農家「魔王とかフザけんな」 続(327)

農家「魔王とかフザけんな」
農家「魔王とかフザけんな」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1334280240/)

の続きになります



  ~南洋王国王都出発後 街道 夜~


女勇者「へ? おじさん、お兄ちゃんのこと知ってるの?」

農家「まあな。終戦の後のごたごた中によく面倒見させられてそのまま、っつーのが実際の所だがよ」

女勇者「へー……」

農家「タコ助譲りの剣術と魔法センスに、母親譲りの怪力と脳みそを併せ持ったトンデモ野郎だったな、ありゃ」

女勇者「うへへ、まあね! ボクのお兄ちゃんだもん!」にへー

女勇者「……ん? あれ、ママのことも知ってるの?」

農家「何にも話してねえのかあのタコ……まあ一応な」

女勇者「っていうか怪力って……」

農家「素の腕力だったらタコ助より上だぞ。生まれつきなんだとさ」

女勇者「マジですかぃ……」


農家「それよりテメエの兄貴の話な。要するにテメエの前の勇者なわけだが」

女勇者「うん」

農家「アイツはやべえぞ。見習うようなもんじゃねえ」

女勇者「? どういうこと?」

農家「言ったろ、母親譲りの脳みそだってよ」

女勇者「…………? うん……」

農家「その母親の二つ名、聞いたことあるか?」

女勇者「え、二つ名なんかあるんだ。何なに?」

農家「『人界の魔王』」

女勇者「なにそれこわい」

農家「そんでその母親そっくりの性格してんだよ、アイツ……」

女勇者「そ、そうなの……? 確かにこう、やんちゃっていうか結構アレだけども」

農家「一般的な認識からするとの話なんだが……要するに、アイツの性格はだな」






農家「ハッキリ言って、勇者より魔王寄りなんだよ」



.




鬼神(星六鍵、星六鍵……ああ、確か教会で保管してた対人宝具だったか)

枢機卿「オイゴルァ! 聞いてんのか鬼神!!」

鬼神(大昔の暴走起こした勇者をとっ捕まえるのに使ったっきり宝物庫の奥で埃被ったままになってたって話だが、よくもまあそんな骨董品引っ張り出してきたもんだなあ)

枢機卿「鬼神コラおい! 無視してんじゃねえよオイ! 俺一人馬鹿みてーだろが!!」

鬼神「いや、馬鹿だろ?」

枢機卿「そこだけ聞いてんじゃねえよ!! くそっ、もういい! 全部隊、前進! 鬼神を取り囲め!!」


  ザッザッザッザッザッザッ
  ザッザッザッザッザッザッ
  ザッザッザッザッザッザッ


連合兵「「「…………」」」


  ザッザッザッザッザッザッ
  ザッザッザッザッザッザッ
  ザッザッザッザッザッザッ


鬼神「…………」


枢機卿「はっはっは! どぉーだあ!? この日のために集めた三千人の精兵どもだ! これだけの数を前にビビって声も出んか!!」

鬼神「……三千人、ねえ」きょろきょろ

鬼神「お」

聖騎士長「……」

鬼神「……」よっ

聖騎士長「……」ペコリ

枢機卿「それだけではないぞ! 出でよ、我が忠実なる親衛隊!!」

「「「はっ!」」」


  ヒュン ヒュン ヒュン
  ──シュタッ シュタッ シュタッ


「槍の唸りが世界を貫く! “親衛槍士”!!」バンッ

「絶対防御は此処に在り! “親衛楯士”!!」バンッ

「魔術の光が幼女を護る! “親衛術士”!!」バンッ

親衛隊「「「我ら、枢機卿親衛隊!!」」」ズバァーン!


鬼神「…………」

聖騎士長「…………」はぁ…

鬼神(……笑わそうとしてんのか、こいつら)

聖従騎士「……聖騎士長」

聖騎士長「何も言うな。泣けてくるから……」

枢機卿「ふははははは!! 抵抗は無駄だぞ! 大人しく連行されるがいい!!」

枢機卿「尤も、したくともできんだろうがなあ! はぁーっはっはっはっは!!」

鬼神「…………」

鬼神「で?」

枢機卿「……は?」

鬼神「話はそれだけか?」

枢機卿「え、あ……うん」

鬼神「そんじゃあ……」す…

聖騎士長「ん。全体、三歩後退」

聖従騎士「了解。全体、三歩後ろへ」


枢機卿「……なんだ、足なんぞ上げて」

鬼神「あのな、俺は農家だぞ?」

枢機卿「それくらいは知ってるが」

鬼神「つまりだな……」


鬼神「 ふ ぬ あ っ ! ! 」


  ズ  ン  !  !


枢機卿「ぬわっ!? な、なんだ!?」


  ── ビシッ ビキビキビキ……


親衛槍士「地面に亀裂が……ってうおわっ!?」


  ボゴッ ボゴンッ!!


枢機卿「なあああああああああ!!?」どひゅーん
親衛隊「「「どぅえええええええ!!?」」」どひゅーん



 *岩盤が跳ね上がった!
 *枢機卿は空高く跳ね上げられた!
 *親衛槍士は空高く跳ね上げられた!
 *親衛楯士は空高く跳ね上げられた!
 *親衛術士は空高く跳ね上げられた!


鬼神「“空業・地返し”……俺の間合いで悠長に地面に立ってんじゃねえよ、ド三流」

枢機卿「ちょおおおおおおおおおお!! 誰か受け止めろおおおおおおおおお!!?」ひゅーん…

親衛楯士「空中じゃ無理ですううううううううううう!!」ひゅーん…

親衛槍士「術士なんとかしろおおおおおおおお!!」ひゅーん…

親衛術士「いや俺気取られずに幼女のスカートめくれる程度しか風魔法使えないんで、めんご」ひゅーん…

枢槍楯「「「この役立たず!!」」」

親衛術師「俺は幼女のためにしか働かん!」きりっ


  ── めごっ!!


四人「「「「」」」」ちーん

聖従騎士「うっわ……見事に脳天から……」


聖従騎士「せめて受け身取るとかすればいいのに……」

聖騎士長「まあ、鬼神殿の技で地面が軟らかくなっているはずだから、死にはすまい」

聖従騎士「間近で見るのは初めてなんですが、どういう技なんですか?」

聖騎士長「……素手で農地を開拓しているうちに身に付いた技、だそうだ」

聖従騎士「……素手でっすか」

聖騎士長「古い武術の技にある“震脚”の応用で、強力な振動波を地面に打ち込むことで岩盤などを粉砕する振動系の体術なんだが、範囲と威力の調整であの通りだ」

聖従騎士「聖六鍵も役に立ちませんねぇ……」

聖騎士長「いや……」


鬼神「……流石にただ地面に刺さってるだけ、ってわけでもねえか」


聖従騎士「浮いてる……?」

聖騎士長「星六鍵は発動後、物理的な影響を一切受けなくなり、展開された結界内部では魔力の運用そのものが制限される」

聖騎士長「そして内部からの脱出は不可能。つまりは単純な『閉じ込めるための結界』というわけだ。そうそう簡単に破れはしない」

聖従騎士「思ったよりデタラメな宝具なんですね、あれ……見た目は大きすぎて鍵ってよりハルバートみたいですけど」


枢機卿「その通り!!」ガバッ!

聖従騎士「うわっ、生きてた!」
.
枢機卿「ふはははは! いくら鬼神といえども星六鍵の破壊はできまい! そして俺は知っているぞ、貴様の秘密をな!!」

鬼神「…………」

聖従騎士(秘密……?)

枢機卿「貴様は人間を殺すことが出来ない! 故に我々に抵抗することもできない! そうだろう!!」

鬼神「……また極端な結論出しやがる」

枢機卿「一度捕らえた以上、後は檻を狭めて貴様を封じ込めるだけだ! やれ! 我が兵よ!」

聖騎士長(──やれやれ、枢機卿の私兵になった覚えはないのだがな……)ふぅ…

聖騎士長「魔術師隊、作戦開始!」

魔術師隊「「「はっ!」」」


 号令に従い、無数の魔方陣が展開される。

 その直後、星六鍵の構築する結界周囲に円筒形の物理防御結界が発生した。
.


鬼神(……なるほどな、地返しの弱点を突いてきたか)


 地返しは、踏み付けた地面から同心円状に衝撃波が拡散する。

 そのため、地面に衝撃波を阻害する結界を張ってしまえば、無効化されるのだ。

 そして──、


鬼神「ならこいつはどうだ。“空業──”」

親衛楯士「俺の出番か!」ばっ

鬼神「“──山穿ち”!」

親衛楯士「『防御超過魔法』!!」


 *親衛楯士の盾の防御力が限界を超えた!!


鬼神「!」

親衛楯士「 ど っ せ い ! ! 」
.



 ──放たれた衝撃波が結界を突き破り、斜めに構えられた巨大な盾に衝突した。

 その結果、衝撃波の軌道が変わり、上空へと流される。


鬼神(こいつ……)

親衛楯士「この程度の威力ならば恐るるに足らんわ!」どやぁ!

聖騎士長「よし。星六鍵を押し込め! 魔術師隊は引き続き防御結界の維持だ!」

聖騎士長「後の者は周囲を警戒しろ! 鬼神の仲間が妨害してくる可能性がある!」


 宙に浮いた星六鍵が、じりじりと鬼神に接近していく。それに伴い、展開された球形結界の大きさも小さくなっていく。


鬼神「……」

枢機卿「ふははははは! いいぞいいぞぉ! そのまま押さえつけてしまえ!!」



女勇者「ちょっ! あれマズいんじゃないの!?」

魔女「ああもう言わんこっちゃない! いちいち『自縛封印』なんか仕込むから!」



 事態を認識した女勇者達に動揺が走る。

 ……しかし、その中で一人、女魔法使いは空を見上げていた。


女魔法使い「……大丈夫……かも……?」

女勇者「はぇ?」

女魔法使い「…………何か、来る」



枢機卿「はぁーっはっはっはぁ! どうした! もう抵抗すらせんのかぁあ!!」

鬼神「…………」

枢機卿「貴様の命運もこれまでだなあ鬼神! さあ! 神の裁きを受け入れるがいい!!」

.






「そうは問屋が卸しませんなあ!!」


 空の上から、声が降る。



.

中断

やっぱり農家って凄い
私はそう思いました

イエスか農家で答えろってこの人のために存在してるよね

続編キタ―――――――――――

追いついた…くそっ俺の半日が消し飛んだぜ…

保守

相変わらず中断長すぎんよ

はよ

追いついた すばらしい
私待つわ いつまでも待つわ
自分のペースでね

すまん、ちまちま進めてはいるんだがとにかく時間が取れなくてな……
気付けば盆だよ かと思えば私用が溜まっているという罠
調子良ければ日曜日にはなんとか

&保守あげ

うむ

すまんもう一週間待って 間違ってメモ帳消した状態で上書きした……

どんまい


 <`ーィ            しばらくお待ちください
 (  _>ー─ー-、
  )ノ      Ooヽ

   \        |
   //`ーn__,ヘノ'
  〈/  //    ヽ\

    〈/      \>彡

間に合ってねぇし!!
すまん、あと3日以内になんとかする!!

間に合ってねぇし!!
すまん、あと3日以内になんとかする!!

うむ

無理して欲しいけど無理スンナよ!




魔女「制限(リミッター)?」

農家「おう。なんかねーかと思ってよ」ごそごそ

魔女「そんなのどうするのよ」

農家「んー、なんっつーか……ここの所混戦になりやすいだろ? 段々加減が難しくなってきててよ」

錬金術師「うっかりすると友軍を巻き込みそうになるらしくてね。このままでは危険だろう?」ぱらぱら…

魔女「それでわざわざ大書館までねぇ……」

農家「つか魔女が居るなら早え、なんか知ってるのでいいのねーか?」

魔女「生憎だけど、人間の力を制限するような魔法っていったらほとんど完全に無力化するようなものしかないわよ」

錬金術師「へえ、意外だな。もっと融通が利くものかと思っていたけれど」

魔女「弱体化させるならいっそ無力化したほうが早いもの。対魔物用の魔法なら有用かもしれないけれど、対人魔法は用途が限られるし」

農家「いや別に弱くなりたいわけじゃねえんだが」

錬金術師「というか、純粋に弱体化してしまったらこちらの戦力が大幅に落ちるだけで意味がないね」

魔女「要するに、味方にだけ攻撃が通じないようにしたいってことよね?」

農家「そういうこった。マーキングみてえなのでもありゃいいんだがなあ……」


錬金術師「やはり直接攻撃でそれは難しいということかな。うーん……」

魔女「いっそ勇者にでも創らせる?」

農家「あの不器用極めましたみてーなアホにか? また変なモン創るのがオチだぞ」

錬金術師「彼は開発は苦手だし、無理があると思うよ?」

農家「あれほど能力と才能が噛み合ってねえのも珍しいよな」

錬金術師「僕に魔術に関する素養が僅かでもあれば開発を請け負うこともできたんだが、残念なことにそれは無理だし」

農家「せめて基本になりそうな術式でも見つかりゃあ自力で仕上げられるんだがなあ……」

魔女「……思ったより面倒臭そうね」

農家「つっても元々隠れてたモンが目に見えてきたってだけだがな」

錬金術師「うん、皆なんだかんだで避けるからね」

魔女「……いやまああんたらが人外なのはいいとして」

魔女「要するに有効範囲内に人間がいる状況下での威力制限を設けたいってことよね?」

農家「大体そんな感じだ」

魔女「いっそ感知魔法常駐させて味方の位置把握しとくのは?」

農家「んー……案としてはアリだな。ただ市街戦とかになると不味い」


錬金術師「確かに、一般人が多いからね」

農家「一応似たようなことなら魔法使わなくても気配探りゃあ出来るんだが、疲れるんだよなあ、あれ」

魔女「いやどんだけよアンタ」

錬金術師「ふむ……なあ魔女。魔導学的観点から見た際に、人間と魔物・魔族との差異は明確に定義出来ているのかい?」

魔女「対人魔法か対モンスター魔法かで分類できるくらいの差はあるわね」

魔女「……あ、なるほど。そこから感知魔法と連動させていけば、大雑把に人かモンスターかの二分化程度はいける、か」

錬金術師「これでまずは発動条件を設定できそうかな」

農家「そうなると後はどうやってどの程度威力を抑えるかだな」

錬金術師「仮に死なない程度、と言っても死にかけの老人と働き盛りの成人では天と地だからね。これに関しては解析魔法が必須になりそうだ」

農家「そこまでやると術式の大きさがネックだな……自動処理が必要な以上は収集解析した情報を一時記憶する領域も確保せにゃならんし……」

錬金術師「多少邪魔になるのは許容して魔導器具に術式を転写するべきじゃないかい?」

農家「破損した時が怖えな。その辺りはエルフかドワーフ連中に相談してみるか」

魔女「……あんたら抑え込むの前提で考えてるけどさ」

農家「あん?」

魔女「もし急に人間を倒さなきゃなんない状況になったらどうするわけ? そうじゃなくても逆賊討伐とかもあったでしょ、今までに」


農家「あー……」

錬金術師「そういえば考えていなかったね。いや盲点だった」

農家「装備化するにしても戦闘中にポロっといっちまったら無意味だからな。ある程度複雑な条件を抜けねえと外れねえようにでもするか」

錬金術師「さしずめ魔力錠という具合かな?」

農家「いきなり造語で言われても、いや俺はわかるが他のやつに通じねえぞ」

錬金術師「つまり開錠条件として魔力を魔導器に」

農家「改めて説明せんでいい」

錬金術師「けれど、あまり複雑化すると咄嗟の開錠が難しくはないかい?」

農家「そのくれえはまあ、なんとかなるだろ。制限状態でも相手を吹っ飛ばせる程度に調整して……」

錬金術師「というかここまで話を進めておいてなんだけど、肝心の制限魔法そのものはどうしよう?」

農家「っとと、そうだった。とりあえずここまでの案は整理して置いといて、もっぺん魔導書漁るか」

錬金術師「そうだね。……それにしても改めて見ても、凄まじい蔵書量だねぇ」

農家「魔女よお、なんかどっかありそうな場所だけでも心当たりねえか?」

魔女「……いやさ、あんたらがそれでいいなら別にいいんだけどさ…………」

錬金術師「うん?」


農家「なんだよ」

魔女「…………まあいいわ、私も手伝うわよ。どうせ術式の調整とかでも手伝うことになるんでしょうし」

農家「おう、悪いな」

錬金術師「あ、ところでこの制限魔法の名前を思い付いたんだけど」

魔女「なんで真っ先にそこよ……」

錬金術師「『自縛封印』とかどうだろう」

農家「……なんか爆発しそうだな」

魔女「いやそのジバクじゃないでしょ……」

農家「というかなんで封印だよ」

錬金術師「だって君の場合、力のほとんどを制限しないと手加減にならないじゃないか。ほぼ封印と言っても間違いではないんじゃないかい?」

農家「そりゃまあそうだが」

魔女(規模がおかしいっていうツッコミはナンセンスかしらこれ……)


 ───
 ──
 ─
.




見張りA「なあ、こっちほんとに大丈夫なんかな……?」びくびく

見張りB「聖騎士長が問題ないっつったんだから信じるしかねえだろ……」びくびく

海嘯王『………………』

見張りA「見てる見てる超見てるってしかもでけーし! 倒れ込まれただけで全滅するよなこれ!?」

見張りB「大丈夫だろ……人間に攻撃できないって制約がかかってるらしいし…………今も有効かはわかんねーけど」ボソッ

見張りA「不安になること言うなよぉお! チビりそうなの我慢してんだぞ俺ぇっ!」

見張りB「あめーよ、俺なんかもう既に盛大に漏らしてるっつーの」

見張りA「真顔で!?」

見張りB「正直めっちゃ帰りたい」

見張りA「俺より駄目じゃん!? おおい頼むよしっかりしろよ! 俺転移魔法使えないから逃げる時お前だけが頼りなんだぞ!?」

見張りB「大丈夫だ、問題ない」

見張りA「ホントか!?」

見張りB「さっきから怖すぎてまともに魔法が組めん」ドヤッ

見張りA「」



<なおさら駄目じゃねえかあああああああ!!!!

