男「あうんの呼吸はそういうのじゃない」

女「えっ」

男「息を合わせるとか、そういう意味」

女「えっ」

女「知らなかった」

男「しょうがない」

女「恥ずかしい」

男「しょうがない」

女「じゃ、じゃあさ、ラマーズ法はどこで吸うの？　やっぱり『ひっひっ』だよね？」

男「いや、吐く」

女「えっ」

女「じゃあ『ふー』で吸うの？」

男「いや、吐く」

女「えっ」

男「全部、吐く」

女「吐きっぱなしなの？　死なないの？」

男「『ひっひっふー』の後に吸う」

女「えっ」

女「じゃあ『ひっひっふーすっ』って感じなの？」

男「たぶんね」

女「男くん詳しいね、経験済みなの？」

男「無理」

女「えっとじゃあ、メラニー法について教えてよ」

男「メラニー法？　そんな呼吸方法があるのか」

女「ううん、女声を出す方法」

男「ラマーズ法の次に話題に誰されたら誰もが勘違いするよ」

女「ごめん」

男「というか、よくそんなもの知ってるね」

男「そういえば、君って胸も無いし、声を作ってる男とかなの？」

女「殺すよ」

男「申し訳ない」

女「そんな謝り方じゃ足りない」

男「超申し訳ない」

女「許す」

男「チョロい」

女「えっ」

男「他に訊きたいことはあるかな」

女「話し逸らした」

男「逸らしてない」

女「逸らした」

女「……じゃあ深呼吸について訊きたい」

女「あれってどっちで吸って吐くの？」

男「鼻から吸って、口で吐く」

女「逆じゃ駄目なの？」

男「鼻から吸って、口で吐いたほうが気持ちい」

女「気持ちいいからそうするの？」

男「たぶんね」

女「気持ち悪くなりたかったら逆でもいいのかな」

男「ご自由に」

男「というか、さっきからどうしたのかな」

女「どうしたって？」

男「ほら、なんかいっぱい訊いてくるしさ」

女「あうんの呼吸を知らなかった照れ隠し」

男「マジか。じゃあ特に意味のない問答だったのかな」

女「でも、上手く会話のキャッチボールできてるでしょ。あうんの呼吸ってやつだね」

男「新しい言葉を知りたての中学生みたいだね」

女「すぐ茶化す」

男「ごめん」

女「それにほら、ラマーズ法はいつか使うでしょ」

男「どうだろうね」

女「使わないの？」

男「ちょっとわからないかな」

女「子ども作らないの？」

男「え、いや、あのさ」

女「男は子ども、いらないの？」

男「……ソフロロジー法ってのもあるからね」

女「なーんだ」