兎角「誰なんだよオマエ」モノクマ「黒組コロシアイ修学旅行だよ!!」 (634)

・雑展開
・雑トリック
・雑文章

許してくれ、書きたかったんだ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405252122

「あのぅ……大丈夫ですか?」

…ううっ、眩しい

ただひたすらに青い空と、嫌な気はしない波の音

……………ええと、何故こうなっているのだろうか

「本当に…大丈夫ですか?」

初めて聞いたはずなのに懐かしいような
そんな、声

本当にどうなんだったんだっけ
私は………

ん?ひょっとしてまさかアイツだと思ったか?

それともまさか白黒のアイツだと思った?

残念だったな、そんなワケないだろ

俺はカイバ先生

職業は私立17学園の教師だ。

本日、当学園を代表する優秀な生徒1名を「学校間留学生」として
ミョウジョウ学園に送ることを決定した

「東 兎角  一択」

任務を説明する

内容は勿論暗殺だ

ターゲットはとある事情もちの女子高生

ステージはミョウジョウ学園10年黒組 制服は支給しない

君はこれから転校し黒組内のターゲットを誰よりも早く殺す

ターゲットは1名だがそれ以外の級友は

全員暗殺者だ

「理解したか?」

小中高大学一貫教育のミョウジョウ学園では

10年生が通常の高校1年生にあたる。

1学年は5クラス
赤、白、青、黄、緑

平素「黒組」は存在しないが特別な時期にだけ開講される。

私は東 兎角

東の東(アズマ)と言えばその筋ではそれなりに有名な血筋になる
まぁどうでもいいことだけど。

今日はカイバの奴に呼び出された。

奴は毎回唐突な上、意味の解らない、それでいて意味深なことを言い私を混乱させる

今回もどうやらそのようだ

任務の説明を受ける、それ自体は何の問題もない。

ただ殺すべきを殺すだけ。

任務の説明の後、奴の授業が始まる

カイバ「殺して生きるか、生かして死ぬか、好きな方を選びなさい」

「それとも生かして生きてみるかな?」

「行け」


……………………意味が解らないんだよ、バカ





コロシアイ修学旅行まであと少し

カイバ「メールはしばしば頻繁に送ってね。考査だからサボらないように、評価に関わります」

兎角「……」

(しばしばと頻繁てどっちが多いんだろう。同じ…か…?)

カイバ「はい、それからこれ第1問。よく読んで以下の空欄を埋めなさい」


第1問「世界は□□に満ちている。」

兎角「? ? ?……「呪い」…?」

カイバ「ブーーーーーーーッ違いまーーーーーーーーーす」

カイバ「呪い?気持ち悪いなおまえ」

カイバ「間違った人は正解するまでこの問題をケータイの待ち受けにして下さい!」

カイバ「少しは少ない脳ミソ使って真剣に考えろよバーーーカ」



「ミョウジョウ学園についた」ピロリロリーン

送信できませんでした

ミョウジョウ学園

兎角「ここがミョウジョウ学園か………」

ミョウジョウ学園。流石に一貫校だけあってなのか広く、政界や芸能界の子息やご令嬢なんかも居たりするらしいが

私が用事があるのは25F。その他は無視して素早く向かう

………食堂のカレーは後でチェックしておこう


黒組 教室

兎角「ここか」

ドアを開け、教室へと入る。

どうやら生徒は既に揃っているらしい

兎角「何で全員そろっているんだ……?」

……何故?

何故全員が揃っていることを疑問に思っているのだろう。

スムーズに事が運べていいじゃないか。

イライラする。

担任が来るまでもうしばらくかかるらしい

あれ以来カイバからのメールはない。

あんなにしつこく連絡を寄越してきたクセに

妙な違和感
………イライラする。

その時、酷く不愉快な声が教室に響いた

「ウププ。ミョウジョウ学園へようこそ!!10年黒組の担任モノクマです!!」

「それでは、コロシアイ修学旅行のハジマリハジマリ~~」

視界が歪み―――――暗転

「あのぅ……大丈夫ですか?」

…ううっ、眩しい
ただひたすらに青い空と、嫌な気はしない波の音
……………ええと、何故こうなっているのだろうか

「本当に…大丈夫ですか?」

初めて聞いたはずなのに懐かしいような
そんな、声

本当にどうなんだったんだっけ
私は………

そうだ、ミョウジョウ学園についてそれから気を失って……

ここはどこだ!?

来た覚えは当然ない。連れてこられた覚えも……ない

なら……気を失っている間に……という事か

「目を覚ましたんですね!晴…どうしようかと思いました……みんなは先に行っちゃうし…」

「あ、そうだ!お水飲みますか?晴、とってくるね!」

思考を纏める前にまずコイツを黙らせた方がいいか…

兎角「今は要らない。お前ちょっと黙れ」

「はうっ!そうですよね……目覚めていきなり何もわからないですもんね。晴、反省…」

ハルハル五月蠅いな…
殺気は感じないがコイツは何者?

兎角「――さっきからハルハルうるさいのはお前ってことでいいのか?」

「しまった!自己紹介がまだだもんね。私、一ノ瀬晴って言います!よろしくお願いします!」

兎角「……兎角、東 兎角だ。ちなみに兎角ってのはありえないものって意味だ。よく聞かれるから先に言っておく」

晴「了解です!んー…東さん、兎角ちゃん……うーん…」

晴と名乗る女子は一考した後

晴「じゃあ間をとって兎角さんで!よろしくね!兎角さん!」

――馴れ馴れしいなコイツ……
だが、現状この不不可解な現象について私よりは多少情報がある立場のようだが……
私を油断させるための罠?ミョウジョウ学園の刺客?

念には念を。私は懐に潜ませてあるナイフを手に――――――

兎角「無い!?何でないんだ!!」

晴「どうしたの兎角さん?ひょっとして兎角さんもお財布失くしちゃった?」

何を白々しい………

兎角「私の服から……お前何か取ったか?」

晴「? ? 晴は人の物なんて盗ったりしないよ!」

―――――目を凝らして奴の服を見る

怪しい素振りはしていないし、ナイフを隠した時にできる僅かな膨らみもない
となると、本当にコイツじゃないのか……?

兎角「本当にお前じゃないんだな…?」

晴「うん。晴もお財布失くしちゃって困ってるんだ………他の皆も色々失くしちゃったみたいで」

そうか、他の皆も困っている……か

ん?

兎角「おいちょっと待て。他の皆って誰だ」

晴「黒組の皆だよ!とりあえず手分けして分かることを捜そうってことになってるんだ。晴もみんなも兎角さんみたいに起きたらここに居て…」

―――そういえばコイツは教室に居たな

ということは、私を含めた13人も何らかの手段でここに運ばれたってことなのだろうか

別々に行動しているとはいえ、恐らくお互いにボディーチェックくらいは済ませているだろう

そうでもしないと途端に血の海ということにもなりかねない――私達は暗殺者だからだ

……コイツからは腐った海の臭いがしない。寧ろ普通の磯の臭いがする

海だから当然か

とりあえずこの辺まで
不定期に雑更新します故生暖かい目で見てくださいッス

―――いつまでもここに居たってしょうがない。

とりあえず一つずつ可能性を試していくしかないか・・・・・・・

ナイフは無かったけれどケータイはあるみたいだ。

かなり癪だがカイバに繋がれば助かる可能性は高い

――――手に取りそれをいざ開いてみると

兎角「ケータイじゃ・・・・・・・・・ない?」

私の手にあるのはケータイではなく・・・・・・・・・小型の電子手帳のようなものだった

晴「あ、兎角さんもやっぱり持ってるんだ、ソレ」

兎角「お前も持ってるのか?」

晴「黒組の人はみんな起きたら持ってたんだって!でも変な校則書いてるだけで・・・・・・」

校則?

とりあえず開けて起動してみると・・・・・・

「■■■学園 修学旅行のしおり」

兎角「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

■■■の部分はノイズのようなモヤがかかっており、読むことが出来ない

どうやらこのふざけた出来事は修学旅行というものらしい
――――修学旅行ってこんなものなのか?

しかしそうなるとますますミョウジョウ学園が怪しいな・・・・・・
でもいったい何の為に?

疑問を抱きながらこのたびのルールというものを読み進めていく

兎角「おい一之瀬。これ、お前のもこうなってるのか?」

晴「うん、晴のも一緒だよ。何なんだろう・・・・・・不気味だよね」

この状況にありながら平気な顔をしていた一之瀬の顔が微かに曇る

内容が内容だ・・・・・・正直私も驚いている
これはどう考えても黒組の趣旨に反するものだ

黒組【ジャバウォック島修学旅行のしおり】

ルー その :   で 過度   は 止です   なで 和にほの    らしてく  いね。
  ルその2:お互いを    て仲  生活し、”希 のカ   を集めていきま ょう。
ルールその3:ポイ捨てや自然破壊はいけませんよ。この島の豊かな自然と共存共栄しましょう。
ルールその4:引率の先生が生徒達に直接干渉する事はありません。ただし校則違反があった場合は別です。
ルールその5:生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。
ルールその6:学級裁判で正しいクロを指摘できた場合は、クロだけが処刑されます。
ルールその7:学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、校則違反とみなして残りの生徒は全員処刑されます。
ルールその8:生き残ったクロは特別措置として罪が免除され、島からの帰還が許されます。
ルールその9:3人以上の人間が死体を最初に発見した際に、それを知らせる”死体発見アナウンス”が流れます。
ルールその10:監視カメラやモニターをはじめ、島に設置された物を許可なく破壊する事を禁じます。
ルールその11:この島について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。
ルールその12:黒組以外の人を巻き込んでも構いません。どうせ誰もいないもの。
ルールその13:暗殺もクソもありません。仲良くコロシアイ修学旅行を楽しみましょう
注意:なお、修学旅行のルールは学園長の都合により順次増えていく場合があります。

ルール1~2と思われる部分も要はバグのような状態で読むことが出来ない。
そして12~13・・・・・・何なんだこれは・・・・・・黒組のルールも何も無くなって・・・・・・・・・

