エレン「ババ抜きに勝てない……」(116)

―――男子寮・就寝前

コニー「……こっちか?」

エレン「……」ムゥ

コニー「……それともこっち?」

エレン「……」ニヤ

コニー「……やっぱりこっちだ!」

エレン「……な!?」

コニー「……よし、そろった、これで俺も抜けた」

ジャン「それじゃあ、明日も水汲み当番はエレンで決まりだな」

エレン「……くそ、なんで勝てないんだ……」


アルミン「うーん、多分エレンはババ抜きに向いてないよ」

エレン「……ババ抜きに向くとか向かないとかないだろ、こんなの運だ!」

ライナー「……いや、さすがに一週間連続でババ抜き最下位なのは運どうこうの話ではないだろう」

エレン「……むう」

マルコ「なんだか、エレンに悪いよ、やっぱり水汲み当番は……」

ジャン「バカ、勝負する前に決めただろう? 恨みっこなしの勝負だって」

コニー「そうそう、こればっかりは弱すぎるのに勝負を挑んだエレンが悪い」

エレン「……俺ってそんなに弱いか?」

ベルトルト「……正直かなりね」

アルミン「エレンはすぐに顔に出ちゃうから、どれがババかがすぐわかっちゃうんだ」

エレン「……」


ライナー「まあ、ポーカーフェイスといわないまでも、もう少し表情を隠す努力をした方がいいぞ」

エレン「そんなこと言ったって……」

マルコ「まあまあ、エレンには身近にいいお手本がいるじゃないか」

エレン「お手本?」

ライナー「……確かにミカサは何考えてるかわからないな」

エレン「ミカサが……? そうなのか?」

ジャン「まあ、お前がミカサを参考にしようがしまいがババ抜きが弱いってことは変わらねえ、この調子で来週の水汲みも頼むぜ」

エレン「……くそ、次こそは絶対に水汲み当番を押し付けてやる!」


―――翌朝・朝食時

アルミン「おはよう、ミカサ」

ミカサ「おはよう、アルミン……エレン?」

エレン「……」ジー

エレン(……確かにライナーの言うとおりミカサの感情はわかりにくいな……)


ミカサ「エレン? どうしたの?」

エレン「……」ジー

ミカサ「……」

エレン「……」ジー

ミカサ「……」

エレン「……」ジー


ミカサ(エレンが私をずっと見つめている……心地いいけど、少し恥ずかしい……)

ミカサ「……そんなに見つめないで」

エレン「顔を伏せるな」

ミカサ「……! ……ごめんなさい」

エレン「……」ジー

ミカサ「……」

エレン(……けど、無表情ってわけでもないよな、時々こんなふうに顔も赤くなるし、……ん、前髪のせいでよく見えないな)

エレン「……ミカサ、前髪どかすぞ」

ミカサ「え? あ……」

ミカサ(エレンに髪をかきあげられた……何度もやられてるけど、やっぱり慣れない……)

アルミン(え、なにこれ? エレンがミカサを落とそうとしてるの? というか外野の目が気にならないのかな、この2人は……)


エレン「……」ジー

ミカサ「……」

ミカサ(これは……間違いなくエレンからのアピール……私に構って欲しいに違いない)

エレン(みんなに言われてミカサを参考にするつもりだったけど、やっぱりちょっと違うな……そもそも目が泳ぎすぎだろ、コイツ、こんな挙動不審だったか?)

アルミン「……ねえ、2人とも……その辺でさ、いいんじゃないかな?」

エレン「え? あ、ああ……飯食おうぜ」

ミカサ「……うん」


エレン(やっぱりミカサじゃダメだな……もっと別のやつを参考にしよう)

ミカサ「……エレン」

エレン「……うん、なんだ?」

ミカサ「……呼んでみただけ」

エレン「はあ?」

ミカサ「……ふふ」

アルミン(ミカサがやさしそうに微笑んでいる……十中八九、さっきのエレンの行動のせいだよね、何であんなことしだしたのか知らないけど……)

エレン「……そうだ、アルミン、ちょっと聞きたいんだけどさ」

アルミン「何?」

エレン「同期生の中で無表情な奴って誰かいるかな?」


アルミン(無表情……これって昨日のことかな? ……あ、まさか、さっきミカサの顔をマジマジ見てたのって昨日ライナーたちが言っていた……)

ミカサ「……どういうこと?」

エレン「ミカサでもいいや、あんまり感情が表に出ない奴って誰か知らないか?」

ミカサ「感情が表に出ない? ……なんでそんな人を探しているの?」

エレン「ポーカーフェイスの参考にしようと思って」

ミカサ「……?」

アルミン「エレン、それじゃあよくわからないよ……ちゃんと説明するとね、男子の間でババ抜きが流行ってるんだ」

ミカサ「ババ抜き……」


アルミン「そう、それでいつもエレンが最下位なんだ……だからそのババ抜きに強くなるために無表情になろうとしているんだよね?」

エレン「ああ、もうこれ以上水汲み当番はやりたくないからな」

ミカサ「水汲み当番?」

アルミン「最下位の人間は水汲み当番を代わらなきゃいけないんだ」

ミカサ「……」

エレン「で、誰かいないか?」

アルミン「そうだね……例えば……」

エレン「例えば?」

アルミン「……あ、いや、なんでもないよ、とくに思いつかないかな」

アルミン(一瞬アニの事を思いついたけど、言わない方がいいよね、なにかあって、とばっちり食らうのは嫌だし)


エレン「アルミンでも思いつかないのか……うーん」

ミカサ「エレン、思うのだけど、そのババ抜き自体に参加しなかったらそもそも水汲みを押し付けられることはないはず」

エレン「嫌だよ、そんなの逃げ出すことじゃないか」

ミカサ「……逃げ出す?」

エレン「そうだ、今まで負け続きなんだ、今さらやめられるか」

ミカサ「……そう、なら頑張って……私も出来る限り協力するから」

エレン「いや、もうミカサはいらない」

ミカサ「……え?」

アルミン(いや、エレン、言い方ってものがあるでしょ!)


