真姫「神様って、どうやったら殴れるのかしら」 (178)

ラブライブ!×Steins;Gate
主体は真姫ちゃんだけど、シュタゲのネタバレと人死にの話注意。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405225992

--2010年8月13日--

世界線変動率 0.337187%

岡部「……」

岡部(今日は、何度目の8月13日だろうな……)

岡部(また、まゆりを救えなかった……)

まゆり「オカリン?どうしたの?」

岡部「出かけてくる」

紅莉栖「え、ちょっとどこに行くのよ岡部!?あと少しでタイムリープマシンが完成するのに……!」

橋田「オカリンオカリン、出かけるならキンキンに冷えたコーラヨロ」

岡部「クリスティーナはドクペでいいな?」

紅莉栖「あ、うん、ありがと……じゃなくてぇ!どこ行くのよ!」

橋田「ほほーぅ、牧瀬氏がデレツンという高等技術を身につけたとは。こりゃオカリン陥落も近いな」

紅莉栖「ななななな何言ってんのよ馬鹿なの死ぬの!?」

岡部「少し風に当たってくるだけだ……すぐ戻る、はずだ」

まゆり「それなら、まゆしぃも着いていくのです」

岡部「コスの製作はいいのか?確か、クリスティーナたちとどっちが早くできるか競っていたと……」

まゆり「んー?そんなこと言ったかなぁ?」

岡部(あぁ……それを言うのはもう少し先、タイムリープマシンができる直前くらいだったか)

岡部(些細なことだが、バタフライ・エフェクト……未来にどんな影響があるのか不明確な現状では、下手なことは言わない方がいいか)

岡部「俺の勘違いかもしれんな。さては『機関』の連中の記憶操作……ハッ!?」

岡部『俺だ。ああ、どうやら「機関」の連中は既にこの俺に接触しているらしい。油断するな、だと?ふっ、それはお前たちにも言えることだ。生きて、また会おう。エル・プサイ・コングルゥ』ピッ

橋田「どう考えても死亡フラグです本当にありがとうございました」

紅莉栖「まったく、いつもどおりねぇ……」

まゆり「えへへ、まゆしぃはこのオカリンもいいなぁ、って思うのです」

岡部「さぁ行くぞまゆり!敵の攻撃をかいくぐり、『約束された彼の地』を目指すのだ!」

まゆり「どっか目的地あるのー?」

岡部「いや、ないが」

岡部(どうせ、どこへ行っても……まゆりは……)

秋葉原・UTX前

『衝撃的なニュースが飛び込んできました』

『今朝未明、都内の高校スクールアイドルのメンバーの一人が練習中に、事故に合い、お亡くなりになりました』

『???「いつも元気だったのに……どうして!」』

『???「うえええぇぇん!!なんで!どうしてなのぉ!!」』

『???「私のせいよ……でも、どうしろってのよ!意味わかんない!!」』

『結成から間もないスクールアイドルですが、人気は急上昇中でした』

『突然の事故から一夜開け、本日通夜がしめやかに行われます』

岡部「……なぁ、まゆり。たしかダルは、このスクールアイドルもどこか応援していたよな?」

まゆり「ダルくんはねぇ、音之木坂高校だったと思うよ?」

岡部「そうか。このスクールアイドルとやら、その音之木坂じゃないといいんだがな……」

岡部(だが……今ままでのループのなかで、こんなニュース見たことあったか?)

岡部(タイムリープしていくうちに、俺の記憶が曖昧になっているのか……?)

まゆり「たぶん、だけどね。さっきインタビューで映ってた制服の高校……音之木坂じゃなかったかな」

岡部「それは本当か?ダルがその手のニュースを聞き漏らすとは思えないが……」

まゆり「この前からタイムリープマシンを作るのに忙しくて、あんまり見てないんじゃないかなぁ?」

岡部「まゆり、これはトップシークレットだ。ダルには……秘密にしておいたほうがいい」

まゆり「はぁい」

--前日、8月12日--

μ's練習前

にこ「さぁ、新曲のPV撮影まであと少しよ!ガツンと気合入れていくわよー!!」

穂乃果「おおー!にこちゃん気合い入ってるねー!」

真姫「自分がセンターだったら、そりゃ気合いも入るわよ」

ことり「でも衣装、これで本当によかったのかなぁ?」

海未「恥ずかしすぎます!破廉恥です!」

花陽「ハレンチとまでは言わないけど、でもこれって……///」

凛「かよちん、とっても似合ってるにゃー!」

希「曲のコンセプトにあった、ええ衣装やん♪」

絵里「かといって、水着は……ねぇ?」

にこ「みんな似合ってるわよっ!でも、一番似合ってるのは、この、矢澤にこちゃんね!にっこにっこにー♪」

真姫「にこちゃん、本当に似合ってるわよ」

真姫「毎回のことながら、ことりのセンスにはびっくりさせられるわ」

ことり「えへへ、ありがとう!」

にこ「ちょっと真姫ちゃん!?それじゃ衣装のおかげみたいじゃない!」

真姫「馬子にも衣装とは、このことね」

にこ「ぐぬぬ……真姫ちゃんのほうが少しグラマーだからって……!」

花陽「まぁまぁにこちゃん、真姫ちゃんも褒めてくれてるんだし……」

にこ「褒め言葉じゃないのよ!?」

海未「練習する前に怒り疲れてどうするんですか?」

絵里「それじゃ練習始めましょうか!まずはストレッチ、それからフォーメーションの確認ね!」

8人「おー!」

真姫(我ながら、上手な照れ隠しね……)

真姫(今日は……今日こそは!)

真姫(にこちゃんに、こ、ここくは……お、想い!そう、想いの丈をぶつけるのよ!)

真姫(はぁ……新曲PVの練習が始まってから、毎日こんなこと想ってるじゃない……)

--練習後--

穂乃果「どひゃー!ちかれたちかれたぁー!!」

ことり「お疲れ様♪それにしても暑かったねー」

凛「にゃー……日焼けしちゃうにゃー」

花陽「凛ちゃん!?アイドルに日焼けは天敵よ!?日焼け止めは塗ってるよね!?」

凛「あー、今日は忘れちゃったかも」テヘ

希「ほほー、それじゃウチが塗ったろうか?」ワシワシ

凛「にゃあっ!?あ、明日からは塗ってくるにゃー!」

海未「今日はフォーメーションもタイミングもばっちりでしたね」

にこ「そう?真姫ちゃんが少し後ろに下がりすぎじゃない?もっと前に出てもいいと思うんだけど」

真姫「PVはセンターが目立ってナンボよ。にこちゃんが目立つように、私が少し下がるのは当たり前だと思うんだけど?」

にこ「なによそれ?にこが真姫ちゃんの影に隠れるってこと!?」

真姫「そうじゃなくて!身長の差を考えると、にこちゃんが目立つためには私と穂乃果は半歩くらい後ろに下がったほうがいいのよ!」

にこ「なんですってぇ!そんなことでにこの輝きが失われるとでも言いたいの!?」

真姫「光源位置も加味すると、私と穂乃果は下がるべきよ!そうじゃなきゃライトが当たりにくくなるのよ!」

にこまき「ぐぬぬぬぬ……!!」

絵里「二人とも!今日は疲れてるんだから、家に帰ってゆっくり休みなさい」

海未「その通りですよ、にこ、真姫。そこの立ち位置については、私と穂乃果、ことりで検討しておきます」

穂乃果「えー!?私もぉ!?つーかーれーたー!お風呂入りたぁーい……」

海未「いけません!穂乃果の立ち位置についても検討する必要があります」

穂乃果「ちぇっ……海未ちゃんのいじわるー」

ことり「Wonderful Rushの時も、さんざん考えて、一緒に検討したから、穂乃果ちゃんと海未ちゃんならきっと大丈夫だよ!」

海未「ことりも一緒です!」

ことり「うえーん、穂乃果ちゃーん……」

穂乃果「ことりちゃーん……」

真姫「にこちゃん?私たちも、言われるままってのは癪に触るわよね?」

にこ「真姫ちゃん……もしかして?」

真姫「そうよ。居残って、少しでも考えていかない?……ふ、二人で」

花陽(おおっ……!これは!)

希(真姫ちゃんにしては珍しく、積極的やね……!)

絵里「……ムッ」

にこ「ま、まぁ?真姫ちゃんがそういうなら……」

真姫 パァッ!!

絵里「それじゃ、今日は解散しましょうか」

--着替え後--

穂乃果「それじゃ、まったねー!」

りんぱな「ばいばーい!」

絵里「それじゃあ、また明日!」

海未「ことりと穂乃果は逃しませんよ!」

ことり「あ、あはは……」

希「海未ちゃん?手加減しぃや?」

真姫「それじゃ行くわよ、にこちゃん」

にこ「……」

真姫「にーこーちゃーんー?」

にこ「ふぉあっ!?」

真姫「なんか考えごと?似合わないからやめなさいよ」

にこ「たまには、にこだって考えたりするのよ……って、似合わないってなによ!?」

真姫「だって、いつも元気なのに急に黙り込んだりしたら、心配くらいするわよ」

にこ「全く、情けないわね。後輩に心配されるなんて……」

真姫「無関心な後輩じゃなくて、よかったんじゃない?」

にこ「そうね。練習の続きでしょ?先に屋上上がってて」

真姫「え?にこちゃんは?」

にこ「にこはこれでもアイドル研究部の部長よ?部屋の戸締り、片付け、部室の鍵の返却、他にもあれやらこれやら、忙しいのよ」

真姫「そ、そうだったんだ……意外ね、ちゃんと部長やってたのね。手伝うわ」

にこ「むっ……一言余計な気がするけど……まぁいいわ。それよりも、先に体温めといたら?」

真姫「にこちゃん……それならいいわ」

真姫「先に行ってるから、必ずきてよね!」

にこ「はいはい、必ず待っててよね」

ガチャ

真姫「うわっ……」

真姫(さすがは真夏、5時回ったとは言え……まだまだあっついわね)

真姫(……)

真姫(…………)クルクル

真姫(暇ね)

真姫(って!暇してる場合じゃないわよ!!この立ち位置の練習終わったら、必ず……)

真姫(ここっ、こ、告白しなきゃなんだから!!)

真姫(でも、こ、告白するっていっても……なんて言えばいいのかしら?)

真姫(す……好き、です)

真姫(でもこれじゃ、穂乃果は海未やことりによく言ってるわね)ウーン

真姫(あ、あい……あいして……)

真姫(きゃー!これじゃなんか変な人じゃない!告白なのに、あ、愛して……って!重い!思いが重い!!)ジタバタ

真姫(ええと、ずっと一緒にいてください……うん、これなら)

真姫(ばかぁぁぁぁぁ!!!!プロポーズじゃないんだからぁぁぁぁ!!!!)ゴロゴロ

真姫(ていうか!どんなシュチュエーション作ればいいの!?)

真姫(いきなりムードもへったくれもなくす、す……告白するなんて、ありえないわ)

真姫(なんかいいムードにして……)

(真姫『ねぇ聞いて、にこちゃん。私ね、にこちゃんのこと、ずっと見てたの。私、にこちゃんのことが』)

真姫(あああああこれじゃただの妄想じゃなないのよぉぉぉぉぉぉ!!)バシバシ

真姫「そうだわっ!」

真姫(練習が終わった後に言うんだから、とりあえず飲み物を渡す!それからにこちゃん褒める!)

真姫(あとは……あとで考える!)

真姫(まずは水分よ!さすがマッキー!天才じゃないかしら!!)

真姫(善は急げ、よ!)

真姫(あれ、でもにこちゃんの好きな飲み物って……なんだっけ?)

キャアアアアア

真姫「悲鳴!?この声……にこちゃん!?近いはず!」

ガチャ

真姫「全く、世話の焼ける先輩なんだから……って、」

真姫「なによ、こんななにもない踊り場で転んだの?……ほら、立てる?」

ドロッ

真姫「え……血……?」

にこ「」

真姫「にこちゃん?ねぇ、にこちゃん!?冗談はやめてよ!?ほら、起きてよ!練習するよ!!?」ユサユサ

にこ「」

真姫「そんな……にこちゃん!にこ!!」ユッサユッサ

真姫「いや……いやぁ……」

真姫「いやあああああああああああああああああああああああああ!!!」

--病院--

真姫(あのあと、すぐにお母さんに電話した)

真姫(救急車を手配してもらった……情けないけど、救急車の番号さえ思い出せなかった)

真姫(お父さんにも電話した)

真姫(簡単な止血とかの応急処置の仕方くらいは覚えていたはずなのに、頭の中が真っ白で、言われた通りにしか動けなかった)

真姫(脳震盪の疑いのある場合は動かしてはいけない、というのは医療の世界だけでなく、世間一般でも常識)

真姫(なのに、私は……思いっきり揺さぶっていた)

真姫(さっきお母さんに慰められ、ある程度は落ち着きを取り戻せた)

真姫(μ'sのメンバーに連絡し、病院に付き添ってもらった)

真姫(そして今、にこちゃんを除くメンバー全員が、手術室の前にいる)

真姫(だれも言葉を発することができないまま、どのくらいの時間が経ったのだろう)

真姫(1時間?2時間?)

真姫(今が何時かわからない……)

真姫(ただ、にこちゃんが助かるよう、神様に祈ることしかできない)

真姫(ねぇ、大ッ嫌いな神様。私から大好きな音楽とダンスだけじゃなく、大事な人もとりあげるのですか……?)

真姫(ふざけないで)

真姫(奪うのなら、最初から与えないで……!)

真姫(にこちゃんに何かあったら……殴ってでも、奪い返してみせるから)

真姫(ぶん殴られたくなかったら、にこちゃんを救いなさい……!!)

ガチャ

先生「お母さん、ちょっとよろしいですか?」

にこ母「はい……」

真姫(なにか、嫌な予感がする……)

真姫(「手術中」のランプが点灯したままというのは、まだ施術は終わっていない)

真姫(つまり、母親に決断が委ねられるような状態……)

真姫(お願い、この予感、外れて……!!)

ガチャ

にこ母「ううっ……」

真姫(泣いてる……唇を噛み締めながら……お願い……)

真姫(お願い!お願い神様!音楽とダンスは今すぐ奪ってもいい!なんなら明日、いや今から医学部へ進む勉強だけに専念するから!)

真姫(どんな困難も受け入れる!どんな苦難も乗り越える!!私から何を奪ってもいいから!!!)

