海未「愛憎の果てに」 (279)

「えっと、おとうふに玉ねぎ、しらたきとお肉も買ったしこれでぜんぶですね! ちゃんと買いものできたからお母さんよろこんでくれるでしょーか!」ランラン

「あっ、そうだ。 お金あまったらおまんじゅう買ってもいいよって言ってましたよね。 それならお母さんがおけいこ終わるまでおまんじゅう買いに行くついでにほのかとあそぼーっと」ルンルン



『おかーさん。 オレンジのやつのみたいー』

『はいはい。 今買ってあげるからねー』

ピッ、ガラゴト

『はい』

『やったー! ありがとーおかーさん!』

『ふふっ、落とさないように気をつけてね? それじゃあお散歩の続きしましょうか』

『はーい!』

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「車いす……。 見たかんじだと背もわたしと同じくらいでしょうか。 でもようちえんにあんな子いましたっけ?」


『……ん?』


「あ……」

(目が合ってしまいました……。 それにしても……)


『ねぇおかーさん? あの子ようちえんの子かな?』

『えっ? ああ、そうかもしれないわね。 お話ししてみる?』

『む、むりだよぉ……。 はずかしいもん……』


(すごく、かわいい……。 わたしよりひとつ年上のえりちゃんと同じくらい。 声も透き通ってるし、髪もすごく長いし、)


『ねぇあなた』


「え……は、はい!? な、なんでしょうか……」

『あら、敬語使えるの? こんな小さいのに立派なのね』


「いえ、おかーさんにおしえてもらってますので……」


『お名前はなんて言うの?』


「……うみです」


『うみちゃんね。 ありがとう。 うみちゃんは音ノ木幼稚園の子かしら?』


「は、はい。 年長組です」


『あら! よかったわね、歳も同じみたいよ』

『……ん』モジモジ


「……?」

『ほら、明日からお友達になるんだから挨拶しておきなさい』

『う、うん……』


ジィッ……


「あ、あの……」


『へっ!?』


「あ、ご、ごめんなさい……。 じっと見つめられて照れくさくなっちゃって……」


『こ、こっちこそごめんね……。 んー……』チラッ

『(がんばって!)』

『……うん』


『あの……』

『は、はい……っ』


『わたし、ことりっていいます……。 明日からおとのきようちえんの年長さん組にてんえんするのでよろしくおねがいします……』

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・


海未「……」

ことり「」zzz

海未(ずいぶん懐かしい夢を見たみたいですね……。 あれからもう10年以上経つのですか)

ことり「」zzz

海未「ことり、いつまで寝ているのですか。 まぁ一緒に寝てた私が言うのもなんですが……。 勉強はまだ終わってませんよ?」

ことり「……んー」zzz

海未「起きてください。 ことり」ユサユサ

ことり「……」zzz

海未「……はぁ。 起きないならキスしちゃいますよ?」

ことり「……!」スピー

海未「どうやら本当に寝てるみたいですね。 ならキスしてもバレませんよね。 じゃあしますよ? いいんですね?」

ことり「……っ」コクコク

海未「……今思いっきり頷いてましたよね」

ことり「……っ!? ……ウ、ウナズイテナイヨー。 ネテルヨー……」

海未「もうしゃべっちゃってますし……」

ことり「……」

ことり「………………もぉ! どうして海未ちゃんの方からチューしてくれないの!? いつもいつもことりからで海未ちゃんの方からしてくれたことなんて一度もないじゃん!」

海未「そ、それは……。 わ、私はあなたからのだけで事足りてるからです」

ことり「ことりは足りてないもん! ね、チューしよ! ほら!」パチッ

海未「うっ……」

ことり「んー……」

海未「……そ、そんな顔されても私はしませんよ?」

ことり「んー!」

海未「ですから私は……」

ことり「んー!!!!」

海未「……わ、わかりましたよ。 ……めんどくさい性格ですね……」

ことり「でも好きになってくれたんでしょ?」

海未「それは……もちろんです」

ことり「♪」

海未「じゃあ……いきますよ?」

ことり「うん……きて?」

海未「……いいんですね?」

ことり「もぉ! しつこい!」

海未「………………では」

チュッ

ことり「……」

海未「……どうです?」

ことり「……えへへ、嬉しいな♪」

海未(かわいい)

ことり「あ、でもね? 海未ちゃんから優しいキスされてことりちょっとえっちな気分になっちゃったかも」

海未「発情期ですか!」

ことり「海未ちゃん!」ガバッ

海未「きゃっ!」ドサッ

ギシッ

ことり「海未ちゃん……んっ、 チュパ……チュッ……好き……。 大好きだよ……」カプッ

海未「ことり……! あん……首はだめぇ……」

ことり「チュー、チュー、レロレロ」

海未「あ、あぁん……。 舐め……ないで。 くすぐったい……」

ことり「……ぷはぁ。 はい、おしまい」

海未「はぁ、はぁ……。 あなたは本当にいつも突然なんですから……」

パシャリ

海未「えっ?」

ことり「見て見て。 今ね、海未ちゃんはことりのものなんだよってマーキングしちゃった♪」

海未「ちょっ、え、えぇぇっ!? こんな目立つところに何てことしてるんですか! するなら見えないところにといつも言ってるじゃ……」

ことり「それじゃ意味ないでしょ? 犬や猫が首輪をするように、鳥が足輪をするように、マーキングっていうのは見えるところにしなくちゃいけないんだよ?」

海未「ペットと一緒にしないでください! あぁぁ……こんなの父上に見られたらなんと言われるか……。 示しがつかないとか言われて勘当されたりなんて……」ガクブル

ことり「そのときはことりの家の子になっちゃえばいいよ♪」

海未「そんな簡単に言わないでください! うぅ……」

ことり「…………ごめんね。 そんなに嫌だった?」

海未「いえ、そういうわけではないのですが……。 もうちょっと考えてやってほしいです……」

ことり「……うん。 本当にごめんね」


海未「…………仕返しです」


ことり「……え? あっ……」

チュー

ことり「ひゃっ、あぁっ……だ、だめ……海未ひゃん……! ことりもらめなのぉ……!」

海未「……ふぅ。 これでお互い様ですよ」

ことり「うぅ……マネージャーさんに怒られちゃうよぉ……」

海未「それでは勉強の続きをしましょうか」

ことり「はーい……。 んー」

海未「なんです?」

ことり「起こしてー」

海未「……ベッドから降りるだけなら片足あれば十分でしょ」

ことり「……けちんぼ」

海未「なにか言いました?」

ことり「なんでもないですー! はぁ……。 勉強勉強って海未ちゃんは本当に……ってそうだ。 ノート最後まで使い切っちゃったんだった」

海未「私のルーズリーフ貸しますか?」

ことり「ううん。 まだ時間あるし今から買いに行こうかな」

海未「わかりました。 車椅子押します?」

ことり「いや、いいよ。 そんな長い距離移動するわけでもないし、松葉杖で充分」

海未「そうですか。 それでは行きましょうか」

ことり「うん。 よいしょ、っと」



ことり「ノートにシャーペンの芯、あとお菓子も買えたしもう帰ろっと」

海未「お菓子は買う必要なかったでしょう……」

ことり「えー? 甘いもの食べた方が頭がよく回るんだよ?」

海未「それは知ってますけど……。 私はどうせならやること終わらせてからおいしいものを食べたいですね」

ことり「でもおいしいもの食べながら勉強するってことは、幸せな気分のまま勉強できるってことなんだよ? 絶対そっちのほうがいいって!」

海未「そうでしょうか……」


【みなさん、とうとう新曲ができました! 次のラブライブではこの新曲を披露するから期待しててね!】


『きゃー! A-RISEだー!』

『新曲!? 今新曲って言った!? うそ、ラブライブ予選の日まで待ちきれないよー!』


ことり「あっ、ツバサちゃんたちだ。 やっぱりA-RISEは人気あるんだなぁ」


【私の今…未来…あなたにある。 願いがはじける。 言えないよけど消せないから。 扉を叩いて。
ミナリンスキー、ニューシングル。 スピカテリブル】


『今度はミナリンスキーだー! やっぱりかわいぃ!!』

『こっちはスクールアイドルじゃなくて本物のアイドルだもんね! まさにUTXの誇りだよ!』


海未「あなたの人気もかなりのものみたいですよ? 地上に降り立った片翼の天使、ミナリンスキーさん?」

ことり「うっ……その二つ名は恥ずかしいよ……」

海未「やはりあなたはUTXに行って正解でしたね。 おかげでこんなに大成功することができたのですから」

ことり「……でもことりは海未ちゃんと同じ音ノ木坂に行きたかったのに……」

海未「仕方ないですよ。 理事長も音ノ木が数年後には廃校になると知っていたから娘のあなたには将来も明るいUTXへの進学を推したんです」

ことり「それでも海未ちゃんは音ノ木に行ったじゃん……。 私は海未ちゃんもUTXに進学するって言ったから一緒のところを選ぼうとしたのに……」

海未「それは……」

ことり「……ねぇ、いい加減話してくれてもいいんじゃない? どうして私を騙してまで離れ離れになろうとしたの?」

海未「別に騙すつもりは……」

ことり「海未ちゃんと一緒にいれない学校生活は本当につまらないんだよ? 中学生までは学校の階段上り下りするだけでも海未ちゃんが肩を貸してくれたし、修学旅行のときも海未ちゃんが車椅子を押してくれた。 でも今は…………マネージャーさんが頭に入りきらないくらいたくさんの予定を話しながら車椅子を押すの……。 そこに海未ちゃんのときに感じた暖かさなんて微塵も感じない……。 あの人は私のこと商売道具としてしか見てないんだもん……」

海未「……」

ことり「ねぇ、ことりが校長先生に頼めばきっと海未ちゃんは今からでもUTXに編入できる。 だからまた前みたいにずっとことりのそばにいて? ね、ダメ?」

海未「……」

ことり「どうして……? どうして何も言ってくれないの……!?」

海未「……ごめんなさい」

ことり「謝らないで……! そんな言葉聞きたくない……!」ダッ

海未「あっ、ことり……!」

ことり「……うっ、きゃっ……!」

ズシャッ
カランカラン…

ことり「うぅ……」

海未「こ、ことり……! まったく、走ろうとなんかするからそうなるんです。 ほら、立てますか?」

ことり「……」

海未「どうしました……? も、もしかして今ので膝をぶつけて……っ!?」


ことり「…………穂乃果ちゃん」


海未「……え?」

ことり「穂乃果ちゃんなの?」

海未「な、なにを……」

ことり「穂乃果ちゃんが音ノ木に進むって言ったから、そして今も穂乃果ちゃんが音ノ木にいるから海未ちゃんも音ノ木にいるの?」

海未「……っ」

ことり「答えてよ!! ねぇ、ことりは海未ちゃんの彼女なんだよ!? そんなことりにも話せないの!?」

海未「……」

ことり「海未ちゃんにとっては……彼女のことりよりも生まれた時からの幼馴染の方が大事なの……?」


『ん? ねぇねぇ、あそこにいるのってもしかしてミナリンスキーじゃ……』

『なに言ってんの。 国民的アイドルのミナリンスキーが休日にこんなところにいるわけ……って、』

『や、やっぱり本物だよ! あの松葉杖もミナリンスキーがいつも持ってるやつだもん! それにミナリンスキチの私があの髪型を見間違えるはずがない!』

『マジで!? ならサインもらわなきゃ……!』


海未「くっ、しまった……。 先ほど転んで大きな音を立てたから皆の視線がこちらに集まって……」

海未「ことり! とりあえずここを離れましょう!」グイッ

ことり「……」



海未「はぁ、はぁ……。 さすがに人ひとりを背負って走るのはつらいですね……」

ことり「……」

海未「ことり?」

ことり「」zzz

海未「……って寝てるんですか。 よくあんなに揺さぶられたのに寝ていられますね」

海未「とりあえずここの公園なら人もあまり来ないでしょうし、少し休みましょう……」


ヒュオー


海未「ふぅ、涼しい風……。 そういえばあの日も……」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

ことり「はぁ、ふぅ……。 うみちゃん歩くのはやいよぉ……」

海未「あ、ごめんなさい。 すこし考え事をしていまして……」

ことり「がんがえごと?」

海未「はい。 どうしたらほのかもあなたと仲良くなれるかを考えていたんです」

ことり「ほのかちゃん? 別にことりとほのかちゃんは仲わるくないよ?」

海未「それはほのかはだれにでも平等に接するからです。 こんな言い方はあの子に失礼かもしれませんが、実家がしにせなだけにあの年でもう働く時の顔、つまりえいぎょうスマイルといものの作り方をみにつけているんです。 だからその顔を見せる相手はきっとあの子にとってたまにくるお客さんとたいしてかわらないのでしょうね」

ことり「た、たしかにことり、ほのかちゃんの笑った顔しかみたことないかも……」

海未「でしょう? あの子のないた顔や本気でおこったところを見たことあるのは、わたしか四年生のえりちゃん、あとは一つ下のりんくらいです」

ことり「そういえばえりちゃんともすごくなかよしだよね。 ……ことりもほのかちゃんとなかよくなりたいなぁ」

海未「そうですね。 ではまずほのかの気をひくことから始めてみましょうか。 たとえばあさごはんにバターたっぷりのホットケーキを食べてきて、そのニオイでつってみるとか」