エレン「ごちそう様……とりあえず、誰かいないかなあ」ガタッ

アルミン「あ、エレン、待っ……」ガタッ、グイ

ミカサ「……」

アルミン「ミ、ミカサ? 裾を掴まないでほしいんだけど……?」

ミカサ「アルミン……」

アルミン「な、何?」

ミカサ「……これはどういうこと?」

アルミン「は、はは……ど、どういうことなんだろうね……」

―――近接格闘訓練中

エレン「いってえ!」

ライナー「どうした、エレン、今日は動きにキレがないぞ」

エレン「悪い、ちょっと考え事してた」

ライナー「訓練に集中していないとは珍しいな、何か悩みがあるのなら相談に乗るが」

エレン「いや、こればっかりはライナーには聞けないんだ」

ライナー「……そうか、なら仕方ないな、まあとりあえず今は訓練に集中し……」


ドスン!

ミーナ「きゃっ、…………もう、手加減してよ!」

アニ「……加減したら訓練にならないでしょ」


ライナー「……なんだ、今日は珍しいことが続くな、アニが真面目に訓練をするとは」

エレン「アニ……」

エレン(そういえばアニも結構無愛想だよな……いつも怒っている感じだし)


ミーナ「……今度はアニが襲ってくる番よ、ちゃんと手加減してよね」

アニ「はいはい……」


エレン(もしかしたらアニなら参考になるかもしれないな)

ライナー(……エレンがアニのことを熱心に見てる?)


ドスン!

ミーナ「……あイタタタ、もう、手加減してって言ったでしょ!」

アニ「……今のはアンタのさばき方の問題」

ミーナ「うう……恐い顔の人がいじめる」

アニ「……何か言った?」

ミーナ「あ……うそです、ごめんなさい! ……いや、許して……」


エレン「……」

ライナー「……おい、エレン」

エレン「……ん? あ、ああ、スマン」

ライナー「……ふむ、どうやらエレン君は気になる娘がいるせいで訓練に集中できないと見えるな」

エレン「え?」

ライナー「おい、アニ、ミーナ」

アニ「……何?」

ミーナ「痛い、痛い……ご、ごめんなさい、アニ、放して…………」

ライナー「男女合同訓練をやろう、お互いに訓練相手が固定されるのはよくないからな……それとそろそろミーナが限界だから放してやれ」

アニ「……」パッ

ミーナ「……いったー、腕が折れるかと思ったわ」

エレン「大丈夫か?」

ミーナ「あ、エレン、うん大丈夫よ」

ライナー「ミーナ、合同訓練だ」

ミーナ「聞こえてたわ……えーと、ライナーがアニと組んでエレンが私と組めばいいの?」

ライナー「いや、エレンはアニと組むんだ」

アニ「……」

エレン「え?」

ミーナ「ちょ、ちょっと待って、私はエレンと組みたい! 私とライナーの体格差じゃ本当にケガしちゃうかもしれないじゃない!」

ライナー「ほう……いいのか? エレンは加減が下手くそだぞ」

ミーナ「……え?」


ライナー「……エレン、そもそもお前が俺と組んでいる理由はなんだ?」

エレン「それは……ライナーだったら多少無茶してもケガしにくいかなって……」

ミーナ「……私、ライナーと組む」

ライナー「決まりだな、アニ、お前はエレンと組め」

アニ「……別にいいけど」

エレン「よろしくな、アニ」

アニ「……加減しないよ?」

エレン「望むところだ!」

…………

ドス! ドス!

エレン(……相変わらずアニの蹴りはすさまじい……だが、俺だってやられるだけじゃない!)

アニ(……私の蹴りに怯まずツッコんできた)

エレン(よし! 一気に組み伏せてやる!)ガシ

アニ(……!)


ライナー「お、向こうでエレンが極めたみたいだぞ、あれならアニも自力じゃ外せないだろうな」

ミーナ「ちょっと、ライナー……?」

ライナー「なんだミーナ?」


ミーナ「私も一応、今あなたの腕を極めてるつもりなんだけど……」

ライナー「ん? ああ、そうだな、俺じゃなかったら完璧だった」

ミーナ「え? ……きゃあ!?」


アニ(この組み方は……)

エレン(アニがミーナにかけていた関節技……見よう見真似だが極まっているはず)

エレン「……アニ、降参か?」

アニ「……」

エレン「アニ?」

エレン(アニのやつ全然苦しそうじゃない……どころか涼しい顔をしている、もしかしてちゃんと極まってないのか……?)


アニ(……少し緩んだか)

アニ「……甘い」パッ

エレン「……え? うわ!?」

エレン(外された!? ……ヤバい、もう一度……)

アニ「遅い」ガシ

エレン「……!」

エレン(……逆に極められた!?)

アニ「アンタもまだまだね」

エレン「お前……なんで?」

アニ「……あと10秒くらい締め上げてれば降参してた」


エレン「な……でもだって、全然苦しくそうじゃなかった……」

アニ「そう? まあ、私は顔に出ないし」

エレン(やっぱりアニは顔に出ないタイプか……いつも無愛想だしな、ちょうどいいから聞いてみるか……)

エレン「なあ、アニ、ちょっと教えてほしいことがあるんだが」

アニ「なに?」

エレン「どうやったらいつもそんなに怒りっぽくできるんだ?」

アニ「……」

エレン「……アニ? ……イデデデデ、痛い痛い! 降参、降参だから!」

アニ「……」

エレン「……! …………!」


ライナー「声にならない叫びっていうのはああいうのを言うんだろうな」

ミーナ「本当よね……所でライナー?」

ライナー「なんだ?」

ミーナ「私、いつまで締め上げられていればいいのかしら……」

ライナー「ああ、すまないな……痛くなかったか?」

ミーナ「うん、それは大丈夫、……でもライナーに提案されてよかったわ、アニのあんな締め技食らったら気絶しちゃうかもしれなかったし」

ライナー「……まあ、あれはエレン専用のようなものだろうからな、お前がかけられる心配はないだろう」

ミーナ「……え?」

―――訓練終了後

エレン「くそ、本気で折られるかと思った」

アニ「折るつもりだったら極めた時に折ってるよ」

エレン「……」

ライナー(ふむ、お節介を焼いたつもりだったが、逆効果だったか……)

