ペトラ「兵長と過ごす一カ月!」(297)

※ネタバレ

兵長とペトラさんの話です

コンコン


ペトラ「失礼します……って、オルオにエルド、グンタじゃない。何してるの?」

エルド「ああ、ペトラもか。久しぶりだな」

グンタ「俺たち兵長に呼ばれてこの部屋に集まってんだ。何の話だろうな?」

オルオ「……フン…お前らまだ分からないのか?分からないだろうなお前ら程度では……」

ペトラ「……オルオは分かるの?」

オルオ「お前が俺のレベルに達したら教えてやろう」フフン

ペトラ「(無視)ねえそれより聞いた?104期訓練兵の中に巨人化できる子がいたって」

エルド「にわかには信じがたいがな…団長から直々に聞いたんだ、本当なんだろう」

ペトラ「うわー、なんかすごいことになってるよね…」


ガチャ


兵長「……お前ら全員集まってるか」

ペトラ「あ!リヴァイ兵長!お疲れ様です!」ペコ

グンタ「調査兵団特別作戦班……ですか」

リヴァイ「エレン・イェーガーが巨人化し暴走した時には俺たちが仕留める。そのための絶好の場所が旧調査兵団本部だ」

リヴァイ「まあ先ほどの言葉は建前でもあるが…とにかく俺たちはエレンとともに旧本部にこれから滞在する」

ペトラ(旧本部って言ったらかなり街から離れてるところ……そこに私たちが、巨人化できる子と兵長と一緒に滞在…か)


リヴァイ「お前たちは実力を見込んで俺が指名したメンバーだ」

リヴァイ「活躍を期待してる」ガタッ


ペトラ「……!!!」

ペトラ(私が……!兵長に、実力を見込まれて指名された…!?)

ペトラ「ハッ!全力を尽くします」キリッ

内なるペトラ(ぃよしっ!!よし!!やったー!!頑張ってきてよかった!!///)ブンブン

内なるペトラ(兵長の期待にこたえるためにもより一層がんばらなくっちゃ!!)

内なるペトラ(ていうか兵長と同じ屋根の下…私は紅一点だし)

内なるペトラ(これは、できる部下アピールのチャンス…!あの憧れの兵長の近くにずっといれるなんて…)


ペトラ「………~~~!」ブルブル

グンタ「…大丈夫か?」

1日目

エレン「は…はじめまして。エレン・イェーガーです」ペコ

エルド「俺はリヴァイ班のメンバー、エルドだ」

グンタ「俺がグンタ。よろしく」

オルオ「……フン。お前に名乗る名などない……痛い!何をするペトラ!?痛いんだが!?」

ペトラ「こっちはオルオ、私はペトラね。よろしくエレン」


ペトラ(巨人になれるっていうからどんな子かと思えば…結構普通の子なのね)

ペトラ(……15歳、か…)

旧本部


ペトラ「……」パタパタ

ペトラ(……はぁー。兵長に実力を見込まれて、やってやる!って意気込んできたはいいもの、まずは城の掃除からですか…)

ペトラ(いや、兵長の潔癖症は知ってたけども……。でもまあ、なんか当分は兵士として刃を抜くようなことはないみたいね)


リヴァイ「……チッ、埃くっせえなぁ…」ガチャ パタパタ


ペトラ(人類最強が頭巾して掃除してる…。……やっぱり後ろ姿かっこいいなぁ/// ずっと振り向かないでくれたらいいのに…)チラチラ


リヴァイ「…おい、ペトラ」

ペトラ「はい!なんでしょうか」キリッ

リヴァイ「手が止まってる。掃除を続けろ」

ペトラ「はっ」キリッ


ペトラ(あ、危なかった。私のできる部下のイメージが崩れるところだった)

ペトラ(兵長のことじろじろ見てるなんて知られたら、私への信頼が崩れてしまうものね!)パタパタ

リヴァイ(あいつ、さっきからなにこっちジロジロ見てやがんだ…)

――――――

○月○日
今日はリヴァイ班として旧本部に来ました。
一日中兵長の命令でずっと掃除をしていました。もうみんなへとへとです。
渦中のエレンという少年に会いました。でも意外に普通の男の子でした。

今日からこの城で、30日後の壁外調査の日まで、兵長とみんなと一カ月暮らします。
リヴァイ班に指名されて、本当にうれしい。
期待にこたえられるように頑張るつもりです。

<2日目>

○月○日
大変なことになってしまいました。
実験用に捕えた巨人、ソニーとビーンが何者かに殺されてしまったのです。
ハンジさんがあれからずっと発狂してて、うるせぇと兵長に怒鳴られていました。
団長によくわからない質問もされました。いったいだれがこんなことを?

<3日目>



ペトラ「……兵長ってさぁ、結婚してたりするのかな」ブチブチ

エルド「いきなり何を…ペトラ」ブチブチ

グンタ「おい、こっちの一画、まだすげぇ草生えてるぜ!今日中に終わるかコレ…」ザクザク

オルオ「ギャァァでっかい芋虫が俺の手に!手に!!」


ペトラ「いや、だってさ。兵長のプライベートってすごい謎に包まれてるじゃない?普段あんまり自分のことしゃべらないし、かといって気軽に聞けないし」

エルド「……まあ、結婚しててもおかしくない年ではあるよな」

ペトラ「えええー!!や、やっぱりそうなのかなぁ!!」

オルオ「ギャァァ蜂の巣落としちまった!おい助けろグンタてめぇこのやろう!!」ブーンブーン

グンタ「うわっ こっちくんなオルオ!俺まで巻き添えにすんじゃねええ!」ブーンブーン

エルド「なんだペトラ?そんなに兵長の結婚相手が気になるのか?」ニヤ

ペトラ「ばっ、別にそんなんじゃなくて!ただ憧れの兵長の私生活はどんなのなんだろうって気になっただけよ」

エルド「なるほどな…」ニヤニヤ

ペトラ「ねえ、オルオ。今度兵長に聞いてみてくれない?結婚してるんですか、って。オルオのkyさならイケそう」

オルオ「お前、俺とグンタが蜂の大群に襲われてる光景を見て、それどころじゃねえってわかんねえのか、えぇ!?」ブーンブーン

グンタ「お前のせいだぞオルオ!!」ブーンブーン

――――――

○月○日
今日は庭掃除で一日が終わりました。虫に刺された…かゆい。
オルオとグンタは遊んでるところが兵長に見つかって大目玉をくらってました。
明日もまた掃除になるみたいです。やることないのかな?

ちなみに明日はエレンと室内の掃除だそうです。
なんだかまだちょっと私たちに対してぎこちないので、明日仲良くなれたらいいと思います。
……仲良くなりすぎて、いざというときに動けなくなるようじゃ困るけれど。

<4日目>


ガチャ


エレン「うっわぁ…ここもすごいですね」

ペトラ「クモの巣だらけだね。…まあしょうがない、一緒に頑張ろ、エレン」

エレン「はいっ」


ペトラ(……)

エレン「うわわ……埃がっ…ゲッホゲッホ」

ペトラ(やっぱりどっからどう見ても普通の少年なんだよね。この子が人類の希望……か)


ペトラ(なんか大層な重荷を背負っちゃってるよなぁ……時々追い詰めた顔して、)

エレン「げぇっほげほがは!!ッケホけほ!」

ペトラ「ちょちょ、エレン大丈夫!?」

エレン「は、はい。すいません…」



リヴァイ「…おい、ここは終わったのか」スッ

ペトラ「あっ、兵長」

エレン「えっと、すいませんまだです…………あ」

ペトラ「なんかすっごい埃とクモの巣で!もう少しかかりそうです」

リヴァイ「…そうか。ならいい。サボんじゃねえぞ」



エレン「………あ、の。ペトラさん……」オズ

ペトラ「ん?どうしたのエレン?」

エレン「肩に……タランチュラ並の大きさの蜘蛛が……」

ペトラ「え?――――――ひっ!!!いやぁあ!!!」

蜘蛛(こんにちは)

ペトラ「いやぁぁぁああ!気持ち悪いー!!とってとってエレンとってぇ!!」

エレン「いやちょっと俺もそのでかさは…」サーセン

ペトラ「こんのォ…!! っやだやだ上ってこないでイヤーーーー!!」バタバタ

リヴァイ「……うるせえ、ピーピー騒ぐんじゃねぇよ」


ポイ

蜘蛛(お騒がせしました)ペコリ


エレン「あ、窓から蜘蛛が…」

ペトラ「……はぁ、はぁ……もういない?いない!?」ゾワゾワ

リヴァイ「蜘蛛くらいで喚くな。……俺はほかの部屋を見回ってくる」クルッ

ペトラ「…あっ、あの、兵長ありがとうございました!!」

エレン「ペトラさん大丈夫ですか?」

ペトラ「ああうん……ていうかエレン!なんでさっき助けてくれなかったのよ!」

ペトラ「あなたが助けてくれなかったから兵長の手を煩わせて……ハッ」

ペトラ「い、いま…さっきの私の無様な姿を兵長に曝してしまった…っ!!どうしよう私のできる部下のイメージがぁ…」

エレン「え?え?」

ペトラ「絶対、蜘蛛くらいのことでぴーぴー泣く頼りない部下だって、思われたあああ!もうっ、エレンのせいだからね!?このっこのっ」パシパシ

エレン「イテッ ちょっやめてくださいよ!…………ははは!」

ペトラ「なっ、なに笑ってるのよ!人の一大事にー!」

エレン「ふっ、くくく…!あははは!ごめんなさい!!な、なんか……ツボに入っちゃって……はははっ」


ペトラ「……まったく」

ペトラ(そういえば……エレンが笑う顔、始めて見たかも……)

ペトラ(……)


ペトラ「ちょっとエレンしばらく、この部屋ひとりで掃除しといてくれる?私エルドとかと話があるから」

エレン「え?は、はい。分かりました………ふぐっ」

ペトラ「ちょっとどんだけ笑うの怒るわよ」

ペトラ「ねぇエルド、グンタ、オルオ!」ガチャ

グンタ「どうしたペトラ」

オルオ「俺に会いたくてたまらなくなっちまったのかよ…?ったく仕方ねえ女だ」

ペトラ「違うから…ほんとそのしゃべり方やめてよ…アナフィラキシーショックで死ねばよかったのに…」

オルオ「泣くぞ」


エルド「何か用か?」

ペトラ「あ うん。あのさ!エレンの歓迎会とか…してみない?とかなんとか言っちゃって……あはは」

オルオ「ハァ?あの生意気な新兵にかよ?んなもんいらねぇだろ」

ペトラ「……エレンは確かに巨人化できて、ほかの子たちとは違うけど…でもそれ以外は、…とりあえず今の段階だと普通の男の子じゃない」

ペトラ「せっかく、一か月これから一緒にここで待機するんだもの。歓迎会くらい開いたっていいじゃない?」

エルド「……俺もいい考えだと思う。大げさなもんはできないと思うけどな」

グンタ「…うん、いいんじゃないか。俺も賛成だ」

オルオ「なにィィ…!?」グヌヌ

ガチャ


エレン「…あ、兵長」ビク

リヴァイ「………ペトラはどうした?」

エレン「いやなんかさっきエルドさんたちに話があるとか言って、出て行きましたけど」


タッタッタッタ・・・


ペトラ(やばーい!準備してたら遅くなっちゃった。兵長まだ見回りに来てないといいんだけど)

ペトラ(……って、いるーーーー!!普通にいらっしゃるーーー!!)

ペトラ「兵長すいませんちょっと火急の用事がありまして本当に申し訳ございませんでした!!!」ドゲザーッ

リヴァイ「…お、おう」ビク

エレン(兵長のあんな表情、初めて見た)

ペトラ「ごめんねエレン、お待たせして。じゃあ掃除の続きやっちゃお」



――――・・・
―――・・


リヴァイ「…おい、お前ら。もう掃除はいい。後は明日やる。飯にするぞ」

ペトラ「了解です。あっ あの!!」


ペトラ「私、先にいってるので。」ヘラッ

ペトラ「二人は後から食堂にゆっくり来てくれませんか?」

ペトラ「絶対に、ゆっくり歩いてきてくださいね!」バタバタバタ...



