俺「女ちゃん好きだ!」イケメン「待て!俺も好きだ!」女「…」(30)

一目惚れだった
俺と同じクラスになり席も隣になったその子は俺の理想の姿を写し出していた

俺「よろしく」

女「あ、よろしくね」ニコッ

か…可愛い…
噂に聞くとこの子はこのポニーテールの小柄な見た目に反して性格はSよりだという
俺にとってそれはご褒美でしかなかった

それから俺は積極的に女に話し掛け友達と呼ばれる関係になった

この女を俺のものにしたい
俺は告白を決心した

女「なーに?わざわざ教室呼び出して」

俺「まぁ…その…率直に言うと…好きです!付き合ってください!」

女「…」

女「ま、そんなことだろうと思った」

俺「…それで…?」

心臓の音が教室に響くようだった
脇汗もヤバい

女「…」ニコッ

ガラガラッ!

?「待ってくれっ!」

女 俺「!?」

女「あなたは…」

入ってきたのは隣のクラスのイケメンだった
嫌な予感しかしなかった

女「…どうしたの?」

イケメン「俺も…俺も好きだ…女」

俺の嫌な予感は的中した
ふざけんな
あとちょっとで俺のハッピーライフが始まろうとしてたのに
よりにもよってこのイケメンとは

女「…」

イケメン「俺じゃだめかな?」

俺「おいおい告白してたのは俺だぞ」

イケメン「仕方ないだろ」

女はどっちを選ぶ
女とイケメンはそこまで面識はないはず
だからといって女が顔で選ぶならこの自称フツメンの俺が勝てる保証はない

女「決められないわ」

俺「え?」

イケメン「…」

女「だから二人のどちらのほうが私を愛してるか見せてもらうわ」

イケメン「どういうこと?」

女「サプライズよ」

俺「…サプライズ?」

女「そう 明日中に私にあっと驚くようなサプライズをしてよ
それで私が良いと思った方と付き合ってあげる」

なんてことだ
さすがどSの女ちゃん 考えることが違う
しかしまたそういうところに惹かれる

俺とイケメンは目を合わせる

俺「分かったよ」

イケメン「俺も」

女「ふふっ それじゃ明日
楽しみにしてるねっ」

ーーーーー

とは言ったもののサプライズか…
それも明日までに…

俺は財布を開き覗いた

俺「足りない」

次に貯金箱を見た
その100円ショップで買った貯金箱は100円だけを入れ続けると最後には30万円貯まるとこが売りらしい
実際今のとこは10円とか500円とか入れてるしいくら貯まってるか分からない

