真夜「純恋子のやつが過保護すぎた」 (103)

八話ifです

純恋子さんが出発前の真夜に英特製の専用装備をプレゼントしたせいで…みたいな感じです

晴ストラップに嫉妬してストラップ付きハンマープレゼントする小ネタがいつの間にか何故かこんな事になってしまった
描写力ないので基本会話ばかりになりますのでアクションは期待しないで

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1405126848

真夜「こいつはすごいな!軽すぎず、重すぎず手にもしっかり馴染みやがる!」

純恋子から渡されたハンマーは武骨なそれとは別物のウォーハンマーだった
楽しそうに素振りをする真夜を見て満足そうに純恋子は笑みを浮かべた

純恋子「喜んでいただけて何よりですわ、先日データを取らせていただいたので身体能力に適した物を作らせたのですわ、前の武器を振る真夜さんは少し体勢が崩れたり、初撃を外したら隙が大きすぎると思いましたので」
真夜「いやスゲーわ、武器なんて壊せりゃなんでもいいかと思ってたがこいつは良いパーフェクトだぜ」

純恋子「感謝の極みとでも言うべきですかしら…ふふ」

純恋子「ところで、スーツの方はいかがです?」

真夜「うん、ややぴっちりしてる感じがなれねーが、悪くないぜ制服より動きやすいなブーツも新品とは思えないくらい馴染むぜ」

真夜の体をつつむのは黒いライダースーツのような戦闘服である、肩や肘、膝には薄いプロテクターもついている

純恋子「薄く見えますが防刃、対打撃に優れています、東さんの火力程度なら倒しきるまで壊れる事はないと思われますわ」

真夜「その東も犬飼が殺っちまうからこれに出番は回ってこないかもな」

純恋子(むしろ一番警戒すべきは犬飼伊介ですのに…)

犬飼伊介が純恋子に何度か真夜について聞きにきた事や、走り鳰に何やら聞いていたのを純恋子は目撃していた
ゆえにあの女は確実に裏切るという確信があったのだが、協定を結んだ真夜は報酬は全部あっちにやるから大丈夫さと取り合ってくれなかった
妙なところで義理堅いところがあるようでこれはこれで真夜の美徳とも思えたのであえて深入りはしなかった

真夜「あーでもヘルメットとかはいらんからな視界が遮られるのはどうも嫌だ」

純恋子「ですが、こっちの遮光ゴーグルはお持ちくださいね、きっと役に立つはずですから」

真夜「ちょっと目が怖いぞ…仕方ねーな、走りのやつが一ノ瀬はなんでもするって言ってたし確かに役立つかもな」

純恋子(ほっ…まぁ東さんが犬飼さんを仕留めてくれればそれも使わずに済むかもしれませんがとりあえず持っていってくれて心配事が一つ減りましたわ…)

真夜「ところでなんでオレにここまでしてくれるんだ?」

純恋子「友人を助けるのに理由が必要ですか?」

真夜「……おう、それも、そうだなっ」

純恋子(あら、意外と照れ屋さんなのかしら、ふふ良いものが見られましたわ)

真夜「でも、いいのか?」

純恋子「?」

真夜「一ノ瀬はお前の手で殺したいんじゃないのか?」

純恋子「そうですわね…この万全な状態の真夜さんから逃げ切れるようなら私自ら出ても良いと言っておきますわ」

真夜「なるほど、そいつはいいや一ノ瀬晴がオレの手にも余る存在ならそれはそれで面白い」

純恋子(まぁ真夜さんが勝利しても私自ら出るまでもなかったと言ってしまえば良いだけですし問題ありませんわ)

真夜「そろそろ出るわ、お姫様が城に閉じ籠ってるみたいだからよ、悪役の怪物様が出向いてやらねーと」

純恋子「ふふ、御武運をお祈りしておきますわ…」
真夜「……ところで」

純恋子「はい?」

真夜「さっきからオレの脱いだ制服を抱き締めてるのはなんで?」

純恋子「こ、ここれは!そ、そう洗濯しておこうと思っただけですわ!!」

東と犬飼が戦い始めたのを確認してからオレは一ノ瀬の籠る理科室に攻撃を始めた、ハンマーは威力も申し分なくドアを易々と壊して、中に侵入できた

だが、一ノ瀬のやつはなかなかすばしっこく油断仕切ってたオレは携帯を顔に当てられたくらいで転けるような醜態を晒してしまった…


真夜「……おかしい、頭が痛え…一ノ瀬を追い詰める度に何かが邪魔する…なぁ真昼…?」

真昼が答えない何故か黙っている…こんな事は初めてな気がする、何かわからないが悩んでいる気配だけは伝わってきた

真夜「くそっなんなんだこれは…一ノ瀬、あいつを殺れば消えるのか?この嫌な感じはよぉ…」

ちくしょう足が重い、部屋を出た時は絶好調だったのに…
なんとか追い付いた…視聴覚室?嫌な感じはますます強まって来ている
訳がわからねえ
なんだかわからねえが純恋子の入れた特製はーぶてぃーが急に恋しくなってきた

真夜「よぉ…今度こそ終わりにしようぜ、一ノ瀬晴」

晴「……」

真夜「かくれんぼはもう飽きたんだよオレ、この部屋何もかもぶち壊したらお前もついでに吹っ飛ぶのかぁ?」

手当たり次第にハンマーを振るうあれだけ馴染んだと思った得物がやけに重い
幸い部屋を破壊しきる前に一ノ瀬のヤツが飛び出してきた

晴「晴はまだ[ピーーー]ないんです!」

一ノ瀬のヤツがオレに向かってくる無茶苦茶だこいつ
いやオレの体調の悪さに気づかれたか?
だが、一瞬、嫌な感覚がすべて消えた
そしてオレは一ノ瀬を攻撃するより先に遮光ゴーグルを無意識にかけていた

刹那、閃光が部屋を包む

伊介「番場さーんごっくろうさまー後は伊介におまかせよ…っ!」

真夜「おいおいどうした?悪霊でも見た顔してるぜ?」

伊介「なんなの?なんなのそれ?!」

真夜「はっ!女神様からの贈り物だよ!」

動揺する犬飼を仕留めるのは簡単だった、鳩尾に拳を叩き込んでやったら咳き込んだ後意識を失った
さっきまでと違い何故か犬飼を攻撃する時だけは頭痛が消えていた

真夜「しかし、犬飼が来たって事は東のやつ死んだのか?」

晴「!」

一ノ瀬の顔から生気が消えた、守護者様の死はオレに追い詰められるより応えたらしい
今なら簡単に殺せる
聖遺物の完成だ喜べ真昼


ハンマーを振り上げようとしたその時、今までで一番ヤバイ頭痛がオレを襲った

真夜「な…!?」

ハンマーを落として尻餅をつく、頭痛に加え吐き気までしてきた

そしてオレの中で疑念が確信に変わりはじめた

何故!?何故邪魔をしているんだ真昼!?