リヴァイ「…なんだあいつ?」

エレン「さ、さあ?」

食堂


コツ・・・コツ・・・コツ・・・


(やばいもうきた)
(横断幕用意してオルオ)(なんで俺様が…)


・・・ガチャ


(せーのっ)
「「「エレン、リヴァイ班にようこそー!!!」」」


<祝・エレン入隊>ババッ


エレン「……へ!?」

リヴァイ「…お前ら何やってんだ…」



エルド「無断でやっちゃってすいません兵長。エレンのささやかな歓迎会をしようと思って…」

グンタ「ちょっとだけですけど、食料も多めに使っちゃいました。あ、でも!その分明日から俺たち4人の食事減らすんで!」

オルオ「俺たち先輩から、兵長の素晴らしさを新人に説く場が必要と判断しました」キリッ

ペトラ「最後まで嫌々準備してたくせに……」


リヴァイ「……勝手にやれ」ガタン

ペトラ「ありがとうございます!さっエレン、今日はあなたが主役だよ!楽しんでね」ニコ

エレン「えっ、あ、あの……俺なんかのために…すいません」

エルド「そーいうときは謝るんじゃなくてなんて言うんだ?」ニッ

エレン「…ありがとうございます。みなさん」

オルオ「……チッ、チィッ!!!調子のんなよチィッ!!」


ガチャ

ハンジ「えーなにこれなにこれ!超楽しそう!!私もいれてよ!エレン、リヴァイ班にようこそーーー!」バタバタ

グンタ「ハンジ分隊長はリヴァイ班じゃないですけどね」

――――――

○月○日

今日はエレンの歓迎会をやりました。といっても、ささやかなものだけど。
エレンもだんだん私たちに打ち解けてきてくれてるみたい。よかったよかった。
兵長の許可を得ずにやったしまったことに対して、怒られるだろうと思ってたんだけれど、お咎めなしでびっくりです。

兵長って、やっぱり優しいです。
……蜘蛛もとってくれたし。
……。ああ、あの時のことを思い出すと、いてもたってもいられない気持ちになるので、もう考えるのやめます。
あああああああ、もう……

<5日目>


キュッキュッ


ペトラ「…よし。これでこの窓も綺麗になったかな」

ペトラ「窓も床も壁もピカピカ、埃もなし、蜘蛛の巣もなし。うん、大丈夫だよね」

ペトラ「兵長、この部屋の掃除全て終わりました」

リヴァイ「……ん」キョロキョロ

ペトラ「……」ドキドキ

リヴァイ「……御苦労だった。もう掃除はしなくていい」

ペトラ「はい。分かりました!」

リヴァイ「全員お前みたいに几帳面だったらよかったんだがな……」ハァ

リヴァイ「ガサツな奴ばっかりでうんざりする」

ペトラ「あはは……まあ、確かにそうかもしれませんね…」

リヴァイ「お前には苦労をかけるかもしれんが……頼むぞ」

リヴァイ「あのクソガキのこととか、な…」

ペトラ「えっ?や、いや、そんなこと、気にしないでくださいよ。兵長のお役に立てることが私の喜びですから///」

ペトラ「おまかせください、このペトラ・ラルに。私にできることなら、なんでもやりますから///」

リヴァイ「……ああ」

――――――

○月○日

今日はいいことがありました。
兵長に、リヴァイ兵長に、頼りにしていると言われました。
それから今日はずっとハイテンションで、グンタにものすごく不審な目をされてしまいました。

エルドはなぜかニヤニヤしてました。むかつく。
オルオはやたら絡んできてうっとうしかった。エレンは初々しくて、つい先輩面して色々教えたくなっちゃいます。
兵長はいつも通り、かっこよかったです。

<6日目>



ペトラ「…あ、兵長おはようございます。お茶いれますか?」

エレン「おはようございます兵長」

リヴァイ「…いや、自分でいれる。それよりお前にこれが届いてる」

ペトラ「? あっお父さんからの手紙!そういえば旧本部にいること知らせてなかった…」

オルオ「親父さんからの手紙か、ペトラ」

ペトラ「うん。なんて書いてあるかな」ガサガサ


ペトラ「……へえ、庭の花が今年もきれいに咲いたって。あと、今年も庭でとれた果物送ってくれるみたい。みなさんで食べなさいって」

ペトラ「兵長はプラムとかイチゴとか好きですか…?」

リヴァイ「……まぁ、嫌いじゃねぇ」

ペトラ「よかった!エレンも好きだよね?みんなで食べよう」

ペトラ「…お前は子どもの時からこの時期に風邪をひきやすいから気をつけなさいって…お父さん心配しすぎ。私だってもう立派な兵士なのに」

グンタ「はは。いいじゃねぇか、娘思いの父さんで」

ペトラ「後は……最近、隣近所の娘さんが結婚した……って、うそ!あの子が!?」

エルド「そりゃめでてぇな」

ペトラ「はぁ~~~…。早いなあ…時が経つのって」



オルオ「………(…仕方ねぇなぁ。貸しひとつだぜ、ペトラ)」

オルオ「………リヴァイ兵長は、結婚なさってるんですか?」


ペトラ「!?!?!?///」


グンタ(!?)
エレン(!?)
エルド(…おお)

リヴァイ「……」

ペトラ「な、なん、な、ばっ、!!///」

ペトラ「お、お、お、オルオ!?なに兵長に失礼なこと聞いてるの??///」

オルオ「いやお前が聞 「兵長すいませんオルオちょっと今日体調がおかしいのかもしれませんアハハハ!!気になさらないでくださいね!///」


リヴァイ「………してねぇ」

オルオ「はい?」

リヴァイ「してねぇっつってんだ、結婚」

ペトラ「………!」

エルド「そうだったんですね。まあ兵長お忙しい身ですし…」

グンタ「俺も…―――」
エレン「―――」
オルオ「――――…」



ペトラ(……兵長、してなんだ、結婚………!///)ブンブン

エルド(ペトラ、机の下でガッツポーズしてるのこっちからだと丸見えだぞ…)

――――――

○月○日

今日はお父さんからの手紙が届きました。今度返事を書いて出さないと。
それから、そのあと信じられないことにオルオが、兵長に結婚してるか尋ねました。
前言ったことなんて、冗談だったのに、本当どこまでいってもオルオは空気読めません。読めよ。
……兵長は独身らしいです。
でもモテるんだろうなーと、思ってます。だって人類最強だし兵士長だしかっこいいし。

今度オルオになんか奢ってあげようかな。

<7日目>

○月○日

今日は雨です。せっかく外でエレンも一緒に訓練しようと思ってたのに残念でした。
室内で書類整理の一日になりました。
グンタとエルドが脚派か尻派かで喧嘩してました。
男って…。

<8日目>


リヴァイ「…今日も雨か」

エルド「やみませんね」

リヴァイ「俺は自室で書類を片付けてくる。お前らも仕事しとけ」

「はい」


パタン


エレン(………ふー)

ペトラ「まだちょっと兵長はこわい?」

エレン「へっ!?い、いや、そんなことないですよ」

オルオ「ふん……兵長を恐がるなんて肝のちっちぇ男だなエレンよ…。まあ気持ちもわからんでもないが?」

グンタ「出会いが出会いだったからな、無理もねぇだろーよ」

エレン「いや、ほんとに…その…。なんというか、条件反射といいますか…」ハハハ

エルド「無理すんな」ポン

オルオ「情けねぇなぁオイ?じゃあ俺が兵長の素晴らしさを語ってやろう」

ペトラ「じゃあ私が兵長に初めて会ったときのこと話そうか!」ニコニコ

エレン「えっ 聞きたいです!兵長って昔はどんなんだったんですか?」ズイッ

オルオ「おい、俺が先にだな…」

ペトラ「あのねぇ…」

オルオ「俺が!先!なんだが!?」


グンタ(仕事……)

人類最強っていうから、どんな人なんだろうなって思ってたの。
そりゃあもう、救世主とかヒーローみたいなかっこいい人なんだろうって。

でも実際に会ったら、私より少し背が高いくらいの身長だし、
口は悪いし、舌打ちするし、目つき悪いし
なんかすごい潔癖症だし

私が手渡したマグカップの外側に、少し汚れがついてただけで
「汚ねぇ」って睨んできてね

この人こわい、関わりたくない!って新兵のころは思ったよ。



エレン「……あはは。ペトラさんでも、そんなこと思うんですね…兵長に」

ペトラ「ちょっと…それどういう意味なのかな…」

でもね。
初めて巨人を目の当たりにして、奴らが人を食べるところを見て、
……まあ。ちょっとびっくりして動けなくなっちゃったんだよね。

エルド「……」
グンタ「……」

な、なによ。二人とも。

それで私に巨人の手が伸びてきたとき…兵長があっという間に飛んできてあっという間に巨人を殺して
その時目の前にあった、兵長の背中の自由の翼の紋章が、すごく大きく見えてね

もうこの人に一生ついていこうって、その瞬間思ったんだよ。


エレン「…へぇ…かっこいいですね」
オルオ「お前が兵長の魅力を理解するのには100年早いぜ、エレンよ」
エレン「はいはい」


あとね、あとね…

ガチャ・・・

リヴァイ「……俺は仕事をしろ、と、言ったはずだが………?」


ペトラ「」
オルオ「」
グンタ「」
エルド「」
エレン「」



「「「「すいまっせんしたー!!!」」」」ズサー

――――――

○月○日

今日は仕事しないでエレンに兵長の話をしていたら、兵長に見つかって怒られました…。
怒った兵長はやっぱり恐いです。主に顔と声が。
でもエレンに兵長のすごさがちょっとでも伝わったらいいなと思います。

兵長の下で、これからもずっとずっと戦い続けたい。
戦い続けられますように。

<9日目>

○月○日
やっと雨があがったので、外で訓練しました。
長距離策敵陣形についてエレンに教えたり、馬術とか立体機動の訓練をみんなでしました。
オルオはエレンという後輩がきて嬉しいのか、よくちょっかいかけてはベロを噛んでます。そろそろ学べばいいのに…。

<10日目>




バタンッ!!

リヴァイ「……あー、だっりぃ…なんで内地の豚どもは、腹が脂肪でブニブニのくせに頭はあんな固えんだよ……チッ」

エレン「お疲れ様です兵長」

エルド「あそこの人たちは結局自分たちがかわいいだけですからね……ん?」

グンタ「今日はペトラが食事当番だっけか」

エレン「いや。あのー。本当は俺なんですけど、ペトラさんが手伝ってくれて、でも結局俺が料理下手すぎて、今戦力外になってます」

リヴァイ「食事っつったって、んな難しいもんじゃねぇだろ…」

エレン「人参を切ろうとしても、逃げるんですよ、あいつ」

オルオ「い、意味わからん…」

ペトラ「お待たせしました。……エレン、今度改めて料理の基本の基本の基本から教えてあげるからね」

エレン「よ、よろしくお願いします!」

エルド「おお、うまそうだな」

オルオ「………俺の胃袋から掴むつもりかペトラ…?あいにくそんな遠回しな手段は俺には通用しないぜ?」

ペトラ「そんなつもりないし……。はいじゃあ、召し上がってください。そんな大したものじゃないですけど」


もぐもぐ


グンタ「うまいぞ」

エレン「おいしいですペトラさん!」

ペトラ「ほんと?ありがとう」チラッ

リヴァイ「……」モグモグ

ペトラ「……」チラチラ


オルオ「………フッ、分かってるぜ…ペト 「オルオさん、ちょっと静かにしててください」

リヴァイ「……」

ペトラ「……あの、兵長」

リヴァイ「…なんだ。ペトラ」

ペトラ「……お口にあいますか…?」

リヴァイ「…。ああ、悪くねぇ」

ペトラ「…よかったです……あはは///」



エルド「……」

ペトラ「…だから、エルドは言いたいことがあるなら、ちゃんと言ってくれる?ねえ?///」

エレン「……」

ペトラ「エレンも!」

――――――

○月○日

今日の夕飯は、料理が壊滅的にできないことが発覚したエレンの代わりに私が作りました。
…まあ男の子だから、しょうがないとは思うけども。今度教えてあげようと思います。
みんなおいしいって言ってくれました。お母さんに料理教わっといてよかった。

兵長も悪くないって言ってくれました!たった5文字の言葉なのに、兵長に言われるとすごく嬉しいです。
でもリヴァイ班の中で一番料理が上手なのはエルドだったりするので…彼にいつか勝つことが当面の目標です。

なぁ。関係ないことで悪いけど、どこのssでも「それはお前が俺の域にry」ってセリフあるじゃん?

あれって原作にあったセリフなのか?