――――まただ。
黒組のルールなんてまだ聞いてないじゃないか、なのになぜ私は・・・・・・

疑問を一度置いて見渡した浜辺はとても綺麗だった

はしゃぐ様なタチでもないが、多分綺麗……なはず

兎角「……あれは」

晴「やっぱり兎角さんも気になるよね。晴もずっと気になってたんです」

この大自然の中に明らかな異物。

「監視カメラ」と「謎のモニター」だ

晴「晴達、ひょっとして変態さんに撮られてるんでしょうか!?」

――――何故顔を赤らめてるんだコイツは

兎角「じゃあ何でこんな意味の解らないルール仕組むんだよ、バカ」

晴「……そうですよね、うーんじゃあどうしてだろう?」

兎角「だからわたしに聞くな!」

~~~ッ

…はぁ、コイツの相手は疲れる

………………でも不思議と嫌な感じはしない

―――――って何を言ってるんだ

兎角「とりあえずここに居ても仕方ない」

「行くぞ、晴」

晴「?」

一瞬の間が流れ

晴「!!」パァァァァ

晴「はい!兎角さん!!」

あれ、晴ってわたし……

――まぁいいか

晴「それでは、兎角さん1名ご案内~!」

兎角「引っ付くな暑いから!」

今日はこの辺で
クラスメイト揃うのに時間かかりすぎな気がしなくもないけどお許しを

1番目の島

牧場

兎角「ここは牧場か」

……の割には動物が少なそうだけど

晴「ここには誰かいるかな?」

「んー…うーん…うぬぬぬぬ」

アイツか。何か悩んでいるようだが…

晴「あ、いた!おーい武智さーん!」

武智「おぉ、晴っちー!!おっそーい!」ハイサーイ

晴「兎角さん連れてきたんだぁ」

武智「トカクサン?――あぁ、伸びてたあの子ね」

初対面でムカつく奴だな。否定できないが

武智「あたし武智乙哉!楽しく殺ろーね」

――明らかにこいつは殺人経験者だ。
明るく軽い態度をとっているが真っ当な奴じゃないだろう
私と同じ腐った海の臭いがする

黒幕、ということも考えられるか……?

兎角「兎角、東 兎角だ。兎角と言うのは(ry」

武智「へー、そうなんだ!まぁどうでもいいけど。兎角って変な名前ー」

…お前には言われたくない

晴「そう言えばさっき悩んでたみたいだけどどうしたの?」

武智「なんかねー、変なマスコットみたいなのが来てさー後々動物増やすんだってー」

それがどうかしたっていうんだ

武智「でね、折角だし名前つけよっかなーって」

凄まじくどうでもいいな

お前絶対牛Aと牛B分からないだろ

晴「そっか!確かにそれは悩むね!」

武智「でしょでしょ!?晴っち分かってるーー!」

晴「何の動物が来るんだろう?」

武智「分かんない。とりあえず今居る豚はブタ太、ニワトリはコケ麿に決めたんだけど」

あとは――――――――――ウサギか

武智「この子はウサ江かなー?女の子だし」

!?!?!?!?!?!?

全然センス無いぞコイツ……!!

晴「ダメだよ!ウサギなら兎角さん2号にしなきゃ!女の子なら尚更!」フンフン

―――訂正、武智はまだマシだった

武智「んー、東さんはどう思う?」

兎角「好きにしてくれ……」ハァ

とりあえず牧場を後にした………

ロケットパンチマーケット

ここはスーパーマーケットか、かなりデカいな…

海外っぽい装いだがカレーは置いてあるんだろうか

晴「これならご飯とかシャンプーは大丈夫そうだね」

兎角「そうだな、怪しすぎるがそうこう言ってられないしな。殺すつもりならとっくに殺せていたはずだ」

「無視とか感じ悪~超ムカつくんだけど♡」

――!!殺意を感じる

晴「―あ、ごめんね伊介さん。色々あるから目移りしちゃって……」

兎角「いきなり殺意飛ばしといて感じ悪いのはどっちだか…」

「はぁ?伊介そんなことしてないのに~被害妄想激しいんだ、そのコ」

――間違いなくこいつは暗殺者だ。
目を見れば分かる

晴「二人ともケンカはダメだよ!こんな状況だからこそ仲良くしなきゃ」

伊介「晴に免じて許してあげるけど次はないから♡犬飼伊介、いが3つよろしくね♡」

兎角「東兎角だ。兎角って言うのは(ry」

伊介「それにしてもこのスーパーしょっぼ~い。一番いいシャンプーでシュワルツコフとかないわ~」

ぐちぐちとあの種類しかないだの、あれが欲しいだのと口走っている。
この状況でアレコレ言える図太さにはある意味感心するな

晴「晴は使ってるいち髪あったよ!これ好きなんだー」

伊介「伊介はぁそんな安モン使わないの。晴もイイの使ったげないと髪痛むよー?」

晴「そうだね~う~ん……折角の機会だし今度使ってみるね!」

これが女子トークというものか?

わたしには全然わからん……

「お、ポッキーあるじゃん!ラッキー!」

…屈んでいて気付かなかったが誰か居るようだ

兎角「お前も黒組の生徒か?」

春紀「あ~おまえ砂浜で寝てた奴な、あたし寒河江春紀。よろしくー」

こいつは少し臭いが違うな。
とはいえかなり体格がいいし注意するに越したことはないか……

兎角「東兎角(ry」

春紀「兎角サンよ、何かおススメのお菓子ある?部屋に持って帰るにしてもこんだけあると悩むんだよなー」

兎角「そうだな……カレーせんとか味カレーとか……あ、カールカレー味もなかなかイケる。あとは……」

春紀「ははは………あたし今そっちの気分じゃないし、ソッチ系気になったら聞くよ」

兎角「あぁ、だがやはりカレーはそのままの方が……」ブツクサ

春紀「そーいやよ、何かセンセーとかいうのがさっき来て後で集会するとか言ってたぜ。一応兎角サンにも知らせとくわ」

そう言えば武智もそんなことを言っていたような…

兎角「――それは変なマスコットみたいな奴か?」

春紀「そうそう!兎角サンも見たのか?あれどーやって動いてんだかな。あたしにはさっぱりだわ……」

兎角「いや、武智から聞いただけだ。まだ見てない」

春紀「そっか。一見の価値はあるぜ」

………いったいどんな奴なんだ、そのセンセーってのは

晴「兎角さんいたいた!……春紀さんとも友達になれたんだね!」

春紀「おっす晴ちゃん、兎角サン連れまわしてデートか?」

晴「そ!そ、そんなんじゃないよもー。今島を案内してるんだ」

春紀「んじゃサッサと回った方がいいかもな」

晴「うん!また後でね!」

兎角「―――あ」

……しまった
カレーの確認がまだなのを後悔しつつスーパーを後にした

空港

ここって空港だよな?
それにあそこにあるのって……

飛行機……?

これを使えば帰れるんじゃないか?

「残念だがそれは不可能だ」

晴「そっか……ダメだったんだね」

「機械には多少の心得があるので見てみたが……アレはただのハリボテだ」

ハリボテ…?

「エンジンの類が丸ごと抜き取られていてな………直すも何も元がなければな」

やはりそう簡単に脱出させる気はないみたいだな…
クソッ、何でこんな回りくどいことを……

「そう言えば自己紹介がまだだったな」

香子「神長香子だ。とりあえず黒組の長を務めるのでよろしく」

…長?

香子「委員長や寮長等だな、名目が修学旅行で我々は学生なら当然だ」

兎角「――まぁ、そのなんだ、助かるよ」

晴「神長さんって頼りになるよね!晴もお手伝いします!」

香子「そうしてくれると助かる」

こんな時に学生気分してもな…

香子「黒組として集められた以上そこの者には従わねばならないだろう」

――お堅い奴…、波風立てなければ無害で済みそうだけど

香子「あぁそれとだ、担任の者が後で集会を開くとのことでな。後でホテルにて事前点呼を行う、遅れないようにな」

兎角「ちなみに何時だ?」

香子「分からん。キリのいいところでだそうだ」

―――監視カメラで見張っているから大体わかるってことか

「香子ちゃんや、そっちはどうだったかのう?」

香子「残念ながら全部駄目だ。出るにしても別の手段を考えなければな…」

「やっぱりのう、こっちもじゃったわ。一筋縄ではいかんと言ったところか」

……………

晴「あのー……お取込み中すいませーん」

「おぉすまんすまん。東来とったのか」

コイツに名乗った覚えはないが………

「ん?東のアズマと言えば有名じゃしの。顔ぐらい割れておるよ」

兎角「……そうか、自己紹介する手間が省けて助かった」

涼「うむ、ワシは首藤涼じゃ。よろしくの」

――妙な怪しさを感じる
………が、それは黒組ほぼ全員に共通していることだしな、気にするだけ無駄か

涼「東はもうホテルは見たか?あそこはなかなかハイカラじゃぞ、温泉でもあれば最高だったがのう」フーム

―――――――ハイカラ?

涼「あぁ、今風に言うとナウい、かの?」

――――――――ナウい?

香子「全然今風じゃないぞ……」

涼「そうかい。○○なうって言うからその類かと思うたんじゃが」

わたしもツイッターしてないけどそれくらい分かるだろ…

兎角「……わたし達はホテルに向かう。何か分かったことがあれば教えてくれ」

涼「うむ、任されよ!」ビシッ

「ワシに有益な情報以外はの」ボソッ

香子「?何か言ったか首藤」

涼「いーや何もないぞ。それよりも香子ちゃんや、ワシらもあとで一緒にホテル行こうなー」ヒシッ

香子「変な言い方をするな!変な言い方を」

兎角「…………」

………………端から見ると中々キツイな

晴「早速仲良しさんになれてて羨ましいね!」

兎角「……そ、そうだな」

――とりあえずホテルに行こう

とりあえず今日はここまで
自己紹介の旅がなかなか終らないッス

ホテル

ホテルというからこんなのを想像していたが……

晴「こんなの?」

兎角「ほら、でっかいああいうの」

晴「晴も最初はそっちかと思ってました!」

――予想してたのとは違うとはいえ、悪くはないな
状況は最悪だが

プールサイド

晴「プールですよ!兎角さん」

兎角「だからなんだ」

晴「何って、海と選べるじゃないですか!」

兎角「別にプールがあるならわざわざ海に行く必要もないだろ」

晴「海は海で風情があるっていうか……こう」

………難しいな

とはいえここだと狙ってくれと言ってるようなものだしな
海を勧めたほうがいいのか?

兎角「どっちで泳ぐかは後で決めよう。それより施設を見て回るぞ」

晴「はーい。あともう少しで全部だから頑張ろうね!」

「いて……さい」

ん?

「英さんに………お水……」

兎角「?あぁ、悪い」

「自己紹介……あとでやるます」

目を><の形にしてどこかへ走り去ってしまった……

晴「番場さーん!後でお話ししようねー!」

兎角「…………………何だアイツ」

晴「あの子はね、番場真昼さん。照れ屋さんみたい」

今はスルーでいいか…

ホテルロビー

ここは受付だな……
やはり従業員らしき姿はないか

と思ったが
普通の親子も居るようだな

兎角「あの……」

「目を覚ましたようだな。私は生田目千足だ、お互い災難だったな」

「はじめまして、ぼくは桐ヶ谷柩です」

――親子じゃないのか……

兎角「お前達何故手なんかつないでるんだ?」

晴「どがぐざん!!」

兎角「だってお前もそこが気になってるだろ」

晴「うぅ……」

千足「これは桐ヶ谷が迷わないためだ。待ち合わせ場所としてもホテルのロビーは最適だしな」キリッ

柩「千足さん……」じーん

千足「学園に来る時と同じように空港手前で迷子になっているのを見つけてな」


―――回想―――――

柩「…………」キョロキョロ

千足「どうしたんだ桐ヶ谷?」

柩「ホテルに行こうと思ったんですけど……どっちだったか忘れてしまって……」

千足「なら丁度いい。私もそろそろホテルに行こうと思っていたところだ」

柩「本当ですか!?ありがとうございます!」

―――――――――


晴「へぇ!やさしい!」

………何の茶番だよ

柩「ぼく方向音痴で地図も苦手で…千足さんが助けてくれてすごく嬉しかったんです!ミョウジョウ学園に来る時もぼくを助けてくれて…」

晴「うんめーだね!!」

柩「運命ですよね」きゃっ

……早くどっか行きたい

千足「…………オホン、その様子だとまだ上は見てないみたいだしレストランでも見てきたらどうだ?」

―――――――!!
レストラン……………だと

兎角「カレーは!!カレーはあるのか!!?」

千足「ど、どうだったかな……一品一品吟味したわけでもないし」

兎角「チッ」

柩「千足さんは女の子ですからあんまり食べれないんですよ」

晴「ハハ……兎角さんカレーには目がないみたいだから…」

兎角「晴!レストランに行くぞ!!」

わたしたちは足早に階段を駆け登った

レストラン

どんっ
……うぅ、誰だ?

「アイタタタタ……ブッ飛ばされちゃったっス」

「プチメロもないしぶつかるし……つまんな~い!!」

――うるさいチビだな

晴「ごめんね~鳰」

「はぁ、本来なら裁定者として取り仕切っているはずが…トホホッス」

兎角「で、誰なんだお前は」

鳰「ご紹介遅れました、走り鳰ッス!よろしくッスよ~」

兎角「そうか、でカレーはあったのか」

鳰「えーと……多分無かったッス。メニューは日替わりみたいなんで今後に期待ッスね」

――クソッ後でスーパーを見に行くしかないか…

鳰「それにしてもどうなるんスかね~物騒なルールは書いてあるし、ここは何処だか分かんないし…」

――――裁定者とか言ってたけど、こいつが黒幕じゃないのか?

兎角「この状況はお前が仕組んだんじゃないのか?」

鳰「いや、ウチもマジわかんないんスよ……学園長との連絡も一切取れないし」

どうも胡散臭いんだよなこいつは
信頼ならんというか……

兎角「とか言ってこっちの様子を窺がってるんじゃないか」

鳰「ま、普通そうなりますよね。いいんス、ウチ絶賛孤立中なんで」

晴「ダメだよ兎角さん、仲間外れは!」

兎角「いや、わたしは単純に怪しいって言っただけで」

鳰「いいんスよ晴ちゃん。ウチでも多分怪しいって思うんで」ハハハ

晴「もし本当に鳰が悪いことしたならその時怒って、赦してあげればいいって晴は思います!」

――こいつに言われると……強く言えないというか

兎角「お前は黒幕じゃないんだな?」

鳰「はい、そうッスよ」

兎角「――分かった。だが何かするようなら殺す」

鳰「肝に銘じておくッス」

晴「そうだ、鳰はどこ行こうとしてたの?」

鳰「プチメロもなかったんで部屋に帰るとこだったッスね」

晴「じゃあ一緒に帰ろ!ね?」

兎角「好きにしろ」

鳰「それではお言葉に甘えて走り鳰同行するッスよ~」

はぁ。気が重いな
最終的に団体行動なんてことにならないといいけどな…

コテージ

コテージタイプのホテルは全部で16室
一人一人に個室が割り振られている。
ということは後3人誰か居るのか?

鳰「誰も居ないみたいッスよ、黒組のメンバーも他の宿泊客も」

まぁ、数が合わないからなんだって話か。
団体で泊まりに行って部屋が丁度全部埋まりました――だなんて話の方が珍しいだろう

晴「わぁー!あらためてみるとおっきいね!」

「あら、東さん。起きてらしたんですね」

兎角「お前に名乗った覚えはないぞ」

純恋子「申し遅れました。英 純恋子と申します。以後お見知りおきを」

兎角「東 兎角だ(ry」

晴「そう言えば英さん具合はもういいの?」

純恋子「あまり変わりませんが、部屋に篭っていても仕方ありませんから。外の風にでも当たろうと思いまして」

鳰「大丈夫ッスか~?何ならパシりますよ」

純恋子「結構。必要なものは番場さんに運んでいただいています。何をされるかわかりませんしね」

鳰「はぁ、嫌われたもんスねー」

純恋子「早くパラソルの下に行きたいので。これにて失礼致しますわ」

晴「行っちゃった……」

兎角「英……どっかで聞いた気が……ま、いいか」

晴「英さんずっと体調悪いみたい」

兎角「そんなこと言って何になるんだか」

鳰「ウチが言うのもあれなんスけど、あの人も大概怪しいんスよね~」

兎角「どういう意味だよ」

鳰「やー、あの人英コンツェルンのご令嬢ッスからね。こんな大がかりな事そうそうできないッスよ」

――聞いたことがあるような気がしたのはこれか

晴「鳰もやめようよー」

兎角「まぁ実際怪しいしな、英も走りも」

鳰「これは手厳しい!」

兎角「そうだわたしの部屋……」

鳰「て今度はスルーかーい!」

――――ええと、ん、ケンモチ?

晴「しえなちゃんだよ!まだ会ってないでしょ?」

えと、武智に犬飼、寒河江……多分12人くらい会ったような気がする
部屋に居るみたいだし顔だけ見とくか…

ピンポーン

ガチャ

「――ったく今忙しいのに誰だ?」

兎角「お前が剣持か?」

しえな「あ、あぁ、ボクが剣持しえなだ。で、なんのようだ?」

兎角「いや、特にない。じゃあな」

扉を閉めようとしたが――――阻まれた

しえな「え!?えぇ!!用もないのによんだのか!?」

兎角「顔の確認だけしたかったんだよ」

しえな「何だそれ!全然分かんないぞ!?」

はぁ
―――ウザいな…

晴「兎角さんまだ全員に会ってなかったんだ」

鳰「それで自己紹介ツアーッスよ!」

しえな「走りも居るのか……」

兎角「わたしは着いてきてほしくないんだが、お前要るか?」

しえな「遠慮しておく」キッパリ

鳰「悲しいッスね…ドッヂボールの取り合いで最後まで取り残されてる気分ッス」

しえな「まぁなんだ、よろしく頼むよ。また後でな」

これで全員か。
面倒くさかった………

とりあえずここまでッス
起きたらもちっとだけ書くッスよ

「ピンポンパンポ~ン!あー!あー!マイクテス!マイクテス!」

「オマエラ!至急最初の砂浜に集合!うぷぷ!さぁ……絶望の始まりだぜぇ?」

何だ今の……
最初の砂浜に集合っていってたよな

晴「何だったんだろうね…」

兎角「めんどくさいな……」

鳰「逆らうのは得策じゃなさそッスね」

香子「お前達こんなところに居たか、事前点呼を行う!後はお前達と剣持だけだ」

香子「――よし、剣持は私が呼んでくるからお前達はロビーで待機していてくれ」

ロビー

伊介「おっそぉ~い。伊介を待たせるなんていい度胸してるじゃん?」

晴「ごめんなさい伊介さん、ちょっと色々見て回ってたから」

春紀「まーまー、そうカッカしなさんなって。お肌に悪いよ?」

伊介「ちゃんとケアしてるから大丈夫ですよーだ」

涼「東に一ノ瀬、香子ちゃんはどうしたんじゃ?お主たちを呼びに行ったんだろう?」

鳰「剣持さんを呼びに行ったみたいッス」

涼「然様か。剣持も時間のかかるやつじゃの」

乙哉「待つのめんどくさーい。そうだ!番場ちゃんがしえなちゃん連れてきてよ!」

真昼「えっ………あの…」

乙哉「わー!ありがと!さすが番場ちゃん気が利くぅ!」

真昼「えぇっ…?」

春紀「あー……こりゃサラッとしたいじめだな」

伊介「やだぁ♡イジメかっこいいー」

純恋子「およしなさいな武智さん」

乙哉「どして?」

純恋子「嫌がっているのが解りません?――番場さんあなたもあなたですわ」

真昼「ごめんなさい……」

千足「しかし遅いな、かれこれ10分くらいか」

柩「ぼくは千足さんと居れるならいつまでも待ちますよ?」

千足「ん?あぁ、そうだな」

香子「すまない、待たせたな。剣持は眼鏡が見つからないそうで先に行ってほしいとのことだ」

兎角「結局待ち損か」ハァ

砂浜

驚いた。
変だとかマスコットだとか聞いてたからある程度予想はしていたけど

コイツはそれを越えてきた

「至急集合って言ったのになんだよ!!」

「ひょっとして、クマだからって舐められてる?しょぼーん」

香子「すまない。私の点呼が遅れたせいなんだ」

「ええんやで……泣かされるのはいつの時代も女や…オヨヨヨヨ」

……コイツ女なのかよ

伊介「それでセンセー伊介たち呼び出して何のつもりぃ?伊介早く帰りた~い」

春紀「つーか、お前の事なんて呼んだらいいの?センセーでいいんかい?」

モノクマ「ゴホン!ご紹介遅れました……僕はモノクマ!!引率の先生なのだ!!先生でも、なんならダーリンでも!」

鳰「キャラ安定してないッスね」

乙哉「質問!モノクマは追加の動物ですか!?」

モノクマ「違うよー、乙哉ちゃんったら酷いなぁ!僕をその辺の動物と一緒にするだなんて…」

晴「晴からも質問です」

モノクマ「いいよー!晴ちゃんいってみよー!」

晴「晴はいつ帰れるんですか?」

モノクマ「まったく……ちゃんとしおりに書いてあるのに。一生懸命作ったのになぁ……何でも調べずに聞いちゃう、これだからゆとりって奴は…」

モノクマ「答えは簡単!卒業すれば明日にでも帰れます!ただし……」

千足「ただし……?」

モノクマ「コロシアイをして学級裁判をクリアできたらだけどね!」

兎角「殺し合い……?」

しえな「悪いなみんな!待ったか?………ん?」

柩「タイミング読めない人なんですね、死んでほしいです」ボソ

しえな「ん?ん?」

モノクマ「んもう!剣持先輩おそいっすよ!」

しえな「メガネがなかったんだ、仕方ないだろう」

……コイツはあまり驚かないんだな

伊介「聞いてあげるからさっさと説明しなさい♡」

モノクマ「ハイッ!伊介様!」

モノクマ「えー、オマエラにはコロシアイ修学旅行をしてもらいます。ま、大体しおりに書いてあるけどね」

モノクマ「裁判のルールは殺し合いが発生したときにでも伝えるから気にせずじゃんじゃん殺し合いをエンジョイしてね!」

――――さっきからがまんしてたけど、いいかげんウザくてたまらない

兎角「ふざけるな!そんな勝手な理由で閉じ込められてたまるか!!」

モノクマ「なんだよ!衣食住揃ってて場所は南国、なんか文句あんの?」

……ナイフがなくたってこんなおもちゃくらいワケない!

兎角「――はぁっ!」

………手ごたえがない?

モノクマ「モノクマ流……空蝉の術よ」

乙哉「いやいや、ムチャクチャ早く避けただけじゃーん?」

しえな「ボクには見えなかったぞ…」

純恋子「歯痒いですわね…」

――クソッ!もう一度だ!

兎角「――フッ!」

モノクマ「しまった!しおりのルールにボクに攻撃しちゃダメって付け加えなきゃ!」

モノクマ「ボクに攻撃しちゃらめぇぇぇぇぇぇっ!!」

兎角「知るか!!」

モノクマ「引率の教師への攻撃を禁ずる……いや~ん!助けて!モノケモノ達!」

わたしの踵落としがモノクマの脳天に突き刺さったと同時にゾクリと嫌な予感がした

避けろ
よけろよけろよけろよけろよけろよけろヨケロヨケロヨケロヨケロヨケロヨケロヨケロヨケロ………

兎角「――――――――――――!!!!」

わたしが立っていたおよそ数十センチの範囲は深さが何メートルにも達するほど深く削られ、熱気が立ち上っていた

兎角「ッッ!!」

モノクマ「いやぁ今回は事前にルールを付け加えておかなかった僕にも非があるから見逃すけどさぁ…」

モノクマ「次は当てるぜぇ?」

おそらく固唾を飲んだのはわたしだけじゃない
戦車やヘリなら勝てる見込みはある。だけどあれは――――化物だ

晴「兎角さん大丈夫!?」

兎角「あ、あぁ……何ともない」

真昼「い、いや……」

涼「いやはや、凄いカラクリじゃの……」

伊介「ちょっ……ウソでしょ!?なんなのよアンタ!!」

モノクマ「え?引率の先生ですよ?」

伊介「フザけるのもいい加減にしなさいよ!!」

春紀「やめとけ、アレには敵わねーって」

香子「しかしあんな兵器一体どこで……」

モノクマ「これでわかったでしょ?オマエラはここから逃げられないって」

鳰「流石に冗談って感じじゃなさそうッスね…」

モノクマ「いい?オマエラ暗殺者の戦闘力を5とした時、僕の戦闘力は53万です」

しえな「いや、そこまで離れてはないと思うぞ。武器さえあればギリギリ……」

モノクマ「はう!?痛いトコ突くなぁ……」

モノクマ「ちなみに千足さんのパンツは5300円です……」

千足「なっ!!?」

鳰「見かけによらずッスねー」

香子「………//」メガネクイッ

しえな「ボクより高いな…」

乙哉「今度一緒に下着買いにいこっか!」

涼「なかなか乙女な奴とは思っておったが、ほーう…」

真昼「素敵と思うます…」

純恋子「番場さんには私が見繕って差し上げますわ」

春紀「んー、あたしは買えないなー…」

晴「晴もセットで買っちゃいます」

伊介「伊介のはもっと高いけど♡」

柩「本当なんですか千足さん!?」

千足「言わせないでくれ……………………………」

―――――結構いいの履いてるんだな

モノクマ「んじゃ、解散で!!」

一瞬の明るいムードも束の間、それぞれ重い表情で帰路へと着いた
当然といえば当然だろう

だが、これはこれから始まる地獄の序章に過ぎなかった……

PROLOGUE 完

モノクマ劇場

モノクマ「いや~思い込みって怖いよね!!」


モノクマ「この前さ……森の集会に行ったんだけどね」


モノクマ「オマエの好きな食べ物は鮭だろう!!って」


モノクマ「ヒドいと思わない?いくら僕がクマだからってさ」


モノクマ「どら焼きが好きなクマだっていてもいいと思うんだ」


モノクマ「ほら、人里に下りて味も知ってる……―――――ハッ!!いけないいけない…」


モノクマ「あーもう、それにしてもこの部屋暑いな~」


(部屋の気温マイナス273・15度)


モノクマ「モノクマ劇場でした!!」

とりあえずここまでッス

CHAPTER01(非)日常編

絶望ミョウジョウトロピカル

「えーと、ミョウジョウ学園修学旅行実行委員会がお知らせします…。オマエラ、グッモーニン!本日も絶好の南国日和ですよー!さあて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!」

――――ウザい

やっぱりこの悪夢は夢じゃないらしい

わたしはぎこちない動作で、ゆっくりとベッドから体を起こした

何もわからないまま起きた昨日よりはマシか

「カレー食べたい……」

食堂に行こう。日替わりらしいしひょっとしたらあるかも
今更毒の心配も…

「必要ないか」

ガチャリ。

わたしはドアを開けて外に出――――――

「ひゃあぁぁぁぁ!!?」

兎角「…何してるんだ?」

晴「いたた……ごめんね。神長さんが皆で朝食をとろうって、それで晴は兎角さんを呼びに来ました!」

兎角「一人で食べたかったんだけどな」エー

晴「一人で食べるのはいつでもできるけど、皆で食べれる機会って少ないんだよ?」

兎角「別に、いい」

晴「じゃあ今日だけ!それで面白くなかったら晴もう何も言わないから…ね?」

そう言われると断りづらい……
そんな目でわたしをみるなって

兎角「分かったよ、今日だけな」

晴「じゃあ行こうっ!」

レストラン

………………みんな?

香子「すまないな。私の力不足だ」

兎角「いや、こっちの方が私は助かるんだが」

涼「最近の若いのはたるんどるのう、なぁ香子ちゃんや」

香子「……全くだ。殺しあう運命とはいえ我々は学生だというのに」フーム

来ているのはわたしに晴、神長に首藤と……

春紀「オハヨー。悪いね、伊介様やっぱ起きなかったわ!あれ以上ノックしたら殴られそうだったからさ」タハハ

犬飼は起きないだろうな、そんなニオイがする

しえな「武智はだな、起こしたのは起こしたんだが……部屋を飛び出してどっか行っちゃってな」ハァ

………まぁいいか

千足「さすがに皆が皆足並みをそろえるのは難しいみたいだな」

柩「ぼくは千足さんのためなら早起きがんばりますよ?」

こいつらは相変わらずどんな関係なのかわからない…

真昼「英さんは……体調悪い……ます」

英は初日からそんな感じだな。油断でもさせてその隙に…か?

鳰「プチメロないッス~!帰る~!」

――――――ウザい

香子「居ない者のことを言っても仕方ない、では各々食べてくれ」

「いただきます」

春紀「いいモン使ってんなこりゃ、鳰も食えよー。デカくなんないぞ?」

鳰「ウチはこれで完成されてるから大丈夫ッス!」

春紀「そーやって好き嫌いするからダメなんだっつの」

鳰「ホント勘弁してくださいよ~」


千足「確かに、いいお茶だな。美味しい」

柩「さすが千足さん、そのお茶は美容にもいいんですよ――って知ってましたよね?」

千足「そんなつもりじゃなかったんだ……でも、これは気に入ったよ」


涼「香子ちゃんや、何か持ってこようか?」

香子「そっちに行くならついでに白米を頼む」

涼「はいよ」


真昼「英さんにはこれとこれと……」


しえな「これも食べたいけどカロリーが高いか……?うーん」


晴「ねっ?みんな楽しそうでしょ?」

兎角「あ、あぁ」

晴「じゃあ決まり!一緒に毎日来ようね?」

………今日はなかったものの朝一に来ないとカレーが品切れしている可能性もあるしな

兎角「分かったよ」

晴「やったぁ!」

――――――その後ホテルに帰り、出かけるなりでテキトーに一日を過ごした。

また本日中に更新するッス

犬飼は砂浜やスーパーで見かけた。買い物には寒河江が付き合わされるようだ

神長と首藤はあまり見かけなかった。活発に動くタイプじゃないんだろう

生田目と桐ヶ谷はホテルのロビーでよく見かける。

番場と英はプールサイドでたまに見るか見ないかくらいだ

武智はむしろあらゆる場所で見かけた

走りはスーパーが好きらしい。わたしのカレーを求めるタイミングと毎回重なりやがる

剣持は……どうだったっけ

兎角「疲れた…」

無駄に暖かいこの陽気にやられてしまいそうになるが、本来の条件より悪いコロシアイだ……無理もないか

兎角「・・・もう寝る」

とりあえず寝るしかない。明日誰かを殺すことになるとしてもならないとしても。

わたしは目を閉じた

モノクマ劇場

モノクマ「えー、ご覧のみなさま……」

モノクマ「今回は遅さについて語りたいと思っていますが」

モノクマ「遅いって色々損だよねぇ」

モノクマ「歩くのが遅いとどこに行くのもしんどいし」

モノクマ「作業が遅いと上司に怒られちゃう!」

モノクマ「サイアク、クビなんてことにも………」

モノクマ「オマエラは大丈夫だよね?」

モノクマ「日本で一番人気な漫画雑誌が週刊なのも、結局みんな月刊なんて待ちきれないからなんだよ!」

モノクマ「例えば、読んでいた作品がなかなか単行本でないから読むのいつの間にかやめちゃってた」

モノクマ「なんてこと、誰でも一度はあるよね」

モノクマ「ひょっとしたらボクも………」

モノクマ「モノクマ劇場でした!」

会社からの更新ッス
それではまた後日

モノクマ『えーと、ミョウジョウ学園修学旅行実行委員会がお知らせします…。オマエラ、グッモーニン! 本日も絶好の南国日和ですよー! さあて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』

相変わらず最悪な目覚ましだ。状況とも相まって、慣れる気がしない

私は体を起こす。

「…腹が減ったな」

ここに来てからまだ一度もカレーを食べていない。そろそろ禁断症状が出そうだ。しかし、禁断症状が出るほど食べなかった時がないため、自分でもどうなるかがわからない。

「…………」

そういえば、食堂で出す料理は誰が出しているのだろうか。昨日いたのは…神長、首藤、寒河江に剣持、生田目、桐ケ谷、番場、そして走りか…。一ノ瀬は私を迎えに来たから、料理にはかかわっていないだろう。

この中だと、走り以外は、料理をしそうではあるな。ただ、今日もいるかはわからないが…。犬飼、英、武智は今日もいないだろう。

まあ、今日料理をしている人を確認して、ずうずうしいが、カレーをリクエストしておこう。

私はコテージから出て、食堂にむかった。

食堂に着いた私は、目を丸くする。

「おはようございますわ」

「…驚いたな」

「あら、まるでわたくしが協調性のない自己中心的な女のように言いますわね」

クスリと笑われる

英が食堂にいた。しかも、私よりも早く…。

「英さん、一番乗りだったんじゃねぇの? あたしよりも早かったぜ?」

寒河江が食堂の椅子に座って、すでに朝食をとっている。

「いや、一番乗りは私だ」

神長が口をはさむ。

「香子ちゃんは、わしと同じくらい早起きじゃからのぅ」

「…英さん…今日…体調が…良い、です…」

番場は英の隣にいた。

「それにしても、今日も来てくれるとは思わなかった。私は誤解していたかもしれない」

「いい。気にするな」

神長にそう言って、私も椅子に座る

不思議なことに、もうすでに料理はテーブルに並べられていた。いったい誰が…いくら早起きといえど、モノクマアナウンスよりも早く起きて、わざわざ皆の分もつくるなんて、正気とは思えない。

「これで全員かな」
「昨日とは違うメンバーですね」

生田目と桐ケ谷は席も隣同士だった。

「昨日と比べていないのは、剣持と走りと一ノ瀬か。二日目で欠席とは…三日坊主もあきれるぞ。まぁ、若造に早起きは厳しいかの」

「初日に欠席したわたくしには、耳が痛いですわ」

一ノ瀬がいない…?

その事実に少なからず衝撃を受けた。

あいつの性格から考えて、こういうのにはまず参加するタイプだと思っていたからだ。

昨日は、一緒に来ようねなどと言っていたほどなのに…。

なにかあったのか…?

この島だと、朝起きて食堂で朝食をすませた後は、自由行動になっている。そもそも私たち自身の職業柄かもしれないが、行動をともにするのが苦手な人間が多い。

ただ、英や犬飼は一人でいるのはあまり見かけない。生田目と桐ケ谷はいつもセットだ。

そして、その例にもれず、私もまた単独行動が多いほうだ。昨日は一ノ瀬と行動したが、あれはあいつだからだ。ごねられたから行動したまでだ。

今その一ノ瀬がいない。

一人のとき、私はいつも何をしているか…。主に武器の手入れをしているが、今現在手元に武器の類はない。

だから仕方なく…私は一ノ瀬を捜すことにした。

すでに一ノ瀬のガレージの留守を確認した。ほかのところにいるのだろう。
ちょうどいい。この島を詳しく探索する必要があると思っていたところだ。一之瀬を捜すついでに、この島―ジャバウォック諸島を調べよう。

ロケットパンチマーケット

「あら? 東さんじゃな~い?💕 今日は一人なのね~💕」

「……そう言うお前こそ」

「あらやだ、ムカつく~💕」

犬飼がいた。

食堂にはいなかったくせに、ここにはいるのか…。

「こんなところでなにをやってるんだ」

「それアナタに言う必要あるの~?💕」

「…………」

ここに一ノ瀬はいない。目新しいモノも見つからないだろう。さっさと移動するか。

犬飼にはイラつく

それは相手も同じようだった

「あ~朝からアナタの顔を見るなんてね~💕」

「……」

「ちょっとぉ、なにシカトしてんのよ~💕」

「うるさいな、お前」

「……イラッとするぅ💕」

犬飼とにらみ合った、が―

「あれ~? ここでお二人に会うなんて、珍しいこともあるッスね~♪」

もっとイラつくヤツが現れた

「お前はお呼びじゃない」
「アナタ、なにしに来たのぉ?💕」

「うはーっ! お二人の眼が冷たいッス~! 絶対零度間違いないッスよ~!」

走りのリアクションは一々わざとらしい。

「メロンパンの補充に来たんスよ」

「あら、アナタがここを管理してたのぉ~?💕 なら、敵かしら?」

犬飼が笑顔になる。妙に迫力があった。

「いやッスね~。そんなわけないじゃないッスかぁ~。もしそうなら、メロンパンをここに持って来ずに全部独り占めするッスよ~」

私たちの間を横切り、奥にあるメロンパンを物色する

「ちっ、ざ~んねんっ💕」

「あれ~? 舌打ちが聞こえたッスよ~? ちょっとビックリッス~」

「同感だ」

「それどっちに同感ッスか⁉」

犬飼はもう無視して、商品棚を見つめている。商品棚から察するに、探しているのは化粧品のようだ。皆で朝食よりも、己を着飾るモノを求めるとは…私にはよくわからない価値観だ。別に私も、進んで朝食をともにしたいわけではないが…。

犬飼は走りに絡まれてうっとおしそうに、眉をひそめている。

私は絡まれぬ内に、そこから音もなく離れた。

空港

「…………」

「う~ん」

「…………」

「ここはどこだぁ~?」

道に迷っているヤツがいた。

「剣持、なにしてるんだ?」

「ん? その声は、東か」

剣持が私の声に反応して、近づいてくる

「いや、それがな。朝起きてみたら眼鏡がなくなっていたんだ。予備を用意したはずなのに、それもない。予備の予備もだ」

そんなに予備してどうするんだ。

「だから、朝食の前に、代わりの眼鏡を買おうと思ってね。コンビニみたいなところがあったろう? そこを向かってたんだが、どうやら朝食会は終わったみたいだな」

「ああ、その通りだ」

剣持は私に近づき、そして―

「ところで、ここはどこなんだ? まったく商品が見当たらないんだが…東?」

―私を通り過ぎて、壁にかけられた時刻表に話しかけていた。

「…それは私じゃないぞ」

「えっ⁉ あっ、すまん! 少し視力が悪くてね」

「そしてここは空港だ。コンビニを通り過ぎているぞ」

「えっ⁉ …あ~、視力が悪くてね…」

もはや少しどころじゃない。人を時刻表だと勘違いする時点で、目の役割を果たしていない。眼科でも手遅れだ。トウガラシを見せても、キュウリだと勘違いしてカッパのごとくむさぼり食うだろう。

「すまないが、コンビニまで案内してくれないか?」

いやだ…と、言いたいが、現状を見ると、少々同情してしまう。しかし、今は一ノ瀬を…一ノ瀬とジャバウォック諸島を捜索するのが先だ。

「あれ~? しえなちゃんと…兎角サンじゃ~ん!」

ちょうどいいタイミングで、ちょうどいいヤツが現れた。


「ん? その声は…武智か⁉」

「しえなちゃん雰囲気変わったねぇ~。イメチェン?」

「出会って二日目でイメチェンするヤツがいてたまるか!」

「あっははは! しえなちゃん、それ植木鉢だよ? 植木鉢に話しかけるなんて、酔狂だねぇ~」

「⁉ し、しまっ!」

「お前、そんなに視力悪いならコンタクトにしたらどうだ?」

「い、いや、違うんだ。最近まで眼鏡なくとも、ぼやけるだけでここまで酷くはなかったんだ…おかしいな、私はいつからここまで視力が落ちたんだ?」

剣持は眉間にしわを寄せている。眼鏡はかけてても視力が落ちると聞いた。私も気を付けるとしよう。暗殺にはかかせないしな。

「にしても…」

武智が物珍しそうに私と剣持を見る

「変わった組み合わせだねぇ。あんたたちって、一緒にいるときあるんだ」

「違う。こいつと会ったのは偶然だ」

「だろうね」

武智がガバッと剣持に抱き付く

「もぅ~、しえなちゃん浮気したのかと思っちゃったよぉ~! もしそうだったら、あたしショックだったなぁ~!」

「ば、ばかっ! 早く離れろっ!」

「で? しえなちゃんはここでなにしてんの~?」

「…道に迷ってただけだ。コンビニがどこかわからない」

「へ~? こことホテルの間にあるのに? 気が付かなかったのかなぁ~?」

ニヤニヤと笑う武智から目をそらす剣持

「いや、まぁ、その…なんだ、その…できれば、案内を頼む」

「いいよぉ~? あたしとしえなちゃんとの仲じゃん!」

こいつはこんなにも馴れ馴れしいのか? 一ノ瀬以上だ。

「兎角サンは?」

「……私は、いい」

「ふ~ん」

武智の眼が私をとらえる。

「じゃあねぇ~兎角サン」

「わわっ! 引っ張るな!」

武智が剣持の腕に絡みついて、無理やり引っ張っている。主導権は完全に武智だな。

誰もいなくなった空港をザッと見て、私は移動した。

砂浜

「おや? 今日は一人かの?」

「ああ」

首藤が砂浜で座っていた。ヤシの木が丁度日除けになっている。

「海を見ているのか」

「わしにとっては初めてじゃからのぅ。それに…見ているのは海だけではないぞ?」

海岸からあがった人物がこちらに歩み寄る。

「…東か」

「神長…あんた、水泳なんてするほど、アクティブだったんだな」

「首藤に誘われた」

その首藤は神長を見ている。優しそうな表情をしていた。

「首藤は泳がないのか?」

「わしはもう泳いだ。一休みしているのじゃ」

「…一緒に泳がないのか」

「二人で競争した。そのあと好き勝手に泳いで、今に至る」

首藤も神長も意外に体力があるな。そういうのは、生田目や寒河江の領分だと思っていた。

「お主こそ、ここに来るとは到底思わなかったぞ。なにか用でもあるのかの?」

「…そうだな。改めて島の探索をしている」

「一ノ瀬を捜すついでか?」

「⁉」

「ふふふ。顔に出とるよ」

こいつ…鋭いな。

「一ノ瀬は見とらんの。香子ちゃんは?」

「右に同じだ」

「…そうか。邪魔して悪かったな」

図星だったからじゃないが、足早に去ろうとすると、

「のう、東」

呼び止められた。

少し警戒した。正確に言えば、またなにか言われるのかと身構えた。

「なんだ」

「あとで、皆とヤシの実でも割らんか」

……ただの遊びの誘いだった。

「……考えとく」

牧場

「ここ、牧場なのに鶏がいるな」
「逆に牛が一頭もいないなんて…不思議ですね」

ラブラブカップルがいた。

「ここは牧場としての役割を果たしていないな」
「でも、鶏さん、かわいいです」
「フッ、そうだな」

…………。

「ん? 東じゃないか、どうしたんだ」

「…いや、とくに用はないんだが…」

『常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションである』

不愉快な声が響いた。

『これに当てはまるかどうかなんてのは、ぶっちゃけケースバイケースだよね。ボクはね、常識は社会そのものを映していると思うんだよ』

いつのまにかモノクマがいた。音もなければ気配も感じさせない。

「…なにしに来たんだ」

『あらら、なんだか嫌われちゃってるみたい。ショックだなぁ。ショックで心臓が止まりそうだよ』

「心臓なんてあるのか?」
「千足さん、比喩だと思いますよ?」

相変わらずうっとおしいぬいぐるみだ。

『牧場に鶏がそんなに気に入らないの? もしそうだって言うんなら、朝まで論じようじゃないか! ボクが相手になるよ!』

「いやに決まってるだろ。第一そこまで気にならない。どうでもいいことだ」

『どうでもいい? どうでもいいってなんだよ。それなら君にとってはなにがどうでもよくないんだい?』

モノクマが私と生田目と桐ケ谷を通り過ぎて、トコトコと歩いて鶏に近づく。

『これだから最近の若者は…自分の興味があるものにしか反応しない。ボクが元人間だって言ったら、気になるのかい? それとも、これがなにかの試験だって言ったら、どうでもよくないのかい? ここが地球上で人類が安全に住める唯一の場所だって言ったら? 君たち以外の人間がすでに滅亡しているって言ったら? 君たちがクローン人間だって言ったら? それとも―』

モノクマが鶏に触れる。すると―

ボン

煙が発生して、周囲一面が見えなくなる。

「煙⁉ 煙幕か⁉」

「桐ケ谷! 私から離れるな!」
「は、はい! 千足さん!」

煙が晴れていく。そこには―牛がいた。

『―鳥類が哺乳類になっても、どうでもいいのかい?』

「な⁉」

「…なん…だと…?」
「…信じられませんね」

鶏が牛になった。

『アッハッハッハッハ! そろいもそろって間抜けな顔! ウププププ』

「お前なにやった! 教えろ!」

『どうしたの? 怖い顔して…ひょっとして、これはどうでもよくなかった? ウププププ』

「…っ!」
自分の眼を疑う。しかし、現実は変わらない。

鶏が牛になった。疑うべくもない。

『ウププププ。ボクはもう満足だよ。ダッハッハッハッハッハ!』

モノクマが出現と同じように音もなく消えた。

「……どうやら本物の牛のようだ」
「さすがに、もう疑う余地はないですね」

生田目と桐ケ谷が牛の体に触れていた。

「……っ」

いったいなにがなんだかわからない。なにが起きたんだ。これは…なんなんだ。

「おっ! 生田目に桐ケ谷に東か」

のんびりとして、それでいてハキハキとした声が聞こえる。

「寒河江」
「どうかしました?」

「いや、こんなところで会うとは思わなくてよ…ん? 東はどうした? なんだか不機嫌そうだな」

「……今さっき不可思議なモノを見たからな」

「へぇ。もしかして、モノクマか?」

「ああ。よくわかったな」

「いやだって、この島で不可思議っつったら、まずモノクマでしょ」

「…それもそうだな」

寒河江が見たら、なんて思うんだろうな…。さっきのことは皆にも言うべきか? しかし、言ったところでなにが起こるわけもないが…。

「それよりもさ…」

寒河江が言いにくそうに頬をかく。

「伊介様見なかった?」

「犬飼か?」
「見てませんね。今日は一度も」

なぜ犬飼の名が…?

「いや、ほら…ちょっと遊びに誘おうと思ってさ。コテージに寄ってみたんだけど、留守だったみたいでさ。で、気になって捜してんだけど…」

「……それなら、ロケットパンチマーケットにいたぞ」

「おっ、そうか。サンキュ」

変わったヤツだ。あの犬飼を遊びに誘おうだなんて…。

「武智や晴ちゃん、神長にも聞いてたんだが、ようやく居場所がわかって良かったよ」

……ん?

「寒河江」

「ん? なんだよ?」

「今晴って言わなかったか?」

「言ったけど?」

「どこにいた?」

「えぇと、中央の島に向かってったぜ? …そんな怖い顔すんなよ。ウソじゃねぇーって」

怖い顔? 私は怖い顔をしていたのか?

「助かった。私は先を急ぐから失礼する」

ようやく居場所がわかった。待ってろ、一ノ瀬

「なんだあれ」

「フフッ、あいつもああいう表情をするんだな」
「でもなんとなくわかります」

「あたしにはわかんねぇな」

「君もそういう顔をしてたじゃないか」
「同じ表情でしたよ?」

「えっそうか⁉ …ははっ、自覚なかったわ」

「それにしても、東が一ノ瀬を気にやるなんて…意外だな」
「そうですか? 案外お似合いだと思いますよ?」

中央の島

その広場に、一ノ瀬がいた。

彼女のいる広場の中央には、巨大なタイマーがあった。現実離れなオブジェ…とでも言おうか。

そして、余計なヤツも…。

「じゃあ、このタイマーって」

『ご想像通りだよ。期限を表してるのさ』

「一ノ瀬…こんなところにいたのか」
「兎角さん⁉」

『東さんはね、一ノ瀬さんを捜すために、島中を歩き回ったんだよ』

「そうなんですか⁉」

余計なことを…このぬいぐるみはホントに苛立たしい。

「それよりも、朝食に来ないでなにをしていたんだ」
「ご、ごめんなさい。ここでモノクマに捕まっちゃって…ずっと話し込んでたから…」

『ウププププ。ごめんねぇ、東さん。キミがひそかに大事にしている一ノ瀬さんを借りてたよ』

「お前…っ!」

『おっとっと。間違えたね。訂正するよ。ひそかに…じゃなかったね! オープンに…だったね!』

「この…っ!」

脚で蹴り上げようかと、態勢を変えると、

「ダメだよ、兎角さん!」

一ノ瀬が両手を広げて壁になる。

「一ノ瀬…」
「また危険な目に遭うよ…っ?」

ゾクリとする。

昨日のモノケモノ。

非現実的で非論理的で実に科学的な、そんな凶悪な兵器。
たしかにあれと対峙するとなると、武器なしでは手も足も出ない。

「…くっ!」

『はわわわわ。東さんの見せた殺意に、ボクはぶるっちまったぜ。でもな―』

左目の赤目が真っ赤に光る。片手の爪が伸びる。

『―命拾いしたな、小娘! 一ノ瀬さんがかばわなかったら、今頃蜂の巣だぞ!』

「……っ」

否定できない自分がいた。

『ウププププ。じゃあね、オマエラ』

モノクマが消えた。

「…兎角さん」
「……行こう、一ノ瀬」

第一の島

「晴が聞いたのはね…」

ホテルに戻る最中、さきほどのモノクマとの会話の内容を事情聴取していた。

「広場の中央にあったタイマー。あれはモノクマの個人的なゲームの期限だって」

「個人的な?」

「うん。私たちの…コロシアイの期限だって」

「……期限なんて設けるのか」

「うん。だから、私たちがコロシアイをせずにいたら、なにかするつもりなんだと思う」

「そして、それはすぐにできるものではない…ということか?」

「多分」

「…目的はなんなんだろうな」

「…晴、聞いたよ」

「…なんて答えた?」

「―絶望―」

「は?」

「絶望…だって」

絶望? どういうことだ?

「意味がわからない」

「ごめん。晴もわからなかった」

モノクマの目的は絶望。そんなの、納得できない。いったいどういうつもりなのか。

「それと…『動機が準備できるまで、精々南国気分を満喫しろよ』って言ってました」

「…動機、か」

「晴たちはコロシアイなんてしません!」

晴が叫ぶ。

「兎角さんもそう思いますよね⁉」

―晴たち―か。

黒組。

ここに集められるのはどういう人間か…。昨日の自己紹介の流れでよくわかった。
―ここにいるほぼ全員が、殺しを経験している―
そんな人間たちが集まって、殺し合いが起きない、だと? そんな夢みたいなこと…。
おそらくコイツもわかっているかもしれない。いや、どうだろうな。こいつだけは匂いがしなかった。あえて言うなら、日向の匂い。

なら、本当に、コイツは願っているのか。

「…………」
「…………」

一ノ瀬はおびえていた。自分が殺されるということではなく、誰かが殺されるということを。

―善人。

私たちの中で、ただ裏社会に関わらない人種。
そんな彼女に、私はなんて答えようか。
決まってる。なんて答えるなんて。ただ、すぐには言えなかった。決心が必要だったから。

「…………ああ、起きないよ」

私は肯定した。

そして、

「私が、お前を守る」

ホテル

「あら、一ノ瀬さんに東さん」

「英さん⁉ 体調は大丈夫なんですか⁉」

「ええ。今日は調子が良いんですの」

食堂では英が紅茶を淹れていた。

「ずっとここにいたのか」

「ふふ。旧館とここを往復してましたの」

「…なんで?」

一ノ瀬が小首を傾げる

「あら? 東さんから聞いておりませんでしたの?」

「私から?」

私は晴と顔を見合わせる

「…あきれた。あなたは朝なにも聞いておりませんでしたの…そこまで一ノ瀬さんが心配でしたのね」

「なっ⁉ なにを―」

「今晩、旧館にてパーティを開催しますわ。時間は夜のモノクマアナウンスが終わってから」

「え、パーティ?」

一ノ瀬が呆けた声を出す

「なぜ開催するんだ?」

「親睦会を兼ねて、お互いをよく知るため、ですわ」

「…全員参加か?」

「ええ、当然ですわ。すでにあなた方二人以外の全員の参加を聞いております」

「兎角さん! パーティに参加しましょうよ」

「……わかった。今晩だな」

あまりそういう社交的な集まりは好まないが、状況が状況だ。群れから外れた一匹狼は生存競争に敗れる。ここは情報を得るためにも、参加する方が賢明だろう。

「では、わたくしは番場さんに紅茶を持っていきますので、これで」

「番場さん? 旧館に?」

「掃除してくれていますの。立候補してくださったのよ。結構家庭的な方でして、わたくし、一層好きになってしまいましたわ」

「へ~、そうなんだ」

人は見かけによらないな。

「と、いうわけですので、夜まではご自由に過ごしてください。それでは」

英はサンドウィッチやお茶菓子、紅茶を持って出ていった。

「どうしよっか、兎角さん」

「…そうだな」

あるやり取りを思い出す

「ヤシの実を割りにいこう」

「え?」

「首藤に誘われたんだ」

「わかりました! 行きましょう!」

砂浜に向かう途中、色々なヤツと会った

「伊介様~もうすねんなよ~」

「や~だ~💕 化粧してない状態を春紀に見られちゃうなんて、屈辱~💕」

「伊介さん、それで珍しく朝っぱらから一人で、しかも自分の足でロケットパンチマーケットにいたんスね~♪」


「やはり眼鏡があると見やすいな。もう見間違えないぞ」

「しえなちゃん、やっぱ眼鏡が似合うねぇ~。おさげ切りたくなっちゃったっ!」

「なんでだ⁉」


「ヤシの実を割るのか…あれってたしか固くなかったか?」
「一応割る道具もありますし、大丈夫ですよ、千足さん」


「随分大所帯になったな」

「でも賑やかな方が楽しいですよ、絶対」

そして、砂浜に着く

「ほほ、ここまで集まるとはの~」

「11人…英と番場以外か…」

首藤と神長はまだ砂浜にいた。

そして、ヤシの実は…。

「あら?💕 1個しかないじゃな~い💕」

ヤシの実がポツンと一個だけ、砂浜に埋もれていた。

「すまんな。ここまで来るとは流石に予想できなかった」

「だから、一人を除いて全員実の状態で頼む」

神長が申し訳なさそうに見上げる。

神長の視線の先に木に実った状態のヤシの実が、いくつか見つけた。

「拳銃でももってきた方が良かったな」

「剣持、それは大丈夫だ。念のために剣と銃は人数分持ってきてるからな」

「やけに準備がいいな、寒河江」

「まぁな。なにが起こるかわかんねぇからよ。備えあれば患いなし、て言うじゃん?」

「ねぇ、それならもう始めましょうよ~💕」

「ふむ、それでは、これより第一回黒組対抗ヤシの実割りの開催を宣言するのじゃ」

一人目:東兎角

「獲物は?」

「ナイフだ」

「へぇ。それで切れんのかよ。ま、いいけどさ」

寒河江からナイフを2本受け取る。

「いっけぇー、兎角さーん!」

一ノ瀬の声援が聞こえる。
ほかの連中の声は聞こえなかった。

「さて、お主はどうする?」

「当然実の状態だ」

私はヤシの木の前に立つ。

呼吸を整える。
狙いを定め、

ナイフを投げる。
木とつながってる茎の部分を断ち切る

落ちてきたヤシの実に、一閃―

真っ二つに切れた。

「兎角さん⁉ 恰好いいです!」

一ノ瀬の声援が聞こえる。

きまった。

「東兎角、70点」

なに⁉

「ちょっと待て! 点数制なのか!」

「ああ。でなければ差がつかんじゃろう?」

「……くっ!」

しまった、迂闊だった。
これなら粉々にしておくべきだった。

のちのちのことを考えて、一ノ瀬と食べれるように半分にしてしまった。

「あっはは、ダッサ~い💕 次は伊介の番ね~💕」

二人目:犬飼伊介

「伊介様~ファイト~!」

伊介の獲物はナイフと銃


「犬飼さんかぁ~どういう風に切るんだろうねぇ~」

「どうだろうな。犬飼はやり手だろうしな」

「しえなちゃん、そんなに自分を卑下しないでっ!」

「別に卑下してないぞ⁉」


「皆さん、ナイフの扱いが上手です…」

「桐ケ谷は苦手なのか?」

「はい…銃が、まだ使えます。自作の銃なら、自分の手足のように使えますが…」

「そうなのか…じゃあ、今回はあまり向いてないな」

「はい、残念です」


「剣、か…」

「見栄えが良くていいものじゃろう?」

「ああ、私も使ってみようかな…」

「ああ見えて、結構難しいがのう…」

「そう、だな。まずは当てれるようにしなきゃな…」

「…えっ! まずそこからなのかの⁉」


「兎角さん! すごかったですよ! こう、スパって…晴、びっくりしちゃいました!」

一ノ瀬の笑顔がまぶしかった…。

犬飼が動く。
銃でヤシの実を打ち落とす
ナイフを振るう

一閃、二閃、三閃、四閃。

最後にナイフを投げ捨て、切ったヤシの実をすべてキャッチした。

「や~だ~💕 手が汚れちゃった~💕」

「犬飼伊介、94点」

ぐっ…た、高い。

「おい、これは何回勝負だ!」

「…1回で十分じゃろう」

なん…だと…⁉

「あちゃ~、兎角さん、失敗したッスね~」

「春紀~これ半分あげるわ💕 私手洗ってくるから💕」

「はいよ~」

「…犬飼さん、すごい」
晴のつぶやきを私は聞き逃さなかった。

犬飼は砂浜から出るとき、私の方を見て、
「……ハッ」
鼻で笑った。

「じゃあ、次は…」

「はいは~い、あたしやる~!♪」

三番目:武智乙哉

「武智は獲物なんだ?」

「あぁ、あたしはすでに持ってるから平気だよ、しえなちゃん」

武智はそういうと、太もものホルスターからハサミを2つ取り出した。

「ハサミでやるのか⁉」

「うん♪」

武智は鼻歌交じりでヤシの木に向かった。

「そもそもハサミで切れるのか…?」

「無理だろうな」

「神長が言うと余計無理な気がするな」
「でも自分で選んでますし、なにか秘策でもあるんじゃないでしょうか」

「ま、乙哉さんがなにするか、見守るッスよ~! 割れなかったら笑えばいいだけッス!」

「ゲスだな⁉」

武智が構える。

「でも、ホントにどうするつもりなのかな…」

武智がニヤッと笑う。

ジャンプする。

「高い!」
「身体能力がすさまじいですね…!」

ぶら下がっているヤシの実をそのまま、ハサミで刻んでいく

「なんて切れ味だ!」

「ふ、ふげぇ~。なんばひれふほもかぁ~⁉」

「寒河江、まず飲み込め!」

武智が着地する。ハサミをしまい、手の平を上に向ける。そこに切ったヤシの実がスッポリと収まる。

「わぁ~! 武智さん、すご~い!」

一ノ瀬が拍手する。……嫉妬などしていないからな。

バシャ

ヤシの実の中身のジュースが、武智の頭にかかる。全身がずぶ濡れだ。

「…詰めが甘かったな」

少しいい気分になった。

「ふふっ、乙哉さ~ん。あっはははは!」

「……」

クンクンと自分の匂いを嗅ぐ武智。

「なんだか南国臭いよぉ~!」

「どんな臭いだ!」

剣持のやつ、さっきから律儀に全員に突っ込みするな…。

「ちょっとシャワー浴びてくるぅ~! しえなちゃん、ついてきて」

「なんでだ⁉ おい、離せ!」

武智に連れられ、剣持もどこかへ行ってしまった。

「本人がいなくなってしまったが、武智乙哉、88点」

三人目:武智乙哉

「武智は獲物なんだ?」

「あぁ、あたしはすでに持ってるから平気だよ、しえなちゃん」

武智はそういうと、太もものホルスターからハサミを2つ取り出した。

「ハサミでやるのか⁉」

「うん♪」

武智は鼻歌交じりでヤシの木に向かった。

「そもそもハサミで切れるのか…?」

「無理だろうな」

「神長が言うと余計無理な気がするな」
「でも自分で選んでますし、なにか秘策でもあるんじゃないでしょうか」

「ま、乙哉さんがなにするか、見守るッスよ~! 割れなかったら笑えばいいだけッス!」

「ゲスだな⁉」

武智が構える。

「でも、ホントにどうするつもりなのかな…」

武智がニヤッと笑う。

ジャンプする。

「高い!」
「身体能力がすさまじいですね…!」

ぶら下がっているヤシの実をそのまま、ハサミで刻んでいく

「なんて切れ味だ!」

「ふ、ふげぇ~。なんばひれふほもかぁ~⁉」

「寒河江、まず飲み込め!」

武智が着地する。ハサミをしまい、手の平を上に向ける。そこに切ったヤシの実がスッポリと収まる。

「わぁ~! 武智さん、すご~い!」

一ノ瀬が拍手する。……嫉妬などしていないからな。

バシャ

ヤシの実の中身のジュースが、武智の頭にかかる。全身がずぶ濡れだ。

「…詰めが甘かったな」

少しいい気分になった。

「ふふっ、乙哉さ~ん。あっはははは!」

「……」

クンクンと自分の匂いを嗅ぐ武智。

「なんだか南国臭いよぉ~!」

「どんな臭いだ!」

剣持のやつ、さっきから律儀に全員に突っ込みするな…。

「ちょっとシャワー浴びてくるぅ~! しえなちゃん、ついてきて」

「なんでだ⁉ おい、離せ!」

武智に連れられ、剣持もどこかへ行ってしまった。

「本人がいなくなってしまったが、武智乙哉、88点」

四人目:生田目千足

「頑張ってください、千足さん」
「ああ」

帯刀する生田目。それを見送る桐ケ谷。

「な~んか、武士とお姫様みたいッスね~」

同感だ。

「雰囲気が似てるからかな?」

「二人とも女性だが、不思議とそんな気持ちにさせるな…」

「ふふっ、走りも晴ちゃんも香子ちゃんも同じ感想か…わしは戦場に赴く殿方を見送る女学生のように見えるよ」

「ははっ、首藤、なんかリアルだな」

「寒河江はどう思うかの?」

「ん~、まぁ、普通に仲の良い二人じゃねぇの?」

案外現実主義だった。

生田目が柄を握りながら、跳躍する。
ヤシの実を切る。

落ちてくるヤシの実に対して、剣を再び鞘に戻す生田目。

「お、おいおい。しまっちゃったよ」

「ちょ、あぶね~ッスよ!」

「あの構え…なるほど」

「ほほっ、やるの~」

「…千足さん」

落ちてきたヤシの実がちょうど、生田目の胸元にきた。

すると―

シュン

―と、音がした。

ヤシの実はゴスッと砂に落ちたあと、綺麗に8等分された。

「…すご…い…」

「居合切り、か」

私でもできないものだ。

「千足さん……きれいです…」

「これで人数分かな?」

言って振り向いた生田目は、どこまでも爽やかだった。

桐ケ谷、寒河江、首藤、神長、一ノ瀬、私、走りそして生田目の分の計8個

「生田目千足、100点」

文句は出なかった。

五人目:桐ケ谷柩


「ダメだ!」

「ち、千足さん⁉」

「桐ケ谷にそんな危ないことはさせられない!」


「ちょちょ、なに言ってんスか、この人⁉」

「あちゃ~、過保護かぁ~」

「このゲームの趣旨を理解しているのか!」

「まぁまぁ、香子ちゃん、ここは100点をたたき出した実力者に敬意を表そうではないか」

「しかし、首藤…」

「桐ケ谷、お主はどうじゃ? お主がやると言えば、生田目も引き下がるしかあるまい」


「……ぼくは…」
「ダメだダメだ! 私は絶対に断固拒否すr―」

「少し黙ってろ、生田目」

私が生田目の口をふさぐ。

「まぁ、でもわかるぜ。その気持ち。あたしにもガキがたくさんいるからよ」

「まさかのマザーッスか⁉ 意外に淫乱な性活を送ってるッスね⁉」

「んなわけねーよ! 弟や妹だよ! だから、生田目の気持ちはわかる」

「おい走り! その字は間違えてるぞ! 正しくは《生活》だ!」

「マジレスッスか⁉」

「香子ちゃんや、そこは放置でいいんじゃよ…」

「えぇと、晴は……」

一ノ瀬はおろおろするばかりだった。
かわいい…ゲフンゲフン。

桐ケ谷は気まずそうに生田目を見る。

「……棄権します」
「ケガをせずにすんで良かった!」

私の拘束を振り払って、桐ケ谷のもとに駆け付ける生田目。あいつ、いつのまにあそこまでなったんだ?

「こ、これはまさかのイタイ人ッスかぁ~!」

「…あたしはノーコメントで」

「こういう友情もあるのだろうか…」

「香子ちゃん、無理やり納得しなくてもいいんじゃぞ?」

武智と犬飼がいなくて良かったな。あいつらがいたら、絶対にからかわれたぞ。

「では、桐ケ谷柩、棄権にて得点不明」

旧館の入り口

???「よう…なんだか久しぶりだなぁ…っ!」

東「……だれだ……?」

番場「オレだよっ! 番場だよっ!」

東「性格変わってないか?」

番場「夜仕様なのさ…っ! あと、オレのことは『真夜』って呼べよな…っ! 番場だと、どっちかわかんねぇからよぉ…っ!」

東「たしかに…」

厄介な体質だな。

東「それで、ここでなにしてるんだ?」

番場「持ち物検査ってヤツをよぉ…純恋子のヤロウから頼まれてんだ…っ!」

東「…スミレコ?」

番場「英の下の名前だよ…っ! つーわけで、怪しいもん持ってねぇか、確認させてもらうぜ…っ!」

番場が私の身体をまさぐる

番場「あぁん⁉ お前、ナイフ持ってんのかよ…っ!」

東「ないと落ち着かない。それを取り上げられたら、いざというときに困る」

私はまだお前たちを信用してはいない。殺人を犯す者がいないとは考えていないからだ。
だが、私は殺人の発生を止めるためにナイフを持つ。殺人が起きないためにはこれが最善の手だ。

私は信じることよりも、疑うことを選ぶ。

だがまずは、番場…今は真夜か、こいつを説得することが必要だ。あまり時間をかけると、ほかの連中が来る。そうなるとモメるだろうから、手早くせねば。

そう思っていると、

番場「あぁん? 取り上げるぅ…っ⁉ だれがぁ…っ!」

東「…えっ」

お前だろう?

番場「オレは別に取り上げたりしねぇよっ! 別に言われたのだって、持ち物検査だけだしなぁ…っ! 純恋子は一度も取り上げろだなんて言ってねぇぜ…っ?」

持ち物検査は、怪しいものを取り上げるまでが、持ち物検査だろう?

番場「だから、いいぜ! お前もあがれよっ! 持ち物検査はパスだっ!」

…英。お前は人選を誤ったな…。

旧館・広間

一ノ瀬「あっ、兎角さん!」

一ノ瀬が私の駆け寄る

走り「早い到着ッスね~!」

走りもいた。

まだこの二人しかいない。

一ノ瀬「真昼ちゃん…あんな事情があったんだね…」

走り「いやぁ~結構アクの強いキャラだったんスねぇ~! ちょっと誤解してたッス~! 正直番場さん絡みづらいと思ってたんスけど、一気に好きになりましたッス!」

一ノ瀬「ちょっと、鳰! 失礼だよ!」

一ノ瀬が走りを叱る。母親と娘みたいだ。

東「…英は、いないのか?」

一ノ瀬「それが、英さん料理をするみたいで…」

あいつが? パーティの料理を全部つくるのか? 体調大丈夫か?

走り「いやぁ~どんな料理が出るんスかね~! 上手そうに見えますけど、多分不味いのが出るッスよぉ~! こういうのって、大抵そういう展開ッス!」

一ノ瀬「ちょっと、鳰! 失礼だよ!」

東「13人分もいるぞ? 手伝わなくても大丈夫か?」

一ノ瀬「う、うん。それがね? 広間で皆が来るまで待ってて、て言われて…」

待つ? 皆が来るまで待って、そのあとどうするんだ?

走り「まぁ、いいんじゃないッスかぁ~。それよりも、ここ、どうッスかぁ~!」

ここ? 広間のことか?

一ノ瀬「綺麗だよね。真昼ちゃんがホントに一人でやったのかなぁ」

走り「床に絨毯も敷かれてて、センスあるッスわぁ~! とてもザル検査やってた人とは思えないッス~!」

あぁ、あれ、走りもそうだったのか。にしても…。

東「……鉄板があるが…?」

走り「いやッスねぇ~それも含めて、センスあるって言ってるんスよぉ~!」

……皮肉か…。

旧館・広間

少し経ったあと、続々と集まってきた。

犬飼「なぁにぃ~💕 結構イイ感じじゃな~い💕」

寒河江「へぇ、これ全部番場がやったのか…」

首藤「たった一日でこれとは…木下藤吉郎が見たらなんと言うか…」

神長「さすがに一夜で城を建てたという人物は、驚かないんじゃないか?」

生田目「一人に掃除を押し付けるのは忍びなかったが、すごいな」

桐ケ谷「一人でやると言っただけのことはありますよね。ほこり一つも落ちてません」

武智「すご~い! これ番場ちゃんがやったのかぁ~!♪ ……番場ちゃんと一緒の牢屋なら居心地良いいかも……♪」

そして、

剣持「悪い。私が最後だったな」

武智「しえなちゃん、遅刻多いぞぉ~!♪」

剣持「わ、悪かったよ」

11人そろったとき、ガチャッと二人が入室してきた。

英「全員お揃いのようですわね」

番場「純恋子も来たし、これで黒組勢ぞろいじゃねぇのかぁ…っ⁉」

一ノ瀬「…あっ、ホントだ! なんだか久しぶりだねっ!」

走り「兎角さんがモノケモノにやられそうになったとき以来ッスかねぇ~!」

犬飼「あら~、そういえばそうだったかしら~?💕」

武智「あっははは! あんときは危なかったよねぇ!♪ 東さん、目の前でグシャッて潰れるかと思ったよぉ~♪」

神長「よせ。今から食事をするんだ。そんなグロイ話題は避けるんだ」

武智「えぇ~? グロくないよぉ~? むしろ興奮するじゃん!♪」

走り「むしろ変態ッス!」

剣持「武智…少し静かにしてろ」

英「では、今から料理を運びますので、鳰さんを含めて、お手伝いを数人お願いしますわ」

走り「ウチ拒否権なしッスか⁉」

一ノ瀬「あ、じゃあ、私やる」

生田目「私もだ」

桐ケ谷「ボクも…」

生田目「桐ケ谷はダメだ! ケガをしてはいけないからな」

剣持「過保護か!」

寒河江「んじゃあ、あたしもやろっかな」

神長「当然だが、私もやるぞ」

首藤「では、ワシも…」

英「首藤さんは大丈夫ですわ。想像以上に参加してくれて、わたくし感激の至りですわ。これ以上来ていただいても、仕事がなくなりますわ。ありがとうございます」

首藤「ふむ…それなら、ここで大人しく待っていようかのぅ」

英「では、皆さん、お願いしますわ」


英、番場、一ノ瀬、走り、生田目、寒河江、神長の7人が向かった。

ここには、犬飼、武智、首藤、桐ケ谷、剣持、そして私の6人が残った。


犬飼「あなた、見た目は真面目なのに、立候補しなかったのねぇ💕」

剣持「うっ! …す、する前に突っ込み入れて、それでど忘れしたんだ! それに、見た目は関係ないだろっ!」

犬飼「なにそれ? もっとマシな言い訳を用意してほしいわぁ~💕」

剣持「ぐぬぬ…じゃあ、犬飼はどうなんだ!」

犬飼「伊介様って呼んで~💕 あたしは元々手伝う気なかったしぃ~💕」

剣持「開き直りか!」

首藤「手伝わなければならんという決まりでもなかったんじゃ。事実、ワシもダメだったわけだしのぅ」

剣持「首藤は人数が多かったからだろ? はなっからやる気のない犬飼とはわけが違うぞ!」

犬飼「だから、伊介様って…はぁ、もぉいいわぁ…」

東「寒河江がお前のことをそう呼んでるのは、そのためか」

犬飼「そうよぉ悪ぃ?💕」

武智「いいなぁ、あたしも乙哉様って呼ばれた~い♪」

犬飼「春紀に様付けされていいのは、伊介だけなんだからぁ💕」

武智「えっ? 別に最初から春紀さんに呼ばせるつもりで言ったわけじゃないよ?」

犬飼「…………」

武智「あれ~? ひょっとして、自爆しちった?♪」

犬飼「うっさい! ……フン! 試しに誰かに言わしてみればぁ?💕 あたしは死んでもイヤだけどぉ💕」

武智「じゃ、しえなちゃん!♪ あたしのこと乙哉様ってy―」

剣持「死んでもいやだ!」

武智「えぇーけちんぼ~」

桐ケ谷「……柩様……」ボソッ

東「桐ケ谷? 顔が赤いぞ?」

武智「あれ~? だれに言わせたのかなぁ~?♪」

犬飼「あら~?💕 柩ちゃん、なにか言ったのかしらぁ?💕」

桐ケ谷「な、なんでもないです…」

首藤「しかし、寒河江は素直にそう呼んどるのか…」

犬飼「えぇそうよぉ💕」

剣持「寒河江は器が大きいな…」

武智「とてもマネできないよねぇ~♪」

首藤「…ふむ、ワシもクラスメートには言えんのぅ」

犬飼「ま、アンタたちと春紀は違うってわけよねぇ~💕」

なぜお前が上機嫌になるんだ。

桐ケ谷「私は……別に……」ボソッ

武智「んん~? 特定のだれかになら言えるのかなぁ~?♪ それとも、言わせるのかなぁ~?♪」

桐ケ谷「…………」///

剣持「よせ、イジメは見過ごせない」

首藤「おぬし、耳がいいの…」

東「…私はいやだな」

犬飼「へ~?💕 そのココロは?💕」

東「落ち着かないだけだ。ほかに他意はない」

首藤「今はさん付けじゃからのぅ。いずれ外れるのがいいのかの?」

東「別にそういうわけじゃ…」

首藤「おぬしもいずれは下の名で呼べるといいのぅ」

東「っ………お前はいけ好かないっ!」

首藤「ふふっ、じゃから、顔に出とると言っておるのじゃ」

武智「う~ん、誰のことやらさっぱりだよ」

犬飼「ねぇアナタ知ってるんでしょぉ~?💕 伊介にも教えなさいよぉ~💕」

首藤「ふふっ、乙女の秘密じゃよ」

犬飼「なぁにそれ~💕 伊介、ムカつく~💕」

武智「う~ん…誰のことなんだろうなぁ~…」

剣持「……」

桐ケ谷「剣持さんもわからないんですか?」

剣持「あ、ああ、そうだ」

桐ケ谷「いい気味です」

剣持「えっ⁉」

桐ケ谷「えっ⁉」

剣持「…って、なんで桐ケ谷まで驚くんだ!」

桐ケ谷「す、すいません。なぜか口が勝手に」

剣持「そ、そうか…うっ!」

桐ケ谷「っ!」

東「? どうした?」

剣持と桐ケ谷が頭を抑えている

剣持「…いや、軽い頭痛だよ」

桐ケ谷「ボ、ボクも同じです…」

武智「えっ⁉ 大丈夫なの、しえなちゃん⁉」

首藤「武智…桐ケ谷のことも少しは気にかけてやるのじゃ…」

犬飼「頭痛って…大丈夫なの~?💕」

剣持「ああ。大丈夫だ」

桐ケ谷「ええ、ボクも大丈夫です」

首藤「そうか? ならいいが。なにかあったらすぐに言うのじゃぞ?」

剣持「うん」

桐ケ谷「はい。……剣持さん、さっきのはごめんなさい」

剣持「え? あ、あぁ、いや、いいんだ。気にしないでくれ」

桐ケ谷「そう言ってもらえると助かります」

剣持と桐ケ谷はまだ考えるような素振りをしていた。

首藤「…………」

首藤がその様子を黙って見ていた。

英「それでは皆さん、長らくお待たせいたしました」

料理がすべて運び込まれ、黒組全員が広間にそろった。

英「僭越ながら、わたくしが司会をさせていただきますわ」

走り「いよっ、待ってましたッス~!」

英「外野はお静かに願いますわ」

走り「なんかウチに冷たくないッスか⁉」

英「さて、あまり長くお話するのも、皆さんとの仲を考えれば無粋ですわね。それでは、前置きはこれくらいにして、今日は大いに楽しみましょう。皆さん、グラスはお持ちかしら?」

バリーン!

番場「おぉお⁉ わりぃわりぃ、加減の仕方がわからなくってよぉ~!」

英「あら? もう番場さんったら…だれかグラスを回してさしあげて」

走り「なんかウチのときと違うッス…。待遇の平等を訴えるッス!」

一ノ瀬「ま、まあまあ」

寒河江が番場にグラスを渡す

番場「わりぃな」

寒河江「いいってことよ、気にすんな」

英「さて、それでは、皆さん…乾杯!」

「「「「「「「「「「「「かんぱーい」」」」」」」じゃ」…っ!」ッス」♪」💕」

武智「あれ~? しえなちゃん、こんなところにもパソコン持ってきてるんだね~♪」

剣持「ああ。手放せなくてな」

武智「もぅ~まるで友達いないボッチやろうじゃ~ん!♪ あたしとお喋りしようよぉ~♪」

剣持「お前なぁ…はぁ、まぁいっか。会話だけならパソコンやりながらでもできるからさ」

武智「ホント~! しえなちゃん、やっさし~!♪」

武智が剣持にガバッと抱き付く

剣持「……でも、抱き付くのはなしな?」

宴その1

武智「あれ~? しえなちゃん、こんなところにもパソコン持ってきてるんだね~♪」

剣持「ああ。手放せなくてな」

武智「もぅ~まるで友達いないボッチやろうじゃ~ん!♪ あたしとお喋りしようよぉ~♪」

剣持「お前なぁ…はぁ、まぁいっか。会話だけならパソコンやりながらでもできるからさ」

武智「ホント~! しえなちゃん、やっさし~!♪」

武智が剣持にガバッと抱き付く

剣持「……でも、抱き付くのはなしな?」

宴その2

英「番場さん、今日は一日中ありがとうございますわ」

番場「へっ、気にすんなよ。こっちが好きにやらせてもらっただけだからよぉ…っ!」

英「ふふっ、そうかもしれませんが、やはり言っておきたかったことですので…」

番場「真昼のダイエットにも貢献できたし、こっちもお礼を言いたいくらいだぜ…っ!」

英「あら? ダイエットをなさって?」

番場「ああ、真昼は欲望に忠実だからよぉ、オレが手綱を引かないと色々とセーブができなくなっちまうんだよ…っ!」

英「そうなのですか…少し印象が変わりましたわ」

番場「へぇ? どういう意味でだぁ…っ?」

英「大人しいお方かと思いましたが、わたくしの全くの思い違いでしたわ。真昼さんは清楚で温和で礼儀正しく、それでいて自分の主張を言える方。真夜さんはその真昼さんを陰から支える精神的支柱。そして真昼さんが控えめな方ですので、それの溜まった不満等を発散させておりますのね?」

番場「へぇ? 見事な分析じゃねぇか。たった一日、それもほんの少ししか会ってねぇのに、そこまでわかるとはな…っ! 真昼のヤロウも恥ずかしがってるぜ…っ!」

英「お褒めに与り、光栄ですわ」

番場「……お前になら、真昼のこと、言っても大丈夫かもな」

英「……?」

番場「……あぁ、わりぃ。真昼がまだ言うのはやめてくれって言うからよ。また今度な…っ!」

英「…えぇと、なにを言うか具体的なことでも教えてくれませんか?」

番場「…趣味だよ。真昼のな」

英「趣味…ですのね?」

番場「ああ」

英「なら、良かったですわ」

番場「あん? なんでだ?」

英「少なくとも、悩みなどではなさそうなので…」

番場「……そうだな。悩んじゃいねぇぜ…っ!」

宴その3

犬飼「ねぇ春紀~💕」

寒河江「ん? なんだよ、伊介様」

犬飼「…春紀は、伊介のこと、『伊介様』って呼ぶのイヤ?💕」

寒河江「なんだよ、藪から棒に…」

犬飼「いいから、答えなさいよ~💕」

寒河江「…イヤかイヤじゃないかで言ったら…」

犬飼「……」

寒河江「イヤじゃないさ」

犬飼「…ホント?💕」

寒河江「イヤだったら、そもそも言わねぇって」

犬飼「…そ」

寒河江「…ん~? ひょっとして、ちょっと思い直したのか?」

犬飼「バッカ~💕 そんなんじゃないし~💕」

寒河江「伊介様は気にしないでくれていいんだぜ。あたしも好きで言ってんだからよ」

犬飼「……💕」


宴その4

首藤「皆で食事というのもなかなか乙なものじゃな」

神長「複数人で食事はあまりとらないか?」

首藤「うむ。まあ、職業柄な」

神長「…たしかにそうだな」

首藤「香子ちゃんはそうでもないのかの?」

神長「ああ。私は少し特殊かもしれないが、ここに来る前は、施設にいたんだ」

首藤「ほう? 孤児院かの?」

神長「いや、違うが違わない」

首藤「ほぅ? じゃあ、なんじゃろうのう…」

神長「私のいた孤児院は……いや、なんでもない。この話題はやめとこう。今はまだ首藤が相手でも言いたくはない」

首藤「了解した。では……ワシおすすめの温泉についてでも話そうかの…」

宴その5

一ノ瀬「皆来てくれて良かったぁ~」

走り「何人かは来なさそうでしたッスからね~」

東「そこにはお前も入ってるがな」

走り「人が悪いッスよ~兎角さん! ウチはなんだかんだ言って参加するタイプッスよ~!」

一ノ瀬「なんだかんだ言うんだ……」

東「こいつが素直に参加するわけないだろ」

走り「ひどい言い方ッスよ~!」

一ノ瀬「まあ……」

走り「晴⁉ はっきり否定してくれッス!」

東「……なあ、結局今回のこれに、お前は関係ないのか?」

走り「これ? モノクマとかッスか?」

一ノ瀬「疑ってるわけじゃないけど…鳰の意見を聞いてみたいな」

東「私は疑ってるからな」

一ノ瀬「兎角さん!」

走り「いやいいんスよ、晴」

走りが困ったような顔をする

走り「まあ、ぶっちゃけると、ウチも裁定者っつー立場で主催者側のはずだったんスよ~」

東「はずだった?」

走り「ええまあ。でも、こんなことになるなんて、ウチも聞かされてなかったんで、正直ウチも戸惑ってるんスよ」

一ノ瀬「…連絡がとれないってことだよね?」

走り「ご名答ッス」

東「じゃあ、モノクマとはなんの繋がりもないのか?」

走り「そうなるッス。そもそもあんな技術、現実にあるッスか?」

聞いたこともない。一ノ瀬は当然のことだろう。

走り「だからここは、流れに身を任せるのが一番だと思ったんスよ」

一ノ瀬「…黒組の皆と行動を共にするってことだね?」

走り「またまたご名答ッス」

東「だが、こんなことやって、なんの意味があるんだ。この間にもモノクマは…」

走り「まま、落ち着くッスよ、兎角さん」

走りが私の耳に口を近づける。コソコソ話のようだ。

走り「もう少し経ったら、重要事項が話されるから、それまで待機するッス」

東「…情報の出どころはどこだ?」

走り「単なる噂ッス」

ウインクする走り

適当な理由にしても、もう少しマシな理由を考えろ

宴その6

走りはああ言ったものの、まだ雑談は続いた。
会話をするグループにも変化が生じた。

武智「乾杯しよー♪」

番場「おぉいーぜ…っ! なに飲むよ?」

武智「ビール♪」

生田目「お前、飲める人間なのか…?」

首藤「お主はいくつじゃったかの?」

武智「あたし~? そんなのどうでもいいじゃ~ん♪」

番場「ダメだ! 二十歳越えてからじゃねぇと法律違反だろーが…っ!」

武智「それ真夜ちゃんが言うの⁉」

首藤「それにビール等アルコール類はないぞ? ワシが探したが、見つからんかった」

生田目「すでに探していたのか…」