俺はゴクリと唾を飲み貯金箱を掴んだ

翌日

俺はいつものように女ちゃんの横に座った
女ちゃんもいつものように友人と話している
そしていつものように授業が始まるのであった

1時限目 2時限目 3時限目と終わっていく
イケメンはもう女ちゃんにサプライズをしたのだろうか
俺も決心を決めなくては

女「zzz…」

4時限目 女ちゃんは寝てる これはいつものことだ

俺はわざと昨日買った消しゴムを落とす

俺「あっ」

俺「女ちゃ~ん」肩トントン

女「…んん?」

俺「消しゴム落としたよ」

女「んん…あぁありがとう」

女「え…!」

俺は消しゴムと共に昨日初めて入った高級店で購入した花柄ダイヤの指輪を机に置いた

女「すごい…!これ高かったでしょ?」

俺「まぁ女ちゃんの為ならね」

きまった…!女ちゃんも驚いてるようだ

俺「ほら、また寝てると先生に怒られるよ」ニコッ

女「う…うんっ」

完璧だ…女ちゃんは俺が貰った
残念だなイケメン君
顔だけで人の価値は決まらないのだよ

俺が今の会話を何度も脳内再生し余韻に浸っていると4時限の終わりをつげるチャイムが鳴った
生徒たちがアクビをしながら挨拶を終えた時それは起こった

ピンポンパンポーン

放送の合図の効果音が響き 教師達の「お…おい!なにしてる!勝手に入るな…!」という声が小さく聞こえる

嫌な予感がした

放送「お…女ちゃんっ!女ちゃん好きだっ!」

女「!!」

俺「…」

イケメンの声だった

生徒達「ザワザワザワザワ…」

放送「俺はぁ!全校生徒みんなに知ってもらいたい!
お…俺は女ちゃんが好きだあああ!!」

ここで教師達が何か叫んでマイクが落ちるような音と共に放送が切れた
生徒達はザワザワして次に女ちゃんに注目がいく
女ちゃんは両手で口を塞いで驚いている様子だ

俺はその時口を開けたままとぼけた顔をしていただろう

すると教室のドアが開き誰かが走ってきた
案の定イケメンだった
教室が一瞬ざわめく
しかしイケメンが女ちゃんの前に立つとシーンと静まり返る

女「…!」

イケメン「はい」

イケメンがバラを差し出す

イケメン「バラの花言葉は【愛】だ
僕がこのバラより綺麗な愛を届ける つき合ってください」

女「…!」

女ちゃんは笑顔でバラを受け取った
静かだった教室内で徐々に拍手が鳴り やがて大喝采が起きた

その直後教員達がブツブツと言いながらイケメンを引っ張っていった
その間もクラスでは笑いが起こる
彼女も笑ってる

俺はただただ呆然としていた

ーーーーー

女「私やっぱりイケメン君にするわ」

放課後俺と女ちゃんとイケメンは教室に集まっていた

イケメン「ありがとう」ニコッ

俺「待ってくれよ!なんでなんだ?こいつはただバラを渡しただけなのに!
俺のは10万だぞ!10万!」

女「俺君は何も分かってない!
サプライズにお金なんて関係ないのっ」

俺「なに…?」

女「サプライズに必要なのは衝撃とロマンチックさよ!私にはイケメン君が全校の前で告白して愛の証のバラを私に渡してくれた それだけで最高のサプライズよ!」

俺「…そんな…」

イケメン「…ごめんね」

女「だから私イケメン君と一緒になるわ」

そんな…
いやだ…
俺はこんなにも女ちゃんを愛してるのに

女ちゃんとイケメンが手を繋いで教室を出ようとした

俺「待ってくれぇ!」

女「…なに?」

俺は涙を流しながら土下座していた

俺「もう一度!…もう一度チャンスをくれ!」

女「…は…はぁ?」

俺「おれ…俺にはぁあ!…女ちゃんしかいないんだぁ!君しかいないんだ!」

女「そ…そんなこと言ったってダメよ
気持ちは嬉しいけどあなたは負けt」

イケメン「いいよ」

女「え?」

俺「え?」

イケメン「感動したよ 俺君の気持ちに」

イケメン「もう一度やろうよサプライズ」

俺「…え…」

女「…いいの?イケメン君?」

イケメン「あぁ 俺ももっと凄い…俺君が諦めちゃうくらいのサプライズ考えてみたい」

イケメンは心までイケメンだった

俺「あ…ありがとう」

女「わ…分かったわ
それじゃ今回は考える時間が少なかったと思うから今度のサプライズは一週間後ね!」

俺「」コクッ

イケメン「分かった」

女「それじゃ期待してるね」ニコッ

ーーーーー

俺は家に帰ると机に座り頭を抱えた

俺「どうすればいい?何をすれば…」

自分で頼んだもののサプライズなんて思い浮かばない
なんてことだ…
きっと彼女への愛は俺の方が数段上なのに
正直あの心も身体もイケメンなあいつに勝てる気がしない

俺「考えろ…俺の思いを伝えればいいんだ…そう…俺の思いは…」

俺はこれから彼女以上の女に出逢うことはないだろう
そこまで彼女は素敵なのだ

俺「彼女に一途なんだ…たった一つの恋なんだ…」

ぼそりと呟く

俺「そしてサプライズは衝撃的でかつロマンチックでないといけない…」

俺「…」

俺「うおおおおおおおおお」

俺は頭をかきむしり叫んだ

ーーーーー

ククク…
最高に優雅な気分だ
特にこの高校に入ってからは

俺はハッキリ言ってイケメンだ
おかけで人生はイージーモードさ
今では何でもできる気がする
何をしても許されるからだ

高校に入ってからは廊下を歩けば女の目が俺に向いているのが分かる
俺は笑顔を振りまく それで女はオチちまう
そんなもんさ

そんなある日俺は隣のクラスのポニーテールの可愛い女の子が一人で弁当を食べていたから話しかけた

俺「一緒に食べていいかい?」

女「…どうぞ」

俺「」ニコッ

女「なによ?w」

俺「いや君可愛いね」

女「いいからそういうのw」

俺は休み時間の間この女とずっと話していたが違う
この女は他の女と違うのだ
Sっけの強い喋りの中に女の子らしさを残している こんな女初めてだ
俺は思った
この女をオトしたい

そんなある日の放課後その女が男と教室で二人で話しているところをドアの窓越しに見つけた
どうやらその男が女に告白している最中だった
俺は何も考えず教室に飛び出した
あの女を取られるわけにはいかない

結局なんだかんだありお世辞にもイケメンとは言えないその男と俺で女にどちらが良いサプライズをしかけられるかという勝負をすることとなった

結果は俺の圧勝
相手の男は指輪かなんか買ったらしい
頭の悪い奴だ
金を使うのはオチてからだ

すると男が泣きながら土下座してもう一度チャンスをくれとか言い出した
さすがに笑いそうになった
しかしここでほっといて帰るというのも女からした俺の威厳が保てない気がする
面白いからこう言ってやったよ

