【咲安価】咲「アナタは誰ですか?」京太郎「……さあな」 (243)



 京太郎スレです
 以下の要素があります

・京太郎と咲キャラの恋愛
・悲恋
・設定崩壊


・安価選択肢
・マルチエンド


 お好きな方はどうぞお暇つぶしを
 苦手な方はお気を付けください



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 また明日なって
 よく考えずに笑顔で言って


 そのすぐ後に
 また明日なって言えるお前が居てくれるって気づいた


 もしも自分が自分の事を疑ってしまったなら
 その瞬間にほら、俺もお前も輝けないよな


 伸ばしたこの手はきっと
 光の向こうに願ってる未来があるから


 聴こえてる

 感じてる


 泣いたままで、お前のままでずっと
 そこでそうして伝えてる


 届くから

 響くから


 俺は俺のままで 
 お前の哀しみごと抱きしめるよ







「私――京ちゃんが好きだよ」


 それは凍てつくように寒い日の事だった
 身も心も、二人の関係すらも凍りつく


 ただ俺は怯えていた


「……オレは」


 今までの関係が壊れること
 これからの二人の未来を――勝手に決めつけた


「オレはお前のことをそういう風に見れないよ」


 だからこそ、俺は後悔してしまう

 自分の愚かさに

 自分の犯した罪に


「そっか。じゃあ……お別れだね」

   
 もう戻らないあの日を、夢に見てしまう

 
「ああ、お別れだ」


 振り返らなかった
 降り積もる雪が足跡を消し去るように……俺も心を鬼にして

 ただ祈った
 彼女がこの世界中の誰よりも幸せであることを

 ただ願った
 自分がこの世界中の誰よりも不幸でいられることを



 そしてその日は来た



 俺達の関係
 これまで積み上げてきたその全てが、何もかも消え去り


 残ったのは――
 




【五年後 12月25日】

 クリスマスなんて、くだらないイベントだと思う
 世の中が浮き足立っている上にみんな幸せそうにしている

 何がプレゼントだ
 何がサンタクロースだ

 くだらない
 
 めでたい日なんてありはしない
  
 どんな日だって、どんな瞬間だって……
 確実にその時は存在する


 誰かの死

 
 今、この瞬間にもきっと――世界のどこかで誰かが死んでいる


 自殺、他殺、病死……自然死
 数えていたらキリが無いほどの死がこの世界には蔓延している

 そしてそれは、一般人にとっては意識の外の出来事

 誰も現実を見ようとはしない
 上っ面だけのイベントに踊らされて、本質を見ていない


 俺はクリスマスが嫌いだ

 
 クリスマスは何も与えてなんかくれない


 俺から大切なモノを奪ったきり……何も


京太郎「笑いますか? そんな俺を」

照「……」

 都内にある、小洒落たバー
 その店内には自分達の他に、数多くの男女の客がいる  

 恐らくそれらはカップルなのだろう

 対するこちらは……まるでその逆

照「笑い事、で済ませるつもりは無いし。許すつもりもない」

京太郎「手厳しいですね。折角こうして、洒落た場所探したのに」

照「まだ未成年のくせに」

京太郎「でも成人式は今年ですよ」

 他の客からは俺達はどう映っているのか
 年上の彼女に連れられてきた冴えない彼氏

 そんなとこかもしれない

京太郎「……口付けないんですね」

照「アナタと飲む酒なんて無い」

京太郎「酷いですね。お酒に罪は無いのに」

照「そうかもしれない。でも――」


 アナタニハツミガアル


京太郎「ええ、分かってます」



照「また勝手に会いに行ったんでしょ? お母さん、怒ってた

京太郎「あいつの好きだった本のシリーズ。続き読みたいだろうと思って」

照「そう。でも、もう二度としないで」

京太郎「手厳しいですね」

 たかだか本を持っていただけだというのに、この言われよう
 分かっていたことだが、些か居心地が悪い

京太郎「それにしても、凄い連勝記録だそうで」

照「お世辞はいい」

京太郎「いえ。和も尊敬してるって言ってましたよ」

照「……よく生きて帰ってこれたね」

京太郎「あはは。実は右腕に刺し傷があります」

 同窓会に出席し、顔を合わせた途端にズブリ
 まさか有無を言わずにステーキ用ナイフで串刺しにされるとは思わなかった

照「片岡プロは?」

京太郎「アイツはまぁ、付き合ってくれって」

照「まだ返事してないの?」

京太郎「断ってますよ。今までも、これからもずっと」

照「残酷だね」

京太郎「それが俺の罪滅ぼしですから」

 俺は幸せになってはいけない
 だって、それが俺に出来る唯一の償いなのだから

照「それで……私に話って何?」

京太郎「いえ、実は特に理由なんて無いんです」

 本当は――二度と会うことも無いと考えていた
 照さんにとっても、俺にとっても良い事なんて無い

 だけど、なぜだろうか

 和に傷つけられた傷を見る度に……どうしても、この人に会いたくなった

京太郎「ただ会いたかったって、理由じゃだめですか?」

照「反吐が出る」

京太郎「そう……それでいいんです」

 もしかすると、俺は怖かったのかもしれない
 五年も会ってないこの人の怒りが風化していないか?
 自分を許そうなどと、ふざけたことを考えていないか?
 

 それを確かめたくて、こんなマネをしているのだ
 
京太郎「もう充分です。すみません、こんな日に呼び出して」

照「……いい。どうせこの日は毎年、一人だから」

京太郎「同じですね、俺達」

 


京太郎「会計は俺が出しておきます」

照「いい」

京太郎「借りは作りたくない、ですか?」

照「好きに取ってもらっても構わない」

 伝票を取ろうとして俺の手を遮り、照さんはレジへと足を進める
 本当にこの人は――揺るがない

京太郎「でも俺も奢られるわけには……」

照「咲の本」

京太郎「?」

照「……私も、お供えしようと思っていたから」

京太郎「なるほど。なら、ここはご好意に甘えます」

 カランカラン――

 店の外へ出ると、いつの間にか雪が降り始めていた
 白い、白い雪

 あの日とまるで変わらない
 凍てつくような寒さを秘めた……

京太郎「おやすみなさい」

照「……おやすみ」

 互いに背を向け、歩き出す二人
 もう二度と会うことは無い
 不思議とそんな予感がした

 だからかもしれない

京太郎「ねぇ、照さん」

照「……」

 俺の呼びかけにピタリと足を止める照さん
 しかし、その顔をこちらに向けることはない

京太郎「サンタクロースって、いると思いますか?」

照「……」

 なぜこんなことを訊いたのか
 それは自分でも分からない
 だけど、俺は確かに聞いた

照「……いたら、咲を返して貰う」

京太郎「……」
 
 その小さな呟きは雪とともに地面へと溶けて、消えて無くなる
 もう一度振り返ると、もうそこに照さんの姿は無かった

京太郎「咲を返して貰う、か」

 俺だって、そう願うさ
 五年前のあの日をもう一度、やり直せたらきっと
 咲は今でも――ずっと

京太郎「……咲」


 俺はクリスマスが嫌いだ

 12月25日
 それは、俺の幼馴染の命日


 ――宮永咲が自殺した日だ

 



 その日――

 俺は夢を見た

 夢の中の俺は高校生になっていて
 

 初心者ながらあの和と優希と同じ麻雀部に入り
 ずっと、バカやってばかりいた

 そしてそんな日々を送る俺は
 ある日、気まぐれに幼馴染である咲を麻雀部に誘う


 その咲が実はもの凄く麻雀が強くて
 部活仲間がえらく気に入っちまってさ


 それで咲は姉である照さんに再会する為に麻雀部に入った


 それからは破竹の勢いで県大会優勝
 そんで続くように全国大会でも優勝して


 幸せだった


 俺はてんで弱くて、雑用係ばかりやらされていたけど……
 それでも、アイツの力になれることが誇らしかった

 
 こんな人生が送れたら、どれほどよかっただろうか

 
 だけど
 それはやっぱりただの夢で

 起きたら俺は元のとおり、売れない麻雀雑誌のライターだった

 高校が同じ、元彼女の和に今も恨まれていて
 仲がよかった優希からは今でも言い寄られている


 もう、嫌だった
 この世界にアイツがいないことが、存在しないことが

 でも、逃げることは許されない
 アイツの分も生きる


 罪を背負って、苦しみながら――永遠に許されることなく


 それが俺の償いだと思っていた



 しかし、そんな俺の夢は――思わぬ形で実現する
 
 クリスマスの奇跡か、それとも未だに俺は夢の中にいるのか

 分からない

 それでも、この可能性に賭けてみたかった

 もう一度やり直して、アイツを救う

 その為なら俺は――なんでもする

 だから、頼む


 俺にもう一度だけ……チャンスを






~~Retake~~







【12月24日】

 ジリリリリリリリィ

京太郎「ん……」

 なんだ、もう朝か……?
 マズイ。昨日はやけ酒したからな……頭がヤングガンガンする

京太郎「まじぃな……仕事に遅れちまう」

 新人が遅刻だなんて洒落にならねぇ
 さっさとシャワー浴びて出社しよう

京太郎「って、あれ……? ベッド?」

 どういうことだ?
 俺の住んでる安アパートには布団しか無いハズだが……

 というか、ここどこだ?

 なんか実家の俺の部屋に似てるけど……なんだ、妙にガキ臭い

京太郎「いや、待てよ。ここはどっからどう見ても……」

 見覚えのある机
 ポスターに人形……これ全部、昔俺が持っていたものだ

京太郎「なんだってこんな……?」




 














 コンコンッ

京太郎「ん?」

 ガチャッ

「京太郎ー! 朝よ、起きなさい!」

京太郎「か、母さん!? 若っ!?」

「そうだけど、何言ってんのアンタ?」

京太郎「え、えぇ? ってことは俺も!」

 母さんを押しのけて、俺は部屋を飛び出す
 向かう先は洗面所

 そこにあるのは――鏡だ

京太郎「な、なぁ……!?」

 どういうことだ!?
 俺の顔が、中学時代に戻っている!?
 
 背も少し縮んでるし……

京太郎「……アッチは?」ソロー

 なんてこった
 俺の分身も皮かむりさんじゃないか

京太郎「おれのズルムケのマイサンが……」

「何やってるのよ。冬休みだからってボケてんじゃないでしょうね?」

 俺の後を追って降りてきた母さんが怪訝な顔をしている
 この感じ、なんだか懐かしい

京太郎「あ、えっと。母さん、これって夢?」

「は?」

京太郎「いや、ごめん。なんでもないよ」

「どうでもいいけど、なんだか今日のアンタ大人っぽいわね」

京太郎「あはは……気のせいだって」

 ごまかすように水道の蛇口を捻る
 手に触れる水は冷たい

 これは――どう考えても、夢じゃない

 それなら、俺は本当に中学生に戻っている?