ことり「えっ、だ、だめだよぉ……。 そんなの身体に悪いってお医者さんに怒られちゃう……」

海未「名案だと思ったのですが……だめですか」

ことり「ほかにいい方法ない? あっ、ことりね、クッキーつくれるんだ! それをほのかちゃんにプレゼントすれば……」


『あっ、うみちゃんだー! そんなところでなにしてるのー?』


海未「おや、ほのかじゃないですか。 こんなところで会うなんてめずらしいですね」

穂乃果「うん。 ちょっとコンビニまでゆきちゃんといっしょにおかし買いに来たんだけどはぐれちゃったみたいで。 だからゆきちゃんそうさく隊のリーダーやってるってわけ!」

海未「ちょっと待ってください。 ゆきほがはぐれたんじゃなくてあなたが置いていかれたのではないですか?」

穂乃果「へっ……? いや、そ……そんなことは……。 あっ、でもゆきちゃんとはぐれるまぎわに『おねえちゃんもチョコでいい?』というふしぎなセリフを聞いたような……」

海未「やっぱり置いていかれたんですね……」

穂乃果「とほほ……。 ほのかのほうがお姉ちゃんなのに……」

海未「おそらくゆきほのことですからもう買い物もすませて家に帰っていると思いますよ」

穂乃果「ほんと? じゃあほのかもかーえろっと」


タッタッタッ


ことり「行っちゃった……。 ほのかちゃん、まるでことりがいないみたいに……」

海未「……っ! そ、そんなことないですよ! ほら、あせるとまわりが見えづらくなるというじゃないですか! きっとそのせいですよ!」

ことり「そう……だといいけど。 はぁ……。 ことりもあんなふうに走ってみたい……」

海未「それは……」


ことり「しゅじゅつ……受けよっかな」


海未「え……?」

ことり「しゅじゅつ受けたらね? このひざもなおるかもしれないんだって」

海未「それは本当ですか!? それならぜったい受けたほうがいいですよ! というよりなぜ今まで受けなかったんです!?」

ことり「だって怖いもん……」

海未「……あっ……。 そ、そうですよね……、ごめんなさい」

ことり「でもね、ことりもうこんな生活はいやなんだ……。 体育の時もみんなが楽しそうにしてるのをきょうしつのまどから見てることしかできない……。 おひる休みにみんなといっしょにおにごっこもできない……。 もうやなの……。 だから今日おうちにかえったらおかあさんに言ってみる」

海未「ことり……。 えぇ、わかりました。 おうえんしています」

ことり「ありがとう。 それじゃあことりの家もう近くだからここでバイバイだね」

海未「はい。 また明日の朝、むかえに行きますね」

ことり「うん。 いつもありがとう」



海未「さてと、帰ったらまずかんじのドリルをやって、そのあとににちぶのけいこ、それから……」


キィ、コォ、キィ


海未「あれ? あそこのブランコに座ってるのって……」


穂乃果「らんらんらーん、らんらんらーん、らんらららんらんらんらんるー♪」


海未「そんなにたのしそうにブランコに乗るのは、ようちえんじかあなたくらいのものでしょうね」

穂乃果「あっ、うみちゃん! 30分くらいぶりだね! ことりちゃんとあそんでるんじゃなかったの?」

海未「気づいてたのですか……。 ならすこしくらい声をかけてあげてもよかったんじゃ……」

穂乃果「えー。 だってほのか、あんまりことりちゃんとなかよくないもん。 いっしょに外であそべないし」

海未「それではあんまり外であそばないわたしともあまり仲がよくないということですか?」

穂乃果「うみちゃんはちがうよ。 だってほのかたちはおかーさんたちのおなかの中にいるときからおさななじみなんだよ? 仲よしとかそんなのはかんけいなしに、姉妹みたいなもんだよ」

穂乃果「んー、わかんない。 そりゃたまにことりちゃんとおしゃべりするし、そのときは楽しいよ? でもほのかはずっときょうしつでおとなしくしてるより外であそぶほうがすきなの。 うみちゃんもことりちゃんもクラスのだれでも知ってるよね? だからことりちゃんとなかよくなっちゃったらぎゃくに気をつかわせちゃうかなーって」

海未「いがいです。 いつもなにも考えてなさそうなあなたでもいちおうことりに気をつかってくれていたのですね」

穂乃果「まぁね」


『ほのかちゃーん!』


穂乃果「ん? あっ、えりちゃんだー!」

絵里「ねーねー、なにしてるの?」

穂乃果「ブランコであそんでたらうみちゃんが来ておはなししてたんだー」

海未「こんにちはえりちゃん。 おつかいですか?」

絵里「ええ。 毎度のことながら、ほむらまでおまんじゅうを買いに。 そうだ。 ほのかちゃん、うみちゃん、これからここで遊ばない? まだ暗くなるまで時間あるし」

穂乃果「いいよ! あそぶあそぶ!」

海未「わたしは……これからようじがあるのであそべないです」

絵里「はらしょ……。 うみちゃんも大変なのね。 それじゃあほのかちゃん、ちょっとおうちまでおまんじゅう置いてくるけどついてくる?」

穂乃果「うん! それじゃあうみちゃん、また明日がっこーでね!」

海未「……ええ。 さようなら」


ヒュー


海未「……ふぅ。 6月とはいえまだ夕方はすずしいですね。 これから夏ほんばんにむけて一日中あつい日がつづくと考えたらいやになってきます……」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・


海未(あの日穂乃果はああ言ってましたけど、中学生になってあまり外で遊ぶことがなくなってもあの子がことりと親しくなることはなかった……)

海未(もしことりと穂乃果もお互いを親友と呼べるくらいの存在になっていたら……)


『海未ちゃんにとっては……彼女のことりよりも生まれた時からの幼馴染の方が大事なの……?』


海未(穂乃果のことをあんなふうに誤解することもなかったのでしょうか……)



ことり「……ん」

海未「おはようございます」

ことり「海未……ちゃん?」

海未「はい。 膝は痛くないですか?」

ことり「うん……」

海未「元気がないですね。 もしかして先ほどのことを気にしてます?」

ことり「それもあるけど……懐かしい夢を見たんだ」

海未「夢?」

ことり「うん。 小学生のときに手術を受けて、失敗したときのこと」

海未「……あぁ」

ことり「ほんとおかしな話だよね……。 成功率90%以上の手術が失敗するなんて。 新人の外科医さんが間違って神経切断しちゃうんだもん、そのせいで膝だけじゃなくて膝から下までの全部の感覚なくなっちゃうし、そんなことって現実じゃ絶対にありえないと思ってたのに。 ほんと漫画や映画の世界の中だけにしてほしいよね……」

海未「ことり……」

ことり「こんな再手術もできないくらいひどい状態になって泣いてることしかできなかったことりに、あの病室で海未ちゃんはこう言ってくれたんだよ」


ことり「『わたしがあなたの足になります。 だからあなたの足はぜんぶで3本、ふふ、しゅじゅつ失敗どころか大成功じゃないですか』って」


ことり「ことりはその言葉に救われたの。 だから海未ちゃんには忘れただなんて無責任なこと言わせないよ」

海未「……もちろん、覚えています」

ことり「よかった♪ 小さい頃はあまり深く考えてなかったけどさ、あの言葉ってつまり海未ちゃんは一生ことりと一緒にいてくれるっていう意味でもあるよね?」

海未「そ、それは……」

ことり「……違うの? ねぇ、違うなんて言わないよね? じゃないとことり…………死んじゃうよ?」

海未「……っ」

ことり「どうせ何言ったって海未ちゃんはUTXに転校してきてくれないんだろうし、それならことりにだって考えがあるんだから」

海未「な、なにをするつもりです……?」

ことり「ふふっ、それはそのときになってからのお楽しみだよ」

海未「……彼女の私にも隠すようなことなのですか?」

ことり「こんなときだけそんなこと言うなんてずるいよ。 さっきの海未ちゃんだってちゃんと答えてくれなかったのに、ことりだけが本当のこと話してあげると思ってるの?」

海未「あなたは優しいですから」

ことり「本当にずるい……。 そんなこと言われたらことり……」

海未「では……」

ことり「ふふっ、でも教えない♪ そのときになって海未ちゃんが目を真ん丸くして驚いてる顔が見たいんだもん。 それにね? ことりって実はすごく意地悪なんだから♪」

書き溜めのために逃げるように去ります



穂乃果「それでねー、絵里ちゃんったらどうしたと思う!? 私の作ったチョコ大福全部食べちゃったんだよ!? お手洗い行ってるほんの少しの間に! 帰ってきたとき絵里ちゃんの顔リスみたいになってて可愛かったけど、ひとつくらい残しといてくれてもよかったじゃん……」

海未「ふふっ、それだけあなたの作った大福がおいしかったということですよ」

穂乃果「そ、そうかなぁ?」

海未「はい。 私でもきっと全て食べ切ってしまうかもしれません」

穂乃果「20個もあったんだよ? 私の拳くらいの」

海未「そ、それはさすがに……」

絵里「まぁあなたには無理でしょうね」

穂乃果「あっ、絵里ちゃん! おはよー!」

絵里「おはよう穂乃果、海未」

海未「……おはようございます。 まさか全部聞いていたのですか?」

絵里「もちろん。 穂乃果が家を出るときの『いってきます』から全部聞いてたし、見てたわ」

絵里「私の彼女に変なちょっかい出されたら困るもの」

海未「……」

穂乃果「ちょっかい? どういうこと?」

絵里「んー? こういうことかしらね」

穂乃果「やーん、くすぐったいよぉ。 猫じゃないんだからそんなに顎のした撫でないでー」

絵里「ふふふ、いつもかわいいわね穂乃果は」

穂乃果「や、やめてよぉ……、海未ちゃんもいるんだから……」

絵里「海未なら先に行っちゃったわよ?」

穂乃果「え? あ、ほんとうだ」

絵里「もしかしたら私たちの仲の良さに嫉妬したのかもね。 それじゃあもっと他の人にも見せつけられるように手をつないで学校まで行きましょうか」

穂乃果「えー、やだよー」

絵里「嫌なの?」

穂乃果「うん。 だって穂乃果はねー、」

ギュッ

穂乃果「こっちのほうがいいんだもん♪」

絵里「も、もう、そんなにくっついたら歩きにくいわよ?」

穂乃果「いいの! 絵里ちゃんの腕って抱き心地いいし」

絵里「穂乃果がそれでいいなら……」

穂乃果「それじゃ行こっか!」

絵里「ええ」



理事長「あら、穂乃果ちゃんに絢瀬さんじゃない。 おはよう。 ちょっといい?」

穂乃果「り、理事長! あの……また私怒られるようなことしましたか……?」

理事長「いえ、今日は違うわ。 お父さんとお母さんに新作のお饅頭おいしかったって伝えておいてほしかったのよ」

穂乃果「ほ、本当ですか!? よかったー、実はあれ私と雪穂で考えたやつなんです!」

理事長「それはすごいわね。 また学校の掲示板に広告貼っておいてもいいかしら」

穂乃果「ぜひ! 理事長がうちの常連さんになってくれて、しかも広告してくれるからそのおかげでお客さんも増えて嬉しいってお母さんたちも喜んでましたから!」

理事長「いえ、私が好きでやってることだから。 おいしいものはみんなで共有したいものね」

穂乃果「理事長……!」

絵里「」プクー

理事長「あ、ごめんなさいね絢瀬さん。 穂乃果ちゃん取っちゃって」

絵里「悪いと思ってるなら穂乃果を返してください」

理事長「ふふふ、本当に仲がいいのね。 まるでうちの娘たちを見てるみたいだわ」

穂乃果「理事長、娘さんいたんですか?」

理事長「ええ。 ちょうどあなたと同い年よ。 知らないってことは小学校別々だったのかしら? そうそう、本当はこのことは生徒に教えちゃいけないんだけど……ちょっと耳貸し手もらえる?」

穂乃果「?」


理事長「…………」


穂乃果「えっ? 私たちのクラスにてんこ」

理事長「しーっ。 さっ、鐘もなっちゃうし早く教室行ってらっしゃい」

穂乃果「はい。 それでは!」

絵里「失礼します」



海未「……」

海未「私にはことりがいるのに……、……くっ、なぜこれほど非力なのでしょう……。 本当に……こんな私が嫌いです……」


穂乃果「あーいた! もぉ、海未ちゃん! なんで先に行っちゃうのさー!」

海未「穂乃果……」

穂乃果「海未ちゃんと絵里ちゃんって別に仲悪く無いよね? それじゃああのまま3人一緒に行けばよかったのに!」

海未「…………ごめんなさい。 弓道の朝練があったの忘れていまして」

穂乃果「うそ! 海未ちゃんが朝練忘れるなんてありえないもん!」

海未「私にだって物忘れの一つや二つありますよ」

穂乃果「ううん、嘘ついてるってわかるよ。 私、海未ちゃんのことだったらなんでもわかるんだから。 海未ちゃん嘘つくときだけ眉間のシワの数が違うんだもん」

海未「そうだったのですか? まったく気づきませんでした……。 まぁ確かに朝練のことは嘘です」

穂乃果「ほーらねっ!」

海未「気を使ってあげたのですよ。 穂乃果と絵里は恋人同士ですし、私がいたら二人の時間のお邪魔になってしまいますから」

穂乃果「そんなことな……」

キーンコーンカーンコーン

海未「ほら、先生が来ますよ。 席に戻りましょう」

穂乃果「……はーい」


『はい、みんなおはよう』

穂乃果「おはようございます!」

『相変わらず元気がいいな高坂』

穂乃果「えへへ、転校生の子にも元気があって楽しいクラスだと思われたいですし」

海未(……転校生?)