<あっはっはっはっはっはっ!! いやもうホント笑うしかねーやなっつー話でねこれ、なぁ?

<笑えるかあああああああっ!!!!

連合兵達(((見張りABコンビうるせえ……)))





 ──武教の地、上空。

 雲よりさらに高い位置から、さながら隕石の如く落下する“人影”があった。


「うーんやっぱり自由落下は楽でいいなぁ」

『ちょっ、また空の上に跳んだんですか!? もうちょっと状況を考えて──!』

「あーだいじょぶだいじょぶ。着地は慣れてるし、それにこっちのほうがあれだしね」

『……一応訊きますけど、あれってなんですか』

「かっこいいじゃん?」どやっ

『バカですか貴方は!!』


「そう褒めないでくれよははははは。さて、下の音声転送よろしく」

『褒めてませんよ! 全く……音声を繋ぎます。くれぐれもそれ以上無茶はしないで下さいよ?』

「愛しい人のお願いとあっては聞かないわけにはいかないねー」

『……二度とその口開けないようにしてあげましょうか?』

「塞ぐなら君の唇でお願いしたいね」

『ばか!!』ぶつんっ

「おっふ」きー───ん…

『……ザ……けい……ザザ……』

「うーん、押しすぎたかな。本音なんだけど」

「さてと……そろそろ地上が見えてくるはずだけど、どんな具合かなー?」

『……いぞ……!…………そのまま……』

「お、見えた見えた」



枢機卿「ふははははは! いいぞいいぞぉ! そのまま押さえつけてしまえ!!」

聖騎士長(──おかしい)



 一見為す術もなく捕らわれようとする鬼神の姿に、聖騎士長は違和感を覚えた。

 鬼神の技は数こそ少ないが多様だ。それなのに、ここまでで用いた技は『地返し』と『山穿ち』の二つのみ。

 あるいは手の打ちようがないのかとも思えるが、しかし鬼神の表情には、一切の焦りも動揺も見られない。

 何か策があるのか、それとも──。


聖騎士長(何かを待っている、のか……?)



枢機卿「貴様の命運もこれまでだなあ鬼神! さあ! 神の裁きを受け入れるがいい!!」

「──そうは問屋が卸しませんなあ!!」


 突然に響き渡る声。

 それに気付いた多くの兵達が視線を彷徨わせ、やがて空を見上げた。


枢機卿「…………なんだ?」

鬼神「おい枢機卿」

枢機卿「ん?」


鬼神「伏せた方がいいぞ」

枢機卿「へ?」



「マル秘奥義! 雷装カミカゼ流星アタァアー─────ック!!!!」


  ずどおおおおおおおおおおおおおおおん!!!! 


枢機卿「のおおおおおおおおおお!!?」ばひゅーん…

聖従騎士「枢機卿がまたも飛んでった!?」

聖騎士長「くっ、これは……!!」


 朦々と土煙が舞い上がり、視界を塞ぐ。

 その奥で、硬質の何かが転がり落ちたような、カランカランという音が響いた。


聖騎士長(今の声、今の技……まさか……!?)

聖騎士長「魔術師隊! 煙を払え!」

連合魔術師「りょ、了解!」



 号令に従い放たれた風魔法が、一帯に立ち込めた土煙を一掃する。

 そこに現れたのは……。


総司令「あ、聖騎士長さんお久しぶりです」どもども

鬼神「お前相変わらず緊張感の欠片もねえな」


 まるで道端で知人に出会ったかのような振る舞いを見せる青年と、

 聖六鍵の結界から解放された鬼神の姿だった。



キングレオ「なんだあの男は……空から降ってきたぞ」

女勇者「」

魔女「」

女魔法使い「……おー……」

暴れ猿「しかもどうやら無傷のようですね……何者でしょうか」

暴れ猿「……ん? おいお前達、間抜け面を晒してどうした?」


女勇者「……お」

暴れ猿「お?」



女勇者「……………………お兄ちゃん、だ……」ぽかーん…



暴れ猿「………………………………は?」




.

とりあえず書けた分だけ……

乙乙待ってた
次も待ってる

あ、誤字があった
×聖六鍵 ○星六鍵

保守

待ってるよ

追いついた…だと…

追いついた…だと…

ちょっくら保守
いいかげん加速したい

>>55

楽しみに待ってるよ

いつもの保守

保守保守

消えたのかしらん?

いや生きてるけどすまんちょっと休みが取れなかっただけだ
多分今週末迄には行ける

ksk

おお!
週末が楽しみだ。

もう日曜やで…orz

多分だからどうだろうな?
楽しみに待とうや

月曜の朝か… 本気で申し訳ない、今晩投下すると思う

投下してねえし…

まだ夜は始まったとこだし


側近「状況は?」

魔族兵「はっ。司令部は壊滅、ゲート周辺に待機していた兵力の三割がロスト、五割が行動不能。また、ゲートが破壊され、あちらとの接続が断たれました」

側近「またも魔界に閉じ込められたということか……残存兵力は?」

魔族兵「我が軍全体の凡そ六割程度かと」

側近「削られたな……あちらとの通信はどうだ」

魔族通信兵「現在ラインの確立を急いでますが、次元断層のせいで向こうの座標が特定できません。あちら側からもアクセスがあれば、あるいは」

側近「繋がるまで試せ。くそっ、今が大魔王陛下復活の好機だというのに……!」

魔族兵「奴らの目的は、我々をこちらに留めること、でしょうか?」

魔族通信兵「どうかな。それにしちゃ違和感がある」

魔族兵「? どういうことだ?」

魔族通信兵「そもそも、今ゲートを壊せたってことは、本当ならいつでも出来たってことかもしれないだろ。仮に俺らを閉じ込めるのが目的だったとしたら、今の今までやらなかった理由がない」

魔族兵「だが、あちらでは武教の地への魔力集束に際して龍穴からも魔力が引き寄せられていたはずだろう? ゲートも例外じゃない。破壊された時の魔力の状態はどうなってたんだ?」

魔族通信兵「それが妙なことに濃度総量ともに変化なし。ゲートを破壊できた理由も、俺には見当がつかんね」

側近「……変化なし? それは本当か?」


魔族通信兵「ええ。モニターしていたので間違いありません。ただ、少し気になることが……」

側近「何?」

魔族通信兵「正確な観測はできなかったものの、武教の地からの影響は少なからずあったようで、魔力の流出自体は確認できたんです。けれどそれと釣り合う形で魔力の流入があったというか、湧き出てきたというか……」

魔族兵「いまいち煮え切らないな、なんなんだ?」

魔族通信兵「いや、なんだったか……確か似たようなことを人間の魔術師が使うのを見たことがあったはずなんだが……」

魔族通信兵「なんて言ったかな……たしか…………そう……」


魔族通信兵「──“純化”、だったか」


側近「────っ」


側近「しまった、そういうことか!!」


魔族兵「側近殿? 何が」

側近「速やかに残存兵力を砦に集結させよ! 動けない者も非戦闘員も全てだ!」

魔族兵「え、あ、りょ、了解!」

側近「通信兵、生きている全通信回線に接続。砦から遠い者達は直近の軍部施設に集結するよう伝えろ! すぐにだ!」

魔族通信兵「あ、はい。了解しました」

側近「私は陛下の元へ戻る! ここは任せたぞ!」

側近(クソッ、なんたる失態だ……少し考えれば気付けたものを……!!)


側近(奴らは大魔王陛下復活を邪魔する気なんてない……)

側近(復活させ、その上で──)




 ──風が吹く。

 静まり返った荒野の真っ只中で、三千の軍勢を前にして、たった二人の男達が臆することなく立っていた。


総司令「♪」へらへら

鬼神「…………」

聖騎士長「…………」

聖従騎士「うわ……えっと……」

聖騎士長「……、全員、武器を下ろせ。作戦中止」

聖従騎士「えっ、ちょっ、聖騎士長!? そんな勝手に……」

聖騎士長「勝手ではない。彼は、我々が剣を向けてはならない相手だ」

総司令「へー……思ったより冷静ですね、聖騎士長さん。俺は死んだことになってたはずなんですけどね」

聖騎士長「亡骸も遺品もなしに断定できるものではない。それに、君がそう簡単に死ぬとは思えなかった」

総司令「そう言われると悪い気はしないですねー。こっちとしてはクソ喰らえって感じですけど」

聖騎士長「……」ぐっ…


鬼神「止せよ、野郎には罪も責任もねえんだ。それに手伝ってもらわにゃならねえこともある」

総司令「はいはいわかってますよししょー。俺としてはあんまり乗り気じゃないですが、そうも言ってられないですし」

聖従騎士「? 一体何の話を?」

鬼神「これから話す。なるべく手短に済ませたいんだが──」


 その時、二人の上空に影が落ちた。


総司令「──どうやらそうもいかないようで」


  ──ガギィン!!


 金属の衝突による高音が響き、否応なしに数多の視線を引き寄せる。


聖騎士長「親衛槍士!?」

親衛槍士「こんのやろぉがぁあぁ~……っ!」


 彼は空中で静止していた。

 否、直上より槍を構えて奇襲をかけた彼は、その刃を“見えない何か”に遮られていた。


総司令「器用にバランスとりますねぇ。あホイッっと」

親衛槍士「っと、お!」


 くいっ、と総司令が手を仰ぐ。その動きに合わせ、“見えない何か”が親衛槍士を振り払う。

 しかしその動きに合わせて跳躍し、距離を取って着地。槍を構え直し、両者が正対した。


親衛槍士「盾、じゃないな。手応えからして馬鹿でかい剣か斧、か?」

総司令「おおー、こりゃ驚いた。槍を打ち込んだだけでそこまで推測できるなんて」

親衛槍士「伊達に歳食ってねーっつー……の!」ダンッ!


 地を蹴り、滑り込むようにして瞬時に間合いを詰める。

 しかしそれを遮るように、


総司令「そんじゃ、折角だからお披露目しますか」


 空中で“何か”を握り締める。

 その瞬間、それまで見えなかったそれが、姿を露わにした。


 それは剣だった。

 けれど、剣と呼ぶにはあまりに分厚く、巨大であった。

 大剣……いや、巨剣とでも呼ぶべきか。

 それを浮かべていた魔力を断つと、そのあまりの重みに総司令の足元に深い亀裂が走った。

 しかし、彼はそれを腕一本で支え切る。

 それどころか、


総司令「 そ お い ! ! 」

親衛槍士「なっ!?」


 ……まるで小枝でも振るかのように、親衛槍士の槍が届くより遥かに速く、それを振るった。


総司令(へぇ……避けるのか)ニヤッ

親衛槍士(このヤロウ……! だが、間合いに入った!)


 だが、横薙ぎに振るわれた一撃に対し寸前で身を沈めて躱し、親衛槍士はさらに距離を詰めていた。

 槍を構え、狙うは心臓ただ一点。


親衛槍士(殺った!!)


 地面スレスレの超低空から、前進のバネを用いての打ち上げるような一閃が、正確無比に総司令の心臓へ向けられる。

 その速度はもはや音よりも速く、防御も回避も間に合わない。

 ……かに見えた。


総司令「よっ」ぐるんっ

親衛槍士「い!?」


 振り抜いた巨剣の勢いを敢えて加速させ、回転することで親衛槍士の攻撃より一手速く大剣を振り上げた。

 構えすらない、ただ振り回すだけの動きで、それは必殺の一撃となる。


 唸りを上げて打ち下ろされる剣撃が、ひどくゆっくりに目に映る……。


親衛槍士(やべ……死──)


.




親衛楯士「ふんがっ!!」


  ガギ ズゥンッ!!


 直前、側面から体ごとぶつかるようにして、親衛楯士が巨剣を僅かに逸らした。

 盾に弾かれた巨剣が、大地に深々と突き刺さる。


親衛槍士「楯士!?」

親衛楯士「何やってんだ馬鹿! こいつに一人で勝てるわけ……」

総司令「喋る暇とかあんの?」

親衛楯士「チッ……!」

親衛術師「無いモンは作るモンじゃね?」


 突然、小さな光球が両者の間に出現した。

.



親衛術師「『閃光』!」




    カッ!!




 辺りを白い光が包み込んだ……。
















.




総司令「…………うーん、三人居ると流石にすごいなぁ」

鬼神「しみじみ言ってんじゃねえこのスカタン」スパーン!

総司令「あ痛っ!? 何するんですか先生、これ以上馬鹿になったらどうするんですか!?」

鬼神「馬鹿の自覚あんのかお前」

総司令「愚問ですね」キリッ

鬼神「拳で行っていいか?」

総司令「俺死にますよ?」


親衛槍士「うおおおおお、離せえええええええ!!!!」じたばたじたばた

親衛楯士「だーっもう落ち着けアホ! やめろっつーの!」

親衛術師「元でも勇者に手ぇ出したらあかんやろー」


聖従騎士「な、なんすか、今の……ほんの数秒で無茶苦茶な攻防してたように見えたんですけど」

聖騎士長「親衛槍士! 止せ! 戦う相手を間違えるな!!」

親衛槍士「うるっせぇえ!! そいつは一発ぶっ飛ばさにゃ気が済まんのじゃあああ!!」


総司令「えー? 俺恨まれるようなことはしてないはずなんだけど」

親衛槍士「鬼神さんを先生とか呼んでるのがズリぃってんだよこの野郎! 俺らも弟子入りしたかったのに畜生ォ!!」

親衛楯士「は!? 何お前そんなことでキレてんの!?」

親衛術師「なんかウケるわ」

親衛槍士「ウケんな!」

総司令「」えー…

総司令「ちょいと師父、あんなこと言ってますぜ?」

鬼神「お前呼び方統一しろよ……」

総司令「じゃあ先匠父」

鬼神「混ぜんな阿呆」

聖騎士長「…………」

聖騎士長(急激に馬鹿馬鹿しくなってきた……)

聖従騎士「あれ、そういえば枢機卿は」

親衛術師「あっちあっち」ちょいちょい

聖従騎士「?」くるっ



枢機卿「」ちーん


聖従騎士「また頭から刺さってる!?」

鬼神「おーい、話進めてもいいかー?」

聖騎士長「あ、はい。どうぞ」



キングレオ「ほう、あのような巨大な剣を軽々と扱うとは、只者ではないようだな」

暴れ猿「しかし、あれを逸らした盾使いも見事ですよ。受け止めていたら間違いなく両断されていたでしょう」

魔女「」

女魔法使い「……? ……おかーさーん…………おーい……」ふりふり

魔女「…………な」

キングレオ「?」

魔女「……なんで生きとんのじゃあいつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!?!?」ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?

暴れ猿「」キー……ン

キングレオ「なんだ、面識があるのか貴様」


魔女「いや面識っつーかあいつアレよ!? 国王もとい勇者の息子で要するに女集者の兄貴で前の勇者で世界巡る途中で死んだって話でさあ!!」

キングレオ「さあ、と言われても困るのだが……」

暴れ猿「…………おい、魔女……耳を塞げない俺のことも考えてくれ……」くわんくわん…

魔女「てかもうまあ百歩譲って生きてるのは良いとしてなんで来んのあいつが!? 何!? 何なの!? 何する気なのあいつら!? マジで超嫌な予感しかしないんですけどぉお!!?」

暴れ猿(聞こえてないなこれは……)

キングレオ「…………。む? おい、あの娘はどうした?」

女魔法使い「……あっち」

キングレオ「向こうか? ……ぬ、あれか。あの娘、いつの間にあんな所に」




女勇者「はぁ……はぁ……っ!」たったったっ…

女勇者(お兄ちゃん……生きてたんだ……!)


 『世界をひと回りしたら、すぐ戻ってくるからな』


女勇者「っ、はぁ……はぁ……っ!!」たったったっ…


 ──感情が溢れてくる。

 もう会えないと思ってた。

 死んじゃったんだと思ってた。

 でも、生きてた。

 生きて、この世界のどこかに居た。

 それで、今、すぐそこに居る。

 お姫様もこんな気持ちだったのかな?


 ううん、多分違う。

 だって、こんなに、

 こんなに……こんなに……!



女勇者「──あんの馬鹿兄ぃいいいいいいいいいい!!!!」



 こんなに殴りたいと思ったの、初めてだし!!!!
.

進んでないけど本日ここまで
年内に終わるか……?

二ヶ月ぶり乙
身体に気をつけて、可能な限り書いてくれ

年内に終わらない
終わらせない

1から追っ掛けてる者としては完結することを切に願うわ。
とりあえず保守

生まれてはじめて書き込み…凄く大好きなSSです世界観深くて引き込まれます…!
無理はなさらずゆっくりでいいので頑張って下さい!
保守

定期保守

保守!

もう1ヶ月以上すぎてるとか冗談だろ……
生存報告兼自己保守 休みがないよ休みが

まとまったお金が欲しい人はこちらへ

http://www.fc-business.net/qgesw/

保守

保守age

メリークリスマス♪

あけましておめでとうございます。
今年も楽しみにしています。

保守

保守あげ

じこほしゅ
すすまねええええええええええ!!!!

はよう

生きてるようでなにより保守

ほす

生きてる?

生きてはいる
ただひたすらに時間がない

保守


 理由そのものは至極単純なことで、

 後にして思えば、それは自分が世界を知らなすぎたからこそ起きた事柄だとわかる。

 それでも自分にとってはけして納得できるようなものではなく、

 ああ、自分はこの世界にとって、

 多くの人間にとって、異端、異質、あるいは、敵、なのだなと、

 自分にとって、世界に生きる多くの人間は、けして相容れることのないものなのだなと、

 失望、あるいは絶望したわけじゃない。諦観したわけでもない、とは思う。

 ただ、理解した。

 こいつらは、俺とは違う生き物なんだと。

 その時、ひどく気持ち悪く感じたということだけを、今でも強く、覚えている。


.