 もし、もし本当にそうなら――
 
京太郎「……なぁ、母さん。今日は何日?」

「何日って、イブよイブ。今日は12月24日よ」

京太郎「!!!」

 あの日だ
 俺が咲と別れることになった――運命の日


 そして、咲が自[ピーーー]る一日前

 
京太郎「は、ははっ……なんだよ、マジか」

 




>>10
 文字が変換されたので修正します



 コンコンッ

京太郎「ん?」

 ガチャッ

「京太郎ー! 朝よ、起きなさい!」

京太郎「か、母さん!? 若っ!?」

「そうだけど、何言ってんのアンタ?」

京太郎「え、えぇ? ってことは俺も!」

 母さんを押しのけて、俺は部屋を飛び出す
 向かう先は洗面所

 そこにあるのは――鏡だ

京太郎「な、なぁ……!?」

 どういうことだ!?
 俺の顔が、中学時代に戻っている!?
 
 背も少し縮んでるし……

京太郎「……アッチは?」ソロー

 なんてこった
 俺の分身も皮かむりさんじゃないか

京太郎「おれのズルムケのマイサンが……」

「何やってるのよ。冬休みだからってボケてんじゃないでしょうね?」

 俺の後を追って降りてきた母さんが怪訝な顔をしている
 この感じ、なんだか懐かしい

京太郎「あ、えっと。母さん、これって夢?」

「は?」

京太郎「いや、ごめん。なんでもないよ」

「どうでもいいけど、なんだか今日のアンタ大人っぽいわね」

京太郎「あはは……気のせいだって」

 ごまかすように水道の蛇口を捻る
 手に触れる水は冷たい

 これは――どう考えても、夢じゃない

 それなら、俺は本当に中学生に戻っている?

 もし、もし本当にそうなら――
 
京太郎「……なぁ、母さん。今日は何日?」

「何日って、イブよイブ。今日は12月24日よ」

京太郎「!!!」

 あの日だ
 俺が咲と別れることになった――運命の日


 そして、咲が自殺する一日前

 
京太郎「は、ははっ……なんだよ、マジか」

 



 やり直せる
 もしこれが夢でなく、現実なら

 俺は――咲を救える

 助けられるんだ!

京太郎「母さん! 俺、でかける用事がある!」

「あら、デートかしら?」

京太郎「ああ、勿論!」

 慌てて階段を駆け上り、自分の部屋へ戻る
 記憶が確かならカレンダーに……

京太郎「やっぱり!」

 書いてある
 赤い○と十八時に公園で待ち合わせ、と

 やっぱり俺は咲と約束している

 あの時と同じように!

京太郎「やった! やったぞぉぉぉ!!」

 助けられる
 咲を、生かすことが出来る

京太郎「ひゃっふー! イェーイ!!」

 もうこれが夢か現実かなんてどうでもいい
 咲が生きている

 その事実だけで俺は―― 

京太郎「母さん! 朝飯!!」

「もう、騒がしい子ね」

京太郎「へへへ、母さんはやっぱり最高だ!」

 焦ることは無い
 もう選択を間違うことは無いのだから

 あの日と同じように、同じ場所に向かい
 
 ただ、違う言葉を紡げばいい

 それだけで俺の人生は180度変わる

 そう、たったそれだけで





  
【12月24日 17時40分】


 それからはもう、充実した一日だった
 母さんの作る料理を食べるのも久しぶりだったし、懐かしいカピにも会えた

 おまけにエネルギー溢れる中学生の体は疲れない

 はやる気持ちを抑えきれず、公園まで全速力で走ってきても
 俺は全然息を切らすことも無かった

京太郎「残り二十分――」

 厳密に言えば、咲は十五分前にここに現れる 
 前回は俺が五分遅れて……咲の奴が、二十分も待ったと怒り出したんだ

京太郎「五年も前のことなのに……今でも覚えてる」

 頬を赤らめる咲
 気恥ずかしそうに手編みのマフラーを差し出してきた咲

 その仕草の一つ一つが、今でも鮮明に蘇る

京太郎「大丈夫、お前は俺が守ってやるから――」

 もうあの時のような失敗はしない

 逃げたりしない
 恐れたりしない

 俺は咲のことを――


「はぁっ、はぁっ!」

京太郎「ん?」


 声がした
 急いでいるような、少女の息を切らせるような声

 誰かがこちらに急いで走ってきているようだ

 もしかして咲か?

京太郎「……」

 緊張する
 なにせ、こうして咲と会うのは五年ぶりなのだから

京太郎「へへっ」

 最初はなんて言おうか
 いつも待たせてばかりいたし、たまには遅い!と怒ってみようか

 そうして泣き出しそうな顔のアイツを……そっと抱きしめよう

 そして言うんだ

 お前が好きだ
 俺と付き合うんだから、東京へは行くなって

京太郎「……」

 そんなキザなセリフ、想像するだけで笑えてくる
 でも、これが男の仕事なんだよな

 だからキチンと言わなくちゃいけない

「ぜーぜー、間に合った」

 木の陰の向こうに到着したのか
 乱れた息を整えている

 俺に気づかれてるとも知らず、間抜けな奴だ



京太郎「出てこいよ」

「!!」

京太郎「待ってたんだぜ」

 木の奥の影が……ゆらりと動く
 気が付けば頬に冷たい感触

 あの時と同じタイミングで……雪が降り始めたのだろう

 何も変わらない
 この世界はあの世界と同じなのだから

 だから、俺が違う選択をしない限り
 何も変わらない

 全て、同じハズなんだ


「……えへへっ、待った?」

 ただ


 決定的に


 絶望的なまでに


京太郎「えっ……?」


 あの日とまるで違うのは



        /   /  //  . :〃  . :iト、|:. |             ヽ    ヽ  ヽ
      乂 .′ / ,イ .:/ !   . :i| |:. |\: .                  ハ
      .′ i`ーァ′/ ! .:i |   . : | |:. |  \: .  ヽ: .  ____ i-‐ ´   .
     .′  !/ . : ′| .:| |   . : | |:. |   \: .        ̄| ̄ ̄ `ヽ:
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    j〃 . :i|  :|. :|‐===┼-  | : j   -‐     \: .    . : |   . :|: . |
    /  . :i|  :{. :!  \八  . : | jノ   , -‐ __,,.⊥   . : }   . :|: . 人
   ′ . : 八  Ⅵ ≫=ミ、 . : !     ≫≦Y⌒'マハ:、  . : .′ . :|: . : .\
   i . :i    . :\{ハ 《  )i:::::::ハ\{     ″{ .)::i::::::::::}::} 》 . : /  . :/!: . \: .\
   | . :|   . :i   '. ヾ い;::::::jj         八∨乂 _;ノ:ノ  . :/  . :  |: .    : .`ー-
   | . :|   . :| . :| . :l'.   V辷ク            ゞ゚-‐ '  . :/   . :/ . :|: .  .
   | . :|   . :| . :| . :|ハ               /    . :/   . :/ .:.:|: .    : .
   | . :|   . :| . :| . :| :.       ,        /  . . : .′ . / . : :|: .     : : . .
   | . :|   . :| . :| . :|  :.             /  ,. : ,イ  . :/  . : 人: .       : : : . . .
   |..:i:|   . :| . :| . :|   ゝ.     、   ノ .′ // / . : : /  . :.:/  \: .\: .
   l :从  . : :| . :| . :{   / > .        { /'   / . : / . : : .:′    \: .\: .
   乂{: \. : :!\〉、:\_/   . : .:〕jッ。.     . ィV`ヽ /. :/ . . : :/       \: .\: . .
    `\ \{   \;/  . : .://{{   ` ´ | |│ ,// . : .:/             \: .\: . .


「お待たせ、京ちゃん!」

京太郎「なっ……!?」


 そこに居たのが
 俺の知る幼馴染では無いということ




京太郎「確かお前は……大星、淡?」

淡「えへへっ! せーいかい! って、当たり前じゃーん!」

京太郎「なんで、なんでお前が……?」

 こいつは確か照さんの後輩で……それでプロの入った奴だ
 一度取材もした事がある

 ひょうきんな奴だが実力もあって……

京太郎「(って、そんなことどうでもいい!)」

 問題はなぜこいつがここにいるかということだ
 そもそもこの頃の俺はコイツと面識が無いハズ

 なのにこの馴れ馴れしさはなんだ?

淡「どうしたの?」

京太郎「いや、その……人違いだったみたいで」

淡「へ? 人違い?」

京太郎「あ、ああ。俺はその、別の人を待ってるんだ」

淡「えぇぇ!? 酷いっ! 今日は私と約束してたのに!」

京太郎「え?」

 こいつと約束?
 一体なんの話だ?

 俺は咲としか約束していないハズだ
 そもそも、こんな奴知りもしないんだから

淡「あ、分かった。私の方が遅かったから意地悪してるんでしょ?」フフーン

京太郎「は?」

淡「ごめんね。でも、これでも急いだんだよ?」

京太郎「ちょ、ちょっと待て! なんなんださっきから!」

 急に俺の手を握ろうとしてきた大星から思わず、後ずさってしまう
 こいつ俺を誰かと勘違いでもしてるんじゃないのか?

淡「どういうこと?」

京太郎「俺はお前なんか知らないし、ふざけるなら別の奴にしろ」

淡「はい?」

 俺が何を言っているのか、まるで理解出来ないといった表情の大星
 こいつ、マジで頭がおかしいんじゃないか?

淡「そんなに怒ってるの? だったら謝るよ、ごめん」

京太郎「いや……分かってくれればいいんだ」

淡「でもさー、流石に最愛の幼馴染にはもうちょっと寛容でもいいじゃん!」

京太郎「最愛の……幼馴染?」

淡「今日は折角のクリスマスデートなのに……ばかばか」

京太郎「お前が俺の……幼馴染、だと?」

 理解出来ない
 俺の幼馴染は咲一人

 それ以外に幼馴染なんていない

 なら、こいつはなんだ?

 こいつが幼馴染だとしたら、咲はどうなる?



淡「おばさんにチクるからね! んべー!」

京太郎「な、なあ? 一つ聞いてもいいか?」

淡「うん? どうしたの?」

京太郎「お前、宮永咲って知ってるか……?」 
 
淡「誰それ?」


京太郎「……」

 まさか
 そんなことが有り得ていいのか?
 