『転校生? 転校生ってなんのこと?』ザワザワ

『なんだ、知ってたのか。 あと思われたいです、だったら普段は違うみたいだぞ』

穂乃果「はっ!? しまった!」

『ははは。 じゃあ早速入ってもらおうか。 入って、どうぞ』

ガラガラ

カツン、カツン

海未「……っ!?」ガタン

穂乃果「海未ちゃん?」

海未「な、なぜあなたが…………!?」

『う、うそ……!? あれってアイドルの……』

『絶対そうだよね!? 片翼の天使、』


「初めまして……じゃない人もいると思いますけど。 私、南ことりっていいます。 これからよろしくおねがいします」

穂乃果「南、ことり? 片翼の天使?」

『ご存知、ないのですか!? 』

穂乃果「……えっ!?」

『彼女こそ、左脚に障害を持ちながらもその愛くるしい容姿、まるで小鳥のさせずるような歌声で人々の心を掴み、スターの座を駆け上がっている、現代に舞い降りた片翼の天使、ミナリンスキーちゃんです!』

穂乃果「ミナリンスキー……は知らないけど、中学まで一緒のだったあのことりちゃん、だよね?」

ことり「……穂乃果ちゃん、覚えてたんだ」

穂乃果「当たり前だよ。 幼稚園も小学校も中学校もずっと同じクラスだったんだし」

ことり「……」

カツン、カツン

ことり「ねぇ」

『は、はい! なんですか!? あ、あの……よかったらサインもらっても……』

ことり「そこの席変わってくれない?」

『えっ?』

ことり「私、海未ちゃんの後ろがいいの。 ダメかな?」

『い、いえ! どうぞこんな席でよければ使ってください!』

ことり「ありがと♪ あなたがいい人でよかった」ニコッ

『はぐぁ……!』ズキューーン

『で、でたぁ! ミナリンスキーの秘技のひとつ、《ミナリンスマイル》! やっぱり生で見たら迫力が全然違う!』

ことり「海未ちゃん」

海未「……」

ことり「ふふっ、開いた口が塞がらないって感じかな? まさかことりの方から転校して来るとは思わなかったでしょ?」

海未「どうしてこんな……急に……」

ことり「急じゃないでしょ? あれからもう1日も経ってるんだから」

海未「……そうですよね。 あなたの母親はこの学校の理事長ですし、手続きなどもすぐに終わりますよね」

穂乃果「理事長? ……あっ、理事長の娘さんってことりちゃんのことだったんだ!」

海未「知らなかったのですか! 名字も一緒ですし、顔もそっくりでしょうに……」

穂乃果「いやー、あはは……」

ことり「ねぇ海未ちゃん。 これからはずっと一緒にいれるよ。 朝もまた一緒に学校行こうね。 移動教室も一緒だよ。 帰るときも寄り道しながら帰ろ? あっ、中学のときと違ってお昼ご飯も2人で食べられるんだ♪ 私屋上で食べてみたいな!」

海未「こ、ことり……今はまだHR中ですしそういうことは……」

『……』

ことり「あっ、……ごめんなさいっ」

穂乃果「2人ってすごい仲が良いんだね?」

海未「……えっ? いや、そういうことは……」

穂乃果「……あ! わかった! もしかして2人は付き合ってるとか!」

海未「なっ……!」

『え!? それ本当!? あのミナリンスキーには恋人がいた!?』

『しかもそれは私たちと同じ学校同じクラスの園田さん!? ……あれ、なんかお似合いかも』

『海未ちゃんって凛々しいし、そこらへんの男子と比べたら格段に海未ちゃんのほうが格好いいもんね』

『これは捗りますねぇ』


『こらお前たち! 静かにしろ! 南、恋人と同じクラスになれて嬉しいのはわかったが、時と場を弁えるように。 いいな?』

ことり「はい……。 本当にごめんなさい……」

『あと高坂は反省文な』

穂乃果「えっ!? いつにも増して私への風当たりが厳しいですよ先生!」

『口答えとは良い度胸だな。 グラウンド走ってこい』

穂乃果「理不尽すぎぃ!」

『とまぁ、高坂はこんなバカみたいなやつだけど一応生徒会役員だし、このクラスの中では一番この学校について詳しいから困ったことがあったらコイツに聞くといい』

ことり「はい! ……またよろしくね、穂乃果ちゃん」

穂乃果「……? う、うん」

『それじゃあ高坂以外はちゃんと授業の準備しておけよー。 特別な連絡はないし以上でHR終わり!』

穂乃果「とほほ……。 なんで私ばっかり……」

穂乃果「それでー、あとはここが最後かな。 アルパカ小屋だよ」

アルパカ「メェー」

ことり「うわぁ……かわいいっ! 食べちゃいたいくらい!」

アルパカ「めぇ!?」ジタバタ

ことり「う、うわぁ!」

海未「ことり! あんまりその子たちを刺激しないでください! それにアルパカの肉はあまり美味しくないですよ! お腹を壊してしまいます!」

アルパカ「ブルルルルルフフウゥ」

ビシャッ

海未「……ひっ」

穂乃果「わー! 海未ちゃんがツバまみれに!」

ことり「た、大変! えっと、ハンカチハンカチ……」

「これを使いなさい」

ことり「あ、ありがとうございま……」

絵里「あら、あなた……もしかして南さん?」

ことり「えっ……? えっと……」

絵里「あぁ……あまり話したことないからわからないわよね。 絢瀬絵里よ。 小学校と中学校も一緒だったんだけど……」

ことり「絵里、先輩? あっ、穂乃果ちゃんや海未ちゃんと仲が良かった……」

絵里「あら、そこまで覚えててくれたのね。 そうよ。 私も一応穂乃果や海未と幼馴染になるのかしら」

穂乃果「ちょっと! 自己紹介はいいから海未ちゃんを拭いてあげて!」

ことり「あ、忘れてた! これ借りますね!」

絵里「ええ。 どうぞ」



海未「……はぁ」

穂乃果「……くしゃい」

海未「」ギロッ

穂乃果「……ひ、ひとを睨む前にシャワー浴びてくればいいのに」

海未「……今日はもう帰るだけですしいいんですよ。 部活がオフで助かりました……」

絵里「それにしてもあのミナリンスキーがうちに転校してくるなんてね。 UTXが嫌になったとか?」

ことり「いえ、私海未ちゃんと一緒にいたくって……」

絵里「ふーん、それで……。 ずいぶん思い切ったことしたわね。 やっぱり愛の力は偉大なのよ穂乃果」

穂乃果「そこは愛は盲目なのね、につながると思うんだけども」

絵里「何言ってるの穂乃果。 かしこい私がこの世界のルール、私の言うことは全て正しいのよ」

穂乃果「おっ、そうだね」

絵里「それじゃあ私たちは生徒会室に行きましょうか。 希を一人で待たせちゃってるし」

穂乃果「うん。 それじゃあまた明日ね、海未ちゃん、ことりちゃん」

海未「ええ。 また明日」

ことり「……うん。 ばいばい」



海未「ことり、疲れてませんか?」

ことり「うん。 これでも鍛えてるからね。 中学までのときみたいにすぐへばったりしないよ」

海未「そうですか。 そういえばアイドルの方はどうするのです?」

ことり「……あ」

海未「あ、じゃないですよ。 まさかマネージャーさんにも黙って転校してきたんですか?」

ことり「……ほら、愛の力は偉大だから……」

海未「えいっ」ペシッ

ことり「いたっ……! なにする……」

海未「やめちゃダメですよ、アイドル」

ことり「……。 どうして? アイドルやめれば放課後も休日も一緒にいられる時間もっと増えるんだよ……?」

海未「それでもです」

ことり「ことりね、別に好きでアイドルやってるわけじゃないんだよ……? 海未ちゃんと一緒にいられない時間を埋めるための……そう、部活動みたいなものだし。 だからやめてもそれで海未ちゃんとの時間がたくさんできるなら未練も後悔もなにも残らないし……」

海未「うーん、そうですねー。 私はみんなから愛されてるミナリンスキーも、私の彼女である南ことりもどっちも好きなんです」

ことり「……?」

海未「今朝も見たでしょう? アイドルのあなたと私が付き合ってると皆が知った瞬間のあの驚きよう。 こう言うと小さな人間に思われるかもしれませんが、あれってけっこう私にとっては気持ちいいのです」

ことり「……」

海未「あなたには誰もが羨む私の最高の彼女であってほしい。 私自身はことりの誇りになってるかわかりませんが……。 自分勝手なこと言ってごめんなさい」

ことり「……ううん! 海未ちゃんはことりの自慢の恋人だよ! 優しいし強いしかっこいいし、ことりのこと守ってくれるから……!」

海未「そ、そう言われると背中が痒くなってきますね。 ……私のことそんな風に言ってくれてとても嬉しいです」

ことり「……ねぇ、海未ちゃん。 私、海未ちゃんの自慢の彼女でいられるようにこれからもアイドルがんばるよ。 でもね、これだけはわかっていて」


ことり「ことりにとって、この世で海未ちゃんより大切なものはないから」


海未「……はい」


ことり「……あはは、なんだか恥ずかしくなってきちゃったね」

海未「そ、そうですね……」

ことり「ことりこれからちょっとUTXにいってマネージャーさんに謝ってくるよ。 だから海未ちゃんは先に帰ってて」

海未「いえ、私も付き添いますよ」

ことり「ううん、大丈夫。 用事が終わったらすぐ帰るから、ね? それにそのツバの臭い漂わせながら秋葉原の人混みを歩くの?」

海未「……すっかり忘れていました」

ことり「ふふっ、それじゃあ家に着いたら連絡するね! ばいばい!」

海未「ええ。 気をつけるのですよ」

カツン、カツン

海未「さて帰りましょうか」



ことり「アイドルのことりは海未ちゃんの自慢の彼女♪ 海未ちゃんはことりを守ってくれる騎士様みたいに凛々しい彼女ー♪ だからこれからもことりはがんばる!」


ことり「………………たとえ海未ちゃんがうそつきでも……、ことりにとってはかけがえのない人だから」

書き溜めに矛盾があったので訂正してきます
ごきげんよう



【明日からはことりと一緒に行きますので別々に行きましょう】

【えー! 3人でいけばいいでしょー?】

【あなたには絵里がいるでしょう】

【じゃあ4人は?】

【……いえ、遠回りになりますしやはり別々に行きましょう】

【……はーい。 それじゃあまた明日学校でね】

【はい。 おやすみなさい】

海未「……」チラッ

海未「……もう9時なのにことりから連絡が来ないですね。 どうしたのでしょうか。 ……まさか事故にあったとか……」

海未「心配になってきました。 こちらから電話をして……」

『おーい海未ー! テレビにことりちゃん出てるぞー』

海未「テレビ? 今日ってこの時間に音楽番組ありましたっけ?」

海未「今行きまーす!」


『ミナリンスキーさん、今回の電撃引退についてまだ理由を明かしていないそうですが、あなたを支持していた多くのファンの方のためにもそこは明確にしておいた方が良いかと思われますが』


海未「……ニュースにことりが……?」

海未(そんなことより今、この記者なんて言いました……? い、引退……?)