真姫(だから、だからっ……どうか、にこちゃんだけは……)

先生「……ご友人の方たちですか?」

穂乃果「は、はい……」

先生「ええと、お母さん、よろしいですか?」

にこ母「はい……お願い、します」

真姫(やめて……)

先生「最善の手は、尽くしました」

真姫(聞きたくない……)

先生「残念ですが、打ちどころが悪く……」

真姫(もう、いや……)

先生「8月13日 午前1時03分、矢澤にこ様、ご臨終です」

真姫(……)

穂乃果「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

海未「嘘でしょう!?嘘だと言いなさい!!!」

ことり「にこちゃぁぁぁん……!!」

花陽「どうして!?にこちゃん!にこちゃん!!」

凛「ドッキリでしょ!?手が混みすぎにゃ……にゃぁぁぁん!!!」

絵里「にこ……!!あんた、アイドルになるんじゃないの……っ!!」

希「はよ起きんと、ワシワシMAX……やで……」

真姫(神様……私はあんたのことが嫌いになったけど、あんたも相当私のことが嫌いよね……)

真姫(ぶん殴りに、行って……やる……わ……)

真姫「あ……ああ……っあああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

--8月13日--

真姫(昨日は泣き疲れて、お昼まで寝てた)

真姫(全く食欲がなくて、何も喉を通らないまま……)

真姫(にこちゃんの通夜が始まるまで、なんとなくメンバー全員で集まってるけど……)

穂乃果「うえっ、ひっぐ……」

海未「にこ……っ!!」

ことり「すん……ぐすん……」

真姫(全員、泣いてる……でも、言うなら、今しかないよね)

真姫「ねぇ、みんな聞いて」

真姫(涙声に、なっちゃった……)

絵里「……ぐずっ、どうか、した?」

真姫「昨日、事故があったのは私が居残り練習をしよう、なんて言ったせい……だから、私が」

希「真姫ちゃん。それ以上は、許さへんよ」

真姫「え……?」

希「にこっちのお母さんの卵子とお父さんの精子が合体した時点で、こうなる運命だったんよ」

真姫「違う!私が、呼び出さなければにこちゃんは死ななかった!!」

絵里「……なんで、今それを言うの?」

真姫「それは……知ってて、ほしくて」

絵里「違うんじゃない?罪を裁いてほしい。償わせてほしい」

絵里「そう言ってるように聞こえる」

絵里「もし真姫もいうように、『呼び出した結果の死』が罪なら、私は……いえ、μ'sは全員、あなたを許さないわ」

真姫「そう、よね……」

希「でも、にこっちはこうなる運命だったんや」

絵里「だから、誰も真姫を恨んでなんて、いないの……きっと、天国のにこも、最後に真姫の顔が見れて、よかったんじゃないかしら」

真姫「やめてよ……気休めじゃない……」

穂乃果「真姫ちゃああん!!」

真姫「ちょっと、穂乃果……」

穂乃果「この中で一番辛いのは、真姫ちゃんだよね?悔しいけど、にこちゃんの一番の友達は真姫ちゃんだったんだもん。だから、このなかで一番泣きたいのは真姫ちゃんのはずだよ?」

穂乃果「穂乃果たちが泣いてばっかで、真姫ちゃん、うまく泣くタイミングないんだよね?」

穂乃果「今しかないよ。にこちゃんを弔えなかったら、多分、今後の人生、後悔しっぱなしだと思う」

穂乃果「お願い、強がらないで……泣いていいんだよ?」

真姫「ほ、穂乃果……う、うっ……」

穂乃果「頑張ったね、真姫ちゃん」

真姫「うぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

真姫(少ししてから、どこかのテレビ局からインタビューがあった)

真姫(どこからか、にこちゃんがμ'sの一員だということがバレて、更に私たちが同じメンバーだとバレたようだ)

真姫(こんな時にインタビューだなんて……本当、このマスコミって連中は好きになれない)

絵里「いつも元気だったのに……どうして!」

ことり「うえええぇぇん!!なんで!どうしてなのぉ!!」

真姫「私のせいよ……でも、どうしろってのよ!意味わかんない!!」

真姫(そう……意味がわからない。どうやって神様をぶん殴ればいいのかしら?)


真姫(通夜が終わり、メンバーは一旦散り散りになった)

真姫(さすがに、いつも通りとは行くわけがない)

真姫(家に帰る気分でもなく、なんとなく秋葉原をウロウロしてるけど……なんで、こんなところにいるんだろ)

真姫「はぁ……」

真姫「どうやったら、神様なんて殴れるのよ……」

??「聞き捨てならないな、そこの」

真姫(え……なに、この人?)

??「なぜ、そこまで神を恨む?」

真姫(無精ひげ、白衣、ぼさぼさな頭……なんか、危ない人?)

真姫「失礼ですけど……?」

??「俺か?俺は狂気のマッド……」

真姫(ああ、やっぱり危ない人だ、逃げよう)

??「いや……大事な人も守れない、ダメな男だ」

??「幾度となく、その人を失ってしまった……何度繰り返しても、救うことなどできない」

??「それがこの世界線。それが、神の作った世界」

??「だからお前が神を恨むよりもずっと、俺の方が神を憎んでいる」

??「いや、恨むのもお門違いか……最初に神をも冒涜する12番目の理論に行き着いたのは、俺なんだからな」

真姫(なに、なんの話……?でも)

真姫「ちょっと待って。幾度も失った?何度繰り返しても救えない?」

??「頭がおかしいと思っているだろ?」

真姫「まぁ、少しは……」

??「随分と素直ではないか……」

真姫「……素直なんかじゃ、ないわよ」

真姫「素直だったら、こんなに後悔しないで済んだかもしれないのに……」

??「お前が神を恨む理由というのが、それか?」

??「くだらんな。実にくだらん。その程度の後悔で……」

真姫「その神に大切な……大切な友達を殺されたとしても、くだらないの?」

??「……すまん、前言撤回しよう」

真姫「貴方も少し、私と境遇が似てるようね……?」

??「俺の境遇は……どこまで話してもいいんだろうか……」

??「俺の名前は、岡部倫太郎」

岡部(あと2時間程度でまたまゆりが殺されるのか……そしたらまた戻ればいい。それなら、今話をしても全てリセットされる……)

岡部(この世界線は、これ以上ややこしいことにはならないだろう……たぶん)

岡部「少し、長い話になるが……ついてこれるか?」

真姫「まぁ、どうせやることもないし。聞いてあげるわ」

岡部「どこから話すか……まず、7月28日だろうな。俺の前で死んだと思った女が、別な場所で生きていた。

いろいろあって、その女が俺の研究所に興味を持った。

研究の内容は多岐に渡るが、未来的なガジェットを製作するのが主だな。

その中の試作品『電話レンジ』というのを開発した。

電子レンジと電話を合体させ、電話から電子レンジを起動できるという優れものだった……

しかしそれの操作方法を誤り、過去にメールが送れる機能があるということに気がついた。

尤も、その機能に気がついたのは助手だが……ああ、先ほどの、俺の前で死んだ女のことだ。

俺は時々『ザ・ゾンビ』という愛称で……いや、話が脱線してしまうな。

調子に乗った俺とラボメン……研究所のメンバーのことだ。そのラボメンとの過去を変えていった。変えまくった。

そして過去改変に巻き込まれない『リーディング・シュタイナー』という能力により、世界線の変動を観測できる。

ラボメンは過去改変により、過去を変えた『事実』が残らない……俺だけが、『記憶して』いる。

先ほどの電話レンジを改良し、過去に記憶を飛ばせる機械、タイムリープマシンの開発に着手した。

岡部「タイムリープマシンが完成した日、ラボメンの一人にラボを襲撃された。

そいつは、ラボメンでありながら……敵のスパイだった。敵?SERNという機関だが……知らんのも無理はないか。

襲撃を受けた俺は助手の助けを借り、こうして過去に戻った。

信じられないって?それじゃあ予言だ。あと少しすれば、この秋葉原は封鎖される。

地下鉄、JRが止まり、地上では謎の渋滞。実質的な封鎖だ。

過去に戻った俺は、大切な人を救うため、タイムリープマシンの完成と同時に逃げ出した。

しかし、逃げた先でも彼女は殺される。

タイムリープマシン完成前に戻り、その子を連れ出しても、殺される。

何度やり直しても、どこへ逃げても、死んでしまう。

彼女は、世界に殺されているんだ。

そういう運命を背負わした神を、俺は恨み、憎んでいる」

真姫「……」

岡部「頑張って語ったんだ、感想の一つでも聞かせてもらいたいもんだがな?」

真姫「そうね……何個か、質問させて」

岡部「わかる範囲なら」

真姫「何回やり直した?」

岡部「覚えていない。幾度となく、だ」

真姫「過去に戻って、戻る前まで進んだとき、何か変わりはあった?」

岡部「そうだな、俺が行動したことによって変わったことはあるだろう。しかし、世界線を変えれるようなことはできない」

真姫「過去にメールを送って、何回くらい過去を変えた?」

岡部「萌郁、フェイリス、ルカ子、あとくだらないのが数回か……」

真姫「過去に送ったメールの内容はどんなの?」

岡部「自分が産まれる前の親に肉ではなく野菜を食べるように督促したり、携帯の機種変をしないように、あと一人はわからん」

真姫「そのあと、貴方の主観で、世界は変わった?」

岡部「ああ、激変した。俺が世界から取り残されたと思うほどにな……」

真姫「貴方は、どうすればその子を救えると思う?」

岡部「……わからんから、こうして何度も繰り返しているんだろう……」

真姫「それじゃ、最後ね」

真姫「私にそのタイムリープマシン、使わせてくれない?」

岡部「馬鹿なことを言うな!」

岡部「リーディングシュタイナーを持っている俺だから、常人とは違う脳の構造をしているからこそ、正常な意識を保てているが……」

岡部「一般人ごときがあれを使って、平気でいられるとは思えないっ!」

真姫「そんなに、辛いものなの……?」

岡部「無理だろうな」

真姫「でもね、大切な友達のいない、この世界……いる意味ないじゃない」

真姫「それに神様を殴るって難しそうだから、12番目の理論?とやらで冒涜するくらいで許してやろうって思ってるのよ」

岡部「お前……」

真姫「失敗しても、後悔なんてない」

真姫「この世界に、全く未練がない」

真姫「にこちゃんを助ける手段が目の前に転がり出てきたのよ?どんなことであれ……すがるしかないじゃない」

岡部「……最悪の場合、人格が破壊されることも考えれる」

真姫「それがなんだっていうの?」

岡部「お前がお前じゃなくなる場合もある」

真姫「どうせ私にはなにも残ってない」

岡部「人生を捨てる覚悟はあるのか?」

真姫「くどいのよ。死ぬのは怖くない。にこちゃんのそばに行けるから」

岡部「……フッ。もし、お前との出会いが別なものだったら、お前もマッドサイエンティストになれたのかもな」

真姫「それはごめんね。私は何度人生をやり直しても、貴方のいう『世界線』とやらがどこであろうと、スクールアイドルをやるわ」

岡部「スクールアイドル……?」

岡部「……その制服、まさか……音之木坂か?」

真姫「そういえばにこちゃんが死んじゃったのって、ちょっとしたニュースになってたっけ」

岡部「まさかとは思うが、死んだのって……」

真姫「そうよ。私が所属してるスクールアイドル『μ's』のメンバーの一人で、私もμ'sのメンバーで、」

真姫「私の大切な友達……」

岡部「それなら、お前はやはりタイムリープマシンを使うべきではないな」

真姫「ちょ、どうしてよ?意味わかんない!!」

岡部「何が『未練がない』だ。『何も残ってない』だ」

岡部「お前には、仲間がいるじゃないか……」

岡部「ここで失敗したら、また仲間が取り残されるだけだ。悲しみが増幅されるだけだ!なぜそれがわからんのだ!!」

真姫「にこちゃんがいなくなった今、μ'sは活動できない」

真姫「それなら、私たちは解散しなければならない……というより、誰も続けようとは思わない」

岡部「それはお前の考えだろう!?」

真姫「私たちμ'sは、9人揃ってμ'sなのよ!」

真姫「私は歌うのが好きで!ダンスが好きで!スクールアイドルに誘われて!」

真姫「ようやくよ!?ようやく私の好きなことができるようになったの!!」

真姫「自分でいうのもなんだけど、人よりは優れた歌声を披露できる場所がある!」

真姫「最高の仲間にも恵まれた!そこで大好きになった友達もできた!」

真姫「それは高校卒業までのタイムリミット付きだって知ってた、受け入れてた!」

真姫「でも……神様は、私から歌も、ダンスも、仲間も、大好きな友達さえも取り上げる……」

真姫「だから、そいつに対抗したいの」

真姫「何度でも言うわ」

真姫「持っていたものは全て失った。タイムリープマシンを使わせて」

岡部「……しかし」

真姫「くどい」

岡部「……覚悟は」

真姫「ある」

岡部「なかなか、強情だな」

真姫「好きな友達のために、一途なだけよ」

岡部「そういえばお前、名前は?」

真姫「あ……ごめんなさい、言ってなかったわね」

真姫「西木野真姫。音之木坂高校1年よ」

岡部「なにっ!?高1だったのか……」

真姫「なによ?」

岡部「落ち着いてるから、もう少し上かと思っていたが……」

岡部「俺は岡部倫太郎。東京電気大学の1回生。鳳凰院凶真と、そう呼んでくれ」

真姫「……意味わかんない」

岡部「不死鳥の『鳳凰』に『凶悪』なる『真実』!」

真姫「……あー、アレね。中二病ってやつね」

岡部「ぐぬっ……!!」

岡部『俺だ。一介の高校生ごときに俺の本性を漢字三文字で表現されてしまった。精神的なダメージが大きすぎる、大至急救援を!……なに?俺にこの試練を耐えろというのか!?それが「シュタインズ・ゲート」の選択ならば……エル・プサイ・コングルゥ』

真姫「末期ねぇ……」

岡部「おいそこの『フェンリル』よ!」

真姫「はぁ!?私!?」

岡部「神を[ピーーー]のであろう?それならば、オーディンを食い殺したというフェンリルの名前がふさわしい」

真姫「いや、殺そうとか考えてないし……」

岡部「行くぞ、我がラボへ。『未来ガジェット研究所』へようこそ、だ!」

真姫(不安になってきた)

岡部「俺だ。助手よ、タイムリープマシンは完成しているな?まゆりを連れて、何処かへ逃げろ。ドクペなら冷蔵庫に……飲みきった?もう一本だと?そのくらい、自分で買えっ!セレセブめ!」