桐ケ谷「千足さんなら大丈夫ですよ? 綺麗ですから…」

番場「すげぇ論法だなぁ…っ!」

武智「無茶を通り越して、むしろ気持ちいいよね♪」

首藤「…そこはすがすがしいと言っておけ…」

生田目「……そんな……こと……っ」///

武智「やだっ! 千足さん、照れてる⁉」

番場「おいおい…っ! お前でも照れるときがあるんだなぁ…っ!」

桐ケ谷「千足さんはよく照れますよ?」

生田目「よせ、桐ケ谷…それ以上は、恥ずかしい…っ」///

桐ケ谷「恥ずかしがってる千足さんも素敵です」

番場「こりゃ意外な一面を見ちまったなぁ…っ!」

首藤「おぬしはまだそこまで知り合っとらんじゃろう…掃除してたんだしのぅ」

武智「……やばい、ちょっと興奮してきたぁ~~~っ!♪♪」

首藤「どこにそんな要素があったんじゃ…」

桐ケ谷「千足さんは毎日ボクが道に迷わないように手を繋いでくれたり…そういったさり気ないやさしさもまた素敵です」

番場「はぁん…っ! 紳士なヤツなんだな、女なのによぉ…っ!」

武智「気遣いができるってのは、性別関係なく得なことだからね~♪」

首藤「ワシは、気遣いを行動に映すことはできないのぅ」

桐ケ谷「ほかにも、真面目なところとか、真面目なのにどことなく抜けているところもとても魅力的です」

番場「たしかに、完璧な人間ってのはそれだけで引かれるからなぁ…っ! 英も体調が崩れやすいっつーところが良いんだよ…っ!」

武智「うんうんすごくよくわかるよ! しえなちゃんもタイミングが空気読めなかったり、ドジっ子なところが萌えるんだよね~♪」

首藤「一番よく納得できるの。香子ちゃんがどこかズレた発言とかを真剣な表情で言うところを見た時には、さすがのワシも胸が苦しくなる」

番場「なんだよ…っ! お前らとは話が合うなー…っ!」

武智「なんかご飯がより美味しくなったかもっ!♪」

首藤「これはなおさら酒がほしくなるのぅ…つまみもほしい」

桐ケ谷「ほかにどんなのがあるか、もっと話しましょうか」

あーだこーだわいのわいのガヤガヤ。

生田目「…なんだか話題がのろけてきたな…」

宴その7

寒河江「あたし、こんなうめぇ料理食ったの、久しぶりかも…」

犬飼「そんなに~?💕」

走り「腕よりも、どっちかっつーと、材料が良かったかもしれないッスね~」

一ノ瀬「ちょっと、鳰。腕もあるでしょ」

神長「だがしかし、あまり見ない食材ではないな」

東「私は食べたことがないのが多い」

犬飼&走り「「えっ⁉」」

東「? なんだ?」

犬飼「食べたことがないって…本気~?💕」

走り「さすがにそれはマズイッスよ、兎角さん⁉」

神長「材料のおかげと犬飼は言ったが、それは別に珍しいという意味ではないぞ?」

東「そうなのか?」

犬飼「当たり前でしょ~?💕」

寒河江「単純に質が良いってことだよ。東、ひょっとして、あまりこういうの、食わなかったのか?」

東「……キノコ類とか、イノシシ肉とか…」

走り「なんかワイルドッス!」

犬飼「アンタ、いつの時代の人よ…」

一ノ瀬「兎角さん…すごい…!」

神長「大丈夫だとは思うが、念のため言っておくぞ。…一ノ瀬、憧れるなよ」

寒河江「あたし以上に貧しかったのか…」

東「……私は山奥に住んでいたからな」

犬飼「うっそ~💕」

走り「すごいッス! 現代版UMAッス!」

一ノ瀬「鳰、言い過ぎだよ! 人それぞれなんだから!」

寒河江「晴ちゃんはいい子だな」

犬飼「むっ。ねぇ~伊介はぁ~?💕」

寒河江「もちろんいい娘だぜ」

犬飼「うふふ💕」

走り「あ~言わせた感が半端ないッスね~…」

犬飼「なんか言ったぁ~?💕」

走り「な~んも、言ってないッスよ~」

神長「人柄に育ちは関係ないからな」

走り「おぉ~いいこと言うッスねぇ~! さすが神長さん!」

寒河江「まぁ、真っ当に生きてたら、食生活なんてのは関係ないもんだ」

東「真っ当…」

犬飼&走り&神長「「「…………」」」

一ノ瀬「うん! そうだよね!」

寒河江「…わりぃ、本業すっかり忘れてたわ」

宴その8

英「調子はどうですか?」

剣持「ん、今のところ順調! この分だと、あと一時間後にはできるよ」

英「申し訳ございません。危険な役目を押し付けてしまって…」

剣持「ま、いいって。クラスメートだし? こういう縁もあるだろうしね。お友達の頼みは断られないじゃん?」

英「剣持さん…」

剣持「…なんてね。ちょっと格好つけちゃったかな。実際は状況が状況だからな。ボクも協力は惜しまないよ」

英「クスッ。ありがとうございます」

剣持「ただ…このあとは任せるよ?」

英「はい」

波乱の幕開けまで、一時間を切った。
このときはまだ、私たちは特に気にせず、会話を続けていた。

いや、ひょっとしたら、何人か勘の鋭い連中は気づいていたかもしれなかった。
癖のある集まりなのに、一つのグループが沈黙や孤立に陥ることが一度もなかった。しょっちゅう…いや、ずっと会話が続いている。

皆なにかを感じ取っているのだろうか。

宴その9

武智「ねぇ~真夜ちゃ~ん!♪」

番場「あ? なんだぁ…っ?」

武智「真夜ちゃんの趣味はなにかな?♪」

番場「趣味かぁ…オレ個人のものはねぇかなぁ…っ!」

武智「へ~?♪」

番場「ん? なんだぁ? 意外そうな顔してんなぁ…っ! まだ出会って間もないどころか、真昼のヤロウとは一度も話してないだろう…っ?」

武智「うん、まぁね~♪ 番場ちゃん…あっ、昼の方ね? 番場ちゃんずっと掃除してたから、話す機会がなくってさ…」

番場「まぁな。明日からはもう自由に行動してると思うからよ。また絡んでやってくれや」

武智「うん!♪ 楽しみだなぁ~♪」

番場「真昼との会話がか? …オレが言うのもなんだが、変わってんなぁ、お前…」

武智「なんかねぇ? 乙女の第六感が、昼の番場ちゃんとは趣味が合うって、ビンビンくるんだよね~♪」

番場「は? なんだそりゃ…」

武智「あきれちゃった?」

番場「…いや、オレも興味がわいた…っ! お前はどんな趣味があるんだ…っ?」

武智「ん~? んふふふぅ♪ まだな~いしょっ!♪ 二人だけの秘密にしましょ!♪ あっ、三人かな?」

番場「いや、二人でいーぜ…っ! せっかく真昼と仲良くできそうなヤツがいるんだ。しかも、積極的に会ってくれそうな。なら、お邪魔虫は退散した方がいいだろうよ…っ!」

武智「退散…て、できるの? 人格が変わってるだけなんだよね?」

番場「あぁ、できる…っ!」

武智「…なんかよくわかんないけど、便利だねー!♪」

番場「あっはっは! だろ~っ?」

宴その10

寒河江「よっ」

生田目「寒河江か…なんだか久しいな」

寒河江「お互い行動するときのパートナーがいるしな。しかもパートナーの行動がまるで逆だからな。会話なんてほぼしたことねぇだろ」

生田目「なら、こういうときは、いい機会だな」

寒河江「まっ、あたしが話しかけといてなんだが…話すことねぇけどな!」

生田目「ふふっ、たしかに…でも、私たちにも唯一の共通点があるんじゃないのか?」

寒河江「あ~…職業か?」

生田目「ああ。おそらくね」

寒河江「…あんたはなんでなったんだ?」

生田目「…自分で話題を振っておいて申し訳ないが、正直話したくないな」

寒河江「そっか…なら話さなくていいぜ」

生田目「わがままを言ってすまない」

寒河江「いや、あたしも触れてほしくないことだしなぁ。その…就職の理由? ってやつ」

生田目「そうなのか? 不躾ながら、俄然興味が惹かれるな」

寒河江「おいおい、人が話したくないって言ったってのにか?」

生田目「ふふっ…だが、忘れるよ。世の中には知らない方がいいこともあるからね」

寒河江「…たしかにな」

宴その11

走り「おっ⁉ なんか珍しい組み合わせッスね~!」

桐ケ谷「そ、そうですか?」

東「……」

走り「お二人の会話とか想像できないッス~!」

東「想像しなくていい」

走り「どんな会話をしてたんスか?」

桐ケ谷「どんなって…」

東「なにも話していない」

走り「マジっスか⁉」

東「話すことがないんだから、仕方ないだろう」

桐ケ谷「…………」

走り「ちょっとちょっと兎角さ~ん、それはどうかと思いますよ~? せっかくのクラスメートなんですしぃ、もう少し仲良くした方が絶対いいッス!」

東「余計なお世話だ」

走り「…ハァ、もうこりゃダメッス。これだからコミュ症はダメッス。助言する方を間違えたみたいッス。というわけで、桐ケ谷さん」

桐ケ谷「え?」

走り「なんか兎角さんと弾められそうな話題って、ありますか?」

桐ケ谷「え? 急にそんなこと言われても困ります」

走り「なんでもいいんですってぇ~。たとえば~、好きな食べ物とか! ……は、ダメかぁ。兎角さんはカレーしか興味ないッスもんね」

桐ケ谷「無理して話しかけるのは、逆に失礼ですよ?」

走り「おぅふ…って、いい子ちゃんか~い! しかし、それを言われると弱るッスね…」

桐ケ谷「ただ、そばにいるというのも、また別の友情表現になるんですよ?」

走り「な、なんかすごい上級者ッスね…。もはやオーラが垣間見えたッス!」

桐ケ谷「あ、ありがとうございます…」

走り「あ、でも~桐ケ谷さん、千足さんとは沈黙の空気にはならないッスよね? それもまた友情表現に関係あるんスかね~?」

桐ケ谷「……ひょっとしたら、友情表現じゃ、ないかもしれません」

走り「えっ? ちょっとちょっとぉ~! 爆弾発言ッスかぁ~! もっと深く聞いても、いいッスか…?」ニヤニヤ

桐ケ谷「…もう、少しだけですよ…?」///

東「…………」

どこか別のグループに行きたい……。

宴その12

首藤「隣、空いてるかの?」

英「ええ、どうぞ」

首藤「おぬしとは腹を割って話したかったものじゃ」

英「あら? そうなのですか」

首藤「…さっき剣持となにを話しておったのじゃ?」

英「目ざといですわね。武智さんは耳がいいですし。あなたにも気を付けないといけないですわね」

首藤「ふむ。まあ、いい教訓になったじゃろう。それでじゃ、話を戻そう」

英「わたくしと剣持さんの会話ですか…別に大したことではありませんわ」

首藤「なら、今ここで言えないかの…?」

英「ええ。ここではまだ話せませんわ。なにせ…」

英は一呼吸分の沈黙をはさむ。
英が持っていたグラスを、自身の左前方にほんの少しだけ傾けた。
よく見なければわからない仕草だ。

首藤がその先を一瞥する。
監視カメラがあった。

英「皆さんの眼がございますので…」

首藤「ふむ。では、後日、それが聞けるといいのぅ」

英「わかりましたわ。1時間後にはお伝えできると思います。パーティも終わっているでしょうから」

首藤「……ずいぶん危険な橋を渡っとるのぅ」

英「クスッ。こうでもしないと勝てませんわ……久しぶりに緊張感とやりごたえのあることに巻き込まれたんですし…どうせならパーフェクトゲームで勝ちたいですわね」

首藤「…ふふっ、そうじゃな」

宴その13

神長「犬飼」

犬飼「伊介って呼んで~💕 …で、なに?」

神長「…どうしたらオシャレになれるのだ?」

犬飼「…は?」

神長「……」

犬飼「……アンタ、なに言ってるの?」

神長「いや、ふと思ったのだ。私はオシャレというものには程遠い生活を送っていた気がしてな」

犬飼「ふ~ん」

犬飼の顔に鋭い笑みが入る。

犬飼「40過ぎた男と恋愛すればいいのよ💕」

神長「…は?」

犬飼「だ・か・ら、恋愛💕」

神長「いや、そこはわかる。そこに『は?』と言ったのではない」

犬飼「んじゃあ、どこよ?」

神長「なぜ40越えが条件なのだ!」

犬飼「やっぱり、男は40過ぎてからでしょぉ~💕 ダンディで野性味あふれるし、渋くていいじゃない💕」

神長「…だが、ハードル高くないか?」

犬飼「アナタなら大丈夫でしょ💕 オシャレに縁遠いって言ってたけど、それで今の状態なら、結構いいセンいってるんじゃな~い?💕 オジサマの心と身体を鷲掴みしちゃえるじゃない💕」

神長「だ、だが…」

犬飼「い~い?💕 その前に、女の一番の化粧は笑顔。アナタは笑顔の練習をした方がいいわ💕」

神長「え、笑顔?」

犬飼「ほら、笑ってみせてよ💕」

神長「む、むちゃな!」

犬飼「ほら、え・が~お。え・が~お💕」

犬飼が自身のセリフに合わせて手拍子も入れる

犬飼「え・が~お。え・が~お。え・が~お。」

神長「…う、ぐぐぐ…………こ、こうか」ニゴッ

犬飼「…ぶっくっくっくく…あっはははは!」

神長「わ、笑うほどなのか……」

犬飼「はぁ~💕 アナタ無表情で表情つくるの下手だから、少しは表情筋鍛える努力でもしたらどう?💕」

神長「…あ、ああ。精進してみよう」

犬飼「…はぁ。首藤さんにでも聞いてみたら?💕 いきなり伊介だと、正直言うと、経験値足りなさすぎて、教えれないっていうかぁ~💕 レベル1でレベル50の敵は倒せないでしょ~?💕 それとおんなじ」

神長「…すまないがよくわからない。もう少し身近でたとえてくれると助かる」

犬飼「十分身近で言ったつもりだけどぉ……? まぁ、いいわぁ。じゃあ……算数ができないのに、数学なんて余計わからないでしょ?」

神長「ああ、よくわかった。ありがとう。そうか、そういうことだったのか…私にはまずオシャレの初歩の初歩を学ばねばならないのか…。ふっ、冷水を浴びせられた思いだ。目が覚めたよ、犬飼。ありがとう」

犬飼「え、ええ、まあ、納得できたならいいけど…なんか不安ねぇ、アナタ。…将来ヘンな壺とか買わされないようにね?」

宴??

剣持「……」カタカタ

一ノ瀬「あ、あの~剣持さん?」

剣持「ん? どうした、一ノ瀬」カタカタ

一ノ瀬「そんなにパソコンいじって大丈夫? 体に悪くない?」

剣持「大丈夫だ、問題ない。この島に来てからパソコン使用時間は大幅に減っている」カタカタ

一ノ瀬「そ、そうなんだ…で、でも―」

剣持「わかってるよ、一ノ瀬」カタカタ

一ノ瀬「え?」

剣持「君の言いたいことはわかる。『ここに来てまですることなのか?』ということだろう?」カタカタ

一ノ瀬「……う、うん」

剣持「一理ある。いや、むしろ正論だな。でも―」カタカタ

剣持がパソコンの作業を止める。

剣持「それを承知の上でボクはやってるんだ」

一ノ瀬「? それって、どういう―」

剣持「一ノ瀬。悪いけど、英を呼んでくれ」

一ノ瀬「え、あ…わかった!」

一ノ瀬がたったったっと早歩きで行く

剣持「……一ノ瀬。ひょっとしたら、君にはショッキングな真実を知らされるかもしれない…それでも……」

剣持が無言で上を見上げた

パソコンの画面には『COMPLETE』の文字が浮かび上がっていた。

そして、ついにそのときが来た。

英「皆さん、少しお聞きになってほしいことがあるのです」

英の一声に彼女を除いた全員―12人の眼が、英に向けられる。
英は優雅にほほ笑んでいた。

英「ここで、今回のパーティの本題に入ります」

犬飼「ようやくねぇ💕」

寒河江「やっぱり裏があったんだな」

生田目「本題?」

桐ケ谷「…なにか話すみたいですね。このパーティの真の狙いでしょう」

武智「なになにぃー? 面白いこと?♪」

剣持「……」

首藤「ふむ、たしかに1時間じゃったのぅ…」

神長「? どういうことだ?」

番場「へぇ…っ! オレも初耳だぜぇ…っ!」

走り「えっ⁉ 番場さんも聞かされてなかったんスか⁉」

東「それだけ英が本気だったってことだろ」

一ノ瀬「? なんだろう?」

察してた者もいれば、鈍かった者もいた。

英「走りさん、よろしいのですか?」

走り「やらしい人ッスねぇ~。今更ダメ~なんて言えるわけないッス!」

英「ありがとうございますわ」

英は一瞬一ノ瀬を見た…が、なにも言わなかった。

一ノ瀬「…?」

英「ここにいる何人かは気づいておいででしょうが、今一度ここではっきりと宣言いたしますわ」

神長「宣言?」

英「ここにいる13人のうち、一ノ瀬さんを除いた12人が、一ノ瀬さんを標的とした暗殺者でした」

一ノ瀬「………え」

武智「あぁっとぉ…言っちゃってよかったのかな…?」

首藤「言ってしまった以上どうもこうもあるまい……それと武智、殺気が隠しきれとらんぞ」

武智「あっ、ごめ~ん♪ あたしってば、個人的に結構やる気あったからさ~♪ 標的にネタバレしておじゃんになったのが、思っていたよりも許せなかったみたい~♪」

剣持「そんな重い思いを『♪』つけて言うな! あと、目がマジだ!」

桐ケ谷「…今のギャグですか?」

剣持「べ、別に意識してないぞ⁉ 本当なんだからなっ⁉」

生田目「焦って言うと怪しいぞ…」

寒河江「なんか話が逸れてんな。英さん、続き、お願いするわ」

英「お気遣いありがとうございます。先ほどの件ですが、過去形で言ったのにはわけがあります」

―暗殺者でした―の部分か…。

英「皆さんそれぞれ黒組参加の理由があると思います…けれども、事情が変わりました。そのあたりは走りさんにでも詳しく聞いていただけると助かります。今は時間が限られているので…」

走り、か…。

本人を見ると、楽しみで仕方ないといった顔をして英を見ている。
たしか、今回の件に関しては主催者側のはずの走りも想定外の出来事だと言っていたな。なら、英の言っている通り、一ノ瀬を標的にすることができない。できないというよりは、意味がない…の方が正しいな。
ここに閉じ込められている以上、まずここから脱出することが必要だからだ。

英「さて、私たちが今一丸となってやるべきことは、この島からの脱出です。舟や航海術などといったことも重要ですが、それ以前に成功させるのに必要なこと…それは―」

神長「モノクマの撃破…か」

英「その通りです、神長さん。彼…もしくは、彼女を倒すことが大前提となります。それが成功していない現状では、さきほどの問題を話し合うことは狸の皮算用です」

犬飼「ねぇ、さっきから話が回りくどくな~い?💕 もっとストレートに言ってよ~時間、ないんでしょ?💕」

英「ふふっ、それでは、本日のメインテーマに移りましょうか」

まだ入ってなかったのか…前置きが多いな。

英「モノクマを撃破する前にやるべきこと…なんだと思いますか?」

犬飼「なぁにぃ~それ~伊介たちが答えるのぉ~?💕」

武智「こういう質問に答えなきゃ先に進めないって…なんかのゲームで見たよね~♪ た・し・か、ダンガn―」

剣持「やめろ! それ以上は言うな!」

神長「とりあえず答えた方がいいだろう。武器の補充や体調管理、緻密な作戦、優秀なリーダーの確立、我々の団結力、各人の得手不得手の把握、罠を張るのもいいな。それと―」

英「申し訳ありません。答えてほしいのは、それのあとになるのかしら」

神長「なん…だと…⁉ 私が…間違えた、だと…⁉」

剣持「ショック受け過ぎだろ!」

生田目「あと…か。こういう頭を使うのは苦手だ。さっぱりわからない。桐ケ谷はどうだ?」

桐ケ谷「…ぼくは自信ないですけど、モノクマに関する情報収集ですかね」

英「……もう少し」

首藤「…結構答えが出そろった気もするんじゃが、まだ答えがないのかの…」

走り「う~ん、ウチもちょっとわかんないッスね~」

一ノ瀬「…………なん、だろうね」

東「…………」

一ノ瀬が元気ない……。慰めなければ……!

寒河江「あ~ヒントはねぇのかよ、英さん」

英「ヒント、ですか…出すとすぐにわかってしまいますが…仕方ないですね。時間もないですし―」

番場「わっかんねぇから勘で言うぞ。誰かを倒すんだろ…っ!」

走り「戦闘民族かーい!」

剣持「いや、だが待て! よくあることだぞ…ボス戦の前に必ずある前哨戦! それのことを言ってるんだな、番場はっ!」

寒河江「それ現実じゃなくて、フィクションじゃねぇか…」

犬飼「やぁだぁ~💕 ここに中二病がいま~す💕」

剣持「バッ⁉ ち、違うぞ! ボクは決して中二病なんかじゃなくて…!」

生田目「剣持…焦って言うと、怪しいぞ?」

桐ケ谷「まぁでもなんだか雰囲気でわかりますけどね」

生田目「なんだと! …おい剣持…お前、桐ケ谷をどういう目で見てたんだ…っ!」

桐ケ谷「えっ⁉ い、いや、雰囲気で…」

剣持「謂れのない風評被害だっ!」

武智「…で、英サーン。結局どうなのさ?」

英「…ふふっ、正解ですわ」

マジか…!

走り「マジッスか~」ボソッ

走りの心の声が漏れているのが聞こえた。剣持の発想と同じということは、つまり、そういうことなのか…? 英も……なのか?
いや、今はいい。

番場「いやっほぅ…っ! 当たってたのかぁ、オレの勘は…っ!」

英「ええ、さすがですわ、番場さん」

走り「……なんか英先生が番場さんばかり贔屓してるッス~」

犬飼「やぁねぇ~教師失格ねぇ~💕」

武智「生徒に対して格差禁止~♪」

剣持「そうだぞ! 生徒は平等に扱うべきだ!」

神長「皆落ち着け! 授業中だぞ!」

一ノ瀬「違うよ、神長さん⁉」

英「そんな…いやですわ、番場さんが可愛いからって、特別待遇しているだなんて…!」

生田目「そこまでは言ってなくないか…?」

寒河江「…なんかまた話が逸れてきたな…」

桐ケ谷「誰か英さんの手綱をリードした方がいいじゃないですか?」

東「…サドな提案だな…」

首藤「時間がないのじゃろう、英?」

英「そうでしたわ、失礼いたしました…それでは答えを言いましょう―」

英がもったいぶっていた答え―それは。

英「―モノケモノの討伐、ですわ」

翌日

『えーと、ミョウジョウ学園修学旅行実行委員会がお知らせします…。オマエラ、グッモーニン! 本日も絶好の南国日和ですよー! さあて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』

今日もまた最悪なアナウンスで最悪な一日が始まる。

いや、今日から私たちは戦うんだ。

この最悪な日々から抜け出すために―

私は食堂に向かう最中、昨晩のことを思い返す。

回想

英「じつは本日パシリさんにモノケモノの居場所、それとそれらがなにをしているのかの確認をお願いしていたのです。あれらはほかの島を結ぶ橋の門番をしていましたわ」

走り「英さん! 走りッス! ウチの名は走り鳰ッスよ!」

あ、ひょっとして、夕方ぐらいの自由行動のときの、『散歩ッス~』のときか…。

英…いつのまにそんなことを…。

寒河江「なるほどね。だんだん話が見えてきたな」

犬飼「よぅはぁ💕 それを倒すのが先決ってことねぇ~💕」

英「ええ。モノクマさんと戦闘している間に、あんなのが乱入されてしまいますと、さすがに難儀です」

生田目「だが、あれと戦う手立てはあるのか?」

武智「やだなぁ~♪ あたしたちは暗殺者だよ~?♪ 倒す手段なんて挙げればキリがないよ~♪」

英「そういうことです。このまま手をこまねいてモノクマのシナリオ通りにはいかせません」

首藤「なるほど…じゃが、実際どうやって…」

英「皆さん、武器はお持ちでしょう?」

身体が反射的に動く。私は自身の獲物に触れる。
周囲の皆も顔つきが変わっている。何名かは明らかに武器をいつでも取り出せる態勢をとっている。

英「いやですわ。そんな野蛮な目をして…番場さんに確認しましたわよ? 皆さんの獲物は取り上げていないと…」

番場が…⁉

番場「♪~~♪」

そうか…あのずさんな持ち物検査は演技だったのか…。

英「さすがは番場さんですわ。皆さんをうまく出し抜けましたわ」

首藤「…やるのぅ」

英「それでは、番場さん。誰がどんな武器を持っているか、言ってさしあげて」

―⁉

番場「―以上だ」

番場はすべて覚えていた。

犬飼はナックルダスターナイフと小型拳銃。
寒河江はガントレットとシュシュに仕込んだワイヤー。
生田目はレイピア(これは帯刀しているため、まるわかりだったが…)
桐ケ谷は改造銃。
剣持は銃。
武智はハサミ。
首藤は小型爆弾。
神長は銃と手榴弾。
走りは銃とナイフ。
そして、私はナイフ。

番場「ちなみに、オレはスレッジハンマーだ…っ!」

ドスンッ

身の丈ほどあるハンマーが突然番場の目の前に置かれた。どこから出したんだ…。

英「まだ二日目とはいえ、さすがですわね。もう皆さんそれなりに武装していますわ」

犬飼「この島を探索してたら見つかるのよ💕」

武智「そうそう♪」

なんてとぼけたことを言う。

英「ですが、皆さんを信用して正解でしたわ。皆さんなら、パーティでも臆面もなく堂々と凶器を持ち込んでくださると…」

なんだかうれしくない。

首藤「これは手の内を晒されたの」

生田目「桐ケ谷…その銃…」

桐ケ谷「ち、千足さん? ど、どうかしましたか?」

生田目「……いや、なんでもない…」

生田目が頭を抑える。

英「さて、これを踏まえてザッと作戦をお教えしましょう。わたくしたちは、二手に別れます」

神長「二手?」

英「ええ。モノケモノ討伐隊と、モノクマさんの誘導組です」

剣持「質問だ」

英「はい、なんでしょうか?」

剣持「モノケモノは5体いたはずだぞ? どれを倒すんだ?」

英「はい。まず、モノケモノですが、4つの橋にそれぞれ分かれていまして、残りの1体はどこを守っているのかはわかりません」

東「つまり、橋を守っているうちの1体を倒すことになるわけだな」

英「ええ、そうです、東さんの言う通りですわ。いくらわたくしたち13人でも、一度にあの怪物を5体も相手どるのは無謀の極み。蛮勇というものですわ」

走り「じゃ、じゃあ、どれを倒すんスか?」

英「ええ。トラ型にしましょう」

武智「トラ型かぁ~♪ なんかのミニゲームで倒す順番と同じだねぇ~♪ なんだっけ? た・し・か、魔法少女ミラクル☆モノm―」

剣持「やめろ! それ以上は言うな!」

寒河江「いや、ほぼ言っちまってるぜ?」

英「それでは、グループ分けをしましょうか」

東「基準は?」

英「武器の種類と、各人の性格ですかね」

番場「は…っ! じゃあ、とっとと組み分けすんぞぉ…っ!」

走り「―と、いうわけで、グループ分けッス♪」

モノクマ誘導組…首藤、走り、桐ケ谷、英、一ノ瀬

モノケモノ討伐組…東、武智、神長、寒河江、犬飼、番場、生田目、剣持

走り「―と、いう感じになったッス♪」

英「皆さん、決行は明日の20時、夕ご飯が終わってから。モノクマさん組は食堂に集合。モノケモノ組は…現地集合でよろしいですわね? それと、モノケモノ組の指揮は剣持さんに一任しますから」

武智「え~なんか一気に勝率減った気がする~♪」

犬飼「ちょっとぉ~大丈夫なの~?💕」

剣持「お前ら、イジメは撲滅するぞ!」

走り「あっ⁉」

英「どうかしましたか、走りさん?」

走り「…今さらなんスけど、これ、モノクマにばれているんじゃ…」

監視カメラ…!

皆一斉にカメラを見る―が。

東「…なにも起きない?」

というか、こんだけ話し込んでいて、モノクマが邪魔しに来ないのがおかしい…。

英「ご安心ください。カメラの向こう側では、わたくしたちは純粋にパーティを楽しんでいますから…」

東「? どういうことだ?」

首藤「…ハッキング、かの」

剣持「ご名答」

一ノ瀬「⁉ そ、そっか! それで剣持さん、ずっとパソコンを…!」

武智「やっるじゃ~ん、しえなちゃん!♪」

剣持「ふふふっ、褒めろ褒めろ」

英「わたくしたちが序盤のんびりとパーティをしていましたわね? その映像を繰り返し流していますの。もちろん音声は改造してですが…。会話の内容も一部剣持さんが改造していますわ。おそらく、もうそろそろ―」

モノクマ『ねぇねぇ』

「モ、モノクマ⁉」

だれの声がわからなかった。

モノクマ『ねぇ…オマエラいつまでパーティしてんのぉ? そろそろ0時半なんですけどぉ! 不純異性交遊反対なんだよ!』

剣持「私ら全員女だ!」

モノクマ『えっ? じゃあ…正純同性交遊?』

剣持「じゃあよくね⁉」

英「ご心配なく…そろそろお開きにしようかと思っていましたの」

モノクマ『あっそう? じゃあ、手早くね』

てってってと歩くモノクマ。

首藤「のう、モノクマや」

呼び止める首藤。

モノクマ『ん? なになに? プリチィなボクともっとお喋りしたいのぅ?』

なぜ呼び止める…と無言の圧力を送る。

首藤「最後に記念に写真を撮りたい。カメラマンを頼む」

モノクマ『…は?』

犬飼「…ぷくく💕」

武智「…あは♪」

写真…だと?

一ノ瀬「あ! い~な~。晴からもお願いします! モノクマさん!」

桐ケ谷「ボクも写真撮りたいです」

走り「いいッスねぇ~青春の1ページ!」

生田目「たしかに…いい思い出になる」

純心組(+一人腐った海の臭いの持ち主)が言う。

モノクマ『ダメだダメだ! ボクはそんな暇じゃないんだよ!』

犬飼「いいじゃ~ん💕 せ~んせっ💕」

武智「せ~んせぇ、修学旅行の実行委員会なんでしょ~?♪」

イジメっこ組も加わる。

モノクマ『オ、オマエラな~…ボクは―』

神長「先生、お願いします!」

剣持「写真くらいでもダメなのか?」

真面目組が畳みかける。

寒河江「せ~んせっ、頼むよ~」

英「クスッ。ほら、お願いしますわ、モノクマさん」

首藤「モノクマ先生、よろしく頼むのじゃ」

最後に比較的大人な性格のヤツらがしめた。

首藤が懐からカメラを取り出して、モノクマに差し出す

番場「…………」

番場は眼をそむけて、無言のままだ。

モノクマ『……もぉ~しょうがないな~。じゃっ特別大サービスだよ!』

モノクマは差し出されたカメラを受け取る。

犬飼「わ~いっ💕 ありがとっせんせっ💕」

武智「さっすが先生~話せばわかるぅ~♪」

一ノ瀬「ありがとうございます!」

桐ケ谷「ありがとうございます。ふふっ、よかったです」

走り「いや~楽しみッスねぇ~どんなポーズとろっかなぁ~」

生田目「ふふっ、よかったな、桐ケ谷」

神長「先生! 恩に着る!」

剣持「ありがとう、先生」

寒河江「モノクマ、サンキュ」

英「ありがとうございますわ」

首藤「すまんのう、モノクマ先生」

モノクマ『まったく…可愛い我が生徒の頼みとあらば、たとえ骨血になろうとも、願いを叶えるのがボクの役目…!』

剣持「ついさっきまで迷ってたよな…」

モノクマ『ほらっ、文句はいいから。一回しか撮らないよ…ん? どったの? 番場さん』

番場「……なんでもねぇよ」

番場は頭を抑えていた。

英「…………」

首藤「…………」

皆が番場に声をかけている中、英が無言で番場を見つめ、その英を首藤が見ていた。

モノクマ『はい、オマエラさっさと並んじゃって~。背景に鉄板は味気ないでしょ? 入口のドアをバックに鮮やかに撮りましょうねぇ~』

まるで本当の修学旅行みたいだ。不覚にもそう思ってしまった。
思えば写真なんて滅多に撮らなかった…同年代との写真なんて、下手したら初めてかもしれない…。
そんな妙な感慨を抱きながら、私はクラスメートらと共にドアの前に立った。

モノクマ『はいっオマエラ、写真撮るよ~。ポーズつけるなら今のうちだぞ~。まっ、黒歴史になっても知らないけどね~、ウププププ。…って、ちょっと、まだ準備できないの? こらっそこっ! そこだよっ! 剣持さん嫌がってるだろ? 武智さんは剣持さんに抱き付かない! それと英さん! 番場さんの両肩にさりげなく手を置かない! …えっ、いいの、番場さん⁉ …じゃあ、置いてもいいよ。もういいかい? …そこ、ポッキーくわえない! 神長さんそこでこけない! おっ、首藤さん、ナイスフォロー。まったく、どんだけドジなんだよ! 剣持さんはどうして眼鏡落とすの⁉ 生田目さんと桐ケ谷さんはどうして向かい合ってるの⁉ 目線はこっち! 犬飼さんは髪をいじらない! わかったから! もうすぐシャッター切るから! 走りさんはウロチョロしない! ペアがいないからって動かないの! …あーあー突っ込みは聞こえませ~ん。首藤さん、もうすぐだから! 立ってるのが辛いって、ババアか⁉ もう! これじゃいつまで経っても終わらないよ! もういいね! 撮るからね! 待たないからね! はい、チーズ!』

パシャ


…どんな写真かは想像に任せる。

まったく…ろくでもない奴らが集まると、ろくな目にあわない…。


だが…こういうのも、悪くない。

モノクマ『オマエラは自分の人生の展開に納得できなかったことはある?』

『ボクもねぇ、何度かあったんだぁ』

『たとえば、あれはいつだったかなぁ…』

『そうだ! ボクたちクマじゃなくて、パンダが動物園のアイドルになったときだよ!』

『あれは納得できなかったなぁ。なんでたかが白黒の柄に大柄なだけなのに、人気が出るんだろうね』

『それならボクの方が100億倍は可愛いのに…』

『ボクも白黒の柄なのにねぇ~?』

食堂

食堂にいたのは、一ノ瀬、寒河江、桐ケ谷、生田目、番場、剣持、走り

食堂に来なかったのは、英、犬飼、武智、首藤、神長

英は昨晩あんなことを宣言していたのに、今日は欠席か…。犬飼と武智は愚問だな。

東「…おはよう、一ノ瀬」

一ノ瀬「おはようございます、兎角さん」

昨日英からのカミングアウトがあったにもかかわらず、今日の朝食会にも参加していた。

一ノ瀬の心情を慮ろうとも、立場が違いすぎて、慰めの言葉が見つからない。

昨晩も結局なにも言えずに終わってしまった。

なんて言うべきだろうか。

自分の周囲の人間に当てはめて考えてみよう。

カイバならなんて言うだろうか…。

…ダメだ。アイツは絶対に慰めなんかしない。よくわからないことを喋って、終わり。『せいぜい自分の頭で考えろ』って言っておしまいだ。

…クラスメートでなら、寒河江か?

アイツなら…ダメだ。まだなりきれるほどアイツのことを知ってはいない。

やはり、自分の言葉で言うしかないか―

自分…東兎角なら、なんてかける?

…………ふぅ、考えても答えは出ない、か…。

当たって砕けろの精神でいくか。


……いや、砕けちゃダメだろ。

一ノ瀬に声をかけるため、一ノ瀬の隣の席に座る。

東「……大丈夫か?」

結局その一言しか出なかった。

一ノ瀬「うん。大丈夫。晴は負けないし、死なないよ」

……? なんかズレてるような…。

一ノ瀬「晴がモノクマさんにやられないか心配してくれてるんでしょ?」

東「…………」

一ノ瀬「あ、あれ? 違った?」

…まあ、それもそうなのだが。

東「昨日の夜、英から言われただろう? その…私たちがどんな人間でなんの目的があったか…」

一ノ瀬「あっ…………それなら、なおさら大丈夫だよ。晴は皆のこと、信じてるから」

晴の眼には強い意志みたいなものが見えた。

東「……晴……」

寒河江「晴ちゃん、いい子だよな~」

生田目「強いな、一ノ瀬は…」

桐ケ谷「精神力だと、もしかしたらぼくたちの誰よりも上かもしれません」

番場「……すごい……です……」

剣持「一ノ瀬の心配はいらなかったみたいだな」

走り「そうッスね~。まさか昨日の今日だってのに、こうして朝食会に来るだなんて、肝が据わってるッスね~」

皆がわらわらと寄ってきた。

東「…首藤と神長は?」

走り「ほら、例のあれッスよ。準備をしてるんス」

例のあれ……か。さっそくだな。準備、か。二人の武器はたしか、爆弾だったな。だとすると、罠でも仕掛けに行ったか?

寒河江「朝から精が出るよなー」

生田目「ああ。二人ともお互いに気が合う友人みたいなものだろうな」

桐ケ谷「友人、ですか…神長さんはそう思っているんでしょうけど…首藤さんは…」

走り「ウチらも備えるッスかぁ~?」

剣持「まあ、各々自由に行動していいんじゃないか? もともと集団行動は苦手だろうし」

それに賛成だ。

私たちの職業上、複数人での行動は向いていない。あの神長が朝食会に参加を強制しない時点で察することができるだろう。
私も、今日は大人しくコテージで休むとしよう。

そういえば―

東「朝はいつも誰が作っているんだ?」

一ノ瀬「晴じゃないよ?」

寒河江「あたしじゃねぇな」

生田目「私と桐ケ谷でもないぞ」

走り「ていうか、ここで一番早起きなのって…寒河江さんか番場さんっしょ」

番場「私……違う……ます……」

寒河江「違うってよ」

剣持「じゃあ誰だよ⁉ も、もしかして、幽霊か⁉ ば、ばかな⁉ ボ、ボ、ボクは認めないぞ⁉ そ、そそそそ、そんな非現実的なこと⁉」

モノクマ『ボクだったりしてぇ~』

東「そうか、モノクマか…」

モノクマ『リアクション薄っ⁉』

走り「兎角さんはクールビューティを売りにしてるッスからね」

桐ケ谷「それは千足さんもそうですよ」

生田目「…桐ケ谷…」

桐ケ谷「東さんもたしかにクールでお綺麗ですけど、ここは譲れません。千足さんの方が素敵です」

生田目「……ふふっ、さすがに照れるな……」///

走り「あ~またノロケッスか~この話題はもう終わりッス~」

剣持「で、モノクマはなにしに来たんだ?」

モノクマ『え~だって、朝食を誰が作ってるか、気になるんでしょ~? だから、答えに来たんじゃな~い』

剣持「暇なんだな」

モノクマ『ちょっ⁉ なんでそんな喧嘩腰なの⁉ まったく、たま~に親切にしてやったら、この様だよ! もう知らないから! プンプン!』

東「カレーを頼む」

モノクマ『このタイミングで⁉ わかったよ、30分待ってろ!』

一ノ瀬「いなくなっちゃった…」

寒河江「相変わらず神出鬼没だな~」

同感だ…

食堂

モノクマが時間通りにカレーを持ってきてくれた。余分に作ったから、おかわりは呼ぶなと言われた。厨房に用意してあるから、勝手によそえとも……。

そういうわけで、私は黙々とカレーを食べていた。


寒河江が最初にここから離れた。なんでも犬飼に会いに行くためらしい。朝食会を終えてからが一番起きてくれやすいそうだ。


次に走り。また散歩ッス~とか言って、どこかへ行ってしまった。…あいつも大概だな。


そして、生田目と桐ケ谷。セットでいなくなった。砂浜に行くらしい。泳ぐのだろうか。


そして、剣持。ネトゲやってくる…と言って、コテージに戻っていった。ネトゲって、なんだ? 美味いのか?


つまり、今ここにいるのは、

一ノ瀬「…………」

番場「…………」

このメンツだ。

東「今日は英に朝食を持っていかなくていいのか?」

番場「は、はい……めんて……するです……」

一ノ瀬「めんて?」

番場「あ、あうぅ~な、なんでも……ないで、すます……」

夜と差がありすぎてキツイな…。

一ノ瀬「真昼ちゃんはこれからどうするの?」

番場「……コテージで……裁縫……やるます……」

一ノ瀬「へ~! 真昼ちゃんって結構女子力高いんだねぇ~!」

番場「そ、そんな……全然……です……」///

ん? 今照れたのか? それとも惚れたのか? どっちなんだ。

一ノ瀬「裁縫も…そういえば、旧館の掃除だってやったのって、真昼ちゃんだもんね~!」

番場「は、はい……最後は……真夜……だけど……」

一ノ瀬「う~ん、なにかお礼した方がいいかなぁ~」

考える素振りをする一ノ瀬。悩める一ノ瀬もいいものだ。

一ノ瀬「そうだ、これあげる!」

一ノ瀬は制服のポケットから、ストラップを渡す。

一ノ瀬「これ、自動販売機で買ったんだ! 真昼ちゃんにあげる!」

番場「えっ…………うれしい……ます……」

一ノ瀬が番場に手渡す。番場は両手で大事そうに受け取ると、胸に抱きしめる。
それほど嬉しいのか? でも、たしかに私も一ノ瀬からもらったら、同じくらい喜ぶかもしれない。

一ノ瀬「えへへー。喜んでもらえたみたいで良かった!」

番場「……はい……大事に……するます……」

番場はストラップをジッと、かつうっとりと見つめていた。
番場の瞳は色めいて魅惑的に輝き、そしてどこか狂気を感じさせた。

番場「……………………………………………………………………………………………………………」

一ノ瀬が私と会話を始めても、番場はずっとそれに見入っていた。

そのあと、一ノ瀬は自身の、番場は英のコテージに向かった。

私は正午近くまで、そこでカレーを食べた。

食べてる最中、犬飼と寒河江と武智に会った。
犬飼はうへぇ…と言いそうな顔をして、寒河江は眼を丸くしていた。犬飼は遅めの朝食、寒河江はその付き添いだ。毎度のことながら、寒河江には舌を巻く思いだ。
武智はその時にひょっこり顔を出した。こっちも遅めの朝食だ。私に『朝からカレーってキツくないの?』と聞いてきたため、『カレーは完全食だ。まだまだ食い足りない』と言ってやった。武智はドン引きしていた。

三人が去ったあと、私も長い朝食を終えた。当然完食だ。これくらいの量なら、間食だ。ふふっ、思わずギャグを言ってしまった。今日は機嫌がいい。

私が満足を感じながら食器を洗い場に置きに行き、食堂に戻ると、首藤と神長がいた。
首藤は疲れた疲れたと呟いていた。神長は涼しい顔をしている。首藤は年寄りみたいだな。
二人にはお疲れ様とだけ言って、私は食堂を離れた。罠の完成度や準備は滞りなく済んだかなど色々聞きたかったが、ボロが出るのを避けるため、あきらめた。

プールサイドに英と番場がいた。英と番場はパラソルを差して、その陰で机にハーブティーを用意して、椅子に座って談笑していた。
目が合ったが、英は微笑むだけ、番場は頭を少しだけ下げて挨拶した。
私も顔を少しだけ下げ、挨拶を返して素通りした。

コテージに入る直前、剣持のコテージから叫び声が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう…私は自分のコテージに戻った。

それからは、誰とも会わずに時間をすごした。
カレーを食い過ぎたのか、昼食と間食、夕食はとらずにすんだ。


そして、約束の時間がきた。

20時である。

ジャバウォック公園

向かった先はトラ型モノケモノが陣取る《2の橋》の目の前の茂みだ。
モノケモノからは遠くて、人工知能でもない限りなにも思わないだろう…が、これも職業病というもので、身を隠す方が落ち着く。
モノケモノの背後に橋。その両脇にモノケモノよりも2倍ほどある樹木の並木(足場に使えそうだ)。
モノケモノの陣取る道は私たちの隠れる茂みの目の前の道路と、T字路になるように重なっている。私たちのいる道路が《一》、モノケモノ側が
《I》の部分だ。

私が着いたときには、すでに先客がいた。

犬飼「あら~?💕 遅い到着ね💕」

剣持「まったく…緊張が足りないな」

神長「剣持は少し身体の力を抜くんだ。指揮が苦手なら、私がやろうか?」

寒河江「よっ、東も到着か」

私が5番目だった。まさか、

東「犬飼が私より早く現地入りしているとはな…」

犬飼「なぁにぃそれぇ💕 伊介ムカつく~💕」

寒河江「あたしも伊介様に連れられて来たからな。時間にルーズだけど、暗殺にはきっちりやるらしい」

と、そこで。

番場「よお…っ! わりぃ、少し遅れた…っ!」

生田目「もう皆いるのか?」

神長「いや、大丈夫だ。今20時になった。時間丁度だ」

これであとは―

剣持「あとは武智か……」

犬飼「なぁんか、想像通りっていうかぁ💕 遅刻してもおかしくないヤツが遅刻したわねぇ💕」

番場「ったく、時間も守れねぇのかよ…っ!」

生田目「来てない以上は仕方ない。これからどうする?」

寒河江「一応合図が来るってことなんだが…どんな合図なんだろうな」

剣持「ああ」

そのとき―

ドォン!!!

空に巨大な花火が打ち上げられた。

番場「おぉおおぉ…っ! いいじゃねぇか…っ! これぞ《和》だな…っ!」

犬飼「あらぁ?💕 きれいな花火💕」

生田目「こんなときに一体誰が…」

寒河江「……いや、ていうか、あれじゃね?」

東「まぁ、そうだろうな。間違いない」

剣持「合図だ!」

なんて派手な合図なんだ。
誘導組はちゃんとやれてるのか不安になるが、それはあっちも思っていることだろう。

一ノ瀬が待ってるんだ。

番場「にしてもよぉ…っ! あいつはまだなのかよ…っ!」

剣持「武智……っ」

生田目「仕方ない。あいつ抜きでやるしかないだろう」

寒河江「なんかあったのかねぇ…」

剣持「じゃあ、ザッと作戦を伝えるぞ」

剣持「第一にあのトラ型をあそこからこちらに引き寄せることが重要だ。倒す方法は罠による爆撃、つまり、地雷だ。首藤の特製の爆弾、聞いたところによると、一撃で倒せるそうだ。ボクたちが全員無事で帰れる可能性が一番高い。
では、引き寄せる方法だが、トラ型がボクたちに対して敵意を持たないと動かないだろう。加えて、あのトラは四六時中あそこを守護している。これは走りに確認したから間違いない。0時過ぎの深夜及び日が昇る前の早朝でもモノケモノは門番として稼働していたそうだ。ここから考えるに、モノケモノは自動式。だから、ボクたちがこうして姿を隠すことに意味がないかもしれない。モノケモノの目の前で弁当を広げてもきっと襲われないだろう。でも、万が一のことがある。あのトラケモノの危険判定のハードルがどれくらいなのか、現状では今一わからない。今回の作戦は時間が足りない。別に誘導組を信用していないわけではないが、早く終わらせるに越したことはない。
そこでだ。トラケモノが絶対敵意を向けるようになることをする。それは―攻撃だ。それも、そこそこ強力な。そう。我々の狙いは短期決戦。相手がロボである以上、長期戦はこちらの不利。これはいくら数の利があろうと覆らない。
話が逸れたな…。相手をこちらにおびき寄せて、罠で仕留める。誘導は神長が持っている手榴弾。罠は首藤が製作した自作の巨大な地雷。この2コンボで壊すぞ。………ん? じゃあ、神長とボクだけで十分じゃないかって? そ、そんなわけないだろう! ボクが不安になって……じゃなくて……もしこの作戦が失敗したら、そのときこそ直接戦闘になるんだ! ボクと神長は肉弾戦は不得意だ。だからお前たちにやってもらうんだよ。さて。これだけアサシンがそろったんだ。無傷で圧倒的に、パーフェクトゲームで勝とうぜ!」

剣持「じゃあ、それでは、神長さん……やっちゃって~」

神長「あぁ、いくぞ!」

神長が手榴弾の安全ピンを口で噛んでとり、トラケモノに向けて放り投げた。

手榴弾はトラケモノの口元に落ちて、そして―

ボンッ

と、音がして、爆発した―かに見えたが、

起こったのは爆発ではなく、

寒河江「……煙?」

生田目「随分煙が出る手榴弾だな」

トラケモノの姿を覆い尽くし、あたり一面が煙で包まれる。

番場「なんだぁ…っ? 可愛い爆弾だなぁ…っ!」

犬飼「……ていうかさぁ、煙幕じゃないの? これ」

全員が神長を見る。

神長「…………不覚!」

……え?

神長「すまない……手榴弾と間違えて、発煙弾を投げてしまった……」

剣持「なんでだぁぁぁぁぁぁぁ⁉」

まさか、ここまでなのか…。

剣持「なかなかないよね⁉ 一応ボクらアサシンだよ⁉ 一番ミスしちゃいけないときにどんなミスしてんの⁉」

神長「本当にすまないと思っている…らしくもない饒舌とテンションの剣持に巻き込まれて、私もテンションが上がってしまっただけだ。すまない」

剣持「おいなにちょっとボクのせいみたいに言ってんの⁉ 絶対に違うだろ⁉」

寒河江「まぁでも、神長の言いたいこともわかるよ。ちょっとあれ? ってあたしも思ったしな」

生田目「人間誰しも過ちはある。一度過ぎたことは忘れようじゃないか」

剣持「お前ら優しすぎだろ⁉」

犬飼「でもぉ~💕 正直死亡フラグだなぁ~て思ってたからぁ~💕 伊介は別に予想の範囲内よぉ~💕 だからアンタも落ち着いたら~?💕」

番場「指揮官殿が一番おろおろしてどうすんだよぉ…っ!」

剣持「…ぐぬぬぬ、納得いかない! 皆甘やかしすぎだろ…!」

神長「本当にすまない! お詫びと言ってはなんだが、私を殴れ!」

剣持「なんでそうなるんだ⁉ でも殴る! 殴らせろ!」

寒河江「ば、ばか、なにしてんだ! あんた一応指揮官だろ! このくらいで動揺してんじゃ……」

生田目「皆静かにするんだ。こんなに騒いでいたらモノケモノに―」

犬飼「もう、遅いんじゃな~い?💕」

まだあたり一面が煙に覆い隠されているが…二つの眼が、こちらを睨んでいる。

赤く光っている。光は色濃くなっていき―

番場「あっはっはっは…っ! あれこそ激おこプンプン丸ってやつじゃねぇのかよぉ…っ!」

東「……っ⁉」

身の毛がよだつとはまさにこの状態だと悟った。

東「来るぞ!」

直後に、トラケモノが猛スピードで突進してきた。

躱したがしかし、ゴオッと風と音がすぐそばを過ぎる。

自分たちがさっきまでいたところを、トラケモノが通り過ぎていった。

あおのあとは茂みなど欠片も残っていなかった。

私は傷一つ負わずに、避けれた。それでも念には念を入れて、私は樹木に上る。

東「……ほかの皆は大丈夫なのか……?」

東のいる樹木とは反対側の樹木の地上にある茂み

犬飼「はっや~い💕 危なかったわねぇ~💕 他の連中はどうなったのかしら~?💕」

寒河江「さぁてね。まっ、仮にも暗殺者だし、さすがに死んじゃいねぇだろ」

剣持「下してくれ! 一人で歩ける」

寒河江が剣持を脇に抱えていた。

寒河江「ケガねぇか?」

剣持「ない! …ありがとうな」

寒河江「いいってことよ。全員無事生還が目標だもんな」

犬飼「むぅ~💕 ねぇ伊介の心配は?」

寒河江「伊介様そんなに弱くないだろ?」

犬飼「……まぁね💕」///

剣持「おい、そんなことやってる場合じゃないだろ。作戦を練り直さなきゃ」

犬飼「アンタ、次は自力で逃げなさいよ…」

剣持「あ、ああ、なんで、すごむんだ……?」

犬飼「…ふん」

寒河江「あはは……次は伊介様のこと、一番最初に守るからさ。機嫌直してよ」

犬飼「……ほんとに?」

寒河江「ああ」

犬飼「……わかった💕」

剣持(なんだこの茶番……って言ったら犬飼に殺されるんだろうなぁ…)

剣持は軽くため息を吐く。

剣持「しかし、皆はぐれてしまったな…無事だといいけど…」

生田目「おい、東!」

東「生田目、無事か! …それと、神長か」

神長「……助けてもらってありがとう」

神長は大人しく生田目の脇に抱えられていた。

東「ほかの連中は?」

生田目「一応寒河江が剣持を抱えて跳んだところは見た。あとの連中も大丈夫だろう」

東「そうか。ひとまずは安心だな」

地上に降り立つ東。神長も生田目から降ろしてもらう。

神長「くっ…私としたことが、一生の不覚!」

生田目「まぁ、失敗は誰にでもある。まずはこの局面を乗り越えようじゃないか」

神長「………ああ、そうだな」

神長が落ち着いたみたいなので、トラケモノの様子をうかがう。

トラケモノはゆっくりと動いている。赤眼は光ったままだ。
なにで私たちを確認しているのだろうか。熱か? 音か? 赤外線か? モノクマ自身の技術力を見ていると、どれでも不自然ではないし、すべて搭載してても違和感がない。

先手必勝とは言うが、私はナイフ。無傷のトラケモノに対してだと、攻撃とは呼べない。
せめて、爆発で破損した部分に追い打ちをかけることくらいしか…

仕方ない。

東「神長…今度こそ手榴弾を―」

生田目「おい、あれって…!」

生田目が指さした方には、

番場がスレッジハンマーを片手に、トラケモノの前に仁王立ちしていた。

犬飼「…アイツ、死ぬ気なの?」

寒河江「そんなわけないだろ、アイツはなにするつもりなんだ!」

剣持「うっ……もはや胃が痛くなってきた…」

寒河江「指揮官メンタル弱っ⁉」

番場「よぉ…っ! 派手にやってくれたじゃねぇか…っ!」

番場がスレッジハンマーを強く握る。

トラケモノが番場を確認したように赤眼が強く光る。

番場「お返ししてやるぜぇ…っ!」

番場がスレッジハンマーを持ち上げて、かまえる。

東「ばっ―」

声をかける前に、トラケモノが番場に体当たりをした。

番場が飛んで来たトラケモノの鼻先をハンマーで叩き付ける。

衝撃波が起こる。

東「うっ!」

生田目「あぶないっ!」

番場が押し負け、私たちの方に飛んでくる。生田目が番場を受け止めた。

神長「大丈夫か?」

番場「…っつー効くなぁーやっぱしぃ…っ!」

東「バカか、お前! 死ぬところだったぞ!」

番場「でも、隙は出来たんじゃねぇのか?」

え? と、言う前に、

神長「ああ、今度は間違えていない。完璧だ」

神長が手榴弾をモノケモノの顎の真下に投げつけた。

ドゴーーーーーーーーーーーンッッッ!!!

爆音が響きわたる。

たしかに―今度は手榴弾だ。

東「でかした!」

だが―

生田目「丈夫だな」

トラケモノは立っていた。

しかし、まったく効いていないわけではなかった。下あごが完全に吹き飛んでいる。

東「……畳みかけるぞ!」

生田目「ああ!」

私と生田目が同時にトラケモノに向かう。

犬飼「あら?💕」

寒河江「考えることは同じかね」

犬飼と寒河江も向かい合っていた樹木の茂みから出てきた。

トラケモノは突進する気配は見せない。

首藤の罠とやらにハメるには、もう少し弱らせるか?

剣持「首藤の地雷はそのモノケモノの後ろにある! そのままそいつを押せ!」

押すのか…そんな力仕事―

寒河江「あたしの出番かな」

寒河江がそう言った瞬間―

東「待て!」

寒河江「⁉ あぶねぇ!」

犬飼「きゃ⁉」

寒河江が犬飼に抱き付いて、押し倒す。

犬飼のいたところを、レーザーが通った。

生田目「間違いなく、モノクマ作だな」

東「まったくだ……」

寒河江「伊介、大丈夫か⁉」

犬飼「え、ええ、まあ……ありがと」///

トラケモノは犬飼と寒河江の方に照準を定める。

東「まずい…!」

私は持っていたナイフをトラケモノの消えた下あごに投げた。

見事に刺さり、ショートを起こす。

生田目「よしっ、頭を切り落としてやる…!」

トラケモノは身をかがめる

東「! 生田目、止まれ!」

生田目「⁉」

トラケモノはその場で360度横向きに回転した。

ただの回転ではなく、シッポを振り回して。

生田目「ぐっ……」

生田目は刀で防御したものの、勢いは殺せず、真横に飛んでいく。

東「生田目!」

身震いする―

東「くっ!」

横に飛んだ。

さっきまで立っていたところを、トラケモノが通り過ぎる。突進だ。

東「…くそっ!」

???「な~んか、手こずってるねぇ~♪」

生田目が飛んでいった方向とは逆から、知った声が聞こえた。

剣持「……た、武智! お前、今までどこに…!」

武智「ごめんねぇしえなちゃん♪ それと皆♪ 武智乙哉、ただいま帰還しました♪」

東「お前…っ!」

私が武智に詰め寄ると、

武智「……」

武智が私を押し倒す。

東「なっ!」

すると、私がいたところをレーザーが通っていった。

武智「あぶないねぇ」

東「…………すまん。助かった」

武智「あたしがどこにいたかよりも、まずはアイツでしょ?」

犬飼と寒河江も私たちの隣りに並ぶ。

犬飼「それもそうねぇ~💕 アンタはアイツのあとでぶっ[ピーーー]から💕」

武智「伊介サ~ン、勘弁してよぉ~♪」

寒河江「まったく…でも、無事でよかったよ、ちっとは心配したんだからよ」

武智「ごめんごめん♪ 誠意は働きで返すから♪」

トラケモノがこちらに近づいてきた。

東「さて、あいつを倒す方法だが―」

剣持「作戦は…実はまだ浮かんでいない…」

犬飼「りょ~か~い💕 じゃ、ごり押しでいくわよ~💕」

寒河江「ごり押しか…あたしの好みだな」

武智「もともと作戦なんていらないって~♪」

番場「そうだな…と言いたいところだが…」

あ、番場。復活したのか。

発煙弾がトラケモノの手前で破裂する。煙がまたしても充満する。

番場「神長に策がある…っ! オレが今から伝えるから、しっかり聞け…っ!」

いやな予感がした。





犬飼「え~それあたしきつくな~い?💕」

寒河江「あたしも頑張るって」

武智「ふ~ん、ま、いいんじゃな~い♪」

東「私はとくに異論はない」

番場「よしっ、じゃあいくぜ…っ!」

煙がはれる。

トラケモノはずっと動かなかった。

どうやら目視での把握のようだ。なんだそのポンコツ性能。

東「じゃあ、いくぞ!」

武智「あいあい♪」

私と武智が同時に走りだす。

向かった先は当然トラケモノだ。

トラケモノは私たちに照準を合わせる。

トラケモノは一回転してシッポを振り回す。

私は前転で回避して、武智はジャンプで避けた。
避けと同時に、私と武智はトラケモノから見て重なるように走る。つまり、一直線だ。
私が前で、武智は後ろ。

トラケモノが私たちを把握する。

攻撃は……計画通りの、突進だった。

かなり近くまで接近していたためだろう。
レーザーでは避けられたときに隙が生じる。
もう一回シッポを回す時間はない。

私は避けが甘かったのか、右腕を少しかすめる。
武智は避けきった。耳がいいどころか、身体能力は全体的に高いな、こいつ……。

武智「いったよ♪」

東「行ったぞ!」

私たちのさらに後方には……番場がいた。

否、番場しかいない―

寒河江「さすが東と武智。ドンピシャだぜっ!」

犬飼「まったく、こんな地味な脇役なんて~伊介不満~💕」

寒河江と犬飼がトラケモノを挟み込むように、両脇に移動していた。

二人の手には同じもの―ワイヤーだ。

寒河江のワイヤーを犬飼も持ち、トラケモノの足にひっかける。

トラケモノは思いっきり態勢を崩す。前のめりに倒れこもうとした。

番場「いらっしゃ~い…っ!」

番場がハンマーをバットのように構える。

番場「だらっしゃ~~~~~~…っ!!!!!!」

番場が下からかきあげるようにハンマーを振った。
ハンマーは丁度トラケモノの亡き下あごにヒットした。

番場「番場真夜選手~ホームラン…っ!」

トラケモノが後方に吹っ飛んでいった。

剣持の言う地雷とは反対の方向―つまり、橋の方へと。

寒河江「おおっ!」

犬飼「わぁっ、すっごいばか力💕」

武智「うわぁ~怪力だねぇ~ベーブルースも真っ青なんじゃな~い?♪」

東「決まったな」

トラケモノは仰向けに倒れたままだ。

剣持「すごいな、皆。でも、地雷を活用して……ブツブツ」

神長「見事だ」

剣持と神長も出てきた。

剣持「終わったのか?」

寒河江「確認とれねぇよな?」

犬飼「はぁ~伊介、疲れた~💕」

番場「あっはっは、十分休憩ぃ…っ!」

武智「さすがにもう動けないんじゃない?♪」

東「……さて、武智」

武智「んん?」

東「どこにいたんだ?」

武智「もぅ、兎角サンこわ~い♪ それに、あたしだけじゃないじゃ~ん、遅刻者♪」

東「は? だれだ?」

武智「誰って…ひどいな~♪ ほら、千足サンもいないじゃん?♪」

剣持「あ……そうだよ、生田目が!」

神長「たしか飛ばされたな……」

寒河江「探しに行くk―」

東「…っ⁉」

死の危険を察した。

橋を見る―と、トラケモノが立っていた。

あの構えは……突進⁉

東「皆、避けろ!」

言ったと同時にトラケモノが突進してきた。



私は犬飼を突き飛ばす。



番場が神長をものすごい勢いで引っ張った。



寒河江が私に突き飛ばされた犬飼を抱き留めて、より遠くに走る。



そして―



剣持「武智!―」



珍しく油断しきっていたのか、武智はまだ避けの態勢だった。



武智「うわっ―」



武智を突き飛ばした剣持は、そのまま―




ゴシャッ




武智「しえなちゃんっ!」



武智の声に珍しく悲しみと後悔があった。

トラケモノの突進を直撃で受けた剣持は、そのまま見事に直線を描いて、ジャバウォック広場に飛んでいく。
トラケモノも中枢が番場のハンマーで打ちぬかれたのか、勢いが押し切れなず、剣持のあとを追うように行く。

一人と一体が向かった先は、

寒河江「おい、あっちって……!」

東「首藤の地雷が―」

言い切る前に、



ドゴーーーーーーーーーーーンッッッ!!!



大爆炎が起こる。

武智「………うそ………」

番場「マジか…っ!」

犬飼「…………」

寒河江「…………っ」

東「…剣持……」

神長が樹木の茂みに頭から突っ込んでいた。

武智「……そんな……しえな―」

武智がなにかに気が付いたように、急に走り出す。

⁉ そうか! あいつは目もいいんだな!

私が察して後を追う。

足音から、寒河江と犬飼と番場も来ているようだ。

焼け跡で剣持を見つけた。

遠くにトラケモノの残骸らしきものも見えた。

剣持「…………」

武智「しえなちゃん! しえなちゃん!」

武智が剣持に駆け寄る。武智が剣持の身体に触れるのを我慢したまま声をかける。

武智「しえなちゃん! しえなちゃん!」

剣持「…………」

番場「おいおい、冗談だろ…っ!」

剣持は仰向けに倒れ、ところどころに服が破けて火傷が見え、骨も何本か折れているのがわかった。眼鏡もどこかへいったのだろうか。

東「武智、落ち着け。とりあえず、息があるか確認してからだ」

寒河江が武智を後ろから羽交い絞めにして、剣持から引き離す。

私は、剣持の腕をとり、脈をとった。

神長「どうだ?」

神長も来た。神長は頭に葉っぱをいっぱいつけていた。

ふざけるな…っ! と言いたかったがやめた。きっとふざけてなんかいないから。

だって、彼女はドジだから。

東「…………」

東「大丈夫だ」

場の全員がホッと息をのむ。

武智「しえなちゃんしえなちゃん!」

寒河江が武智を離す。

武智が剣持のそばまで駆け寄り、膝を地面につける。

武智「しえなちゃんってばぁ……っ!」

剣持「…………っ」

武智「…っ!」

剣持「う、うるさいぞ……たけち……」

剣持が目を開ける。

この傷で目を覚ますなんて…なんだかんだいってこいつもアサシンか。
腐っても鯛とはこのことかも。

剣持「よかった…よ………おまえが……ぶじで……」

武智「しえなちゃんしえなちゃん! ごめんよぉ…っ。緊張といてて……っ。まったく動けなかったよぉ……っ」

剣持「しかた……ないさ……だれだって……そういう……ミスは……する……」

寒河江「そうだぜ、武智。さっきなんて、まさにそれだったしな」

犬飼「ほんとほんと。ねぇ~神長さん?💕」

神長「……許せ」

番場「な~に言ってんだって。次は成功したじゃねぇか…っ! よくあるこった、気にすんな…っ!」

武智「…ぐすっ」

これまた珍しい。武智が泣き顔だ。

武智「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

剣持「おい、おい……まるで……しんだ……みたい……じゃないか……」

武智「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

剣持「おもいよ……たけち……」

武智「うっ……ぐすっ…………ごめんねぇ…っ。すぐどくよぉ…っ」

剣持「いや……かるく……してくれ……そのまま……で、いい、から……」

武智「え? でも……」

剣持「はなれられると……みえなくなるだろ……? ぼく、いま、めがねないんだから……おまえ……しか……みえないんだよ……おまえもみえなくなると……いやなんだよ……」

武智「…………ぐすっ…………うんっ♪」

まあよかった、だれも死なずにすんで…。

寒河江「見たところ急所じゃなかったみたいだな」

番場「はっ、さすが指揮官…っ!」

神長「それは関係ないぞ」

犬飼「いいのよ。ほんとに空気読めないんだからぁ💕 あと、その葉っぱいつまで頭に乗せてんの? 目障りなのよ💕」

神長「なん…だとっ…!」

寒河江「ショック受け過ぎだって…」

ほんとによかった。

犬飼「にしても、アンタもそんな顔すんのねぇ~💕 いいもの見ちゃった💕」

まったくこいつは……。

武智「……ぐすっ……ぐすっ………ハァハァ」

無事にすんでよかっ………ん?

武智「ハァハァハァハァハァハァ」

犬飼「ちょっ、なにこいつ⁉」

神長「おい、どうしたというんだ⁉」

番場「安心したら、気でもおかしくなったのかぁ…っ!」

寒河江「その突っ込みはおかしい!」

武智「い、いや、別に、うれしすぎて、ちょっと……欲情しちゃった…」

剣持「なんでだ⁉」

あっ、復活した。

武智「だって、こんなボロボロの状態でさ、武智しか見えないって言ってさ、眼鏡もなくなってギャップ萌え見せつけちゃってさ? もうこれ誘ってるよね? 確実に誘ってるよね? そうだよね?」

剣持「おまえなにいってるの⁉」

寒河江「おいっ、お前どうしたというんだ、急に!」

武智「だって……だってだってだってだってだってだって……仰向けなんだよ⁉」

剣持「だからなんだよ⁉」

武智「もはやこれはGOサインと受け取っていいんだよね⁉」

剣持「だからなんでそうなるんだ⁉」

寒河江が武智を再び羽交い絞めにする。

武智「切らせろ切らせろ切らせろ切らせろ!」

犬飼「ちょっ、アンタ、さっきまでのしおらしい感じはどこいったの⁉」

神長「ほんとに気でも狂ったのか⁉ ハサミしまえ!」

剣持「……そういえば、こいつはちょっとへんたいなふしが……ガフッ」

剣持が血を吐いた。

寒河江「剣持⁉ とりあえず落ち着け! 寝てろ! こいつはあたしらで見張っとくから!」

剣持「いや……もうちかくにいるってだけで…ねれない…」

重症だな。

まあ、こんだけ喋れるなら剣持も大丈夫だろう。

犬飼「あんたは随分落ち着いてるわね? 武智のこういう性格、知ってたの?」

番場「あぁん⁉ ……まぁ多少はな、趣味なんて人それぞれだしな…っ!」

犬飼「あっ、そう」

神長「趣味の域を超えてる気がするが……」

あとは、生田目を回収して―

殺気をわずかに感じ取る。

東「皆⁉ モノケモノがっ⁉」

トラケモノがこっちを見ていた。レーザーを出す気だ…!
すでに左後ろ脚、右前脚、上あごは全壊。腹部も中の回線などが丸見えだ。ほかの箇所も煙をあげていたり、外殻が吹き飛んでいたりと、満身創痍である。人体ならば、確実にあの世行きだ。しかし、赤眼の光は失っていない。

皆一斉に逃げの態勢に入る。


寒河江が犬飼の手を引く。


番場は神長を思いっきり茂みに投げ込んだ。



武智は剣持を抱き上げ、跳躍――する直前に。



ザンッ



トラケモノの首がゴトリと落ちる。

トラケモノの赤眼が光を失った。

トラケモノが小さい爆発を起こした。仮面ラ○ダーの悪役みたいな終わり方だ。

生田目「皆、待たせてすまなかった。想像以上に飛ばされてね……それと―」

生田目がトラケモノの爆煙から姿を現す。
その持っている刀剣には刃こぼれは一切なかった。

生田目「―いいとこどりして、すまない」

ダメージを受けたか疑うくらいに爽やかな顔をしていた。



こうして、本日最重要のミッションはクリアした。


死亡者0


甘い採点だが、パーフェクトゲームとしてもいいんじゃないか…と、そんなことを思った。

モノクマロック

武智「ここだよ」

武智に連れられた場所は、モノクマの顔岩が4体ある場所だ。なんかで見た覚えが……クナイ投げの練習をする前に教材で見た気がする。なんだったかな。

犬飼「ここが、アナタが遅刻した理由~?💕」

武智「うん♪」

現在武智は私と犬飼の間に挟まれて行動している。
剣持は寒河江におんぶされて眠っている。その隣りを生田目が歩く。
番場と神長は一行の最後尾に並んでいた。

東「ここがなんだと言うんだ?」

武智「それがね、偶然地下への入り口を見つけたんだよ。……でも、おかしいな~? 今はそれが見つからないんだよ~」

犬飼「やぁだぁ~適当吐いてんじゃないでしょうねぇ💕」

武智「もう、そんなことしないよぉ~♪」

犬飼「どうだか💕」

寒河江「まあ、とりあえず探してみるか?」

???『その必要はないよ』

東「この腐った海のような声は……モノクマか!」

モノクマ『ピーンポーン! でもひどいなぁ東さん。腐った海のよう…って、最悪なたとえだよ!』

東「どうでもいい。それより、なんでここにいるんだ?」

冷や汗をかいた。
他の連中も固唾をのんでいる。
当然だ。本来ならいないはずだから。
誘導組は無事なのか?

モノクマ『心配しているのかなぁ?』

東「なにが……! 質問に答えろ!」

モノクマ『ウププププ。その質問に答える前にオマエラの不安を解いてやるよ』

???「皆さん」

私たちの後ろから声がした。

英「お疲れ様です…今しがた見てきましたよ。皆さんの戦果を…」

走り「いや~さすが黒組参加者ッス! ウチも高みの見物できて、最高の気分ッスよ~」

首藤「もう少しマシな労わり方ができんのか……まったく。それはそれで、皆、よくやったの。一人も死なずに生還するとは、ワシは感激じゃ」

桐ケ谷「皆さん、すごいです。お疲れさまでした。千足さんも、ご無事でよかったです」

一ノ瀬「みんな……みんな……! よかったよ、よかった! 誰も死んじゃってなくて…ホンットに、よかったよ!」

一ノ瀬……。

不覚にも涙が出そうだった。

モノクマ『いや~さすがっすわ。ぶっちゃけ黒組なめてましたわ。まさかモノケモノがやられるなんてね。ウププププ』

なんだ、こいつの、この余裕…。

犬飼「ねぇ~早くしてくんない?💕 もう疲れて眠たいんだけどぉ?💕」

生田目「そうだ。急いで剣持を治療しないと……」

神長「用があるならさっさと済ませてください」

武智「もう疲れてんだからさ~モノクマちゃんお呼びじゃないんだよね~♪」

番場「早くしろよ、このジャマ教師がぁ~~~っ!」

寒河江「悪いな。皆こう言ってるんで、あまり付き合ってやれない」

剣持「zzz」

東「…で、なんの用だ?」

モノクマ『はわわわわ。思っていた以上に嫌われてるみたいで、先生はちょっとショックを受けています。じゃまっ、お言葉に甘えるとしますか……!』

全員の頭上に《?》が浮かぶ。

モノクマ『もう、忘れちゃったの~? まったく。オマエラはこの島になにしに来たんだよ』

神長「連れてきたのは先生だと記憶しています!」

モノクマ『うるさい! オマエはまず空気を読め!』

生田目「私たちはなんのためって言われてもな…思い当たることが…」

寒河江「まっ、連れてこられたわけだしさ」

武智「…ふぁぁああぁぁぁ……むにゃむにゃ」

犬飼「伊介、帰ってい~い?💕」

モノクマ『あぁもう、わかったよ。言えばいいんでしょ言えば!』

寒河江「逆切れかよ」

モノクマ『ん~? なんか突っ込みの勢いがないと思ったら、剣持さんがおねんね中なのね。まぁいいや。ボクの家来を倒したから、見逃してやるよ。誰か後で教えてあげて』

武智「は~い♪」

自己申告者が出た。まぁ、大丈夫だろう。

モノクマ『さて、それでは、皆さんに発表しま~す!』

寒河江「発表? なんの?」

モノクマ『ズコー! ホントに忘れてたのね……トホホ。では気を取り直して…発表します!』

モノクマの左目の光が一層赤くなる。

モノクマ『本日第一回目の動機は―』

空から落ちてきた。

紙? いや、札束か―?

モノクマ『―ひゃっくおっくえーん!』

東「なに⁉」

生田目「…っ!」

寒河江「……あぁ、そういうことかよ…」

犬飼「うっわ、本気~?💕」

武智「動機? ひゃくおく? …ふ~ん」

番場「百億だとぉ…っ⁉ んなもん一気に金持ちの仲間入りじゃねぇか…っ⁉」

神長「ばかな…こんなあっさり…用意できる金額じゃないぞ……⁉」

剣持「…う~ん、うるさいなぁ」

モノクマ『あっ、起きた』

走り「―と、いうわけで、剣持さんに説明ッス」


かくかくしかじか


走り「説明終わりッス」

剣持「なっ、百億⁉ そんなことが現実で可能なのかっ⁉」

モノクマ『もう~時間かけさせて、発言内容がさっきのヤツらと変わらないよ? まったく、コメント力0点だね、オマエ』

剣持「寝起きでこんな話聞かされてみろ! それとコメントが没個性って言うな!」

モノクマ『さっきオマエラはなにと戦ったのさ~。ボクになら可能なんだよね~』

東「…ふん、でも、それがどうした…」

モノクマ『はにゃ?』

東「こんなことで、私たちはコロシアイなんかしない…そんなこともわからないのか?」

モノクマ『むむむ?』

東「お前こそ見てないからわからないだろう。もう、私たちは確固たる絆がある。もう誰かが殺人を犯すなどという、疑心暗鬼に陥ったりしない!」

モノクマ『な、なんですとぉ⁉』

寒河江「へっ、東の言う通りだ。あたしらはもうお互いのことを信用している。今更カネごときでは動かないさ」

生田目「右に同じだ。モノクマ…もう、こんなことはやめよう。もう、無駄なことだ」

犬飼「アンタら、よくもまぁそんな恥ずかしいこと言えるわねぇ💕 でもまぁ、一理あるかなぁ💕」

武智「あっはははは! モノクマちゃん大宣言してなんだけど、意味なかったっぽいね♪」

神長「ふっ。まだそんな戯言を言っておられるとは……失礼ながら、私は片腹が痛くなってしまったぞ」

剣持「たしかに滅茶苦茶失礼だ! …っと、生憎だけど、ボクも同じ思いだよ。今のこの状態でコロシアイなんて起きないよ」

番場「あっはっはっは、残念だったなぁ、モノクマぁ…っ!」

モノクマ『……』

モノクマは落ち込むようにうなだれる。
私たちは今希望が見えたところなんだ。誰が望んでコロシアイをするもんか。

モノクマ『……』

東「立場が悪くなるとだんまりか?」

モノクマ『……ウププププ。人間ってさ、傲慢だよねぇ~』

東「は?」

モノクマ『他人が自分と同じ考えを持ってるって思ってる。そんなことあるはずないのに…。オマエラの言う信用信頼は常に一方通行なんだよ』

東「なにを言ってるんだ? 負け犬の遠吠えにしか聞こえないな」

モノクマ『ウププププ。オマエラはほんっとうに、愚かだね。ウププププ』

東「さっきから何がおかしいんだ!」

剣持「なあ」

剣持が呼びかけた? 振り向くと私ではなかった。相手は誘導組に対してだ。

剣持「なんでそっちにいるんだ? 黙ったままで…」

番場「そうだ…っ! 英、それにてめぇらもなんでずっと突っ立ってるんだよぉ…っ!」

寒河江「…なんか様子がおかしくないか?」

武智「そう? まっ、なんでもいいんじゃない?♪」

生田目「……桐ケ谷……」

神長「……首藤まで? いったいどうしたのだ?」

犬飼「別にどうでもいいじゃない💕 それよりも、まだ話は終わらないの~?💕」

モノクマ『ウププププ。ああ、ごめんごめん。話すよ。話す前に一つ訂正するよ』

東「訂正?」

モノクマ『オマエラのうち、一人を除いた全員が愚かだねぇ~! ウププププ!』

東「さっきからずっとどうどうめぐりだ! 終わらす気がないなら帰るぞ」

モノクマ『わかったよ、もうぅ~仕方ないなぁ~。じゃ、言いま~す!』

モノクマは深く息を吸って、

モノクマ『黒組の中に一人、裏切り者がいま~す!』

思考が一瞬止まった。

「は?」

その台詞は誰のかわからない。

剣持「はぁあああぁぁぁっ⁉ なんだそれ!」

武智「ああっとぉ、そうきたかぁ~♪ でも、中々面白くなってきたねぇ~♪」

犬飼「あぁなるほどぉ、そう来るのねぇ💕 ちょっと考えてなかったわ、その可能性💕」

寒河江「…マジかよ」

生田目「なっ…⁉ 本当なのか⁉」

番場「はぁん、なるほどな。納得したぜ。へっ、ワクワクしてきたじゃねぇか…っ!」

神長「……いや、まだだ」

東「? なにがだ?」

神長「それにしてはだ。首藤たちは…………」

東「……?」

モノクマ『ウププププ。神長さん鋭いねぇ~。さっきまでのドジっ子っぷりはどこ吹く風ってとこかしらん?』

神長「……」

モノクマ『なんで知ってるかって顔だね? 見てたからだよ。モニターでね。ジャバウォック広場にカメラがあっただろう? そこから中継で見てたのさ』

なに……⁉ バカな⁉ そんなこと……⁉
それじゃあ、誘導組は失敗してたのか……⁉

モノクマ『いや~、武智さんの遅刻、生田目さんの途中退場、なにより神長さんの発煙弾! ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ! 爆笑もんだったよ!』

神長「……そうか……お前は……なんて空恐ろしいことをしようとしているんだ……」

モノクマ『は? なに? わかっちゃったの? 察しちゃったの? ま、いいけどね。その代わり、黙っててよね』

神長「…………くっ。私には、なにもできない……!」

犬飼「ちょっとぉ、なに一人で盛り上がってるのぉ?💕」

寒河江「……なにが起こるんだ?」

いや、それだと、おかしい……なぜ合図が出たんだ? 失敗しているのなら、なにも起きなかったはず。なのに合図は出た。だから、作戦は成功していたんだ。なのに―モノクマにバレた?

モノクマ『神長さんの作戦、2回目は眼を見張るほどに成功したよね! いや~すごかったなぁ~ピシッと。こう、ピシッと決まったよね~。あれは敵ながらすっきりしちゃったよ』

武智「いや~それほどでも~♪」

剣持「照れるな! しかもお前じゃない!」

そうか! 一つだけあった。失敗していながらも、成功できるパターンが……。
それは、敵が作戦をわかっていながら、罠に飛び込むパターンだ。
私たちは泳がされていたのか……!

しかし、それでは疑問が残る。
なぜバレたのか? そして、いつバレたのか?

モノクマ『でも、油断して剣持さんが大けがしたのはスリル満点だったね~。ほんとに死んじゃうのかとドキドキワクワクしちゃったよ~!』

番場「おいっ、不謹慎じゃねぇか…っ! 自重しろ…っ!」

生田目「番場はわりとまともな感性だな…」

いつバレたのかは明白。最初からだ。
そうでないと、合図のタイミングがほぼ時間通りなのが説明つかない。

じゃあ、なぜバレたのか…。これもさっきので解決した。

―裏切り者―

認めたくないが、認めざるをえない。

モノクマ『最後は感動したよ~! 剣持さんと武智さんの感動の場面。とどめの生田目さんワンパンシーン。グッときたよー! ビンビンきたよー!』

神長「……皆、耐えてくれ!」

じゃあ、最後だ。

なぜ、英たちはずっと遠巻きで見てるんだ?

英「モノクマさんは最初からご存じでしたわ」

走り「開口一番が『黒組VSモノケモノ! 楽しみだね!』ッスからね~。あれはマジビビったッス」

桐ケ谷「本当はすぐに言いたかったんですけど…」

一ノ瀬「ごめんなさい!」

首藤「いや、もういいじゃろう」

首藤が一歩踏み出す。

首藤「もう、隠す意味もない。ワシらが動けなかった理由…それはな…おぬしらを混乱させたくなかったんじゃ。モノケモノの目の前で裏切り者のことを言ったら、間違いなく混乱が起きる。それこそ阿鼻叫喚になる。そう考えるとモノクマを見張ることしかできんかったんじゃ。なにより―」

モノクマ『ストーップ! そこからはボクが言います。ここまで我慢したんだから、言わせてよ』

モノクマは私たち8人にトテトテと近づいてくる。

目の前で立ち止まる。

モノクマ『お疲れ様。黒組にまじるのは大変でしょう? なにせ、こんなに我が強いんだから』

剣持「? 誰に言っているんだ?」

モノクマ『誰ってわからない? ボクの仲間だよ』

? そんな話し方だと、まるで―

モノクマ『いくら役目とはいえ、同じ仲間と戦うのは心が痛んだでしょう?』


―――⁉


そうか…そういうことか…。

ようやく神長の言っていることがわかった。

英たちが作戦通りにした理由も―。

そうせざるを得なかったのだ。

モノクマの、裏切り者への裏切りの合図かもしれないからだ。

英たちが合図を送ることで、私たちはモノケモノとの対戦がある。

英たちが合図を送らなければ、裏切り者の存在を知らない私たちは、無自覚なまま人質になる。

これは、つまり英たちは選択肢がないのだ。

なぜなら、彼女らは純粋にモノクマに出し抜かれていたから。

そして、裏切り者に出し抜かれたのは、

剣持「…………そういうことか」

犬飼「…………ふぅん」

武智「…………ちょっとショックかな」

寒河江「…………マジかよ」

生田目「…………くそっ」

神長「…………」

番場「…………あぁ、なるほどね…っ!」

東「…………」

そう。

つまり。

裏切り者はこの8人の中にいる。

モノクマ『ゆっくり休んでよ、マイベストフレンド』

モノクマが音もなく消えた。

気づけば札束もなくなっている。

誰も一言も発せず、誰も一歩も動けなかった。


キーンコーンカーンコーン