ことり『ごめんなさい。 たとえファンのみなさんのためであっても、こればっかりは話すことができません』

『ではマネージャー! あなたはミナリンスキーの引退についてどのようにお考えで!』

マネ『……ミナリンスキーは高校1年生のときほとんど学校に通うことができなかったので、本人はアイドルをやめて普通の女子高生に戻り高校生活を楽しみたい、と考えているようです。 私は彼女の親でもありませんし、彼女がやめたいというのならこのままアイドルとして縛り付けておくことはできません』

『はい! 質問です! 我が社が独自に調べたことなのですが、本日ミナリンスキーはそれまで通っていたUTX高校から籍を外されたようですね。 そのことと何か関係性は?』

ことり『……』

『ミナリンスキーさん! 答えてください!』

ことり『マネージャーさん』

マネ『……ええ。 では会見はこれで終了とさせてもらいます』

『ま、待ってください! 我々はまだ聞きたいことがたくさん……!』

マネ『……もう彼女はアイドルではなく、ただの高校生ですよ。 彼女には早く家に帰って勉強する、という学生の本分に務めてもらわなくては』

ことり『みなさん、今まで本当に暖かいご声援ありがとうございました。 それでは、さようなら』



「あら……。 ことりさん、アイドルやめちゃうのですね。 最近人気が出てきたのにもったいない気もしますけど」

「でも本人が決めたことならしょうがないんじゃないか。 高校生活は長くはないのだし」

海未「ことり……どうして」



ことり「海未ちゃんおはよっ!」

海未「……」

ことり「海未ちゃん? どうしたの?」

海未「……見ましたよ、昨日の会見」

ことり「あぁ、見てくれたんだ。 どうだった? ことりの最後のテレビ出演になったわけだけど」

海未「……あの後言ってましたよね。 アイドル頑張ると。 なのにどうして……」

ことり「うーん、海未ちゃんはことりと何年間も一緒にいるのにことりのことなにも知らないんだね」

海未「どういうことです……」

ことり「昨日も言ったけど、ことりはすっごく意地悪なの。 海未ちゃんの驚く顔や泣いてる顔、そう! 特にその自分の思い通りに行かなくて眉にシワ寄せて悔しそうにする表情なんか最高に好きなんだよ!」

海未「……」

ことり「アイドルやめたのだって海未ちゃんのその顔が見たかったからだし、そもそもあそこで海未ちゃんがなんと言おうが結局はやめるつもりだったよ。 歌ってる暇なんかあったら海未ちゃんの部活のお手伝いした方が何倍有意義な時間を過ごせるか。 答えなんて考えなくても見えてる」

海未「……そうですか」

ことり「それにね、知ってるんだよ。 海未ちゃんがことりにアイドル続けさせたかったのは……ことりのいない時間なら穂乃果ちゃんと一緒にいれるからでしょ?」

海未「……っ」

ことり「……わかりやすい。 図星なんだね。 言い訳の一つも出てこなかったの?」

海未「……ちがいます」

ことり「なに? 違うって言うの? じゃあ聞くけどさ、先週の日曜日、何してた?」

海未「……! そ、その日は……」

ことり「確か日舞のお披露目会……だったっけ?」

海未「そ、そうです! そのせいで一日中家に閉じ込められてて……」

ことり「うそだよね」

海未「……え?」

ことり「うそだよね、それ」

海未「い、いえ……うそなわけ……」

ことり「じゃあその日秋葉原で穂乃果ちゃんの隣を歩いてた黒髪長髪で敬語使ってしゃべる女の子は一体誰だったのかな?」

海未「……!」

ことり「海未ちゃんは日舞のお披露目会だったんでしょ? それじゃあ違うし、じゃあ絢瀬先輩かな? でもあの人って黒髪じゃなかったよね」

海未「……さ、さぁ。 私と同じ髪型の人なんていっぱいいますから……」

ことり「……ことりのこと騙しきれると思ってる?」

海未「だ、騙すもなにも……私はなにも知りませんから……」

ことり「これを見てもまだそんなこと言える?」

ピッ


『よかったねー、今日はいろいろ買い物ができたよ』


海未「……こ、これは……っ!」

ことり「ふふっ、いったい何が映ってるのかな?」

海未「なぜ……こんなこと……っ!」

『はい。 あなたを連れてきたのは正解でした』

『でもなんで・・・ちゃんは一緒じゃだめだったの? きっと3人だったらもっと楽しかったのに』

『……いいじゃないですか、たまには2人きりで、ってことで。 私たちは生まれる前からの幼馴染でしょう?』

『うーん、まぁそうだね! 本当に今日は楽しいデートだったよ! ありがとっ♪』

『で、デー……!?』

『えっ? 2人でおでかけしてるんだからデートでしょ?』

『……』

『・・・ちゃん?』

『あ、あの……・・・。 私、あなたに伝えたいことがあるんです』

『ん? なに?』

『わ、わた……あ……たの…………す……』

ことり「ありゃ、もう声は聞き取れないや。 でも顔まで見えちゃったんだしまだ言い逃れする?」

海未(どうして……どうしてあなたは……)

ことり「ずっと見てたし、ずっと撮ってたよ。 その日、海未ちゃんの演舞が見たくて海未ちゃん家行ったけど、そんなものないって言われてもしかしたら……と思ったら本当にこんなことになってるんだもん」

海未「……」

ことり「迂闊だったね。 ……ねぇ、今のことりの気持ちわかる? 大好きな海未ちゃんに裏切られたこの気持ち……。 胸がすごく苦しくて息がしづらくて、身体に力が入らない、声も震えてきた……、今にも泣いちゃいそう。 ねぇ、わからないかな?」

海未「……ごめんなさい……」

ことり「ごめんですむと思ってるの……? そうだ、最後穂乃果ちゃんになんて言おうとしてたの?」

海未「それは……」

ことり「教えて。 どうしてことりに嘘ついてまで穂乃果ちゃんとお出かけ行ったの……? その日ことりは久しぶりのお休みだったのに……どうしてことりじゃなかったの……? 穂乃果ちゃんには絢瀬先輩がいるのに……どうしてなの……!?」

海未「……」

ことり「またそうやって黙っちゃうんだ……」

海未「……本当にごめんなさい」

ことり「やめてよ……謝らないで……。 もう嫌だ……。 海未ちゃんに捨てられたらことりはこれからどうやって行きていけばいいの……? アイドルという地位も捨てて、UTXでの人脈も断ち切って音ノ木坂学院に転校して来たのに……そこで最愛の彼女にまで見捨てられたら……本当にことりはひとりになっちゃう……」

海未「す、捨てたりなどしません……! あなたは私の彼女……それはこの先もずっと変わりません!」

ことり「でも所詮は穂乃果ちゃんの代わりなんじゃないの? 穂乃果ちゃんが絢瀬先輩と付き合ったから……付き合っちゃったから海未ちゃんは仕方なくことりと付き合ったんじゃない?」

海未「違います! あなたのことは好きです! 穂乃果のことよりも……ずっと!」

ことり「……じゃあさ、証明してよ」

海未「証明……?」

ことり「うん。 海未ちゃんがことりのこと好きだって証を見せて」

海未「ど、どうすればいいのですか……?」

ことり「今ことりのお家ね、お父さんもお仕事行ってるし、お母さんも学校にいる。 ふふっ、何が言いたいかわかるでしょ?」

海未「……」

ことり「もうことりたち、付き合って3年も経つんだよ? だから……もうそろそろ我慢も限界なの。 海未ちゃんの声を聞く度に身体が疼いて、触られる度に神経が刺激されて、……おかしくなっちゃいそう」

海未「でも学校は……」

ことり「1日くらい大丈夫だよ。 ……それじゃ、部屋行こっか」

海未「……」


ファサッ……

ことり「うーん、カーテン閉めても少し明るいね。 でもこれくらい明るいほうが海未ちゃんの顔が見えていいかも♪」

海未「……」

ことり「ね、来て? ことりのことギュってして?」

海未「……はい」

ことり「……んっ、あったかい……。 いい匂い。 好き」

海未「私も好きですよ」

ことり「大好き……んんっ……!」

海未「んちゅっ……んぶっ……ことり……、はんっ……」

ことり「うみ……ひゃん……あ、っん……ぷちゅ……」

海未「…………ぷはっ」

ことり「あはっ、とうとう海未ちゃんのほうからなにも言わなくてもキスしてくれた……! すごく嬉しい!」

海未「いつも勇気が出なくて……ずっと待たせてしまいましたね」

ことり「……あっ、糸ひいてる。 ううん、いいの。 そういえば今までいっぱいキスしてきたのにディープキスするのは初めてだね。 お互い身体は舐めあったことあるのに、おかしっ」

海未「……では今日はもっといろんなところを舐めてみましょうか」

ことり「いろんなところ?」

海未「ええ。 ……制服、脱ぎましょうか」

ことり「……うん……!」

海未「きれいですよ」

ことり「……やだ、はずかしい……」

海未「……では、触りますね」

ことり「うん……。 ……、ん……。 あんまりおっきくなくてごめんね……ぁん……。 さわっててもつまらないでしょ……」

海未「そんなことありませんよ。 私のよりも全然大きいですし、形も良くて羨ましいです……。 そちらこそ痛くはないですか? こんなふうに触るのは初めてですし、加減がわからなくて……」

ことり「うん、大丈夫だよ。 海未ちゃんにさわられてるって考えたら……すごく気持ちいい」

海未「そうですか。 では少し強くしますよ……」

ことり「……んっ……! あ……ああ……! やっ、先っぽ気持ちいい……! ……あっ、は、はずかしい……。 こんなおっきな声……今まで出したことないのに……」

海未「かわいいです。 もっとその声を私に聞かせてください」

ことり「……う、うん。 ……聞いて。 海未ちゃんにしか出さないことりのえっちな声、ずっと覚えててね……っ!」

海未「ええ。 ですがこれから毎日しますから覚えてる必要もないですけどね」

ことり「毎日……? 毎日ことりのこと愛してくれるの……?」

海未「はい。 もうことりが誤解したりしないよう、何度だってこうやって愛してあげます」

ことり「……」

海未「ことり?」

バッ

海未「……?」

ことり「ふふっ、交替。 ことりだって海未ちゃんのこと愛したいよ。 それに海未ちゃんだけ制服脱がないなんてずるいし。 今脱がせてあげるね」

海未「やっ、こ、ことり……自分で脱ぎますからそこをどいてくださ……っ」

ことり「やだ♪ だって海未ちゃんの恥ずかしがってる顔可愛いんだもん。 海未ちゃんの普段見せない女の子なところ、ことりにいっぱい見せて? ……あとさ、実は穂乃果ちゃんとももうえっちなことしたんでしょ? じゃあがんばって穂乃果ちゃん以上に海未ちゃんのこと気持ち良くできるようにがんばるね!」

海未「…………。 ……はぁ」

ことり「……あ、ごめん……。 怒らせちゃった……?」

海未「……はい、怒りました」

ギシッ

ことり「……っ!?」

海未「今ここにいるのはあなたと私だけ。 だから穂乃果の話はなしです。 いいですね?」

ことり「う、うん……」

海未「それとこれから先は一切主導権を握らせません。 私もいい加減あなたのその態度が少々癇に障りましたので」

ことり「だ、だって海未ちゃんが穂乃果ちゃんに浮気するから……ことり寂しくて……」

海未「……浮気、ですか。 ではちゃんと教えなければあなたは最後まで誤解したままでいそうなので、全部話します」

ことり「……え?」


海未「あの日私はたしかにことりに嘘をつきました。 でもそれはあなたに休みの日はちゃんと休んでほしかったからです。 自分で気づいてなかったのかもしれませんが、前日の夜に会った時、目の下のクマがひどかったのですよ」

ことり「そ、そういえば先週は徹夜が続いてあまり眠れてなかったから……」

海未「それなのに私の思惑を完全に無視して私の買い物について来てしまったのですよね。 私の気遣いもお・か・ま・い・な・し・に! 真意を伝えなかった私にも悪いところはあったかもしれませんが……それでもそこまで私のことが信じられませんでしたか?」

ことり「ごめんなさい……。 で、でもなんで穂乃果ちゃんとデートになんか……!」

海未「……ですから、あれはデートというかなんというか……あなたの思ってるようなものではありません。 穂乃果を連れて行ったのだって、出かけるために家を出た瞬間たまたま鉢合わせしてしまい、それでなんだかんだでついてくることになってしまったからです。 ……あとことり、今日が何日か言ってみてください」

ことり「今日……? えっと、9月12日?」

海未「はい。 なんの日ですか?」

ことり「えーっと……。 ………………あっ」

海未「ほ、本当は学校が終わってからどこか遊びに行ってそのときにサプライズで……と思っていたのですが。 ……もらっていただけますか?」

ことり「こ、これは……?」

海未「開けてみてください」


ことり「うん……。

うわぁ、キレイなネックレス……」


海未「誕生日おめでとう、ことり。 それ、大切にしてもらえると嬉しいです

ことり「あれ? そういえば海未ちゃんも……」

海未「はい、お揃いですよ。 今朝からつけてたのですが……きづきませんでした?」

ことり「うん……それどころじゃなかったから……」

海未「このネックレス、二つ合わせて12万ですよ? 好きでもない相手に高校生がこんな金額出すと思いますか?」

ことり「う、ううん……」

海未「それではいい機会ですし、このネックレスに誓わせてもらいますね。

私はこの先あなたのことを不安にさせるようなことはしません。 あなたに涙を流させないために、あなたが苦しい気持ちにならないために、私はもっともっと強くなって、あなたを守り続けます。

……それだけじゃ不十分でしょうか?」

ことり「…………ぐすん」

海未「……え!? あ、あの……あなたの希望があるのでしたらそれに変えます! だからなんでも言ってください!」

ことり「……う、ううん……違うの……。 ただ……嬉しいのとホッとしたのが一緒に来て……涙が止まらないんだ……あはは。 …………うっ、ヒック……こんな幸せなんだから……泣く必要なんてないのにね……」

海未「ことり……」

ことり「それじゃあ私もこのネックレスに誓うね。

私はこの先ずっとどんなことがあっても海未ちゃんのことを信じます。 そして海未ちゃんの最高の彼女でいるためにもっともっと自分を磨き続けます。 ……海未ちゃんが余所見なんてできなくならくらい、ね?」