 だってこれは……神様がくれたやり直しのチャンスなんだろ?

 そうじゃなければ……俺は一体なんの為に……

淡「ねーねー、それよりさ! 京ちゃんに見せたいものがあるんだー!」

京太郎「京ちゃん……」

 コイツが、なぜ俺を京ちゃんと呼ぶ?
 そう呼んでいいのは咲だけだ

 俺の幼馴染の咲
 俺の本当の幼馴染だけなんだ……!

京太郎「……やめろ」

淡「なんだと思うー? んっふっふー、京ちゃんが前に欲しがってたものだよー!」


~~咲「なんだと思う? えへへ、京ちゃんが前に欲しがってたものだよ!」~~


京太郎「やめろ」

淡「なんだろうねー! 気になっちゃうよね!」

京太郎「やめろ……!」

淡「ジャジャジャジャーン!! 手編みのマフラーでーす!」

京太郎「やめろ!!!!」

淡「えっ」

 気が付けば、俺はその手を叩いていた

 一挙手一投足
 その全てがアイツにダブって仕方ない

 でも、目の前にいるのはアイツじゃない

 ただの偽物

京太郎「アイツと同じ言葉を……同じ行動をするな」

淡「え、え?」

京太郎「そのマフラーは……咲の、咲が作ったものなんだ」

淡「ち、違うよ京ちゃん。これは私が――」

京太郎「うるさいっ! 黙れっ!!!」

淡「ひっ!?」

 


淡「どうしたの京ちゃん? 本当に怖いんだけど……冗談、だよね?」

京太郎「お前は幼馴染じゃない」

淡「なんで、どうしてそんなこと言うの?」ブルブル

京太郎「違う、お前じゃない……違うんだ」

淡「どういうこと? ちゃんと説明して」

京太郎「黙れ!! こんなもの、お前に貰っても嬉しくなんか!」

淡「あっ……」

 アイツが編んだマフラーと同じ柄
 同じ色のマフラー

 違うのは端に書かれた文字

 KYOU AWAI

 そこはSAKIじゃなきゃダメなんだ……

 だからこれは、偽物だ

 偽物なんていらない

京太郎「こんなものっ! こんなものっ!!」ビリビリィッ

淡「あ、あっ……」

京太郎「どうしてお前なんだ!! お前なんか、お前なんかぁぁあ!!」

淡「ヒック……酷いよ、グスッ、今日……ちゃんと言おうって決めてたのに」

京太郎「……」

淡「どんなに酷いこと、ヒック、されても、私……」


 頭の中はもう爆発寸前だった
 何がなんだか分からず、何が正解かも分からない

 ただひとつだけ

 ハッキリと理解しているのは


淡「私――京ちゃんが好きだよ」


京太郎「うわぁぁぁぁあぁ!!!!」


 俺の罪は
 この世界でも――許されはしないらしい



 プロローグ終了
 次の更新より、安価が始まります

 基本的につまらない話ですが、出来ればお付き合いお願いします

淡たそでいいじゃん(いいじゃん)
ちょっと気後れしたくらいでころたんするメンヘラはポイーで

咲が死んだのは中学時代なのに和に恨まれてるのはなんで?咲とは関係ない話?

中学で咲亡くなって、高校で優希和と仲良くなった設定なんだろうけど

大人になるまでこんな鬱屈した性格だった京太郎が優希に好かれたり和と付き合えるアクションとれたとはとてもじゃないが信じられないのだが

おもち目当てに麻雀部はいることもないだろうし、照との接点も不明
咲が麻雀強いのを中学時代から知ってた設定なのん?

安価次第や(適当)


>>25 >>28
 そこらの話は近いうちに描写していこうかと思います


 それではいよいよ、物語を進めていきますね
 どういう展開になるか、正直そんなに決めてません

  




 単純な日々を恐れていたのは、もう遠い昔
 複雑な日々こそ悲しいことを知ってる

 戻りたいとかじゃなくて信じたい

 心がほら、背中で叫んでる
 間違ってなんかいないって


 同じ時を刻んで 
 同じ未来信じてた二人

 昨日の涙も 今日の笑顔も現実のまま

 同じ痛みを知って
 同じ優しさ持ち寄って

 明日を生きて行ける

 強さに変えていけたなら

 
 あの時にあの場所にいて
 戦っていた自分が全てが

 今を選ぶ為だったとしたなら

 向き合えず、置き去りなまま目を逸らしていた過去を

 許したいと思うのは
 許されたいからなのかな?

 俺達がただ自由でいられたあの頃は遠くて

 無邪気な笑顔だけじゃ
 もう今は過ごせないけど

 
 俺は進んでいく 
 それでも進み続けていく


 何かを信じられる心が残ってるなら――
 




なんかの歌詞?京ちゃんのポエムノートなの?


 咲が死んだ
 それを聞いたのは、咲と別れて一週間後の話だった

 家を訪ねて来たのは、咲の両親と姉の……照さん

 いきなりの来訪に戸惑う俺に、照さんは言った

「咲を返して」

 意味が分からなかった
 だって、俺から咲を奪ったのはこの人達だから

 両親が別居中だった咲を、無理やり東京へ連れて行ったのはこの人達なんだ
 
 嫌がる咲がこっちに未練を残したら問題だと思い、俺は心を鬼にした

 二人の関係を壊すように……いや、これ以上進展させないように
 俺は逃げた
 咲の為という建前に隠れて、自分の心を偽った 

 それなのに、奪った張本人であるこの人達に自分がどうして責められる? 
 
 そう思う俺を冷たい瞳が射抜く


「咲は自殺しました」

 咲の母親らしい、その人は……なんの感情も篭ってない声で言った
 あまりの自然な言葉に、俺はただ呆然と立ち尽くすしかない

 嘘だと思った

 冗談かドッキリか何かだと、信じたかった

「遺書にはただ一言、こう書いてありました」

 だけど
 次の言葉が俺を……永遠に苦しめることになる


「生まれ変わったら京ちゃんの幼馴染じゃなくて恋人になりたい」


 平手打ちが、乾いた音を生んだ
 目に涙を溜めた少女が、ずっと俺を睨み続ける

 許さない

 その瞳に込められた意思を感じ取って
 俺はようやく、事態を飲み込めた

 ああ、そうか



 俺が、咲を殺したんだ――





 



~12月25日~

 また、あの日の夢を見た
 それはきっと……昨日の出来事が関係してる

京太郎「……」

 目覚めは最悪
 しかも、またこの世界に起きてしまった

 咲の存在しない……偽りの世界で

「あら京太郎? 早起きね」

京太郎「おはよう」

「サンタさんのプレゼント、どうだった?」

 そう、今日はクリスマス
 ……咲の命日だ

京太郎「ああ、最高のクリスマスプレゼントだったよ」

 こんなクソったれな世界での目覚めという、ね

「ふふ、昨日は淡ちゃんと楽しいデートだったんでしょ?」

京太郎「……咲だよ」

「サキ? えぇっ!? おめかしして出かけてたのは別の子なの!?」

京太郎「……」

 どうやら、本当に咲はこの世界に存在していないらしい
 その代わりがあの女

 大星淡

 俺の、大事な幼馴染の場所を奪った――女

京太郎「ごめん、俺ちょっと出かけるよ」

「あ、うん。気を付けなさい」

 昨日はあのまま、泣きじゃくる大星を置いて帰った
 もし、この世界が元の世界と同じなら……アイツも自殺するのだろうか?

 分からない
 でも、正直どうでもよかった

 俺にとって、取り戻したいのはただ一人

 咲だけなんだ……




 家を出て、白銀に染まった道を歩く

 懐かしい風景
 咲との思い出が詰まったこの道を……歩く

 不思議だ
 アイツはいないのに、存在しないのに

 心が癒される
 いや、癒されたように思いたいだけなのかもしれない

 でもどちらだって同じだ
 今の俺にとっては……

京太郎「……」
  
 気が付けば、いつの間にか俺の足は咲の家へと向かっていた
 昨日のは何かの間違い

 そう思い込みたかった

京太郎「……大星家、ね」

 だけど現実は非情だ
 表札の文字を忌々しげに眺め、帰路に着こうと振り返った

 その時だ

淡「京ちゃんっ!」

 声がした
 聞き慣れたフレーズを……聞き慣れない声が言う

 それだけのことが、どうしてこんなにも

 心をざわつかせるんだ?

淡「待って! 行かないで!」

 玄関を勢いよく開ける音と
 慌てて駆け寄ってくる足音が聞こえる

 どうやらこの世界の幼馴染さんは無事らしい

淡「ね、ねぇ……こっち、向いてよ」

京太郎「……」

 俺は――


1 無視して帰る

2 振り返って話す

3 悪態を吐く


 ↓2




京太郎「……なんだ?」

 振り返る
 大星は昨日の服装のまま……泣きはらした眼で笑っていた

 どうやら昨日帰宅して、そのまま泣き疲れて寝てしまったらしい

 アイツも  
 咲も、同じだったのだろうか?