真昼は答えない
ただあいつの苦しみがオレに頭痛として襲いかかってくる…
だがどうしてだ?これはおまえが望んだ事だろう!?

晴「真夜ちゃん…大丈夫?」

真夜「てめえ…なんでオレの心配してんだよ…ワケわからねえ…」

晴「だって真夜ちゃんは晴の●●だから…」

真夜「!?」

胃液が逆流する嫌な感覚…ああお茶会断っといて正解だったとか下らない事を一瞬思ってしまえるあたりまだ余裕があるのかもしれない

真夜「はぁ!…はぁ!…はぁ!」

何かが足りないんだ何かがオレに一ノ瀬を殺させる何かが
だから真昼がオレの邪魔をしているような気がする

一ノ瀬は逃げない、オレは動けないままただ時間が過ぎて行った

真夜「なんでだ」

晴「晴はずっと命を狙われてきて慣れっこだから本当の殺意ってわかるんです」

真夜(やめろ)

晴「だからさっきから真夜ちゃんから殺意が薄れているのがなんとなくわかりました」

真夜(やめてくれ)

晴「泣いてる子供を放って兎角さん探しに行けるほど薄情じゃないです」

真夜「東はオレよりヤバイかもしれないんだぜ……」

晴「大丈夫、兎角さんは無事です約束しました」

真夜「へ、かっこいいなおまえ…」

すると廊下を走る音が校舎に響き渡った
騎士様は死んでなかったご様子だ
頭痛が少し引いてくれたどうやら東は[ピーーー]許可が出たようだ

兎角「晴っ!!」

なっさけねえ顔して騎士様がやってきた。だが気配が今までと違う本気でやりあわねえとこっちが殺られるそんな気配を身に付けていやがる
一ノ瀬を制してハンマーを持って立ち上がる頭痛は完全に消えていた

真夜「おまえが遅いから犬飼はオレがやっちまったぞ」

兎角「いいよむしろ助かった…一ノ瀬も無事でよかった」

真夜「一ノ瀬晴を[ピーーー]には一人じゃ寂しかろうと思ってよぉおまえをまず[ピーーー]!そのうえで一ノ瀬をなぶり[ピーーー]!」

芝居がかった口上で東を挑発する
東にも余裕がないようでオレの穴だらけの口上に突っ込みは無かった


兎角「番場、悪いがおまえを[ピーーー]ぞ」

真夜「やってみろ、その満身創痍のおまえにオレを殺せる力があるならな!」




戦いはあっけなく終わり、オレは負けたのだった

なんだこれピーってなる

メ欄にsaga

~数刻後~


純恋子「これはどういう事ですの?」

真夜「派手に負けた」

あっけらかんと笑いながら真夜が答える
ほとんど無傷で

純恋子「はぁ…いつまで帰ってこないから心配しましたに、走りさんからは二人が負けたと聞いて急いで駆けつけたんですのよ?」

真夜「悪いな本当、ところでほれっ」

真夜から投げ渡されたものは有名な紅茶の缶ジュースだった

純恋子「なんですのこれ?」

真夜「おまえの部屋で紅茶待ってたら真昼と入れ替わるからな退学前の最後のお茶会だ」

純恋子「風情の欠片もありませんわね」

ちょっと拗ねてはいるが断る気はないようで倒れていた椅子の一つを起こすと真夜の前に座った

純恋子「説明してくださいますよね?」

真夜「自分の事が少しわかったと言えばいいのかね」

真夜「犬飼はいい仕事をしてくれたオレが無傷で勝てる程度には痛めつけてくれていたし」

真夜「一ノ瀬のやつもすばしっこいだけでいつでも殺れた」

真夜「ただ真昼に止められただけだった」

殺す

>>13
ありがとう

純恋子「はい?」

真夜「これは真昼がおまえの聖遺物を欲しがらなかった理由にも繋がるんだが…一ノ瀬晴はオレを…いやオレ達を拒絶しなかった」

純恋子「………」

真夜「だいたい黒組自体がおかしいんだけどな、ほとんど全員オレの事普通に受けれてたし、純恋子、おまえなんて三人部屋みたいで楽しいですわ!と来たもんだ」

純恋子「お二人供素晴らしい方ですから仕方ありませんわ」

真夜「だからオレは武智と違って殺人衝動なんてないままここまで来ちまった」

純恋子「牙を抜かれた獣のようになってしまったと」

真夜「そうなのかもなー、真昼のやつも多少いじめっぽい事にはあってるが武智も犬飼も悪意がないから憎む気にもならねえし」

純恋子「余計な事をしてしまったかしら」

真夜「いんや、あれでおまえ真昼の好感度うなぎ登りなんだぜ?感情表現下手すぎて伝わんねーだろーけど」

純恋子「ふふ、光栄ですわね」

こだわりが無いのなら書く側にsageは基本必要無いと思う
sagaのみ入れとけばおk

真夜「話を戻すぜ?真昼が一番恐れるのは自分の事を知られる度に知り合いが自分を拒絶していく事だ」

純恋子「…」

真夜「だからあいつは変わる前に殺して遺品を聖遺物持ち歩く事で自分に優しい頃の記憶だけを閉じ込めようとした」

真夜「だからオレは多分一ノ瀬の拒絶の言葉を引き出したくて追い詰めては取り逃がし、東を殺してあいつに拒絶されようとした」

純恋子「そして失敗したと」

真夜「一ノ瀬に泣きながら友達同士の殺し合いなんて見たくないとか言われたらさ、真昼のやつ号泣しやがってようやくオレに負けろってお願いしてきやがった」

純恋子(少し妬けますわね)

真夜「で、東に紅茶二つ買ってきたらオレは手を引くって言った」

純恋子「そこでふざけるなって言われたのだけは目に浮かびましたわ」

>>19
りょーかいッス

また英真かよ、本当お前らスレ立てんの好きだな
完結しない短レス数だろ?総合でやれよ

真夜「で、犬飼が目覚めないよう時間まで見張るって条件つけてパシらせた」

純恋子「くっ」

不覚にも噴いてしまったはしたない

真夜「ま、そんな事でオレは生まれてこのかた味わった事のない爽快な気分なわけだ」

純恋子「…消えるなんて言わないでくださいましね」

真夜「真昼が立派に一人立ちできるまでは消えねえさ、ところで」

純恋子「一ノ瀬晴は見逃しませんわ」

真夜「察しが良すぎるな、やっぱ無理かー」

純恋子「一ノ瀬晴があなた達の友達であろうとも私は一族の責務を果たさねばなりません」

真夜「真昼の初めての友達とオレ達の大切な人が殺しあうのは辛いんだぜ?」

純恋子(……!?)