俺は勝手に原作のセリフと勘違いして読み返してるんだが分からない……。

>>60
7巻の最初のほうにあるよ
オルオさんのセリフはおもしろい

<11日目>



ペトラ「そろそろお風呂入ってきちゃおうかな。汗かいて気持ち悪いし」

ペトラ「女ひとりだから時間とか気にしなくっていいから楽だなぁ」


コツ・・・コツ・・・コツ・・・


ペトラ「この廊下を右に曲がったらすぐお風呂場。ちょっと遠いから不便なんだよね………………ひゃっ!?!?」

リヴァイ「…ペトラか。夜に大声だすな」

ペトラ「え!!いや!!あの!?な、な、なんで兵長、シャツ着てないんですか!?!?////」

リヴァイ「あー…。部屋にシャツ忘れた」

ペトラ「だ、だだだだからって!!!裸でウロウロしないでください!!!//// この城にいるの男だけじゃないんですよ!?」

リヴァイ「だからうるせぇよ……分かったっつの。悪かったな」スタスタ


ペトラ「…行っちゃった…」

ペトラ(……いやーーーーーーっ/// 兵長の上半身裸体を間近で見ちゃったーーーー///)

ペトラ(もーーーーーーなんなのあの人ーーーーーーー/////)バタバタ


ハンジ「…見ちゃった、っていうか、途中から手で目を覆うフリして、ちゃっかり隙間からがん見してたよね。リヴァイの裸」

ペトラ「……………ハンジさん。いつから」

ハンジ「……」ニッコリ

ペトラ「」

――――――

○月○日

私、ペトラは大変遺憾に思ってます。兵長にです。
兵長は私の性別を何だと思っているのでしょう?まさか女だと思われてないのでしょうか?
普通異性が一緒にいる建物の廊下で、上半身裸で歩きますか?歩きませんね?歩きません。

…それにしてもすごい筋肉でした。
………不可抗力です。決してハンジさんが言ったように、隙間からがん見なんてしてません。乙女がそんなはしたないことするわけないじゃないですか?

<12日目>

○月○日

今日は団長が本部にいらっしゃいました。
憲兵団や教会の方との交渉や、次の壁外調査ついて、作戦会議をするために、兵長とハンジさんと一緒にずっと部屋にこもってました。

そういえばこの城で過ごして約2週間も経ったと考えると感慨深いです。光陰矢の如しです。

壁外調査まで、あと18日かぁ。
エレンをちゃんと守らなくちゃね。

訓練後


エレン「…今日も団長と兵長とハンジさんは、会議ですかね」

オルオ「だろうな」

グンタ「次の壁外調査は今までとは勝手が違うからな。…エレン、お前が要になる」

エレン「……はい」

ペトラ「も、もう。グンタ、そんなエレンにプレッシャーかけないでよ」

グンタ「そんなつもりじゃなかったんだが…。とにかく俺たちはお前に期待してるってことだ」

ペトラ「だから、それがプレッシャーかけてるんだってば」

エレン「あ、あの!俺は大丈夫ですから!……やってみせますよ、なんでも。巨人ぶっ殺すためなら」

エルド「……そりゃ頼りがいがあるぜ、エレン」ワシワシ

エレン「うわっ」

オルオ「ハッ…いっちょまえにガキが吠えやがってよぉ…」ゲシゲシ

エレン「いてえ!」


ペトラ「今日は自由時間多いな。そうだ、お父さんに手紙書こう。まだ返事出してなかった」

ペトラ「何書こうかな…」


お父さんへ。

手紙受け取りました。ありがとう。
庭の花が咲く季節になったんだね。この季節になると、庭先にとてもいい香りが漂ってきたことを思い出しました。

次の休暇……ああ、今度の壁外調査の後になるかな。休暇で久しぶりに家に帰るつもりだよ。
花も見たいし、家族の顔も見たいし。

果物送ってくれるの楽しみにしてます。
今私はリヴァイ兵長のチームで調査兵団の旧本部にいるの。
言ってなかったよね。ごめん。

リヴァイ班のみんな、すごく個性的なんだよ。
お父さんも知ってる人、多いと思うけど。


まずエルド。エルドは副リーダーみたいな感じなの。
料理が上手で、頼りがいがあって、たまに訳知り顔でこっちをニヤニヤして見てくるのが嫌なんだけど、いい人だよ。

次がグンタ。栗みたいな頭してて目力がすごいの。
お父さんも会ったらびっくりすると思うな。でもイカツイ外見とは逆で、性格は穏やかで冷静なの。

それからオルオ。オルオはいつしか急に、口調も服装も髪型もリヴァイ兵長を真似しはじめて、なんか…すごく…うん。形容し難いなあ。
まあ、時々優しいよ。

で、エレン。エレンは新兵で、この間初めて会ったの。くわしいことは言えないけれど、とっても気配りができて、一生懸命な男の子です。
ちょっと色々この子にのしかかっちゃってるので、なんとか軽くしてあげられたらいいなって思ってる。

最後は、リヴァイ兵長。
お父さん聞いてよ。兵長が私の実力を認めてくれて、この特別班に指名してくれたの!
こんな嬉しいことってないよ。

私は兵長のために、全て捧げるつもりです。
兵長が私に期待してくれた分以上の成果を上げたい。
そのためなら、なんだってできる。

兵長のマッチョも目撃した話とか、私の料理を悪くないって言ってくれたこととか、
いろいろ書きたいことはたくさんあるんだけれど、もう便箋がなくなりそう。
また壁外調査から帰ったら、手紙を送ります。

それではお元気で、お父さん。
風邪ひかないでね。


   ペトラ

>>70 訂正

<13日目>

訓練後


エレン「…今日も団長と兵長とハンジさんは、会議ですかね」

オルオ「だろうな」

グンタ「次の壁外調査は今までとは勝手が違うからな。…エレン、お前が要になる」

エレン「……はい」

ペトラ「も、もう。グンタ、そんなエレンにプレッシャーかけないでよ」

グンタ「そんなつもりじゃなかったんだが…。とにかく俺たちはお前に期待してるってことだ」

ペトラ「だから、それがプレッシャーかけてるんだってば」

エレン「あ、あの!俺は大丈夫ですから!……やってみせますよ、なんでも。巨人ぶっ殺すためなら」

エルド「……そりゃ頼りがいがあるぜ、エレン」ワシワシ

エレン「うわっ」

オルオ「ハッ…いっちょまえにガキが吠えやがってよぉ…」ゲシゲシ

エレン「いてえ!」

――――――

○月○日

今日は訓練の後、お父さんに手紙の返事を書きました。
明日の朝だしに行こうと思います。

…お父さん、元気かな。
もう年なんだから、無理してないといいんだけれど。

長い…!
本当は「兵長と過ごす7日間」書こうと思ってたのに、原作見たら滞在期間30日でした
たぶん長くなるかもしれないですが、お付き合い頂ければ嬉しいです

レスや応援どうもありがとう。
今日もまったり書いていきます

<14日目>

○月○日

今日も訓練と書類整備で終わりました。
ハンジさんに巨人話の相手に捕まりそうになって、慌てて逃げました。
そしたらエレンが捕まってしまいました。ごめんねエレン。

今日お風呂に入ってるときに、お父さんからの手紙について考えていました。
結婚のこととか…。
でもそのときふと、自分の体にある無数の傷に目が入りました。

兵士だから、仕方ないですね。
でもこんな傷だらけの女を伴侶にもらってくれる物好きな人、いないと思います。

ちょっとだけ悲しくなりました。

<15日目>

食事後ティータイム


ハンジ「そーいえばさぁー」

エルド「? なんですかハンジ分隊長」

ハンジ「ペトラってリヴァイのこと好きなの?」


ペトラ「ぶーーーーっ!!////」

グンタ「あああああ!!きたねー!!」ビシャ

リヴァイ「クソメガネ……とうとう狂ったか?」


ペトラ「あの…ハンジさん。今なにか……仰いました?仰ってないですよね!!!ああーお茶おいっしい!このお茶おいしいなー!」

ハンジ「だーかーらー。ペトラは兵長のことが好きなのかい?」キッパリ

エレン(ハンジさん、すげえ)

エルド(さすがハンジさん。計算なのか天然なのか)

リヴァイ「……」

ペトラ「あの、あのあの……ええと……!?///」


エルド(やばいな、ペトラが涙目になってきてる)

エレン(兵長の無表情と無言こえぇ)


ペトラ「何を突然……私は…私……っ///」

ハンジ「私は好きだよ!リヴァイのこと」

ペトラ「えええ!?///」

ハンジ「エレンも好きだよね?」

エレン「え!?俺!? は……はい」

エルド「……俺も兵長のこと好きです」

グンタ「俺も好きですよ、兵長のこと!」

オルオ「俺もです!リヴァイ兵長のこと好きです!」

ペトラ「…!?」

リヴァイ「…馬鹿どもが……」

ハンジ「ふふふ、嬉しいくせにー」

ペトラ「あ、あの!!わ、わ…私だって!!その…」ガタンッ

ペトラ「私も……兵長のこと……そう思ってますから!!///」

ペトラ「…カップ洗ってきます!」バタバタ



リヴァイ「……ハンジ、テメー何を企んでやがる」

ハンジ「えー?人聞き悪いなあ。別になにも?」ニヤニヤ


エレン「オルオさん、大人ってこわいですね」

オルオ「あれは大人の中でも奇行種だと思うぞ…」

――――――

○月○日

今日は、なんだかハンジ分隊長にいじわるをされた気がします。
冗談だったのでしょうか?
いきなりあんなこと言われて、心臓が口から飛び出るかと思いました。

兵長のことは尊敬していますが、別に好きとか、そういう浮ついた感情ではないです。
私は兵士ですから。

<16日目>


グンタ「あー、重っいな、これ」ヨロヨロ

ペトラ「でももう兵長の執務室についたよ。兵長、失礼します」コンコン


ガチャ


ペトラ「兵長、頼まれたもの持ってきま……あれ?」

リヴァイ「……」

グンタ「…寝てる。あの兵長が」

ペトラ「頬杖ついたまま…書類確認しながら寝ちゃったのかな…」ジロジロ


グンタ「俺なんかかけるもの持ってくるな。まあ兵長は風邪なんか召されないと思うが…」スタスタ


ペトラ「えっ?ちょ、ちょっと…!……行っちゃった」

ペトラ「一人残されても…。……それにしても、寝顔も威厳があるな…」ジロジロ

ペトラ(……前髪が窓からの風に吹かれて揺れてる)

ペトラ(午後の柔らかい日差しが、兵長の背中に降り注いでて……なんだかとっても暖かい光景)


リヴァイ「……」

ペトラ(…兵長の出身はどこなんですか。兵長はなんで兵士になったんですか)

ペトラ(なんでスカーフしてるんですか。なんでそんな強いんですか)

ペトラ(なんでそんなかっこいいんですか…)


ペトラ(……聞きたいことは、山ほどあるけれど、口うるさい女って思われたくないし……)ハァ

ペトラ(もっと話したいのに……)


ガチャ

グンタ「おう、持ってきたぜ」ヒソヒソ

ペトラ「…ありがとう、グンタ」ヒソヒソ

――――――

○月○日

今日はなんと珍しいことに、兵長の寝顔を見れました。
寝てるときも顔がこわ…威厳があってさすが兵長だと思います。
お疲れなんでしょうか。
もっと私たちに頼ってほしいと思います。いや、私たちごとき全然力になれないかもしれませんが。
それでも力になりたいです。

<17日目>


ジョキン


ペトラ「………イヤァーーーーー!!!!」



――――――・・・
――――・・・

オルオ「……おい、ペトラ。なんだその右手は」

ペトラ「え?なんのこと?」

オルオ「お前の額におかれてる右手だ……そんなに俺のことを直視するのが恥ずかしいっていうのか…?」

ペトラ「違うよ…勘弁してよ…ほんと」

エレン「怪我でもしたんですか?」

ペトラ「いや…怪我ではないんだけど……」


エルド「あ、兵長。お疲れ様です」

リヴァイ「今日は俺も訓練に参加する。……おいペトラ。頭どうかしたのか」

ペトラ「うっ」ギク


グンタ「なんだ、額おさえて……頭いてえのか?」

リヴァイ「体調不良なら訓練に参加するな。医務室へ行け」

ペトラ「や……あの…頭痛ではなくて…」オドオド

エルド「?」

リヴァイ「……なんだ。さっさと言え」

ペトラ「うぅ…笑わないでくださいね?///」サッ


「「「……」」」


ペトラ「前髪間違って短く切りすぎちゃったんです…///」

エルド「…あー、若々しくて、いいと思うぞ。ペトラ!」

グンタ「おお、それぐらい短い方がいいかも、しれない、な」

エレン「ええ…本当に」

オルオ「……」

ペトラ「なんか言ってよ!もうオルオの馬鹿!!///」

ペトラ「もう最悪…」

リヴァイ「髪なんてすぐ伸びんだろ」

ペトラ「はい。そうなんですけど、そうなんですけどぉ……(こんな前髪で兵長に会いたくなかった…)」

リヴァイ「次からはハンジの奴に切ってもらえばいい。あいつは変態だが、手先は変態的に器用だ」

エルド「どっちにしろ変態なんですね」

リヴァイ「とにかく、んなちっちぇことでくよくよしてんじゃねぇ。髪型なんて誰も気にしねぇよ。訓練始めるぞ」

「「「はい!」」」


ペトラ(……///)