ミーナ「エレン、大丈夫だった? アニと組むといつも痛い思いをするのよね」

エレン「ああ、そうだな、俺も時々組んでいるからわかるよ、特にローキックは地味効く」

ミーナ「そうそう、気が付いたら転ばされてるのよね」

エレン(ミーナはミカサともアニとも違うな、コロコロ表情が変わる、俺と同じで顔に出るタイプなのかも……)


ミーナ「エレン、次は固定砲の整備でしょ? ついでだし一緒に行きましょう?」

エレン「ああ、そうだな」

アニ「……」

ライナー「……」

アニ「ライナー」

ライナー「……なんだ?」

アニ「……私って普段からそんなに怒っているように見える?」

ライナー「ああ」

アニ「……」

―――壁上、固定砲整備中

サムエル「おい、コニー、砲身の中もちゃんと拭けよ」

コニー「拭いたっつの!」

トーマス「コニーは仕事が雑なんだよね」

コニー「そんなことねえよ!」

ミーナ「はいはい、口より手を動かす! いつまで経っても終わらないわよ!」

エレン(……なんだかミーナのやつ、お母さんみたいだな)


サシャ「エレン、そっちの大砲は終わりましたか?」

エレン「うん? ああ、終わったぞ」

サシャ「じゃあこっちの大砲もお願いしますね」

エレン「それはお前の分担だろう」

サシャ「ちょっとくらい手伝ってくれてもいいじゃないですか」

エレン「ミーナ、整備機材を運ぶのを手伝ってくれ」

ミーナ「わかったわ」

サシャ「ひどいです! 無視しないでくださいよ!」

―――整備機材用具室内

エレン「……そういえばミーナってさ」

ミーナ「うん?」

エレン「アニと仲良いよな」

ミーナ「……そうね、まあアニとだけ特別仲が良いってわけじゃないけど」

エレン「アニって、結構無愛想だよな」

ミーナ「エレン、女の子にそんなこと言っちゃダメよ」

エレン「あ、悪い……」

ミーナ「……うーん、でもまあ確かにぶっきら棒なところはあるかな」


エレン「やっぱりそうか、ミーナはさ、アニが普段から何考えているかとかわかるか?」

ミーナ「……」

エレン「ミーナ?」

ミーナ「……さっきからアニのことばっかり聞いてくるのね」

エレン「そうだな」

ミーナ「……」

エレン「ミーナ?」

ミーナ「……エレン、あなたはアニのことが好きなの?」

エレン「え? なんだ急に?」

ミーナ「だってアニの事ばっかり聞いてくるし……」


エレン(……? ミーナのやつ、どうしたんだ、顔を伏せて……)

ミーナ「ねえ、エレン……」

エレン「な、なんだ?」

ミーナ「応えて……アニの事をどう思っているの?」ギュッ

エレン(きゅ、急に何なんだ、いきなり手を握って……し、しかも上目使いだと……)

エレン「な、なんでいきなり、そ、そんなことを聞くんだ?」

ミーナ「……エレン、今まで黙っていたのだけど……」

エレン「……あ、ああ」


ミーナ「実は私ね、あなたのことが……」

エレン「……!」

エレン(……こ、これって、ま、まさか告白ってやつか!?)

ミーナ「……あなたのことが……」

エレン「お、俺のことが……?」

ミーナ「……」

エレン「……ミ、ミーナ?」

ミーナ「……なーんて、冗談よ」

エレン「……へ?」

ミーナ「ドキドキした?」

エレン「あ、ああ……」


エレン(な、なんだ、ウソか……というか、すごかったな、今の……)

エレン「い、いきなり何するんだよ! びっくりしただろ!」

ミーナ「ゴメンゴメン、ちょっとからかいたくなっちゃって……」

エレン「からかうな!」

ミーナ「ゴメンってば……それで、本当になんでアニのことばっかり聞いてきたの? まさか本当に……?」

エレン「違う! ポーカーフェイスの参考にしたかったんだ」

ミーナ「ポーカーフェイス? ……なんで?」

エレン「俺、ババ抜きで弱いんだ、だからそれをなんとかしたくて」

ミーナ(ババ抜き……まあ、確かにエレンってすぐ感情的になるしそういうゲームは苦手そうね)


エレン「俺って顔にすぐ出るらしいからさ」

ミーナ「ああ、それはわかる、さっきもすごい顔してたもの」

エレン「もう、それは忘れてくれ……それで普段から何考えているかわからなそうなやつのことを参考にしようと思って」

ミーナ「……言いたいことはわかるけど、本人の前で言っちゃダメよ、間違いなく蹴られるから」

エレン(もう言っちゃったんだけどな……そうか、それであの時に締め上げられたのか)

ミーナ「……それと、無理に無表情を取り繕わなくてもいいんじゃない?」

エレン「え?」

ミーナ「確かにババ抜きでポーカーフェイスは有効かもしれないわ、でもそれ以上に有効な方法があるわよ」

エレン「なんだ?」


ミーナ「逆の顔をすればいいのよ、つまりジョーカーを引かれそうなときに悔しそうな顔して、それ以外の時はニコニコの顔をする、とか」

エレン「……なるほど、相手をだますのか」

ミーナ「まあそうね、エレンが顔に出やすいことを知っている人が相手だったら間違いなく勝てるわよ」

エレン「……それだ! これで来週こそ水汲み当番からおさらばだ!」

ミーナ「水汲み当番? ……ああ、水汲み当番を賭けてババ抜きをしていたわけね」

エレン「ああ、ありがとう、ミーナ」

ミーナ「それほどでもないわよ……でも、エレン、いきなり演技とかできる?」

エレン「それは……ちょっと不安があるな」

ミーナ「でしょ? ……だから少し練習してみよっか?」


エレン「練習?」

ミーナ「そ、試しに私にちょっとやってみてよ」

エレン「……どんなことを?」

ミーナ「まあ、なんでもいいけど……とにかく私をだませればいいのよ」

ミーナ(こう宣言している時点でだまされるわけないんだけど……)