真夜「…何、二度見してんだよ?」

純恋子「……大切な人?」

真夜「嫌だったか?」

純恋子「…いえむしろ天にも昇る心地ですわ」

真夜「?」



こうしてオレは退学し、ミョウジョウを去った
純恋子が敗北したのを聞いて見舞いにいったらそのまま住み込みで働く事になるのだが、それはまた別の話

>>22
ごめんなー

一応思い付いたら続き書くんで

真夜中の食堂編


最近、夜に出歩くとやたら警察に出くわすので散歩もままならないコンビニで立ち読みしてるだけで補導されかけた事もあった
ま、武智のやつが派手に暴れ回ったせいなのはあきらかなので今度会ったらおもいっきりデコピンしてやろうと思う

しかし参った…今、番場真夜は空腹という敵に敗北しようとしていたのだから…



そういえば前に大浴場で首藤と話た時の事を思い出す

涼「番場も歳が歳だし苦労しとるじゃろ、わしもこの見た目じゃから夜に出歩くと面倒事が多くての」

真夜「確かにな、夜に出歩くと身分証見せてもアウトで見せなくてもアウトだからな…ま、オレの場合、身分証なんてないけどな」

涼「ふむ、せっかく出来た縁じゃ良い店がある食事するならあそこが良いなかなか美味じゃぞ?」

話を聞いた当時は適当に行く事もないと思っていたのだが
純恋子から美食の楽しみというものをなまじ学んでしまったせいか首藤の言う店が急に気になりだしたのだ

首藤は律儀に地図までメールに添付してくれていたので迷うことなく目的地に着いた

それは裏路地にひっそりと佇む小さな居酒屋のようだった
淡い光を放つ電気看板には食事処とそれだけ書かれていた

真夜「…一人で飯屋っていうのはなんかこう…緊張するものがあるな…」

年代ものの木製の戸を開けると中は少し暗めの照明で照らされたいかにも下町の食堂のような感じだろうか
奥の店主らしいおっさんが無言のまま顎でカウンターを示す、どうやらそこに座れという事らしい
本当に何も詮索しないんだなこの店は…


涼「かの店には決まった名はない、どんな客でも平気で受け入れるというのが特徴かの」

真夜「へぇ指名手配犯でも安心して飯が食えるのか」

涼「店の中は中立地帯、親の仇でも仲良く相席してやるのがルールじゃ」

真夜「守るやついんのか」

涼「不思議と守るそうじゃよ、わしも数えるくらいしか行った事はないからの、幸い危険な連中と鉢合わせになった事はないので実際どうかはわからんが」

真夜「頼りねえなぁ」

そんな首藤との会話を思い出しつつカウンターの席に座ると…メニューがない

店主「メニューなんてねぇから適当に食いたいもん言ってくれ」

真夜「なんでもできんのか?」

店主「高級なもんは無理だなぁ…店の雰囲気的に出せそうなもん察してくれ」

おいおい無茶苦茶だな…本当に大丈夫なのか?
とりあえず居酒屋風なので軽くつまみ的なものを頼みつつ、消化の良いうどんを頼んでみよう
曖昧な感じな注文をしたがおっさんは頷くと厨房に向かった


しばらくして和風の皿にのせられたゴマ豆腐が出てきた

店主「まぁとりあえずこれでもつまんどいてくれ」

真夜「ん?薬味がないぜ?」

店主「まぁ一口食え、それでいるなら出す」

真夜「そうかい」

そう言って一口口に入れた途端広がる風味に思わず唸ってしまった
おっさんが満足そうな顔してんのがなんかくやしい…だが、確かにこれは下手に醤油や薬味を使うとゴマの風味を味わうのに邪魔になるかもしれない…
薬味を使うか考えているうちに気づいたら完食していた…


真夜?!何夜中に食べてるの!?

やべえゴマ豆腐の衝撃でうるさいのが起きた

真昼(真夜…私が頑張って食べるの我慢してたのにこれはどういう事なの?)

真夜(おまえのせいで飢え死にしそうだから飯食ってるんだ感謝しろよ)

真昼(そう、ありがと…ってなるかー!)

真夜(おまえ本当にオレとの会話の時だけ饒舌になるのな)

真昼(いいの!)

真夜(とりあえず純恋子の前くらい話せるようになってくれよ)

真昼(あ、う)

真夜(じゃ、オレ飯食うから黙っててな)

真昼(待ってー)



真昼との会話中に二皿目野菜の天ぷらが置かれた、ナス、さつまいも、カボチャ、舞茸のエース級に加え青じそ、たらのめ等脇役も充実している

真昼(一見ヘルシーだけど、天ぷらですよー油ですよー?)

なんかうるさいがとりあえず無視して皿の端に盛られた塩につけて舞茸からいただく、なんだ!?これくそうめえ!気の利いた感想出てこねえけどうめえ!

真昼も味覚共有してるせいか完全に黙ったなんか悲しそうに唸ってるが気のせいだろう

真昼(結局……全部食べやがりましたね……)

真夜(にやけながら怒るとか器用なやつだなおまえ、新発見だ)

真昼(うぅっ)

真夜(しかしあれだ、食い物メインの話で食事シーンキンクリしすぎじゃないか?)

真昼(キンクリするなら食べる量も減らして…)

真夜(よしっ!メインのうどんが来たぜ!)

真昼(うあー!)

店主「あ、全部食っちまったか、この素うどんに天ぷらのせるのも悪くなかったんだが…」

真夜「」

真昼(ざまぁ)

真夜(……追加注文)

真昼(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)

とりあえず気をとりなおしてうどんをいただこう
シンプルな関西風のうどんでほとんど透明で透き通った汁が食欲をそそる

真昼(せめて汁飲むのはやめてね真夜…)

などと真昼が言うのでまず汁を啜る、薄味だがだしの効いた汁が体に染み渡る
ああ癒される

真昼(あうううううう)

うどんも角が立っていてコシが強い、いやまさかこんな時間にしっかりとした手打ちうどんを食えるとは
まさに僥倖

真昼(私は不孝ですよ…)

真昼(終わった…私の今日の努力が…)

真夜(腹ごなしに軽く運動してやっから安心しとけ)

店主「もういいのか?」

真夜「ん?なんかあるのか」

店主「追加200円でデザートが」

真夜「!」

真昼(!?…し真夜…)

真夜(真昼…)

真昼(信じていいよね?)