 俺が冷たくしたことで、泣いて、苦しんで……
 それで、最後に死を覚悟した

 それに比べてコイツは――生きている

淡「え、えへへ。ごめんね、こんな格好で」

京太郎「話があるなら、早くしてくれ」

 咲は死ぬ気で俺のことを好きでいてくれた
 なのにコイツが……なんで、こんな女が

淡「昨日はごめんなさいっ! きっと私が怒らせちゃったんだよね?」

京太郎「……は?」

淡「だから、仲直りしよっ? ねっ?」

 なんでコイツは笑ってるんだ?
 あれだけのことをされたのに……

京太郎「大星、俺は……」

淡「やめてっ!!」

京太郎「!」

淡「そ、そんな他人行儀な呼び方……京ちゃん、らしくない」

京太郎「……」

 手編みのマフラーを破られ、デートを台無しにされても怒らなかった奴が
 呼び方には相当にご執着らしい
 
京太郎「(なら……)」
  
↓2のコンマ

0~9  無視して帰る
10~39 大星さん
40~69 大星
70~89 淡
90~99 あわあわ


もしゾロ目だったらどうなっていた?
一応聞いておく


>>44
 淡エンドということで


京太郎「分かったよ、淡」

淡「京ちゃんっ!」パァァ

 別に呼び方なんてどうでもいい
 こっちの世界でコイツが幼馴染だって言うなら、それらしく振舞ってやる

京太郎「だけどな」

淡「え?」

京太郎「その”呼び方”はやめろ」

淡「ど、どうしたの京ちゃん? やっぱり口調が変だよ……」

京太郎「分かりやすく言うぞ。その京ちゃんって呼び方をやめてくれないか?」

淡「どうして? 今までだってずっと……」

京太郎「ダメだ。そう呼んでいいのは……咲だけなんだ」

淡「サキ? また言ってる、誰なのその人」

京太郎「お前には関係ない」

淡「あるよ! だって京ちゃんのことだもん!!」

京太郎「黙れっ!!」

淡「っ!?」

 淡の肩口を掴む
 突然のことに、淡はただ動揺するしかできない

京太郎「いいか? もう一度その呼び方をしてみろ!」グッ

淡「痛い、痛いよぉ……」

京太郎「ちっ」

 涙目の淡を押しのけるように解放する
 恐怖で腰が抜けたのか、ヘナへナと地面に腰を落とす

京太郎「……じゃあな」

淡「待って! まだ話は終わってない!」

京太郎「……」

 今度は振り返らない
 こんな偽物を相手にしていても、時間の無駄だ


淡「どうして、ヒグッ、こうなっちゃったのかなぁ……?」グスッ





 大星淡にとって、須賀京太郎は最愛の人であった

 物心付いた頃からずっと一緒
 幼稚園から小学校、そして中学校までの間ずーっと

 ずっとずっと同じクラス

 何をするにも一緒
 京太郎がハンドボールを始めれば、自分はマネージャーを務めた
 
 同じ金髪で、顔立ちも似てる二人はよく兄妹に間違われる
 学校でもカップルというよりは、兄妹だと認識されることが多いだろう

 だけど、淡はそれが何よりも嬉しかった
 京太郎と似ていると言われることが、変えようの無い程の幸福を産んだ

 だけど、いよいよ高校ともなると
 そうも言っていられなくなる

 京太郎を見ているだけで、胸がドキドキする
 胸だけじゃない、頭も、股間も……体中が京太郎を欲しがっていた

 それが、愛欲と呼べるものなのかどうか……それは分からない
 でも、淡は悟っていた

 もう京太郎とは兄妹ごっこじゃなく
 本当の男と女の関係になるべきなのだと

 だから、進学を決める前に告白を決意した

 京太郎と男女の関係になって
 手を組んで、キスをして、いずれは……結ばれる

 ただその為だけに
 その願いの為だけに


 なのに


淡「京ちゃん……なんで?」


 彼は変わった
 まるで、中身が別人になったように……豹変した

 口調も、呼吸も……大人になったみたいに
 彼を求める自分をあざけ笑うように


淡「……咲?」


 彼が何度も口にした女の名前
 もしかして……その女?

 その女が、彼を変えてしまったのか?


淡「……許さない」


 その女が、どこの誰で、何をしたかなんてもはやどうでもいい

 
淡「ふ、ふふっ……アハハハハ!」


 報いは受けて貰う
 そしていずれ――彼を



 取り戻すのだ





 家に戻った俺は、やる事もなくテレビを見ていた
 ソファで寝転びながらぼーっと、ただテレビを見る

 チャンネルを回してもろくな番組が無い

 気が付けば、元の世界の癖で麻雀番組を付けてしまう
 売れないライターだった時の癖だ

「あら、アンタがアニメ見ないなんて珍しいわね」

京太郎「んー、まあな」

 煎餅をかじりながら、ぼんやりと考える

 自分はなぜこの世界にいるのだろうか?


 元の世界からこっちの世界へ


 最初は神様がやり直すチャンスをくれたのかと思った
 けど、実際は違う

 なら、なぜ?

 ニセの幼馴染を見せつけて、俺を苦しめたいのか?
 それとも……

京太郎「……」

 嫌な考えが脳内をよぎる
 だが可能性はゼロじゃない

 最悪のケースを想定しながら、顔を青ざめようとした瞬間


『それでは! インターハイチャンピオン! 宮永照選手へのインタビューです!!」


 テレビの音が、俺の意識を釘付けにした




京太郎「なっ!?」

 思わずソファーから飛び上がる
 画面をまじまじと見ると……確かに、照さんが映っている

京太郎「どういうことだ? なんで、照さんが……」

 この時、俺は自分がとんでもない勘違いをしていることに気づいた


『今年度の大会はどうでしたか?』


 咲が存在しないから、俺は勝手に照さんもいないものだと思い込んでいたのだ
 だけど、実際にはちゃんと照さんは存在した


照『はい。皆さんとても強くて、とても大変でした」


 つまり、それは


『来年度の活躍も期待されていますが、どうですか?』


 一つの可能性も表していた


照『どうでしょうか? 来年は凄い選手が来ますから』


 俺の幼馴染としての咲は存在しない
 それは確かだ


『おぉーっと! 宮永選手のイチオシ選手がいるようです!!』


 でも、でもこの世界にはちゃんと――


照『はい。それは――』


京太郎「居てくれるのか……?」


照『私の最愛の妹、咲です』


 宮永咲 は 存在する





京太郎「う、うぉぉおおおお!!!」

 歓喜の声が、自然と溢れた
 
京太郎「咲が、生きてる!! ちゃんと生きてる!!」

 俺の近くには居なくても
 照さんの妹として

 ちゃんと、この世界に存在するんだ!

京太郎「やったぁぁぁあ!!!」

「ちょっと京太郎! 今電話中よ!!」

京太郎「あっはっは! ごめん母さん! でも、でも嬉しいんだよ!!」

 テンションが上がるのも無理もない
 だって、絶望の底から救い出されたんだから

京太郎「あはっ、咲! やったな、咲!!」

 しかも、俺の幼馴染でない以上
 咲が自殺する原因も、何も無い

 麻雀をやってるみたいだけど、照さんの妹だ
 才能があって、プロになって、幸せになるに決まってる

京太郎「っしゃああ!! 咲、おめでとぉぉぉ!!」

 嬉しかった
 何よりも、咲の無事が嬉しかった


 でも、俺は知らなかった


 いや、知ろうとしていなかった



「もう、京太郎ったら。あら、ごめんね淡ちゃん。それで、質問なんだったかしら?」

淡『いえ、もう大丈夫ですおばさん』

「え? なんかサキって人がどうとか……」

淡『私も今、テレビで確認しました。京ちゃんの声も、聞こえましたし』

「あらそう? あの子ったらそのサキって子とデートもしたみたいでね」

淡『デート?』

「そうそう。私てっきり、昨日は淡ちゃんとデートだとばかり」

淡『……宮永、咲』

「あの子も隅に置けないわねぇ。私、てっきり淡ちゃんと結婚するものと……」

 ブツッ ツーッ ツーッ

「あらやだ。電池切れかしら」

 この世界は
 俺の居た世界とまるで違う

 そして”この世界の俺”を消して、俺がここに存在しているということ


 その意味を――まだ


京太郎「咲ぃぃぃ!!」


 俺は知らない


 
 今日はここまでになります
 次はもっと盛り上げられるよう、頑張ります

おもしろいぞ
前BLACH クロス書いて無かった?


>>54
 それは多分、規制のゴタゴタで生き別れになった双子の弟です
 今となってはそれしか言えません

 


bleachの生き別れの人か
なら最初のポエムも納得
機会があればオサレスレを復活させて欲しかったり


>>61
 前回と今回のポエムは自作じゃなく、歌詞の引用です
 ご希望があれば、今回から自前のポエムにします


 
 大方の質問に答えると、淡救済エンドはあります
 しかしそれを成功させるには皆さんの協力が必要かと

 頑張ってくださいませ


 
 愛を語るキミの瞳は偽り無く

 それを彩る優しい言葉が
 たとえ私の心を満たしたとしても
  
 愛を騙るキミはまがいもの

 
   

~~Please look for a Dearest~~ 



 彼女は俺に『人殺し』と言った  
 妹を死に追いやったのは俺だと

 俺は泣かなかった

 あまりにもその言葉が残酷過ぎて
 
 俺は受け止められなかった

 あまりにもその事実が真実に近すぎて

 
 闇の中で

 あるいは、光の届かない影の奥底で

 俺はただ生きることしか出来なかった

 背負い続けることしか許されなかった


 もしも
 あの選択をもう一度やり直せるとしたら


 俺はきっと――





~12月26日~

 その日はこれまでの人生に置いて、最高の目覚めだった
 
京太郎「……」ギュッ

 頬を抓る
 めちゃんこ痛い

 つまり、これは夢じゃない

京太郎「パソコン!!」

 慌てて居間まで駆け足
 電源を入れ、ネットを立ち上げる

 検索するワードは……宮永照

京太郎「出た……!」

 今年度のインターハイ優勝者
 昨日の番組に出た時の評判、妹の存在についても書かれている

京太郎「は、あはは……やった」

 何もかも杞憂に終わった
 咲はキチンとこの世界に存在する

 夢じゃない
 現実なんだ

「京太郎、最近早起きね」

京太郎「ああ。トーゼン!」

 うかうか寝てなんかいられない日々だった
 元の世界でも、仕事に追われ……罪に苛まされ

 安眠なんて、この五年間まるで無かった

京太郎「でも、これでようやく――」

 何も憂う必要が無い
 咲が生きて、幸せであるなら

 俺はもう、死んだっていいのだから



京太郎「咲、か」

 しかし、そうなると今度は違う問題が発生する
 というのは、この俺の存在だ

 咲が無事である以上、俺はもう満足した
 こっちの咲は俺のことなんか知る由も無いし、会う必要も無い

京太郎「(まぁ、無事な姿を一目見たいって気持ちはあるが……)」

 だけど俺にそんな資格は無い
 アイツを死に追いやった張本人が、どの面下げて会えるってんだ

京太郎「(今が中3の冬。てことはもうじき受験だよな……?)」

 元の世界の俺なら清澄高校に進学して
 和と出会って……付き合う流れになるのか?