ミーナ(まあ、エレンに自信をつけさせる意味でだまされたフリくらいしてあげてもいいかな)


エレン(……だます、だますか……それならさっきのお返しだ)

エレン「ミーナ!」

ミーナ「へ? は、はい!」

エレン(確か手を握って……)ギュ

ミーナ「え? ちょ、ちょっと……」

エレン「ミーナ、俺のことが好きか?」

ミーナ「はい!?」

エレン「……好きなのか?」

ミーナ「え、あ、いや、今のは好きだって返事をしたわけじゃないのよ! あ、でも別に嫌いってわけでもなくて……」

エレン「おい落ち着け、ミーナ、今のは……」


ミーナ「あ……わ、わかってるわよ! 演技でしょ、今のは!」

エレン「お、おう……」

ミーナ(……ふう、びっくりした……演技とわかっていてもくるものなのね、これって……)

エレン「でも、ミーナもだませるのなら大丈夫だろ、これでもうジャンたちにバカにされなくて済む!」

ミーナ「……うん、そうね」

エレン「どうしたんだ、ミーナ? すごく疲れた顔をしているけど……」

ミーナ「あなたのせいでしょ、もう……」

―――壁上

コニー「本当かよ?」

サシャ「本当ですって! エレンが、俺のこと好きなんだろうってミーナに聞いてたんです!」

サムエル「信じられないな、だってあのエレンだぞ」

トーマス「ああ、そうだよ、それにそんなことがあったらミカサが黙ってない」

サシャ「でもハッキリこの耳で聞いたんです! しかも手まで握ってました!」

コニー「それ、本当にエレンだったのか? 顔は?」

サシャ「間違いありません! 中々帰ってこないと思って心配になって覗いてみたら……まさかあんなことになっていたなんて……」


サムエル「2人が用具室で密会か……他の奴らならネタにできるんだが、エレンじゃなあ……」

トーマス「下手なこと言うとまずいよね、エレンの保護者がさ……」

サシャ「これ……もしかして、浮気ってやつですかね? 私、浮気現場目撃しちゃったんですかね!?」

コニー「なんで、テンション上がってんだよ」

サシャ「そりゃあ上がりますよ、こんな面白そうなこと……」

ミーナ「……何が面白いの?」

サシャ「へ?」

ミーナ「面白い話って、私も気になるわ」

エレン「……お前らサボってないで整備しろよな」


サムエル「ふ、2人ともいつからそこに?」

エレン「いつからも何もさっき来たばかりだけど」

トーマス「じゃ、じゃあ話しは聞いてなかった……よね?」

ミーナ「だから何の話をしたか聞いたんじゃない、教えて、サシャ」

サシャ「は、は、話? な、何の事ですか?」

ミーナ「……? なんでそんなに焦ってるの?」

エレン(サシャも俺と同じ顔に出るタイプなのか、隠し事とか出来なそうだな)


サシャ「あ、もうこんな時間! 急いで戻りましょう!」

ミーナ「え? まだ時間に余裕あるけど……」

サシャ「さあ、戻らなくちゃ!」

コニー「あ、1人で逃げるんじゃねえよ!」

サムエル「お、俺ももう戻るわ!」

トーマス「置いてかないでくれ!」


ミーナ「……行っちゃった、なにアレ?」

エレン「さあ?」

―――夜・夕食時

エレン「アルミン、今夜こそは負けないと思う」

アルミン「……ババ抜きのこと?」

エレン「ああ、必勝の策を思いついたんだ!」

アルミン「……そうなんだ」

エレン(なんだ? アルミンの反応が薄いな……)

ミカサ「……」

エレン(……それと夕食を食べ始めてからミカサが一言もしゃべってない気がする)


エレン「ミカサ?」

ミカサ「……」

エレン(しゃべってないっていうか俺が無視されてるのか……?)

アルミン(……ごめんよ、エレン)


…………遡ること朝食時…………

ミカサ『……これはどういうこと?』

アルミン『は、はは……ど、どういうことなんだろうね……』


ミカサ『私がエレンから必要とされなくなった理由がわからない』

アルミン『え、えーと……多分、なんだけど、エレンは無表情の人を探していたと思うんだ』

ミカサ『……私は、それに当てはまらなかった?』

アルミン『いや、普通は当てはまるんだけどね、今回に限りちょっと違ったっていうか……』

ミカサ『……意味が分からない』

アルミン『うーん……ミカサ、さっきエレンに顔を見られた時、どうだった?』

ミカサ『……なんだか、胸がザワザワした』

アルミン『そうだよね、傍目から見てミカサが動揺しているのはよくわかったよ』

ミカサ『……』


アルミン『多分、エレンはその姿を見て、感情がすぐに顔に出る人……つまり、探している人じゃないと判断したんじゃないかな』

ミカサ『……動揺しなければよかったの?』

アルミン『まあ、多分の話だけど……』

ミカサ『わかった、今度からエレンの言動に無関心を装う』

アルミン『きょ、極端だね……』

ミカサ『私はエレンのためならばなんでもやる、なんでもできる』

アルミン『う、うん……』


アルミン(……てな事があったんだけど……)


エレン「……おい、ミカサ」

ミカサ「……」

エレン「ミカサ! なんだよ、聞こえてるんだろ?」

ミカサ「……」

アルミン(でもね、ミカサ……無関心と無視は違うんだよ……)

エレン「……なんで、無視するんだ?」

ミカサ「……」

エレン「……もしかして、調子悪いのか?」

ミカサ「……」


アルミン(……なんだか今日に限ってエレンもしつこいな……いつもならミカサの方が放置される場合が多かったのに)