真夜(まかせろ!)

真夜「デザート追加で!」

真昼(真夜あああああああああああああああああああああ!!)


ぜんざいたいへんおいしゅうございました

真夜「いやーなかなかのもんだったわ千円以内とかどんなコスパの良さだよ、なぁ」

真昼(……)

真夜(大丈夫だよ、今から軽くジョギングでもすりゃカロリー消費なんて余裕、余裕)

真昼(………本当に?)

真夜(ほら、そろそろ明るくなって道も走り安く…って…あ)

気づけば朝日が昇る時間帯でした

真昼(真夜あああああああああああああああああああああ!)




~後日~

涼「お、番場ちゃんからメールじゃ級友からもらうのはうれしいものじゃの」


from:番場真昼

題名:なし
本文:絶対に許さない


涼「!?」


※夜に真夜がフォローのメール送りました

次は純恋子さんのお見舞い編になる予定

真昼(一時は本当にどうなるかと思った…)

真夜(いや、真昼おまえが本心から嫌ならオレは逆らえなかったはずだからな、あの飯はおまえも食いたかったそれは事実だぜ)

真昼(首藤さんがあんな店教えなければ…)

真夜(首藤のやつ見に覚えがないからけっこう慌てたらしいぞ今度あったらあやまっとけよ)

真昼(うん…でも本当にジョギング始めたんだね真夜)

真夜(おまえの邪魔抜きに一ノ瀬追っかけてる時に疲れたからな体力というより持久力がないのがよくわかった)

真昼(けっこう息切れしてたもんね)

真夜(何を他人事みたいに言ってんだか…)

真昼(ごめんなさい)

真夜(まぁそんなわけで眠いから入れかわるまで寝るわ)

真昼(お疲れ様ー)

真昼(さて、私は図書館で勉強でもしますか…)

黒組ですごした日々を思い出すのか最近勉強するのがとても楽しい
黒組くらい私達を簡単に受け入れてくれる学校があれば行ってみたいけれど現実にそんなところはないんだろうなぁ…


??「失礼ですが、番場真昼様で間違いございませんか?」

真昼「はっ…ひっ…そう…ですが?」

気づいたら執事服の人が目の前に立っていた

執事「私、英家にお仕えする者ですが、お嬢様にお会いしていただきたくお迎えに参りました」

真昼(なんでしょうこれ漫画みたいです…でも…あの人なら普通にやるよね…)


~お見舞いに行こう編~

そんなこんなで移動中の車内

真昼(うわー外車広いなー)

執事「急なお話しですみませんでした番場様」

真昼「あ…だい…じょう…ます」

執事「お嬢様は残念ながら今、入院していましていまして男性が苦手だとは聞いておりましたが私がお迎えに上がった次第で」

真昼「あ…はい………え?!」

は…?英さんが入院?

真昼「英さ…大丈夫…ますか!?」

執事「ご安心ください、お嬢様は無事です。ですから私がこうして迎えに来られたという事です…説明し難い状態なので直接お会いしていただいたほうがよろしいでしょう」

真昼「……よかった…」

執事(本当に我が事のように喜ばれている…良い友を得られたようで何よりですお嬢様)

真昼「あ…執事…さん」

執事「なんでしょう?」

真昼「あの…なぜ…工場?…に?」

執事「いえ、これは英の医療施設ですよ」

真昼「は…はぁ……」

真昼(確かに医療ラボだとか書いてあった気がしたけど…にしても施設広いなぁ…まだ駐車場に着かないなんて)

執事「番場様、到着いたしました…ここでお嬢様がお待ちです」

真昼(いや…やっぱり工場だと思うんですけどー?)

真昼(なんだろう?ここ、工場とも病院とも違う…変な空気が…)

執事「番場様、どうぞこちらへ」

真昼「は…い…」

真昼(広いエレベーターまで広い!?ベッドごと移動したりするからだろうけど並の部屋くらいあるのは広すぎじゃないですか)

エレベーターは最上階で止まり
スライド式のドアが開いていく

その先には、両手足を失いベッドというより生命維持装置のようなものに繋がれた英 純恋子の姿があった

真昼「…!?」

執事「お嬢様…番場真昼様をお連れしました」

純恋子「ありがとう、番場さんお久しぶりですわ…と言っても数日しか経っていないのでしたっけ?」

真昼(よかった…と言っていいのかなこれ…見た目はすごいけど英さんの顔色は悪くないみたい)

純恋子「本当ならこんな姿のまま会うのは気が引けたのですが、ジョイントの部分の内部機器がショートさせられていたり、改良の余地が見つかって修理が遅れているのですわ、特に一ノ瀬晴に蹴られたあたりの断線とか酷くて…」

真昼「そう…ますか……」

真昼(風邪がまだ治らないんです的なニュアンスでえらい話してますよこの人)

真昼「一ノ瀬…さんに…やられ…た、ますか?」

純恋子「ええ、武智さんと東さんは難なく倒せたと思ったんですけど、その時に受けたスタンガンのせいで内部に不具合が起こってたようなのですが気づかなくて…」

真昼(武智…?なんであの人参加してるんです?)
純恋子「一ノ瀬晴には手榴弾でエレベーターごと爆破されかけたり、屋上から蹴り落とされたりしまして」

真昼(……どうしようさっぱり状況がわからない)

純恋子「やはりハンデのつもりで色々武器を用意したのは失敗でしたわ…」

真昼「なんだか、すごい…戦い…だったのは…わかりますた」

純恋子「ふふふ…まぁそんな事はどうでも良いのですわ」

真昼(どうでもいいんだ)

純恋子「私、体の自由が効きませんの」

真昼「見れば…わかる…ますよ?」

純恋子「なので…え…えっと、あっとその…」

真昼(な、何を要求されるんだろう)ドキドキ

純恋子「私の食事をするのを真昼さんに手伝っていただけたらな…と」

真昼(真っ赤だあの英さんがすっごい照れてる!)
※だいたいお誘いの時は真昼もテンパってるので純恋子さんが照れてたりするの気づいてません


純恋子「よ、よろしいかしら…?」

真昼(うわーなんだこのかわいい生き物!?)