『えーと、ミョウジョウ学園修学旅行実行委員会がお知らせします…只今午後10時になりました。波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにお休み下さいね。ではでは、いい夢を。グッナイ…』

モノクマ劇場


モノクマ『ウププププ。ようやく動機を発表できました』

『いや~読者の皆様は待ちくたびれたことでしょ~』

『ずいぶん待ったんじゃないでしょうか』

『スレタイと違うぞ! とか思った方もいらっしゃるのではないでしょうか』

『こんな怪獣大決戦望んでないとか…え? グダグダ長い? もう始めろだって? わかりました』

『もうご安心を』

『それでは、お待ちかねの、コロシアイ修学旅行のはじまりはじまり~』

『えーと、ミョウジョウ学園修学旅行実行委員会がお知らせします…。オマエラ、グッモーニン! 本日も絶好の南国日和ですよー! さあて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』

東「…………」

モノクマ『やあ、いい朝だね』

東「急に出てくるな」

モノクマ『東さんに朗報だよ! 東さん用にカレーをつくることにしました。朝食会来てね』

モノクマが姿を消した。

…………食堂に行くか…。

食堂

一ノ瀬「あっ、兎角さん! おはようございます!」

東「…ああ、おはよう」

神長「…お前は休むかと思っていた…」

東「お互い様だ」

首藤「今日はこれくらいじゃな。ほかの連中はもう来ないじゃろう」

桐ケ谷「…………」

食堂にいるのは、一ノ瀬、神長、首藤、桐ケ谷、私の5人

神長「減ったな…やはり昨晩の件が尾を引いているようだ」

首藤「やはり痛かったのぅ。モノクマのベストのタイミングじゃ。ワシらにとってはワーストのタイミングじゃな」

首藤のカタカナ語は少し気になった。

一ノ瀬「うん…皆、不安だよね…」

桐ケ谷「…………」

ここに来ているのは、真面目な人間しかいない。

私が真面目というわけではないが、モノクマの粋な計らいで、私専用にカレーが用意されるのだ。
ならば、行くしかあるまい。

首藤「桐ケ谷。生田目はどうじゃ?」

桐ケ谷「……千足さんは、皆さんの疑心暗鬼が深まるのを恐れて、今朝は休むと言っていました」

首藤「そうか」

神長「余計深まると思うが…」

首藤「剣持はコテージで休養中じゃ。当分は動けんじゃろう。武智と寒河江が看病しておる」

東「なんで知ってるんだ?」

首藤「今朝ここで寒河江と番場に会ったからのう。話を聞いた」

一ノ瀬「番場ちゃんも?」

首藤「ああ。番場は英の面倒を看るそうじゃ。また体調不良らしい」

英か…すっかり身体が弱いことを失念していた。

首藤「走りと犬飼は寝坊。まぁ、こんなところじゃろう」

神長「…………」

一ノ瀬「…………」

桐ケ谷「…………」

会話がなくなり、空気が重くなる。

それはそうだ。

いつも欠席しているのとたまに出席するメンバーに加え、常連のメンバーも一部欠席している。

人数が減れば、会話も減る。至極当然だ。

とくに、桐ケ谷の落ち込みが半端じゃない。誰とも目を合わせていないし、一人で黙々と朝食を済ませている。まるで機械だ。ネコ型ロボットの方がまだはしゃぐぞ。

モノクマ『あれぇ~? なんだかすごく落ち込んでるねぇ~?』

東「お前のせいだろ。カレーがまずくなるから、どっか行け」

モノクマ『ひどいなぁ~もう。せっかくいいこと教えにきたのに…』

神長「いいこと?」

モノクマ『門番がいなくなっちゃったから、2番目の島に行けるようにしたよ。ボクからオマエラへのご褒美だよ!』

一ノ瀬「あ、ありがとうございます」

東「一ノ瀬、こんなヤツにお礼なんかいらん」

モノクマ『わぁ~ひどい言いぐさ。ま、いいや。じゃ、伝えたからね。ほかの連中にも伝えるから、安心して探索してきなよ。ひょっとしたら、この島のこととかわかるかもね』

首藤「随分優しいの。なにか狙いでもあるのか?」

モノクマ『いや、単純に機嫌がいいからだよ。昨日ようやく動機と裏切り者の発表ができたからね』

空気がまたピリッとする。

東「お前…っ!」

首藤「その裏切り者のことじゃが…」

首藤が手を上げて、私を制す。情報を少しでも得ようと言うのか…。

首藤「裏切り者は一人かの?」

モノクマ『え~そいつぁまだ教えらんねぇぜ、大将よ~!』

首藤「ではもう一つ。裏切り者に関して、おぬしの発言に偽りはないか?」

モノクマ『…ウププププ。まさかそんなことを聞かれるなんてね。一晩経って頭が冷めて、冴えてきちゃったのかな?』

首藤「探索する時間が減るから、回答は早めに頼むよ」

モノクマ『ウププププ。嘘じゃないよ。クマに二言はありません!』

モノクマは煙のように消えた。

神長「嘘じゃない、か…」

一ノ瀬「…じゃあ、本当に―」


桐ケ谷「嘘をついてますよ」


桐ケ谷がおもむろに口を開く。

桐ケ谷「なんとなくわかります…モノクマさんはなにか嘘をついてます」

首藤「…ふむ、そうか」

……モノクマの嘘、か。

裏切り者の数か…裏切り者の存在そのものか…。

桐ケ谷「…………」

首藤「…………」

黙々と食事をすすめる桐ケ谷を首藤が見据えている。

神長「それでは、朝食後第2の島を探索しようと思う! 異論はないか?」

一ノ瀬「うん、賛成!」

東「…わかった」

2番目の島

ホテルがあった最初の島とは雰囲気が違った。

神長「では手分けをしよう。すべて確認が終わったら、食堂に集合。期限は正午までに。昼食とともに情報共有だ」

首藤「承知したよ」

一ノ瀬「うん、わかった!」

桐ケ谷「…わかりました」

東「わかった」







遺跡

あ、あれは…⁉

遺跡の前にヒト型のモノケモノがいた。
仁王立ちしている。

なぜあんなところに…? 橋の門の前を守ってるんじゃないのか?

東「…これは皆に伝えた方がいいな…」

図書館

神長「東か」

東「なにか見つかったか?」

神長「ああ、これを見てみろ」

持っているのは、ジャバウォック諸島の観光案内。

神長「これに書いてある通りだと、この島は長期滞在する富裕層のお客が多いようだ。この図書館の莫大な量の書物も、おそらくその人たちが寄贈したものなのだろう」

東「ここが? このなにもない島が? そんな馬鹿な…」

神長「ああ…ほかに書いてあることだと…ジャバウォック諸島は太平洋に浮かぶ小さな島で、風光明媚な常夏の楽園と呼ぶにふさわしいし島だそうだ」

東「…ほんとにこの島の観光案内か?」

神長「と、書いてある。にわかには信じがたいことだがな…続きを読むぞ。ジャバウォック諸島は中央の島と、それを取り囲む5つの島から構成される諸島です。周辺の5つの島はリゾート地として開発され、中央の島には行政機関が集まる立派な建物が……ん?」

東「建物だと? あそこはモノクマタイマーとモノクマロックと公園しかなかったじゃないか!」

神長「私に言われても困る…ちょっと待て。5つの島を行き来できるのは定期船だけだと……」

東「…は?」

神長「橋の建設も希望されていたそうでが、自然環境への影響を危惧して予定はない、と」

東「ど、どういうことだ! 現に私たちは橋を使って…!」

神長「ひょっとすると、この島は、パーム・ジュメイラのゆな人口島なのかもしれん」

東「なに?」

神長「パーム・ジュメイラはペルシア湾にある観光地で、5キロメートル四方もの巨大な敷地を誇る人口島だ。それと同じかもしれん。この島はジャバウォック諸島をまねた人口島。だから、私たち以外に人が…」

東「そんな馬鹿な…!」

神長「…やはり、観光案内が古いのかもしれんな…」

東「……なにがなんだか……」

そこで私は、神長がもう一冊持っていることに気が付く。

東「それはなんだ?」

神長「ん? ああ、これか。これは週刊暗黒新聞《ダークホール》の最新号だ」

東「なんでそんなもの…」

神長「個人的に興味があってな…今回の特集が《ザ・殺人鬼》だった」

東「それが理由なのか?」

神長「ああ。殺人を生業とした私たちとは一線を画している。ただ殺人を行う者」

東「そんなものに興味があるのか」

神長「普段では読まないが、ここには娯楽がないからな。さしもの私でも勉強以外のこともたまにはしたい」

東「そうか」

神長「今回は《ジェノサイダー翔》と《21世紀の切り裂きジャック》が特集されている。前者は男性のみ、後者は女性のみを標的としていて、相手をなぶり[ピーーー]のが趣味の快楽殺人鬼だ。前者は磔と血文字もする。後者は…生きたまま相手を切り刻んだり刺したりするそうだ」

えげつない趣味だ。人命をなんだと思っている。って、私たちもそうか…。

神長「両者ともまだ捕まっていないから、私たちも警戒しておいた方がいいようだ」

東「私たち以外に人間がいないんだから、する必要はないだろ」

神長「それはそうだが…」

どうせなら、裏切り者に気をつけた方がいいだろうな。

神長「次号の特集は、《エンゼルトランペット》だそうだ。好奇心に基づく暗殺者、がキャッチコピーにある」

その新聞は読むと鬱になりそうだ。

神長「それにしても…図書館はいい。落ち着く。学校だと、一番思い出のある場所だ」

神長が私をジッと見る。

東「なんだ」

神長「不思議だ。お前とは以前図書館で会った気がしてならない。それも…戦った気もする」

なんだその思い出⁉

東「そんなことあるはずないだろう。私とお前は初対面なんだ」

神長「そう、だな。ヘンなことを聞いた。忘れてくれ」

神長は顔をしかめる

東「なんだ、文句でもあるのか」

神長「いや、少し頭痛がしただけだ」

神長はそう言って、図書館の奥に行く。

ここは神長に任せた方がいいだろう。
ほかのところに行こう。

ドラッグストア

寒河江「よっ」

東「お前、剣持の看病じゃなかったのか」

寒河江「薬を取りに来たのさ。ここはすごいぜ。いろんな薬が置いてある。ひょっとしたらなんでも治せちまうかもな」

東「薬に詳しそうじゃないのに、わかるのか?」

寒河江「あ~…あたしな、弟や妹がたくさんいるんだよ。それで、そいつらが病気にかかったりして、ちょいとだけわかるんだ……うげっ! 毒薬もある……」

そういえばそんなことを言っていたような…。

寒河江「東は?」

東「今、この島の探索中だ。お前のところにも来たんだろう? 朝食会のときにモノクマから聞かされて、私と首藤、神長、桐ケ谷、一ノ瀬も来ている」

寒河江「そっか。押しつけちまって悪いな」

東「お互い様だろう。……ところで、武智はいいのか?」

寒河江「ああ。あいつ、剣持が寝てるときは大人しいからよ。剣持が起きるとやかましいけどな」

東「そうか」

寒河江「武智と話しててわかったけどよ。あいつは…なんていうか、裏切り者じゃねぇ気がする。あいつはさ、そんな小難しいこと、やらないと思うんだよね」

東「……」

寒河江「自分の欲に忠実なヤツ。あたしの印象だ」

東「……」

寒河江「もっと言うとだ。あたしは裏切り者なんていないと思ってる。希望的観測だと言ってくれてかまわないぜ」

東「……ノーコメントと言っておこう」

寒河江「へぇ? なんか意外だな。あんたはもっとシビアなヤツかと思ってたけど」

東「ほっとけ」

寒河江「じゃ、あたしは剣持んとこ行くわ」

東「なにかあったら呼べ」

寒河江「ありがとよ。……そっちも何かあったら遠慮なく呼べよ」

具体的には言わなかった。きっと寒河江も自分に私たちを信じるように言い聞かせているのだろう。

私は気持ちを汲むことにした。

東「わかった」

ダイナーの駐車場

首藤「………なこと………いだして………」

桐ケ谷「………わかんない………くがちたる………けんもち………」

首藤と桐ケ谷の会話?
ダイナーの中か。

首藤「いつのことじゃ? ………にちまえ………」

桐ケ谷「わからないんです。………そんな………におぼえ………」

よく聞こえない。

もっと近づくか。

近づき過ぎたせいか、ダイナーの入り口の自動ドアが開く。

首藤「おぉ、東。なにか見つけたかの?」

東「……神長と会って情報交換した。それと寒河江とも会った」

首藤「ほう。……おそらく、ドラッグストアじゃの」

図星だ。

首藤「大方剣持の薬じゃろう」

またまた図星だ。エスパーか?

東「医療用の薬から、毒薬もあるらしい」

桐ケ谷「毒?」

首藤「ふむ。少し注意した方がよさそうじゃの」

東「……」

何を話したいたか聞きたかったが、首藤はのらりくらりと躱すだろうし、桐ケ谷の今朝のことから黙秘するだろう。

それに首藤は私が聞き耳を立てていたことにも気づいている。そのうえで私に事情を言わないのだ。なにかあるのだろう。

東「この先はビーチだったな? そこを調べてくる」

首藤「おぉ。では、ここは任せられよ」

任せた。

ビーチ(ビーチハウス)

一ノ瀬がビーチハウスのドアの前にいる。

計画通り!

一ノ瀬「あっ、兎角さん!」

東「…なにか見つかったか?」

一ノ瀬「ううん、なにも。精々シャワーが止まってたくらいだよ」

東「そうか」

私はビーチに移動する。一ノ瀬もついてきた。

計画通り!

自然と笑みがこぼれる。

ダメだ! まだ笑うな! 笑ってはいけない! 一ノ瀬が完全にビーチに入るまで待つんだ。

一ノ瀬がビーチに踏み込む。キタ!

モノクマ『ビーチでやることってなんだろう?』

…………。

モノクマ『はい、と、いうわけで、ビーチボールを用意しました。渡すから、これでもやって楽しむんだな。あっ、それと言い忘れていたけど、今回の動悸の百億円ね、最初の殺人にしか適用されないからね? 次の殺人には、次の動悸を提示するからさ。だから、百億ほしかったら、誰よりも早く殺人しろよ? じゃ、またね』

モノクマはそれだけ言って消えた。

一ノ瀬「なんだったんだろうね。……そろそろ食堂に戻ろうか。きっと皆待ってるよ!」

……くそっ!

こんな屈辱を受けたのは生まれて初めてだ…。

第1の島・食堂

一ノ瀬、首藤、桐ケ谷、神長、私がそろった。

神長「皆そろったな。では第2の島になにがあったが、各々頼む。まずは私からいこう」

そして、情報交換が終わる。

神長「毒か…危険だな」

首藤「対策を考えておこうかの」

一ノ瀬「観光案内のことも、晴は気になります!」

桐ケ谷「遺跡のモノケモノについても興味がわきますね。なぜ唯一橋の門番でないのか…」

私が口を挟もうとすると、

犬飼「なぁにぃ?💕 皆して…殺人計画でも立ててるのかしらぁ?💕」

犬飼が来た。

首藤「犬飼…そういうことは冗談でも…」

犬飼「冗談で言ってんじゃないのよねぇ💕」

一ノ瀬「伊介さん…」

桐ケ谷「…………」

犬飼「わかってるのぉ?💕 裏切り者がいるのよ、黒組の…しかも、モノケモノを倒した伊介たちの中に…」

神長「まだそうと決まったわけじゃ…」

犬飼「ないって言うの?💕 アンタねぇ、殺されるわよ?💕」

神長「…⁉」

犬飼「あの8人の一人ってことはぁ、それなりの戦力があるってことでしょ? そんなヤツに不意打ちでもくらったら………どうなるかわかるわよねぇ?💕」

神長「……っ」

首藤「犬飼…言い過ぎじゃ」

犬飼「とか言って、どうせアンタも神長さんや東さんを疑ってるんでしょぉ?💕」

首藤「そんなことはない。ワシは二人を信じている」

犬飼「じゃあ、あたしは?」


首藤「信じている」


犬飼がニコッと笑う。

犬飼「ふざけないでね?💕 まだアンタとはちっとも会話してないってのに…わかってる風な口を利くな」

犬飼がパンを少量持って、食堂を出て行った。

一ノ瀬「伊介さん…ちょっと様子がいつもと違ってたね…」

神長「首藤、気にすることは―」

首藤「では、なんと言えばよかったんじゃ」ボソッ

独り言のように言う。

神長「っ」

桐ケ谷「…………」

場の空気が微妙になってからは、会話はあまり生まれなかった。

コテージ

食堂には一ノ瀬と桐ケ谷が残った。

首藤と神長はコテージに戻った。一人になりたいそうである。

私も同じで、コテージに戻った。

今日はもうやることがない。
どうしたものか…。

…………。

今さら食堂に行って一ノ瀬と会おうとも、食堂を離れた直後なので、いささか恥ずかしい。

そうだな……。

剣持の様子でも見に行くか。







剣持のコテージ

東「じゃまするぞ」

武智「あれ~? 兎角サンじゃん。どったの? 殺人しに来たの?」

剣持「いいところに来た!」

生田目「東……⁉」

剣持が布団から出て、背中を背後の壁につけている。枕を盾のように構えていた。

武智が立ち上がって、ハサミを両手に持ち、笑顔を浮かべていた。

生田目がその武智を後ろから羽交い絞めにしている。

なんだ、この状況。

剣持「このバカをどうにかしてくれ!」

東「武智…お前…少しは自重しろ」

私はモノクマに邪魔ばかりされているというのに…。そんな思いを視線に乗せる。

武智「あっはは! ごめんごめん」

生田目「ふぅ」

武智が座り、生田目も武智を放してすわる。

武智が座布団を私に渡す。

武智「すわりなよ」

武智と生田目も座布団を使っている。

遠慮なく使わせてもらった。

剣持も布団に戻る。しかし、横にはならなかった。

剣持「ちょうどいい。東、お前にも聞いておきたいんだが…」



剣持「お前は裏切り者か?」

東「……お前なぁ」

剣持「頼む、答えてくれ。武智にも寒河江にも生田目にも聞いてる。あとはお前と犬飼と神長と番場だけなんだ!」

…それで気が済むんなら、言おう。

東「私じゃない」

剣持「本当に?」

東「ああ」

剣持「本当に本当に?」

東「ああ」

剣持「本当に本当に本当に?」

東「くどいな…そうだよ」

剣持がはぁぁぁっと、肩の力を抜いた。

剣持「そうか…良かった…」

気休めにしかなってないがな…。

武智「もう! 心配性だなぁ、しえなちゃんは♪」

剣持「しょうがないだろ? 気が気じゃないんだ。すっかり仲間だと思っていた連中の中に、裏切り者がいるだなんて…」

生田目がピクリと反応する。

……揺さぶられているのは剣持だけじゃないな。犬飼も、生田目も、神長だって空元気なところが少し見受けられる。
間接的には、桐ケ谷もか。

剣持「なぁ…じゃあさ…誰が裏切り者だと思う?」

その言葉は聞き逃せられなかった。

東「おいっ、剣持!」

剣持「なっ⁉」

私が弾みで立ち上がると、剣持がビクッとする。

武智「兎角サン」

武智を見ると、両手にハサミを隠し持っていた。しかも、ちょうど剣持には見えない。

武智「すわりなよ」

…………。

仕方なく、すわった。

剣持「頼むよ。気休めにしかならないのはわかってる。でも、やっておかないと不安なんだ。昔ちょっとしたことがあってね。他人がボクに危害を与えないか確認したいんだ。そして、見つけたなら……いや、それはいい。形式でいいから、付き合ってくれ」

ここにいない人間だと、犬飼か番場か神長か。

東「……犬飼じゃないのか?」

剣持「やはりそう思うかっ⁉」

しまった…はずれか…!

剣持「そう、そうだよ、やはり犬飼だ、そうだよな、あいつはイジメっこぽかったし、いつかやると思ってたよ、ボクは」

武智「全会一致だね」

東「私はあくまでもいるとしたら、だ」

武智「まぁまぁいいじゃん♪」

剣持はぶつぶつ言う。

剣持「そうだよ、危険なヤツは排除しなくちゃいけないんだ、たとえ戦友だとしても、そうだよ、敵をだますにはまず味方からじゃないか、なら―」

東「寒河江は?」

少し不安になったため、話題を変える。

武智「春紀サンならコテージに戻ったよ? 千足サンが来てくれたから、入れ替わり。まるでバイトのシフトだね♪」

生田目「私も一人でいたんだが、不安になってね。昨晩のことで頭がいっぱいで…剣持のことが気になったから様子見の来たんだ」

東「……桐ケ谷が落ち込んでいたぞ」

生田目「それについてはすまないと思っている。しかし、私が行くことで疑いが広まることを避けねばなるまい。火に油を注ぐことだけは避けねば…」

東「……今日の朝食会は私含め5人だけだ」

生田目「⁉」

武智「わおっ! がっつり効果出てるね♪ 出席者数最少人数じゃない?」

東「ああ。……生田目、もうこれ以上疑いは広まらないよ。広まりようがない」

生田目「…………それでも私は―」

振り絞るように言う。

生田目「―桐ケ谷を危険な目には遭わせたくないんだ……!」

? なぜそこで桐ケ谷の名が出る?

生田目「……すまない」

生田目は立ち上がり、コテージから出て行った。

武智「あ~あ、兎角サンがヘンなこと言うから」

東「ヘンなことか?」

武智「千足サンが皆を避けるって本心丸わかりでしょ? 千足サンの一番の話し相手は誰?」

………そうか。そういうことか。あいつは自分のことじゃなく、桐ケ谷の心配を…。自分の疑いが桐ケ谷にまで広まることをおそれて…。
……生田目が思いつめないといいんだが…。
……一応ほかの連中にも会っておいた方がいいだろうか? 生田目と同じように悩んでいなければいいが…。
とくに番場。生田目と同じく常連だったヤツが来なくなったのは怪しい。

私は立ち上がる。

武智「ん? 行っちゃうの? いいの? あたし見張らなくて?」

東「どうせ殺さないんだろう。殺したとしてもお前だとすぐにわかる。そうなれば、お前は学級裁判で処刑だ」

武智「あらあら、クールだこと。つまんないな~♪ 春紀サンと千足サンはいいリアクションしてくれたのに♪」

私は出る前に剣持を見る。ヤツは私が生田目や武智と会話している最中、まったく突っ込みしなかった。

東「剣持、へたなことは考えるなよ」

剣持「当たり前じゃないかボクはそんなことしない君に誓おう」

……即答だった。

ホテルの外

コテージから出ると、

寒河江「違う」

犬飼「ほんとに?」

東「⁉」
私は慌てて剣持のコテージの陰に身を隠す。

寒河江「そんなことしないさ」

犬飼「……じゃあ、いいけどさ」

顔を少しだけ出して盗み見る

寒河江は背中を見せている。
犬飼は腕を組んで真剣な目で寒河江を見ている。

何を話しているんだ?

犬飼「…じゃあ、話変わるけどさ、伊介のこと、裏切り者として疑ってる?」

⁉ 犬飼の猫なで声だ!

寒河江「疑ってないよ」

犬飼「ほんとに?」

剣持に見本として聞かせてやりたい。

寒河江「本当だ」

犬飼がホッとした表情をして、子供のように笑う。……あんな表情するんだな。

犬飼「よかった💕」

寒河江「あたしのことも信じてくれる?」

犬飼「当然よ💕 伊介は春紀のこと疑ったりしないって💕」

寒河江「あたしの一番の理解者で…あたしを一番信じてくれるのは、伊介様なんだよ」

……なんだか恥ずかしくなってきた。どこかに行きたい。でも、続きが気になる。

寒河江「……これが終わったら、あたしと一緒に……」

おいおい⁉ それは死亡フラグじゃ…⁉

走り「おやぁ? そこにいるのは、伊介さんと春紀さんじゃないッスかぁ! 奇遇ッスねぇ!」

犬飼「…………」
寒河江「…………」

…………。

走り「ウチも今ちょうどロケパでメロンパン買い終わったところッスよぉ~! 今裏切り者がいるみたいッスからね~! 気を付けた方がいいッスよ~?」

犬飼「…しね」

走り「なんで⁉」

寒河江「伊介様、言い過ぎだって…」

走り「そうッスよ! 春紀さん優しいッス!」

寒河江「それはそうとパシリ、あたしのマニキュア買ってきてもらっていい? ロケットパンチマーケットまでもう一度頼むよ。カネは出すから」

走り「走りッスよ⁉」

ぶつくさ言いながら、走りはホテルの敷地から出て行った。あいつは殺されても文句は言えなかったな…。

犬飼「…………」
寒河江「…………」

二人とも黙ったままだ。犬飼は顔を赤くしている。おそらく寒河江もだろう。結局二人はそこで別れて各々のコテージに戻った。
走りがいなければどうなっていたんだろうな…。

そういえば、最初の方、裏切り者の話じゃなかったら、何を話していたんだろうか……。

ホテルの外

結局番場には会えなかった。

もう夕方だ。日がな一日私らしくなく、クラスメートと絡もうとしてしまった。こういうのはもっと向いている人間がやるべきだろう。

そう、たとえば―。

一ノ瀬「あっ、兎角さん!」

―一ノ瀬晴みたいな…。

東「ちょうどお前のことを考えていたよ」

一ノ瀬「と、兎角さん⁉」

一ノ瀬が照れた顔をする。……うむ。

東「コテージに戻るのか?」

一ノ瀬「うん、まあ…」

言いよどむ一ノ瀬。

東「なにかあったのか? 誰かになにかされたか? 私に言えないことなのか?」

一ノ瀬「グ、グイグイ来る⁉」

東「誰だ? 犬飼か? 剣持か? 生田目か? それとも番場か?」

一ノ瀬「ち、違うよ! そんなんじゃないってば! ただ遊ぶだけだよ!」

東「遊ぶ? この時間からか? 誰と?」

一ノ瀬「首藤さんだよ」

首藤か……。黒組の中だと、わりと信頼できる方だ。
だがしかし、一ノ瀬一人では行かせられない。

東「私も行こう」

一ノ瀬「と、兎角さん⁉」

東「で、どこに行くんだ? まさかコテージじゃないよな?」

一ノ瀬「ビ、ビーチだよ。ビーチバレーするの」

そうか。しかし、人数が……。

一ノ瀬「首藤さん以外に、神長さんもいるよ? 三人でパスでもやろうかな…って」

卓球でいうラリーみたいなものか…。

東「じゃあ、四人でやろう」

一ノ瀬「う、うん。な、なんだか珍しく乗り気だね…」

第2の島・ビーチ

首藤「ん? 東も来たのかの」

東「悪いか?」

神長「いや、来てくれるに越したことはない」

首藤がビーチボールを片手に、腰に手をあてていた。
神長は眼鏡をクイックイッとさせている。

水着には着替えているが、皆水着の上に羽織ものを着ている。

泳ぐつもりはないからな。

首藤「準備はいいか?」

一ノ瀬「うん!」

東「ああ」

神長「目標は100回だ。達成したら2倍の200回。次は400回。以下省略だ」

遊びじゃなかったのか……? ガッツリやるじゃないか……。







首藤「ではワシから行くぞ」ポーン

一ノ瀬「わわっ」パシ!

東「どこに向けてるんだ、一ノ瀬!」パンッ

一ノ瀬「ご、ごめんなさい」

神長「東はよくとれたな」ポン

首藤「まだまだ始まったばかりじゃぞ」ポーン

一ノ瀬「こ、こうかな」パシ!

東「一ノ瀬、わざとか⁉」パンッ

一ノ瀬「ううぅ、ご、ごめんなさい…」

神長「まあ、とれたからいいじゃないか」ポン

首藤「……」ポーン

一ノ瀬「えいっ」パシ!

東「くっ……は、速い!」パンッ

神長「…なんだか一ノ瀬と東だけ、バレー部の顧問と部員のようだ…」ポン

首藤「おかしなところは、一ノ瀬が鬼顧問の方ということじゃな」ポーン

ほっとけ

長いこと続いた気がする。かれこれ8巡以上はやったか。あることに気が付く。


何回やったか、数えていない⁉


少しだけ絶望を感じた。

首藤「……」ポーン

神長「首藤、疲れているな」

一ノ瀬「え? 首藤さん、大丈夫? もうやめた方がいいかな?」バシン!

東「はっ!」パス

首藤「……疲れているように見えるかの?」

神長「ああ。自分の性格とは相反することをやっている。首藤は副官や秘書のような裏方が向いているだろうに…リーダーのようなものをやろうとして、空回っている気がする」ポン

一ノ瀬「首藤さんってインドアだったの⁉」

…………。なんのことだろう? ビーチラリーのことではないのか?

首藤「……肩の力も抜けんわい、今のこれじゃ。皆動揺して、まだ起こっていないだけで、水面下では異変があるかもしれんからな…」

一ノ瀬「首藤さんの身体そんなに危険なの⁉」バシン!

東「はっ!」パス

一ノ瀬のボールにもだんだん慣れてきたな。

神長「…無理する必要はない。首藤がらしくないことをすると、調子が狂うんだ。……いつもの首藤でいてくれ。そうしてくれれば、私もいつもの私でいられる……」ポン

首藤「…香子ちゃん……」ポーン

一ノ瀬「晴にも頼ってください! 健康法を図書館で調べましょう!」バシン!

東「…一ノ瀬も無理するなよ」パス

首藤がフッとほほ笑みを浮かべる。

首藤「…そうじゃな。今晩からは香子ちゃんがリーダーじゃな。ワシが副リーダーをやろうかの」

神長「ああ。それでいこう」ポン

首藤「……ほほほ。まさかこの歳になって若造に教えてもらうことがあったとはの……長生きしてみるもんじゃ…」ポーン

ババアか…。

一ノ瀬「首藤さん?」バシン!

東「どうした、一ノ瀬! 球速が遅くなっているぞ!」パス

神長「東、私たちはラリーをしているんだぞ?」ポン

首藤「ほほ。おぬしらは面白いの。黒組に来て正解じゃな。おぬしらのような者たちと出会えてうれしいぞ」

そう言って、首藤は自分のところに来るビーチボールを見つめる。

その瞳にはボール以外にも何か見えたのだろうか。
優しげな眼をしていた。

首藤「……香子ちゃんと出会えてよかった……」ポーン

ボールのパスの音にまぎれて、その声は誰の耳にも届かなかった。

第1の島・中央の島に繋がる橋の前

首藤「いい汗をかいた。先にひとっ風呂でも浴びて来ようかの」

神長「では、私たちは先に行くか」

一ノ瀬「はぁ、晴は疲れました…」

東「いい運動になった。一ノ瀬、また今度ビーチラリーをしよう」

神長「目的が気になるな…特訓か?」

そんなことを四人で話しながら、歩いている。

モノクマ『ウププププ』

東「⁉」

首藤「実行委員会の方が、何用かの?」

モノクマ『首藤さんは驚かないね~。東さんを見習ってよ』

一ノ瀬「どうかしたんですか?」

モノクマ『いやぁ~そんなのんきに遊んでていいのかなぁ~って…まったく、平和ボケした子たちを見ると、将来が心配になるね。これだから政治は腐敗するんだよ。まずはね、教育を―』

神長「先生! その話題には興味がありますが、今このときこの場所でする必要がありますか? 今晩私のコテージに来てください!」

モノクマ『いやぁん。積極的💕』

身体をくねくねさせて、顔を赤くするモノクマ。…気色悪いな。

東「で、なんだ。雑談ならしないぞ?」

モノクマ『もう~わかったよ~せっかちだなぁ~言うよ言うよ、言えばいいんでしょ、言えば。ウププププ』

一ノ瀬「?」

モノクマ『オマエラのお仲間さんがひどい目に遭ったってのに…行かなくていいのかい?』

なに⁉

東「おい! それはどういう―」

モノクマ『場所はホテルロビーだよ。急げ急げ。急がば回る、だよ』

神長「そこは回れ」

モノクマは煙のように消えた。

一ノ瀬「ど、どうしよう…? ひどい目って…!」

首藤「心配していては仕方ない。そうじゃろう? 香子ちゃんや」

首藤が微笑み、神長を見る。

神長「ああ。急いでホテルに戻ろう!」

神長も幾分か元気になった気がする。

これは良かったが、ホテルで何が起こったのか気になる。

もしや……という疑念がわく。頭から消しても、追い払っても、再燃する。

自分の不安に押しつぶされないようにしているのが精いっぱいだった。

頼む……! 最悪の事態は避けてくれ……!

ホテルのロビー

武智「…………」

犬飼「…………」

寒河江「落ち着いたか?」

生田目「みたいだな」

剣持「…………」

剣持が倒れている。
犬飼と武智がにらみ合っている。
犬飼を寒河江が、武智を生田目が抑えている。

なんだ、この状況。

神長「なにかあったのか?」

寒河江「え? あ~、ちょっともめただけさ」

犬飼「そっちが先にやったことでしょう~?💕」

武智「それはそれ、これはこれ♪」

生田目「もうやめろ、犬飼、武智」

首藤「はぁ、まったく世話の焼ける…」

一ノ瀬「みんな! もっと仲良くしようよ!」

犬飼「別に伊介はかまわないけど~?💕 そこに寝転がっているヤツに言ってちょうだ~い?💕」

東「なにされたんだ?」

寒河江「あたしが来たときにはもう、取っ組み合いのけんかしてたんだよ」

生田目「私もだ。声が聞こえたから、ここに来た」

武智を見ると、

武智「べっつに~?♪ ちょっと遊びに誘っただけだよ~♪ そしたら伊介さんが興奮しちゃって―」

犬飼「はあ?💕 ふざけないで。そっちが急に伊介を拘束しようとしてきたんじゃないのよ💕」

武智「ん~まぁ、そうとも言うかな? こっちとしては単なるプレイの一環だけどね?♪」

犬飼「そういうのは喜ぶヤツにしなさいよ!」

神長「いつものお前なら剣持にすることだと思うが?」

またいらぬ一言を…。

しかし、武智はそ知らぬ顔をする。

犬飼「ふっふ~ん、わかってるんだから。あなた、剣持さんがケガしているのに気を遣っているんでしょぉ?💕 やぁねぇ~何気に健気で💕」

武智「え~? そんなことないよ~♪」

犬飼「露骨に行動しておきながらよう言うわぁ💕 伊介ムカつく💕 その鼻、へし折ってやりた~い💕」

武智「伊介さ~ん、願いは叶えられるものの方が効率いいよ~♪ あたしからの、じょ・げ・ん♪」

犬飼「…………」

武智「…………」

かなり二人とも荒立っているな…。

寒河江「もうあっち行こう、伊介様」

生田目「お前も少しは自重しろよ、武智」

犬飼「春紀はどっちの味方なの~?💕」

寒河江「あたしはいつだって伊介様の味方さ。だから、引けって言ってんの」

犬飼「わかった💕」

武智「……」

生田目「武智も行くぞ」

武智「待って、しえなちゃんが…」

モノクマ『あちゃー、こりゃ剣持さんは治らないッスね~』

東「またお前か…」

犬飼「はぁ~? 少しどついただけで、なんでそうなるの?💕」

モノクマ『なったものはなったんだから、しょうがないでしょ?』

武智「…じゃあ、どうなるのさ」

モノクマ『なんまんだぶなんまんだぶ』

武智「縁起でもないこと言わないでよね!」

生田目「死ぬなんてことはないだろ?」

モノクマ『ん、まぁね。すぐには死なないよ。でも、治療薬がなければ死ぬよね?』

寒河江「ドラッグストアの薬でもダメなのか⁉」

モノクマ『あぁ、うん。だってもう在庫処分しちゃったし…』

東「は?」

モノクマ『だから、もう剣持さんは治りませんよー!』ガオー

寒河江「ちょっと待てよ。それはいくらなんでもやりすぎじゃないのか?」

モノクマ『さぁ。モノケモノに挑んでケガしたんでしょ? 自業自得じゃん』

???「それは違いますわ」

一ノ瀬「英さん!」

英が食堂の方の階段から降りてきた。

英「もしこのまま剣持さんが死んだら、剣持さんはあなたが殺したのです」

モノクマ『はあ? なんでそうなるのさ?』

英「決まっています。剣持さんは不当にケガをなさって、治せるのにもかかわらず、モノクマに見捨てられてしまったのですから…」

モノクマ『は? 不当に? なにそれ? おいしいの?』

英「あなたがクロと言っても差し支えありませんわ」

モノクマ『なんでそうなるんだよ! 剣持さんはモノケモノと対峙したから―』

英「だからなんですか? あなたの目的はなんですか? わたくしたちの絶望でしょう?」

モノクマ『だったらなにさ?』

英「これがわたくしたちの絶望に繋がると思っておいでですの?」

モノクマ『…………』

英「ただ死んでしまった人に、絶望など抱きませんわ」

モノクマ『へぇ? 剣持さんは《ただ》死ぬのも当然なわけ? そりゃちょっと冷たいんじゃないの?』

英「死ぬとわかっている人が死んで、なんですか? 当然でしょう? わたくしたちは暗殺者なんですのよ?」

モノクマ『…ウププププ。気の強いお嬢様だこと』

英「モノクマさん、治療できるんでしょう?」

モノクマ『できるよ』

英「なら、してください」

モノクマ『いやだと言ったら?』

英「被害者及びクロ候補が一人減るだけですわ」

武智がピクリと動いた気がした。

モノクマ『ふ~ん…でもさ、剣持さんの死で起きる犬飼さんと武智さんの対立は見てみたい気もするなぁ』

英「わたくしたちで二人を拘束するまでです」

犬飼「はあ⁉」

武智「…へえ? 言ってくれるじゃん♪」

モノクマ『そんなことできるの?』

英「ええ。別にコテージで寝なければならないという校則もありませんし。犬飼さんは旧館。武智さんはダイナーにいていただきましょうか」

モノクマ『ウププププ……』

英「それと、校則について、一つ」

英がニッコリと笑う。

英「モノケモノを討伐してはいけないという校則がない以上、剣持さんは道端で転んだにも等しいものですわ。それを治療させないモノクマさんは、なにがしたいのかしら?」

モノクマ『……ウププププ。わかったよ。治せばいいんだろ? 治せばさ。ウププププ』

モノクマは剣持の襟首を持つ。

モノクマ『じゃあ、剣持さんは借りてくとするよ。骨折、貧血、疲労、すべて治った状態にしてやるよ』

モノクマはステップを踏む。

モノクマ『英さんに感謝しろよ、犬飼さんに武智さん?』

モノクマは剣持を連れて、煙のように消えてしまった。

首藤「ずいぶん無茶な理論で攻めたのぅ。少しでもへまをしたら、おぬしがどうなっていたことやら…」

英「べつに…剣持さんの傷はワタクシのせいでもありますから」

そういえば、モノケモノ討伐は英の案だったな。

英「それに、モノクマさんはおそらく最初から治すつもりでしたよ」

神長「なぜだ?」

英「理由は知りませんが、モノクマさんがなぜここに来たかを考えたら想像できます。わたくしはただモノクマさんが言いださないために少々せかしてしまっただけですわ」

一ノ瀬「じゃあ、なんで英さんは―」

英「彼女らがこれ以上ヒートアップしないように、です」

英の視線の先には、犬飼と武智がいた。
二人とも、すでに拘束は解かれている。

犬飼「…………」

武智「…………」

英「お二人とも、少しは頭を冷やしになって…」

犬飼「…ふん」

武智「あ~あ、なんか冷めたから、帰る」

犬飼は食堂に、武智は外に向かった。

寒河江「伊介様、あたしも行くよ」

英「よろしければ、武智さんの監視をお願いしますわ」

生田目「ああ、わかった」

寒河江と生田目も行く。

神長「とりあえずは落ち着いたか…」

英「いえ」

英が目を細めていた。

英「本格的に危険になってきましたわね…」ボソッ

…………。

その場はそのまま晩御飯になった。

剣持の件は晩御飯が終わるときには、周知の事実になっていた。
あの場にいなかった桐ケ谷、走りがあとあと来たとき、知っていたためだ。どうやらモノクマが教えていたらしい。
番場だけは確認していないが…英が教えるだろう。
晩御飯の出席数は6人。
犬飼、武智、寒河江、生田目、英、番場が欠席した。
英はあのあと、コテージに戻っていった。
人数が今朝より増えたとはいえ、押しつぶすような不安はぬぐえない。





晩御飯の直後の雑談

走り「いやッスね~血なまぐさい方たちが多いと…」

東「お前も含まれてるぞ」

神長「しかし、剣持はこれで無事だろう」

首藤「モノクマを信用していいかが疑問じゃがな」

一ノ瀬「きっと大丈夫だよ! すぐに元気になって帰って来るって!」

走り「その前向きさはさすがッス!」

神長「しかし、どうしたものか。犬飼と武智はあのままでもつのか? 英がいったん空気をかえてくれたはいいが、あれは一時的なものだろう?」

首藤「なにか対策が必要じゃが、問題は肝心の剣持がいないことじゃな。あやつがいない以上、この問題は解決せん。ひょっとすると、モノクマはそこまで計算して……」

東「どっちにしろ、剣持抜きで考えないとな…」

一ノ瀬「う~ん」

桐ケ谷「千足さん……」

モノクマの狙いは犬飼か武智がクロになること…被害者も犬飼か武智のどちらかがなること。だとしたら、英の言う通り拘束した方がいい気がしてくる。

結局いいアイデアは浮かばなかった。

ホテルの外

一ノ瀬「伊介さんと武智さん、大丈夫かな…」

東「…どうだろうな」

武智があそこまで剣持に入れ込んでいたとは思わなかった。
犬飼はわかる。裏切り者のことで頭がいっぱいなのだ。

ふと思った。

東「一ノ瀬は私のこと、怖くないのか?」

一ノ瀬「? なんで?」

東「私も…裏切り者候補だろう?」

一ノ瀬は驚いた顔をする。

一ノ瀬「そうだったね…」

忘れていたのか…?

一ノ瀬「晴はね、信じてるもん。兎角さんのこと…信じてるよ」

こそばゆい思いがした。

一ノ瀬「疑われるのって怖いもんね。ましてや狙われるだなんて…だから、伊介さんの気持ちはよくわかるよ」

東「……」

一ノ瀬「剣持さんだって、怖かったんだろうし。武智さんだって、友達の手伝いをしたくなるのは当然だよ」

東「…一ノ瀬なら、どうしてた? 一ノ瀬が剣持や武智の立場になったら、どうしてた?」

一ノ瀬「晴なら―」

数瞬考える。

一ノ瀬「―ビーチバレーしよって言います!」

……は?

一ノ瀬「皆で仲良く遊んだら、きっとまた信じられるよ。パーティのときなんて、すごくいい雰囲気だったでしょ?」

…一理ある…のか?

一ノ瀬「晴は、明日の朝食会で言うよ! バレーボールしようってこと。伊介さんも、武智さんも、皆に呼びかけて、参加してもらうの…そうすれば、きっとよくなるよ」

東「……犬飼と武智が仲直りするといいな…」

一ノ瀬「うん!」

一ノ瀬が笑顔になる。

私はその笑顔を守りたいと思った。

ずっと……ずっと……。

コテージ

モノクマ『グッドイーヴニング、東さん』

不快なモノがいた。

東「…今度はなんだ」

モノクマ『いやぁ~、最近東さんのコテージに遊びに行ってないなぁ~と思ってね。顔出しに来たの』

来なくていいのに…。

モノクマ『ウププププ。一ノ瀬さんとイイ感じになってたじゃん。やるねぇ~東さんも』

東「うるさい。それより剣持は無事なのか?」

モノクマ『ウププププ。元気に治療されてるよ』

それ元気じゃない。

モノクマ『あ~早くコロシアイが起きないかなぁ~』

東「物騒なことを言いに来たんなら帰れ」

モノクマ『ウププププ。ボクには一人、イイ感じのがいるんだけどねぇ~』

……一人……? 一人だと……?

東「誰だ?」

モノクマ『ウププププ。それは言えませんなぁ~』

東「ふざけるな! その一人を教えろ!」

モノクマ『や~なこった~』

モノクマを捕まえようとするが、モノクマはヒョイヒョイとかわす。
タンスやベッドや机の上に飛び乗る。早い。

東「はぁ…はぁ…」

モノクマ『ウププププ。昼のビーチバレーで疲れたんじゃないの?』

おかしい…私はこんなにも体力がなかったか…? 施設にいたときは一番成績が良かったはず…。

モノクマ『ウププププ。楽しかったよ、またね~』

モノクマが煙のように消えた。


キーンコーンカーンコーン。


モノクマ『えーと、ミョウジョウ学園修学旅行実行委員会がお知らせします…只今午後10時になりました。波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにお休み下さいね。ではでは、いい夢を。グッナイ…』

東「…………」

モノクマの狙いはわからない。あいつは大事なことはしゃべらない主義だ。考えても無駄なことかもしれない。

一ノ瀬は明日の朝食会でビーチバレーの提案をすると言っていた。私も早く起きて、それに賛成できるようにしよう。早めに寝るのも悪くない。

大丈夫。まだ大丈夫。
黒組に絶望したヤツはないはずだ。今日は番場以外の人間には会ったが、そんなヤツはいなかった。
番場も英がいるから大丈夫だろう。

そうだ。明日も同じように来るはずだ。私はそう思いながら、ベッドに入る。
疲れているはずなのに、なかなか寝付けなかった。私はせめて気分良く寝れるように、一ノ瀬のことを考えた。

大丈夫。大丈夫。
私はそう思って眠りについた。

すぐに後悔することになる。本当に皆のことに気を配っているか、私は確認すべきだったのだ。

傲慢だった。モノクマに言われた通り、私が傲慢だったのである。

そして、悪夢がはじまった。

モノクマ『無知というのは素晴らしいよね?』

『知らぬが花というように、知らないことの方がよっぽど幸せに生きられる』

『無知の知ってのは、その幸福に気づけと言っているんだろうねぇ』

『ねぇ、オマエラは気づいた?』

『自分の思い込みによる無知に対して、実感してる?』

『クラスメートが悲惨な目になったってことを知らないでいる彼女は、幸福なのかしらねん?』

翌日の朝

コテージ

東「ん」

今何時だ? 朝なのか?

時計を確認すると、8時を示していた。

なぜ、モノクマアナウンスが流れない。

まあ、流れなくともいいが、不快な声を聞きたくない。

流れないということは、時計が壊れたか、モノクマに異変があったか…あとは、それ以外の何かが起こったからか…。

う~ん、寝起きで頭が回らない。

二度寝するか……。

キーンコーンカーンコーン

あっ、鳴った。やっぱ時計が壊れただけか…。

それとも、モノクマが寝坊か? そもそも寝るのか、あいつ?

並べる言い訳を勝手に妄想してほくそ笑みつつ、私は布団の中で丸くなる。
























『―死体が発見されました。一定の捜査時間の後、学級裁判を開きます―』






東「…………は?」

私は布団から顔をだして、時計を見る。

8時をさしていた。

東「…………」

…………⁉

なに⁉ なんだと⁉

今のアナウンスはどういう……⁉

私は飛び起きて、ドアを蹴破るように、荒々しく開けた。

???「いたいッス!」

誰かと出合い頭にぶつかってしまった。
私は倒れることはなかったが、相手は盛大に尻もちをついていた。

東「走りか⁉」

走り「なんか初日にも同じことが……これがデジャヴ⁉ もう~兎角さんタイミング良すぎッスよ」

なぜこいつが?

走り「それよりも、モノクマアナウンスが聞こえたッスか? とうとう起こっちゃったッスね」

東「⁉ そうだ! 一ノ瀬は⁉ ほかの連中も無事なのか⁉」

走り「落ち着くッスよ、兎角さん。ほかの方たちは今から確認するところッス。晴はいなかったッスけどね」

走りの一言から慌てて捜した。
見つけたのは、

伊介「なぁにぃ?💕 まだ眠いんだけどぉ?💕」

桐ケ谷「事態が事態ですから」

生田目「何事もなければいいが…」

走り「いやぁ~どうなんスかね~? モノクマアナウンスの通りだと…」

寒河江「よせよ。縁起でもない」

私を含めて6人だった。

黒組の半分もいなかったのだ。

ホテル、コテージを調べたあと、私たちは第一の島を回る。

空港、ロケットパンチマーケット、砂浜、牧場…いずれも人はいなかった。

第二の島に向かう。

遺跡、図書館、ドラッグストア、そして、ダイナーで…。

一ノ瀬「兎角さん⁉ みんなも⁉」

英「あらあら? あちらもあちらで集まっていたみたいですわね」

番場「……二手に……別れますた……」

東「一ノ瀬!」

一ノ瀬と英、番場の3人と会う。

東「今朝のモノクマアナウンス―」

一ノ瀬「うん! こっち来て!」

一ノ瀬がビーチに向かう。

犬飼「え~まだ走るの~?💕 もう伊介帰る~💕」

東「ふざけるな!」

9人はビーチに向かう。

ビーチ

ビーチハウスのドアの前で一ノ瀬が止まる。

寒河江「ほんとに死体があるのか? なにかの間違いじゃねぇのか?」
寒河江が冷や汗を流す。

生田目「しかし、モノクマアナウンスがある以上は……」
生田目が思案顔だった。

桐ケ谷「……万が一なことを想像しておきましょう」
桐ケ谷が胸の前で手を握る。

犬飼「これでなにもなかったら、伊介怒るわよぉ~?💕」
犬飼が暑いのか、手をうちわのようにして仰ぐ。

走り「いや~なんだかワクワクするッスねぇ~! テンション上がってきたッス!」
走りが意気込む。

番場「…………っ」
番場がきゅっと一ノ瀬からもらったストラップを握り締める。

一ノ瀬「心の準備はいいですか?」

英「わたくしたちはアサシンですのよ? …さっさと入って確認しましょう。そうしないと始まりませんわ」
英がそう言って、ドアを開けた。

開けたドアの先には―



二人の少女がいた。


少女はもう一人の少女を見下ろしている。


何を言うまでもなく。
何をするでもなく―。


ただ、悲しそうに見つめていた。


海側のドアにもたれかかるように倒れている少女は目を伏せ、まるで生きているかのようである―が、生きてはいまい。


その口には一筋の血液。
その首には多量の出血。
その胸にはハサミが奥深く突き刺さっていた。


その手にはなにも握っておらず、ただ無気力に開かれていた。


床には刃物のようなきずあとに…血の跡が点々と散らばる。


監視カメラが見えた。ここでも異質な存在感を放っている。


東「……これは……っ!」


見下ろしていた少女が振り向く。


首藤「…みな…来たか…」


首藤は、力なく笑った。


東「首藤……神長が……っ!」


首藤「ああ……」


首藤が視線を私からずらす。


首藤「逝ってしもうたよ……」


倒れている少女は……神長だった……。

CHAPTER01非日常編


犬飼「うっそぉ…ほんとに死んでるの?💕」

寒河江「…マジか…」

生田目「……くそっ」

桐ケ谷「神長さん…」

一ノ瀬「…うっううう…」

走り「…うわぁ……マジに死んでるッス」

番場「……神長……さん……」

英「惜しい人を亡くしましたわ…」

東「……とうとう、か」

首藤「…………」

犬飼「にしても、ほんとに[ピーーー]ヤツがいるなんてねぇ…伊介、信じられな~い💕」

走り「でも、これで、学級裁判をやるはめになっちまったッスよ!」

こいつら……!

東「お前らっ! 少しはっ!」

犬飼「いやねぇ、東さん。次は伊介たちが殺されるかもしれないのよぉ?💕」
口元に手を当ててクスクス笑う。

走り「そうッスよ! そんないい子ちゃんぶってないで、早く対策するッスよ!」

……。

モノクマ『命はいずれ尽きる…生き物である以上、それは仕方のないことなんだよね』

また邪魔が……。

モノクマ『走りさんの言う通り、喧嘩している場合じゃないよね? オマエラにはこれから学級裁判をやってもらうんだから…もち、断るようなら問答無用で、おしおきだからね!』

東「…………」

英「で、なにしに来たんですか?」

モノクマ『うほぉう⁉ 冷たいお言葉…ボクはオマエラのことを思って来たってのにさ…』

生田目「どういうことだ?」

モノクマ『まあ、いくらオマエラが暗殺者だとはいえね? 一から捜査しろだなんて言われてね? できるとは思わないわけですよ、ボクは…』

桐ケ谷「なめられてますね」

寒河江「でも、妥当じゃね?」

モノクマ『ちゃんと真面目に捜査してくれるかどうか、不安の方もいるし…』

犬飼「ちょっと…なんで伊介を見るのかしら?💕」

走り「うはっ! ウチも疑われてるッスか!」

モノクマ『まだ来てない人も合わせてね…』
ウププププと笑うモノクマ。

モノクマ『と、いうわけで、THE・モノクマファイルぅ!』

モノクマが黒いファイルを取り出す。

モノクマ『じゃ、さっさとやっちゃってね』

モノクマが煙のように消えた。

東「…………」

寒河江「やるしかねぇのかよ…」

英「仕方ありませんわ。わたくしたちの中に、神長さんを殺した方がいらっしゃるのであれば…断罪すべきです。まったく、あれほど共に協力するように呼びかけていたというのに…」

番場「…………」

一ノ瀬「…………」

生田目「…武智は?」

桐ケ谷「おどらくどこかほっつき歩いているんでしょう」

犬飼「どうせ、あいつが犯人じゃな~い?💕」

犬飼の視線の先には、神長の胸に刺さったハサミ。

走り「まっ、調べてみればわかることッス!」

犬飼「え~めんどくさ~。伊介、一抜けた💕」

寒河江「伊介様、そんなこと言わないで捜査しようぜ」

犬飼「…もう~春紀が言うなら~わかったけど~💕」

走り「わがままか⁉」

そのまま寒河江と犬飼が二人でビーチから出て行ってしまった。どこを捜査するつもりなんだろうか…。

生田目「行かせて良かったのか?」

桐ケ谷「二人で行動した方がいいでしょう。犯人がいたら2人の方が対処できますし…」

生田目「わかった。桐ケ谷は私が守る」

桐ケ谷「千足さん…」

走り「もしもーし? …まあ、いいッス…じゃあ、とりあえず、千足さんと桐ケ谷さんのペア。英さんと番場さんのペア。ウチと晴のペ―」

東「それは違うぞ!」

走り「え⁉ ここでそのセリフッスか⁉」

東「私と一ノ瀬。走りは首藤とペアだ」

走り「…ぶぅ~わかったッスよ~貸し一つッスからね」

走りが一ノ瀬を一瞥する。

一ノ瀬は無言のままうつむいている。
ショックがすぎたようだ。

走りが首藤のそばまで行く。
生田目と桐ケ谷はすでにいなかった。

英「みなさま勝手ですわね。まずは各々のアリバイ確認。それと、モノクマさんのファイルでしょうに…」

忘れていた…。

英「聞きたいことはやまほどありますわね。時間は足りるのでしょうか…」

一ノ瀬「…やるしか、ないんですよね?」

一ノ瀬がようやく口を開いた。重かったけれど…。

一ノ瀬「…それでも、晴は――晴は、だれも殺人を犯していないと信じます。皆の無罪を証明するために、晴は捜査します」

毅然とした様だ。凛々しい。一ノ瀬の精神力は常人を越えている。

東「やってみるしかないんだ…私たちの生き残る道は、もうそれしかない」

今この瞬間では、それが希望なのだ。


――捜査開始――

ビーチ

英「では早速、モノクマファイルを確認しましょう」

《モノクマファイル1
被害者は神長香子。
死亡現場はビーチハウス。
死亡時刻は6時50分。
壁に寄り掛かった状態で死亡。腹部には刃物が突き刺さっており、出血が見られる。
また、左腕、右腕、頸部に切り傷。》

英「案外調べればわかることが多いですのね。死亡時刻がわかったのは幸いですが…」

一ノ瀬「医療に詳しくないと、死亡時刻なんてわかんないよね」

番場「……同感……です……」

自分が寝ている間に、殺人が起こっていたとはな…。

英「しかし、困りましたわね」

一ノ瀬「え、どうしてですか?」

英「アリバイを確認しても、大半が眠っていらしていたでしょうから…アリバイによる容疑者絞りが難しいと思ったのです」

東「たしかに…私も寝ていた」

一ノ瀬「晴も…まだぐっすり寝ていました…」

番場「……私は……旧館にいた……です……」

一ノ瀬「へぇ…早起きなんですね、真昼ちゃん」

東「コテージじゃなくて、旧館にいたなんて…なにやってたんだ?」

番場は恥ずかしそうに、
番場「……英さんの……朝食の準備を……」

英「まあ、番場さん、そんなに朝早くからしてくださっていたのですね? わたくし、まったく存じ上げませんでしたわ。このご恩はいずれお返ししなくてはいけませんね」

番場「…い、いいです…」

英「…………」

一ノ瀬「は、英さん、ドンマイです!」

英「…あ、あら、そうでしたの……失礼しましたわ……」

番場「あ、あう……ち、違くて…その…」

東「そんなことはどうでもいい。番場、それを証明できるなにかはあるか?」

番場「え……」

英「あら? …………そうね、わかってはいるけれど、割り切れないものがありますわ」

東「お前は番場に甘すぎるんだ。物的証拠がないと認められないな」

番場「……走りさんを……見たです……」

走り…? あいつもそんな早起きなのか…。

一ノ瀬「じゃあ、あとで、鳰にも確認しないといけないよね?」

東「ああ、そうだな」

英「…それでしたら、まずは、死体の捜査と行きましょうか。ちょうど、走りさんもいらっしゃることでしょうし…」


コトダマGET
【モノクマファイル1】
…被害者は神長香子。死亡現場はビーチハウス。死亡時刻は6時50分。壁に寄り掛かった状態で死亡。腹部には刃物が突き刺さっており、出血が見られる。また、左腕、右腕、頸部に切り傷。

【番場の証言】
…朝6時半に起床。旧館にいた。英の朝食の準備のためらしいが…? 同時刻に、走りを目撃した。

英「それでは現場検証をしましょうか…」

番場「……やる……ます……」

英と番場がビーチハウスに入って行った。

東「一ノ瀬、いけるか?」

一ノ瀬「……はい、やりましょう、兎角さん! 前に進むためです!」

私と一ノ瀬もビーチハウスの中へ。


ビーチハウス


走り「首藤さ~ん? 大丈夫ッスか~?」

首藤「…………」

英「神長さんとは一番の仲良しですものね…」

番場「…………」

東「…首藤、休んでていいぞ」

首藤は立ったまま、その場から動かない。

一ノ瀬「…首藤さん…」

首藤がようやく反応を示す。
一ノ瀬を見ていた。


首藤「一ノ瀬…………大切な人ほど、先に逝ってしまうんじゃな……」


一ノ瀬「……首藤さん……」

首藤は己の顔をピシャリとはたく。

首藤「若者に愚痴を言っておる場合じゃないの…ワシ自身の足で動かなければな…」

英「まるで年配者のように仰いますのね…」

走り「ま、復活して良かったッスよ! さすがに相棒が棒立ち要因だと、捜査できないッスからね~」

なんてことを笑顔で言うんだ…。

英「では、まずは、どこから調べましょうか…」

走り「やっぱ死体からッス!」

番場「……血が……」

一ノ瀬「神長さん……」
一ノ瀬が両手を合わせて合掌している。

東「…調べるぞ…」

神長の身体に近づく。

まずは……そうだな。とりあえず、モノクマファイルの確認をするか。モノクマが嘘をついている可能性も捨てきれない。

神長の腹部に刺さったハサミを見る。
中央の支店の部分まで、ぐっさりと刺さっている。

これは……抜けないんじゃないか……?

首藤「東、おぬしも怪しいと思うか?」

東「え? あ、ああ。私も抜けないと思っていた」

首藤「なにを言っておる? これほど刺さっているにしては、出血量が少ないという話じゃが?」

東「…………ああ、そうだな」

走り「あれ~? 兎角さん、ひょっとしてわかってなかったんじゃ……っていた! ちょっと、小突かないでくださいッス!」

首藤「…ん?」

英「どうかなさって?」

首藤「ああ、これ、ハサミの大きさにしては、傷口が大きいと思っての…どうやら、ハサミを刺す前、同じ部分を別の凶器で刺しておるようじゃ」

英「…刺したあと、傷口を広げたんでしょう」

首藤「東が言ったように、抜けないくらい刺さってるんじゃ。動かせまいよ」

英「1回目で傷口を広げて、最後に深く突き刺したんでしょう」

首藤「刺し傷は2回。たしかに、可能性としてはありじゃが…」

一ノ瀬「そんなことまでわかるんですね」

首藤「まあの。年の功じゃな」

走り「…首藤さんって、何歳ッスか…」


コトダマGET
【腹部の傷】
…出血が見られる。が、傷口のわりに出血が少ない。刺し傷は2つあるようだ。


英「番場さんはなにをキョロキョロしておりますの?」

番場「……あの、ここって……元から……ですか……?」

走り「? ひょっとして、現場のことッスか? そッスね~さすがにここまで荒れてはいなかったと思うッスけど?」

番場の言う通り、ビーチハウス内は荒れていた。テーブルは切り傷、一部は破損しており、椅子にいたっては、完全に破壊されている。冷蔵庫のガラスも割られて、植木鉢などの装飾品も見る影もない。無事なのは、監視カメラとモニター、天井のシャンデリアくらいだった。

英「当然ですが、一応ここに詳しい方に聞くのがベストでしょう」

首藤「ならば、断言しよう」

英「?」

首藤「こんなではなかった。綺麗であったぞ。間違いなく犯人と…香子ちゃんが争ったあとじゃ」

一ノ瀬「首藤さん」

英「あなたはここに詳しいのですか?」

東「一ノ瀬や私、それと神長との4人でビーチバレーをやったりしていた。私も記憶しているところだと、こんな有様ではなかったぞ」

英「そうですか。それも、そうですよね」


コトダマGET
【争ったあと】
…現場のビーチハウスには争ったあとがあった。前日の夕方までは、荒れていなかった。


英と番場がクローゼットの中に入っていく。
あれ、結構奥行きあるんだな…。

首藤が神長の身体をより入念に調べていく。走りがそれを見て、なんまいだぶなんまいだぶと合掌して呟いている。…お前も捜査しろよ。
首藤がこれ以上傷をつけないように丁寧に捜査をしているのを見て、少し同情してしまった。
一番仲の良い友人が死んだのだ…悲しんで当然だ。私でいうなら、一ノ瀬が死ぬようなものか? 三日三晩は泣く。

私は一ノ瀬を連れてシャワー室に入る。

一ノ瀬「あれ? ここ、水出ないよ?」
一ノ瀬がシャワーのノブをひねっている。

モノクマ『あぁ、それね。今故障中なの。だから水は出ないよ?』

東「シャワーの意味がないじゃないか…」

モノクマ『まったく、オマエラは文句ばっかりだね。シャワーがないなら滝でいいじゃない!』

一ノ瀬「ねえ、モノクマさん、シャワーの故障って、皆知ってた?」

モノクマ『いや、今初めて言ったよ? でも、首藤さんとかここを利用していた人なら知ってたかもね。ばいびー』
モノクマは煙のように消えた。

東「…あそこから出入りできるか?」
私は天井近くにある窓を指さす。

一ノ瀬「た、高いよ。さすがに無理じゃないかな?」

…3メートルはあるな。

東「一ノ瀬、肩車してやるから、ちょっと調べてみてくれ」

一ノ瀬「え、えええぇ⁉ む、無理だよ! わわっ! ちょ、兎角さん、無理やりしないでよ!」

東「どうだ? なにかわかるか?」

一ノ瀬「もぅ…ん~と、通れるには通れるみたいだよ? ほら」
一ノ瀬が窓を押すと、開いた。

一ノ瀬「これ、内側から開くようになってる」

東「だとすると、そこから出ることは可能なわけか…」

一ノ瀬「でも、一人だと無理じゃない?」

東「…ロープかなにかを使えば、あるいは…」

それとも、共犯者か?
ロープ…ロケットパンチマーケットも調べておいた方がいいか?

一ノ瀬「でもさ、海側のドアは神長さんが閉じていたけど、ダイナー側のドアは開けられていたから、普通に出られるんじゃない?」

東「たしかに…わざわざこんな窓から出る必要はないか…なにか証拠らしいものはあるか?」

一ノ瀬「う~ん、とくに目ぼしいものはないよ?」

東「そうか…………」

一ノ瀬「…………あの~、兎角さん?」

東「ん? なんだ?」

一ノ瀬「そろそろ、おろしてほしいです…」

東「……このまま捜査してもいいぞ?」

一ノ瀬「ダメだって⁉」

東「…………」

一ノ瀬「ちょ、兎角さん! 太ももなんか触ってない? こそばゆいよ!」///

東「そうか? 気のせいだろ」

一ノ瀬「ちょ、兎角さん! 太もも揉まないで! …ちょっ…っ」///

東「そうか? 気のせいだろ」

走り「え~と、ごほんごほん、人がいるッスよ? イチャイチャは中断するッス。ていうか、真面目に捜査してくださいッスよ」

…走りに言われた…。

しかし、ちゃんと捜査はしていたぞ? 窓から脱出は可能だ。……なに? そんなところ調べる必要があったかだと? 必要のないことは学級裁判のときにわかるものだ。案外こういうヒントは大事かもしれないぞ?……別に一ノ瀬を肩車するためじゃないからな。


コトダマGET
【シャワー室】
…故障しているため、水は出ない。天井付近の窓は、外に出ることは可能。入ることは難しい。

シャワー室から出る。当然一ノ瀬を肩車からおろしている。

首藤「ワシも香子ちゃんを調べてみてわかったことがある」

東「モノクマファイルに記載されていないことか?」

首藤「いや、そういうわけじゃないが、少々不審な点をな…」

一ノ瀬「なんですか?」

首藤「頸部の傷じゃが、どうやら首を一周しておるようじゃ。それも、表面をなぞるように切られておる」

…たしかに。やけに血の量があると思ったが、そういうことか…。

首藤「しかし、不思議にも、内部の骨などは傷一つついておらん」

一ノ瀬「? それって、どういう…?」

走り「つまり! 犯人は首を切り落とすつもりはなかったってわけッスよ!」

東「じゃあ、なんで切ったんだ」

走り「知らねッスよ!」

東「ポンコツめ…」

走り「兎角さんに言われたくないッス⁉」

英「こちらも見つけましたわ」

英と番場も戻ってきた。

英「こちらを…」

英の手には、髪の毛が一本握られていた。

一ノ瀬「黒い…?」

番場「……落ちてた……ます……」

首藤「クローゼットの中にか?」

走り「黒組だと、神長さんだけッスね。入ったことがあるんスかねぇ…かくれんぼッスね!」

英「クローゼットの中は、サーフィン用の道具にダイバー服等が陳列されていますから、今回とは関係のないことかもしれませんが、念のために…」

東「そうか…」


コトダマGET
【モノクマファイル】アップデート
…被害者は神長香子。死亡現場はビーチハウス。死亡時刻は6時50分。壁に寄り掛かった状態で死亡。腹部には刃物が突き刺さっており、出血が見られる。また、左腕、右腕、頸部に切り傷。頸部の傷は首を一周していた。表面のみで、内部までは達していない。

【黒い髪の毛】
…クローゼットの中に落ちていた黒い髪の毛。黒組では、神長香子だけが黒髪である。


???「うわっ、ほんとに死んでるよ…」

ビーチハウスの入り口に新たな人影がいた。

東「武智!」

武智「あっどうも♪ ご無沙汰♪」

走り「あ、武智さん、おはようッス!」

武智「おはよう、みんな!」

英「随分遅かったですのね…」

武智「いや~ホテルの食堂にいてね~?♪ 伊介さんに教えてもらって来たんだ♪」

犬飼に? あいつと寒河江は今ホテルか…。

首藤「死体発見アナウンスは聞いてたかの?」

武智「もち♪ でも、場所がわかんなくてさ~♪」

一ノ瀬「でも武智さん。晴がホテルに行ったときは、ホテルにいなかったよね?」

走り「あ~ウチがコテージまわってるときもいなかったッスね。……これはもしや……⁉」

武智「ちょ、やめてってば~♪ 朝は牧場にいただけだよ~♪」

牧場? なんでまた…。

英「それを証明してくれる人はいらっしゃいますの?」

武智「ん~と、あっ! 首藤さんがランニングしてるの見たよ? あと、晴っちがホテルに急いで走ってるのも見た」

首藤を見る。

首藤「…たしかに、ワシは今朝6時半にホテルを出て、ランニングした」

一ノ瀬「晴がホテルに行ったのって、たしか、神長さんを見たあとかな。皆を呼びに行ったよ?」

英「だとすると、8時すぎですのね。驚きですわ。1時間半は牧場にいたのですね」

武智「まぁねぇ♪ あそこ、家畜とかの小動物がいて楽しいんだ♪ 後始末はモノクマがやってくれるし♪」

なんの後始末だ…。

走り「じゃあ、そのあと、ホテルに行ったんスか?」

武智「うん…晴っちがホテルに行って、少し経ってから、ホテルに行って、食堂にずっといたよ?♪ ボッチだったっ!♪」

首藤「嬉々として言うことではないな…」

走り「兎角さんも負けてられないッスね?」

東「…どういう意味だ?」



コトダマGET
【武智のアリバイ】
…今朝早くから牧場にいた。私たちや一ノ瀬たちとすれ違いにホテルに入り、食堂にずっといた。犬飼に教えてもらい、ビーチハウスにて私たちと遭遇。

【首藤の証言】
…朝6時半ごろからランニングをしていたようだ。

一ノ瀬「そういえば、鳰」

走り「ん? なんスか?」

一ノ瀬「朝なにしてた?」

走り「おっ⁉ アリバイ確認ッスか⁉ なんだかゾクゾクしてきたッス!」

東「いいから、答えろ…」

走り「え~と、ウチは5時半に起きて、コテージでのんびりしたあと、ホテルのロビーや食堂、それとプールでプラプラしてたッス。そういえば、ウチも6時半ごろに首藤さんがランニングに行くところを見たッスね」

首藤「ふふっ、見られておったか…なんだか恥ずかしいの……もっと言うと、6時50分にいったんホテルに戻っている。第一の島を一周してからな…そのとき、桐ケ谷に会ったから、あとで確認するとよい。7時になってもモノクマアナウンスが流れんし、香子ちゃんが来なかったから、捜しにでかけたの…走りとも会ったの?」

走り「そッスね。7時まで首藤さんと軽く話したッス。桐ケ谷さんも見たッスよ? ただウチと首藤さんが会話してたから、そのまま食堂に行ったッスけど…」

番場「……私は……走りさんが……6時半ごろに……プールで歩いているのを見た……ます……」

走り「おおっ! これはアリバイOKッスね! いやっふぅ~~~っ! 傍観者確定ッスよ!」

騒がしいヤツだ…。

武智「番場ちゃんはなにしてたの?」

英「番場さんはわたくしのために早起きして、朝食の準備をしてくださっていたのです」

武智「わぁお…VIPだね♪ じゃあ、あたしもこれからお願いしよっかな?♪」

走り「あっ、じゃあ、ウチもお願いするッスよ!」

英「あら? いやですわ…次のクロはわたくしになりますのね…」

武智「…い、いやだな~冗談だって、冗談♪」

走り「そ、そうッスよ、軽いジョークッス…」

武智と走りが冷や汗を浮かべて後ずさりする。

英「ふふっ、こちらもほんの戯れですわ」

…目がマジだったがな。


コトダマGET
【走りの証言】
…5時半に起床。自身のコテージやホテルの敷地内をプラプラ歩いた。6時半に番場に目撃され、本人は首藤のランニングを目撃している。7時に桐ケ谷、首藤と会っている。

【首藤の証言】アップデート
……朝6時半ごろからランニングをして、6時50分にホテルに戻った。桐ケ谷、走りと会っている。7時に今度は神長を捜しに第二の島に向かった。


首藤「おぬしらはどうじゃ?」

英「わたくしは寝てましたわ」

東「私もだ」

一ノ瀬「晴も寝てました…」

首藤「まあ、普通はそうじゃろうな…早起きして朝食の前に、プラプラしたり、牧場行ったり、クラスメートの食事の準備したり、ランニングしたりせんわな…」

走り&武智&番場「「「…………」」」

英「ここはこれくらいですか…では、ほかの場所を―」

武智「ねぇ? 水ってない? のど渇いたんだけど?」

首藤「そこの冷蔵庫にないかの?」

武智「ないよー」
武智がボロボロの冷蔵庫をのぞいている。詳しく言えば、ヒビの入った冷蔵庫のガラスケースを拳で割っている。

東「おい⁉ 現場は保全しろよ⁉」

武智「…あっ、ごめ~ん♪ 職業柄つい殺害現場はわからないように破壊しちゃうの♪」

どんな職業だ…。

首藤「おかしいの。ワシが見たときはまだ結構あったと思うんじゃが…」

東「ゴミ箱にペットボトルがある。誰かが飲んだんだろ」

首藤「…ふむ。今朝飲んではおらんじゃろうから、昨晩かの。昨日の夕方、ビーチラリーのときにワシが余っておるのを確認した」

武智「え~? それはないよ~♪」

首藤「? なぜじゃ?」

武智「だって、夜にあたしと千足さんでビーチバレーしたときに、あること確認したもん♪ モノクマアナウンスが終わってからだから、あるはずなのに~!」
武智が悔しそうにしている。

走り「マンツーマンで⁉ タフッスね⁉」

番場「……ビーチバレー……違う……ビーチラリーです……」


コトダマGET
【ゴミ箱のペットボトル】
…冷蔵庫にあるはずのペットボトルが捨てられていた。中身は水である。


首藤「さて、それでは別の場所を手分けするかの…」

英「じゃあ、番場さん、いきましょうか」

番場「え? え?」
英が番場を捕まえて、スタスタと行ってしまった。

走り「傍若無人ッスね……じゃあ、晴!」

武智「晴っち、一緒に行こ♪」

東「それは違うぞ!」

走り「だから、それ使うタイミング今じゃないッス!」

東「一ノ瀬は私とだ」
グイッと一ノ瀬を引き寄せる。

一ノ瀬「兎角……」

走り「ヒューヒューお熱いッスね~」

武智「あ~ん、火傷しちゃ~う♪」

首藤「野次がウザいの……では、おぬしらはワシと行くか?」

走り「あ~でも、だれか兎角さんたちといた方がいいッスよ?」

なぜだ?

走り「シャワー室んときみたいにイチャイチャしてたら捜査どころじゃないッスもんねぇ?」ニヤニヤ

一ノ瀬「ちょ、鳰!」///

首藤「ふむ。それでは、走りと武智、ジャンケンして勝った方が東たちと行くんじゃ」

走り「よしきたっ!」

武智「いーよっ♪」

走り&武智「「ジャーンケーン、ポンッ―」」

ダイナーの駐車場

東「では、まずはどこからだ?」

一ノ瀬「ん~と」

武智「はいは~い♪」

東「…なんだ」

武智「ホテルはどう?」

東「なぜだ」

武智「皆のアリバイとか聞いたら? 伊介さんと春紀さんがいたよ? まだ聞いていないんでしょ?」

たしかにまだ聞いていない。

東「じゃあ、そこに向かうか」

歩き出す。

一ノ瀬「あっ、そういえば…武智さん、あのハサミって武智さんのだよね?」

武智「? あの?」

そういえば、アリバイ確認ですっかり忘れていた。

東「神長の胸に刺さってたハサミだ。お前のだろう?」

武智「うん。そだけど?」

あっさり認めたな…。

東「お前が殺したのか?」

武智「あはは! 今さらだね~♪ でも、ようやく聞いてくれたね♪ 皆無視するんだから、間抜けなのかと思ってたよ♪」

東「お前…知らんぷりしてたのか…」

武智「自分から言うわけないじゃん♪」
ヤレヤレと口で言う。

一ノ瀬「…違うんだね?」

武智「もち♪」

東「一ノ瀬! こいつの言うことを信じるのか?」

一ノ瀬「うん。晴は信じるよ。晴は誰も殺していないって、信じてるから…」

…………。

武智「あらあら…」
はっと小さく鼻で笑う。

東「…じゃあ、あのハサミはなんで刺さってるんだ? お前のなんだろ?」

武智「うん。実はさ…昨日ハサミを一つなくしててね…多分それだよ。犯人に拾われて利用されちゃったんだね、多分。かわいそうなあたしのハサミ…」

一ノ瀬「なくした…?」

東「いつだ?」

武智「ん~と、昨日伊介さんと食堂でもめたときかな。気づいたのは昨晩のビーチハウスでバレーするときだったんだけど…落とすタイミングはあのときしか思い当たらないなぁ」

剣持の件か…。

東「それ、ほかの誰かに言ったか?」

武智「言ってないよ~♪ あっ、でも、現場にいた千足サンは知ってるよ?♪」

…争点になりそうだな…。


コトダマGET
【武智のハサミ】
…昨日の剣持の一件のときに、ハサミを一つ落としたようだ。犯人が拾って利用したと武智は証言する。本人は昨晩に気づく。生田目との二人しか知らないこと。

ホテル

英「あら?」

一ノ瀬「英さん! 番場さん!」

東「お前らか…犬飼と寒河江は見たか?」

英「いえ」

東「…おい」

武智「…てへぺろ♪」

というか、当たり前か…ずっと同じ場所にとどまってるはずもない。ましてや、犬飼なんだ。5分とその場所にいられないだろう。

一ノ瀬「英さんと番場さんはどうしてここに?」

英「番場さんが面白いことを仰りましてね…その確認に来ましたの…」

東「面白いこと?」

番場「……旧館……包丁……」

武智「……あっ、もしかして、なくなってたとか?♪」

英「その通りです。番場さんがわたくしのために料理してくださろうとしましたが、包丁がなかったそうですの。それを確認しに旧館まで行ったところですのよ? せっかくわたくしのために―」

……ウザいな…。

東「そうか……それはそうと、なんでビーチハウスのときにそれを言わなかったんだ」
番場に近づくと、

英「忘れていたそうです」
英がズイッと立ちふさがった。

東「…………」

番場「す、すいません……です……っ!」

英「しかし、確認したところ、包丁はありましたわ」

武智「へ? それじゃあ、番場ちゃんの嘘?」

英「いえ、我々全員がホテルを離れた隙に、包丁を戻したんですわ」

一ノ瀬「あっ、ハサミのほかのもう一つの刺し傷って、包丁⁉ ほら、たしか、ハサミよりも大きい傷って、首藤さんも言ってたし…!」

ああ、そういえば…。

東「しかし、包丁って何本もあるだろう? 戻っていたと言ったが、そんな一本増えただけなのにわかるのか? 数を数えていたのか?」

英「しめっていましたもの」

武智「しめって? ……もしかして、興奮していたとか⁉ いやらしい包丁だこと!」

お前は黙ってろ。

英「誰かが使用して、洗ったんでしょう」

一ノ瀬「誰かって―」

英「犯人に決まっていますわ」

一ノ瀬が少しだけ悲しい顔をした。

英「念のため、食堂の包丁も確認しましたわ。食堂の包丁はちゃんと綺麗にそろっていましたし、使用された形跡はありません」


コトダマGET
【各所の包丁】
…朝、旧館の包丁が一本なかった。しかし、死体発見後には戻っていた。しかし、一本がしめっていた。食堂の包丁に異変はない。

英「ここはもう調べることはないですよ」

武智「あちゃ~先を越されちゃったね♪」

一ノ瀬「……あっ」

東「どうした、一ノ瀬?」

一ノ瀬「ご、ごめんなさい。晴も一つ忘れてました…!」

一ノ瀬が自分のコテージに入って、手紙を持って出てきた。

東「それは?」

一ノ瀬「今朝、晴のポストの中に入ってたんです」

武智「晴っち、律儀にポスト確認してたの⁉」

英「内容は?」

一ノ瀬が手紙を読み上げる。

《一ノ瀬晴殿
本日、モノクマアナウンス後、朝食の前にビーチハウスに来られたし。
一人で来てほしい。
誰にも言わないこと。
打ち明けたい秘密がある。
神長香子》

東「これは……」

武智「ラブレター⁉」

英「どう見ても違うでしょう」

東「果たし状か…」

英「一つ世代が戻っていますわ……剣持さんか走りさんにいてほしいですわね……わたくし、こういうのは慣れておりませんもの…」

番場「…………」

一ノ瀬「ただ、晴…寝坊しちゃって、7時20分にこの手紙に気づいたの…」

東「モノクマアナウンスが流れなかったからか…」

一ノ瀬「それで、慌ててビーチハウスに向かったの。そしたら、首藤さんと神長さんを見て…」

武智「ふ~ん、そのとき、神長さんは死んでたんだよね?」

一ノ瀬「……はい。死体発見アナウンスもそのときです」

東「そうか…」

武智「わざわざ晴っちに神長さんの死体をいち早く見せるとは…神長さんはドSだね♪」

東「不謹慎だぞ」

番場「……ドS……違う……天然ドSです……」

英「首藤さんの方が早くいらしたのね?」

一ノ瀬「はい」

英は考えこんでから、

英「一ノ瀬さんが見た直後に、死体発見アナウンスが流れたんですのよね?」

一ノ瀬「そうですけど……なにかありました?」

英「首藤さんと一ノ瀬さんだけがビーチハウスに?」

なにが気になるんだ?

英「…おかしいですわね」

なに?

英「死体発見アナウンスは3人が見たときに流れるもの。一ノ瀬さんの証言ですと、2人しかいませんわ」

…⁉

武智「犯人を含めれば、3人じゃない?♪」

英「……たしかにそうですが…」

東「モノクマに聞いた方がいいか?」

モノクマ『呼んだ?』

東「呼んでない」

モノクマ『呼んだでしょ⁉ なに嘘吐いてんだよ⁉ それはツンデレに入らないからね⁉』

しまった…反射的に…。

武智「ツンデレって、ハサミでツンツンしたらデレること?♪」

そんなヤツ、お前の知り合いにいたのか……?

一ノ瀬「ねぇモノクマさん…死体発見アナウンスの条件の3人に、犯人も含まれますか?」

モノクマ『……デリケートな質問だから、言いたくないなぁ…』

英「…これからの学級裁判のためにここで決めませんこと?」

モノクマ『…ウププププ。もう次の学級裁判のことを考えているんだ。いいよ。教えてあげる。犯人は…含まれませーん!』

モノクマは煙のように消えた。

一ノ瀬「…英さん…」

英「…真意ではありませんわ。気にしないでください」

英はプイッと背を向ける。

何を思って言ったのだろう。

次の学級裁判か……。


コトダマGET
【一ノ瀬宛ての手紙】
…内容は《一ノ瀬晴殿
本日、モノクマアナウンス後、朝食の前にビーチハウスに来られたし。
一人で来てほしい。
誰にも言わないこと。
打ち明けたい秘密がある。神長香子》
一ノ瀬は7時20分に気づいた。

【モノクマアナウンスの異変】
…首藤涼、一ノ瀬晴のほかに発見者がいる? そいつが第一発見者のおそれあり。また、犯人は死体発見アナウンスの条件には当てはまらない。

ロケットパンチマーケット

私たちは包丁のほかに凶器が用いられていないか確認するためにロケットパンチマーケットに来た。