――――――

○月○日

今日は朝、髪を自分で切ったのですが、前髪だけ切りすぎてしまいました。
自分で見ても……なんというか、ひどい有様です。今でもちょっと凹んでます。
でも兵長が、さりげなく励ましてくれたような気がするので、少し気分が晴れました。
…私の気のせいかな? そうじゃないと、いいんですけれど。

明日はエレンの巨人化の実験をするようです。
少しだけ、心配です。

<18日目>

○月○日

右手が痛むので、今日は左手で日記を書いてます。
エレンはいつも、こんな痛みを味わっているのかと思うと、申し訳なく感じます。

今日のエレンの巨人化実験は、結果的に失敗に終わりました。
彼はまだ、巨人化を自由にコントロールできないみたいです。
でも、スプーンを拾うなどという目的意識が鍵になっているかもしれない、という発見がありました。

私たちは今日、エレンに刃を向けました。殺意を向けました。
エレンが命令もなしに巨人化をしたことで。(無意識だったということが後から分かりますが)

巨人を見た時、とっさに敵だと認識できたことに……私は安堵しました。
エレンと城で過ごして、だんだん彼をただの15歳の少年と感じていることに気づいていたから。

だから、兵士として、エレンが敵になったときには迷いなく刃を向けられる私のままでよかった。
だってそういう覚悟が、兵長が私たちに望んだものですから。

<19日目>

○月○日

今日も何事もなく一日が終わりました。
装備や器具の点検なども、今日行いました。
お昼は気温が高かったのに、今、日が沈んでからはとても冷え込んでいます。

みんなもう眠っているでしょうか。
…エレンは、朝も日の届かない地下室で、ひとりきりで眠っているのでしょうか。
……私の、昨日噛み切ろうとした手のひらは、まだジンジンと痛みます。



ペトラ「……」

ペトラ「…確か、少し古いけど使ってない毛布が、あそこの部屋にあったはず…」

エレン(う~~、地下室はやっぱり寒いな……手枷が冷えてるから、余計に寒い!)

エレン(…ん?誰か地下室に降りてくる音がする。兵長か?)


ペトラ「…エレン。起きてる?」ヒソヒソ

エレン「ペトラさん…?どうしたんですか?」

ペトラ「地下室寒いんじゃないかと思って…使ってない毛布もってきたんだけれど、使う?」

エレン「……!!ペトラさぁん……」ジーン

ペトラ「そ、そんな捨てられた犬みたいな顔しないでよ。……ただ、兵長には内緒よ?無断で来ちゃったから」

エレン「はいぃ…ありがとうございます…」

ペトラ「ううん。じゃあ、また明日ね。おやすみなさい」

エレン「おやすみなさい、ペトラさん」


コツ・・・コツ・・・コツ・・・



廊下

ペトラ「…やっぱり寒かったみたいね。もっていってよかった」

リヴァイ「ペトラ」

ペトラ「はい、兵長……って兵長!? なっ…なんで……ていうか気配消しすぎですよ…」ドキドキ

リヴァイ「どこに行ってた」

ペトラ「……お手洗いです」

リヴァイ「…嘘じゃねぇな?」

ペトラ「…………すいません。エレンのいる地下室に行ってました。今日は冷え込むので、毛布を届けに」

リヴァイ「勝手なことをするな。もしあいつがお前のいるときに巨人化したら、お前ひとりで対処できんのか?」

ペトラ「……すいませんでした。兵長」

ペトラ(ばれてた……)


リヴァイ「……次からは、俺にまず言いに来い」

ペトラ「…えっ?」

リヴァイ「俺にまず話通せっつってんだよ。俺はあのガキの監視役だからな…」

ペトラ「…はぁ……いいんですか?」

リヴァイ「何度も言わせんな。もう寝るぞ」スタスタ...



ペトラ(いいのか…)

ペトラ(……つまり、兵長に先に話を通していれば、別にこの行為自体を咎めない、ということ…だよね)

ペトラ(………はあ。ほんといい人ですね……もう…)

<20日目>

○月○日

今日は団長がまたいらっしゃいました。
10日後の計画の確認などを、みんなでしました。
そのあと団長と兵長と分隊長だけで、別室にこもって会議です。なにかほかの作戦もあるのでしょうか?

夜はやることもなかったので、せっかくですし団長と分隊長も入れてみんなでポーカーをしました。
やはりというか、当然というか、団長と兵長の強さが段違いでした。
オルオが一人負けしてました。考えが顔に出すぎ。

<21日目>



エレン「はぁはぁ…先輩方、やっぱり格闘術もすごいですね」

オルオ「あぁ!?当たり前だろうが……このヒヨッコめ…。俺を誰だと思ってる?リヴァイ班で討伐数ナンバーワンのオルオ様だぜ…?」

ペトラ「ちなみに私は討伐補佐ナンバーワンだよ」ニコニコ

エレン「わ、ペトラさんすごいですね。唯一の女性なのに」

ペトラ「ありがとう!あはは///」

オルオ「おい!新兵!!俺を褒めたたえる言葉が聞こえないんだが!?」

エルド「ここらで少し休憩挟むか」

エレン「ですね…疲れました」

オルオ「おい!!!」

エレン「そういえば…ペトラさん、この間の話の続き、聞かせてくださいよ」

ペトラ「え?なにそれ?」

エレン「ほら、兵長の話です。兵長が部屋に来ちゃったんで中断しちゃったじゃないですか」

ペトラ「え、えぇ~…/// そんなに聞きたいの?///」

エレン「はい」

エルド「…」ニヤニヤ


ペトラ「じゃあね…ああ、私が兵長を見る目が変わったあの時の話にしよっかな」

グンタ「…へえ?」

ペトラ「いや別に変な意味じゃなくて!!一般的な意味で、ね!?///」

私が調査兵団に入ったとき、同期はそんなに多くなかった。
エレン、あなたたち104期と違ってね。

その中で、訓練兵時代から仲良かった女の子がいて、
巨人に怯えながらも、一緒に頑張ろうって毎日励まし合ってた。

すごくかわいい女の子でね。私よりも強かったんだけど。
3度目の壁外調査で死んじゃったのよ。


エレン「……」

ペトラ「あっ…ごめん。もうすぐ次の調査があるのに」

エレン「いえ、続けてください」


……それで、それから2、3年後かな。
ふと兵長と話してるときに、その子のこと思い出して、

その子の名前をつぶやいちゃったの。全然話に関係なかったんだけど。

やっちゃった、ってそのとき思った。
だってその子が兵長の部下だったのはほんの数カ月で、全然接点もなくて。

しかも亡くなってから、数年経ってたから。

兵長は上に立つ人間だから、私よりずっと多くの兵士の死を見送っているし。

兵長からしたら
「上司と話してるのに、こいつなに意味不明なこと呟いてやがる」
って思ったんじゃないかって。


でも…

兵長は、「ああ。お前の同期だった奴か。そいつがどうかしたか?」ってすぐ答えたのよ。



ペトラ「覚えてたの。数年前に死んだ、たった数カ月しか部下でなかった女の子の、名前……」ポロ

ペトラ「きっと兵長は、死んでいった部下の名前、全部覚えてるんだと思う……」ポロポロ

ペトラ「私…私、悲しくなっちゃって」ポロポロ

エレン「ペトラさん……すいません!俺が話してくれって言ったから」アワアワ

オルオ「エレンンンン!!何俺の女泣かしてんだぁぁ…!!」

グンタ「…いや、ペトラの代わりにツッコむが、お前の女ではないぞ」

エルド「おいおい、泣くなよ、ペトラ…」ヨシヨシ

ペトラ「ごめん……グス…」


ペトラ「とにかく…私が言いたいのは、あんな不良みたいで顔が恐い兵長だけど、すっごく優しくて悲しい人なのよ……本当は…」

エルド「…だから俺たちは兵長を信じる。たとえどんなに納得がいかない命令が下されたとしてもな」

オルオ「ふん…俺の台詞とりやがって、エルドめ…」

エレン「……そうなん、ですか」

グンタ「ああ。だからエレンも俺たちと兵長を信じてくれ。俺たちもお前を信じてるからな」

エレン「…はい!」

1ですけど自分も正直かくのつらくなってきたーーーーwwwwwwwwwww
ほわーーーーーーwwwwwwwwwwww
なんで書き始めたんだろwwwwwwwwwっうぇwwwwwww

――――――

○月○日

今日は訓練の間の休憩の時間に、エレンに兵長の話をしてくれと言われて、
話してる間に不覚にも泣いてしまいました。
できる部下と、頼りになる先輩を目指してるつもりなのに、全くうまくいきません。

兵長の話しました。
死んでいったたくさんの人の名前をずっと背負いながら生きてくって、どんな気持ちなんでしょう。
とても辛いと思います、想像できないくらい。

だから、もし私がいつか死んだら…
その時は、兵長に私の名前を忘れてほしいと思ってます。
覚えてなくていいですから。
兵長が悲しむくらいなら。

台所

ペトラ「そうそう。ここはこういう手の形にしてね、慎重に切るの」

エレン「こう、ですか?」

ペトラ「うん。うまいうまい。間違ってもさっきみたいな切り方しないでね。台所大惨事になったからね」

エレン「はい!!」


グンタ「…やってんなぁ」

エルド「なんか、姉と弟みたいで、和むな」ホンワカ

オルオ「チビとチビが並んでやがるぜ…」

>>115 訂正

<22日目>

台所

ペトラ「そうそう。ここはこういう手の形にしてね、慎重に切るの」

エレン「こう、ですか?」

ペトラ「うん。うまいうまい。間違ってもさっきみたいな切り方しないでね。台所大惨事になったからね」

エレン「はい!!」


グンタ「…やってんなぁ」

エルド「なんか、姉と弟みたいで、和むな」ホンワカ

オルオ「チビとチビが並んでやがるぜ…」

エレン「……あの、どうして…ペトラさんは調査兵団に入ったんですか」

ペトラ「うん?んー…あ、ちょっと。ちゃんと鍋見ててね」

エレン「あ、すいません」

ペトラ「調査兵団に入った理由かぁ……うーん。なんか、言い表せないや。まあいろいろだよ」

エレン「…そうですか」

ペトラ「………今度、考えがまとまったら、改めて話していいかな?」

エレン「はい。ありがとうございます」


ペトラ「あ!兵長!ちょっと味見してみてくださいよ。エレンと私で作ったんです」ニコニコ

リヴァイ「…あ?」

グンタ「俺も味見させてくれよ」ヒョイ

ペトラ「だーめーでーすー」


ヘイチョウダケ! ナンデダヨ
 ウルセエヨ オマエラ

――――――

○月○日

今日はエレンに料理を教えました。
飲み込み早くて、すぐに上達してました。ちょっと危なっかしいところもまだあるけれど。
でもおいしくできてたよ。兵長も悪くないって言ってました。
やったねエレン!