真昼「はい…おまかせ…ますよ」

純恋子「!…ありがとう番場さん!」

真昼「!?…なんで…泣きますか?」

真昼「はい…あーん」

純恋子「あーん…」

真昼(ああ…なんかかわいい)

純恋子「…ん、はぁ、これが幸せの味というものなのでしょうか」

真昼「大げさ…ますよ?」

純恋子「そんな事ありませんわ、真夜さんはともかく真昼さんのほうはなかなかOKしてくれませんし…ようやく念願が叶ったのですのよ?」

真昼「ごめ…なさい」

純恋子「あ、あやまらないでくださいな、断られる度に受け入れてもらえる方法を考えたりするのも楽しかったんですから!」

真昼(うわ…私、ものすごく気を使わせてたんじゃ…)

純恋子「…少し、取り乱しましたわね」

真昼「大丈夫…ます」

純恋子「でも、そろそろOKをもらいたいのも事実、後日…新しい手足が完成したら今度のお茶会には参加してくださいましね?」

真昼「は、は…い」

純恋子「…よかった……」

真昼(だから!なんで泣くんですかー!?)
真昼「き、今日の英…さ…ん涙腺弱すぎる…ますよ!?」

純恋子「な…んなんでしょうね、今日の私ったら…ごめんなさいね」

真昼「あ、あやまらないで…その」

真昼「かわ…いいです…よ?」

純恋子「!?」


なんかスイッチ入っちゃったのか私が何か言う、英さんが泣き出すのループに入ってしまいますた…

とりあえず、ここまでお見舞い編はまだまだ続くよー

純恋子「ん…は…あ…」

シュッ シュッ

真夜「どうだ?痛くないか?」

純恋子「らい、じょぶれすわ」

真夜「なら続けるぞ、しばらく口開けてろ、な」

純恋子「はい…」

真夜(はぁ…入れ代わったら、いきなり純恋子の家でなし崩し的に今の状況になっちまったわけだが…)

シュッ シュッ シュッ
純恋子「ふぁっ……ふぁ……」

真夜(なんでオレ歯ブラシで純恋子の歯磨いてんだろ…)

純恋子(予想以上ですわ…私の口の中を真夜さんが磨いているという倒錯的なこの状況に酔ってしまいそう…)

真夜(しかし、歯磨きというやつはこんなに…いや変な事を考えるな、純恋子は手が使えないから仕方なくオレが磨いているんだ…)

真夜(しかし潤んだ瞳でこっちを見てくる純恋子がなんというか…正直エロい)

真夜(落ち着けオレ、これは医療行為だ、あくまで…)

真夜(くそ、歯磨きしてるから純恋子と会話もできない…さっさと終わらせたいが…いや他人の歯だしな、妥協はできない)

純恋子(すごく真剣な眼差しで私を…最初に聞いた時は間抜けな話かと思いましたが歯磨き恐るべしですわ)

あれから数日、相変わらず英邸にやっかいになっている
執事から久しぶりにお嬢様の元気な姿を見れたと喜ばれ、義肢が完成し動けるようになるまでで良いからと滞在を依頼されたからだ
オレも真昼も純恋子の事は心配だったので断る理由もなく快諾した

真昼はただ世話になっては悪いとメイドに混じって仕事を手伝おうとしているようだがあの性格なのでややから回っているようだ
ただ一生懸命さは伝わるらしくメイド達の間ではマスコット扱いされて人気らしい…世の中わからないもんだ

純恋子の方は調整中は暇らしく眠っているので、今ではすっかり夜型になってしまったらしい
現在のオレの仕事は夜眠れない純恋子の話相手ということになる

黒組時代は話の途中でうとうとしだしてしまうので区切りが悪いとこで話を切り上げたりしていたので少しうれしかったりするのだが秘密にしておこう

真夜「なんとか動けるようになったんだなぁ…ちょっと不気味だけど」

純恋子「まぁ、不気味だなんて酷い!…と言いたいところですが、内部フレーム剥き出しですから骸骨みたいですわね」

真夜「しかし、よくもまぁ、器用にティーカップ持つよなぁおまえ感心するぜ」

純恋子「今では自在に動かせるようになりましたがここに至るまで数年かかりましたわ…」

真夜「技術の進歩もあるんだろうけどよ…たいした根性してるな」

純恋子「ふふ、英の家長として優雅でなくてなりませんからね妥協はしませんわ」

真夜「そんな感じで相手に塩贈って一ノ瀬に負けたのか?」

純恋子「もう、その話はやめてくださいな」

純恋子「ところでその話をどこで?」

真夜「ここ来て次の日あたりかな、走りのやつに電話で聞いた」

純恋子「…あのアホ毛、いつかひっこ抜いてさしあげますわ……」

真夜「そんな事したら歩けなくなるんじゃないか?あいつ」

純恋子「触角ですの?!」

真夜「まぁ、それはそれとして結果的に誰も死ななくてよかったよ、人殺しのオレが言うのもなんだが」

純恋子「あなたが望んだ結果ではありますわね」

真夜「拗ねるなよ、一ノ瀬はダチだけどおまえはもっとこう…なんだ…」

純恋子「いえ、そこはハッキリとお願いしますわ」

真夜「たいせつなひとだから」

純恋子「なんで棒読みですの!」

真夜「真昼とオレで世界は完結してたんだよ今までは、さ、だからとまどってんだよ…誰かがそこに入って来ることに」

純恋子「光栄な話ですわね」

真夜「扉抉じ開けて入ってきた感じはするけどな」

純恋子「一言余計ですわよ!」

真夜「黒組の頃は遠慮したが、ちょっとつつくとかわいい反応すんのな」

純恋子「意外に意地悪ですのね真夜さんは」

真夜「黒組にいると色々覚える事もあってなこういうのでかわいい一面が引き出せるって学んだんだよ」

純恋子「余計な知恵を…」

真夜「ちなみに最近、真昼いじりがマイブームだ」

純恋子「心底同情しますわ…」

真夜「あっちが主人格だから本気ならオレなんて簡単に抑え込める、だから本当に嫌がってはない…はずだ」

純恋子「なんでちょっと弱気ですの」

純恋子「はぁ…さっきから調子狂わされすぎですわ…」

真夜「嫌か?」

純恋子「それがまったく」

真夜「そりゃよかった」

純恋子「私も変わったのでしょうね、あの奇妙な生活の中で…思えば」

真夜「変人ばかり集めたクラスだったからな…オレ達みたいに長くいた人間ほど変わったのかも…いや犬飼だけは最初から最後まで犬飼だったか?」

純恋子「あの方は人一倍我が強い方でしたから」

真夜「だな」

純恋子「私も変わったのでしょうね、あの奇妙な生活の中で…」

思えばはなんか混ざったようだ

真夜「そういや犬飼と別れる時に挨拶したら口きいてくれなかった…」

純恋子「先にあっちが裏切ったんですから気にしなくて良いですわ」

真夜「でもなぁ…」

純恋子(そういえば前に東さんに笑顔がキモいって言われたとか言って部屋の隅でしばらく沈んでましたわね)