英と番場とはホテルで別れた。

犬飼「だ~か~ら~、第二の島には行ったことないっての…さっき初めて第二の島に行ったわ💕」

首藤「そうか」

寒河江「あたしは行ったことあるぜ? ドラッグストアに薬をもらいにな」

走り「あ~たしか、剣持さんの件ッスね」

4人がいた。

武智「おや~? 伊介さん、おひさー♪」

犬飼「さっき会ったでしょ💕 テキトー言わないでね?💕」ニコッ

武智「うわぁ、こわーい♪」

犬飼「ふん」

寒河江「お前らも来たんだな」

東「ああ。ここには凶器がたくさんあるからな」

走り「あ~それなら大丈夫ッスよ? ウチが確認したッス。なにか聞いてくれていいッスよ?」

東「そうか……さすがパシリ」

走り「走りッス⁉」

東「じゃあ……包丁は?」

走り「ないッス」

東「…ロープ」

走り「ん~と、あるにはあるッスが、使われた形跡はないッス」

東「…ほかに凶器の類は?」

走り「ないッスね。モノケモノ討伐したあと、モノクマさんが全部回収しちゃったので、正直使い道が微妙なモノしか残ってないッス。またモノケモノ壊されるといけないから~って」

なるほどな…。

つまり、凶器の類は、モノケモノ討伐以後は補充されていないし、置かれていないということか…。


コトダマGET
【ロケパの在庫】
…包丁等凶器は一切ない。モノクマに処分されたらしい。数少ない道具も使用された形跡はない。


東「犬飼と寒河江に聞きたいことがある―」

犬飼「なぁにぃ~💕 またアリバイだったら、いい加減怒るわよ~💕」

東「…アリバイだ」

犬飼「アンタいい度胸してるわねぇ~💕」

東「これは不可抗力じゃないのか?」

首藤「まぁ待て、それならワシが話してやる」

かくかくしかじか。


コトダマGET
【犬飼のアリバイ】
…今朝は寝ていたため、アリバイがない。第二の島には行ったことがない。

東「寒河江もか…」

寒河江「あぁ、さすがに寝てるぜ」

だろうな。

一ノ瀬「首藤さん」

首藤「ん? なんじゃ?」

一ノ瀬「首藤さんが…第一発見者?」

なんの…とは言わなくても通じる。

首藤「…そうじゃ」

一ノ瀬「晴が来るまでに誰か来た?」

首藤「いや、来ておらん」

一ノ瀬「…首藤さん、死体発見アナウンスの条件、知ってる?」

首藤「………っ⁉ …そうか、そうじゃったのか…っ!」

首藤がヨロヨロとよろける。

走り「ん? なにやってんスか? 酔っ払いのマネッスか? それとも酔っ払いッスか?」

武智「違うよ~♪ これはリズムをとっているんだよ~♪ 今から踊りだすよ、きっと♪」

寒河江「お前ら自重しろ……なにか気づいたんだろ? 首藤」

首藤「……ああ、大事なことを、な……」

犬飼「なぁにぃ~?💕」

首藤「ワシは……第一発見者ではないんじゃ…」

走り「…そんだけッスか?」

首藤「…ワシは7時40分に見つけた。一ノ瀬は…」

一ノ瀬「8時だよ、首藤さん」

首藤「……なんてことじゃ…ワシとしたことが……」

東「…どうしたというんだ?」

首藤「…もっと…もっと早く…気づいていれば……いや、何も変わらんな…ただ、己の鈍さのせいにしておるだけじゃ…ワシは愚かじゃったな…」

なにを言っているんだ?

一ノ瀬「首藤さん、誰だって、自分が第一発見者だって思うよ。まさか、自分より早く来ている人がいるなんて、思わないもん」

犬飼&寒河江&走り&東&武智「「「「「…?」」」」」


コトダマGET
【モノクマアナウンスの異変】アップデート
…7時40分に首藤涼、8時に一ノ瀬晴が発見している。一ノ瀬は首藤と神長を同時に発見した。しかし、第一発見者は別にいる? また、犯人は死体発見アナウンスの条件に含まれない。


首藤「………? 犬飼」

犬飼「なぁにぃ~?💕」

首藤「……ケガ、しとるの?……」

犬飼「え? どこぉ~?💕」

首藤「……そこじゃ」

犬飼の左腕に、うっすらと残るケガを指摘する。

武智「へぇ♪ シャレてる傷跡だね♪」

寒河江「傷にシャレもへったくれもあるか…」

走り「よく気が付いたッスね⁉」

首藤「……英に目ざといと言われるほどじゃ……」

犬飼「ほんとだぁ~💕 いつのまに…💕」

一ノ瀬「大変、治療しなきゃ!」

寒河江「ドラッグストアに行くといいんじゃねぇか?」

一ノ瀬「ありがとう、春紀さん! ちょっと行ってくる! 行こっ、伊介さん!」

犬飼の手を握り、走り出す。

犬飼「ちょ⁉ あんた、すごい力で―」

連れ出された。

東「待て! 一ノ瀬、私も行く!」

ロケットパンチマーケットを離れた。


コトダマGET
【犬飼のケガ】
…左腕の二の腕にうっすらと切り傷があった。いつケガしたかはわからない。


武智「……ドラッグストアの薬って、モノクマに処分されてなかったっけ?」

走り「へぇ~そうなんスか?」

武智「たしか…昨日のしえなちゃんの一件のときに、モノクマがそんなことを―」

寒河江「……あっ。忘れてた…」

ドラッグストア

一ノ瀬「あっ、柩ちゃんに千足さん!」

桐ケ谷「一ノ瀬さん…伊介さんに東さんも」

生田目「順調か?」

東「まあまあだ。そっちは?」

桐ケ谷「遺跡に図書館、ダイナーも調べたんですけど、証拠はなかったです。ドラッグストアもなさそうで…」

犬飼「やぁだぁ💕 しっかりしてよねぇ💕 伊介たち、死んじゃうのよ?💕」

桐ケ谷「うっ、ごめんなさい…」

生田目「桐ケ谷…大丈夫だ、きっとなんとかなる…」

犬飼「努力論とか…うっざぁ💕」

一ノ瀬「それより、薬を探さなきゃ…」

桐ケ谷「薬、ですか?」

東「犬飼がケガをしているんだ」

犬飼「大げさだってばぁ💕 こんなの、ハンドクリームとかファンデーションでも塗っとけば大丈夫だって…」

生田目「いや、それはさすがにアウトだと思うが…」

桐ケ谷「…あの、傷薬はありませんよ?」

一ノ瀬「え?」

東「…………そういえば、モノクマに処分されたんじゃなかったか?」

一ノ瀬「…そうでした…!」

犬飼「もう、じゃあ、骨折り損じゃない💕」

一ノ瀬「うっ、ごめんなさい…」

東「……ところで、桐ケ谷と行動しているんだな」

生田目「なにか裏があると思うかい?」

東「…ノーコメント」

生田目「やっぱ私は桐ケ谷と一緒にいたい。たとえ、それで桐ケ谷に危険が及ぼうとも、私が桐ケ谷を守ればいいだけだ」

そうですか…。
走りがいたらなんて言うんだろうか……。

桐ケ谷がそういえば、と思い出したように、
桐ケ谷「昨晩、神長さんとドラッグストアで会いました」

東「なに?」

桐ケ谷「毒はあるか、と聞かれて、ない、と返すとわかったとだけ言って帰りましたが…」

毒? なんでそんなものを……?

一ノ瀬「柩ちゃんはどうしてドラッグストアに…?」

桐ケ谷「散歩です…」ニコッ

犬飼「散歩って……ハァ、まぁいいわ。伊介はもう行くわね💕」

一ノ瀬「あっ、待って伊介さん! 晴たちも行きます。千足さん、柩ちゃん、また後でね」

桐ケ谷「はい、またあとで」

生田目「お互い、全力を尽くそう」

東「ああ」


コトダマGET
【桐ケ谷の証言】
…ドラッグストアに傷薬や毒薬はなかった。傷薬はモノクマが処分していた。また、神長が昨晩ドラッグストアに訪れ毒の有無の確認をしていた。余談だが、遺跡、図書館、ダイナーなどから証拠はなかった。

ホテル

寒河江「おっ、伊介様、ケガは?」

犬飼「無駄骨💕」

武智「そうだよねぇ♪ モノクマが処分してたもんねぇ♪」

犬飼「アンタ、気づいてたなら言ってよっ💕」

一ノ瀬「うぅう…ごめんなさい…」

犬飼「もういいってば…終わったことでしょ?💕」

東「…首藤は?」

武智「あ~なんか調べものあるって言って、どっか行っちゃった♪」
なんだそれ。

寒河江「…なぁ、剣持のコテージに傷薬あるんじゃねぇのか?」

一ノ瀬「えっ? でも、モノクマが…」

寒河江「在庫処分って言ってただろ? だから、剣持のコテージに持ち込んでいたヤツならまだあるだろって思ってよ…人のコテージに持ち込んだヤツを、在庫だなんて呼ばねぇだろ?」
…なるほど。

武智「さすが春紀サン! じゃ、武智乙哉、いっきまぁ~す♪」
武智が剣持のコテージのドアを開けようとするが、
武智「あれ? 鍵がかかってるよ?」

寒河江「お~い、モノクマ~」

モノクマ『お呼びですかな?』

寒河江「剣持のコテージの鍵、開けてくれ」

モノクマ『へいへい、お安い御用で……開けゴマ』
ガチャッ
モノクマ『ピロピロリン! モノクマはカギを開ける速度が上達した! ………じゃっ!』
モノクマは煙のように消えた。

東「手馴れているな…」

寒河江「ああ、なんかな、案外頼めばやってくれんぜ? とくにカギがかかっているところは、モノクマにしか開けられないしな」

ドガンッ
武智「くっすり~くっすり~♪」
武智が剣持のドアをけり破って入っていった。

犬飼「アンタねぇ~乱暴すぎない?💕」

武智「えっ、そう? この方がのちのち入りやすいじゃん♪ それに、こっちの方が気分いいし♪」

寒河江「ドSだな…」


武智「おっ、あったよ~♪ 春紀サンの言う通りだね♪ っとぉ、んん?」

東「どうかしたか?」

武智「いや、気のせいかなぁ? 薬の量が減っている気が……」

一ノ瀬「すごい! そんなのわかるの?」

武智「まぁね♪ 毎日ずっと看病してきたし♪」エッヘン

犬飼「それなのにドア蹴破るのね…💕 伊介が剣持さんだったらアナタで卒業考えるかなぁ💕」

武智「そう? …えへへ~♪」

寒河江「褒められてないぞ?」

一ノ瀬「もう! しえなちゃん泣いちゃうよ!」

武智「それはそれで楽しめるし……って、そんなことはどうでもいいの♪ さっ、伊介さん、ケガ見して?♪」

武智が犬飼のケガの治療をしようとはな…。昨日のことから考えたら、想像できない。案外、引きずらないタイプなのか、武智は…。

しかし、武智が欲情してきたようなので、寒河江が代わりに犬飼のケガを看た。私と一ノ瀬で武智を抑えた。


コトダマGET
【剣持のコテージ】
…中に傷薬と包帯があった。だが、鍵がかかっていた。モノクマにしか開けられない。薬の量に変化がある…?



キーンコーンカーンコーン


モノクマ『え~ボクも待ちくたびれたんで…始めちゃっていいっすか? それじゃ、オマエラは中央の島のモノクマロックに集合してください。ウププププ。じゃ、また後でね~』

モノクマロック

英「皆そろいましたね」

走り「いよいよッスね!」

桐ケ谷「…………」

生田目「大丈夫だ桐ケ谷、私が守る…」

犬飼「はぁ~めんどくさ💕 さっさと終らせましょ💕」

寒河江「ま、そう言うなって、伊介様。頑張らねぇと、あたしら全員お陀仏なんだからさ」

武智「はぁ、おなか空いてきちゃった。早く終わらせよっ♪」

番場「…………」

首藤「…………ワシが敵をとるからの…」

一ノ瀬「…首藤さん?…」

東「…………」

モノクマ『いえぇーい! オマエラ全員そろってるな!』

犬飼「ねぇ、まだぁ~💕」

武智「はやくはやく~♪」

走り「待ちきれないッスよ!」

モノクマ『う、うるさい…まったく、待つこともできないのか、オマエラは…イヌでもできるってのに…これだから、最近の若者は…』

英「早く始められないのですか? これだから最近のモノクマは…」

首藤「時間はタダじゃないんじゃよ?」

モノクマ『うぐっ……わかったよ! やればいいんだろ、やれば…!』
モノクマロックの一体の口から、エスカレーターが伸びてきた。
モノクマ『はい、ではこれにお乗りください。絶望へとご案内しま~す』

寒河江「あいかわらず、ぶっ飛んだ技術だな」

英「この技術力だけは眼を見張ります。いいモノですね…」

犬飼「アンタ…マジで言ってんの?」

走り「メカフェチお嬢様って、斬新ッス!」

番場「……メカフェチ……違う……メカです……」

モノクマ『ほらほら乗った乗った』

武智「いっちば~ん♪」

桐ケ谷「…ドキドキ」

生田目「不安なら、私に捕まるといい」

走り「うげげっ⁉ なんか青い春が視界に…っ⁉」

一ノ瀬「えっ? 呼んだ?」

犬飼「晴ちゃん、青くないでしょ?💕 オレンジじゃない💕」

番場「…エスカ、レーター…」

英「あら? 珍しいですの? うちにありますから、今度見に来ますか? 89種類ほど用意しますわよ?」

寒河江「用意しすぎだろ…トラウマになるわ」

首藤「…これはナンパなのかの? ジェネレーションギャップを感じるのじゃ」

東「奇遇だな…私も感じてる…」

モノクマ『ナンパじゃないよ⁉』

私たち全員が乗り、モノクマロックの中までいくと、モノクマロックの口は閉じて、エレベーターのように下へと移動する。

エレベーター

首藤「時代は進歩しとるの…いつのまにこんなハイテクを…」

桐ケ谷「首藤さん、さっきから発言が年寄りみたいですね…」

犬飼「もう慣れてきたわ~💕」

武智「伊介さんも話し方に癖あるよねぇ♪」

東「お前もな」

走り「兎角さんのコミュ障にもッス」

一ノ瀬「ちょ! 鳰!」

英「まったく、皆さん自覚がないんですのね…」

寒河江「あたし剣持ほどズバズバいけないからさ…それ、突っ込み待ち?」

生田目「ふふっ、平和なものだな…」

番場「……平和……」

ガタンッと音がする。着いたのだ。


裁判場


講堂のように広く、外装は想像よりも普通だった。
赤と黒のマス目のような柄が壁を覆っているような柄。
そこには、玉座のように大きい椅子があり、その前方に14つの茶色い証言台が一つの円状になっていた。


モノクマ『さて、それではオマエラ、自分のネームプレートのある席に着いてください』

文句や感想、雑談、独り言…私たちはそれそれ思うようにしながら、証言台へと移動する。


いよいよ始まる。

黒組の委員長的存在だった神長香子。そんな彼女を殺したクロを暴く、学級裁判が…!

モノケモノを討伐し、絆があると思った矢先の、最初の殺人。

己以外の黒組全員を処刑台に送ろうとした輩は誰か―

心の奥に鬼を宿しているモノは誰か―


私たちの中に紛れた、クロは誰か―――!

裁判準備



【モノクマファイル1】
…被害者は神長香子。死亡現場はビーチハウス。死亡時刻は6時50分。壁に寄り掛かった状態で死亡。腹部には刃物が突き刺さっており、出血が見られる。また、左腕、右腕、頸部に切り傷。頸部の傷は首を一周していた。表面のみで、内部までは達していない。

【番場の証言】
…朝6時半に起床。旧館にいた。英の朝食の準備のためらしいが…? 同時刻に、走りを目撃した。

【腹部の傷】
…出血が見られる。が、傷口のわりに出血が少ない。刺し傷は2つあるようだ。1回目で傷口を広げて、2回目で深く刺した?

【争ったあと】
…現場のビーチハウスには争ったあとがあった。昨日の夕方までは荒れていなかった。

【シャワー室】
…故障しているため、水は出ない。天井付近の窓は、外に出ることは可能。入ることは難しい。

【黒い髪の毛】
…クローゼットの中に落ちていた黒い髪の毛。黒組では、神長香子だけが黒髪である。

【武智のアリバイ】
…今朝早くから牧場にいた。私たちや一ノ瀬たちとすれ違いにホテルに入り、食堂にずっといた。犬飼に教えてもらい、ビーチハウスにて私たちと遭遇。

【首藤の証言】
……朝6時半ごろからランニングをして、6時50分にホテルに戻った。桐ケ谷、走りと会っている。7時に今度は神長を捜しに第二の島に向かった。

【走りの証言】
…5時半に起床。自身のコテージやホテルの敷地内をプラプラ歩いた。6時半に番場に目撃され、本人は首藤のランニングを目撃している。7時に桐ケ谷、首藤と会っている。

【ゴミ箱のペットボトル】
…冷蔵庫にあるはずのペットボトルが捨てられていた。中身は水である。

【武智のハサミ】
…昨日の剣持の一件のときに、ハサミを一つ落としたようだ。犯人に利用されたもよう。本人は昨晩に気づいた。生田目も知っている。

【各所の包丁】
…朝、旧館の包丁が一本なかった。しかし、死体発見後には戻っていた。しかし、一本がしめっていた。食堂の包丁に異変はない。

【一ノ瀬宛ての手紙】
…内容は
《一ノ瀬晴殿
本日、モノクマアナウンス後、朝食の前にビーチハウスに来られたし。
一人で来てほしい。
誰にも言わないこと。
打ち明けたい秘密がある。
神長香子》
一ノ瀬は7時20分に手紙を読んだ。

【モノクマアナウンスの異変】
…7時40分に首藤涼、8時に一ノ瀬晴が発見している。一ノ瀬は首藤と神長を同時に発見した。しかし、第一発見者は別にいる? また、犯人は死体発見アナウンスの条件に含まれない

【ロケパの在庫】
…包丁等凶器は一切ない。モノクマに処分されたらしい。

【犬飼のアリバイ】
…今朝は寝ていたため、アリバイがない。第二の島には行ったことがない。

【犬飼のケガ】
…左腕の二の腕にうっすらと切り傷があった。いつケガしたかはわからない。

【桐ケ谷の証言】
…傷薬や毒薬はなかった。傷薬はモノクマが処分していた。また、神長が昨晩ドラッグストアに訪れ毒の有無の確認をしていた。余談だが、遺跡、図書館、ダイナーなどから証拠はなかった。

【剣持のコテージ】
…中に傷薬と包帯があった。しかし、鍵がかかっていた。モノクマにしか開けられない。薬の量に変化があるみたいだが…?

結構簡単かもしれない…
考えれば考えるほど、そう思えてくる不思議。

犯人わかっても、秘密にしてね

モノクマ『まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう! 学級裁判の結果は、オマエラの投票によって決定されます。正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき。
だけど……クロではなく、クロ以外の人物を間違って指摘した場合……クロ以外の全員がおきおきされ、皆を欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!』

東「本当にこの中に犯人がいるんだよな?」

モノクマ『当然です』

寒河江「あたしはこういう頭使うの苦手なんだけどな~」

犬飼「面倒だから、多数決でいいんじゃな~い?💕」

東「ふざけるな! 間違えたら、皆処刑されるんだぞ!」

首藤「皆ではなく、犯人のクロを除いた皆じゃが…」

英「無駄話していてもらちが明きませんわ」

生田目「しかしな…なにから話せばいいのか…」

走り「あ~じゃあ、ぶっちゃけちゃっていいッスか?」

桐ケ谷「なにをですか?」

走り「ウチは犯人がだれか、疑っている人がいるッスよ!」

武智「な、なんだってぇぇぇぇっ⁉⁉」

走り「ちょ⁉ そういう反応とられると、すごく嘘っぽくなるじゃないッスか⁉」


走りが疑っている人……?

走りの言うことだから、疑ってかかった方がいいかもしれない…。

なにか気になったことがあれば、私が発言しなければ…でないと、私たちは処刑されてしまう…。


走り「ウチが怪しいと思っている人間はズバリっ…≪武智さん≫ッスよ!」

武智「な、なんだってぇぇぇぇっ⁉」

走り「神長さんの胸に刺さっていたハサミ……間違いないッス! あれが≪凶器≫ッス!」

犬飼「まぁ…ハサミを凶器にできるヤツなんて、黒組だと≪武智だけ≫よねぇ~💕」


コトダマ【武智のハサミ】→≪武智だけ≫

東「それは違うぞっ!」


走り「な、なにが違うんスか⁉ 違うっつーんなら、証拠ッスよ! 証拠見せろッス!」

一ノ瀬「に、鳰⁉」

寒河江「小物臭まき散らしすぎだろ…事件前だったら、死亡フラグだぞ…」

東「武智は昨晩にハサミを一つ落としている…だから、ハサミが使われているからといって、武智が犯人とは限らない」


====================
犬飼「甘い推理ね💕」
====================


学級裁判―開廷―




モノクマ『まずは、学級裁判の簡単な説明から始めましょう! 学級裁判の結果は、オマエラの投票によって決定されます。正しいクロを指摘できれば、クロだけがおしおき。
だけど……クロではなく、クロ以外の人物を間違って指摘した場合……クロ以外の全員がおきおきされ、皆を欺いたクロだけが晴れて卒業となりまーす!』

東「本当にこの中に犯人がいるんだよな?」

モノクマ『当然です』

寒河江「あたしはこういう頭使うの苦手なんだけどな~」

犬飼「面倒だから、多数決でいいんじゃな~い?💕」

東「ふざけるな! 間違えたら、皆処刑されるんだぞ!」

首藤「皆ではなく、犯人のクロを除いた皆じゃが…」

英「無駄話していてもらちが明きませんわ」

生田目「しかしな…なにから話せばいいのか…」

走り「あ~じゃあ、ぶっちゃけちゃっていいッスか?」

桐ケ谷「なにをですか?」

走り「ウチは犯人がだれか、疑っている人がいるッスよ!」

武智「な、なんだってぇぇぇぇっ⁉⁉」

走り「ちょ⁉ そういう反応とられると、すごく嘘っぽくなるじゃないッスか⁉」


走りが疑っている人……?

走りの言うことだから、疑ってかかった方がいいかもしれない…。

なにか気になったことがあれば、私が発言しなければ…でないと、私たちは処刑されてしまう…。


走り「ウチが怪しいと思っている人間はズバリっ…≪武智さん≫ッスよ!」

武智「な、なんだってぇぇぇぇっ⁉」

走り「神長さんの胸に刺さっていたハサミ……間違いないッス! あれが≪凶器≫ッス!」

犬飼「まぁ…ハサミを凶器にできるヤツなんて、黒組だと≪武智だけ≫よねぇ~💕」


コトダマ【武智のハサミ】→≪武智だけ≫

東「それは違うぞっ!」


走り「な、なにが違うんスか⁉ 違うっつーんなら、証拠ッスよ! 証拠見せろッス!」

一ノ瀬「に、鳰⁉」

寒河江「小物臭まき散らしすぎだろ…事件前だったら、死亡フラグだぞ…」

東「武智は昨晩にハサミを一つ落としている…だから、ハサミが使われているからといって、武智が犯人とは限らない」


====================
犬飼「甘い推理ね💕」
====================


犬飼「でもさ~💕 ハサミをあんな風に刺せる人、ほかにいる~?💕 それとも、東さん、アナタならできるのかしらぁ~?💕」

思えば、捜査前から武智のことを疑っていたな…ここは負けられない。
犬飼を納得させられる証拠を提出するんだ。


犬飼「暗殺者ならわかるでしょ~?💕」

犬飼「人一人ヤるのに、どんだけ体力使うか💕」

犬飼「ましてや、相手は同じ暗殺者💕」

犬飼「手を抜ける相手じゃない💕」

犬飼「そんな相手にハサミを使用しているからこそ、武智が犯人の可能性が高いのよ💕」

東「殺人にハサミを使うことで武智に疑いがかかるのはわかる」

東「でも、だからって武智がそのまま犯人になるとは限らないだろ」

東「別の人間がハサミを使って、武智に罪を着せようとしているのかもしれない」

犬飼「あのさ~💕」

犬飼「ハサミでヤッてるから、武智が犯人なんでしょ💕」

犬飼「神長さんの胸の傷…どうみても≪ハサミが凶器≫じゃない💕」


コトダマ【腹部の傷】→≪ハサミが凶器≫

東「その言葉…斬らせてもらう…っ!」


東「犬飼…お前はろくに死体を捜査せずにビーチハウスから出て行ったから知らない」

犬飼「なにが?💕」

東「神長の刺し傷は、2つあったんだ」

犬飼「えっ」

寒河江「だとすると、ハサミが凶器とは言えないかもな…刺さっていたハサミが原因で死んだとは決まらないんじゃさ…」

犬飼「…1回目も…つまり、ハサミを2回刺したんじゃないの?💕」

首藤「いや、1回目の刺し傷はハサミよりも傷口が大きかった。1回目がハサミじゃと、傷口が広いことに説明がつかないんじゃ」

犬飼「そんなの…刺したあとにグリグリ広げたんでしょ?」

英「犬飼さん…相手は神長さんですよ? そんな暇があると思いますか? それに、もし武智さんでしたら、2回目はどうして、あそこまで深く刺したんでしょうね?」

犬飼「あそこまで?」

首藤「抜けないくらい突き刺さってたんじゃ…ハサミに慣れてる暗殺者がそんなミスをするはずがない…初歩的すぎるミスなんじゃ」

犬飼「…じゃあ、なんで―」

だから、言っているだろう…。
証人がいたら、納得するのか?


東「お前しか、いないっ!」→≪生田目千足≫


東「生田目」

生田目「なんだ?」

東「お前、たしか武智がなくしたって気づいたときに、現場にいたんだよな?」

生田目「…ああ。昨夜に、ビーチで遊ぶときに、そんなことを武智が言っていた」

犬飼「…ちっ」

武智「わぁ~い♪ 舌打ちされちゃった♪ む・か・つ・くっ♪」

桐ケ谷「にしては、笑顔なんですね…」

番場「……M……違う……ドSです……」

走り「で、でも、それを踏まえて武智さんがわざとやったとしたら…⁉ 論破できるッスか⁉」

東「無理だ」

走り「あっさり認めたッス⁉」

一ノ瀬「武智さん以外にも可能だというだけで…武智さんが犯人じゃないってことを、兎角さんは言いたいんだよ、鳰」

寒河江「だとすると、あのハサミは神長をヤッたあとに偽装したってわけか…?」

番場「……そうなる……ます……」

生田目「2回目がハサミ…1回目は別の凶器ってのが妥当だろう。それで神長をコロシタあとに、ハサミを刺した」

英「刃物が得意な方は…犬飼伊介さん、生田目千足さん、武智乙哉さん、走り鳰さん、東兎角さんの5人ですか…」

走り「いや、英さんはあのとき、自分の凶器を見せてないッスよ!」

寒河江「…そういえば、そうだな。英は仕掛ける側だったもんな…凶器は知らないぜ」

一ノ瀬「…………」

英「…ふふっ、よろしくてよ。わたくしも入れて、6人にしましょうか…」

武智「なんか疑われてるのに、全然平気って感じ…英さんドМだっけ?」

走り「発想が残念ッス⁉」

英「それくらいは言ってもらわないと、こちらとしても頼りがいがないというものですわ」

犬飼「なにその上から目線~伊介、ムカつく~💕」


私も容疑者か…。たしかに、刃物は得意の部類だが、私は犯人じゃない!
少しずつ矛盾を指摘するぞ!


英「6人のアリバイを確認しましょうか…わたくしは≪まだ夢の中≫でしたわ」

走り「そんな優雅に言われても⁉」

生田目「私もだ。さすがに≪寝ている≫」

犬飼「伊介も~💕 そんな早く≪起きてらんな~い≫💕」

東「…私もだ。≪アリバイはない≫」

武智「あっ、あたしは≪牧場にいた≫よ~♪」

寒河江「牧場にいたヤツを目撃することがあるのか…?」

桐ケ谷「ていうか、なんでそんなところにいるんですか?」

武智「あれ? 逆に怪しい?♪」

番場「……逆効果……です……」

一ノ瀬「やっぱり、無理そうですよ?」

首藤「ふふっ、どうやら≪アリバイは皆なさそう≫じゃの」


コトダマ【番場の証言】→≪アリバイは皆なさそう≫

東「それは違うぞっ!」


東「番場。お前は走りを見たんだよな?」

番場「……はい……です……」

走り「おっ、そ~ッスそ~ッス!」

犬飼「はぁ~なにそれ💕 伊介、つまんな~い💕」

走り「人の大事な証拠をつまんないだなんて…さすがにクズすぎッスよ!」

犬飼「アンタに言われたくないんだけどぉ⁉」

生田目「朝早くに…いつ目撃されたんだ」

走り「たしか…6時半ッスよ!」

寒河江「早くね⁉ 何時に起きたんだよ!」

走り「5時半ッス!」

武智「…容疑者1名入りま~す♪」

走り「なんで⁉ 早起きで容疑者って、理不尽ッスよ!」

英「まあ、死亡時刻よりも1時間20分も早ければ、なんでもできますものね…」

走り「ちょ! なんか納得できること言われたッス! ピーンチ! だれかヘルプミーッスよ!」

一ノ瀬「…兎角さん、たしか、まだいたよね? 証人」


ああ、走りの証言が正しければ、あの二人だ…っ!


東「お前しか、いないっ!」→≪首藤涼≫≪桐ケ谷柩≫


東「首藤…桐ケ谷…お前らも目撃者だよな?」

首藤「ああ」

桐ケ谷「はい。たしか7時手前でした」

寒河江「7時か~なら、ギリ無理か?」

走り「逆転勝利! あやうく冤罪処刑されるところだったッス!」

英「…たしかに、それなら、ほかの方を疑う方が効率的ですわね」

犬飼「なぁにぃ~?💕 ずいぶん落ち着いてるじゃない💕 その中に入ってんのよ、アナタ?💕」

英「ええ。ですが、わたくしは負けませんわ」

武智「自信家なんだねぇ~英さん♪ ちょっとイメージ変わったよ♪ 英さんが腹ん中ぶちまけて死んでたら、あたし濡れちゃいそう♪」

走り「悪趣味にもほどがあるッスよ⁉」

首藤「そんなことよりも、ほかの連中はどうする。5人はアリバイがないぞ」

一ノ瀬「……ねぇ、話が変わるけど、神長さんは抵抗して、死んじゃったんだよね?」

寒河江「ハサミをグリグリできない理由が、そうだからな。その前提でやってるから、違うと困るぜ」

前提じゃない…ちゃんと根拠もある…。


東「これだっ!」→コトダマ【争ったあと】


東「現場の様子から言っても、妥当だろうな。神長は犯人と争って、負けた」

一ノ瀬「…アリバイが無理なら、凶器から考えるのは? 抵抗した神長さんをコロシタ…凶器」

犬飼「刃物でしょ~💕 刺し傷って言ってるんだしぃ💕」

首藤「もっと具体的なモノじゃろう、一ノ瀬?」

一ノ瀬「はい! なにを使って神長さんをコロシタのか…皆さん、考えましょう!」

神長を刺した1回目の刃物か…なんだろうな…。


一ノ瀬「みなさんはなんだと思いますか!」

犬飼「刃物ねぇ~💕 あっ、≪別のハサミ≫とか💕」

寒河江「≪アーミーナイフ≫はどうだ?」

生田目「≪レイピア≫しか浮かばないな…」

桐ケ谷「刃物は詳しくないですけど…≪ノコギリ≫とか?」

走り「それ刺すじゃなくて、切っちゃうッスよ!」

武智「≪ニ・ク・ボ・ウ≫♪」

走り「それ違う意味でイクッスよ⁉」

英「≪ドリル≫ですわ」

走り「その発想はうらやましいッス!」

一ノ瀬「……≪銃剣≫…かな……?」

走り「刺さずに撃てっ!」

首藤「乙女は黙って≪竹やり≫じゃな」

走り「ホントに何歳ッスか⁉」

番場「≪ロケットパンチマーケットに……なんでも……ある≫……ます……」

走り「突っ込み疲れるッス! 剣持さ~んっ! カームバーックっ!」


コトダマ【ロケパの在庫】→≪ロケットパンチマーケットに……なんでも……ある≫

東「それは違うぞっ!」


番場「…え?…」

東「ロケットパンチマーケットには凶器の類はない。モノケモノ討伐後にモノクマが処分したはずだ!」

首藤「そういえば、そうじゃったの」

一ノ瀬「わ、忘れてた…」

寒河江「だとすると、凶器がなくなるんじゃねぇのか? ほかにどんな凶器があるんだ?」

犬飼「やぁねぇ💕 ハサミがあるじゃない💕 ねぇ、武智?💕」

武智「そうだねっ、伊介さん♪ どんな無能でもまず思いつくことだよねっ♪」

桐ケ谷「…なんだか、水面下で我慢比べをしている気がします…」

生田目「そうなのか?」

寒河江「生田目、鈍すぎだろ…」

凶器…一般的に凶器とは言われない刃物…どんな家庭にもある道具…もう少しで閃きそうだ…。


ホ   ウ   チ   ョ   ウ

東「そうか! わかったぞ!」


東「そうだ! 包丁だ! あれなら凶器だなんて言われない! ロケットパンチマーケットになくても、探せば見つかる凶器だ!」

英「包丁…では、どこにあるというんです?」

凶器として使われた包丁の場所…今度はそれだな…。


英「凶器として使われた包丁はどこですか?」

一ノ瀬「う~んと、あれ、どこだろう?」

生田目「≪ロケットパンチマーケットにはない≫んだよな?」

犬飼「≪ダイナー≫は?💕 あそこにもあるんじゃないの?💕」

桐ケ谷「包丁はありましたが、≪使用された形跡はなかった≫です…」

生田目「≪個人のコテージ≫は?」

首藤「その話題で、5人に絞ったんじゃろ?」

武智「≪心の中の刃物≫…さ…」

走り「クサいッス!」

東「走り…腐った海のお前には及ばないさ…」

走り「意味が違うッスよ⁉」

寒河江「なんつーか、≪なくねーか≫?」


コトダマ【各所の包丁】→≪なくねーか≫

東「それは違うぞっ!」


東「番場…たしか、旧館の包丁は使用されたあとがあったんだよな?」

番場「……はう……」

寒河江「…はい、を噛んだのか?」

走り「じゃあ、旧館に行った人間が犯人ッスよ!」

番場「⁉」

犬飼「それってさぁ…真昼だけじゃね?💕」

番場「……⁉」

犬飼「だって、誰も旧館に今日行ってないわよねぇ?💕」

走り「うはっ! 急浮上した容疑者ッスね! これだから傍観者はやめられないッス!」

生田目「…番場の証言があるんじゃないか? 走りを見たんだろう? あれはたしかだったんだろ?」

走り「はい! ウチはたしかに6時半にプールでウロウロしてたッス!」

武智「そのあとに、こう続いたよ? 『死亡時刻から1時間20分もある』って。じゃあさ、20分もあれば、十分じゃない?」

英「神長さんをコロすのに? さすがに―」

武智「なに? できないの? 先の発言って、誰のだったっけぇ?♪」

英「…………」

首藤「挑発はやめんか…しかし、武智の言うことももっとも。少し、そこを話し合ってみよう」

番場が犯人? それでいいのか?

首藤「番場が犯人なら、いつ包丁を持ち去り、いつ香子ちゃんをコロシタかじゃな…」

走り「ウチに見つからないように、用心深く向かったんスよ!」

武智「そうしてブスッと刺してコロシタってわけね♪」

犬飼「顔に似合わず、えげつないわねぇ~💕 好感度が上がったわ💕」

番場「あ……あの……」

英「番場さんは≪ずっと旧館にいました≫わ」

武智「感情論じゃなくってさぁ…証拠だよ、証拠♪」

英「…血に濡れた包丁を戻したら、≪血がたれて跡が残ります≫わ!」

走り「甘いッスよ! そんなの…≪シャワー室で洗い流せばいいんス≫よ!」


コトダマ【シャワー室の故障】→≪シャワー室で洗い流せばいいんス≫

東「それは違うぞっ!」


走り「な、なにが違うんスか⁉」

東「シャワー室は故障している…使えなかったんだよ…だから、血は洗い流せなかったんだ」

走り「ぬぐぐぐ…」

寒河江「お、おい…それだと、凶器の包丁はどうしたっていうんだよ…」

凶器をどうした? そんなの決まってる。


東「これだっ!」→コトダマ【各所の包丁】


東「それは旧館に戻ったんだよ」

生田目「? その旧館の戻し方がわからないんじゃないか?」

桐ケ谷「どうどうめぐりですね…」

首藤「ふふっ、まだ話を詰めた方が良さそうじゃの…」


走り「これは…≪不可能犯罪≫ッスか⁉」

桐ケ谷「急にどうしたんですか…」

武智「血に濡れた包丁を、どうやって地面にたらさずに戻すか…か」

犬飼「≪舐めまわした≫んじゃない?💕」

走り「キショッ⁉」

一ノ瀬「≪なにかで拭いた≫んですよ!」

桐ケ谷「しかし、≪そんなものはなかった≫ですよ?」

東「≪焼却処分≫したんじゃないか?」

首藤「さすがに、ランニングしとるワシや、ウロウロしとった走り、それに牧場にいた武智が気づくじゃろ…」

英「血を拭くことも…≪水で流すこともできない≫以上…旧館に戻せない。番場さんは犯人ではありませんわ!」


コトダマ【ゴミ箱のペットボトル】→≪水で流すこともできない≫

東「それは違うぞっ!」


東「ビーチハウスのゴミ箱にペットボトルがあった。犯人はあれで血を流したんだ」

英「…こ、この…っ!」

走り「決まりッスね! 犯人は番場さんッスよ!」

番場「あ…あの…っ」プルプル

犬飼「なぁにぃ?💕 反論でもあるの~?💕」

番場「…い、いや、その…」

東「断言するのはまだ早いぞ」

走り「ま、また兎角さんッスか⁉」

東「番場ができるからといって、それだけで犯人とは言えないだろう? 最初の武智と同じだ」

走り「そ、それはそうッスけど…!」


====================
武智「諦めたら試合終了だよ!」
====================


武智「兎角サンさぁ…それの一点張りだけどさぁ…明確な根拠を見せなよっ! 屁理屈じゃ逃げきれないこともあるのさっ♪」

東「な、なんだと…っ」

武智「鳰ちゃんも甘いよ…。あたしはまだ認めてない! まだ詰めは終わってないよ!♪」

くっ…今度は武智か…っ。だが、まだだ。
番場が犯人ならおかしいところがある。
そこを突き付けてやるんだ…っ!


武智「番場ちゃんしか包丁を取り出せない」

武智「旧館の包丁がなかったのなら、番場ちゃんしか持ち去れないよ」

東「その旧館の包丁を持って行ったっていう証言は番場のなんだぞ!」

東「お前はその証言すら疑うのか⁉」

武智「べっつに~?♪」

武智「自分が疑われないように、そうやって証言したかもよ?♪」

武智「実際、それは番場ちゃんにしかわからないことだしね♪」

武智「それに話が逸れたけどさ…」

武智「番場ちゃんができないって理由はないわけ?」

武智「ただほかにも容疑者がいるってだけでさぁ、番場ちゃんは怪しくないっていうの?」

武智「旧館から包丁を持ち出すのは可能」

武智「血を洗い流すこともできる」

武智「旧館に入っても、怪しまれない理由もある」

武智「こういうのをチェックメイトって言うんだよ!♪」

東「まだ必要条件だろ!」

東「そんなの、犯人だという十分条件には足りない!」

東「なぜなら、番場が犯人だと決定的な違和感があるからだ!」

武智「へぇ?♪ じゃあ、どこが≪おかしい≫か言ってみなよ!」

武智「≪旧館から包丁を持ち出す≫こと⁉」

武智「≪神長さんをコロス≫こと⁉」

武智「≪包丁の血を洗う≫こと⁉」

武智「首藤さんや鳰ちゃんに見つからないように、≪旧館に戻る≫こと⁉」

武智「そういえば、≪鳰ちゃんを見た≫っていうアリバイ工作もしたっけか⁉」

武智「ほら! どこがおかしいのさ⁉」

武智「番場ちゃんは周到に、≪自分のアリバイ≫も!」

武智「≪凶器の証拠≫も!」

武智「≪全部隠滅している≫んだよぉっ!」


コトダマ【各所の包丁】→≪凶器の証拠≫

東「その言葉…斬らせてもらうっ!」


東「全部? 違うな…一番大事な部分を隠滅していない」

武智「はぁ? どこだよ…」

東「洗い流した包丁だ」

武智「…なに? ボケたの? それのどこが―」

東「番場の証言にな…包丁がしめっていたとある…」

武智「しめって?」

英「…そうでしたわ…そうですわね…東さん、ありがとうございます」

東「いや、気にするな…私たち全員の命がかかっているんだ…」

首藤「ふふふ。これはなかなか…」

武智「ちょっとちょっと! なに言ってんのさ! 意味わかんないんだけど…⁉」

東「番場が犯人なら、なぜしめっているんだ? 普通は水気もとるだろう?」

武智「へ? ……あ」

東「しめっていることで、血を洗い流したという証拠が残る!」

首藤「こればっかりは、あえて証拠として残す理由はないの…残さなければ、凶器は見つからなかったかもしれないんじゃからな…」

武智「……」
口をパクパクしている。

走り「…これは恥ずかしいッスね…」

犬飼「結構イイ線いってたと思ったんだけどなぁ…」

首藤「…しかし、これで、番場は犯人ではないようじゃな」

生田目「これだけ話して、ようやくわかったのがそれか…」

寒河江「…なんかすげぇ頭痛くなってきた…」

桐ケ谷「頭痛薬はないですよ?」

走り「クールッスね⁉」

一ノ瀬「兎角…カッコイイ…!」

武智ほど地獄耳ではないが、今のは聞き逃さなかったぞ……。

犬飼「じゃあ、誰が犯人なのかしら?💕」

寒河江「アリバイ…凶器…2つの視点から見ても、まだ有力な容疑者は5人もいるぞ?」

英「東さん、千足さん、犬飼さん、武智さん、そしてわたくしでしたね」

首藤「その5人が犯人でない証拠はあるのかの?」

武智「―ちょっと待ってよ」
武智がうつむいていた。

生田目「? どうした?」

武智「…番場ちゃんは認める…でもさ―」
顔を上げた武智は―

武智「首藤さん、晴っち、柩ちゃん、寒河江さんが犯人じゃないって、確証はないよねぇ⁉」

目が見開かれていた。

…言い過ぎたか?

どう見ても、ブチ切れていた………。


――裁判中断――

――裁判再開――


走り「武智さん、逆切れッスか⁉」

一ノ瀬「そんな…首藤さんは神長さんと一番仲良かったんだよ⁉ それなのに容疑者だなんて―」

武智「晴っち、世の中にはね、一番好きだから、コロシタくなる人種もいるんだよ…!」
目をギラギラさせながら言う。

首藤「…武智が言うと説得力あるの…」

寒河江「少し落ち着け、武智…」

武智「首藤さんさぁ…神長さんを最初に見つけたんだよねぇ…?」

首藤「なに?」

武智「違う?」

首藤「…ああ、ワシではないぞ…」

武智「…晴っちが見たときに、死体発見アナウンスが鳴ったんだよねぇ…?」

一ノ瀬「そ、そうだよ…?」

武智「…ねぇ、死体発見アナウンスの条件の人数3人ってさぁ、同じ人でもカウントされるのかなぁ…?」

英「…どういうことですの?」

武智「だから…晴っちが最初の発見者で、間に首藤さんを入れて、もう一度発見したってこと…」

犬飼「…つまり、晴ちゃんが現場を一度離れたってこと?」

生田目「…それは、どうなんだろうな…」

寒河江「おい、モノクマ!」

モノクマ『はい、なんでしょうかねぇ』

寒河江「今の聞いてたろ? どうなんだ?」

モノクマ『…そうですねぇ。ボクとしてはこれからの裁判に対して縛りを入れる発言はしたくないんですよねぇ』

桐ケ谷「しかし、重要な部分ですし…」

東「これは私たちだけではわからないぞ?」

モノクマ『…………』
モノクマは停止したかのように、考えて、
モノクマ『いや、やっぱり今回はわかりそうなので、教えるのはなしでっ!』

走り「は⁉ マジッスか⁉」

武智「…だってさぁ、晴っち。証明できそう? 自分が第一発見者じゃないってこと…第一発見者だったら、なにをしたのか教えてよね…!」

一ノ瀬「……っ」

これは、私がフォローしないと危ういか?
しかし、ホントに一ノ瀬が第一発見者でないとわからないと、フォローのしようがない。


武智「…ねぇ、晴っち。晴っちはホントに≪今朝寝てた≫の?」

一ノ瀬「は、はい! そうですよ!」

武智「それを証明できる?」

一ノ瀬「そ、そんなこと…っ」

首藤「武智…それは悪魔の証明じゃろ。証明できんから≪アリバイがない≫というのに、それを証明しろとは…」

英「…誰か武智さんの眼を覚まさせてくれると助かるのですが…」

武智「晴っちが証明できない以上、≪首藤さんよりも早くビーチハウスに向かってる≫可能性だって、あるんだよっ!」


コトダマ【一ノ瀬宛ての手紙】→≪首藤さんよりも早くビーチハウスに向かってる≫

東「それは違うぞっ!」

東「それは少々無理がある」

武智「なんでさ…」

東「一ノ瀬がそもそもビーチハウスに向かったのは、この手紙を見たからだ」

手紙を皆に見せる。

生田目「…神長が一ノ瀬を呼び出している?」

桐ケ谷「…なるほど。一ノ瀬さんが殺害されているならまだしも、神長さんが殺害されているのに、これはおかしいですね…」

武智「……」

東「わかるだろ? 一ノ瀬が犯人なら不自然だ。神長の死亡時刻は6時50分。モノクマアナウンス後じゃない。少なくとも、6時半にはビーチハウスにいる必要がある。その時間は首藤や走り、番場がホテルにいた。3人に目撃されないのは、さすがにおかしいだろ? しかも、呼び出されてるんだ…クロになる気がなかったのなら、他人の眼は気にしない」

一ノ瀬「晴はそこまで早起きじゃありません! その手紙を見たのも、7時20分ごろが初めてです!」

武智「……ふぅ、わかったよ。ちょっとカッカしてたみたいだ。ちょっと頭冷やすよ…」
武智の眼が普段と同じように柔らかくなる。

武智「悔しかったから、ちょっとマジになっちゃった…♪」

そこまでだったのか…?

生田目「だが、いい証拠が出たな…」

桐ケ谷「この手紙、神長さんはどんなつもりだったんでしょうか…」

犬飼「神長さんがビーチハウスに来た理由もわかったしぃ、案外武智の逆切れも功を奏したんじゃな~い?💕」

武智「……ぶぅ」

番場「……あり、がと……」

首藤「ほほっ。ふてくされるな、武智よ」

英「神長さんの理由…さすがに想像するしかなさそうですわね…」

神長の一ノ瀬呼び出しの理由か…なにがあるんだろうか…。


英「神長さんの理由…一ノ瀬さんに呼び出し…」

寒河江「首藤じゃないんだな…」

生田目「一ノ瀬に聞いてるあたり、≪まともな理由≫だとは思うが…」

武智「…………」

番場「……≪悩み≫……とか……」

東「それなら≪首藤にすればいい≫だろう?」

首藤「ワシにできない理由か…ないと思いたいがのう…」

犬飼「…わっかんな~い💕 もう、なんでもよくな~い?」

一ノ瀬「晴もちょっと…思い当たることは…ない、かな…」

桐ケ谷「神長さんの悩み…≪ホントにあった≫んですかね…? ≪ない≫気がします」

走り「……は⁉ ≪突っ込みせずにすんでいる≫…だと…っ⁉ ……逆に落ち着かない⁉」


東「桐ケ谷に賛成だっ!」→≪ない≫


東「神長は別に一ノ瀬である必要はなかったんじゃないのか? …一ノ瀬を傷つけるつもりではないが、一ノ瀬じゃなくても、黒組ならだれでも良かったとか―」

犬飼「うわぁ~ビッチね💕 ココロがビッチよ💕」

走り「…伊介さん、その服着ていて言うんスね…」

寒河江「しかし、《一ノ瀬晴殿》って、書かれてるぜ? これはどう見ても一ノ瀬に用事があるんじゃないのか?」

東「……それも、そうだが…」

英「果たして神長さんの真意は、なんでしょうか……」


議論が初めて止まった。

皆一様に悩んでいる。


一ノ瀬「…じゃ、じゃあさ…」

言いだしたのは、一ノ瀬だ。

一ノ瀬「神長さんが晴に言うとか関係なく、神長さんがどういう理由なら、マンツーマンで呼び出すのか、思いつく限り言ってみようよ!」

神長がマンツーマンで呼び出す…か…。
難しいな。首藤みたいに濃く付き合わないと、想像もできない。

しかし、やるしかない。
こうなれば思いつく限りを挙げてみよう。


英「≪新しい義手に挑戦する≫かどうか…は、わたくしだけですね」

首藤「≪次にお風呂に入れる温泉の素の種類はなにか≫…とかかの…」

武智「……≪次の標的≫……≪好みのタイプ≫……」ボソッ

犬飼「≪マニキュアの色≫かしら💕 まっ、あたしの気分で決まるんだけどぉ💕」

寒河江「…あたしは≪子供が喜ぶプレゼント≫…とか…聞きたいな……」

生田目「…私は……≪桐ケ谷のこと≫を、桐ケ谷に聞きたい…」

走り「のろけるなッス! ウチはぁ、≪メロンパンの新作はどんなのがいいか≫ッスかねぇ! アイデア浮かんだら、メーカーに送るッスよ! そして、自分のアイデアのメロンパンがぁ……ぐふふッス」

一ノ瀬「晴は…≪遊びに行く場所≫かなっ」

東「……≪カレー談義≫……」

番場「……好きな……≪せい、いぶつ≫……」

桐ケ谷「……≪暗殺に使えそうな毒≫? って、ぼくは聞く必要がないですね…ぼくも千足さんに≪千足さんのこと≫を聞きたいです」

走り「だから、のろけるなッス! …というか、皆己の欲望の垂れ流しじゃないッスか⁉」

寒河江「それ、お前が言うのか⁉」

一ノ瀬「…ううぅ…≪作戦失敗≫かなぁ……」


コトダマ【桐ケ谷の証言】→≪作戦失敗≫

東「そんなことないぞっ!」


東「桐ケ谷…そういえば、神長は毒薬のことを気にしてたな?」

桐ケ谷「…はい。昨晩にドラッグストアで会ったときに、聞かれました」

犬飼「へぇ~💕 毒なんてのもあるんだ…」

首藤「…そういえば、おぬしは第2の島には捜査のときに初めて行ったんじゃったのぅ」

英「実は、わたくしと番場さんもですわ…」

武智「いないけど、しえなちゃんも行ったことないよ?♪」

一ノ瀬「…じゃあ、4人…3人は無理かな? 初めて来た島でいきなり殺害はハードル高いよ…」

東「…私たちは暗殺者だぞ? そんなの、自分が劣等生だと言ってるようなものだ…」

走り「ヒュー…言うッスねぇ」

寒河江「話が逸れてるから戻すけど、そんじゃあ神長は毒薬のことを一ノ瀬に相談しようとしたのか?」

英「…なぜ、一ノ瀬さんなんでしょう…」

首藤「…唯一暗殺者じゃないんじゃし…なぜ…」

武智「ホントに毒薬のこと聞きたかったのかな? しえなちゃんとかの方が詳しい気もするけど…」

桐ケ谷「…………」

生田目「だが、打ち明けたい秘密とある…公言できない毒薬のことでいい気もするが…」

……っ? なんだか閃きそうな気がする…。
なぜ一ノ瀬なのか? なぜ?
あの真面目な神長が、素人の一ノ瀬に相談?

ホントに?

あれはどう見ても、殺害するための呼び出し…。
じゃあ、なぜ神長が死んでいる?
返り討ち?
しかし、一ノ瀬に返り討ち?

東「……神長の一ノ瀬宛ての手紙…誰か先に読んだのか……?」

一ノ瀬「⁉」

犬飼「? どういうことぉ?💕」

英「…神長さんが一ノ瀬さんのポストに入れる瞬間を、犯人が目撃したんでしょう…」

走り「…なぁるほどぉ…」

武智「だとすると、犯人はその時に、神長さんを殺害しようと思い至ったわけかな? だとすると、衝動殺人だね♪」

ん? 衝動殺人? ……衝動なのか?


英「だとすると、犯人は随分短絡的ですのね」

首藤「…おぬしの殺人は≪衝動≫かの?」

武智「≪あたしは情熱≫だよ♪」

走り「≪ガチ意味不明≫ッス!」

桐ケ谷「でも、衝動殺人なら、かなり知恵が回る方だと思います…犯人につながる証拠がほとんどない」

寒河江「せいぜい、≪凶器の包丁≫。≪偽装のハサミ≫。≪アリバイ≫…は、違うか?」

生田目「犯人は神長を≪そんな理由≫でコロシタというのか…?」


コトダマ【武智のハサミ】→≪そんな理由≫

東「それは違うぞっ!」


東「そうだっ! 衝動じゃない! 犯人は武智のハサミを拾っている! そのときから、今回の犯行は考えられていたんだ!」

寒河江「って、ことはだ。犯行計画は早くて昨日の夕方には考えられていたのか…」

首藤「なるほど…だとすると、香子ちゃんの手紙は―」


英「偽物ですわ」


走り「え⁉」

英「フェイクだったのです…」

武智「…ん~と、どっちが? 差出人が? 内容が? それとも両方?♪」

英「……そこまではまだ断言できません。しかし、どこか手を加えられていると考えてよろしいかと思います」

首藤「…手紙を是としたとき、矛盾が起きる。ならば、手紙自体に矛盾があるとすれば…」

一ノ瀬「矛盾じゃない! 偽物の手紙! きっとそれだよ!」

生田目「なら、問題はどこに矛盾があるか…」

寒河江「手紙の内容の矛盾⁉ …うっ、頭が痛くなってきた…」

桐ケ谷「頑張ってください」

生田目「大丈夫か? 私も少しだけ痛くなってきた…」

桐ケ谷「大丈夫ですか、千足さん? 休んでてもいいんですよ? 無理すると身体を壊してしまいますから…ぼくたちに任せてください! そうだ! 学級裁判が終わったら、ぼくが看病しますからね!」

生田目「ああ、ありがとう…桐ケ谷…」

寒河江「…………」

走り「わかるッスよぉ、その気持ち…慣れたら突っ込みができるようになるッスから、今しばらくの辛抱ッス!」

寒河江「そんな辛抱いやだ!」

武智「矛盾かぁ…見つかるかねぇ…」

見つけなくてはならない…でないと、私たちが……っ!
絶望に…負けないっ!


英「では、順番に内容を確認しましょう」

一ノ瀬「ん~と? ≪一ノ瀬晴殿≫」

武智「本日、≪モノクマアナウンス後≫、朝食の前にビーチハウスに来られたしっ♪」

走り「≪一人で来る≫んスよ~」

犬飼「≪誰にも言っちゃダメ≫なんだからね💕」

番場「……打ち明けたい……≪秘密≫が……ある……ます……」

首藤「≪神長香子≫」

寒河江「…話し方に癖のあるヤツが率先して言うんだな…」

桐ケ谷「こういうときに限って、積極的にチームワークを発揮しますよね、みなさんって…」

東「桐ケ谷…なにかトゲがあるな…」

生田目「だが…どうだ? ≪矛盾がない≫ぞ?」



東「生田目に賛成だ!」→≪矛盾がない≫


東「矛盾がない…私たちが読んでも矛盾がないのか?」

寒河江「…じゃあ、いったいだれが…」

首藤「っ⁉ ……そうか…そういうことか…」

一ノ瀬「え? なにかわかったの、首藤さん?」

首藤「ああ、我々の中で、たった一人だけ、矛盾を見つけられるモノがおる…」

なに? それって、


東「犯人か?」

首藤「……」

英「犯人は理解できたからこそ、ビーチハウスで指定された時間よりも早く犯行をすることができたんでしょう?」

寒河江「わりぃが、それはさすがにあたしでもわかったぜ」

犬飼「やぁだぁ💕 バカは黙っててよね💕」

走り「もぅ…兎角さん、ポンコツなんだから…はぁ、やれやれ」

めった刺しだな……とくに最後のは何気に傷つく…そして、ムカつく。



首藤「ああ、我々の中で、たった一人だけ、矛盾を見つけられるモノがおる…」

なに? それって、あいつのことか…?



東「お前しか…いないっ!」→≪神長香子≫


東「神長香子…本人か?」

走り「え⁉」

首藤「うむ。矛盾を感じる人間は、別に生者に限らずとも、いる」

英「ここにあるもので、内容自体にはおかしなところはありません」

犬飼「あ~だから個人でしかわからないモノってわけ💕 暗号でもあったのかしら?💕」

首藤「いや、違う」

走り「? さっぱりピーマンッスよ」

首藤「簡単なことじゃ…出した本人にしかわからないこと…」

本人しかわからない? それっていったい…。
いや、考えればわかるかもしれない。


二   セ   モ   ノ

東「そうか! わかったぞ!」


東「矛盾がない…私たちが読んでも矛盾がない。それがヒントだったんだ!」

寒河江「? どういうことかわからんね…」

首藤「っ⁉ ……そうか…そういうことか…」

一ノ瀬「え? なにかわかったの、首藤さん?」

首藤「ああ、我々の中で、たった一人だけ、矛盾を見つけられるモノがおる…」

なに? それって、


東「犯人か?」

首藤「……」

英「犯人は理解できたからこそ、ビーチハウスで指定された時間よりも早く犯行をすることができたんでしょう?」

寒河江「わりぃが、それはさすがにあたしでもわかったぜ」

犬飼「やぁだぁ💕 バカは黙っててよね💕」

走り「もぅ…兎角さん、ポンコツなんだから…はぁ、やれやれ」

めった刺しだな……とくに最後のは何気に傷つく…そして、ムカつく。



首藤「ああ、我々の中で、たった一人だけ、矛盾を見つけられるモノがおる…」

なに? それって、あいつのことか…?



東「お前しか…いないっ!」→≪神長香子≫


東「神長香子…本人か?」

走り「え⁉」

首藤「うむ。矛盾を感じる人間は、別に生者に限らずとも、いる」

英「ここにあるもので、内容自体にはおかしなところはありません」

犬飼「あ~だから個人でしかわからないモノってわけ💕 暗号でもあったのかしら?💕」

首藤「いや、違う」

走り「? さっぱりピーマンッスよ」

首藤「簡単なことじゃ…出した本人にしかわからないこと…」

本人しかわからない? それっていったい…。
いや、考えればわかるかもしれない。


二   セ   モ   ノ

東「そうか! わかったぞ!」


東「そうか! 矛盾は内容じゃない! 人間の方だ!」

生田目「人間? どういうことだ?」

武智「実は神長さんは神長さんじゃなくて、神短さんだったのか…♪」

一ノ瀬「え⁉ ち、違う、よね?」

走り「どう見ても長かったッスよ! ツインテールにするぐらいあったッスよ!」

寒河江「違和感は名前じゃねぇよ…それと、話が逸れちまってるから、東、続き頼むよ」

東「手紙を出したのは、神長じゃない。これが唯一の矛盾だ!」

生田目「な、なに⁉」

桐ケ谷「しかし、神長さんが出したのではないとしたら、いったい誰が―」

英「決まっていますわ。ですよね? 東さん」

東「ああ」

神長のふりをして一ノ瀬を呼び出そうとしたのは、


東「犯人だよ」


走り「え⁉ じゃあ、どういうことッスか⁉」

桐ケ谷「犯人が神長さんのふりをして、一ノ瀬さんを呼び出そうとしたんですよ」

番場「……神長さん……違う……犯人です……」

生田目「なりすまし…か」

武智「うわぁ…なかなかエグイ方法をとるね♪ でも、計画通りいっていたら、どうしていたんだろう? 生きてた神長さんがいたら、否定されておしまいだよ?♪」

英「手紙を処分していたんでしょう」

首藤「じゃろうな。そもそも殺害する予定の一ノ瀬にしか見せないつもりじゃったんじゃろうし、殺害するつもりじゃった一ノ瀬に見せたとしても、死人に口なしじゃ」

犬飼「さかしいマネをする犯人ね💕」

寒河江「な、なるほど。それが、神長本人にその手紙を先に読まれたとういうことか…ん? じゃあ、なんで神長は手紙を処分しなかったんだ?」

……考えたこともない可能性がある。これは、神長だったから、としか言えないが―

東「ドジ……だ」

寒河江「は?」

東「神長は処分するのを忘れていたんだ。自分じゃない人間が自分を騙って一ノ瀬をハメようとしている。気が動転したんだろうな」

寒河江「な、なんだその理由。通るのかよ…」

武智「でもさぁ、モノケモノ討伐のとき、神長さん手榴弾と発煙弾間違えてたよね?♪」

犬飼「…テンションの高い剣持さんにのまれて、自分も舞い上がっちゃったのよね💕」

生田目「それを踏まえると…ありうるな…」

首藤「…凡ミスが受け入れられるのは、香子ちゃんの特権じゃな…」

私だったら、そんな特権願い下げだ。

一ノ瀬「神長さんはビーチハウスに向かったんだよね? それって、犯人の前かな? あとかな?」

走り「そんなのあとに決まってるッス!」

いや、おそらく―


コトダマ【黒い髪の毛】

東「そうか、わかったぞ!」


東「これを見てくれ」

武智「黒い…髪の毛…?」

東「クローゼットの中に落ちていた。黒髪は黒組だと、神長だけだ」

生田目「ん? 神長はクローゼットの中に入ったことがあるのか?」

首藤「いや、ワシの知る限り、一度もない」

一ノ瀬「じゃあ、なんで…」

走り「かくれんぼッスよ! おちゃめな方ッス!」

東「隠れていたんだ。そしてそれができるのは、犯人が来る前」

走り「ううっ、せめて突っ込みがほしいッス」

寒河江「剣持が復活するのを待つんだ…」

首藤「前、か。犯人はなにをしていたんじゃろうなぁ」

犬飼「隠れるなんて…なんかせこ~い💕」

寒河江「まぁ、迎え撃とうとしたわけじゃなさそうだな…」

桐ケ谷「わざわざ隠れた理由は…さすがに予想もできないですね」

生田目「本人のみぞ知る、だな」

英「さて、でしたら、誰がいつ出したのかを話し合いましょうか」

番場「……昨晩……?……」

桐ケ谷「いえ、神長さんが目撃して、すぐに犯人を追ったと考えれば、今朝でしょう」

寒河江「だとすると、早起き組の誰か、か?」

早起きしているのは、走り鳰、番場真昼、首藤涼、武智乙哉。
犯行時刻後に桐ケ谷柩。

首藤「う~む、この中じゃと、桐ケ谷か? ほかはもう論じられたしのぅ。ワシは走りに番場、武智に見られとるから、クロ率は低いじゃろ?」

生田目「だが、桐ケ谷は6時50分に目撃されている。犯行は無理じゃないのか?」

英「目撃されただけですわ」

桐ケ谷「……」

走り「でもでもぉ、犯人は現場にいたッスよねぇ? だって、ビーチハウスの荒れ具合とか、神長さんの殺害方法とか…仕掛けで殺害したってのは、ちょっと無理があるんじゃないッスか?」

桐ケ谷に犯行は無理なのか…話し合うべきだな。


武智「柩ちゃんかぁ…どうなのかなぁ?♪」

桐ケ谷「…ぼくじゃないです…」

生田目「本人もこう言っているんだ、不可能だろう?」

犬飼「あのさぁ💕 もうわかってるでしょう?💕 証拠よ証拠💕」

首藤「証拠か……」

一ノ瀬「神長さんの死因を考えれば、≪柩ちゃんは犯人じゃない≫と思います!」

寒河江「え~と? たしか、≪刺殺≫だったっけか?」


コトダマ【モノクマファイル1】→≪刺殺≫

東「それは違うぞっ!」


東「待て! モノクマファイルには死因が書かれていないぞ!」

番場「……そう……です……」

走り「でもこれって、一目でわかるからとかじゃないんスか?」

寒河江「モノクマ、どうなんだ?」

モノクマ『…ウププププ。ノーコメントで!』

生田目「…書く必要がないからだろう? 神長はどう見ても刺殺だった。現場にいなかった桐ケ谷じゃ無理だ」

英「…しかし、死亡時刻はありますわ。なのに死因がないなんて…」

首藤「死亡時刻や死因は素人じゃわからんことじゃろうに…あえて書いていないということは…」

東「重要なんじゃないのか?」

犬飼「死因💕 もし、死因が刺殺じゃなかったら、柩ちゃんも可能性はあるわね💕」

生田目「そ、そんな…」

桐ケ谷「…………」

神長の死因…今度はそれを解明するぞ…!


一ノ瀬「で、でも、いったいなにがあるんでしょうか…」

英「みなさんで挙げていきましょう」

武智「やっぱり≪刺殺≫じゃない?♪ 刺すの、楽しいし、気持ちいいよ?♪」

首藤「それはおぬしだけじゃ…≪出血多量死≫はどうじゃ? それなら遠くにいても可能じゃ」

寒河江「でもよ、2回刺してんだろ? そんな犯人が仕留めずに神長を置いていくか?」

一ノ瀬「≪罠のようなモノ≫も、現場にはなかったですよ? たしか、柩ちゃんは死亡時刻後は≪ずっと食堂にいた≫んですよね?」

桐ケ谷「はい。走りさんたちに連れられるまで、ずっといました」

走り「≪柩さんが透明人間≫になれたり、≪瞬間移動≫ができるのなら、可能ッス!」

英「あらあら、愉快なことを仰いますのね…」

走り「なんか怖いッス⁉」

犬飼「柩ちゃん、もう白状したら?💕」

桐ケ谷「…ち、違います…」

生田目「みんな、もうよせ! どう見ても≪神長は刺殺≫だった。罠もない。≪目に見えない力≫でも、使ったというのか⁉」


東「生田目に賛成だ!」→≪目に見えない力≫


東「目に見えない…それって、たとえば内部から殺害とかか?」

生田目「な、なにを言っている?」

英「―毒…ですね?」

東「ああ、毒を用いたのなら、現場にいなくても神長は殺害できる。毒で弱らせる最中に、首藤や一ノ瀬が来る前に、包丁やハサミを使って、現場を偽装したんだ!」


====================
生田目「私は、負けられない…!」
====================


生田目「それなら、なぜ桐ケ谷なんだ⁉ ほかの連中もできるだろう⁉」

東「そ、そうだが、桐ケ谷だという証拠もあるんだ!」

生田目「そんなもの私が、論破してやる…!」

くっ…ここは負けられないっ…!



生田目「現場の荒れ具合を忘れたのか?」

生田目「あれはビーチハウスにいなければできない!」

生田目「犯人はまさに、ビーチハウスにいたんだ!」

東「現場で争ったのは当然だ!」

東「最終的な手段が毒であっただけで、その前に現場で会っただろうからな!」

生田目「じゃあ、犯人はわざわざ毒でコロシテから、あとで現場を工作したというのか?」

生田目「桐ケ谷にそんな時間があるのか⁉」

東「死亡時刻から首藤の発見まで時間がある。できないわけじゃない」

東「それに毒で死ぬ前にも弱っていれば、偽装工作くらいできるだろう?」

生田目「そんなのこじつけじゃないのか⁉」

生田目「≪桐ケ谷の武器は銃≫」

生田目「それはお前も確認しているだろう?」

生田目「ロケットパンチマーケットは在庫がない」

生田目「モノケモノ討伐の際は、毒は持ち出されていない」

生田目「モノケモノはメカだからな!」

生田目「桐ケ谷に≪毒を手に入れる機会はなかった≫!」

生田目「桐ケ谷は、どうやって毒を手に入れたんだ!」


コトダマ【桐ケ谷の証言】→≪毒を手に入れる機会はなかった≫

東「その言葉、斬らせてもらう!」


東「生田目、桐ケ谷はこう証言していた…『昨晩、神長とドラッグストアで会った。傷薬と毒薬の有無を聞かれ、ないと言った』と」

生田目「そ、それがなんだというんだ!」

東「桐ケ谷は、なぜドラッグストアにいたんだろうな」

生田目「な、なに⁉」

東「毒を調達していたんだよ!」

生田目「………ち、違う! そ、そんな、バカな……っ⁉」

桐ケ谷「…………」
桐ケ谷はうつむいていた。

東「桐ケ谷、反論はあるか?」

桐ケ谷「…………」

武智「…いが~い♪」

犬飼「え、なに? マジでそうなの?💕」

走り「うげげっ⁉ ロリ美少女がまさかの―⁉」

桐ケ谷「…………」

寒河江「…ほ、ホントに反論はねぇのかよ?」

番場「……桐ケ谷……さん……」

一ノ瀬「柩ちゃん―」

英「…………」

東「…………」

桐ケ谷「……これは、困りましたね…」

東「…?」

桐ケ谷が顔を上げると―
桐ケ谷「まさか…こんなことになるとは…夜の出歩きは危険ってホントですね…」

―ほほ笑んでいた。

東「…桐ケ谷、お前が、犯人だっ!」





====================
首藤「脇が甘いのぅ」
====================


首藤「反論…か。あるにはある」

東「なっ⁉ なんでお前が出てくるんだ!」

首藤「なぜって? ワシにしかできんことじゃからな…」


東「桐ケ谷は昨晩ドラッグストアで毒薬のことを確認している」

東「そのときに桐ケ谷が毒を持ち去ったんだ」

東「神長はそれを知っていたから、手紙を読んですぐにビーチハウスに向かったんじゃないのか⁉」

首藤「毒殺というのは、あくまで推察にすぎん」

首藤「毒を用いたという証拠もほしいな」

東「たしかに≪毒薬の器等は見つからなかった≫が、桐ケ谷にしかできないことだろう?」

東「≪神長の死因が刺殺でない≫以上、それは揺るがないんだよ!」


首藤「それは違うの」→≪神長の死因が刺殺でない≫

首藤「ワシは香子ちゃんを調べた」

東「ああ、それは知っている」

首藤「そのとき、身体も調べたんじゃよ」

東「…それがなんだ」

首藤「毒殺にありがちな斑点がないんじゃよ」

東「…斑点?」

桐ケ谷「毒というのは、異物中の異物。身体に反応を起こすんです。病気でも身体にアザなどができるでしょう? それと同じです」

東「…血でわからないんじゃないのか?」

首藤「…東、ワシらはなんじゃ? アサシンじゃろう? 血とアザくらい見分けられるわ」

東「…………」

走り「え? じゃあ、死因ってなんスか? 毒でもなく、刺殺でもないんなら、何があるんスか⁉」

死因…神長の死体を思い出せ、ほかになにがあるんだ?


走り「死因ってなんスか⁉」

走り「≪撲殺≫ッスか⁉」

走り「≪爆殺≫ッスか⁉」

走り「≪焼殺≫ッスか⁉」

走り「≪絞殺≫ッスか⁉」

走り「≪出血多量≫ッスか⁉」

走り「≪ショック死≫ッスか⁉」

走り「それとも、≪キャトルミューティレーションッス≫かぁ⁉」

一ノ瀬「に、鳰、落ち着いて、ね?」


東「走りに賛成だ!」→≪出血多量≫


東「出血多量…神長の首はたしか斬られていたよな?」

首藤「ああ、そうじゃ。薄く、な」

東「薄く切ったのは、時間の調節のため。血液がだんだんなくなっていって、それで死んだんじゃないのか?」

武智「ん~じゃあ、柩ちゃんは包丁を返すために、食堂に行ったってこと?」

生田目「そ、そんな残酷なことを…柩が…っ⁉」

犬飼「感情論じゃ人は救えないのよ~?💕」

桐ケ谷が包丁を使い、神長をコロシタ。それで合っているのか?


寒河江「桐ケ谷は手紙で間違えて≪神長を呼び出し≫て…」

武智「そこでモメて、≪包丁でグサー≫♪」

犬飼「死亡時刻の攪乱のために、出血多量を狙って≪首切り≫💕」

武智「そのあと、ルンルン気分で≪食堂に直帰≫♪」

首藤「…なんか悪意がある言い方じゃの…」

英「これが事件の全貌…ですか?」

生田目「…そ、そんな、バカな…私は信じないぞ…桐ケ谷が…犯人だなんて…っ!」


コトダマ【各所の包丁】→≪食堂に直帰≫

東「それは違うぞっ!」

東「いや、包丁は食堂のじゃなくて、旧館のだったはずだ。だから、桐ケ谷は旧館に行くはず」

一ノ瀬「ば、番場さん! 柩ちゃんは来た⁉」

番場「……来て……ない……ます……」

生田目「じゃ、じゃあ―」

首藤「無理…ということじゃな…」

武智「事件後も柩ちゃんは食堂来てないよ?♪ 皆がいない間、あたしが食堂にいたんだし♪」

生田目「……はあ、よかった……」

犬飼「よかないわよ💕 また振り出しじゃない💕」

寒河江「…いや、待て。振り出しじゃないぞ」

一ノ瀬「え?」

寒河江「…武智…お前、食堂に行ったのか?」

武智「え? そうだけど?」

寒河江「誰もいないとき?」

武智「うん」

寒河江「…旧館には、行ったか?」

東「そうか! お前は死体発見後のアリバイが完全にない!」

武智「……あ。やべ…」

武智が包丁を旧館に戻した?
確認しなくては…!


犬飼「や、やっぱり≪アナタ≫じゃない💕」

走り「手こずらしてくれたッス!」

武智「いやいや、違うってば。そもそもあたしは死体とか知らなかったし…」

首藤「おぬし、死体発見アナウンスは聞いてたんじゃろ?」

武智「うっ…」

桐ケ谷「犯人は≪ハサミを偽装≫したんではなくて、≪ハサミをフェイク≫と思わせたんですね?」

武智「だ、だからそれはぁ―」

寒河江「武智、ハサミをなくしたってのも、≪フェイク≫なんだろ⁉」


コトダマ【武智のハサミ】→≪フェイク≫

東「それは違うぞっ!」


東「生田目、昨日って、なくしたと言うまで武智は一度でも自分のコテージに戻ったか?」

生田目「え? ああ、いや。武智は剣持の件で犬飼ともめたあと、そのまま第2の島でずっと遊んでいたぜ?」

東「そのときになくしたって言ったのか?」

生田目「ああ」

寒河江「それがなんだ?」

東「武智は一度も一人になっていないから、隠すのは無理だ。ハサミをわざと落としたりなんてしていたら、生田目にすぐにバレルぞ」

寒河江「…それは…」

首藤「金属じゃからな…さすがに音や光の反射でわかるじゃろう」

生田目「あっ、言っとくけど、ビーチハウスも滅茶苦茶探したからな? それでも見つからなかった」

一ノ瀬「じゃ、じゃあ、武智さんじゃないってこと?」

犬飼「―共犯、なんじゃない?💕」

桐ケ谷「え?」

犬飼「武智と生田目さんが共犯関係だったら、可能じゃない?」

武智と生田目が共犯? ありうるのか?
いや、違うだろう。あれを提示すれば―



東「これだっ!」→コトダマ【武智の証言】



東「武智は首藤、一ノ瀬を今朝に目撃している。一ノ瀬を目撃しているのはおかしくないが、首藤はおかしいだろう? その時間はビーチハウスにいるべきじゃないのか?」

犬飼「…それも、口裏合わせとか…」

東「いや、一番最初にアリバイ確認されたのは、武智なんだ。だから、首藤や一ノ瀬、ましてやその場にいなかった生田目は口裏を合わせることはできるはずがない」

犬飼「そんなの…あとで会ったときにでも…」

東「忘れたのか? 捜査時はいつも2人1組のはず。武智は私と一ノ瀬、生田目は桐ケ谷と一緒だった」

生田目「そもそも私と武智は捜査中どころか、裁判が始まる直前まで今日は一度も会っていないぞ」

犬飼「…ちっ」

武智「…みんな…」ウルッ

生田目「それに私は、なにがあっても桐ケ谷を共犯者に選ぶ」

桐ケ谷「…千足さん…」

武智「…………」

走り「いやぁ、わかるッスよ、その気持ち。慣れると突っ込めるようになるッス!」

武智「そんなのに慣れたくないわっ!」

英「しかし、困りましたわね。共犯者がいては、犯人なんて―」

モノクマ『あ~もう、じれったいなぁ。ないない! 今回の事件に共犯者はいないんだよっ! ……はっ、言ってしまった!』

英「…だ、そうですわ」

首藤「単独犯…かの…」

走り「とはいえ…もうそろそろ証拠がなくなってきた気がするッスよ」

東「…なぁ…武智……食堂にいた理由はなんだ?」

武智「え? えぇと、死体発見アナウンスを聞いたから?」

寒河江「は? なんでそれで食堂なんだよ…」

武智「しかたないじゃ~ん♪ 場所わかんないし…」

一ノ瀬「あっ、そうか。発見されたっていうアナウンスだけだもんね」

生田目「それで、現場に来なかったのか…」

武智「いや、ちゃんと遅刻したけど、現場には行けたよ?」

桐ケ谷「そうなんですか?」

首藤「ああ。東、英、一ノ瀬、走り、番場、それにワシが証人じゃ」

番場「……はい……です……」

生田目「どうやってビーチハウスだって知ったんだ?」

武智「聞いたからだよ?」

番場「……モノ……クマ……?……」

モノクマ『ボクじゃないよ! ボクって公平に厳しいから、そんな優遇はしないよ?』

寒河江「あ~たしかに、裁判中でも何度か質問したけど、一つも答えてくれなかったからな…」

桐ケ谷「…じゃあ、誰に聞いたんですか?」

武智「それはね…」


東「お前しか、いないっ!」→《犬飼伊介》


東「犬飼…お前だったよな?」

犬飼「…………」

武智「そうだよ♪ でも、セリフとらないでよね♪ バラすよ?♪」

東「武智はずっと食堂にいた。武智が食堂を離れた理由は殺害現場を知ったからだ。じゃあ、それを最初に教えたのは…犬飼…お前だな?」

犬飼「…そうだけどぉ? それがなに?💕」

武智「伊介さんが皆の中で最初に食堂に来たよ♪」

犬飼「だからそれがなに?💕」

東「なんで食堂に行ったんだ?」

犬飼「なんでって…捜査のためじゃない💕」

東「…死体もろくに調べずにか…?」

犬飼「なに?💕 おかしい?💕」

英「普通は死体現場、もしくは、心当たりのある場所を行きますわね」

武智「たしかに、伊介さん、捜査で来たって言ってたよ?♪」

走り「ちなみに、桐ケ谷さん、千足さんもウチらが死体を調べる前に行ってるッス」

桐ケ谷「ぼくはドラッグストアのことがあったから、第2の島を…」

生田目「私はその付き添いだ…」

首藤「犬飼、寒河江、生田目、桐ケ谷以外は全員死体や現場を最初に捜査したぞ?」

英「アナタ方はなぜ食堂を調べようと思ったのですか?」

武智「あっ、あなた方っていうかさぁ、伊介さんしか食堂に来なかったよ?♪」

一ノ瀬「…え…それって、まるで…」

東「食堂に大事なモノがあると知っていたから…か?」

犬飼「はぁ⁉ なんでそうなるわけ? ただちょっと小腹が空いたから―」

首藤「寒河江を置いてか?」

犬飼「…………!」

英「寒河江さんはなんと言われましたの?」

寒河江「食堂を捜査してくるから、アナタはロビーを見て、と」

武智「そういえば伊介さん、血の臭いもしてたよ?♪」

一ノ瀬「血、血の臭い⁉」

走り「うげっ⁉ そんなのわかるんスか⁉」

武智「あれってさぁ、神長さんをコロシタ直後だったからだよねぇ?♪」

犬飼「はぁ⁉ このケガでしょ⁉」
犬飼の左の二の腕の湿布を見せた。

生田目「犬飼自身の血か…」

犬飼「どっかでぶつけたりして切ったのよ💕」

武智「…ぬぬぬ」

いや、アイツに確認するとわかるはずだ。


東「お前しか、いないっ!」→≪首藤涼≫


東「首藤、お前はビーチハウスに武智以外がそろったとき、犬飼のケガに気づいたか?」

首藤「…いや、ケガはしとらんかったはずじゃ」

犬飼「はぁ⁉ なんでそんなのわかんのよ💕」

東「犬飼…首藤は打ちひしがれた瞬間でも、その薄い傷を見つけたんだぞ?」

英「たしかに…首藤さんは目ざといですわ…」

首藤「褒め言葉として受け取ろうかの」

犬飼「そ、そんな証言が認められるの?」

首藤「じゃが、見たぞ? おぬしは大方、武智に食堂で指摘されたあとに、こっそり傷をつけたんじゃろう。今みたいな言い訳をするためにな」

武智「あっ、よくわかったね♪ たしかに血液臭いって伊介さんに言っちゃった♪」

寒河江「……伊介様……ウソだろ?……」

犬飼「…………」

走り「決まりッスね」

犬飼が犯人…これで決まり…か?


走り「神長さん殺害事件の犯人は…≪犬飼伊介さん≫でしたぁー!」

犬飼「勝手に決めないでよ!」

武智「でもさぁ、もう証拠は挙がってるんだよ?♪」

犬飼「…そんなの…」

武智「≪神長さんをヤッたあと≫、≪食堂に包丁を戻した≫んだよー!♪」


コトダマ【各所の包丁】

東「それは違うぞっ!」

東「包丁は旧館のなんだ! 食堂に向かうのはおかしくないか?」

番場「……はい……そうです……」

桐ケ谷「でも、伊介さんは食堂に―」

東「食堂の包丁はしまうスペースが特殊なんだ。しまう場所があらかじめ決められている。だから、包丁は食堂のモノであるはずがないんだ!」

走り「は⁉ じゃあ、なんで食堂に―⁉」

英「…知らなかった…のではないでしょうか?」

生田目「知らなかった?」

英「食堂の包丁だと誤解していた、とは考えられないでしょうか?」

一ノ瀬「え? え? どういうこと?」

犬飼が犯人? それで間違いはないか?


犬飼「あたしは、≪犯人じゃない≫っての💕」

武智「じゃあさ、なんで≪食堂に来た≫の?♪」

犬飼「それは…」

走り「伊介さん、アンタが犯人であるから、≪食堂に凶器を戻そう≫と思ったんスよ!」

寒河江「でも、それだと矛盾するんだろ? 犯人なら凶器の場所を間違えるか?」

走り「えっ? じゃあ、なんスか! ≪犯人じゃない≫って言うんスか?」


東「走りに賛成だ!」→≪犯人じゃない≫


走り「な、なんでそうなるんスか⁉ どう見ても伊介さんが包丁をしまってるッスよ!」

東「ああ。でも犬飼は犯人じゃないんだ」


====================
走り「そうはイカの金時計ッス!」
====================


走り「じゃあ、伊介さんはなんで食堂に行ったんスか⁉」

東「だから、それを今から―」

走り「納得いかないッス! ポンコツ兎角さんには負けられないッスよ!」

ポ、ポンコツ…⁉


走り「包丁をしまおうとしていたのは一目瞭然ッス!」

走り「≪武智さんの証言≫で証明できるッスよ!」

走り「現場を調べずに食堂に行こうだなんて、普通は思わないッスよ!」

走り「やっぱり≪伊介さんが犯人≫ッス!」


コトダマ【モノクマアナウンスの異変】→≪伊介さんが犯人≫

東「その言葉、斬らせてもらう!」

東「犬飼はホントに死体や現場を調べてなかったのか?」

走り「は⁉ なに言ってるんスか⁉ トチ狂ったッスか⁉」

東「死体発見アナウンスの条件を知っているか?」

走り「は? えぇと、発見者が3人以上って…」

東「首藤、一ノ瀬が発見者だ。一ノ瀬が発見したときに死体発見アナウンスが流れている。一ノ瀬が発見したときは、首藤もいたそうだ」

走り「それがどうしたんスか?」

桐ケ谷「まだ気づかないんですか? 3人じゃないんですよ。第一発見者がいない。そうですよね、東さん?」

東「ああ、桐ケ谷の言う通りだ。第一発見者…それが、犬飼、お前なんだ!」

犬飼「……っ⁉」

一ノ瀬「えっ⁉ それじゃ、伊介さんは最初に発見して、死体を見て、それで包丁を隠し…た…? あれ?」

武智「ねぇ、おかしくない?♪ なんか犯人みたいな行動なんだけど?」

ああ、それもそうだ。だって、犬飼は―


東「協力者なんだよ」


走り「は⁉」

番場「……犯人……違う……協力者です……」

一ノ瀬「で、でも、だとしたら、なんで伊介さんは食堂の包丁だって、勘違いしたの⁉」

首藤「…犯人を知らない…もしくは、犯人が知らないんじゃろう…犬飼が共犯者だったということを…」

犬飼「…………」

モノクマ『その通りです! さきほど、ボクは共犯者はいないと言いましたね? ボクは判断に迷ったんですよ…。犬飼さんの行動は、どう見ても犯人側の行動。では、共犯者かというと、違う。すべては勝手に行動したのだから。ボクはこう判断しました。これは、行動が犯人の得になってしまった不幸な主人公と同じで協力してしまっただけだと…だから、共犯者ではなく、協力者と判断しました。ウププププ』

寒河江「じゃ、じゃあ、伊介様は、犯人を知らずに…」

東「―知っているんだよ」

寒河江「え?」

東「死亡時刻は6時50分。10分後にはモノクマアナウンスが流れる。その間に犯人は偽装工作をやったんだろう」

生田目「それで?」