「──くそっ、追撃を中止させろ! とても止められん……!」

「し、しかし!」

「ここで悪戯に犠牲を出したところで意味はない。魔界の本隊に増援を要請せねば……」

「増援、って言ったって……あんな巨大なもの、どうやって対抗するんです?」

「それは………………わからん!!」

「」ズコーッ!

「わからんのだからまずは本隊と連絡を取る! 万一アレが『聖骸』を持っていたとしても、現状奪取する手段がないからな!」

「うっわぁ……ひっでぇ開き直り……」

「うるさい、黙れ」

「ウス」

「……あれ? 司令部、応答願います。……? 司令部、こちら聖骸回収部隊。応答願います」

「? どうした、問題か?」

「それが、通信が完全に途切れて……」

「何?」


「隊長、こっちに来て下さい! 聖樹の残骸の下から妙なものが!」

「妙なもの……?」

「はい。恐らく、地下への入り口のようなものだと思われますが」

「隊長。追撃に向かった部隊が帰還を開始、五分ほどで全員到着すると思われます。医療班は……」

「隊長ぉー!! 地上部隊の一部が飯はまだかって座り込んでまぁす!!」

「でぇええい!! ちょっと待て俺一人でそんないっぺんに指揮できるかボケぇえ!!」

「この指揮系統問題ありまくりじゃねえ?」

「えーと……ノーコメントで。とりあえず、こっちはもうしばらく通信を試みてみます」

「んじゃオレぁメシの足しに軽く狩りでもしてくらぁ。ここらへん大型の魔物多いし、食えるやつもいんだろ。何人か適当に連れてくぞ。ついでに医療班に話つけてくる」

「了解です」

「ってあれぇ!? 指揮する前に話がまとまってる!?」

「いやだってオメーおせぇんだもんよ。いーからそっち行ってこい。なんかあったらそこのお前、適当に連絡しろな」

「え、俺ですか!?」

「指揮取れってんじゃねんだから大丈夫だろ。ほれ行動行動」


「指揮官俺なんだけど……」

「はよ行け言うに」

「俺、指揮官なんだけどなぁ…………」とぼとぼ…

「背中から哀愁が漂ってますね……」

「あいつ頭はいいけど目的が曖昧になると弱ぇタイプだからなぁ」


.






農家「つまりだな、二毛作も一年目ならまだいい。二年目でもそう悪くはならねえが、それ以上続けようとするとどんどん土地が弱っていくわけだ」

聖騎士長「は、はぁ……」

農家「だから同じ土地に腰据えて暮らしていくにゃあ、畑広げて収穫増やすか、土地が弱らないようにきちんと肥料をくれてやるかは最低限必要になるんだよ」

聖従騎士「は、はい……」

親衛槍士「なるほど、そんな理由が」めもめも

親衛楯士「お前……鬼神さんだったらなんでもいいんだな……」

親衛術師「なんで畑仕事の話になってるんですかねぇ」

総司令「だって先生だし」

親衛術師「未だかつてこれほど説得力のある「だってこの人だし」があっただろうか」


聖騎士長「あの……すみません、鬼神殿。そろそろ本題のほうをですね……」

親衛槍士「ダぁってろジジイ!! 鬼神さんの話に口を挟むんじゃねぇ!!」

聖騎士長「私はまだ三十代だ!!」

親衛術師「ちなみに俺らも三十代でーす」

総司令「あれ、二十代って俺だけ?」

聖従騎士「あ、自分も二十代です」

親衛楯士「お前ら話進める気あんのか!?」

農家「まあ構わねえけどな。正直説明するよりあいつらが着くの待ってたほうが楽だし」

親衛楯士「……いや、鬼神さんがまず率先して別の話してた気がしますけども」

親衛楯士「というか、あいつらって?」


  ──── ズ ズ ゥ ゥ ゥ ゥ ン … …

  グラグラグラグラ……!!


親衛槍士「っとあ!? な、なんだ、地震か!?」

農家「噂をすれば片方が来たな」


親衛楯士「噂をすれば……って…………!?」

聖騎士長「んなっ……!」

聖従騎士「──っ!!」ぱくぱく…

総司令「うわでっけぇー」

親衛槍士「な、な、な……」



  ── ズ ズ ゥ ゥ ゥ ゥ ン … …

   グラグラグラ……



親衛槍士「なんじゃありゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!?!?!」ァァァァァァ……!!


 武教の空に、絶叫が木霊した。


.




「──妙なものというのは、これか」

「はい。どう見ても扉なんですが……地面にある上に、外開きになっているようで」

「この大きさからして、中からも外からも開けるのには相当に骨が折れるな……何かを隠すため、いや、出さないようにするため、か……」

「あるいはここに『聖骸』が?」

「可能性はあるな。開けられるか?」

「いけると思います。ただ……」

「? 何か問題があるのか」

「実は、この周辺を調査したところ、封印の痕跡らしきものが見付かりまして」

「封印だと?」

「はい。それも、外からは開けられないように、そして中からは開けられるように、といった類と思しきものが、です」

「何……?」

(それは一体……)

「…………痕跡、と言ったな。封印はどちらかから破られたのか、それとも損傷して解けたのか、調べられるか?」


「やってみます」

「頼む。…………」

(──封じるためだというのなら、中から開けられるようにする意味はない)

(そんな奇妙な封印を仕掛けた理由は、何だ?)

(……わからない、これは、一体…………)





側近「どういうことだ!?」

「そ、その、ですから……陛下は既に再生の儀に取り掛かられておりまして……」

側近「馬鹿な、聖骸はまだ回収できていないのだぞ! そんなはずは……!」

『そう騒ぐな、側近』

側近「っ、陛下……」

『扉を開けよう。中に入れ』

側近「……はい」




「それで、何用だ?」

側近「陛下……再生の儀を取り止めになって下さい! これは罠です! 陛下を葬るための──」

「承知している」

側近「!?」

「だが、それがどうした。今更もう一度死んだところで、私には何も、どうだっていい」

側近「へい、か……?」

「ただ……創造の神を……姉さんを取り戻せるなら……」

側近「────」

側近(…………ああ、この人は……)

「そのためには、また数十年器を変えられなくなるとしても、今は今すぐに力が欲しい」

「無論、お前達にも協力してもらう。目的を果たすまでは、大魔王だろうと何だろうと、好きに呼べばいい」

側近(……この人は、何も、変わらない…………)




大魔王「人間共が奪った創造の神の力を全て奪い返し、私がもう一度、姉さんをこの世界に取り戻す」

大魔王「そのためになら、例え死のうとも、構うものか」

側近(千年前から……純粋なまま……歪んだまま……)

側近「……畏まりました、大魔王陛下」

側近(どうして、貴方は…………)




.






焔灼王『お、見えてきたね。巨岩王が』

錬金術師「まだ随分遠いのに見えるとは、凄まじく大きいねぇ」

焔灼王『昔より更に大きくなっているね。頂上は大気圏ギリギリなんじゃないかな』

参謀「前々から疑問だったんですけど、巨岩王ってどうやって周りを見てるんですかあれ」

精霊王『私達は生物より霊体に近い存在だ。世界を見ているのは肉体ではなく魂の眼だからな、頭部や眼球がないことなど大した問題ではない』

錬金術師「丸っきり霊体な君が言うと説得力が違うね」

精霊王『より正確に言えば、私と焔灼の王は“現象”を司る存在だ。故に、在るべき姿というものが定まってはいない』

精霊王『焔灼の王は自らそれを決めたようだが』

焔灼王『空を自由に飛び回るっていうのは太古からの人類の憧れの一つだからね。それを叶えるチャンスがあったんだ、掴まない手はないだろう?』

精霊王『……その前向きさが、私達には常に眩しい。だからこそ貴方が、私達の中心だった。……“彼女”と共に』

参謀「…………」

氷銀王「…………」


精霊王『だが、“彼”にはそうではなかった。そして、それ故に道を違えてしまった。だからこそ、正さねばならない』

焔灼王『そうだね……それこそ、本当なら私達の責任なんだけど』

参謀「心配いりませんよ。博士達がいなくなっても、まだこの世界には私達がいます。そして、人間達がいます」

錬金術師「まあね。あまり僕達を見くびらないでくれ。君達の助けがなくても、必ずなんとかやりとげてみせるさ」

焔灼王『…………救われるねぇ』

精霊王『ああ……救われる…………。……だからこそ』




農家「っと、もう片方もご到着か」

聖従騎士「いや何そんな冷静に!? つかあれこっち来てません!? に、逃げっ、逃げないと潰され……っ!!」

総司令「ああだいじょぶだいじょぶ、もう立ち止まるし。それに役者も揃ったみたいだからね」

聖従騎士「揃ったって、何が……!」




 二筋の光が、武教の空に軌跡を刻む。

 その姿を認め、巨人は厳かに歩みを止めた。

 友が集ったことを知り、蒼き蛇が歓喜の声を響かせる。




農家「さてと、始めるか」

精霊王『さあ、始めよう』



 「『三つの世界を、一つに戻そう」』


.





















枢機卿「──やはり、それが目的だったか、裏切り者どもめ」



   ── 暗く、闇夜に響くような、声だった。




.

乙 相変わらず面白い

多忙な中乙

定期保守age

定期保守age

読んでる

生存報告兼自己保守

定期保守age

じこほしゅ しにそう

まじ乙!

保守

自己保守上げ 酉合ってっかな
明晩(恐らく22過ぎ辺り)更新できそう ようやくだよ…

おひさ

おー!
期待

読み直しておこう




枢機卿「『「跪け、下郎共」』」



  ────ズン!!


聖騎士長「ぐおっ!?」ガクッ

親衛楯士「のぁっ!」ズシッ

親衛槍士「ふんぎゅへっ!」ビターン!


 言の葉と共に、突如として押し潰すような重圧が襲う。


見張りA「んぎぎぎぎぎ……! う、うごけねぇ……!」

見張りB「天国のじいちゃんばあちゃん、そっちに行ったらまずパンツを洗わせてください」

見張りA「もっと他に言うことねーのかよおめぇは!?」


 聖騎士長達だけではない。その場にいた兵士達、魔術師達、それら全てが膝をつき、あるいは地に伏した。

 ある三人を除いて。


枢機卿「『「やはり、お前達は従わぬか」』」


 奇妙な、

 いくつもの声と音が重なり合わさったような、酷く不気味な声だった。


総司令「悪いけど俺、おたくらのとこの『祝福』ってやつ受けてないんだよねぇ」

農家「…………」

聖騎士長(鬼神殿と、勇者……! っ、そうか……ではこれは……!)ぐぐぐ…っ


 ──教会には、【絶対命令権】というものがある。

 正確には、あった。

 教会の代表者、最高権力者である枢機卿のみが行使できる、信徒を強制的に従わせる『特権』である。

 しかしそれは、長い年月の間に術式が失われ、また、過去の協議の末に在るべきではないものとされたことから、禁忌の術として封印されたものだった。

 それ故に、現在この特権を用いることのできるものは、存在しない。


 そう、“今この時代”においては。


 腰袋の奥にしまい込んだ包みを解き、中にあった葉巻煙草を一本取り出す。

 そのまま片手で器用に先端を落とし、口に咥え、火を付ける。

 紫煙を燻らせ、深く息を吐き、農家は目の前の男を睨んだ。


農家「──もう一度だけ訊いてやる」


 その言葉に、枢機卿は眉をひそめた。


農家「テメエは、誰だ」

.


枢機卿?「『「……質問の意味がわからないな」』」

農家「とぼけんなよ、この寄生虫モドキが」

枢機卿?「『「…………」』」

聖従騎士「き、せい、ちゅう……? 一体……どういう……!」ぐぐ…

農家「確信はなかったがな、今のではっきりしたぜ。テメエは七光りバカじゃねえ」

農家「あいつはバカでアホで救いようのねえゴミ野郎だが、クズでもゲスでもねえ。ただのヘタクソだ」

農家「あいつはよ、最後に会った時俺にこう言ったんだぜ」

農家「絶対に俺らに負けないような英雄になって見返してやる、ってな」

親衛槍士「……っ!!」

親衛楯士「あいつ、そんなことを……」

枢機卿?「『「…………」』」


枢機卿?「『「……やれやれ、この男を見付けた時は良い隠れ蓑になると思ったのだが、当の貴様に見破られては意味がない」』」

枢機卿?「『「いかにも、私は枢機卿などという者ではない。そんな男は、とうの昔に死んでいる」』」

枢機卿?「『「私は貴様ら蛆虫共が崇拝する神の分身。忌々しい反逆者共によって引き裂かれた魂の欠片の一つ」』」

枢機卿?「『「そして“私”の望みを叶えるために、永くこの人間界に潜んできたもの」』」



枢機卿?「『「言うなれば私は──【魔王の影】だよ、鬼神」』」



 その瞬間、突如として大地が漆黒に染まった。

 否。闇にも似た酷く暗い魔力の波が、音よりも速く地を這い、覆い尽くした。

.




錬金術師「悪いけど先に降りるよ。君らは気にせず準備を進めてくれ」

参謀「手伝いますか?」

錬金術師「ああ、いいよいいよ。あんな出来損ないくらい僕らで十分倒せるし、それにほら」くいっ


 指差した先には、落ちていく二つの人影。


錬金術師「僕の愛しの旦那様もいるからね」

参謀「は、はぁ……では、お気を付けて」

錬金術師「そっちもね。ほっ」


 炎翼の巨鳥の背を蹴って、空中へと躍り出る。

 体を小さく細くたたみ、速度を上げて目指す先へ。


錬金術師「ダー────ぁリぃー────ン!!」

国王「は? ……はあっ!?」


錬金術師「 そ ぉ い ! 」


   ど ご お っ !!


国王「おぐぇあっ!!?」


 ……そして勢いをそのままで、同じく落下する国王の胸元へと飛び込んだ。


国王「こ、ころすきか……!?」


 衝撃でずれた落下軌道を咄嗟の風魔法で修正しつつ、呻く。


錬金術師「いやいや、僕は自力で着地ができないから便乗させてもらおうと思ってね」ケラケラ

国王「じゃあ飛び降りようとすんなっつーに! どんだけ高いと思ってんだ!」

錬金術師「落ちたら死ぬくらい」

国王「わかってんなら無茶すんなっつーの!」


錬金術師「んふふ♪ だーいじょうぶ。ダーリンが助けてくれるからね」すりすり

国王「すりすりすなああああ!!」ぞぞわ…っ

女僧侶「あのー……」

錬金術師「やあ女僧侶ちゃん。召喚士には会えたかい?」

女僧侶「えっ? なんで知って……」

錬金術師「どうやら杖とロザリオは受け取ったようだけど、決心は付いてないようだね」

女僧侶「えっと……すみません、その……」

錬金術師「まあいいさ、いずれは選ぶ時が来る。その時に答えを出せれば十分だ」

国王「……おい、一応訊いとくけどな」

錬金術師「なんだい?」

国王「お前らわざと俺になんにも説明しなかっただろ!?」

錬金術師「もちろんさ!」

国王「いい笑顔で力強く答えんなよしまいにゃ泣くぞ俺ぁあ!!?」

女僧侶(いい大人がイチャイチャしてるのって……キツい……!)

.




 地に浸み込んだ魔力が、そこに眠るものを呼び覚ます。

 木々の、草花の、動物の、そして人間の。あらゆる命の残骸を、歪んだ形で再生する。


魔王の影「『「貴様は必ず私の邪魔になるだろう。故に、殺すことにした」』」

農家「…………」


 魔物。または、モンスター。怪物。異形。化け物。

 人々にそう呼ばれるものたちが、黒く染まった大地から次々と生まれ現れる。


魔王の影「『「抵抗すれば、その魔物共は貴様ではなく、兵士共を殺す」』」

聖騎士長「なっ……!」

魔王の影「『「三千人の人質だ。守り切って戦う自信があるのならば、好きにするがいい」』」

親衛楯士(無理だ……鬼神さんの力はそういう類のものじゃない……!)

聖従騎士「こ、の……卑怯、者ぉ……!」


魔王の影「『「黙れ、虫ケラが」』」

聖従騎士「っぁ゛! ……! ……!」

魔王の影「『「ちょうどいい。まずは手始めに、お前を殺させてやろう」』」


 パチン、と指を弾く。それを合図に、魔物のうちの一体が動き出した。


???『ア゛……ア゛ア゛ア゛ア゛……』ズル…ズル…

聖従騎士(っ……この、魔物の着ている鎧……まさか、武教の兵士……!?)


 それは確かに人に似た形をしていた。

 けれど、人ではない。頭からは別の頭がこぶのようにいくつも生え、手足はその数が異様に多く、しかも不自然に捻じ曲がり、一部は四肢としての機能を失っているようにも見えた。

 しかし、人だった。少なくとも、生きていた頃は。


聖従騎士(なんてむごいことを……死人をこんな風にするなんて……!)

???『ア゛ア゛……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……!』


 歪な腕が武器を振り上げる。剣を、鎚を、斧を、無数の手で握ったそれらを、打ち下ろすために振り上げる。


???『──ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛……!!』

聖従騎士「────っ!」


 そして、叩き付けるようにして、


農家「うるっせえなこのゾンビ野郎!!」


  ドゴォンッ!!  ズシャアァァァ……


 ──農家の拳が、魔物を派手にぶっ飛ばした。


農家「喧しくて話ができねえだろうがボケ」パンッパンッ

???『ア゛……ア゛…………』ぴくぴく…

総司令「ふー……」やれやれ

親衛術士「やると思ったやつ挙手ー」

親衛槍士「腕動かねえっつうの……!」

親衛楯士「律儀に挙手しようとしてんなよ!?」


聖騎士長「鬼神殿……」

魔王の影「『「……それが貴様の答えか。鬼神」』」

農家「いちいち回りくでえんだよ。さっさとかかってこい、この寄生虫モドキ」

魔王の影「『「……っ、この私を……二度も虫と呼んだな!!」』」


 怒声と共に、さらに黒い魔力が地を伝う。
 それに伴い、新たに無数の魔物が姿を現した。


  *しりょうのきし が あらわれた。
  *くさったしたい が あらわれた。
  *アニマルゾンビ が あらわれた。
  *フラワーゾンビ が あらわれた。
  *くさったまじゅう が あらわれた。
  *スカルゴン が あらわれた。
  *がいこつけんし が あらわれた。
  *やたがらす が あらわれた。

  *まもののむれ が あらわれた!


