内で買いましたから」


P「そうか、なら良いが……ネクタイ……あなたに首ったけ、ね……」

幸子「何か言いました?」

P「いや。こういう色のは普段つけないが……これからは仕事につけていく事にするよ。ありがとう」

幸子「……フフン、毎日つけて下さいね! ボクの選んだネクタイをちゃんと毎日!」

P「あぁ、わかったよ。無理にでも毎日つけるさ」

幸子「……ふふっ」

輝子「じゃ、じゃあ……次は、私の番……」

P「輝子もか。もしかして全員でそれぞれ買ってきたのか?」

小梅「うん……私のも、ある……」


輝子「は、はい……これ……」

P「お……随分、キラキラしてるな……ん、チョコレートか」

輝子「そ、そう……しかも、トリュフのなんだ……」

P「トリュフ……あぁ、そういう事か」

輝子「ど、どうかな?」

P「あぁ、食いものなら大歓迎だ。良いプレゼントだよ、ありがとな輝子」

輝子「フ、フヒ……な、何かてれる……」

幸子「食い意地張ってますからねぇPさんは」

P「まぁな。この……マイタケと、目玉が乗ったケーキと一緒に食う事にするよ」

輝子「う、うん……一緒に、食べて……」


小梅「じゃあ……最後は、私から……はい」

P「ん? これは……」

小梅「Pさん……み、耳、貸して……」

P「何だ」

小梅「……中身は、え、映画館のチケット……これで、好きなの見れるから……」ヒソヒソ

P「……そうか」

小梅「……ほ、本当は、最初は二枚だけ用意してたんだけど……でも、幸子ちゃんと輝子ちゃんと一緒に買い物行って……。
   ちゃんと、二人の分も買わないとって……昨日、買ったの」ヒソヒソ

P「……そうか。ちゃんと買ってくれたんだな。偉いぞ」ナデナデ

小梅「えへ……だ、だから今度、皆のお休みが、合った時に……」

P「あぁ、その時にな」

小梅「うんっ……」


輝子「フヒ……ね、ねぇP……何が入ってたの?」

P「これか? まだ、内緒だ」

輝子「ま、まだか……いつ頃にわかるかな」

P「そうだな……ま、そう遠くない内にな」

輝子「な、なら、良い……」

P「そうか。はぁ……しかし、全員随分良いプレゼントを用意してくれたな。ありがとな、本当に」

幸子「……ま、まぁ? ボクは、ボクのプロデューサーである人に少しでもオシャレに目覚めて欲しいと思っただけですから?」

小梅「いつもお世話になってるから……その、お礼……」

輝子「と、トモダチだし……プレゼントを用意するのは……当然……」

P「ふっ、そっか。じゃあ、皆でケーキを食べるか。晩飯食ってないから腹ペコなんだ」


幸子「あ、このケーキはボクが買ってきたんですよ! それに、ほら、見て下さいこの真ん中の!」

P「ん? ……カワイイボクたちから、Pさんへ……か。綺麗な字だな」

幸子「これはボクが書いたんですよ! ちゃんとチョコを使って一文字一文字丹念に」

P「そうか、凄いな」

輝子「こ、このマイタケは……ちゃんと調理して、あるんだ……バターで焼いて……乗せた……」

小梅「私も……この目玉を、作ったの……」

P「全員でやってくれたのか、力作だな」パクッ

幸子「えぇ! 凄いでしょう!」

P「……味も……独特だしな」

輝子「フフ……Pも、喜んでる……」

小梅「うん……やったね……」

幸子「フフン、大成功ですね。まぁ、このボクが指揮をしましたから当然と言えば当然ですけど」

小梅「うん……幸子ちゃんの、おかげ……」

輝子「幸子は、凄いな……」

幸子「……いえ、でも、お二人がいなかったら、ここまでの成功は収められませんでしたよ。
   その……お二人はとても凄いです、えぇ」

輝子「そ、そうかな?」

幸子「はい。ボクと同じくらい、とっても凄いですよ!」

輝子「そ、そっか……フフ……やった……」

小梅「えへ……」


P「ん、どうした、お前ら。食べないのか? 全部食っちまうぞ?」

幸子「た、食べますよ! あ、ほら、輝子さんも小梅さんもお皿お皿」

輝子「フヒ……あ、ありがとう……」

小梅「ありがとう……」

幸子(こうして、ボク達のサプライズパーティは大成功を収めました。
   輝子さんと小梅さんのおかげで……Pさんもとても喜んでくれました)

幸子(何だか……こういうのも、良いですね。四人で……こうして……)


幸子「……ングッ……ゲホッ、ゲホッ!」

小梅「ど、どうしたの、幸子ちゃん」

幸子「ゲホッ……な、何ですかこの味!」

P「ん?」

輝子「味?」

幸子「ま、マイタケの味が凄いしみて……うぇっ……こ、小梅さんは、平気なんですか?」

小梅「面白い味だと、思う……」

P「別にまずくはないだろ、な?」

輝子「うん……」

幸子「……」

幸子(……一緒にいると、面白いですけど……)

小梅「輝子ちゃん、もうちょっと、食べる?」

輝子「フヒ……う、うん……」

P「旨いな、慣れると」

幸子(慣れるには……時間がかかりそうです)

終わりです。
女の子だけでワイワイするの苦手だからちゃんと出来てるかな。
読んで下さった方、お疲れ様でした。

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