「いいよ」
「もう一度やろうよサプライズ」

次の勝負でこの男を潰し完全に女の心を掴むのだ
女に慣れているとはいえ今回は俺もマジで女に惚れているみたいだ

次のサプライズはさすがに相手の男も本気を出してくるだろう
俺も本気を出さなければな

ーーーーー

そして約束の一週間が過ぎた

学校が終わり俺はすぐさま家に帰った
男はサプライズを済ませたのだろうか?
まあそんなことはどうでもいい

俺「よし…やってやるか…」

準備満タンに靴を結び家を出ようとした俺に電話が掛かってくる
例の男だ

俺「もしもし」

男「おう、イケメン君 今回の勝負 俺に勝たせてもらうぞ…」

まだサプライズは仕掛けてないらしい
それにしてもこれは煽りなのか?それとも本心から勝てると思って?

俺「あ…あはは 俺も期待してるよ
正々堂々頑張ろうね」

男「あぁ」

一体どこからそんな自信が出てくるのか

俺は女に電話した

女「あらイケメン君 なに?」

俺「ちょっと渡したいモノがあるから○○交差点の近くの銀行の前に待ち合わせしようよ」

女「うふっ…分かったわ」

俺「それじゃ」

そう 今の俺はなんでもできる

俺は知り合いの親が経営してる大きな会社のビルに入る

ビルの最上階から双眼鏡で銀行前を覗く
女が私服で腕時計を見ている
そろそろ行くか

俺「そろそろお願いします」

会社のおっさん「おうよ」

彼らはさっきも言った通り知り合いの親の会社の社員
俺が少し金を払えば動いてくれる
おっさん達がカタカタと機械を弄り始めた

すると大きな交差点のど真ん中に位置するこのビルの光が一気に失われる
そうビルの全ての部屋の電気を同時に消したのだ

案の定街中がザワザワとしだした
そして数秒後ビルの真ん中にある大きなモニターだけが光を放つ

そう…俺のサプライズはこれだ

モニター俺「女!!」

街中からドッとざわめきが起きる

俺は常に横に設置してある小さなモニターで女の様子を見ている
女はとても驚いていて口をパクパクとしている
きっと俺の名前を言っているのだろう

モニター俺「女!俺が渡したかったのはたった一つ!」

モニター俺「愛してる!…この言葉だけだ…!」

そしてまたバラを画面越しに差し出す

ここで女にスポットライトを浴びせる

女は泣きながら喜んでる

すると街の何人かの人々が拍手を始め教室の時同様喝采が起きた

完璧だ

何もかも

女から電話がくる

俺「もしもしっ」

女「グスッ…ありがとう…ありがとう…!」

俺「…」

俺は自然と涙を流した
初めて心から感動したからだ
女を心から愛するとはこういうことなのか

この時俺はこの女を一生愛すると誓った

ーーーーー

俺「朝か…今日は休みだな」

昨日のビルから見た街の景色が未だに脳裏を離れない
自然と笑みがこぼれた

俺「やべっw一人で笑ってたw」

昨日の事を思い出し喜びを隠せない俺は余韻に浸りつつテレビをつけた

キャスター「えー昨夜23時頃ある男子学生が女子学生を呼び出し 包丁で腹部を何度も刺し殺害するという事件が起きました」

俺「…」

俺「…」

え?

俺はさっきまでの笑みが嘘かのように顔面が強張り固まった



被害者の名前は女の名前だった

俺はあの男の存在を完全に忘れていた

容疑者は あの男だった

俺「…」

俺「…え?…え?」

俺「な…な…ななんで…なんで…」

俺は混乱していた

キャスター「えー調べによりますと容疑者は11時頃人通りの少ない路地裏に同じ高校の女子高生を呼び出し【これが俺のサプライズだ】と言い女子高生を包丁で殺害したとのことです
警察の調べでは殺害された女子高生の上に大量の サンザシ の花が散りばめられており何かしら意図があるものではないかと警察が容疑者に検問をしましたが容疑者は依然黙認を続けている模様です」

俺「さ…さサンザシ…?
確か…花言葉は【ただ一つの恋】…」

俺「衝撃的でロマンチックに…」

俺「そ…そ…そんなのありかよ…」

俺「嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ…」

俺「やっと…手に入れたのに…ほんとの愛を…」

俺「う…う…う…」

俺「うわああああああああああああああああああああああああ!!」



パトカーの中に映るその男はカメラを向き まるで画面越しに俺を嘲笑うのように薄気味悪く笑っていた

「俺の勝ちだ」と言わんばかりに



end

ビップラから来ました

続くの?

終わり

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