魔王の影「『「蛆虫共々死ぬがいい!!」』」


  *まもののむれ は とつぜんおそいかかってきた!




総司令「──全部隊、召集!!」


 現れた魔物達が連合兵達を襲おうとしたその瞬間、漆黒に染まった地面の上に、精白に輝く魔法陣が展開された。

 そして、その魔法陣から次々と何者かが現れ、逆に魔物達を打ち払った。


魔王の影「『「何……!?」』」

総司令「先生」

農家「おう。来い、相棒」キィィ──ン…


.



  キィィ──ン…


魔女「うわっと、な、何なにナニ!?」


 手に握った漆黒の棒──星機軸が、強い光を帯びて浮かび上がる。


魔女「ちょ、っと、ま、ち、な、さ、い、よ……!!」ずりずりずり…

キングレオ「……何をしておるのだ魔女よ」

魔女「きゅ、う、に、こ、い、つ、が……うわっ!?」ふわっ…

キングレオ「魔女!?」がしっ

キングレオ「ぬおっ!?」ふわっ…

暴れ猿「はっ!?」ふわっ…

覇王「なっ!? お、おい……」がしっ

覇王「ってうおぁ!?」ふわっ…

姫様「なぁっ!?」ふわっ…

女魔法使い「ん」ひょいっ ふわっ…


魔女「え、ちょ、わ、なっ、なにこれ!? なにこれ!? なにこれ!!?」


 帯びた光が魔女へと伝い、他の者へと伝い、彼らを巻き添えにして星機軸は宙に浮かび、そして、


  ──ギュィンッ!!


魔女「なにこれええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?!?」

女魔法使い「…………うん……これは速い……」


 疾風の如き速度で、主の元へと飛び立った。


.




女勇者「あーもう! 急になんなのさこのモンスターたちってばさぁ!!」


 地上を駆けていた女勇者は、魔王の影が生み出した魔物達と交戦していた。


女勇者「魔力もまだあんまり戻ってないのに……! ジャマすんなー! こらー!!」


 毒づきながらも剣を振るい、農家達の元を目指す。

 その背後から、高速で接近する飛翔体が一つ。


女魔法使い「おーい、ゆーしゃー」

女勇者「ほへ? ってどぅええええええええ!!?」


 星機軸に引っ張られる形で、魔物の群れを轢き飛ばしながら仲間達が飛んできた。


女魔法使い「ねこさん、ごー」

キングレオ「ねこさんって……まあいい。娘、掴まれ!」

女勇者「え、と、ちょっ! わ、わわわ……!」


キングレオ「跳べ!」

女勇者「とっ、ととと、とりゃーっ!!」だんっ!

キングレオ「っ、よし!」がしっ

女魔法使い「ごーごー」

女勇者「な……なっ、な……なにこれええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……!!」


 魔女と似たような声を上げる女勇者を巻き込んで、星機軸は更に加速した。


.




錬金術師「3……2……1……今!」

国王「そぉりゃっ!!」


 合図に合わせ、魔法によって自分達の周囲に強烈な上昇気流を引き起こす。

 高速で落下していた三人はそれによって僅かずつ速度を緩やかにし、農家達のすぐ傍へと着地した。


錬金術師「やあ、お待たせ」

女僧侶「ど、どうも」

農家「おう」

総司令「やあマイマザーアンドマイファーザー! 特にマイファーザーは久しぶり!」キラーン


国王「前歯を輝かせるな! つーかてめぇ生きてんなら生きてるって言えやこのば」

農家「あ、そこ危ね」


  どごぉっ!!


国王「かああぁぁぁぁぁぁぁぁん……!!」どひゅーん! ずしゃあぁぁぁ…

魔女「はらほろひれはれ……」ぐるぐるぐる…

農家「遅かったか……って、魔女? それにお前らも何やってんだ?」

覇王「いやその、なんというか……」

女勇者「はぁおぉぅえぇぇ……目ぇがぁまぁわぁるぅぅぅ~……」へろへろふらふら

キングレオ「まさか巻き込まれて引き摺られるとは思わなくてな」

農家「おお、化け猫じゃねえか。なんだ生きてたのか」

キングレオ「一度は死んだものと思ったのだが、何の因果か、な」

姫様「お、おい! のん気に話をしていられる状況かこれは!? 戦場のど真ん中だぞ!」



 武教の姫の言う通り、そこは戦場の只中となっていた。

 数え切れないほどの魔物が大地を覆い尽くし、その爪を牙を武器を振るっている。

 しかし、それに応じる者は、地に伏した連合の兵士達ではない。


副司令「B班は西側へ! A班と合流しつつ北上、連合兵を回収後そのまま一時退避! D班はA・B班退避まで護衛に回れ! G班! J班が囲まれてるぞ、援護しろ!」

「「「了解!!」」」

副司令「ちょっと総司令! 少しは手伝って下さいよ! いくらハルピュイアだって言ってもずっと飛びっぱなしって結構疲れるんですよ!!」

「C班、連合兵を確保! 重症一名、回復回して下さい!」

副司令「3班、そこから7時の方角50mだ! K班は3班を護衛して道を拓け! こらーっ! 聞いてるんですか総司令ーっ!!」

総司令「いやー、正直そっち俺の出る幕ないんじゃない? それに俺人間嫌いだし」

副司令「私だって別に好きじゃないですけど!!」

覇王「これは……魔物が兵士達を助けている……のか……?」

総司令「ま、今全滅されるとこの後困るんで。聖騎士長さん、これで貸し1ですよ」

聖騎士長「…………何故……」

総司令「?」


聖騎士長「何故、我々を助ける……? それも、魔物達が……」


 戦っているのは、同じく魔物だった。

 ただしその多くが人に近い姿をした、いわゆる亜人種と呼ばれる種族である。

 かつてその姿形が故に人間に迫害され、追いやられ、住む場所を奪われた者達が、今は人間を守っていた。

 人間の守護者たる連合軍。その先頭に立って戦う聖騎士長にとって、それは信じ難い光景であった。


総司令「別におたくらのためじゃないですよ」

総司令「ただ……」




 視線を、魔王の影を名乗るこの戦いの元凶へと向ける。


総司令「俺らもこの世界の住人なんで、住む場所ブッ壊そうとしてるクズがいるから、ブチのめしてやろうと思ってるだけです」

女勇者「……それと生きてるの黙ってたのとどーゆー関係があんのさ」

総司令「それはだね。……あ、妹」

女勇者「このバカおにい! ボクがどんだけ寂しくて悲しかったと思ってんのさバカバカバカぁ!!」ぎゅぅぅぅぅぅ…!

総司令「ぐえぇえっ! し、締まる……! 首が締まるぅ……!!」ばたばたばた

女僧侶「ちょっ!? ストップストップ! 王子様死んじゃいますよ!?」


.




親衛槍士「……なあ、楯士、術士」

親衛楯士「なんだ?」

親衛槍士「俺ぁ、今腹が立って腹が立って仕方がねえよ」

親衛術士「…………」

親衛槍士「枢機卿のやつがよ……あの、バカでアホでひねくれモンで、それでもヒーローになりたがってたあいつがよぉ……」

親衛槍士「そのあいつが、こんなクソ野郎にブッ殺されてただって……? ふざけんなって話だよなぁ……」

親衛楯士「槍士……」

親衛槍士「あいつだと思ってたやつが偽モンで、クソ野郎で、じゃあ俺らは何のためにあいつについてきたってんだよなぁ……」

親衛槍士「それを思うとどうにもよぉ……!」ぎり…

親衛楯士「…………」

親衛槍士「……気付いてやれなかった自分に、どうしようもなく腹が立って仕方がねえんだよ……!」ぐ ぐぐぐ…

親衛楯士「…………、ああ、そうだな……!」ぐっ…

親衛術士「ロリコンの俺としては否定したいところだが、残念ながら、同意見だ!」ぐぐ…!



 力尽くだった。

 三人それぞれが、己の気迫だけで、本来抗うことなど叶わない絶対の命令を跳ね除けようとしていた。


親衛槍士「ぬんぐぅぉおおおおおお……!」ぐぐぐぐぐ……!

親衛楯士「があああああ……!」ぎぎぎぎぎ……!

親衛術士「ぬふぅううううんんん……!」ぐぎぐぎぎ……!


  ピキ……ピシ……


 ひび割れるような音。そして、


三人「「「ぬあああああああああああああああああ!!」」」ッダン!!


  ──パキィン!!


 硬い金属が砕けるような音を響かせて、三人の親衛騎士は立ち上がった。

.


魔王の影「『「……ほぉ、よもや強引に呪縛を破る輩がいるとはな」』」

親衛槍士「もう黙りやがれ、クズ野郎……! その面でそれ以上口を利くんじゃねえ!」

親衛槍士「いくぞ、楯士、術士! あいつは俺らがブッ殺す!!」

親衛楯士「ああ!」

親衛術士「おう!」

三人「「「死ねええええええええええええええ!!」」」ダッ!


聖従騎士「無茶苦茶だ……あんな強引な……」

聖騎士長「……ダメだ……よせ…………!」

聖騎士長(やつに絶対命令権があるのならば、ただ一言命じられるだけで、我々は自決することになる……!)

聖騎士長「相手が悪すぎる……! 我々の敵う相手では……!」

農家「それでもやんなきゃなんねえ時ってもんがあるんだよ」

聖騎士長「鬼神殿……」

農家「それに、テメエの心配は杞憂だと思うぜ」

聖騎士長「どういう、ことです……?」


農家「単純な話だろ。あの寄生虫モドキの死ねって命令が有効だったら、そもそもとっくに死んでなきゃおかしいんだぜ?」

農家「ってえことは、だ。野郎が使ったのは絶対命令権なんてもんじゃなく、ただの別の何かだってこった」

聖騎士長「あ……そ、そうか、確かにあの時……」

農家「大体、簡単に破れるようなもんが絶対なわけねーだろ」

聖騎士長「そうか……そうか、ならば、私も……!」ぐぐぐ…

聖騎士長「……」

聖騎士長「あれ、ちょっと待って下さい鬼神殿。今私の思考読みませんでした?」

農家「気のせいだろ」

聖騎士長「は、はぁ……」

総司令「せんせー、早いとこやっちゃいません?」

農家「おう。しばらく掃除頼むわ」

総司令「了解です」ビシッ

女勇者「え、何? 何すんの?」

農家「っと、おいボケナスビ。聖霊の剣と真紅の爪よこせ」

女勇者「まだナスビ!?」


農家「そこはどうでもいいからほら、よこせ」

女勇者「どうでもよくないよ渡すけどさ!?」

農家「どうでもいいだろ。ほれ、危ねえから退避しとけ」

女勇者「どうでもよくないよぉぉぉぉぉ!!?」

総司令「はいはいどうどう落ち着いて落ち着いてー」がしっ

総司令「ほい覇王さん、パぁス!」ぶんっ!

女勇者「ちょぅえやぁっ!?」

覇王「うおっと!? おい! いきなり人を投げてよこすな!」

総司令「あ、みんなその場を動かないでね」

覇王「無視か!?」

農家「いいからじっとしとけ」ツカツカツカ…

農家「……この辺か」ザリッ…



 戦場の只中で、僅かに空を見上げ、咥えていた葉巻を棄てる。

 そして、弧を描いて飛ぶ葉巻が地に落ちると同時に、農家は星機軸を、地面に真っ直ぐに突き立てた。


農家「術式編むのに20年かかっちまったからな、一発勝負だ。頼むぜ相棒」


 応えるように、星機軸が淡い光を帯びる。


農家「──『遅延術式解除』!」


 瞬間。星機軸を中心にして、数え切れないほどの数多の魔法陣が、周囲一帯を埋め尽くした。




.

ひと区切り だいぶ荒いのは目を瞑ってくれ…
次はなるべく早く投下したい 今更だが時間かかりすぎだ

乙!!

乙 読んでて面白いな楽しみに待ってる

心が読めるのも農家だからだな

乙乙
俺このSSが終わったら農家になるんだ…

楽しみにしてる

ここまで全てチビガリ農夫のアホ妄想

はよ

とりあえず生きてるという報告から
投下はよくて週末かな…

承知



   我が下に還れ、分かたれし魂よ


 ……煩い


   我が下に還れ、分かたれし魂よ


 ……煩い、黙れ


   我が下に還れ、分かたれし魂よ


 ……違う


   我が下に還れ、分かたれし魂よ


 ……違う、私は──





.


 荒涼とした大地の上に、白い光が渦を巻く。

 その眩しさに視界を奪われ、ほとんどの者が一瞬、世界を見失った。


女勇者「ちょっ、なにこれどうなってんの!?」


 霞んだ世界の中で辛うじて、解放された魔力が四条の光となって大地を切り裂くように駆けていく様が見えた。

 否。事実としてそれは大地を、星を切り裂いていった。


 かつて一つだった世界はある日、三つに分かたれ、紡ぎ直された。

 しかし本来そんなことは自然には起こりえない、あり得ない出来事だ。

 故に、その繋ぎ目は綻びとして今も残り、きっかけさえ与えてやれば、またもう一度引き裂かれる。

 四条の光は世界の亀裂を切り開き、この世界をもう一度、元の一つに戻すのだ。


焔灼王「始まったね……さあ、ここでお別れだ」

参謀「……はい。いつか、また」

氷銀王「うむ……永く、世話になったの」


 巨鳥の背から地に降り立ち、互いに別れの言葉を交わす。

 火の王は高らかに一声を上げると、力強い羽ばたきと共に光の渦の中心へと飛んでいった。

 それを追いかけるようにして、風の王もまた飛んでいく。

 その様を見届けて、水の王と土の王もまた、その巨体を光に変えて渦のほうへと流れていった。


氷銀王「…………行ってしまうの」

参謀「…………ええ」


 暖かな赤と、涼やかな青。

 若草を思わせる緑と、洞の中のような暗さを帯びた黄。

 それらは渦巻く光に溶けるように消えていき、やがて、光は虹の色に染まった。


.



総司令「みんな、光に近付かないようにね。粉々になるから」

魔女「いや意味わかんないっつかアンタちょっとは戦いなさいよ!」


 戦闘はなおも続いていた。

 次から次へと際限なく現れる魔物達を薙ぎ払い、動けない兵士達を救助する。


総司令「まあまあ、しばらくお願いしますよ。ちょっとまだ、次が控えてますんで」

魔女「はぁ!?」

総司令「本部、各地の状況を通達」

『光帯が各地第三観測地点を通過。約60秒後には最終地点まで到達すると思われます』

総司令「了解。後続及び各地派遣部隊の転送を開始。準備は?」

『問題ありません。20秒後に後続部隊から順次転送開始します。およそ100秒後までに全部隊転送完了の見込みです』

総司令「よし。以後は作戦通りによろしく」

『了解しました』


国王「オォイ! いつまで続けりゃいいんだこりゃあ!」

総司令「んー、もうすぐ止まるからもうちょい頑張って」

国王「なんだそりゃあ!!」

総司令「ここまでは予測通り……後は」


 再び、地表を覆うようにして巨大な魔法陣が展開される。

 そしてそこから、鎧を纏った多数の魔物が姿を見せた。


「後続部隊、合流します!」

総司令「ほいほい。副司令ちゃん指揮よろしくー」

副司令「だから丸投げにしないで下さいってば!!」

総司令「そう言わない。ほら、始まるよ」


 その言葉の直後、大地が大きく揺らいだ。


.



親衛槍士「せらせらせらせらせららっせぇらあああああ!!!!」


 奇声を上げながらも、目にも留まらぬ凄まじい速度で連続の突きを放つ。


魔王の影「『「……チッ」』」


 対する魔王の影を名乗る魔物は、己の影を触手のように操り応戦していた。


魔王の影「『「煩わしい──控えよ!」』」

親衛槍士「んぎっ!?」ズンッ!


 重圧を受け、槍士の猛攻が途切れる。

 その一瞬に影の触手が凝縮し、槍士へと狙いを定めた。


魔王の影「『「常闇に沈め──!」』」


 影が渦巻き、土石流の如き勢いで解き放たれる──。

.



親衛楯士「──ぅおらあ!!」


 ──それを、楯士が割り込む形で受け、弾く。


親衛術士「『中級地撃』!」


 そして直後に発動した魔法によって地面が隆起し、二人を空へと運んだ。


魔王の影「『「!!」』」

親衛槍士「楯士!」

親衛楯士「おうよ!」


 空中で、槍士が楯士の盾に足を置く。


親衛楯士「ふぬぁらあっ!!」


 全力での振り下ろし、それに合わせて跳躍し、槍士が矢の如き速度で魔王の影へと迫る。

.


親衛槍士「死にさらせボケぇえ!!」

魔王の影「『「っ、くそ……」』」


   我が下に還れ、分かたれし魂よ


魔王の影(黙れ……私は……!!)

魔王の影「『「──ァァァアアア!!」』」

親衛槍士(っ!? 地面の影が全部アイツの所に──!?)

親衛槍士「ってそれがどうしたオラアアアア!!!!」

魔王の影「『「アアアアアあああああああ!!!」


  バキィイイン──!!




.


親衛槍士「ぅおっち、った、っとぁ!」ズザザザ…

親衛楯士「槍士! どうなった!?」

親衛槍士「あの野郎……ざけやがって」


 舞い上がった砂塵の向こうに、ゆらりと動く影が見えた。


親衛楯士「……どう見る?」

親衛術士「推測だがあの影、結果を後付けするタイプの魔法だな。影があるって事実を作って影が出来得る理由をでっちあげてるんだろ」

親衛楯士「マジかよ、そんなのアリか」

親衛術士「なんせ魔法だからな、その気になればなんでもアリだ」

親衛術士「例えば俺が幼女にモテモテになるとかな!!」カッ!