<23日目>

エルド「ふあ…そろそろ寝るかな」

ペトラ「なんか話しこんじゃったね…私もそろそろ」ガタ

ガチャ

ハンジ「あっれぇ。お二人さん、随分夜更かしだねー」

エルド「ハンジさん」

ペトラ「どうかなさったんですか?あ、お茶いれます?」

ハンジ「うん、ありがと」





ハンジ「ところでさぁ」

エルド(嫌な予感)

ハンジ「ペトラってリヴァイに告白しないの?」

ペトラ「ぶーーーーっ!!///」

エルド(やっぱり)ビショビショ

ペトラ「ハンジ分隊長……っ!この前から、私のことからかって遊んでますね!?///」

ハンジ「いやいやそんなことないって」ニヤニヤ

ペトラ「ニヤニヤしてるじゃないですか」

エルド「……まあ、俺もそのことは聞きたいかもな」

ペトラ「エルドまで…!!」


ペトラ「……大体。私がいつ兵長を好きだなんて言ったんですか?」コホン

ハンジ「いや見てればわかるし」

エルド「お前あれで隠してるつもりだったのか…」

ペトラ「えっ!?えっ!?///」

ペトラ「私……別に…兵長のこと、上司として尊敬していますが……」

ペトラ「二人は勘違いしてますよ。この感情は尊敬とあこがれです」

ペトラ「ただそれだけです!誤解しないでください」


エルド「……」

ハンジ「ふーん?でもさぁ、私たちって、死と常に隣り合わせな職業なわけじゃん?」

ペトラ「それが、なんですか?」

ハンジ「思ったときに思ったこと、ちゃんと言った方がいいと思うけどなー」

ハンジ「いつ何があるか分からないんだから」

エルド「…そうだぞペトラ。死んでから後悔できないからな。伝えたいことがあるならすぐ言っちまった方がいい」

ペトラ「……」

ペトラ「…でも……でも、仮にそうだとしても…」

ペトラ「兵長は兵長じゃないですか。私はただの一介の兵士で……やっぱりだめですよ…」

ハンジ「釣り合わない、って?」

ペトラ「……」

エルド「…そりゃ、リヴァイ兵長が決めることじゃないのか?」

ハンジ「おお、言うこというねエルド。そうだよペトラ。リヴァイだってもともとゴロツキだよ?気負うことないさ」

ペトラ「……ハンジさん、気にかけてくださってありがとうございます。…エルドも」

ペトラ「でも、やっぱり私は……ごめんなさい」

エルド「…いや、お前がそういうなら、いいんだが…」

ハンジ「君が決めたことなら、何も口出ししないけどさ。でもやっぱ、好きなもんは好きって言った方が、生きるの楽しいよ?」

エルド「ハンジさんは口に出しすぎ、行動に移しすぎですけどね。主に巨人に」

ハンジ「はっは!まあね!!」

ペトラ「……あはは…」

――――――

○月○日

今日はハンジ分隊長とエルドに、兵長のことについて聞かれました。
兵長は私の憧れです。とても尊敬しています。

ただそれだけなんです。きっと。

また明日夜書きます
途中トチくるって変なレスしてますが気にしないでくださいてへぺろ

こんばんは
読み返したら>>62でナチュラルにハンジさんを性別男にしちゃってますね。すいません
女湯、男湯、ハンジ湯で分かれてると思ってください
今日も短いですが書いてきます

<24日目>

井戸

エレン「あと1杯分…これで終わりだな」ギコギコ

エレン「…ん?」


―――・・・


ペトラ「……エレン遅いね。どうかしたのかな?」

エルド「ちょっと見てこようか。何かあったのかもしれないしな」

グンタ「ああ」

リヴァイ「……」

オルオ「あの新米…なにしてやがる」


―――・・・

ペトラ「……エルドも戻ってこないね…」

リヴァイ「あいつら遊んでんじゃねえだろうな…」

グンタ「俺、見てきますよ」ガタ

リヴァイ「…チッ……グンタの奴まで、なにやってやがる」イライラ

ペトラ「グンタまで戻ってこない…ミイラ取りがミイラですね」

オルオ「仕方ねぇな…手間かけさせやがって、あいつら。俺が行ってきます、兵長」

ペトラ「オルオまで戻ってこないとかやめてよ?」


―――・・・


ペトラ「案の定ですね…オルオも戻ってきません」

リヴァイ「あいつら俺に喧嘩売ってんのか?」イライラ

ペトラ「まあまあ……あはは。私が見てきます」ガタ

リヴァイ「……」ジロッ

ペトラ「や、そんな疑惑に満ちた瞳で睨まないでください!私はちゃんと戻ってきますから!」ビクッ

井戸

ペトラ「もー、なにやってんのかな…いたいた!ちょっとぉ!兵長が怒ってるよ、なにしてんの?」

オルオ「おお、ペトラも来たか」

エレン「井戸で水汲んでたら、こいつ見つけて……」


ニャー


ペトラ「……は?」

エルド「猫だよ猫。山に住んでるんだな。めっずらしい」

オルオ「グンタの奴が妙に懐かれちまって、笑えるぜ」プッ

ペトラ「……は?もう一回言うけど、は? ねえ兵長怒ってるから、帰った方がいいって…」

グンタ「まあそう言わねえで、ペトラも撫でてみろよ」

ペトラ「……」


ペトラ「……悪くないかも」

エレン「でしょう?かわいいですね」ナデナデ

ニャー

5分後


ペトラ「うわ~~~~かわいいなぁ~~~~///」ナデナデ

エルド「お? もう一匹きた」

オルオ「あっちからも、また一匹きたな」

エルド「そして、なぜかグンタの方に引き寄せられていったな…」

グンタ「うわああ!なんだこれ」ニャーニャーニャーニャー

ペトラ「……あはは!グンタなにやってんのっあははは!ちょっとぉ、笑わせないでよーっ」

エレン「……っふふ…すいません……ぶふっ!」プルプル

エルド「なんだお前のその謎の才能…っくくく…」プルプル

オルオ「無様だな。ブハッ」

グンタ「おい!笑ってねぇで助けろよ…」ニャーニャーニャーニャー

10分後

ペトラ「ねえエレン、兵長に猫もってってよ」

エレン「はい!?なんで俺なんですか!?」

ペトラ「兵長が猫抱いてるところ見たいなって」

オルオ「そうだ……お前は俺たちの中で最も経験が浅い…つまり、お前が兵長に行ってくるべきだな」

エレン「いや、何言ってるんですか?」


リヴァイ「……楽しそうだなぁてめぇら」

「「「……」」」ハッ…

リヴァイ「いい年して…猫なんぞに夢中になって、恥ずかしくねーのか」ハァ

エレン「俺まだ15歳なんでセーフですよね!」

ペトラ「なっ!それを言うなら私だってまだ…」

オルオ「いや俺だってなぁ…」


リヴァイ「俺はそういうこと言ってんじゃねえ!」ダンッ

ビクッ

リヴァイ「特にグンタ…てめぇなんだその有様」

グンタ(ええ~… 俺かよ。特に俺かよ)ニャーニャー

ペトラ「ま…まあまあ!兵長も撫でてあげてみてくださいよ!すっごくかわいいですよ」

ニャー

リヴァイ「やめろ。ノミとかいたらどうすんだよ。きったねぇ…」

窓からハンジ「リヴァイはね~動物も虫も嫌いなんだよ!男のくせに笑っちゃうよね~」ガラッ

エレン「うおっ ハンジさん」

リヴァイ「きめぇだろうが。何が手にくっつくかわからん」チッ

グンタ「そ、そうですか?」

ペトラ「こんなにかわいいのに」

リヴァイ「…いつまで井戸でこうしてるつもりだ?さっさと戻れ馬鹿どもが…」イライラ

エルド「あ、はい。すいません」

グンタ「ちょっ…俺動けないんですけど……おい!ちょっと待て…」ニャーニャー

――――――

○月○日

今日は井戸に水汲みにいったエレンが帰ってこないと思ったら、猫がいました。
妙に人懐っこかったです。すごく癒されました。
兵長が猫抱いてるところ見たかったな…。動物も虫も嫌いみたいです。

そういえば、私の肩にいた大きな蜘蛛を、兵長がとってくれたことがありましたけど…
蜘蛛だけは大丈夫なんでしょうか?
猫はダメで蜘蛛は平気って、よくわからないですね、兵長。

<25日目>

今日は休憩時間にみんなでチェスをして遊びました。
……なんだか、日記を読み返すと、私たち遊んでばっかりに見えますがそんなことはないです。書いてないだけです。

私はあんまりチェスをしたことがありませんが、よくエルドとか兵長とかグンタがやっているのを見ます。

私とエルドvs兵長でやってみたら、なんとあの兵長に一回だけ勝てました。

エルドに手伝ってもらったとは言え、快挙です。

でもそれよりも嬉しいことがありました。
兵長が「やるじゃねぇか」って言って笑ったんです!!!

びっくりしてチェスのコマ全部ひっくり返しそうになりました。

城での生活は、今日もとっても充実してました

ずっと、こんな風に過ごせたらと思ってしまうほど。
こんなにあの忙しい兵長と、一緒にいられるなんてめったにないですから。
なんだか…幸せだけれど、…なんでしょう。この気持ち。


ペトラ「……///」


―――パタッ パタタッ


ペトラ「…っ!」

ペトラ「……」


―――カリカリカリ…


  ←これはコップの水を零してしまった染みです。
   うっかりしてしまいました。気をつけなければ。


―――パタン

<26日目>

ガチャッ!

ペトラ「おはようございまーす!!!兵長!!みんな!」

オルオ「…うるせっ!!どうしたペトラ……俺はまだお前にプロポーズした覚えはねぇが…?」

エレン「おはようございます…どうかしたんですか、ペトラさん?」

ペトラ「いや?だってこんなに素晴らしい朝じゃない!清々しいですね、兵長!」ニコニコ

リヴァイ「…あぁ…?」

ペトラ「さぁ!洗濯してきちゃいますね私!」バタバタ


エルド「……兵長、ペトラに何か言いました?」

リヴァイ「なんで俺に言うんだよ」

エルド「いや、なんでもないです」

バシャバシャ


ペトラ(ああ…寝不足)クラクラ

ペトラ(でもそのせいで、何か吹っ切れたかもしれない)

ペトラ(……ハンジさんが、言ってたじゃない。いつ何が起きるか分からないんだから、思ったことはすぐ言った方がいいって!///)

ペトラ(たぶん…たぶん…!この気持ちは尊敬だけじゃない……)

ペトラ(そうよ…だって、壁外調査が終わったら、この特別班もいつ解散されるか分からない。だったら…!)

ペトラ(この機を逃したら…私は後悔するんじゃないの?///)


オルオ「おい」

ペトラ「っひゃああああああああ!?///」バシャーン


オルオ「なにやってんだ……」

ペトラ「オルオ!いるならいるって言ってよっ」

オルオ「なんかお前、今日様子おかしくねぇか?」

ペトラ「べっ……別に。オルオこそ…今日は舌噛まないんだね」

オルオ「毎日噛んでるわけじゃねぇ…」


オルオ「兵長のことか?」

ペトラ「………。あのさ、聞きたいんだけど、みんな超能力でも持ってるの?///」

ペトラ「なんなの…?いや…そんなに分かりやすいかな?…そんなわけないよね?///」ブツブツ


オルオ「……」

オルオ「ずっと見てたからな」ボソ


ペトラ「? なにぼやいたの今?」

オルオ「…んでもねぇよ…チッ……お前もまだまだだな」

ペトラ「はい…?」

オルオ「俺の憧れである兵長を……お前ごときの女にやるにはもったいない気がするが…」

オルオ「喜べ……特別に許可してやる。…俺がな」

ペトラ「…なんでオルオの許可が必要なの?」

オルオ「それは、あ、あれだ…。兵長は俺のものと言っても過言ではないからだな」

ペトラ「過言だよ。やめてよ」

オルオ「とにかくだ。俺が許可してやったんだからよ…お前も誠意見せろ」ビシッ

ペトラ「だからなんでそんな偉そうなのよ…」

オルオ「いいか!分かったな!」タッタッタ…



ペトラ「……オルオにまで…ばれてるなんて、屈辱…///」

――――――

○月○日

今日も何事もなく、訓練を終了しました。
それから、私覚悟を決めました。
壁外調査の前に、なんとか時間を見つけて、兵長に私の気持ちを伝えたいと思ってます。

ハンジさんとエルドの言う通り、私は後悔しない生き方を選びたい。
今日、あのいつも馬鹿な真似をしてるオルオにまで、背中を押されました。
気持ちを伝えた後…どんな反応が返ってくるかわかりませんが。
やるだけやりたいです。

…兵長のことが、好


ペトラ「……ッ////」


―――ビリビリビリッ
―――グシャッ

――――――
○月○日

今日も何事もなく、訓練を終了しました。
それから、私覚悟を決めました。
壁外調査の前に、なんとか時間を見つけて、兵長に私の気持ちを伝えたいと思ってます。

ハンジさんとエルドの言う通り、私は後悔しない生き方を選びたい。
今日、あのいつも馬鹿な真似をしてるオルオにまで、背中を押されました。
気持ちを伝えた後…どんな反応が返ってくるかわかりませんが。
やるだけやりたいです。

今日は、もう寝ます!