東「モノクマアナウンスは、流れなかった。なぜなら、第一発見者がいたからだ。すでに事件は起こったことになったんだ」

武智「へ? たった10分で?」

東「―犬飼は尾行していたんだ。神長か犯人をな…」

犬飼「は、はぁ⁉」

首藤「……そういうことか…」

英「…見えてきましたね…希望の光が……!」


走り「伊介さんが≪協力者≫ぁ~⁉」

犬飼「ち、≪違う≫って言ってんでしょ!」

武智「で、でも、なら、犯人って誰なのさっ!」

桐ケ谷「証拠…証拠はないですか?」

生田目「…なんでもいい、なにか犯人につながる証拠が…」

寒河江「う~ん」

一ノ瀬「う~ん」

犬飼「ていうか、ちょっと待ってよ。なにあたしが協力者のままで進めてんのさ?💕」

英「だって、そうですよね?」

犬飼「違うわよ! いい? ≪あたしは今朝まで第二の島に行ったことはない≫の!」

武智「な、なんだってぇぇぇぇっ⁉」

犬飼「神長さんとか首藤さんとか…よく行ってるんじゃない? アナタたちの方が協力者じゃないの?💕」

首藤「…なぜそう思う?」

犬飼「アナタたち、砂浜とかでよく泳いでいたじゃない? ≪クローゼットにあるダイバー用の服≫とか使えばいいじゃない!」


コトダマ【犬飼の証言】→≪クローゼットにあるダイバー用の服≫

東「それは違うぞっ!」


東「なぜ知っているんだ?」

犬飼「は? なにが?」

東「なぜクローゼットの中を知っているんだ? 捜査のときに初めて第二の島に行ったのなら、知らないはずだ」

犬飼「…………それは……っ」

英「焦って墓穴を掘りましたわね」

犬飼「さっきアナタたちがクローゼットの中に黒髪があったって…」

首藤「クローゼットが収納しているモノについては話しとらんの」

犬飼「…………」

東「決まりだな。犬飼、お前は第二の島に来ていたんだよ。なぜか? それは今朝早くの殺害事件に関係していたからだ!」

桐ケ谷「どっちなんですか? 神長さんが犯人か」

犬飼「…………」

生田目「…黙秘権…か」

走り「…うぬぬぬぬ…! やりきれないッスよ!」

武智「口を割らせる?♪」

英「簡単に割る相手ではないでしょう…」

首藤「時間も気になるの…」

モノクマ『そうですねぇ。ぶっちゃけ、長すぎて飽きてきたんで、そろそろ投票行こうかなぁ』

走り「や、や、ヤバいッスよ!」

番場「……ピンチ……です……」

犯人か、神長か…どっちの尾行か…。
考えればわかる…!

東「……犯人の方だ」

寒河江「え?」

東「犬飼は犯人を尾行したんだろう? 神長を尾行していたら、犯人と鉢合わせになる」

犬飼「…………」

走り「…うぐぐぐぐ…もどかしいッスよ!」

武智「なんでそこまで頑ななのかなぁ♪ 間違えると伊介さんも処刑なんだよ♪」

犬飼「…………」

寒河江「……伊介様……」

英「仕方ありませんわ。別の方向から探りましょう」

首藤「…犬飼がやった偽装工作じゃな。包丁を犬飼が持ち去ったから、ハサミの偽装は犬飼の仕業」

桐ケ谷「じゃあ、犯人の工作はなんでしょう?」

寒河江「う~ん…ねぇんじゃねぇのか?」

…ない…それでいいのか?
ほかには、偽装したことはないのか?


走り「犯人の偽装…なんスかねぇ」

武智「≪あたしのハサミ≫でしょ」

生田目「あと、≪包丁≫だ」

英「それらが≪犬飼さんの偽装≫でしょう? 腹部の2回の傷の謎は解けましたわね」

首藤「≪1回目は犯人≫。≪2回目は犬飼≫じゃな」

寒河江「ほかには≪とくに傷はねぇ≫か…」

桐ケ谷「≪現場もとくに…なさそう≫ですね」

番場「……犯人の……偽装工作は……ない……?」

一ノ瀬「そんな…っ! 伊介さん!」

犬飼「…………」


コトダマ【モノクマファイル1】→≪とくに傷はねぇ≫

東「それは違うぞっ!」


東「犯人の偽装工作の痕跡なら、ある」

番場「……え?……」

東「首の傷だよ。結局あれはなんのためだったんだ?」

首藤「致命傷、かの? 出血多量…それもまた不確定じゃが…」

英「首の傷と腹部の傷はどちらが先なんでしょうか」

走り「大事なんスかね、それ?」

武智「まぁ、いいじゃん♪」

生田目「腹部の傷が先だろう?」

走り「? なぜッスか?」

桐ケ谷「首の傷は一周している…しかも、内部は傷つけられてない。どう見ても、元気な神長さんを相手にできることじゃないですよ」

生田目「桐ケ谷の言う通りだ」

首藤「だとすると、首の傷は偽装工作になるのかの?」

武智「そうでしょ♪ 死んでもいない人間の首をちんたら切ってられないよね♪」

番場「……死因……刺殺……ですか……」

英「いつ一ノ瀬さんが来るかわからなかったでしょうから…」

寒河江「じゃあ、首の傷も偽装工作か…」

東「問題はどっちがやったかだが…」

犬飼「…………」

一ノ瀬「…伊介さん……」

首藤「犯人がした場合、包丁で首の傷を切ったことになるのかの?」

英「そうなりますわ」

? なに? なんだ、この違和感は…?
なにか…ヒントでもあるのか…?


英「まず、≪犬飼さんが包丁を持ち去る≫ためには、≪包丁が神長さんの胸に突き刺さっている≫必要がありますわね」

寒河江「≪犯人は伊介様の共犯を知らなかった≫んだよな?」

武智「じゃないと、≪伊介さんが食堂に間違えて来た≫理由がないもんね♪ 伊介さんと犯人のコミュニケーション不足が根拠だよ♪」

走り「兎角さんも気を付けないといけないッスね!」

東「…どういう意味だ?」

一ノ瀬「首の傷は≪死後につけられた≫んだよね?」

首藤「推測じゃがな…でないと香子ちゃんに抵抗されてしまうからの」

桐ケ谷「だとすると、犯人はどうやって首の傷をつけたんでしょう?」

生田目「犯人は≪首の傷を切ったあと、包丁を胸に突き刺した≫んじゃないか?」


コトダマ【腹部の傷】→≪首の傷を切ったあと、包丁を胸に突き刺した≫

東「それは違うぞっ!」


東「腹部の傷は2回しかない。死後…つまり、包丁が腹部に刺さったあとに、首の傷はつけられたはずだ。包丁で殺害…のち、ハサミで首の傷及び包丁の偽装をしいたんだ」

英「だとすると、首の傷は犬飼さんってことになりますわね」

桐ケ谷「なぜ、そんな偽装を?」

犬飼「…………」

首藤「……そうか、そういうことか…」

英「……わたくしも謎が解けましたわ」

番場「……犯人……は……」

走り「え? 番場さんも⁉」

武智「…ぜ~んぜんっ、わかんな~い♪」

桐ケ谷「…ひょっとして…」

生田目「わかったのか? 桐ケ谷」

桐ケ谷「多分、ですが…」

寒河江「マジかよ…!」

一ノ瀬「え? え?」

犬飼「…………」

東「…⁉ そうか! わかったぞ! 犯人は―」


???「待て」


東「?」

首藤「ワシに言わせてくれ」

東「……わかった」

首藤「……けりをつけようぞ」

犯人は―――

神長香子を殺害した犯人は―――




首藤「…おぬしじゃな――――




















――――寒河江春紀……」






寒河江「なっ……⁉ あたし……っ⁉ 冗談…だろ…?」

首藤「すまぬが、冗談ではない」

寒河江「あたしが……犯人……?」

走り「ま、マジッスか⁉」

武智「へぇ?♪ 証拠は?♪」

首藤「首の傷を偽装した理由を考えればわかることじゃ…」

東「偽装したのは、首に痕があったから…だろ? 犬飼」

犬飼「…………はぁ? なんであたしにふるわけ?💕」

東「神長の死因に関わるものなんだ…首に残っていたあとは…」

英「正直、死因は刺殺かと思いましたが、違ったんですね」

一ノ瀬「え?」

東「真の死因は―」


犬飼「黙って聞いてりゃ、ごちゃごちゃと…全部アンタらの推測でしかないじゃない!」


東「聞け! 犬飼! お前が隠滅しようとした証拠は―」

犬飼「うるさい! 全部間違っているのよ!」

犬飼が騒ぎ出す。

首藤「…東、任せてよいか?」

東「ああ」

なんとしてもわからせてやる。
お前が消そうとした真実を―


犬飼「でまかせよ!」

犬飼「うるさいうるさいうるさい!」

犬飼「全部推測じゃない!」

犬飼「証拠よっ!」


犬飼「犯人だって言うなら、証拠を見せてよっ」


こ    う    さ    つ

東「これで終わりだ!」


東「死因が、犯人を指しているからだろう?」

犬飼「はあ? だから―」

東「絞殺できるのは、寒河江しかいない!」

犬飼「はぁ⁉ そんなことないし! ロケットパンチマーケットにいくらでもあるでしょ!」

いや、それはないあのコトダマを提示すれば―


東「これだっ!」→コトダマ【ロケパの在庫】


東「お前も調べたんだろう? ロケットパンチマーケットにそんなものは置かれていない」

犬飼「…それは…っ!」

東「認めろ、犯人は―」



寒河江「まるで、伊介様が犯人だと指摘されてるみたいだな…」



東「なに?」

寒河江「東…あたしはまだ認めてねぇぜ?」

寒河江が不敵な笑みを浮かべている。
まだ、なにかあるというのか?


寒河江「あたしが犯人ってのは、わかる」

寒河江「あたしは≪今朝のアリバイがねぇ≫からな…」

寒河江「でもよ、返り血はねぇぜ?」

首藤「そうじゃな…死亡時刻から一ノ瀬が発見するまでに、1時間もある。いくらでも身体を洗えるじゃろう」

寒河江「誰にも見つからずにホテルに戻ったってのか?」

英「できるでしょう? それに、拭くものを持っていたかもしれないわね。もともと殺害する気だったなら…」

寒河江「証拠がないぜ?」

桐ケ谷「…神長さんともめたときにケガをしたんじゃないですか? さすがに無傷とはいかなかったかと…」

寒河江「へぇ? なんでそう思う?」

走り「寒河江さんは本気でやる必要があったから、得意の武器…ワイヤーで絞めコロシタんスよ!」

武智「つまり、神長さんの反撃もいくらかうけたはず♪」

寒河江「へぇ? そんな傷ねぇけど?」

生田目「治したんじゃないのか?」

寒河江「たった1時間でか?」

番場「……薬……で……」

寒河江「モノクマに没収されてるぜ?」

一ノ瀬「…春紀さん……春紀さんは…知ってるよ…傷薬の場所…」

寒河江「は? あたしがか?」

一ノ瀬「……春紀さんの友達を思う気持ちが…そうさせたじゃないですか…」

犬飼「…………」

寒河江「…記憶にねぇな…気のせいじゃねぇの? あたしは≪傷薬の場所なんか知らねぇよ≫」


コトダマ【剣持のコテージ】→≪傷薬の場所なんか知らねぇよ≫

東「その矛盾、撃ち抜くっ!」


東「寒河江、お前は剣持のコテージに薬があることを知っているな」

寒河江「…………」

東「犬飼のケガを治すために…お前の口が言ったことだ」

寒河江「…………」

東「モノクマを慣れたように呼んでいたのも、すでに経験済みだからか? 自分のケガを治すために剣持のコテージを訪れていたんだろ!」

寒河江「…………証拠はねぇ」

東「…寒河江、もういいだろう? 認めてくれ」

寒河江「…………証拠はねぇが、ほかの連中に疑いを向けられる証拠もねぇな…」

一ノ瀬「…春紀さん…」

寒河江「……ははっ」

一ノ瀬「? 春紀さん?」

寒河江「……モノクマ、雨を降らせてくれ…」

モノクマ『はぁい!』

突如、寒河江の頭上から土砂降りの勢いで雨が流れた。

英「あなた⁉」

寒河江「…らしくねぇことはしねぇ方がいいな…」

そう言いつつ、寒河江が濡れた自分の髪をかきあげると、

一ノ瀬「…あ」

寒河江の頬には傷があった。

ほかにも、腕や脚には打撲の痕のようなものがある。

寒河江「ハンドクリームやファンデーションで隠そうとしたら、すっげぇ痛かったんだよな…ははっ」

東「……寒河江」

寒河江「……東、終わらせてくれよ…」

東「……わかった。事件を一から振り返る。これで、最後だ…」


――クライマックス推理――


犯人は早く起きて、偽装した手紙を一ノ瀬晴のコテージのポストに入れた。

その目的は、一ノ瀬晴をビーチハウスにて殺害すること。…そう、卒業だった。

しかし、その場面を見ているものがいた。神長だ。

神長は偶然がどうかはわからないが、犯人のその行動を一部始終見ていたんだ。

犯人は投函が終わったあと…旧館へと凶器の調達に出かけた。包丁だ。

食堂の包丁だと、早起き組が早期に発見してしまうおそれがある。

計画の前に、首藤や桐ケ谷などに見つかっては、水の泡だ。

余談だが、なぜ包丁かというと、それは凶器の特定の回避のためだ。モノケモノ討伐の際に、手の内をさらしている犯人は、それを避ける必要があった。

犯人が寄り道をしている最中、神長は手紙を読む。内容は自分の名を騙り、一ノ瀬を呼び出すものだった。

ビーチハウスに向かった神長は、クローゼットに隠れる。理由はわからない。真意は神長に聞かなければわからないだろう。

そして、犯人がビーチハウスに到着する。犯人が油断しているときに、神長がクローゼットから出てきた。

推測だが、このとき、6時半ごろ。首藤がランニングを始めて、走りはプールでプラプラ歩き、番場が旧館に向かった時間だ。武智は牧場。

2人の間に何が起こったかはわからない…が、そこで口論になり、そして…。

犯人はワイヤーかなにかで首を絞めて、神長を殺害した。死亡時刻は6時50分。

同時刻に、首藤がホテルに到着。桐ケ谷が起床して食堂へ、走りと首藤が会話を始める時間だ。武智は牧場。

一ノ瀬が来ると思っていただろう犯人は、慌てて包丁を使った偽装工作をして、現場を離れる。

ホテルに戻り、犯人はケガを治すために、剣持のコテージをモノクマに開けてもらって、薬で治した。

だが、犯人はミスをしていたんだ。

首を絞めたあと…決定的な証拠だ。

犯人はそれに気づいてなかった。

しかし、それを偽装工作した者がいた。

犬飼伊介…今回の第一発見者だ。

神長の首の痕を、わからないように偽装工作したんだ。犯人に内緒で…。なぜ、そんなことをしたのかは、わからない。

そして、包丁をハサミに入れ替えた。武智に罪を着せようとしたのだろう。皮肉にもこれが、事件を解明させる手がかりになった。

血のついた包丁をかかえた犬飼は、シャワー室で洗おうとするが…シャワー室は故障していた。

それを知らなかった犬飼は慌てたことだろう。拭くものを持ちあわせていなかった犬飼は、結局冷蔵庫の中にあったペットボトルの天然水で洗い流した。

そして、包丁を手にホテルに戻る。

だが、包丁を食堂のものだと勘違いしていた犬飼は、誤算をする。桐ケ谷がいたのだ。

桐ケ谷はずっと食堂にいたために、包丁を戻すことができずに、死体発見アナウンスが流れる。

武智を除く全員がビーチハウスに集合した。走りと私が声をかけたとき、犬飼は自分のコテージに戻っていたから、コテージに包丁を隠していたんだろう。

捜査開始直後に、食堂に向かったが、今度は武智がいたんだ。

武智を追い出すも、食堂の包丁ではないと、ようやく知った犬飼は旧館に戻した。

相当慌てていたんだろう…包丁が使用されたという痕跡を残したまま、旧館に戻してしまったんだ。

そして、犬飼もまた、それに気づくことはなかった。

犬飼はなぜそこまでかばったのか…今朝のアリバイがなく…剣持のコテージに傷薬があることを知っていた…絞殺が得意な暗殺者。

これらに答えが出せて、犯行が可能なヤツは一人しかいないっ!


寒河江春紀!


…犯人は、お前だ!

東「…………」

犬飼「…………」

桐ケ谷「…………」

寒河江「…………」

首藤「…………」

武智「…………」

生田目「…………」

走り「…………」

英「…………」

番場「…………」

一ノ瀬「…………」


モノクマ『ウププププ。議論が終わったようですな…。さて、投票タイムといきましょうか! 投票は一人一回で一回きりの投票になります。絶対に誰かに入れてね? ウププププ。こんなんでオシオキとか、校則を作られたりしたら、折角の修学旅行が楽しくないでしょ? では、投票の結果、クロとなるのは誰か―。そして、それは正解なのか、不正解なのかぁぁ~~~!』


スロットのようなモノが、モノクマの目の前に突如上から落ちて、現れる。

モノクマが指…かどうかはわからないが、手でボタンのようなモノを押す。

スロットの画面の目が回転を始める。

画面の目は黒組の顔写真だった。一ノ瀬や英、首藤、死んだ神長のまである。全員分あるのが見てとれた。当然私のもだ。

スロットが終わる。

ラッパのような音が鳴り響く。

口笛がどこかしら聞こえてきた。

スロットを見ると、横一列にそろったのは―――


モノクマ『いやっほ~い! 大・正・解! 神長香子さんを殺害したクロは、寒河江春紀さんでした~!』

モノクマが玉座で踊っている。

上機嫌な理由は…私たちの表情を見てだろう。

東「……くっ」

生田目「…ほ、本当なのか? 本当に寒河江が―」

寒河江「…ああ」

寒河江は笑みを浮かべてはいるが、力がない。
無理やり笑っているようだ。

桐ケ谷「なぜ、そんなことを―」

寒河江「…………」

寒河江は黙ったままだ。

モノクマ『ウププププ。黙秘権を行使しようというんだね。寒河江さん』

寒河江「ダメか?」

モノクマ『ウププププ! いいですとも! 世の中には人権なんてものがありますからね!』

寒河江「…案外優しいんだな…」

モノクマ『ウププププ。でもね、ボクはこう思うわけですよ。死人に人権はあるのか…と』

英「…野蛮な言い回しですこと…」

モノクマ『歴史上の偉人でもウィキペディアで検索すれば全部わかるよ? 恥ずかしいことから痛々しいことまで…情報版ゆりかごから墓場までだよ。…ここまで言えば、ボクの言いたいことはわかるよね?』

一ノ瀬「…なに、するの?」

モノクマ『…ウププププ!』

モノクマは答えずに、不気味に笑い続ける。
左目が赤く発光している。

走り「春紀さん。動機はなんですか?」

武智「あたしも気になるなぁ♪ 春紀サンって、このメンツだとクロになりにくいと思ってたけど…?♪」

首藤「…なにか理由はあるんじゃろ? 教えてくれんかの?」



寒河江「……………………あんたたち、すげぇな…」

寒河江がうつむく。

寒河江「とくに、首藤さん。あんた、すげぇよ。親友が殺されたってのに…そんな…なんでそんな…平気でいられるんだよ…」

東「…寒河江…」

寒河江「…あたしにも、そういう精神力が、ほしかったな…」

寒河江の目から、一筋だけ涙が流れた。

首藤「…ふふふ、年の功じゃ…それに、ワシもまだまだじゃ。香子ちゃんの死体を見て、ワシは20分以上も呆けておったからの…」

首藤の発見は7時40分。一ノ瀬の発見の8時まで、20分の誤差がある。

なにをやっていたんだろうと思っていたが、なにもできなかったのか…。

寒河江「…殺人しておいて、だんまりは卑怯だよな…」

寒河江が顔を上げる。もう涙はなかった。

寒河江「100億円さ」

首藤「…やはり、そうか…」

英「あれが引き金ですのね…」

寒河江「…それもあるが、実はな、前々から思っていたんだ。この島から脱出するにはどうしたらいいんだって」

走り「マジっすか⁉」

寒河江「……あたしにはな、弟や妹がたくさんいるんだ」

武智「これは俗に言う『崖の上の懺悔』ってやつですね♪」

走り「映画みたいッス⁉ ちょっと見てみたいッス!」

英「あなたたち、耳障りですわ…」

首藤「無粋な横やりはよさんか…」

寒河江「そのガキたちの面倒を今、冬香に任せっきりなんだよ。負担かけてばかりで情けねぇ姉だ。ここに来て4日ほど経ってる。今日で5日目だ」

寒河江の笑みに陰りが出る。

寒河江「あたしは約束したんだっ…! 大金稼いですぐに帰るって…!」

一ノ瀬「春紀さん……」

寒河江「…ってのが、あたしの動機だ…悪かったな、皆」

首藤「…………」

寒河江「…あたしの自己中心的な理由で―」

首藤「…いや、仕方あるまい。そういうこともある」

寒河江「…?」

首藤「…いや、何年も生きていればな、身近にいた人間が唐突にいなくなってしまうというのは、よくあるのじゃ。これは長生きするとよくわかる」

走り「…何歳ッスか⁉ ……って、突っ込みもダメなんスか⁉」

走りが英に睨まれていた。

英「ええ、ダメです…走りさんはすでに腐海臭がするんですから、不快ですわ」

走り「それっ…んぐっ! ぬぬぬっ! 突っ込みてぇっ…!」

桐ケ谷「なにやってるんですか…」

首藤「ワシから見たら、友人が先にいなくなってしまった。暗殺者の時点で、まあ、寿命は短いと覚悟しておったし、それは香子ちゃんも同じじゃろう?」

寒河江「……やっぱ、つえぇよ…」

首藤「それに、おぬしもじゃ、寒河江」

寒河江「…………ああ、そうだな」

モノクマ『ウププププ。そろそろお楽しみに入っていいかな? じゃあ、それでは、張り切ってイキましょう! おしおk―』

武智「ねぇ」

モノクマ『タイぅんぐぅ⁉』

武智がニコニコしながらモノクマに話しかける。

モノクマ『なんだよ、ヒトがこれから決め台詞を言おうとしたのに…』

武智「モノクマは何が主食なの?」

モノクマ『は?』

武智「いいから、答えてよ♪ 生徒の悩みを解決するのも、運営委員会の仕事でしょ?♪」

モノクマ『えっ、それ今じゃなきゃダメなの⁉』

桐ケ谷がそんな武智を一瞥して、ハッとする。なにかに気が付いたのか…?

桐ケ谷「ぼくも気になります」

モノクマ『はぁ⁉ なに急に言い出してんだよぉ⁉』

英「……いいアイデアですわ、武智さん…」

首藤「…粋なものじゃ…」

英と首藤も顔を見合わせ、なにかの合図を受け取った。

生田目「?? なにが起こってるんだ? そんなことしてる場合じゃないだろう? 武智に桐ケ谷まで?」

走り「あああ、なってないッスねぇ千足さん。こういうのは察してなんぼッスよぉ? まっ、ウチもよくわからないんで、こういうときは傍観するッス!」

武智、桐ケ谷、英、首藤がモノクマを質問攻めしている。

一ノ瀬「み、みんな? なにしてるの?」

モノクマ『あぁあぁ、もう、うるさいうるさいうるさい!』

武智「何フェチ? 何に興奮する?」

桐ケ谷「魚や植物の毒って、効くんですか?」

英「モノクマさんはどんな紅茶が好きなんですの? 機会があれば英ブレンドを振る舞いますわ」

首藤「おぬし、温泉は好きかの? 温泉巡りでいい場所があるから、教えよう」

モノクマ『オマエラそこまでボクに興味ないだろ⁉』

番場「……興味ない……違う……興味津々です……」

モノクマ『嘘吐け⁉』

私もよくわからなかったため、周囲の様子を見た。
状況把握だ。暗殺者の基礎である。

そして、すぐにわかった。

ある一点を見れば…すぐにわかる…。



犬飼「…………春紀」

寒河江「…………伊介様」



二人が向かい合っていた。

さすがの私も…察することができた。

このときの二人の会話の内容は、後日、武智から聞いた。
私も気づいてからはずっとモノクマにカレーについて質問していたからだ。


犬飼「…うそつき…」

寒河江「…ごめん…」

犬飼「あのとき、聞いたら、そんなことしないって言ってたくせに…うそつき」

寒河江「……ごめん……」

犬飼「…………」

寒河江「……あんときは、コテージの外だったっけか? …走りが乱入したり、途中から東がのぞいてたりな……それでも伊介様は話打ち切らなかったけどよ…ははっ、なつかしいぜ…昨日の…まだ一日も経ってねぇのに…昔のように思える…」

犬飼「…………」

寒河江「……ありがとな」

犬飼「え」

寒河江「庇ってくれて…………言葉多く知らねぇから、安っぽい言い方しかできねぇけどよ…嬉しかった…」

犬飼「……なにそれ…アンタがふがいないミスするから、ちょっと手ぇ加えただけよ…」

寒河江「ははっ、たしかにな……神長には悪いことしちまった…」

犬飼「…見てたわよ…全部……」

寒河江「…全然気づかなかったよ…」

犬飼「アンタ…すごい必死な顔してたもんね…」

寒河江「…わかっちゃった?…」

犬飼「見ればわかるわよ…ずっと、悩んでたんでしょ?」

寒河江「…………」



回想()


寒河江「か、神長⁉ お前…どっから出てきてんだよ⁉」

神長「そんなことはどうでもいいんだ! 寒河江、バカなマネはやめろ…」

寒河江「…そうか、知っちまったんだな、あたしがやろうとしてること…」

神長「…ああ。だが、今ならまだ間に合う! 戻ってくれ…!」

寒河江「……もう、決まっちまったんだ。あたしの行く道は…もう、これしか…」

神長「お前にも事情があるだろう。しかし、ここで殺人をすると、お前が処刑されるんだぞ!」

寒河江「わかってる。でも、あたしの今の人生は…あたしだけのものじゃねぇんだ…」

神長「…なに?」

寒河江「…あたしよりもずっと小さいガキたちの…人生も背負ってんだよ…」

神長「…弟や妹でもいるのか…」

寒河江「…今なら、100億だ。これを逃して、ほかの誰かがやったら、大金は返ってこねぇ。モノクマも、100億は今しか報酬として得られないって言っていた。黒組が開始されんのかも…走りを見てたら確信が持てねぇんだよ」

神長「…………」

寒河江「あたしは…あいつらに幸せに生きてほしいんだ!」

神長「…その中に、お前は含まれないのか?」

寒河江「なに?」

神長「その幸せに…お前の幸せは含まれていないのかと聞いているんだ!」

寒河江「…………」

神長「…弟や妹…大切な人たちと生きる可能性を捨てていいのか? 今しかないんだぞ? それとも、お前の家族は、病気でもおかされているのか?」

寒河江「……母親が…でも、今すぐってわけじゃねぇ…」

神長「なら、今は自分が生きて出ることが重要なんじゃないのか? 危険な橋を渡るよりも、命の安全を確保して、その上で―」

寒河江「―あたしの幸せって聞いたな?」

神長「……ああ」

寒河江「たしかに、あたしは今幸せじゃねぇよ。暗殺なんて皆に言えねぇことに手を染めてる。でもな、家族が笑ってくれるなら、あたしは幸せなんだよ。あいつらが今苦労していると思うと、あたしは―」

神長「…………」

寒河江「…お前の言うことももっともだ、神長。きっとお前のやり方が一番なんだろう…それでも! あたしはもう、選んだんだ…」

神長「後戻りは今だぞ? 振り返らないのか?」

寒河江「…ああ。この道を選んだときから、決めていた」

神長「大事な友人もいるだろう?」

寒河江「……………ああ。いるよ。かけがえのない―人が…」

神長「…………わかった」

寒河江「…神長。この島で会ったのもなにかの縁だ。この島で数日間過ごしたよしみで、私の頼みを聞いてくれないか?」

神長「なんだ?」

寒河江「―かまえてくれ」

あたしはファインティングポーズをとる。

神長「……そうだな。友を止めたいと思って来た私だ。黙って見過ごすわけにはいかない。お前も、目撃者を放置しておけない、ということか…」

寒河江「…神長、あんたって、頭はいいんだな。察してほしいことは察してくれる」

神長「私は学力と設計には自信がある。実技は不安だが…」

寒河江「ははっ、友人のあたしも否定できねぇよ。……もっと仲良くしたかったが、しょうがない。また別の機会に会いたかったぜ」

神長「私たちは暗殺者だ。こうなることは想定内だろう。最初からわかりきっていたことじゃないか」

寒河江「…⁉」

神長「? どうした?」

寒河江「…いや、そのセリフ…どっかで…」


―最初からわかりきっていたことじゃないか……期末テスト? 文化祭? 全部まやかしだ―


寒河江「…あたしのセリフ?」

神長「…一つ聞いておきたい」

寒河江「え? あ、ああ、なんだ?」

神長「ないとは思うが、念のためだ。………裏切り者か?」

寒河江「…いや、違うぜ? あんたは?」

神長「違う。……だが、良かった。私は今友人を止めようとしているのだな。確信できた」

寒河江「あたしは残念だよ。裏切り者だったら、気兼ねなくヤレると思ったんだけどな―」

回想(終)


裁判場

寒河江「暗殺者失格かな、あたし」

犬飼「なに言ってんのよ…友達コロシテ、逃げ切るつもりだったんでしょ? 十分向いてるわよ」

寒河江「…ごめんな…」

犬飼「…もう、いいわよ…」

寒河江「……ほんとに、ごめん…」

犬飼「…いいってば…」


寒河江「…手助けしてくれたのに、逃げきれなくて、ごめん…」


犬飼「…………最初からさ、逃げる気、なかったんでしょ?」

寒河江「…………」

犬飼「…ほんとは気づいてたんでしょ? 首の傷」

寒河江「…………」

犬飼「…でも、残した…なんで?…」

寒河江「…………なんのことかな」

犬飼「……まあ、いいわ………もう、いいから、死になさいよ………」

寒河江「ははっ、なんだそれ……まったく、最後まで伊介様らしいぜ」

犬飼「……ふん」

寒河江「……でも、一番大好きだ………そういうところが……あたしは――」

犬飼「……ふん…」

寒河江「……伊介様のせいなんだぜ…」

犬飼「…………」

寒河江「…伊介様がいなかったら、あたしは証拠を一切残さなかったよ…」

犬飼「…………」

寒河江「……家族のためにこんなことやったってのに…なにしてんだろうなぁ、あたし」

犬飼「…………」

モノクマ『あぁあぁもう…うるさいよぉ、オマエラ! これ以上邪魔するんなら、まずオマエラからオシオキするよ!』


シーン


モノクマ『素直すぎるよ⁉ まったく…なんだよ、少し冷めちゃったよ。でもま、張り切っていかないとね…』

寒河江「みんな…ごめん……でも、許してくれとは言わないぜ…」

モノクマ『さて、神長香子さんを殺害したクロである、貧乏大家族の長女、寒河江春紀さんに…』

寒河江「これで…こんなことが起きるのは、最後になることを祈ってる」

モノクマ『スペシャルな…オシオキを…用意しましたぁー!』

寒河江「首藤…あんたには謝っても謝りきれねぇな…」

首藤「もうよい。おぬしには事情があった。香子ちゃんは負けた。それだけじゃ。それにおぬしはこれから……いや、なんでもない…」

モノクマ『さて、わりと時間押してしまっているので、張り切っていきましょう!』

寒河江「伊介様…」

犬飼「……なに?」

モノクマ『オシオキターイム!』


寒河江「あたしの一番の理解者で…あたしを一番信じてくれるのは、伊介様なんだよ」

犬飼「……バカ……当たり前でしょ……?」


そのとき、犬飼の目から――


寒河江「だから、伊介様は…あたしの今の一番の願い…理解できるよね? ま、理解できてても、口で言うからさ……」


犬飼「……春紀……あたしは……」


寒河江「―生きてくれ」


寒河江がニッコリと笑って、さよならと言わずに手を振った。


犬飼「……アンタに…生きててほしくて……っ!」


――犬飼の目から、光るものが見えた。


モノクマが地面から出てきたスイッチを、おもちゃのハンマーみたいなモノで、押した。






―― なんでも持てるもんっ ――



寒河江春紀処刑執行




寒河江春紀が荒野の中、一人で立っている。

不安そうな顔をしている寒河江の前方にモノクマが現れた。

モノクマはウププププと笑う。すると、寒河江のそばに大小様々なカゴが現れた。

寒河江の頭上にモノが落ちる。それは消しゴムだった。

寒河江は消しゴムをカゴに投げ入れた。

今度はモノクマのぬいぐるみが落ちてきた。寒河江がキャッチして、それをカゴに入れる。

次は椅子。その次は机。その次は自転車。どんどん寒河江はそれをカゴに入れる。

疲労の色が見え始めたころには、大型の荷物を入れていた。

タンスやベッド、果ては車いすまでも落ちてくる。寒河江はそれを腕だけでなく、頭や背中、全身を使ってキャッチしていた。

寒河江が汗をかき、ぜぇぜぇ荒く息を吐きながら、作業を続ける。

モノクマはウププププとさらに笑い続ける。

どれぐらい入れただろうか……軽自動車をカゴに入れ終わると、

寒河江の周囲一面を影が覆い尽くす。

落ちてくるのは直径数10メートルはあろう…巨大な銅像だった。

寒河江がそれを見上げ…渇いた笑いを浮かべたとき、






ドガァーンッ!!!



落ちた銅像は土台部分が地面にめり込んでいた。

銅像はモノクマをかたどっていた。片手を腰に当て、もう片方の手は上に挙げて、独裁者のようなポーズをとっていた。

モノクマ像の土台からは、血液は飛び散っていた。



モノクマ『だっはっはっはっはっ! エクストリームぅっ! アぁドレナリンがぁ染み渡るぅ!』

その一部始終を大画面のスクリーンで全員が見えるように映されていた。

驚きや怒り、恐怖を口にするものがいた。


犬飼「ばかはるきぃ……」


犬飼が顔をうつむかせている。身体が震えていた。犬飼の足元にポツポツと落ちる。


泣いていた。


犬飼に声をかける者はおらず、皆打ちひしがれていた。



…珍しく野次が、どこからも飛んで来なかった。



―――学級裁判 閉廷―――


モノクマ『いやぁ、長かったねぇ! ようやく1人目かぁ! 感無量だねぇ!』

首藤「……なにが、感無量じゃ…こんなことをしおって……」

英「何が目的なんですの?」

モノクマ『…ウププププ。もう答えたと思うけど…? まぁいいや。もう一度言おうか…』



モノクマ『―絶望―それだけだよっ!』



一ノ瀬「…そんな…ひどい……っ!」

走り「え、えぐいッス! グロイッスよ!」

武智「…あ~、こういうのは嫌いなんだよねぇ…」

番場「………………っ」プルプル

英「大丈夫ですわ、番場さんはわたくしが守ります」

桐ケ谷「…………」

生田目「桐ケ谷は…私が守る」

私も一ノ瀬の手を握る。

一ノ瀬「兎角……」

東「…こんなときこそ、お前のポジティブだろう?」

一ノ瀬「……うん……」

モノクマ『ウププププ。まだ仲良しの子がいるヤツはうらやましいですなぁ、ねぇ犬飼さん?』


ハッと犬飼を見ると―

犬飼「…伊介って呼んでよ…」

犬飼がモノクマを強く睨む。

モノクマ『おろ? 意外に平気だね? 大事なお友達が死んじゃ―』

犬飼「あのさぁ―」

犬飼が歩き出す。向かった先は、ここに来るのに使ったエレベーターだ。

犬飼「―なんでもてめぇの思い通りにいくと思うなよ―」

犬飼がエレベーターに乗って、一人で上へと向かっていった。

モノクマ『…ウププププ』


首藤「…もう上へ行っていいか? まだ夕方じゃろうし、そろそろ米をいただきたい…」

モノクマ『いいよ? それと、学級裁判を頑張ったオマエラに、ボクからのささやかなプレゼントがあるよ…』

武智「え? なになに?♪」

走り「食いつくッスね⁉」

英「…どうせろくなものじゃないでしょうけど…なんですか?」

モノクマ『ウププププ。それは見てのお楽しみさ。最初の砂浜に行きなよ』

首藤「…どうする?」

桐ケ谷「罠だとは思いますが…」

一ノ瀬「行きましょう!」

東「一ノ瀬?」

一ノ瀬「罠だと思っても仕方ないですよ! 春紀さんの分まで! 神長さんの分まで! モノクマさんに立ち向かうべきなんです! 一度逃げると、癖になりますよ!」

首藤「…だ、そうじゃぞ?」

英「逃げ…ですか…。それは、不愉快ですね」

生田目「…まぁ、いつかは行かなくちゃいけないだろうしな…」

桐ケ谷「…行きますか?」

武智「じゃあ、レッツラゴー!♪」

武智がエレベーターのボタンを押している。

走り「早いッスよ!」

首藤「皆、いくぞ」

英「…吉と出るか、凶と出るか…」

生田目「…………」

桐ケ谷「…………」

番場「……行く……ます……」

東「……」

一ノ瀬「希望は止まらないよ。ね? 兎角さん。晴たちは、絶対にこの島から脱出するんだよ」

一ノ瀬の日向のように明るい笑顔が、私の心の支えになった。

東「……ああ、そうだな」

私もまだ、希望を捨てられない。

神長と、寒河江のためにも―!








モノクマ『…ウププププ。次の絶望の芽は、誰なんだろうねぇ……ウププププ』


第一の島・砂浜

武智「お~い、モノクマぁ~?♪」

英「なにもないですわね」

首藤「いっぱい食わされたかの?」

走り「無駄足ッスか⁉」

桐ケ谷「わざわざ走らせたにしては、モノクマさんらしくないですね…」

生田目「私はまた動機でも発表されるのかと思ったよ…」

番場「……いやな……予想です……」

一ノ瀬「…伊介さん、来なかったね…」

東「…そっとしておいてやれ」

それよりも今はこの状況だ。

モノクマはプレゼントといったが、なにをしようと言うのだろう。

首藤「待てということか?」

英「待つのですか? わたくし、待つのは苦手なのですが…」

走り「見た通りッスね⁉」

番場「……なにも……ない……です……」

東「やるなら早くしてほしいものだな…」

生田目「まあまあ、そういう短気なのは損するぞ?」

桐ケ谷「東さんだから仕方ないですよ、千足さん」

一ノ瀬「ちょ、柩ちゃん⁉」

武智「あ~もう、帰ろっか♪」










???「待て待て待て待てっ⁉ ここにいるぞ⁉ ボクの姿、忘れたのか⁉」





武智「え、その声…しえなちゃn―」

武智が、声が聞こえた方を見て…固まった。

英「あ、あなた…⁉」

首藤「お、おぬし、どうしたんじゃ…っ⁉」

番場「……だれ……?……」


???「ちょっとちょっとぉ! そのリアクションはなってないなぁ! ボクがいないとそういうのがホントにダメだねぇ!」


生田目「…え…いや…そういうのどうでもいいから、ほんとどうしたんだ?」


???「どうでもよくねぇだろ⁉」


桐ケ谷「…ほんとに、剣持さん?」


???「おいおいおいおい…なに? ほんとに忘れちゃったの⁉」


そこにいたのは…現実離れしていた―


???「剣持しえなとは…ボクのことだぁぁぁ~~~っっっ!!!」


―剣持の制服を着た、ロボットがいた。

剣持のおさげ…剣持の眼鏡……そのほか剣持の服装をしていた…が―


一ノ瀬「……え、えぇと…剣持、さん? それって、血液通ってるんですか?…」

一ノ瀬が引き気味で言うのもわかる。

剣持の肌という肌が全て機械だったのだ…。

手、脚、顔、腕、果てはうなじや耳たぶ、くるぶし、ひざ裏まで、機械になっていた。

走り「……ガチやべぇッス……」

東「…………」

開いた口が塞がらなかった…。





メカしえな「剣持しえな…ただいま参上! 無事、帰還しましたぁ~~~っっっ!!!」





…しかもなんかテンションが高かった…。



…これは、もはや治療というより、改造…じゃないのか……?


そんな疑問ですら、口から出ることもなかった…。





CHAPTER1



絶望ミョウジョウトロピカル



END







DEAD 2名


残り   11名







『プレゼントGET』


ヒビ割れた眼鏡

…神長香子の遺品。彼女が最期までかけていた眼鏡。ガラスにヒビがはいっている。しかし、着用は可能。眼鏡っ子属性が付加されて、一部のマニアやハイランダー症候群の子から支持される…かも…。ただ、着用すると、不思議とドジが多くなる。


髪留めとシュシュ

…寒河江春紀の遺品。オシャレに決めるには欠かせない小道具。シュシュは彼女特製で、ワイヤーも搭載されているため、痴漢撃退にぴったり! 髪留めも一緒につけるとオシャレアサシンに早変わり!? 女子力と暗殺力を高めよう!







TO BE CONTINUED………






と、いうわけで、CHAPTER1がようやく終わりました。

予定では150レス目ぐらいで終わるはずだったんですがね…

その場のノリで書いているので、学級裁判がきつかった…。(とくに武智の反論。あれ、これ、斬れなくね…? ってなったわ。番場でいくか迷ったくらい。だから、わりと武智の反論長いよね)

3日くらい確認したので目立つ矛盾はないと思いますが、あっても気にしないでくれると助かります。

オシオキって内容よりも、タイトルに苦労したな…。内容はあっさり決まったけど、サイコポップって雰囲気出すの難しい。

それでは、また明日か明後日に…あっ日付変わってたね。ま、いいや。

それと、兎角さんの突然の日向化が書いてて笑えた。

全然ポンコツじゃねぇしコミュ障じゃねぇ笑

アニメの兎角さんっぽいかな。無能時々有能な感じ。

ちなみに、キャラの絡みが多いのは、筆者の趣味です。もし会話してたらこんな感じかなぁ、というふうに。

モノクマタイマー発動まで、あと16日と10時間




CHAPTER2



トラウマシンドローム



(非)日常編



第一の島・コテージ


『えーと、ミョウジョウ学園修学旅行実行委員会がお知らせします…。オマエラ、グッモーニン! 本日も絶好の南国日和ですよー! さあて、今日も全開気分で張り切っていきましょう~!』

東「…………」

慣れというものはおそろしいもので、うっとおしく感じられたモノクマアナウンスを久しぶりに聞けて、安心した。

アナウンスが流れないことがどういう意味を持つのか、昨日身をもって体験したからだ。

昨日の悪夢から一夜が明けた朝である。

2名もの犠牲者を出した学級裁判は終わった。

東「…疲れがちっともとれた気がしない…」

二度寝しようかと考えたが、やめた。

不要な心配を起こすかもしれない。

無事を示すためにも、食堂には顔を出し続けよう。

そう思い、ベッドから出た。


食堂


首藤「おはよう」

東「…タフだな、お前」

信じられないことに、首藤がいた。

顔色は見るからに悪いが…。明らかに無理をしている。昨日あんな目に遭ったのだから、無理はない。

一ノ瀬「あっ……おはようございます、兎角さん…」

そして、こっちもだ。いつもの元気がない。滅入っているのかもしれない。

桐ケ谷「無事でなによりです…」

こちらはまだいつも通り。

生田目「おはよう、東」

なんだか久しぶりに朝で見た。

番場「……おはよう……ございます……です……」

今日はこいつもか…久しぶりに出席率がいいな。

走り「…………」

走りは私を見ていない。当然だろう。

なにせ―

メカしえな「はっはっはっはっはっ! おはよう、東っ!」

―人じゃないのがいたからだ。


昨日は衝撃的すぎて、ろくに話もできなかった。

むしろ、こっちがしゃべり通しだった。学級裁判について、話す必要があったからだ。

だから、こいつの話を聞くという目的も、あるにはあった。

しかし…なにから聞けばいいのだろうか…。

東「……武智は?」

メカしえな「それが呼びに行ったんだが、ボクの顔を見ると、泣きながら走ってどっかに行ってしまったんだ……なにかあったのか?」

うん、お前こそなにがあったんだ? あと、武智については十中八九お前のせいだ。

生田目「もはやなにも言えないよな」

桐ケ谷「むしろなにを言えばいいのかわかりません」

首藤「…ワシもじゃ…」

一ノ瀬「…えぇと、しえなちゃんは…あっ、名前って…」

メカしえな「剣持しえなで大丈夫だよ⁉ 改名はしてないぞ⁉ 改造はしたがな!」

あっ、たしかに…って、改造⁉

メカしえな「メカニカルジョークだ」

東「…………走り」

走り「勘弁してくださいッス…朝っぱらからこんなの相手に突っ込みなんてやってらんないッスよ…」

それもそうだ。

首藤「今朝はこれくらいかの?」

首藤、一ノ瀬、桐ケ谷、生田目、走り、番場、剣持(メカ)、そして私の8人。

欠席は武智、英、犬飼だ。
常連である。

メカしえな「んん? どうしたどうしたぁ? 浮かない顔をしてぇ? 不安があるなら相談に乗るぞぉ?」

こんなに面倒見良くない。

もっとネガティブで陰気なヤツだったと思う。

メカしえな「たしかに2人が死んだのは悲しい。でも、こういうときこそ希望を持っていくべきなんじゃないのか⁉」

そしてあつい…。

もっと冷めた陰気なヤツだったと思う。

メカしえな「…はぁ、まったく、しょうがない。ボクが皆を楽しませてやろう…」

こいつ、空気が読める…だと…?

もっとKYで陰気なヤツだったと思う。

桐ケ谷「なにかできるようになったんですか?」

メカしえな「いかにも。よぉく見とれ…」

メカしえなが身体を前傾姿勢にする。

メカしえな「ふおおおぉぉぉぉぉぉっ!」

な、なにをするんだ…⁉

すると、メカしえなの両目から――

メカしえな「どうだぁぁぁぁっ⁉」

――液体が出てきた。右目は白濁色。左目は濃紫色。

生田目「なっ⁉ お前、なに出してんだ⁉」

走り「キモッ⁉ いや、キショいッス⁉」

桐ケ谷「…こんなことが…!」

番場「……うっ……えぐっ……」

番場が泣いてしまった。

一ノ瀬「し、しえなちゃん⁉ なにそれっ⁉」

メカしえなは液体を放出するのをやめて、

メカしえな「ああ、これはな、右目が牛乳。左目は麺つゆだ」

走り「どういうことッスか⁉」

東「そうだ、カレーを出せ!」

一ノ瀬「問題なのは、そこじゃないよ、兎角さん⁉」

メカしえな「これでいつでもチーズや生クリーム、そばが食べれるぞ」

生田目「だからなんだっ⁉」

走り「前半は製造するッスよ⁉」

一ノ瀬「食べれるの⁉」

三者がそれぞれ反応をするが、ほぼ同時だったため、私には聞き取れなかった。
三人もお互いに顔を見合わせる。

桐ケ谷「三人とも、落ち着いてください。なにを言ったのかわかりませんよ…」

―が、

メカしえな「生田目、走り、一ノ瀬…君たちの言うことももっともだ。生田目、非常食に便利だぞ? 走り、製造もボクが自動でする。そして、一ノ瀬……食べれるぞ」

……なんだかハイスペックな気がしてきた。

メカしえな「昨日のことは聞いたよ。きっと絶望してしまっただろう。でもみな、忘れちゃいけないことがある。ボクらは仲間だ。ボクらの敵はモノクマのみ。ボクらはもう一度手を取り合うべきだと思う。………みな、希望を忘れちゃダメだ…」

……いいことを言っているんだろうけど、見た目がロボなせいで、集中できない。半分以上は上の空だが、雰囲気と見た目にのまれて何も言えなかった。

首藤「しかし、剣持。ワシらはこれからどうすればよい? 現状ではモノケモノ討伐もできんし、かといってモノクマになにかを仕掛けることもできん…」

現実に引き戻されて、ハッとする。

メカしえな「…それもそうだ。理想だけじゃ人はついて来ない。英は体調不良だし、あいつは裏切り者の存在をほのめかされてからは、ボクらと少し距離を置いている気がする」

番場がビクッと反応した。

まともなことを言っているのか?

…ダメだ、集中できない。

メカしえな「犬飼はショックで寝込み、武智も我を失っている。指揮官と戦闘兵を欠いた状態ではなにもできまい」

そこで切ると、

メカしえな「そう思っているね?」

首藤を見据える。…いや、目はトンボの複眼みたいになっているから、見ているかはわからないが…ともかく、顔を首藤に向けた。

首藤が一瞬おののく。

わかるぞ。話の中身じゃないよな。まず見た目だよな。

メカしえな「それは違うぞっ!」

なに⁉

走り「剣持さんが外も中も不気味ッス!」

生田目「人が変わったとはまさにこのことだな…」

桐ケ谷「人が変わるどころか、人間やめてますけどね…」

番場「…………」ビクビク

一ノ瀬「……しえなちゃん…」

一ノ瀬が同情してるよ。

首藤「…なにか案でもあるのか?」

メカしえな「ああ」

剣持は再び少しだけ前傾になると、



メカしえな「―もう一度、皆に希望を見せよう―」


そして、

メカしえな「ふおおおぉぉぉぉぉぉっ!」

両目から牛乳と麺つゆを再び吹きだす。

だが、その吹き出し方は尋常じゃなく、前方にいる私たちにもかかるほどの勢いだった。

走り「うげげっ⁉ ホラーッス⁉ B級ホラーよりもホラーッス⁉」

生田目「お前、なにをするんだ⁉ 狂ったのか⁉」

そうこう言っているうちに、食堂の床はどんどん白濁色と濃紫色に包まれていく。

私たちの足元にも液体が到達していた。靴の裏がっ……あとでしっかり洗おう。

一ノ瀬「ちょ、しえなちゃん⁉」

勢いは止まず、さらに加速している。液体が私たちの靴を飲み込まんとする。その間も私たちは飛んでくる牛乳や麺つゆにおののきながら―

桐ケ谷「みなさん! こちらへ! 避難してください!」

番場「…………っ」ガタガタ

東「番場、こっちだ! 首藤も急げ!」

隅で震える番場を抱え、いつもより足の遅い首藤の背中を押して、厨房の方へと走る。

首藤「ま、待てっ。そう急かすでない…っ」

一ノ瀬「兎角さん、こっち!」

一ノ瀬の案内で無事全員が厨房に繋がるドアに隠れる。

生田目「なにがどうなっているんだ…!」

桐ケ谷「わかりません…とりあえず、今のところ希望どころか、よくわからない絶望を見せられています」

私たちが避難したあとも、剣持はずっと両目から牛乳と麺つゆをすさまじい勢いで流し続ける。そのさまはまさに混沌―カオスだった。

走り「…………ここまでいくとなんだか冷静になるッスね♪ なんだかお花畑に見えてきたッス♪」

一ノ瀬「鳰っ⁉ 戻ってきて⁉ お願い、現実を見て⁉」

番場「……はなぶさ……さん……ぐすっ」

東「ばか…泣くな。別に死ぬわけじゃない。精々夢に出るくらいだ…」

首藤「…今夜はまた眠れそうにないのじゃ…」


剣持の周囲のテーブルや椅子が、液体に押されて壁に激突していく。


生田目「…ここまでなにが起こってるのかわからないのは、生まれて初めての経験だ」

桐ケ谷「なにをすればいいのかもわかりませんね」

一ノ瀬「説得しなきゃ! ……だよね?」

東「しかし直前までは味方みたいだったぞ?」

走り「……もう突っ込みやだッス…剣持さんまでボケになられたら、ウチは禿げてしまうッス…」

番場「……はげも……萌えに……なる、ます……」

首藤「…そういう問題じゃないじゃろ…」

メカしえな「はあぁぁぁぁぁっ!」

食堂の床一面が覆われて、ロビーにまで液体が行こうとしたとき―



モノクマ『うおぉいっ⁉ なにやってんの⁉』

モノクマが出てきた。

剣持がようやく液体放出をやめる。

モノクマ『なにがどうなっているんだよぉ⁉ なんで剣持さんは液体出してんの⁉ なんで皆は白と紫の液体でずぶ濡れになってんの⁉ サービスシーンならもっとエロチックにやれよ⁉ 透けてる服よりもまず床の液体に目がいくよ⁉』

メカしえな「すまない、モノクマ。掃除は任せる」

モノクマ『どゆこと⁉』

メカしえな「……乙女のたしなみさ……」

モノクマ『度を越えてるよ⁉』

モノクマがギャーギャーわめいているのをよそに、剣持がこちらに目線で信号を送る。

メカしえな『―君たちはシャワーを浴びて、着替えて、また食堂に来るといい―』

よくわからなかった。


そして、40分後


一ノ瀬「あっ、兎角さん!」

東「一ノ瀬か…ほかの連中ももう来てるぞ」

生田目、桐ケ谷、番場、首藤、走りがいる。

これで、全員が食堂にそろった。

モノクマの努力の結果なのか、〈メカしえな号泣事件〉で汚れていた食堂はすっかり綺麗になっていた。

テーブルや椅子の数はもちろん、元々あった場所に戻っていた。

生田目「…一生忘れない思い出ができてしまった…」

桐ケ谷「ぼくもです…」

走り「…うぅぅ…いやッス、こんな思い出…よりによって朝食会に出席したときに限って…」

首藤「あとで、モノクマにクレームをつけておこうかの…」

一ノ瀬「なんてクレームつけるの……?」

番場「……汁……反対……性格……反対……」

東「…どちらかというと、性格の方が問題だ」

剣持の処遇や評価について、談義に花が咲きそうになったころ―

メカしえな「やあ」

―元凶が現れた。

その場にいた7人全員がビクッと身構える。

メカしえな「はっはっはっ! 心配しなくとも、モノクマは来ないよ! だから、そんな不安そうな顔をするのはよすんだ」

お前せいだぞ?

メカしえな「さて、今日の活動だが―」

信じられないことを口にする。



メカしえな「第3の島の探索をしようか―」




回想()

走り「10分で倒したぁ⁉」

メカしえな「ああ。3番の橋の門番をしていた…たしか、ヘビのモノケモノを討伐してきた。印象に残ってなくて、すまない…」

桐ケ谷「…うそ、ですか?…」

メカしえな「くだらん嘘を吐く趣味はないよ」

生田目「一人でか? それも、さっきの間に?」

メカしえな「ああ、そうだ」

一ノ瀬「…あ、あの、ケガは?」

メカしえな「ない。無傷だ」

番場「……す、すごい……です……」

メカしえな「ありがとう」

東「……どうやって…」

メカしえな「ボクの身体を飾りだと思っているのか? この身体は見せかけじゃない」

首藤「……おぬし……」

メカしえな「言っただろう? 希望を見せると…」



―イケメンかと錯覚した。



回想(終)



と、いうわけで、急遽第3の島の探索をすることになった。

メンバーは、首藤、桐ケ谷、生田目、一ノ瀬、走り、剣持(メカ)、番場、そして私の8人。


新たな情報が見つかることを祈って、橋を渡った。


第三の島


なんだか今までの島と雰囲気が違うな…

住居と廃墟がごちゃごちゃと立ち並んでいて、リゾート地って感じがしない。

そして、ヒトの気配は相変わらずしない。

なんかちょっと危なげな気もするし、警戒した方がよさそうだな。

首藤「手分けして探すかの…」

生田目「集合時間はどうする?」

剣持「またお昼時にホテルの食堂がいいかと思います」

メカしえな「それに賛成だ!」

走り「普通に賛成してくださいッス」

一ノ瀬「あ、あはは…なんだか調子狂っちゃうね…」

東「まったくだ…」

番場「……レッツ……ゴー……」


映画館のロビー


西部劇の酒屋のような雰囲気の映画館だ。

東「ん? なにか上映しているのか?」

モノクマ『ウププププ。気になっちゃう? 私、気になります! ってか?』

東「何の用だ」

モノクマ『オマエも映画見る? 今ならタダだよ?』

東「死んでも見るか」

モノクマ『ウププププ。強がっちゃってまぁ、ホントは死ぬほど見たいんでしょ?』

東「死んでもいやだ」

モノクマ『死んでもツンデレだね。あとで後悔するよ』

東「そんなことは死んでもない」

バンッと映画館の劇場の扉が開けられた。


メカしえな「簡単に死んでもって言うな!」


…………。

お前が言うと説得力あるな…。いや、ないのか? 死んだのか? よくわからない。

モノクマ『ウププププ。どうだった?』

メカしえな「さいこーだったっ!」

モノクマ『でしょでしょ~?』

メカしえな「冒頭のモノローグから気分は最高潮だったよ! モノクマの周囲の環境から冒険に出るきっかけ! このモノミというやつはなんてヤツなんだ! いかんともしがたい気持ちを抑えるのでボクは精いっぱいだったぞ! 案山子の首つりやライオンの磔、ブリキのバラバラは見ごたえあったぞ! 臨場感に満ち溢れていた! これは見なきゃ損だな! 今年有数の傑作だ!」

モノクマ『ウププププ! だよねぇだよねぇ!』

チラチラと私を皆がら二人が会話する。

…剣持はホントにどうしたんだ…キャラ崩壊どころじゃないぞ…。

モノクマ『はい、これ』

東「ん、なんだこれは?」

私はチケットをモノクマから渡された。

モノクマ『そのチケットがあれば見れるからさ。でも注意してね? そのチケットはある特定の映画が放送されるときに直前に一人1枚しか配らなーーーっ⁉』

目の前で予告表のように、ビリビリに破いた。

モノクマ『な、なにしてんのさぁ~⁉ そこまでするかぁ⁉ ヒトが…じゃなくって、クマが一生懸命頑張ったものを―!』

東「見るはずないだろ…」

私は掌をパンパンはたいてチケットを床に捨てる。

―ん? 予告表? なんだそれは…。

モノクマ『…うっううう…ひどいよ、あんまりだよ…ブルーだよ、超ブルーだよ…』

ショボーンと口ずさみながら、モノクマは煙のように消えた。

メカしえな「フッ、芸術とは万人に理解されるように作られてはいないのさ…」

メカしえなはさぁて、もう一度見るか、と言って再び入場する。

……あいつは早くなんとかして、戻してもらった方がいいな…。

それと、探索はどうした。



電気街


路地裏のような細い道の奥に、電化製品を置いた露店が密集している。
機械や部品が所せましと並べられてて、怪しい香りがプンプンするな。
だが、通信に使えるものがあるかもしれない。

桐ケ谷「東さん」

生田目「なにか発見したか」

東「メカしえなのやばさを発見したくらいだ」

なんだそれ、と笑う生田目とそれをいとおしそうに見つめる桐ケ谷。

東「そっちはどうだ?」

生田目と桐ケ谷は盗聴盗撮コーナーにいた。

生田目「ああ、今だと、盗撮機器と盗聴機器しか見ていない。モノクマの監視カメラやモニターもここのが使われているぞ?」

ふぅん…なら、使えそうなのはないのか…。

桐ケ谷「残念です…折角千足さんの―」

そのまま口をつぐみ、言葉を切る桐ケ谷。

生田目の…なんだ。なにを言う気だったんだ…。

3人一緒に隣のテレビコーナーを見る。
ブラウン管のテレビ。地デジ対応はしていない。テレビ電波がそもそもないか。
…とくに目新しいものや、役に立ちそうなモノはないな。

生田目と桐ケ谷が、バラエティは見ますか? だの、殺人事件しか見ない、だの、どうしてですか? だの、私の標的の情報が流れるかもしれないからだ、だの、一ノ瀬さんが目的じゃないんですか? だの、エンゼルトランペットだ、だの、え? だの、いちゃいちゃしだしたため、放置してテレビコーナーに放置して、先を行く。
ちなみに、会話の流れはとぎれとぎれだった。スムーズに運ばれていなかった。2人とも話にくい内容でもしているのか…。

次は、パソコンコーナーだ。

デスクトップ型にノートパソコン型が乱雑に置かれている。
使えるかどうか確認するために電源を入れてみようか。むしろ、それくらいにしか私はできない。
…ネット回線にはつながっていないようだ。うんともすんとも動かない。

生田目「コンセントが刺さってないぞ」

え?

パソコンの画面がついた。

生田目「電池が0だったみたいだな」

…………。

デスクトップを見るが、目ぼしいものはない。やはり、こんなものか…。

生田目「ん? おい、そこのアイコン」

指さされたところを見ると―

アイコン〈モノクマXファイル〉

―と、あった。

生田目「それ、ひょっとすると、重要な情報になるんじゃ―って、なんだ?」

東「…なんでもない」

生田目は気づいたのに…という気持ちが湧き出たが、抑えられた。当然だ。そこまで短期ではない。
そう思いながら、クリックすると、文章ファイルが羅列する。





タイトルは――〈10年黒組の報告書〉――





『10年黒組の裏オリエンテーションが終わった翌日に、武智乙哉が動いた。ターゲットに予告表を出す。生け花が得意な武智ならではの方法をとった。例を挙げるならば、強い神経毒を有するゲルセミウム・エレガンスという花を用いたり、ハサミという特徴的で一般的には理解されにくい凶器を用いた。しかし、結果的に敗退。なお、退学に反抗的な態度をとったため、*%の技を用いて拘束。退学とした。次に動いたのは、神長香子。彼女は―』

…なんだこれ?

知った顔の、知った武器や知った戦い方が文章として流れる。

『―生田目千足。彼女は一ノ瀬晴を標的としておらず、別の人物をターゲットにしていた。それは、エンゼルトランペット。彼女が10年黒組に参加すると予想したのである。そして、その結果@$&4%#!¥。それと関連して、桐ケ谷柩の名も挙げておこう。彼女の武器は銃を改造した+*☆◇○△で、彼女は剣持しえなと同時に動いた。そのため、二人の間で争いが起こった。4¥7が@%$8に負けたのである。彼女は退学となり、彼女は文化祭に一ノ瀬晴を狙った。生田目千足が真相を知ったために、彼女は動かざるを得なかったのだ。なぜなら、桐ケ谷柩は$◇#!○%&*△+¥☆――』

ここからは文字化けしていて読めなかった。

…………。

わかったのは、武智乙哉、神長香子、寒河江春紀、生田目千足、桐ケ谷柩、剣持しえな、一ノ瀬晴の間になにかがあったこと。

そして、それは黒組に関係すること…だ。

だが、私にはなんの覚えもない。神長と寒河江もいない以上、ほかの5人に確認するしかないのか…。

生田目「…なんだこれは? 日記か? それにしては随分素っ頓狂な内容だな」

東「ああ。武智の趣味が生け花だとか、神長が暗殺者を養成するホームの出身だとか…冗談にしては出来が悪いな」

桐ケ谷「…………」

生田目「桐ケ谷? 大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」

桐ケ谷「いえ、大丈夫です。ただ、眠気が襲って来たので、一足先にコテージに戻ってますね」

生田目「あっ、桐ケ谷!」

生田目の呼びかけに応じずに、桐ケ谷は速足で去っていった。

…なんだ、あいつ?

生田目「…桐ケ谷…」

……とりあえず、これは走りに一度確認しておいた方がいいか? あいつは裁定者で本来なら主催者側だったらしいからな。これについてなにか知っているかもしれない。できれば、誰が書いたかとかわかればいいが…。

ほかのコーナーも確認した。部品コーナーと携帯電話コーナーだ。

部品コーナーは、色んな電化製品がゴチャゴチャと並んでいる。家電に音響機器にオモチャに…色々ある。だが、どれも古ぼけていた。

携帯電話コーナーは旧型のばかりで時代を感じた。当然動かなかった。そして、生田目が静かだったために、探索は5分で終わった。

生田目「私はもう一度じっくり例の報告書を見てみる。なにかわかることがあるかもしれない。桐ケ谷の調子がおかしくなったのは、明らかにあのときだ」

とかなんとか言っていたため、生田目を置いて先に進んだ。


モーテル・中庭


車があった。ボロボロに錆びて朽ち果てていた。どう見ても動かない

東「…………」

この場には誰もいない。一ノ瀬はどこだ。尾行をするべきだったか…?

モーテルの中か?

モーテルは、似たような個室が並んでる。きっと中も同じようなもんなんだろう。暗くて薄汚れてて、犯罪映画でよく見るような部屋に違いない。

どこから見ようか、と思っていたところ、中からぐぐもった声が聞こえた。

東「なにがあった⁉」

バンッとドアを開ける。中にいたのは―

首藤「…東か。恥ずかしいところを見られたの…サボりをしているつもりはなかった。探索をしてくる」

首藤が私のそばを通ってモーテルの外に出る。

いくら首藤ほど目ざとくないといえど、武智ほど視力が良くないとはいえど、さすがにきづいた。

首藤の目から一筋流れていたもの。

東「…………」

泣いていたのか? あの首藤が?

気にはなったが、しかし、追いかける気にはならなかった。

ライブハウス・駐車場

やたらと下品でケバケバしいネオンに彩られた、見るからに怪しげな建物だ。

東「この中も確認しておくか…あまり気分は乗らないな…なんだか腐った海の気配がする」

しかし、ここを避ける理由にはなるまい…

私は意を決して、屋内に入る。


ライブハウス


走り「イヤっほおおぉぉぉっっっ!!!」

思っていた通りだ。

走りが両手を大きく広げて叫んでいた。

走り「あれっ? 兎角さんじゃないッスか。こんなところに来るんスね!」

東「…探索だからな。お前はなにか調べたのか?」

走り「ん~と、あそこバーは基本なんでもそろってるッス。酒まであるッスよ」

東「…あいにくと私は未成年だ」

走り「って、真面目かいっ⁉ もう、暗殺者の時点で無法者の部類なんスよぉ、ウチらは?」

東「…わかってる。が、わざわざ破る必要もあるまい」

走り「かーっ! なってないわぁ。兎角さん、修学旅行とかでも夜寝るときに同じグループの皆がまくら投げしようぜっ! って言っている最中に一人だけ現実的なこと言って場を白けさせるタイプっしょ?」

東「…そんなことない」

走り「ぬふふ。もう想像できるッスよぉ? 兎角さんがボッチで隅に…って、ああ、元からッスかね…って、あぶな⁉」

ナイフが走りのすぐ上を通り抜ける。走りが咄嗟に避けたからだ。

走り「普通顔面にナイフ投げるッスか⁉」

東「時と場合による。私も周囲をうろつく鳩がいたらナイフの一つや二つ突き立てる」

走り「言い訳の内容テキトーすぎッスよ⁉」

ギャーギャーわめく走りを追いかけながら、ナイフを投げる私。数分か十数分か、命がけの追いかけっこをした。


ところで、倉庫も調べておいた。

ドラムセットやらギターやらいろんな楽器が並んでいる証明や壁紙やカーテン、ペンキもある。

私たちの役に立ちそうなものはなかった。


病院・ロビー


なんかホラー―映画に出てきそうな雰囲気だな。絶対にここのお世話にはなりたくない。

だが、こんなナースだったら、今すぐ骨を折る。

一ノ瀬「あっ、兎角さん!」

東「一ノ瀬」

私が入口から入ると同時に、一ノ瀬が奥のドアからロビーに入ってきた。

一ノ瀬「どうだった?」

東「ろくに見つからなかったよ。大した成果はないな」

一ノ瀬「晴は…微妙」



一ノ瀬「包帯や点滴、患者服があったよ。だからケガしても大丈夫だと思う。もう…剣持さんのようにはならないと思うよ?」

ああ、あれか…。

あれは、まあ、うん、例外だろうな。

一ノ瀬「でもさ…それって、皆ケガをするってことだもんね…晴は、もう無駄な血が流れるのは見たくありません…」

東「…一ノ瀬」

たしかに、よくよく思えば、一ノ瀬だけは暗殺者ではないのだ。そう思うのも無理はない。

すると、場の空気が澱んだのを察知してか…。

一ノ瀬「あっ、兎角さん! 病院の2階に行こっ!」

と、言われて、手を引かれる。

手を引かれているだなんて…夢のようだ。この夢が永遠に続きますように…。

…にしても、一ノ瀬って、意外と力強いな…。

病院・2階の休憩室

段ボール箱が山積みになっていた。中身はみたところ医療品が主流だった。患者服は何着が雑に置かれていた。

番場「……東……さん……」

番場もいたのか。

一ノ瀬「番場さん、ナース服着てみたいんだよね?」

番場「⁉」

東「そうなのか?」

一ノ瀬「うん、だと思うよ? チラチラナース服見てほほ笑んでいたし…」

番場「…あ、ああ、み、見てた、んですか?…」

一ノ瀬「う、うん、もしかして、ダメだった?」

番場「…………」

番場がゆでだこのように顔を真っ赤にしていた。恥ずかしいのだろう。

一ノ瀬「ほら、ちょうどあるんだし、着たら?」

番場「……えっ……いやっ……あのっ……」

一ノ瀬「大丈夫。絶対似合うって!」

番場に着せようとする一ノ瀬が鼻息を荒くしている。
番場はその一ノ瀬に少々ヒイてしまっているようだ。

一ノ瀬「番場ちゃん! 服脱いで!」

番場「えっ、いや、あの、あのっ」

東「もうその辺で―」

一ノ瀬「ほらほら!」

番場「…うっ、うう、うぐぐぐぐぐ―」

東「? 番場?」

一ノ瀬「番場ちゃん、きっと楽しいよ?―」

番場「るっせぇ、てめぇは黙ってろ…っ!」

一ノ瀬「え?」

東「な⁉」

番場「ナース服はたしかに真昼の夢だけどなぁ…っ! それはオレの役目なんだよ…っ!」

一ノ瀬「…え、えぇと、真昼ちゃん?」

東「違う! 真夜だ!」

番場「ったくよぉ…っ! まだオレの時間じゃねぇってのによぉ…っ! 呼ばれて出てきちまったじゃねぇかぁ…っ!」

一ノ瀬「え、あ、う、うん。ご、ごめんなさい…」

東「番場、一ノ瀬も反省しているようだし、許してやれ」

番場「……はっ!」

番場が休憩室から出ていこうとする。

一ノ瀬「あっ、待ってよ、番場ちゃん! どこ行くの⁉」

決まってんだろ? と番場(夜)。

番場「もうすぐ正午じゃねぇか…っ! ホテルに戻んだよ…っ!」

東「…ナース服は真昼の夢じゃないのか?」

番場「今度英と一緒に来るぜ…っ!」

…あっそう。

>>299の剣持は桐ヶ谷かな?

>>308
ホントだね苦笑

くだらんミスしてすまないorz


第1の島・食堂


英「おはようございます」

生田目「珍しいな…」

英が食堂の一角でお茶をしていた。

番場「英…っ! お前、体調はいいのかよ…っ!」

英「⁉ ば、番場、さん? …真昼さん、ですわよね? …真夜さんのマネ、ですか?」

英がひどく狼狽していた。

番場「なに言ってんだぁ…っ? オレがわからねぇのかよぉ…っ!」

英「いえ、もちろん真夜さんだとはアナタが『英』の『は』の字を発音しようとした口の形でわかりましたけれど…少々驚きました…!」

そんなところで気づくのか…? ヘンタイだな。

走り「ちょうどいいッスね! 英さんも交えて報告会といきましょうか!」

メカしえな「それに賛成だ!」

英「…一日経っても慣れませんわね…って、報告会? なんのですか?」

首藤「第3の島じゃ」

英「え? 行けるようになったのですか?」

桐ケ谷「はい。メカしえなさんが一人で橋を開放しました」

英「…アナタ、そんなに強いの?」

メカしえな「ふふん?♪」

胸を……じゃなかった、装甲を張るな。

英「義手じゃなくて…全身サイボーグ………アリですわね!」

なにがだ?

メカしえな「ボクの目からはビームが出るからな。口からはレーザー。両手もポーズを決めれば光線が出る。それでモノケモノは倒した」

一ノ瀬「それ、全部同じじゃない?」

メカしえな「ほかにも色々機能があるぞ? たとえば―」

バンッ! ポッポ―。ポッポー。

メカしえなの胸が開いて、鳩が時計を抱えて出てきた。その時計は正午をさしていた。

メカしえな「ちょうどいいタイミングだな。これだ! 目覚まし時計にもなる、電波時計だ!」

走り「…いらね~!」

メカしえな「そんなことはないぞ? インスタント食品を作るのに便利だ! 欠かせないぞ!」

インスタント食品をこの島で食う機会が来るのか?


メカしえな「あとはこれだ!」

メカしえなが口を大きく開ける。…と、わずかに光を感じた。

英「なにしてるんんですか?」

メカしえな「…………」

番場「おい、シカトこいてんじゃねぇ…っ!」

メカしえなが口を閉じる。

メカしえな「違う! ボクの口は懐中電灯になっているんだ!」

桐ケ谷「なんですか、それ…」

メカしえな「ただこれは懐中電灯として使用している間、ボクはしゃべれないという欠点がある」

東「使い道がないどころか、論外だな」

メカしえな「だがそれはボクの口の欠点であって、ボクの欠点ではない!」

一ノ瀬「え、ええぇぇっ⁉ そんな強引な……」

生田目「…もう見てられないな…」

メカしえな「英。ロイヤルミルクティーを飲みたくはないか?」

急になにを言い出すんだ?

英「は? あっ失礼。えっと、なぜ急に?」

メカしえな「見ればわかる」

メカしえなはそう言って、右目から牛乳、左目から麺つゆを出す。

英「…………」

英が無言で両手をパンパンと叩く。

モノクマ『お呼びですか?』

英「来なさい」

英がモノクマの手を握って、厨房の奥へと行く。

メカしえな「はっはっはっは! とうとう英も嫉妬のあまりお願いしにいったか! 君たちも遠慮せずに行くといいぞぉ?」

東「誰が行くか!」

一ノ瀬「あれ、英さん怒ってた?」

それ以外に喜んでいるとしたら、人間の表情は複雑すぎるな…。

走り「で、今度は誰がこれ片付けるんスか?」

メカしえなが出した2種類の液体を一瞥する走り。

番場「オレがやる…っ!」

マジか。

一ノ瀬「晴もやるよ!」

生田目「私も手を貸そう」

メカしえな「ボクも行こう! ボクの吸引力は世界で唯一落ちなくなったのだ!」

番場と一ノ瀬と生田目とメカしえなが掃除道具をとりに食堂を去る。

首藤「…………」

桐ケ谷「…………」

走り「……なんかあの2人、静かじゃないッスか?」

東「さあな」

私も遅れて掃除の手伝いに行った。


そして10分後……


モノクマ『ショボーン……』

モノクマが煙のように消えた。わざわざそれだけ言って消えた。

英「〈10年黒組の報告書〉……そんなモノがあったのですね」

桐ケ谷「はい」

生田目「走りは身に覚えはないか?」

走り「う~ん、ちょっと直接見てみないとわかんないッスね~。聞いただけじゃなんとも…でも、ウチらが開催するはずだった名前ッスね」

番場「オレたちの役に立ちそうなのは、それくらいしかなかったぜ…っ!」

首藤「収穫は少ないの…」

一ノ瀬「でも、きっと脱出に近づいてるよ!」

メカしえな「希望は前に進むのだ!」

英「皆さん、毎度のことながら申し訳ありません。わたくしも体調が良くなったので、少し探索に―」

番場「あ、ならよ、病院に行こうぜ…っ!」

英「? なにかあったのですか?」

番場「ナース服があった」

英「⁉」

番場「少しでいいから着てみようぜ…っ!」

英「⁉ お、お誘い、ですの?」

番場「あん? ダメか?」

英「むしろご褒美ですわ!」

英と番場が並んで食堂から出て行った。真夜さん、大胆💕 という英の声が聞こえた。

生田目「…桐ケ谷?」

桐ケ谷「…すいません、ボク、少し疲れたのでコテージで休んできます…」

桐ケ谷も食堂から出て行った。

メカしえな「ボクもご飯を食べにロケットパンチマーケットに行ってくる」

一ノ瀬「え⁉ ご飯食べてたんですか⁉」

メカしえな「ああ。レギュラーで満タンだな」

車かよ。

メカしえな「なんてのは冗談だよ、はっはっはっは!」

…うぜぇ。

メカしえな「コンセントと充電器があれば大丈夫さ」

そこはアナログだな。

メカしえなも高笑いしながら食堂から出て行った。

走り「高笑いは死亡フラグッスよ……」

一ノ瀬「死なさそうだけどね…」

そういえば、メカしえなを破壊したら、殺人か? そのあたりの説明はモノクマからまだ聞いていない。

首藤「……では、各々自由行動じゃ」

首藤の発言をきっかけに、全員食堂から出た。


第1の島・ホテルのプール


走り「いやぁ~にしても、困ったッスね~」

一ノ瀬「なにかあったの?」

走り「いやだって~。首藤さんに桐ケ谷さん、千足さんの元気のなさ! どう見ても雰囲気悪いッスよ~。おまけに剣持さんはアレですし…」

東「たしかに、なんとかしたいところだな…」

今この場には、一ノ瀬と私と走りしかいない。

走り「犬飼さんはコテージ。武智さんは…今頃どこにいるのやら」

一ノ瀬「武智さん、ショックだよね。親友があんな目に遭っちゃって…」

東「それは、首藤もだろう」

一ノ瀬「……うん」

走り「だとするとぉ、桐ケ谷さんと千足さんが謎ッスね。なんであんなに…って、あれしかないッスね」

東「ああ、〈10年黒組の報告書〉。あれを見た直後から2人…主に桐ケ谷の様子がおかしくなった。ホントになにも知らないのか? なにか隠してるだろう?」

走り「兎角さん! ひどいッスよ! ウチを信じるッス! ほら、ウチの目は嘘ついてる目ッスか⁉」

東「目はわからんが…臭いはそうだ」

走り「まだ言うんスか⁉ 海の近くにいるのに、その臭いに勝つウチの腐海臭って、すごいッスね⁉」

一ノ瀬「それにしても…なんで2人は落ち込んでいるんだろう?」

走り「も、もしかして、動機ッスか⁉」

バカな…いくらなんでも早すぎる…。

一ノ瀬「…でもさすがに地味すぎない?」

東「地味?」

一ノ瀬「タイミングがさ。前回は晴たち全員が絆で結ばれていたときだったんだからさ…今回もきっと同じようなタイミングだと思うな…」

走り「ええ⁉ だとすると、ウチらは楽しめないじゃないッスか⁉ 楽しむと動機発表って…生き地獄ッスよぉ!」

走りがハァ…と落ち込む。

先手を打つべきか?

しかし、イベントを主催するのが多い首藤があの様だ…参っているヤツに負担はかけられないな。

英か…いや、いっそ人頼みせずに私が…無理だな。

ふと、走りが『コミュ障ッスね、兎角さんwwwwww』というのが脳裏に浮かんだ。

チッ……私の幻想のくせに腹立たしい。

私一人では無理だが、一ノ瀬、走り…それにもう一人ムードメーカーがいればなんとかなるだろう。

ムードメーカーといえば…。


東「……武智を探そう」

走り「へ?」

一ノ瀬「武智さん?」

東「一ノ瀬と武智と私と走りの4人で催しモノをしよう。こんなときだからこそ、楽しむ必要があるんだ」

走り「ほぉ~兎角さん、なかなか鬼畜な提案ッスねぇ~。でも、ウチは好きッスよぉ、そういうのぉ♪」

一ノ瀬「うん! 晴もやる! 絶対皆喜ぶよ!」

東「決まりだな」

とりあえず。武智のコテージでも寄るか…。

武智のコテージに立ち、インターホンを鳴らすが、応答はない。

東「…だろうな」

走り「うわあぁ…1・2・中央の島。それとひょっとしたら3の島も探す必要があるんスか…もう面倒ッス…」

東「…牧場にでもいるんじゃないか……って、一ノ瀬?」

一ノ瀬が武智のとは別のコテージの前にたたずんでいた。

走り「…は~ん、なるほどぉ。晴がなに考えてるのかウチにもわかったッスよぉ」

東「犬飼か…」

犬飼のコテージの前に一ノ瀬がいた。

一ノ瀬「声かけちゃダメかな?」

そんな聞かれ方したら、ダメなんて言えない。

インターホンを鳴らす。

反応はなかった。

東「ダメか」

走り「もしくはお出かけッスね」

一ノ瀬「伊介さん…」

すると―

ガチャ

―ドアが開いた。

一ノ瀬「伊介さん!」

だが、出てきたのは、




???『ウププププ』



モノクマ『ボクだよ! モノクマだよ!』

東「お前! なんで!」

私は咄嗟に一ノ瀬をかばうように前へ出る。

モノクマ『心配なら入ってあげればぁ?』

モノクマがニヤニヤしながら、ドアから離れる。犬飼のコテージ内は真っ暗だった。部屋の電気が点いていない。

走り「えぇ……どうするッスか? これ、パンドラの箱じゃないんスか?」

一ノ瀬「…行こう! 伊介さんが心配だよ」

東「…確認するか…」

私は走りの背中を押す。

走り「…って、ウチが先に行くんスかぁ⁉」

東「なにか来たら危険だろう」

走り「露骨な人権無視⁉ 兎角さんと英さんってウチに厳しいッス!」

一ノ瀬「もう、2人とも、遊んでないで行くよ…」

モノクマ『…ウププププ』

犬飼のコテージに入った。


犬飼のコテージ


犬飼のコテージの電気を点ける。
犬飼のコテージはまったく荒れていなかった。
所持しているものというのに持ち主がどういう人間なのかがはっきりとわかるようで、今回もその例にもれず表していた。

まず、化粧台があった。
美容液やハンドクリーム、マニキュアなどが並んでいる。私はこっち方面には疎いため、描写はこの程度に…。

部屋全体がピンクだった。カーペットやお手洗いやお風呂の位置を示す看板がピンク色である。また、タンスやベッドにはハート形の布やシール、ハート模様の布団などが使われていた。

そして、その布団がこんもりと盛り上がっていた。ちょうど、人1人隠れられるくらいの…。

一ノ瀬「い、伊介さ~ん…?」

布団が動かない。

走り「狸寝入りッスかね~。それともマジ寝?」

東「起きているだろう」

一ノ瀬「ど、どうして?」

東「モノクマが中にいただろう? ルールその4:引率の先生が生徒達に直接干渉する事はありません。ただし校則違反があった場合は別です…って、電子手帳にも書いてある。だから寝ていたら、それは干渉だろう」

走り「と、兎角さんが有能ッス! ウチは夢でも見てるッスかぁ⁉」

一ノ瀬「い、言い過ぎだよ、鳰! きっと、正夢だよ!」

東「それも夢だぞ、一ノ瀬…」

???「う、うるさいわね~」

一ノ瀬「あ」

布団がもぞもぞと動いて、住人が現れる。

犬飼「…眠いんだから、放っといてよ…」

一ノ瀬「伊介さん…」

約1日ぶりに見た犬飼は顔に疲れが見えていた。
髪などの身だしなみは整えられてはいるものの、目は充血していた。

走り「…あ~、もしかして、泣いてました?」

犬飼が走りを睨む。

犬飼「で、なにしに来たわけ?」

以前よりもやや態度がキツイ…。

一ノ瀬「う、あの…その…」

一ノ瀬がすっかりおびえ切ってしまっていた。可愛い…じゃなくて、かわいそうに…。

東「姿を見せないから心配していたんだぞ」

犬飼「余計なお世話よ…」

走り「ウチらの前に姿見せてほしいッスよ」

犬飼「見せれたら見せるっての…」

一ノ瀬「…伊介さん」

犬飼「…なに?」

東「……悪い、なんでもない。行こう、一ノ瀬、走り」