岡部「ダルも一緒にどこかへ連れていけ。いやなに、客人を連れて行こうと思ってな。んまぁ、これが我が人徳のなせる業よ!フゥーハハハ!!」

岡部「え、助手、いや、クリスティーナ!……切りやがった、助手の分際で」

真姫「なに、今の電話?」

岡部「さっき話したであろう?『まゆりはそろそろ死ぬ時間だ』と」

真姫「ヴェエエ!?そこまで具体的な話はなかったわよ!」

岡部「そうか?よいではないか、今回は諦めているのだ」

真姫「岡部……あんた、感覚麻痺してるんじゃないの?」

岡部「凶真だ。感覚の麻痺は……結構前から感じている。だが、まともな精神では、このループは耐えられん」

真姫「……私なら、一度で成功してみせる」

岡部「……フェンリルよ、お前に言っていないことがある」

真姫「なによ?」

岡部「この世界線で死んだ人間は『死ぬべき運命』なんだ」

真姫「その運命を捻じ曲げてやろう、って言ってるじゃない」

岡部「死ぬ時間に多少の誤差を生じることはできるかもしれない」

岡部「アトラクターフィールドの収束により、世界線は収縮する」

岡部「つまり、多少生き延びることはできるかもしれない」

岡部「それでも、そう遠くないうちに……」

真姫「……なに、それ」

岡部「頼む。このタイムリープで救出に失敗したら、悪いことは言わない。もうやめるんだ」

真姫「無理よ。何度でも繰り返す」

岡部「アトラクターフィールドの収束を防ぐには、世界線を飛び越えるしかない」

真姫「……そういえば」

岡部「先ほどの話を思い出したか。俺はリーディングシュタイナーを持っているから、記憶を維持できる」

岡部「お前たちは世界線の移動による過去改変の影響を受け、記憶が書き換えられる」

真姫「それなら!」

真姫「この世界線でにこちゃんが生き延びる術を探すしかないじゃない……!」

岡部「……いくら言っても無駄なようだな。ならば一度体験するがいい」

岡部「挫折し、絶望し、己の無力に嘆くがいい」

岡部「ついたぞ。ここが我がラボだ」

真姫「……中に、誰かいるの?」

岡部「時間は……まだ大丈夫だ。襲撃まで、あと1時間近くある」

真姫「それじゃあ、すぐにタイムリープさせて」

岡部「ああ、いいだろう」

岡部「ふぅーははは!!!主の帰還だ!!」

紅莉栖「あんたって、もっと普通に帰ってこれないの……?って、後ろの子は?」

紅莉栖「まさかあんた!モテないからってついにデート商法に……!!」

岡部「クリスティーナよっ!ほらほらドクペだよー」

橋田「デート商法については否定しないのかお……」

真姫「あ、あの……はじめまして」

橋田「うっひょー!美少女ktkr!!……って、あれ?」

橋田「あれあれ?」

真姫「な、なによ?」

橋田「その制服、その声、そのややツンデレな口調……」

橋田「音之木坂の廃校阻止に乗り出した、新生のスクールアイドル『μ's』の……マッキーですかな!?」

真姫「ええ、そんなあだ名つけれれてるの?」

橋田「オカリィィィィン!!お前エロゲの主人公素質あるやつだと思ってたけど、アイドルに手を出すのは紳士協定に反するっしょ!!」

岡部「ええい話がややこしくなるから黙ってろダル!」

岡部「それにここにいるのは、ただのスクールアイドルではないぞ!」

橋田「それくらい知ってるお!」

橋田「1年生ながらも3年生のにこにーとベタベタな仲の良さをライブで見せつけられ、あんな仲やこんな関係じゃないかとの疑いがある……」

真姫「え……あの……」//////

橋田「」

橋田「なん……だと……?こんな汚いラボに天使が舞い降りた……!!」

紅莉栖「岡部、話が見えないんだが……」

紅莉栖「でも、本当に可愛い子ねぇ!あ、ドクペ飲む?」

岡部「お前ら……」

真姫「ドクトルペッパーですよね?あれ、飲んだことないんです!一口もらえますか?」

紅莉栖「ええと、真姫ちゃん、かしら?あなたのように可愛い子なら大歓迎よ」

真姫「ええと、クリスティーナ、さん?外国の方なんですか?」

紅莉栖「あのバカ……ク・リ・ス!よ。絶対に間違えてないでね?」

紅莉栖「さ、一口どうぞ?」

橋田「ウヒョォォォォォ!!牧瀬氏とマッキーの間接☆キッスぅぅぅぅぅぅ!!!」

岡部「……お前ら……」

真姫「あ、結構おいしいんですね!」

橋田「おかしいそれはおかしい」

紅莉栖「よかったぁ!結構クセあるから、苦手なひとは苦手なのよねぇ」

岡部「お前ら俺の話をきけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

紅莉栖「いたの、バカ」

橋田「リア充爆発しろ」

真姫「うっさいわね」

岡部「ぐっ……三者三様にこの扱い……」

岡部「ふん、そんなことでこの俺が引くとでも思っているのか……!」

岡部「そこにいるフェンリルはな、」

紅莉栖「また北欧神話?もうオペレーション名だけでお腹いっぱい」

橋田「マッキーな、いくらオカリンでもそこ間違えるのは許さん絶対にだ!」

真姫「……自分で話すわよ」

真姫「……そんなわけで、大事な友達を助けるために、ここにあるっていうタイムリープマシンを使わせてもらうことになったの」

紅莉栖「ダメよ」

真姫「どうして!?」

紅莉栖「理論的には完成している。けど、実験ができていない。そんな状態の物を、ラボメンでもない、ましてやアイドルに使わせるなんて……」

岡部「紅莉栖。危険性については俺から再三に渡り説明している。そして覚悟もある」

紅莉栖「そんな覚悟だけで!」

岡部「それに、安全性は保証しよう」

紅莉栖「……なによそれ。また中二病?」

岡部「今は……説明できない。だがいつか説明できる日が来ると思う。紅莉栖の理論は間違えていなかった」

岡部「さすがは俺の助手だな」

紅莉栖「……助手じゃないっつーの……」

岡部「これは必ず実行するオペレーションだ……名付けてッ!」

岡部「『オペレーション・フェンリル』!!」

岡部「さあ、過去へ行き、神でもなんでも食い殺してくるがいい」

真姫「……ありがと、オカリン」

岡部「いつに飛ばす?」

真姫「昨日……8月12日の、17時じゃ遅いか、ええと……12時。お昼からμ'sの練習が始まったから」

岡部「わかった。……助手!」

紅莉栖「セットOKよ。あと助手じゃないっつーの」

岡部「スーパーハカー!」

橋田「もう訂正すんのもマンドクセ。SERNとの直通回線、おっけー」

岡部「さすがは我がフェイバリッド・ライトアームだ」

岡部「そして……フェンリル」

真姫「このヘッドセットね……センス疑うわ」

岡部「余計なことをいうでない。予算の都合だ」

真姫「研究所って言う割に、庶民的ね……」

岡部「うるさいっ」

岡部「さて……時は満ちたっ!」

岡部「過去に戻り、神を[ピーーー]ための儀式……」

岡部「『オペレーション・フェンリル』開始……!!」

岡部「開け、過去への扉----!!」

真姫「…………ッ!?」

真姫(視界……三半規管?いや……脳全体?揺れて……)

真姫(これは……キッツぃ!!)

真姫(あ)

真姫()

--8月12日--

μ's練習前

真姫(……なに、これ……)

真姫(頭が、割るように痛い……ていうか、割れる……)

真姫(……ここ、は?)

にこ「さぁ、新曲のPV撮影まであと少しよ!ガツンと気合入れていくわよー!!」

真姫(にこちゃん!?ってことは……)

穂乃果「おおー!にこちゃん気合い入ってるねー!」

ことり「でも衣装、これで本当によかったのかなぁ?」

海未「恥ずかしすぎます!破廉恥です!」

花陽「ハレンチとまでは言わないけど、でもこれって……///」

凛「かよちん、とっても似合ってるにゃー!」

希「曲のコンセプトにあった、ええ衣装やん♪」

絵里「かといって、水着は……ねぇ?」

真姫(なんか、デジャヴュ……本当に、戻ってきた?)

真姫(確かこのあと……)

にこ「みんな似合ってるわよっ!でも、一番似合ってるのは、この、矢澤にこちゃんね!にっこにっこにー♪」

花陽「そ、そうだよね!にこちゃんセンターだし、ことりちゃんも今回の衣装はかなりの気合の入り様だよねっ!?」

ことり「えへへ、ありがとう!」

にこ「ちょっと花陽!?それじゃ衣装のおかげみたいじゃない!」

絵里「馬子にも衣装とは、このことかしらね」

にこ「ぐぬぬ……絵里のほうが少しグラマーだからって……!」

希「まぁまぁにこっち、えりちも褒めてくれてるんだし……」

にこ「褒め言葉じゃないのよ!?」

海未「練習する前に怒り疲れてどうするんですか?」

絵里「それじゃ練習始めましょうか!まずはストレッチ、それからフォーメーションの確認ね!」

8人「おー!」

真姫(私が喋らなかった分を、誰かが補った……)

真姫(オカリンのいう『アトラクターフィールドの収束』……多少の誤差は、修正される)

真姫(やっぱり、にこちゃんは救えない……?)

真姫(いえ、そんなことない)

真姫(絶対に、助ける……!)

絵里「……真姫?」

真姫「エリー?どうかしたの?」

絵里「体調でも悪いの?少し、顔がこわばってるような……」

真姫「……気の、せいよ……」

絵里「この時期は熱中症とかもあるから、辛くなったら言いなさいね?」

真姫「うん……ありがと」

真姫(ミスっちゃいけないのは、この練習後のにこちゃんとの言い合い)

真姫(言い合いの原因となる、私が後ろに下がっていること……だから、前に出ればいい)

真姫(それ以外は、いつも通りでいい)

真姫(私なら、できる……!!)

--練習後--

穂乃果「どひゃー!ちかれたちかれたぁー!!」

ことり「お疲れ様♪それにしても暑かったねー」

凛「にゃー……日焼けしちゃうにゃー」

花陽「凛ちゃん!?アイドルに日焼けは天敵よ!?日焼け止めは塗ってるよね!?」

真姫(……びっくりするほど、全く同じね……)

凛「あー、今日は忘れちゃったかも」テヘ

希「ほほー、それじゃウチが塗ったろうか?」ワシワシ

真姫(練習中に穂乃果が転ぶタイミング、凛が海未にテンポが早いと怒られるタイミング……全部知っている)

凛「にゃあっ!?あ、明日からは塗ってくるにゃー!」

真姫(でもこのあと、後ろに下がりすぎだと言われることはない……)

にこ「ちょっと真姫ちゃん!少し前に出すぎじゃない?本来のポジションはもっと後ろだと思うんだけど」

真姫(嘘……?)

にこ「そりゃ真姫ちゃんがセンター右で、目立ちたいのもわかるけど、センターはにこよ?」

真姫(なにこれ……こんなはずじゃ……)

にこ「悔しいけど、身長差を考えるとにこよりも真姫ちゃんのほうが目立つの」

真姫(ダメよ、落ち着きなさい真姫。ここは怒らず、謝る。その後にこちゃんと一緒に帰る……そう、この方法なら、階段から転ぶことはない)

真姫「ご……ごめん。まだポジションを覚えきれてないみたいで……」

にこ「な、なによ。やけに素直じゃない?」

真姫「私だって、非があるとわかりきってて突っぱねるほど意地悪じゃないわよ」

にこ「なんか調子狂うわね……大丈夫?熱中症にでもなってるんじゃない?」

ピトッ

真姫「ひゃっ!?」

にこ「あ、びっくりした?」

真姫「ななななななにすんのよ!?バッカじゃないの!?」

にこ「おでこの温度を計るには、おでこが一番いいのよ♪」

穂乃果「おーおー、お熱いですなぁ」

花陽「はふぅ、更に気温が上がっちゃいそう……」///

希「いちゃいちゃすんなら、よそでやってやー?」

にこ「いちゃっ!?そんなんじゃないわよ!だらしない後輩の心配をしてやっただけでしょ!?」

絵里「はいはい、ごちそうさまでした。……さぁ、解散しましょうか?」

真姫「ちょっとエリー!?勘違いしないでよね!?」

絵里「ふふっ」

絵里(……普通に元気ね。昼間のは気にしすぎ、かしら?)

--着替え後--

穂乃果「それじゃ、まったねー!」

りんぱな「ばいばーい!」

絵里「それじゃあ、また明日」

真姫(このままじゃにこちゃんが……時間がない)

真姫「ねえ、帰りにクレープ屋さんに寄らない?この前、美味しそうなお店見つけたの」

ことり「あ、それってもしかして駅前の?」

海未「そういえば見たことがありますね」

凛「お腹ペコペコだから、ラーメンのほうがいいにゃー……」

花陽「ラーメンなら今度付き合うから、今日はクレープにしよ?」

希「えりちも行くやろ?」

絵里「そうね、クレープなんて久しぶり」

穂乃果「穂乃果はいちごのクレープにするっ!」

海未「定番ですね」

ことり「そういえば、ガトーショコラはあるけど、チーズケーキのクレープってみたことないかも」

花陽「お米のクレープ、誰か作ってー!」

凛「それならラーメンのクレープもあるはずにゃー!」

希「それは……スピリチュアルやね」

にこ「ゲテモノって言うのよ」

真姫(これで……にこちゃんの死亡は回避できたのかしら……?)

真姫(まだ油断はできないわね……)

真姫「そういえばにこちゃん、戸締りとかもあるでしょ?手伝うわ」

にこ「戸締りだけじゃないのよ?部室の片付け、鍵の返却、他にもいろいろ……」

真姫「だから、一人でやるんじゃなくてみんなでやった方が効率的でしょ、って言ってんのよ」

にこ「なに、そんなにクレープ食べたいの?」

希「そりゃ口実やろうな」

花陽「にこちゃん、私のクレープ……一口食べてもいいわよ」プイッ

穂乃果「あははー、かよちゃん似てるー!」

絵里「こら穂乃果、あんまり真姫をからかうと……」

真姫「な、なによそれ!?意味わかんない!!」

絵里「あははっ!」

絵里「……ねぇ真姫。体調悪いわけじゃ、なさそうね」

真姫「昼間のこと?心配しないで、そんなにヤワじゃないわ」

絵里「そう……私の見間違いね」

真姫「でも、心配してくれてありがとね、エリー」

絵里「どういたしまして。大切な仲間のためだもの、当然よ」

穂乃果「よぉっし!出発だー!」

にこ「部室の片付けだなんだって言ってたのに、あんたは人の話聞いてたの!?」

--クレープ屋--

ことり「あった~~~~!チーズケーキのクレープあったよーーーー!!」

絵里「ツナとか挟んであるのね……ハラショー」

花陽「ううぅ……お米ぇ……」

海未「花陽……さすがに味の想像ができないのですが……」

にこ「げっ!?アイス乗っけると100円アップ!?」

穂乃果「いちごのクレープ……種類多いよぉ!」

希「嬉しい悲鳴っちゅーやつやな」

真姫(17時半……)

真姫(にこちゃんは健在。なによ、運命なんて、簡単に変えられるじゃない)

凛「一個じゃ物足りないにゃー!!」

海未「プリンのクレープとかもあるのですね……」

真姫「半固体じゃないのよ……まさか、トマトのクレープなんてあるわけ……」

絵里「このサラダっぽいクレープに、トマトが入ってるわ」

真姫「近頃のクレープ……馬鹿にできないわねっ……!」

絵里「ハラショー……!ハラショーよクレープ!!」

凛「絵里ちゃんがここまでクレープにハマるなんて意外にゃー」

にこ「そういえば、おウチでも簡単に作れそうね」

花陽「それじゃお米クレープを是非っ!」

穂乃果「穂むまん味のクレープって美味しそうじゃない?」

真姫「ほむまんは十分美味しいわよ」

穂乃果「えへへぇ、嬉しいこと言ってくれるねぇ」

希「あ、そういやウチ、ホットプレートあったような……」

絵里「本当に?それじゃ今週末は希の家でクレープパーティよ!」

ことり「それなら、ことりはチーズケーキ持っていくね♪」

海未「それは少し違う気がします」

凛「凛はラーメン持っていくにゃー!」

花陽「お米への執着は捨てません!」

穂乃果「ほむまんもちゃんと持っていくよっ!」

真姫「トマトピューレを生地に混ぜてちょうだい!」

希「だいぶスピリチュアルなパーティになりそうやね……」

にこ「普通にカオスって呼んでもいいんじゃない?」

絵里「楽しみね……今週末!」

海未「あの、本当にやるのですか……?」

ことり「海未ちゃん、なにか予定あるの?」

海未「いえ、そういうわけではありませんが……」

穂乃果「じゃあ決定でいいよねっ、希ちゃん!」

希「ウチは構わんよ」

絵里「ハラショー!!!」

にこ「焼くのはまかせなさいよ!」

真姫「薄く焼くのって大変そうよ?にこちゃん大丈夫なの?」

にこ「お料理も得意なアイドルって路線もいいわね……!」

凛「それなら凛は食べる専門アイドルにゃー!」

真姫「その路線はどうなのかしら……?おっと」ヨロッ

真姫(そういえば……体感的には、もう一日以上起きてるのね。そりゃ少しは疲れが出て……)

ブ----ッ

にこ「真姫ちゃん!!!」

真姫(あれ、体に力が入らない……)ヨロヨロ

穂乃果「危ないっ!」

にこ「真姫ちゃんっ!!」ドンッ

真姫「え……」

ドカッ!!

キキィィィッ!!!!

絵里「にこ!!!」

希「にこっち!!」

凛「にゃあ……」ドサッ

花陽「にこちゃ……ちょ、凛ちゃん、どうしちゃったの!?」

穂乃果「にこちゃん!凛ちゃん!!!」

海未「……ことり!すぐに警察、いえ消防に連絡を!」

ことり「にこちゃん……うん!!」

運転手「うわ……やっちまった……マジかよ……」

真姫「にこ、ちゃん……?」

真姫(嘘……)

真姫(嘘、よね?だって)

真姫(運命、変えたのよ)

(岡部「アトラクターフィールドの収束により、世界線は収縮する」)

真姫(これが……アトラクターフィールドの収束だというの?)