<27日目>




ペトラ「……」ドキドキ

エレン「ペトラさん、なんか今日、目が血走ってませんか?」

ペトラ「そ、そんなことないよ。あははは…」

グンタ「寝不足か?」


ペトラ(…朝は、さすがにないよね。うん)







リヴァイ「俺は今日はハンジと話し合うことがある。お前らはエレンの訓練見とけ」

エルド「はい」

ペトラ(ま、まあ…昼も、ないよね。夜に賭けよう)



エレン「ごちそうさまでした」

リヴァイ「……」ガタッ

リヴァイ「俺はもう寝る。片付けしとけよ」

ペトラ「へっ!?」

リヴァイ「…なんだ」

ペトラ「いやっ……えっと…なんでもない、です。おやすみなさい兵長……あはは」

リヴァイ「……」


バタン


ペトラ(……あれ…あれあれ?)

グンタ「どうしたんだ、ペトラ?最近様子がおかしいんじゃねえのか?」

オルオ「……ったく…」

エルド「……ほお…」ニヤニヤ

エレン「?」

ペトラの自室


ペトラ「……はぁーっ…」

ペトラ「普通に就寝時間になっちゃったよ…昨日、日記にあんな決意表明を書いといてなんもやれてないよ~」

ペトラ「別に日記見るの私だけだけど……この調子じゃあ、すぐ調査の日きちゃうって!どうしよう!」

ペトラ「…うう…とりあえず喉かわいたから食堂に行って水飲んでこよう」

ペトラ「都合よく兵長いないかな… さすがに都合よすぎだよねそれは」




食堂

ペトラ(…誰もいない夜中の食堂って不気味)

コツ・・・コツ・・・

ペトラ(? 誰かこっちに来てる…まさか、兵長!?///)ドキ

ペトラ(ど、ど、どうしよう!///)アワアワ

ペトラ(……なんてね。こういう時ってどうせオルオとかなんだよね。知ってる知ってる)

ペトラ(焦ったってどうせ肩すかし食らうんだから)








リヴァイ「…ペトラか?なにしてんだ一人で」

ペトラ「ひぇっ!?///」

ペトラ(ええええええええ!本当に兵長きちゃった…!ちょっと不意打ちすぎて心の準備がっ!)


ペトラ「へ…兵長こそ、どうなさったんですか?」

リヴァイ「水飲みにきただけだ」

ペトラ「そうですか…あ、せっかくだからお茶入れます?」

リヴァイ「……ああ。頼む」



カチャカチャ
 コポコポ・・・


ペトラ(……兵長と二人きりだけど、これ間がもつかな!?///)

ペトラ(いや、落ち着いて…まずは、軽い世間話から…)

リヴァイ「……お前、昼になんか俺に話したいことあったんじゃねぇのか?」

ペトラ「!?」ビクッ

リヴァイ「俺の方ちらちら見やがってただろうが。何か用か」


ペトラ(え、ええー…!いきなり!?///)


ペトラ「話したいことっていうか……あることにはありますが…いやあの」

リヴァイ「……さっさと言え」ジロッ

ペトラ(眼光が鋭すぎるーー!顔がこわいです兵長!ど、どうしよう///)


ペトラ「あ、ああ!そうでした、兵長はなんで調査兵団に入ったんですか?」

リヴァイ「……んなこと聞きたかったのか?」

ペトラ「ええ。この間エレンに聞かれたんですよ。兵長ならどう答えますか?」

ペトラ(うまく…ごまかせたかな)

ペトラ「ああ、お茶どうぞ」コト

リヴァイ「……俺はエルヴィンに誘われて兵団に入った。細けぇことは忘れちまったがな」

リヴァイ「それで、お前はなんて答えたんだ」

ペトラ「え?」

リヴァイ「調査兵団にいたら兵士なんて駒だ。お前がこの間ひっくり返しそうになったチェス盤のそれみたいにな」

ペトラ「…ええ」

リヴァイ「生きた意味も死ぬ意味も見つけられねえまま、死体になる奴の方が多い、クソみてぇな場所だ。ここは」

ペトラ「……た、確かにそうかもしれないですけど…っ」

ペトラ「でも…私は後悔してません。兵長の下で戦えて、本当に光栄に思ってます!」

リヴァイ「……」

ペトラ「……兵長、少しだけお時間頂いて……私の話、聞いてくれますか…?///」

ペトラ「……私……私っ、兵長のこと…」

ペトラ「その……」

リヴァイ「……」



ペトラ(…い、言っちゃうの?言っちゃうの私?///)

ペトラ(でも言うしかない。決めたじゃない…!エルドもハンジさんもオルオも応援してくれて…!)

ペトラ(私が後悔しないように…って………、あれ…?)

ペトラ(私…が?)

ペトラ(…………)


『生きた意味も死ぬ意味も見つけられねえまま、死体になる奴の方が多い、クソみてぇな場所だ。ここは』


ペトラ(…………)



ペトラ「…私、兵長のこと……」




ペトラ「……とっても尊敬してます」ニコ

ペトラ「班で私ひとりだけ生き残ったこともありました」

ペトラ「目の前で巨人に食べられた仲間の断末魔が、耳から離れず眠れない夜もありました」

ペトラ「戦うのをやめたくなるときも、ありました」

ペトラ「でも、いつだって兵長がしっかり2本の脚で立って、前を見据えてくれたおかげで、私も立ち直れたんです」

ペトラ「いつもいつも、私が前を見ればあなたの背中があって、とってもそれが頼もしくて、勇気づけられました」


ペトラ「本当に、ありがとうございます。兵長」ペコ

リヴァイ「……礼を言うのは、お前が一人前になってからにしろ」

ペトラ「私だってもう一人前ですよ」

リヴァイ「一人前の兵士は前髪を切りすぎただけでうろたえたり、猫にデレデレしたりしねぇよ……」

ペトラ「なっ/// それとこれとは別だと思います!ていうか前髪は忘れてください!」

リヴァイ「騒ぐな……うるせぇ」

リヴァイ「……俺はもう寝るぞ。お前も早く部屋に戻れ」

ペトラ「はっ、はい!おやすみなさい」

ペトラ「…お話、聞いてくれてありがとうございました、兵長」

リヴァイ「別に大したことはしてねぇ」


コツ・・・コツ・・・コツ




ペトラ「…………おやすみなさい。兵長」

――――――

○月○日

兵長とさっきまで食堂でお話していました。
二人きりだったので、告白のチャンスだと思いましたが、結局伝えませんでした。
途中で気づいたんです。私は私のことしか考えていませんでした。

私が兵長に思いを伝えれば、私はいつ死んでも後悔しないことになりますが、
兵長にとってペトラ・ラルは一人の部下から、自分に思いを寄せていた部下になりますね。

兵長は今までも、そしてこれからも多くの部下の死を見送る立場にあります。

返事がどうであろうと、きっと後者の死の方が兵長にとって重たいのではないかと思います。だから私は…伝えるのをやめました。

今日兵長に言った気持ちもまぎれもなく本当です。
私が今ここで兵士として生きていられるのも、兵長のおかげです。

全部、兵長のおかげなんです。

たぶん次で完結できると思います
おやすみなさい

レスありがとうございます
今日はちょっと遅筆になるかもですが 続き書きます


<28日目>


エルド「……」

グンタ「……」

エレン「……」

オルオ「……」

ハンジ「…あっれえ?ペトラ今日なんかあったの?」

ペトラ「えっ 何もないですよ。訓練で疲れちゃっただけです」アハハ

ハンジ「……そうなんだ?ゆっくり休んだ方がいいよ」ポン

ペトラ「ありがとうございます。ちょっと顔洗ってきますね」



エルド「…俺も先に洗ってくるかな」

オルオ「チッ…俺も行く」


エレン「…なんかあったんですかね?」

グンタ「まあ、大体予想はつくな。あいつらに任せた方がうまくやってくれんだろ」

パシャパシャ


ペトラ「……」

エルド「よう、ペトラ」

ペトラ「あ。エルドとオルオ。…どうしたの?」

オルオ「そりゃこっちの台詞だ、馬鹿野郎」

エルド「お前もしかして、昨日兵長に…言ったのか?」ハラハラ

オルオ「な、なんて返事もらったんだ?言ってみろペトラ!」ハラハラ

ハンジ「うおお!言ったのペトラ!?やるじゃん!!」ズサーッ

ペトラ「ギャッ!?ハンジさんどこから!?」ビクッ


ペトラ「…言ってないです」

エルド「ん?そうなのか?俺はてっきり…」

ペトラ「言わないことに、決めたの。ごめんなさいハンジさん、エルド、オルオ。せっかく応援してくれたのに」

ペトラ「でも、色々悩んで、決めたことだから」ニコッ

ハンジ「本当に、それでいいっていうの?」

オルオ「……」

ペトラ「ええ。ハンジさんは、私たちがいつ死ぬか分からないところで生きてるから、思ったことはすぐ言った方がいいって言ってくれましたけれど」

ペトラ「私は逆の方に考えたんです。いつ死ぬか分からないからこそ、言わない方がいいこともあるんですよ、たぶん…」

エルド「……ペトラ。お前が決めたことなら、口出ししない。頑張れよ」

ハンジ「…ペトラぁー!!」ガバッ

ペトラ「きゃっ!?///」

ハンジ「あんたはあの刈り上げ野郎にはもったいないくらいの子だよ!!私の嫁に来い!!ね!?」

ペトラ「ちょっ……いたたたた」


エルド「ハ、ハンジさん、それぐらいにした方が……」

ハンジ「…ふう。じゃあ私たちは先に戻ってるよ。ちょっとやることがあるからね」

エルド「二人とも、またな。…ペトラ、無理はするなよ。何かあったら、話くらい聞くから」


スタスタ


ペトラ「…なんかさ、本当にごめんね」

オルオ「……仕方ねぇから、俺が嫁にもらってやるよ。仕方ねぇからな」

ペトラ「遠慮するよ…」


ペトラ「これからも、一緒に頑張ろうね。リヴァイ班として」

オルオ「言われなくてもな。俺たちもそろそろ戻るか」

ペトラ「うん。……わあ、ここの庭、また草が生えてきちゃったね。もしこの城が使われることになったら、またすぐ掃除から始まるんだろうな」

オルオ「雑草はすぐ伸びやがるな……」

ペトラ「あれ?これも雑草?」

ペトラ「白くてかわいい花だね。なんて名前だろ」

オルオ「お前…まさか知らないのか?ふん…まあ仕方ないか。ペトラだしな」

ペトラ「む、むかつくなぁ…オルオは知ってんの?」

オルオ「当たり前だ。ついでに言うと、花言葉まで知ってる」

ペトラ「……本当?意外だなぁ…というかちょっと気持ち悪いなぁ…」

オルオ「お前、調子乗るなよ!?さっきまでの汐らしい態度どこやった!」

ペトラ「で、花言葉はなんなの?」

オルオ「……チッ……そいつはな…――――」

兵長の執務室

リヴァイ「……」

リヴァイ(そろそろあいつらの訓練が終わった頃か?…下に降りるか)


コンコン


ペトラ「兵長、ペトラです」

リヴァイ「入れ」

ペトラ「失礼します……あの、大した用事じゃないんですけど」

リヴァイ「なんだ?」

ペトラ「えっと、これ、兵長に渡したくて……///」

リヴァイ「……。てめぇ、こりゃ雑草じゃねぇか」ビキビキ

ペトラ「いやっ違うんですよ!!雑草じゃないんですって。ちゃんとした花なんです!」

リヴァイ「庭に生えてる雑草だろうが……」

ペトラ「あのっ、ちゃんと小さめの花瓶に入れてきましたし、部屋に花があればなんか癒されませんか?…なんちゃって……///」

ペトラ「ど、どうしてもお嫌でしたら、もちろん私が持ち帰るんですけど……」

リヴァイ「……そこに置いとけ」

ペトラ「いいんですか?」

リヴァイ「チッ…さっさとしろ」

ペトラ「ありがとうございます!///」パァ


ペトラ「…小さくてかわいらしい花だと思いませんか?結構私、気にいったんですよ」

リヴァイ「花を愛でる感性なんぞ俺は持ってねぇ。花は花だ」

ペトラ「またまたぁ…ははは」

・・・・・・コト

――――――

○月○日

今日はいつも通りに過ごしたつもりだったんですけれど、なんだかみんなに心配をかけてしまいました。申し訳ないです。
明日こそいつも通りに戻ります。

それから、兵長に庭に生えていた白い花を渡すことができました。

ただの雑草だと私も思っていたのですが、オルオに花言葉を聞いた後では、
とても愛着がわいてかわいらしく思えてきました。


…あの兵長が花言葉なんて知ってるわけがないと思うので、大丈夫ですよね。
言葉で伝えられない思いを、花に託しました。
これくらいは……いいですよね?