親衛楯士「ボケを挟まねえと喋れねえのかおめーは!?」がびーん


親衛槍士「……ふざけんな、クソが」

親衛楯士「……槍士?」


 槍士は手にした槍を、地面に深く突き立てた。

 そしてそのまま、早足に、砂煙の向こうの影の下へ歩を進めた。


親衛楯士「お、おい! 何して──」

親衛槍士「オイ……オイ!」

魔王の影「っ、貴様──」


  がしっ

 伸ばした手が、魔王の影の胸倉を掴んだ。


親衛槍士「なんのつもりだよテメェ!」

魔王の影「な……に、を……」

親衛槍士「こっちのセリフだクソッタレ! テメェこそ一体何なんだ!!」


親衛槍士「テメェ──その気になりゃあ俺ら全員一瞬で皆殺しにできんだろうが!!」

魔王の影「────っ」

親衛槍士「手加減して遊んでるつもりかよ! それとも俺らにゃ殺す価値もねえってか! 人様馬鹿にすんのもいい加減にしやがれ!!」

親衛槍士「テメェ一体、何がしたくてここにいやがんだ!!」

魔王の影「……わ、たし、は…………」


  ズ ズ ン ……

   ゴゴゴゴゴゴ ……


親衛楯士「な、何だ!?」

親衛術士「……ふむ、何、というか、あれだな」



親衛術士「大地が裂けてるな」

親衛楯士「いぃっ!?」


.


 強烈な揺れを伴いながら、大地が引き裂かれ、開いていく。

 光の帯はその輝きを更に増して空まで届き、空もまた、大地と共に切り裂かれていった。


聖騎士長「これは一体……鬼神殿は何を!?」

総司令「大魔王を完全に倒すには、これしか手がなくってさ」

国王「おいおい、どういうこったそりゃ」

総司令「そもそも世界をバラバラに引き裂いたのは、大魔王が完全な形で復活できないように、別々の世界でそれぞれ封印しようっていう理由があったわけで」

総司令「でもそうなると精霊王達と同じく、一つ潰してもその存在が世界に残る。だからしばらくするとまた復活してしまう」

総司令「つまり、いつまで経っても大魔王を倒すことなんてできっこない。それで今までズルズルダラダラと戦いが続いてきたわけですわ」

総司令「……でも、そろそろそれも終わらせる頃合いなんじゃないか、ってことで」

魔女「それって……まさかあんたら、大魔王を完全復活させる気なわけ!?」

総司令「まあそういうことですねぇ」

国王「なっ、ば、おまっ、正気か!? 要は神相手にガチのケンカするってこったぞ!?」

覇王「いや……しかし確かに倒せるならば……だがそんなことが……」


女錬金術師「勝算はないわけじゃない。というか、必要なものはもう20年前に調べ終わってるんだ」

女錬金術師「問題はそれが揃うかどうかなんだけど、ここからは正直賭けだね」

国王「そりゃ勝算ねーのと一緒だろうが!? いやマジ何してくれてんのお前ら!?」

魔女「ありえない……いくらなんでも馬鹿すぎるでしょ何考えてんのよ……!?」

キングレオ「──っははははははは!! これはなんとも愉快な奴だ!」

総司令「おっ、そこのライオンの人はなかなかわかってるね」

キングレオ「強大な敵を避けるのではなく、正面からぶつかって打ち倒すために全力を尽くす! これほど心躍ることは他にない!」

女勇者「えーっと……? ごめん、未だに状況がよくわかんないんだけど……??」

姫様「つまりあれか、このままでは殴ることもままならんから目の前に引き摺り出してやろうと、そういうことか」

女勇者「あ、なるほど」

女僧侶「いや納得してる場合じゃないと思うんですけども!?」

暴れ猿「今更言うだけ無駄という気もするがな……」

総司令「そうそう。もう途中で止めるなんてのは無理なんで、諦めて対策だけ考えていきまっしょい」

国王「お前が言うなや!! ──うおぁっとぉ!?」



 ひと際大きく、大地が揺らぐ。

 世界を裂いた亀裂は大きく広がり、光壁の向こう側は遥か彼方へと離れていた。


国王「オイ、コレこれからどうなるんだ!?」

総司令「魔界と神界でも同じことが起きてます。後はこれから、元あった場所にあるべき大地が戻ってくるだけ、ですね」

副司令「総司令、敵性の魔物の殲滅、完了です。それと連合の兵士達はみんな動けるようになったようです」

聖従騎士「あ、ほんとだ動けるようになってる」

女僧侶「……待ってたんですか?」

聖従騎士「いや疲れちゃって……」

国王「能天気な奴しかいねぇのかここには……!!」

聖騎士長(私も入れられている!?)


女錬金術師「それよりみんな見てごらん。すごいものが見えるよ」

暴れ猿「? すごいも……のおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?!?」


 光壁の向こうに、大陸が出現していた。

 一方では空の上から。一方では地の底から。ゆっくりと引き合うように接近する。

 世界が一つに還っていく。

 海も、山も、空も、陸も、あるべき形へと戻っていく。

 しかしそれに伴ってか、大地は揺らぎ、海も風も暴れ狂い、陽の光すら大きく歪んだ。


総司令「みんなしっかり伏せてて! うっかり光壁の狭間に落ちたりしたら、時空の歪みに飲まれて戻れなくなるよ!」

国王「そういう大事なことはもうちょっと早く教えろや!!」




 凄まじいまでの揺れと、気を抜けば吹き飛ばされかねないほどの暴風。

 立ち上がるどころか、目を開き続けることもままならない状況の中で、



女勇者「……おじさん?」



 ほんの一瞬だけ、女勇者がその姿を捉えた。



 光壁の向こう側。時空の歪むその場所に、彼は一人、取り残されていた。




.

乙!

作者の週末=1ヶ月

いや3年半早いわぁ.....

自己保守上げ

最初から読んだ!面白い!

ほしゅ… いいかげん時間がほしい

年末まで難しいかな?

ふむ

本当に年末までだめかもしれない 保守

乙!一報ありがとう

農家はTPPという時代の流れに負けたのだ…

ちょいと先に保守上げ

あけましておめでとう

保守守守

保守上げ




「……なんで俺なんだ?」

「君がやるべきことだからさ」

「なんだそりゃ」

「まあ、すぐにわかるよ。それに、これは君にしかできない。君だからできることでもある」

「……そんな御大層なもんじゃねえぞ、俺あ」

「そうかもしれないね。だけど──」

「…………」

「──我々は、君に託したい。そう思ったんだ」


.




 揺らぐ大地。

 吹き荒れる暴風。

 虹の中に落ちたかのような、眩しすぎる世界。

 そんな中で、その男は立っていた。

 その足元に大地はなく、その周囲に風はなく、その頭上には光もなく。

 世界と世界の境界で、男は当たり前のように立っていた。


 境界の向こう側で、少女が一人、声を上げる。

 その声に、男は僅かに振り返り、互いの視線が交わった。


 伸ばした手が、空を掻く。

 男は微かな笑みを浮かべ、手にした剣を天に掲げた。


.






「──よう、久しぶりだな、お前ら」


「…………気にすんな。そういう約束だ」


「……ああ。そんじゃ、改めてあばよだ」


「じゃあな、お前ら」




.




 ── 風が止んでいた。

 大気は澄み渡り、空には透き通るような青空が広がっていた。

 そして、静寂。

 荒れ果てた戦場には、地に伏した無数の人影があった。

 その中の一つが、何事もなかったかのように立ち上がり、空を見上げた。


「……ああ、綺麗な空だ」


 彼の後を追うように、人々は少しずつ起き上がり、つられるように空を見た。


 その空は、ただ青く、広かった。

 何事もなかったかのように、静かだった。


.


聖従騎士「……これで終わり、ですか?」

国王「なんにも変わった気がしねぇぞ。ほんとに世界がひとつになったってのか?」

総司令「んーそうですねぇ、まあ目に見えては変わらないでしょうが、それはそれとして」

総司令「まだ一つ、大仕事が残ってますよ。あそこに」

国王「あそこ?」


 指差した先に、目を向ける。

 そこにあったのは……


.



「……っ、皆、無事か?」

「いつつ……一体何が……?」

「空が、青い……? それに、明るい……」

「まさか、本当に……」

「! 側近殿、あれを!」



側近「──あれは、くそっ、ここまで計算ずくか!」

側近「速やかに動ける兵を集めろ! 私も外に出る!」

「側近殿!」

側近「これ以上好き勝手やらせてはおけん」

側近「やつらを撃退し、大魔王陛下をお守りする! いいな!」

「「「はっ!」」」
.



錬金術師「事前に下調べした通り。向こう側の異界の門に一番近い砦は、元はちょうど武教の国の北側辺りにあったわけだね」

国王「おいおい何をのん気に……すげぇ数の魔物がいんぞ! どうすんだこれ!」

総司令「だからこっちも兵力を集めておいたんですよ。そっちの連合兵の皆さんも含めて」

国王「はぁ?」

聖騎士長「我々がここに来るのも狙い通りだったと……一体、どこまで計画して……」

聖従騎士「そっ、それよりどうするんですか!? あんな数の大群、戦いになったらひとたまりもないですよ!?」

総司令「んー、まぁ、確かに数の面ではかなり不利だけど。でも君、忘れてない?」

聖従騎士「え?」

総司令「今ここにいる人たちが、誰なのかってことをさ」

キングレオ「……なるほど。かつて人間を支えた英雄のうちの三人、勇者、魔女、そして錬金術師。さらに彼らに次ぐとまで謳われた覇王と聖騎士か」

聖従騎士「えっ!? 七勇士に次ぐって、聖騎士長ってそんなすごい人だったんですか!?」

魔女「知らなかったの、あんた……」


副司令「というか、キングレオさん詳しいですね」

キングレオ「我にとっては戦いこそが生きる意義! 故に、強者の噂は常にこの耳に届いておるわ! ぬははははは!!」

覇王「ほう……同じく強さを求める者同士、貴殿とは酒でも酌み交わしてみたくあるな」

キングレオ「おお、それは光栄だ! よもやあの覇王殿にそのように言っていただけるとはな!」

女勇者「……なに、この暑苦しい空気」

女僧侶「ちょっと近付きたくないですね……」

姫様「ふふふ、さすがは父上。やはり強者は強者を惹き付けるのだな」

女勇者「……しまった、逆にボクらのほうが浮いてるみたいになってる」

暴れ猿(……文字通り手も足も出せないからつっこむにもツッコミしづらい)

総司令「ま、そういうわけで……ちょいとキングレオさん、肩に立たせて貰って構いませんかね」

キングレオ「ん? 構わんが、なんだ」

総司令「指揮を執るなら、やっぱり高い所からがいいんでね」




 「全員、聞けぇ!!」

 「諸君! 俺は南洋王国第一王子、即ち、当代の勇者である!!」

 「俺が死んだと聞いていた者達も多いだろう。だが、それは我々の目的のため、新たな同志を募るため身を隠したにすぎない!」

 「連合兵諸君、諸君らを助けた魔物達がそうだ! 彼らは我々と志を同じくする、同志である!」

 「納得できない者も、受け入れられない者もいるだろう! だが、それでも今は共に剣を取り、立ち上がれ!」

 「この平原の北に見える砦、あそこには今、魔王軍の軍勢が待ち構えている! やつらは今にもこちらに襲い掛かってくるだろう!」

 「敵の数は多く、こちらは少ない。戦いともなれば、こちらが不利なのは明らかだ!」

 「だが我々がここで逃げ出せば、魔王軍は我々の世界を蹂躙するだろう! 諸君らの家族や友人も、その犠牲となるやもしれん!」

 「しかし今、ここには勇者がいる! そして、勇者だった者がいる! そのかつての仲間がいる!」

 「一騎当千の英雄が、諸君らと共に戦うのだ! やつらを止められぬ道理はない!!」

 「この世界を、国を、町を、ひいては人々を魔王軍から守る! そのためには今この時にこそ、我々は戦わなければならない!!」

 「その意志のある者は立ち上がり、己が武器を掲げよ! 称号など関係ない、その志ある者こそ、勇者だ!!」


.




 ざわめきが広がり、やがて静寂に取って代わる。

 そして……、

 一人、

 また一人、

 やがては十人、百人、千人……。

 立ち上がり、武器を掲げ、勇者を見た。

 勇者は不敵に笑うと、振り返り、動き出した魔王の軍勢を見据える。



勇者「──総員、抜刀!!」

「「「ウオオオオオオオオオオー─────!!!!」」」


.



  ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド … … !!


女僧侶「な……なんだかよくわからないうちにすごいことに……」

聖騎士長「……いいんですか? 勇者と呼ばれるのは本意ではないのでは……」

勇者「方便ですよ。まぁ、別に嘘は言ってないし、やることは変わらない。でしょ?」

魔女「……ってあれ!? さらっと参戦させられてる!?」

錬金術師「マーキングは早めに済ませておいた方がいいよ。後でやろうとすると面倒だし」

国王「お前……息子にこんなこと言うのもなんだけども、詐欺師にでもなれるんじゃねぇの?」

勇者「あはは、やだなぁ。褒めてもなんにも出せませんよ?」

国王「いや褒めてねぇよ……」

勇者「副司令ちゃん。うちの妹とお友達の僧侶ちゃん、それと武教のお姫様とそこの猿の人を連れて、戦えない人らと一緒に退避させて」

副司令「わかりました」

女勇者「ええっ!? ちょっ、なんで!?」

姫様「待て! 私も戦えるぞ! 勝手に決めるな!」


勇者「お姫様には失礼ですが、はっきり言わせてもらうと邪魔です。大人しく下がってください」

姫様「なんだと……!」

勇者「貴女が狙われれば覇王さんは貴女を庇う。戦場ではその隙が致命傷にもなり得る。年下に従うのは癪かもしれませんが、聞き入れてもらえませんか」

姫様「つまり私が弱いと……! ならば今ここで試して──」

勇者「遅いんですよ」チャキ

姫様(っ!? 背後だと!? まるで見えなかった……!)

勇者「今の貴女では俺が消えたようにすら見えなかったはずだ。何度も言わせないでほしい。邪魔だ、消えろ」

勇者「──次は手足を削ぐぞ、人間」

姫様「……っ」

女勇者「ちょ……お兄ちゃん……?」

勇者「おっと。脅かしすぎたかな、ごめんごめん」

勇者「とにかく今回は撤退してくれ。君らにはまだ、君らの仕事が残ってる」

副司令「みなさんこちらへ。私達が安全圏まで移送します」

姫様「あ、あぁ……」


女僧侶「移送って、転移魔法は使わないんですか?」

勇者「今はもう使えなくなってるんだ。詳しいことは後で説明してもらって」

女勇者「よいしょっと。猿さん大丈夫?」

暴れ猿「平気だ。すまないな」

女勇者「いいよ。ボクも助けてもらったんだからこのくらいはね」



キングレオ「さて……我々もそろそろ進むか。出遅れて味方に被害を出すわけにもいくまい」

国王「あんたも行くのか。てかいいのか? 魔王軍だろ、あんた」

キングレオ「元、だ。それに忠誠を誓った王は今やいない。ならばこそ、戦場で新たな友と肩を並べるのもまた一興!」

覇王「ははは。では、ひと仕事終えたら一杯やろう。鬼神殿の強さには遠く及ばないが、こんなところで敗けるつもりは毛頭ないからな」

国王「ったく、ああ、そういやお前も割と脳筋な部類だったよな。すっかり忘れてたぜ」

聖騎士長「及ばずながら、私も剣を取らせていただきます。兵士達ばかり戦わせるわけにはいかない」

聖従騎士(やっばいこれ、自分一人だけなんか場違い感がハンパじゃない……!!)


国王「そうと決まったらさっさと行くか。一番遅かったやつが酒奢りな!」ダッ!

キングレオ「その勝負乗ったァ!」ダッ!

覇王「速力ならこちらも自信がある、そう簡単には敗けられん!」ダッ!

聖騎士長「ちょっ、どう考えても私の一人敗けになるんですが!?」ダッ!

聖従騎士「あっ、そ、えと、あのっ、お、置いていかないで下さい自分も行きますぅぅっ!」タッ!

錬金術師「……汗臭い男同士の友情、いいね!」ぐっ

魔女「ぐっ、じゃねーわよ。ったく、私らも行くわよ。ほらアンタも、煽るだけ煽ったんだからさっさと行く!」

勇者「わかってますって」

魔女「マホも……あれ?」

勇者「どうかしました?」


魔女「そういえば、マホどこ行ったのかしら」

勇者「あのロリ巨乳の魔法使いの女の子ですか? あの子なら……」



女勇者「あれ、そういや魔法使いちゃんどこ行ったんだろ」

女僧侶「え? あぁ……確かに」

副司令「あの小さい子ですか? 彼女なら……」





勇者・副司令「「先生(農家さん)にくっついてましたよ?」」



魔女・女勇者・女僧侶「「「はぁっ!?」」」




.






農家「…………」

女魔法使い「…………」

農家「……、なんでいるんだ、嬢ちゃん」

女魔法使い「………………、つい、うっかり?」


.

次回で本章は一応の終わり の予定

乙でした

保守した甲斐があるってもんだ乙

乙!

マホ可愛いよマホ

つ寒肥

ちょいと保守age

期待

マイペース農家

早くしないと4年目突入保守

4年目突破記念保守

追いついた...俺は...追いついたんだ...!!

追い付いたぞ

支援

田植えも終わったぞ

とりあえず自己保守と生存報告 完結だけはさせる

おう!

待ち望んでいたこの時を

すまん再度保守上げ

待ちわびたぞガンダムゥウウウウウウウウウウ!!!!!

三ヶ月保守上げしかしてなくてわろた

返事がない

ただの案山子のようだ…

わりと本気で瀕死 仕事キツすぎ草も生えない
ほしゅ

農家として許せないんだけど     
なにこの鈍感な農家
耕してしていい?けっこう有名な農家なんだけど

生存報告だゴルァ!!!!