海未「……ふふっ、私は最初からあなたのことしか見ていませんよ。 ではお互い誓いを破ったらお仕置きですね」

ことり「そうだね。 ……えへっ」

チュッ……

ことり「好き……」

海未「私もですよ。 ……では、続きをしましょうか」

ことり「うん……。 ……て、あっ!! ちょっとまって!」

海未「……はい?」

ことり「はい?じゃないよ! あのケータイで撮った動画! 最後海未ちゃんは穂乃果ちゃんになんて言ってたの!?」

海未「……さっそく誓いを……」

ことり「ち、違うの……! これが最後だから……これを聞いたら今までの弱いことりとはバイバイできるから!」

海未「そうですか。 ですがそんなに大事なことではありませんよ? むしろ恥ずかしいのでできれば教えたくないのですが……」


『あ、あの……穂乃果。 私、あなたに伝えたいことがあるんです』

『ん? なに?』

『……実は私、ひと月前に販売してた数量限定商品、わ、わたあめ味のお饅頭の再販……ずっとたのしみにしてるのです。 ……いつごろになりますか?』

『……海未ちゃん太るよ?』


海未「以上です。 見てたのならわかると思いますが、この後は二人とも家に帰りましたよ」

ことり「…………は、……は……はは……」

海未「大丈夫ですか?」

ことり「……わかったよ、きっとことりはおバカさんなんだね。 勝手に勘違いして勝手に疑って……海未ちゃんはずっと海未ちゃんのままだったのに……」

海未「そうですよ。 本当にあなたはおバカではなく大バカです」

ことり「うん……。 こんな大バカなことりだけど、今日はずっと一緒にいようね」

海未「今日どころか明日も明後日も……これからもずっと一緒です。 あ、そうだ。 小さい頃のあの病室での約束、今ここで取り消しにさせてください」

ことり「……えっ、どうして……?」

海未「今だから言いますが私はあなたの足になるつもりはありません。 あなたの片足は動かないかもしれませんが、私はあなたの足の代わりではなく、園田海未というひとりの人間としてあなたの辛い時に支え、幸せにするためにこれからもあなたと一緒にいます。
これはペンダントの誓いなどではなく、私園田海未が最愛の恋人南ことりの心へ刻む新たな約束です。
ことり、愛してますよ」

ことり「…………も、もぅ、反則……♪ ことりもね、海未ちゃんのこと愛してます……!」

ここでまた切らせてもらいます
ここが折り返しになりそうです

・・・・・・

ピロリロリーン、ピロリロリーン

海未「……ん、いつの間に眠って……。 もう夕方頃でしょうか」

ピロリロリーン、ピロリロリーン

ことり「んん……クシュン!」

海未「……ちゃんと布団着ないと風邪引きますよ」

ピロリロリーン、ピロリロリーン

海未「……うるさいですねさっきから。 電源を切っ……」


【絢瀬絵里】


海未「……え、絵里……」


【新着メッセージ 54件】


海未「……」



【海未ー? 今日は学校休みなのね。 ちゃんと連絡しておきなさいよー】



【穂乃果が
今日は海未ちゃんいないから寂しいよー
って言ってたわ。 風邪……じゃないなら途中からでも来たほうがいいわよ?】



【海未ちゃんが海未ちゃんが……って、穂乃果は私の彼女なのになんでこんなにあなたの名前が出てくるのかしらね。 これどういうことかしら?】



【返信くらいしたらどう? 穂乃果も連絡もらえないって怒ってたわよ。 南さんもお休みみたいだけど、もしかして逢引? なんちゃって】


海未「……」


【……そう、わかった。 よっぽど私と一緒にいたいのね海未は。 私には穂乃果がいるのに、困ったものね】

海未「……」

ことり「ヘクシッ! ……んぅ……あれ、海未ちゃん?」

海未「……あ、ことり……」

ことり「おはよ。 どうかした?」

海未「……いえ、なんでもありませんよ」

ギュッ

海未「……ことり?」

ことり「もしかしてことりが布団とっちゃったから身体冷えちゃったのかな……? それなら暖めてあげるね」

海未「……っ、あ、あの……っ!」

ことり「んー?」

海未「そ、その……背中に、当たってます……」

ことり「えー? なにがー?」クスクス

海未「……あ、あなたの胸が……って言わなくてもわかるでしょう!」

ことり「うん。 だって当ててるんだもん♪ こうしたらまた海未ちゃんえっちな気分になるかな、って思って」

海未「……」モジモジ

ことり「ふふっ、また……しよっか?」

海未「……さっきまでずっとしてたのによく疲れませね……」

ことり「好きな人とはずっと繋がっていたい。 そうでしょ?」

海未「……はい。 その通りです」

ギシッ

ことり「やん♪ 海未ちゃんったら強引なんだからー♪」

海未「ふふっ、まだまだ1日は終わりませんよ」

・・・・・・

ことり「本当に泊まっていかないの?」

海未「……はい。 親に学校を無断欠席したことがバレてしまいまして……」

ことり「そっか……。 海未ちゃんの家はことりの家みたいに優しくないもんね」

海未「理事長は全て察しすぎで怖いくらいですよ……」


『ことり。 担任の先生に聞いたわよ。 具合悪くなったんならお母さんに連絡くれれば良かったのに…………あ、海未ちゃん。 ……ふーん、お熱だったなら仕方ないわね♪』


ことり「昔からことりのことよく見ていてくれたから……ね。 それじゃあ気をつけて帰ってね。 またあした」

海未「はい。 それでは、」

チュッ

ことり「……!」

海未「ごきげんよう」

スタスタ

ことり「……やだ……、海未ちゃんかっこいい……」



海未「さて、なんと言い訳すればいいのやら……。 お腹が痛くて公衆トイレに駆け込んで、そこで意識を失ってしまった……なんてのは無理がありますかね……」

「正直に言えばいいじゃない。 お家デートしてました、って」キィ、キィ

海未「……!?」

絵里「こんばんわ。 今日は月が綺麗ね。 ……あ、別に深い意味はないわよ?」

海未「なぜここに……」

絵里「久しぶりにおもちゃで遊びたくなってね。 きっと南さんと一緒にいるだろうと思って、わざわざあなたたちの担任に届け物があるなんて嘘までついて住所を聞き出したのよ。 でもさすがに押し掛けるのは迷惑かなって思ったから仕方なくここで順番待ちしてたってわけ。 あんまり長い時間待たせるからブランコの虜になっちゃったわ」

海未「……また、するんですか」

絵里「ええ。 もしかして待ち遠しかった?」

海未「……あなたは気づいていないだけなんです」

絵里「?」

海未「近すぎるが故に見えない……あの子のまっすぐな気持ちに。 それと私はことりのものです。 あなたのおもちゃなどではありません」

キィ……、スタッ

絵里「……ふーん」

スタスタ

海未「な、なんです……」


ドスッ


海未「……か、は……っ!」

ズサッ

絵里「なに偉そうなこと言ってるんだか。 おもちゃはおもちゃらしく黙って主人に使われてればいいのよ。 私はことりのものです、って? そんなの知ってるわよ。 でも他人のおもちゃってなぜか無性に使いたくなっちゃうのよね。 これも一種の愛かしら? ふふふ」

絵里「よいしょ……っと。 ずいぶん重くなったわね海未。 小学生のときの海未ちゃんはもっと軽々と背負えたのに」

絵里「さて、どこがいいかしら。 外だと騒がれたときにめんどくさいし、前みたいに私の家……は今は亜里沙がいるから無理か」

絵里「……」

絵里「……仕方ないわね。 穂乃果の1ヶ月分のおやつ代を使っちゃいましょっと。 そもそも穂乃果が悪いんだからね? 私と一緒にいるのに海未のことばかり話すから……だからいじめたくなっちゃうのよ。 私ったら嫉妬深くて嫌な女ね。 でも穂乃果の彼女でいられるんだからこんな自分でも魅力があるってことだし、そこだけは褒めてあげたいわ」


絵里「301号室の鍵お願いします」



『うみちゃーん? いつまでねてるのー?』

海未(……ん、この声は……ことりですか?)

『おきてよー。 もうみんな外いっちゃったよ?』

海未(お外……それにこの声は……)

『あっ、おきた! おねぼーさんのうみちゃん♪』

海未(なつかしい……。 幼稚園の頃の夢ですね)

ことり「うみちゃんはどうするの? ……ほのかちゃんもお外にいるけど」

海未「いえ、わたしはここにいます。 でないといじけてしまうでしょ?」

ことり「むっ! そんなことないもん! ひとりでだってあそべるもん!」

海未「そうですか? ではわたしはほのかのところへいきますね」

ことり「……あっ……」

海未「……ふふ、やはりあなたといっしょにいます。 そんなにつよくそでをつかまれたら動けませんからね」

ことり「……え? あっ……こ、これはちがうの……」

海未「いいのですよ。 それにわたしもあまり外で走りまわるのは好きではありませんから」

ことり「そう……? じゃあおままごとしよ! ことりがママで、うみちゃんがぱぱ! 今おにんぎょうもってくるね!」

海未「あ、ことり! 歩いたらまたひざいたくしてしまいますよ!」

ことり「だいじょうぶだよ。 走ったりしなかったらぜんぜんいたくないもん!」

海未「ならいいのですが……」

ことり「じゃあはじめるよっ」

海未「はい。 ……ん、こほん。 おまえー、今かえったぞー」

ことり「あっ、あなた♪ おかえりなさい。 おなかの赤ちゃんのぐあいはどうですかぁ?」

海未「……ことり。 知ってるとはおもいますが、おとこのひとは赤ちゃんをうみませんよ?」

ことり「え? そうなの? どうして?」

海未「どうして……ですか? ……うーん、だってわたしもことりもおかあさんのおなかの中からうまれてきたでしょう?」

ことり「でももしかしたら、ことりたちの知らないところではおとうさんのおなかの中からうまれた子もいるかもしれないでしょ?」

海未「……そう言われてみれば。 ではわたしは赤ちゃんがおなかの中にいることにしましょう」

ことり「うん! えっと、赤ちゃんのぐあいはどうですか?」

海未「ああ、すくすくとせいちょうしているよ。 あとすこしでぼくたちとおなじくらいになるんじゃないかな」

ことり「えー、それはないよ。 だってことりたちはおとうさんたちみたいに大きくないでしょ?」

海未「あっ、よくかんがえてみればそうでしたね。 えー、もうすこしでうまれそうかな」

ことり「ほんとう!? これでわたしたちは10にんかぞくですね!」

海未「……ずいぶんおおいですね」

ことり「でもおかーさんは1ねんでこどもがひとりうめるっていってたから、ふたりいれば5ねんでみんなうめるよ?」

海未「わぁ、ことりけいさんはやいですね。 もう九九のべんきょうしているのですか?」

ことり「ううん、だって左手がうみちゃんで、右手がことり。 ふたつあわせて10だもん」

海未「なるほど、ことりはあたまがいいですね」

ことり「ありがとう♪ それよりつづきね! はぁ、はやく赤ちゃんのかおが見たいなぁ」

海未「あとすこしですよ」

ことり「……そうだ! たたいたらすぐにでてきてくれるかも!」

海未「……え? いや、それはさすがに……」

ことり「よいしょ、よいしょ」

パコッ、パコッ

海未「こ、ことり? あまり赤ちゃんにらんぼうしてはいけないときいたことがあるのですが……」

ことり「そうだ! こんどはおにんぎょうさんじゃなくてうみちゃんをちょくせつたたいてみよう!」

海未「い、いやそれはどうかんがえてもおかし……」

ことり「えいっ、えいっ♪」

ポコッ、ポコッ

海未「あ、あはは。 ……くすぐったいですよ」

ことり「えいっ、えぇい!」

バコッ、バコッ

海未「けほっ……。 あはは、ことりってあんがい力あるのですね……」

ことり「よっ、はっ!」

ゴッ、バゴ

海未「あ、いたっ、ちょっと力いれすぎじゃ……」

ことり「よいしょ、よいしょ」

ズコッ、バコッ

海未「こ、ことり……。 い、痛い……」

スボッ、ズボッ

海未「痛い……痛い……! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……!」

ジュボッ、ジュボッ

海未「痛いっ……! 痛いですっ……!」

絵里「えいっ、えいっ♪」



海未「……こと……っ! ……え? え、絵里……?」

絵里「ええ。 なんだか魘されてたみたいだけど大丈夫? それよりどうかしら? さっきから血しかでてこないけど……生理? あっ、もしかして処女だった?」

海未「な、なんのことですか……。 それよりお腹を叩くのをやめてく……」

海未(あれ……? 私なんで裸……)

絵里「叩いてないわよ? 見える? あなたに入ってるディルド」

海未「ディル……」

ズキンッ

海未「……い、痛っ!?」

絵里「おかしいわねぇ、さっきから何回も出し入れしてるのに一向に濡れる気配がないわ。 穂乃果だったらもう腰浮かして失神してる頃なのに」

海未「な、なにをしているのですか!? や、やりすぎです! 今までとは比べ物にならないくらいタチが悪いですよ!」

絵里「比べ物にならないくらい気持ちいいの? それはそうよね、だって海未は私にこうやっていじめてほしかったからメールを無視したりしたんだもんね♪」

海未「違います! あのときはことりと……」

ズボッ

海未「ひっ……!!?」

絵里「あ、すこし濡れてきたわね。 やっぱりさっきは眠ってたから濡れなかったのかしら」

海未「やめ……や、やだ……やめてください……! 気持ち悪い……! 私の身体に変なものを入れないで……っ!」

絵里「ふふっ、海未のその顔……そそるわぁ! 穂乃果には及ばないけど、その次くらいには素敵よ! あなたのその顔を初めて見たときから……私はあなたをいじめるのが楽しくて仕方ないの!」