エレン(……ミカサの奴本当に調子悪いみたいだな……なんだよ、せっかく演技の練習相手になってもらおうと思ったのに)

ミカサ(……甘く見てた、エレンに対して無関心に接することがこんなにつらいものだったなんて……)チラ

エレン「……」

ミカサ(……私に無視されてしょげているエレンの方を見ると話しかけそうになってしまう……でもダメ、これは何よりもエレンのためだから……)


エレン「……」

ミカサ「……」

アルミン「……」


サシャ「ホニー、ホニー!」

コニー「誰がホニーだ、飯食いながら来るな!」

サシャ「ゴクン……見てください、あっちのテーブル!」

コニー「ああ、見えてる」

サシャ「なんかやばくないですか?」


コニー「……なんつかーか、重い空気だな」

サシャ「私、あの空気を知ってます!」

コニー「……なんだよ?」

サシャ「修羅場ってやつですよ! きっとミカサにエレンとミーナの浮気が見つかってしまったんです!」

コニー「……マジか」

サシャ「マジですよ! 大マジなんですよ!」


エレン「……」

ミカサ「……」


アルミン「……」

アニ「……なんでここはこんなに静かなの?」

エレン「あ、アニ……どうしたんだ?」

アニ「……ちょっとこの後いい?」

エレン「俺に? 後って?」

アニ「ご飯を食べ終わったら宿舎裏に来て」

エレン「おう、わかった」

ミカサ「……」

これ全部書き溜めてあるの?


アルミン「……」


サシャ「アニ……? 一体何なんですかね?」

コニー「知らねえよ」

サシャ「まさか、三角関係じゃなくて四角関係だったんですか!?」

コニー「エレンがミーナとミカサとアニにってことか? いや、ねーだろ」

サシャ「わかりませんよ、エレンは意外とすけこましかもしれません!」

コニー「……固定砲整備の時もそうだったけどなんでそんなテンション高いんだよ?」


サシャ「いやあ、私の故郷って娯楽らしい娯楽がなくて……ぶっちゃけこういうことしか楽しみがなかったんですよ」

コニー「……まあ、俺のとこも似たようなモノだったけどさ」


エレン「ごちそう様、じゃあなアルミン、先に行ってるぞ」

ミカサ「……」

アルミン「……」

ミカサ「……」

アルミン「……エレン、行ったみたいだよ」

ミカサ「……」ジワ

アルミン「……!」

アルミン(ミカサが目に涙をためている!?)

アルミン「ミ、ミカサ! どうしたの!?」

ミカサ「……エレンに無関心を装うことが……つらすぎて……」

アルミン「う、うん……がんばったね、ミカサ」


ミカサ「……もう限界……」

アルミン(時間にして10分ないくらいだったんだけど、それすらもつらいことだったんだね……)

ミカサ「エレンも……」

アルミン「え?」

ミカサも「エレンもとてもつらそうだった……私が返事をしないばっかりに黙ってしまって……」

アルミン「あ、うん……エレンがつらかったかどうかはさておき、ミカサが返事をしないから黙っちゃったのは事実だね……」

ミカサ「アルミン……」

アルミン「なに……?」


ミカサ「……もうやめていい?」

アルミン「う、うん……大丈夫! もう大丈夫だからね!」

ミカサ「……グスン」


サシャ「コニー、ミカサが泣いてます!」

コニー「ヤベえ、ヤべえよ……これマジのやつだ」

サシャ「ど、どうしましょう……?」

コニー「お、落ち着け、とりあえず、お前はエレンを探すぞ! 事情を聴きだすんだ!」

サシャ「わかりました!」

>>51
書き終わったやつを一気に投稿している

―――宿舎裏

エレン「アニ……? 来たぞ」キョロキョロ

アニ「……エレン」

エレン「お、アニ、……え?」

アニ「……」

エレン「……アニ、その恰好……」

エレン(アニがスカートを履いている……?)

アニ「……何かおかしい?」

エレン「い、いや、おかしいことなんてないけど……」


エレン(……アニは女の子なんだしスカート履くのは当たり前だ……でもさっき食堂にいた時は履いてなかったような)

エレン「……それで、なんか用か?」

アニ「……」


…………遡ること近接格闘訓練終了時…………

アニ『……私って普段からそんなに怒っているように見える?』

ライナー『……ああ』

アニ『……どうすればいい?』


ライナー『……なにがだ?』

アニ『……どうすれば怒っていないように見える?』

ライナー『え? そりゃあ、笑ってみるとか……』

アニ『……こんな感じ?』

ライナー『誰も顔芸をしろとは言っていないが』

ドガ!

アニ『……そこで死んでな』

ライナー『……待て! 俺が悪かった……とりあえず、起こしてくれ』

アニ『……ちっ、腕上げて』


ライナー『ありがとうよ……とりあえずお前に協力する気はあるが、その代りに一つ聞きたいことがある』

アニ『何?』

ライナー『なんでいきなりそんなことを聞いてきた? こう言うのはアレだが、お前らしくない』

アニ『さっきエレンに……』

ライナー『……エレンに?』

アニ『……なんでもない、さっき言ったことは忘れて』

ライナー『……まあ待て、協力してやると言っただろう、……そうだな、もうちょっとおしとやかにしてみる、というのはどうだ?』


アニ『……具体的には?』

ライナー『まずは格好から入ってみろ、スカートを履いてみるだけだいぶ違うはずだ』

アニ『……私、スカート持ってないんだけど』

ライナー『……ミーナから借りろ』


アニ「……」

エレン「……?」

アニ(スカート姿は見せた、その次は……)


ライナー『それと相手を気づかうとかな』

アニ『気づかう……』


ライナー『そうだ、気配りのできる女の子はモテるぞ、クリスタとかがいい例だ』

アニ『……別にモテたいわけじゃない』

ライナー『まあ、そういうな、エレンみたいな単純な奴ならそれでコロッといくかもしれん』

アニ『……なんでそこでアイツの名前が出てくるの?』

ライナー『あくまで一例だ……そうだ、ついでにエレンで試してみればどうだ?』

アニ『……』


アニ「……今日の近接格闘訓練の時だけど、大丈夫だった?」

エレン「……え?」

アニ「割と本気で締めたから」


エレン「大丈夫、だけど……」

アニ「そう……」

エレン「ああ……」

アニ「……」

エレン「……」

エレン(……何この空気)

アニ(……後は……)


ライナー『最後にボディタッチで決まりだな』

アニ『……はあ?』


ライナー『女の子の方から触られると男はくるものなんだよ』

アニ『……そんな話だったっけ?』

ライナー『お前が怒りっぽくないように見える方法だろ? これなら間違いなくおしとやかな女の子に見えるぞ』

アニ『……』

ライナー『それと触るときは柔らかく触るんだ、女性らしくな』


アニ(柔らかく触る……柔らかく……)

エレン(アニがにじり寄ってくる……? しかも両手をつきだしたあの構えは何だ、見たことないぞ)


アニ(柔らかく触る……柔らかく…………柔らかく、どこを触れば?)

エレン(間違いない、間合いを詰めてきてる! ……もしかしてさっきの近接格闘訓練の話はコレの布石だったのか!?)

アニ(アイツに聞いとけばよかった……触るのならやはり手?)

エレン(と、とにかく、距離を取ろう……)

アニ(……エレンが下がってる、ここまで来て逃がさない)

エレン(アニが腰を落とした……そうか、この構えなら知ってるぞ! 確かライナーが飛びかかる時にやっていた……)


アニ(……これ以上は逃げられる、一気に距離を詰める!)

バッ!!

エレン(……タックルとかいうや……)

ガシッ!!

アニ(捕まえた)

エレン(つ、捕まった)

アニ(後は、優しく触るだけ……)

エレン(手を掴まれた!? またあの関節技が来るのか!?)

アニ「……抵抗しないで」

エレン「……で、でも、締め上げるつもりだろ!?」

アニ「そんなことしないよ」

エレン「……え?」

エレン(……手を擦られてる? え、なんだこれ?)

アニ(とりあえず言われたことはやってみた……)


ライナー「面白そうだからと思って後を追ってみれば……何をしているんだアイツは」

ライナー(触る時だけ優しくしても意味ないだろう……というかアイツはあんなポンコツだったか?)

サシャ「あ、ライナー、こんなところで何しているんですか?」


ライナー「サシャ、それにコニーも……」

コニー「ちょうどよかった、エレンを探しているんだけど知らないねえか?」

ライナー「エレンを? ……なんでまた?」

サシャ「修羅場の四角関係ですよ!」

ライナー「はあ?」

コニー「……おい、あれ、アイツ……アニじゃないか? それに男の方は……」

サシャ「あ、エレン!?」


ライナー「ああ、アレか、アレはな……」

サシャ「アニがエレンの手を握っています……コニー、ちょっとミカサを連れてきてください!」

コニー「わ、わかった!」

ライナー「あ、おい待て…………相変わらず走るのだけは速いな、アイツ」

サシャ「まさか本当に四角関係だったとは……これはドロドロの予感です!」

ライナー(ミカサが来るのは予定外だな……惨事になる前に退散するべきか……?)

サシャ「あ、エレンが手を握り返しました!」


ライナー「……なに?」


エレン(ミカサで試そうと思ったが、この際アニでもいいか……)

アニ(……!)

エレン「アニ」

アニ「……な、なに?」


サシャ「な、何かいい雰囲気になってませんか?」


ライナー「あ、ああ……エレンのやつも意外と積極的だったな、これなら世話を焼く必要もなかったか」

サシャ「世話?」

ライナー「ああ、今日の近接格闘訓練の時に熱心にアニの方を見ていたから、アニに気があるのかと思っていたんだが……」

サシャ「え? アニの方から迫ったんじゃなくてエレンの方に気があったんですか?」

ライナー「俺の見立てだとな」

サシャ「……間違いないです、エレンはすけこましですよ!」

ライナー「……なんでお前はそんなに興奮しているんだ?」


エレン(手を握り返したはいいが、どんな嘘をつこう?)

アニ「……」


エレン「……」

アニ「……何?」

エレン「……アニ、お前俺のこと、どう思ってる?」

アニ「……どういう意味?」

エレン(……結局思いつかないなからミーナの時と一緒でいいか)


サシャ「……な、なんかどんどんいい感じなってませんか?」

ライナー「展開が早いな……それだけ思いが本物だったってことか」


サシャ「こ、このまま告白しちゃうんですかね?」

ミカサ「誰が?」

サシャ「誰がって、エレンがですよ……え?」

ミカサ「そう」

ライナー「ミ、ミカサ、いつの間に!?」

ミカサ「今来たばかり、たった今……」

サシャ「……え、えーとミカサ?」


ミカサ「……行ってくる」

ライナー「……お、おう」


エレン「俺は、お前のことが……」

アニ 「……私のことが?」

エレン「……」

アニ「どうしたの?」

エレン「……ミカサ?」

アニ「……」

ミカサ「……」


コニー「はあ、はあ、やっと着いた……」

サシャ「コニー、大丈夫ですか」

コニー「はあ、はあ、……ミカサのやつ、速すぎだ……」

ライナー「ミカサになんて言ったんだ?」

コニー「……何って、はあ、はあ、普通にエレンが浮気してるって言っただけだけど」

ライナー「……随分簡潔に伝えたんだな」


コニー「……ミカサのやつ気が付いたら、目の前から消えてたんだ……はあ、……ふう……まばたきしてなかったんだけどな、俺」

ライナー(……これは血を見るまで終わらんな)


ミカサ「何してるの?」

エレン「ああ、これは……」

アニ「アンタには関係ないでしょ」

ミカサ「関係ある」

エレン「いや、だから……」


アニ「お呼びじゃないからどこか行ってくれない?」

ミカサ「私もアニに用はないからどこかに行ってほしい」

アニ「ああそう、じゃあ行こう、エレン」

エレン「え、あ……」

ミカサ「待った」

アニ「何? 私に用はないでしょう?」

ミカサ「あなたに用はない、私はエレンに用がある、どこかに行くのなら一人で行って」


アニ「……」

ミカサ「……」

エレン(こいつらこんなに仲悪かったっけ?)


アルミン「はあ、はあ……ミカサもコニーも速すぎだよ……」

サシャ「あ、アルミン!」

ライナー「ちょうどいいところに来てくれたな、ちょっと知恵を貸してくれ、あの状況を無血でおさめたい」

アルミン「ごめん……はあ、はあ、ちょっと……はあ、はあ、時間、ちょうだい……」


ライナー「……わかった、ゆっくり休め、最悪俺とコニーとサシャが体を張ってとめる」

コニー・サシャ「え!?」


ミカサ「エレン、アニと何をしていたの?」

エレン「何? 何って……」

エレン(そういえば結局俺ってなんでアニに呼び出されたんだろう?)

エレン「アニ、なんで俺をよんだんだ?」

アニ「……」


ミカサ「アニ、エレンを呼び出して何をするつもりだったの?」

アニ「……別に何も」


サシャ「これは苦しい言い訳ですね、さっき手まで握ってたのに」

ライナー(これは……やはりアニを煽った俺にも責任が回ってくるのか?)

コニー「おい、もう逃げようぜ、こんな所で死にたくねえよ」

サシャ「コニー、腹くくって下さい、私はこの修羅場を楽しむことにしました!」


コニー「バカの開き直りって怖えー……」

アルミン「はあ、はあ……」


ミカサ「……アニ、隠すのはよくない……これは誰よりもあなた自身のためを思って言っている」

アニ「……私としてはアンタがいきなりここに来たことの方が気になるけどね」

ミカサ「はぐらかさないで、聞いているのは私」

アニ「……はぐらかすも何も、そもそもアンタの質問に答える義理がないんだけど」


エレン「おい、2人とも何でさっきからちょっと喧嘩腰なんだよ」

ミカサ「……私は理性的に聞いているつもり」

アニ「そうだね、普通に話し合っているだけさ」

エレン「そうなのか? ならいいけど……」


サシャ「今ので納得しちゃうんですか……」

コニー「……基本的にエレンって空気読めないからな」

ライナー「アルミン、落ち着いたか?」

アルミン「……うん、なんとか……だいたい理解しているつもりだけど、なんでこういう状況になっちゃったの?」


サシャ「エレンがすけこましのせいです!」

アルミン「ごめん、サシャには聞いてないよ」

コニー「……あれ? そういえばなんでこうなったんだっけ?」

アルミン「うん、コニーも黙っていようね、それでライナー……」

ライナー「……なんだ?」

アルミン「ライナーは何か知っているよね、……確か食堂にいた時、アニはスカートをはいてなかったと思うけど」

ライナー「……痴話喧嘩で流血沙汰は俺も勘弁だからな、知っていることを全て話そう」


ミカサ「そもそも話し合いに応じてくれないのは誰?」


アニ「さあ? アンタじゃないの?」

ミカサ「……アニはもっと賢いと思っていた」

アニ「……アンタはもう少し自分を省みた方がいいよ」

ミカサ「……不毛」

アニ「……」

ミカサ「アニ、私の特技を教えてあげる」

アニ「……」

ミカサ「肉を削ぐこと……今なら素手でもできそう」

アニ「……やってみな、アンタの足をへし折ってやるよ」


エレン(……なんかこいつら恐いな)

アルミン「……ストップ! ストーップ! 2人ともいったん落ち着いて!」

エレン「え? アルミン? お前何でここに……」

アルミン「エレンはちょっと静かにしてて……2人の事情はだいたい飲みこめたよ、ミカサ、どうやら誤解だったみたいだ」

ミカサ「誤解……?」

アルミン「そうだよね、ライナー」

ライナー「……ああ」

エレン「あれ? ライナーもいつの間に来てたんだ?」


アニ「……」

ミカサ「……アルミン、どういうこと?」

アルミン「アニはただ、エレンの言った事にショックを受けただけなんだ」

アニ「……!」ギロ

ライナー(口止めはされていない……ということが言い訳として通ることを祈るしかないな)

ミカサ「……続けて」

アルミン「エレン、キミはアニの事を、怒りっぽく見える、とか言わなかった?」

エレン「え? まあ、今日の訓練中に言ったけど……」

アルミン「それだよ!」

エレン「え?」

アルミン「ミカサ、想像してみてよ、エレンにもしそんなことを言われたらどんな気持ちになる?」

ミカサ「……悲しい気持ちになる」

アルミン「でしょ? アニもそうだったんだ、だからエレンを見返そうと思ってここに呼び出したんだよ!」

アニ「……」


アルミン「アニはライナーからおしとやかになる方法を聞いてそれを実践しようとしただけなんだ、だけど、それを見たコニーが勘違いしてミカサに変なふうに伝えてしまったんだよ」

ミカサ「……なるほど」

ミカサ(エレンは私に無視されていてしょげていた……そこへ女の子らしくしたアニに心を動かされかけて、誤って告白しようとしてしまった……)

ミカサ(……つまりエレンの誤ってしようとした告白の原因はそもそも私にあった、ということ……アニを責めるのはお門違い)

アルミン(ミカサの怒気が消えていく、よかった、納得してくれたみたいだ……)

ミカサ「……アニ、どうやら私は勘違いをしていたみたい」


アニ「……」

ミカサ「こうなってしまった責任は私にもあった、あとでエレンには私から言っておく」

エレン「いや、何言ってるんだ、お前」

アニ「……私はもう帰る」

ミカサ「そう」

エレン「ま、待ってくれ、アニ!」

アニ「……」


エレン「その……悪かった、まさかそんなに気にしてたとは知らなくて……」

アニ「……」ジー

エレン(な、何だ? ……もしかして、蹴られるのか!?)

アニ「……」クル、スタスタ…

エレン(行っちまった……一体何だったんだ?)


ライナー「アニ……」

アニ「……明日の近接格闘訓練の時、お礼をするから……」ボソ

ライナー(……明日は全力でサボろう)



ミカサ「エレン……実は私もあなたに謝らなければいけないことがある」

エレン「なんだよ?」

ミカサ「私は……あなたのためだと思って……あなたに無関心を装ってしまった」

エレン「え、なんだそれ?」

ミカサ「……あれは私の本心ではなかった……ごめんなさい」

エレン「あ、ああ……」

アルミン(エレン絶対何の事だかわかってないね……まあいいか、これで全部丸く収まったんだし)


サシャ「いや、見ごたえありましたねえ」

コニー「おう……そういえば、アニのスカート姿なんて初めて見たぜ」

サシャ「……あのスカート、確かミーナが履いてたやつですよ」

コニー「へえ、スカートを貸したってことか、仲良いんだな、あの2人」

サシャ「……」

コニー「どうしたんだ?」

サシャ「……ミーナで思い出したんですけど、結局ミーナとエレンの浮気は解決してませんよね?」

コニー「……ああ、言われてみれば……」

サシャ「これは、まだまだ面白くなりそうですね!」

コニー「……」

―――夜・男子寮

エレン「よし、みんな、ババ抜きだ!」

ジャン「なんだ、また負けに来たのか?」

エレン「今度は負けねえよ!」

ジャン「はは、威勢だけは良いみたいだな」

アルミン「なんでも必勝の策があるらしいよ」

ベルトルト「へえ、それは楽しみだね」

マルコ「……あれ、ライナーどうしたの? テンションが低いようだけど……?」

ライナー「……ちょっと気分が悪い、明日は休むかもしれん」

おわり

後日談

―――朝・井戸前

エレン「クソ、何でこんなことに……」

ミーナ「おはよう、エレン」

エレン「あれ、ミーナ、早いな」

ミーナ「うん、ちょっと今日の男子の水汲み当番が気になってね」

エレン「……見ての通りだ」

ミーナ「あらら……ちなみに何で負けちゃったの?」


エレン「わからない、ちゃんと演技はしたはずなんだけど……」

ミーナ「……うーん、……もしかして演技が完璧じゃなかったのかも」

エレン「……そうなのかな?」

ミーナ「何とも言えないけどね」

エレン「……ミーナ、お願いがあるんだけど……」

ミーナ「いいわよ」

エレン「……って、まだ何も言ってないぞ」

ミーナ「演技の練習でしょ? 付き合ってあげる」


エレン「ミーナ……」

ミーナ「それじゃあ今日から休み時間は私と一緒ね、ビシビシ指導しちゃうから」

エレン「ああ、よろしく頼むよ、ミーナ」

ミーナ「ふふふ」

エレン「……何だかうれしそうだな、練習に付き合わされるのに」

ミーナ「そう?」

エレン「ああ、何でだ?」

ミーナ「うーん……秘密! それじゃあね、エレン!」

エレン「あ、ああ……」

―――昼・格闘訓練時

アニ「……ライナーは?」

エレン「アイツは体調不良で休んでる」

アニ「……逃げたか」

エレン「ライナーがどうかしたのか?」

アニ「……」

エレン「……? なんだよ、ジッと見て」

アニ「……アンタ、組む奴いないのか?」

エレン「ああ、余ってるやつを探してたんだ……アニ、組まないか?」


アニ「いいよ……アンタに聞きたいこともあったし」

エレン「聞きたいこと?」

アニ「昨日の宿舎裏で……私に言いかけていたことの続きさ」

エレン(……ああ、あの演技の続きか、でも今の俺がやってもだませないだろうしな……)

エレン「また、今度、自信がついたら改めて言うよ」

アニ「……」

エレン「どうした?」

アニ「……じゃあ、必ず言いな……待ってるから」

エレン「おう……待っててくれ!」

―――夜・夕食時

エレン「……そういえば、アルミン」

アルミン「何? エレン?」

エレン「昨日のババ抜きなんだけどさ、なんで俺は負けたんだ?」

アルミン「え?」

エレン「負けるはずなかったんだ……何か原因があったのかな?」


アルミン「……多分、エレンは人をだますのに向いてないんだよ」

アルミン(ジョーカーの時に悔しい顔をしてそれ以外の時に笑った顔をする作戦はよかったと思うけど……)

アルミン(でも、ずっとそればっかりやってたから、みんなエレンが笑った顔をしたカードばかり引いたんだよね)

アルミン(……ぶっちゃけコニーにバカにされても文句言えなかったよ、アレは)

ミカサ「エレン、私が練習相手になる」

エレン「え?」

ミカサ「訓練と一緒、ババ抜きも数をこなせば上手くなるはず」


エレン「そうなのか?」

ミカサ「間違いない」

ミカサ(始めからこうしておけばよかった、これならエレンもしょげることはないし……誰かが勘違いすることもない、なによりも、構って欲しいというエレンの思いに応えられる)


アニ「ミーナ、お願いがあるんだけど」

ミーナ「どうしたの?」

アニ「今じゃないんだけど、またスカートを貸して」

ミーナ「いいけど……いい加減、何に使うかぐらい教えてくれてもいいんじゃない?」


アニ「……いつか話す」

ミーナ「……そう」


コニー「なんか平穏だな、本当に修羅場なのか?」

サシャ「……いいえ感じます、これは嵐の前の静けさです、きっと近いうちにかなり大きな嵐が吹き荒れますよ」

コニー「当てにならねえだろ、そんなの」

サシャ「大丈夫です! 私の勘は当たりますよ、主に悪い方に!」

コニー「……今度も血が流れない事を祈るしかないな」

本当におわり

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