続きが耕されてて読めねぇぞこらー
支援だおらぁぁ

早く更新しないと人口肥料撒くぞゴルァ!!(#゜Д゜)

早くしないと稲刈り終わっちゃうよおおおおおおお

保守する意味を知りたい

酉あってんのかなこれ
一応農家サイドとしては次で終わり
その後ちょっと女勇者サイドその他を分けて投下して、その後のことはまた後で考える

待っている人がいるかどうかはしらんが逝きます




 ──月の光も届かないほどに鬱蒼とした薄暗い森の中の道を、その馬車はランプも点けず、猛烈な速度で走っていた。

 小さな幌張りの荷車には僅かな荷物と、膝を抱えてうずくまる人物が一人。フード付きの大きなローブに身を包み、その表情は見えない。

 馬車を駆る馭者の額には汗が滲み、視線は右へ左へとせわしなく動く。

 その視界の端で、流れ行く木々の隙間に、彼は馬車を追い抜いていく複数の影を捉えた。


馭者「くそっ! 回り込まれちまう!」


 手綱を握る手に力が入り、冷や汗が滲む。

 御者台の裏に引っ掛けたサーベルを片手で手繰り寄せ、夜の闇に目を凝らす。


??「……右から6、左から4、正面から3匹来ます。恐らく魔物化した野犬の群れでしょう」


 ローブの人物が荷車から身を乗り出し、馭者に告げる。その手にはボウガンが握られている。


馭者「勘弁してほしいね、こっちは2人しかいないってのに……いざとなったらあんただけでも逃げてくれよ」

??「善処はしますが……そんな恩知らずなことはしたくないですね」


馭者「こっちにも運び屋の矜持ってモンがあるんだ。『積み荷』を無事に運ぶのが──」

??「右、来ます!」

馭者「うおっと!?」


 声に咄嗟に反応し、サーベルを右に振るう。鈍い手応えと衝撃に、僅かに体勢が崩れた。

 数瞬遅れて、獣の小さな悲鳴が遠ざかる。

 その衝突を皮切りに、魔物の群れが馬車へ次々に襲い掛かった。


馭者「くっ、このっ!」

??「ボウガンじゃ遅い……! やっぱり『銃』で──きゃっ!?」ガタンッ!

「ヒヒィーン!!」

馭者「しまっ、馬が──うわっ!」


 魔物に牙を突き立てられた馬の脚が止まり、2人の体が馬車から大きく投げ出される。

 辛うじて着地するが、倒れた馬に衝突し跳ねた荷車が2人の頭上を掠めて道の先に落下し、進路を塞いでしまった。


馭者「マジか……軽さと頑丈さが自慢の逸品がこんな形で裏目に出るとは……」

??「『銃』を使います。今のでボウガンが……」

馭者「この状況じゃ仕方ねぇが、なるべく俺が仕留めるように善処させてもらうぜ。『ジュウ』とかいうのは耳が痛くていけねぇ」


 横倒しになった荷車を背に、馭者はサーベルを、ローブの人物は一丁の『銃』を構える。

 魔物は2人を取り囲み、じりじりと距離を詰めてくる。

 暗闇で距離感が掴めない。

 魔物の目の光と息遣いと、僅かに見える輪郭だけが魔物の居場所を示している。

 心臓が早鐘を打ち、冷や汗が流れ落ちる。

 無意識に、2人の足が後ろに下がる。


 ──ぱきり、と小枝を踏み折る音が響いた。


 それを合図としたように、魔物の群れが一斉に走り出す。

 包囲網が狭まり、迫る魔物の気配に一瞬、背筋が冷たくなる。

 咄嗟に正面の魔物に銃口を向け──直後、魔物達は一斉に跳躍した。


??「なっ」

馭者「いっ!?」


 突然の動きに動揺し、体が硬直する。

 世界がゆっくりに感じられる。

 月明かりすらも遮る闇深い森の中で、魔物の牙が目に入るほど目前に迫り──、



 ──その直後、爆風にも近い強烈な『何か』が魔物達を消し飛ばした。



馭者「……あ、あれ? なんだ? どうなった?」

??「ぁ……え……?」

「騒がしいと思ったら、何だテメエら。こんな所で何してやがる」

「近所…………迷惑……」

「……いやそういう話じゃねえからな?」


馭者「えっと……何だ? もしかして、助けてくれた、のか?」

「質問に質問で返すな阿呆」

馭者「今そこ大事か!?」

「つーかツラが見えん。嬢ちゃん灯り出してくれ」

「ん。『光球魔法』」


  *光の玉が辺りを照らし出した!


馭者「うわ眩しっ!? な、なんだそれ!? 何したんだあんたら!?」

「やっぱ驚くのか。まあ知らなきゃそんなもんだろうな」

??「…………」ぽかーん…

「おい、ボケッとして大丈夫かお前。頭でも打ったか」

??「──はっ! あっ、す、すみません。びっくりしてしまって……」

「んん? なんだお前、女か。おい豆もやし、テメエ男ならきっちり守ってやれよ」


馭者「ちょっと待て豆もやしって俺のことか!?」

「他に誰がいるんだ」

馭者「生まれてこの方初めて言われたぞそんなあだ名!?」

「そうか。よかったな」

馭者「良かねぇよ!! なんなんだアンタ!?」

「人に名前を聞く時はまず自分から名乗るもんだ」

馭者「そ……」

馭者「いやこっちのセリフじゃねえのかそれぇっ!!?!?」


 叫んだ。




.


??「助けていただきありがとうございました」

馭者「ありがとうございました……」ムスッ

「ったく、夜の森が危ねえことくらいわかるだろ。灯りもなしに何やってんだ」

??「すみません……迅速に、兵士に見つからないようにこの先の国から離れる必要があったもので」

「この先のっつーと……ああ、せっせと軍拡しまくって戦場増やしまくってるドアホウの所か」

馭者「間違っちゃいねぇけど言い方がひでぇな」

「他にどんな言い方があるってんだよ」

馭者「いやまぁ……全くもって同意見だから別にいいや」

馭者「けど、悪かったなお客さん。今回は俺の見通しが甘かった」

??「いえ。無理を聞いていただきありがとうございました」

馭者「しっかしどうするかねこれから……かなりのスピードでぶっ飛ばしてきたからもう大分進んじゃいるはずなんだが、馬がやられちまっちゃな……」

??「森を抜けるまであとどのくらいなんですか?」

馭者「馬車でぶっ飛ばしゃまぁ半日から1日……徒歩だと3、4日ってとこか」

??「それは……まずいですね」

馭者「だよなぁ……」


「なんだ、困ってんのかお前ら」

馭者「そりゃなぁ……以前ならこっちの道に魔物が群れで出るなんざまずなかったんだが、どうも今はヤバそうだしなぁ……」

??「……最悪の場合も考えないといけなそうですね」

馭者「……事情はわかってるが、そういうのは勘弁してくれよ。できる限りのことはするからさ……頼むよ」

「つまり、お前らじゃ魔物が群れで来たら対処できねえと、そういう話か」

馭者「正直その通りだな。ついでに言うと、荷車がひっくり返った拍子に水と食料がおじゃんになったのもデカい」

馭者「逃げ足がなくなって、自衛手段が足りなくて、水も飯もない、と。……あれこれ詰んでね?」

??「やっぱり最後の手段を」

馭者「それはダメだっての!」

??「ですが……」

「だったら一緒に行くか?」

「…………」コクコク

馭者「あ? ……いや、いやいや。確かに助けてもらったくらいだしあんたらが強いっぽいのはわかるが、別にそれで解決はしねぇだろ」

「大……丈……夫。お馬さん……治した……から」


??「……えっ?」

馭者「……はい?」

馬「ブルルルル……!」

馭者「」

「外傷は酷かったが骨に異常はなかったみてえだし、嬢ちゃんが治しゃこんなもんだ。丈夫なヤツだな。つかちゃんと診てやれよ、飼い主だろテメエ」

馭者「」

??「あの……治したって、どうやって……?」

「そこが説明しにくくてなあ……まあ、なんだ。治したんだよ」

??「は、はぁ……」

馭者「────」

馭者「……お前ら、ほんとに何者なんだ?」

「別に大したもんじゃねえよ」


.




農家「通りすがりの農家だ」

女魔法使い「まほーつかい……です」



馭者「のぅ……」

??「まほ……」





馭者&??「「…………はい?」」






≪続く≫

全力で待ってた乙

きたか
地味に話を忘れちまったよ

帰ってくるたび読み返させんな面白いんじゃボケ



  ── 2年後。 中央大陸南端 焔鍛領 『商人の街』 ──


「うーん……めぼしい討伐依頼は大体なくなっちゃったかな……」

「ないほうがいいものではあるが、こうなると採集や護衛などの簡単なものしか残らんな」

「その辺りはなるべく駆け出しに回す方針が執られているし、そもそも俺達向きではないだろう」

「前衛3人の脳筋編成ですもんねぇ」

「誰が脳筋だこの駄肉」

「戦闘の邪魔とか言って依頼人蹴り飛ばしたの忘れたんですか三十路まな板」

「私はまだ20代だ!!」

「っていうかボクも前衛扱いなんだね」

「お前の場合はまあ、オールマイティではあるが主要武器が剣だから前衛でいいのではないか?」

「それ言ったらもう前衛とか後衛っていう分け方が意味ない気がする」

「言っておくが普通の前衛クラスは遠距離攻撃なぞできんからな……?」

「白騎士と黒騎士もできるじゃん」

「それを言われるとなんとも返答しづらいのだがな……」


受付「女剣士さん、黒騎士さん、白騎士さん、癒術士さん。お届け物が来てますよー」

女剣士(女勇者)「あ、はーい」

白騎士(武教の姫)「どこからの荷物だ?」

受付「焔鍛の……あら、女総統様からですね」

女剣士「ママから?」

黒騎士(暴れ猿)「……また俺の義肢の改造部品ではあるまいな」

癒術士(女僧侶)「それならさすがに呼び出しするのでは?」

黒騎士「いや、たまに面倒くさがって部品だけ寄越すんだ。しかも使っていないとすぐさまバレる」

白騎士「どこかで監視でもしているのかあの女……」


黒騎士「一応は試作魔動義肢の実用試験データ収集という名目で維持費を持ってもらっているから、こちらとしても逆らえんのだ……」

癒術士「世知辛いですね……」

女剣士「えっと、どれどれ……。あ、黒騎士半分正解。消耗装備の補給だって」

黒騎士「……確かに、いくつかの属性石と潤滑油がだいぶ目減りしていて、まだ障りない量なのでこれから連絡を入れる予定だったんだが」

女剣士「……本気で監視されてない?」

白騎士「まさか今もどこかから見られているんじゃないだろうな」

黒騎士「む、磨き油もあるな。……皮膚に触れるとかゆくて苦手なんだが」

女剣・白騎「「わかる」」

女剣士「でもちゃんと手入れしないと錆びちゃうよ?」

黒騎士「背に腹は代えられんとはこのことか……」


癒術士「それで、今日はどうしましょう」

黒騎士「資金的には余裕があるが、そろそろ拠点を移さないか? 今日明日にでも準備を整えれば数日中には発てるだろう」

白騎士「賛成だな。私は鍛錬でもしていよう」

女剣士「手伝う気がない!?」

白騎士「あのな、お前はいい加減金勘定を自分で出来るようになるべきだと思うぞ」

女剣士「さすが突剣使い、痛い所を突いてくるね」

癒術士「何の関係もないと思うんですけど」

白騎士「ダジャレで誤魔化そうとしてもそうはいかんぞ」

黒騎士「……? ……ああ、剣で突くと痛い所を突くをかけているのか」

女剣士「ごめんなさい解説しないで下さいお願いします」

白騎士「天然でえげつないな……」

癒術士「参考にしましょう」

女剣士「やめて下さい死んでしまいます」


白騎士「では、昼の鐘が鳴ったら一度戻る。その後また暮れの鐘まで鍛錬に行くから、用が出来たら昼に教えてくれ」

黒騎士「わかった。気を付けて行けよ」

白騎士「ああ」

  タッタッタッタッタッタッ……

女剣士「この街で鍛錬って言うと、どこだろ。外かな?」

黒騎士「いや、大方駐在兵所に殴り込んで稽古の名目で相手をさせるつもりだろう。こちらは騎士の位を持っているから言い訳は立つしな」

癒術士「……夕暮れ辺りになったら立ち寄りましょうか。治しに」

女剣士「わりと自由人だよねぇ……」

黒騎士「自由人で片付けていいか疑問があるがな……さて、俺達も行くか。値切り交渉と商品選びは頼むぞ」

女剣士「それはもう癒術士ちゃんのおっぱいを揉ませればイチコロだよ」

癒術士「揉ませませんよ!? 何言ってんですか!!」

黒騎士「……曲がりなりにも雄の目の前でそういう会話を拡げんでくれ」


女剣士「そういえば黒騎士さ、兜とか鎧とか取らないの?」

黒騎士「あのな、これでも俺は魔物なんだぞ? 街中で無暗に素の姿を晒せるか」

女剣士「そぉ? 最近はけっこー人間に見た目似てきたじゃん。それにほらアレとか」


リザードマン「オヤジ、これもうちょい安くできねぇの?」

青果店主「ダメダメ、わざわざ山の上の村から仕入れてきた極上品なんだから。これ以上はまからんよ」

リザードマン「つっても1つで銀貨20枚は高いって! ちゃんと売れてんのかよ」

青果店主「……売れてねーけども」

リザードマン「駄目じゃねーか! だからノリと勢いだけで仕入れするのやめろっつってんのに!」

青果店主「こんなに売れねーとは思わなかったんだよクソッ! 仕方ねぇ、今回は仕入れ値ギリギリで捌いて次こそぼったくってやる!!」

リザードマン「仮にも商人が堂々とぼったくる宣言すんなよ! てかぼったくり値なのかよこれ!」

青果店主「そりゃまあ、仕入れ1つ辺り銀貨2枚だからな」

リザードマン「 限 度 を 知 れ や ! ! 」


女剣士「人と魔物で仲良さそうじゃん」

癒術士「めっちゃ口喧嘩してますけど」


黒騎士「……まあ、今外しても荷物になるだけだから、次から検討しよう」
  スタスタスタ……

女剣士「…………逃げた」

癒術士「逃げましたね」

女剣士「何が嫌なのかなぁ」

癒術士「熟練の戦士! みたいな感じで結構見た目は格好いいと思うんですが」

女剣士「老け顔だけど」

癒術士「老け顔ですけど」

女剣士「あれで年下なのがびっくりだよね」

癒術士「一番年上っぽく見えるんですけどね」

女剣・癒術「「…………あ、それか」」ぽんっ

黒騎士(察されるとそれはそれで哀しいものがあるな……)




覇王「打ち込みやめーっ! 休め!」

兵士達「「「はっ!」」」

国王「いよっす覇王、精が出るな」

覇王「国王殿。そろそろその覇王というのは……」

国王「いいじゃねーか別に。位はともかく号は覇王でも間違っちゃいねぇんだから」

覇王「しかし紛らわしいというかなんというか……」

国王「つか今更呼び方変えんのめんどいので却下」

覇王「そっち本音ですよねそれ」

国王「うん」

覇王(うんって言っちゃったよこの人……)

国王「それよか今日の号外見たか? まーた俺らの娘どもが大物獲ったらしいぜ」

覇王「今度は何です?」

国王「ほれここ。『焔鍛領と中央領を繋ぐ洞窟を占拠した三つ首竜を冒険者が討伐。【虹色の風】、またもお手柄!』」


覇王「三つ首竜か……あれには苦労しましたね……」

国王「三つの首がそれぞれ別属性のブレスを複数種類ぶっ放してきたからな……ブレスの途切れた所を狙ってようやく仕留めたもんなぁ」

覇王「そうか、あれを倒せるようになったんですね」

国王「……嬉しそうだな」

覇王「まあ、はい。正直に言えば」

国王「そりゃそうだよなぁ、義理でも愛娘で愛弟子が活躍すりゃ、そりゃ喜ばしいこったな」

国王「で、お前らいつ結婚するんだ?」

覇王「ブフゥー────────ッ!!!!」ブフォッ!!