海未「く、狂ってます……! 今まで散々私に暴力振るってきて、私はすごく痛かったのに……!」

絵里「でも今まで痣を残したことは一度もないでしょ? そこはお礼を言ってくれてもいいんじゃない?」

海未「なにをバカなことを……! 今まではあなたもきっと変わってくれるだろうと信じて耐えていましたが、今回のはさすがに見過ごせません! 警察に通報します……んんっ、あっ……か……、ら……」

絵里「あら、海未もそんな高い声出るのね。 えっと、ここが良かったのかしら」

コツン

海未「や……あぁん! ん、んんっ……! ……や、やめなさい! 冗談で言ってるわけではないですよ!!」

絵里「別にいいわよ。 その手錠と足枷が取れたら好きにすればいいわ」

海未「……! さっきから手足が動かないと思ったら……」

絵里「ねぇ、海未。 気持ちよかった? さっきの」

コツン

海未「……っ!? ……は、はぁ……はぁ……。 ん……はぁ……んっ」

絵里「その表情も素敵……。 声を我慢しながらも快感に顔を歪ませて、憎い相手を睨みながら荒い息を吐くたびに上下する胸……。 そうだ、今のじゃ物足りなくない? 見て見て、ここにすごそうなのがもっとたくさんあるのよ!」

海未「……!? な、なんですか……それ……」

シュイイイイイイイイイイン

ガタ、カタカタカタカタカタカタカタ

絵里「うわぁすごい! こんなのが中に入ったらどうなっちゃうのかしら。 じゃあいれるわよ?」

海未「……は?」

ヌチュッ……

海未「あ、ん……」

絵里「もうこんな太いのでもすんなり入るわね。 たしかスイッチは……これかしら?」

カチッ、ブウウゥゥゥ

海未「………つっ!? あああああ!!?」

ブウウウウウウウウウウゥゥゥゥン

海未「い、いやぁぁぁああああ……!! やだ……やめてください! 壊れちゃいます……っ!! 壊れちゃいます……ってぇぇ!!」

絵里「穂乃果もよくそう言って絶頂迎えるのよ。 私は試したことないけど、本当に気持ち良さそうね」

海未「気持ち良くなど……っ! あ、ああああああああぁぁぁ!!? いやああ!! 止めてください! おねがいします!! 止めてくれたら他の言うことなら聞きますから……っ、おねがいです……っ!!」

絵里「……はぁ、そこまで言われちゃ仕方ないわね」

シュウゥゥン

海未「はぁ……っ! はぁ……っ! ……と、止まった……?」

絵里「これはまだ処女なくしたばかりの海未には刺激が強すぎたかしら。 やっぱり段階を踏むのが大事よね」

ブイイイィィィン

海未「な、なんですかそれ……」

絵里「ローターよ。 知らない? これを海未のここに当ててあげると、」

海未「…………は、はあぁぁあああん!」プシャァァ

絵里「きゃっ!」

海未「……ふぅ、はぁ……、ふぅ、はぁ……!」

絵里「いきなり潮吹くなんて……。 これは調教しがいがありそうね」

海未「そんな……。 私が……失禁するなんて……」

絵里「おもらしじゃないわよ? これは女の子が気持ち良くなると出ちゃうものなの。 ……ね、今の良かったでしょ? もっと素直になって楽しみましょ? ふふふ……」




絵里「どう? おしりにも入ったわよ?」

海未「は、はい……っ! わかります! はぁ、はぁ……すごく気持ちいい……! 私のおまんこでもおしりでもぶっといバイブが暴れててすごく気持ちいいです!」

絵里「ふふっ、もう淫語もためらいなく使うようになったわね。 ここに来たばかりのあなたが今のあなたを見たらどう思うかしら」

海未「そ、それは…………ぜひともこの快楽を教えてあげたいです! 気持ちよさに身を委ねること……それがどれだけ幸せか……あ、あ、あぁぁああん!! イクゥゥ……!!!」

絵里「そうだ、確か今朝から南さんとえっちしてたのよね? 今とどっちが気持ちいい?」

海未「そんなもの比べることさえ烏滸がましい! あんな表面だけ擦り付け合うだけのえっちごっこより、今の本物のおちんちんとしてるようなこのセックスのほうが何倍も、何十倍も気持ちいいです!」

絵里「そう。 それじゃあ今から私の言うこと繰り返してね。 『私、園田海未はこれまでもこれからも絢瀬絵里のおもちゃです! おもちゃのくせにえっちなおもちゃで気持ち良くなってごめんなさい! ことりのことは好きだけど、やっぱりえっちなことのほうが何十倍も大好きです! これからも私はご主人様のためにいっぱい泣いて、いっぱい楽しませてみせます!』って」

海未「はい! 私、園田海未はこれまでもこれからも絢瀬絵里のおもちゃです! おもちゃのくせにえっちなおもちゃで気持ち良くなってごめんなさい! ことりのことは好きだけど、やっぱりえっちなことのほうが何十倍も愛し、て………………」

絵里「どうしたの? 忘れちゃった?」

海未「あ、あの……絵里……? そこにある機械……なんですか?」


絵里「これ? ビデオカメラよ」


海未「な、なぜカメラを……?」

絵里「そんなの決まってるじゃない。 あなたのその姿を記録しておくためよ」

海未「……え、ま、待ってください。 記録って……そんな、いつから……?」

絵里「あなたをこの部屋に運んだときから回してるわ。 あなたが快楽に溺れていく過程もしっかり残されてるの」

海未「……っ!」

絵里「おっと、手錠外してあげたのは好き勝手動いていいからじゃないわよ。 自分の手で自分のアソコにバイブ抜き差ししてるところを撮りたかったからなんだから」

海未「それを……こっちによこしなさい!」

絵里「いやよ。 欲しければ自分で奪ってみれば?」

海未「くっ、どこまでも卑怯な……。言われなくても取ってみせま……っ!」

ガシャン

海未「いっ……」

絵里「残念ね。 足枷もついてるってさっき言わなかった?」

海未「……くっ」

絵里「それじゃあそろそろ帰るわね。 お部屋のお金はちゃんと払っておくから安心して。 それと、もし誰かにこのことを話したりしたら……わかるわよね? あなたは文字通り路地裏アイドルになっちゃうわよ?」

海未「……」

絵里「鍵は手の届く範囲のどこかにあるから、帰りたくなったら勝手に外して帰りなさい。 あっ、そうそう。 私とのえっちなお遊び、穂乃果とシタときとどっちが気持ちよかった? ……ふふっ、それじゃあま?た?あ?し?た♪」

バタン……

海未「……っ!」

絵里「おっと、手錠外してあげたのは好き勝手動いていいからじゃないわよ。 自分の手で自分のアソコにバイブ抜き差ししてるところを撮りたかったからなんだから」

海未「それを……こっちによこしなさい!」

絵里「いやよ。 欲しければ自分で奪ってみれば?」

海未「くっ、どこまでも卑怯な……。言われなくても取ってみせま……っ!」

ガシャン

海未「いっ……」

絵里「残念ね。 足枷もついてるってさっき言わなかった?」

海未「……くっ」

絵里「それじゃあそろそろ帰るわね。 お部屋のお金はちゃんと払っておくから安心して。 それと、もし誰かにこのことを話したりしたら……わかるわよね? あなたは文字通り路地裏アイドルになっちゃうわよ?」

海未「……」

絵里「鍵は手の届く範囲のどこかにあるから、帰りたくなったら勝手に外して帰りなさい。 あっ、そうそう。 私とのえっちなお遊び、穂乃果とシタときとどっちが気持ちよかった? ……ふふっ、それじゃあま・た・あ・し・た♪」

バタン……

海未「……」

ブウゥゥゥゥン

海未「……こんなもの……っ!」ジュボッ

ガシャァン!

海未「……」

海未「……んっく、ヒック……。 う、う……。 ことり以外に身体を穢されるなんて……」

海未「会いたいです……ことり……。 あなたに今の私をめちゃくちゃにほしい……。 さっきまでのことをなかったことにするくらい……激しく愛してほしい……」

海未「ことり……」



海未「鍵……まさか頭のすぐ横に置いてあったなんて……。 そんなことにも気づけないほど私は乱れて……」

海未「……。 ……絵里」


『あんたさえいなければっ! 穂乃果の中にいつまでもいつまでも居座って……いい加減にしてよ!』

『私も……穂乃果とそんな恵まれた幼馴染だったなら……』

『憎い……憎い……! 暴力に訴えるしかない私も……自分の力で穂乃果からあなたを消せない自分も……!』


海未「…………痛っ……」ズキッ



海未「…………ただいま……帰りました」

「海未さん!? こんな時間までいったいなにをしていたのですか!? それより聞きましたよ! あなた今日は学校に行ってないって……!」

海未「……っく、ヒクッ」

ポタッ、ポタッ

「う、海未……さん?」

海未「ご、ごめ……ごめんなさい……母上……っ。 ……どうか……今はひとりにしてもらえませんか……」

「ま、まさか……あなた……」

海未「ごはんはいいです……。 明日はちゃんと学校にいきます……。 だから…………今だけは休ませてください」


【海未ちゃん、家に着いたー? さっきね、お母さんが部屋に来たと思ったらいきなりこんなこと言い出すんだよ? たくさんしたのね♪匂いでわかるわ、って! ふつう娘にそんなこと言わないよね? そう思わない?】

海未「……」

【たくさんしたのは事実だからいいではないですか。 また明日もたくさんしましょうね。 あなたの部屋の匂いが私とあなたの汗と愛液の混ざった匂いが馴染むまで】

【も、もぉ……! 海未ちゃんったらえっちなんだから……】

海未「……ことり」

【あなたのせいですよ。 こんなふうにした責任、ちゃんととってくださいね?】

【う、うん……! だって……海未ちゃんはことりの彼女だから……♪】

海未「彼女……。 あなたは他の女との邪淫に溺れてしまった私を知って……、それでも私のことを彼女と呼んでくれるでしょうか……」

海未「……」

クチュッ……

海未「……ん」

海未「あぁ……。 私の……こんなに緩くてビラビラになってしまって……。 こんなの……ことりに見せられないです……」

クチュッ、クチュッ

海未「……あぁっ、気持ちいい……。 ことり……ことり……。 好き……。 あなたの顔が見たい……。 あなたの声が聞きたい。 あなたの体温が恋しい……」


ピロリーロリーン

ことり「あれ? 海未ちゃんにはもうおやすみって送ったのに……誰かな?」

ことり「知らないアドレス……アド変かな?」


【明日の朝7時、ひとりで生徒会室に来てください。 南ことり、あなたに見せたいものがあります】


ことり「……間違いメール……じゃないよね。 どうしてことりのこと……。 無視したほうがいいかな……」

ことり「……ううん。 行こう。 なにか大切なことだったら困るし」


【海未ちゃん、明日用事があってひとりで先に学校行かなくちゃいけないの! だから海未ちゃんは後から来て。 もう寝てると思うけど、おやすみ!】

・・・・・・

ガララ……

ことり「失礼しまーす……」

シーン

ことり「誰もいないのかな? ……ん? あれは、スクリーン?」

シュイイイイン、パッ

ことり「あ、なにか映った」


プチン、プチン。 シュルル……

『ふふっ、凹凸のあまりないかわいい身体ね』

カシャン、カシャン、ガシン、ガシン

『これで、よしっと』

ことり「な、なにこれ……女の人の裸……? や、やだ……こんないたずらのために学校来て……」


『海未、はやく目覚まさないかしら』


ことり「……え? いま、海未って言った……?」


『はーぁい、見てる? あっ、私の声は加工してあるし、帽子も被って顔もモザイクかけてるから誰かわからないと思うけど、一応女の子よ♪』

ことり「……なんなの……」

『このビデオを見てるってことは私のストレス解消もうまくいったみたいね。 だから安心して? もう2度とこの子に変なことしたりしないから』

『だから今日1日だけは楽しい夜を過ごさせてねっ♪ まずはー、見える? けっこうエグい形してるでしょー?』

ことり「……っ! な、なんてもの見せて……!」

『これをね? 今から海未のここに……、えいっ!』

海未『……っ』ピクッ

『あっ、血……。 どうしよう、処女だったのかしら……。 まぁいっか』

『さて、海未の喘ぎ声たくさん聞かせてもらおうかしら』

ズボッ、ズボッ

ことり「……ぇ」ペタン

ことり「……いや……嘘……。 海未ちゃんが……犯されてる……」

『んー……あんまり喘いでくれないわね……。 やっぱり起きてないと声も出してくれないのかしら。 おーい、海未ー! 起きてー!』

ズゴッ、ズゴッ

ことり「やめ……やめてよ……。 海未ちゃんにそんな乱暴なことしないで……っ」

『起きないともっと激しくしちゃうわよー?』

ジュボッ、ジュボッ

海未『痛いっ……! 痛いですっ……!』

ことり「……あっ、海未ちゃん……!」

『えいっ、えいっ♪』

海未『……こと……っ! ……え? え、【ピー】……?』

『ええ。 なんだか魘されてたみたいだけど大丈夫? それよりどうかしら? さっきから血しかでてこないけど……生理? あっ、もしかして処女だった?』





ことり「やめて……もうこんなの見せないで……」

海未『ぜひともこの快楽を教えてあげたいです! 気持ちよさに身を委ねること……それがどれだけ幸せか……あ、あ、あぁぁああん!! イクゥゥ!!!』

『そうだ、確か今朝から【ピー】さんとえっちしてたのよね? 今とどっちが気持ちいい?』

海未『そんなもの比べることさえ烏滸がましい! あんな表面だけ擦り付け合うだけのえっちごっこより、今の本物のおちんちんとしてるようなこのセックスのほうが何倍も、何十倍も気持ちいいです!』