明日はとうとう城で過ごす最後の日です。
長いようで短かった、そんな風に思います。

<29日目>

エルド「…今日はすごい星がきれいだな」

エレン「え? ああ、本当ですねー」

グンタ「山だからか、街よりきれいに見えるよな」

ハンジ「いよっ!君たち揃ってなに見てんの?」

ペトラ「窓に集まって…もうすぐご飯だから準備しなきゃだよ?なになに?」

オルオ「お前らなにして……星?」

エレン「なんかすっごいきれいに見えるんですよ、今日」

ハンジ「あ!!いいこと思いついた!!」


リヴァイ「テメーらなにやってんだよ」ガチャ


ハンジ「今日はみんなで、外でご飯食べよーぜ!!」


ペトラ「……え?」

ハンジ「だってさ、明日はエレンの初壁外調査なわけじゃん。前日はパーッとみんなでやろうよ!今日は星がきれいだし」

エルド(それはいいと思いますが…)チラ

グンタ(兵長が…)チラ

リヴァイ「……ああ?却下に決まってんだろメガネ。外で飯食うなんて正気の沙汰じゃねえ」

リヴァイ「衛生管理もクソもねぇじゃねえか……もう一度言うようならテメェのメガネ叩き割る」

ハンジ「えええー リヴァイのケチ。エレン、ペトラ、君たちも星空の下でご飯食べたいよね?ね?」


エレン「えっ……ま、まあ……。でも、兵長が仰ることですから」ショボン

ペトラ「そ、そうですよ、ハンジ分隊長……」ショボン

エルド(うまいな。エレンとペトラを味方につけるとは。兵長よりハンジさんの方が一枚上手だ!)

オルオ(兵長はどうでるんだ!?)チラ


リヴァイ「……」

リヴァイ「……」

リヴァイ「…さっさとしろ」

ハンジ「え?なにを?」

リヴァイ「さっさと外で飯食うための準備しろっつってんだよ!」ビキビキ


ハンジ「リヴァイちょれー!!やったぜみんな!」
ペトラ「テーブル運びましょっか」
エレン「じゃあ俺これ持ってきますね!」

エルド「ありがとうございます兵長!」
オルオ「兵長、俺たちが準備するんで座っててくださいね!」
グンタ「ありがとうございまーす!」

わいわい
 わいわい



ペトラ「なんかこういうの、楽しいですね」アハハ

グンタ「外で飲むとお茶も一段とうまくなるな」

エレン「……今日で最後なんですね、この城も」

エルド「分かんないぞ?今後の作戦次第ではまた使われるかもな」

リヴァイ「…ああ。明日の成果次第、だな」


ハンジ「ねえねえ、あそこの星座なんに見える?私は巨人の切断された頭部に見えるけど!」

グンタ「分隊長らしい発想ですね」ハハハ

エレン「俺は……同期のライナー・ブラウンの眉毛に見えますね」

オルオ「間抜けな発想だなエレンよ…。俺にはペトラの尻に見える」

エルド「最っ低だなぁ…」


リヴァイ「……」ガタッ

ペトラ(…あ)

リヴァイ「……」スタスタ

ペトラ「…兵長!もう戻られるんですか?」

リヴァイ「ちげぇよ。あいつらの馬鹿騒ぎに辟易しただけだ。とくにハンジの奴のな…」

ペトラ「…じゃあ静かにしてるので、隣に座ってもいいですか?」

リヴァイ「……勝手にしろ」

ペトラ「ありがとうございます」ストン



ペトラ「……星、きれいですね」

リヴァイ「俺にはよくわからん」

ペトラ「きれいですよ。ほら、見てください」

ペトラ「夜空いっぱいの星。そのせいで、夜なのに兵長の顔がよく見えるくらい明るいです」

ペトラ「星がなかったら、真っ暗闇ですよ、この世界」

ペトラ「……お互いにこそこそ話しあってるみたいに光ってる星を見ると、なんだか元気がでるっていうか……。そういうことって、ないですか?」

ペトラ「あ。私静かにしてるって言ったのに、話しすぎですね…すいません///」

リヴァイ「……かまわん」

リヴァイ「俺はお前みたいに星を見て、何かを感じるなんて経験ねぇな。あいつらなんて、ただ空に張り付いて明滅してる点だ」

リヴァイ「なんの役にも、立ちゃしねえ」

ペトラ「そ、そんな身も蓋もない言い方しなくても…」


ペトラ「……元気でるときもありますけど、反対に寂しくなるときもあるんですよ」

リヴァイ「……」

ペトラ「今日みたいな日は…みんなで過ごすの最後だなって、思ったら。星を見上げると、余計寂しくなっちゃいます」

ペトラ「…ダメですね……私」

ペトラ「……すいません、壁の外に出る日の前日に、こんな弱気なこと言って。はは」

リヴァイ「……なら」


リヴァイ「俺の背中だけ見とけ」

ペトラ「……へっ?」

リヴァイ「この間、俺の背中を見て勇気づけられたっつってただろうが…」

リヴァイ「見て寂しくなるくらいなら、星なんぞ見ずに俺の背中だけ見てりゃいい」



ペトラ「……」ポカン

ペトラ「……な…///」カァ

ペトラ「……なんで…そんな、かっこいいこと…サラッと言うんですか…!?///」

ペトラ「……っ///」ジワ

ペトラ「……ずるいですよ…急に、兵長がそんなこと言うから…っ///」ゴシゴシ

ペトラ「もう…!びっくりして、涙でちゃったじゃないですかぁ…」ゴシ


リヴァイ「俺はお前らの判断を信じてる。お前も俺の判断を信じろ」

リヴァイ「前を見続けろ。迷うんじゃねぇ。俺の知ってるペトラという奴は、それができる人間だ」

リヴァイ「迷いそうになったら俺の背中を見てろ。そうすりゃ…間違いはねぇ」


ペトラ「……はい」グス

ペトラ「いついかなる時でも…兵長を、信じてます。ずっと、兵長に着いていきます…!」

ペトラ「兵長の部下になれて、本当に私、嬉しいです。本当に…///」ジワ

ガサガサッ


ハンジ「あ いたいた。どこ行ったのかと思ったってウワーーー!リヴァイがペトラを泣かせてるーー!!!」


リヴァイ「」
ペトラ「」ビク


オルオ「ええええええええ!?兵長、なにしてるんですか!!!」ガサガサ

エレン「まさか暴力ですか兵長!?」

エルド「おいおいみんな…」

グンタ「ハンジさんも煽らないでくださいって…」

ハンジ「大丈夫!?そこのちっちゃいオッサンになんもされてない、ペトラ!?」

リヴァイ「テメェ……一回うなじを削がれてみるか?」ジャキ

ペトラ「……」

ペトラ「兵長にいじめられましたーウワーン」

リヴァイ「!?」


オルオ「兵長おおおおおおおおおお」

エレン「まじですか……ないです兵長ないです」

エルド「…リヴァイ兵長…」

グンタ「……」

ハンジ「さいてー人類最強さいてー」ケラケラ




リヴァイ「てめぇら全員そこに正座しやがれ……!!!」ビキビキ

――――――

○月○日

兵長に正座させられた足がまだしびれます…

今日は訓練の後、城での最後の夕食ということで、みんなで外で食べました。
潔癖症の兵長が許可くれたことにびっくりです。…結構部下に甘いですよね。

兵長が、急にやたらとかっこいい言葉をかけてくれたので、思わず涙ぐんでしまいました。不意打ちは卑怯だと思います。
なんだか、この1カ月は涙腺が緩かったように感じます。しっかりしないと。

「俺の背中だけ見とけ」って………
なんなんですか。
……こっちの気も知らないで。もう、今思い出しても顔が熱くなります。


でも、その通りだと思いました。
兵長をずっと信じてます。信じて、ただ前に進めばいいのだと。
エルド、グンタ、オルオ、エレン。兵長と同じくらい、あなたたちのことも、信じてます。


それでは、明日に備えて、今日は早めに寝ることにします。

<最終日>

○月○日

今日はエレンと一緒に壁外調査の日です。
きっと今日は帰ってきても、ヘトヘトに疲れて日記も書けない状態になってると思うので、出かける前に書いておきます。

今日は快晴です。風がとても気持ちいいです。
兵長の部屋のあの花、まだ萎れてないかな?

窓の外で、鳥が鳴いています。なんという名の鳥か、オルオは知ってるかな。
今度聞いてみましょう。

…これまでも、何度も死地を潜りぬけてきました。
私たちは絶対に生きて帰ってきます。

装備も気合も十分です!
それでは、行ってきます。




――――――パタン


がやがや
  がやがや


馬「ヒヒン…」

エレン「……」ドキドキ

エルド「エレン。緊張してるのか?」ポン

オルオ「ハッ、ビビってんのかエレン?」

エレン「先輩方。ビビってなんか……いえ、正直、少し緊張してるかもしれません」

グンタ「素直だな。いいことだぜ」バシッ

エレン「いたっ!」

ペトラ「誰だって最初は緊張するよ。ね、エレン」

エレン「なんですか?」

ペトラ「元気がでるおまじない、教えてあげる。エレンだけ、特別だよ」

エレン「??」

ペトラ「ほら、あっち見て」

エレン「……?兵長が、団長としゃべってます。向こう向いて」

ペトラ「うん。……ね!!」

エレン「あの…全然分からないんですけど!?」

ペトラ「だから!兵長の背中見てよ。背中の、調査兵団の紋章、自由の翼を」

エレン「はい…」

ペトラ「すっごく元気がでてくるでしょ?」ニコ

エレン「……」

エレン「…確かに」

ペトラ「そうでしょ。ふふふ。これでエレンも一人前だよ」

エレン「そ…そうですか。……ありがとうございます、ペトラさん」


クルッ

リヴァイ「…てめえら、何こっち見てひそひそやってんだよ」

ペトラ「あっ…いえ!なんでもないです!あはは!」ビク

エレン「ははは…すいません」ビク

エルド「おーい、エレン、ペトラ。そろそろ馬に乗って出発の準備しろ」

ペトラ「うん、分かった!……ねえエレン?」

エレン「はい?」

ペトラ「私はあなたを信じてる。兵長も、団長もみんなあなたを信じてるよ」

ペトラ「巨人化できる104期兵士としてではなく、エレン・イェーガーを」


エレン「……!」


ペトラ「…だから」






―――あなたも私たちを信じて。



―――エレン。

―――――・・・
―――・・・


…そういえば、まだあの話をしていなかったっけ。
エレンが私に聞いてきた話。

私が調査兵団に入った理由。

……きっかけは、なんだったかな。
でも大層なものじゃないよ。
ただ巨人の手から、大切な人たちを守りたくて。


調査兵団に入ったことを、一度も後悔しなかった、って言えば
それは嘘になっちゃうな。正直ね。

でも、たぶん。

もし時間を巻き戻せたとしても。

私はきっと、また同じ人生を辿ると思うの。

例え、今この瞬間に命が途切れたとしても。



あのね。

兵長は、私たちがいる世界を

生きた意味も死ぬ意味も見つけられないまま、死体になる奴の方が多い、クソみたいな場所って言ってたけど

私はそう思わないよ。


生きた意味も、死ぬ意味も

私にとっては、どうでもいいことだったんだ。

エレン「本当に…奴の正体が…?」

ペトラ「エレンのおかげでね。…私たちを信じてくれたでしょ?」

ペトラ「あの時、私たちを選んでくれたから今の結果がある。正しい選択をすることって、結構難しいことだよ」


不気味なほど静まり返った森。
不安を掻き消すかのように、彼らは声を張り上げる。


エルド「お前ら…二人とも初陣でションベン漏らして泣いてたくれに…立派になったもんだな」

エレン「えぇ!?」


ペトラ「ギャアアア!言うなよ!威厳とか無くなったらさぁ!!!どうするんだよ!!!」

オルオ「馬鹿め!!俺のが討伐数とかの実績は上なんだが!?馬鹿!バーカ!!」

迫りくる影に、まだ彼らは気づいていない。


グンタ「お前らピクニックに来てんのか!?壁外なんだぞここは!!」

グンタ「ちなみに俺も漏らしてねぇからな エレン!!」


全員が、無事に帰還できることに安堵していた、その矢先だった。


グンタ「おっと…きっと、リヴァイ兵長の信号弾だ。兵長と合流するぞ!」

オルオ「……」

フードを被った小柄な人物が、向こうから飛んでくるのが目に入った。


グンタ「ん!リヴァイ兵長。………イヤ違う…」


グンタ「誰だ?」


一閃。
同時に彼の身体がぐらつき、木の幹に打ちつけられた。


エレン「!?……え…ちょっと……どうし、」

エレン「……!!!」

オルオ「エレン止まるな!!進め!!!」ガシッ

ペトラ「…誰だ!!!クッソ…よくも!!」

エルド「馬に乗る暇はない!全速力で本部へ向かえ!!とにかく味方の元に!!」


エレン「女型が?……そんな、どうして!?捕まったんじゃ…なかったのかよ!?」


再び女型の巨人が、眩むくらいの光とともに、
彼らの前に姿を表わす。


「今度こそやります!!俺が奴を!!」

「だめだ!!俺たち3人で女型の巨人を仕留める!!」

「エレンはこのまま全速力で本部を目指せ!!」

「俺も戦います!」

「これが最善策だ!お前の力はリスクが多すぎる!」


地鳴りが聞こえる。
その音は耳にこびりついて離れない。


「何だてめえ…俺たちの腕を疑ってんのか!?」

「…!」

「そうなのエレン?」


ドクン、と心臓が大きく波打った気がした。

「私たちのことが そんなに」


「信じられないの?」




「………!!」


―――あなたも私たちを信じて。
―――エレン。



「……ぅう…!!!」

「……ッ!我が班の勝利を…信じてます!!ご武運を!!」


一人飛び去る。



「うおおおおお!!」

合図もなしに一斉に三人で切りかかった。
長年で培われたチームワークが、巨人の両目の視力を奪う。


(視力を奪った。少なくとも奴は1分間は暗黒の中)
(それまでに仕留める!!)