国王「おお、虹が見えた」

覇王「っ、い、いきなり何を言い出すんですかアンタは!」

国王「いやー、だって当時の歳の差が埋まって今じゃお前のが若干年下じゃん? んであの超絶ファザコンっぷりじゃん? そんでめっちゃ美人じゃん? その上血のつながりはないわけじゃん?」

国王「俺なら迷いなく行くね!!」ぐっ

覇王「行くねじゃねーよアンタ嫁いんだろが!! というか私はそういう風には考えたことないです!!」

国王「はーん? あいつがここに立ち寄るたびにずーっと二人でひっついてるくせにぃ?」

覇王「べべべ別にひっついとりゃせんわ!? かっか家族で一緒に過ごしてるだけですが何か問題でも!?」


国王「……いや、つついといてなんだけどうろたえすぎじゃね?」

覇王「急に一人で素に返らないでいただけませんかね!?」



女総統(錬金術師)「判を押して……はい、本日の政務終了っと」

副司令「相変わらずお早いですね……まだお昼まで時間があるのに」

女総統「本職に時間を取りたいからね。ところで、あの子の様子は?」

副司令「……お医者様の話では、まだ一週間は安静にしているようにと」

女総統「そうかい。済まないね、君も心配だろうにこちらに付き合わせて」

副司令「いえ。ですがあの……閣下は総司令のお体のこと、ご存知でいらしたのですか?」

女総統「一応、先代から聞いてはいたよ。なんというか、無理をするのは父親譲りなんだよね、あの子は」


女総統「しかし、仮にも【勇者】が一週間も不在となると前線が心配だね。西方皇帝にも伝えておくべきかな、これは」

女総統「こういう時こそ召喚師がいたらと思うけど、ないものねだりはしても仕方ないか」

副司令「前線には獅子王様と不死王様、それに氷銀王様もいらっしゃいますから、しばらくは心配するな、とは言われていますが……」

女総統「旧魔王軍の将軍と参謀と幹部、随分豪華な面子だね。けど、人間側の指揮官はどうしてるんだい?」

副司令「代表は聖騎士長さんが。西方や北岳の兵はまだしも、中央の兵は私達との共同戦線に未だ反発が根強いようですけど」

女総統「ふぅん……なるほど、確かに根が深そうだ」ジ…

副司令「……? なんですか?」

女総統「いやなんでも。それにしても、もう2年か。彼らも流石に粘るね」

副司令「それは……当然だと思います。だって」

副司令「今の魔王は……その、私達にとっては、神様よりも大切な……」

副司令「……お母さん、みたいなもの、ですから」




槍士「ふと思ったんだけど、俺らから『親衛』取ったら個性すげぇ薄いよな」

楯士「2年経ってんのにものすげぇ今更だな!? いやまあ確かにこのどこにでも居そうな感じは物悲しさすらあるが」

槍士「正直称号持ちが羨ましい……中央抜けたから騎士の位もないし」

楯士「そりゃまあ、アイツと一緒に行く以上は中央とのつながりはちょっとなぁ」

槍士「いっそ竜狙いで狩りまくって『殺竜槍士』とか字名もらえねえかな」

楯士「字面が物騒すぎねえか……というかその流れだと俺が『殺竜楯士』になってなんか意味不明なんだが」

槍士「盾で殴り殺すのか……」

楯士「しねーよ! つかできねーよ!!」

??「術士が言われている『ロリコン術士』は違うのか?」

楯士「いやそれは大分違うだろ……てかお帰り影人。買い物済んだか?」


影人「ああ。この街の者達は私の目を見ても驚かないので手早く済んだ」

槍士「白目が真っ黒だもんなお前。黒目は金色だけど」

楯士「そういや訊かなかったけどなんでそんな目になったんだ? 魔王の影として出てきた時までは普通だったのに」

影人「何故、と問われても説明できないのだが……恐らく無理に大魔王との融合を拒んだ影響なのだとは思う」

槍士「よくわかんねぇな……ま、特に問題ねぇならいいや。カッコいいし」

楯士「お前はまたそういう……」

槍士「いいだろー? 俺ら【常闇の月】の由来にもなってんだから」

楯士「そのこっ恥ずかしい名前なんとかならなかったのかよ……」

槍士「冒険者登録するのにまずギルド名が要るんだから仕方ねーべや」

楯士「問題点はそこじゃねーよ」


楯士「てか影人、術士は? 一緒じゃなかったのか?」

影人「それが、帰りの道中はぐれてしまってな。先に戻っているかと思ったのだが……」


<キャーッ!! 変態よーっ!!

<変態ではない! ロリコンだ!!


槍士「…………」

楯士「…………」

影人「…………」

槍士「よし、出発だ。すぐに発とう。ダッシュで」

楯士「とりあえず砂漠を東に抜けて中央大陸までだな。ダッシュで」

影人「いい加減私達も慣れてきたな……ともあれ行くか。ダッシュで」




 亡国、武教の地より始まった一連の出来事から、2年。

 長いようで短く、短いようで長い時間が流れ、世の有様は少しずつ、しかし劇的に変化していた。

 とりわけ人の出入りの激しい大きな街などでは人間と魔物とが入り乱れ、今では当たり前のように共に暮らしている。

 勿論未だに関係の悪い地域も存在するが、かつての様相を思えば信じ難い光景だった。


 2年前まで3つに分かれていた世界は、今では文字通り1つになった。

 世界は広くなった。結果として、人間と魔物などという単純な切り分けが出来なくなるほど多種多様な種族が、文化が同じ世界に同居することとなった。

 そられが全て良い方向に作用したとは言えないが、多くにおいて世界は昔より、前向きに変化している。

 単純に世界を統合するだけでは起こり得ない、奇跡のような光景がこの時代にはあった。



女剣士「あ、ごめん今日鍛冶屋に寄らなきゃ。ちょっと行ってきていい?」

黒騎士「かまわないぞ。一昨日預けていた剣の受け取りか?」

女剣士「うん。不満があったら即日直すから早いうちに来てくれって言われてたんだった。先に買い物進めてて、後で合流するから!」

癒術士「いってらっしゃい」


黒騎士「女剣士は物持ちが良いな。もうずっと同じ剣を使っているだろうに」

癒術士「おじ様に選んでいただいた剣らしくて、一番使いやすいみたいですよ」

黒騎士「なるほど、農家の見立てか」

癒術士「……。農家の見立てって、言葉だけ聞くと結構意味不明ですよね」

黒騎士「……世界共通で【農家】が【鬼神】を指す言葉と化しているというのも、冷静に考えると異様だな」

癒術士「【七勇士】の人達に関してツッコミ入れ始めると、キリがないですよね……」

黒騎士「逸話がいくらなんでも多すぎるからな……あの人達は……」

癒術士「七勇士だけならまだしも、実際はそこに加えて覇王さんや海ぞ──」


  カーンカーンカーンカーンカーンカーン!!!!

.


癒術士「…………」

黒騎士「警鐘だな」

癒術士「予定、一日先延ばしになりますかね」

黒騎士「一日で済むことならいいんだがな。癒術士は駐在兵所に寄って、白騎士がいれば同行してくれ。俺は女剣士と行く」

癒術士「わかりました。一応、敏捷化の魔法だけかけておきますね」

黒騎士「助かる。俺は鈍足だからな」

癒術士「では、現場で落ち合いましょう」


  *黒騎士の素早さが大きく上がった!
  *癒術士の素早さが大きく上がった!

  *癒術士は矢の如く駆け出した!


黒騎士「……やはり、まだまだ気安く鎧は外せんな」




 多様な種族が共生する、奇跡のような時代。

 それでも、未だ平和な世界には程遠い、そんな時代。



女剣士「ごめんお待たせ! 癒術士ちゃんは?」

黒騎士「白騎士との合流を図って駐在兵所だ。合流できなくてもそれぞれ現場に行くだろう」

女剣士「そっか、じゃあボク達も急がなきゃね」

黒騎士「剣の具合は良いのか?」

女剣士「ばっちり! やっぱここの鍛冶屋さんは良い腕してるね!」

黒騎士「ならば憂いはないな。行くか」

女剣士「おーっ!」



 そんな世界で、彼女達は生きている。



.

また1から読み返したぜ

よく分からんがTPP後の未来的な

気が済むまで書いたのでとりあえず次の投下でひと区切り
その後次の話にいきます。さてどれを書くか

の前に投下だ



  ──時は戻り、 【三界合一】より2週間後、
      中央大陸東方、【東方群島】、とある島にて。


姫様「騎士……?」

暴れ猿「俺達2人がか……?」

国王「おう。【円卓】で承認ぶん取ってきた。不服か?」

姫様「不服というより、意味が分からん。私はこの2週間ぶらぶらしていただけだぞ」

暴れ猿「俺とて錬金術師に義肢を付けられて、ようやく慣れてきたばかりだ。そもそも魔物であるし……」

国王「まぁ事情は色々あるんだが、まず魔物か人間かってのはこと円卓じゃ関係ないから気にすんな」

暴れ猿「いや、そう言われてもだな」

国王「というか、円卓から騎士の位貰ってるのって基本何かしら問題あるやつらだから、細かいこと考えなくていいぞ」

姫様「それはそれで問題児扱いされてるようで気になるんだが……」

国王「いーんだよ細けぇこたぁ。つか、こうでもしねーとお前らのバックアップができなくなりそうなんだよ」

姫様「?」

暴れ猿「俺達の、というより女勇者の、か?」


国王「そうそう。なんせ馬鹿息子が生きてたもんだからうちの娘は勇者続けらんねーし、僧侶の嬢ちゃんも中央がごたごたしてっから巻き添え食わねーように教会から籍を消さにゃならんし……」

国王「じゃあ南洋王国として王女に支援は? って話になると、そもそも王族かどうかってうちの国じゃあんまり関係ねーから評議会で棄却されるの目に見えてるしなぁ」

姫様「……なんだか知らんが、面倒くさいことに巻き込もうとしてないか?」

国王「うん」

姫様「帰る」

国王「待て待て待て! お前らにも悪い話じゃねーから!」

姫様「……本当だろうな……」じとー…

国王「……地位、土地、資金、マイホーム」

姫様「詳しく聞こうか」キリッ

暴れ猿「存外俗っぽいなお前!?」

姫様「この20年、雨風凌ぐのすら……」

暴れ猿「お、おう」

国王「どうやって食いつないできたんだお前……」

姫様「元旅商人の娘を舐めるな」

国王「ほんと相変わらず図太いな。安心したわ」


暴れ猿「昔からこんななのか……」

国王「年齢一桁で覇王に一目惚れして付きまとって出会って3日目で夜這いして既成事実作ろうとしたやつだぞ、こいつ」

暴れ猿「」

姫様「ふふふ……しかし今や歳の差は覆った! 私も大人になった! 次は必ず押し倒してみせる!!」

暴れ猿「でかい声でとんでもないことを口走るな!!」

国王「覇王を生け贄に捧げ、白騎士を召還!!」

暴れ猿「意味が分からん!!」

国王「白騎士 イズ チビ助」

姫様「誰がチビ助だ誰が。というか何故白騎士」

国王「鎧が白いやん?」

姫様「なるほど」

暴れ猿「納得するのか!?」

国王「で、お前は黒騎士」

暴れ猿「……義肢が黒いからか」

国王「そうだよ?」


暴れ猿「」

姫様「鎧が金色だったら?」

国王「金騎士」

姫様「鎧が白くて肌が黒かったら?」

国王「白黒騎士」

暴れ猿「雑だ……何もかも雑だこいつ……」

国王「ネーミングなんてこんなもんだろ」

姫様「いやいや、このおっさんのセンスは飛び抜けて酷いからな。本気にするなよ」

暴れ猿「……いいよもう、黒騎士で」ずーん…

国王「あ、ちなみにお前がもし騎士を断った場合この額が義肢の代金として請求されます」ぴらっ

暴れ猿「何? ──なんだこの桁数!?」

姫様「……豪邸が3つは建つな」

国王「踏み倒そうとしても無理だぞ。魔王からは逃げられない」

暴れ猿「仮にも自分の嫁を魔王と呼ぶなよ……」

国王「……当時の俺を知ってる奴は、時折俺をこう呼ぶんだぜ……」


暴れ猿「……?」

国王「敗北した覇王」

暴れ猿「……」

暴れ猿「……!?」



女僧侶「お待たせしました」

女勇者「んー、ほはえいー」もぐもぐ

女僧侶「……飲み込んでから喋りましょうよ」

女勇者「ん、んくっ。ふいぃー、いやーおじさんの国だけあって食べ物おいしいよねーここ」

女僧侶「今度は何食べてんですか一体……」

女勇者「えーっとなんだっけ。タコヤキって言ったかな、ほいこれ」

女僧侶「……丸いですね。あ、でもいい匂いが」

女勇者「食べる?」

女僧侶「食べます」

女勇者「即答ときた」


女僧侶「なんでしょう……香ばしいような、甘いような……あむ」ぱくっ

女勇者「あっ」

女僧侶「──っ#$%&@*¥!?!!?」

女勇者「……熱いよ?」

女僧侶「もっふぉひゃやふふぃっへふははい!!」ぷるぷるぷる…


女僧侶「まったくもう……」

女勇者「んー、うまうま♪」

女僧侶「どんだけ買ってんですか……」

女勇者「お昼まだだったからねー。他の買い物も終わったし」

女勇者「あ、そだ。僧侶ちゃんのほうは?」

女僧侶「無事に貰えましたよ。これ、「『治癒魔法技術使用資格証章』です」

女勇者「おー、じゃあこれで僧侶ちゃんも晴れて【癒術士】なわけだー。……勝手に名乗っちゃダメってめんどくさいね」

女僧侶「それはまぁ……」

女僧侶「そういえば、そういうそっちは通り名どうするんですか?」


女勇者「うーん、ちょっと悩ましいんだよねぇ」

女僧侶「はぁ」

女勇者「……プリンセスソードガールとかどう?」

女僧侶「馬鹿なんですか?」

女勇者「なんだとーっ!」

女僧侶「身分隠せって言われてんのにプリンセスとか自分で名乗ってどうすんですか」

 ※そういう問題ではない。

女勇者「それもそっか」

 ※問題点はそこじゃない。

女勇者「じゃ女魔法剣士とか」

女僧侶「長くないですか?」

女勇者「縮めて魔剣士!」

女僧侶「……なんかイメージ合いませんね」

女勇者「……確かに」

女勇・女僧「「うーん……」」


女僧侶「……もう普通に【女剣士】でよくないですか? おじ様もシンプルに【農家】で通ってたわけですし」

女勇者「わかりやすいからそれでいっかー」

女僧侶「で、女剣士ちゃん」

女勇者「…………」

女僧侶「あなたのことですってば」

女勇者「あっ、そうか」

女僧侶「……慣れるまでちょっと呼び合いましょうか」

女勇者「……そだね、えーっと、ゆじゅちゅしちゃん」

女僧侶「…………」

女勇者「…………」

女僧侶「慣れましょう」

女勇者「はい」





.




 記憶に残る最も古い記憶は、哀しげな眼差しと、暗く冷たい闇。

 そして、その次に覚えているのは、仄かな灯りと、無垢な瞳を向ける、少年の姿。

 
「なんだおまえ? ヒトでもマモノでもないよな……“ちれい”かなんかか?」

「こんなとこじゃつまんないだろ。いっしょにいこーぜ!」


 そう言いながら伸ばされた手が、私を外へと連れ出してくれたことを、覚えている。



 私の姿は、少年以外には見えてはいないようだった。

 私は少年の後に連れられ、色んなものを知っていった。

 人というもの。魔物というもの。国というもの。世界というもの。

 草木の名前や、花の匂い、陽射しの温かさ、水の冷たさ。

 人と人との関わり。人と魔物との確執。

 生きるということ。死ぬということ。

 生かすということ。そして、死なせるということ。


 そうして過ごすうちに、私は私を暗闇から連れ出してくれた彼に、何か返せないかと考えるようになった。

 彼は常々人に囲まれるような人物であったが、心を許せる友人と呼べる存在は、とても少ないようだった。

 そんな彼の語る夢を知っているのは、その友人達と、私くらいのものだった。

 ならば、いずれはその夢を手伝えるような、そんな存在になれるだろうか。

 言うなればそれが、私自身の夢となった。


 しかしその夢は、予想しえなかった形で断たれることになる。



 少年が青年と呼べる年頃になった頃、彼は時折、倒れるようになった。

 酷く苦しそうに胸を押さえ、時折、血を吐いているようだった。

 そのことをしかし、彼は誰にも見せることなく、

 誰も──あるいは誰かは気付いていたのかもしれないが──知られることもなく、


「……なぁ、もしも、このまま…………」



 ──その一ヶ月後、彼は私だけに看取られて、死んでいった。

【人妻出会い】女性の浮気率は男性よりもはるかに上回ります。
【人妻出会い】浮気,不倫掲示板。人妻出会い系の性事情!
人妻出会い系サイト セフレ不倫若妻【人妻セフレ掲示板】
【人妻出会い】スピード人妻探し! 人妻と一刻も早くセックスする
逆援助交際掲示板で逆サポ出会い http://aeruyo.2-d.jp/zds12/00/
熟女出会い http://aeruyo.2-d.jp/zds07/0001/
人妻出会い http://aeruyo.2-d.jp/zds06/0001/
割り切り http://aeruyo.2-d.jp/sefuredeai/0015/
無料で主婦と不倫できるサイト!!【人妻セフレ掲示板】 http://aeruyo.2-d.jp/sefuredeai/0014/
【人妻出会い】出会いを求めている人妻は年々数を増しております。
http://aeruyo.2-d.jp/zds07/0001/
【人妻出会い】セックスパートナーを探しているエッチな人妻
http://galscom.eek.jp/aeruyo/zds05/0001/
人妻はヤリやすいので割り切りエッチがほとんど
http://aeruyo.2-d.jp/zds06/0001/
【人妻出会い】出会い確実!人妻専門無料出会い系サイト
http://aeruyo.2-d.jp/zds15/00/
人妻セフレ掲示板。人妻をセフレにしたい人にオススメ!不倫願望にあふれる人妻掲示板

【人妻出会い】出会い系で”人妻”いうのは最もセックスしやすい http://hisasi.sakura.ne.jp/aeruyo/adaruto/deai03/lovelove06/05/
人妻,熟女,若妻,新妻,浮気,不倫【人妻出会い】
【人妻出会い】旦那じゃ満足できない人妻との情事。
人妻・主婦・奥様・ママの投稿掲示板です【人妻出会い】
【人妻出会い】熟女人妻とセフレ・割り切り出会い


 もしも自分が死んだ時には、自分の全部を私に委ねると。

 彼は私にそう告げて、まるで眠りに落ちるように、静かに、安らかに、死んでしまった。



影人「私が彼と成り代わったのはそれからだ。あまりうまくできてはいなかったと思うし、現に鬼神にはすぐ見破られたのだが……」

楯士「……マジでか」

槍士「ちょうど俺らが騎士団に入ってすぐの頃か……」

楯士「……あぁー……、なんだってこう……はぁあぁぁ…………」


 言ってしまえば、運が悪かったのだ。

 最も他人を必要とした時に、誰も傍にいる余裕がなかった。

 近くにいたのは、近くに居られたのは、私だけしかいなかった。


影人「私に彼を救う力があれば、こうはならなかったはずなんだ」

影人「大魔王の魂の一部でありながら、そのことを忘れ、何の力も持たず、ただ看取るしかできなかった」

影人「……もし、もっと早く私が自分の正体に気付いていたなら…………」


術士「別に大して変わんねー気がすんだけどDoよ?」

楯士「いや「どぅーよ?」って言われても」

槍士「まぁそうさなぁ、変わる変わらないはともかく、今更過ぎた話だしなぁ」

影人「それは、そうだが……」

術士「というかむしろあれだよな」

槍士「あん?」

術士「今まで気付かなかった俺らこそどうなん?」

楯士「……それを言うなよ」ずーん…

槍士「一番へこむとこだわなそれ……」ずーん…

影人「あっいや、それは、あの……なんだ、えっと」おろおろ

術士「まぁそれはどうでもいいとして」

槍楯影「「「っ!?」」」がびーん

術士「要するに影人も俺らの同志ってことなんじゃん?」

影人「えっ?」

槍士「あ? あー」あー…


楯士「そう言われると……確かにそうか」

槍士「元々あいつの手助けするつもりで騎士団入ったわけだしな」

術士「ってことは俺らが今やることはだ」がしっ

影人「……? 何故耳を掴む?」

術士「この水臭い大馬鹿野郎の大間抜けにお仕置きすることだと思うんだよね俺ぁ」

 ぐいいいいい~~っ

影人「いだだだだだだだだだだ!!?!?」

槍士「なるほど」キュピーン

楯士「それは確かに」キュピーン

影人「ぁだだあちょまっやっとめっ!!?」

槍士「くすぐり地獄の刑じゃーーーー!!!!」

楯士「電気按摩の刑じゃーーーー!!!!」

影人「いぎゃああぁぁあぁあああ!!?!?」



.




