あずさ「まっくらやみ」 (25)


小鳥「雨、止みませんね」

あずさ「そうですね~」

小鳥「停電しちゃいましたし」

あずさ「まっくらですね~」

小鳥「電車も止まっちゃってますし」

あずさ「帰れなくなっちゃいましたね~」


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小鳥「携帯の明かりだけじゃ心許ないですね」

あずさ「そうですね~」

小鳥「あずささん、怖くないですか?」

あずさ「まぁ、まっくらだからって怖がったりしませんよ」

小鳥「の割には震えているような」

あずさ「こ、これは雨で冷えて寒いだけです」


小鳥「寒いんですか?じゃあ、何か温かい飲み物でも取って来ますね」

すくっ

あずさ「え?あ、あの……」

小鳥「すぐ戻りますからここで待っててください」

あずさ「は、はい」

すたすた

あずさ「あ……」


ざぁぁぁぁぁ!!!

ごぉぉぉぉぉ!!!

がたがたがた!!!

あずさ「うぅぅ……」


すくっ

すたすた

あずさ「お、音無さぁ~ん……」

小鳥「あれ、あずささん。どうしたんです?」

あずさ「い、いえ、その……」

小鳥「やっぱり怖くなっちゃったんですか?」

あずさ「うぅぅ……は、はい……」

小鳥「やっぱり」


あずさ「だ、だってこんなまっくらの中で風はごーって吹いてるし

    窓だってがたがた震えて、事務所が壊れちゃうんじゃないかって……」

小鳥「大丈夫ですよ、確かにちょっとボロいですけど、そう簡単には壊れませんって」

あずさ「それは、分かってはいるんですけど……」

小鳥「それに、万が一の時は私があずささんを守りますから!」

あずさ「え……?」


小鳥「大事なアイドルですから!」

あずさ「……ふふっ」

小鳥「あっ」

あずさ「どうしました?」

小鳥「キッチンにろうそくがありました」

あずさ「まぁ!」

小鳥「これで真っ暗とおさらばですよ」

あずさ「そうですね~」


小鳥「もうこれで怖くないですね」

あずさ「も、もう!音無さん、意地悪です……」

小鳥「あはは、すみません。それじゃあ、戻りましょうか」

あずさ「は~い」

すたすた


あずさ「ろうそくの火って、暖かいですよね」

小鳥「まぁ火ですからね」

あずさ「そうじゃなくってこう、ぽわ~っとしてて、見てると気持ちが安らぐというか」

小鳥「なるほど、何だかあずささんみたいですね」

あずさ「えぇ!?」

小鳥「ぽわ~っとしてて癒されるなんて、あずささんそのものですよ」


あずさ「私、そんなにぽわ~ってしてますか?

    自分ではシャキっとしているつもりなんですけれど……」

小鳥「ステージではシャキっとしてますけど、普段のあずささんはぽわ~ってしてますね」

あずさ「そうなんですか……」

小鳥「そこが好きなんですけどね」

あずさ「……えぇ!?」


小鳥「どうしました?」

あずさ「あ、あの、す、好きって……。それどういう……?」

小鳥「あずささんの良い所だって思いますよ」

あずさ「そ、そうですか……」

小鳥「違う方が良かったですか?」

あずさ「え?」

小鳥「ふふっ、冗談ですよ~」

あずさ「……はい」

小鳥「え?」


あずさ「って言ったら、どうします?」

小鳥「ど、どうって……その……」

あずさ「うふふ、冗談です」

小鳥「あ、あずささぁ~ん」

あずさ「あんまり意地悪しちゃいやですよ~?」

小鳥「す、すいません……」


ざぁぁぁぁぁ!!

ごぉぉぉぉぉ!!

がたがたがた!!

あずさ「雨、やみませんね~」

小鳥「少し弱くなった気がしますね」

あずさ「早く電気が復旧するといいのだけれど」


小鳥「さっきよりは明るいですよ」

あずさ「電車は動いたかしら?」

小鳥「……まだ、みたいですね。再開の目処は立っていないそうです」

あずさ「お茶、美味しいです」

小鳥「ふふふ、それは良かったです。震えは収まりました?」

あずさ「もうすっかり」

小鳥「確かめてみましょうか」

あずさ「え?」

ぎゅっ


あずさ「おお、音無さん!?」

小鳥「あれ、震えてるじゃないですか」

あずさ「そ、それは……!」

小鳥「う~そ~つき~だ~ね~」

あずさ「もう!…………音無さんだって震えてるじゃないですか」

小鳥「……えへへ、バレちゃいましたか」

あずさ「これだけ密着してたらすぐ分かります」


ざぁぁぁぁぁ!

ごぉぉぉぉぉ!

がたがたがた!

あずさ「……音無さん」

小鳥「はい?」


あずさ「音無さんにとって、私はただのアイドルですか?」

小鳥「……あずささんにとって私はただの事務員ですか?」

あずさ「…………ずるい人ですね」

小鳥「大人は皆ずるいんですよ」

あずさ「私は――――」

ちかちかっ

ぱっ


小鳥「あ、電気点いた」

あずさ「……はぁ」

小鳥「ん~、やっぱり明るい方がいいですね」

あずさ「そうですね~」

小鳥「…」

あずさ「…」


小鳥「は、離れますね、私」

あずさ「…」

小鳥「あずささん……?」

あずさ「もう少し、このままで」

小鳥「え?」

あずさ「ダメ……ですか?」

小鳥「あ、いや、その……分かりました」


あずさ「……音無さん」

小鳥「はい?」

あずさ「いつか、ちゃんと答えを聞かせてくださいね」

小鳥「……はい」

あずさ「今度は怖くても、ちゃ~んと待ってますから」



おわり

終わりです。
台風が近づいています。
コロッケを買わねば。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
それではお目汚し失礼しました。


ぴよあずはいいものだ

百合死ねは死んだ!

これはなかなかピヨ

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