 思えば、咲を思うあまりアイツにも酷い事しちまったな

京太郎「(和にも、会わない方がいいのかもしれん)」

 今からなら進学校を変えることも出来る

 だが、そうなると優希に出会えないのは残念か  
 
 アイツの底抜けの無い明るさには、幾度となく救われたものだ


京太郎「なぁ、母さん。俺って進学先決めてたっけ?」

「え? 淡ちゃんと同じ清澄高校でしょ?」

京太郎「あ、いや。確認だよ、確認」

 やっぱり清澄か
 うーん、和と出会わないようにすればいいだけだし

 それに、あの淡が一緒だってのもな……

京太郎「ああもう、くそ! 悩んじまう!」

「はぁ?」



 


 人いないかな?
 一応ここから大幅に物語変わるので、説明パート

 
1 白糸台ルート
・白糸台高校に入学し、咲を支えに行きます
・自分を知らない咲、自分を追い求める淡などに苦悩する京太郎がメインとなります
・咲よりのルート

2 清澄ルート
・清澄高校に入学し、咲と再会するのが目的となります
・咲への嫉妬に燃える淡と、夢に出てくる少年を捜す咲。そんなこと知らない京太郎がメインとなります
・淡&和よりのルート

3 他県ルート
・咲も淡も和とも関わらないことを決め、遠征した京太郎がメインとなります
・そこで出会った少女達の支えになる為に協力し、全国大会を目指す京太郎がメインとなります。
・全国キャラよりのルート ※選ばれた県のキャラのみ優遇


 どのルートに進んでも
 咲・淡・和のエンドには確定で進めます

 まだ安価は出さないので、質問とかあればお早めに

 

誰かに刺される可能性はありますか
ていうか、この京太郎のメンタルは弱め?

周回プレイとかすんの?


>>82
 よっぽど穿った選択を選び続けない限りは無いかと
 ただ、咲を刺したと思ったら雛森が刺されているという展開はあるかもしれません

 あと、ここの京太郎はよくも悪くも咲キチなだけです


 京太郎からすると元の世界の流れは


~中3~

・幼馴染が親の都合で転校するからと、告白してくる
・彼女の重荷になってはいけないと強めに断る

・好きだった幼馴染が自殺する

・遺族から糾弾される


~高校時代~

・悩みつつも明るくなろうと務める

・仲良くなった和に好意を持たれ、付き合う

・でもやっぱり咲が好きなので本気になれない

・彼女が切れてメンヘラになり始める

・なお未だ遺族から糾弾されてる模様


~売れないライター時代~

・まともに就職できず、なんとかやれた仕事がよりにもよって麻雀雑誌のライター

・仕事で疲れて帰り、毎日あの日の悪夢を見る日々

・元彼女には未だに粘着されている ※牌のおねえさん二代目はメンヘラとして有名 

・まだまだ遺族から糾弾される。なお許される予定は無い模様



>>83
 決めてません
 周回というよりは、直前セーブでエンド回収とかかも

 ようはやる気次第ということで



 では安価出します

 
 
1 白糸台ルート

・白糸台高校に入学し、咲を支えに行きます
・自分を知らない咲、自分を追い求める淡などに苦悩する京太郎がメインとなります
・咲よりのルート

2 清澄ルート
・清澄高校に入学し、咲と再会するのが目的となります
・咲への嫉妬に燃える淡と、夢に出てくる少年を捜す咲。そんなこと知らない京太郎がメインとなります
・淡&和よりのルート

3 他県ルート
・咲も淡も和とも関わらないことを決め、遠征した京太郎がメインとなります
・そこで出会った少女達の支えになる為に協力し、全国大会を目指す京太郎がメインとなります。
・全国キャラよりのルート ※選ばれた県のキャラのみ優遇


 ↓7 までで多い方にします
 埋まらなければ、埋まるまで更新はお待ちを




京太郎「まぁ、いいか」

 うだうだ悩んだって仕方ない
 そもそもこっちの俺は咲とは関係が無い
 
 咲を追う必要なんて無いし、こっちはこっちで頑張らないと

京太郎「(ちゃんと勉強してないと、またライターに戻るし)」

 今できることをやろう
 和とのことはともかく、淡のこともあるし

京太郎「(でもなぁ……淡だけはどうしても)」

 アイツといると咲を思い出してしまう
 それは、とても悪い意味で

京太郎「(なんていうか、クリカンルパンを初めて見た時の感じだよな)」

 声は似てるけど演技が足りない
 その歪みがどうしても、自分の中に嫌悪感を生んでしまう

京太郎「……」

 でも、慣れちまえば向きあえるかもしれない
 大丈夫……だよな?

京太郎「うん。そうだ」

「あんた、やっぱり変よ?」

京太郎「いや、なんでもない。あ、そうそう母さん」

「なに?」

京太郎「俺、頑張るから」

「……??」

 思えば、母さんにはとても心配をかけてしまった
 でも、これからの人生は違う

京太郎「よし、まずは勉強だ!」

「えっ」

京太郎「参考書、買ってくるよ」

 このリトライした人生
 台無しにするわけにはいかない

 なぁ、そうだよな?

 咲――




 


~12月26日~


 その日の目覚めは最悪だった

咲「……」

 コンコン

咲「はーい」

照「咲、おはよう」ガチャ

咲「お姉ちゃん。おはよう」

照「昨日はよく眠れた?」

咲「うん。ぐっすり」

照「よかった。またあの変な夢みたりしてない?」

咲「……うん、大丈夫」

 心配そうに私を抱きしめるお姉ちゃん
 たまにおっちょこちょいだけど、優しいお姉ちゃんが私は大好きだ

照「朝ごはんできてるから、早く降りて来てね」

咲「うん。すぐ行くよ」

 そんなお姉ちゃんに、私は嘘を吐いている
 ごめんなさい

 でも、心配させたくないから


照「……もう、失わない」ボソッ


咲「?」

 バタン

 あれ? 今お姉ちゃんなんて言ったんだろう?
 よく聞こえなかったな……

咲「それにしても、あの人……また夢に出てきたなぁ」

 雪が白く降り積もる公園
 マフラーを巻いて、私を悲しそうな瞳で見つめる少年

 金髪で顔はちょっと……かっこいいかも

咲「見覚え、ある気もするんだけど……」

 でも、私はその人を知らない
 凄く懐かしい、確かな感覚はあるのに

咲「ねぇ、夢の中の人――」

 分からない
 でも、いつかどこかで会えるような気がする

 そんな予感

咲「アナタは誰ですか?」

 ひょっとして、私は――





~12月26日 14時12分~

 
店員「あまり難しい参考書を使うなよ、馬鹿に見えるぞ」

客「貴様ァァァ!!」

 ウィーン

京太郎「さて、参考書も買ったしどうすっかな」

 早速家に帰って勉強するのもいい
 だけど折角中学生に戻ったんだしなぁ

京太郎「どこか寄り道して帰るとしよう」

 これからはろくに遊べないし
 特に仕事を始めてからは……うん


1 図書館

2 タコス屋

3 喫茶店

4 ゲーセン

5 淡の家


 ↓2


1 勉強したいんだろうし

ところで、和にも性格改変かかってるんですか?
あの、人に興味の無い和と「・仲良くなった和に好意を持たれ、付き合う」になる経緯がまったく想像つかない


>>106
 リーディングシュタイナー持ちかどうかは安価次第

 過去編は和出現時にでもみっちり描写します
 実は割と高校最初はイケメンだったんですよ、この咲キチの京ちゃん


  
京太郎「淡の家にでも寄るか」

 正直気は進まないが、アイツには酷い事ばかりしてるし

京太郎「うん、ようは慣れだ慣れ!」

 とにかく自分から積極的にならないと
 一応アイツに取っちゃ俺は幼馴染なわけだし……

京太郎「……我慢だ、我慢」

 さて、あいつの家はこっちだったな


~12月26日 14時30分~


京太郎「……」ポチッ

 ピーンポーン

『はい』

京太郎「あの、須賀ですけど淡さんいますか?」

『あら! 京太郎君! はいはい、待っててね!』

 ドタバタンッ ダッダッダッダッ

 ガチャン

淡「あっ……」

京太郎「よっ。今、大丈夫だったか?」

淡「う、うん……大丈夫だよ」ソワソワ

 やっぱり昨日の事気にしてるのか?
 どこか淡の様子がおかしい

京太郎「少し話したいんだけど……」

淡「うん。じゃあ、用意するから待ってて」

 そう言うと淡は家の中に戻っていく
 数分もして戻ってきた淡は、可愛らしい私服に着替えていた

淡「お待たせ、行こっ」

京太郎「……」


 ↓2のコンマ

0~9  返事しない
10~39 「ああ」
40~69 「雪、気をつけろよ」
70~89 「可愛いな」
90~99 手を握る

ゾロ 雪で滑った淡を抱きしめる



京太郎「可愛いな」

淡「ふぇっ!?」ドキッ

京太郎「……その服、似合ってるぞ」

淡「んふふ……// 急にどうしたの? ご機嫌取りのつもり?」モジモジ

京太郎「あ、いや。素直にそう思っただけだよ」

淡「ふーん、まぁ! 当然だけどねっ!」ギュッ

京太郎「おい、なんだよ袖なんか引っ張って」

淡「べっつにー! なんでも無いよーだ」

京太郎「おいおい」

 途端に嬉しそうにはしゃぎ出す淡
 こいつ、思ったより咲に似てないかもしれん

京太郎「(その方が助かるし、嬉しいんからいいけど)」

淡「私の可愛さは中学100年生レベルだからね!」

京太郎「あ、そう」

淡「もー!! 馬鹿にしてー!」ポカポカポカ

京太郎「いたた、やめろっての」グリグリ

淡「むぅー!」プクー

 
父「……」ニヤニヤ

母「……フフ」ニヤニヤ


京太郎「なんか玄関から覗いてるぞ」

淡「こらぁー!! えっちへんたーい!!」

両親「「フフフ……」」

 バタン

淡「全く! デリカシー無いよね、うちの親」

京太郎「(一家揃って割とおかしいな)」

 やっぱり、全然違う
 それに少しだけ……しっくり来た

京太郎「(この世界の俺は、どんな奴だったんだろうか……?)」



  


~~14時40分~~

 淡の家から、俺達は公園へと移動した
 あの日、俺が淡のマフラーを破いた公園

 咲と最後に分かれた……あの場所だ

淡「はい、ジュース」

京太郎「悪いな。今財布出すよ」

淡「いいっていいって! それくらいお安いもんさー」

京太郎「何キャラだよ」

淡「なんくるないさー!」

京太郎「はいはい、なんくるない」

 バカなやり取りをしながら、ベンチに座る
 淡は俺に密着するように座ろうとしたが、俺の方が少しスペースを空けた

淡「ぐぬぬ」

京太郎「甘い甘い」

淡「甘くないもん淡だもーん」ズリズリ

京太郎「おいこら、やめろって」

淡「こんな可愛い子に言い寄られて嬉しくないのかこいつめー!」

京太郎「うーん」

淡「悩むなっ!」ビシッ

 記憶は無いが、妙に息は合っている
 記憶には無くてもやっぱりこいつとは幼馴染なんだな

京太郎「(でもそうなると、俺はこいつから幼馴染を奪った形になるわけで)」

 ほんの少しだけ罪悪感が生まれた
 だからこそ、こいつの好意に身を委ねるのは憚られる

京太郎「ええい、離れろ」

淡「ちぃ、次はゲットしてやる」

京太郎「何をだよ」

淡「京ちゃ……京くんのハート♪」

京太郎「……」

淡「あれ、スルー!?」

 俺の呼び名を言い直す淡
 思えばこれも、酷いことを言ったもんだ

 こいつの中の京ちゃんとの思い出を、俺は全否定したようなものだし

 ここは……


 ↓2のコンマ

0~9  京くんもやめろという
10~39 取り敢えず保留
40~69 「ごめんな」
70~89 「それ、いいな」
90~99 「京ちゃんって呼んでも、いいぞ」

ゾロ 二人がなんかいいムードになる
 


京太郎「ごめんな」

淡「へっ? 何が?」

京太郎「……京くんって呼び方」

淡「うん、もういいの」

京太郎「でも、京ちゃんって呼びたいんだろ?」

 正直、咲を思い出して辛いけど
 こいつのことを思えばそれを受け止めるのも仕方ない

 だから――

淡「もう、それはいらない」

京太郎「えっ」

淡「過去なんてどうでもいい。私はこれから京くんとの新しい思い出を作るから」

京太郎「なっ――!?」
 
 ま、まさかコイツ!?
 俺が別の俺だって気づいてるのか……?