西方皇帝「『冒険者登録制度』……なるほど、既に力のある者に手を借りようということか。錬金術師──改め、焔鍛の国大総統代行、【女領主】」

女領主「そういうこと。ならず者も多いが、名のある連中であれば腕は確かだし、軍や騎士団に属するのを嫌って冒険者を目指す若者も少なからずいる」

女領主「からめ手ではあるけれど、有効な手段だ、と思うんだがね」

西方皇帝「さすがは人界の魔王、齢十歳にして錬金術師の号を得ただけはある。この案はすぐに次の円卓で提出しよう」

女領主「感謝するよ。武教の国と双璧を成した当代最強の軍事国家、西方皇国の皇帝が進言すれば中央も北岳の王も黙らせられよう」

西方皇帝「……自分の旦那に頼めばいいんじゃあないのかと思うんだけどな」

女領主「君に話を通しておいた方が早く済むだろう? それに、どうせダーリンや東方天子は賛同するだろうしね」

西方皇帝「それはそうだろう。俺達があんた達にどれだけ借りがあると思ってるんだ」

女領主「よしてくれよ。僕達がそういうつもりで戦ってたわけじゃないのは、君が一番よく知ってるだろう?」

西方皇帝「……」フッ

西方皇帝「ところで、覇王のやつはどうする? もう王ではないし、行き場がないならうちの国で面倒を見るくらいはできるが……」

女領主「それは願ってもないな。どうにも、南洋王国も少々きな臭いことになりそうな気配でね」

西方皇帝「……王子はやはり、国には戻らないのか」

女領主「仕方ないさ。殺されかけて信用できるほうがどうかしてる」


西方皇帝「……すまない」

女領主「謝るなよ。君が悪いわけじゃない。ただ、そういう巡り合わせだっただけさ」

西方皇帝「……どうにも、借りばかり増えている気がするな」

女領主「そう思うなら、もう一つの件もよろしく頼むよ。この世界は──」


 窓の外に目をやる。

 高い壁に囲まれ栄えた西方皇国の街並み。

 その向こうに続く広大な緑の大地。

 どこまでも続く、青い空。


女領主「人だけが生きるには、広すぎる」

西方皇帝「…………」


西方皇帝「あんたが言うと世界を滅ぼす方向に行きそうで怖いんだけど」

女領主「失礼な。思ってもやらないよ?」

西方皇帝「考えはしたのかよ!?」




東方天子「…………」


 東方群島主島にそびえる霊峰。その頂にて。

 統治者、東方天子は、そこに建てられた小さな祠に、手を合わせていた。


東方天子(……兄(あに)様は往かれたようです、巫女様、クラオカミ様)

東方天子(どうか、兄様を御守り下さい……)


 その背後に、2つの影が歩み寄る。


人狼「……いらしてたんですね」

東方天子「ええ。やはり祈るなら、ここが一番いいと思いますから」

東方天子「貴方も、お祈りに?」

人狼「いえ、彼女が……出立前に、会いたいというもので」

東方天子「弓使いさん」

弓使い「…………」ぺこっ


東方天子「お久しぶりですね。ますます狩人様に似てこられた」

弓使い「いえ……」

弓使い「…………」

弓使い「……ここに、お父さんが、昔お世話になった人が、眠ってるって聞いたから」

東方天子「……はい」


 東方天子と入れ替わる形で、弓使いと呼ばれた少女が祠の前に跪く。

 そこから少し離れ、人狼と東方天子は並び立って、言葉を交わす。


東方天子「彼女には不自由な思いをさせました。貴方にも」

人狼「私の事はいいんです。むしろ、この国の隠れ里を教えて下さって、感謝しています」

東方天子「兄様のご友人を、無碍にはできませんよ。こちらこそ、彼女と会って下さり、ありがとうございます」

人狼「……死んだことになっていた、とか」

東方天子「名を改めることだけは拒まれましたから。そうする以外、手立てが思い浮かばなかったのです」

東方天子「兄様にだけはお伝えしようとも考えたのですが、それも駄目だと、叱られました」

人狼「それで自ら森に、ですか」


東方天子「やはり親子なのでしょう。彼女の理念は兄様や奥方によく似ている」

東方天子「しかし、それが危うくもある。私は……本当はもっと、兄様と話をするべきだったのかもしれません」

東方天子「何もできないまま……兄様は、手の届かないところまで行ってしまわれた……」

人狼「…………」

東方天子「……ですが、もう20年前とは違います。私にも、できることがある。そして、貴方にも」

人狼「……ですね」

人狼「私は……初めは、狩人様をお守りすることだけを考えていました」

人狼「命を拾われた。その恩に、報いようと」

人狼「けれど、他にもできることがあった。できることが見付かった。私が、為すべきことが」

東方天子「…………」

東方天子「これから忙しくなりますね。貴方も、私も」

人狼「…………」

人狼「はい」



.


女剣士「へー、それじゃ2人は今日から騎士様なんだ」

黒騎士「様付けはやめてくれ、寒気がする……現状、戦力的には俺が一番頼りにならんと思うんだがな」

白騎士「作り物だろうと腕は腕、脚は脚だろう。慣れだ慣れ」

黒騎士「簡単に言ってくれるな……」

癒術士「船の航路とか調べてきましたよ。ここから最短だと、この島の北の港から中央に向けて船が出ているみたいです」

白騎士「やはり中央経由か……他のルートは?」

癒術士「距離的には5倍くらいになりますけど、南西方面の離島に直接焔鍛の国と交易してる港があるみたいです。ただ、陸も海も今はあまり安全ではないので……」

女剣士「うーん……どっちがマシかって話だよねぇ」

白騎士「中央とはできるだけ関わりたくはないな」

黒騎士「個人的な事情で悪いが、俺も中央には近付かんほうがいいだろう」

癒術士「そうですね。私も今はあまり……」

女剣士「じゃー、南西ルートで決まりだね」

白騎士「道中で酔い止めに使える薬草でも採取していくか……」

黒騎士(買うより先に採るという発想が出てくる辺り闇を感じるな……)

癒術士「ところで少し大事な質問していいですか?」


女剣士「なに?」

癒術士「ええとですね……」


癒術士「この中で野外料理できる人、手を挙げて下さい」


白騎士「ん」挙手

女剣士「……」

癒術士「……」

黒騎士「……」

白騎士「──私だけか!?」ガタッ

黒騎士「丸焼きくらいなら、なんとか……」

女剣士「狩りだけなら、いける、かな……?」

癒術士「おじ様か魔法使いちゃんがやってたので……」

白騎士「……まさかお前ら、野草知識とかも」

女剣士「でんでん(全然)」

癒術士「おじ様が(略」


白騎士「────」

黒騎士「ど、毒のない野草や果実くらいなら俺が嗅ぎ分けられるから、な?」

白騎士「……それ私もできる」

黒騎士「……なんか、すまん」

白騎士「いや、いい……わかった。それは道中指導する。仕方ない、保存食と香辛料と塩を多めに準備しよう」

白騎士「それと人数分プラス予備の毛布と、ロープと水筒、火打石、金属製の鍋も要るな。それから」

女剣士「わーおどんどん決まってく」

癒術士「そういえば、私達ってその辺りのノウハウさっぱりでしたね」

白騎士「他人事みたいに構えてないで頭に叩き込め。万一はぐれたら死ぬぞ、冗談抜きに」

黒騎士「むしろ知識もろくになしによく旅になんぞ出たもんだ……」

女剣士「最初は馬車使ってたし、すぐにおじさんに会っちゃったからねぇ」

白騎士「……あの人は厳しいようで甘いんだよなぁ……」はぁ…

白騎士「とにかく、私が同行する以上はお前らにもひと通りの知識と技術は身に付けてもらうからな。わかったら返事」

黒剣癒「「「はい」」」

白騎士「前途多難だな全く……」



  翌日。


白騎士「よし、全員準備はいいな」

女剣士「しつもーん」

白騎士「なんだ?」

女剣士「あのさ……」

女剣士「……荷物、多くない?」

 *旅の荷物は重くのしかかっている・・・。

白騎士「普通、旅といったらそれなりの荷物が要るものだろう。次の港でどれだけ物が手に入るかもわからんし」

女剣士「いやでもおじさんほとんど手ぶらだった気がするんだけど」

白騎士「あの人を基準にするな馬鹿者。あの人は手ぶらに見えても並列異層空間に荷物を置いているだけだぞ」

癒・黒「「!?」」

癒術士「え、ちょっ、今しれっととんでもない事実こぼしませんでした!?」

黒騎士「並列異層空間と言ったら儀式級禁術クラスでありながら術者が単独でなければ運用できない超々高難易度の魔法だろ!?」

白騎士「……意外と詳しいな」




勇者「曰く、理屈がわかれば認識できる、認識できれば干渉できる、だそうだよ」

キングレオ「……なるほどな。やはり、次元が違うか」

勇者「洒落かい?」

キングレオ「そういうつもりはないが……分断された世界の再統合、元は一つだった世界だったとはいえ、千年も過ぎていれば容易ならざることは明らかだ」

キングレオ「それを、多少の小細工だけで成し遂げた上、当の本人は世界の外側へ出ていくなど」

勇者「まるで神様みたいだよねぇ」

キングレオ「…………お前のこの暴れぶりも、まさに鬼神の如しという具合だがな」


 ──草花が生い茂る草原の上を、数多の骸が覆い隠していた。

 そのほとんどは魔物……魔王軍に属する魔物達を、勇者はまるで羽虫でもはらうかのように、蹂躙していった。

 少なからず被害はあったものの、ここで行われた戦闘は、ほとんど一方的なものに終わった。


勇者「さすがに疲れたけどね。それにしても、今回もハズレかぁ」

キングレオ「少し間を置いたらどうだ。お前からすれば、人間の町がどうなろうと大した問題ではないのだろう」

勇者「そうなんだけどさー、一応勇者やってる以上は動けるだけ動かないとねぇ」


キングレオ「しがらみというやつか」

勇者「そうなのよ。やっぱ早まったかなー」

勇者「でもなー、師匠との約束は約束だしなー」

勇者「……あー、約束した所から早まった感……ごっふぇ!」ゴポッ

キングレオ「おいおい」

勇者「け、っふ。うわ赤。今日はもうダメだこれ」おえっ

副司令「総司令、お迎えに──って吐血してるぅ!? だっだだだ大丈夫ですかっ!?」

勇者「あー、だいじょぶだいじょぶ。いつものやつ……ごふっ」

キングレオ「……ハルピュイア、後始末の指揮は我が引き継ぐから、お前はこれを持って帰れ」ひょい

勇者「物扱いとか手厳しー」だらーん

副司令(猫のように……)

キングレオ「文句を言う余力があるなら養生しろ。お前が倒れては、我も困る」

勇者「だったら持ち方考えてほしいかなぁ」ぷらーん

キングレオ「ほれ」ずいっ

副司令「あ、すみません」


副司令「ちゃんとつかまってて下さいね」

勇者「うん、よろしくー」もみもみ

副司令「って誰が胸を揉めと言いましたかぁっ!!」ぺちーん!

勇者「あふんっ」

キングレオ「……お前も懲りないな」

勇者「目の前に副司令ちゃんのちっぱいがあって揉まない選択肢があるか? いや、ないね!!」

勇者「ぐっふォ!」ごっぱぁ!

副司令「あああっ、総司令!?」

キングレオ「もういっそ足で掴んでぶら下げて飛んだらどうだ?」











.




「──報告します。南方の陽動部隊が勇者らと交戦、全滅したそうです」

「……そうですか。『欠片』の回収は」

「…………」

「わかりました。報告、ありがとうございます」

「申し訳ありません……」

「何を──謝らなければいけないのは、私の方です。
 私の命令のために、既に多くの魔物が命を落としてしまった……」

「それは──」

「大魔王陛下のお命を守るために、あの方の望みを叶えるために……。
 私は、貴方達の命を道具として使っている。そうするしか、できないから……」

「魔王様……」

「……3年。3年の間隠し通せば、私達の勝ちです。けれど、この先どれほど犠牲が出るかわかりません。
 それでも、貴方達は」

「ついていきます。どこまでも。この命は、魔王様のために」

「……ありがとう」
.




女剣士「そういえばさ、魔王とかってどうなるのかな?」

白騎士「随分今更な話をするなお前は。そんなものはお前の父親と勇者に任せておけばいいだろう」

癒術士「投げやりですね。別れ際に邪魔だって言われたの根に持ってるんですか?」

白騎士「悪いか、ほっとけ!」

白騎士「……それに、私がまだ弱いのは事実だ。今まで鍛錬は積んできたつもりだが、まるで動きが見えなかった」

女剣士「あ、ボクもボクも」

黒騎士「俺も同じだ。その上この手足で、どこまであの強さに近付けるか……」

癒術士「そういえば……勇者様、私達にもまだ仕事があるっておっしゃってましたよね」

黒騎士「ああ……確かに」

白騎士「ふむ、なんだったのだろうなあれは」

女剣士「ボクたち特に何も言われてないよねぇ」

白騎士「……まあ、そのうちわかるんじゃないか? 今すぐとは言ってなかったしな」

癒術士「……ほんとに投げやりですね」

女剣士「んーでもボクも同感。今考えてもしょーがないのかも」


癒術士「……そもそも話の発端は貴女でしょうに」

女剣士「いやーでもやっぱムズカシーこと考えるの無理だし」

癒術士「あのですねぇ……」


白騎士「……黒騎士、ちょっと」

黒騎士「?」

白騎士「南洋国王の話は覚えているよな? それと今の話、どう思う?」

黒騎士「ふむ……。おそらくだが」


癒術士「だから貴女はそういうところが……」

女剣士「アーアーキコエナイー」


黒騎士「仕事の半分は、あの二人のお目付け役として」

白騎士「もう半分は?」

黒騎士「女剣士を強くする。あるいは、俺達全員が強くなる、か」

白騎士「なるほど、それは是非もないが……何故、女剣士一人の可能性を考える?」


黒騎士「……勇者の加護の継承の仕組みは知っているか?」

白騎士「確か、南洋王国の神殿にある神体に加護を預けて、次の勇者が決まったら受け取る、だったかな」

白騎士「だから、勇者は常に一人しか──おい、もしや」

黒騎士「ああ。……女剣士は、勇者の加護を受けていない」

黒騎士「その上で、精霊の剣を扱うことができていた。勇者でなければ使えないとされる剣をだ」

白騎士「農家さんも一度使ったことがあったが、使いこなすのは無理だと言っていたな……」

白騎士「なんでも、資格のない者が持ってもただのなまくらに成り下がるらしい。調和の特性も発動しないとか」

白騎士「……とか言いつつ鈍器扱いのそれで無双してたんだが」

黒騎士「いやまあ農家が規格外なのは今に始まったことではないから置いといて……」

白騎士「だとしたら、女剣士は一体──あれ、あいつらどこへ消えた?」

黒騎士「え?」

<いたたたた……もー! ゆじゅちゅしちゃんが説教なんかするから!

<貴女の前方不注意でしょう!? っていうか落ちるなら一人で落ちて下さいよ!

黒騎士「…………」

白騎士「…………」


白騎士「……なあ、黒騎士よ」

黒騎士「……なんだ」

白騎士「…………やっぱ、単に保護者なんじゃないか?」

黒騎士「……………………否定、できないな」




黒騎士「……俺、まだ14歳なんだがな」ぼそっ

白騎士「──はっ!?」





(とりあえず)終わり



え?終わり?

おつおつ!
次の話とはなんじゃらほい

長い冒険が始まりそうな予感

【人妻出会い】女性の浮気率は男性よりもはるかに上回ります。
【人妻出会い】浮気,不倫掲示板。人妻出会い系の性事情!
人妻出会い系サイト セフレ不倫若妻【人妻セフレ掲示板】
【人妻出会い】スピード人妻探し! 人妻と一刻も早くセックスする
逆援助交際掲示板で逆サポ出会い http://aeruyo.2-d.jp/zds12/00/
熟女出会い http://aeruyo.2-d.jp/zds07/0001/
人妻出会い http://aeruyo.2-d.jp/zds06/0001/
割り切り http://aeruyo.2-d.jp/sefuredeai/0015/
無料で主婦と不倫できるサイト!!【人妻セフレ掲示板】 http://aeruyo.2-d.jp/sefuredeai/0014/
【人妻出会い】出会いを求めている人妻は年々数を増しております。
http://aeruyo.2-d.jp/zds07/0001/
【人妻出会い】セックスパートナーを探しているエッチな人妻
http://galscom.eek.jp/aeruyo/zds05/0001/
人妻はヤリやすいので割り切りエッチがほとんど
http://aeruyo.2-d.jp/zds06/0001/
【人妻出会い】出会い確実!人妻専門無料出会い系サイト

次の話というか、今回止めたところから少し時間飛ばして続きから(なるべく巻きで)って感じ の予定
女勇者=女剣士の話になるから農家スレとしては終わりという意味
農家側の話も残ってるけどね……一応ね
いつになるかはわからんけど。

見かけたらよろしく おさらば

おつ
そして誰か登場人物まとめてくれ

>>325
その時にまだこのスレが残ってたら誘導頼む

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom