ミーナ『はっ! 自分は豚小屋出身、家畜以下のメス豚であります!』(71)

―――夜・男子寮―――


エレン「……え!?」ガバッ

エレン「……なんだ夢か……」

エレン(まさか入団式の時の夢を見るなんてな……しかもよりにもよってあんな場面を……)

エレン「寝直そう……」

エレン(……あれ? でもなんかミーナの言っていることは微妙に違ったような……気のせいかな)

―――朝・食堂―――


ミカサ「……エレン、どうしたの? クマが出来てる」

エレン「……なんでもない、だから気にするな」

ミカサ「アルミン?」

アルミン「昨日の夜、変な夢を見たんだってさ、それが気になって眠れなかったんだって」

エレン「お、おい、アルミン!」

アルミン「あ、ゴメンでも別に口止めされてなかったし……」

エレン「……」


ミカサ「変な夢……どんな夢を見たの?」

エレン(…………試しに話してみるか? ……でも……)チラッ


ミーナ「……」

クリスタ「……」


エレン(……いやいや、言えないだろ、あんな夢を見てたって知られたら変態扱いされるかもしれないし)

ミカサ「……エレン? 本当に大丈夫?」

エレン「え? あ、ああ、大丈夫だ、気にするな」


ミカサ「調子が悪いのなら訓練は休んだ方がいい」

エレン「な!? 平気だって言ってるだろ! 訓練は絶対に休まないからな!」バグバグ

ミカサ「エレン、そんなに急いで食べる必要はない」

エレン「早めに行って、自主練するんだ!」モグモグ

エレン「………………ごちそう様! じゃあな2人とも!」ダッ

アルミン「あ、待ってよ、エレン」

ミカサ「……」


アルミン(エレン……あんなに急いでどうしたんだろう、そういえば夢の話になった時、チラッとだけど……)


クリスタ「……」

ミーナ「……」


アルミン(あっちの女子グループの方を見ていたような……まさか、エレンが? ……いや、まさかね)

ミカサ「アルミン」

アルミン「うん? なに、ミカサ?」

ミカサ「……エレンの様子が変」

アルミン「ああ、うん、そうだね」

ミカサ「一瞬だけど、向こうにいるクリスタ達を見た気がする」

アルミン(やっぱり気づいてたか、まあ僕でも気づくくらいだし、当たり前だよね)

アルミン「そうだね、僕も夢の話になった時、エレンがあっちの方を向いていた気がしたよ」

ミカサ「……」



教官「それでは、これから班別行動を開始する!」

教官「各班はそれぞれ自分たちがまかされた仕事を完璧に遂行するように!」

教官「以上! 解散!」



エレン「……」

コニー「まかされた仕事っつってもさー、固定砲の整備だろ、こんなの駐屯兵団に任せとけよ」

トーマス「まあまあ、毎年訓練兵がこれをやる決まりなんだしさ……」

サシャ「そうですよ、それに私達、駐屯兵団になるかもしれないんですよ?」

コニー「言っとくけど、俺は憲兵団にいくつもりだからな!」

サムエル「おいおい、コニー、お前座学は最低だろ? 言っとくが座学は配点高いぞ」

コニー「バカ! そこは立体起動とかで補うんだよ!」

トーマス「ははは……そうだ、ミーナ、君は希望の兵科はあるのかい?」


ミーナ「私? 私はね……」

エレン(くそ、今日の訓練は固定砲の整備だった、せっかく変に意識しないでおこうと思ったのに……)

ミーナ「……やっぱり、憲兵団がベストよね、……でもハードル高いしなあー」

エレン(無心、とにかく無心になるんだ……)チラッ



ミーナ『はっ! 自分は豚小屋出身、家畜以下のメス豚であります!』



エレン「……ぐ!」

ミーナ「……エレン? どしたの?」

エレン「え? あ、いやなんでもない! なんでもないんだ!」


ミーナ「……? そういえば、エレンはどこに行くの?」

エレン「ど、どこに行く? 何の話だ?」

ミーナ「もう、ちゃんと聞いててよ、卒業したらどの兵科を選ぶかって話でしょ」

コニー「そいつに聞いても無駄だぜ」

ミーナ「え? なんで?」

トーマス「あれ、ミーナはあの時食堂にいなかったんだっけ」

ミーナ「何時の話?」

コニー「入隊初日さ、みんなの前で大見栄切ったって話だよ、巨人を一匹残らず倒すとか」

エレン「……アレは見栄じゃねえ! 俺は本気だ!」

ミーナ「……言われてみれば……そっか、あれ、エレンだったんだ……」


サシャ「へえ、そんなことあったんですか」

サムエル「なんでお前は知らないんだよ」

コニー「あ、そういえばお前、死ぬまで走らされてたんだっけ」

エレン「……お前ら、無駄話ばっかりしてないで、ちゃんと整備しろよな」

ミーナ「……ほらほら、班長命令がきたよ、みんな、手を動かす」

コニー「へーい」

―――夜・男子寮―――


ミーナ『自分は家畜以下のメス豚であります! なんなりとご命令を!』

エレン『な、何を言っているんだ? ミーナ?』

ミーナ『私はミーナではありません! 私は……』



エレン「……はっ!?」ガバッ

エレン「また夢……か」

エレン「くそ、なんでだ? またいきなりこんな夢を……」

―――朝・食堂―――


ミカサ「……エレン、どうしたの?」

エレン「ど、どうもしてない!」

ミカサ「ウソ……顔色が悪い、それに目にクマが出来てる、エレンの寝不足はわかりやすい」

アルミン「そうだね、いつもエレンは夜更かししないですぐに寝ちゃうし……」

エレン「……」


アルミン「まさか、またこの前みたいに『変な夢』をみたの?」

エレン「……そ、そんなこと、ない」チラ



ミーナ「……」

クリスタ「……」



ミカサ(またチラってみた)

アルミン(エレンはわかり安過ぎるよ、顔にすぐ出るし……やっぱり、クリスタ達の方を見たんだね)

エレン(はあ、しばらくぶりにまた見ちまった……しかもなんか内容悪化してたし……)


ミカサ「エレン」

エレン「……なんだよ」

ミカサ「何か悩みがあるのなら相談して……私たちは家族、遠慮はいらない」

アルミン「そうだよ、僕も幼馴染として精一杯協力するから」

エレン「ミカサ、アルミン……すまないけど、お前らだからこそ、これは相談できないんだ」

ミカサ「……どういうこと?」


エレン「……悪いがこの話はもうなしだ、俺は一切喋らないからな……」

ミカサ「エレン」

エレン「……」モグモグ

ミカサ「エレン!」

エレン「……」モグモグ

アルミン(本当に黙っちゃった、こうなると頑固だからな……しかし、僕らだからできない相談って……)




教官「今回は班別で立体起動訓練を行う」

教官「各班への指示は私が班長に対して行う、そこから班長は班員に的確な指示を飛ばせ」

教官「以上、訓練開始!」



エレン「何で俺が班長なんだよ、座学だったらアルミンだろう」

アルミン「まあ、こればっかりは仕方ないよ、それに僕らの中じゃエレンが一番立体機動が上手いんだし」

ナック「そうそう、頼むぜ、班長」


エレン「お前ら他人事だと思ってるだろ?」

ミリウス「だって他人事だしなあ?」

ナック「ははは、違いない」

トーマス「2人とも、さすがにエレンに悪いって」

エレン「……」

ミーナ「まあまあ、変に気負わないでよ、班長」

エレン(……そういえば、固定砲整備班と訓練兵団、両方とも俺はミーナと同じ班なんだよな)


ミーナ「それに私達、エレンの指示だったら従うわ、だから……」

エレン「……だから?」

ミーナ「……なんなりとご命令を(はぁと)」



ミーナ『自分は家畜以下のメス豚であります! なんなりとご命令を!』



エレン「ぶふぉ!?」

アルミン「ちょ、ちょっとエレン、大丈夫!?」

ナック「おいおい、いきなりどうしたよ」

ミリウス「くしゃみにしちゃあ、勢いあったな」


ミーナ「え、もしかして私が変なこと言っちゃったから?」

エレン(く……ミーナ、人の気も知らないで……)

ミーナ「だ、大丈夫? さっきの本当に冗談だから忘れて、ね?」

エレン「あ、ああ……わかってる、ちょっと動揺しただけだ」

ミーナ「う、うん……」

アルミン(……あれ、これって、もしかして……)


エレン「と、とにかく、気を取り直していくぞ……」

ミーナ「りょ、了解、班長! ほら、みんなも返事!」

トーマス「こっちは大丈夫だよ」

ナック「はいよ」

ミリウス「いつでもいいぜ」

アルミン「……うん、指示をお願い」

エレン「……目標はここから3時の方向、20mの一本杉、訓練兵団34班、移動開始!」

班員「「「「「了解!」」」」」

―――立体機動で移動中―――


トーマス「エレン、ちょっと先行しすぎじゃないか?」

エレン「そうか?」

ナック「そうだぜ、班長たるものみんなの事をよくみてなきゃ……な、アルミン」

アルミン「え? あ、うん、そうだね、確かに班長が先頭なのはよくないかも」

エレン「……わかった、お前ら先に行ってくれ」

ミリウス「おっしゃ、それじゃあお先に!」

エレン「おい、言っとくけど、俺たちは競争しているわけじゃないんだからな」

ミリウス「わかってるって!」


エレン「まったく、本当にわかってるのか、あいつら」

ミーナ「……エレン」

エレン「ミ、ミーナ……」

ミーナ「……さっきは本当にごめんね」

エレン「い、いや、もう気にしてないから、いいよ」

ミーナ「そう……よかった」

エレン「……」

ミーナ「……」


エレン(ち、沈黙が気まずい……)

エレン「……ミ、ミーナはさ、他のやつ等みたいに先に行かないのか?」

ミーナ「……なにそれ、皮肉? ……これでも結構本気で移動しているんだけど」

エレン「……あ、す、すまん」

ミーナ「いいわよ、別に……苦手なのよね立体機動って、姿勢制御の適性検査もギリギリだったし」

エレン「立体機動が苦手って、マズくないか?」

ミーナ「マズいわよ……しかも立体起動を一番使わない兵科が一番立体起動を使いこなせなくちゃいけないなんて皮肉よね」

エレン(それって、憲兵団のことだよな……内地勤務で立体機動装置の使い方すら忘れてるって話もあるくらいだ)


エレン「憲兵団に入りたいのか?」

ミーナ「出来れば……ね、でもさすがに上位10人ってのは厳しいわよ……しかも上位メンバーってほぼ固定だし」

エレン(ミカサやライナーたちか……確かにあいつらはすごいもんな……)

ミーナ「……もう諦めて駐屯兵団にしようかなって思ってるの」
    
ミーナ「……まあ、立体機動も満足にできないのにやっていけるかはわからないけどね」

エレン「……練習」

ミーナ「え?」

エレン「練習しようぜ、できないんなら、できるまで練習するんだ!」

ミーナ「そ、それはそうかもだけど……」

エレン「大丈夫だ、俺も最初はできなかった、だけど練習したら出来るようになってた! だからきっとミーナもできる!」


ミーナ「……」

エレン「実は俺も姿勢制御落第組だったんだ、何回やっても上手くいかなくて……」

ミーナ「……」

エレン「だけど、練習して、頭打って、気絶するまで練習して、やっと一瞬だけだけど姿勢制御ができるようになったんだ」

ミーナ「……その話のオチ知ってる、実は体を固定する器具が故障してたんでしょ?」

エレン「あ、ああ……」

ミーナ「まあ、エレンのあの豪快な空中前転は中々忘れられないよね、ふふふ」

エレン「わ、笑うなよ! アレ、本当に痛いんだぞ! ……とにかく俺が言いたいことは無理なように見えても練習すれば……」

ミーナ(あの話、聞きようによっては、自慢話にも取れるのよね……まあエレンはそんな人じゃないってわかってるけど)


エレン「……そりゃあ、練習しすぎてケガしちゃうときもあるかもしれないけど、でもそうやって人ってのは……」

ミーナ(……まだ話してる……エレンって結構熱くなるタイプの人だよね、何事にも一生懸命っていうか)

エレン「……つまりだな、俺が言いたいのは……」

ミーナ「エレン」

エレン「……練習あるのみ……なんだ?」

ミーナ「そんなに練習が大事ならさ、私の練習にも付き合ってよ」

エレン「立体機動のか?」

ミーナ「そう、やっぱり上手い人に教われば上達も早くなると思うの」


エレン「……でも、教えるにしても俺だってそこまで上手いわけじゃないし、それだったらジャンのほうが……」

ミーナ「……はあ、なにそれ」

エレン「な、なんで、ため息ついてんだよ!」

ミーナ「いいから、エレンが教えて、今この場にジャンはいないでしょ?」

エレン「まあ、そうだけどよ……」

ミーナ(エレン、やっぱり気づいてないのね……私の言った上位メンバーの中にあなたも入ってるってことに)

ミーナ(実はアレ、軽くやっかみで言ってみたんだけど、全く気付かないでどんどん話進めちゃうし)


エレン「えーとまず、立体機動のコツはな、確か慣性を利用して一瞬だけガスを吹かせばいい……と思う」

ミーナ「……確か? 思う?」

エレン「ああ」

エレン(ジャンの受け売りだからちゃんと伝えられん、あいつなんて言ってたっけな……)

ミーナ「……よくわかんない、言葉じゃなくて実際の動きで教えて」

エレン「わかった、一回止まるぞ」

ミーナ「うん」

―――樹の上―――


エレン「………………こんな感じで、重要なのはアンカーの射出と巻き取りのタイミングと、思いっきりの良さ、かな」

ミーナ「すごい……一回で私の2倍くらい移動してる……」

エレン「……わかったか?」

ミーナ「だいたいね」

ミーナ(見る限りだと、エレンは私に比べて射出も巻き取りも遅い、これがタイミングね)

ミーナ「よし、いくわよ………………! どう、出来てる!?」

エレン「ああ、いい感じだぞ、ミーナ! やれば出来るじゃないか!」


ミーナ(いつもの私より少し無茶をするように飛べばいいのね、これが思いっきりの良さ、か)

ミーナ(……すごい、まだまだエレンには及ばないけど、でも確実にさっきまで私より成長してる!)

エレン(ミーナ、いい感じだ、この調子でいけば、きっと立体機動の苦手意識も克服できるぞ!)

ミーナ(すごい、すごい……もしかしてもっと無茶すれば、もっと飛距離が伸びるんじゃ……)

ミーナ(やってみよう! 今なら何だかできそうな気がする! ……いっけー!!)

エレン(お、おいミーナ、その角度でアンカー伸ばすとちゃんと刺さらな……)


ミーナ(……あれ? もしかしてアンカーが刺さってない……? あ、これまずいかも……)

ミーナ「きゃ、きゃああああぁぁ」

エレン「ミーナ!!!」

ミーナ「……………………エ、エレン……」

エレン「あ、危なかった……ミーナの後ろを移動していてよかったぜ」

ミーナ「う、うん……」

エレン「さすがにあの速度と高さから落ちたらケガじゃ済まなかっただろうしな、間に合って本当に良かった」

ミーナ「そ、そうね……ありがとうエレン」


エレン「まあ、今回は訓練の途中だし、練習はこの辺にしておくか」

ミーナ「わかった……とりあえず、エレン……」

エレン「なんだ?」

ミーナ「誰にも見られていないことはわかっているけど…………恥ずかしいから降ろして」



アルミン(すごいものを見てしまった)

アルミン(ミーナとエレンが遅いから引き返してみたら、エレンがミーナを抱えながら立体機動をしていた)

アルミン(一体どういう状況なんだろう……)

アルミン(あ、エレンがミーナを降ろした……心なしかミーナの顔が赤いような……)

アルミン(戻ろう……今日見たことは僕の胸の中にしまっておくからね、エレン)

―――夜・男子寮―――


エレン『お前は何者だ?』

ミーナ『はっ、自分は豚であります!』

エレン『その通りお前は豚だ』

ミーナ『……はっ、自分は家畜以下のメス豚であります!』

エレン『いい返事だ、メス豚、特別に俺が自ら指導してやる』

ミーナ『ありがとうございます! どうぞ、このメス豚にご指導お願いします!』

エレン『よし、それじゃあ早速……』



エレン「……はっ!」

エレン「……くそ! いいところだったのに! 一体何の指導をメス豚にやるところだったんだ!」

エレン「……いやいや、俺は何を言っているんだ、そもそもミーナはメス豚なんかじゃない!」

エレン「というか、夢の中の俺は何であんなノリノリなんだよ……」

エレン「……寝直そう、これは悪い夢だったんだ……」

―――朝・食堂―――


アルミン「おはよう、エレン」

エレン「……んー」

ミカサ「……顔色が悪い……今日も悪い夢を見たのね、エレン」

エレン(やっぱり全然眠れなかった……眠くて死にそう)

ミカサ「……もういい加減にしてほしい、エレン、これ以上アナタの辛そうな顔は見たくない」

エレン「……んー」

ミカサ「エレン……やはりここにくるべきではなかった、巨人と戦う前にあなたが潰れてしまっては意味がない」

エレン「……んー? ……ミカサ」


ミカサ「何? エレン……」

エレン「そこにいると座れなないんだが……」

ミカサ「……え?」

エレン「……聞こえなかったのか、邪魔なんだ……お前」

ミカサ「……!?」

アルミン「ミ、ミカサ、エレンは今、メチャクチャ寝ぼけてるだけで、ちょっと言い方が悪かったというか……」

ミカサ「……」ガタガタ

アルミン「ミカサ! 落ち着いて!」

エレン「……結局座れねえじゃねえか、他のところ行こう」


クリスタ「エレン? どうしたの、そんなところで立ったままで」

エレン「……クリスタ……」

クリスタ「ど、どうしたの? なんだか顔色悪いけど……」

エレン「……なんでもない……それよりも空いた席ないか? 朝飯を食いたいんだ」

クリスタ「あ、それじゃあ私たちのところくる? 1人くらいならスペース空くと思うし」

エレン「……うん」

ミカサ「……」ガクガク

アルミン「ミカサ! しっかりしてくれ! ミカサ!」



ユミル「エレン? ……クリスタ、捨て犬は拾ってきちゃダメなんだから元あった場所に戻してきな」

クリスタ「もう、ユミルったら! イジワルなこと言っちゃダメでしょ!」

エレン「……うー」

ユミル「なんだそいつ、フラフラじゃないか」

クリスタ「体調悪いみたいなの、だからやさしくしてあげてね?」

ユミル(クリスタマジ女神)

クリスタ「エレン、ほら、座って……」

エレン「……あ? ああ……」

ミーナ「……ごめん、おまたせ! ……あれ? エレン」

エレン「……え、……ミーナ?」


ミーナ「今日はミカサ達と一緒じゃないんだ?」

エレン「……お、おう」

クリスタ「エレンは今日はこっちで食べるのよ」

ミーナ「へえ……じゃあ隣に座っちゃおうかな」

エレン「マ、マジか?」

ミーナ「うん、あ……もしかして私じゃなくてクリスタの方がよかった?」

エレン「い、いや……そんなことはないぞ……」

ミーナ「そっか、よかった……それじゃあ、失礼しまーす」

エレン「……ああ」


エレン(なんで今日に限ってミーナと一緒になるんだ…………そういえば、前も夢を見た時にミーナと一緒だったような……)

クリスタ「あ、今日って確か午前中は近接格闘訓練よね?」

ユミル「ああ、サボりの時間だな」

クリスタ「ダメよ、ちゃんとやらなきゃ……サボらないようにユミルは今日私と組みます! いいわね?」

ユミル(なんという私得展開)


ミーナ「なら、私はエレンとね」

エレン「え……」

ミーナ「何よ……もしかして嫌なの?」

エレン「いや、その……いいのか? ケガさせちまうかもしれないぞ?」

ミーナ「何言ってるのよ、ケガを恐れるなって、あなたが言ったんじゃない」

エレン「そうだけどさ……俺、加減が下手だから結構痛くするかも……」

ミーナ「大丈夫! 私、子供の頃、派手に転んだことあるんだけど、そのときも痛がるどころか笑ってたんだから!」

エレン「……!」


ミーナ「それに近接格闘は得意でしょ?」

エレン「……まあ、立体機動よりは成績良いけど」

ミーナ「じゃあ適任ね、私の練習相手になってね、エレン!」

エレン「お、おう……」

クリスタ(なんだか、いつになくミーナがやる気のような……?)

ユミル(そういや最近真面目になったなコイツ……少し前まで私と同じ手抜き組だったのに)


ミーナ「これでも成績伸ばそうと頑張ってるんだから、手伝ってよね」

エレン「まあ、俺の出来ることなら……」

ミーナ「ふふふ、ありがとう、それじゃあよろしくご指導お願いしますね、教官殿」



ミーナ『ありがとうございます! どうぞ、このメス豚にご指導お願いします!』



エレン「ぶふぁあ!?」

ミーナ「きゃっ!?」

ユミル「うわ、汚ねえ!」

クリスタ「ちょっと、エレン、大丈夫!?」



アルミン「ミカサ、落ち着いて、深呼吸だよ」

ミカサ「ふー、はー、ふー、はー」

アルミン「そうそう、その調子……落ち着いた?」

ミカサ「……ありがとう、もう大丈夫」

アルミン「うん、よかったよ」

ミカサ「……エレンは?」

アルミン「えーと、あっち……」



ユミル「ちくしょう、てめえ! 汚れたこの服お前が洗えよな!」

エレン「わ、悪かったって、洗っとくから……」

クリスタ「いきなりどうしちゃったの、エレン? やっぱり調子が悪いんじゃ……」

エレン「そ、そんなじゃないんだ! 気にしないでくれ」

ミーナ「……そういえば前もこんなことなかった?」

エレン「……あ、ああ」



ミカサ「……」

アルミン「ぼ、僕たちも朝ごはん食べちゃおう?」

ミカサ「……」

アルミン「……ははは」

―――夜・男子寮―――


エレン『どうだ、痛いか? メス豚?』

ミーナ『は、はい! 痛いです!』

エレン『……ならやめるか?』

ミーナ『いえ、もっと……もっと激しくお願いします!』

エレン『そんなに痛いのが好きか、このメス豚め!』

ミーナ『はい、メス豚は痛いのが大好きです!』

エレン『よし、喜べ、メス豚……お前にはとっておきのやつをくれてやる』

ミーナ『あ、ありがとうございます!』



エレン「……はっ」ガバッ

エレン「なんで……なんで、いつもいいところで目が覚めちまうんだ!」

エレン「しかも、とっておきってなんなんだ、夢の中の俺……」

エレン「……」

―――朝・食堂―――


アルミン「エレン……大丈夫?」

エレン「なにがだ、アルミン、俺は絶好調だぞ!」

アルミン(目にクマがあるのに馬鹿でかい声……恐らくこれは徹夜明けで気分がハイになっている時のヤツだ)

エレン「おはよう、ミカサ!」

ミカサ「……! おはよう、エレン!」

エレン「さっさと飯を食おう! 今朝もみんな大好きなパンとスープだ!」

ミカサ「そうね、エレン、一緒に食べましょう」

アルミン(エレンに釣られてミカサのテンションも高くなっている……この前の反動もあるんだろうけど)

ミーナ「あ、エレン、今日はこっちで食べていい?」


エレン「……! ああ、いいぞ、いいよな、2人とも?」

アルミン「う、うん……僕は良いけど……ミカサ?」

ミカサ「……エレンがいいのなら別にいい」

ミーナ「ありがとうね」

アルミン(迷いなくエレンの隣に座った……ミカサは?)

ミカサ「……」モグモグ

アルミン(いつもの無表情……あまり気にしてないみたいだ)

ミーナ「今日の訓練もよろしくね、エレン」

エレン「ああ、任せてくれ!」

ミカサ「……」

アルミン(エレンとミーナ……やっぱり仲が良いな、昨日の近接戦闘でも組んでいたし、この前の班別訓練の時も……)


ミーナ「今日は対模造巨人訓練よね」

エレン「そうだ! 特に立体機動中の斬撃はコツがいるからな!」

ミーナ「今日は朝から元気ね、エレン」

エレン「訓練が楽しみだからな!」

アルミン(……単なる空元気なんだけどなあ)

ミーナ「ちなみに立体機動中の斬撃のコツってなあに?」

エレン「ああ、それはな……」

ミカサ「……待って、エレン」

エレン「……何だ、ミカサ?」

ミカサ「エレンはミーナの練習につきあってあげてるの?」

ミーナ「そうよ、エレンに教えてもらっているの」

ミカサ「それだったら、私がエレンの代わりに教えてあげる」

ミーナ「え?」

ミカサ「私の方がエレンよりも立体起動戦が得意、だから私が教えた方がきっと効率がいい」


アルミン(これは……)

ミーナ「教えてくれるのはうれしいけど、私は……」

ミカサ「エレンもまだ、完璧に立体機動装置を扱えるわけじゃない、だからエレンは自分の訓練に集中すべき」

ミーナ「……」

アルミン(やっぱり、ミーナのためじゃなくて、エレンのために言ってるよね)


エレン「ミカサ」

ミカサ「何?」

エレン「ミーナは俺が教える」

ミカサ「ダメ、エレンは自分のことを……」

エレン「ミカサ」ガシッ

ミカサ「……!? エ、エレン……いきなり何を……その、顔が近い……」

エレン「ミカサ、俺の目を見ろ!」

ミカサ「……う、うん」

エレン「ミーナは俺と訓練をする!」

ミカサ「で、でも……」

エレン「……俺は、ミーナと、訓練をする! わかったな!?」

ミカサ「……え、あ……う、うん、わかった、ミーナとエレンは訓練をする……」


エレン「お前は黙ってみていろ!」

ミカサ「……」

エレン「返事は?」

ミカサ「……はい」

アルミン(エレンがミカサをやり込めるところなんて、生まれて初めて見た……勢いってすごいね……)

ミーナ「えーと……いいの、エレン?」

エレン「何の問題もない!」

ミーナ「ならいいんだけど……」

エレン「とっと飯を食おうぜ!」

ミーン「うん」

アルミン(そういえば、エレンが寝不足になってからだよね、ミーナと仲良くなりだしたの……)

ミカサ「……」

アルミン「ミカサ、僕たちも食べよう……」

ミカサ「……」

アルミン「……ミカサ?」

ミカサ「……エレン、力強くて男らしかった……あのまま待っていたらキスされていたかも……」

アルミン(……聞こえないフリ、聞こえないフリ)

―――夜・男子寮―――


ミーナ『はあ、はあ、はあ……』

エレン『メス豚、どうした? これで終わりか?』

ミーナ『……もう一度、もう一度だけお願いします!』

エレン『ふん、どうしてやろうか』

ミーナ『そ、そんな……この家畜以下のメス豚をどうか見捨てないでください!』

エレン『ほう……なら頼み方というものがあるだろう? メス豚』

ミーナ『頼み方……ですか?』

エレン『まず、豚のくせに二足歩行で立っていることがおかしいだろう?』

ミーナ『あっ……! ……こ、こうでしょうか?』

エレン『そうだ、四つん這いが正しいよな……ところで人間の言葉をしゃべる豚もいないよな?』

ミーナ『……!』

エレン『さあ、鳴け! 豚の言葉を!』



エレン「……!」ガバッ

エレン「……」

エレン「…………」


―――朝・食堂―――


ミーナ「だ、だから、そういうのじゃないってば……」

クリスタ「ウソ、だっていつもエレンと一緒に訓練してるじゃない」

ミーナ「それは……まあ、最近は色々教えてもらう事が多いけど」

ユミル「いい加減吐いちまえよ、ホレたんだろ、アイツによ?」

ミーナ「うー……」

ユミル(否定してない時点で答えてるようなもんだろ)

クリスタ(……ちょっとカマかけてみようかな……ごめんね、エレン)


クリスタ「……でも、エレンは正直どうなんだろうね」

ユミル「……そうだな、アイツいつも死に急いでやがるし、多分、女の扱い方もわからないぜ」

ミーナ「そ、そんなことないわ! そりゃ痛い思いをすることもあるけど、訓練が終わったらちゃんと気遣ってくれるもん!」

ユミル「へえー」ニヤニヤ

クリスタ「ふーん」ニヤニヤ

ミーナ「な、何よ……?」


クリスタ「そういえば時々寝癖つけて食堂に来るよね」

ミーナ「エレンは人一倍訓練を一生懸命やるからその反動が朝に来るだけよ」

ユミル「なんだか暑苦しいよな」

ミーナ「だから、暑苦しいんじゃなくて一生懸命なの! エレンは志が高いんだから!」

ユミル「……へえー」ニヤニヤ

クリスタ「……ふーん」ニヤニヤ

ミーナ「……その顔やめてよ!」



エレン「…………おはよう」

ミカサ「おはよう、エレン」

アルミン「エレン、遅かったじゃないか、もしかしまた、調子悪い?」

エレン「……いや絶好調だ」

アルミン(やっぱり寝不足みたいだ、でもこの前みたいにハイテンションじゃない……)




ユミル「お、噂をすれば、か……」

クリスタ「ほら、ミーナ!」

ミーナ「ちょ、ちょっと、押さないでよ……あっ」

エレン「……ん?」

ミーナ「エ、エレン……その、おはよう!」

エレン「……ああ、おはよう、メス豚」

ミーナ「……え?」



おわり

後日談

―――訓練兵団34班・立体機動にて移動訓練中―――


ミーナ「もう! あの時はすっごくビックリしたんだからね」

エレン「……寝ぼけてたんだよ、寝不足が続いててさ」

アルミン「正直それで済む話じゃなかったけどね」

ナック「ああ、あれか……やばかったよな」

ミリウス「開口一番でいきなりメス豚……くくく、本当、班長様はやってくれるぜ」

トーマス「そのあともすごっかったよね、何故かクリスタが泣きだしちゃってさ……」

ナック「あの時アルミンとミカサがフォローしてなかったら、女子にボコボコにされたぞ」

エレン「……うるせえ、もうその話は無しだ! 34班、全速力で移動!」

ミーナ「あ、ちょっと、待ってよエレン!」



ミリウス「行っちまいやがった……くそ、エレンはともかくミーナはいつの間に立体機動上手くなったんだ」

ナック「なによりもすげえのはあんなこと言われたミーナがエレンに対して普通に接してるって事だよな……」

トーマス「……案外2人は付き合ってたりして」

ミリウス「はは、それこそねーよ、なんでメス豚呼ばわりする男と付き合うんだよ」

ナック「それにエレンの保護者も黙ってないだろ、なあ、アルミン?」

アルミン「……そうだね」



エレン「……よし、だいぶ引き離したな、まったく、アイツらいつも同じネタでいじりやがって」

ミーナ「まあ、エレンにも非があるんだから仕方ないんじゃない?」

エレン「……」

ミーナ「……エレン? どうしたの?」

エレン「……人の言葉をしゃべる豚なんて珍しいな」

ミーナ「……! ……ぶぅ」

エレン「よしよし、目的地までアイツらが追いつくことはないだろう、なあメス豚?」

ミーナ「ぶぅぶぅ!」


おわり

乙だけどさあああ
一番肝心なところがないじゃないですかあああああ

名作だった

うまい、良かった

すごくいい

肝心なところがキングクリムゾンされてるww

次はユミルでお願いします!

あの気がつよそうなソバカス百合女がハァハァ


おもしろかったけど、肝心なとこがないじゃないか!(憤慨)

パワポケのミーナさんを調教するssかと思ったらちがったでやんす

ミーナ………いっそブタなら
殺されずに済んだのにな。

乙!

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