犬飼のコテージから出た。

嫌味や高圧的な態度をとられたが、不思議と苛立ったりはしなかった。
犬飼が弱り切って、おびえているように見えたからだ……。
小さい子が自分の崩れかかった城を守るのに必死で、周囲の手助けに気づいていないみたいだった。

犬飼は今、自分のことで手いっぱいなのだ。


一ノ瀬「…伊介さん、あんなに…」

走り「ありゃぁ予想よりもひどいッスね…」

東「…なんとかしないとまずいぞ…モノクマにそそのかされたりでもしたら…」

モノクマ『ピンポ~ン!』

東「…モノクマ⁉」

モノクマ『東さんが正解を言いかけていたので、ネタバレをば。実は~ここだけの話ね~? 昨日からずっと犬飼さんに絡んで殺人をそそのかしているんだけどねぇ~? 絶望度合がボクの想像よりも上だったのか、見てもらった通り、すっかり絶望しているんだよ。脱出するという希望も忘れてね…ウププププ!』

東「…お前…!」

一ノ瀬「そんなことないよ!」

モノクマ『はにゃ⁉』

東「…一ノ瀬…?」

一ノ瀬が私と走りよりも一歩前に出て、モノクマと対峙する。

一ノ瀬「伊介さんは強いよ! 今だって、希望への準備期間なんだから…! モノクマさんは黙ってて!」

走り「おぉふ、晴…思っていたよりもピュアッスね…」

モノクマ『ウププププ。まぁいいや。ボクは今からまた犬飼さんを励ましてくるね』

東「ま―」

モノクマは煙のように消えた。

東「―て! ……くそっ!」

走り「足だけは速いッスね。足じゃないッスけど…」

一ノ瀬「…………」

東「…一ノ瀬」

一ノ瀬「…武智さんを探そう!」

一ノ瀬が振り向く。

一ノ瀬「皆の希望を取り戻そうよ!」

一ノ瀬の目が輝いて見えた。


牧場


武智「…うっ…ぐすん、ぐすん……」

武智が鶏を抱いて、座り込んでいた。
鶏が苦しそうに暴れるが、武智はまったく動じない。

一ノ瀬「武智さん」

武智「あ、晴っち…兎角サンに、鳰ちゃんまで…」

顔をあげた武智は涙を流していた。

東「…元気は出そうか?」

武智「…微妙…」

走り「武智さんがいないと、話し相手がいないんスよね~。今伊介さんもグロッキーッスから…」

武智「…それもそうだね…」

東「…なにをそんなに落ち込んでいるんだ?」

武智「…だって、しえなちゃん、あんな身体になっちゃって…あたしのせいで…」

一ノ瀬「それは違うよっ!」



武智「え?」

一ノ瀬「武智さんのせいじゃないよ! 武智さんを守って剣持さんはメカしえなちゃんになったんだよ⁉」

武智「う、うん。だからあたしのせいで―」

一ノ瀬「それは違うよっ!」



一ノ瀬「武智さん、まずお礼じゃないの⁉ ちゃんと言った? メカしえなちゃんに…」

武智「…それは、まだだけど…でも、どんな顔して会えばいいか…!」

一ノ瀬「そんなの決まってるよ」

武智「え?」

一ノ瀬「笑顔だよ。笑顔でありがとうって…言えばいいんだよ…」

武智「笑顔で? ……それって、嫌味に聞こえない?」

一ノ瀬「嫌味で言うの?」

武智「や、それは違うけどさ…」

一ノ瀬「じゃあ、大丈夫だよ。それに、武智さんが嫌味だと思うのは、申し訳なさがあるんじゃないの? もし、そうなら、ごめんなさい…って、言うべきだと晴は思うな。きっとメカしえなちゃんは許してくれるよ…」

武智「晴っち……」

走り「許す側の剣持さんに度肝抜かれるかもしれないッスけどね…」

東「走り、今は静かにしてろ…」


武智「……そう、だよね。まずは、面と向かってお礼だよね…あたし、まだ言ってないや」

東「武智…」

武智「それと、やっぱりごめんも言わなきゃだよね…だってあたしの油断が招いた結果だし…」

走り「武智さん…」

武智「ちゃんと言わなきゃ…落ち込んでる時間じゃないよね…うん、少し、元気出た…」

一ノ瀬「武智さん…」

武智「生身の身体じゃなくなって、少し愉しみが減ったけど、それでもあたしの大切な人だもんね♪」

ああ、そうだ……ん?

武智「でも、ある意味バラす愉しみがあるかな…♪ 今までとは違う快楽が♪ ……ハァハァ」

走り「ヘンタイッス⁉」

一ノ瀬「あ、あの~武智さん?」

武智「ありがと、晴っち♪ しえなちゃんに会ってくる♪ で、ちゃんと言うよ♪ ありがとう、と、ごめんなさい♪」

一ノ瀬「そ、そう? 良かったよ…」

武智「じゃ。鶏さん置いてくるね~♪」

またあとで~♪ と言いながら、走って鶏小屋に向かう武智。

一ノ瀬「…よ、良かったの、かな?」

走り「ぶっちゃけ、ノープロブレムじゃないッスか?」

一ノ瀬「ホント?」

東「ああ。上出来だぞ、一ノ瀬」

一ノ瀬「…えへへ~」

か、かわいいっ⁉

走り「じゃあ、とりあえず、どうするッスか? ウチは武智さんと一緒に動くのもありッスけど…?」

一ノ瀬「ダメだよ! 武智さんは一人でメカしえなちゃんと会うから!」

東「…武智のリアクションが気になるな…」

走り「ッスよね~! 剣持さんの性格の変わりようを目の当たりにしたときの武智さん……くぅ~っ! 野次馬根性が生まれるッスよ~!」

東「元からあるだろ」

だが、わからないでもない。

一ノ瀬「もぅ! 2人とも、千足さんと柩ちゃんの様子でも見に行くよ!」

私たち3人は牧場を離れた。







武智「…………晴っち……いいな……うふふっ…………ゾクゾクしちゃう……っ」

自分の全身を抱きしめている者から何を察知したのか、鶏が暴れるのをやめて大人しくしていた。鶏はおびえているようだった。







第1の島・フィールド


一ノ瀬「どこにいるんだろうね、2人は…」

走り「今はきっと別行動してるッスからねぇ~」

東「思い当たるところからまわるか」

走り「人海戦術ッスね!」

一ノ瀬「そんな大袈裟な……柩ちゃんはどこだろう? 想像もつかないや」

走り「それを言うと千足さんもそうッスよね」

東「…2人はデートスポットのようなところに向かうだろうから…ライブハウスか映画館か…?」

一ノ瀬「そんな判断材料なんだ⁉」

走り「んじゃあ、そこに行きますか!」

第3の島・ライブハウスの中

一ノ瀬「…いないね」

走り「まあ、しょっぱなから見つけられるわけねぇッスよね…道は長いッス」

一ノ瀬「でも、ここってライブハウスというよりは舞台みたいだよね…」

走り「兼用みたいッスね」

一ノ瀬「歌だけでなく、踊りとかもできそうだよね」

走り「ん~、ウチ盆踊りぐらいしか知らないッスよぉ?」

一ノ瀬「盆踊り踊れるんだ⁉」

走り「あれ? 意外だったッスか?」

一ノ瀬「少しね…今どきの女子高生で盆踊り踊れるのって、少ないと思うけどな…」

走り「案外いるッスよぉ? 気づかないだけで。見ようと思えば、今まで見えなかったものも見えてくるッス」

一ノ瀬「へ~? なにかの格言っぽいね」

走り「はいッス! かの有名な小説家、夢野久作の格言ッスよ。続きは『私はそれを文字におこしているだけだ』ッスけどね」

一ノ瀬「へ~そうなんだ~! 鳰って博識だね!」

走り「…いや、ウソッス。今適当につくったッス。すんません」

一ノ瀬「って…なにそれ…鳰ったらもぅ…! 嘘つきは泥棒の始まりだよぉ?」

走り「いやいや、騙しはウチの基本スキルッスからねぇ♪ これはやめられないッスよ!」

一ノ瀬「スキル? なにか鳰に技みたいなのがあるの?」

走り「いやッスね~言葉の綾ッスよ~。そんなことより、ウチは千足さんの剣術の方が技っぽいと思うんスけどね」

一ノ瀬「あ~あれね~どこで学んだんだろうね。剣道かな? 師匠でもいたのかな?」

走り「そういえば千足さんに師匠がいた気がするッス。えぇと、たしか…あれ? ど忘れしちゃったッスかね?」

一ノ瀬「鳰も忘れることがあるんだね。晴の勝手な評価だけど、記憶力良いと思ってた」

走り「いやいや、別に悪くないっすからね? ウチもメロンパン最後に買った場所と日付と時間は覚えてるッスよ?」

一ノ瀬「なんか違和感あるけど、すごいね! …鳰はメロンパンが好きなんだね。ほかにどんなパンが好きなの?」

走り「もち、ウチはメロンパン一筋ッスよ! 伊介さんみたいにビッチじゃないッス!」

一ノ瀬「伊介さんは別にビッチじゃないと思うけど…?」

走り「いや、そんなことないッスよ! なにせ好みが40越えた男性ッスからね!」

一ノ瀬「え⁉ そうなの⁉ 結構年上好きだね⁉」

走り「……あれ? どうだったかな? 違ったかな…?」

一ノ瀬「ズコッ」

走り「……っていうか、この情報をウチはいつ仕入れたんスかね?」

一ノ瀬「鳰大丈夫⁉」

走り「…ん~なんだか頭が痛くなってきたッスよ~」

一ノ瀬「とりあえず別のこと考えたら?」

走り「わかったッス。とりあえずメロンパンのこと考えてみるッス!」

一ノ瀬「一択なんだ⁉」


東「…………」

別に空気読んで静かにしていただけなんだからな…決して話に入れなかったわけじゃないんだからな…。


病院


映画館に向かう途中に病院を寄ってみた。

英と番場がいるかと思ったからだ。

案の定―

番場「……あ……こ、こんに……ちは……」

英「あら? ご機嫌麗しゅうですわ」

一ノ瀬「こんにちは!」

走り「ちわッス!」

東「…………」

―ロビーにナースが二人いた。

英「見られてしまいましたわね」

走り「ちっとも恥ずかしそうじゃないのはさすがッス…」

一ノ瀬「わぁ~二人とも、似合うよ~!」

一ノ瀬が頬を少し染めて笑っている。

お前も着れば似合うよ…。

番場「……恥ずかしい……です……」

英「あら、番場さん、可憐な妖精のようですわ」

番場「そ、そんな……英さんも…素敵です……」

英「うっ⁉」

走り「どうしたんスか⁉」

英「少し鼻血が出そうになっただけですわ。平気です」

走り「全然平気じゃない⁉」

一ノ瀬「…………うずうず」

一ノ瀬がチラチラと私を見る。

さながら子供がほしいのに口で言えなくて、無言で視線だけでねだるときのような仕草だ。

東「英、まだあまりはあるか?」

一ノ瀬「…っ」パアッ

英「ええ。2階の休憩室にありますわ」

東「わかった、とってくる」

ロビーを出て2階に向かう。


40秒で支度して着替えた。


一ノ瀬「どう、かな?」

照れくさそうに微笑む一ノ瀬。…萌え。

走り「おぉ⁉ 似合うッスね! 戦場の天使みたいッス!」

英「あら、ナイチンゲールのようだとたとえるなんて、見直しましたわ」

走り「ナイ……チンゲー、ル? 下ネタッスか?」

英「…やはり知能というのは重要ですわ…」

一ノ瀬「そ、そんなことより、兎角さんと鳰も着てみなよ!」

東「私はいい。隙だらけで防御力が心配だ」

走り「魔王にでも戦いに行くんスか⁉ あ、ウチも遠慮しとくッス。今ちょっと腹痛があるんで」

英「せめてもう少しやる気を出してお断りしなさい…理由くらい上品にお願いしますわ…」

一ノ瀬「そっか…残念…」

しょんぼりする一ノ瀬。…萌え。

走り「やべぇ! ここにナースが3人もいるッスよ! こりゃ写真撮るしかねぇッス!」

英「あら、いい案ですわね。記念に撮っておきましょうか。3人で撮って、そのあと個別で撮影会をしましょう」

一ノ瀬「え⁉ 撮影『会』なの⁉」

東「大丈夫だ。きっと番場だけが忙しい」

番場「……がんばる……ます……」

両手をグッと握る番場。けなげだ…。

英「はぁはぁ、カメラカメラ、はぁはぁ、ハァハァ」

東「疲れてるのか? それとも欲情か?」

走り「あ~カメラ持ち歩いているのは首藤さんだけッスね~。ロケットパンチマーケットから拝借したとか…」

英「出番です、パシリさん! 全力です! 3分で戻るんですよ!」

走り「鬼畜ッスね⁉ せめて走りって言うッスよ!」

走りはぶつぶつ言いながらも、病院から出て行った。

東「あいつは頼まれたらきっちりやるんだな」

英「仕事はできるタイプですわ」

一ノ瀬「えっとぉ、裁定者になるはずだっだってのもそれが理由かもしれないね」

番場「……有能……です……」

たしかに…なんだかんだいって、全体的に器用ではあるな…。

ただ、臭いがな…。腐海だ。腐海で不快だ。


英「いい機会ですのでお話しましょうか。今現時点で早急な対応が必要な方が、数人いますわね…なにか策でもおありですか?」

数人……首藤と犬飼か…? あ、あと、武智もだったか。まだ伝えてないからな。

一ノ瀬「う~ん…あっ、武智さんが立ち直ったよ!」

英「あら。そうなのですか。やりまたわね。彼女みたいな明るい娘がいるだけで、雰囲気はかなり良くなりますわ」

東「ああ、そう思って真っ先に選んだ」

番場「……首藤……さんは……?……」

英「彼女はそうですね…一ノ瀬さん、お願いできますか?」

一ノ瀬「えっ⁉ 晴が⁉」

英「ええ。以前の捜査の折に、亡き彼女を見て絶望していた彼女を立ち直らせて裁判に向かわせたのは、あなたですわ。それを今回も期待してもよろしいですか?」

一ノ瀬「う、うん。晴の手柄かどうかはともかく、頑張るよ!」

英「それと、犬飼さんですが、これは首藤さんと武智さん、それと東さんでお願いします。ですので、おそらく一番遅いですわね」

…モノクマが絡んでいるのが気になるが、しょうがないか…。あれを一人でさばくのは難しい。…にしても、

東「私もか? というか待て、その人選危うくないか?」

一ノ瀬「え?」

東「もろ学級裁判の中心だった人物だろう? 私はクロを追い詰めた側だ」

首藤は被害者の親友。武智は犬飼が冤罪に陥れようとした相手。

英「不安ならば、一ノ瀬さんもお願いします」

一ノ瀬「え⁉ も、もちろんいいけど…なんか驚いちゃった…」

俄然やる気出た。

一ノ瀬「あっ、じゃあ、英さんは?」

英「わたくしは決まっていますわ。桐ケ谷さんです」

桐ケ谷…?

英「彼女も危ういでしょうからね。ベクトル的には彼女が一番です」

一ノ瀬「? どういうことですか?」

英「モノクマの標的……つまり、次のクロになりやすいということですわ」

一ノ瀬「え⁉」

…………そうか。

番場「……わたしも……行く……ます……」

英「え」

走り「戻ってきたッスよ~」

走りがカメラを片手に病院に入ってきた。

走り「いや~久しぶりにいい汗かいたッス~!」

英「す、すいません、もう一度…」

番場「…………は、恥ずかしい、です……」

英「そ、そこをなんとか…!」

走り「おやおやぁ? なにかあったんですか?」

英「…………」

走り「カメラ持ってきたのにすごい睨まれてるッス⁉」

……タイミングが悪かったな…。

英「まあ、いいですわ。走りさん、ありがとうございます」

走り「いえいえ、お安い御用ッスよ!」

英「では早速―」

走り「なんか暑いッスね~晴は暑くないんスか?」

一ノ瀬「そりゃ室内にいたからね。暑くはないよ。鳰は外で走ったからでしょ?」

走り「そういえば、武智さんとメカしえなさんがエンカウントしてましたよ。ぐふふ、今思い返すだけでも笑いが起きるッスよ!」

一ノ瀬「え⁉ どうだった⁉」

走り「いや~すごかったッスね~あの武智さんの驚きっぷり。やっぱ性格の変わりようは想像してなかったみたいッスね。珍しく困った顔をしてたッス」

一ノ瀬「そうだよね」

走り「で、すぐに仲良くなってたッス! メカしえなさんの牛乳を飲もうとしたッスよ?」

一ノ瀬「え⁉ 大丈夫なの⁉」

走り「モノクマが止めてたッス」

東「飲んじゃダメだったのか…ガソリンでも入っているのか?」

一ノ瀬「それは違うよっ! 兎角さん、忘れちゃった? メカしえなちゃんは充電式だよ」

東「そういえばそうだった。あまりにもどうでもよすぎて忘れていた」

走り「バッサリッスね」

英「―あなたたち…」

走り「惜しかったッスね? 見れなくて…ウチは一部始終見てたッスけどぉ…?」

一ノ瀬「うわぁ、いいなぁ、鳰」

東「おい、お前の網膜を見せろ。まだ残ってるかもしれない。はがして見る」

走り「グロッ⁉」

一ノ瀬「ちょっと、兎角さん! いくら鳰が相手でもダメだよ!」

走り「えっ⁉ なにか聞き捨てならない言葉が……」

東「一ノ瀬に免じて許してやるよ」

走り「なんすかこの得も言われぬ敗北感⁉」

一ノ瀬「兎角さん、あとで武智さんに会いに行こうよ」

東「メカしえなはいいのか?」

一ノ瀬「ぅ…う、うん。また今度かな。きっと忙しいだろうし…」

東「ふっ、そうだな。まずは写真でも撮ってから―」

そして、気づく。

英が私たちを放っといて、番場の写真会を開いていた。

一ノ瀬「は、英さ~ん?」

英「あら? もうよろしくて?」

走り「うっ…申し訳ないッス」

東「…すまん」

英「はぁ…まあ、いいですわ。あなたち、準備なさい。写真を撮りますわよ」

そして、5人の集合写真を撮った。うち3人はナースだ。

走りの持ってきたカメラはタイマー式であった。

そして、みっちり写真を撮られた。

……主に番場が。


電気街


病院で予定よりも時間を使ってしまった。

英から生田目の目撃情報を聞いて、電気街にやってきた。

生田目はパソコンコーナーに釘づけだった。

走り「な~に見てるんスか~?」

生田目「ああ、お前たちか…」

東「また見てたのか」

生田目「ああ。どうにも気になってね…」

一ノ瀬「? この〈10年黒組の報告書〉がですか?」

生田目「ああ。これを見てから桐ケ谷の様子がおかしくなったんだ」

走り「ふ~ん…………へぇ、千足さん、エンゼルトランペットが標的だったんスね」

生田目「ああ。……詳しい理由はあまりしたくないが…」

一ノ瀬「武智さんと神長さん、春紀さんと千足さん、柩ちゃんの…途中まで載ってるね」

走り「ん~見たところかなり省略してる気がするッスよ?」

東「なぜそう思う?」

走り「な~んか、漠然としてません? ○○が◇◇して△△になった。って、日記じゃねぇんスから! なんつ~か~味気ないっつ~か~…当人のことしか書かれていないのも気になるッスね~。周囲の人間がどう動いているかも普通は報告するっしょ?」

一ノ瀬「みんながみんな、鳰みたいに書かないと思うよ?」

東「これのどこが桐ケ谷を変えたか…」

生田目「…………」

生田目が穴が空きそうになるほど見つめている。

一ノ瀬「う~ん、なんだろう…」

東「生田目でもわからないんだ。私たちにわかるはずも……走り?」

走り「…………」

走りが真面目な顔でパソコンを見ている。
無表情だった。

見ているのは、武智の拘束の部分を見ている。文字化けしているところだ。

東「おい、どうした?」

走り「…………や、なんでもないッスよ。ちょっと疲れたんで先戻りますね? お疲れ様ッス」

一ノ瀬「えっ? 鳰!」

走りがスタスタと歩いて去って行った。

生田目「急にどうしたんだ?」

一ノ瀬「鳰、どうしちゃったんだろう?」

…なんだあいつ?


結局これ以上目新しいものを発見することはなかった。
あえて言うなら、走りの異変。
そういえば、エンゼルトランペットを走りは知っているようだったな…。
その道では有名なのか?

しかし、エンゼルトランペット……聞いたことない…。
首藤…は、無理か…。
英にでも聞いてみるか。


夕方にはコテージに戻り、晩御飯の時間までナイフを磨いていた。

やはり一人でいるのは気が楽だ。
ナイフを研ぐ音だけがして、耳に心地いい。
心身に染み渡る。

19時までずっと研いでいた。

しかし、研ぐのをやめて、コテージを出る。

晩御飯である。



食堂



武智「今晩はこんばんは~♪」

武智がルンルンと言いそうなほど上機嫌だった。

東「お前、切り替えが早いな…」

武智「そう? あたしってば刹那で生きてるからさ~♪ 引きずってたら人生楽しめないよ~?♪」

犬飼ともめた翌日のは、彼女に対して友好的だったり、気遣うことができたのはこのためか。

メカしえな「うむ! 皆来てるようで良かったぞ! ボクは感激で涙が出そうだ!」

生田目「勘弁してくれ」

番場「てめぇ、ふざけたことするとぶっ壊すぞ…っ!」

英「番場さん、わたくしのために、そこまで…っ!」

東「お前のためじゃないぞ?」

首藤「……では、食事としようか…」

一ノ瀬「伊介さんは…やっぱり来てないね…」

桐ケ谷「…………」

食堂にいたのは、武智、メカしえな、英、番場、首藤、一ノ瀬、生田目、桐ケ谷、そして私の9人だ。

欠席者は犬飼と、走り。

一ノ瀬「鳰は珍しいね…」

生田目「そうでもないだろう? 走りは半々だ。気まぐれなのかもしれないが…」

東「……桐ケ谷はいるな…」

一ノ瀬「ちょ、と、兎角さん⁉」

生田目「いや、いいんだ。たしかに、いる。私の気のせいでなければ、まだ心に曇りがかかっているな…」

生田目と桐ケ谷が距離をとって、離れ離れになっている。非常にレアだ。

桐ケ谷の落ち込んでいる理由が不明である以上、生田目もうかつには動けないか…?

東「…なにかしたいと思うだろうが、我慢しろ」

生田目「なにか策でもあるのか?」

東「ああ。見てればわか―いや、もう始まってる」

一ノ瀬「?」

一ノ瀬が小首を傾げながら桐ケ谷を見ると――


――英が桐ケ谷に近づいた。


もういくのか…。図太いというか、なんというか、その度胸は見習いたいところだ。

生田目「英がなにかするのか?」

東「ああ。励ますそうだ。生田目、少し冷たい言い方かもしれないが、お前じゃ逆効果になる」

生田目「……ああ。わかってる。だから、私もこうして話しかけにいけないんだ。桐ケ谷は私のことで悩んでいる。よりはっきり言うなら、自分と私の間にあるなにかだ」

……やけに鋭いな……。

眠りの名探偵並みに鈍いヤツだと思っていたが、やればできるな。

東「だから、お前は邪魔が入らないように頼む」

生田目「邪魔っていうと、武智、メカしえな、番場…か。首藤はどうする気だ?」

東「そっちは――」

一ノ瀬「晴がいきます…!」

一ノ瀬が意を決したかのように、首藤に近づいていく。

生田目「…東はいいのか?」

東「ああ。私もほかを抑える必要があるからな…私は番場を抑える。だから―」

生田目「私は武智とメカしえなだな。わかった」

生田目が言い終わると、さっさと2人の方へ向かっていった。

……随分積極的だな…。

あんなヤツだったか?

まあ、そんな気分になるときもあるか。


ケース1・東と番場


番場「あぁん…っ⁉ 東がオレの隣に来るなんて、初めてじゃねぇのかぁ…っ! なにか企んでんのかぁ…っ?」

東「話しかけるとそんな風に思われるのか?」

番場「はっはは…っ! そりゃそうだ、悪かったな…っ!」

東「こうして会話するのは久しぶりな気がする」

番場「まぁ、そうだろうなぁ…っ! オレはモノケモノ討伐してからは、ろくに表でなにかしたわけじゃねぇからなぁ…っ!」

東「大人しかったもんな。……裏切り者がいるって言われたからか?」

番場「いや、違うぜ…っ!」

東「…違うのか?」

番場「英のやろうにそばにいてと頼まれたからだよ…っ!」

東「…………そうか」

番場「あのやろう、初日からずっと体調が優れないらしくてっよぉ…っ! 放っとけねぇんだよ…っ!」

東「初日から? …長い不調だな」

番場「ここの気候と義手義足が合わないんだってよ…っ!」

東「気候、か…」

……ん? 義手? 義足?

番場「でもよ、最近完治の兆しが見えてきたみたいでよぉ…っ!」

東「良かったじゃないか」

番場「ああ。メカしえなの技術力を見てだな…あれなら常夏の気候を克服できるかもしれないって言ってたぜ…っ?」

東「暑さに弱いのか…」

番場「…………ああ、わかってるよ」

東「? なにがだ?」

番場「ああ、いや、こっちの話さ。最近真昼のやつがうるさくってよぉ…っ! オレはまだやめとけって言ってるんだけどなぁ…っ!」

東「? なにをだ?」

番場「あいつ、ずっと閉じ込められててよぉ…っ! 普通の学校とか知らねぇのよ…っ! オレとしては、もっと気分だけでも味わってほしかったんだけど…っ! 修学旅行も学校生活の一部だからよ…っ!」

東「…………」

番場「…ま、頃合いかもな…そろそろ…」

東「…………」


ケース2・首藤と一ノ瀬


一ノ瀬「首藤さん…」

首藤「…一ノ瀬か…」

首藤が集まっている皆から外れたところで、一人で食事をしていた。

首藤は日本酒を飲んでいた。一升瓶がすでに3つ空になっている。

一ノ瀬が首藤の隣に座る。

一ノ瀬「…………」

首藤「ふふっ、ワシを心配しておるの…顔を見ればわかる」

一ノ瀬「…うん」

首藤「ワシもまだまだじゃな。この程度で心を揺さぶられるとは…」

一ノ瀬「…この程度、じゃないよ?」

首藤「?」

一ノ瀬「首藤さんにとって大事な人だったんでしょ? 首藤さん、捜査開始したときに言ってたよ? 大切な人ほど、先に逝ってしまうって……あのときの言葉は、本音だと思うよ?」

首藤「…………」

一ノ瀬「首藤さんは、深く悲しんでるんだよ…首藤さんにとって、神長さんはそれほど大切な人だったんだよ」

首藤「悲しい? ……そうか、悲しいのか…」

一ノ瀬「…………」

首藤「胸にポッカリと空欄ができてしまったかにょうな、虚無感。これを言葉で表すなら、たしかに悲しみじゃな…いい友人とは思ってはいたが、そうか…」

一ノ瀬「…………」

首藤「懐かしいものじゃ…あのお方が亡くなられた以来かの…すっかり忘れておったわ…」

一ノ瀬「…………」

首藤「また、大切な人を失ってしまったのじゃな…しかも、己がそれと気づく前に…」

一ノ瀬「…………」

首藤「……ワシは……悲しいぞ……っ!」

一ノ瀬「…首藤さん」

首藤が持っていたおちょこを片手に外を見る。

一ノ瀬「……首藤さん……」

首藤「…………」

首藤の目から涙が流れていた。

一ノ瀬「…学級裁判が終わって、張りつめていた気が解けたんだね?」

首藤「……そうじゃな……」

首藤が涙を静かに流し続ける。

一ノ瀬が黙って首藤のそばにいた。

ケース3・生田目と武智とメカしえな

メカしえな「やあ、生田目! 元気ですかー⁉」

生田目「あ、ああ」

武智「千足サーン、元気ぃ?♪」

生田目「あ、ああ」

メカしえな「やはり皆で食う飯はうまいな! モノクマもいるとよりおいしくなるはずだ!」

生田目「なっ⁉ まさか呼ぶのか⁉」

メカしえな「その通りだ!」

武智「へぇ?♪ モノクマを?♪ それは面白そうだね…?♪」ニヤニヤ

メカしえな「モノクマー!」

生田目「なっ⁉ よ、よせっ!」

武智「…………来ないね?♪」

メカしえな「むむむ…なにかあったのか…? これは事件の香りがプンプンすんぞ!」

生田目「余計なことは言うな…」

武智「ざ~んねんっ♪ モノクマはまた今度だね♪」

生田目「ホントに呼ぶのか?」

メカしえな「もち屋を論破!」

生田目「え? なんて言った?」

武智「もちろん…だって♪」

生田目「よくわかったな…」

武智「あたしにかかればしえなちゃんのことぐらいわかるよ!♪ 千足サンと柩ちゃんも同じでしょ?♪」

生田目「…………」

メカしえな「んん~? どした、生田目?」

生田目「そんなことはないさ…」

武智「ん?」

生田目「私は桐ケ谷のことなんて、わかっていないさ…今彼女が何を思い、何に悩んでいるのか、私にはおおよそ見当がつかない…」

武智「ふぅん」

メカしえな「大丈夫さ。生田目は桐ケ谷のことを理解しているさ」

生田目「そう言ってくれるのはうれしい」

メカしえな「いや、本気だぞ? 人間誰しも隠し事の一つや二つはある」

生田目「…………そうだな」

武智「…………そうだねぇ♪」

メカしえな「それを察せることも友情だと思うぜ?」キリッ

生田目「…メカしえな…」

メカしえな「桐ケ谷が少しでも悩みがなくなったようなら、またそばにいてやんな…」キリッ

生田目「…そうだな。ありがとう。少し気が楽になった」

武智「いや~にしても、千足サンたちにもそういうことがあるんだねぇ~♪」

メカしえな「とりあえず、桐ケ谷はソッとしておけ」キリッ

生田目「ふ、そうだな」
生田目の視線の先には、英と桐ケ谷がいた。

生田目(今は、信頼できる仲間に任せるとしよう…)

ケース4・英と桐ケ谷


英「桐ケ谷さん? 最近なにかありましたわね?」

桐ケ谷「……クスッ、英さん、ストレートすぎですよ…」

英「あなた相手だと、上っ面だけ飾っても通じなさそうですからね。嘘を見抜くのが得意そうですし…と、そんなことよりも、本題に入りましょうか」
英の顔から微笑みが消えて、真剣な表情になる。

英「お話してくれませんか? それとも、お話できませんか?」

桐ケ谷「…いやな聞き方をしますね…………ぼくの友人の話をしましょうか…」

英「はい」

桐ケ谷「ぼくの友人である彼女は、暗殺稼業をしていました。彼女は快楽や金銭、私事のために人をあやめたのではなく、純粋な興味のために人をあやめていました。長い間、彼女はそうして依頼された暗殺を請け負ってきました。ある日、彼女は運命的な出会いをします。その人は彼女にとって、憧れとなり、目標となり、また、大切な人になりました。しかし、その人には目的があったのです。復讐という目的が…」

英「…………」

桐ケ谷「彼女は先に述べたぼくの友人に、恩師の大切な人の命を奪われていたのです。…そう―その人の標的は、その人に様々な気持ちを抱いた彼女だったのですよ」

英「…………」

桐ケ谷「…………彼女は…………どうすればよいのでしょうか…………」

英「…………そうですわね。本人に言えないのが残念でならないのですが…二つ言いましょう。まず一つは―」

桐ケ谷「……」

英「告白するべきです」

桐ケ谷「え⁉ 告白⁉」

英「ええ。その人に、自分がそうだと、自分こそが復讐の相手だと名乗り出るべきですよ」

桐ケ谷「…あっ、そっちの告白ですね! ぼくはてっきり―」///

英「でないと、後悔しますわ」

桐ケ谷「…………もう一つは?」

英「―奪いなさい」

桐ケ谷「え?」

英「その人に真実が知られるおそれのあること、すべてを排除しなさい。もしそれができないような事態だったら、駆け落ちでもすることです。二つに一つですわ」

桐ケ谷「…それが二つ目のアドバイス?」

英「ええ、そうですわ」ニコッ

桐ケ谷「…英さんって、結構過激派なんですね…」

英「あら? そうですか? わたくしの人生は、いつだって戦って守り抜いて、いつだって戦って勝ち取ってきましたから」

桐ケ谷「……納得できました。そうですよね。言えることなら言うべき。言えないなら言わないで済むようにすること。まったくもって妥当です」

英「友人の悩みはなくなりそうですか?」

桐ケ谷「はい! …………聞いておきたいことがあるのですが、いいですか?」

英「なんでしょうか?」

桐ケ谷「その場合、友人であるぼくは、どうすればいいのでしょうか?」

英「好きにさせたらいいじゃないですか? もし、それで友人…まあ、この場合はあなたですか…あなたに害が及ぶのであれば…そうですね、わたくしでしたら、全力で壁となって立ちふさがります」

桐ケ谷「…ありがとうございます。少しだけ、気が楽になりました」

英「……なんてアドバイスなさるおつもりで?」

桐ケ谷「…………その人は、少々鈍い人でして…またそこが魅力なのですが……友人には最期まで騙しきれと、アドバイスすることにします」

桐ケ谷がそう言って、生田目の方を見る。
生田目はメカしえなと談笑していた。

英「あら、そうですか。それもいいですわね」

英がニッコリとほほ笑んだ。


ケース5・武智と一ノ瀬


武智「晴っち~♪」

一ノ瀬「あっ、武智さん!」

武智「今日はありがとうね~♪ 立ち直れたよ~♪」

一ノ瀬「そんな…晴はただ手助けをしたというか、その程度だよ…!」///

武智「またまた謙遜しちゃって~♪ 首藤さんも元気づけてたじゃん!」

一ノ瀬「そ、そんな…み、見てた?」

武智「バッチリ! 『見た』というよりは、『聞いた』の方が正しいかなぁ♪」

一ノ瀬「…ホ、ホントに耳いいね……」///

武智「いや~それほどでも~♪」

一ノ瀬「でも、元気になってくれて良かったよ! …あ、あのさ…」

武智「うん?♪ なにかな?♪」

一ノ瀬「明日さ…一緒に伊介さんのところに行かない? …きっと、伊介さん落ち込んでいるから…」

武智「いいよ♪」

一ノ瀬「軽いねっ⁉」

武智「別に~♪ あたしと晴っちの仲じゃん?♪ それよりさ、晴っちの誕生日っていつかな?♪ まだ聞いてないよね?♪」

一ノ瀬「え? う、うん。1月1日だよ?」

武智「へ~⁉ あたしと一日違いだね!♪」

一ノ瀬「えっ、そうなの⁉」

武智「ん~ふふふ♪ じゃあ、晴っちの誕生日来たときに、2人でプレゼント交換しよっか!♪」

一ノ瀬「うん! しよっ!」

武智「うふふ♪ 愉しみだなぁ~♪♪」

一ノ瀬「あ~でも、ここって今何月何日かわかんないよね…?」

武智「…あ~そういえば、そうだったねぇ♪♪ まっ、じゃあ、明日にしよっか♪♪」

一ノ瀬「えっ⁉ あ、明日⁉」

武智「うん♪♪」

一ノ瀬「…いいよ! 晴もちゃんとプレゼント用意するからね!」

武智「うん……♪♪」

武智がニッコリと笑った。


ケース6・桐ケ谷と生田目


桐ケ谷「千足さん、お隣いいですか?」

生田目「…桐ケ谷…ああ、大丈夫だ」

メカしえなは食堂の隅で充電中だ。
大人しくしている。さながらご飯のときだけ静かになる人間のようだ。
コンセントは背中側にあるようだ。正座をしている。

桐ケ谷「今日はすいません。千足さんに顔を向けられなくて…」

生田目「いや、いいんだ。それよりも、もう大丈夫なのか?」

桐ケ谷「はい、もう大丈夫です。覚悟が…決まりましたから…」

生田目「覚悟?」

桐ケ谷「はい」ニコッ

生田目「…そうか。なにかあったら、すぐに言ってくれ。桐ケ谷は私が守る」

桐ケ谷「ありがとうございます。……ぼくは千足さんを守りますから…」

生田目「え?」

桐ケ谷「いえ、なんでもないです。明日は、一緒に牧場に行きませんか? それと、図書館にも行きたいです」

生田目「…無理しなくてもいいんだぞ?」

桐ケ谷「大丈夫ですよ。ぼくはそんなに弱くありませんから」

生田目「…? どこかで聞いたようなセリフだ…」

桐ケ谷「…っ⁉ 千足さん、明日はダイナーでご飯も食べましょうね」

生田目「あ、ああ。そうだな。明日が楽しみだ」

桐ケ谷「はい!」

桐ケ谷(千足さんが死なないために、ぼくはやるんだ。千足さんと、千足さんとの関係を守るために…!)

ケース7・東と英と首藤

東「飲み過ぎじゃないのか、首藤?」

英「あらあら、明日起きれますの?」

首藤「…うんむ…大丈夫じゃろうて……」

目と頬を赤くした首藤が日本酒を飲んでいた。
一升瓶7本が空で、8本目も半分までなくなていた。

英「あなた、未成年ではありませんの?」

首都「いやぁ? ワシはもう20なぞとうに過ぎておる」

東「…とてもそうには見えないな…」

首藤「…………そのセリフ…あのお方から聞いたときは……ぐすっ」

東「⁉ な、なんだ急に⁉」

英「…泣いてしまったようですわね、東さん」

東「なっ⁉ 私のせいなのか⁉ 感想を言っただけだぞ⁉」

首藤「……忘れることなぞできん……ワシには…とてもそのようなマネ……ぐすっ」

東「……首藤、大丈夫か? 私の声が聞こえるか?」

首藤「当たり前じゃ…ワシを誰だと思っとる」

東「ん? 酔ってるんじゃなかったのか?」

首藤「ワシはいわゆるザルじゃ」

英「会話が成立していますから、そういうことなのでしょうね。ただ感情が表に出やすくなっていますわね」

首藤「ああ、自分でもそう思うぞ。……酒を飲んだ理由が、理由じゃったからな…悲しみに暮れたせいで、少し感傷的じゃ。少し酔い醒めに波風に当たってくるかの…」

英「お供しますわ」

首藤「酔っとらんぞ?」

英「いえ、ここには夜な夜ななにに襲われるかわかったもんじゃありませんから」

東「なるほどな…モノクマか」

首藤「……ああ、なるほど。少し頭が回らんかったの…たしかに、この状態でモノクマを相手にするのは愚かじゃな。お願いしよう」

英「はい」
英が首藤に肩を貸す。

首藤「そういえば東。一ノ瀬に注意するように言っておくのじゃぞ」

東「? なぜだ?」

首藤「なぜって…武智となにやら話し込んでおったからの…このワシの目からは逃れられんわい…!」

英「気分が高ぶっていますのね。こんな首藤さんはレアですわ」

首藤「言ってくれるのぅ、小娘」

東「ちょっと待て、武智がなんだというんだ?」

英「あら? ご存じないのかしら?」

首藤「ほぅ? 英は知っておったかの」

英「さすがに英コンツェルンの情報網に容易く引っかかりますわ。わたくしも女ですので…気を付けるに越したことはありませんわ」

首藤「ふむ、今現在進行形で無様を晒しているワシにとっては、耳が痛いの」

東「武智? 武智がなんだ?」

首藤「武智は…あ~、説明が面倒じゃのぅ…ま、知らぬが仏とも言うし、いいんじゃないか?」

東「ふざけるな! 気になって夜眠れないさろうが!」

英「そんな文句をつけられても困りますわ…では、わたくしが代わりにお答えいたします。………武智さんは、武智乙哉さんは―女性だけを狙う連続殺人鬼、〈21世紀の切り裂きジャック〉とも言われる、シリアルキラーですわ。さらに言うなら…たちの悪い、快楽殺人鬼でもあります」


晴のコテージ


晩御飯が終わり、食堂から各々解散した。

首藤と英と番場は、首藤のコテージへ。
寝かせに行くらしい。
首藤は明日動けるのか?

生田目と桐ケ谷はコテージに戻った。
関係が直ったが、やはり今日は顔を合わせるのは恥ずかしいのだろうか…。いつもより早いお別れの2人だ。

メカしえなは食堂からロビーに移った。
武智とゲームして遊ぶそうだ。

そして私と一ノ瀬は―

一ノ瀬「…兎角さん、それホントに?」

東「ああ。ケータイのニュースも見せてもらった。なにせ、首藤と英の2人が言ったんだ。走りや犬飼とかならともかく、あの2人が無意味に嘘を吐くとは思えない」

一ノ瀬「晴もそうは思います…けど…」

東「けど?」

一ノ瀬「―考えすぎだと思います。武智さんは現に殺人を犯さずにいます。そんな彼女を信用するのは間違いではないはずです…!」

東「それはそうだろうが…わざわざ殺人しますと言って、するヤツはいない。ただ猫を被っているだけかもしれないだろう?」

一ノ瀬「それは…そうだけど…」

東「……でも、お前の言いたいことはわかった。今のところ、私も武智に何をするつもりはなくなった。でも、私はお前のそばにいるからな」

一ノ瀬「…うん」

東「お前を守るためだ。相手は法律を無視する輩だ。完全に信頼はできない」

一ノ瀬「うん、わかった」

ホントにわかってくれたらいいのだが…。

一応、武智本人にも釘をさすか…?

東「じゃあ、お休み。また明日だ―」

一ノ瀬「うん、またあs―」







ピーンポーン







来客?
こんな時間に?

ふと思い出す。
首藤だったか……一ノ瀬と武智が話し込んでいた……と。

なにをだ?
もしかして今夜会うことか?

そう思うと、私の足はドアに近づけなかった。

一ノ瀬「兎角s―」

東「シッ!」
唇に人差し指を当てて、沈黙を要求した。
一ノ瀬も素直に従ってくれた。


ピーンポーン


また鳴った。
どうやら、どうしても一ノ瀬に用があるようだ。


ガチャガチャ


今度はドアノブを動かす。


ドンドン


ドアを叩く音だ。
だんだん激しくなってきた。

東「…………」

一ノ瀬「…………」

私たちは2人とも無言で動かない。様子がおかしいことに気が付いたからだ。

ピーンポーンガチャガチャドンドン

全部やってくる。非常にうるさい。やかましい。近所迷惑だろう。いったいなにしに来たんだ? なぜ帰らない? なぜしゃべらない?

私は無意識で一ノ瀬をかばうように音もなく動く。
それが聞こえたのか、来訪者の音がなくなる。

無音だ。

東「…………」

一ノ瀬「…………あきらめたかな?」

東「まさか…………殺気は一切変化してない」

そして――


ドォーーーーーーーーーーーンッッッ!!!


――爆音が響き、

???「よぉ、待たせたなぁ…っ!」

来訪者がコテージのドアを破壊して入ってきた。

来訪者は――


???「……ヤリに来たぜぇぇぇ~~~っっっ!!!」


――番場だった。


東「ば、番場っ⁉ お前、なにしに来たんだっ!」

番場「あぁん⁉ なにって、決まってんだろうが…っ! ヤリに来たってよぉ…っ!」

一ノ瀬「し、真夜ちゃん?」

番場がスレッジハンマーを引きずって、一ノ瀬のコテージ内に入ってくる。

一ノ瀬のコテージのドアは完全に破壊されていた。

東「こんな騒ぎを起こして、お前無事に済むとでも思ってるのか⁉」

番場「知らねぇな…っ! つーか、今はそんなのどうでもいいんだよぉ…っ! オレは、真昼に代わってヤリに来たんだからよぉ…っ!」

東「真昼の代わりに?」

一ノ瀬「そ、それって、どういう…っ?」

番場「あー説明してもわかんねぇだろうぜぇ…っ! だから、身体に教えてやるよ…っ!」

番場がスレッジハンマーを手にする。

東「ヤリに来たってことは、一ノ瀬が狙いか?」

番場「ああ、そうだ」

東「…この島で殺人をしたらどうなるか、知らんわけじゃないだろう? 真昼から聞いてないのか?」

番場「聞いてるし、知ってるぜ…っ? でも、だからなんだよ…っ?」

東「なに?」


番場「死ぬのが怖くて……―」


番場がハンマーを持ち上げて―


番場「―コロシができるかぁ……っっ!!」


―私たちめがけて、ハンマーを振り下ろした。


第1の島・ロビー


武智「? 今なにか音聞こえなかった?」

メカしえな「はっはっはっは! スキありぃ!」

武智「あぁ~~~っっっ⁉ もぅ! ひどいよぉ、しえなちゃん!」

メカしえな「はっはっはっは! メカは勝つ!」

2人はロビーのゲーム機で、格ゲーをしていた。

武智「くそぉ…! なら、今度はこのキャラでやってやる! ワイヤーと肉弾戦が得意なオシャレアサシンだぞ!」

メカしえな「ふっふっふっふ! それでもボクの黒髪ツインテ眼鏡ドジっ子には勝てまいよ」

武智「ふん! 属性の多さだけってのをわからせてやるんだからぁ!♪」

武智とメカしえなはゲームにのめりこむ。


第1の島・ロケットパンチマーケット


英「…今、なにか番場さんの声が聞こえませんでしたか…?」

首藤「スゥー…ハァー…」

英がホテルの方を見ている。

首藤が深呼吸をしていた。

首藤「済まぬな。今そういうのに突っ込みする元気がないのじゃ…」

英「…別に振ったわけではありませんわ…」

プイッとすねる英。

首藤「ふふふっ、こんなところに連れて来てもらって、言うセリフではなかったかの。そういえば、礼がまだじゃったの…ありがとう」

首藤が柔和な笑顔を浮かべる。

英「…少し、表情が柔らかくなりましたわね? カウンセラーが敏腕でしたか?」

首藤「ふふふっ、おぬしの差し金か? よくできたカウンセラーじゃったぞ」

英「そうでしょうね。わたくしはうまくできなかったんですけれど…」

首藤が自販機で天然水を買う。

首藤「どうじゃろうな…おぬしの相手も、比較的立ち直ったようじゃぞ? ちゃんと想い人と向き合っておるわ」

英「いいことかどうか、判断できませんもの」

首藤がペットボトルに口をつける。

英「でも、きっと好転すると思っています。わたくし、彼女らの絆に期待していますの」

首藤が飲んだペットボトルを英に渡す。

首藤「礼じゃ。おぬしもどうじゃ?」

英「…ふふふ。首藤さん、あなたまだ少し酔っていらっしゃるのね…」

英がそれを受け取り、口をつけた。

首藤「どうじゃ? ワシの水は美味いかの?」

英「……そうですわね。わたくし、どちらかというと硬水が好きなんですの…これ、軟水ですのね」

首藤「おや、それは残念じゃな。ま、ワシもアルコールがある水が好きなんじゃがな…」

英「それ、日本酒の比喩ですの?」

首藤「ふふふっ、説明されると照れるのじゃ」///

英「…残りはわたくしがもらってもよろしくて?」

首藤「? よいが、なにかに使うのかの?」

英「いえ、番場さんにも渡そうかと思いましたの。もしかしたら皆で飲むとおいしく感じられるかもしれませんわ。ですから、まずは番場さんに飲んでもらいますの。そのあとはわたくしが責任を持って飲み干しますわ」

首藤「…ワシで悪かったの」

首藤がプイッとすねる。


一ノ瀬のコテージ


番場「あっはははははは…っ! どうしたんだよぉ…っ? 逃げてばっかじゃ終わんねぇぞぉ…っ! 夜はまだまだ長いんだからよぉ…っ!」

東「くっ…たしかにそうだ…!」

番場がハンマーを振り回し、私が一ノ瀬を抱えて避ける。

それを先ほどからもう20分はずっと繰り返しだ。

轟音が響き渡っているのにも関わらず、ほかの連中が出てこない。

なぜだ? 聞こえていないはずがない。

一ノ瀬「し、真夜ちゃん、どうしちゃったのかなっ⁉」

東「さぁな! この島の生活に神経をやられたか…それとも、元からこの性格か…!」

番場「なにをくっちゃべってるんだぁ…っ⁉」

番場がハンマーを振り回す。

もはや机やベッド、タンスは見る影もない。
監視カメラとモニターは無傷だ。

モノクマはこの様子を見ているのだろう。

だが、なぜ止めに来ない?
こんな形で殺人が発生しても、学級裁判はすぐに終わるぞ?
それは絶望に繋がらないんじゃないのか?

―それとも、なにか狙いでもあるのか?

モノクマは来ない。黒組の連中も来ない。ならば―

東「いつまでもこうしてはいられないな」

大破した机の破片を番場に投げつける。

番場がひるんだ一瞬のうちに、一ノ瀬を自分の背後にまわす。

一ノ瀬「兎角っ⁉」

東「晴っ! そこにいろっ!」

一ノ瀬「…コロシちゃ…ダメだよ!」

東「わかってる!」

もうコイツも、立派な黒組の一員。
同じ共通の目的を持った仲間だ。
コロシたりなんかは、しない!

番場「いてぇなぁ…っ! なにするんだよぉ…っ! こんな木片じゃ、聖遺物にはなんねぇぞぉ…っ!」

番場が、私が投げつけた木片を片手で握ると、グシャッと粉々に砕いた。

コイツ……怪力さなら、寒河江の上をいくか?

一撃でも喰らったらアウトだな…。

汗が頬を伝うのを感じる。


東「…番場、お前を―拘束させてもらう!」



番場「はっはぁ…っ!」

ハンマーを振り下ろす。
東「くっ…!」

避けた。自分がさっきまで立っていたところがクレーターになる。
衝撃でコテージが揺れる。

東「…バカ力めっ…!」

番場「やっぱ砕くのが一番スカッとするし、死んだのがすぐにわかるからよぉ…っ!」

番場がハンマーを持ち上げる。

東「っ⁉」

動きが鈍くなっている?

最初のころよりも勢いがない?

よく観察すると、番場の手がかすかにふるえている?

番場「ハァ……ハァ……っ!」

東「…疲れているのか?」

番場「はっはは…っ! 挑発するたぁ、余裕だなぁ…っ!」

ハンマーをまわす…が、スピードが遅れている。

そうか……コイツ、持久力がないのか…。ハンマーという武器も、一撃で決着をつけるための道具。力を一瞬引き出すことで持ち上げて、ハンマーを振り下ろす。長く続く動作ではないのだ。

だとすると、狙うは長期戦か?

しかし、土埃でだんだん視界が悪くなる。
ハンマー相手に狭い場所での戦闘は向いていないな。

戦況は五分五分か…。


振り回す番場のハンマーに飛ばされた木片が、窓をぶち抜く。

一ノ瀬「っ⁉」

東「一ノ瀬⁉ つぅっ!」

自分の足元にもガラスが飛んでいた。
靴を脱いでいたため、足の裏にグッサリと大量に刺さる。


番場「ざ~んねん…っ!」

番場が凶器を振り下ろす。

東「っ⁉」

避けられなかった私はナイフを使い、軌道をわずかにずらし直撃を避ける。

バキンッ

ナイフが真っ二つに折れた。

東「なっ⁉」

そのわずかなショックで―

番場「万策尽きたな…っ!」

―スキを見せてしまった。



ドムンッ



東「かはっ…!」

私の腹に振り下ろされたハンマーの直撃を喰らう。

私の身体がコテージの床にめり込んだ。

一ノ瀬「兎角っ⁉」

番場「……じゃぁ~にぃ~…っ!」

番場が再度ハンマーを振り下ろそうとして―


一ノ瀬「うわぁあぁぁあぁっっっ!!!」


一ノ瀬が番場に突進した。

番場「う…っ⁉」

ハンマーを持ち上げていた番場は、がら空きだった胸と腹に、盛大に突進を受けた。ハンマーを落とし、番場が後ろに吹きとぶ。

ガンッとコテージの壁に後頭部を打ち付ける。

番場「ぐっぐぐぐぐ…っ!」

番場が頭を抑えてうずくまる。

一ノ瀬「兎角っ! 今のうちに! 逃げよう!」

東「……っ! ……っ!」

声が出なかった。

一ノ瀬に抱えられ、私と一ノ瀬はコテージの窓から出た。


ホテル


一ノ瀬「なっ…⁉ どういうこと?」

東「…………?」

うっすらと目を開ける。

ぼやけてはっきりと見えない。

思っていたよりもひどい傷だったのか?

一ノ瀬「…霧が…充満しているっ⁉ 南国の島なのに…っ⁉」

霧…だと…?

目を凝らして見る。慣れてくるとわかった。たしかに霧だ。
しかし、深くはない。霧がかっているというだけだ。遠くも見える。ただ、全体的に霧があり、異様な不気味感をかもしだしていた。

一ノ瀬「ど、どうしよう? 皆はどこにいったのかな? コテージにはいないよね? いたら気づくもん!」

東「……逃げる、んじゃなく……立ち向かう、んだ……!」

一ノ瀬「え?」

東「今……逃げても……また……次の夜には、来る……撃退するんだ……!」

一ノ瀬「で、でも…相手は兎角でも…っ!」

東「…一度逃げたら、癖になるんだろ?…」

一ノ瀬「…………うん、そうだね。やって、みるよ!」



???「覚悟は決まったか?」



背後から声がして、振り向く。

番場がハンマーを振りかざしていた。

一ノ瀬「っ⁉」

避ける。

避けた場所が陥没する。

一ノ瀬が私を担いで、プールの方へ逃げる。

番場「おぉい! 待てよぉ…っ!」


プールの縁側


一ノ瀬「兎角さんはここで寝てて!」

一ノ瀬が私をベンチのところで寝かす。

東「……いち、のせ……」

一ノ瀬「真夜ちゃんは、晴がなんとかするから!」

一ノ瀬はパラソルを持つ。

番場「それでオレとやるってのかぁ…っ? あんまオススメしねぇがなぁ…っ! 付け焼刃はしょせん付け焼刃だぜぇ…っ?」

一ノ瀬「それでも、晴は…」

東「…………っ」

意識が薄れる…。



「晴のために、誰かを死なせたりなんかさせない…っ!」




晴…っ!


―どれくらい時間が経ったのだろうか?

目を開けると、音がする。

なにかが破壊される音。
地面が割れる音。
テンションの高い声。
勇ましく上がる声。

私は…一ノ瀬になんて言ったんだ?

なんで私が守られてる?


―私が守るんだろう…⁉


身体を起こす。

一ノ瀬と番場が向き合っていた。
番場の背中が見えた。

一ノ瀬の服はヨレヨレで、水に濡れているところもあった。擦り傷もある。避けた拍子についたのだろう。
ほかにも切り傷や打撲痕があった。
切り傷はガラスで切ったのだろう。
打撲痕は左腕にあり、青紫色ににじんでいた。

番場をはさんで、一ノ瀬と目が合う。

一ノ瀬は数瞬険しい顔をしたが、何も言わない。

こういうところは、本当に日向にいた人間なのか気になる。

普通は声をかけたりしてくるものだが…現場慣れしているのか。

そう思いながら、私は立ち上がる。

ゆっくりと。時間をかけて。

一ノ瀬はもう、番場に意識が向かっていた。

番場の声が遠く聞こえる。

何か会話しているのか?

だが、なにも聞こえない。

番場の後ろに近づく。

一ノ瀬のパラソルはボロボロだ。
番場のハンマーには傷一つない。

番場の背後につく。

手を伸ばせば届きそうだ。

一ノ瀬と目が合う。

…今度はリアクションをしてくれた。

一ノ瀬「兎角っ⁉」

声と同時に、番場の細い首を絞める。

番場「ぐっ⁉」


―このまま絞め落とす! さすがにハンマーでは絞められた状態で、背後につく人間を殴れまい…っ!


番場「…ぐっ…がはっ…げっ……っ!」

番場がフラフラする。ハンマーを離した。
ドスンッと音がした。何キロあるんだ、そのハンマー…。

振りほどこうとする番場の手が、私の手に負荷となる。
とてもハンマーを持ち上げていたとは思えない力だ。非力すぎる。疲労困憊だったのか? 一ノ瀬一人仕留められなかったのは、そのためか?

番場の脚がガクガクと震えだす。

もう少しで落ちると確信した、が―

一ノ瀬「兎角っ⁉」

―番場がプールに向かって身投げした。

私も限界だったのもあり、突然のことに踏ん張れなかった私も一緒にプールに落ちる。

目や鼻や口に水が入ってくる。息を十分に吸い込めなかった。
しかし、それは番場も同じ。

なぜ飛び込む? 苦しいっ…! 呼吸をっ…!
離したくなる手を必死に番場の首にあてる。

…そうか…こいつ、私が酸素欲しさにプールから上がると思ったのか…!
首絞めから逃れるために…わざと…!

―舐められてものだ…。

自分も苦しいだろうに、よくやる。

首を絞められている番場と、呼吸が不十分な私…我慢比べといこう…!


プールの底まで沈む。
ブクブクと水泡が水上まで昇っていく。
苦しい……ただでさえ腹部に猛烈な痛みを感じているというのに……なお、苦しい。

番場の手も、脚も、身体全体が激しく暴れる。
苦しいだろう。私も苦しい。

…頼むから…さっさと気絶してくれ…………!

番場の力が次第に弱くなる。




番場の抵抗がなくなった。

……落ちたか…。

番場の首から手を放し、番場を救い上げて、自分も上へ―

上へ―

上へ…?

……体が……動かない……。

なぜ…だ…?

番場の身体も沈んだまま…。

このままじゃ…。


―死?―


うそ……だろ……。

しかし、それを静かに感じ取っている自分が、不気味に感じた。

……まあ、死んで学級裁判が開かれても、一ノ瀬が言ってくれるだろう。
……とりあえず、守れた、な……。

私は…目を閉じた。


目を開けると、夜空が見えた。

…………死んだ、のか……?

それとも……。

???「兎角っ!」

東「?」

声のした方を見ると、

東「一ノ瀬」

一ノ瀬がいた。
足元に番場もいる。目を閉じてぐったりしていた。
周囲にはまだ霧が晴れていない。むしろ、深くなった気もする。

一ノ瀬「兎角っ! 兎角っ! 兎角っ!」

一ノ瀬が抱き付いてきた。

…口には出せないが、重い…。
それと胸のあたりに、なにか柔らかい感触がした。

一ノ瀬「良かった! 生きてた! 生きてたよ!」

涙を流しているようだ。

東「…………」

声がうまく出ないため、視線で言う。

一ノ瀬「番場ちゃん? 大丈夫だよ。死んでない。気絶してるだけだよ」

そうか、良かった。

気が抜けたからか、意識がまたなくなり始めた。

一ノ瀬「2人とも溺れて息してなかったから、人工呼吸したんだよぅ! …やり方うろ覚えだったから不安だったけど…良かった、良かったよぅ!」

そうか、ありがとう…………ん?

ジンコウ、コキュウ?

人工、呼吸?



―人工呼吸、だと?



な、なんてことだ…⁉

私は一ノ瀬と…っ!

いや、待て!


2人…と、言ったか?

なら…なら…



―番場も?

ゆ、許せん!

起きたら、もう一度とっちめておく!

いや、だがしかし、結果論だが、番場のおかげで私は一ノ瀬と…………くっ! 寝ていた自分が憎いっ!



そんなことを悶々としながら、私は意識を手放した。


一ノ瀬「…寝ちゃった…どうしよう?」

いまだに霧は晴れない。たんたんと立ち込める。遠くの景色も見えなくなった。

せっかくのプールの景観を台無しにしてしまったから、ありがたいと言えば、ありがたかったかもしれない。

パラソルなんかはすべて大破してしまっていた。

一ノ瀬「……番場ちゃん…やっぱ、拘束しておいた方が、いいのかな?」

一ノ瀬が悲しそうな顔をする。







???「お困りッスかぁ?」


一ノ瀬「え?」


急に現れた人物が続ける。


???「いや偶然傍観してましてね、ちょうどロープがあるんでどうッスか?」


モノクマ劇場

『現実と幻覚の違いはどこなんだろう』

『ありえるから現実?』

『ありえないから幻覚?』

『ウププププ。違うよね?』

『もうわかってるんでしょ?』

『現実ってのは絶望があり、幻覚なのは希望があるんだよ!』

『え? じゃあ、この世界は結局どっちだって?』

『ウププププ。両方あるなんて、贅沢だと思わないっ…?』

それに賛成だっ!


ほぼ毎日検索しているのに、新しいSSが見当たらない…orz

まぁ、これはまだ続きますので、よろしくです
一応年明けまでに終わらせるつもりだけど…間に合うかどうか…


第3の島・病院


目を開ける。

見慣れない天井があった。

東「…………」

…ここは……私は今ベッドに入っているのか…。

メカしえな「気が付いたか?」

東「⁉」

ガバッと身体を起こす…と、

東「うっ⁉」

フラリと視界が揺れた。

ポスッとベッドに倒れこむ。

メカしえな「無茶はするな…まだ傷は全快していないんだからな」

東「……ああ、そのようだ…」

思い出した。

昨日の夜、番場が……真夜が一ノ瀬のコテージに襲撃してきたんだ。
それを私が撃退しようとして…。

⁉ そうだ⁉

一ノ瀬は⁉ 番場は⁉

身体を起こして、ベッドから降りようとすると、自分が患者服を着ているのがわかった。

メカしえな「おいおい…無茶するなって…」

そうか…ここは病院か…なら、第3の島。ホテルまではそこそこ距離があるな…。

メカしえな「まだ寝とけって…な?」

起き上がりかけた私の肩を押す。耐えることなく、ベッドへと倒れこんだ。

東「…………」

私の肩を押したのは、人の手だった…。

東「……剣持?」

メカしえな「? そうだけど、なんだ?」

メカしえながベッドのそばの丸い椅子に座っていた。

メカしえなの身体が変化していた。

まず全身が皮膚に変わっていた。
昨晩まで機械の身体だったのに…。

そして、目も複眼から変わっていた。
左目は元の人間の目に…。左目は、包帯で隠れていた。
包帯は斜め巻きで、後頭部のところで蝶々結びになっており、結ぶのに余った包帯が背中に流れていた。

片目しか見えないはずなのに、眼鏡をかけている。モノクルじゃないのか…。


―というか…、

東「…ホントに剣持…いや、メカしえななのか?」

メカしえな「なんだそれ…ボクはどうみてもボクだろう? ほかのなにかに見えるなら、眼科に行った方がいい」

メカしえながハァッとため息を吐く。

…………おかしい。

メカしえながまともだ…⁉

東「…お前、なにかあったのか?」

メカしえな「それはボクのセリフじゃないのか⁉ …まぁいい。皆にはもう説明したことだが…」

メカしえなが足を組む。

メカしえな「昨晩モノクマがボクのところに来てな…。『ウププププ。どっかのお嬢様がひどいクレームをつけてきたから、もう一度修理してやるよ。ボクと彼女とご都合主義に感謝するんだね。ウププププ』とか言って、ボクをこの身体に変えたんだ…」

声真似がモノクマそっくりだった。

変声機でも使ったのか? 小学生探偵のようだったぞ。

東「……良かったな。私も嬉しいぞ」

メカしえな「無表情だけど⁉」

東「本当だ。昨日のお前と来たら―」

メカしえな「やめてくれ⁉」



メカしえな(昨日までと性格が違うので、剣持に戻そうと思う。性格が剣持しえなになったからな)が両手で顔を隠していた。

剣持「……ボクの一生の黒歴史だ……」

東「…………」

察せたので黙ることにした。

剣持「そ、それより、だ」///

剣持がゴホンとわざとらしく咳をして、真面目な顔をする。

剣持「昨日の夜、なにがあったんだ? すでに一ノ瀬や番場から聞いているが、お前からも聞いておきたい」

東「…そうだな。わかった…」


昨日の出来事を剣持に話す。


剣持「そういうことか…2人の話と一致するな…だとしたら、ホントだったのか…」

東「なにがだ?」


剣持「――番場が一ノ瀬を襲ったのが…」


東「…ああ」

理由はわからないが、突如襲って来た。

東「番場はなにか言っていたか?」

剣持「いや、残念ながら、朝昼は真昼なんだ。ビクビクしてて会話にすらならない。英相手にしか会話が通じない状態なんだ…」

東「その英から話が聞けないのか?」

剣持「…………そうだな、そうだよな。こっちの話もしよう」

剣持が腕も組む。

剣持「まず言っておこう……いまや、黒組はかつてないほど、面倒なことになっている―」

……だろうな。

剣持がすごくいやそうな顔をしていたからだ。


剣持「……さて、まずなにから話そうか。

そうだな。今朝のモノクマアナウンスから話そう。
モノクマアナウンスは時間通りに流れた。ボクもそれを聞いて、食堂に向かった。

食堂にいたのは、首藤、走り、一ノ瀬、そして英だ。

意外なメンツだろう? 常連組と不定期組の代表だろう4人が早くいた。

だが、この時点ですでになにかもめてるようだったぞ。
一ノ瀬と走りを庇うように、首藤が英と面を向い合わせていたんだ。
表面上は首藤と英は落ち着いていたな。2人とも微笑みを浮かべていたぞ。でも、2人も目はマジだったから、すぐ異変に気付いたが…。

ボクの異変はいつ説明したかって? まあ、このときだな。ボクの変化について話している最中、桐ケ谷、生田目も来た。

朝食会に来たのはこれで全員。7人だ。

犬飼、武智の欠席組は相変わらず。
東…お前は病院。理由は自分が一番わかるだろう?
そして、番場。
もめてる原因は…こいつだ。

英がこれほど早く出席しているのは、今朝番場が英のコテージに来なかったからだそうだ。
おかしいと思って、食堂に来たと言っていた。

知っての通り…というか、お前は当事者だから当然だけれど、番場は昨日のことで、一ノ瀬と走りに拘束されているんだ。
拘束場所は、走りのコテージ。
理由は当然、危険だから。

英に昨日のことを一ノ瀬が説明した。正直どう贔屓目で見ても、番場が悪い。
それは英もわかっていたんだろう。
あくまで穏やかだったからな。

でもま、納得も理解もしたが、我慢ができないんだろうな。
拘束はひどすぎると言ってね…番場の解放を要求するんだ。

走りが飲めないと言ってね、そこでひと悶着があったわけだが、省略しようか。

最終的に、番場を旧館に拘束ということで妥協した。
それも、拘束は両手に手錠のみ。足枷はなし。
旧館の大広間のみ、自由に行動OK。
生活必需品やそのほかのモノは、第三者が持っていくことになった。あっ、英の場合は、首藤が同伴することになった。

そこでまた英ともめたわけだが…省略しようか。

英は結果折れて、番場に会いに行くときは、首藤と一緒になった。
あ、そうそう。3時間ごとに番場の様子を見に行くことになった。担当は交代制で。

一ノ瀬とその場にいなかった欠席者を抜いた6人で、だ。英、首藤はセットだから、実際は生田目、桐ケ谷、走り、英と首藤、そしてボクの5組だが…。

ん? なんで一ノ瀬を抜くかって?
…あいつは優しすぎる。
番場の拘束にも乗り気じゃなかった一ノ瀬が一人で向かったら、番場の拘束を解くかもしれないだろ?
そしたら、今度こそコロされちまうよ…。
守護者もこのありさまだしな…。

…怒るなよ、これでも感心しているんだ。

ま、なんにせよ、番場は今旧館の大広間にいる。ご飯とトイレも誰かと同伴の徹底ぶりでな。

番場の処置はそんな感じ。これが今朝から午後までの騒動だ。5時間近くもかかったんだぞ?

…いや、単純に寒河江がいないから、脱線した話を戻す役がいなくなっただけだ…。…まったく、あいつらはホントにすぐ話が脱線する…。

ゴホン、ま、そんなことより…今は17時55分。

お前は運がいい。

…なぜかって……?

あと、5分後に、武智と首藤、一ノ瀬の3人が犬飼のコテージに行くんだ。

理由はわかるよな?

…励ましに、だよ」



東「なに⁉ 私も行くぞ!」

剣持「ダメだ! ……って言っても、行く気だろ?」

東「…ああ」

剣持がハアッとため息を吐く。

剣持はため息が似合うな…。そんなことを思った。

剣持「ボクも行こう。お前の傷の峠は過ぎただろうし、外出しても大丈夫だろうな…」

東「いいのか?」

剣持「気にするなよ。ボクたちとも……同じクラスメートだろ? 持ちつ持たれつでいこうぜ」

そう言って私に肩を貸してくれる。

剣持「じゃ、着替えて、ホテルまで行くぞ」


第1の島・ホテル


剣持「一足遅かったけど、間に合ったようだな…」

武智「伊介さ~ん♪ 出っておっいで~!♪」

武智が犬飼のコテージのドアをドンドン叩いている。
呼び鈴も同時に押していた。
新手の嫌がらせだな…。

犬飼のコテージの前に武智、首藤、一ノ瀬がいた。

一ノ瀬「えっ、兎角さん⁉」

一ノ瀬が私に気づく。

首藤「おや…もう良かったのか?」

剣持「東がどうしてもと言うんでね…」

東「…悪いか?」

首藤「ふふっ、おぬしは寝ておれよ。ここはワシらに任せて…」

東「いや、私も行く。寒河江を…あいつを追い詰めたのは私だからな…」

首藤「…ふむ。なら、好きにするといい…」

武智「兎角サン!♪ おつ~♪」

武智がニコッと笑って、手をふる。

昨日の首藤の話を思い出す。武智の正体についてだ。

一ノ瀬が武智と一緒になっているのに気付いた。

私はまた一ノ瀬を危ない目に遭わせるところだったのか…。

首藤がいるから、武智も本性を見せないのか…。

一ノ瀬もどうしてここまでタフなんだ。

自分を狙うアサシンばかりだというのに…それも快楽殺人鬼と知っているのに……。

理解できない…。

東「…………」

剣持「えぇと、今は走りが番場当番か?」

首藤「ああ。その様子じゃと、東の当番はなしでよさそうじゃの」

一ノ瀬「晴がやるよ!」

東「一ノ瀬…」

一ノ瀬「こんな傷負わせちゃったのも、晴のせいだから…」

東「…それは…違うぞっ…!」

剣持「ま、それはおいといて…犬飼はどうした?」

武智「さっすがしえなちゃん!♪ KYさは黒組随一だね♪」

剣持「えっ⁉ 今のどこがそうなんだ⁉ 今は犬飼の件が最重要だろう⁉」


首藤「見ての通り、うんともすんとも言わん。鍵も開けれんしの…」

東「……モノクマは?」

一ノ瀬「え?」

首藤「…なるほど。その手は浮かばなんだ…」

武智「はぁん、なるほどね♪ じゃあ―」

モノクマ『もういますぜ』

剣持「うおぉう⁉」

モノクマ『できる大人は言われる前にやることだよねぇ~』

首藤「…っということは、開いてるんじゃな?」

モノクマ『そりゃあ当ぜn―』

バキッ

武智「開いてるみたいだよ?♪」

剣持「壊すなよ⁉」

ドアが外れていた。

モノクマ『もう…武智さんは辛抱を覚えてよねぇ~』

一ノ瀬「そういえば、剣持さんのコテージのドアも蹴り破ってたね?」

剣持「そうなのか⁉」

武智「あぁ、あれ? なんか直ってたんだよねぇ♪ つまんないのぉ♪」

剣持「つまんなくねーよ! なにしてくれてんだ⁉」

モノクマ『あぁ、あれは学級裁判に関係することなので、ボクが直しておきました』エッヘン

武智「ま、いいじゃん♪ それより、伊介さ~ん♪」

剣持「あっ、おい、待て! それと、モノクマありがとう!」

剣持が私を一ノ瀬にパスして、犬飼のコテージに入っていった武智を追う。

首藤「では、ワシらも行くか」

一ノ瀬「うん!」

東「…ああ」

一ノ瀬の肩を借りて、私も犬飼のコテージに入る。




モノクマ『…ウププププ。さて、吉と出るか、凶と出るか…楽しみですな~』


犬飼のコテージ


犬飼がベッドで横になっていた。

武智「伊介さ~ん♪ おはよう~♪」

武智が犬飼の毛布を引きはがそうとして―

武智「…あれ?」

犬飼「…放しなさいよ…」

―引きはがせなかった。

武智「案外力あるんだね、伊介さん♪」

犬飼「当たり前でしょ?💕」

犬飼が目から上を毛布から出して、私たちを睨む。

犬飼「…で? そろいもそろって、何の用?💕」

首藤「寝込んでる仲間を迎えに来たんじゃよ」

一ノ瀬「伊介さん。外に出ようよ!」

剣持「太陽の光は浴びないと、身体に悪いぞ?」

武智「遊ぼうよ~♪」

東「…………」

犬飼「………やだ。伊介、めんど~い💕」

武智「そんなこと言わないでさ~♪ ね?♪」

犬飼「疲れたから出てって」

首藤「…………」

犬飼が頭まですっぽりと布団に覆いかぶさる。

武智がなにかを言う前に、首藤が前に一歩踏み出て、武智を手で制して後ろに引っ張る。

首藤「寒河江か」

犬飼「…………」

首藤「引きずるのもわかるが、そろそろ立ち直らんか」

犬飼「…………首藤さんは強いわねぇ💕 春紀が言うのもうなずけるわ~💕」

首藤「…なにが言いたい?」

一ノ瀬が何か言おうと口を開いたときに、首藤が手で制す。

犬飼「…みな、アンタみたいに強くないのよ…」

首藤「……ワシも昨日立ち直ったばっかじゃ」

犬飼「…………」

首藤「苦しいじゃろう。じゃが、立ち直らなくてはならんのじゃ。おぬしはわかっておるじゃろう? なら―」

犬飼「無理よ…」

首藤「?」

犬飼「…アタシには、無理よ…アンタみたいに―」


一ノ瀬「それは違うよっ!」


一ノ瀬が首藤の前に立つ。

一ノ瀬「首藤さんだって苦しかったんだよ⁉ まるで、首藤さんが苦しんでないみたいじゃんか⁉ そんなの…そんなの、いくらなんでも、ひどいよ⁉」

首藤「…一ノ瀬」

犬飼「……じゃあ、なんなの?」

犬飼が再び頭を出して、睨む。

犬飼「じゃあ、なによ。首藤さんが立ち直ったから、アタシもそうしろってこと? それこそ勝手じゃないの?」

一ノ瀬「…そ、それは……」

犬飼の睨みは迫力があり、一ノ瀬がひるむ。

武智「いや~ま、ぶっちゃけそうなんだけどさ…♪」

武智が横やりを入れる。

武智「ちょうど2日くらい経つわけだし、もういいんじゃない?♪ そろそろ元気出したら?♪」

犬飼「…あ?」

犬飼の睨みがより険しくなる。

…が、武智はまったくひるまない。

武智は睨み返していた。

…笑みも浮かべて。

武智「伊介さんさぁ~♪ 悲劇のヒロイン気取ってるわけじゃないよね~?♪」

犬飼「……」

犬飼が無言で上体を起こす。

武智「悲しいのもわかるよ? あたしもしえなちゃんで色々見てるわけだし~?♪」

犬飼「……アンタになにがわかんのよ…」

武智「伊介さんのことはわかんないよ?♪ あくまでも悲しみのこと♪ あたしは引きずらないタイプだしっ♪ 友人とか好きな人とかが死ぬたびに引きずってたら、あたし、何度も自殺しちゃうってば♪ あっはははははは♪」

首藤「まあ、おぬしはな…」

一ノ瀬「…………」

…ブラックジョークか? 武智しか笑っていない。


犬飼「…なら、放っといてよ…」

武智「わからなかったら、落ち込む友達に手を差し伸べちゃダメなの?♪」

犬飼「……」

武智「あたしはわからないよ♪ だって伊介さんどころか、黒組の皆とも、一人を除いた全員と、あたしは価値観が隔絶しているんだから…」

犬飼「……」

武智「でもさ、そんなのどうでもいいじゃんっ♪ 仲良くするのに、価値観が一緒じゃなきゃダメだなんてルールはないよ?♪」

犬飼「……」

武智「外は楽しいよ?♪ ひきこもるだなんて、もったいないよ!♪ 忘れて、次の子を探そうよ!♪」

剣持「まあ、おおむね同意だな…」

犬飼「……アナタ、復活していたのね…」

そういえば、犬飼だけは、メカしえなと会っていないのか…。

…………たしかに、もったいない…。メカしえなが過去のことと思うと、少し寂しいな…。いまや普通の剣持だ。

剣持「そりゃ、苦しいこともあるけれど、まあ楽しいよ。ボクもひきこもりのような生活になったことはある…だから、今外にいることの大切さがわかるんだよ。だからさ、とりあえず、外出はした方がいい」

犬飼「……」

東「……寒河江のことは…もうしょうがないだろう…」

犬飼「っ! ……しょうがなくなんか…っ!」

東「違うなら…なんで出て来ないんだ…?」

犬飼「⁉ ……アンタ、ケガしてんの…⁉」

腹部の痛みをこらえながら、続ける。

東「しかたなく…ないんだろ? 原因は…モノクマだろ? ……やられたら…やり返すんじゃないのか? 私の知る犬飼なら…そうした」

犬飼「……そりゃ、そうだけど…だからって…そんな簡単に気持ちを切り替えるなんて…!」

東「寒河江も…きっとやり返す……そうだろ?」

犬飼「…………」

東「私の知っているあいつは…やられて黙っているようなヤツじゃ…なかったぞ…」

犬飼「…………」


一ノ瀬「春紀さんは、、きっと伊介さんに元気でいてほしかったんだよ…最後に言ってたよね?」

犬飼「…………」

犬飼の目の色が変わった。

一ノ瀬「『生きてくれ』って、ただ生きるだけじゃなかったと思うよ?」

犬飼「…………」

犬飼が目を伏せる。
考え事でもしてるのだろうか?

首藤「こういうセリフは逆効果かもしれん…いや、逆効果じゃろうな…。だが、あえて言わせてもらう…気持ちは言わねば通じないからの…」

犬飼「…………」

首藤「ここにいるワシらも、ここにいない英たちも、皆おぬしを心配しておるぞ…たまにでいい、一瞬でいい、元気な姿を見せてくれ。そして、願わくば、また前のように、ワシらと会って、ワシらと冗談を言いながら、ともに――生きていこうぞ…」


武智は微笑みながら、剣持は真剣に、首藤は穏やかだが無表情に、一ノ瀬は心配そうに…犬飼を見つめていた。

私はどんな顔をしていたかはわからない。
だが、それなりの顔をしていたと思う。

ここにいる皆全員、思うところは違えども、犬飼を想っていたことは確かだ。

だからこそ、ここにいる。

それはきっと、ここにいない彼女らも同じだ。


犬飼「…………」

一ノ瀬「……伊介さん」

やがて犬飼が―フッと笑う。


犬飼「やぁねぇ💕 晴ちゃんまでそんな心配そうな顔して…💕 なに?💕 だれか新たに死んだのかしらぁ?💕」


犬飼が憎まれ口をたたいた。

一ノ瀬「伊介さんっ!」

武智「おっ?♪ 元気出た?♪」

剣持「…犬飼…」

首藤「…………」

皆ホッとしているのが伝わった。私もそうだろう。でなければ、今の気持ちは表現できない。

犬飼「……迷惑かけたわね…少しだけ、考えを変えたわ」

武智「へぇ?♪」

犬飼「モノクマを…ぶちのめすことにしたの💕」

剣持「えっ、マジで⁉」

首藤「ふふっ、それでこそ、犬飼じゃな」

一ノ瀬「伊介さん! 晴たちも手伝うよ!」

剣持「そ、それって、ボ、ボクも入っているのか⁉」

武智「え……ていうか、しえなちゃんはこっちの切り札でしょ?♪ 単身でモノケモノ倒すくらいだし…♪」

犬飼「え⁉ そうなの⁉」

剣持「い、いや、それはだな…! 事実だが、そのときのボクはボクじゃなかったんだよ…っ!」

犬飼「? どういうこと?」

武智「クレイジーしえなちゃんだったの♪」

一ノ瀬「剣持さん、すごかったんだよ!」

東「主に性格がな…」

剣持「やめろ! 黒歴史なんだぞ!」

首藤「ふふふ」

犬飼「…………」


首藤「…? なんじゃ? ワシの顔になにか愉快なものでも?」

犬飼「いえ……でもそうね……けじめ、とまではいかないのかしら……あくまで春紀で、アタシはそのおまけ……」

犬飼はボソボソ言うと、自分の机に置いてある化粧品を持って、床に落とした。それは首藤の方へと転がった。

首藤「おい、落としたぞ?」

首藤が拾って、犬飼に渡す。

犬飼「あら、ありがとう。ごめんなさいね💕」

笑顔で受け答える犬飼。

首藤が目を見張る。


犬飼「……ほんとうに……ごめんなさいね……」


首藤を見る犬飼の目が悲しげだったからだ。しかし、涙は流していない。

首藤「……いや、気にするな。ワシらはクラスメイトじゃろう? これからも頼むぞ?」

犬飼「……うん……わかってるわ…」

首藤が振り返って、私たちと向かい合う。

首藤「行こうか、皆」

武智「え? もういいの?♪」

剣持「…もういいだろう?」

一ノ瀬「うん、もう大丈夫だよ、きっと」

首藤が背後にいる犬飼に向かって、

首藤「犬飼。19時に晩御飯を食堂でとる。……遅れるなよ」

犬飼「…わかったわ💕」

犬飼を残して、コテージから出た。


第1の島・ホテル


武智「犬飼さん、来るかなぁ♪」

一ノ瀬「きっと来るよ!」

剣持「ま、もし来てくれたら懸念材料が一つなくなるわけだが…」

首藤「まあ、五分五分じゃろうな」

東「わりと厳しめだな」

首藤「まあの」

モノクマ『ちくしょうめ! ちくしょうめ! うまくいきやがって、こんちくしょうがっ!』

モノクマがでかいマグロをサンドバッグにしていた。

一ノ瀬「ちょ、ちょっと! 食べ物粗末にしちゃダメだよ!」

一ノ瀬、そこじゃない。

首藤「なにか用かの?」

モノクマ『あれま? こりゃ偶然だね…犬飼さんを助けられたのも偶然だね…』

東「…なにか用か?」

モノクマ『ん? 弱っているのに、噛みついてくるね~東さん。今君が一番次の被害者になりやすいってのに…のんきだこと…ヤレヤレ』

剣持「な、なに⁉」

東「言ってろ…私たちは絶望しない」

モノクマ『ウププププ。強運の強いヤツら。番場さんの襲撃も乗り越えるし…せっかく手助けしてあげたってのにさ…だれも入れないようにしたのに、しくじりやがって…まぁ、東さんに一ノ瀬さんが相手なら、仕方ないよね。なにせ、黒組の勝利者コンビなんだし…』ボソッ

よく聞こえなかったが、手助け?

もしかして、あのときの霧か⁉

東「おい!」

モノクマ『ウププププ。じゃぁねぇ~』

モノクマが煙のように消えた。

東「あっ、くそっ!」

一ノ瀬「……小さくて聞こえなかったよ?」

剣持「番場がどうとか言ってたか? よく聞き取れなかったな…」

首藤「ワシもぎりぎりじゃ。東と一ノ瀬なら仕方ない? そのあとになんて続いたか……武智はどうじゃ?」

武智「…………」

首藤「武智?」

一ノ瀬「武智さん?」

武智「へ? …あぁ、ごめんごめん♪ ちょっとボォ~っとしてた♪ で、なんの話?♪」

剣持「聞けよ⁉」

武智「たっはは。ごめんねぇしえなちゃん!♪」ガバッ

剣持「わっ⁉ おい! 抱き付くな!」

武智「うん~♪ やっぱこの抱き心地サイコ~♪」

剣持「ふ、ふざけるな! さっさと離れろ! …って、すごい力だ⁉」


グゥゥゥウゥッ

東「…………」///

一ノ瀬「……あっ、晴食堂に用があるんだった!」

東「いや、いいんだ、一ノ瀬。気を遣わなくていい…」///

武智「ガチな音だったね…?♪ 兎角サン自己主張が激しいな~♪」

武智が剣持から離れる。

東「……うるさい…!」///

剣持「たしかに…まだ何も食べていないよな?」

首藤「では、軽く食べていくといい。おにぎりなどならすぐじゃぞ」

東「ああ、そうしよう」

剣持「そういえば、この身体になって、ボクはご飯がいらなくなったんだな…」

一ノ瀬「しえなちゃん…」

剣持「おかげでずっとパソコンをいじられる」

一ノ瀬「……え?」

剣持「あ、いや、なんでもない。…まったく、こんな便利な…じゃなくて、不便な身体にしやがって…モノクマのヤツ、許さないんだからな…!」

一ノ瀬「あの…もしかして、しえなちゃん…」

剣持「な、なんだ⁉ ま、まさか喜んでいるとでも…⁉ そ、そんなわけがあるか…⁉ こんなガンダムみたいな身体にされて嬉しいわけがないだろう⁉」

一ノ瀬「…………」

剣持「おい…なんだその目は…やめろ! 東もそんな目でボクを見るな! ボクは決して喜んじゃいないぞ!」

一ノ瀬「…ウン…シンジテルヨ…」

東「どうだか…」

剣持「ホントだって⁉」



武智「……忘れた方が楽だけどな…」ボソッ

首藤「ワシは覚える派じゃな…」

武智「…………聞こえてた?♪」

首藤「ワシもおぬしほど聴力はよくないが、これほど近ければ聞こえる」

武智「ふぅん……」

東と剣持と一ノ瀬は前にいる。3人は会話に夢中だ。