先生「8月12日 21時16分、矢澤にこ様、ご臨終です」

穂乃果「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

海未「嘘でしょう!?嘘だと言いなさい!!!」

ことり「にこちゃぁぁぁん……!!」

花陽「どうして!?にこちゃん!にこちゃん!!」

凛「ドッキリでしょ!?手が混みすぎにゃ……にゃぁぁぁん!!!」

絵里「にこ……!!あんた、アイドルになるんじゃないの……っ!!」

希「はよ起きんと、ワシワシMAX……やで……」

真姫「……くっ……!!」

真姫(なんなのよ、これ……)

真姫(みんなの言葉まで一緒とか、どんだけ私のこと嫌いなの、神様……)

にこ母「通夜の時間などは、明日ご連絡しますね」

穂乃果「はい……あの、この度は……ええと」

絵里「ご愁傷様でした。私たちがいながら、にこを……」

希「えりち?言い過ぎや」

絵里「……うん」

にこ母「あの子はきっと、幸せでした」

にこ母「こんなにも素敵なお友達に恵まれたんだもの」

にこ母「きっとあっちで、みんなのことを見てくれてるわ」

真姫「おばさま……」

にこ母「もしかして、貴女が真姫ちゃん、かしら?」

真姫「あ……はい」

にこ母「あの子ね、μ'sの話をする時、真っ先に貴女の名前が出てきたの」

にこ母「きっとあの子、真姫ちゃんのことがお気に入りだったのね……」

真姫「そんな、私のせいで……!!」

にこ母「大好きな友達を助けたのよ?あの子は絶対に後悔なんてしてない」

真姫「どうしてそんなこと」

にこ母「母娘だから、かしら」

真姫「……っ」ジワッ

にこ母「貴女を助ける運命だった。それだけなのよ」ギュッ

真姫「おば、さま……」

にこ母「あの子と、お友達でいてくれて、ありがとう」

真姫「わたっ、私、は……!!」

真姫「にこちゃんが、大好きでした……っ!」

真姫「いいえ、今でも、これからも大好きですっ……!!!」

にこ母「あの子も、絶対に真姫ちゃんが好きだった」

にこ母「さ、いつまでも泣いてないで?可愛い顔が台無しよ?」

真姫「はい……」

にこ母「明日のことは、また連絡するから……皆さん、来てくださる?」

絵里「もちろんです」

にこ母「ありがとう……それじゃあ」

真姫(私は、にこちゃんが好き……今でも、これからも)

真姫(だから、必ず助けるわ……)

真姫(何度やり直すことになっても、必ずっ!!!)

絵里「……真姫。ちょっと、時間いいかしら」

真姫「エリー……うん」

絵里「あの、あらかじめ言っておくわ。真姫を責めるつもりはないの。にこがこうなったのは……その、」

真姫「運命、って言いたいの?」

絵里「……ええ。だから、気に病まないで。そのうえで、話を聞いて……いえ、聞かせてほしい」

真姫「……なによ?」

絵里「今日の昼間、本当に大丈夫だったの?」

絵里「練習前に電話に出てから、急に表情が変わったから……」

真姫「ええ、至って普通だったわ。暑さのせいで好調だったとは言えないけど」

絵里「それなら……あの時、何もない場所でふらついたのは、どうして?」

真姫「それは、少し暑さに当てられて……」クルクル

絵里「嘘ね。直射日光の下で踊ってた真姫が、日も傾いてた頃に歩いてて暑さに当てられるなんて……」

真姫「油断した頃に熱中症になるの。だから夜でも熱中症にかかる人がいるのよ」

絵里「さすがは医者の卵といったところかしら。予想通りの回答よ」

真姫「……何が言いたいのよ」

絵里「何か嘘をつくとき髪の毛をクルクルと巻く癖があるの。気づかなかった?」

真姫「もしかして……さっきも、その癖が出てたっていうの?」

絵里「ええ。でも、嘘だというのは今確信したわ」

真姫「え?」

絵里「嘘をつくときの癖、というのは嘘。でも、嘘をついたのが見抜かれたと思って、その癖が出てたのかを確認した……」

絵里「つまり、暑さに当てられたのは嘘だとわかるのよ」

真姫「……誘導尋問ってやつ?」

絵里「たまたま思いついたのよ」

真姫「意地悪ね、エリー」

絵里「少しくらいは、そういうところもあるわよ」

絵里「それで、本当のことを教えてもらえるかしら?」

真姫「……絶対に信じてもらえないから、言わない」

絵里「絶対に信じるわ」

真姫「無理よ……私自信、どう説明したらいいかわからないのよ」

絵里「どんなに荒唐無稽で支離滅裂な話だろうと、私は真姫のことを信じる」

絵里「それに……話せば、少しは悩みが軽くなるものよ?」

真姫「……全く、敵わないわね。この生徒会長サマには」

真姫「エリー……少し長くなるわよ?」

真姫「さて、どこから話せばいいのかしら。

8月12日のことからかしらね。今日のことじゃないのよ?まぁ、順を追って話すから聞いて。

8月12日の練習後、私とにこちゃんは立ち位置の確認をするために居残りで練習することにした。

にこちゃんは部長としての仕事で、部室の鍵返却とかで忙しいから先に行けって言って、私は先に屋上に行った。

しばらく待ってたら、にこちゃんの悲鳴が聞こえたの。

急いで戻ってみると、屋上にあがる階段の踊り場でにこちゃんが倒れてた。

それから……にこちゃんは死んじゃった。

8月13日、にこちゃんの通夜が終わって、帰りたくなくて、秋葉原をフラフラしてたの。

そこで、とある変人と知り合って、記憶を過去に送れる機械を借りて、

この8月12日に来た。

目的?それはもちろん、にこちゃんを助けるため。

だから私は、前の8月12日とは違う行動をした。

けど……結果は、エリーの知っての通り。

どうすればにこちゃんを助けることができるの?また戻って、また別な行動をして、本当に助けられるの?

これが、私の悩みよ」

絵里「……真姫、貴女……」

真姫「もうここまで話したんだから、なにも隠す必要はないわね……」

真姫「さっきおばさまにも話をしたけど、私はにこちゃんが好き」

真姫「時間旅行なんて、神様を冒涜している行為だということはわかってる」

真姫「でも、私からにこちゃんまで取り上げるなんて……例え相手が神様でも、絶対に許さない」

真姫「だから、にこちゃんを助けて、告白して、思いを遂げるまで、何度でも神様に逆らうつもりよ」

絵里「そんなことをしたら!貴女が壊れてしまうわ!!」

真姫「構わない!にこちゃんのいない世界に、なんの未練があるっていうの!?」

真姫「高校卒業すれば、音楽も、歌も、ダンスも、私の好きなものは全部捨てなきゃならないのよ!?」

真姫「その上、にこちゃんまでいない……そんな灰色の世界、私には生きづらいだけ」

絵里「バカッ!」

絵里「貴女までいなくなったら、μ'sはどうなるの!?」

絵里「残される者の立場にも、なってよ……!!」

真姫「……どこかの変人と、同じようなこと言うのね……」ボソッ

真姫「それじゃエリーは、にこちゃんがいない今、μ'sは続けていけると思う?」

絵里「そ、それは……」

真姫「無理よね。μ'sは、9人でμ's」

真姫「この話は、エリー達が卒業するまで出ない話だと思ってたけど……」

絵里「違う、違うの……」

真姫「なによ……なにが違うのよ」

絵里「真姫、私は……貴女が、好きなの」

真姫「……え……?」

絵里「だから、貴女が壊れるところなんてみたくない……」

絵里「だから残される者の立場になってって言ったのよ!」

真姫「え、エリー……」

絵里「……ごめんなさい、やっぱり忘れて」

絵里「このタイミングでいうのは、フェアじゃないものね。それじゃ」ダッ

真姫「ちょっと、待ちなさいよエリー!?」

真姫(なんなの……?これ……)

真姫(どうしてエリーが、私のことを……?)

--8月13日--

真姫(そういえば前回、全員に集合を呼びかけたのは、エリーだったわね)

真姫(昨日あんなことがあったから、さすがに今回は集まらないのね……)

真姫(私も……どんな顔して、エリーと会えばいいのかわかんない)

真姫「……にこちゃん……」

真姫(会いたい……あの笑顔に癒されたい……)

真姫(待ってて。時間が来れば、オカリンと会える)

真姫(また事情を説明すれば、タイムリープマシンを貸してもらえる)

真姫(次こそ……絶対に助けるから)

コンコン

真姫母「真姫……にこちゃんの、お母さんから電話よ」

真姫「うん、ありがと」

真姫「代わりました、西木野です」

にこ母『矢澤にこの母です』

にこ母『昨晩はありがとう。お陰様で、にこの旅立ちの準備が整ったの』

真姫「……はい」

にこ母『通夜は今日の18時から、家の最寄駅の裏手にある葬儀場で行うわ』

真姫「ご連絡、ありがとうございます。必ず参列します」

にこ母『……ありがとう。きっとにこも喜んでくれる』

真姫「はい……それでは、失礼します」

にこ母『ええ、失礼します』

ピッ

真姫「はい、ママ」

真姫母「大丈夫?な、わけないよねえ」

真姫「うん……しんどい。けど」

真姫「行かなきゃ、絶対に後悔する」

真姫母「制服とか数珠とか用意しておくから、横になってなさいな」

真姫「ごめん、迷惑かけるわね……」

真姫母「なに言ってんの、母娘じゃない」

(にこ母『大好きな友達を助けたのよ?あの子は絶対に後悔なんてしてない』)

(にこ母『母娘だから、かしら』)

真姫(母親って、すごいのね……)

真姫「ねぇママ?……いつも、ありがと」

真姫母「あら……全く。たまに素直になるんだから、我が子ながら可愛い子ねぇ」

真姫「……」

真姫(この世界は、あと数時間で巻き戻る。なかったことになる)

真姫(今の言葉もなかったことになるのね……)

真姫(通夜が終わり……また秋葉原をうろついている)

真姫(前回と違って、今回は目的がある)

真姫(オカリンを見つけて、タイムリープマシンを借りる)

真姫(確か前回は、このあたりで……)

岡部「ようやく見つけたぞ……フェンリル」

真姫「オカリン!?」

岡部「『オペレーション・フェンリル』は……どうやら、失敗したようだな」

真姫「ええ……あんたの言うように、見事なまでの失敗っぷり……って」

真姫「ちょっと待って、なんで私のこと知ってるの……?」

岡部「お前がタイムリープした後、ルカ子から電話があってな……」

岡部「まゆりが、また……」

真姫「……それで、タイムリープしたってわけね」

岡部「そうだ。そして、『タイムリープして失敗したお前』が再びタイムリープマシンを使いに来るのを阻止しに来たわけだ」

真姫「どうして!?今回は失敗したけど、次は……!」

岡部「同じだ」

真姫「同じじゃなかった!とことどころ、違うところがあったのよ!!」

岡部「過程は違っても、結果は同じだ」

岡部「その結果が収束する……アトラクターフィールドの収束により、お前の努力は無駄になる」

岡部「おそらく……俺も」

真姫「嘘よ……」

岡部「嘘ではない。お前も体感してきたところであろう」

真姫「あれは……あれは私が変なタイミングでヨロけたから!」

岡部「今までなかった、12日に起こったトラック事故、あれは……」

真姫「ええ……私、というより、にこちゃんでしょうね」

岡部「……そうか」

真姫「お願い……タイムリープマシンを貸して」

真姫「貴方の言う『オペレーション・フェンリル』は矢澤にこという女の子を救うためのものでしょう!?」

岡部「違うな。正確には『神を食い殺す』だ」

岡部「そして……失敗した」

真姫「……まだよ」

真姫「私はまだ、諦めてなんかいないっ!」ダッ

岡部「おい、どこへいく!?」

ペポパ

岡部「助手か、今ラボにいるな!?なにィ、アイドルショップだとォ!?」

岡部「使えん助手め!ダルはどこにいる!?」

岡部「……聖地巡礼で神田にいる、って……我がラボメンは揃いも揃ってなにをやっている!?」

岡部「ラボに戻れ!タイムリープマシンを使おうとする不埒な輩がいるはずだ、実力を以て排除せよ!」

岡部「いやいやいや『この子かわいー!』ではない!これは命令だ……あ」

岡部「切った!?あいつ、また切ったな!?」

岡部「くそ……走れば間に合うかっ……」

真姫(ダッシュでラボまできたけど……誰もいなかったら鍵なんて開いてないわよね)

真姫(むしろ、開いてたとしたら、どんだけ無用心なのよ……)

ガチャ

真姫「あ……あれ」

真姫(開いてる……てことは、中に人がいる?)

真姫(てゆーか!過去に戻って、前に会ったことは『なかったこと』になってるじゃない!!)

真姫(はぁ、完全に不法侵入ね……)

真姫(それに、タイムリープマシンの操作方法も見てなかった……)

真姫(う、迂闊すぎた……でも、見れば思い出す……かも)

真姫(……電気が、ついてない……?)

真姫(ただの締め忘れ、かしらね?)

真姫(そーっと、そーっと……)

紅莉栖「貴女が『タイムリープマシンを使おうとする不埒な輩』さん?」

真姫「……紅莉栖、さん……!」

紅莉栖「どうして私の名前を……」

紅莉栖「まぁサンエンス誌にも載ったし、隠してるつもりはないけど」

真姫「信じてもらえないとは思いますが、私は……」

岡部「そいつは……タイムリープ……してきた……のだ……」ゼェハァ

紅莉栖「岡部?タイムリープって……なにそれ、どういうこと?」

岡部「ハァハァ……クソ、アイドルってのはこんなに体力があるもんなのか……」

岡部「フゥ……クリスティーナ、お前の作ったタイムリープマシンで、そいつはタイムリープしたのだ」

紅莉栖「はぁ!?今さっきできたばっかの機械で、どうやって……!あ、」

岡部「気づいたか。完成してから、完成する前に飛んだのだ」

紅莉栖「信じられない……」

真姫「ですから、信じられないとは思うんですが」

紅莉栖「タイムリープ自体は、この私が考えた理論だから、十分信じられる」

紅莉栖「でも!機械が完成する前に飛んでどうするのよ!?」

紅莉栖「機械ができる前にとんで、万が一!機械ができない可能性が出たらどうするつもり!?」

紅莉栖「カオス理論ってのは、バタフラエフェクトってのは、些細なことだとしても未来に及ぼす影響度は計り知れないのよ!?」

岡部「だが、事実としてこうして完成しているではないか」

紅莉栖「そうだけど……」

真姫「もう一度……もう一度!やり直させてください」

真姫「今度こそ、助けてみせます……私から、何が失われようと、必ず!!」

岡部「こんなやり取りをするのも二度目……か」

岡部「『オペレーション・フェンリル 2nd』を発動する」

岡部「なお、1stは現時点を以て全て凍結する」

真姫「オカリン……!」

紅莉栖「ちょ、岡部ぇ!使わせる気なの?馬鹿なの死ぬの!?」

岡部「馬鹿で結構……だが、絶対に死ぬわけにはいかん」

岡部「こい、フェンリル!」

真姫(これからタイムリープマシンを操作する……)

真姫(なんとしても、操作方法を覚えなきゃ……!)

岡部「戻す時間は、前と同じでいいんだな?」

真姫「ええ、次は全く別な行動をするわ……それで救われるはず」

岡部「……何度でも、絶望を味わうがいい」

紅莉栖「岡部!私はまだ使用を認めて……」

岡部「準備完了だ……フェンリル、心の準備は?」

真姫「いつでも行って頂戴」

紅莉栖「ああもうこいつら……!!」

岡部「それでは行ってくるがいい……神を殺しに!!」

紅莉栖「必ず、無事でいてね……!」

真姫「……ッ!!!」

真姫(二度目だけど……こんなの、耐えられるはず……ないっ!!)

真姫(ぐるぐるぐるぐるまわって……)

真姫(あ……)

真姫(ここから、私の地獄が始まった。

このあと、私はにこちゃんと練習中だったけど、学校から逃げ出した。

にこちゃんは川縁を踏み外して、溺死。

今度は11日に戻って、にこちゃんを旅行と称して逃げ出した。

12日に移動中、落石にあって圧死。

また11日に戻って、今度は家に泊めた。

一歩も外に出なければ死なないと思っていた。

12日の昼ごろ、家に強盗が押し入り、刺殺。

12日の朝に戻り、にこちゃんの家に強引に泊まり込む。

これで自分の家に強盗が来ても、こっちには来ないと考えた。

妹の火の不始末により、焼死。

また12日の朝に戻り、電車でにこちゃんを連れ出す。

どこか遠くに行けば、逃げられるんじゃないかしら。

上野駅常磐線のホームにて誰かに背中を押され、轢死。

12日に戻り、助ける方法が思いつかず途方に暮れていたら穂乃果から電話。

練習中に屋上から転落死)

真姫(ねえ神様)

真姫(愛しい人が目の前で何度も死んでいく様を見せつけて、私が絶望している姿をみて)

真姫(貴方は悦んでいるのかもしれないわね)

真姫(吐き気がする程のサディストね)

真姫(でも、残念でした)

真姫(私は諦めない)

真姫(苦しもうとも、あがこうとも、絶望だけは絶対にしない)

真姫(愛しい人がいる、私から何を失ったとしても守りたい人がいる)

真姫(それって、人を何倍も強くするの)

真姫(今は貴方の手のひらの上で踊ってるピエロかもしれない)

真姫(何度繰り返そうと、必ずそこから出てやる)

真姫(貴方の思い通りにはさせない)

真姫(次は、何かが起こる……そんな予感がする)

--8月12日--

真姫(日差しが暑い……)

真姫(頭が……ガンガンして……)

にこ「さぁ、新曲のPV撮影まであと少しよ!ガツンと気合入れていくわよー!!」

真姫(何度目の8月12日かしら……)

穂乃果「おおー!にこちゃん気合い入ってるねー!」

真姫「みんな、ごめん……ちょっと、体調が悪いみたいなの」

にこ「ちょ、真姫ちゃん!?せっかく気合入れよー、おー!って時に……」タタッ

にこ「あら……本当に顔色悪いわね。大丈夫?」

絵里「熱中症じゃないかしら?気温、湿度共に熱中症にうってつけの状態だもの……」

ことり「大変だよ!わたし、お水……よりも、ポカリ買ってくるね!」

海未「希!真姫を保健室まで運びます、手伝ってください!」

希「ウチは足を持ってええ?」

海未「どういう運び方ですか……肩をかす程度でいいと思いますよ」

穂乃果「かよちゃん!凛ちゃん!氷まくらと団扇の用意だよ!」

りんぱな「ラジャーであります、穂乃果隊長!」

真姫「え、そんなに大それたことじゃ……」

絵里「なに言ってるの!?」

絵里「熱中症をなめてちゃ、命に関わるわよ!!」

にこ「それに、今は一応アイドル研究部の部活中なんだから、部長であるにこの命令は聞いてもらうわよ」

にこ「今日一日は絶対安静!!」

真姫「で、でもそんなことしたらPV撮影に……」

にこ「一日くらい休んだって、どってことないわよ」

にこ「今日無理して3日程休まれる方が、よっぽど心配なのよ」

真姫「……ごめんね」

にこ「なによ……珍しいじゃない」

海未「真姫、立てますか?」

希「よっこらしょ、っと……真姫ちゃん、随分軽いなぁ」

真姫「迷惑、かけるわね……」

絵里「真姫……」

--保健室--

ガラッ

にこ「そういえば、夏休み中だってのに保健室、なんで開いてるのかしらね……」

海未「他の部活も練習やってるみたいですから、そのおかげでしょう」

穂乃果「クーラーないのー!?熱くて穂乃果が熱中症になっちゃうよー!」

絵里「リモコンあったわ。あまり冷やしすぎると、かえって悪くなる気がするから25度くらいでいいかしら?」

穂乃果「18度でヨロシクっ」

希「風邪ひいてまうんやない?」

にこ「こっちの、窓から遠いベッドが空いてるわね」

真姫「うん……ありがと」

ことり「ポカリなかったから、アクエリアス買ってきたよ!」

凛「氷枕できたにゃー!」

花陽「部室に団扇ありました!」

にこ「ちょっと花陽!?それ、私のツバサちゃん応援グッズじゃないのよ!!」

花陽「大きくてちょうどいいサイズでしょ?」

穂乃果「LOVEツバサ、って……」

真姫「……サムいのよ、にこちゃん……」

にこ「っきぃー!!そんなこというと、暖房付けるわよ!?」

絵里「そんなことして、なにしたいのよ……」

凛「真姫ちゃん、ちょっと頭上げてー?」

ことり「アクエリ、枕元に置いとくからゆっくり飲んでね」

真姫「ありがとね、みんな……」

穂乃果「アクエリ、って略すると、悪に染まった絵里ちゃんっぽく聞こえる……」

穂乃果「ハッ!その路線でいこう!!」

絵里「どんな路線よっ!?」

絵里「全く……さあみんな、練習に戻りましょう?」

希「せやね、立ち位置の確認はできなくても、発声練習とかならできるやろし」

海未「しかし、真姫を放っておくわけには……」

穂乃果「あ、じゃあ穂乃果が残るね!」

ことり「リーダーは抜けちゃダメー♪」

穂乃果「あうぅ……」

にこ「それじゃ、部長であるにこにーが付きっきりの看病をしてやろうじゃない。って、しょうがなくよ!?」

花陽「センターが抜けちゃうのぉ?」

にこ「うぐっ!?」

絵里「私が残るわ」

真姫(……!エリー……?)

絵里「生徒会長として、ってよりも、今は心配な後輩のためね」

絵里「それに私はセンターでもリーダーでもないし、ポジションから言っても抜けるのは問題ないと思うんだけど、どうかしら?」

凛「それなら凛もポジションは問題なしにゃ!」

絵里「凛が残ったら、真姫が寝れないんじゃない?」

凛「うう……凛、そんなにうるさいの?」

花陽「あはは……少し賑やかだから、真姫ちゃんびっくりして起きちゃうんじゃない?」

穂乃果「ぶー、絵里ちゃんばっかずるいー!」

海未「もっとも、穂乃果やにこよりは適任でしょうか」

ことり「海未ちゃん、それはちょっと言い過ぎじゃ……」

希「ほらほらー、決まったんやし、練習しよな?」

にこ「ちょっと希、押さないで……」

にこ「ってどさくさまぎれでどこ揉んでんのよー!」

希「揉むほどあらへんで?」

にこ「やめてよ凹むから……」

希「さすがにこれ以上なくなりはせんと思うんやけど」

にこ「胸の話じゃないわよっ!」

ガラガラ……パタン

絵里「ふう……いつものことながら、賑やかね」

真姫「そうね……でもあの賑やかさ、嫌いじゃないわよ」

真姫(エリーが残ったってことは……また告白されるのかしら?)

(絵里『真姫、私は……貴女が、好きなの』)

(絵里『だから残される者の立場になってって言ったのよ!』)

真姫(ああ……何度目かしら、エリーに告白されるのは……)

絵里「ふふふ、少し前の真姫からは聞けないようなセリフね」

真姫「そう、かしら?」

絵里「あら、気づいてないのね?」

絵里「前の貴女は……っと、話し込んじゃいけないわね」

絵里「そんなことより、今はゆっくり休んで頂戴」

真姫「ええ、せっかく休みをもらえたんだから、少し眠らせて……もらうわ……ふわぁ」

絵里「はい、お休み……」

真姫(……ん?)パチッ

真姫(寝すぎた……かしら。そういえばここ数日ロクに寝付けなかったから……)

真姫(それより、今何時……)

絵里「すぅ……すぅ……」

真姫(えりー……?寝てる……の?)

真姫(こうやってマジマジとエリーの顔をみることってなかったけど……)

真姫「綺麗、ね……」

絵里「……んむぅ……」

真姫(ヤバッ、起こした!?てか、声に出てた……?)

絵里「……すぅ……」

真姫(……はぁ、びっくりさせないでよ……)

真姫(外は暗くなってきてるけど、今何時かしら……)

真姫(メールも2件、来てるわね)

真姫(今……18時半……)

真姫(にこちゃん……!!)

真姫(まさかメールの内容って……!!)

パカッ

穂乃果『ぐっすり寝てるみたいだから、メールだけ送っておくねー。

今日の練習は完了っ!みんなでクレープ食べて帰ろうと思ったんだけど

真姫ちゃんと絵里ちゃんがいないから、クレープはまた明日ーってことになりました!

絵里ちゃんったら、「真姫から絶対に離れるもんですかー!」って騒いじゃって、

落ち着かせるの大変だったんだからね?

あと、にこちゃんが不機嫌そうな顔してたから、起きたらメールしてあげてね?

それじゃまった明日ー♪』

真姫(……なんだ、至って平和な内容ねぇ……)

真姫(それより、エリーとにこちゃん……なにがあったのよ?)

真姫(それともう一件は……にこちゃんから?)


にこ『にっこにっこにー♪

真姫ちゃん、起きた?もし絵里が寝てたとしても、いたずらしちゃダメよ?

あ、でも額に肉って書くとか、○とか×書くとかなら許してあげる。

元気になったら、明日の練習はちゃんと来てね?

そうじゃなきゃ、今日一日の遅れは取り戻せないぞー!

一応部長として心配してるんだから、起きたら電話くらいよこしなさいよ!

絶対だかんね!』

真姫(電話……うん、起き上がったら、電話しよう。そして今日心配かけたこと、謝らなきゃな……)

真姫(でも……もし、出なかったら……この世界では、もう……)

絵里「起きた?」

真姫「ひゃあ!?」

絵里「おはよう。……といっても、もうこんな時間だけどね」

真姫「お、起きてたんなら起きてるっていいなさいよねっ!?」

絵里「ニヤニヤしながら携帯見てたから、声かけづらかったのよ」

真姫「そんなっ、ニヤニヤなんてしてないわよっ!」

絵里「にこからのメール?」

真姫「……あと、穂乃果からも」

絵里「へーえ、どっちのメールでニヤニヤしてたの?」

真姫「エリー?怒るわよ?」

絵里「あははっ、冗談よ」

真姫「それと、付きっきりだったみたいで……ごめん」

絵里「そういう場合、『ありがとう』のほうが嬉しいわね」

真姫「別にエリーを喜ばせたいわけじゃ……でも、ありがと」

絵里「ふふふ、本当……素直になったわね」ナデナデ

真姫「……あ」

真姫「……い、今から帰るって家に電話してくるっ!」ダッ

絵里「あっ……」

ガラガラバタン

絵里「……やっぱり、にこのこと……かぁ」

絵里「うーん、……悩ましいわねえ」

真姫(人の頭を軽々しく撫でるなんて……日本人とは違う感覚?ロシアンな感覚……かしら)

真姫(エリー……どうして私なの?)

真姫(……私は……)

プルルルルルルル プルルルルルル

真姫 ビクッ

真姫「にこちゃんから……」

真姫「もしもし?」

にこ『にっこにっこにー♪……体調、大丈夫?もう平気?』

真姫「うん。もう大丈夫。さっき起きて、メール見たわよ」

にこ『絵里に落書きした?』

真姫「残念だけど、寝てなかったのよ」

にこ『あら、残念』

にこ『ところで真姫ちゃん、後で少し、時間もらえる?』

真姫「まぁ、大丈夫だと思うけど……どうしたの?」

にこ『今日新しくできた動きがあるから、そのタイミングの合わせをやろうかと思ったのよ』

真姫「ええ、いいわよ」

真姫「それより今日は……心配かけさせちゃったわね、ごめん」

にこ『それは絵里に言ってあげなさい』

真姫「もう言ったわよ。そしたら『ありがとうって言え』って言うのよ?」

にこ『……そう、よかったじゃない』

真姫(どうしたんだろう、声に力がない……)

真姫「にこちゃん?どうしたの?」

にこ『今は絵里と一緒なの?』

真姫「エリーは今保健室にいる。私は家族に電話しようと思って、ちょっと外に出てるけど」

にこ『あのね、真姫ちゃん……絵里と、なんかあった?』

真姫(……!あの告白は、やり直す前の世界のこと……)

真姫(今私がいる世界とは、少し違うこと……だから、)

真姫「ううん、なんにもないよ」

にこ『真姫ちゃんに、いいこと教えてあげる。』

にこ『本当になにもないときは「なんかあったかな?」とか、考えるもんなの』

にこ『なにかあったときは、「なにもなかった」って言い切っちゃうの』

真姫「……なんか、どっかの生徒会長と同じようなこと言うのね」

にこ『それで?なんかあったの?』

真姫「……ごめん、うまく言えないの。だから……秘密、ってことでいい?」

にこ『うん……でもね、悩んでることがあったら、ちゃんといいさないよね?これでも先輩なんだから』

真姫「先輩禁止、じゃなかった?」

にこ『学校の先輩じゃないくて、人生の先輩よ』

真姫「ものは言いようね」

にこ『あははっ!……ホント、元気になったみたいね』

真姫「元気にしてくれたのはにこちゃんよ。ありがとう」

にこ『どーいたしまして♪』

にこ『それじゃ、待ち合わせは……そうね、あの公園でどうかしら?一時間後とかで』

真姫「ええ、いいわ」

にこ『遅刻しないでよー?』

真姫「にこちゃんのほうこそね」

にこ『また後でね』

真姫「うん……後でね」

ピッ

真姫(にこちゃんは無事……安心してもいいはず。なのに……)

真姫(何も行動していないのに、どうして?)

絵里「あ、ようやく戻ってきたのね」

真姫「エリー……ごめん、お待たせ」

絵里「本当、待ちくたびれてまた寝ちゃうところだったのよ」

真姫「ごめんってば!……帰ろっか?」

絵里「そうね、これ以上遅くなって、校門に鍵でもかけられた大変だものね」

真姫「そういえば穂乃果からのメールに、なんかすごいこと書いてあったんだけど……」

絵里「え?なになに?」ヒョイ

真姫(ちょっ!近いっ!?)

真姫「……こ、これよ」

絵里「なになに……」

『絵里ちゃんったら、「真姫から絶対に離れるもんですかー!」って騒いじゃって、』

絵里「ちょっ……!!」

真姫「なんでそんなに騒ぐのよ、大げさねぇ」

絵里「ち、違うの!それは穂乃果が大げさに言ってるだけで……」

真姫「ということは、それに近い言葉は言ったわけね?」

絵里「ううぅ……真姫嫌いぃ……」

真姫「ふふん、やられたお返しよ」

真姫「実際はなんて言って騒いだのよ?」

絵里「だから!騒いでないのよ!!」

絵里「……真姫が起きるまで私はそばにいる、だからみんなは先に帰ってて、って。それだけよ」

真姫「放っておいてくれてもよかったんだけど」

絵里「ダメよ!」

絵里「熱中症は怖い病気だって、昼間にも言ったわよね?」

絵里「休憩のつもりで寝かせてたら、いつの間にかポックリいってた、って……」

真姫「そんな話、聞いたことないわよ……」

絵里「……むー!」

真姫(エリーの気持ちを知っているから、これ以上詮索するのは失礼ね……)

真姫「明日はクレープ食べに行くみたい。それも楽しみよね」

絵里「え、クレープ?そんなこと、初耳だけど……」

真姫「ほら、メールにも書いてあるじゃない」

絵里「本当……クレープってあんまり食べたことないから、楽しみね」

真姫「きっとハマるわよ」

絵里「そうかしら……?甘いのは好きだけど、甘ったるいのはちょっと」

真姫(そういえばあの時、サラダっぽいの食べてたわね……)

真姫「あ、私こっちの道なの」

真姫「今日は迷惑かけてごめ……じゃなかったわね」

真姫「付き添ってくれて、ありがとう」

絵里「いいえ、どういたしまして。大事な……大事な後輩のためだもの」

真姫(……さらっと告白しようとしたわね……)

絵里「それじゃ、また明日。クレープにハマれるか、楽しみにしてるわ!」

真姫「ええ、また……」

真姫(また明日、とはさすがに言えなかった)

真姫(だって、私に「みんなと同じ明日」が来るとは思えない……)

真姫(……!!バッカじゃないの!?)

真姫(今回はいつもと少し違う、もしかしたらにこちゃんが生き延びれる可能性があるかもしれない……)

真姫(助かってくれたら、「明日」が来る)

真姫(言葉にすれば、もしかして……)

真姫「エリー!」

絵里「ひゃい!?」

真姫「また明日ね!ばいばーい!!」

真姫(明日が、来ますように……!!)

にこ「真姫ちゃんおっそーい!」

にこ「このにこにーをどんだけ待たせるのよ!?」

真姫「そうは言っても、時間前にはきてるじゃない?」

真姫「むしろにこちゃんこそ、どんだけ待ってたのよ……」

にこ「えー?にこは今来たところにこっ♪」

真姫「言ってること無茶苦茶じゃないのよ!?」

にこ「べっつにいーじゃん、せっかくデートっぽさを演出してあげたってーのに、ロマンがわかってないわねぇ」

真姫「それは男のロマンってヤツじゃないかしら」

にこ「おお!真姫ちゃんから男を語る時が来るとは!!」

真姫「……茶化すために呼び出したんなら帰るけど?」

にこ「あーんうそうそ!」

にこ「呼び出した理由よね。えーと」

にこ「あーと、うーんと……」

真姫「……にこちゃん?」

にこ「ここまで出かかってるんだけどなー?」

真姫「それじゃにこちゃん、また明日ね」

にこ「冗談だから!思い出したから!!」

真姫「どっちなのよ……」

にこ「いやー、可愛い真姫ちゃんを見てるとつい、ねぇ?」

真姫「同意を求められても……って、か、可愛いって……」

にこ「そんなことよりも、」

真姫(そんなことっ!?)

にこ「……本当、体調は良くなったの?」

真姫「うん……みんなのおかげで、随分良くなったわ」

真姫「休めって命令してもらえて助かったわ、部長さん?」ニコッ

にこ「うぐ、……と、当然のことよ!?部員の体調管理を怠っては部長としての勤めが……」

真姫「にこちゃん」

にこ「な、なによ?」

真姫「ほんと、ありがとう」

にこ「~~~っ!!もう、なんでたまに素直なのよ!」

真姫「たまにしか素直じゃなみたいに言わないでよっ!」

にこ「いやいや、事実でしょ!?」

真姫「な、なんでよ!?意味わかんない!!」

にこ「あーもう!話が進まないわねぇ!」

にこ「とりあえず、今日出来た動きの確認よっ!」

真姫(あ、はぐらかされた……)

にこ「この一回目のサビに入るとき、にこと真姫ちゃんでセンター入れ替えるじゃない?」

にこ「その時にハイタッチを入れて、画面に動きを出そう、ってことなのよ」

にこ「それもただハイタッチするだけじゃなくて、ハイタッチ後に一回転を入れるの」

真姫「……タイミング的に、結構シビアじゃない?」

真姫「やり直しの効くPVならできるけど、これをライブでやるってのは結構きついんじゃないかしら……」

にこ「あともういっこ追加したわ!」

真姫「……難しいのは勘弁よ」

にこ「花火大会の日に合わせたPV撮影の部分あるでしょ?」

真姫「みんなでサビのアレンジを踊るところ……よね、たしか」

にこ「そこで、この動きを取り入れるわ!!」グルン

真姫「姿勢を低くして回転……そんな地味に難易度高そうなの……!」

真姫「しかもバックは花火でしょ!?ほとんど一発勝負じゃない!!」

にこ「だからこそ、やりがいがあるじゃない……!」

真姫「……それ、みんなはオッケーしたの?」

にこ「もっちろん!」

真姫「はぁ……チャレンジャーというか、勝負師というか……」

にこ「μ'sらしい、がしっくりくるんじゃない?」

真姫「クスッ……ええ、そうね。私たちらしいわ、本当に」

真姫「ところでにこちゃん。さっきの動きで、一点問題があるんだけど」

にこ「ん?なによ?」

真姫「私とにこちゃんがハイタッチするところ」

にこ「……」

真姫「はい、ばんざーい」

にこ「……」スッ

真姫「ほら」スッ

にこ「……」プルプル

真姫「高さが結構違うんだけど、本当に大丈夫かしら……?」

にこ「だあああああ!!!肘曲げれええええ!!!!」

真姫「はぁー……結構疲れるわね、やっぱり」

にこ「でも、いい顔してたわよ?」

真姫「ダンスしてる時は楽しいもの」

にこ「そうよね……」

にこ「遅くなっちゃったけど、誘ってよかったわ」

真姫(あれ、このシチュエーション……)

真姫(最初の世界で思ってた告白前の状況……よね?)

真姫「/////」ボフン

にこ「ちょっ!?いきなり顔赤くしてどうしたの!?」

真姫(おおおおおおおお落ち着くのよ西木野真姫!!)

真姫(ええと思い出すの、あの時考えてた、最高の告白シチュエーションを!!)

にこ「もしかして今日の熱中症が再発しちゃった?にこのせい!?」

真姫(確か、愛してるって言っていい雰囲気にして褒めて飲み物を渡して……)

真姫(あれ、なんか違う!?)

にこ「とりあえず横になってて、いまアクエリとか買ってくる!」ダッ

真姫(逆じゃないのよ!いきなり愛してるって言ってどうすんのよ!?)

真姫(そしたら飲み物ね!)

真姫「にこちゃん、何か飲みたいものある!?」

真姫「……っていないぃ!?」

にこ「真姫ちゃん!これ、飲んで!!」

真姫「え、なんでにこちゃんが……」

真姫(まさか!私の完璧な告白プランと同じものをにこちゃんも考えて……!)

真姫(ももももしかして、相思相愛ってヤツ……!?)

にこ「あと、横になって!」

真姫(お、押し倒される……!!ダメよにこちゃん、私たち、まだキスもしてないのに……!)

にこ「大丈夫!?気持ち悪くない!?」

真姫「だ、大丈夫……でも、ここでする……の?」

にこ「するって、まぁ無理に移動させるのも悪いし……」

真姫「う、うん……」

にこ「こんな夜でも熱中症になっちゃうなんて、もしかして全回復してなかったんじゃないの?」

真姫「……へ?」

にこ「いきなり顔赤くなるし、心配しちゃったじゃないのよ……もう」

真姫「え、いや、熱中症とかなってないわ」

にこ「……え?」

真姫「……なんで?」

にこ「ひょっとして、にこの勘違い?」

真姫「うん……たぶん」

にこ「……」

にこ「アクエリ返せ!!」

真姫「いやよ!もう口つけちゃったもの!」

にこ「そんなん気にしないっつーの!」ヒョイ

ゴクッゴクッ

真姫(あ……間接キス?)

にこ「あー、変に心配したら、喉渇いちゃったのよ」

真姫「ええと、私も喉渇いたんだけど……」

にこ「さっき飲んでたからいいじゃない」

真姫「練習終わってヘトヘトなのよ!」

真姫「てゆーか飲まないとまた熱中症になるわよ!」

にこ「そりゃどんな脅しなのよ……へいへい、どーぞ」

ゴクッ

真姫「ふぅ……」

にこ「でも……真姫ちゃんも、よくやるわよね」

真姫「……ん?どういうこと?」

にこ「今日の日中倒れてたってのに、よくここまで動けるわねって、感心しちゃったのよ」

真姫「だって……みんなに遅れを取るのはイヤだし、明日の練習に取り入れるかもってことを考えたら、いてもたってもいられないのよ」

にこ「それだけ?」

真姫「えっと、うん、それだけだと思うけど」

にこ「もっと鬼気迫るというか、いつもに増して真剣味が増してるというか……」

真姫「……真剣だったのは、にこちゃんがいてくれたから」

にこ「……」

真姫「年上なのに全然そんな風に見えなくて」

真姫「気が強いくせにヘタレで」

真姫「こんなちょっとのことで心配してくれて」

真姫「優しいくせに、優しさがバレるとツンツンして」

真姫「……そんな、私の大好きな女の子がいるから、下手なところ見せられないって」

真姫「そういう思いがあるから、頑張れるのよ……」

にこ「……」

真姫「私ね、にこちゃんが好き」

真姫「友達として、とかじゃなくて」

真姫「ずっと、ずっと一緒に居たい……そういう『好き』なの」

にこ「……」

真姫「にこ、ちゃん……?」

ドサッ

真姫「え……」

真姫「にこちゃん!?」

真姫(まさか……アトラクターフィードの収束!?)

にこ「」

真姫「あ……あああっ!」

真姫(また……ダメ、だったの……?)

岡部「ハァ、ハァ……くそっ、遅かったか!」

???「岡部倫太郎!君、体力なさすぎ!」

真姫「オカリン……?」

真姫「どうして、どうしてにこちゃんは、何度も……何度も!!!」

岡部「フゥ……フェンリルよ、よく聞け。矢澤にこが死ぬのは、アトラクターフィールドの収束によるものだ」

岡部「だが、矢澤にこのそれは『特定条件下』でのみ起こり得る現象だということがわかったのだ」

真姫「え……ど、どういうことよ!?」

???「それは私から説明するよ、西木野真姫」

真姫「貴女は……?」

鈴羽「阿万音鈴羽。訳あって、2036年からこの2010年に来た、タイムトラベラー」

真姫「……え?なに、それ……?ホント……?」

岡部「事実だ」

鈴羽「矢澤にこの死体のそばにいると、後で騒ぎになったときに面倒だから、一旦場所を移すよ」

真姫「にこちゃんは、どうするの……?」

岡部「今までやり直したときは、どうしていた?」

真姫「……嫌なこと、思い出させるのね」

岡部「仕方がないだろ……俺だって、そうなんだ……」

真姫「……うん。わかった」

鈴羽「ええと、改めて、私は鈴羽。」

鈴羽「私の詳細は、長くなるから省くね」

鈴羽「矢澤にこがこの世界線の『特定条件下』でのみアトラクターフィールドによる干渉を受ける、その条件は……」

鈴羽「西木野真姫。君と矢澤にこが付き合うこと」

真姫「……意味わかんない……」

鈴羽「少し先の話をしようか」

鈴羽「この世界線での矢澤にこは、2014年にアイドルとしてソロメジャーデビュー」

鈴羽「2016年、全国ツアーを超満員で48箇所96公演達成」

鈴羽「2018年、アイドル引退」

鈴羽「理由は……『日本では好きな人と結ばれない』」

鈴羽「もう、わかるよね?」

真姫「わけ……わかんないよ……」

鈴羽「……そう」

鈴羽「それじゃ、その後のことを話すね」

真姫「そのあと……?」

鈴羽「引退した後、老若男女の熱烈なファン達の行き場をなくした情熱が、思わぬところで爆発」

鈴羽「彼らの生きている理由、『矢澤にこ』が誰かのモノになってしまった」

鈴羽「そんな辛い現実から逃げるためなら、なんでもやった」

鈴羽「SERNの狗、ラウンダーとして、日本全国で八面六臂の大活躍」

鈴羽「要人暗殺や自爆テロなんてのも珍しくなかったけど、一番目立ったのは『アイドル殺害』の事件」

鈴羽「一人や二人ではない。十数人、いや数十人は……」

鈴羽「矢澤にこは、それほどのカリスマ性を持っていた」

鈴羽「アイドル引退からラウンダー活躍までの一連の騒動は『全日本アイドル殺人義務感』……All Nippon Idol Killer Obligeの頭文字で『NIKO』という通称を与えられている」

鈴羽「そして……アイドル時代の矢澤にこを支えていたのが、君。西木野真姫」

鈴羽「たった一人のアイドルのために、何人もの殺人鬼を生み出す……」

鈴羽「タイムマシンがある未来で、そんな過去を許さない人がいないと思う?」

真姫「っ……!!」

鈴羽「答えは、全部喋ったよ」

真姫「つまり……私がにこちゃんと付き合えば、にこちゃんは死ぬ……未来に殺される」

真姫「私がにこちゃんと付き合わなかったら、アイドルにはなれず、死なない……」

真姫「そう、言いたいの?」

鈴羽「その通り」

真姫「ちょっとまって、一個だけ聞きたいんだけど……」

鈴羽「なに?」

真姫「私が告白しても、にこちゃんはOKしてくれるとは限らないんじゃない?」

鈴羽「はぁ……鈍感なんだね、君は?」

鈴羽「乙女心を踏みにじるようで悪いけど、矢澤にこは西木野真姫に惚れている」

鈴羽「いつからかはわからないけど、今日時点では間違いなく、ね」

真姫「でも!告白した瞬間に死ぬなんて!」

鈴羽「告白した瞬間に、『NIKO』発生が確定、未来から矢澤にこを殺害するための手段が取られる」

真姫「……今までやり直した中では、告白したことはなかった」

鈴羽「告白はするものだけではなく、されるものでしょ?」

鈴羽「つまり、今までは告白される寸前だったんでしょうね」

真姫「そんな……」

真姫「にこちゃんを救えないの……?」

真姫「告白しても死、告白されても死」

真姫「もう、詰んでるじゃないの……」

鈴羽「……あまり言いたくないけど、一つだけあるよ」

真姫「本当!?」

鈴羽「でも……たぶん、西木野真姫には試みることができない」

真姫「にこちゃんを救うためなら、なにを犠牲にしたって構わないっ!」

真姫「最初のタイムリープから、ずっとそう思ってきた……」

真姫「救うためなら、どんなことだろうとやってみせるわ!」

鈴羽「……いいの?」

真姫「何度も言わせないで」

鈴羽「えっと……手段は……」

鈴羽「矢澤にこに、惚れない・惚れさせないこと」


真姫「…………え?」

鈴羽「やっぱり、無理だよね」

鈴羽「告白するという目的を果たすため、好きにならないという手段を取る」

鈴羽「そんな矛盾、どうやったって一緒に存在できない」

真姫「……神様ぁっ……」

真姫「貴方は……どれだけ私が憎いのよ……っ!!」

鈴羽「仕方ないよ……それが、この世界線」

真姫「だったら!!」

岡部「世界線を変える、か?」

真姫「……そうよっ」

岡部「ふざけるなっ!!」

岡部「徒らに世界線を変えた結果、俺はこんなにも苦しむことになっているんだ!」

岡部「ましてやお前はリーディングシュタイナーを持っていない!」

岡部「世界線が変動したことにも気がつかない……」

真姫「それじゃ……それじゃあ……!!」

真姫「どうしろってのよぉっ……」

真姫「思いを遂げられず!伝えられず!」

真姫「全部この胸のうちにしまえって……?」

鈴羽「さっきの威勢はどこへいったの?」

鈴羽「『救うためならどんなことだってやる』」

真姫「……」

鈴羽「あの言葉は、ウソだったんだね」

鈴羽「君が矢澤にこを救いたいと思う気持ちと、君の思いを遂げたいという気持ち」

鈴羽「両方を比較して、どっちが重かったのか」

鈴羽「それは、手に取るようにわかるよ……」

鈴羽「所詮、その程度の覚悟だったんだね」

真姫「……ない、で……」

岡部「おいフェンリル、無理するな……」

真姫「馬鹿にしないでっ!!」

真姫「やってやる……」

真姫「にこちゃんに告白しない」

真姫「にこちゃんの告白を断る」

真姫「たったこれだけで、私の大好きな人が救われるの……」

真姫「やるしか、ないじゃないの……っ!」

鈴羽「その通り。でもそれをすることで、矢澤にこがアイドルになることはなくなるけど」

真姫「……そうだ。にこちゃんの夢……アイドルになる……」

鈴羽「君が告白しない、もしくは断るということは、支えとなる人がいなくなる」

鈴羽「矢澤にこがアイドルになることは、ない」

真姫「……なによ、それ」

真姫(……神様は、私だけじゃなく、にこちゃんからも奪うの……?)

真姫(ふざけないで……!貴方のことを、必ず……)

真姫「殴って、やるんだから……!!!」

真姫「う……うっ……」

真姫「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

真姫(……泣いてるのをなだめられてから、家に帰った)

真姫(多分最後となるタイムリープは、明日の15時決行)

真姫(行き先は……8月12日の朝)

真姫(行った後、にこちゃんへの思いを……完全に、断ち切らなきゃならない)

真姫(……正直、辛いし苦しい)

真姫(それに、にこちゃんから好かれているってことも分かってしまった……)

真姫(知らなければ、もう少しは楽だったのかな……?)

プルルルルルルル プルルルルルル

真姫(……エリーから……?もしかして、にこちゃん……見つかったのかしら……)

真姫「もしもし」

絵里『真姫?今、時間大丈夫だったからしら?』

真姫「ええ、大丈夫よ。何か用事?」

真姫(この調子、見つかったような感じじゃないわね……)

絵里『まぁ、用事って程のものじゃなくて……ただ少し、おしゃべりしたいな、って。それだけ』

真姫「なによ、それ」フフッ

絵里『いいじゃない、たまには』

絵里『ええとね、希から聞いたんだけど……』

チクッ

真姫(……ん?なに、今の……)

絵里『今日の練習中に、動きの追加があったみたいなの』

真姫「あ、うん。それは聞いたわ」

絵里『そうなの?それでね、希ったら……』

チクッ

真姫(また……?なに、これ?)

絵里『「ウチはなんも変わらんのかーい!」って……ふふふ!』

真姫「やる側としては、結構プレッシャーなのよ、あれ」

絵里『あら、楽しそうだけど?』

真姫「地味に難しいし、一発勝負だし……」

絵里『それを言ったら、ライブなんていつでも一発勝負じゃない』

真姫「うぅ、そうだけどぉ……」

絵里『だから大丈夫よ、真姫たちならできるわ!』

真姫「それよりもっと難しいのは、にこちゃんとのハイタッチよ!」

絵里『身長が違いすぎる、って?』

真姫「そうなのよ……ハァ」

絵里『それ、にこには言っちゃダメよ?』

真姫「……ごめん、言っちゃった」

絵里『全く……明日、とりあえず謝っときなさい?拗ねると面倒だもの』

真姫「ふふっ、まるで年下を相手にしてるみたいね」

絵里『あら、ああ見えて、なかなか大人な一面もあるのよ』

絵里『妹の話をしているときなんて、「お姉さんの目」って感じだもの』

真姫「ああ、それはなんとなくわかるわ」

真姫「そしたら、海未は『みんなのお姉さん』って感じね」

絵里『それは上手いわね……それなら希は「μ'sのお母さん」かしら?』

ズキッ

真姫(……なんで?)

絵里『あら、そしたら、私は「μ'sのお父さん」になるのかしら?』

ズキズキッ

真姫(どうして、こんなに胸が痛いの……?)

絵里『……でもそんなことになったら、少し困るわね』

真姫「え……いいじゃない、お父さん……似合ってる、わよ」

絵里『うーん……それじゃ、お父さんは浮気者ってことになっちゃうのよね』

絵里『そんな役、認められないわぁ!』

真姫「……プッ!」

真姫「あははは、なにそれ?昔の自分のマネ?」

絵里『以前のことは、こうやって自分でも笑い飛ばせるようになったのよ』

絵里『あ、そうだ。以前のことと言えば』

絵里『今日、真姫が保健室に運ばれたときに話そうと思ってたのよ』

絵里『真姫も以前と変わったわよね、って』

真姫「……そう、かしら?」

絵里『ええ、変わったわ。そうね、真姫がμ'sに入った頃と比べると、別人かと疑ってしまうくらいよ』

真姫「ちょっと、言い過ぎじゃない!?」

真姫「それに私がμ'sに入った頃、エリーはまだ入ってなかったじゃない」

絵里『言い過ぎじゃないわ。確かに真姫は変わったのよ』

絵里『入ってなかったけど、生徒会としてμ'sに関わってたし……』

真姫「その……変わったって、どう変わったのよ……?」

絵里『そうねぇ……一言では表しづらいけど、なんていうのかしら……』

絵里『丸くなった?』

真姫「太った!?うっそ!?」

絵里『違う違う……ふふふっ、そういうところも、変わったところの一つよ』

真姫「……意味わかんない」

絵里『ブスっとしている真姫が目に浮かぶわ』

真姫「もー!なんなのよー!!」

絵里『あはは、ごめんなさいね』

絵里『私の知る限り昔の真姫なら、今の流れで電話を切ってるはずよ』

真姫「う……たしかに、馬鹿にされたと思って、不機嫌になって……」

絵里『誰にも愚痴ることができず、ずっと一人で抱え込んで、結果、』

真姫「学校でも怒ってばっかり、かしらね」

絵里『でも変わったわよ。今は花陽や凛たちの同級生たちや』

絵里『穂乃果を筆頭に引っ張って行ってくれる二年生たち、』

絵里『にこや希みたいな、頼れる三年生もいるんだから』

真姫「『頼れる先輩』にエリーが入ってないわよ」

絵里『自分でいうのも、なんか変じゃない?』

真姫「ということは、エリーは自分が頼られていると思っている、と」

絵里『あっ……あはは、やられたわ』

真姫「見透かされたことのお返しよ。ふふん」

絵里『本当に、変わったわね』

真姫「……ほんと、変わったみたいね」

真姫(そうだ……少し、意地悪してみようかしら)

真姫「ねえエリー、変わる前の私と変わった後の私、どっちが好き?」

絵里『どっちも好きよ』

真姫(慌ててる姿が目に浮かぶ……って)

真姫「ええっ!?ちょ、それってどういう……」

絵里『前の真姫はそうねぇ……無理してるのが丸分かりだから、「守ってあげなきゃ!」って思うのよ』

絵里『でも今の真姫は、守るどころか、尊敬すらしているの』

絵里『μ'sのメンバーとして歌って踊って、その上で作曲までしてる』

絵里『さらには将来は医者を目指せるだけあって成績優秀!』

絵里『そして、すべてを魅了するプロポーション!』

絵里『まさに才色兼備!ハラショーよ、真姫!!』

真姫「ちょ、エリー、やめてって!」

絵里『ふふふふ!私を困らせようとした質問だったんでしょ?』

絵里『だったら褒めちぎって、逆に困らせちゃえ!みたいな?』

真姫「みたいな?じゃないわよぉ……」

真姫「自分から振ったネタでやり返されるとは……私もまだまだねぇ」

絵里『でも、好きなのは本当よ』

真姫「……」

真姫(うん、知ってるよ、とは……言えるわけがない)

絵里『この好きという感情は、希や穂乃果に対する「好き」とは、大きく違うわ』

絵里『……一人の女性として、好きなのよ』

絵里『恋人として、お付き合いをお願いします』

絵里『……って言っても、別に答えを急いでいるわけじゃないの、私の気持ちを知って欲しかったのよ』

絵里『それに本当は面と向かって言いたいしね?』

真姫「すぐには……答えられないの……そうね、『明後日』まで時間をもらえるかしら……」

絵里『うん……返事をもらえるだけ、嬉しいわ』

真姫「ごめんなさい、こんな時に……」

絵里『なに言ってるのよ、私は頼れる先輩、』

絵里『かしこい!かわいい!エリーチカ!……よ?』

真姫「……自分で言ってて照れてちゃ、世話ないわよ」

絵里『う、うるさいわねっ!……それじゃお休み、真姫』

真姫「ええ、お休みなさい、エリー……返事は、必ずするわ」

絵里『はい。……待ってます』

ピッ

真姫(そういえば、考えたことなかったんだけど……

『私』がタイムリープして『私』という主観が過去に行ったあと、『西木野真姫』はどうなるんだろう?

抜け殻になるのか、それとも普通にしていられるのか……

せめて後者であって欲しいわね。

普通にしていなかったら、エリーへ約束した返事なんてできないもの。

でも、その残された『私』はなんて回答するんだろう……

「よろしくお願いします」?それとも「ごめんなさい」?

明後日は……確実に、にこちゃんが死んでいるってわかっているから。

にこちゃんがいない世界で、『天秤』の片方が乗っていない世界で……

私は、どんな選択をするんだろう?)

真姫「……ヒッグ……」

真姫(あ、あれ……?)

真姫「ヒッ……ヒッグ……エグ……」

真姫(なんで私、泣いてるの……?

なにが悲しくて、なにが辛くて、泣いているの?)

真姫(あぁ、わかってる……わかってる、はずなのに……言葉に出しちゃいけない気がする。

これを言葉にしたら、もう取り返しがつかない気がするから)

真姫「エリー……なんで、どうしてエリーなのよぉっ……」

真姫(ああ、ダメかも。私って、こんなに感情と表情が切り離されたキャラだったかしら?)

真姫「最初からエリー『だけ』が好きだったら!にこちゃんとエリーを『同時に』好きにならなかったらっ!!

こんなに苦しい思いはしないで済んだの!?

エリーが好きなのに、にこちゃんも好きじゃ、ダメなの……?」

真姫(辛いよ、苦しいよ。

私はにこちゃん一筋だと思ってた。

いいえ、思い込んでいたのね。

だけどエリー初めて告白されたとき、すっごい嬉しかった。

でもこれは自分の思いとは違うんだと、そういうことにして。

だから私の中にあるエリーへの思いは、なかったことにして。

自分自身で隠して、頼れる先輩なんて、曖昧な線引きをして。

それでも、今更気付かされて。私って、馬鹿なんじゃないの?

エリーでもにこちゃんでも、

この際だから神様でも。誰でもいい。

明後日の、8月14日の西木野真姫を、助けてあげて)

--8月13日--

にこママ『それでは……明日と明後日で斎場をとっておりますので、真姫ちゃんには……』

真姫「はい。必ず……参列、いたします」

にこママ『ありがとう……ございます。それでは、失礼します』

真姫「ええ……失礼します」

ピッ

真姫(昨夜11時頃……にこちゃんの遺体が発見された。

私とにこちゃんが、最後の練習をしていた、あの公園で。

おばさまから何かしら疑われるんじゃないかと思っていたけど、杞憂だった。

むしろ、感謝すらされた。

目の前でにこちゃんが死んで、それを放置したのに……

私は、人の死に対して麻痺しているの?

もう……わかんないよ……)

真姫(オカリンとの約束の時間になって、ラボへ来たけど……)

橋田「うっひょー!美少女ktkr!!……って、あれ?」

橋田「あれあれ?その制服、その声、そのややツンデレな口調……」

橋田「音之木坂の廃校阻止に乗り出した、新生のスクールアイドル『μ's』の……マッキーですかな!?」

真姫「ええ、その通りよ」

真姫(最初の世界と同じ反応ってことは、なにも説明していない……の?)

橋田「オカリィィィィン!!お前エロゲの主人公素質あるやつだと思ってたけど、アイドルに手を出すのは紳士協定に反するっしょ!!」

岡部「ええい話がややこしくなるから黙ってろダル!」

岡部「それにここにいるのは、ただのスクールアイドルではないぞ!」

橋田「それくらい知ってるお!」

橋田「1年生ながらも3年生のにこにーとベタベタな仲の良さをライブで見せつけられ、あんな仲やこんな関係じゃないかとの疑いがある……」

真姫「事実ね」

橋田「」

真姫「ちなみに、エリー……絢瀬絵里とも、まぁ。そこそこ仲がいい……と思う」

橋田「なん……だと……?こんな汚いラボに天使が舞い降りた……!!」

橋田「ああ!神よ!!今は貴方に歌を捧げたい気分だ!!」

紅莉栖「岡部、話が見えないんだが……」

紅莉栖「でも、本当に可愛い子ねぇ!あ、ドクペ飲む?」

真姫「ちょっと待ってて……私はタイムリープマシンを使いにきた。それだけよ」

橋田「シュワ、シュワキマセリー」

紅莉栖「待った!……岡部!あんた、この子になにを!」

真姫「……マイフォーク」ボソッ

紅莉栖「……っ!!!!」

紅莉栖「ちょっと貴女!?どこでそれを……」

真姫「以前のクリスさんから聞いたから」

紅莉栖「なんなのよ、もう……本物じゃない!!」

岡部「だぁーから!本物だと言っておろうが!信用していない助手が悪い!」

岡部「さて、セットは完了……8月11日の朝に飛ばすぞ」

真姫「ええ、いつでもOKよ」

岡部「今まで、よく頑張ったな、フェンリルよ……」

岡部「お前のなかで、何かしらの答えは見つかったのか?」

真姫「……ええ。『作戦』はあるわ。そして、この『時間』を知り尽くした私だからこそ、成功できるという確信がある」

岡部「よかろう。いい答えだ」

岡部「『オペレーション・フェンリル』は最終段階を迎えた!!」

岡部「このタイムリープをもって、フェンリルはタイムリープする資格を失う……」

岡部「故に!この時間旅行は……」

紅莉栖「前口上が長いのよ」

橋田「中二病、乙」

真姫「私は生きてるにこちゃんに会いたいの」

岡部「お前らぁぁぁぁ!!それでもラボの一員かぁぁぁぁ!!」

真姫「私は違うけど?」

岡部「うぐっ……」

橋田「うぐぅ?なんなのオカリン、今度はエロゲのヒロインの座でも目指してんの?」

岡部「だからお前は黙れ」

岡部「何はともあれ!!西木野真姫にとって、これは最終局面だ!」

真姫「貴方には何度も言ったわね……『準備はできている』」

岡部「さぁ、行ってくるがいい……」

岡部「神を食い殺し、全てがお前の手中にある、その世界へ――――――!!」

真姫(ぐっ……幾度となく味わったこの感覚……なれないわねっ……!!)

--8月12日--

真姫(ゆらゆら揺れて……ここは……)

真姫「自分の、部屋……?」

真姫(ああ……今起きたのかしら。

それじゃあ、作戦実行ね。

まず確認。

『私、西木野真姫は、矢澤にこが好きですか?』

答え、もちろん好き。

でも告白しない、告白されても断る。

次の確認。

『私、西木野真姫は、絢瀬絵里が好きですか?』

答え、もちろん……好き。

今日中に告白……する。私から。

それを、にこちゃんを断る理由にする……

自分のことながら、サイテーね……

真姫(さて、最後の確認。

『私、西木野真姫は、矢澤にこがアイドルにならなくてもいいと思いますか?』

答え、嫌に決まってるじゃない。

バッカじゃないの?

にこちゃんの夢を奪うために、私は戻ってきたんじゃない……

私は、にこちゃんの夢を叶えるために、ここまで戻ってきたんだ……!!)


真姫(練習の始まる前にエリーに電話し、練習後に時間をもらえるようにアポイントを取った。

普通の話なら、そんなことをする必要はないけど……

今回は告白する。そんな大事な話をする。

それで……にこちゃんへの思いを、根絶させる。自分に納得させる。

絶対に、ひとつのポイントたりとも油断できない……!!)

--練習中--

海未「1,2,3,4,5,6,7,8!1,2,3,4,……」

真姫(ここで……ハイタッチ!)サッ

にこ「うおぉ!?」サッ パチン

海未「ストップ!!……真姫、今のは?」

真姫(ああ、そうか……この時間では、まだ新しい動きができてないんだ)

にこ「な、なに?にこの頭を叩きにきたの!?」

真姫「違うわよっ!」

真姫「ええと、このタイミングでハイタッチとか入れたほうが、画面上で躍動感が出るかなー、と思って!」

にこ「あー……うん。確かにいいかもしれないわね」

穂乃果「真姫ちゃんの今の、アドリブってこと!?それについていけるにこちゃんもすごいすごいっ!!」

穂乃果「『以心伝心』ってやつだねっ!」

にこ「そ、そんな大層なものじゃ……」

真姫「そうよ、反射的に手が出ちゃっただけなんじゃない?」

にこ「……ムスッ」

真姫(しまった……「これ以上好かれないように」って気をつけてたら、逆に嫌われるじゃない……)

真姫(難しいわね……)

--練習後--

穂乃果「どひゃー!ちかれたちかれたぁー!!」

ことり「お疲れ様♪それにしても暑かったねー」

凛「にゃー……日焼けしちゃうにゃー」

花陽「凛ちゃん!?アイドルに日焼けは天敵よ!?日焼け止めは塗ってるよね!?」

凛「あー、今日は忘れちゃったかも」テヘ

希「ほほー、それじゃウチが塗ったろうか?」ワシワシ

凛「にゃあっ!?あ、明日からは塗ってくるにゃー!」

真姫(最初のハイタッチ以外は目立ったミスもなく、嫌われるような言動はしていない……はずよね)

絵里「ねぇ、真姫……話って、」

真姫「うん……みんな帰ってからで、いい?」

真姫(……私は、エリーが好き。嘘は吐いていない……)

真姫(これでにこちゃんは救われる……!!)

希「えりちー?帰るでー」

絵里「ごめんね希、屋上に忘れ物しちゃったみたいなの。先に帰ってて」

希「……なるほどねえ」

絵里「な、なにかしら?」

希「応援しとるよ!」

絵里「も、もう!希っ!」

にこ「真姫ちゃん!これから新フォーメーションについて、もうちょっと練習しない!?」

真姫「うーん……今日はちょっと予定あるのよね。ごめんにこちゃん!」

にこ「えー?……まぁ、明日以降でもいっか」

にこ「凛、花陽!クレープ食べに行くわよー!」

穂乃果「穂乃果もいくー!」

海未「穂乃果……また、ダイエットしたいのですか?」

穂乃果「あ、あはは……冗談ダヨー」

ことり「一緒に帰ろ?ねっ?」

穂乃果「うぅ……ことりちゃんは優しいねぇ……」

海未「ことりは穂乃果を甘やかしすぎだと何度いえば!」

凛「ラーメンにゃー!」

花陽「クレープだって言ってたの聞いてなかったのぉ!?」

にこ「あ、絵里ー!鍵締めよろしく!」

バタン

真姫「賑やかねぇ……」

絵里「本当……このメンバーといると、飽きないわね」

真姫「それより、鍵返す場所とか知ってる?」

絵里「私は生徒会長よ?……一応、知ってるわよ」

絵里「ことろで、話っていうのは……」

真姫「鍵を返して、それから……音楽室にでも行きましょうか」

絵里「ええ、いいけど……ここじゃできない話なのかしら?」

真姫「そんなことはないけど……ちょっと聞いて欲しい曲があるのよ」

絵里「……うん、わかったわ」

ガチャッ

絵里「アイドル研究部の部室の鍵、お返ししますね」

先生「ああ、ありがとう」

絵里「それと、音楽室って空いてますか……?」

先生「んーと、空いてるね。ほい、鍵」

真姫「ありがとうございます」

先生「また作曲か、西木野?」

真姫「いえ、ただのピアノの練習です」

先生「ふーん……まぁなんでもいいけどさ」

先生「私は18時には帰りたいから、それまでには返してくれよ」

絵里「わかりました」

絵里「行くわよ、真姫」

絵里「さて、何を聞かせてくれるのかしら?」

真姫「エリーも知ってる曲よ」

真姫「これはまだ私がμ'sに入る前にできた曲……」

真姫「でも、『完成』したのは、やっぱりμ'sのメンバーがいたから、かな」

絵里「真姫が入る前っていうと……私は多分知らないかもしれないわね」

真姫「ううん、知ってるわ」

真姫「聞いてね?……『愛してるばんざーい』」

真姫「愛してる、ばんざーい

ここでよかった 私達の今がここにある

愛してるばんざーい!

始まったばかり 『明日』もよろしくね……」

絵里「まだ ゴールじゃない」

真姫「まだ、始まってもいないじゃない……」

絵里「……真姫?どうしたの?」

真姫「歌い終わってから、って思ったけど、それじゃ遅いわね」

真姫「エリー。よく聞いて頂戴」

絵里「うん……」

真姫(相手の気持ちを知っていても、やっぱり緊張するものね……)

真姫「好きよ……エリー」

真姫「私と……その、恋人に、なってほしいの」

真姫「恋人としての時間を、エリーと始めたいの……!」

絵里「真姫……」

真姫「は、恥ずかしいのよ……教えて、貴女の気持ち……」

絵里「てっきり、真姫はにこのことが……」

真姫「もう!何度も言わせないでよ!」

真姫「私はエリーが好きなの!愛してるの!!」

真姫「今から私が『愛してるばんざーい』を作り直すとしたら、『愛してるハラショー』って名前にするわよ!」

真姫「そんで、歌詞なんて全部エリーのことにするんだから!」

真姫「そのくらい、エリーが好きなのよ……!!」

絵里「あーあ……告白するなら、私からしようと思ってたのに、先を越されちゃったなぁ」

真姫「え……?」

絵里「私も好きよ、真姫」

絵里「ううん、『私のほうが』好きよ……真姫」ギュッ

真姫「な、ななな……っ」

絵里「貴女がμ'sに加入したときから、可愛いとか、そんなのじゃない……もっと別な感情があったの」

絵里「好きなんだ、って気づいたのは最近だけどね」

真姫「よ、よかったぁ……」ジワッ

絵里「えぇっ、な、なんで泣いてるのよ!?」

真姫「だって、だって……もし、エリーに断られたら……」

真姫(にこちゃんだって、救えない……)

真姫「だから、安心して、ホッとしたら……あれ、涙、あはは、止まんないや……」

絵里「大丈夫よ……真姫から、絶対に離れないから」ギュッ

真姫「エリー……ありがとう……大好き……」ギュゥツ

真姫(これで……間違いなく、にこちゃんは救われた)

真姫(『にこちゃんに告白する』か、『エリーに告白する』か……その二択のうち、一つの思いをねじ伏せて)

真姫(でも、私の目的はもう一つある)

真姫「私たちが付き合ったとしても、μ'sは終わらないよね」

絵里「当たり前じゃない」

真姫「μ'sは……全員で、アイドルになれるかな」

絵里「……それはわからないわ。私たち三年生が卒業したら、μ'sは……」

真姫「スクールアイドルとしては活動できない、でしょ?」

真姫「だから、『スクール』アイドルじゃなくて、『アイドル』になればいいのよ」

絵里「メジャーデビューする、ってこと?」

真姫「そうよ。そのためには、今のうちに知名度をあげなきゃならない」

真姫「効果的なのはやっぱり、ラブライブ出場、そして優勝よね!」

絵里「かなり狭き門のはずよ……それでも、目指すの?」

真姫「もちろんじゃない!!」

真姫「みんなの夢のはずだよ、アイドルになるっていうのは」

真姫「やるったらやる!でしょ?」

絵里「全く……穂乃果みたいなこと言うのね」

真姫「うう……あのバカみたいな前向きさ加減が移ったのかしら……」

絵里「それでも、真姫は真姫よ。私の……大好きな、真姫よ」

真姫「ちょ……恥ずかしいんだけど……」

絵里「『愛してるハラショー』なんて曲のタイトルをぱっと思いつくよりは、恥ずかしくないと思うんだけど?」

真姫「あ、あれは忘れて……勢いだったのよ……」

絵里「ふふふ、絶対に忘れないわ」

真姫「あうぅ……」

絵里「それじゃ、また明日ね」

真姫「うん、また明日……」

絵里「あら、肩になんか付いてるわ」

真姫「え、どっち……」チュ

絵里「嘘よ……ふふふ、本当に可愛いわね」

真姫「え、え……?」

絵里「ほっぺだけ、ね?先に告白されたから、お返しよ」

真姫「え、エリー!!」

絵里「あははっ!寂しくなったら電話するわねー!」

真姫「うううっ!許さなーい!!」

絵里「まった明日ねー!」

真姫「……うん!また、明日!!」

真姫「ほっぺ……」カァ

真姫「私から告白したのに……先にキスされるなんて……」

真姫(って、浮かれてる場合じゃない……)

真姫(8月14日を無事に迎えられてからはじめよう……)

真姫(私とエリーの、恋人としての物語を!)

--秋葉原--

岡部「フェンリルではないか」

真姫「オカリン……」

鈴羽「岡部倫太郎から君のことは聞いたよ、西木野真姫」

鈴羽「で、どうだったの?」

真姫「うん……にこちゃんから告白されることはなくなったと思うよ」

岡部「と、いうと?」

真姫「今日、告白してきたんだ……」

鈴羽「おおおっ!!」

真姫「一応アイドルは恋愛禁止だから、これは内緒ね?」

鈴羽「てことは、相手からはOKをもらったんだね!すごいや!!」

真姫「あ、あはは……すこし、照れるな」

岡部「それで、問題はあと2点あったはずだが……」

真姫「それは……簡単なことじゃないのよ」

真姫「まず1点。私がにこちゃんのことを好きだって気持ちを抑える」

真姫「多分これは……エリーのおかげで、比較的簡単に抑えられると思う」

真姫「あともう1点……」

真姫「にこちゃんがソロでアイドルになった、っていうのは、聞いた時からなんか違和感があったの」

真姫「μ'sはどうしたんだろう、って……」

真姫「だから、μ'sの結束を強めるために、合宿でもしようかな、って明日にでも提案するつもり」

真姫「μ'sの結束が強くなって、ライブとかもより一層磨きがかかれば、ラブライブに出場できる!」

真姫「そして、μ'sとしてメジャーデビューするの!」

真姫「これで、にこちゃんの夢『アイドルになる』もクリアできる」

真姫「でも正直、こっちは難関なのよ」

岡部「まぁ、並大抵の努力では無理だろうな」

真姫「うん……でも、やるって決めたの。やるったらやる!」

岡部「いい目をするようになったな、お前」

真姫「ありがと。全部、タイムリープマシンのおかげよ……本当、助かったわ」

岡部「いやなに、俺も疲れてた頃だったからな……多少の寄り道くらい、許してくれるだろう」

真姫「そっか、まゆりさん……」

岡部「だが、活路は見えてきた」

岡部「また過去へメールを送ることになるかもしれん……そうすると、俺という主観は、この世界線から移動する」

真姫「まだ……続くの?オカリンの旅は……」

岡部「まゆりを救うまで、何度でも、繰り返してみせるさ」

真姫「私はたまたまだったのかもしれないけど、この地獄を脱出できた」

真姫「だから、オカリンもきっと抜け出せる!」

真姫「がんばってね」

岡部「ああ……助かる」

岡部「ことろで、お前が最初に言っていた『神を殴る』だのなんだのってのは……」

真姫「今日が終わって、14日までにこちゃんが生きていれば……私の勝ちよ」

真姫「さらにいうなら、μ'sとしてメジャーデビューできれば完璧ね」

真姫「ザマーミロ、って、蔑んでやるわ」

岡部「まさか、そんなことで神を殴ったつもりだとは……くくく……」

岡部「フゥーハハハ!!」

岡部「やはりお前、我がラボに来ないか!?」

真姫「お断りよ、あんな危ない空間……」

岡部「ふん、まぁいいさ」

岡部「……14日、無事に迎えられるといいな……」

真姫「うん……ありがと」

--8月13日、自室--

真姫(……エリーとおしゃべりしてたら、11時30分を少し回っていた。

正直、『恋人になっても、何を喋ればいいの?』って思っていたけど、案外普通に話をしてるじゃない。

でも内容は、とりとめないもの過ぎて、なんか普通に友達として喋ってるような感覚にさえなるけど……

いいじゃない、それはそれでも。

さて、ちょっとにこちゃんともお話しなくちゃ……

これは浮気じゃなわよ?って、誰に言い訳してんだか……)

プルルルルルルル プルル

にこ『なによこんな時間に!妹たちが起きちゃうじゃない!』

真姫「あ、ごめん……」

にこ『ちょっとだけ待ってて……』

真姫「?」

にこ『はい、おっけーよ』

真姫「ああ、妹たちとは違う部屋に移動したのね」

にこ『せっかく寝かしつけたのに、起こしちゃうわけにはいかないもの』

真姫「ねぇ、にこちゃん?アイドルになりたいって……まだ、思う?」

にこ『何言ってんの?あったりまえじゃない』

真姫「そう……よかった。あ、そうだ、ソロでやろうとか、無茶言わないでね?」

にこ『私だって、ソロでやれると想ってる程、自信過剰じゃないわよ……』

真姫「うん……絶対に、μ'sとして、活動し続けようね……!!」

にこ『……どうしたの?へんな真姫ちゃんねぇ』

真姫「うん、少し、変なのかも……」

真姫「あはは、変な時間に電話してごめんね?それじゃ……」

ピッ

--8月14日--

真姫(0時……3分。

これで……14日ににこちゃんが生きている世界が出来た!)

ジワッ

真姫(目標達成……あとは!μ'sでラブライブ優勝すること!

私たちならできる!)

真姫「神様……貴方の思い通りになんか、させないからね!」

真姫「またにこちゃんにちょっかい出したら、今度こそぶん殴ってやるんだから!」

真姫「もし、エリーに手を出したら……」

真姫「喉笛、噛みちぎってやるわよっ!!」



真姫「神様って、どうやったら殴れるのかしら」 Fin

最後らへん駆け足でごめん。
次は文通してるメンバーを書きたい。

おまけ

世界線変動率 1.048596%(シュタインズゲート)の場合

にこ「……そんなわけで、私、矢澤にこは、西木野真姫のことが、大好きです」

にこ「その、できれば、付き合ってくれると……嬉しいかな」

真姫(なにこの超可愛い生き物)

真姫「アイドルって恋愛禁止じゃ……!!」

にこ「にこは、真姫ちゃんのためなら、アイドルになる夢だって諦められる」

にこ「真姫ちゃんのためなら、にこの持ってる全てを投げ出したって構わない」

真姫「にこちゃん……!!」

にこ「あ、でもやっぱり……一つだけ持ってていいかな……?」

真姫「いやいや!何も捨てることはないけど……でも、なに?」

にこ「『真姫ちゃんのことが好き』って想い」

真姫「にこちゃん!抱いて!」


思いついただけ。終わる。

世界線変動率 .275349(フェイリスルート)の場合

真姫(ここが……ことりのバイトしているメイド喫茶……)

真姫(メイクイーンヤンヤン!!)

真姫(……どんなネーミングセンスよ……)

フェイリス「お帰りにゃんにゃん☆」

真姫「凛のほうが似合ってるー!!」


いやほら、フェイリス出し忘れてたし。

真姫「練習も大事だけど……モンハンも大事……」

真姫「ちっ、こいつら『仕事はハンターです』キリッ とか言ってる連中ね……関わりたくないわ」

真姫「Gでもランスが弱武器?バッカじゃないの……打撃と斬撃翌両方持ち合わせた武器なんて、他にないでしょうが」

真姫「4Gの発売日決定……10月?こりゃ年末ね」

真姫「あ、にこちゃん?練習してる?……モンハンよ、なんでライブの練習の話になるのよ」

真姫「じゃ、じゃあ……今から、ひと狩り行こっか?///」

過去作の宣伝でした。

穂乃果「ひと狩りいこうよ!」
穂乃果「ひと狩りいこうよ!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403614633/)

三たびごめん
もしかしてだけど、昔あった穂乃果のバタフライエフェクトのやつと同じ作者さん?
似たような言い回しが幾つか見つけたもので
本当乙

音之木→音ノ木でしたか、失礼しました。

>>174は知りません……パクリと思われてもしょうがないですね。
一応、オリジナルのつもりです。

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