淡「なーんてねっ♪!」

京太郎「……は?」

淡「考えたら私ももう高校生だし! 京ちゃんなんて子供っぽいじゃんかよー!」シュッシュッ

京太郎「あ、いや、えと」

淡「だからこれからよろしくね、京くん」

京太郎「あ、ああ。分かった」

 なんだ、心配させやがって
 一瞬マジでバレたと思ったぞ

淡「……(サキと同じ呼び方なんていらない。私は私だけの京くんとの思い出を作る)」

京太郎「……ふぅ」

淡「そういえば、進学決めた?」ニコッ

京太郎「ああ、清澄にするよ」

淡「やたっ! また同じクラスなれるといいね」

京太郎「どうだろうな」

 確か咲とは中学までずっと同じクラスだったな
 高校は……咲がいなかったから分からないけど

淡「……部活は決めた?」

京太郎「少なくとも、ハンドはもうやらないな」

淡「あ……うん。そうだよ、ね」

京太郎「気にするなって。それより、お前はどうなんだ?」

淡「麻雀」

京太郎「へぇ、そっか。麻雀好きなのか?」

淡「別にやったことないよ。好きでもないし」

京太郎「はぁ!? やった事ないのに麻雀部なのかよ!」

 確かにこいつには才能がある
 それは知ってるけど、どうして急に……?



京太郎「もうちょっと慎重に決めろよな」

淡「いいじゃん、いいじゃん!」

京太郎「あー、はいはい。好きにしろ」

 和や優希もいるだろうし
 友達には困らないだろう

淡「ねねっ、京くんも入る?」

京太郎「はいっ? 俺がか?」

 冗談はよしてくれ
 俺に麻雀の才能なんて無いし、そもそも麻雀なんて好きじゃない

淡「好きなんでしょ、麻雀強い子」

京太郎「ん? どうしてそうなるんだ?」

淡「私ね、一番強くなるよ」

京太郎「え?」

淡「誰よりも強く強く強くなって、それで全国で一番になる。世界一になる」

 そう語る淡の瞳はゾっとするほどに無機質だった

淡「それでね。その時はもう一度……京くんに伝えたいことがあるの」

京太郎「淡、お前……」

淡「待っててね。私、必ず勝つから」

 そこまで言うと、淡はおもむろに立ち上がり――

京太郎「!!」


 ↓2のコンマ

0~9  走り去っていった
10~39 平手打ち
40~69 手を握る
70~89 抱きつき
90~99 頬にキス

ゾロ 唇にキス



淡「んっ」

 チュッ

京太郎「なっ!?」

 頬に伝わる柔らかい感触
 キス、された……?

淡「んへへ、今はこれが精一杯!」タタッ

京太郎「あ、おい! 待てって!」

淡「じゃあね京くん! 私、これから練習で忙しいから!」

京太郎「淡!」

淡「優勝したら、次は唇だからねー!!」タッタッタッ

京太郎「淡……」

 アイツ、行っちまいやがった
 というか油断してたぞ……ちきしょう

京太郎「アイツ、本当に俺のこと好きなんだな」

 正確には俺じゃなくて、こっちの世界の京太郎だ
 アイツは俺が俺じゃないことを知らずに、あんなことしちまってる

 そんなの……酷い話だ

京太郎「俺にできることはなんだ……?」

 元の世界の俺のフリをして、淡の想いに応えることか?
 それとも――突き放すことか?

 どっちも正しいし、間違ってる

 正解なんて分からない

京太郎「誰か教えてくれよ……」

 答えなんて誰も教えてくれない
 自分で見つけるしかないんだ

京太郎「お前なら、どうする……? 元の世界の俺」

 届くハズの無い呟き
 雪の降り積もる公園で俺は一人

 ずっと、ずっと一人だった


  



 今日はとうとう、待ちに待った日だ
 妹のように思っていた幼馴染みへの恋心の自覚

 そして、明日ようやく告白への踏ん切りが着いたところだ

 デートの約束もある
 きっと、アイツも同じ気持ちのハズだ

 だから、だから大丈夫

 俺はアイツと付き合う
 そしていつか結婚して、子供を作って……

 そうなるもんだと思った

 それが当たり前だって思っていた


~~12月25日~~


 ジリリリリ

京太郎「んぅ……」

 ――目覚めるまでは

京太郎「あれ、ここ……どこだ?」

 見慣れない天井
 ごちゃごちゃと物が散乱した部屋

 どこかのアパートの一室のようだ

京太郎「俺、自分の家で寝てたハズなのに……」

 頭がヤングガンガンする
 記憶がおぼろげだ

 取り敢えず顔を洗おう

 そう思って洗面所を探す為に立ち上がる

京太郎「なんだ、体が思うように動かないな」

 まるで身体から若さが無くなったようだ
 そんなことを考えながら、洗面所を見つけた

 水を流し、顔を洗う
 かけてあったタオルで顔を拭き

 鏡を見る





京太郎「えっ……?」




 そこには知らない顔があった


 違う

 
 正確にはよく知っている顔
 だけど、一つだけ決定的に違う部分がある


京太郎「俺……老けてる?」


 それは――もう一つの物語
 


 と言ったところで今日はここまで
 次から時が進んで高校生編に突入する予定です

 
 それと最後のシーンですが、言わなくても分かると思いますが中学生京ちゃんです
 疑問が出るかと思うので、先に答えておきます

・記憶は中学生の京太郎ですが、仕事などの知識はちゃんとあるので生きていけます
・A世界の京ちゃんとB世界の京ちゃんが元に戻るエンドは存在しません、つーか絶対に戻りません


 中学生京ちゃんの方の物語は同時進行にするか
 本筋終わってから最後に番外編としてやるかは未定

 ご希望があればお願いします




 取り敢えず話がややこしくなってきたのでまとめました
 

【本史世界キャラクター】
・須賀京太郎(19歳。咲を失い心を病む。売れない雑誌ライターだった)
・宮永咲(遺書を残し自殺。京太郎を好きだった)
・宮永照(咲の姉。京太郎を咲の仇として憎んでいる)
・原村和(京太郎の元彼女。牌のおねえさん二代目)
・片岡優希(京太郎の友達。好意を持っているが相手にされていない)

【分史世界キャラクター】
・須賀京太郎(14歳。淡に好意を持つ平凡な少年)
・大星淡(京太郎の幼馴染で彼に恋している。本史の京太郎によって咲を憎むことに)
・宮永咲(東京に住む少女。夢に見る少年に興味を抱いている)
・宮永照(咲の姉。妹を溺愛しているが、たまに言動が不審になる)


 一番不幸なのは間違いなく分史の京ちゃんですね
 彼の場合は周囲の印象最悪からのスタートですので、王道的にかっこよくなりそう

  


 どっち世界の進行にするか悩みますが
 取り敢えず予告通り本史京太郎サイドで行こうかと
 
 では再開です

 






 
 凍える夜には祈りを

 燃え盛る夜には懺悔を

 共にいよう
 己が罪を数えて眠るその夜まで


 
~Welcome to the Dirty World~
  








 中学生に戻ってから、分かった事がいくつかある
 
 まず一つ
 高校時代の勉強の知識が残っていること
 これを利用して、元は劣等生だった俺も今では優等生となった

 二つ目
 元の世界との違いは淡とその家族以外には無いということ
 咲と完全に入れ替わるなら親が別居していてもおかしくないが、そうではなかった

 三つ目
 俺は意外にもモテるということ
 中学のガキの頃には気付かなかったが、クラスの数人は俺に好意を抱いているようだ
 淡がいる手前言い出せないのだろう。まぁ、こちらも中学生に興味は無いので問題なし
 
 四つ目
 大人が子供に戻るってのはイージーモード過ぎるってことだ

 
 正直、こんなに順調でいいのか?
 そう思っちまう

 罪を抱えて生きるハズだった俺が
 こっちの世界じゃのうのうと生きていて

 あまつさえ幸せを手にしようとしている

 


~四月八日 清澄高校~

 
 今日は清澄高校の入学式
 俺にとっては二度目だが、他の連中にとってはそうではない

 初めての環境に戸惑いながら、それでいて好奇心も秘めている


京太郎「……はぁ」


 パイプ椅子をギシギシと揺らしながら緊張に震える同級生を横目に、俺はため息を吐く
 というのも、今回の入学式もまた……前回と違う点が一つあるのだ


京太郎「(やり過ぎちまったかね)」

 前回はぼーっと座って居眠りしてるだけで終わった入学式
 それが、今回は俺がプログラムの一部分として組み込まれている

「続いては新入生代表の言葉。本年度は主席入学の生徒が二名いますので……」

 司会の先生がその名前を読み上げる

 
「まずは男子代表、須賀京太郎君」


京太郎「……はい」

 やっちまった
 なんで一位なんて取っちまったんだよ俺!

淡「んふふー♪」

 おいこら
 なんでお前が自慢げなんだよ




京太郎「(中学の勉強なんて楽だったからなー)」

 それにしたって主席を取るとは思わなんだ
 そりゃ高校卒業した経験もあるし、中学生に負けるのは癪だが

学生議会長「……ふふっ」

京太郎「(あれは確か……)」

 懐かしい
 一年だけだったけど、凄く印象に残る会長だったな

 名前は思い出せないけど
 
「それではどうぞ」

京太郎「あー、えっと」

 見下ろす
 何百という新入生を前に、なんて言っていいものか

 一応台本は考えてきたけど、正直つまんない内容だ

京太郎「皆さん初めまして。須賀京太郎です」

 取り敢えず、社会の先輩として

京太郎「俺が思うに……人生って後悔の連続だと思います」

 ざわつく会場
 それでも俺は気にしない

京太郎「やり直したいとか、無かったことにしたいとか……」

 視界に淡が入る
 こちらを見て、ニコニコと微笑んでいるようだ

京太郎「だけど、そんなことしたって無駄です」

 さらにどよめきが大きくなった
 教師達も俺を心配そうに見ている 

 でもやめない

京太郎「うだうだ悩んで、グズグズして。それで何が変わるんですか?」

 その言葉はきっと、俺自身に向けられたもの
 咲のことを気にして、悔み続けた俺自身への言葉

京太郎「自分に出来ること探しましょうよ」

 やり直せたからこそ
 別の世界に来れたから俺も気づけた

 だから、それを他のみんなにも知ってもらいたい 

京太郎「俺はもう、振り返りません」

 それは――俺にとって咲との別れ
 そもそもこちらでは出会ってもいないが、出会う必要もない 

京太郎「短くてすみません。以上で失礼します」

「……あ、ありがとうございました」

 舞台を降りて席に戻る
 拍手は無かった(興奮気味の淡を覗いて)

 まぁ、当然だろうけど



 
学生議会長「……ふーん」ニヤリ

淡「えへへ、かっこよかったよっ」

京太郎「あんがとよ」
 
 ……もう俺には幼馴染がいる
 咲のことは吹っ切って、ちゃんとこいつと向き合おう

 この数ヶ月、それなりに楽しかったし
 淡がいい奴なのも分かってきた

京太郎「(……だけど、元の俺はどう思うんだ?)」

 悩みの種はその一点
 それに淡だって、好きになったのは俺じゃなくてこっちの俺ののハズ

 それをかすめ取るようなことは――

「続きまして。女子代表、原村和さんお願いします」

京太郎「えっ」

 司会の声に思わず反応する
 そりゃそうだ、この中に和がいるのは当然だ

和「はい」

京太郎「(ひぃっ!? マジで和だ!?)」ゾクッ

 つーかアイツ、俺の世界でも主席だったのか?
 寝ていたから全然覚えてねぇ……

和「……」クスッ

京太郎「ん?」

 なんだアイツ
 こっち見て、今笑わなかったか?

 いや、気のせいだよな……こっちじゃ接点あるわけないし

和「皆さん初めまして」

京太郎「(この頃はまともだったなぁ)」

 挨拶を始める和を尻目に、過去を思い出す
 最初の頃は本当に和に癒されたもんだ

京太郎「(いい意味で咲とまるで違うしな)」

 主におもちとか、まぁその辺
 だからこそ惹かれたんだろうけど……それが返って問題だったんだよな

和「以上です。ありがとうございました」

 和の言葉が終わると同時に歓声が沸く
 俺の時と違って、和は人気らしい

「以上を持ちまして入学式は終了となります。新入生は……」

 さて、退屈な入学式ももう終わりか




 
京太郎「はてさて、お次はっと」

淡「教室に行くんだよ」

京太郎「あー、そっか。そうだよな」

 早速新クラスの親睦がなんとやらってか

淡「んふふふ」

京太郎「何ニヤニヤしてんだよ」

淡「いやーまぁーた同じクラスだなぁって」エヘヘ

京太郎「ほんとびっくりだよ」

 ま、こっちとしては淡の存在はありがたい
 コイツがいるお陰で女に言い寄られることもないし

 そもそも、そういう感覚があまり無いんだよな

京太郎「他のクラスの人って誰だっけ」

 体育館から移動しつつ淡と話す

淡「京くん以外は興味無いから」

 そりゃそうですよね
 まぁ俺の方も大して気にしてないんだが

京太郎「(しっかし、色々あって考えてなかったけど……)」

 問題は和だな
 優希はまだなんとかなるにして、アイツはいかんともしがたい

 淡が麻雀部に入る以上、俺の名を聞く可能性は高いし(淡は京太郎の妹キャラとして有名)
 そもそも俺が必要以上に目立ったせいで、名前も知られてる

 いかん
 この世界ではなるべく関わらないと決めていたが、どうしよう

京太郎「(つーか、そもそも同じクラスなのか?)」

 前の世界は違ったが、入試の結果が違う以上は今回もそうとは限らない
 もし同じクラスなら――

淡「着いたよ」

京太郎「あ、ああ」

 教室の扉を開く

 頼む
 ここに和はいませんように……!


 和 ↓2 50以上

 優希 ↓3 60以上
 



 ガラガラ

京太郎「ん?」

和「あっ」チラッ

京太郎「(ウゲェーーッ!?)」

 の、ののっ、和ぁ!?

京太郎「うぐっ……み、右腕の傷が……!」

 和の顔を見ただけで幻痛が俺を襲う
 つうかマジっすか神様

和「大丈夫ですか?」

京太郎「あ、いや……」

淡「はいはいはい! ストォーップ!」

和「?」

淡「イッツマイン! ドゥユーアンダスタン? アーハン?」

和「英語、お上手なんですね」キョトン

淡「えっへん」フンス

京太郎「いや、もう黙っとけよお前。馬鹿にされてんぞ」

淡「な、なんだってー!?」

和「……」

 とにかく落ち着かなきゃな
 こっちの和は顔見知りでないわけだし

京太郎「えっと。もう知ってるかもしれないけど、俺は須賀京太郎」

和「原村和です。それで、そちらの人は?」

淡「大星淡! 京くんの幼馴染にして妹にして恋人候補!」

和「え?」

京太郎「不本意だがただの幼馴染だ」

淡「ただのじゃなーい! 不本意とか言わなーい!」ポカポカ

和「……」

 
 ↓2のコンマ

0~9  「そ、そうですか」
10~39 「仲がいいんですね」
40~69 「幼馴染、ですか」
70~89 「幼馴染……? 貴女が?」
90~99 「……」ブツブツ

ゾロ ステーキナイフを取り出す




和「仲がいいんですね」

京太郎「それなりにはな」

淡「取ったら許さないから!」

和「は、はぁ……」

京太郎「原村が困ってるだろ。ごめんな」

和「いえ、私は気にしませんので」

 なんだ
 さっきはびびったけど、やっぱ普通じゃないか

京太郎「よろしく」

和「はい。同じ主席として、ライバル視させて頂きます」

京太郎「いやいや、俺のはまぐれだよまぐれ」

和「謙遜してもダメですよ」フフ

淡「ぐぬぬぬ」 

京太郎「噛み付くなよ」

淡「わうっ」

京太郎「たくっ」ポンポン

淡「くぅーん」フリフリ

 それにしても、こいつはマジでなんなんだ……?
 咲とはいろんな意味で違いすぎるぞ

和「…………」クスッ

 ガラッ

「みんな入学式お疲れ様。さぁ、席についてー」

京太郎「担任来たみたいだな」

淡「座ろ!」

和「それでは、また後で」

京太郎「ああ」







 それからは担任の自己紹介
 続いて俺達新入生の自己紹介タイムだ

 順番は出席番号順で

 何巡目かで俺に回ってきた

京太郎「えー、須賀京太郎です。中学はハンドやってました」

 などと当たり障りの無いコメント
 入学式での挨拶が尾を引いてるのか、反応はイマイチだった

 まぁ、目立つつもりもないので構わないんだけど

 しかし、問題は女子の番に回ってからだ

 女子の中でも比較的早い淡の奴が
 開口一番にこうのたまいやがった



淡「大星淡。京くんの嫁です。あっ、京くんってのは須賀京太郎のことね」



京太郎「……は?」

 教室十の視線が一斉に俺に突き刺さる
 え、何これ?

淡「夢は麻雀で全国優勝。そんで京くんと結婚します」

 え? ここ笑うとこ?

京太郎「……はい?」

淡「子供は100人くらい欲しいかな」

 ざわつく教室
 それぞれがヒソヒソと話し始め

 男子の一部は泣きながら俺に殺意を放っている

 うん、俺が一体何をした?

淡「終わりです」

「あ、うん。個性的でよかったぞ」パチパチ

 個性的すぎるだろ
 というツッコミは野暮だ

京太郎「(あのバカ)」

淡「えへへ、ぶいっ」

 ぶいじゃねぇよ武威じゃ
 邪王炎殺黒龍波ぶつけんぞ、こら

和「……」

京太郎「(淡の奴も、早めに手綱握らねぇと)」

 これ以上暴走されても困るしな
 早くなんとかしないと……


 
 とまぁ、そういうわけで初日から

 今年の新入生の主席は、なんかジジくさい挨拶をかました
 既に婚約者のいる子供100人計画を練っているエロ野郎で
 中学ではハンドボールやっていた奴

 なんて意味不明なレッテルを貼られるハメとなった

 もう一度言う
 俺が何をした?

淡「これでメス猫が来ないね」エッヘン

京太郎「知るかバカ。猫好きなんだぞ俺」

 というか主に小動物全般だが

淡「うにゃーん♪ あわねこだにゃー」スリスリ

京太郎「天誅!」ゴチン

淡「いだぁー! 何すんの!?」

京太郎「ちょっとは反省しろ」
 
淡「はーい」

 まぁなんにしてもこれで入学式は終わりだ
 後はそれぞれ帰宅するか、入りたい部活の見学のどちらか

京太郎「お前は麻雀部に行くのか?」

淡「うん。京くんは?」

京太郎「俺か?」

 正直、麻雀には興味無いんだよなぁ
 だけどこいつの監視もしたいし

淡「……ねねっ! 行こっ?」

京太郎「俺は――」


 1 付いていく

 2 付いていかない

 ↓2

  



京太郎「やる事無いしな。付いていってやるよ」

 優希のことも気になるしな
 見るだけ見に行くのも悪くない

淡「ほんと? やったぁ!」

京太郎「でも入部はしないぞ」

淡「いーよいーよ。一緒に行きたいだけだもん」ギュッ

京太郎「くっつくなって、離れろよ」

淡「えへへ、やだー」

 男子の歯ぎしりする声が聞こえるんだよなぁ
 俺、嫌われなきゃいいけど

京太郎「……はぁ」



~~


淡「とーちゃーっく!」

京太郎「ここ、か」

 清澄高校麻雀部か
 元の世界では廃部になったって聞いたけど……こっちはまだあるんだよな

京太郎「入るぞ」

淡「うん!」

 コンコン

京太郎「あのー、失礼しまーす」ガチャ

淡「入部希望でーす」

学生議会長「あら、よく来たわね」

 中に入ると、そこにいたのは会長だった
 隣にはウェーブがかった髪のメガネの人


 さらに横には和と……

和「あっ、須賀君」

 その後ろに隠れるようにいるのは
 懐かしい……

優希「……」

 ↓2のコンマ

0~9  「誰だじぇ?」
10~39 「兄妹?」
40~69 「……」
70~89 「きょうたろう……?」
90~99 「……犬」

ゾロ 飛びついてくる


  


優希「……」

和「ゆーき?」

京太郎「(あれ、こいつってこんなに人見知りだったか?)」

 和の後ろに隠れるようなキャラでは無い気もするが……
 緊張してるのか?