首藤「…おぬしにしては、よく我慢しておる方じゃな。それとも、タイプがいないか?」

武智「ん? なんのこと?♪」

首藤「とぼけなくともよい。ワシは知っておるよ……武智、大事にするというのも、たまには悪くないと、ワシは思うぞ?」

武智「……あはっ、だ~から~、なんのこと~?♪」

首藤「ふふっ、そう睨むな…いや、そろそろ動くと思っての。釘を刺そうと思ったんじゃ…」

武智「…………なんのことかわかんないけど、はっきり言うんだね♪ まるで、あたしがなにかするみたいな口ぶりじゃん…♪」

首藤「おぬしは鋭いじゃろうと思っての…回りくどい言い方はやめた。アサシンといえど、ワシにも恩義というのは感じる。もし、彼女を狙うというのなら―」

首藤がそこで切って、武智を睨む。

武智「…………」

首藤「―なんての…冗談じゃ」

首藤がフッと笑う。

武智「……な~んか恩義とか、昔の人みたい♪ 仁義とかそういうの、今流行んないよぉ?♪ 古くてダサいって!♪ それともなに?♪ なにかされたのかな?♪」

首藤「うむ。励ましてもらった」

武智「は? そんだけ?」

首藤「うむ」

武智「……あっはははははは! たったそんだけなの! 首藤さんって、酔狂だね♪」

首藤「粋じゃろう?」

武智「無粋だよ」

武智が首藤を睨む。

武智「邪魔したら許さないよ?♪」

首藤「ふふっ、義を見てせざるは勇無きなり、じゃ。…借りたままは嫌いでな。さっさと帳消しにしたいんじゃよ。いつ返せなくなるかわからんからな。危うくそうなるところじゃったようじゃしの…」



武智「…………」


首藤「…………」



剣持「さっきから後ろで何を話しているんだ?」

一ノ瀬「武智さんと首藤さんの会話って、どんな内容か気になるよ!」

東「一ノ瀬…わざわざ聞くほどか?」

武智がさっと表情を変えて、満面の笑みで、

武智「ううん、今晩のおかずなににするか迷っててさぁ♪ それの相談してたの♪」

一ノ瀬「そうなの?」

首藤「うむ。おぬしらはどうする?」

東「カレー一択だな」

一ノ瀬「兎角さん、そればっか…身体に悪いよ?」

東「カレーは万能食だ」

剣持「ボクは電気かな。たまには太陽光発電の電気もいいけど、水力の電気もいいな」

首藤「違いがあるのか…」

そして、5人で喋りながら食堂に向かった。

全然平気ですよ?笑

明らかな罵詈雑言はショックで寝込みますが、これくらいなら大丈夫ッス!

それだけ読まれてるとか…嬉しす。


食堂


英「あら、東さん、ご機嫌いかが?」ニコニコ

東「…まあ、よくなっているとは思う…」

英「そう、それは良かったです」ニコニコ

英が今まで見たことがないくらいニコニコしていた。

英は席に座り、紅茶を飲んでいた。晩御飯は済ませたのか…?

気味が悪いな…。

桐ケ谷「こんばんは」

生田目「やあ」

桐ケ谷と生田目もいた。席は隣同士。
やはりこの2人はセットでなければな…。

英「で、犬飼さんはどうでしたの?」

首藤「断言はできんが、順調じゃろうな」

武智「本人が来たら成功だね~♪」

一ノ瀬「大丈夫! きっと来るよ!」

剣持「ふん。自宅警備の快適さを知ったら、楽に出てこれまい…」

桐ケ谷「ザコ敵みたいなことを言うんですね」

剣持「ザ、ザコ⁉」

英「ふふふ、桐ケ谷さん、知らせなくていいこともあるのですわ」ニコニコ
英が口元を手で隠して、上品に笑う。

剣持「おいそれどういう意味だ⁉」

東「……おい、なんか英の様子がおかしくないか…あんな機嫌いいときなかったよな?」ボソッ

武智「あれね、腹の底ではマグマのように煮えたぎっているんだよ~♪」ボソッ

東「あーそんな気はするな」ボソッ

首藤が生田目と桐ケ谷の後ろを通りすぎるときに、

首藤「なにかおかしな行動はしたか?」ボソッ

桐ケ谷「いえ、今のところ何も…」ボソッ

生田目「私は警戒しすぎだと思うがな…英に限って…」ボソッ

首藤「念のため、じゃ」ボソッ

……と、会話した。3人ともかなりの早口だった。


英「そういえば、東さん―」

東「…なんだ」

英「昨日は番場さんと、大変だったそうですね?」ニコニコ


…いきなり仕掛けて来たな…。


一ノ瀬と剣持がゴクリと唾を飲んだ。

桐ケ谷や生田目や首藤も固唾をのんで見守っている。

武智はテーブルに並べられているご飯を手にとっていた。


東「別に…いつも通りさ」

英「そうですか」ニコニコ

英が紅茶を飲む。

英「―ところで、番場さんが拘束されていることですが、東さんは聞いていますか?」ニコニコ


……こいつ……交渉してくるな……。


英「あら、いやだわ。そんな野蛮な目で見つめたりして…わたくし、なにか失礼なことでも―」

東「番場の件は片付いているって聞いたぞ」

英「…………」

英が微笑むのをやめ、私も見る。

武智「じゃ、あたし、鳰ちゃんと交代してくるよ!」

武智が唐突にそう言って、食堂から出て行った。食事を手にとっていたのは、持っていくのを選ぶためか…。

英「番場さんがしたことはよくわかっているつもりです。それでも、拘束はやりすぎだとは思いませんか?」

東「……」

英「本人も反省しているようですし、ここは―」

東「その発言は、アサシンとしてか? それとも。友人としてか?」

英「…………」

東「前者なら、愚かだ。後者なら、話にならない…」

私は椅子について、カレーを食べ始める。

英はなにも言ってこなかった。

だが、その視線はきついままだった。


首藤「…………ふぅ。冷や汗かいたわ…」

一ノ瀬「兎角さん、そんなきつい言い方しなくても…」

東「きつく言わないと、あいつはずっと言い続けるぞ。もう取り付く島もないことを示すにはこれが一番だ」

一ノ瀬「それは、そうかもしれないけど…」

正しいことをやったはずだ。少なくとも間違ったことは言っていない。

どうせ英は頭の中ではわかってる。
わかってて言っているだけだ。

ヤツは番場の弁護をしている。

だが、ここは裁判場じゃない。

暗殺者ばかりそろった黒組だ。

標的は討つ。怪しければ拘束。そういう世界なんだ。

まだまだ温情判決だ。足枷はないようだし、広間も自由なんだからな。

しかし、英が素直に引くタマとは思えない。策を考えておく必要があるだろうな…さて、どうしたものか…。

そして―


生田目「…………」

桐ケ谷「…………」

英「…………」

首藤「…………」

剣持「…………」

一ノ瀬「……え、えと……」


―この空気もどうしようか…。会話がまったくない。

首藤は英に警戒心を向けてるし、その英もなにを考えているのか読めない。

剣持は知らんぷりだ。

一ノ瀬も話し相手がいないため、困っている。

しかし、不思議なのは、生田目と桐ケ谷だ。

この2人に会話がないときがあるなんて…。って、なんか前も同じことを言ったような…。

生田目と桐ケ谷はお互いに隣り合ってはいるものの、無言だ。

お前らもう離れて食えよ…。

くそっ、こういうときに限って、モノクマは来ない!

なにか、会話のきっかけでもあれば…!


???「あれ~? な~んか、暗いッスね~?」

???「やぁだぁ~💕 雰囲気悪くしないでよね~💕 ご飯が不味くなるんだけど~?💕」


一ノ瀬「鳰! そ、それに、伊介さん⁉」

犬飼と走りがそれぞれロビーの階段から上がってきた。

犬飼「なに~?💕 皆して、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして💕」

首藤「……予想以上に復活が早いの……」

犬飼「犬飼伊介は速攻なの💕 ……なんてね💕」

犬飼がウインクした。

犬飼を外で見るのも、食堂で見るのもじつに2日ぶりである。

走り「ちょっとちょっとぉ⁉ ウチをスルーはいけないッスよぉ? しかも、なんで空気が重いんスか?」

いつもならうっとおしいが、今ほど頼りになったと感じたことはない。

走りの軽薄さと犬飼のマイペースさが場の雰囲気を和らげる。

走り「ちょっとぉ、もっと盛り上がりましょうよぉ! なにかあったかと思っちゃったじゃないッスかぁ! って、うげげ⁉ 兎角さんがいる⁉ も、もしや幽霊ッスか⁉」

東「ああ、なんだかずいぶん会っていない気がするな…」

走り「あ、ウチも同じこと思ってたッスよ~!」

東「嬉しくないな」

走り「はっきり言うッスね⁉」

英「犬飼さんも戻って来れて良かったですわ」

犬飼「にしては、ちっともニコニコしてないけどぉ?💕」

英はもう笑顔を浮かべていない。

英「わたくしのことはどうでもいいのです」

走り「いやいや、なに言ってるんスか? 英さんと首藤さんがウチら黒組の頭脳派じゃないッスかぁ!」

犬飼「まあ、比較的、ね💕 別に負けたなんて思っていないから💕」

まあ、たしかに、1度目の学級裁判まで、この2人が先導していた気がする。

首藤がヤシの実割りで黒組の仲を良くさせて、英がモノケモノ討伐を指揮した。

学級裁判から変わったな。

やはり、首藤の落ち込みが尾を引いたか…。

そして、今は―


英「…………」


―英が番場の件でひどく動揺しているな…。

これでは、またなにもできそうにない…。

早急な解決が必要だな。


走り「英さ~ん、機嫌良くなったッスかぁ~?」

犬飼「なに、アナタ機嫌悪かったの?💕」

東「悪かったというよりは、今もだ」

英「…………」

犬飼「あら💕 現在進行なのね~💕」

走り「そうなんスよ~。ここはどうか一つ、立ち直った側からアドバイスを!」

犬飼「絞めるわよ?💕」

走り「リアル脅し⁉」

東「アサシンジョークだな」

走り「マニアなジョークッスね⁉」

英「…まったく、ウサギにイヌにハトは元気ですこと…少しはわたくしに気遣ってほしいですわ」

東「…ウサギ?」

犬飼「イヌ?💕」

走り「……いや、あの、ウチだけ間違えてるッスよ?」

東「……私の兎角というのは、そもそも自己紹介のときに言ったと思うが、兎角というのはありえないものという意味で、ウサギとはまったく関係がないんだ」

走り「マジレス⁉」

犬飼「あはっ、なんかイラッとする~💕」

走り「『💕』つけて言う言葉じゃないッスよ!」

英「あら、それは失礼しましたわ」

犬飼「ねえ、なんでコイツ機嫌悪いわけ?💕 鳰、アナタなにかした?💕」

走り「真っ先に疑われるんスね、ウチ…。ま、いいッス。英さんは、番場さんのことでイライラしているんス」

犬飼「番場ちゃん?💕 それは……真昼じゃないわよねぇ?💕」

走り「はいッス。かくかくしかじかで、現在拘束中なんス」

犬飼「ふ~ん💕 番場ちゃん、しくじったんだぁ💕」

英「……言っておきますが、番場さんの悪口は許しませんよ?」

犬飼「あっはは💕 べっつに~?💕 まぁ、いつかヤリそうな雰囲気はあったしね💕」

東「なに?」

犬飼「あの子と武智…アイツらは結構きつい臭いするんじゃない、ねぇ、東さん?💕」

東「……武智はひどかった。しかし、番場は微妙だったな…」

走り「ウチにははっきり言ったのに…人権侵害ッスよ!」

英「番場さんはいい匂いですわ」

東「…………」

走り「…………」

犬飼「…………」

英「番場さんはいい匂いですわ」

走り「うん、聞こえてたッス。あえてスルーしたんスよ」


剣持「まったく、すっかり雰囲気が明るくなったな…周りでも会話が起きてる」

一ノ瀬「やっぱり鳰はすごいな…」

生田目「…まあ、どことなくか胡散臭いが、明るいところは正直うらやましいな」

剣持「絶対にあこがれはするなよ…?」

一ノ瀬「鳰も悪い子じゃないと思うけど…うん、マネとかはしちゃダメだよ?」

生田目「あ、ああ。なぜそんな真剣に言われるんだ、私?」

剣持「あ~なんだろうな…」

一ノ瀬「千足さん、素直で正直で真面目でいい人だから、騙されそうな気がするの」

剣持「あぁ、まさにそんな感じ! 走りみたいな胡散臭いヤツには気を付けろよ、生田目!」

生田目「私はそんなに純粋に見られているのか…喜ぶべきかどうかわからないな…」

剣持「悪いことじゃないぞ? 中には、初対面のヤツに腐った海の臭いがするって、言ったヤツや言われたヤツもいるらしいからな…」

一ノ瀬「そんなひどいことを⁉」

生田目「…しかし、なぜだろうな。それを聞いて、まず東と走りを思い浮かべた…」

剣持「奇遇だな…ボクもだ」

一ノ瀬「……実は、晴、も…」

生田目「イメージは皆同じ、か…ふふ。こういうところだけ、以心伝心だな」

剣持「ま、まあ、と、とも……クラスメートだしな!」

生田目「ああ。私たちは友達だからな…」

剣持「…えっ……やっ……そのっ……!」///

一ノ瀬「な、なんで、剣持さんが照れるの…?」

剣持「…っ⁉」ビクッ

生田目「な、なんだ、どうかしたか…?」

剣持「いや、なんだか寒気が…まさかね…」


桐ケ谷「…………」

首藤「どこをみておるんじゃ?」

桐ケ谷「いえ……なぜか毒釘フラグが立った気がして…」

首藤「どんなフラグじゃ………まあ、よい。本題じゃが…」

桐ケ谷「はい」

首藤「思い出したことはなんじゃ?」

桐ケ谷「……ぼくが、千足さんの持つナイフを、自分の胸に突き立てるところです。ほかには……千足さんからぬいぐるみをもらったり…そんな思いでばかりで…それと、剣持さんに…ぼくは…なにかをした気が……」

首藤「ふむ……穏やかではないのぅ…ナイフを胸に…? …夢か? …現実か? いつからじゃ?」

桐ケ谷「最初は、3日目に旧館でやったパーティで、剣持さんに毒を吐いてしまって…そのときからですね…」

首藤「…では、ここに来るまでに2人と面識は?」

桐ケ谷「ないです。ぼくと千足さんはここに来るまで、ミョウジョウ学園に来るまで、一度も会っていませんよ? 剣持さんとも同じです」

首藤「…だとすると、過去や現実でもなく、夢…か? しかし、いやに具体的じゃの…」

桐ケ谷「はい……ナイフの件は、舞台の上でした」

首藤「舞台…か。一応第3の島にあるにはあるな…」

桐ケ谷「ライブハウスですね」

首藤「明日、生田目と桐ケ谷、そしてワシの3人で行って、確かめてみよう」

桐ケ谷「確かめるって?」

首藤「無論、その通りにやるのじゃ。そうすれば―」

桐ケ谷「……いや、です……」

首藤「ん?」

桐ケ谷「…理由は、わからないんですけど…そうしたら、きっと…千足さんもなにか思い出すんじゃ……ないかって…」

首藤「思い出す? やはり過去か?」

桐ケ谷「…うっ…すいません。少し、休憩しますね…」

頭を手でおさえた桐ケ谷が席を立って、厨房へ行く。

首藤があごに手をあてる。

首藤「……思い出す……ナイフ……舞台……生田目千足……桐ケ谷柩……剣持しえな……ぬいぐるみ……これが何を意味するのか…」ブツブツ

生田目を見ると、一ノ瀬と剣持と談笑していた。

首藤「……もしかして、ほかにもまだ、思い出していないことがあるのか…? …いや、それとも、桐ケ谷が隠しているというのは…?」

首藤は東、走り、英も見る。

首藤(もし、この島に来ることなく黒組が開催されていたら、一ノ瀬晴が標的、走り鳰が裁定者、ワシらは暗殺者…桐ケ谷が思い出さないだけで、もしくは、桐ケ谷が隠しているだけで、ワシらもなにか関係はあるんじゃろうな。……そういえば、〈10年黒組の報告書〉には、2人以外にも、武智乙哉、香子ちゃん、寒河江春紀、剣持しえなもいたの…………武智と剣持にも確認をとった方がよさそうじゃ…剣持はともかく…)

首藤が旧館の方を見る。

首藤「問題は、素直に協力してくれるか、じゃの…」


走り「おっ、首藤さーん。どもども!」

首藤「うむ」

首藤が走りと一ノ瀬と東に捕まった。

ちなみに、ほぼ同時に桐ケ谷は、犬飼と英に捕まっている。

首藤と桐ケ谷は視線を合わせて、サインを送った。

一ノ瀬「首藤さんも言ってあげて! 兎角さんはカレーばっか! 鳰はメロンパンばっか食べてるんだよー!」

首藤「ほぅ…なかなかアグレッシブじゃな」

一ノ瀬「そういうことじゃなくって!」

首藤「わかっておる…2人とも、和食もとった方がよいぞ。味噌に醤油は日本人に合う」

東「断る」

走り「ウチもいやッス!」

一ノ瀬「わがまま言わないの、もぅ~! 明日おやつ抜きだからね!」

走り「え~そんな~勘弁してほしいッス~!」

東「ふん、カレーは万能食だ…! おやつどころか朝昼晩に持ってこいだぞ」

走り「ぐぬぬぬ…ちょっと、晴ママ、なんとか言ってあげてッス!」

一ノ瀬「えぇ⁉ えぇと、じゃ、じゃあ、兎角さんは明日三食抜き!」

東「…なん…だと…っ⁉」

走り「や~いや~い、ざまぁねぇッスよ! これぞメシウマッス! 明日のおやつは大丈夫ッスよ!」

首藤「おぬし、クズクズしいの……」

走り「そんな形容詞ないッスよ⁉」

首藤「まったく、おぬしら信号トリオは仲がいいの…」

走り「今度は信号にたとえられたッス⁉」

東「走りは黄色か…たしかに、そうだな。気を付けなくては…」

走り「兎角さんにこれ以上気を付けられたら、ウチらのつながりはもう極細ッスよ⁉」

一ノ瀬「極細って……なんか絵筆みたいだねっ」

東「私はシャーペンを想像した」

首藤「やはり現代っ子じゃな…ワシは飢えた子供の細い腕を思い出したぞ」

一ノ瀬「いつの時代なの⁉」

東「いったいお前は何歳なんだ…」

走り「…剣持さんが必要ッスね…」



キーンコーンカーンコーン



『えーと、ミョウジョウ学園修学旅行実行委員会がお知らせします…只今午後10時になりました。波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにお休み下さいね。ではでは、いい夢を。グッナイ…』



一ノ瀬「あっ…鳴っちゃったね…」

犬飼「あらあら💕 あっという間ね💕」

英「では、解散しますか…」

犬飼「はぁ…眠いから、伊介帰る~💕」

英「……わたくしは自分のコテージでティータイムを続けますわ。皆さん参加希望でしたら、どうぞ遠慮なく…」

犬飼と英が食堂から出て行った。

一ノ瀬「じゃあ、晴も行こうっかな…」

首藤「…………」

走り「兎角さんは、ウチが病院に連れていくッスよ!」

東「なに? 一ノ瀬ではないのか?」

一ノ瀬「あっ、うん、晴はね―」

走り「わがまま言っちゃダメッスよ!」

走りが私の腕を掴んで、食堂から出る。

ほぼ無理やり病院へと連れてかれてしまった。


一ノ瀬「行っちゃった…首藤さんは?」

首藤「ワシか? ワシはもうしばらくここにいようと思う。外の景色でも見ておろうかの…ここならホテルのコテージやプールや入口がよく見える」

一ノ瀬「わかった! おやすみなさい、首藤さん!」

首藤「うむ。おやすみ」


剣持「ん~じゃあ、ボクは久しぶりにゲームでもしようかな…」

生田目「私もやろう……桐ケ谷もどうだ?」

桐ケ谷「え⁉ ……はい! ぼくもやります!」

剣持「……リア充め……! 神長の爆弾で誤爆しろ…!」


病院


東「なぁ、走り」

走り「ん? なんスか?」

私は今病室のベッドにいた。

走りはそばの丸い椅子に座っている。

東「昨日の夜、霧が立ち込めていたんだ」

走り「…へぇ、それはまた…っていうか、ありえなくないッスか?」

東「ああ、そうなんだ…そもそもここじゃ、蜃気楼も起こらないだろうしな…」

走り「うぅむ…謎の現象ッスね…」

東「だから、すまんが、明日私を図書館に連れていってほしい」

走り「いいッスよ! でも、あれッスね…」

東「? なんだ?」

走り「兎角さんの連れていってほしいは、ちょっと萌えるッスね!」

東「…………」

寝返りを打って、視界から走りを追い出す。

走り「あっ、ちょっ、ウソッスよ⁉ 冗談ッスよ⁉」

大丈夫。今はまだ皆無事だ。

なにも事件は起きていない。

番場も拘束している、英も無茶なことはすまい…。

大丈夫、きっとうまくいく…。

そばで喚く走りを無視して、私は眠りについた。



…私はすっかり失念していたのだ。


番場以外に、もう一人…一ノ瀬を狙うヤツがいたことを…


旧館・広間


番場「あぁ~ひまひまひまだぜぇ~…っ!」

番場がゴロゴロとカーペットの上で転がる。

武智「もぅ~うるさいよぉ~♪ こうして折り紙で遊んでいるのにさ~♪ 白けちゃう!♪」

武智が折り紙を折っていた。
カエルやトリ、ブラキオザウルスにコウモリが完成されていた。
他にも数多くのきれいに折られた作品と、ボロボロの穴だらけや粉々になった(元)折り紙もある。

武智は今千羽鶴を折っている。

番場「そりゃ悪かった…っ! だがひまなもんはひまなのさ…っ!」

武智「折り紙楽しいけどな~♪」

番場「……で、さ…」

番場が食べ終わった食器が隅に置いてある。

その近くに、花束もあった。

番場「あれ、なんだ?」

武智「あれ? あれはね~♪ 晴っちにプレゼントする花なんだよ~♪ 晴っち、よろこんでくれるといいな~♪」

番場「なんだそりゃ…」

武智「……っとぉ、噂をすれば影が差すってヤツだね♪ あたしはハサミを刺したいけど…♪」

番場「…キラージョークか?」

武智が花束をとって、自分のそばに置く。

廊下につながるドアが開いた。

一ノ瀬「…あっ、武智さん! 鳰から伝言もらって来たよ?」

武智「うん~ありがとう~晴っち~♪ ほらほら、おいで?♪ プレゼントあるからさ♪」

一ノ瀬「うん! 晴も用意したよ!」

武智と一ノ瀬は床に向かい合って座る。

一ノ瀬「はい、ストラップだよ! 手作りなんだぁ!」

番場「…っ!」

武智「わぁ♪ ありがとう~一生大事にするよ~♪」

武智が晴のストラップを両手で抱きしめる。

一ノ瀬「そこまで喜んでくれて、嬉しいよ!」

武智「あっ、そうそう♪ こっちも渡さなきゃね♪」

武智が花束を一ノ瀬に差し出す。

武智「じゃ~ん♪」

一ノ瀬「わぁ! とってもきれい……! なんて名前なの?」

武智「えとね…ん~と、なんだったかな…?♪ ごめん、ちょいど忘れしちった♪ あとで調べとくね♪」

一ノ瀬「あ、大丈夫! それなら、自分で調べるよ! …にしても、きれいだな…」

武智「んっふふ~♪ 喜んでもらえて、嬉しいよ♪」

番場「…………」

一ノ瀬「でもこれどこで?」

武智「ジャバウォック広場で見つけたんだぁ~♪」

一ノ瀬「へぇ……」


武智「…………ねぇ、晴っち♪」

一ノ瀬「え? なに?」

武智「ここの島に来て、不安ってある?」

一ノ瀬「…え?」

武智「神長サンがコロされて、春紀サンも処刑されて、真夜ちゃんに襲われて……怖い?」

一ノ瀬「…そ、そんなこと…っ!」

武智「あたしが守ってあげる」

一ノ瀬「え?」

武智が一ノ瀬にグイッと近づく。

武智「あたしが晴っちを守るよ」

一ノ瀬「武智…さん?」///

武智「あたしなら守れるから…モノクマから、真夜ちゃんから、皆から守るからっ…」

番場「へへっ、えれぇ言われようだなぁ…っ! まっ、違いねぇけどよ…っ!」

一ノ瀬「晴は…」///

武智「それとも、晴っちはあたしが信用できない?」

一ノ瀬「え?」

武智「あたしも、コロしてくると思う?」

一ノ瀬「……ううん、思わないよ。晴は、武智さんのこと、信じてるから…」

武智「…………そう、ありがとぉっ!―」

武智が花束を一ノ瀬の顔に押し付ける。

一ノ瀬「…っ⁉ …っ⁉」

武智「……なーんて、うっそ♪ この花、強い神経毒があるの。ゲルセミウム・エレガンスって花の種類♪」

一ノ瀬「…っ! …………っ」

武智「溝呂木先生も知らないかも…♪」

一ノ瀬「…………」

一ノ瀬がバタッと倒れた。

番場「ろくでもねぇな…っ!」

武智「あっはははははは! それ番場ちゃんが言う?♪ …ごめんねぇ? 先にヤッちゃいます!♪」

番場「……へっ! 好きにしろよ…っ! ところで、溝呂木先生ってのは、誰だ?」

武智「へ? ………だれ?」

番場「てめぇが言ったんだろ…っ⁉」

武智「まぁ、いいや♪ 今は機嫌がいいんだぁ♪」

武智が一ノ瀬をおんぶする。

番場「おい…っ! どこに行くんだ…っ?」

武智「教えるわけないじゃん♪ 首藤さんが来るかもしれないから、適当に言っといて♪」

バタンッ

武智が出て行った。

番場「ちっ……食器くらい片付けてけよ…っ!」


空港


武智「…………」

当然のことながら人影はいなく、あたりも暗い。空港内は月光に照らされて、また月光を反射して、それが青色に見える。とても神秘的だ。首藤あたりだとウットリとするだろうか。それとも、英か―。

一ノ瀬「…………」

武智「…………」

一ノ瀬は深い眠りに落ちて、全身が乗るソファに、仰向けに寝転がったままだ。ソファの正面は飛行機場である。武智の背中側が出入り口だ。

すでに衣服は脱がせてある。

武智は一ノ瀬をソファの背中側から見下ろすように立っていた。

あとは喰らうだけ…なのに、いまだに足踏みしていた。

武智「…………」

彼女の脳中に浮かぶは、モノクマの言葉。

『黒組の勝利者コンビなんだし…』

武智「……黒組の…勝利者…?」

武智(…だとすると、あたしは負けたの…?)

武智は唇をかむ。

武智(いいや、ありえない! あたしにそんな記憶はない! モノクマの妄言…そうよ! そうに決まってる!)

武智「…………モノクマ」

モノクマ『はいは~い! 呼ばれて飛び出て~、ボクモノクマっ!』

武智「…あたしは、負けたの?」

モノクマ『ん~? なんのことかな~?』

武智「…兎角さんと、晴っちに…」

モノクマ『ほぉ~? いったいなんのことやらさっぱりだけど、答えた方がいい?』

武智「うん」

モノクマ『負けたよ』

武智「っ………なんで?」

モノクマ『ウププププ。ただで聞こうっての?』

武智「んじゃあ、いいよ。自分で考えるから」

モノクマ『あぁ嘘ウソ。まったく、イジリ甲斐がないなぁ~もう! 剣持さんならいいリアクションするのにね!』

武智「…負けたのって接近戦じゃないでしょ? なら、遠距離?」

モノクマ『ふむ。つまり、東兎角を警戒しているんだね? 彼女の銃を…』

武智「……東のアズマだからね…」

モノクマ『ん~、まぁ、ちょい違うかな? 武智さんは一ノ瀬さんと東さんのコンビにやられたんだよ』

武智「……でも、それなら、兎角サンは今病院で鳰ちゃんに監視されているから…」

モノクマ『そうだね、ヤリたい放題だね』

武智「…そう。もういいよ。消えて」

モノクマ『ぶほぉう⁉ 直球ですな⁉』

武智「見られたら集中できないでしょっ?♪」

モノクマ『……あ~はいはいわかりましたよ。ま、いいけどね。どうせ君の趣味はボクに合わないからさ。じゃあね。精々頑張ってね』

モノクマが煙のように消えた。


武智「頑張ってね…か」

頑張る要素がどこにある。

標的は寝てる。守護者は病院。これで、前回(真偽は不明)の敗北の理由は消えた。

しかも、協力者までいる。協力者の真意が知れないが、彼女ならなんとなくで納得する。

なら、なにを頑張るのか…決まってる。

武智「……………………頑張れって言われちゃった……♪」









???「ふふっ、それはモノクマじゃからの…自身が楽しめるモノになるように…じゃないのか?」







音もなくいつの間にか背後に一人、立っていた。




武智「え~楽しいモノ?♪ なんだろうねぇ想像もつかないなぁ~♪」

???「ふふっ、その手に持っとるハサミはなんじゃろうな…」


武智「…えへへ~♪ ま、そんなことよりさ、首藤さんはなにしに来たの?♪」

首藤「うむ……か弱き乙女の可憐なヒーローの登場をやりたかったんじゃ」


武智が振り返り、首藤と向き合う。

武智「あっはははははは!♪ 早い、早すぎるよぉ!♪ まだピンチの『ン』の字だよぉ?♪ せめて『チ』まではいかないとねぇ♪」

首藤「…それ、間に合っておらんじゃろう?」

武智「そう?♪ あたしのストーカーしてたヒーローたちはいつだって、終わってからの到着だったよ?♪」

首藤「嘆かわしいことじゃの…ふふっ、なら、ヒーローを見るのは初めてか?」

武智「いや、初めてじゃないよ?♪」

首藤「ほぅ?」


武智の顔が上気する。頬が真っ赤に、目が狂気に染まる。


手に持つハサミをジョキジョキ鳴らす。


武智「あたしには、首藤さんが、メインのあとのデザートに見えるよっっ!!♪♪♪」



首藤「ふふっ、言ってくれるのぅ、小娘。…………警告はした…もう拳骨では済まさんぞ…」



首藤が武智の目の前に立った。


その距離……20メートル。



回想()

ロビー


剣持「おら、くらえっ!」

桐ケ谷「…っ…つ、強い…です……!」

生田目「剣持にこんな特技があったなんてな…」

剣持「ふん! 伊達に自宅警備してたわけないからな………って、黒歴史思い出させんな!」

生田目「えっ…これは、私が悪いのか…?」

桐ケ谷「くっ……あっ…負けてしまいました…」

剣持「ふん…まだまだだね」エヘン

生田目「そう落ち込むことはない。桐ケ谷もうまかったぞ?」

桐ケ谷「はい…ありがとうございます、千足さん…」///

剣持「ぐぐっ……リアルだと完敗だがっ……くそっ…神長の爆弾さえあればっ……!」

首藤「……生田目、旧館で番場を見張ってくれ」

生田目「? 急にどうした?」

剣持「首藤か…食堂から降りて来たんだな」

首藤「ああ。武智が一ノ瀬を拉致した」

生田目「!」

桐ケ谷「…どうやらゲームをしている場合じゃなさそうですね…」

剣持「…ったく、番場の次は武智かよ…!」
剣持がガシガシと頭をかく。

首藤「桐ケ谷と剣持は人を集めて、30分後にワシを探してくれ」

桐ケ谷「はい…って、30分後ですか? 今からでなく?」

首藤「ああ。今大勢で行っても逃げられるのが目に見えている。いくら足音を消せるとはいえ、武智はおそろしく耳がいいからの。気配を感じ取られてはかなわん。一ノ瀬もろとも逃げられたらアウトじゃ」

生田目「それで、首藤が先に行って武智の足止めか…」

首藤「ふふっ、足止めではないよ」

剣持「は⁉ もしかして、勝つ気か⁉ 相手はあの武智だぞ⁉」

首藤「人は見かけによらんものじゃ。ワシを甘く見るでない」

剣持「…わかったよ…………ならモノケモノ討伐のときの現場指揮ボクと代わってほしかったよ」ブツブツ

首藤「それと、桐ケ谷。英の監視を頼む」

桐ケ谷「…増援として一緒に行くとしてもですか?」

首藤「そのときも、目を放してはいけない」

桐ケ谷「…わかりました」

首藤「では、ワシは先に行くぞ」


ホテル


首藤「さて、行くか。たしか、ホテルを出て右に行ったかの?」
首藤がホテルの門を開けて、出て行った。


英「…………」

それを物陰から見ている者がいた。

回想(終)

空港


首藤「……来ないのかの?」

武智「そっちこそ♪ 怖いのかな~?♪」
武智がハサミをくるくる回す。

首藤「ふふっ、器用にこなすの」

武智「まぁね♪ あたしの人生の相棒だし?♪ 結構付き合い長いんじゃないかな?♪」

首藤「今の歳でもう長いのか…末恐ろしいの」

武智「…まっ、ずっとしゃべってて、都合が悪いのはあたしの方だよねぇ♪ いいよ♪ こっちから仕掛けてあげる♪」

首藤「わざわざ宣言してくれるとは、優しいの」

武智「クラスメートだしね♪」

武智がゆっくりと歩く。首藤を中心とした半径20メートルの円周上を、ゆっくりと…。

首藤(さて、どうするか……)

武智が歩を進める。その間、首藤の全身をじっくりと観察していた。

武智(首藤さんの武器はたしか小型爆弾……要注意だね。モノケモノを一発で仕留められそうなほどの威力…それと同等のを使ってくるとは思えないけど、あたしが喰らったら無事じゃ済まない…痛いのヤダし…)

武智「……首藤さん、武器どこに隠し持ってんの?♪」

首藤「ふふっ、さぁて、どこじゃろうな…」

武智が柱の陰に重なった直後、

武智「も~らいっ!」

陰から躍り出て、武智が走り出す。

首藤(速いの…身体能力は全体的に高めか…)

首藤がスカートを少したくし上げる。太ももがあらわになる。

武智(ラッキースケベっ!♪)

首藤のスカートの内側から、ボタン付きのカプセルが出た。
首藤がそれを押す。

ボシュッ

あたりに白い煙が立ち込める。

武智「煙幕っ⁉」
武智が走るのを止めて、ブレーキをかける。

カチャッ

武智「!」
武智がスピードを押し殺せていないまま、バックステップをして、柱の陰に隠れる。

バンッ

武智が避けた場所を銃弾がはじけた。床に弾痕ができた。

武智「うわぁ…銃も用意してるし…ガチじゃん…ヒクわ~♪」

首藤「趣味の悪いおぬしに言われたら、おしまいじゃな…」

武智(床に弾痕? ……狙いは足か…機動力を削ぎに来たね…。だとしたら、あちらさんはあたしをコロス気は今のところなしってことかな♪)

武智が自分の足を見る。

武智(少しだけひねっちゃったかな…♪ 冷静さと判断力…それに、煙幕でも狙いをつけれる洞察力…いや、勘の良さかな? 目ざとさ? ま、いいや♪)

武智がペロリと舌なめずりをする。

武智(デザートとして生かしておくには、ちょっと面倒くさそうだね♪ 前菜としていただくかな♪)

武智「さぁて…どう攻めようか…♪」


首藤(…今ので足狙いなのがバレたかの…今のは当てるべきじゃったが、あそこで避けるとはな…)

煙は晴れない。

武智は柱の陰、首藤はまだ動いていない。

首藤(ヘタに動くと場所が割れる…接近戦は分が悪い。増援の前に逃げられぬように、追い詰めておく必要がある。かといって、無駄撃ちはワシの場所を教えるだけ。……一撃で沈めるのが最良か?)

自分のポケットに入っている小型の爆弾を握り締める。

首藤「だとすると、爆弾か…」

首藤(おっと…そういえば、武智は耳が良かったの…ふふっ)

武智は動く気配なし。

首藤(無理な避け方をしたから、足でもひねったかの)


煙幕が晴れてきた。


首藤(もう、あっちにも見えるじゃろうな…)

ヒュッ

首藤(⁉)

なにかが飛んでくるのが見えて、サッと上半身を横にずらす。

首藤の頬に切り傷が一筋走る。

首藤(大胆な…)

自分の後ろの柱を一瞥する。


ハサミが一本突き刺さっていた。


武智「も~らいっ♪」

視線を正面に戻すと、武智がほんの数メートルまで迫っていた。

武智の持つハサミが月光に光る。


武智(とった!♪)

急所である首を狙った一閃。
どの凶器よりも使ってきたマイハサミ。外さない自信があった。

武智「昇天っ!」

ハサミを突き出し…そして―。

首藤「ぐっ」

武智「…ヒュー♪」

首藤が自らの片腕でハサミを防ぐ。貫通はしなかったものの、深々と突き刺さる。

武智「ヤベェッス♪ 興奮するッスよ♪」

首藤「走りのような口調をするとは、随分余裕じゃの」

武智「♪」

武智はもう片方の手に別のハサミを持っている。

武智「あたしってば、死なれると興奮しないのよね~♪ 首藤さん、さっきはコロした方がいいかと、思ったけど、前言撤回かな♪ こんだけ弱いんなら、別に―」

首藤「お喋りが多いの…呆れるわ」

ズムンッ

武智「えっ」

首藤の拳が武智の腹部に収まる。
いわゆる―

武智(腹パンっ⁉)

武智がユラリと身体が揺れる。
武智「かはっ!」

首藤が拳を構え直し…もう一度―

パスッ

今度は武智の手におさまった。

首藤「完全にノーマークだったようじゃの」

武智「まったくもって、その通りっ♪ けほっ」

武智(改めて手で受けてみると、大した威力じゃない。力が入っていないから、少し効いただけか…)

首藤の腕に突き刺さったままのハサミを、武智がグリグリと回す。

首藤「……ひどい、悪趣味、じゃな…っ」

武智「そう?♪ でも、今の首藤さんの表情色っぽいよ!♪」

首藤「そうか。それなら、武智…」

武智「うん?♪」

首藤がケガのしていない手をひっこめる。

首藤のその手を掴んでいた武智はわずかにだが、態勢が崩れる。その隙をついて―

首藤「おぬしも少しは痛みを知れ」

首藤が武智の顔の真ん前に、カプセルを投げた。
煙幕を張ったときのカプセルと同じ形、同じ色だが…サイズは一回り大きかった。

武智「⁉」

武智が本能で察して、身を後ろにひく。…が、間に合わず―

ボカァンッ

武智「うぶっ!」

武智は爆弾をダイレクトに上半身に喰らった。


同時刻・ホテル


桐ケ谷「…犬飼さんがいませんね…」

犬飼のコテージはドアが外れていたため、自由に出入りできた。

おそらく別の寝床を探しにいったのだろうか。

犬飼のコテージの中は無人だ。

英「これでは呼べませんわね」

剣持「武智がドアを蹴破ったせいかーっ! くそっ! なんつー偶然を起こすんだ、あいつは!」

生田目「おかげで貴重な戦力が一つ減ったな…武智の追い風だ」

桐ケ谷「仕方ありませんね…ぼくは犬飼さんがホテルに来たときのために待機します…」

英「…その役、わたくしではいけませんの?」

桐ケ谷「事情をよく知るぼくが適任です」

英「……そうですか」

桐ケ谷「拘束するのに必要な手錠だけでなく、ロープも武智さんにはかけてください」

剣持「えっ⁉ 手錠だけじゃなく、ロープもか⁉」

生田目「番場と違って、あいつは日夜危険だからな…」

英「…………」

生田目「じゃあ、私と剣持と英で一ノ瀬たちを探せばいいか?」

桐ケ谷「はい、お願いします」

生田目「よし…行くぞ!」

剣持「あぁ、いやだなぁ、終わってるといいなぁ…」

英「…………」


首藤の数メートル先の床に、武智が仰向けに大の字になって倒れている。

上半身からは爆煙が立ち込めている。

首藤(気絶したか…それとも、ホトケになったか…)

首藤が自嘲気味に笑う。

首藤(お陀仏じゃと、ワシがクロか…? ふふっ、さすがに逃れられんの…)

武智の指がピクリと動く。

ガバッ

武智「ゲホッゲホッ! ぶはぁ~~~っ! 未成年者は喫煙禁止なのに~!♪ 煙吸っちゃった♪」

首藤(…火力は抑えてあるとはいえ、復活が早すぎじゃろ…)

武智の上半身はすこし黒くなっていた。炭の色だ。カプセル爆弾の爆発に用いた材料が炭化したのが付着したかもしれない。

首藤(まぁ、感心している場合ではないな…)

銃を構える。

武智「わわっ、ちょっ!」

パンッ

武智はサッと立ち上がり、避ける。

首藤「すばやいのぅ」

武智「当たったら、死ぬでしょうが!♪」

武智が距離をとる。しかし、今度は柱に隠れない。正面で向かい合っている。

2人の間に、また20メートルの距離ができた。


首藤(切れ味が鋭い…痛みが治まらんわ…)


首藤の腕に突き刺さったハサミは、抜けている。

大量の血が流れ出ていた。

首藤(長期戦は無理か…増援を待つ暇はないの…一気に決めるしかない)

首藤は自然と眉をひそめていた。

武智「んん~?♪ そんな表情して…あたしをムラムラさせようったって、無意味なんだからねっ♪」

首藤「そんなつもりは毛頭ない…」

武智「だってもうムラムラしてるからっ!♪」エッヘン

首藤「おぬしと会話すると、毎回どういう顔をしていればいいか迷うのはワシだけか…?」


武智(首藤さんの腕の出血から見ると、放っといてもいけそうだけど、それじゃぁつまんないしなぁ♪ ここはやっぱしクラスメートだから、きっちりコロしてあげよう♪)

首藤が拳銃を構える。

武智「♪」

パンッ

首藤「⁉」

武智「♪」

武智の髪の毛をかすっただけで、銃弾は外れた。

武智「拳銃の向きに、撃つ人の呼吸を感じ取れば、避けるのなんてわけないよ!♪ 銃弾見るのも、もう何万回もしているんだからさっ!♪」

武智が首藤との距離を一気に詰める。

首藤「くっ!」

武智「逃がさないんだからぁ!」

首藤の肩をつかみ、押し倒して、そのまま馬乗りになる。

武智「うふふ♪ 勝ったね♪」

首藤「…………」

押し倒された首藤は無表情で武智を見つめる。しかも、一切抵抗しない。

武智「あれぇ~♪ いいのかな?♪ 抵抗しなくてさ♪」

首藤「…………」

武智「ぶぅ~つまんな~いの~♪ ま、いいや、こっからはあたしの独壇場―」

首藤「一つ言っておこうか」

武智「…なにさ♪」

首藤「運動神経もいい。攻撃の速度も速い。ただ…しゃべりすぎじゃ」

武智「…あれあれ?♪ 説教?♪」

首藤「それと、最後まで甘い。ここは暗殺者しかおらんのじゃ。油断禁物という言葉を知らんのか」

武智「あっ、わかった!♪ 遺言だね!♪」

首藤「……なにが起こるかわからんのが人生じゃよ。ま、ワシもしゃべりすぎたか…………」

武智「終わり?♪♪」

首藤「うむ。最後のイタチッペじゃ」



カチッと音がする。



武智は気づかなかったが、首藤の手にスイッチらしき物体が握られていたのだ。

そして―




ドガーーーーーーンッッッ!!!




この戦闘が始まってから、一番大きい爆発音が空港に響き渡った。





首藤(……ん)



首藤が目を覚ます。

自分が仰向けになって倒れているのに気付く。

思い出す。

首藤(そうじゃったな…ワシは服の下に仕込んだ爆薬を爆発させたんじゃ…)

首藤は自分の五体が無事であることを確認して、安堵する。

首藤(防爆チョッキを着ていたとはいえ、さすがにダメージ0とはいかんか…地面に寝ころんどる状態じゃったしな…)

首藤が、己の腹部や胸から出血しているのを感じる。

首藤は意識朦朧としながらも、周囲を確認する。

首藤(さて、さすがに効いたか…?)

声が聞こえる。

どうやら爆音や衝撃で耳もやられていたようだ。


武智の声だ。


武智「はあっ…! はあっ…! くそっ! なんでこんな…っ!」


武智は両手両足を床につけていた。這いつくばっているようだ。

武智の腕や足からは血が流れ、服もすすけて破れているところもある。頭部からも血を流している。

ハサミも持っていないようだ。爆風でどこかに吹き飛んだかもしれない。


武智はすでに満身創痍だ。

少なくとも、追い詰めるという任務は達成できたと首藤は満足する。

武智「くそっ! くそっ! 許さないッ! もう、許さないんだからぁ~!」

武智がこちらを見る。

目が血走っていた。

首藤(完全にブチ切れておるの…)

首藤「俊敏さ…危険察知力…それに…タフネスも…兼ね備えていたとはな……」ボソッ

自分の身体は動かない。もはやこれまでか…と呟いた瞬間―


???「大丈夫か、首藤!」


首藤「ようやく、か…」

ホッと胸をなでおろす。

剣持が来た。

しかし、英と生田目は一緒ではなかった。


武智「うっ…このっ…は~な~せ~っ!」

武智が暴れる、が―

剣持「ほら、動くな。傷が余計に開くぞ」

剣持がロープで縛る。手錠はまだつけていない。

武智「うっ! ……なんだこれ、しえなちゃんに縛られる気分…なんか新たな扉が…♪」

剣持「お前余裕だなっ⁉」

武智「う~でもやっぱ、縛られるよりも縛る方が楽しいな♪」

剣持「先に言うが、断固拒否する!」

首藤「……本当だったら、ワシがやられていたの…」

首藤の傷はまだ治療されていない。

だが、かつて剣持のコテージにあった傷薬がそばに置かれていた。

しかし、首藤はそれに手をつける体力がなかった。

剣持「なにを言ってるんだ…コロさないというハンデを背負っていただろ? その状態でよく倒したよ」

首藤「…ふふっ、言い訳はすまい」

剣持「悪いが、もう少し待ってくれ。このバカを拘束したら、応急処置をするから」

武智「え~しえなちゃん冷た~い♪」

剣持「うっさいわ!」

首藤「いや、いい。ワシが先に武智の拘束をするよう、言ったからの……それより、桐ケ谷と生田目、英はどうした?」

剣持「あ~、桐ケ谷はホテル。英はなぁ……すまん!」

拘束をいったんやめて、首藤に向き直り、剣持が頭を下げる。

首藤「?」

剣持「英は一緒に来てたんだが、撒かれた…」

首藤「なに⁉」

剣持「ロケットパンチマーケットまでは一緒だったんだが、こっちですごい爆発音があって、それに驚いていた一瞬のスキをつかれて…」

首藤「マズイ…!」

剣持「?」

首藤「ホテルの方は大丈夫なのか!」

武智「……な~んか、大変だね~♪」

剣持「お前が言うな!」

剣持がふうっと息を吐く。

剣持「ボクは英と生田目の2人と一緒にいたんだ」

首藤「? 2人ともおらぬぞ?」

剣持「だから、大丈夫だよ」

剣持がホテルの方角を見る。



剣持「今頃、王子様がお姫様の元へ向かっているからさ。ま、白い馬に乗ってはいないけど…」



ホテル


英「…………」

英が無音の暗闇の中、コテージやプールを駆け抜ける。生田目と剣持2人の、刹那にほど満たないスキをついて、ホテルへと戻ってきていた。

英「…………」

呼吸は乱れておらず、静かに忍び込もうとする。忍び込む先は、当然―旧館だ。

英が旧館の階段を上り、ドアに手を触れようとして―


???「どこに行こうとしてるんですか?」


―呼び止められる。

英「…桐ケ谷さん」

桐ケ谷「見事に引っかかりましたね。千足さんも武智さんの元に向かってもらって正解でした。首藤さんの策は守りばかりで、少々攻めがないですからね…」

英「あら、なんのことかしら」

英がドアに背を向けて、後ろに立つ桐ケ谷を見る。笑顔を浮かべてはいるものの、目は笑っていない。

桐ケ谷「とぼけないでください」

英「あら、なにを言ってますの? わたくし、首藤さんに言われて戻ってまいりましたのに…」

桐ケ谷「……」

英「首藤さんに番場さんの様子を見てくるように言われてしまって…桐ケ谷さんも同伴とのことですよ?」ニコッ

桐ケ谷「…千足さんは?」

英「武智さんが逃走したので、それを追跡中ですの。剣持さんは負傷した首藤さんの手当て、わたくしは桐ケ谷さんと番場さんに情報連絡とその守備を頼まれましたの」

桐ケ谷「……」

英「わたくしも気が急いてしまって、忘れていましたわ。さあ、それではともに番場さんの元へ参りましょう」

英が階段を下りて、桐ケ谷に近づく。桐ケ谷は英の目を見ていた。

英「どうしました?」

英が桐ケ谷の前まで来る。

英「ほら、一緒に行きましょう」

英が桐ケ谷の肩に手を置こうとして―



桐ケ谷「…………」

英「…………一応聞いておきましょうか。わたくしに対して警戒する理由を」



―ポンッと優しく手が置かれる。

桐ケ谷は抵抗しなかった。

桐ケ谷「……」

英「まさか、答えられないということではないでしょう? さあ、早く」

桐ケ谷「…………」


バスッ


英「なっ⁉」

――英の肩に釘が刺さっていた。


桐ケ谷「すいません…ぼくは、英さんを拘束することにします。もう話し合いで解決は無理そうでしたから」

英「…なん…ですって…⁉」

英がフラフラと身体を揺らし、そして―




英「―その言葉を待っていましたわ…」




桐ケ谷「…えっ⁉」

―倒れなかった。

英は肩に置く手の握力を強くする。

桐ケ谷「っ…⁉」

桐ケ谷の肩に手が食い込む。ミシシッと骨のきしむ音が聞こえてきそうだ。

英「あなたのはっきりとした敵意、加害者になる覚悟をした目、すべてはだれかのためと偽善を振りかざす傲慢さ、そして、わたくしを敵に回す愚かな決断力……わたくしの望んだモノですわ」

英の眼には、桐ケ谷が映っていた。その眼には、不意に攻撃された怒りや悲しみではなく、ただ、喜びがあるだけだった。

桐ケ谷「…っ……なん、て……力……っ⁉」

英「わたくしが非力だと思いましたか? わたくしが頭脳派だと思いましたか? わたくしが…戦えないとでも、思っていましたか?」

桐ケ谷(パ、パワーなら、モノケモノを吹き飛ばした、番場さんのハンマーを、上回るかも…っ⁉)

桐ケ谷は自分の肩にかかる負荷を体感する。万力のごとく締め付けられている。

桐ケ谷「……身体を……改造していたんですね…っ!」

英「…改造、ですか…そうですわね…まるで望んでこの身体になったみたいで、いささか嫌悪感がありますが…否定はしませんわ」

桐ケ谷「ぼくをコロして、逃げるつもりなんですか? 無理ですよ。英さんを警戒しているのは、ぼくだけじゃありませんから。千足さんに、首藤さん、剣持さんだって…」

英「以前、申し上げたはずですわ…」

桐ケ谷「え?」

英「わたくしの人生は、いつだって戦って守り抜いて、いつだって戦って勝ち取ってきましたから…………今回も例外ではないのですよ?」

桐ケ谷「…じゃあ、ぼくはアドバイス通りに、行動しますよ」

英「…?」

桐ケ谷「全力で壁となって立ちふさがります」

英「……ふふふ、是非、やってみせてください…」ニコッ

英が片腕を肩からはなし、握り拳を握る。もう片腕は肩に置いたままだ。逃がさないためだろう。


桐ケ谷(殴られる⁉)


桐ケ谷が目をギュッとつぶる。


英「手加減はしませんわ!」


英の拳が、桐ケ谷の顔を撃ち抜こうとして―



ギィィンッ



―金属音がホテル内に響き渡る。


桐ケ谷「…?」

桐ケ谷がおそるおそる目を開けると、



???「大丈夫か、桐ケ谷」



桐ケ谷「……千足さん…!」


桐ケ谷の背中から、片腕を桐ケ谷の肩に回し、抱き留めるような形だ。
英ももう桐ケ谷から離れている。
生田目はもう別の手で持ったレイピアで、英の拳を止めていた。


英「…想像よりも来るのが早いですわね」

生田目「私は、お前がこういうことをするのは、永遠に来ないと思っていたよ…」

英「ご期待に添えなくて、申し訳ありませんわ」

生田目「いや、気にするな。それもまた、ひとの生きる道だ。だが、それを見過ごすわけにはいかない」

生田目の眼が険しくなっていた。暗殺者の眼だ。

モノケモノ討伐のときですらなっていなかった暗殺者の眼だ。


―その視線の先には、同じ暗殺者の眼をした人間一人。




英と生田目の視線がぶつかり合った。


生田目「桐ケ谷、剣持たちを呼んでくるんだ。犬飼も頼む。あいつ、モーテルにいるかもしれない」

桐ケ谷「えっ、でも…!」

英「わたくしを一人で止める気ですか?」

英が拳を引く。

生田目がレイピアの切っ先を英に向けながら、桐ケ谷と一緒に後退する。

生田目「ああ、そうさ」

桐ケ谷を背中に回して庇う。

桐ケ谷「…千足さん…」

生田目「私を信じられないか? そう簡単にやられたりしないさ」

英は黙って微笑んでいるだけだ。

旧館に入ろうともせずに、生田目と桐ケ谷の2人のやり取りを静かに見ている。

生田目「こいつは私が止めておく。皆を頼む」

桐ケ谷「…でも…」

生田目「いいから、行くんだ!」

桐ケ谷「…はい」

桐ケ谷が走って、コテージ側に向かう。

英「…………」

英が人差し指を桐ケ谷に向けるが、

生田目「はあぁっ!」

なにかをする前に、生田目が英に切りかかった。


ギィンッ


英が素手で受け止めたにもかかわらず、金属音が響く。

桐ケ谷はホテルの門から出て行った。

生田目「……」

英「お姫様を逃がせて良かったと思っていますわね?」

生田目「ああ。逃がしてくれたとも思っている」

英「ふふふ、あなたたちを見ていたら、とても他人事とは思えないのですわ」

生田目「なに?」

英「わたくしたちも、こういう関係でいられるんじゃないかと思いましてね。わたくしなら、夜の彼女でも止められる。わざわざ拘束する必要などないのですわ」


生田目「…いったいだれのことを言っているんだ?」

英「…まったく、あなたの鈍さには舌を巻く思いです。桐ケ谷さんには同情しますわ」

生田目「……」

英「少し頭を冷やしになって!」

英が生田目の腹部に強烈な蹴りを入れる。

生田目「ぐっ⁉」

吹き飛んだ生田目が、プール横にあるパラソルやベンチに激突した。

生田目(な、なんだこれっ…体調不良の蹴りじゃないぞ…⁉)

生田目「げほっげほっ! …っ⁉」

殺気を感じて、咄嗟にパラソルを開いた状態で英に向け、盾にする。


┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ


機関銃で発射しているかのような射撃音がする。

生田目「くっ!」

パラソルは穴だらけになった。

近くにあったベンチに身を隠す。

英「わたくしは誰にも止められませんわ」

英が銃撃を止め、旧館に入室する。

生田目「…どっから銃を…」

腕や脇の服に銃がかすった跡がある。

生田目「直撃はないな」

自分の手の甲から血が流れているのを見る。

ペロリと舐める。鉄の味だ。

生田目(本物の銃……間違いなく、英は本気だ…なら、私もそれ相応の覚悟をする必要がある)

生田目が深呼吸をする。

生田目「…よしっ!」

生田目も旧館の中へと入った。


旧館


生田目「…………」

音を立てることなく、身体を壁につけながら、歩を進める。

旧館内は暗く、先が見通せない。

生田目(しかし、それは英も同じ)

英が大広間にすでにいるのかと思うと気が気でないが、それについては安心している。

なぜなら、大広間は扉を除くと、ほかに出入り口がない。

窓は鉄板で塞がれているからだ。

生田目(出口は扉のみ…こういうときに、この造りは助かる)

待ち構えておくだけでも彼女の行動を制限することはできるが、そうはいかない。

彼女の目的を考えると、ちんたらしていられないのである。

生田目(…最悪、2対1を想定しておくか…)

番場が解放された場合…それが最悪だ。

生田目(下手すると、死ぬかもな…)

自然と笑みがこぼれる。自嘲を含んでいるのか、後悔のためか、それとも、はたまた別のなにかか…。

生田目(桐ケ谷にああ言った以上、死ぬわけにはいかない…それに、だれも死なせない…!)

生田目が大広間の扉の前の広い廊下にたどり着くと、

英「待っていましたわ」

英がドアの前で立ちふさがっていた。


生田目「…………」

折れた角に身を隠したままで、様子をうかがう生田目。

生田目(番場のところに行っていない…私を待ち伏せしていたのか)

生田目が腰の鞘に戻したレイピアの柄を握る。

英「闘気が隠しきれていませんわ」

生田目「だからって、姿を見せろというのか? 飛び道具を持っている相手に? 冗談だろ」

英「ふふふ」

沈黙が下りる。

生田目(なにを考えているんだ? 時間が経って困るのはあっちじゃないのか……)

英「……なぜ仕掛けて来ないのか、不思議に思っていますわね?」

生田目「……」

英「わたくしの目的はもう果たせましたから…」

生田目「⁉」

生田目(どういうことだ⁉ 目的は番場の解放だろう⁉ …まさか!)

生田目「…もう番場を解放したのか?」

英「わたくし、仕事は手早いので…」

生田目「……どこに行ったんだ?」

英「言うと思っていますの?」

生田目「…………」

生田目(いや待て、どっちだ? 嘘か真か…………くそ、こういう心理戦は苦手なんだ…わからん…私は遅かったのか…? しかし、時間が短すぎる。やはり不可能では……確認するには……)

生田目が姿を出す。

生田目「大広間に入れてくれ。争う気はない」

英「いやです」

生田目「…なぜだ」

英「あなたはバカ正直ですのね…わたくしがなぜここに入れないようにいるのか、本気でわかりませんの?」

生田目「…………」

生田目(私を入れないため…だろう)

英の顔色をうかがう生田目。

英は勝ち誇ったような、自信にまみれた顔をしている。

生田目(私がここに入ると困るから? なぜ? むしろそれは私の方だ。すでに番場を解放したのか? じゃあ、なぜここに? 中でなにが起きているんだ…?)

考え事をしていると、ゾクリと背筋が凍るのを感じる。

┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ

生田目「くっ!」

サッと再び廊下の角を利用して、銃弾を防ぐ。

目の前で壁が弾痕まみれになる。

英「わたくしの目の前で棒立ちだなんて、いい度胸をしていますわ」

生田目「しかたない。考えるのが苦手なんだ。……確かめるのには、大広間に入るのが一番手っ取り早いな」

英「…つまり?」

生田目「お前を倒して、確認するとしよう」


┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ

英「ふふふ、ほらほら、近づかなくては攻撃できないのでしょう? 陰に隠れていないで、出てきたらどうです?」

生田目「一瞬で蜂の巣だろうがっ」

┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ

壁がもはや原型を留めなくなってきた。

もはや戦場のようだ。

銃弾の雨あられ。止む気配が…止む気配が…ん?


シィーン


生田目(止んでる⁉)

罠かと思い、ソォーッと英を覗き見る。

英が腕を押さえていた。

英が苦しそうな顔をしている。

生田目「…おい、お前…」

英「あら…いやだわ、早くすりつぶさないと…」

英が抑えていたのとは別の腕を生田目に向ける。

生田目「⁉」

┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ

再びの雨あられ。

生田目「…そうか…」

生田目(あいつの腕から銃が発射されているのか…じゃあ、あいつの腕はオーバーヒートしたってことか…今はさっきまでとは違う別の腕だから―)

シィーン

生田目「きた!」

生田目が隠れていた角から飛び出て、まっすぐに英に向かう。

英「⁉」

英は両腕を抱くようにしていた。

英「っ!」

生田目がレイピアを振るう。

ヒュッヒュッと空を切る音がする。
英が躱したのだ。

生田目(速いっ⁉ 腕が使えないはずなのに…⁉)

英が息を荒げながら、レイピアを躱しつづける。
額には汗もかいていた。

生田目「苦しそうだな、英!」

英「こんなときに限って、体調不良ですわ…まったく、ついていませんわね…」

生田目「その状態で私に勝つのは不可能だ! あきらめて投降しろ!」

英「勝てない? それはどうでしょうか…」

生田目「なに? …ぐっ⁉」

英の蹴りが生田目のみぞおちに入る。


生田目「…ぐはっ⁉」

生田目が攻撃を止め、蹴られた部位を押さえて、前傾姿勢になる。

英「脚は死んでいませんわ…」

英が畳みかけようと、蹴りを今度は側頭部に入れようとするも、生田目が腕で防ぐ。

生田目「っ…かたいな…!」

英「⁉」

すぐに反撃で、レイピアで英の肩を貫こうとするが―


ギィンッ


―金属音が鳴る。

生田目「…そうか、お前、肩から先が、人間の腕じゃないな…」

英「…ばれてしまっては仕方ないですね…」

生田目と英が互いに距離をとる。

生田目「お前、だから武器を持たないのか…」

英「わたくしは徒手空拳ですわ」

生田目「…モノケモノを討伐するときに、立候補しなかったのはなんでだ…」

英「……言いたくありませんわね…」

生田目「…私たちを信じていなかったのか⁉」

英「は?」

生田目「…私たちを信用していないから、高みの見物を決め込んでいたのか…?」

英「………それは違います…」

生田目「なら、どうして…」

英「あなた、もしかして、脳筋ですの? ここに来てわたくしとしたやり取りを思い返せば、すぐにわかるでしょうに…」

生田目「…え?」

生田目(ここに来て? 銃で撃たれ…そのあとは…)

生田目「…お前、義手の具合が悪いのか…」

英「…そうですわ。この状態で行っても、足手まといは確実…そう判断しただけですの」

生田目「…そうか…すまなかった…私はてっきり…」

英「いえ、いいですわ…お気になさらずに…」

腕を生田目に向ける。

生田目「⁉」

┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ

生田目が柱を器用に使いこなして、銃弾を避ける。

廊下はすでに穴ぼこだらけだ。

生田目(次のオーバーヒートで捕まえれば……………いまだっ!)

英が銃弾を止め、腕を押さえる。


生田目「多少の激痛は勘弁してもらうぞ!」

英「あらあら…」

生田目「っ⁉」

生田目が足をもつれさせて、盛大にこける。

生田目「っぅ……こ、これは…⁉」

生田目の脚にワイヤーがかかっていた。

そのワイヤーは英の指から出ている。

英「捕まえましたわ」

生田目(銃だけではなかったのか…⁉)

英がグイッと引き寄せる。

生田目「っ⁉」

生田目(すさまじいパワーだっ⁉ 引き寄せられるっ⁉)

英が大きく振りかぶったパンチを―

ドムンッ!

生田目「…かはっ…!」

―生田目の腹部に入った。

生田目が殴られた勢いで、壁に激突する。

生田目(信じられん…⁉ これが、ひとの拳なのか…⁉)

生田目の口から血を吐く。

生田目(…内臓が少しやられたか…)

英「…うぐぐっ…!」

英の方も、自身の殴った方の腕を抱きしめていた。

生田目「…おまぇ…げほっげほっ!」

英「…あら、いやだわ…。心配しているのかしら? まず自分を心配なさってっ…?」

英の顔に浮かぶ汗は尋常じゃなかった。
腰を落として、座り込んでいる。
心なしか、顔色も青白い。息も荒々しくなっている。

――まるで、攻撃を受けたのは英の方だ。

生田目「…むりわ…ずるな…よ……げほっ!」

英「あなたに言われたくありませんわね…」

英がチラリと大広間への扉を見る。

英「………もう時間を無駄にはできませんわ…」ボソッ

英が立ち上がる。

生田目「なっ…待てっ…!」

生田目もゆっくりと立ち上がる。

英が大広間の扉に手をかけようとして―


???「アンタたち、なにしてんの…」


英「……ちっ」

生田目「…いい…ところに…けほっ!」

犬飼がいつの間にか廊下にいた。


犬飼「千足さんも、英さんも、そんなにボロボロになって…なにしてんのよぉ?💕」

生田目「…桐ケ谷…から…聞いて―」

犬飼「うん? いや、柩ちゃんとは会っていないけどぉ?💕」

生田目「⁉ なら、どうし、て…」

犬飼「アタシ今寝床探してんのよね~💕 どっかの誰かがドアを蹴破ったせいでさぁ💕 すると、モノクマから旧館に行くといいよって言われてさ💕」

生田目「…くそっ…モノクマめ…っ」

桐ケ谷と会えただろうに、その前にモノクマに先手を打たれたな…桐ケ谷はここにいる犬飼をずっと探すから、ここへの増援は遅くなるかもしれない。なら、ほかの連中も来るかどうかわからない…。なにより―

犬飼「で、この状況ってなに?💕」

―腹部を殴られて息も絶え絶えのところに、説明なんてできない…っ!

生田目「…今……はぁ……はなぶs―」

英「生田目さんを止めてください…」

犬飼「?」

生田目「…ち、ちがっ…!」

英「彼女が拘束されている番場さんをコロしに来たんです…! わたくしがなんとか死守していますが、もう少しのところで破られるところでした…!」

犬飼「……」

生田目(そうか、犬飼は今日の夜までひきこもっていた…英の荒れ具合も知らない…! ここは、マズイ…!)

しかも、英は大広間の扉の前…あたかも扉の番人をやっているようにも見える。そして、自分は侵入しようとしている…ように見える。
なにか言わなければ…しかし、言葉が浮かばない………万事休すか…。

犬飼「……」

犬飼が廊下をキョロキョロと見渡す。

英「……?」

廊下は弾痕だらけ…柱もボロボロだ。

犬飼「…英さんさぁ、拳銃持ってる?💕」

英「…持っていませんわ」

犬飼「…千足さんもないわよねぇ💕 でも、銃弾で争ったあとがある…💕」

英「…それがなにか…?」

犬飼「…英さんの身体から火薬の臭いがするのはなんで?💕」

英「…そ、それは…っ」

犬飼「加えてさ、千足さんは血を吐いてボロボロ、英さんはどこもケガしていないみたいなのに、なんでボロボロなわけ?💕 どこかケガした?💕」

英「…………」

犬飼「それと、もう一つ…………アナタ、眼がギラギラしすぎぃ💕 狙いがあるんでしょ?💕 ただ防衛しているヤツなら、そんな眼しないっての💕」

英「…っ」

犬飼「アタシ…望んだものはすべて手に入れるタイプなの💕 今のアナタからは同じ匂いを感じる💕 手に入れたいなにかがあるんでしょ?💕 それも、大広間の中に…💕」

英「…………」

犬飼「番場ちゃんがいるのよね💕 ……狙いは、番場ちゃんの解放ってとこかしらぁ?💕」

英「……甘く見ていましたわ…」

英が指先を犬飼に向ける。

犬飼「⁉」

┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ

指先から銃弾が発射された。


犬飼「あっぶな~💕 普通顔面に向けてぶっ放すぅ~?💕 クラスメートだってのにぃ💕」

生田目「それを避けるのはさすがだな…」


┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ


銃弾の嵐は止んでいない。

生田目も犬飼もそれぞれ別の柱に隠れている。

生田目「協力してくれるってことでいいんだな?」

犬飼「ハァ? 当たり前でしょ💕 っていうかぁ、もうあっちがアタシのこと逃がしてくれそうにないだろうしぃ💕 ったく、ここまでガチでやってくるなんて思わなかったわよ💕 なら、首突っ込まなかったってのに…💕」

生田目「この廊下の惨状見ればわかるだろうに…」

犬飼「むっ……まっ、いいわぁ💕 とりあえず、英さんを止めるところまでは協力してあげる💕」

生田目「それは助かる。頼りにするよ?」

犬飼「任せてよっ💕」

2人は視線を交わす。

似ても似つかない2人が、共同戦線を張った。


英(これは…試練…)

腕から機関銃を連射しながら、そう思う。

英(なにかを望むとき、高確率でそれを阻むなにかが起こる。それは天災、人災、不幸、偶然、色々比喩することはできる)

自分の人生を思い返す。必ずと言っていいほどに、自分は試練に襲われた。

ときには、ある雑誌に載った有名なお菓子屋に行きたいと言って…刺客に襲われた。

ときには、たまにはと友人と下校した際に…誘拐されかけた。

ときには、父親の知人のパーティに出席したいとわがままを言って…毒の入ったジュースを飲んだことだって、一度ではない。

それでも、自分は不運だなんて思わなかった。

ましてや、不幸だなんて…一度も思ったことはない。

それらの経験は、むしろ自分の魂を燃え上がらせた。


――試練に打ち勝つこと……。


自分の望みはそのうちに、本来の望みを阻む試練に対する勝利へと変わっていった。

この身体もそのためと言えば、嘘とは言えない。
最初は拒否感が凄まじかったが、わたくしの状況がそれを許さない。
そのうち、自分から最新義手を望むようになった。

そして、自分から試練に向かっていくときもあった。

今がまさにそうである。

――10年黒組――

自分の最後となるかもしれなかった、試練。

女王を決める…そう思っていた…なのに―

英「…ふふふ、こうして自嘲するのはいつぶりかしら」

まったく…自分はなぜこんなことをしているのだろうか…。
これも自分のしたかったことなのか…。

友人を助ける気持ち。

いや、助けるだなんておこがましい…どう見ても、自分が別の友人たちの絆の輪を乱している。

番場真昼…番場真夜に非はある。

それはわかっている。
だが、見過ごすことができない…。
その理由は自分もよくわからない。

―まったく、これはとんでもないことだ…。

こんな風にモヤモヤしながら、アサシン2人と戦う羽目になるなんて…ちっとも思わなかった。

英「…っ」

自分の腕の熱に、思わずうめき声が漏れる。
銃弾が止んだスキをつかれ、柱の陰からすかさず2人が出て来た。

一方は、鈍感で騙されやすく、真摯で一途で、それでいてどことなく抜けているのが魅力的な、仲間想いのクラスメート。

もう一方は、マイペースで不真面目で、大胆さと行動力とがあり、それでいて不器用さが魅力的な、仲間想いのクラスメート。

2人とも良き友人で、大事なクラスメートだ。

……2人とも、いい眼をしている。アサシンの眼。きっと自分も同じ眼をしていることだろう。


譲れないなにかのために、わたくしは彼女らと戦う。

今回は、今までとは一味も二味も違う試練……。

……ふふふ、だが、いい試練だ…。


生田目と犬飼が二手に分かれて、英に迫る。

両者とも柱を巧みに利用しつつ、近づく。

英(これでは銃で仕留めることは、無理そうですわね。逃がさないために室内に誘い込んだつもりが、逆効果ですわ)

犬飼が銃をかまえるのを見る。

バンッバンッ

キンッキンッ

飛んで来た銃弾を、英は腕を盾にして防ぐ。

犬飼「アイアンガールね💕」

英「メタルレディの方が合っていますわ」

生田目が鞘にしまっているレイピアに手をかけながら、近づく。

犬飼が気をそらし、生田目が攻撃か…。

生田目は居合いのかまえをしている。

英「甘いですわ」

生田目「うわっ」

英の手から伸びたワイヤーで、生田目の身体を捕まえる。

英(せぇのっ!)

一本背負いの要領で生田目を引っ張る。

生田目の身体が持ち上がり、抵抗やむなく引っ張られる。その先には―

生田目「避けろっ!」

犬飼「はぁっ⁉ ムリに決まって―」

ドゴッ!

犬飼と生田目が2人一緒に壁にぶち当たる。

犬飼「―んでしょぉ💕 アナタをあんなスピードで振り回せるなんて…春紀の怪力なんてレベルを超えてるわ💕」

生田目「すまないがこれをちぎってくれないか?」

むくりと起き上がる生田目が、英のワイヤーで縛られたままだ。

ジャキンッ

英が笑顔を浮かべて、腕を犬飼と生田目に向ける。

犬飼「や、やばっ!」


┣¨┣¨┣¨┣¨ドドッ!


犬飼が生田目の襟をつかんで、英にせを向けて走る。

厨房の奥の廊下の角まで退散した。

犬飼「やばいわねぇ💕 怪力に機関銃にワイヤー…どこから攻めればいいのかしらぁ💕 アイツの体力が少ないのが助かるわね💕」

生田目「英は体調不良だからな…」

犬飼「全国の体調不良者に謝罪した方がいいわね💕 っていうか、このワイヤーかった⁉」

犬飼が手で引き千切ろうとするも、びくともしない。

生田目「いたいぞ…もっとキツくなっていないか?」

犬飼「うるさいわね💕 ちゃんとやってるわよ💕 伊介は筋肉で戦うタイプじゃないの💕 もっとスマートに戦うタイプなのよっ!💕」

生田目「…おい…いたいぞ………まさかとは思うが…そういう趣味じゃないよな……?」

犬飼「TPOはわきまえるわよっ!💕」

生田目に絡みつくワイヤーがちっとも緩まなかった。

犬飼「ねぇ、アナタのレイピア借りるわよ💕」

生田目「あ、ああ。大事に扱ってくれ」

ブツンッ

犬飼「…切れ味いいわね、これ…よく見たらいい業物なんじゃない、これ?💕」

生田目「……まぁな……おい、なに盗もうとしている。返すんだ」

犬飼「ぶうぅ…けちんぼ💕」

生田目「まったく、油断も隙もないな」

生田目の手にレイピアが戻る。

切られたワイヤーが英の元へ戻っていく。


このやり取りの間も、銃弾の嵐は一向に止まない。


生田目「あいつにも私が逃れられたのがバレタな…奇襲は無理か…」

犬飼「ねぇ、もうちょっと作戦練らないとやばくない?💕 アイツ、かなり強いんだけどぉ💕」

生田目「…なら、二手に別れて挟み撃ちするぞ」

犬飼「それさっきやって返り討ちされたんだけどぉ?💕」

生田目「……しかし、頭を使うのは苦手でな…」

犬飼「伊介に任せてぇっ!💕」

犬飼がウインクして言う。

犬飼「こういうタイプに効果的な作戦があるのよねぇ💕」


英(犬飼さんの銃…あれをどうにかしないと、背中を見せて広間に入るのは危険ですわね…しかし、番場さんが中にいらっしゃる以上、扉から離れることもできない…攻めれないというのはもどかしいですわ)

機関銃を放っている腕が熱くなり、英が銃を撃つのをやめて、腕をおさえる。

もう片方の腕は動く。あたかも手が出ないかのようにふるまっている。

ブラフだ。

誘い込んで、一撃で仕留める。

銃ではなく肉弾戦。

あっちが出てきたら、今度はこっちも迎え撃つ番だ。

英(武智さんが相手とはいえ、首藤さんも暗殺者。無事ではなくともケガを我慢してこちらに来る可能性は捨てきれない。柩さんもいることですし…そろそろ決着を付けなくては…)


バリンッバリンッ


英(⁉ これはっ⁉)

廊下の電気が消えた。

蛍光灯が割れたのだ。

犬飼の銃で撃ったのだろう。

英「くっ」

一瞬で真っ暗になった廊下で、視界を遮られる。

英(しかし、それは相手も―)

気配を感じて、気づく。

生田目が近くまで来ていた。

英(暗くする前に、眼をつむっていたのですね…だが、避けられない距離では―)

英が横に下がろうとして、

生田目「―悪いが、射程範囲だ」

英「っ⁉」

鋭い痛みが走る。

脇腹を僅かにだが斬られた。

鮮血がほとばしる。


生田目(傷が浅いっ!)

完璧に避けられはしなかったものの、大したダメージにならない。

生田目(レイピアが貫く瞬間に身体を斜めにして躱したのか! なんという反射神経……そうか、義足でもあったな…怪力だけでなく、並みの運動能力でもないことを忘れていたな)

生田目は動揺はあったが、そのまま距離を詰める。

脇腹を斬られた英は動きが少々鈍くなる。

生田目(大きいケガは死につながる。薄皮一枚でダメージを与えるしかないっ! それでいて、動きを制限できるもの! 本来なら脚だが、それが使えない以上は…)

英「っ⁉」

生田目が英の腹部をスレスレで斬る。

レイピアの切っ先に薄く血がつく。

英「…いい腕をお持ちですね」

生田目「お前がここまでやれるとは思わなかったよ…!」

だが、英をようやく広間の扉から引き離した。

英は避けるのに夢中だったのか、扉の前から離れてしまっていたのだ。

犬飼が広間に入ろうとする。

生田目(犬飼の作戦は、番場を人質にして、英を牽制しつつ、増援を待つこと。正直こいつを倒すとなると、色々キツイから仕方ないとはいえ、あまり私好みじゃない作戦ではある…)

英と犬飼の間に、生田目が立ちふさがっている構図だ。
犬飼の行動を、生田目越しに見る英。

英の目つきが変わる。


生田目「―っ!」


生田目に寒気が走った。

犬飼の手が扉の取っ手を掴むところで…、

生田目の目の前にいた英が、急スピードで生田目を追い抜いた。

生田目(なにっ⁉ あんなトップスピードで走り出せるのかっ⁉)

犬飼「あぐっ⁉」

英が犬飼の背中にエルボーを喰らわせていた。犬飼がのけぞる。

その威力はすさまじく、犬飼越しに大広間の扉がギシギシ音を立てるほどだった。

結果―


ドガァーンッ


―広間の扉を壊して、犬飼は番場がいる広間に倒れこむように吹っ飛んでいった。

英「しまっ⁉」

生田目(スキありっ⁉)

生田目が英の薄く斬った脇腹に、拳を叩きこむ。

英「ぐっ⁉」

英は攻撃を受けてすぐに生田目から離れるようにステップして、衝撃を流した。

その行動によって、英も広間の中へと入って行った。


英「番場さんっ! 逃げますわよっ! …って、番場さん?」

生田目(…英のあの様子…番場はまだここにいるな…しかも、解放もされていない。最初のフリは演技か…)

広間を見渡しても、パーティに理療したテーブル、エアコン、奥に窓があるだろう鉄板、隙間だらけの床、それとやけにきれいな折り紙の作品の数々に粉々になった折り紙の数々があるだけだった。そして、モニターと監視カメラが相変わらず広間を映していた。

生田目(パーティのときは剣持がハッキングしたいてが、今はモノクマが見ているはず…止めにこないのはわかってはいたが、傍観を決め込んでいるモノクマには、やはり腹立たしいものではある)

犬飼はうつ伏せに倒れている。

背中に英のエルボーをダイレクトに喰らったんだ、無理もない。

英「番場さんっ⁉ どこに…⁉」

番場「おいおいおいおい…っ! いったいなんのお祭り騒ぎだぁ…っ⁉」

英「番場…さんっ?」

番場の声が犬飼の下から聞こえて来た。

番場「あ~、ここにいるぜ…っ!」

番場がうつ伏せ状態の犬飼の下敷きになっていた。

番場は仰向けになっている。

この状況でなければ、犬飼が番場を押し倒しているようにも見える。番場は手錠がついているので、自力で起き上がれないのだろうか…。

英「…犬飼さん…番場さんを押し倒すのはやめてくれませんか? わたくしへの精神攻撃のつもりですの? 意味ないですわ。さっさと起き上がってください。それ以上その姿勢でいるのならば、粉々になるまで殴りますよ?」

英がイライラしているように、眉をひそめていた。

英には、この状況でも押し倒しているようにしか見えないようだ。

番場「いやぁ、なんつ~か廊下が騒がしいからよぉ…っ! 盗み聞きしようとドアに近づいたわけよぉ…っ! そしたら、急に犬飼のヤロウが飛び込んで来るんだから、参った参った…っ!」

犬飼「……いっつぅ💕」

英「犬飼さん、早くどいてください」

犬飼「るっさいわねぇ💕 背中を痛めて起き上がれないのよ💕 どっかの誰かさんがメタルボディでエルボーするもんだからぁ💕」

英「…わかりました、わたくしがどけます」

英が犬飼と番場の方に近づいていく。

生田目もとりあえず広間へと入室する。

生田目(英の切り傷に思いっきりパンチいれたんだが、滅茶苦茶平気そうだな…わりとショックだ…)


英が犬飼を床に仰向けに寝転がせる。

犬飼「わぁお💕 意外と手が悪いのね…💕」

英の手に犬飼の銃が握られていた。

英「大方わたくしを誘い込んで、撃つ算段でもつけていたんでしょう。それくらいお見通しですわ」

犬飼が起き上がろうとするが、

犬飼「あ~ダメ💕 やっぱちょっと痛いわ💕 ……もう、伊介いっち抜~けたっ💕」

犬飼がバタッと地面に背中を預ける。

生田目「お、おい⁉」

犬飼「もう無理でしょ?💕 その気になれば、番場ちゃんのロープもすぐに解ける。牽制できる唯一の武器の銃も取り上げられちゃったし…いくら千足さんでも2対1じゃ勝ち目ないでしょ💕」

生田目「…だからといって、見過ごすと危険が…」

犬飼「話し合えばいいじゃない💕」

生田目「…?」

犬飼「アナタたち、クラスメートでしょぉ?💕 きちんとルールについて話し合って決めれば?💕」

生田目「…………」

英「…………わたくしは賛成ですわ」

生田目「なに?」

英「わたくしが原因ではありますが、話し合いで解決できれば、わたくしも納得できます」

生田目「…………」

英「第一、走りさんと一ノ瀬さんがなんの相談もなく、番場さんを拘束してしまったのがいけないのですわ。わたくしの意見も聞いてほしいものです」プンプン

番場「おいおい、その話し合いの席にはオレも出席できるんだろうなぁ…っ⁉」

犬飼「当たり前でしょう?💕 当人なんだしさ💕」

英「犬飼さんもお願いしますわ」

犬飼「伊介も?💕」

英「アナタも、クラスメートでしょう?」ニコッ

犬飼「…あらぁ💕 そうだったわねぇ💕」

英が微笑みを浮かべて、生田目も見る。

もう殺気は感じられなくなった。

生田目「……わかった。話し合おう」

生田目(…まぁ、とりあえず、英と番場が姿を消すようなことにはならないみたいだし…仕方ない。足止めが私の役目だ。別に倒す必要はないんだったな…)

生田目はレイピアを腰の鞘にしまった。


病院


目が覚める。

窓の外から月明かりが入る。

眼がくらむ。

ベッドの隣りにはいまだに起きて看病してくれている人間がいた。

東「走り」

走り「ん~なんスか~?」

走りが丸い椅子に座り、雑誌を読んでいた。

東「私の傷はどうだ?」

走り「明日には退院できると思うッスよ~。さすが、回復力は高いッスね」

東「幼いころから訓練ばかりで、出血が絶えなかったからかな…」

ベッドから上半身を起こす。

走り「あ、傷口が開くッスよー」

東「棒読みで言うな…なにを読んでいるんだ?」

走り「あぁ、これッスか?」

走りは雑誌を持っていた。

私の看病が退屈だったのか…しかし、走りが読む内容には、若干ながら好奇心が刺激される。

どうせろくなものではないと思いながら、だが、ある種の期待も込めて、返答を待つ。

走り「週刊暗黒新聞《ダークホール》の最新号ッスよ! ウチはこういうブラックな新聞が大好物なんスよ!」

東「なんだその雑誌名…大衆向けじゃないな」