(捕獲などクソ食らえ!)
(今殺す!!)


「肩回りの筋肉全部だ!!削いでやる!!」


無数の斬撃が次々と巨人の筋肉を切り裂く。
ダラン、と大きく風を切る音が聞こえるとともに、それの両腕が落ちた。

いける。

その場にいる全員が、そう感じたのだ。
まだ奴の視力が戻るまで、たっぷり時間はあるのだから……―――

―――バクッ


「……え…?」
「エルド!!」


「な…何でよ!!まだ目が見えるわけがない!!」

「まだ…30秒も経ってない!!」


食いちぎられた彼の身体が巨人の口から吐き出される。
髪の間から、片目が覗く。


「片目だけ!?」

足音が近づく。
光る眼玉が彼女に迫っていく。


「片目だけ優先して早く治した!? そんなことが…できるなんて!!」


一歩一歩確実に、巨人との距離は狭まっていく…―――


「ペトラ!!早く体勢を直せ!!!」


―――生きた意味だとか
―――死ぬ意味だとか





―――そんなの どうだってよかったんです。



―――リヴァイ兵長、あなたのそばで戦うこと。

―――ただ それだけが大切だったんです。

―――私にとって。





「ペトラッ!!!早くしろ!!!!」



――――それだけで、幸せだったんですよ。






.



あなたに、
最後まで言えなかったことが ひとつだけあります。

言うつもりもなかったことが ひとつだけ。




兵長。

……本当は、ずっと、大好きでした。






――――――――――ブヂュッ






.


















.






「兵長。リヴァイ兵長…」

「…またそんなに眉間に皺寄せていらっしゃるんですね…だからエレンが恐がっちゃうんですよ?」

「あはは。すいません、怒らないでください……本当すいません」

「兵長。私、私たち、……後悔してないですからね」

「調査兵団に入って、あなたに出会えて、あなたと共に戦えて」

「本当によかったって。心の底から思ってます」

「……」

「…エレン、あなたを守れなくてごめんなさい。不甲斐ない先輩で、本当にごめんなさい」

「信じてくれたのに、泣かせてしまってごめんね」


「お父さん。先立つ不孝を許してください。……生まれ変わっても、またお父さんの子に生まれたいよ」


「兵長。あなたの命令をまもれませんでした。ごめんなさい」

「そして、私たちの死を背負わせてしまって、ごめんなさい」

「……忘れてくださっていいんですよ、私の名を」

「あなたの悲しみとなるくらいなら、忘れ去られた方が幸せです」

「………」

「………」

「……………」

「……やっぱり」

「忘れないで、ください…」

「我がまま言ってすいません。忘れないでください……私のこと、ずっと覚えててください」

「あなたの心の片隅に、住まわせてください…。ペトラという名を、時々でいいので、思い出してください……」

「……」

「……」

「……あはは…ありがとうございます。兵長って、やっぱり優しいですよね……」

「あなたと過ごせた30日間、とっても楽しかったです」

「最初は掃除で始って」

「潔癖症で虫、嫌いなのに、私の肩の蜘蛛とってくれましたよね」

「そのあとエレンの歓迎会して…。エレンは兵長の昔の話、よく聞きたがってましたよ」

「私の作った料理、悪くないって言ってくれて嬉しかった」

「それから……兵長、私がいなくなってからも、城の中を上半身裸で歩くのはやめてくださいね?」

「あと言ってなかったですけど、兵長の寝顔見ちゃいました!あはは、ごめんなさい」

「グンタが猫まみれになったこともありましたね。あれは…笑えましたよ」

「エルドと私で兵長にチェスで、一回だけ勝てましたね!もう一戦やりたかったです。今度は私一人で勝ってみせたのに」

「そういえば食堂で夜中に二人きりで話しましたね。あのとき言ったこと、全部本当ですから」

「あと…あなたにあげた白い花。できれば大事にしてくださいね…できれば」

「オルオがあの花の名を教えてくれたんですよ。顔に似合わず、乙女趣味ですよね」

「それから。昨日の夕飯は本当に、本当に楽しかった…」

「星空を見れたことよりも、兵長がくれた言葉の方が嬉しかったです」


「……色んなことありましたね」

「あなたの下で戦えて、幸せでした」

「どんな時だって、あなたの背中の自由の翼が、私に勇気を与えてくれました」

「もっとあなたのそばに…いたかった」

「…今まで、ありがとうございました。リヴァイ、兵長」

「私、先にいってるので。」

「二人は後からゆっくり来てくださいね?」

「絶対に、ゆっくり歩いてきてください。約束ですよ。」




「生き急いだりなんかしたら、許しません。分かりました?兵長。エレン。」

「………じゃあ、そろそろ私たちいきます。」



「…ずっと見守ってますからね。」

<×日目>


「……チッ…」


久しぶりに足を踏み入れた旧本部の自室は、しばらく窓を閉め切っていたせいで少しほこり臭かった。

彼は負傷した脚に構わず、足早に歩くと真っ先に窓を開け放つ。



草木の香りをのせた風が部屋に舞い込んだ。

白いカーテンがそれに合わせてゆっくり漂う。

机に適当に放っておいた書類が飛び去りそうになるのを、緩慢な動作で抑え込む。


窓の外の、笑ってしまいそうになるくらい長閑な光景をぼんやり眺めていた彼の視界の隅に、何か白いものが映りこんだ。

「……それ、エレンが昨日、水を替えていたよ」

「…ハンジ、てめぇ何勝手に人の部屋に足踏み入れてやがる」

「昨日、あなたの部屋に書類を届けさせた時にね。少ししおれていたから、俺が新しい水いれてきますって」

「あいつがか」

「そうそう。それ、確かナズナの花でしょ?かわいいね」

小さな白い花が、寄り添うように咲いている。

今はもういない、彼女を―――この花を彼にくれた彼女の姿を、どこか彷彿とさせる。そんな花だった。



「……リヴァイ、ナズナの花言葉って知ってるかい?」

「俺が、花言葉なんて知ってるように見えるかよ…」

「っはは、だよねぇ」



―――その花の、花言葉はね…―――――




.

「……『私の全てを、あなたに捧げます』、かぁ………」

「どうだ?いい言葉だろう?えぇ?」

「いい言葉なのは確かだけど、なんでオルオが花言葉に詳しいのかな……オルオの新たな一面にちょっとびっくりだよ…」

「惚れたか?構わねぇぜ……」

「惚れてない惚れてない」


彼女は手の中の白い花を見つめた。

どこにでも咲いている、ただの雑草だと思っていたけれど、そんな素敵な花言葉を知った後だととてもかわいらしく見える。


「よく見たら…葉っぱもハート形なんだね」


少しばかり沈黙すると、彼女は座りこんだ。そして慎重にナズナを選びながら摘み始める。




『私の全てを、あなたに捧げます』


私の人生も意志も決意も覚悟も、

心も気持ちも幸せも強さも、

戦うための腕も、飛ぶための足も、

見るための瞳も、伝えるための口も、

人類に捧げた心臓以外のもの、全て


「……全て、兵長に捧げたいです」



―――私の命が散っても、

あなたに捧げたその全てが―――あなたの力に、糧になってくれますように

いつかあなたの悲願を叶える支えになりますように

そう…願うことは許されますか?


彼女は口元に頬笑みを浮かべると、黙々と花を摘んでいく。
自分の言葉の代わりに、彼に思いを伝えてほしい。

そんな願いを込めて、祈りを込めて。
彼女は幸せそうに花を摘み続けた。


――――――・・・
――――・・・
――・・・

「……――――――」


「っていうかさ、その花リヴァイが飾ったの?珍し……ぁ」


「……ハンジ。悪いが先に降りてろ。…俺もすぐ行くと、エルヴィンに言っとけ」

「………あー、うん。了解………ごめん。リヴァイ」

「なにらしくもなく謝ってやがる」


階段を降りる足音が完全に聞こえなくなったことを確認すると、彼はそっと目を閉じた。

脳裏によみがえるのは、彼女と…彼らと過ごしたこの城での30日間の出来事。

長いようで短かった1カ月。もう二度と過ごすことのできない1カ月のことだった。

『あ!兵長!ちょっと味見してみてくださいよ。エレンと私で作ったんです』

『…うるせっ!!どうしたペトラ……俺はまだお前にプロポーズした覚えはねぇが…?』

『兵長も団長もポーカーフェイスすぎですよ…一人負けしたオルオの奴が泣いてます』

『やったなペトラ!俺たち2人が合わされば、人類最強の兵長に勝てなくもないな!』

『いや兵長はチェスじゃあ人類最強じゃないだろ…』



『……俺も兵長のこと好きです』

『俺も好きですよ、兵長のこと!』

『俺もです!リヴァイ兵長のこと好きです!』

『あ、あの!わ、わ、私だって!その…』
『私も……兵長のこと……そう思ってますから!!』



『…私、兵長のこと……とっても尊敬しています』

―――今でも耳をすませば、風に乗って彼らの笑う声が聴こえてくる気がした。

「……お前の捧げたもん全て、確かに受け取った」

「ゆっくり休め。……ペトラ」


彼は再び目を開けると、窓辺のナズナの花を一瞥した。
それから机の上に置かれた、一冊の本にも目を向ける。

赤い表紙のそれは、彼のものではない。
彼女の墓に一緒に埋める予定のものだった。

不意に彼は踵を返すと、振り返らずに扉に向かう。


扉が閉まるその瞬間まで、花は彼の背中を見つめ続けた。

風に遊ばれて白い花弁が揺れている。

まるで、彼女が手を振って彼の門出を見送るように

いつまでも、いつまでも、嬉しそうに揺蕩っていた。




thirty days she spent with him.
the end.

出来れば今まで書いたssを教えてもらいたいです

――――――
ナズナの花言葉を知ったときペトラさんすぎて涙でた
心が満身創痍になったけど、書いてよかったです

読んでくれた方、レスしてくれた方、応援してくれた方どうも有難うございました。
最後まで書ききれたのも、ひとえに皆様のおかげです。


ペトラ「兵長と過ごす1カ月!」 お☆わ☆り

>>271 ギャグもあるんで注意です

アニ「あんたはいいよね」クリスタ「え?」
クリスタ「女神なんかじゃないよ」
ミカサ「エレンがストーカーにあっている!?」
エレン「百合豚?腐女子?なにそれ」
ミカサ「エレンが死んだ」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年10月15日 (水) 21:37:00   ID: qfgGaE3t

ななななにこれすげえ、すごいですうわあああああああああああああん(T-T)
泣きまじだっ!!!!感動ものですありがとうううううう(;o;)

1 :  SS好きの774さん   2014年10月15日 (水) 21:37:04   ID: qfgGaE3t

ななななにこれすげえ、すごいですうわあああああああああああああん(T-T)
泣きまじだっ!!!!感動ものですありがとうううううう(;o;)

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