ことり「……っ!」

ポタッ

ことり「……うっく、ひぐっ……」

『そう。 それじゃあ今から私の言うこと繰り返してね。 「私、園田海未はこれまでもこれからも【ピー】のおもちゃです! おもちゃのくせにえっちなおもちゃで気持ち良くなってごめんなさい! 【ピー】のことは好きだけど、やっぱりえっちなことのほうが何十倍も愛しています! これからも私はご主人様のためにいっぱい泣いて、いっぱい楽しませてみせます!」って」

海未『はい! 私、園田海未はこれまでもこれからも【ピー】のおもちゃです! おもちゃのくせにえっちなおもちゃで気持ち良くなってごめんなさい! 【ピー】のことは好きだけど、やっぱりえっちなことのほうが何十倍も愛し、て………………」





ことり「あ、……あ、あぁ……」

ガチャリ、ガサゴソ……

『ここで2カメさんに切り替えまーす。 さて、海未も帰ったし……どうだった? 楽しんでもらえたかしら。 もしかして自分の股間をいじる手が止まらないんじゃない?』

ことり「……っ!」バッ

『そんなわけないわよね。 だって自分の彼女が知らない人に犯されてるの見て……興奮するわけないわよね?』

『最初にも言ったけど私はもう2度と海未にこんなことするつもりはないから安心して。 今日は……そうね、魔が差しちゃったのよ』

『それじゃあさようなら……あ、帽子落ちちゃった。 ここカットしておかなくちゃ……』

プツン

ことり「今の部分だけモザイクがなかった……。 あの髪は、あの顔は……!」


ことり「……許さない……絶対に……」

・・・・・・


ことり「……」

海未「ことり、おはようございます。 朝から熱心に何を書いているのですか?」

ことり「う、海未ちゃん……! 平気なの……?」

海未「? なにがです?」

ことり「……ううん。 なんでもない。 あ、これ? ふふっ、まだ秘密だよ♪」

海未「?」

ことり「そうそう! 今日は帰りも先に帰るね! あと明日の朝も今日と同でお願い!」

海未「……? はい、わかりました」

・・・・・・

海未「……はぁ」

穂乃果「どうしたの海未ちゃん? 朝からため息なんて」

海未「いえ、なんでもないです」

穂乃果「……あ、もしかしてことりちゃんに置いていかれたのがショックだったとか!」

海未「あなただって絵里に置いていかれたではないですか」

穂乃果「そうなんだよ……はぁ。 だからお互いみじめに慰め合いながら学校いこうね……」

海未「あなたが勝手に家の前で待ってただけでしょう」

穂乃果「だってひとりで行くのつまんないんだもん! だから海未ちゃんとことりちゃんと一緒に行こうとしたのに」

海未「生憎私もさみしんぼでしたね」

穂乃果「それにしても珍しいこともあるもんだね。 2人して理由も告げずに、それに二日連続で早く行っちゃうなんて。…………アァッ!?」

海未「どうしました?」

穂乃果「も、もしかして…………逢引!?」

海未「ブフゥ……ッ!?」

穂乃果「そ、そっか……絵里ちゃんもあれでモデルのスカウトに何回も捕まってるし、ことりちゃんなんてつい先日前まではアイドルだった……! そんな2人は見えない何かで惹かれて……!」バタン

海未「ほ、穂乃果っ!?」

穂乃果「絵里ちゃんが……私の絵里ちゃんがぁ……!」ティリリー、ティラリラリーラー

海未「……ふふっ」

海未(絵里、知ってますか……? 私の前では穂乃果は絵里のことしか話さないのですよ? それを聞いて恋人でもない私が嫉妬してしまうくらいに。 穂乃果はちゃんとあなたのことだけを見ています。 ……だから、どうか穂乃果のことをもっと信じてあげてください)


穂乃果「ねぇ海未ちゃん……。 もし私が絵里ちゃんに捨てられたらその時はもらってね……」

海未「……はぁ、何を言ってますか。 あの2人に限ってそんなことありえませんよ」

穂乃果「あぁ絵里ちゃん……私の処女奪った責任とるって言ったのに……。 私、このままじゃ海未ちゃんのものになっちゃうよ……」

海未(処女……、か……。 私も大好きな人にあげたかったな……)

穂乃果「海未ちゃん抱いて……っ! 海未ちゃんの熱い体温で私の中に凍りつく絵里ちゃんという幻影を溶かし……」

海未「いい加減にしなさい」ベシッ

穂乃果「あぶらぜみっ! ……痛いよー!」

海未「ふざけたこと言ってる暇があったら早く学校行きますよ。 ほら、そんなことしてる間にもう少しで登校時間になってしまいます」

穂乃果「うわっ、ほんとうだ!? 走ろう!」

海未「あ、穂乃果! 待ってください! 穂乃果ー!」



ピーポー、ピーポー

穂乃果「……」

海未「はぁ……はぁ……、やっと追いつきました。 どうしてあなたはいつもそう落ち着きがないのですか……」

穂乃果「あれって、救急車……?」

海未「……はい? ああ、そうですね。 この時期に熱中症? それとも貧血でしょうか」


『そこ、どいてくれ! ほら、邪魔邪魔!』ガラガラガラ


海未「あのリボンは3年生……、それに金髪の……って!」

穂乃果「……えっ、うそ……!? 絵里ちゃん!?」ダッ

『こ、こら、どいて! この子は出血が多くて危険な状態なんだ!』

穂乃果「絵里ちゃん!! ……絵里ちゃん……っ!!」

絵里「……ヒュー、ヒュー、……はぁ、あぁう……」

穂乃果「絵里ちゃん!? しっかりして! なにがあったの!?」

『君、友達か知らないけど、この子のことを想うなら離れていてくれないか! 車内にうまく乗せられないだろ!』

穂乃果「お、お願いです! 私も連れて行ってください! 絵里ちゃんは……私の大切な人なんです……!」

『……大切な……、お姉ちゃんか何かかい? わかったからとりあえず乗りなさい!』

穂乃果「はい……!」

バタン……、ピーポーピーポー

海未「な、なにが起きて……」


『ほら、早く歩くんだ』

『い、いたっ……! わ、私はなにもしてません! ただそこに居合わせただけで……』

『わかったわかった。 詳しい話は署で聞かせてもらうから、今は車に乗るんだ』

『私じゃない……! 私じゃないのに……!』

ウゥゥゥゥゥゥン、ウウゥゥゥゥウン


海未「あのリボンの色は2年生? 顔は隠されていてよく見えませんでしたけど……」

『ほんと朝から物騒ね……』

海未「あ、あの……」

『あら、園田さん。 おはよう』

海未「おはようございます。 ……一体なにがあったのですか?」

『会長が刺されたんですって。 2年生の子に』

海未「刺された……って、なぜ……?」

『私にもわからないわ。 会長は仕事もよくできてみんなにも優しかったし、恨まれるような人じゃなかったのにね』

海未「……」

『みんなはなにかトラブルがあったんじゃないかって言ってるけど、ふつう高校生程度の揉め事でこんなことが起こるかしら……』

海未「……」



海未(あの絵里が刺されてしまうほどに他人と揉めることなんて……ありえるのでしょうか)

ガラガラ

ことり「あ、海未ちゃん!!」ガタッ

海未「ことり、おはようございます。 どうして今朝もひとりで先に行ったのか教えてもら……」

ことり「ちょっとついてきて!」グイッ

海未「え、えっ? こ、ことり! せめてカバンだけでも置かせてください……!」



ことり「よし、ここまでくれば誰にも聞かれないかな?」

海未「体育館裏……なぜこんなところへ?」

ことり「……ふふふ……。 うーみちゃん♪」

海未「……きゃっ、ど、どうしました? 急に抱きついてきたらびっくりしますよ」

ことり「……ふふっ、ふふふ♪ ことりね、やったよ? 上手にできたでしょ? ね、褒めてっ!」

海未「……はい? や、やったとは? いったい何をしたのです?」


ことり「え? わからないの?

絵里ちゃんへの仕返しだよ?」

海未「……はい?」

ことり「えへへ、絵里ちゃんを刺したのってほんとはことりなんだ! 包丁でザクッ、ザクって何回も! 胸に腹に脚に腕に首に! あの痛みに喘ぎ?く姿……見ていてすっごい爽快だったなぁ!」

海未「…………あの、今日に限ってそういう冗談は笑えませんよ?」

ことり「冗談じゃないよ? ことりは嘘なんてつかないもん。 ……あははははは!! はははっ! これからも海未ちゃんと一緒にいるためには捕まるわけにはいかないから、ちゃんと計画も完璧に立てて道具も揃えて、なに一つミスすることなくやり遂げたよ! ……あっ、あの場で[ピーーー]ことができなかったのは軽い誤算だったかな? 人間って案外しぶといんだね」

海未「……」

ことり「……もしかしてここまで言ってもまだ信じてない? それなら……ゴソゴソ、これならどうかな? 手についた絢瀬先輩の汚い血を拭いたハンカチ」

海未「……!」

ことり「そうそう、見てわかるとおり制服には返り血ついてないでしょ? そこも計算して刺したからね。 手だけは……まぁどうがんばっても無理だったから」

ことり「ね、嬉しいでしょ!? 絵里先輩があんなことになって! だからことりのこと褒めて! ことりの大切な人に傷つけたあの人に制裁を下したことりのこと……褒めて!!」

海未「傷つけた……ってなぜそのことを……!」

ことり「見たんだよ、あのビデオ」

海未「ど、どうしてあなたが……!」

ことり「なんでだろうね。 どうして絢瀬先輩はことりにあんなの見せようとしたんだろうね? ことりならやり返さないとでも思ったのかな? これを見て怒ったことりが海未ちゃんと別れるとでも思ったのかな? ……ふふふ、ばかみたい。 海未ちゃんに害を与える人は……真っ先にこの手で始末するに決まってるのにね?」



海未「……ことり、一緒に警察へ行きましょう」

ことり「……え?」

海未「私のためを想ってやってくれたのは本当に嬉しいです。 ……しかし!! これは犯罪です!! 復讐のために人を殺そうとするなんて、そんなのは絶対に許されてはいけません!」

ことり「……じゃあ絢瀬先輩が海未ちゃんにしたことは許されるの……?」

海未「……それは……」

ことり「絢瀬先輩が昨日普通に生活してたってことは海未ちゃんはこのこと誰にも言ってないからだよね……!? それじゃあ海未ちゃんがこんな目に遭ったなんて誰も知らないんでしょ……!? それじゃあ絢瀬先輩を裁くのはいったい誰なの!?」

海未「……」



海未「……絵里は誰にも裁かれません。 私は……別に絵里を憎いと思っていないから」



ことり「……はっ?」

海未「絵里とあなたはとてもよく似ているんですよ」

ことり「やめてよ。 あんな人と似てるなんて……、気持ち悪くてヘドがでそう」

海未「今から過去の話をします。 今話さないと、この先話す機会も失くしてしまいそうだから」

ことり「……」


海未「絵里が私に暴力を奮ってきたのは……確か中学2年のとき、穂乃果と絵里が付き合って半年ほど経ったころでしょうか。
私も最初はなぜ自分が痛い目に合わなきゃいけないのか、どうしてこの人は私だけを虐めるのか、当然そんなふうに考えていましたよ」

ことり「えっ、うそ……!? そ、そんなに前からならどうして相談してくれなかったの!?」

海未「『もしこのことを誰かに言ってみなさい。 あなたの大事な人が大変な目に遭うわよ』」

ことり「……!」

海未「それが痛みで床に転がっていた私に浴びせられた脅迫でした。 だから……それから何度殴られ、蹴られ、髪を引っ張られても我慢して耐えることしかできなかった……。
それは絵里が高校生になってからも終わることはありませんでした」

海未「そして時間が過ぎ、私たちが高校生になり、私とあなたは別々の高校へ行き、……あなたが私を疑い始めたときに感じたんです。 そうか、絵里は今のことりと同じだったんだ、って」

海未「私は高校生になっても中学生のときとなんにも変わらずにことりと接してきました。 でもなぜかあなたは私と穂乃果の関係をしきりに気にしだし、電話の履歴も見せるよう要求してくるようになり、終いには浮気してるのではないか、と」