真夜「メール送ったら[ピーーー]って返ってくるし」

純恋子「なんでメアド交換までしてるんですの!?」

真夜「ああ、襲撃の時に連携とるために交換したんだよ」

純恋子「ずるい…」

真夜「純恋子、携帯持ってないし」

純恋子「これは…人工皮膚の処理が終わったら買わざるを得ませんわね」

真夜「そうなるとメアド交換第一号はオレ達って事になるのか」

純恋子「当然そうなりますわね」

真夜「そっかぁ」

純恋子(こんな事でにやにやしてかわいい方ですわね本当)

真夜「でも特別製じゃないと興奮した時に砕きそうだな」

純恋子「日常生活用の義手はそこまでパワーありませんわよ」

真夜「そうなのか?」

純恋子「精密動作の方に特化させていますから多分真夜さんにも劣りますわ」

真夜「はぁ、わざわざ用途に別けて作ってるのか?」

純恋子「技術が進歩したからといって一つの義肢に多くの機能をつけても誤作動の危険が増えますから」

真夜「なるほどな」

純恋子「こんな話しても面白くもないでしょう?」

真夜「いんや、そんなことはないぜ?」

純恋子「あら?そうですの?」

真夜「真昼のやつが勉強にハマっててよ、俺も知識を得るっていうことに興味がある」

純恋子「ふむ、知識欲が出てきたと…」

真夜「ま、ちょっとした戯れみたいなもんだけどな俺は」

純恋子「でも趣味が広がるというのは楽しい事ですわ」

真夜「そうだな」

純恋子「まぁ、私の知っている事などささいな事ですができるだけお答えしましょう」

真夜「よろしく頼む」

純恋子から聞いた話はなかなか面白かった、自分の義肢の話は飽きたのか、途中から趣味の紅茶の話になり、熱が入ったのか長々と茶葉の話を聞かされたりしたのだが、まぁいきなり興味を持った俺にはほとんどわからなかった
ただいれ方だけでも手が込んでいて何も考えずに飲んでた事を少し反省したのだった


純恋子「はぁ…まぁ概要程度ですが、わかりまして?」

真夜「とりあえずおまえがこだわってるのは理解した」

純恋子「もう…もう少し気の効いた言い回しはありませんの?」

真夜「いやぁ、おまえが楽しそうに語るからとりあえず止めないで聞いておこうと思ってよ」

純恋子「む…本当に口がうまくなりましたわね」

真夜「まぁしばらく厄介になるんだし気長に行こうぜ?」

純恋子「そ、そうですわね」

純恋子(話を小出しにして長く引き留める口実にする手もありますわね…)

真夜「どうした?」

純恋子「い、いえこちらの話ですわ」

真夜「?」

純恋子「真昼さんも勉強好きなら我が家の書斎を貸しますからお勉強したらよろしいのですわ」

真夜「いいのか?」

純恋子「問題ありません、むしろこの家にいることで学業も後れているでしょうし、よろしければ家庭教師もつけましょうか?」

真夜「そうか、そういや話てなかったか」

真夜「俺達、学校通ってないんだよ」

純恋子「そうなんですの?」

真夜「施設に入れられて基礎的な教育は受けてるけどな…黒組に参加した理由も真昼に学校生活体験させてやりたいからだし」

純恋子「そうでしたの」

真夜「異常者扱いされちまうからな仕方ないっちゃ仕方ないが」

純恋子「でも黒組での成績はかなり高かったような…」

真夜「ま、あれが真昼のすげえとこだ」

純恋子「そうなんですの?」

真夜(俺が生まれる前のあいつがどんな人間かわからねえから何とも言えないがな)
真夜「裁縫の腕見てもらえばわかるように集中しだしたあいつはすげーのよ」


純恋子「確かに演劇の衣裳は素敵でしたわね」

真夜「だろ?」

純恋子「真昼さんの先生への態度を見るに女性の教師を呼ばねばなりませんね」

真夜「男苦手だからな…執事さんには悪いがどうも馴れない」

純恋子「デリケートな問題ですし、仕方ありませんわね」

真夜「真昼の将来のためには克服してやりたいんだがな…こればっかりは俺にもどうしようもない…」

純恋子「二人の生まれた根幹にある問題ですから仕方ないと思いますわ、焦らず時間をかけて治していけばいいのです…それに」

真夜「それに?」

純恋子「もしも…嫌でなければこのまま家の人間になっても…」

真夜「ありがたい話ではあるが…」

純恋子「ダメ…ですの?」

真夜「ただおまえの好意に甘えるだけってのも嫌なんだよ」

純恋子「むぅ、私はかまいませんのに…」

真夜「魅力的ではあるんだけどな」

真夜「俺はおまえに寄生するような生き方はしたくないんだよ」

純恋子「でしたら夜の専属護衛として雇ってさしあげますわ」

真夜「なんだそれ?」

純恋子「英にはまだ敵も多くて、この前も私が動けない内に殺そうと仕掛けてきたり」

真夜「…はぁ?」

純恋子「嘗ての英とは違いますから、返り討ちにしてあげましたが」

真夜「俺達がふらふらしてる間にそんな事があったのかよ…」

純恋子「身内の醜い争いですからあまり言いたくはなかったのです…完全に巻き込んでしまったらあなたにまで命の危険が及ぶのも嫌でした…でも」

真夜「……わかった、もういい」

純恋子「え…」

真夜「俺と真昼がおまえの傍にいてやる…身分違いとかくだらねえ事を考えて一定の距離を保とうなんて考えてたが、どうでもいい」

純恋子「……ありがとう」

真夜「真昼にも後で言っておいてくれよ、ろくに答えられないと思うが直接頼んだほうがあいつも喜ぶ」

純恋子「…はい…」グスッ


真夜「真昼から聞いてたが本当によく泣くな」

純恋子「正直つい身内の恥まで晒して断られたらどうしよう…って言ってから気づいて…」

真夜「まぁ実際に馬鹿力だけしか取り柄もない俺じゃ役に立つかはわからねえけどさ、おまえが危ないの知ってて平気でいられるほど冷血でもないぜ」

純恋子「大丈夫…あなたが傍にいてくれるだけで私は負けませんわ…」

真夜「…俺は、実のところお互いの好意は黒組という場所で生まれた、一時の気の迷いじゃないかと疑ったんだ」

純恋子「……」

真夜「でも、俺はまだおまえの事を好きでおまえも俺の事を好きでいてくれている…だから俺は…俺達はおまえの傍にいたいと思う」

純恋子「…はい」

真夜「……だから、その」

純恋子「どうしましたの?」

真夜「おまえとの契約を兼ねて、その…あー!……キスしないか?」

純恋子「…………え?」

真夜「…いや、あの…嫌ならいいんだぜ?」

純恋子「いえ…嫌ではないんですが…あのまさか真夜さんから言ってくるとは思ってなくて…」

真夜「あ、うん、本当なら真昼に先にさせてやるべきなんだろうが…多分あいつは言い出すのに時間かかるし…だったら俺が先にしちまえばあいつだって素直になれるかも…」

純恋子(ふふ、照れてあたふたするところはそっくりですわね)
真夜「違うな…俺がおまえとしたいんだ、真昼より先におまえの初めてを奪いたい」

純恋子「はい、私の初めて奪ってくださいな」

真夜「それじゃ、いくぜ」

チュッ

真夜(やわらけえ…唇合わせただけなのにものすごいドキドキするぞ…)

純恋子(真夜さんの唇が私の唇と重なって…あぁ、本当に私キスしているのですね…)

真夜「ぷはっ」

純恋子「ふ…ぅ…」

真夜「なんていうか…止め時がわかんねえ…唇合わせるくらいだからどうって事ないとか思ってたが…ヤバイなこれ」

純恋子「ええ…」

純恋子(これで舌をからめたりするでぃーぷきすなどしてしまったら…戻ってこれないかもしれませんわ…)

真夜「…ごめんな」

純恋子「なんですの?急に」

真夜「いや、言い出したくせになんかリードもろくにできなくて申し訳なくなってきた…」

純恋子「初めてなのに手慣れてたらそれはそれで嫌な気もしますけど」

真夜「よかったのか?」

純恋子「はい…ほら、その証拠に」

純恋子は真夜の手をそっと自分の胸元に触らせる

純恋子「こんなにドキドキしていますわ」

真夜「ああ…よかった、俺だけ気持ち良くなってたのかと思って不安になったんだ」

純恋子「私の唇は気持ち良かったんですのね、うれしい」

真夜「自分でもワケわからなくなるくらい気持ち良かった…なんなんだろうな」

純恋子「理屈ではないのでしょう、ならもう一度したらわかるかも」

真夜「そうかな?」

純恋子「試してみましょう?」

真夜「だな」

はぁ…ん…ちゅっ…
幾度と繰り返される唇の音、すでにどれだけの時間が過ぎたかなどわからぬほど二人はただ唇を重ねた
もれる吐息がとても心地よく、甘美に響く
唇は重ねる度に甘く、理性を奪っていく

真夜の手には普段の荒々しさはなく、壊れないよう優しく純恋子の体を撫でまわす

純恋子(……私もしてあげたいのに…)

剥き出しな機械の指であることを今は呪ってしまいたくなる
いとおしい人の感触も暖かさも感じられない手足が今はとても辛い
自分だけが優しくされているのはいつもなら悪い気分ではないはずなのに…
ただ真夜に何もしてあげられない事がもどかしくて仕方ない


真夜「いいよ、今日は俺に愛されてくれるだけでいい」

純恋子の異変に気づいた真夜の優しい言葉に涙が溢れてくる
純恋子はいっそう真夜を求めて唇を重ね、真夜もこたえる

真夜(くそ、かわいいな、このまま押し倒してしまいたい……けど、真昼の知らないまま最後までやっちまうのは…なぁ…)

純恋子が疲れて眠るまでは好きにさせていよう、流石に彼女も今日身体を重ねる関係になろうとは言い出すまい
そう結論づけると真夜は再び口づけをする事に集中する事にした

あーいざこういうの書くとこっぱずかしいんだが大丈夫だろうか

なかなか難産だ…ガイドブックがあんまりガイドブックしてないのが悪いんや…

段々英家の方々がおかしな方向に行き始めたけど気にしないでください

翌日

どうしよう…途中から私が起きていた事に真夜は気づいてないようだったけど…こんな事は初めてで思考が追い付かない
真夜と英さんは力尽きて眠ってしまったのだけど、私はそのまま眠る事もできるわけもなく朝をむかえてしまった

はぁ…真夜にどうしてああなったのか聞きたいような、聞きたくないような…
胸のあたりがモヤモヤとして気持ち悪い

嫉妬…しているのだろうか…でも私は真夜に嫉妬しているの?それとも英さんに?

私も英さんとキスしたらこんな感情なんて全部吹き飛んでしまうのだろうか?

いや…おかしい落ち着け…落ち着くんだ私
ちょっと刺激の強い場面を見ただけで混乱しているだけなんだきっと…


?「聞いてますか?真昼さん」

メイド長「私の講義は退屈でしたか?」

真昼「あ、え、違う、ます…少し考え事を…すみません…」

メイド長「あと少しですから集中してくださいね」

真昼「は、はひっ!お願いするます…」


この人は英家のメイド長さん
英さんの幼少からの教育係だったそうで私が学校に通えていなかった話を聞いて今日から私の勉強を見てくれる事になったのだ
とてもありがたい話なのだが、昨日の事が頭から離れなくて集中できないのが申し訳ない


メイド長「とりあえず今日はここまでにしましょう、あとプリントをいくつか渡しておきますから明日までにやっておいて下さいね、あなたの学力を見たいので」

真昼「ありがと…ございます…」

メイド長「いえ、久しぶりに人に物を教えるというのは楽しいものですから、お気になさらないよう、それではごきげんよう」

真昼「ご、ごきげん、よう…」


すでにプリントまで用意してあるとは…メイド長おそるべし…
これは昔英さんがやったプリントだったりするんだろうか…
一人になるとまた二人を思い出してモヤモヤしてしまうのだった

純恋子「真昼さんがおかしい?」

執事「はい、メイド長の話では手伝いをしていた時は真面目で気くばりができる娘だったので昨日何かあったのではないかと心配していました」

純恋子「昨日……あっ!?」

執事「お嬢様、何か思い当たる事でも?」

純恋子「い、いえなんでもありませんわ!?」

執事「そうですか?ならよろしいのですが…番場様にはプリントを渡してとりあえず今日はそれに集中してもらう事にしたそうです」

純恋子「あ、そうですの、それでいいのではなくて?」

執事「どうしたのです?そんなに慌てて」

純恋子「いう、なんでもありません、ありませんとも」

執事「そうですか、今日のメンテナンスも終わりましたから…後は…」

ドサッ

執事「この書類に目を通しておいてください」

純恋子「病み上がりに容赦ありませんわね…」

執事「英の当主のお勤めゆえ、ここは譲れません」

純恋子「……いけず」

純恋子「はぁ…ほとんど書類に判を押すだけとはいえ…あれだけあると骨が折れますわね…」

真昼(解るところだけって言われたけど空欄を残さずにすんでよかった…)

純恋子、真昼「あ」

純恋子「あら、真昼さんごきげんよう」

真昼「ごきげん、よう、英…さん」

純恋子(どうしましょう…気のきいた言葉でもかけてあげたいのに急すぎて思い付きませんわ)

真昼(あわわ…どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう)

執事「おや、お食事の準備ができたので呼びに行こうと思いましたが、調度おそろいとは」

純恋子(ナイスナイミングですわ!)

真昼(……たすかった…)

純恋子(ああ…せっかくお昼を一緒に食べれたのに…会話らしい会話ができませんでしたわ……)

真昼(どうしよう…せっかくの機会なのに何も聞けてない…)

執事「お茶のおかわりはいかがいたしましょう?」

純恋子「お、お願いしますわ」

執事「番場様は?」

真昼「わ、私も…」

執事「かしこまりました」

純恋子(これで仕切り直しですわ)

真昼(な、何か話かけないと…)

純恋子、真昼「あ、あの!」

真昼「あ、あ、あの、お先に、どう、ぞ」

純恋子「では、私から、真夜さんから話を聞いて勉強のできる環境を用意させたのだけれど、不自由はなくて?」

真昼「は、はい…私のほうが、迷惑をかけ、て…ないか、心配なくらいです」

純恋子「安心していいですわ、話をした時に喜んで志願してくれたくらいですもの」
真昼「よかった…」

純恋子「気づいていないようですから言いますが、真昼さん家の使用人から人気ですのよ?」

真昼「…そう、なんですか?」

純恋子「真夜さんも知っている話なのに本当に自覚がなかったようですわね…」

真昼「だって…私…手伝えて、ない、ますし…」

純恋子「誠意は充分に伝わっているという事ですわ」

真昼「本当は、邪魔に、なってないか、とか、後で後悔して、たます…でも……よかった…」

純恋子「まぁ…邪魔だとか言ってたら私がお仕置きしますけど」

真昼「こわ…い、です」

純恋子「冗談ですわ」

真昼「冗談、は、苦手…で」

純恋子「ふふ、そうでしたわね、ところで」

真昼「は、い?」

純恋子「気になる事があるならお答えしますわ」

真昼「あ…」

純恋子「色々と悩みましたが、やはり私はこういうのは早めに解決してスッキリしたい質なのだと気づきましたわ…ですから真昼さんが何か私に思うことがあるなら全て聞きましょう」

真昼「え、と、あの…」

純恋子「本来なら時間をかけても良いのかもしれません…ですが、私に原因があるのであれば話は別です」

真昼「それは……」

純恋子「大丈夫、自分だけで抱えようとしないで」

真昼「はい…あの…英さんは真夜の事が好き、ますか?」

純恋子「ええ、好きですわ」

真昼「えっと、それ、は…私と…」

真昼(ちょっと…私何を)

純恋子「真昼さんより好きかどうかという事ですか?」

真昼「いや、今の、忘れっ」

純恋子「…無理ですわね」

真昼「何…が…?」

純恋子「あなた方二人供、個性があって魅力的ですからどちらかを上にしろというのは無理という話ですわ…それに」

真昼「それに?」

純恋子「二人供好きでなければ付き合えないでしょうあなた達だけは」

真昼「……確かに」

真昼「でも…いえ…」

真昼(この人は建前でこういう事を言う人じゃないってわかるし…分け隔てなく好きだと言ってもらえた事はうれしい…だけど、私は…)

純恋子「どうしましたの?」

真昼「わからなくなって…きて…私は真夜に…嫉妬しているのか、真夜に愛されるようになった…英さんに嫉妬、して、るのか…」

純恋子「……それは難しい問題ですわね、私としてはうれしいのですが、真昼さんが苦しむのは本意ではありませんね」

真昼「うれ、しい?」

純恋子「二人の間に割って入れるほど意識されているという事ですから、それに真昼さんがそういう生の感情を私に伝えてくれるようになった事」

真昼「あ」

純恋子「私の考えですが…もしかしたら真昼さん自身の変化も関係しているのかもしれませんね、その整理のつかない感情というものは」

真昼「私、の?」

純恋子「私も気づかないうちに自分自身の在り方が変わるという事が最近あって…価値観の変化、過去の自分に疑問を持ったり、そういう事を自身の変化ではなく他人に押し付けて考えたりして…感情が暴走したり…」

真昼「英さん、も?」

純恋子「ええ、あなた達にきてもらう前は恥ずかしいくらいに不安定でしたわ……最初に目覚めた時なんて、すぐに修理して!一ノ瀬晴を殺しにいかせて!とか泣き叫んだり…酷いものでしたわ…」

真昼「……うわぁ…」

純恋子「…流石に引きますわよね?」

真昼「あ、ごめ、なさ…い」

純恋子「あ、いいんですわよ、あの時の私は自分でも消したいくらい醜かったですもの…敗北を敗北として受け入れられないなど、女王たる資格はありませんわ」

真昼(……女王?)

純恋子「それから数日荒れていたのですけど、私の求めていた強さというものを考え直すようになって…今までの私は狭い見方しかできていないのではないかと思うようになったりしたのです」

真昼「どうして、そう考え直したの、ますか?」

純恋子「…私は一人だけで強くなったつもりだった…でも実際は家の財力、家人達に支えられていたという当たり前な事も忘れていたと、動けなくなって思い知りました…それに、一ノ瀬さんの強さが東さんを想えばこそ発揮されたものではないかと思い返して独りよがりな強さに意味はあるのか考えたりして…って、真昼さんの悩みを解決しようと思っていたのにズレていってますわね」

真昼「いえ、なんだかヒントになりそうな、感じもする、ます」

純恋子「ようするに、自身の変化を怖れず受け入れる事が悩みの解決につながるという事が言いたいのですわ」

真昼「……少し考えて、みる、ます」

純恋子「簡単な話ではありませんからね…私に言いたい事ができたらいつでも言ってくださいね、いつでも力になりますから」

真昼「は、はい」


執事「では、お嬢様そろそろメンテナンスに」

純恋子「っ!?…あなた、聞いてましたのね…」

執事「申し訳ありません、退室しようかとも思いましたがなかなか貴重なお話が聞けましたので、つい」

真昼「あ、うぅ」

純恋子「ほら真昼さんも恥ずかしがっているじゃありませんの!」

執事「では、番場様にはカロリー控えめなデザートを用意しますのでそれで、ひとつ」

純恋子「食べもので釣ろうとしないでくださいな!」

真昼「あはは…」

真昼(この人は本当に読めない)

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