久「初めまして。私は部長の竹井久よ、よろしくね」

まこ「わしは染谷まこじゃ。よろしくな」

京太郎「どうも。俺はこいつの付き添いの須賀京太郎です」

淡「大星淡です」ペコリン

和「改めまして原村和です」

優希「あ、えっと。片岡優希……」

 それぞれ挨拶が終わり、面と向かい合う
 しかしこうして見ると、見事に美少女ばかりだな

久「じゃあ入部希望は原村さん、片岡さん、大星さんの三人でいい?」

まこ「これで団体戦に出れるのぅ」

久「原村さんと片岡さんは経験者らしいんだけど、大星さんは経験ある?」

淡「うーん、ネト麻くらいかなー」

久「充分よ。これから上達しましょ」

和「がんばりましょう」

淡「うんっ」

 女子達は盛り上がってるようだ
 これは俺はお邪魔かな

京太郎「じゃあ淡。俺はもう帰るぞ」

淡「えー? ちゃんと最後まで居てよー」

京太郎「いや、邪魔だろ」

久「いいのよ須賀君。私もアナタに居てもらいもの」クスクス

京太郎「?」

 俺にいてほしい?
 それってどういう意味なんだ?
 
まこ「それにしてもインターミドルチャンプが入部するとはのぅ」

和「いえ、大したことでは」

淡「いんたーみどる?」

久「中学で一番だったってことよ」

淡「っ!」

京太郎「へぇ、そりゃ凄いな」

和「ありがとうございます」フフッ

京太郎「よかったな淡。和に色々教えてもらえよ」

 場の空気を和ませる為に、何気なく放った一言だった
 しかし、この時の俺は非常に油断していた

 それが、いけなかった

淡「和……? なんだ、呼び捨てなの?」

京太郎「あっ」



淡「和……? なんで、呼び捨てなの?」ユラァ

京太郎「あっ」

淡「おかしいよね? まだ会って一日も経ってないんだよ?」

京太郎「いや、だからこれは」

淡「なんで? 好きになったの? 麻雀が強いから? 胸が大きいから?」

京太郎「お、落ち着け淡。なっ?」

淡「……」ギリッ

 しまった
 昔の癖でついポロっと……このままじゃいかん

優希「……」

京太郎「わ、悪い原村! ついっ」

和「い、いえっ。急でびっくりしましたけど、 私は別に構いませんよ」ニコッ

京太郎「ありがとな」

和「それに、同じクラスですし和のままでも」クスクス

京太郎「いや、それは流石に……」

 バンッ

京太郎「!?」

 不意に何かを叩く音がして、振り返る
 そこには……恐ろしく無表情の淡が牌を卓に引いている姿があった

淡「……部長」

久「何かしら……?」

淡「初日ですし、打ちませんか?」

まこ「ん、一年生の実力も見たいし。ええのぅ」

 まずい
 淡の奴、なんか妙なスイッチ入っちまってるかも……

和「いいですね。では、残り一人は――」

 確かに一年生の親睦は大事かもしれないが
 この状況はちょっと……

京太郎「(どうする?)」


 1 見守る

 2 淡を止める

 3 自分も参加する


 ↓2


 
京太郎「(見守る、か)」

 下手な事をして淡の怒りを買うこともない
 少々暴れれば落ち着くだろう

久「それじゃあまこ、入ってもらえる?」

まこ「よし。それじゃあやろうかの」

淡「……」

和「よろしくお願いします、大星さん」

淡「うん。よろしくね」ギロリ

優希「……」

 卓に着く四人
 俺の居た世界では淡、和、優希の順で強かったが……

 この世界でも同じなのか?

京太郎「(見せてもらおうか)」

 これでも元麻雀ライターだしな
 少しばかり気になるってのもある

久「それじゃあ、始めて」

京太郎「……」


まこ ↓1 +30

優希 ↓2 +25

和 ↓3 +40

淡 ↓4 +50


 淡が和に勝てば、和イベント

 和が淡に勝てば、淡イベント

 優希が一位で、優希イベント

 まこが一位で、京太郎覚醒イベント

 淡がビリで、バッドエンド



 それは一方的な試合だった
 恐らく、俺のいた世界の実力順であれば接戦であろう試合

 しかしこの中で一人
 決定的に実力が変化している奴がいた

 それが――

淡「……」

和「ロンです」

まこ「あー、これでトビじゃな」

淡「……ぐっ」ジワッ

京太郎「(弱いな)」

 気が焦ってるのか、それとも元からこの実力なのかは分からない
 どちらにしても、淡の行動は裏目になりすぎた

 筋を読めるわけでも、何か強いチカラがあるわけでもない

 ただの素人の麻雀
 これでは、和や優希に勝てるわけがなかった

まこ「やっぱり強いのぅ」

和「いえ、それほどでは」

久「謙遜しなくていいわ。大星さんもよく頑張ったわね」

 励ましの声を入れる部長
 淡は泣いているのか、俯いたまま顔を上げようともしない

京太郎「淡……?」

淡「今日は……帰ります」フラッ

京太郎「……部長、すみません」

久「いいのよ。部活は毎日やってるから、気が向いたら来てね」

淡「……」

 淡は答えなかった
 それは、和に負けたことが悔しいからなのか?

 それとも別の理由か


~~~


京太郎「気を落とすなよ」

 部室をあとにして帰宅する途中
 淡は一度も自分から言葉を発さない

 いつもとは違う淡の雰囲気に、俺はただ動揺するしかできなかった

淡「……」

京太郎「これから努力すればいいさ」

淡「ねぇ……」

京太郎「ん?」

淡「……ずっとね、思ってたことがあるんだ」




  



 それは一方的な試合だった
 恐らく、俺のいた世界の実力順であれば接戦であろう試合

 しかしこの中で一人
 決定的に実力が変化している奴がいた

 それが――

淡「……」

和「ロンです」

まこ「あー、これでトビじゃな」

淡「……ぐっ」ジワッ

京太郎「(弱いな)」

 気が焦ってるのか、それとも元からこの実力なのかは分からない
 どちらにしても、淡の行動は裏目になりすぎた

 筋を読めるわけでも、何か強いチカラがあるわけでもない

 ただの素人の麻雀
 これでは、和や優希に勝てるわけがなかった

まこ「やっぱり強いのぅ」

和「いえ、それほどでは」

久「謙遜しなくていいわ。大星さんもよく頑張ったわね」

 励ましの声を入れる部長
 淡は泣いているのか、俯いたまま顔を上げようともしない

 
京太郎「なんだ?」

淡「いつからかな、ううん。きっとあの日だよね」

 唐突に何かを言い出す淡
 その意味が俺にはよく分からない

淡「ずっと、ずっと京くんがいなくなったって……私の元から離れていったって思ってた」

京太郎「淡?」

淡「だから取り戻そうって。昔の京くんを取り返すって……そう思ってた」

京太郎「……」

淡「でもね、気づいちゃった」

 認めたくなかった
 淡が何を言おうとしているか、何をしようとしているか

 分かっていたけど、止められなかった

淡「私に取り返す力は無いってこと」

京太郎「……やめてくれ」

淡「京くん……ううん。私の知ってる京ちゃんはもう……」

 それ以上、言ったらいけない

淡「もう、どこにもいないんだね」








 その次の日
 大星淡は自殺した




 突然の出来事に、周囲の人は誰もが混乱した
 あの元気だった少女が、なぜ自殺したのか

 分からない

 あの麻雀部のメンバーでさえ、直接的な理由が自分たちなのでは考えたほどだ

 しかし、俺は知っている

 なぜ淡がこの世界に別れを告げたのか


 最後に淡と帰った日
 彼女が別れ際に言い残した言葉は

 未だに俺の胸に残っている


「生まれ変わったら京ちゃんの幼馴染じゃなくて恋人になりたい」


 俺は泣かなかった
 咲と淡

 二人の幼馴染を失った俺に、流す涙は残っていなかった

 そして、俺は悟った

 きっと、神様は俺に教えたかったんだ

 俺が咲を救えないように
 淡も救えない

 俺には何もできない

 俺は――生きていてはいけないって


 ああ、ごめんな咲
 許してくれ淡

 
 同じ場所に行けるなんて、思わないけど
 いつか、謝りに行くよ


 だからそれまで――


 しばしの別れだ



 その年、一つのニュースが世間を騒がせた

 長野で起きた、カップルの後追い自殺
 周囲からも評判の幼馴染カップルが、なぜ自殺に走ったのか?

 いろんな世論が交わされる中、東京に住む一人の少女が
 そのニュースを一心不乱に見続けていた

「罰だよ、全部」

 笑う
 いい気味だと

 最愛の人を奪った報いだと

 嘲笑う
 もうこの世にいない相手を

「もう一度やり直せるなんて、思ってる?」

 そんなこと、あるわけない
 やりなおすのは自分だけでいい

 罪人は罪人らしく、地獄の底で苦しめばいいのだから

「じゃあね。後は私が、幸せにするから」

 唯一、元後輩を救えなかったことが気がかりだが
 妹に比べれば大したことはない

 所詮、この世界では赤の他人なのだから

「ふふ、あはは……あっはっはっはっはっ!!」


 狂った笑いは、どこまでも響く


 それが止むのは遠い未来か、それとも――




 完









 短い間でしたがありがとうございました
 分史を見たいという感じもなかったので、このまま終わりとなります

 こんな暗い話では面白く無いのも当然ですので
 次の機会があれば、もっと楽しい話にできたらいいなと思います
 

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