ことり「だって海未ちゃんと穂乃果ちゃんっていつも仲がいいから不安になっちゃって……」

海未「……絵里もただ不安だっただけなんです。 『穂乃果は海未の話ばかりするから、本当は私のことなんて好きじゃないんじゃ……』そう思っていたはずです」

海未「絵里にはあなたのように本人に向かって不満をぶつける勇気はなかったのでしょう。 だからどうしたらいいかわからなくなってただ憎い相手に暴力を奮うことでしか……そうすることでしか不安を振り払うことができなかった」

海未「それに気づいてから私は、絵里の冷たい拳、零れる涙、震える罵声、全てに同情し、哀れに思い、……彼女の暴力を受け入れるようになりました。 いつか絵里もあなたのように本当に相手のことを信じられるようになるまで、私は待つことにしたのです」

ことり「で、でもおかしいよ……! 海未ちゃんだけそんな苦しい思いしなきゃいけないなんて……!」

海未「私だけが、ですか?」

ことり「そうだよ! それならことりも一緒に痛みを分かち合いたかった!」

海未「あなたも絵里も、心に痛みを抱えていたでしょう? 私が勘違いさせるような行いをしていたばっかりに。 それにあの穂乃果でさえ、絵里と自分が釣り合っているのかわからないと悩んでいた頃があったのです。だからむしろ、……絵里の暴力で初めて、あなたたち3人と痛みを分かち合えた気がしたのです。 それが苦しいようで、ちょっとだけ嬉しかった」

ことり「……」

海未「だから……」



ことり「だから?」

海未「……え?」

ことり「だから、絵里先輩は許されて、ことりだけは裁かれなくちゃいけないの?」

海未「な……」

ことり「絢瀬先輩の暴力を海未ちゃんは受け入れた。 それならさ、あの人もことりの暴力を受け入れてもいいんじゃないかな? ふふふっ」

海未「な、なにバカなことを言って……!」

ことり「そうだよ! 絢瀬先輩は今回のことを受け入れて、反省しながら天国に行かなくちゃ行けなかったんだ! なんだ、あの子に罪をかぶせる必要もなかったんだ! あの人はたったひとりで苦しみながら死んで行くのが報いだったんだよ! あー、惜しいことをした! あそこでちゃんと息の根を留めておくんだったなぁ! あっはっはっはっ!!!」

海未「ことり!! 私もついていくので一緒に警察に……っ!!」

ことり「行くわけないでしよ!? ことりは何も悪くないんだから! あっはっはっ……!」

ビチャッ

海未「うっ……、な、えっ?」

ことり「……?
なに、これ……? なんでこんなに背中が痛い……」

ドスッ、メリメリ、シュッ、ドスッ

ことり「……あっ、あぐっ……」

ドサッ

海未「ことり……っ!」



「やっぱりこいつのせいだったんだ」

海未「ほ、穂乃果……?」

穂乃果「やったよ絵里ちゃん……。 見ててくれた……? 絵里ちゃんの仇、穂乃果がとったよ?」

海未「ことり……!! ことり……っ!!」

ことり「……」

海未「い、今急いで救急車を……!」

バギイッ

海未「……っ!?」

穂乃果「させない」

海未「ほ、穂乃果ァ……!!」

ガシッ

海未「あなたは……なんてことを……!!」

穂乃果「なんてこと? そんなの決まってるでしょ。
ただの仕返しだよ」

海未「……!?」

穂乃果「絵里ちゃんね、もう遠いところに行っちゃったんだ」

海未「……えっ……」

穂乃果「病院につくころにはもう心肺も停まってて、出血多量でショック死。 仮に一命をとりとめても、きっとしゃべることはできなくなってただろうって」

海未「……そ、そんな」

穂乃果「そんな状況でもね、絵里ちゃんは死ぬ間際の最後の最後で痛みを我慢して言ったの……!

『南ことり』って

怒りが抑えられなかった……。 絵里ちゃんをこんな目に合わせたコイツのこと。

そして……、大好きな人に最後に名前を呼ばれなかった自分が本当に情けなかった……っ!!

だからもうこうするしかなかった。 コイツを殺さないといけなかった! 憎かった……ただ憎かった!」

海未「それでも! たとえ絵里が死に、その犯人がことりだったとしても! あなたがまた同じことを繰り返してはいけません!」

穂乃果「繰り返さないよ。だって私は……
誰にも殺されないから。
それじゃあね、さようなら」

パシッ

海未「いっ……、ほ、穂乃果!」

ことり「……カハッ!」

海未「!? こ、ことり! くっ、とにかく誰か呼ばなくては……!」

ことり「……ハァ、ハァ」

海未「少しだけ……待っていてくださいね! 絶対に助けますから!」

・・・・・・



『園田警部、報告書をまとめておきましたので目を通しておいてください』

「はい。 ありがとうございます」

キィ……

「確か今日は……。
……早めに帰りますか」


あの日、私を犯した絵里は裁かれ、絵里を殺したことりも裁かれ、
そして穂乃果は私の前から姿を消した。

絵里を殺したとされたあの2年生の子はとうとう冤罪を晴らすことができず有罪判決を受けた。日本の警察ではことりの寸分までに計算尽くされた犯行を見抜くことができなかったのです。
穂乃果も実家から盗んだ金で逃亡を謀り、そして数年経った今でさえも目撃証言は一切あがっていない。日本にいるのかも海外にいるのかも、生きているのか死んでいるのかも何もわからず……。
私は高校卒業後、穂乃果を捜すために警察になりました。
しかしいったい穂乃果を見つけて何をしよういうのか。説教をしたい?復讐をしたい?贖罪をさせたい?どれも理にかなってるようで、どれも私の気持ちには合ってないようで……。
それでもとにかく会わないことには始まらない。情報なんて穂乃果の顔、身長、体重、歳、それだけしかわかってない。ひょっとしたら顔なんて変わってるかもしれない。そんな砂漠に埋めた1カラットのダイヤを探すような状態で何年も何年も調査を重ね、その結果……、

とうとう私の望みが叶うことはなかった。

穂乃果は5回目の絵里の命日と同じ日にヨーロッパの小さな国のそのまた小さな村で息を引き取った。死因は心不全。誰に看取られることもなく、誰に苦しみを訴えるでもなく天に召され、死体は半ミイラ化した状態で死臭の漂う廃屋で見つかったそうだ。

パン、パン

「……。
絵里、穂乃果、久しぶり。 1年ぶりですね。
絵里のお墓はいつ来ても華やかなのに、隣の穂乃果のお墓は雑草だらけで随分と殺風景なものです。
今キレイにしてあげますね」


これが犯した罪を裁かれなかった者の末路なのだろうか。
生きてる間も独り。死ぬときも独り。そして死んでからも誰にも墓参されない。
なんとも虚しく、なんとも無様で、なんとも非情だ。
穂乃果を裁いたのは人ではなく、無慈悲な運命だったということか。かつての親友の死を聞いたそのとき、涙を一粒たりとも流すことができなかった私はただそんなことを考えていました。


「……ふぅ。 それじゃあ私は帰りますね。 また来年来ます。
穂乃果、また蟻にイチゴを食べられてしまう前に早く食べるのですよ。
絵里、そちらではあなたたちは結ばれたと信じています。どうか、穂乃果のことよろしくおねがいしますね」


愛憎の果てに待っていたのは……惨憺たる結末。
そして、


「ただいま帰りました」


カツン、カツン


「おかえりなさい♪」


私たちをつなぐ薬指の銀色の輪。
託したのは救われなかった者の意志と救われた者の未来。
込めたのは遠い日の騎士の誓いと天使の決意。

惨劇の隅で小さく輝きを放っていたのは……


真愛。





ーFinー

終わりです。

間がかなり空いてしまってすいませんでした。

本当にありがとうございました。


海未「鬼瓦」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1405688598/)


結局海未ってなんで音ノ木坂行ったんだ?
UTX行って穂乃果と距離取るだけで全てが丸く収まってそう

え?ことりちゃん生きてるの?
流石にそれは……色々酷すぎだろ……


んで結局一緒に警察行こうと言っておいて行かなかったのか…

ごめんなさい!
今見直して気づきました!

>>30>>31の間に、

海未「ではことりともそれくらいなかよくしてあげることはできませんか?」

のセリフがはいってます!

仕方ないとはいえ絵里を殺したことりに罪の意識がなさそうなのはどうなのよ…
いくら絵里がしたことがひどくても殺人は殺人だろうに
これじゃあ人殺して自分だけ幸せになったみたいで…

お前日本の警察と裁判所舐めすぎだろ…

なぜことりが平然と生きてるの?
おまえ穂乃果とエリチカ嫌いだろ
久々に不快なss

ほのえりに釣られて来たらとんでもないものを読んでしまった

×劇的
○投げた

>>196
海未は伝統を重んじる家庭なので、新しいものばかりが揃うUTXへの転校は親が許してくれませんでした。

>>197
ことりちゃんは絵里ちゃんのときより救急車を割と早く呼べたので奇跡的に一命を取り留めました。

>>198 >>200
ことりちゃんは10年くらい懲役を受けていて、>>192は出た後の2年後くらいだという設定(後付け)

>>201
警察なんて……

計画的に殺人しといて10年ってwwww

>>203
絵里推しです

>>204
ssに自由はないんですか……

>>207
うまくまとめることができませんでした



前に似たようなの書いたけどそのときはこんなに叩かれなかったのに( ;ω;)

良かった…冤罪で刑務所に入った女の子はいなかったのか

>>209
詳しいことわからないんです……
本当に頭悪いんです……

>>211
結果的に、そうなりました。


本当に、こんな駄ssで申し訳ありません……

>>210
じゃあ穂乃果は嫌いなんだな
そうじゃなきゃあんな死に方させないよな

死ぬなら最初に注意書きして欲しかったな、そしたら読まなかったのに
まぁお疲れさん

>>210
罰を受けてないっていうのがひっかかってたからすこしすっきりしたよ

次はえりちを幸せにしてあげてね

面白かったよ
まあ叩かれるのはしゃあない。そもそも二次創作なんてそんなもんですよ
諸々引っくるめて受け止めましょ

糞SSを書く

叩かれる

悲しいのポーズ

馬鹿な信者「俺は好きだったぞ、乙!」

(ニッコリ)

ポーズというか、Twitter絵師()の「私絵が下手だけど」チラッチラッに近い

というかポーズじゃなかったらヤバいだろ
これで叩かれないと本気で思ってるんだから頭の診断が必要

ここで上から目線に偉そうにしてる読者様たちもどっこいどっこいやで……

このssをみてイライラさせたいと仕向けるように書いたなら大成功じゃない?でも叩かれるの想定外とか言ってるしな・・・

>>222
ごめんなさい。表現を過剰にしすぎました。ソフトにしたらあまり伝わらないかなと思ったので……。

>>223
ご指摘ありがとうございます。次からは気をつけます。

>>224
ありがとうございます。がんばります。

>>226
Mってわけじゃないんですけど、批判もしてもらえるのがこれから書いてく上でも役に立つのでけっこう嬉しかったりします

>>227 >>230
糞ssを書く

叩かれる

ありがとう、反省

次につなげる

>>232-234
わざわざこんなss読んでくださったのですから、むしろ上からでも意見くださってありがたいです

>>240
最初に書いたssで二年生組みんな殺しちゃったんですけど、そのときはあまりたたかれなかったんですよね。

なんてやつ?見に行きたいんだけど?

>>240
イライラというより、いたたまれない気持ちにしたかったです。
最初に書いたssで二年生みんな頃しちゃったんですけど、そのときはあまり叩かれなかったんです。

誘導成功

>>244
海未「あなたと一緒なら」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1394209206/)

>>246

大変チカの時もそうだったが、普通につまらんdis要素・セリフ入れるから叩かれる

その路線で行くならそれはそれで「俺は好きだったぞ乙」がつくからいいんだが

糞ssを書く

叩かれる

ありがとう、反省

次につなげる

これがすげえ寒々しく聞こえる

上から目線ですまんな、乙

>>248
ありがとうございます
ネタとdisは紙一重、よく覚えておきます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月20日 (日) 11:54:41   ID: xVMKqF22

ことりは無事生きてたんだね♪

2 :  SS好きの774さん   2014年07月20日 (日) 18:20:16   ID: FTq-7lGw

自分の思い通りにならなかったからって発狂してるほうが頭おかしいんじゃないのか

3 :  SS好きの774さん   2014年07月20日 (日) 18:23:31   ID: 9a0mAjZk

元スレではめっちゃ叩かれてるけど自分は好きだよ
強いて言うならことりが服役してるってことを本編で説明してほしかった

4 :  SS好きの774さん   2014年07月21日 (月) 02:14:49   ID: fB1H_us2

まあこういう内容だと手厳しい意見が出るのは仕方ないわな
でも内容の無い意見で批判してる気になってる上から目線の読者様は無視していいんだぜ
一々律儀に反応してたらキリねえぞ作者さんよ

5 :  SS好きの774さん   2014年08月28日 (木) 07:57:17   ID: vRZyO_yd

なんで絵里殺しでことりが罰受けてんのにモブまで冤罪で捕まってんだよ
そして何故誰もつっこまん

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